(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022064942
(43)【公開日】2022-04-26
(54)【発明の名称】磁性ペースト
(51)【国際特許分類】
C08L 63/00 20060101AFI20220419BHJP
C08G 59/02 20060101ALI20220419BHJP
C08G 59/40 20060101ALI20220419BHJP
C08K 3/01 20180101ALI20220419BHJP
H01F 1/26 20060101ALI20220419BHJP
H01F 1/33 20060101ALI20220419BHJP
H01F 1/34 20060101ALI20220419BHJP
H01F 1/37 20060101ALI20220419BHJP
H01F 17/04 20060101ALI20220419BHJP
H01F 27/255 20060101ALI20220419BHJP
H05K 1/16 20060101ALI20220419BHJP
H01F 1/147 20060101ALI20220419BHJP
【FI】
C08L63/00 C
C08G59/02
C08G59/40
C08K3/01
H01F1/26
H01F1/33
H01F1/34 140
H01F1/37
H01F17/04 F
H01F27/255
H05K1/16 B
H01F1/147
【審査請求】有
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022009683
(22)【出願日】2022-01-25
(62)【分割の表示】P 2020532445の分割
【原出願日】2019-07-24
(31)【優先権主張番号】PCT/JP2019/025926
(32)【優先日】2019-06-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2018139537
(32)【優先日】2018-07-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2018219667
(32)【優先日】2018-11-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2019044785
(32)【優先日】2019-03-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000000066
【氏名又は名称】味の素株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】特許業務法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】本間 達也
(72)【発明者】
【氏名】大浦 一郎
(72)【発明者】
【氏名】依田 正応
(72)【発明者】
【氏名】田中 孝幸
(72)【発明者】
【氏名】大山 秀樹
(72)【発明者】
【氏名】萩原 千尋
(57)【要約】
【課題】粘度が低く、機械的強度及び密着強度に優れる硬化物を得ることができる磁性ペースト、及び当該磁性ペーストを使用した硬化物、回路基板、インダクタ部品の提供。
【解決手段】(A)磁性粉体、(B)エポキシ樹脂、(C)酸性分散剤、及び(D)硬化剤、を含む磁性ペースト。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)磁性粉体、
(B)エポキシ樹脂、
(C)酸性分散剤、及び
(D)硬化剤、を含む磁性ペースト(但し、(C)成分がポリエーテルリン酸エステルである場合は除く。)。
【請求項2】
(C)成分のpHが、4未満である、請求項1に記載の磁性ペースト。
【請求項3】
(C)成分のpHが、2以上である、請求項1又は2に記載の磁性ペースト。
【請求項4】
(C)成分の含有量が、磁性ペースト中の不揮発成分を100質量%とした場合、0.1質量%以上5質量%以下である、請求項1~3のいずれか1項に記載の磁性ペースト。
