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特開2022-64906uPARAPを標的にする抗体薬物複合体
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022064906
(43)【公開日】2022-04-26
(54)【発明の名称】uPARAPを標的にする抗体薬物複合体
(51)【国際特許分類】
   C07K 16/30 20060101AFI20220419BHJP
   A61K 47/68 20170101ALI20220419BHJP
   A61P 35/02 20060101ALI20220419BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20220419BHJP
   A61P 25/00 20060101ALI20220419BHJP
   A61P 13/08 20060101ALI20220419BHJP
   A61P 15/00 20060101ALI20220419BHJP
   A61K 38/05 20060101ALI20220419BHJP
   A61K 45/00 20060101ALI20220419BHJP
   A61K 39/395 20060101ALI20220419BHJP
   A61K 31/5517 20060101ALI20220419BHJP
   A61K 31/407 20060101ALI20220419BHJP
   A61P 29/00 20060101ALI20220419BHJP
   A61P 9/10 20060101ALI20220419BHJP
   A61P 37/06 20060101ALI20220419BHJP
   A61P 19/10 20060101ALI20220419BHJP
   C12N 15/13 20060101ALN20220419BHJP
【FI】
C07K16/30 ZNA
A61K47/68
A61P35/02
A61P35/00
A61P25/00
A61P13/08
A61P15/00
A61K38/05
A61K45/00
A61K39/395 D
A61K39/395 N
A61K31/5517
A61K31/407
A61P29/00
A61P9/10
A61P37/06
A61P19/10
C12N15/13
【審査請求】有
【請求項の数】17
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022003970
(22)【出願日】2022-01-13
(62)【分割の表示】P 2018540376の分割
【原出願日】2017-02-03
(31)【優先権主張番号】PA201670063
(32)【優先日】2016-02-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DK
(31)【優先権主張番号】PA201670834
(32)【優先日】2016-10-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DK
(71)【出願人】
【識別番号】518260116
【氏名又は名称】リグショシュピタレット
(71)【出願人】
【識別番号】508335820
【氏名又は名称】ユニバーシティ オブ コペンハーゲン
(74)【代理人】
【識別番号】100114775
【弁理士】
【氏名又は名称】高岡 亮一
(74)【代理人】
【識別番号】100121511
【弁理士】
【氏名又は名称】小田 直
(74)【代理人】
【識別番号】100202751
【弁理士】
【氏名又は名称】岩堀 明代
(74)【代理人】
【識別番号】100191086
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 香元
(72)【発明者】
【氏名】ニールセン,クリストファー
(72)【発明者】
【氏名】ベーレント,ニールス
(72)【発明者】
【氏名】エンゲルホルム,ラース ヘニング
(57)【要約】      (修正有)
【課題】ウロキナーゼ型プラスミノゲンアクチベータ受容体関連タンパク質(uPARAP)を発現する癌などに対する特異性が増進された、より効率的な治療を提供する。
【解決手段】uPARAPを標的とする複合体、とりわけuPARAPのN末端領域に対して作られたモノクローナル抗体を含む抗体薬物複合体(ADC)と、uPARAPを発現する細胞および組織への活性薬剤の送達での使用を開示する。癌などの、uPARAPを発現する細胞を伴う疾患の処置での前述のADCの使用についても開示する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
uPARAPに対して作られた抗体薬物複合体であって、
I.a)抗体またはその抗原結合フラグメントであって、
i.配列番号1または9のアミノ酸配列またはそれと少なくとも90%の配列同一性を有する配列を含むまたはそれからなる免疫グロブリン軽鎖、および
ii.配列番号5または10のアミノ酸配列またはそれと少なくとも90%の配列同一性を有する配列を含むまたはそれからなる免疫グロブリン重鎖
を含み、いずれの配列変化も相補性決定領域の外側である、抗体またはその抗原結合フラグメント、
b)a)の抗体またはその抗原結合フラグメントのヒト化バージョン、
c)a)の抗体またはその抗原結合フラグメントのキメラバージョン、
d)抗体またはその抗原結合フラグメントであって、
i.配列番号2、3および4のアミノ酸配列を含む免疫グロブリン軽鎖、および
ii.配列番号6、7および8のアミノ酸配列を含む免疫グロブリン重鎖
を含む、抗体またはその抗原結合フラグメント、
e)抗体またはその抗原結合フラグメントであって、
i.配列番号42、43および44のアミノ酸配列を含む免疫グロブリン軽鎖、および
ii.配列番号45、46および47のアミノ酸配列を含む免疫グロブリン重鎖
を含む、抗体またはその抗原結合フラグメント、ならびに
f)d)またはe)の抗体もしくはその抗原結合フラグメントのヒト化バージョン
からなる群から選択される、抗体、
II.治療薬、細胞毒性薬、放射性同位体、および検出可能標識から選択される活性薬剤、ならびに
III.IをIIに連結するリンカー
を含む、抗体薬物複合体。
【請求項2】
前記抗体がマウス抗体、キメラ抗体、ヒト抗体、ヒト化抗体、ヒト化抗原結合フラグメント、Fabフラグメント、Fab’フラグメント、F(ab’)2フラグメント、Fv、scFvなどの単鎖抗体(SCA)、その重鎖および/または軽鎖の可変部分、およびFabミニ抗体から選択される、請求項1に記載の抗体薬物複合体。
【請求項3】
前記抗体がモノクローナル抗体である、請求項1または2に記載の抗体薬物複合体。
【請求項4】
前記活性薬剤がアルキル化剤、アントラサイクリン系薬剤、代謝拮抗剤、抗微小管剤/抗有糸分裂剤、ヒストン脱アセチル酵素阻害剤、キナーゼ阻害剤、ペプチド抗生物質、白金系抗悪性腫瘍薬、トポイソメラーゼ阻害薬、および細胞毒性抗生物質からなる群から選択される化学療法薬などの、化学療法薬である、請求項1~3のいずれか1項に記載の抗体薬物複合体。
【請求項5】
前記活性薬剤がモノメチルアウリスタチンE(MMAE)、モノメチルアウリスタチンF(MMAF)、タキサン(例えばパクリタキセルもしくはドセタキセル)、ビンカアルカロイド(例えば、ビンブラスチン、ビンクリスチン、ビンデシン、もしくはビノレルビン)、コルヒチン、またはポドフィロトキシンからなる群から選択されるような、抗有糸分裂剤である、請求項1~4のいずれか1項に記載の抗体薬物複合体。
【請求項6】
前記活性薬剤がピロロベンゾジアゼピンまたはピロロベンゾジアゼピン二量体誘導体から選択されるDNA架橋剤などの、DNA架橋剤である、請求項1~4のいずれか1項に記載の抗体薬物複合体。
【請求項7】
前記活性薬剤がデュオカルマイシンSAなどの、アルキル化剤である、請求項1~4のいずれか1項に記載の抗体薬物複合体。
【請求項8】
請求項1~7のいずれか1項に記載の抗体薬物複合体、および薬学的に許容される緩衝剤、希釈剤、担体、アジュバント、または賦形剤を含む、医薬組成物。
【請求項9】
対象におけるuPARAPを発現する細胞によって特徴づけられる疾患の治療に使用するための、請求項1~7のいずれか1項に記載の抗体薬物複合体または請求項8に記載の医薬組成物であって、前記uPARAPを発現する細胞によって特徴づけられる疾患が、癌、骨粗鬆症などの骨劣化疾患、線維症、およびアテローム動脈硬化症または慢性炎症などのマクロファージ関連疾患または障害から選択されるような、抗体薬物複合体または医薬組成物。
【請求項10】
前記疾患が癌である、請求項9に記載の抗体薬物複合体または医薬組成物。
【請求項11】
前記癌が、骨肉腫、脂肪肉腫、粘液線維肉腫、隆起性皮膚線維肉腫(DFSP)および/または平滑筋肉腫(LMS)などの肉腫である、請求項10に記載の抗体薬物複合体または医薬組成物。
【請求項12】
前記癌が神経膠芽細胞腫である、請求項10に記載の抗体薬物複合体または医薬組成物。
【請求項13】
前記癌が前立腺癌または前立腺癌からの骨移転である、請求項10に記載の抗体薬物複合体または医薬組成物。
【請求項14】
前記癌が乳癌である、請求項10に記載の抗体薬物複合体または医薬組成物。
【請求項15】
前記癌が頭部癌と頸部癌である、請求項10に記載の抗体薬物複合体または医薬組成物。
【請求項16】
前記癌が白血病である、請求項10に記載の抗体薬物複合体または医薬組成物。
【請求項17】
請求項1~7のいずれか1項に記載の抗体薬物複合体、または請求項8に記載の医薬組成物を含むキットであって、任意選択で対象に前記抗体薬物複合体を投与するための手段および/または使用説明書をさらに含む、キット。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は受容体uPARAPを標的にする分子複合体、とりわけuPARAPに対して作られた抗体薬物複合体(ADC)と、uPARAPを発現する細胞および組織への活性薬剤の送達でのそれらの使用とに関する。本発明はさらに、特定の癌などの、uPARAPを発現する細胞を伴う疾患の処置での前述のADCの使用に関する。
【背景技術】
【0002】
ウロキナーゼ型プラスミノゲンアクチベータ受容体関連タンパク質(uPARAP)(CD280、Endo180およびマンノース受容体C2型としても知られている)は、エンドサイトーシス膜貫通糖タンパク質のマクロファージマンノース受容体ファミリーのメンバーである。uPARAPは、組織再構築時のマトリックスターンオーバー、とりわけコラーゲンの取り込みと細胞内分解に関与する膜タンパク質である。
【0003】
受容体uPARAPは、肉腫および末期神経膠芽腫を含む、特定の癌の腫瘍細胞中で増加する。さらに、受容体uPARAPは、ほとんどの場合、固形腫瘍を取り囲む間質細胞中で増加し、一部の文献は、前立腺がんの骨転移におけるuPARAPの高発現を示唆している(Caleyら,2012,J.Pathol 5:775-783)。正常な成人個人において、受容体uPARAPは限られた発現パターンを示す(Melanderら, 2015,Int J Oncol 47:1177-1188)。
【0004】
抗体薬物複合体(ADC)は、標的療法として、特に癌治療のために設計される非常に強力なバイオ医薬品の新しい種類である。ADCは、不安定な結合を有することもある、安定な化学的リンカーを介して生物学的に活性な薬物または細胞毒性化合物に連結される抗体(モノクローナル抗体全体または抗体フラグメント)で構成される複合分子である。抗体特有の標的能力を細胞毒性薬物の細胞死滅能力と組み合わせることによって、抗体薬物複合体は、抗体抗原の発現に基づいて、正常な組織と病変組織との間の感受性識別を可能にする。これは、伝統的な化学療法薬と対照的に、抗体薬物複合体は活発に癌細胞を標的にし攻撃するので、抗原をほとんどまたは全く発現しない健康な細胞がひどく影響を受けないことを意味する。現在まで、3種のADCが市販承認を受けており、いくつかのADCが現在のところ臨床試験中である。
【0005】
国際公開第2010/111198号は、抗uPARAP抗体を含む複合体を開示し、uPARAPを発現する細胞への治療薬の送達におけるそのような複合体の使用を提案する。
【0006】
治療方法は、現在のところほとんどの癌型に対して存在する。しかし、ほとんどの場合、治療の特異性の欠如により、不満足な効率、または有害な副作用を伴う。したがって、特異性が増進された、より効率的な治療が必要とされている。
【発明の概要】
【0007】
本発明は、uPARAP受容体のN末端領域に結合できる抗uPARAP抗体に基づく抗体薬物複合体(ADC)を提供する。本明細書に記載のADCは、uPARAPを発現する細胞および組織を特異的に標的にでき、認定される副作用なしにin vitrolおよびin vivoで優れた有効性を有する。
【0008】
特に、本開示は、以下を含む抗体薬物複合体に関する:
a.抗体またはその抗原結合フラグメントであって、
i.配列番号36または37(uPARAPのCysR-FN-II-CTLD-1ドメイン)のアミノ酸配列、
ii.配列番号38または39(uPARAPのCysR-FN-IIドメイン)のアミノ酸配列、
iii.配列番号40または41(uPARAPのFN-II-CTLD-1ドメイン)のアミノ酸配列、
iv.配列番号30または31(uPARAPのシステインに富むドメイン(CysR)のアミノ酸配列、
v.配列番号32または33(uPARAPのフィブロネクチンII型(FN-II)ドメイン)のアミノ酸配列、
vi.配列番号34または35(uPARAPのC型レクチン様ドメイン1(CTLD1))のアミノ酸配列
に結合できる抗体またはその抗原結合フラグメント、
b.活性薬剤、および任意選択で
c.a)をb)に連結するリンカー。
【0009】
