(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022064923
(43)【公開日】2022-04-26
(54)【発明の名称】癌を治療するための方法および組成物
(51)【国際特許分類】
A61K 31/429 20060101AFI20220419BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20220419BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20220419BHJP
A61K 31/495 20060101ALI20220419BHJP
A61K 31/404 20060101ALI20220419BHJP
A61K 31/5377 20060101ALI20220419BHJP
C07D 513/04 20060101ALN20220419BHJP
C07D 295/155 20060101ALN20220419BHJP
C07D 471/04 20060101ALN20220419BHJP
C07D 403/14 20060101ALN20220419BHJP
【FI】
A61K31/429
A61P35/00
A61P43/00 121
A61K31/495
A61K31/404
A61K31/5377
C07D513/04 331
C07D295/155
C07D471/04 104Z
C07D403/14
【審査請求】有
【請求項の数】7
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2022006978
(22)【出願日】2022-01-20
(62)【分割の表示】P 2019503470の分割
【原出願日】2017-07-28
(31)【優先権主張番号】62/367,832
(32)【優先日】2016-07-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】500469235
【氏名又は名称】チルドレンズ ホスピタル メディカル センター
(71)【出願人】
【識別番号】519017708
【氏名又は名称】深澤 拓也
(74)【代理人】
【識別番号】100104411
【弁理士】
【氏名又は名称】矢口 太郎
(72)【発明者】
【氏名】深澤 拓也
(72)【発明者】
【氏名】ウィトセット、ジェフリー、エー.
(72)【発明者】
【氏名】前田 豊
(57)【要約】 (修正有)
【課題】ミッドカインを発現する悪性胸膜中皮腫を治療するための方法で使用する医薬組成物を提供する。
【解決手段】下記構造を有するイミダゾチアゾール誘導体を含有する医薬組成物による。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ミッドカインを発現する悪性中皮腫および/または小細胞肺癌を治療する方法であって、それを必要とする個体に、有効量の、式(I)の化合物および薬学的担体を含む薬学的組成物を投与するステップを含み、式(I)が、
【化1】
またはその薬学的に許容される塩であり、
式中、
R
1は、水素、-OCH
3、-CH
3、-CF
3またはハロゲンであり、
R
2は、水素または塩素であり、
R
3は、水素、塩素または-CF
3であり、
R
4は、
【化2】
である、方法。
【請求項2】
R1が、水素またはハロゲンであり、
R2が、水素または塩素であり、
R3が、水素または塩素であり、R1が水素である場合、R2およびR3は塩素であり、R2およびR3が塩素である場合、R1は水素である、請求項1に記載の薬学的組成物。
【請求項3】
R1が、水素、-OCH3およびハロゲンから選択され、R2およびR3が、水素である、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
R1が、フッ素である、請求項1~3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
式(I)が、以下からなる群から選択される、請求項1に記載の方法。
【化3】
【請求項6】
式(I)が、以下である、請求項1に記載の方法。
【化4】
【請求項7】
前記式(I)が、以下である、請求項1に記載の方法。
【化5】
【請求項8】
前記ステップが、前記個体に治療有効量のBCL-2阻害剤を投与することを含む、請求項1~7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記BCL-2阻害剤が、ABT-263である、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
対象が、哺乳動物である、請求項1~9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
対象が、ヒトである、請求項1~10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
ミッドカインを発現する悪性中皮腫および/または小細胞肺癌を治療する方法であって、それを必要とする個体に、有効量の薬学的組成物を投与するステップを含み、前記薬学的組成物が、
【化6】
から選択される化合物、その薬学的に許容される塩、およびこれらの組み合わせと、薬学的担体と、を含む、方法。
【請求項13】
前記ステップが、前記個体に治療有効量のBCL-2阻害剤を投与することを含む、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記BCL-2阻害剤が、ABT-263である、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
対象が、哺乳動物である、請求項12に記載の方法。
【請求項16】
対象が、ヒトである、請求項12に記載の方法。
【請求項17】
a)請求項1または請求項12から選択される化合物もしくはその化合物の薬学的に許容される塩、またはこれらの組み合わせと、
b)BCL-2阻害剤と、
c)薬学的に許容される賦形剤と、を含む、組成物。
【請求項18】
前記BCL-2阻害剤が、ABT-263である、請求項17に記載の組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