【請求項5】
(D)成分が、イミダゾール系エポキシ樹脂硬化剤を含む、請求項1~4のいずれか1項に記載の磁性ペースト。
【請求項6】
(A)成分が、酸化鉄粉及び鉄合金系金属粉から選ばれる少なくとも1種である、請求項1~5のいずれか1項に記載の磁性ペースト。
【請求項7】
(A)成分が、酸化鉄粉を含み、該酸化鉄粉がNi、Cu、Mn、及びZnから選ばれる少なくとも1種を含むフェライトを含む、請求項1~6のいずれか1項に記載の磁性ペースト。
【請求項8】
(A)成分が、Si、Cr、Al、Ni、及びCoから選ばれる少なくとも1種を含む鉄合金系金属粉を含む、請求項1~7のいずれか1項に記載の磁性ペースト。
【請求項9】
(A)成分の含有量が、磁性ペースト中の不揮発成分を100質量%とした場合、70質量%以上98質量%以下である、請求項1~8のいずれか1項に記載の磁性ペースト。
【請求項10】
スルーホール充填用である、請求項1~9のいずれか1項に記載の磁性ペースト。
【請求項11】
請求項1~10のいずれか1項に記載の磁性ペーストの硬化物。
【請求項12】
スルーホールを有する基板と、前記スルーホールに充填した、請求項1~10のいずれか1項に記載の磁性ペーストの硬化物と、を有する回路基板。
【請求項13】
請求項12に記載の回路基板を含むインダクタ部品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、磁性ペースト、及び当該磁性ペーストを使用した硬化物、回路基板、及びインダクタ部品に関する。
【背景技術】
【0002】
近年の電子機器の小型化、薄型化の要求に伴い、電子機器に使用される回路基板にも小型化、配線の高密度化が求められている。このような回路基板としては、スルーホールにペースト材料を充填して形成されるものが知られている。
【0003】
例えば、特許文献1には、インダクタ部品用の回路基板におけるスルーホールを充填するための樹脂として、酸化鉄(III)やコバルト酸化鉄等の磁性体粒子を含む充填樹脂が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1の充填樹脂のような磁性ペーストの硬化物の比透磁率を高くするには、充填樹脂に磁性粉体を含有させる方法が考えられる。しかし、磁性ペーストに磁性粉体を含有させると、磁性ペーストの粘度が高くなり、磁性ペーストの印刷性が劣ってしまうことがある。また、磁性ペーストに磁性粉体を含有させると、磁性ペーストの硬化物の機械的強度、及びめっきに対する密着強度が劣ることがある。特に、特許文献1に記載の充填樹脂のように、磁性粉体を大量に含有するペーストを用いた場合、粘度、機械的強度、及び密着強度がより劣ってしまう。
【0006】
本発明は、上記の事情に鑑みてなされたものであり、磁性粉体を含有していても粘度が低く、機械的強度及び密着強度に優れる硬化物を得ることができる磁性ペースト、及び当該磁性ペーストを使用した硬化物、回路基板、インダクタ部品を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は、上記目的を達成すべく鋭意研究をした結果、酸性分散剤を含有させた磁性ペーストを用いることにより粘度が低く、機械的強度及び密着強度に優れる硬化物を得られることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0008】
すなわち、本発明は以下の内容を含む。
[1] (A)磁性粉体、
(B)エポキシ樹脂、
(C)酸性分散剤、及び
(D)硬化剤、を含む磁性ペースト。
[2] (C)成分のpHが、4未満である、[1]に記載の磁性ペースト。
[3] (C)成分のpHが、2以上である、[1]又は[2]に記載の磁性ペースト。
[4] (C)成分の含有量が、磁性ペースト中の不揮発成分を100質量%とした場合、0.1質量%以上5質量%以下である、[1]~[3]のいずれかに記載の磁性ペースト。
[5] (D)成分が、イミダゾール系エポキシ樹脂硬化剤を含む、[1]~[4]のいずれかに記載の磁性ペースト。
[6] (A)成分が、酸化鉄粉及び鉄合金系金属粉から選ばれる少なくとも1種である、[1]~[5]のいずれかに記載の磁性ペースト。