さらに、本開示は、uPARAP受容体の発現を伴う疾患および/または障害の治療について上述されるADCの使用に関する。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】uPARAPを含む、マンノース受容体ファミリーの4種のタンパク質ファミリーの略図である。これらのタンパク質のすべては、全体のドメイン構成が同じであり、N末端シグナルペプチドを有しその後にシステインに富むドメイン、フィブロネクチンII型ドメイン(FN-IIドメイン)、8~10C型レクチン様ドメイン(CTLD)、膜貫通領域および小さな細胞質尾部が続く(出典:Melanderら,2015 Int J Oncology 47:1177-1188)。
図2】標的抗体の形態で、マレイミドカプロイル-バリン-シトルリン-P-アミノベンゾイルオキシカルボニル-モノメチルアウリスタチンE(MC-VC-PAB-MMAE)リンカー-毒素構築物に結合される、uPARAPを標的とするADCの略図を示す。標的抗体は、特定の癌型で高度に発現することが判明している受容体uPARAPに対して特異的である。リンカー-毒素構築物は、マレイミド化学によって遊離システインのチオールまたは還元された鎖間ジスルフィド架橋のチオールに接着される(N=1~10毒素/抗体)。スペーサー実体へのペプチド/アミド結合を有するバリン-シトルリンリンカー領域は、カテプシンBなどのリソソームプロテアーゼの基質であるが、細胞外環境中で十分に安定であり、標的抗原を発現している細胞によって取り込まれるときだけ、結合薬物を確実に放出する。結合薬物は、モノメチルアウリスタチンE(MMAE)の形態で非常に強力なチューブリン阻害剤である。ユニット(モノクローナル抗体(mAb)-vc-MMAE)として、このADC構築物は、uPARAP抗原を発現している細胞のみへの薬物成分の特異的送達、ならびにこれらの細胞中での結合薬物の細胞内放出を確実に行う。
図3】フローサイトメトリーで測定された、uPARAP陽性細胞系での、図2の説明文に記載の結合手順に類似した方法(部分的還元およびそれに続くマレイミド誘導体化AlxeaFluor647試薬との反応)を用いてフルオロフォア(AlexaFluor 647、AF647)で標識したモノクローナル抗体2h9の細胞取り込みを示す。MFI:平均蛍光強度。特異性比:2h9-AF647対aTNP-AF647のシグナル比率。aTNPは非標的対照のモノクローナル抗体である。これらの数値は、2h9-AF647の特異的取り込みを示し、モノンクローナル抗体2h9が、そのような結合方法に従って、uPARAP陽性細胞によって取り込まれることを裏付ける。
図4A】標的抗体(2h9)、約4~5の適度な薬物抗体比(DAR)を有するmAb-vc-MMAE ADC、および約8~10のDARを有するmAb-vc-MMAE ADCの還元SDS-PAGEを示す。結合モノクローナル抗体がゲル中で移動度の減少を示し、および適度に結合したADC種がモノクローナル抗体重鎖を介して好ましく結合され、一方で高いDARを有するADCは重鎖と軽鎖の両方を介して結合されることが分かる。
図4B】活性化した組換えカテプシンB(+rh カテプシンB)とのADCのインキュベーションがADCのゲル移動度を未修飾標的抗体のそれに戻し、したがってリンカー領域がカテプシンBなどのリソソームプロテアーゼによって実際に切断可能であることを示す、還元SDS-PAGE。
図4C】結合手順の還元ステップの後に、ならびにADCの形態で、uPARAPに対するモノクローナル抗体2h9の親和性が維持されていることを示すELISA分析。全体的に見て、これらのデータは、ADC 2h9-vc-MMAEが、結合の後にゲル移動度および標的受容体に対する親和性に関して予想通りに挙動することを示している。
図5】希釈系列でのADCへの曝露に基づくin vitro細胞生存率アッセイを示す。希釈系列は、10μg/mLのADC(モノクローナル抗体成分)で開始し、続いて一連のADCの4倍希釈を行なった。細胞を、比色生存率アッセイによる分析の前に、72時間インキュベートした。ここで、アッセイは、標的受容体を発現する4種の細胞系(U937、THP-1、HT1080およびKNS42細胞)では、非標的ADC(aTNP-vc-MMAE)と比較して、uPARAPを標的とするADC 2h9-vc-MMAEとのインキュベーション後の全体的な生存率の特異的な減少を示し、一方で受容体陰性細胞系(CHO-K1)は影響を受けないままである。これは、ADC 2h9-vc-MMAEとのインキュベーションに続く、uPARAP陽性細胞系の生存率における受容体特異的減少を示す。
図6】1μg/mLのuPARAPに対するADC 2h9-vc-MMAEもしくは対照ADC aTNP-vc-MMAE、または50nMの遊離MMAE毒素の存在下での3日間のインキュベーションに続く、4種のuPARAP陽性細胞株(U937、THP-1、HT1080またはKNS42)の細胞周期分布解析を示す。MMAEはチューブリン阻害剤であるので、薬物効果は、Sub-G1期(最終的には、アポトーシスをもたらす)またはG2-M期(DNA複製に続くゲノム分離の阻害)のいずれかでの細胞の割合の増加を引き起こし得る。ダッシュ記号は、広範囲にわたる細胞死と崩壊により、登録するには低すぎる細胞計数を示す。これらの試料中でのSub-G1期およびG2/M期への細胞周期分布の移行から明らかなように、4種のすべての細胞株がuPARAPを標的とするADC 2h9-vc-MMAE(および遊離MMAE)に対する特異的感受性を示すことが分かる。
図7】1μg/mLのuPARAPを標的とするADC 2h9-vc-MMAEの存在下で、同時に異なる濃度の非複合標的抗体(2h9)、uPARAPを標的とする別の抗体(5f4)、または非標的対照抗体(aTNP)の存在下で、3日間インキュベートされるU937細胞を示す、競合アッセイを示す。モル過剰の非複合標的抗体2h9(1+μg/mL競合モノクローナル抗体)だけが、ADCの効果と競合でき、それによってADC媒介細胞死から細胞を救出することが分かる。それによって、uPARAPと標的抗体2h9の間の相互作用が、観察される細胞毒性効果にとって重要であることが示される。
図8】広域阻害剤のリソソームプロテアーゼ(E64D)の存在下でU937細胞をプレインキュベートすることがuPARAPを標的とするADC 2h9-vc-MMAEの細胞毒素効果の完全な抑止をもたらすことを示す。それによって、複合薬物のリソソーム放出が、細胞毒素効果を得るために重要であることが示される。
図9】CB17SCIDマウスにおいて細胞株U937の注射によって確立された、uPARAP陽性皮下異種移植片腫瘍に対抗することにおけるuPARAPを標的とするADC 2h9-vc-MMAEの有効性のin vivo試験を示す。マウスを、uPARAPを標的とするADC2h9-vc-MMAE (N=10)、対照ADC aTNP-vc-MMAE(N=9)、非複合モノクローナル抗体2h9(N=5)、または生理食塩水(PBS、N=5)のいずれかを腫瘍の近くに皮下(s.c.)注射することによって処置する。すべての処置は、3mg/kg/モノクローナル抗体成分注射の用量を計4投与、4日ごとに投与することで行われる。0日は、腫瘍が50~100mmの触知可能なサイズに達すると開始される、第1の注射の日を示す。グラフは各処置群にわたる平均腫瘍サイズを示す。ADC 2h9-vc-MMAEによる処置が腫瘍増殖において大幅な減少をもたらすのに対して、他の処置群のすべては、処置の開始から10~12日内に犠牲の段階に達することが分かる。これは、uPARAPを標的とするADC2h9-vc-MMAEがin vivoで前もって構築されたuPARAP陽性腫瘍の増殖を阻害することに有能であることを示す。さらに、2h9-vc-MMAE処置群からのデータは、50%の永久治癒率を表す(図10も参照されたい)。
図10図9に記載の2h9-vc-MMAE処置群の腫瘍増殖のより詳細な観察を示す。この群には非完全な処置と腫瘍再発を受けているマウス、ならびに腫瘍負荷が完全になくなり腫瘍再発を示さないマウスが含まれていることを示す。2h9-vc-MMAEで処置した10匹のマウスのうち5匹は、処置後に腫瘍増殖のほぼ即時再発を示し、犠牲の段階に急速に達するのに対して、残りの5匹のマウスは腫瘍のすべての徴候を消失し、90日の期間、腫瘍増殖がないままであり、皮下投与により2h9-vc-MMAE処置を受けたマウスについて50%の全体的な永久治癒率を示した。
図11】CB17SCIDマウスにおいて細胞株U937の注射によって確立された、uPARAP陽性皮下異種移植片腫瘍に対抗することにおけるuPARAPを標的とするADC 2h9-vc-MMAEの有効性のin vivo試験を示す。マウスを、uPARAPを標的とするADC2h9-vc-MMAE(N=10)、対照ADC aTNP-vc-MMAE(N=10)、非複合モノクローナル抗体2h9(N=5)、または生理食塩水(PBS、N=5)のいずれかを尾静脈から静脈内(i.v.)注射することによって処置する。すべての処置は、5mg/kg/モノクローナル抗体成分注射の用量を計3投与、4日ごとに投与することで行われる。0日は、腫瘍が50~100mmの触知可能なサイズに達すると開始される、第1の注射の日を示す。グラフは各処置群にわたる平均腫瘍サイズを示す。これらの条件下で、uPARAPを標的とするADC 2h9-vc-MMAEによる処置は、10匹のすべてのマウスにおいて腫瘍負担の完全な抑止をもたらし、このADCの静脈内投与によりマウスの100%の全体的な永久治癒率をもたらし、固形uPARAP陽性腫瘍に対抗することにおけるADC 2h9-vc-MMAEの有効性をさらに示す。
図12】U937細胞株での、非標的ADC(aTNP-vc-MMAE)と比較した、uPARAPを標的とするADC 2h9-vc-MMAE、またはuPARAPを標的とするADC 5f4-vc-MMAEのいずれかとのインキュベーション後の、全体的な生存率の特異的な減少を示す、in vitoro細胞生存率アッセイを示す。データは、5f4に基づくADCが2h9抗体に基づくADCに相当する有効性を有することを示す。
図13】異なる肉腫(脂肪肉腫、粘液線維肉腫、隆起性皮膚線維肉腫(DFSP)および平滑筋肉腫(LMS)の免疫組織化学染色を示す。染色方法は、濃い赤褐色の色としてuPARAPの組織発現を示す。uPARAPの発現は悪性癌(腫瘍)組織の切片中で明らかであるのに対して、非癌組織の切片はuPARAPを欠いており、肉腫中で見られるuPARAPの発現レベルの増加を示す。スケールバー:20μm。
図14】uPARAPのN末端部に対して作られる異なる抗体がADC型で効率的な薬物送達のために使用できる。モノクローナル抗体-vc-MMAE組成を有するADCを、uPARAPの3つのN末端ドメイン内のエピトープに対して作られた3種の異なる抗体(モノクローナル抗体2h9、モノクローナル抗体5f4、モノクローナル抗体9b7)を用いて、図2の説明文に記載のように調製した。比較のために、ADCを、同様の方法を用いるがN末端の3つのドメイン(モノクローナル抗体11c9)の外側のエピトープに対して作られる抗uPARAP抗体を使用して、調製した。U937細胞によるin vitro細胞生存濾率アッセイを次いで、これらのADCすべてを使用して、図5の説明文に記載のように行なった。すべてのADCは、全体的な細胞生存率において特異的な減少を引き起こすが、2h9-vc-MMAE、5f4-vc-MMAEおよび9b7-vc-MMAEに対する細胞感受性は1c9-vc-MMAEに対する感受性よりもかなり高い。
図15】異なる毒素がuPARAPのN末端部を標的にするADC型で使用できる。抗体成分としてモノクローナル抗体2h9を有するADCを図2の説明文に記載のように調製したが、VC-PAB-MMAEの代わりに以下のリンカー-細胞毒ユニットを使用した:VC-PAB-MMAF(MMAFは、MMAEのカルボキシル変種であるモノメチルアウリスタチンFである)、およびPEG4-va-PBD(PEG4はポリエチレングリコールスペーサーを指し、vaはバリン-アラニンでありPBDはピロロベンゾジアゼピン二量体を指す)。結果として生じるADC(それぞれ、2h9-vc-MMAF、2h9-va-PBDと呼ぶ)を、U937細胞でのin vitro細胞生存率アッセイに用い、図5の説明文に記載のように行なった。U937細胞は、2h9-vc-MMAFに対して非常に強い感受性を示し、2h9-Va-PBDに対してはより穏やかな感受性を示した。
図16】抗体成分としてモノクローナル抗体2h9を有するADCを、VC-PAB-MMAEの代わりに以下のリンカー-細胞毒ユニット:PEG4-vc-デュオカルマイシンSA(PEG4はポリエチレングリコールスペーサーを指し、vcはバリン-シトルリンである)を用いて図2の説明文に記載のように調製した。結果として生じるADC(2h9-vc-DuocSAと呼ばれる)を、U937細胞でのin vitro細胞生存率アッセイに使用し、図5の説明文に記載のように行なった。U937細胞は、2h9-vc-DuocSAに対して低いが測定可能な感受性を示した。
図17】抗体成分としてモノクローナル抗体2h9またはaTNPを有するADCを、以下のリンカー-細胞毒ユニット:VC-PAB-MMAEまたはVC-PAB-MMAFを用いて図2の説明文に記載のように調製した。結果として生じるADC(2h9-vc-MMAE、2h9-vc-MMAF、aTNP-vc-MMAEおよびaTNP-vc-MMAFと呼ばれる)を、ヒト神経膠芽腫移植片細胞を用いるin vitro細胞生存率アッセイに使用し、図5の説明文に記載のように行なった。これらの神経膠芽腫移植片細胞は、MMAEおよびMMAF毒素に基づいて、uPARAPを標的とするADCに対する高度な特異的感受性を示した。