この出願は、「Role of Midkine Inhibitors in Malignant Pleural Mesothelioma」と題された、2016年7月28日に出願された米国仮特許出願第62/367,832号の利益を主張するものであり、全ての目的のためにその全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【背景技術】
【0002】
悪性胸膜中皮腫は、間葉起源の侵襲性腫瘍であり、アスベストへの広範な曝露の結果として世界中で増加している。診断時からの中皮腫患者の生存期間中央値は1~2年の範囲である。死亡率は、少なくとも2020年まで増加すると予想されており、これは主にこの疾患の長い潜伏期(30~50年)によるものである。その発症機序および病因の理解のかなりの進歩にもかかわらず、悪性中皮腫は、癌治療の標準的な様式にほとんど応答しないままである。したがって、中皮腫のための新しい治療選択肢が緊急に必要とされている。
【発明の概要】
【0003】
本明細書に提供される実施形態は、ミッドカインを発現する中皮腫および/または小細胞肺癌を治療するための方法および組成物に関する。
【図面の簡単な説明】
【0004】
【
図1】ミッドカインは、ヒト悪性肺中皮腫において通常発現する。A.示された細胞におけるMDKのイムノブロット分析。B.外科的腫瘍切除を受けた40人の患者の原発性肺腺癌試料、40人の患者の肺扁平上皮細胞肺癌試料、および22人の悪性肺中皮腫におけるMDK発現。パーセント値は括弧で示している。
【
図2】iMDKは、MDKが発現する悪性肺中皮腫細胞の細胞生存率を抑制した。iMDKによる用量依存性増殖阻害を、MDK陽性のH2052、MSTO-211H、H2452およびH28中皮腫細胞において処理の48時間後に観察した。細胞生存率をトリパンブルー排除アッセイによって評価した。統計的有意性を、p<0.01(*)と定義した。
【
図3】iMDKは、悪性肺中皮腫細胞のコロニー形成を抑制した。iMDKで処理したMSTO-211H細胞のコロニー形成。処理の14日後、細胞を固定し、クリスタルバイオレットで染色した。三重で行った実験の代表的な画像を示す。
【
図4】iMDKは、悪性肺中皮腫細胞のアポトーシスを誘導した。細胞を示された濃度のiMDKで48時間処理し、次いで製造者のプロトコールに従ってDeadEnd比色分析TUNELシステム(Promega、Madison、WI)を使用して、TUNEL染色を行ってアポトーシスを検出した。統計的有意性を、p<0.01(*)と定義した。
【
図5】ABT263は、MSTO-211H中皮腫細胞におけるiMDK媒介性の細胞増殖の抑制を増強した。ABT263は、48時間の処理後のMSTO-211H細胞において増殖阻害を増強した。
【
図6】iMDKは、異種移植マウスモデルにおいて悪性胸膜中皮腫の増殖を効果的に減少させた。MSTO-211H細胞由来の腫瘍の体積は、異種移植マウスモデルにおいて、対照(DMSO)と比較して、iMDK(9mg/kg、腹腔内)およびiMDK(5mg/kg、腹腔内)での処理後に有意に減少した。各群において8匹のマウスを使用した。腫瘍増殖は、平均腫瘍体積として表され、バーはSDを表す。統計的有意性を、p<0.05(#)と定義した。
【
図7】タンパク質発現に対する化合物5の活性。1μMの化合物5が、タンパク質発現を阻害する。
【
図8】タンパク質発現に対する化合物9の活性。1μMの化合物9がタンパク質発現を阻害する。
【
図9】タンパク質発現に対する化合物8の活性。1μMの化合物8がタンパク質発現を阻害する。
【
図10】タンパク質発現に対する化合物6の活性。1μMの化合物6がタンパク質発現を阻害する。
【
図11】タンパク質発現に対する化合物1の活性。1μMの化合物1がタンパク質発現を阻害する。
【
図12】タンパク質発現に対する化合物10の活性。1μMの化合物10がタンパク質発現を阻害する。
【
図13】イムノブロット分析によるMPM細胞およびNCSLC細胞におけるMDK発現の検出。成長阻害は、H441肺腺癌細胞において、MDKノックダウンによって増加した。MDKは、HEK293細胞、H441肺腺癌細胞およびH520ヒト肺扁平上皮癌細胞で検出されたが、NHLF(正常ヒト肺線維芽細胞)細胞を含む他の種類の細胞では検出されなかった。MDKおよびμアクチンのタンパク質発現を、方法に記載されている通り、イムノブロットによって確認した。A.MDKは、H441細胞において、2つの異なるMDK siRNA(MDK siRNA1およびMDK siRNA2)によって抑制された。タンパク質の発現を、Aに記載されている通り、イムノブロットによって確認した。B.MDK遺伝子サイレンシング後のH441細胞における増殖阻害は有意に増加した。方法に記載されている通り、トリパンブルー排除アッセイによって細胞生存率を評価した。統計的有意性を、p<0.01(*)と定義した。
【
図14】iMDK(#3)およびその誘導体(A6、D9およびE6)は、MSTO211H中皮腫細胞の増殖を阻害する。MSTO211H中皮腫細胞を、示された異なる最終濃度のiMDK(#3)またはiMDK誘導体(A6、D9またはE6)で処理した。処理の48時間後、Countess II(Themo Fisher Scientific)を使用して細胞数を計測した。iMDKおよびiMDK誘導体は、MSTO211H細胞の増殖を用量依存的に有意に阻害した。*、p<0.05(スチューデントt検定;3重試料)を、DMSO対照(0μM)と比較して有意であると考えた。
【
図15】iMDK(#3)およびその誘導体(F5、F6およびF7)は、MSTO211H中皮腫細胞の増殖を阻害する。MSTO211H中皮腫細胞を、示された異なる最終濃度のiMDK(#3)またはiMDK誘導体(F5、F6またはF7)で処理した。処理の48時間後、Countess II(Themo Fisher Scientific)を使用して細胞数を計測した。iMDKおよびiMDK誘導体は、MSTO211H細胞の増殖を用量依存的に有意に阻害した。*、p<0.05(スチューデントt検定;3重試料)を、DMSO対照(0μM)と比較して有意であると考えた。
【