[7] (A)成分が、酸化鉄粉を含み、該酸化鉄粉がNi、Cu、Mn、及びZnから選ばれる少なくとも1種を含むフェライトを含む、[1]~[6]のいずれかに記載の磁性ペースト。
[8] (A)成分が、Si、Cr、Al、Ni、及びCoから選ばれる少なくとも1種を含む鉄合金系金属粉を含む、[1]~[7]のいずれかに記載の磁性ペースト。
[9] (A)成分の含有量が、磁性ペースト中の不揮発成分を100質量%とした場合、70質量%以上98質量%以下である、[1]~[8]のいずれかに記載の磁性ペースト。
[10] スルーホール充填用である、[1]~[9]のいずれかに記載の磁性ペースト。
[11] [1]~[10]のいずれかに記載の磁性ペーストの硬化物。
[12] スルーホールを有する基板と、前記スルーホールに充填した、[1]~[10]のいずれかに記載の磁性ペーストの硬化物と、を有する回路基板。
[13] [12]に記載の回路基板を含むインダクタ部品。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、粘度が低く、機械的強度及び密着強度に優れる硬化物を得ることができる磁性ペースト、及び当該磁性ペーストを使用した硬化物、回路基板、インダクタ部品を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】
図1は、第1実施形態の回路基板の製造方法の一例としてのコア基板の模式的な断面図である。
【
図2】
図2は、第1実施形態の回路基板の製造方法の一例としてのスルーホールを形成したコア基板の模式的な断面図である。
【
図3】
図3は、第1実施形態の回路基板の製造方法の一例としてのスルーホール内にめっき層を形成したコア基板の様子を示す模式的な断面図である。
【
図4】
図4は、第1実施形態の回路基板の製造方法の一例としてのスルーホール内に磁性ペーストを充填させたコア基板の様子を示す模式的な断面図である。
【
図5】
図5は、第1実施形態の回路基板の製造方法の一例としての充填させた磁性ペーストを熱硬化させたコア基板の様子を示す模式的な断面図である。
【
図6】
図6は、第1実施形態の回路基板の製造方法の一例としての硬化物を研磨した後のコア基板の様子を示す模式的な断面図である。
【
図7】
図7は、第1実施形態の回路基板の製造方法の一例としての研磨した面上に導体層を形成したコア基板の様子を示す模式的な断面図である。
【
図8】
図8は、第1実施形態の回路基板の製造方法の一例としてのパターン導体層を形成したコア基板の様子を示す模式的な断面図である。
【
図9】
図9は、第2実施形態の回路基板の製造方法の一例に含まれる(A)工程を説明するための模式的な断面図である。
【
図10】
図10は、第2実施形態の回路基板の製造方法の一例に含まれる(A)工程を説明するための模式的な断面図である。
【
図11】
図11は、第2実施形態の回路基板の製造方法の一例に含まれる(B)工程を説明するための模式的な断面図である。
【
図12】
図12は、第2実施形態の回路基板の製造方法の一例に含まれる(D)工程を説明するための模式的な断面図である。
【
図13】
図13は、一例としての第2実施形態の回路基板の製造方法により得た回路基板を含むインダクタ部品をその厚さ方向の一方からみた模式的な平面図である。
【
図14】
図14は、一例としてのII-II一点鎖線で示した位置で切断した第2実施形態の回路基板の製造方法により得た回路基板を含むインダクタ部品の切断端面を示す模式的な図である。
【
図15】
図15は、一例としての第2実施形態の回路基板の製造方法により得た回路基板を含むインダクタ部品のうちの第1導体層の構成を説明するための模式的な平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面を参照して、本発明の実施形態について説明する。なお、各図面は、発明が理解できる程度に、構成要素の形状、大きさ及び配置が概略的に示されているに過ぎない。本発明は以下の記述によって限定されるものではなく、各構成要素は適宜変更可能である。以下の説明に用いる図面において、同様の構成要素については同一の符号を付して示し、重複する説明については省略する場合がある。また、本発明の実施形態にかかる構成は、必ずしも図示例の配置により、製造されたり、使用されたりするとは限らない。