図18】「クローン化2h9」と称される、組換えモノクローナル抗体 2h9産物を、モノクローナル抗体2h9の軽鎖および重鎖をコードするDNA配列(それぞれ、[配列番号1]および[配列番号5])を含む発現ベクターでトランスフェクトされたCHO細胞中で産生した。この産物の反応性をウエスタンブロッティングで解析し、ハイブリドーマ細胞培養(「2h9オリジナル」)によって産生されたモノクローナル抗体2h9と比較した。ウエスタンブロッティングでは、uPARAP陽性MG63ヒト骨肉腫細胞から調製された界面活性剤による細胞溶解物を、一次抗体として同一の濃度の「クローン化2h9」と「2h9オリジナル」を使用して分析した。2つの抗体産物は同一の反応を示し、かつ両方ともuPARAPタンパク質と特異的に反応する。一次抗体(陰性対照)の非存在下で反応は見られない。
【発明を実施するための形態】
【0011】
配列
【表1】
【0012】
相補性決定領域(CDR)は、DunbarとDeane(2016)によって発表されたコンピュータ化Kabat番号付けプログラムを使用して、参考文献(Kabatら(1983)、Kabatら(1991)およびWuとKabat(2008))で特定されているように、Kabatらの規定スキームにしたがって予測した。Paratomeアルゴリズムによる抗原結合領域(ABR)もまた、参考文献(Kunikら(2012aおよびb))で特定されるように予測した。ABRは、本明細書に開示する抗体の代替CDRを表す。
【0013】
抗原認識および結合に関与する全ての領域は、特定されたCDRおよびABRからわずかにそれることがあり得る。本明細書で特定される可変領域またはFabフラグメントに含まれるすべての配列データは、抗原結合に潜在的に関与するので包含される。本明細書で用いるものと異なる方法またはアルゴリズムが、潜在的な結合/認識領域の同定のために用いられてよい。したがって、本明細書に提示される予測CDRに加えて、本発明は、そのような方法またはアルゴリズムを用いて、それぞれのFab領域および可変領域(それぞれ配列番号9、10、11、15、20および25)に基づいてモノクローナル抗体2h9、5f4および9b7中のCDRまたはABRを表すと予測されるあらゆるアミノ酸配列を包含する。CDRの予測のためのさらなる方法およびアルゴリズムの例としては、IMGTシステム(LeFrancら,(2003))が挙げられるが、これに限定されるものではない。
【0014】
Fab 9B7軽鎖および重鎖の配列決定の間、プライマー領域の位置のため、これらの配列のN末端領域において何らかの曖昧さが予想される。このように、配列番号19の最初の7つのアミノ酸は、正確でないこともあり得る。配列番号24のアミノ酸1~8について、同じことが言える。配列番号20と25は配列番号19と24にそれぞれ対応し曖昧なN末端アミノ酸はない。
【0015】
詳細な説明
本開示のuPARAPを標的にする抗体薬物複合体は、
a)uPARAPのシステインに富むドメイン(CysR)、フィブロネクチン型II(FN-II)ドメインにおよび/またはC型レクチン様ドメイン1(CTLD1)に結合可能な抗体、
b)活性薬剤、および
c)任意選択でa)をb)に連結するリンカー
を含む。
【0016】
特定の態様において、本開示のuPARAPを標的にする抗体薬物複合体は、
a.抗体またはその抗原結合フラグメントであって、
i.配列番号36または37(uPARAPのCysR-FN-II-CTLD-1ドメイン)のアミノ酸配列、
ii.配列番号38または39(uPARAPのCysR-FN-IIドメイン)のアミノ酸配列、
iii.配列番号40または41(uPARAPのFN-II-CTLD-1ドメイン)のアミノ酸配列、
iv.配列番号30または31(uPARAPのシステインに富むドメイン(CysR))のアミノ酸配列、
v.配列番号32または33(uPARAPのフィブロネクチン型II(FN-II)ドメイン)のアミノ酸配列、および/または
vi配列番号34または35(uPARAPのC型レクチン様ドメイン1(CTLD1)のアミノ酸配列
に結合可能な抗体またはその抗原結合フラグメント、
b.活性薬剤、ならびに任意選択で
c.a)をb)に連結するリンカー
を含む。
【0017】
uPARAPに対して作られる抗体
本開示の抗uPARAP抗体は、細胞表面でuPARAPに結合すると、内部移行され、したがってADC複合体の活性薬剤の細胞内作用を可能にする。uPARAPに結合できるすべての抗体が同じ割合で、または同じ量で内部移行されるというわけではないことが、例えば国際公開第WO2010/111198号から知られている。実際、いくつかの抗uPARAP抗体は全く内部移行されず、したがって、ADCでの使用に好適でない。
【0018】
uPARAP受容体は、N末端システインに富むドメイン(CysR)、フィブロネクチンII型(FN-II)ドメイン、および8つのC型レクチン様ドメイン(CTLD1~8)からなる(図1を参照されたい)。短いアミノ酸配列は、個々のドメインを接続する。本明細書に提示されるデータは、uPARAPの最もN末端の3つのドメインを標的とする抗uPARAP抗体がADCでの使用に極めて効果的であることを示唆する。
【0019】
このように、本開示の抗uPARAP抗体は、好ましくはuPARAPのN末端領域に、より好ましくはuPARAPの最もN末端の3つのドメイン、すなわちシステインに富むドメイン、フィブロネクチン型IIドメインおよび/またはC型レクチン様ドメイン1(uPARAPのこれらのドメインをつなぐリンカー配列を含む)の3つのドメインに位置するエピトープに結合する。
【0020】
このように、本開示の抗uPARAP抗体は、uPARAPのシステインに富むドメイン(CysR)(配列番号30または31)、フィブロネクチン型II(FN-II)ドメイン(配列番号32または33)および/またはC型レクチン様ドメイン1(CTLD1)(配列番号34または35)を含む、またはそれらからなるペプチドに結合できる。
【0021】
NCBIによって記載されるシステインに富むドメイン、フィブロネクチン型IIドメインおよびC型レクチン様ドメイン1(これらのドメインをつなぐリンカー配列を含む)は、全長ヒトuPARAPのアミノ酸46~361に対応する。したがって、一実施形態において、抗uPARAP抗体に関するエピトープは、配列番号29(全長ヒトuPARAP)のアミノ酸46~361に位置する。一実施形態において、本開示の抗uPARAP抗体は、配列番号29のアミノ酸31~365に、より好ましくは配列番号29のアミノ酸46~361(本明細書では配列番号36に対応する)に位置するエピトープに結合する。SMARTは、これらのドメインを配列番号29のアミノ酸41~360につなげるリンカー配列を含むCYSR-FN-II-CTLD1を予測する。したがって、一実施形態において、抗uPARAP抗体に関するエピトープは、本明細書で配列番号37に対応する、配列番号29のアミノ酸41~360に位置する。
【0022】
一実施形態において、本開示の抗uPARAP抗体は、CysRドメインおよび/またはCTLD-1ドメインに結合する。
【0023】
一実施形態において、本開示の抗uPARAP抗体は、CysRドメインに結合し、このドメインは、NCBIによる予測では全長ヒトuPARAPのアミノ酸46~161からなり、本明細書で配列番号30に対応し、およびSMARTによる予測では全長ヒトuPARAPのアミノ酸41~161からなり、本明細書で配列番号31に対応する、すなわち、一実施形態において、抗uPARAP抗体は配列番号29のアミノ酸46~161または41~161に位置するエピトープに結合する。
【0024】
一実施形態において、本開示の抗uPARAP抗体は、FN-IIドメインに結合し、このドメインは、NCBIによる予測では全長ヒトuPARAPのアミノ酸181~228からなり、本明細書で配列番号32に対応し、およびSMARTによる予測では全長ヒトuPARAPのアミノ酸180~228からなり、本明細書で配列番号33に対応する。すなわち、一実施形態において、抗uPARAP抗体は配列番号29のアミノ酸181~228または180~228に位置するエピトープに結合する。
【0025】
一実施形態において、本開示の抗uPARAP抗体は、CTLD-1ドメインに結合し、このドメインは、NCBIによる予測では全長ヒトuPARAPのアミノ酸247~361からなり、本明細書で配列番号34に対応し、およびSMARTによる予測では全長ヒトuPARAPのアミノ酸235~360からなり、本明細書で配列番号35に対応する。すなわち、一実施形態において、抗uPARAP抗体は配列番号29のアミノ酸247~361または235~360に位置するエピトープに結合する。
【0026】
一実施形態において、本開示の抗uPARAP抗体は、CysRおよびFN-IIドメイン(これらのドメインをつなぐリンカー配列を含む)、またはそれらからなるペプチドに結合でき、このドメインはNCBIによる予測では全長ヒトuPARAPのアミノ酸46~228からなり、配列番号38に対応し、およびSMARTによる予測では全長ヒトuPARAPのアミノ酸41~228からなり、本明細書で配列番号39に対応する。すなわち、一実施形態において、抗uPARAP抗体は配列番号29のアミノ酸46~228または41~228に位置するエピトープに結合する。
【0027】
一実施形態において、本開示の抗uPARAP抗体は、FN-IIおよびCTLD-1ドメイン(これらのドメインをつなぐリンカー配列を含む)を含む、またはそれらからなるペプチドに結合でき、このドメインはNCBIによる予測では全長ヒトuPARAPのアミノ酸181~361からなり、配列番号40に対応し、およびSMARTによる予測では全長ヒトuPARAPのアミノ酸180~360からなり、本明細書で配列番号41に対応する。すなわち、一実施形態において、抗uPARAP抗体は配列番号29のアミノ酸180~361または181~360に位置するエピトープに結合する。
【0028】
一実施形態において、本開示の抗uPARAP抗体は、Merck Milliporeから市販されているマウスモノクローナルIgG1κ抗体のクローン2.h.9:F12(http://www.merckmillipore.com/DK/en/product/Anti-UPAR-Associated-Protein-Antibody%2C-clone-2.h.9%3AF12.MM_NF-MAB2613?cid=BI-XX-BRC-P-GOOG-ANTI-B302-1075)またはその機能的フラグメントもしくは変異体、例えばキメラバージョンまたはヒト化バージョンである。マウスモノクローナルIgG1κ抗体クローン2.h.9:F12は、本明細書では「2h9」抗体または「mAb 2h9」と称される。2h9抗体は、ヒトuPARAPとマウスuPARAPとの両方と反応し、したがって前臨床試験および臨床試験の両方に適切である。
【0029】
これまでの試験は、2h9抗体に関するエピトープがuPARAPの最もN末端の3つのドメインに、具体的にはCysRドメインまたはCTLD-1ドメインに位置することを示す。uPARAPの3つのN末端ドメイン(CysR、FN-IIおよびCTLD-1)からなる可溶性組換えタンパク質は、BIAcore装置において固定化2h9に結合し、これらの3つのN末端ドメインへのモノクローナル抗体2h9による結合の部位を限定する(Jurgensenら,2011,JBC 286(37):32736-48)。さらに、uPARAPのFN-IIドメインを同じ受容体ファミリーの他のメンバーのFN-IIドメインと交換しても、モノクローナル抗体2h9の結合に影響はなく、FN-IIドメインがモノクローナル抗体2h9に関するエピトープを含まない可能性を示唆している(Jurgensenら,2014,JBC 289(11):7935-47)。これは、CysRドメインまたはCTLD-1ドメインのいずれかへのモノクローナル抗体2h9の結合を効果的に限定する。
【0030】
モノクローナル抗体2h9の免疫グロブリン軽鎖可変領域の予想されるCDRは、配列番号2~4に対応し、モノクローナル抗体2h9の免疫グロブリン重鎖可変領域の予想されるCDRは、配列番号6~8に対応する。
【0031】
一実施形態において、本開示の抗uPARAP抗体は、以下からなる群から選択される2h9抗体またはその機能的フラグメントもしくは変異体に対応する抗体である:
a.抗体またはその抗原結合フラグメントであって、
i.配列番号1もしくは9のアミノ酸配列またはそれと少なくとも70%の配列同一性、それと少なくとも80%の配列同一性など、例えばそれと少なくとも90%の配列同一性を有する配列を含む、またはそれからなる免疫グロブリン軽鎖可変領域、および/または
ii.配列番号5もしくは10のアミノ酸配列またはそれと少なくとも70%の配列同一性、それと少なくとも80%の配列同一性など、例えばそれと少なくとも90%の配列同一性を有する配列を含む、またはそれからなる免疫グロブリン重鎖可変領域
を含む、抗体またはその抗原結合フラグメント、
b.a)の抗体と同じエピトープに結合する抗体またはその抗原結合フラグメント、
c.a)の抗体もしくはその抗原結合フラグメントのヒト化バーション、またはb)の抗体もしくはその抗原結合フラグメントのヒト化バージョン、
d.a)の抗体もしくはその抗原結合フラグメントのキメラバージョン、またはb)の抗体もしくはその抗原結合フラグメントのキメラバージョン、
e.抗体またはその抗原結合フラグメントであって、
i.配列番号2、3、4、6、7および8のアミノ酸配列の1つもしくは複数、または
ii.配列番号2、3および4のアミノ酸配列、および/または配列番号6、7および8のアミノ酸配列
を含む、抗体またはその抗原結合フラグメント、
f.抗体またはその抗原結合フラグメントであって、
i.配列番号42、43、44、45、46および47の1つもしくは複数、または
ii.配列番号42、43および44のアミノ酸配列、および/または配列番号45、46および47のアミノ酸配列
を含む、抗体またはその抗原結合フラグメント。
【0032】
本明細書に開示される抗体の抗原認識を維持するために、配列変化は、通常CDRまたはABR中にない。このように、好適な実施形態において、あらゆる配列変異はCDRまたはABRの外側に位置する。本明細書に開示されるすべての変異抗体および抗原結合フラグメントは、uPARAPに結合する能力を保持する。
【0033】
例えば、本開示の抗体は、以下を含み得る:
a.配列番号1もしくは9のアミノ酸配列またはそれと少なくとも70%の配列同一性、それと少なくとも80%の配列同一性など、例えばそれと少なくとも90%の配列同一性を有する配列を含む、およびさらに以下を含む免疫グロブリン軽鎖可変領域:
i.配列番号2に記載のアミノ酸配列を有するCDR1、
ii.配列番号3に記載のアミノ酸配列を有するCDR2、
iii.配列番号4に記載のアミノ酸配列を有するCDR3、および
b.配列番号5もしくは10のアミノ酸配列またはそれと少なくとも70%の配列同一性、それと少なくとも80%の配列同一性など、例えばそれと少なくとも90%の配列同一性を有する配列を含む、およびさらに以下を含む免疫グロブリン重鎖可変領域:
i.配列番号6に記載のアミノ酸配列を有するCDR1、
ii.配列番号7に記載のアミノ酸配列を有するCDR2、
iii.配列番号8に記載のアミノ酸配列を有するCDR3
ここでいずれの配列変化もCDRの外側である。
【0034】
あるいは、本開示の抗体は以下を含み得る:
a.配列番号1もしくは9のアミノ酸配列またはそれと少なくとも70%の配列同一性、それと少なくとも80%の配列同一性など、例えばそれと少なくとも90%の配列同一性を有する配列を含む、およびさらに以下を含む免疫グロブリン軽鎖可変領域:
i.配列番号42に記載のアミノ酸配列を有するABR1、
ii.配列番号43に記載のアミノ酸配列を有するABR2、
iii.配列番号44に記載のアミノ酸配列を有するABR3、
b.配列番号5もしくは10のアミノ酸配列またはそれと少なくとも70%の配列同一性、それと少なくとも80%の配列同一性など、例えばそれと少なくとも90%の配列同一性を有する配列を含む、およびさらに以下を含む免疫グロブリン重鎖可変領域:
i.配列番号45に記載のアミノ酸配列を有するABR1、
ii.配列番号46に記載のアミノ酸配列を有するABR2、
iii.配列番号47に記載のアミノ酸配列を有するABR3、
ここでいずれの配列変化もABRの外側である。
【0035】
一実施形態において、本開示の抗uPARAP抗体は、マウスモノクローナル抗体5f4またはその機能的フラグメントもしくは変異体である。5f4抗体は、IgG1κである。
【0036】
試験は、5f4に関するエピトープがuPARAPのFN-II領域にあることを示した。Jurgensenら,2014では、野生型FN-IIドメインがuPARAPのそれと交換された場合、5f4抗体は野生型uPARAPに、およびマンノース受容体ファミリーの人工メンバーに結合できることを示している。野生型FN-IIドメインがマンノース受容体ファミリーの他のメンバー由来の同等のドメインと交換された場合、5f4は、それらの野生型形態でのマンノース受容体ファミリータンパク質の他のメンバーに結合できない、またはuPARAPと結合できない(Jurgensenら,2014,JBC 289(11):7935-47)。
【0037】
一実施形態において、本開示の抗uPARAP抗体は、以下からなる群から選択される5f4抗体またはその機能的フラグメントもしくは変異体に対応する抗体である:
a.抗体またはその抗原結合フラグメントであって、
i.配列番号11のアミノ酸配列またはそれと少なくとも70%の配列同一性、それと少なくとも80%の配列同一性など、例えばそれと少なくとも90%の配列同一性を有する配列を含む、またはそれからなる免疫グロブリン軽鎖可変領域、および/または
ii.配列番号15のアミノ酸配列またはそれと少なくとも70%の配列同一性、それと少なくとも80%の配列同一性など、例えばそれと少なくとも90%の配列同一性を有する配列を含む、またはそれからなる免疫グロブリン重鎖可変領域
を含む、抗体またはその抗原結合フラグメント、
b.a)の抗体と同じエピトープに結合する抗体またはその抗原結合フラグメント、
c.a)の抗体もしくはその抗原結合フラグメントのヒト化バーション、またはb)の抗体もしくはその抗原結合フラグメントのヒト化バージョン、
d.a)の抗体もしくはその抗原結合フラグメントのキメラバージョン、またはb)の抗体もしくはその抗原結合フラグメントのキメラバージョン、
e.抗体またはその抗原結合フラグメントであって、
i.配列番号12、13、14、16、17および18のアミノ酸配列の1つもしくは複数、または
ii.配列番号12、13および14のアミノ酸配列、および/または配列番号16、17および18のアミノ酸配列
を含む、抗体またはその抗原結合フラグメント、
f.抗体またはその抗原結合フラグメントであって、
i.配列番号48、49、50、51、52および53のアミノ酸配列の1つもしくは複数、または
ii.配列番号48、49および50のアミノ酸配列、および/または配列番号51、52および53のアミノ酸配列
を含む、抗体またはその抗原結合フラグメント。
【0038】
CDRの外側でいくつかの配列変化を可能にするために、本開示の抗体は 以下を含み得る:
a.配列番号11のアミノ酸配列またはそれと少なくとも70%の配列同一性、それと少なくとも80%の配列同一性など、例えばそれと少なくとも90%の配列同一性を有する配列を含む、およびさらに以下を含む免疫グロブリン軽鎖可変領域:
i.配列番号12に記載のアミノ酸配列を有するCDR1、
ii.配列番号13に記載のアミノ酸配列を有するCDR2、
iii.配列番号14に記載のアミノ酸配列を有するCDR3、および
b.配列番号15のアミノ酸配列またはそれと少なくとも70%の配列同一性、それと少なくとも80%の配列同一性など、例えばそれと少なくとも90%の配列同一性を有する配列を含む、およびさらに以下を含む免疫グロブリン重鎖可変領域:
i.配列番号16に記載のアミノ酸配列を有するCDR1、
ii.配列番号17に記載のアミノ酸配列を有するCDR2、
iii.配列番号18に記載のアミノ酸配列を有するCDR3、
ここでいずれの配列変化もCDRの外側である。
【0039】
あるいは、本開示の抗体は、以下を含み得る:
a.配列番号11のアミノ酸配列またはそれと少なくとも70%の配列同一性、それと少なくとも80%の配列同一性など、例えばそれと少なくとも90%の配列同一性を有する配列を含む、およびさらに以下を含む免疫グロブリン軽鎖可変領域:
i.配列番号48に記載のアミノ酸配列を有するABR1、
ii.配列番号49に記載のアミノ酸配列を有するABR2、
iii.配列番号49に記載のアミノ酸配列を有するABR3、および
b.配列番号15のアミノ酸配列またはそれと少なくとも70%の配列同一性、それと少なくとも80%の配列同一性など、例えばそれと少なくとも90%の配列同一性を有する配列を含む、およびさらに以下を含む免疫グロブリン重鎖可変領域:
i.配列番号51に記載のアミノ酸配列を有するABR1、
ii.配列番号52に記載のアミノ酸配列を有するABR2、
iii.配列番号53に記載のアミノ酸配列を有するABR3、
ここでいずれの配列変化もABRの外側である。
【0040】
一実施形態において、本開示の抗uPARAP抗体は、マウスモノクローナル抗体9b7(mAb 9b7)またはその機能的フラグメントもしくは変異体である。これまでの試験は、9b7抗体に関するエピトープがuPARAPの最もN末端の3つのドメインに位置することを示す。uPARAPの3つのN末端ドメイン(CysR、FN-IIおよびCTLD-1)からなる可溶性組換えタンパクがBIAcore装置において固定化されるとき、モノクローナル抗体9b7はこの構築物に結合する。
【0041】
一実施形態において、抗uPARAP抗体は以下からなる群から選択される:
a.抗体またはその抗原結合フラグメントであって、
i.配列番号19もしくは20のアミノ酸配列またはそれと少なくとも70%の配列同一性、それと少なくとも80%の配列同一性など、例えばそれと少なくとも90%の配列同一性を有する配列を含む、またはそれからなる免疫グロブリン軽鎖可変領域、および/または
ii.配列番号24もしくは25のアミノ酸配列またはそれと少なくとも70%の配列同一性、それと少なくとも80%の配列同一性など、例えばそれと少なくとも90%の配列同一性を有する配列を含む、またはそれからなる免疫グロブリン重鎖可変領域
を含む、抗体またはその抗原結合フラグメント、
b.a)の抗体と同じエピトープに結合する抗体またはその抗原結合フラグメント、
c.a)の抗体もしくはその抗原結合フラグメントのヒト化バーション、またはb)の抗体もしくはその抗原結合フラグメントのヒト化バージョン、
d.a)の抗体もしくはその抗原結合フラグメントのキメラバージョン、またはb)の抗体もしくはその抗原結合フラグメントのキメラバージョン、
e.抗体またはその抗原結合フラグメントであって、
i.配列番号21、22、23、26、27および28のアミノ酸配列の1つもしくは複数、または
ii.配列番号21、22および23のアミノ酸配列、および/または配列番号26、27および28のアミノ酸配列
を含む、抗体またはその抗原結合フラグメント、
f.抗体またはその抗原結合フラグメントであって、
i.配列番号54、55、56、57、58および59のアミノ酸配列の1つもしくは複数、または
ii.配列番号54、55および56のアミノ酸配列、および/または配列番号57、58および59のアミノ酸配列
を含む、抗体またはその抗原結合フラグメント。
【0042】
一実施形態において、本開示の抗体は以下を含み得る:
a.配列番号19もしくは20のアミノ酸配列またはそれと少なくとも70%の配列同一性、それと少なくとも80%の配列同一性など、例えばそれと少なくとも90%の配列同一性を有する配列を含む、およびさらに以下を含む免疫グロブリン軽鎖可変領域:
i.配列番号21に記載のアミノ酸配列を有するCDR1、
ii.配列番号22に記載のアミノ酸配列を有するCDR2、
iii.配列番号23に記載のアミノ酸配列を有するCDR3、および
b.配列番号24もしくは25のアミノ酸配列またはそれと少なくとも70%の配列同一性、それと少なくとも80%の配列同一性など、例えばそれと少なくとも90%の配列同一性を有する配列を含む、およびさらに以下を含む免疫グロブリン重鎖可変領域:
i.配列番号26に記載のアミノ酸配列を有するCDR1、
ii.配列番号27に記載のアミノ酸配列を有するCDR2、
iii.配列番号28に記載のアミノ酸配列を有するCDR3
いずれの配列変化もCDRの外側である。
【0043】
あるいは、本開示の抗体は、以下を含み得る:
a.配列番号19もしくは20のアミノ酸配列またはそれと少なくとも70%の配列同一性、それと少なくとも80%の配列同一性など、例えばそれと少なくとも90%の配列同一性を有する配列を含む、およびさらに以下を含む免疫グロブリン軽鎖可変領域:
i.配列番号54に記載のアミノ酸配列を有するABR1、
ii.配列番号55に記載のアミノ酸配列を有するABR2、
iii.配列番号56に記載のアミノ酸配列を有するABR3、および
b.配列番号24もしくは25のアミノ酸配列またはそれと少なくとも70%の配列同一性、それと少なくとも80%の配列同一性など、例えばそれと少なくとも90%の配列同一性を有する配列を含む、およびさらに以下を含む免疫グロブリン重鎖可変領域:
i.配列番号57に記載のアミノ酸配列を有するABR1、
ii.配列番号58に記載のアミノ酸配列を有するABR2、
iii.配列番号59に記載のアミノ酸配列を有するABR3
ここでいずれの配列変化もABRの外側である。
【0044】
「抗体」によって、実質的に完全な抗体分子、キメラ抗体、ヒト化抗体、ヒト抗体、単鎖抗体、二重特異性抗体、抗体重鎖、抗体軽鎖、抗体重鎖および/または軽鎖のホモ二量体とヘテロ二量体、および抗原結合フラグメントとその誘導体を包含する。
【0045】
「抗原結合フラグメント」によって、uPARAPに結合できる抗体の機能的フラグメントを意味する。
【0046】
一実施形態において、本開示による抗uPARAP抗体は、マウス抗体、キメラ抗体、ヒト抗体、ヒト化抗体、ヒト化抗原結合フラグメント、Fabフラグメント、Fab’フラグメント、F(ab’)2フラグメント、Fvフラグメント、scFvなどの単鎖抗体(SCA)、その重鎖および/または軽鎖の可変部分、またはFabミニ抗体から選択され、これらのフラグメントまたは修飾抗体は、マウス抗体、キメラ抗体、ヒト抗体またはヒト化抗体由来であってよい。
【0047】
一実施形態において、抗uPARAP抗体は、ヒト化されたもしくは完全にヒトのモノクローナル抗体またはその抗原結合フラグメントである。
【0048】
一実施形態において、本開示の抗uPARAP抗体は、組換え抗体である。
【0049】
本開示の抗uPARAP抗体は、IgG、IgM、IgD、IgE、IgAを含む任意の免疫グロブリンクラス、およびそのあらゆるサブクラスであってよい。IgGサブクラスはまた、当業者に周知であり、ヒトIgG1、IgG2、IgG3およびIgG4を含むが、これらに限定されるものではない。一実施形態において、抗体はIgGモノクローナル抗体である。一実施形態において、抗体はIgG1κである。
【0050】
一実施形態において、抗uPARAP抗体は、抗原結合フラグメントである。
【0051】
全抗体よりもむしろ抗体フラグメントを用いる利点は、数倍である。より小さいサイズのフラグメントは、良好な組織浸透などの薬理学的性質の改善をもたらし得る。さらに、抗原結合フラグメントは、大腸菌もしくは他の非哺乳動物宿主細胞中で発現させること、および大腸菌もしくは他の非哺乳動物宿主細胞から分泌させることが可能であり、したがって大量の前述のフラグメントを容易に生成することを可能にする。
【0052】
Fabは、軽鎖および重鎖の一部をもたらすように酵素パパインでの全抗体の消化によって、または他の特異的なタンパク質分解手段によって生成できる、抗体分子の一価抗原結合フラグメントを含むフラグメントである。
【0053】
F(ab’)2は、全抗体を酵素ペプシンで処置することによって、またはその後の還元なしに二価抗原結合フラグメントをもたらす他の特異的なタンパク質分解の手段によって得ることができる、抗体のフラグメントである。F(ab’)2は、2つのジスルフィド結合によってまとめられる2つのFabフラグメントの二量体である。