図16】iMDK(#3)およびその誘導体(A6、D9およびE6)は、MESO4中皮腫細胞の増殖を阻害する。MESO4中皮腫細胞を、示された異なる最終濃度のiMDK(#3)またはiMDK誘導体(A6、D9またはE6)で処理した。処理の48時間後、Countess II(Themo Fisher Scientific)を使用して細胞数を計測した。iMDKおよびiMDK誘導体は、MESO4細胞の増殖を用量依存的に有意に阻害した。*、p<0.05(スチューデントt検定;3重試料)を、DMSO対照(0μM)と比較して有意であると考えた。
【
図17】iMDK(#3)およびその誘導体(F5、F6およびF7)は、MSTO211H中皮腫細胞の増殖を阻害する。MESO4中皮腫細胞を、示された異なる最終濃度のiMDK(#3)またはiMDK誘導体(F5、F6またはF7)で処理した。処理の48時間後、Countess II(Themo Fisher Scientific)を使用して細胞数を計測した。iMDKおよびiMDK誘導体は、MESO4細胞の増殖を用量依存的に有意に阻害した。*、p<0.05(スチューデントt検定;3重試料)を、DMSO対照(0μM)と比較して有意であると考えた。
【
図18】化合物#2(F6としても知られる)、#3(iMDKとしても知られる)、#5、#7および#8もまた、H441肺腺癌細胞において内在性ミッドカイン発現を抑制した。A.H441肺腺癌細胞を、iMDKおよび関連化合物を用いて最終濃度10μMで処理した。処理の24時間後、細胞を採取し、ウェスタンブロッティングアッセイを使用してタンパク質発現を評価した。これらの化合物は中皮腫細胞で発現されるミッドカインの発現も同様に阻害する可能性があり、これらの化合物が中皮腫の治療に使用できることを示唆している。B.化合物#2(F6としても知られる)、#3(iMDKとしても知られる)、#5、#7および#8の構造が示されている。C.処理(10μM)して3日後の293細胞のWright-Giemsa染色は、化合物#2(F6としても知られる)、#3(iMDKとしても知られる)、#5、#7および#8が、H441細胞(ここには示されていない)および293細胞(示されている)の細胞生存率を阻害することを示している。DMSOを対照として使用した。
【
図19】H441細胞毒性があることが分かった化合物。これらの化合物は、中皮腫細胞毒性もある可能性が高い。
【発明を実施するための形態】
【0005】
本明細書および添付の特許請求の範囲において使用する場合、単数形「a」、「and」、および「the」は、その内容について別段の明確な指示がない限り、複数の指示対象を含む。したがって、例えば、「方法」への言及は複数のそのような方法を含み、「用量」への言及は、当業者に知られている1回分以上の用量およびその等価物などへの言及を含む。
【0006】
「約」もしくは「およそ」という用語は、当業者による決定にしたがって、例えば、測定システムの制限の、その値がどのように測定され、または、決定されるかに依存する、特定の値に対して許容できる誤差範囲内にあることを意味する。例えば、「約」は、技術分野におけるプラクティス毎に1以上の標準偏差内であることを意味し得る。あるいは、「約」は、与えられた値の20%まで、または10%まで、または5%まで、または1%までの範囲であることを意味し得る。あるいは、特に生物系または生物学的プロセスに関して、この用語は、ある値の10倍以内、好ましくは5倍以内、より好ましくは2倍以内であることを意味し得る。特定の値が本出願および特許請求の範囲に記載されている場合、特に明記しない限り、特定の値に対する許容可能な誤差範囲内を意味する「約」という用語を想定すべきである。
【0007】
本明細書で使用する場合、「投与単位形態」は、治療される対象の1回投与量として適している物理的に別個の単位を指しており、各単位は、必要とされる薬学的担体と関連して所望の治療効果を生じるように計算された所定量の活性化合物を含有する。好ましい実施形態の投与単位形態の仕様は、活性化合物の独特の特徴および達成すべき特定の治療効果、ならびにそのような活性化合物を個体の治療のために配合する技術に固有の制限によって決定され、かつ直接依存する。
【0008】
「個体」、「宿主」、「対象」、および「患者」という用語は、交換可能に使用されて、治療、観察および/または実験の対象である動物を指す。「動物」には、魚類、甲殻類、爬虫類、鳥類、および特に哺乳動物などの脊椎動物および無脊椎動物が含まれる。「哺乳動物」には、マウス、ラット、ウサギ、モルモット、イヌ、ネコ、ヒツジ、ヤギ、ウシ、ウマ、霊長類、例えばサル、チンパンジー、類人猿、特にヒトが含まれるが、これらに限定されない。
【0009】
本明細書で使用する場合、用語「薬学的に許容される担体」は、薬学的投与と適合性のある、ありとあらゆる溶媒、分散媒、コーティング、抗菌および抗真菌剤、等張剤ならびに吸収遅延剤などを含むことが意図されている。薬学的に許容される担体には、この分野で一般的に使用される広範囲の既知の希釈剤(すなわち、溶媒)、充填剤、増量剤、結合剤、懸濁剤、崩壊剤、界面活性剤、滑沢剤、賦形剤、湿潤剤などが含まれる。これらの担体は、薬学的製剤の形態に応じて単独でまたは組み合わせて使用してもよく、本明細書で定義される「薬学的に許容される賦形剤」をさらに含んでもよい。
【0010】
本明細書で使用する場合、「薬学的に許容される賦形剤」は、薬学的製剤に添加される有効成分以外の任意の他の成分を意味し、強力な有効成分を含有する製剤を充填することができ(したがって、しばしば「充填剤(bulking agent)」、「充填剤(filler)」、または「希釈剤」と呼ばれ)、製剤を製造する際に薬物の便利で正確な分配を可能にする。賦形剤は、製造を容易にし、安定性を増強し、放出を制御し、製品特性を増強し、バイオアベイラビリティ、薬物の吸収もしくは溶解性、または他の薬物動態学的考察を向上させ、患者の受容性を高めるなどのために添加されてもよい。薬学的賦形剤には、例えば、担体、充填剤、結合剤、崩壊剤、滑沢剤、流動促進剤、着色剤、防腐剤、懸濁剤、分散剤、フィルム形成剤、緩衝剤、pH調整剤、防腐剤などが含まれる。適切な賦形剤の選択はまた、投与経路および剤形、ならびに有効成分および他の因子に依存し、当業者には容易に理解されるであろう。
【0011】