【0012】
[磁性ペースト]
本発明の磁性ペーストは、(A)磁性粉体、(B)エポキシ樹脂、(C)酸性分散剤、及び(D)硬化剤を含む。
【0013】
本発明では、(C)酸性分散剤を含有させることにより、磁性ペーストの粘度が低下し、印刷性に優れるようになる。また、その硬化物の機械的強度及び密着強度を向上させることも可能である。さらには、通常、磁性ペーストの粘度のポットライフが上昇し、得られた硬化物は、通常、周波数が10~200MHzの範囲で比透磁率の向上、及び磁性損失の低減が可能である。
【0014】
磁性ペーストは、必要に応じて、さらに(E)その他の添加剤を含み得る。以下、本発明の磁性ペーストに含まれる各成分について詳細に説明する。
【0015】
<(A)磁性粉体>
磁性ペーストは、(A)成分として、(A)磁性粉体を含有する。(A)磁性粉体としては、例えば、純鉄粉末;Mg-Zn系フェライト、Fe-Mn系フェライト、Mn-Zn系フェライト、Mn-Mg系フェライト、Cu-Zn系フェライト、Mg-Mn-Sr系フェライト、Ni-Zn系フェライト、Ba-Zn系フェライト、Ba-Mg系フェライト、Ba-Ni系フェライト、Ba-Co系フェライト、Ba-Ni-Co系フェライト、Y系フェライト、酸化鉄粉(III)、四酸化三鉄などの酸化鉄粉;Fe-Si系合金粉末、Fe-Si-Al系合金粉末、Fe-Cr系合金粉末、Fe-Cr-Si系合金粉末、Fe-Ni-Cr系合金粉末、Fe-Cr-Al系合金粉末、Fe-Ni系合金粉末、Fe-Ni-Mo系合金粉末、Fe-Ni-Mo-Cu系合金粉末、Fe-Co系合金粉末、あるいはFe-Ni-Co系合金粉末などの鉄合金系金属粉;Co基アモルファスなどのアモルファス合金類、が挙げられる。
【0016】
中でも、(A)磁性粉体としては、酸化鉄粉及び鉄合金系金属粉から選ばれる少なくとも1種であることが好ましい。酸化鉄粉としては、Ni、Cu、Mn、及びZnから選ばれる少なくとも1種を含むフェライトを含むことが好ましい。また、鉄合金系金属粉としては、Si、Cr、Al、Ni、及びCoから選ばれる少なくとも1種を含む鉄合金系金属粉を含むことが好ましい。
【0017】
(A)磁性粉体としては、市販の磁性粉体を用いることができる。用いられ得る市販の磁性粉体の具体例としては、パウダーテック社製「M05S」;山陽特殊製鋼社製「PST-S」;エプソンアトミックス社製「AW2-08」、「AW2-08PF20F」、「AW2-08PF10F」、「AW2-08PF3F」、「Fe-3.5Si-4.5CrPF20F」、「Fe-50NiPF20F」、「Fe-80Ni-4MoPF20F」;JFEケミカル社製「LD-M」、「LD-MH」、「KNI-106」、「KNI-106GSM」、「KNI-106GS」、「KNI-109」、「KNI-109GSM」、「KNI-109GS」;戸田工業社製「KNS-415」、「BSF-547」、「BSF-029」、「BSN-125」、「BSN-125」、「BSN-714」、「BSN-828」、「S-1281」、「S-1641」、「S-1651」、「S-1470」、「S-1511」、「S-2430」;日本重化学工業社製「JR09P2」;CIKナノテック社製「Nanotek」;キンセイマテック社製「JEMK-S」、「JEMK-H」:ALDRICH社製「Yttrium iron oxide」等が挙げられる。磁性粉体は1種単独で用いてもよく、又は2種以上を併用してもよい。
【0018】
(A)磁性粉体は、球状であることが好ましい。磁性粉体の長軸の長さを短軸の長さで除した値(アスペクト比)としては、好ましくは2以下、より好ましくは1.5以下、さらに好ましくは1.2以下である。一般に、磁性粉体は球状ではない扁平な形状であるほうが、比透磁率を向上させやすい。しかし、特に球状の磁性粉体を用いる方が、通常、磁気損失を低くでき、また好ましい粘度を有するペーストを得る観点から好ましい。
【0019】