【0054】
Fvは、2本の鎖として発現される、軽鎖の可変領域と重鎖の可変領域とを含む遺伝子組換えフラグメントである。
【0055】
単鎖抗体(SCA)は、scFvを含んで、遺伝子組換えにより融合された、単鎖分子として適切なポリペプチドリンカーによって連結された、軽鎖の可変領域と重鎖の可変領域とを含む遺伝子組換え分子である。
【0056】
抗体および抗体フラグメントを生成する方法は、当技術分野で周知である。例えば、抗体は、抗体分子のin vivo産生の誘導、免疫グロブリンライブラリーのスクリーニング、または培養中の細胞株によるモノクローナル抗体の生成を用いるいくつかの方法の任意の1つによって生成できる。これらとしては、ハイブリドーマ技術、ヒトB細胞ハイブリドーマ技術、およびエプスタインバーウイルス(EBV)-ハイブリドーマ技術が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0057】
同様に、抗体フラグメントは、当技術分野で周知の方法を使用して得ることができる。例えば、本発明による抗体フラグメントは、種々の酵素での抗体のタンパク質加水分解によって、またはフラグメントをコードするDNAの大腸菌もしくは哺乳動物細胞(例えば、チャイニーズハムスター卵巣細胞培養または他のタンパク質発現系)での発現によって調製できる。あるいは、抗体フラグメントは従来の方法により全抗体のペプシンまたはパパイン消化によって得ることができる。
【0058】
ヒトの治療または診断のために、ヒト抗体またはヒト化抗体が好ましくは使用されることを当業者は理解されよう。非ヒト(例えばマウス)抗体のヒト化型は、非ヒト抗体由来の好ましくは最小部分を有する遺伝子組換えキメラ抗体または抗体フラグメントである。ヒト化抗体は、ヒト抗体(レシピエント抗体)相補性決定領域(CDR)が所望の機能を有するマウス、ラットもしくはウサギなどの非ヒト種(ドナー抗体)の相補性決定領域からの残基によって交換される抗体を含む。場合によっては、ヒト抗体のFvフレームワーク残基は、対応する非ヒト残基によって交換される。ヒト化抗体は、レシピエント抗体において、または移入CDRもしくはフレームワーク配列において見つからない残基を含むこともある。一般に、ヒト化抗体は、少なくとも1つの、一般的に2つの可変ドメインの実質的にすべてを含み、可変ドメイン中で相補性決定領域のすべてまたは実質的にすべてが非ヒト抗体のそれらに対応し、およびフレームワーク領域のすべてまたは実質的にすべてが関連するヒトコンセンサス配列のそれらに対応する。ヒト化抗体は任意選択で、一般的にヒト抗体由来の、Fc領域などの抗体定常領域の少なくとも一部分も含む。
【0059】
非ヒト抗体をヒト化する方法は、当技術分野で周知である。一般に、ヒト化抗体は、非ヒトである供給源からそれに導入された1または複数のアミノ酸残基を有する。これらの非ヒトアミノ酸残基は、しばしば移入残基と呼ばれ、一般的に移入される可変ドメインから得られる。ヒト化は基本的に、ヒトCDRを対応する非ヒトCDRで置換することによって記載のように行われてよい。したがって、そのようなヒト化抗体はキメラ抗体であり、実質的に一つに満たない無傷のヒト可変ドメインが対応する非ヒト種由来の配列によって置換されている。実際には、ヒト化抗体は一般的に、一部のCDR残基およびおそらく一部のフレームワーク残基が非ヒト抗体中の類似体部位からの残基によって置換される、ヒト抗体であり得る。
【0060】
ヒト抗体は、ファージディスプレイライブラリーを含む、当技術分野で知られている種々の手法を用いて特定もできる。
【0061】
好適な抗体が得られたならば、それらは、例えばELISAによって、抗原特異性について試験されてよい。
【0062】
活性薬剤
本開示の抗uPARAP ADCは、活性薬剤、すなわち、その表面にuPARAPを発現する細胞へ細胞内に送達され得る薬物を含む。活性薬剤は、例えば治療薬、細胞毒性薬、放射性同位体または検出可能な標識であり得る。好適な実施形態において、活性薬剤は治療薬である。
【0063】
一実施形態において、活性薬剤は化学療法薬である。化学療法薬の種類としては、アルキル化剤、アントラサイクリン系薬剤、代謝拮抗剤、抗微小管剤/抗有糸分裂剤、ヒストン脱アセチル化酵素阻害剤、キナーゼ阻害剤、ペプチド抗生物質、白金系抗悪性腫瘍薬、トポイソメラーゼ阻害薬および細胞毒性抗生物質が挙げられる。
【0064】
好適な実施形態において、活性薬剤は、uPARAPを発現する細胞を効果的に死滅させることができる細胞毒性剤である。
【0065】
一実施形態において、活性薬剤は、モノメチルアウリスタチンE(MMAE)、モノメチルアウリスタチンF(MMAF)、タキサン(例えば、パクリタキセルもしくはドセタキセル)、ビンカアルカロイド(例えばビンプラスチン、ビンクリスチン、ビンデシンもしくはビノレルビン)、コルヒチンまたはポドフィロトキシンなどの抗有糸分裂剤である。
【0066】
一実施形態において、細胞毒性薬はモノメチルアウリスタチンE(MMAE)である。その高い毒性のため、MMAEチューブリンの重合を阻止することによって細胞分裂を阻害するMMAEは、単剤化学療法薬として使用できない。しかし、抗CD30モノクローナル抗体(ブレンツキシマブベドチン、商標名Adcetris(商標))に連結されたMMAEの組み合わせは、細胞外液中で安定であり、カテプシンによって切断可能であり、および療法にとって安全であることが判明した。
【0067】
一実施形態において、細胞毒性薬はモノメチルアウリスタチンF(MMAF)である。MMAFは、抗微小管剤/抗有糸分裂剤でありMMAEのカルボキシル変種である。
【0068】
一実施形態において、細胞毒性薬は、ピロロベンゾジアゼピンまたはピロロベンゾジアゼピン二量体誘導体などのDNA架橋剤である。
【0069】
一実施形態において、細胞毒性薬は、デュオカルマイシンSAなどのDNAアルキル化剤である。
【0070】
さらなるアルキル化剤の例としては、チオテパおよびCYTOXAN(登録商標)シクロホスファミド;ブスルファン、インプロスルファンおよびピポスルファンなどのスルホン酸アルキル;ベンゾドーパ、カルボコン、メツレドーパおよびウレドーパなどのアジリジン;アルトレタミン、トリエチレンメラミン、トリエチレンホスホルアミド、およびトリメチロロメラミンを含むエチレンイミンとメチルアメラミン;アセトゲニン(特にブラタシンおよびブラタシノン);δ-9-テトラヒドロカナビノール(ドロナビノール、MARINOL(登録商標));β-ラパコン;ラパコール;コルヒチン;ベツリン酸;カンプトテシン(合成類似体トポテカン(HYCAMTIN(登録商標))、CPT-II(イリノテカン、CAMPTOSAR(登録商標))、アセチルカンプトテシン、scopolectinと9-アミノ基カンプトテシンを含む);ブリオスタチン;カリスタチン;CC-1065(そのアドゼレシン、カルゼレシンおよびビゼレシン合成類似体を含む);ポドフィロトキシン;ポドフィリン酸;テニポシド;クリプトフィシン(具体的にはクリプトフィシン1およびクリプトフィシン8);ドラスタチン;デュオカルマイシン(合成類似体、KW-2189およびCBl-TMlを含む);エリュテロビン;パンクラチスタチン;サルコジクチイン;スポンギスタチン;ナイトロジェンマスタード、例えばクロラムブシル、クロルナファジン、クロホスファミド、エストラムスチン、インホスファミド、メクロレタミン、メクロレタミンオキシドヒドロクロリド、メルファラン、ノベムビチン、フェネスエリン、プレドニムスチン、トロホスファミド、ウラシルマスタード;ニトロソウレア、例えばカルムスチン、クロロゾトシン、ホテムスチン、ロムスチン、ニムスチン、およびラニムスチン;エンジイン抗生物質などの抗生物質(例えば、カリケアマイシン、特にカリケアマイシンγIIとカリケアマイシンωII;ジネミシンAを含むジネミシン;エスペラミシン;ならびにネオカルジノスタチン発色団および関連した色素タンパク質エンジイン抗生物質発色団)、アクラシノマイシン、アクチノマイシン、オースラマイシン、アザセリン、ブレオマイシン、カクチノマイシン、カラビシン、カルミノマイシン、カルジノフィリン、クロモマイシン、ダクチノマイシン、ダウノルビシン、デトルビシン、6-ジアゾ-5-オキソ-L-ノルロイシン、ドキソルビシン(ADRIAMYCIN(登録商標)、モルホリノ-ドキソルビシン、シアノモルホリノ-ドキソルビシン、2-ピロリノ-ドキソルビシン、ドキソルビシンHClリポソーム注射(DOXIL(登録商標))とデオキシドキソルビシンを含む)、エピルビシン、エソルビシン、イダルビシン、マルセロマイシン、マイトマイシンCなどのマイトマイシン、ミコフェノール酸、ノガラマイシン、オリボマイシン、ペプロマイシン、ポトフィロマイシン、ピューロマイシン、ケラマイシン、ロドルビシン、ストレプトニグリン、ストレプトゾシン、ツベルシジン、ウベニメクス、ジノスタチン、ゾルビシン;代謝拮抗薬(例えばメトトレキサート、ゲムシタビン(GEMZAR(登録商標))、テガフール(UFTORAL(登録商標))、カペシタビン(XELODA(登録商標))、エポチロン、および5-フルオロウラシル(5-FU);デノプテリン、メトトレキサート、プテロプテリン、トリメトレキサートなどの葉酸類似体;フルダラビン、6-メルカプトプリン、チアミプリン、チオグアニンなどのプリン類似体;アンシタビン、アザシチジン、6-アザウリジン、カルモフール、シタラビン、ジデオキシウリジン、ドキシフルリジン、エノシタビン、フロクスウリジンなどのピリミジン類似体;カルステロン、プロピオン酸ドロモスタノロン、エピチオスタノール、メピチオスタン、テストラクトンなどのアンドロゲン;アミノグルテチミド、マイトテイン、トリロスタンなどの抗副腎剤;フォリン酸などの葉酸補充物;アセグラトン;アルドホスファミドグリコシド;アミノレブリン酸;エニルウラシル;アムサクリン;ベストラブシル;ビサントレン;エダトラキセート;デフォファミン;デメコルチン;ジアジクオン;エルフォルニチン;酢酸エリプチニウム;エトグルシド;硝酸ガリウム;ヒドロキシ尿素;レンチナン;ロニダイニン;マイタンシンおよびアンサミトシンなどのメイタンシノイド;ミトグアゾン;ミトキサントロン;モピダンモール;ニトラエリン;ペントスタチン;フェナメット;ピラルビシン;ロソキサントロン;2-エチルヒドラジド;プロカルバジン;PSK(登録商標)多糖類複合体;ラゾキサン;リゾキシン;シゾフィラン;スピロゲルマニウム;テヌアゾン酸;トリアジクオン;2,2’,2’’-トリクロロトリエチラミン;トリコテセン(特にT‐2毒素、ベラクリンA、ロリジンAとアングイジン);ウレタン;ビンデシン(ELDISINE(登録商標)、FILDESIN(登録商標));ダカルバジン;マンノムスチン;ミトブロニトール;ミトラクトール;ピポブロマン;ガシトシン;アラビノシド(「Ara-C」);チオテパ;タキソイド、例えば、パクリタキセル(TAXOL(登録商標))、パクリタキセルのアルブミン操作したナノ粒子製剤(ABRAXANE(商標))およびドキセタキセル(TAXOTERE(登録商標));クロランブシル;6-チオグアニン;メルカプトプリン;メトトレキサート;白金類似体、例えばシスプラチンおよびカルボプラチン;ビンブラスチン(VELBAN(登録商標));白金;エトポシド(VP-16);インホスファミド;ミトキサントロン;ビンクリスチン(ONCOVIN(登録商標));オキサリプラチン;ロイコボビン;ビノレルビン(NAVELBINE(登録商標));ノバントロン;エダトレキサート;ダウノマイシン;アミノプテリン;イバンドロナート;トポイソメラーゼ阻害剤RFS2000;ジフルオロメチルオルニチン(DMFO);レチノイン酸などのレチノイド;上記いずれかの薬学的に許容される塩、酸または誘導体;ならびにCHOP(シクロホスファミド、ドキソルビシン、ビンクリスチンとプレドニゾロンの併用療法の省略形)などの上記の2つ以上の組み合わせ、ならびにFOLFOX(5-FUおよびロイコボビンと組み合わせられるオキサリプラチン(ELOXATIN(登録商標))による治療計画の省略形)が挙げられる。
【0071】
抗ホルモン剤は、癌の増殖を促進できるホルモンの効果を調節する、減少させる、阻止する、または阻害するように作用し、全身療法、すなわち全身治療として投与されることが多い。抗ホルモン剤は、ホルモン自体であり得る。例としては抗エストロゲン薬と選択的エストロゲン受容体調節薬(SERM)、例えば、タモキシフェン(NOLVADEX(登録商標)タモキシフェンを含む)、ラロキシフェン(EVISTA(登録商標))、ドロロキシフェン、4-ヒドロキシタモキシフェン、トリオキシフェン、ケオキシフェン、LYl17018、オナプリストンとトレミフェン(FARESTON(登録商標));抗プロゲステロン;エストロジェン受容体ダウンレギュレータ(ERD);卵巣機能を抑制または停止する薬剤、例えば、黄体形成ホルモン放出ホルモン(LHRH)アゴニスト(例えば酢酸ロイプロリド(LUPRON(登録商標)とELIGARD(登録商標))、酢酸ゴセレリン、酢酸ブセレリン酢酸およびトリプトレリン;他の抗アンドロゲン、例えばフルタミド、ニルタミドおよびビカルタミド;ならびにアロマターゼ阻害剤(例えば、4(5)-イミダゾール、アミノグルテチミド、酢酸メゲストロール(MEGASE(登録商標))、エクセメスタン(AROMASIN(登録商標))、ホルメスタン、ファドロゾール、ボロゾール(RIVISOR(登録商標))、レトロゾール(FEMARA(登録商標))およびアナストロゾール(ARIMIDEX(登録商標))が挙げられる。加えて、ビスホスホネート、例えば、クロドロナート(例えば、BONEFOS(登録商標)またはOSTAC(登録商標))、エチドロネート(DIDROCAL(登録商標))、NE-58095、ゾレドロン酸/ゾレドロネート(ZOMETA(登録商標))、アレンドロネート(FOSAMAX(登録商標))、パミドロネート(AREDIA(登録商標))、チルドロネート(SKELID(登録商標))またはリセドロネート(ACTONEL(登録商標));ならびにトロキサシタビン(1,3-ジオキソランヌクレオシドシトシン類似体);siRNA、リボザイムとアンチセンスオリゴヌクレオチド、具体的には異常細胞増殖に関与するシグナル伝達経路における遺伝子発現を阻害するもの;ワクチン、例えば、THERATOPE(登録商標)ワクチンと遺伝子治療ワクチン、例えば、ALLOVECTIN(登録商標)ワクチン、LEUVECTIN(登録商標)ワクチン、およびVAXID(登録商標)ワクチン;トポイソメラーゼ1阻害剤(例えば、LURTOTECAN(登録商標));rmRH(例えば、ABARELIX(登録商標));ラパチニブジトシラート(ErbB-2およびEGFR二重チロシンキナーゼ小分子阻害剤(別名GW572016));セレコキシブなどのCOX-2阻害剤(CELEBREX(登録商標);4-(5-(4-メチルフェニル)-3-(トリフロロメチル)-lH-ピラゾル-1-イル)ベンゼンスルホンアミド;ならびに上記のいずれかの薬学的に許与される塩、酸または誘導体が挙げられる。