本明細書で使用する場合、用語「治療有効量」は、有意な患者の利益、例えば慢性状態の治癒もしくはそのような状態の治癒の速度の増加、または異常な状態の低減を示すのに十分な、薬学的組成物または方法の各有効成分の総量を意味する。これは治療的処置および予防的処置の両方を含む。したがって、化合物は、疾患のかなり初期の段階で、または早期発症の前に、または有意な進行の後に使用することができる。単独で投与される個々の有効成分という用語が適用される場合、この用語は、その成分のみを指す。組み合わせという用語が適用される場合、この用語は、組み合わせて、連続的に、または同時に投与されようと、治療効果をもたらす有効成分の組み合わせた量を指す。
【0012】
ミッドカイン(MDK)は、肺癌を含む多くの悪性腫瘍で高度に発現されるヘパリン結合性増殖因子である。本発明者らは以前に、MDK阻害剤、iMDKが、正常細胞に害を与えることなく、MDKを発現する非小細胞肺癌を抑制することを報告した。重要なことに、iMDKは、PI3キナーゼ/Akt経路を阻害し、MDKを発現する非小細胞肺癌細胞においてアポトーシスを誘導する。本研究では、本発明者らは、インビトロおよびインビボの両方において、悪性中皮腫に対するiMDKの抗腫瘍効果を調べた。処理の48時間後、iMDKは、MDKを発現する悪性中皮腫細胞の細胞増殖を用量依存的に阻害した。iMDKはまた、MSTO-211H中皮腫細胞のコロニー形成を抑制した。TUNEL陽性細胞は、iMDK処理の48時間後に、MSTO-211H細胞において用量依存的に有意に増加し、iMDKによる中皮腫細胞におけるアポトーシスの誘導を確認した。iMDKとBCL-2阻害剤ABT-263の併用治療は、MSTO-211H中皮腫細胞において、各薬物単独よりも効果的である。さらに、iMDKの全身投与は、インビボでの中皮腫異種移植腫瘍における腫瘍増殖を有意に阻害した。iMDKを用いたMDKの阻害は、MDKによって引き起こされる悪性中皮腫の治療のための潜在的な治療アプローチを提供する。
【0013】
内因性MDK発現を抑制する「iMDK」を含む低分子量化合物が本明細書に開示される。一態様では、ミッドカインを発現する悪性中皮腫および/または小細胞肺癌を治療する方法が開示される。本方法は、それを必要とする個体に、有効量の、式(I)の化合物および薬学的担体を含む薬学的組成物を投与するステップを含んでもよく、式(I)が、
【化1】
またはその薬学的に許容される塩であってもよく、
式中、
R
1は、水素、-OCH
3、-CH
3、-CF
3またはハロゲンであってもよく、
R
2は、水素または塩素であってもよく、
R
3は、水素、塩素または-CF
3であってもよく、
R
4は、
【化2】
である。
【0014】
一態様では、
R1が、水素またはハロゲンであってもよく、
R2が、水素または塩素であってもよく、
R3が、水素または塩素であってもよく、R1が水素である場合、R2およびR3は塩素であり、R2およびR3が塩素である場合、R1は水素である。
【0015】
一態様では、R1が、水素、-OCH3およびハロゲンから選択されてもよく、R2およびR3が、水素である。
【0016】
一態様では、R1が、フッ素であってもよい。
【0017】
一態様では、式(I)が、以下からなる群から選択されてもよい。
【化3】
【0018】
一態様では、式(I)が、以下であってもよい。
【化4】
【0019】
一態様では、式(I)が、以下であってもよい。
【化5】
【0020】
一態様では、本方法は、該個体に、BCL-2阻害剤を投与するステップを含んでもよい。BCL-2阻害剤は、Abbott Laboratoriesから全て入手可能な、ABT-263(Navitoclax)、ABT-737、ABT-199、GDC-0199、GX15-070(Obatoclax)、およびこれらの組み合わせから選択されてもよい。一態様では、BCL-2阻害剤は、ABT-263であってもよい。適切なBCL-2阻害剤は、例えば、2017年3月30日に公開された、StarczynowskiらのUS2017-0087162A1に記載されている。
【0021】
一態様では、ミッドカインを発現する悪性中皮腫および/または小細胞肺癌を治療する方法が開示される。本方法は、それを必要とする個体に、有効量の薬学的組成物を投与するステップを含んでもよく、その薬学的組成物が、
【化7】
から選択される化合物、その薬学的に許容される塩、およびこれらの組み合わせと、薬学的担体と、を含む。
【0022】
一態様では、上記化合物は、BCL-2阻害剤、例えばABT-263、または前述のBCL-2阻害剤のいずれかの治療有効量と共に投与されてもよい。
【0023】
薬学的組成物
一態様では、上に開示した任意の1つ以上の化合物またはその薬学的に許容される塩を、BCL-2阻害剤および薬学的に許容される賦形剤と組み合わせて含む組成物が開示される。一態様では、BCL-2阻害剤は、ABT-263であってもよい。この組み合わせは、本明細書に開示されている通り、任意の形態をとり得る。
【0024】
一態様では、本明細書で提供される小分子は、静脈内または皮下の単位用量形態で投与されてもよく、しかしながら、他の投与経路もまた考えられる。考えられる投与経路には、経口、非経口、静脈内、および皮下が含まれるが、これらに限定されない。いくつかの実施形態では、本明細書で提供される小分子は、例えば、経口投与のための液体製剤に製剤化することができる。適切な形態には、懸濁液、シロップ、エリキシルなどが含まれる。いくつかの実施形態では、経口投与のための単位用量形態には、錠剤およびカプセルが含まれる。1日1回投与のために構成された単位用量形態であることが望ましく、しかしながら、特定の実施形態では、1日2回以上の投与のために構成された単位用量形態であることが望ましくなり得る。
【0025】
一態様では、薬学的組成物は、レシピエントの血液または他の体液と等張性である。組成物の等張性は、酒石酸ナトリウム、プロピレングリコールまたは他の無機もしくは有機溶質を使用して達成できる。一例としては、塩化ナトリウムが挙げられる。酢酸および塩、クエン酸および塩、ホウ酸および塩、ならびにリン酸および塩などの緩衝剤を使用できる。非経口ビヒクルには、塩化ナトリウム溶液、リンゲルデキストロース、デキストロースおよび塩化ナトリウム、乳酸リンゲルまたは不揮発性油が含まれる。静脈内ビヒクルには、流体および栄養素補充液、電解質補充液(例えばリンゲルデキストロースに基づくもの)などが含まれる。
【0026】