(A)磁性粉体の平均粒径は、比透磁率を向上させる観点から、好ましくは0.01μm以上、より好ましくは0.5μm以上、さらに好ましくは1μm以上である。また、好ましくは10μm以下、より好ましくは9μm以下、さらに好ましくは8μm以下である。
【0020】
(A)磁性粉体の平均粒径はミー(Mie)散乱理論に基づくレーザー回折・散乱法により測定することができる。具体的にはレーザー回折散乱式粒径分布測定装置により、磁性粉体の粒径分布を体積基準で作成し、そのメディアン径を平均粒径とすることで測定することができる。測定サンプルは、磁性粉体を超音波により水に分散させたものを好ましく使用することができる。レーザー回折散乱式粒径分布測定装置としては、堀場製作所社製「LA-500」、島津製作所社製「SALD-2200」等を使用することができる。
【0021】
(A)磁性粉体の比表面積は、比透磁率を向上させる観点から、好ましくは0.05m2/g以上、より好ましくは0.1m2/g以上、さらに好ましくは0.3m2/g以上である。また、好ましくは10m2/g以下、より好ましくは8m2/g以下、さらに好ましくは5m2/g以下である。(A)磁性粉体の比表面積は、BET法によって測定できる。
【0022】
(A)磁性粉体の含有量(体積%)は、比透磁率を向上させ及び損失係数を低減させる観点から、磁性ペースト中の不揮発成分を100体積%とした場合、好ましくは40体積%以上、より好ましくは50体積%以上、さらに好ましくは60体積%以上である。また、好ましくは85体積%以下、より好ましくは80体積%以下、さらに好ましくは70体積%以下である。
【0023】
(A)磁性粉体の含有量(質量%)は、比透磁率を向上させ及び損失係数を低減させる観点から、磁性ペースト中の不揮発成分を100質量%とした場合、好ましくは70質量%以上、より好ましくは75質量%以上、さらに好ましくは80質量%以上である。また、好ましくは98質量%以下、より好ましくは95質量%以下、さらに好ましくは90質量%以下である。
なお、本発明において、磁性ペースト中の各成分の含有量は、別途明示のない限り、磁性ペースト中の不揮発成分を100質量%としたときの値である。
【0024】
<(B)エポキシ樹脂>
磁性ペーストは、(B)成分として、(B)エポキシ樹脂を含有する。(B)エポキシ樹脂としては、例えば、ビスフェノールA型エポキシ樹脂;ビスフェノールF型エポキシ樹脂;ビスフェノールS型エポキシ樹脂;ビスフェノールAF型エポキシ樹脂;ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂;トリスフェノール型エポキシ樹脂;フェノールノボラック型エポキシ樹脂;tert-ブチル-カテコール型エポキシ樹脂;ナフトールノボラック型エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂、ナフトール型エポキシ樹脂、アントラセン型エポキシ樹脂等の縮合環構造を有するエポキシ樹脂;グリシジルアミン型エポキシ樹脂;グリシジルエステル型エポキシ樹脂;クレゾールノボラック型エポキシ樹脂;ビフェニル型エポキシ樹脂;線状脂肪族エポキシ樹脂;ブタジエン構造を有するエポキシ樹脂;脂環式エポキシ樹脂;複素環式エポキシ樹脂;スピロ環含有エポキシ樹脂;シクロヘキサンジメタノール型エポキシ樹脂;トリメチロール型エポキシ樹脂;テトラフェニルエタン型エポキシ樹脂等が挙げられる。エポキシ樹脂は1種単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。(B)エポキシ樹脂は、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、及びビスフェノールF型エポキシ樹脂から選ばれる1種以上であることが好ましい。
【0025】
(B)エポキシ樹脂は、1分子中に2個以上のエポキシ基を有するエポキシ樹脂を含むことが好ましい。また、(B)エポキシ樹脂は、芳香族構造を有することが好ましく、2種以上のエポキシ樹脂を用いる場合は少なくとも1種が芳香族構造を有することがより好ましい。芳香族構造とは、一般に芳香族と定義される化学構造であり、多環芳香族及び芳香族複素環をも含む。エポキシ樹脂の不揮発成分100質量%に対して、1分子中に2個以上のエポキシ基を有するエポキシ樹脂の割合は、好ましくは50質量%以上、より好ましくは60質量%以上、特に好ましくは70質量%以上である。