【0072】
一実施形態において、活性薬剤は、オリゴヌクレオチドなどのヌクレオチド、例えばsiRNAまたはmiRNAである。
【0073】
抗体分子当たり1または複数の単位の薬物が存在し得る。抗体当たりの薬物分子数間の比率は、薬物対抗体比(DAR)を示す。一実施形態において、DARは1と10の間であり、すなわち、抗体分子当たり1と10の間の薬物単位がある。一実施形態において、DARは2と8の間であり、4または5など、例えば3と6の間である。
【0074】
リンカー
抗体と活性薬剤間の安定な連結は、ADC技術の重要な側面である。リンカーは、例えば二硫化物、ヒドラゾンまたはペプチド(切断可能な)、またはチオエーテル(切断可能でない)を含む化学モチーフに基づいており、標的細胞への細胞毒性薬の分布および送達を制御できる。切断可能型および切断不可型リンカーは、前臨床試験および臨床試験で安全であることがわかっている。例えば、ブレンツキシマブベドチンは、酵素感受性の切断可能なリンカーを含み、合成抗腫瘍剤である、強力で毒性の高い微小管阻害薬モノメチルアウリスタチンE(MMAE)を細胞に送達する。
【0075】
別の承認されたADCであるトラスツズマブエムタンシンは、安定な切断不可リンカーにより接着される、メイタンシンの誘導体である微小管形成阻害剤メルタンシン(DM-1)、および抗体トラスツズマブ(Herceptin(商標),Genentech/Roche)の組み合わせである。
【0076】
切断可能型リンカーまたは切断不可型リンカーは、送達される薬物に特異性を与える。例えば、切断可能リンカーは、標的細胞中で酵素によって例えば切断され、活性薬剤、例えば細胞毒性薬の効果的な細胞内放出を引き起こす。対照的に、切断不可リンカーを含むADCは、薬物放出のための機構をもたず、薬物放出のために、標的抗体の分解などの機構に依存しなければならない。さらに、当業者が理解しているように、リンカー組成物は全体としてADCの溶解度および薬物動態特性などの重要な要素に影響を及ぼし得る。
【0077】
両型のリンカーについて、薬物放出は、細胞効果を得るために重要である。細胞膜を横切って自由に拡散できる薬物は、標的細胞から免れることができ、「バイスタンダーキリング」と呼ばれるプロセスにおいて、隣接する細胞、例えばuPARAPを発現する標的細胞の近傍の癌細胞を攻撃することもできる。
【0078】
好適な実施形態において、本明細書に開示するADC標的uPARAPは、抗uPARAP抗体と活性薬剤とを連結するリンカーを含む。リンカーは切断可能または切断不可であり得る。一実施形態において、リンカーは切断可能なリンカーであり、uPARAPを発現する細胞の内部で活性薬剤の細胞内放出を可能にする。
【0079】
切断可能な基としては、ジスルフィド結合、アミド結合、ペプチド結合の形の置換アミド結合、チオアミド結合、エステル結合、チオエステル結合、隣接するジオール結合、またはヘミアセタールが挙げられる。これらのまたは他の切断可能な結合は、酵素的に切断できる結合、例えばペプチド結合(ペプチダーゼによって切断される)、リン酸結合(ホスファターゼによって切断される)、核酸結合(エンドヌクレアーゼによって切断される)、および糖結合(グリコシダーゼによって切断される)を含み得る。
【0080】
リンカーは、例えばポリペプチドリンカー、ペプチドリンカーまたは核酸リンカーであり得る。
【0081】
特定の実施形態において、リンカーはペプチドリンカーである。ペプチド配列の選択は、複合体の成功にとってきわめて重大である。いくつかの実施形態において、リンカーは血清プロテアーゼに対し安定であるが、標的細胞中でリソソーム酵素によって切断される。非限定例において、リンカーは、プロタミン、プロタミンフラグメント、(Arg)9、ビオチン-アビジン、ビオチン-ストレプトアビジンおよびアンテナペディアペプチドから選択されるペプチドである。他の非ヌクレオチドリンカーは、約5~約100原子のアルキル鎖またはアリル鎖を含む。いくつかの実施形態において、リンカーはヌクレオチドリンカーである。
【0082】
一実施形態において、リンカーは、カテプシンで切断可能なペプチドを含有するリンカーなどの、酵素切断可能ペプチド含有リンカーである。カテプシンは、一群のリソソームプロテアーゼの1つであり、いくつかのカテプシン型の1つであり得る。
【0083】
一実施形態において、リンカーは、バリン-シトルリン(VC)またはバリン-アラニン(VA)などのジペプチドを含む、またはジペプチドからなり、アミド結合を介して他の構造要素にさらに接続されてよい。シトルリンカルボキシル官能基が置換アミドに変更されるバリン-シトルリンベースのリンカーは、リソソームカテプシンによって切断され得るのに対して、アラニンカルボキシル官能基が置換アミドに変更されるバリン-アラニンベースのリンカーは、他のカテプシンを含む他のリソソームプロテアーゼによって切断され得る。
【0084】
一実施形態において、本開示のADCは、スペーサーをさらに含む。スペーサーは例えば、リンカーおよび活性薬剤に接続できる。一実施形態において、スペーサーはパラアミノ安息香酸(PAB)である。
【0085】
一実施形態において、スペーサーは、PEG4スペーサーなどのポリエチレングリコールスペーサーである、またはそれを含む。
【0086】
一実施形態において、本開示のADCは、接着実体をさらに含む。接着実体は、例えば、抗体と切断可能リンカーを接続でき、この場合、接着実体は抗体アミノ酸の側鎖と、リンカー前駆体中の反応性接着基との間の反応生成物である。一実施形態において、この反応性接着基は、マレイミドとカプロン酸(MC)を含む、またはこれらからなり、この場合マレイミドは共役の間、好ましくはシステインチオールと反応する。他の実施形態において、接着基はN-ヒドロキシスクシンイミド基、アジド基もしくはアルキン基を含む、またはこれらからなる。
【0087】
一実施形態において、本開示のADCは、本明細書に開示される抗uPARAP抗体およびリンカー薬物複合体ベドチンを含む。ベドチンは、細胞毒性薬MMAE、スペーサー(パラアミノ安息香酸)、カテプシン切断可能リンカー(バリン-シトルリンジペプチド)およびカプロン酸とマレイミドからなる接着基を含む、リンカー-薬物複合体である。ベドチンは、MC-VC-PAB-MMAEである。ブレンツキシマブベドチン(商標名Adcetris(商標))は、ベドチンを含むFDA承認ADCの一例である。
【0088】
一実施形態において、本開示のADCは、本明細書に開示される抗uPARAP抗体と、VC-PAB-MMAFであるリンカー-スペーサー-毒素ユニットとを含む。
【0089】
一実施形態において、本開示のADCは、本明細書に開示される抗uPARAP抗体と、PEG4-VA-PBDであるリンカー-スペーサー-毒素ユニットとを含む。
【0090】
一実施形態において、本開示のADCは、本明細書に開示される抗uPARAP抗体と、PEG4-VC-デュオカルマイシンSAであるリンカー-スペーサー-毒素ユニットとを含む。
【0091】
一実施形態において、本開示のADCは、全体が参照により本明細書に組み込まれる、米国特許出願公開第2006/074008号に記載のリンカー-薬物複合体を含む。
【0092】
リンカー-薬物構築物は例えば、還元された鎖間または鎖内ジスルフィド架橋のチオールへのマレイミド化学によって抗uPARAP抗体に接着されてよい。
【0093】
治療用途
本明細書に記載のuPARAPに対して作られたADCは、活性薬剤、例えば治療薬または細胞毒性薬を、uPARAPを発現する細胞に送達するのに有用であり、したがってuPARAPの発現、特にuPARAPの過剰発現によって特徴づけられるさまざまな疾患および障害の治療に有用である。
【0094】
一実施形態において、本開示は、薬学的に許容される緩衝剤、希釈剤、担体、アジュバントまたは賦形剤とともに、本明細書に記載の有効量の抗uPARAP ADCを含む医薬組成物を提供する。
【0095】
医薬組成物は、十分に貯蔵安定性があり、ヒトおよび/または動物への投与に適しており、当技術分野で知られている方法で調製できる。例えば、医薬組成物は、例えばフリーズドライ、噴霧乾燥、噴霧冷却によって、または超臨界粒子形成からの粒子形成の使用により凍結乾燥されてよい。
【0096】
「薬学的に許容される」によって、抗uPARAP ADCの有効性を低下させない非毒性物質を意味する。そのような薬学的に許容される緩衝剤、担体または賦形剤は、当技術分野で周知である(それらの開示が参照により本明細書に組み込まれる、Remington’s Pharmaceutical Sciences,第18版,A.R Gennaro,編,Mack Publishing Company(1990)およびhandbook of Pharmaceutical Excipients,第3版,A. Kibbe,編,Pharmaceutical Press(2000)を参照されたい)。
【0097】
「緩衝剤」という用語は、pHを安定させる目的で酸-塩基混合物を含んでいる水溶液を意味することを意図する。薬学的に許容される緩衝剤は、当技術分野で周知である。
【0098】
「希釈剤」という用語は、医薬品中の薬剤を希釈する目的の水溶液または非水溶液を意味することを意図する。
【0099】
「アジュバント」という用語は、本発明の薬剤の生物学的効果を増加させるために、製剤に添加されるあらゆる化合物を意味することを意図する。アジュバントは、異なる陰イオンを有する亜鉛塩、銅塩または銀塩の1つまたは複数であってよく、例えば、異なるアシル組成のフッ化物、塩化物、臭化物、ヨウ化物、チオシアン酸塩、亜硫酸塩、水酸化物、リン酸塩、炭酸塩、乳酸塩、グリコール酸塩、クエン酸塩、ホウ酸塩、酒石酸塩、および酢酸塩であり得るが、これらに限定されるものではない。アジュバントはまた、カチオン性ポリマー(例えば、カチオン性セルロースエーテル、カチオン性セルロースエステル、脱アセチル化ヒアルロン酸、キトサン、カチオン性デンドリマー)、カチオン性合成ポリマー(例えばポリ(ビニルイミダゾール))、およびカチオン性ポリペプチド(例えば、ポリヒスチジン、ポリリジン、ポリアルギニン)、ならびにこれらのアミノ酸を含むペプチドであってもよい。
【0100】
賦形剤は、糖質、ポリマー、脂質およびミネラルの1つまたは複数であり得る。糖質の例としては、ラクトース、グルコース、ショ糖、マンニトールおよびシクロデキストリンが挙げられ、これらは例えば、凍結乾燥を容易にするために組成物に添加される。ポリマーの例としては、デンプン、セルロースエーテル、セルロースカルボキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、エチルヒドロキシエチルセルロース、アルギン酸塩、カラギーナン、ヒアルロン酸とその誘導体、ポリアクリル酸、ポリスルホン酸塩、ポリエチレングリコール/ポリエチレンオキシド、ポリエチレンオキシド/ポリプロピレンオキシドコポリマー、加水分解の異なる程度のポリビニルアルコール/ポリビニルアセテート、および異なる分子量のすべてのポリビニルピロリドンが挙げられ、これらは例えば、粘度調整のため、生体接着を達成するため、または化学的分解およびタンパク質分解から脂質を保護するため組成物に加えられる。脂質の例は、脂肪酸、リン脂質、モノグリセリド、ジグリセリドおよびトリグリセリド、セラミド、スフィンゴ脂質およびすべての異なるアシル鎖長および飽和度の糖脂質、卵レシチン、大豆レシチン、水素化卵レシチンおよび水素化大豆レシチンであり、これらはポリマーについての理由と同様の理由で組成物に添加される。ミネラルの例は、タルク、酸化マグネシウム、酸化亜鉛および酸化チタンであり、これらは液体の蓄積の減少または有利な色素特性などの利益を得るために、組成物に加えられる。
【0101】
本開示のADCは、その送達に適していることが当技術分野で知られている医薬組成物の任意の種類に製剤化されてよい。
【0102】
本開示のADCまたはADCを含む医薬組成物は、当業者に知られている任意の適切な経路を介して投与されてよい。このように、ありうる投与の経路としては、非経口(静脈、皮下、および筋肉内)、局所、経眼、経鼻、経肺、頬側、経口、腟内および経直腸が挙げられる。また、埋入物からの投与も可能である。
【0103】
好適な一実施形態において、医薬組成物は、非経口的に、例えば、静脈内に、脳室内に、関節内に、動脈内に、腹腔内に、くも膜下腔内に、脳室内で、胸骨内に、頭蓋内に、筋肉内に、もしくは皮下に投与され、または輸液技術によって投与されてよい。医薬組成物は、他の物質、例えば、溶液を血液と等張にするのに十分な塩またはグルコースを含有できる無菌水溶液の形態で便宜に使用される。水溶液は、必要に応じて適切に緩衝される必要がある。無菌条件下の適切な非経口製剤の調製は、当業者に周知の標準製薬技術によって、容易に達成される。
【0104】
非経口投与に適した製剤としては、抗酸化剤、緩衝剤、静菌薬、および製剤を対象とするレシピエントの血液と等張にする溶質を含み得る水性および非水性無菌注射溶液;ならびに懸濁剤および増粘剤を含んでよい水性および非水性無菌懸濁液が挙げられる。製剤は、単位用量用容器または複数回投与用容器、例えば密封されたアンプルおよびバイアルで提供されてよく、フリーズドライ(凍結乾燥)状態で貯蔵されてもよく、使用直前に、無菌液体担体、例えば注射用水の添加だけを必要とする。即時注射溶液および懸濁剤は、すでに記載された種類の無菌粉末、顆粒および錠剤から調製されてよい。