薬学的組成物の粘度を、薬学的に許容される増粘剤を使用して、選択されたレベルに維持することができる。メチルセルロースは、容易にかつ経済的に入手可能であり、取り扱いが簡単であるので有用である。他の適切な増粘剤には、例えば、キサンタンガム、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、カルボマーなどが含まれる。いくつかの実施形態では、増粘剤の濃度は、選択された増粘剤に依存する。選択された粘度を達成する量を使用することができる。粘性組成物は、通常、そのような増粘剤の添加によって溶液から調製される。
【0027】
薬学的組成物の貯蔵寿命を延ばすために、薬学的に許容される防腐剤を使用することができる。ベンジルアルコールが適切であり得るが、例えば、パラベン、チメロサール、クロロブタノール、または塩化ベンザルコニウムを含む種々の防腐剤もまた使用することができる。防腐剤の適切な濃度は、典型的には、組成物の総重量を基準として約0.02%~約2%であるが、選択される物質に依存して、より多いまたはより少ない量が望ましくなり得る。上記の還元剤は、製剤の良好な貯蔵寿命を維持するために有利に使用することができる。
【0028】
一態様では、本明細書で提供される小分子は、投与経路および所望の製剤に依存して、滅菌水、生理食塩水、グルコースなどの、適切な担体、希釈剤、または賦形剤と混合することができ、湿潤剤または乳化剤、pH緩衝剤、ゲル化または増粘添加剤剤、防腐剤、着香剤、着色剤などの補助物質を含有することができる。例えば、「Remington:The Science and Practice of Pharmacy」、Lippincott Williams&Wilkins、第20版(2003年6月1日)および「Remington's Pharmaceutical Sciences」、Mack Pub.Co.、第18版および第19版(それぞれ1985年12月、および1990年6月)を参照。そのような製剤は、錯化剤、金属イオン、ポリ酢酸、ポリグリコール酸、ヒドロゲル、デキストランなどの高分子化合物、リポソーム、マイクロエマルジョン、ミセル、単層もしくは多層のベシクル、赤血球ゴーストまたはスフェロブラストを含み得る。リポソーム製剤に適した脂質には、モノグリセリド、ジグリセリド、スルファチド、リゾレシチン、リン脂質、サポニン、胆汁酸などが含まれるが、これらに限定されない。そのような追加の成分の存在は、物理的状態、溶解性、安定性、インビボ放出の速度、およびインビボクリアランスの速度に影響を及ぼすことができ、したがって意図された用途に従って選択され、その結果、担体の特性が選択された投与経路に合わせて調整される。
【0029】
経口投与の場合、薬学的組成物は、錠剤、水性もしくは油性懸濁液、分散性の粉末もしくは顆粒、エマルジョン、硬もしくは軟カプセル、シロップ、またはエリキシルとして提供できる。経口使用のために意図された組成物は、薬学的組成物の製造のための、当該分野で既知の任意の方法に従って調製することができ、以下の物質:甘味料、着香剤、着色剤および防腐剤のうちの1つ以上を含むことができる。水性懸濁液は、有効成分を、水性懸濁液の製造に適した賦形剤と混合して含有することができる。
【0030】
経口使用のための製剤はまた、有効成分(複数可)が、炭酸カルシウム、リン酸カルシウム、またはカオリンなどの不活性固体希釈剤と混合されている硬ゼラチンカプセルとして、または軟ゼラチンカプセルとして提供することができる。軟カプセルにおいて、阻害剤は、ピーナッツ油、オリーブ油、脂肪油、流動パラフィン、または液体ポリエチレングリコールなどの水性または油性媒体などの適切な液体に溶解または懸濁させることができる。経口投与のために製剤化された安定剤およびマイクロスフェアもまた使用することができる。カプセルは、ゼラチンで作製された押し込み式カプセル、ならびにゼラチンおよびグリセロールまたはソルビトールなどの可塑剤で作製された軟質密封カプセルを含み得る。押し込み式カプセルは、有効成分を、ラクトースなどの充填剤、デンプンなどの結合剤、および/またはタルクもしくはステアリン酸マグネシウムなどの滑沢剤、ならびに任意選択での安定剤と混合して含有することができる。
【0031】
錠剤は、コーティングされていなくてもよく、胃腸管における崩壊および吸収を遅延させ、それにより長期間にわたって持続的な作用を提供するために既知の方法でコーティングされていてもよい。例えば、グリセリルモノステアレートなどの時間遅延材料を使用することができる。錠剤形態などの固体形態で投与される場合、固体形態は、典型的には、約0.001重量%以下~約50重量%以上の、例えば、約0.005、0.01、0.02、0.03、0.04、0.05、0.06、0.07、0.08、0.09、0.1、0.2、0.3、0.4、0.5、0.6、0.7、0.8、0.9、または1重量%~約2、3、4、5、6、7、8、9、10、15、20、25、30、35、40、または45重量%の有効成分(複数可)を含む。
【0032】
錠剤は、有効成分を、不活性物質を含む非毒性の薬学的に許容される賦形剤と混合して含有することができる。例えば、錠剤は、任意選択で、1つ以上の追加の成分と共に、圧縮または成形することによって調製することができる。圧縮錠剤は、粉末または顆粒などの自由流動性形態の有効成分を、任意選択で結合剤、滑沢剤、不活性希釈剤、界面活性剤または分散剤と混合して適切な機械で圧縮することによって調製することができる。成形錠剤は、不活性液体希釈剤で湿らせた粉末状の阻害剤の混合物を、適切な機械で成形することによって作製することができる。
【0033】
いくつかの実施形態では、各錠剤またはカプセルは、約1mg以下~約1,000mg以上の、例えば、約10、20、30、40、50、60、70、80、90、または100mg~約150、200、250、300、350、400、450、500、550、600、650、700、750、800、または900mgの本明細書で提供される小分子を含有する。いくつかの実施形態では、錠剤またはカプセルは、分割された投与量を投与することができるように、ある範囲の投与量で提供される。したがって、患者に適した投与量および毎日投与される用量の数を都合よく選択することができる。特定の実施形態では、2つ以上の治療剤を単一の錠剤または他の投与形態に組み込んで投与することができる(例えば、併用療法)が、他の実施形態では、治療剤は別個の投与形態で提供することができる。