【0026】
エポキシ樹脂には、温度25℃で液状のエポキシ樹脂(以下「液状エポキシ樹脂」ということがある。)と、温度25℃で固体状のエポキシ樹脂(以下「固体状エポキシ樹脂」ということがある。)とがある。磁性ペーストは、(B)エポキシ樹脂として、液状エポキシ樹脂のみを含んでいてもよく、固体状エポキシ樹脂のみを含んでいてもよいが、磁性ペーストの粘度を低下させる観点から、液状エポキシ樹脂を含むことが好ましい。
【0027】
液状エポキシ樹脂としては、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールAF型エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂、グリシジルエステル型エポキシ樹脂、グリシジルアミン型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、エステル骨格を有する脂環式エポキシ樹脂、シクロヘキサンジメタノール型エポキシ樹脂、及びブタジエン構造を有するエポキシ樹脂が好ましく、グリシジルアミン型エポキシ樹脂、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールAF型エポキシ樹脂及びナフタレン型エポキシ樹脂がより好ましい。液状エポキシ樹脂の具体例としては、DIC社製の「HP4032」、「HP4032D」、「HP4032SS」(ナフタレン型エポキシ樹脂);三菱ケミカル社製の「828US」、「jER828EL」(ビスフェノールA型エポキシ樹脂)、「jER807」(ビスフェノールF型エポキシ樹脂)、「jER152」(フェノールノボラック型エポキシ樹脂);三菱ケミカル社製の「630」、「630LSD」、ADEKA社製の「EP-3980S」(グリシジルアミン型エポキシ樹脂);新日鉄住金化学社製の「ZX1059」(ビスフェノールA型エポキシ樹脂とビスフェノールF型エポキシ樹脂の混合品);ナガセケムテックス社製の「EX-721」(グリシジルエステル型エポキシ樹脂);ダイセル社製の「セロキサイド2021P」(エステル骨格を有する脂環式エポキシ樹脂)、「PB-3600」(ブタジエン構造を有するエポキシ樹脂);新日鉄化学社製の「ZX1658」、「ZX1658GS」(環状脂肪族ジグリシジルエーテル(液状1,4-グリシジルシクロヘキサン))等が挙げられる。これらは1種単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0028】
固体状エポキシ樹脂としては、ナフタレン型4官能エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂、トリスフェノール型エポキシ樹脂、ナフトール型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、ナフチレンエーテル型エポキシ樹脂、アントラセン型エポキシ樹脂、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、テトラフェニルエタン型エポキシ樹脂が好ましく、ナフタレン型4官能エポキシ樹脂、ナフトール型エポキシ樹脂、及びビフェニル型エポキシ樹脂がより好ましい。固体状エポキシ樹脂の具体例としては、DIC社製の「HP4032H」(ナフタレン型エポキシ樹脂)、「HP-4700」、「HP-4710」(ナフタレン型4官能エポキシ樹脂)、「N-690」(クレゾールノボラック型エポキシ樹脂)、「N-695」(クレゾールノボラック型エポキシ樹脂)、「HP-7200」、「HP-7200HH」、「HP-7200H」(ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂)、「EXA-7311」、「EXA-7311-G3」、「EXA-7311-G4」、「EXA-7311-G4S」、「HP6000」(