【0105】
一実施形態において、本開示のADCは、静脈内に投与される。
【0106】
一実施形態において、本開示のADCは、皮下に投与される。
【0107】
一実施形態において、本開示のADCは、頭蓋内に、または脳内に投与される。
【0108】
医薬組成物は、薬学的に有効な量で患者に投与されるであろう。本明細書で用いる場合、「治療有効量」または「有効量」または「治療効果のある」は、所与の病態および投与計画に対して治療効果を提供するその量を指す。これは、必要な添加物と希釈剤、すなわち担体または投与ビヒクルに関連して望ましい治療効果をもたらすために算出される活性物質の所定量である。さらに、それは宿主の活性、機能および応答における臨床的に重要な欠損を減少させる、最も好ましくは予防するために十分な量を意味することを意図する。あるいは、治療有効量は宿主において臨床的に重要な病態の改善を引き起こすのに十分である。当業者が理解するように、化合物の量はその比活性に応じて変化し得る。適切な投与量は、必要な希釈剤に関連して望ましい治療効果をもたらすために算出される活性組成物の所定量を含み得る。当技術分野で周知のように、治療有効量は、患者の特性、例えば、年齢、体重、性別、病態、合併症、他の疾患などに基づいて、熟練した医療従事者、または獣医学従事者によって決定されてよい。薬学的に有効な用量の投与は、個々の投与量単位、さもなければいくつかの少ない投与量単位の形態での単回投与によって、および特定の間隔での細分した投与量の複数回投与によっての両方で行われてよい。あるいは、投与量は長期間にわたる持続注入として提供されてよい。
【0109】
本明細書に記載のADC標的uPARAPは単独でまたは他の治療薬と組み合わせて投与され得ることを、当業者は理解する。例えば、本明細書に記載のuPARAPを標的にするADCは、さまざまな抗癌剤、例えば代謝拮抗剤、アルキル化薬、アントラサイクリン系抗生物質と他の細胞毒性抗生物質、ビンカアルカロイド、抗微小管剤/抗有糸分裂剤、ヒストン脱アセチル酵素阻害剤、キナーゼ阻害剤、ペプチド抗生物質、白金系抗悪性腫瘍薬、エトポシド、タキサン系、トポイソメラーゼ阻害薬、抗増殖性免疫抑制薬、コルチコステロイド、性ホルモンとホルモン拮抗薬、細胞毒性抗生物質および他の治療薬)と組み合わせて投与されてよい。
【0110】
一実施形態において、本開示のADCは、ADCの機能効率を増加させることができるさらなる試薬および/または治療薬、例えば、リソソーム膜透過性を増加させ、それによってリソソーム内部から細胞質への分子移行を容易にする、確立された薬物もしくは新規薬物、または血液脳関門の浸透性を増加させる薬物との組み合わせで投与される。
【0111】
一実施形態において、本開示は、本明細書に記載のuPARAP標的ADCを含むキットまたはそれを含む医薬組成物を提供する。キットは任意選択で、ADCを対象に投与するための手段および使用説明書をさらに含んでよい。
【0112】
一実施形態において、本開示は、対象中のuPARAPを発現細胞への活性薬剤の送達のための方法に関し、方法は、活性薬剤が前述の細胞に送達されるように、本明細書に記載のuPARAPを標的とするADC、またはuPARAPを標的とするADCを含む組成物を対象に投与することを含む。
【0113】
一実施形態において、本開示は、対象中のuPARAP発現細胞への活性薬剤の送達における使用のための、本明細書に記載のuPARAPを標的とするADC、または前述のuPARAPを標的とするADCを含む組成物に関し、方法は、活性薬剤が前述の細胞に送達されるように、本明細書に記載のuPARAPを標的とするADC、またはuPARAPを標的とするADCを含む組成物を対象に投与することを含む。
【0114】
一実施形態において、本開示は、対象におけるuPARAPを発現する細胞によって特徴づけられる疾患または障害の処置のための方法に関し、方法は、本明細書に記載のuPARAPを標的とするADCを対象に投与すること、またはuPARAPを標的とするADCを含む組成物を前述の対象に投与することを含む。
【0115】
一実施形態において、本開示は、uPARAPを発現する細胞によって特徴づけられる疾患または障害の処置における使用のための本明細書に記載のuPARAPを標的とするADC、または前述のuPARAPを標的とするADCを含む組成物に関する。
【0116】
一実施形態において、本開示は、in vivoまたはin vitroでuPARAPを発現する細胞の増殖を阻害するための方法に関し、方法は本明細書に記載のuPARAPを標的とするADC、またはuPARAPを標的とするADCを含む組成物を投与することを含む。増殖のこの阻害は、細胞死を含んでよく、または細胞死のない増殖阻害を含んでよい。
【0117】
特に好ましい実施形態において、uPARAP発現細胞は腫瘍細胞および/または腫瘍関連細胞であり、および本開示は対象における癌の治療の方法に関し、方法は前述の対象に本明細書に記載のuPARAPを標的とするADC、またはuPARAPを標的とするADCを含む組成物を投与することを含む。
【0118】
腫瘍関連の細胞としては、活性線維芽細胞、筋線維芽細胞、血管新生およびマクロファージ-単球系統の浸潤細胞、または他の白血球細胞型、ならびに腫瘍を囲む間質組織の細胞が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0119】
一実施形態において、本開示は、対象において腫瘍進行を阻害する方法に関し、方法は、uPARAPを標的とするADCを対象に投与すること、または本明細書に記載のuPARAPを標的とするADCを含む組成物を前述の対象に投与することを含む。腫瘍進行のこの阻害は、腫瘍の完全もしくは不完全な根絶を含んでよく、または細胞死のない増殖停止を含んでよい。
【0120】
一実施形態において、本開示は、対象において腫瘍の転移能力を阻害する、低下させる、または除去するための方法に関し、本明細書に記載のuPARAPを標的とするADCまたはuPARAPを標的とするADCを含む組成物を前述の対象に投与することを含む。
【0121】
一実施形態において、腫瘍細胞はuPARAPを発現する、または過剰発現する。
【0122】
一実施形態において、腫瘍関連細胞は、uPARAPを発現する、または過剰発現する。
【0123】
一実施形態において、本開示は、uPARAPを発現する細胞の細胞死を誘導する、および/またはその成長および/または増殖を阻害するための、本明細書に記載のuPARAPを標的にするADC、または本明細書に記載のuPARAPを標的にするADCを含む医薬組成物の有効量を個人に投与するステップを含む方法を提供する。
【0124】
治療は好ましくは、腫瘍細胞または腫瘍関連細胞などの、uPARAP発現細胞の細胞死を誘導しおよび/またはその成長および/または増殖を阻害する。
【0125】
一実施形態において、処置は寛解治療である。
【0126】
一実施形態において、処置は根治的治療である。
【0127】
一実施形態において、本開示は、腫瘍細胞または腫瘍関連細胞などの、uPARAPを発現する細胞の細胞死を誘導するおよび/またはその成長および/または増殖を阻害するための薬物の調製のための、本明細書に記載のuPARAPを標的とするADCを提供する。
【0128】
癌におけるuPARAPの発現および役割は、いくつかの研究グループによって調査されている;Melanderらによる総説(Melanderら,2015, Int J Oncol 47:1177-1188)およびEngelholmらによる論文(Engelholmら,2016,J.Pathol.238,120-133)を参照されたい。
【0129】
一実施形態において、癌は固形腫瘍であり、腫瘍細胞および/または腫瘍関連の細胞はuPARAPを発現する。
【0130】
一実施形態において、癌は固形腫瘍であり、腫瘍細胞はuPARAPを発現する。
【0131】
uPARAPの過剰発現によって特徴づけられる癌の例としては、骨肉腫を含む肉腫(Engelholmら,2016,J Pathol 238(1):120-33)ならびに他の肉腫、神経膠芽腫(Huijbersら,2010,PLoS One 5(3):e9808)、前立腺癌および前立腺癌からの骨転移(Kogianniら,2009, Eur J Cancer 45(4):685-93)、乳癌および特に「基底様」乳癌(Wienkeら,2007,Cancer Res 1;67(21): 10230-40)、および頭部癌と頸部癌(Sulekら, 2007, J Histochem Cytochem 55(4):347-53)が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0132】
一実施形態において、癌は肉腫(例えば骨肉腫、脂肪肉腫、粘液線維肉腫、隆起性皮膚線維肉腫(DFSP)および/または平滑筋肉腫(LMS))である。
【0133】
一実施形態において、癌は神経膠芽細胞腫である。
【0134】
一実施形態において、癌は固形腫瘍であり、腫瘍関連細胞はuPARAPを発現する。uPARAPが腫瘍関連の細胞によって発現されるとき、治療効果は、いわゆる「バイスタンダー」効果を介して、および/または間質細胞が媒介する腫瘍増殖と播種の刺激の低下および/または除去を介して媒介されると思われる。
【0135】
腫瘍関連細胞中のuPARAPの過剰発現によって特徴づけられる癌の例としては、乳癌(Schnackら,2002,Int J Cancer 10;98(5):656-64)、頭部癌と頸部癌(Sulekら,2007,J Histochem Cytochem 55(4):347-53)および多数の他の固形悪性腫瘍が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0136】
一実施形態において、癌は固形腫瘍でない。例えば、本開示のADCは、例えばuPARAP発現白血病の治療のために、例えば、マクロファージ-単球系統から用いることができる。
【0137】
他の実施形態において、uPARAPを発現する細胞によって特徴づけられる疾患または障害は、癌でない。
【0138】
uPARAPは、骨成長と恒常性に関与する(Madsenら,2013,PLoS One 5;8(8):e71261)。このように、一実施形態において、本開示のADCは、骨劣化によって特徴づけられる疾患の治療のために用いることができ、骨劣化は、骨粗鬆症などの非悪性細胞によって媒介される。
【0139】
コラーゲン蓄積でのその役割のため、uPARAPの役割は線維症でも示された(Madsenら,2012,J Pathol 227(1):94-105)。このように、一実施形態において、本開示のADCは、例えば腎臓、肺および肝臓の線維症の治療で使用できる。
【0140】
一実施形態において、本開示のADCは、アテローム動脈硬化症と慢性炎症を含む、マクロファージ関連疾患および障害の治療に使用できる。
【0141】
参考文献
Kabat,E.A.,Wu,T.T.,Bilofsky,H.,Reid-Miller,M.,Perry,H.(1983)Sequence of proteins of immunological interest. Bethesda: National Institute of Health.
Kabat,E.A.,Wu,T.T.,Perry,H.,Gottesman,K.and Foeller,C.(1991)Sequences of proteins of immunological interest. Fifth Edition.NIH Publication No.91-3242.
Wu,T.T.,Kabat,E.A.(2008)Pillars article:an analysis of the sequences of the variable regions of Bence Jones proteins and myeloma light chains and their implications for antibody complementarity.J.Exp. Med.132,211-250.J.Immunology 180, 7057-7096.
Dunbar,J.,Deane,C.M.(2016)ANARCI: antigen receptor numbering and receptor classification. Bioinformatics,32,298-300.
Lefranc MP, Pommie C, Ruiz M,Giudicelli V, Foulquier E, Truong L, Thouvenin-Contet V, Lefranc G.(2003) IMGT unique numbering for immunoglobulin and T cell receptor variable domains and Ig superfamily V-like domains.Dev Comp Immunol. 27,55-77.
Kunik V,Ashkenazi S,Ofran Y.(2012a) Paratome:an online tool for systematic identification of antigen-binding regions in antibodies based on sequence or structure.Nucleic Acids Res.40(Web Server issue):W521-4. doi: 10.1093/nar/gks480. Epub 2012 Jun 6.
Kunik V,Peters B,Ofran Y.(2012b) Structural consensus among antibodies defines the antigen binding site.PLoS Comput Biol.8(2):e1002388.