【0034】
適切な不活性物質には、炭水化物、マンニトール、ラクトース、無水ラクトース、セルロース、スクロース、修飾デキストラン、デンプンなどの希釈剤、または三リン酸カルシウム、リン酸カルシウム、リン酸ナトリウム、炭酸カルシウム、炭酸ナトリウム、炭酸マグネシウム、および塩化ナトリウムなどの無機塩が含まれる。崩壊剤または顆粒化剤、例えば、コーンスターチなどのデンプン、アルギン酸、グリコール酸ナトリウムデンプン、アンバーライト、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ウルトラミロペクチン、アルギン酸ナトリウム、ゼラチン、オレンジピール、酸カルボキシメチルセルロース、天然スポンジおよびベントナイト、不溶性陽イオン交換樹脂、寒天、カラヤもしくはトラガカントなどの粉末ガム、またはアルギン酸もしくはその塩を製剤に含めることができる。
【0035】
硬い錠剤を形成するために、結合剤を使用することができる。結合剤には、アカシア、トラガカント、デンプンおよびゼラチン、メチルセルロース、エチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ポリビニルピロリドン、ヒドロキシプロピルメチルセルロースなどの天然物由来の材料が含まれる。
【0036】
ステアリン酸またはそのマグネシウム塩もしくはカルシウム塩、ポリテトラフルオロエチレン、流動パラフィン、植物油およびワックス、ラウリル硫酸ナトリウム、ラウリル硫酸マグネシウム、ポリエチレングリコール、デンプン、タルク、焼成シリカ、水和シリコアルミネートなどの滑沢剤を、錠剤製剤に含めることができる。
【0037】
界面活性剤はまた、例えば、ラウリル硫酸ナトリウム、ジオクチルスルホコハク酸ナトリウムおよびジオクチルスルホン酸ナトリウムなどのアニオン性界面活性剤、塩化ベンザルコニウムもしくは塩化ベンゼトニウムなどのカチオン性界面活性剤、またはポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、モノステアリン酸グリセロール、ポリソルベート、ショ糖脂肪酸エステル、メチルセルロース、もしくはカルボキシメチルセルロースなどの非イオン性界面活性剤を使用することができる。
【0038】
拡散または浸出機構のいずれかにより放出を可能にする不活性マトリックスにアミホスチンまたはその類似物が組み込まれる放出制御製剤を使用することができる。徐々に変性するマトリックスも製剤に組み込むことができる。他の送達システムには、時限放出、遅延放出、または持続放出送達システムが含まれ得る。
【0039】
コーティング、例えば、メチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、メチルヒドロキシ-エチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピル-メチルセルロース、ナトリウムカルボキシ-メチルセルロース、プロビドン、およびポリエチレングリコールなどの非腸溶性材料、または、フタル酸エステルなどの腸溶性材料を使用することができる。染料または色素を、識別のため、または阻害剤の用量の異なる組み合わせを特徴づけるために添加することができる。
【0040】
液体形態で経口投与する場合、水、石油などの液体担体、ピーナッツ油、鉱油、大豆油、もしくはゴマ油などの動物性または植物性油脂または合成油を、有効成分(複数可)に添加することができる。生理食塩水、デキストロースもしくは他の糖溶液、またはエチレングリコール、プロピレングリコールもしくはポリエチレングリコールなどのグリコールもまた、適切な液体担体である。また、薬学的組成物は、水中油型エマルジョンの形態であってもよい。油相は、オリーブ油もしくはラッカセイ油などの植物油、流動パラフィンなどの鉱油、またはこれらの混合物であってもよい。適切な乳化剤には、アカシアゴムおよびトラガカントゴムなどの天然ゴムと、大豆レシチンなどの天然リン脂質と、モノオレイン酸ソルビタンなどの、脂肪酸および無水ヘキシトールに由来するエステルまたは部分エステルと、モノオレイン酸ポリオキシエチレンソルビタンなどの、これらの部分エステルとエチレンオキシドとの縮合生成物と、が含まれる。エマルジョンはまた、甘味剤および香味剤を含有することができる。
【0041】
阻害剤の肺送達もまた使用することができる。阻害剤は、吸入の間に肺に送達され、肺上皮層を透過して血流に達する。治療薬の肺送達のために設計された様々な機械装置を使用することができ、その機械装置には、全て当業者によく知られている、ネブライザー、定量吸入器、および粉末吸入器が含まれるが、これらに限定されない。これらの装置は、阻害剤の投薬に適している製剤を使用する。典型的には、各製剤は、使用する装置の種類によって特定され、治療に有用な希釈剤、補助剤、および/または担体に加え、適切な噴射剤材料を使用することができる。
【0042】
有効成分は、0.1μm以下~10μm以上、例えば、約0.2、0.3、0.4、0.5、0.6、0.7、0.8、または0.9μm~約1.0、1.5、2.0、2.5、3.0、3.5、4.0、4.5、5.0、5.5、6.0、6.5、7.0、7.5、8.0、8.5、9.0、または9.5μmの平均粒径を有する粒子形態で、肺送達のために調製されてもよい。阻害剤の肺送達のための薬学的に許容される担体には、トレハロース、マンニトール、キシリトール、スクロース、ラクトース、およびソルビトールなどの炭水化物が含まれる。製剤に使用する他の成分は、DPPC、DOPE、DSPC、およびDOPCを含んでもよい。天然または合成の界面活性剤を使用することができ、界面活性剤には、ポリエチレングリコール、およびシクロデキストランなどのデキストランが含まれる。胆汁酸塩および他の関連するエンハンサー、ならびにセルロースおよびセルロース誘導体、およびアミノ酸もまた使用することができる。リポソーム、マイクロカプセル、ミクロスフェア、包接錯体、および他の種類の担体もまた使用することができる。
【0043】
ジェット式または超音波式のいずれかのネブライザーによる使用に適した薬学的製剤は、典型的には、水に溶解または懸濁させた阻害剤を、約0.01mg/mL以下~100mg/mL以上の阻害剤の溶液における濃度で、例えば、約0.1mg/mL、1mg/mL、2mg/mL、3mg/mL、4mg/mL、5mg/mL、6mg/mL、7mg/mL、8mg/mL、9mg/mL、または10mg/mL~約15mg/mL、20mg/mL、25mg/mL、30mg/mL、35mg/mL、40mg/mL、45mg/mL、50mg/mL、55mg/mL、60mg/mL、65mg/mL、70mg/mL、75mg/mL、80mg/mL、85mg/mL、または90mg/mLの阻害剤の溶液における濃度で含む。また、製剤は、緩衝液および単糖を含んでもよい(例えば、タンパク質安定化および浸透圧の調節のために)。また、ネブライザー製剤は、エアロゾルを形成する際に溶液の噴霧化による阻害剤の表面誘起凝集を減少または防止するために、界面活性剤を含有してもよい。
【0044】
定量吸入装置に使用するための製剤は、一般に、界面活性剤の助けを借りて噴射剤に懸濁させた有効成分を含有する微粉を含む。噴射剤には、クロロフルオロカーボン、ヒドロクロロフルオロカーボン、ヒドロフルオロカーボン、および炭化水素などの従来の噴射剤が含まれ得る。例示的な噴射剤には、トリクロロフルオロメタン、ジクロロジフルオロメタン、ジクロロテトラフルオロエタノール、1,1,1,2-テトラフルオロエタン、およびこれらの組み合わせが含まれる。適切な界面活性剤には、トリオレイン酸ソルビタン、大豆レシチン、およびオレイン酸が含まれる。
【0045】
粉末吸入装置から投薬するための製剤は、典型的には、装置からの粉末の分散を促進する量で、典型的には、製剤の約1重量%以下~99重量%以上、例えば、製剤の約5重量%、10重量%、15重量%、20重量%、25重量%、30重量%、35重量%、40重量%、45重量%、または50重量%~約55重量%、60重量%、65重量%、70重量%、75重量%、80重量%、85重量%、または90重量%の量で、阻害剤を含有し、任意選択でラクトース、ソルビトール、スクロース、マンニトール、トレハロース、またはキシリトールなどの充填剤を含む乾燥微粉を含む。
【0046】
いくつかの実施形態では、本明細書で提供される小分子は、発熱物質を含まない非経口的に許容される水溶液または油性懸濁液の形態で、静脈内、非経口、または他の注射経路により投与することができる。懸濁液は、当技術分野でよく知られている方法に従って、適切な分散剤または湿潤剤および懸濁剤を使用して調製することができる。適切なpH、等張性、安定性などを有する、許容される水溶液の調製は、当業者によく知られた範囲内にある。いくつかの実施形態では、注射用薬学的組成物は、1,3-ブタンジオール、水、等張性塩化ナトリウム溶液、リンゲル溶液、デキストロース溶液、デキストロースおよび塩化ナトリウム溶液、乳酸リンゲル溶液などの等張性ビヒクル、または当技術分野で既知の他のビヒクルを含むことができる。さらに、滅菌不揮発性油を従来の溶媒または懸濁媒体として使用することができる。この目的のために、合成のモノグリセリドまたはジグリセリドを含む任意の無菌性不揮発性油を使用することができる。さらに、オレイン酸などの脂肪酸も同様に、注射用製剤の調製に使用することができる。薬学的組成物はまた、安定剤、防腐剤、緩衝液、抗酸化剤、または当業者に既知の他の添加剤を含有することができる。
【0047】
注射持続時間は、様々な要因に応じて調整することができ、数秒以内の間に投与される単回注射と、0.5時間、0.1時間、0.25時間、0.5時間、0.75時間、1時間、2時間、3時間、4時間、5時間、6時間、7時間、8時間、9時間、10時間、11時間、12時間、13時間、14時間、15時間、16時間、17時間、18時間、19時間、20時間、21時間、22時間、23時間、または24時間以上までの持続静脈内投与と、を含むことができる。
【0048】
いくつかの実施形態では、本明細書で提供される小分子は、薬学的組成物によく見られる従来の補助成分を、当技術分野で慣用の方法およびレベルでさらに使用することができる。したがって、例えば、組成物は、併用療法のために追加の相溶性のある薬学的活性物質(例えば、補助的抗菌剤、止痒剤、収斂剤、局所麻酔剤、抗炎症剤、還元剤、化学療法剤など)を含有することができ、また、様々な剤形を物理的に調製するのに有用な材料、例えば、賦形剤、染料、増粘剤、安定剤、防腐剤または抗酸化剤を含有することができる。本明細書で提供される小分子と併用することができる抗癌剤には、ビンブラスチンおよびビンクリスチンなどのビンカアルカロイド、ドキソルビシン、ダウノルビシン、エピルビシンなどのアントラサイクリン、ビスアントレンおよびミトキサントロンなどのアントラセン、エトポシドおよびテニポシドなどのエピポドフィロトキシン、およびアクチノマイシンD、マイトマイシンC、ミトラマイシン、メトトレキサート、ドセタキセル、エトポシド(VP-16)、パクリタキセル、ドセタキセル、およびアドリアマイシンなどの他の抗癌剤、ならびに免疫抑制剤(例えば、シクロスポリンA、タクロリムス)が含まれる。
【0049】
いくつかの実施形態では、本明細書で提供される小分子は、キットの形態で、投与する医師または他の医療専門家に提供することができる。キットは、適切な薬学的組成物中の阻害剤(複数可)を含有する容器、および対象に薬学的組成物を投与するための説明書を収容するパッケージである。また、キットは、1つ以上の追加の治療薬、例えば、本明細書に記載された肉腫の治療のために現在使用されている化学療法薬を任意選択で含有することができる。例えば、1つ以上の追加の化学療法薬との併用で本明細書で提供される小分子を含む1つ以上の組成物を含有するキットを提供することができ、または本明細書で提供される小分子を含有する薬学的組成物と追加の治療薬とを分けたキットを提供することができる。また、キットは、順次または連続投与のために、個別投与量の本明細書で提供される小分子を含有することができる。キットは、1つ以上の診断ツールおよび使用説明書を任意選択で含有することができる。キットは、適切な送達デバイス、例えば注射器などを、阻害剤(複数可)および任意の他の治療薬を投与するための説明書と一緒に含有することができる。キットは、含まれている一部または全ての治療薬の、保管、再構成(必要な場合)、および投与のための説明書を任意選択で含有することができる。キットは、対象に与えられる投与回数に対応する複数の容器を含むことができる。