【0142】
実施例1:uPARAPのN末端領域に対して作られたADCのIn vitroおよびin vivoでの有効性
材料および方法
モノクローナル抗体(mAb)-vc-MMAE ADCの調製および評価
uPARAPに対するまたはトリニトロフェノール(TNP)に対するモノクローナル抗体(mAb)を、当技術分野で知られている確立された方法に従って、マウスの免疫後にハイブリドーマ技術を用いて生成し作製した。uPARAPに対するmAbの場合、免疫のための宿主マウスはuPARAPに関して遺伝子欠損であり、ヒト抗原およびマウス抗原の両方と反応する抗体をもたらした。ADCを、当技術分野でこれまでに記載されている、一般的に使用される結合方法によって調製した(Doroninaら,2003 Nature biotechnology 21(7):778-84;Franciscoら,2003.Blood 102(4):1458-65;Hamblettら,2004.Clinical cancer research 10(20):7063-70)。
【0143】
抗体を、5mg/mLの濃度で50mMのホウ酸ナトリウム、50mMのNaCl、pH8.0緩衝液中で10mMのDTTの存在下で37℃にて10分間のインキュベーションにより穏やかな還元にかけ、続いて30kDaのNMWL遠心濾過器を用いて1mMのEDTAを含む新鮮なPBS(pH7.4)に緩衝液を交換することでDTTを除去し、次いで濃度を2mg/mLに調整した。この後、直ちに、水を含まないDMSO中に溶解した、5~10倍モル過剰のマレイミドカプロイル-バリン-シトルリン-p-アミノベンゾイルオキシカルボニル-モノメチルアウリスタチンE(MC-VC-PAB-MMAE、すなわちベドチン)への結合を、10%v/vの最終DMSO含有量になるまで、37℃で2時間行った。得られたmAb-vc-MMAE ADCを、PD-10脱塩カラム上でゲル濾過によって精製した。得られたADCの平均薬物抗体比(DAR)を、λ=248nmとλ=280nmでの精製複合体試料の吸光度比に基づいて決定した。未修飾モノクローナル抗体は、0.43のA248nm/A280nm比を示し、MMAEのλ=248nmでのAMAXはmAb-vc-MMAE ADCの高いA248nm/A280nm比を引き起こし、これは、得られるADCのDARを反映することが示されている(Hamblettら,2004.Clinical cancer research 10(20):7063-70;Sandersonら,2005. Clinical Cancer Research 11:843-852)。
【0144】
細胞株
U937、THP-1およびHT1080細胞はすべてATCCから取得した。KNS42細胞は、Lara Perryman(Biotech Research and Innovation Centre (BRIC), University of Copenhagen)のご厚意で提供された。CHO-K1細胞は、Invitrogenから取得した。すべての細胞は、37℃、5%CO雰囲気下のインキュベータ中で、10%ウシ胎児血清と1%ペニシリン/ストレプトマイシンを補充した適切な培地中で維持した。
【0145】
複合体種のSDS-PAGE分析
還元SDS-PAGEは、40mMのDTTの存在下にて試料緩衝液中で3分間沸騰することによって還元した、レーン当たり5μgの総タンパク質を充填し、4~12%のNuPAGE Bis-Tris SDS-PAGEゲルを流すことにより行った。ゲルは、標準0.1%のクーマシーブルー染色を使用して染色した。カテプシンBリンカー切断アッセイのために、試料をメーカーの説明書に従って組換えヒト(rh)カテプシンBで処理し、25mMのMES緩衝液(pH5.0)中で20μgのADC(モノクローナル抗体成分)に対して100ngの活性化rhカテプシンBを使用して、37℃で終夜インキュベートした。
【0146】
モノクローナル抗体のuPARAP結合のELISAアッセイ
96ウェルELISAプレートを、各ウェル当たり25ngの、ヒトuPARAPの最初の3つのN末端ドメインを含む可溶性の切り詰め型uPARAPタンパク質と、モノクローナル抗体2h9に対する完全なエピトープとで被覆した。無処置モノクローナル抗体(2h9またはaTNP)、結合の還元手順(上記を参照されたい)にかけた同じモノクローナル抗体、またはADCである2h9-vc-MMAEあるいはaTNP-vc-MMAEを一次抗体として次いで使用し、続いてHRP結合ウサギ抗マウスIg二次抗体を使用した。最終的に、o-フェニレンジアミン二塩酸塩含有基質溶液を添加し、次いで1M HSOを加えて呈色反応を停止させた。プレートを、プレートリーダーを用いて、492nmで読み取った。
【0147】
ADCのin vitro細胞毒性-細胞生存率アッセイ
試験する細胞を、90μLの培地中で96ウェルプレート中に低密度(20~25%コンフルエンス、通常1ウェル当たり5~10×10細胞)で播種し、終夜インキュベートした。翌日、モノクローナル抗体2h9、モノクローナル抗体5f4または非標的対照モノクローナル抗体aTNPをベースにしたmAb-vc-MMAE複合体をPBS中の段階希釈(1:4)で調製し、各ウェルに10μLの量で添加し、最終的な最大ADC濃度は10μg/mLのモノクローナル抗体成分であった。細胞を72時間インキュベートし、その後CellTiter 96 AQueous One Solution Cell Proliferation Assay(MTS、Promega)を20μL添加し、色が形成されるように適切な時間インキュベートした(通常1時間)。プレートを、プレートリーダーを使用して、630nmでのバックグラウンド除去を用いて、490nmで次いで読み取った。
【0148】
ADCのin vitro細胞毒性-細胞周期解析
細胞周期解析は、Nucleocounter NC-3000システム(ChemoMetec Denmark)を使用して行い、各細胞のDNA含量に基づいて、細胞集団の細胞周期分布を解析するメーカーの標準プロトコルを用いた。細胞周期のSub-G1、G1、SまたはG2/M期の細胞の割合は、NucleoView NC-3000ソフトウェアを用いてヒストグラム解析から確立した。
【0149】
受容体競合およびリソソームプロテアーゼ阻害
リソソームプロテアーゼアッセイ、受容体枯渇アッセイ、およびリソソームプロテアーゼの阻害についてのアッセイのために、U937細胞を細胞生存率アッセイ(上記を参照されたい)のように播種した。受容体競合アッセイのために、1μg/mLモノクローナル抗体成分の一定の2h9-vc-MMAE濃度をすべてのウェルで保持し、未修飾競合モノクローナル抗体を、競合モノクローナル抗体8μg/mLの濃度で開始して希釈系列(1:2)で同時に添加した。細胞を次いで、72時間の細胞毒性細胞生存率アッセイ(上記を参照されたい)にかけた。リソソームプロテアーゼ阻害アッセイのために、U937細胞を20μMのE64Dプロテアーゼ阻害剤と2時間プレインキュベートし、その後72時間の細胞毒性細胞生存率アッセイ(上記を参照されたい)を開始した。
【0150】
動物実験
すべての動物実験は、The Danish Veterinary and Food Administrationからの法的承認の下で行われた。動物実験のために使用したすべての試薬および細胞株は、マウスウイルス、細菌、マイコプラズマおよび真菌の存在についての試験で陰性であった。動物は標準的ケアを受け、次の徴候のいずれかが表れれば、犠牲にした:10%を超える体重減少、目に見える苦痛もしくは疾病、食物摂取もしくは水分摂取もしくは排便の減弱、腫瘍付近での重度の炎症の徴候、または1000mmの体積を超えるもしくは動物の自由な動きを損なう腫瘍増殖。腫瘍増殖は、電子ノギスを使用して測定し、腫瘍容積は、式 体積=(L×W)/2(Lは腫瘍の最長寸法であり、Wは垂直寸法の幅である)を用いて算出した。
【0151】
マウスにおけるuPARAP陽性のU937異種移植腫瘍モデルの皮下注射による皮下処置
腫瘍確立のために、マウスの側腹部を剃毛し、1×10のU937細胞を皮下注射で投与し、次いで固形腫瘍の発症を観察するために綿密にモニターした。体積50~100mmの触知可能な腫瘍が形成されると、マウスは4つの処置群:2h9-vc-MMAE(N=10)、aTNP-vc-MMAE(N=9)、未修飾モノクローナル抗体2h9(N=5)またはPBS溶媒対照(N=5)の1つでの措置を開始した。すべての処置は、4日間間隔で、腫瘍領域での3mg/kgのモノクローナル抗体成分の合計4回の皮下投与として施した。注射は、動物飼育係のリスクを回避するために、短時間のイソフルラン麻酔下で行なった。処置の間、犠牲の時点に達するまで、腫瘍を2日毎に評価した。いかなる腫瘍負荷も完全に失ったマウスを、処置の終了後3ヵ月間、週に2回チェックした。
【0152】
マウスにおけるuPARAP陽性のU937異種移植腫瘍モデルの静脈内注射による皮下処置
腫瘍確立のために、マウスの側腹部を剃毛し、1×10のU937細胞を皮下注射で投与し、次いで固形腫瘍の発症を観察するために綿密にモニターした。体積50~100mmの触知可能な腫瘍が形成されると、マウスは4つの処置群:2h9-vc-MMAE(N=10)、aTNP-vc-MMAE(N=10)、未修飾モノクローナル抗体2h9(N=5)またはPBS溶媒対照(N=5)の1つでの措置を開始した。すべての処置は、4日間間隔で、マウスの尾静脈での5mg/kgのモノクローナル抗体成分の合計3回の静脈内投与として施した。処置の間、犠牲の時点に達するまで、腫瘍を2日毎に評価した。いかなる腫瘍負荷も完全に失ったマウスを、処置の終了後3ヵ月間、週に2回チェックした。
【0153】
統計
すべての試料は、三つ組で行なった。エラーバー:標準偏差。
【0154】
結果および結論
コラーゲン受容体uPARAPは、肉腫および末期神経膠芽腫を含む、特定の癌の腫瘍細胞において増加する。さらに、この受容体は、多くの場合、固形腫瘍を囲んでいる間質細胞で増加する。正常な成人において、この受容体は限定的な発現を示し、したがってこの受容体をADC療法の潜在的標的とする。
【0155】
この目的のために、我々は、uPARAP遺伝子欠損マウスの免疫後に得たモノクローナル抗体2h9を選択し、十分に確立された結合方法を用いてuPARAP特異的ADC(2h9-vc-MMAE)を調製した。標的抗体2h9は、結合手順に十分に耐えることが示され、親和性の損失はごくわずかであった。生じたADCは、in vitroでuPARAP陽性細胞において死滅させる、または増殖停止を誘導することに特異性が高いことを示し、U937細胞が試験した細胞株で最も感受性であった。uPARAPは構成的に再利用する受容体であり、そのカーゴをリソソーム区画に向ける。uPARAP依存性細胞毒性がE64Dによるリソソームカテプシンの阻害後に抑制されたので、U937細胞などの感受性が高い細胞におけるADC効率は、リンカー切断に完全に依存したことが判明した。したがって、結合される細胞毒に対する感受性の全体的な相違と相俟って、リンカー切断のためのリソソーム能力が、異なる細胞型間のADC感受性の相違に寄与することを我々は提案する。
【0156】
in vivo試験のために、CB17SCIDマウスでU937細胞を用いる増殖の早い皮下異種移植腫瘍モデルを利用した。このモデルを使用して、ADC 2h9-vc-MMAEが、in vivoで固形U937腫瘍を根絶することに高効率であると判明した。局所皮下投与による次の処置の後、5匹のマウスは、処置計画の完了後90日間、無腫瘍状態を維持し、したがって治癒率50%を占める。より重要なことに、静脈内投与による処置の後、100%治癒率をもたらす強力な効果が観察された。注目すべきことに、腫瘍のこの根絶は、処置されたマウスの定期的検査時に何ら明らかな有害反応を示すことなく観察された。重要なことに、2h9抗体はヒトuPARAPおよびマウスuPARAPの両方に対して反応性が高く、交差反応性はこの抗体を産生するとき、免疫賦与用にuPARAP欠損マウスを用いることによって可能になる。したがって、この異種移植片モデルでは、有益な抗腫瘍効果に加えて、宿主に対するいかなる潜在的な有害副作用も明らかにされるが、有害な影響の徴候は見られなかった。
【0157】
2h9抗体に関するエピトープは、uPARAPの最初の3つのN末端ドメイン内、より詳細にはCysRドメイン内またはCTLD-1内のいずれかに位置している。本明細書に示すin vitro試験は、uPARAPの最初の3つのN末端ドメインを標的にする抗uPARAP抗体を含む別のADC、すなわち5f4は、2h9抗体を含むADCと同じくらい効果的であることを示す。5f4抗体に関するエピトープは、uPARAPのFN-IIドメインにある。したがって、uPARAPの最初の3つのN末端ドメイン内のエピトープに対して作られる抗uPARAP抗体を含むADCは、ADCとして特に効果的であると仮定する。
【0158】
結論として、本明細書に示すデータは、発現パターンおよび分子機能に基づくADC癌療法において用途が広い標的として、コラーゲン受容体uPARAPの概念を極めて強力に支持する。さらに、これらのデータは、uPARAPの最初の3つのN末端ドメインに対して作られる抗体を含むADC、例えばADC 2h9-vc-MMAEがin vitroおよびin vivoでuPARAP発現細胞を標的とするために極めて効果的であることを示している。
【0159】
実施例2:MMAEベースADCのin vitro有効性
実施例1のADCに加えて、以下のMMAE ADC:9b7-vc-MMAEおよび11c9-vc-MMAEを生成した。
【0160】
モノクローナル抗体2h9、モノクローナル抗体5f4およびモノクローナル抗体9b7はuPARAPの3つのN末端ドメイン内のエピトープに対して作られ、モノクローナル抗体11c9はuPARAPのN末端の3つのドメインの外側のエピトープに対して作られる抗uPARAP抗体である。
【0161】
U937細胞を用いるin vitro細胞生存率アッセイを、これらのすべてのADCを用いて、実施例1に記載のように行なった。すべてのADCは、全体的な細胞生存率において特異的な減少を引き起こすが、2h9-vc-MMAE、5f4-vc-MMAEおよび9b7-vc-MMAEに対する細胞感受性は11c9-vc-MMAEに対する感受性よりもかなり高い(図14)。
【0162】
したがって、本発明者らは、uPARAPの3つの最もN末端ドメイン内のエピトープに結合できる抗uPARAP抗体を含むADCが極めて効果的なADCであると結論づける。
【0163】
実施例3:異なるリンカー、スペーサーおよび毒素を含むADCのin vitro有効性
uPARAPのN末端部を標的にするADC型において異なる毒素を使用できる。抗体成分としてモノクローナル抗体2h9を有するADCを、VC-PAB-MMAEの代わりに以下のリンカー-細胞毒ユニットを用いて上述のように調製した:
-VC-PAB-MMAF(MMAFは、MMAEのカルボキシル変種であるモノメチルアウリスタチンFである)、
-PEG4-va-PBD(PEG4はポリエチレングリコールスペーサーを指し、vaはバリン-アラニンであり、PBDはピロロベンゾジアゼピン二量体を指す)、
-PEG4-vc-デュオカルマイシンSA(PEG4はポリエチレングリコールスペーサーを指し、vcはバリン-シトルリンである)。
【0164】
結果として生じるADC(それぞれ、2h9-vc-MMAF、2h9-va-PBDおよび2h9-vc-DuocSAと呼ぶ)を、U937細胞によるin vitro細胞生存率アッセイに用い、上記のように行なった。U937細胞は、2h9-vc-MMAFに対して非常に強い感受性を、2h9-va-PBDに対してより穏やかな感受性を示し、2h9-vc-DuocSAに対しては低いが測定可能な感受性を示した。結果を図15および16に示す。
【0165】
実施例4:ヒト神経膠芽腫移植片細胞に対するADCのin vitro有効性
ADC 2h9-vc-MMAEおよび2h9-vc-MMAFを、ヒト神経膠芽腫移植片細胞を特異的に死滅させるその能力について、実施例1に記載のように、in vitro細胞生存率アッセイにより試験した。神経膠芽腫移植片細胞は、例えば、Stabergら,2017,Cell Oncol.40:21-32に記載されている。これらの細胞は、ADC 2h9-vc-MMAEならびにADC 2h9-vc-MMAFの両方に対する極めて強い、特異的な感受性を示し、したがってヒト神経膠芽腫細胞に対抗することにおけるこれらのADCの高い有効性を示す。結果を図17に示す。
【0166】
実施例5:組換え抗体
[配列番号1](uPARAPに対するモノクローナル抗体2h9の軽鎖)および[配列番号5](同じ抗体の重鎖)を含み、合成DNAによってコードされるタンパク質生成物を、CHO細胞で発現させた。結果として生じた組換え抗体生成物を精製し、ハイブリドーマ細胞培養によって生成されたモノクローナル抗体2h9と同じ方法でuPARAPを特異的に認識することをウエスタンブロッティングによって示した(図18)。
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