【実施例0050】
ミッドカイン(MDK)は、肺癌を含む多くの悪性腫瘍で高度に発現されるヘパリン結合性増殖因子である。本発明者らは以前に、MDK阻害剤、iMDKが、正常細胞に害を与えることなく、MDKを発現する非小細胞肺癌を抑制することを報告した。重要なことに、iMDKは、PI3キナーゼ/Akt経路を阻害し、MDKを発現する非小細胞肺癌細胞においてアポトーシスを誘導する。本研究では、出願人は、インビトロおよびインビボの両方において、悪性中皮腫に対するiMDKの抗腫瘍効果を調べた。処理の48時間後、iMDKは、MDKを発現する悪性中皮腫細胞の細胞増殖を用量依存的に阻害した。iMDKはまた、MSTO-211H中皮腫細胞のコロニー形成を抑制した。TUNEL陽性細胞は、iMDK処理の48時間後に、MSTO-211H細胞において用量依存的に有意に増加し、iMDKによる中皮腫細胞におけるアポトーシスの誘導が、MSTO-211H中皮腫細胞において、各薬物単独よりも効果的であることを確認した。さらに、iMDKの全身投与は、インビボでの中皮腫異種移植腫瘍における腫瘍増殖を有意に阻害した。iMDKを用いたMDKの阻害は、MDKによって引き起こされる悪性中皮腫の治療のための潜在的な治療アプローチを提供する。
【0051】
3-[2-(4-フルオロベンジル)イミダゾ[2,1-b][1,3]チアゾール-6-イル]-2H-クロメン-2-オン(以下、「iMDK」(以下、化合物A)を、ChemDiv(San Diego、CA)から購入した。BCL-2阻害剤:ABT-263(化合物B)を、Selleck Chemicals(Houston、TX)から購入した。
化合物A
【化8】
化合物B
【化9】
【0052】
細胞株:ヒト悪性肺中皮腫細胞MSTO-211H、H2452、H2052、H28、MESO-1およびMESO-4を、10%熱不活性化ウシ胎仔血清を補充したRPMI 1640中で増殖させた。ヒト肺腺癌細胞H441およびヒト胎児腎臓細胞HEK293を、10%熱不活性化ウシ胎仔血清を補充した高グルコースダルベッコ改変イーグルで増殖させた。全ての細胞株を、37℃、5%CO2で培養した。
【0053】
抗体:β-アクチン抗体に特異的な抗体をSigma(St.Louis、MO)から入手し、AKT、リン酸化AKT(Ser473)、ERK、およびリン酸化ERK(Ser473)に特異的な抗体をCell Signaling Technology(Beverly、MA)から入手した。
【0054】
iMDK(上記の化合物A)は、インビトロおよびインビボの両方で、MDK陽性悪性肺中皮腫細胞の細胞増殖を阻害した。BCL-2阻害剤ABT263は、MSTO-211H中皮腫細胞におけるiMDK媒介性の細胞増殖の抑制を増強した。iMDKを用いたMDKの阻害は、MDKによって引き起こされる肺癌の治療のための潜在的な治療アプローチを提供する。
【0055】
表図面で参照される化合物は以下の通りである。
【表1】
【0056】
本明細書で使用される用語「含む(comprising)」は、「含む(including)」、「含有する(containing)」、または「特徴づけられる(characterized by)」と同義で、包含的または開放式であり、追加、記載されていない要素または方法ステップを除外しない。
【0057】
本明細書で使用される成分、反応条件などの数量を表す全ての数字は、全ての例において用語「約」により修飾されるものとして理解されるべきである。したがって、反対に示されない限り、本明細書で説明される数値パラメータは、得ようとする所望の特性に応じて変更できる近似値である。本出願の優先権を主張する任意の出願における任意の特許請求の範囲に対しては、少なくとも均等論が適用されるが、これに限定されず、各数値パラメータは、有効数字および通常の丸めアプローチの数字に照らして解釈されるべきである。
【0058】
上記の記載は、本発明のいくつかの方法および材料を開示している。本発明は、製造方法および装置における変更と同様に、方法および材料を変更してもよい。そのような変更は、本明細書に開示される発明の開示または実施を考慮することにより、当業者には明らかであろう。したがって、本発明は、本明細書に開示される特定の実施形態に限定されるものではなく、本発明の真の範囲および精神の範囲内に入る全ての変更および代替を網羅するものとする。
【0059】
全てのパーセンテージおよび割合は、特に指示がない限り、組成物全体を基準にして計算される。
【0060】
本明細書全体を通じて記載されているあらゆる最大数値限定には、それより小さいあらゆる数値限定が、そのようなより小さい数値限定が本明細書に明確に記載されているかのように含まれることを理解すべきである。本明細書全体を通じて記載されるあらゆる最小数値限定は、それよりも大きいあらゆる数値限定を、あたかもこうしたそれよりも大きい数値限定が本明細書に明確に記載されているかのように含む。本明細書全体を通じて記載されるあらゆる数値範囲は、こうしたより広い数値範囲内に入る、それよりも狭いあらゆる数値範囲を、あたかもこうしたそれよりも狭い数値範囲が全て本明細書に明確に記載されているかのように含む。
【0061】
本明細書に開示した寸法および値は、列挙された正確な数値に厳密に限定されるものと理解されるべきではない。むしろ、特に指定されないかぎり、そのような各寸法は、列挙された値とその値の周辺の機能的に同等の範囲の両方を意味することが意図されている。例えば、「20mm」として開示される寸法は、「約20mm」を意味するものとする。
【0062】
相互参照されるまたは関連特許もしくは出願のいずれも含めた、本明細書に引用されているすべての文書は、明示的に除外される、または特に限定されないかぎり、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。いかなる文献の引用も、本明細書中で開示または特許請求される任意の発明に対する先行技術であるとはみなされず、あるいはそれを単独でまたは他の任意の参考文献(単数または複数)と組み合わせたときに、そのような発明すべてを教示、示唆、または開示するとはみなされない。更に、本文書における用語の任意の意味または定義が、参照により組み込まれた文書内の同じ用語の意味または定義と矛盾する場合、本文書におけるその用語に割り当てられた意味または定義が適用されるものとする。