ナフチレンエーテル型エポキシ樹脂);日本化薬社製の「EPPN-502H」(トリスフェノール型エポキシ樹脂)、「NC7000L」(ナフトールノボラック型エポキシ樹脂)、「NC3000H」、「NC3000」、「NC3000L」、「NC3100」(ビフェニル型エポキシ樹脂);新日鉄住金化学社製の「ESN475V」(ナフタレン型エポキシ樹脂)、「ESN485」(ナフトールノボラック型エポキシ樹脂);三菱ケミカル社製の「YX4000H」、「YL6121」(ビフェニル型エポキシ樹脂)、「YX4000HK」(ビキシレノール型エポキシ樹脂)、「YX8800」(アントラセン型エポキシ樹脂);大阪ガスケミカル社製の「PG-100」、「CG-500」、三菱ケミカル社製の「YL7760」(ビスフェノールAF型エポキシ樹脂)、「YL7800」(フルオレン型エポキシ樹脂)、「jER1010」(固体状ビスフェノールA型エポキシ樹脂)、「jER1031S」(テトラフェニルエタン型エポキシ樹脂)等が挙げられる。これらは1種単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0029】
(B)エポキシ樹脂として、液状エポキシ樹脂と固体状エポキシ樹脂とを併用する場合、それらの量比(液状エポキシ樹脂:固体状エポキシ樹脂)は、質量比で、1:0.1~1:4の範囲が好ましい。液状エポキシ樹脂と固体状エポキシ樹脂との量比を斯かる範囲とすることにより、十分な破断強度を有する硬化物を得ることができる等の効果が得られる。上記の効果の観点から、液状エポキシ樹脂と固体状エポキシ樹脂の量比(液状エポキシ樹脂:固体状エポキシ樹脂)は、質量比で、1:0.3~1:3.5の範囲であることがより好ましく、1:0.6~1:3の範囲であることがさらに好ましく、1:0.8~1:2.5の範囲であることが特に好ましい。
【0030】
(B)エポキシ樹脂の含有量は、良好な機械的強度を示す磁性層を得る観点から、磁性ペースト中の不揮発成分を100質量%とした場合、好ましくは1質量%以上、より好ましくは3質量%以上、さらに好ましくは5質量%以上、10質量%以上である。エポキシ樹脂の含有量の上限は、本発明の効果が奏される限りにおいて特に限定されないが、好ましくは30質量%以下、より好ましくは25質量%以下、さらに好ましくは20質量%以下である。
【0031】
(B)エポキシ樹脂の含有量(体積%)は、磁性ペースト中の不揮発成分を100体積%とした場合、好ましくは1質量%以上、より好ましくは3質量%以上、さらに好ましくは5質量%以上である。上限は、本発明の効果が奏される限りにおいて特に限定されないが、好ましくは25質量%以下、より好ましくは20質量%以下、さらに好ましくは15質量%以下である。
【0032】
(B)エポキシ樹脂のエポキシ当量は、好ましくは50g/eq.~5000g/eq.、より好ましくは50g/eq.~3000g/eq.、さらに好ましくは80g/eq.~2000g/eq.、さらにより好ましくは110g/eq.~1000g/eq.である。この範囲となることで、硬化物の架橋密度が十分となり表面粗さの小さい磁性層をもたらすことができる。なお、エポキシ当量は、JIS K7236に従って測定することができ、1当量のエポキシ基を含む樹脂の質量である。
【0033】
(B)エポキシ樹脂の重量平均分子量は、好ましくは100~5000、より好ましくは250~3000、さらに好ましくは400~1500である。ここで、エポキシ樹脂の重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)法により測定されるポリスチレン換算の重量平均分子量である。
【0034】
<(C)酸性分散剤>
磁性ペーストは、(C)成分として(C)酸性分散剤を含有する。上記したように、(A)磁性粉体の含有量が多ければ多いほど、磁性ペーストの粘度が上昇し、さらに磁性ペーストの硬化物の機械的強度及び密着強度が劣ってしまう。本発明では、磁性ペースト中に分散剤としての(C)酸性分散剤を含有するので、(C)酸性分散剤を含まないペースト(即ち、(C)成分を含まないこと以外は磁性ペーストと同じ組成を有するペースト)に比べ、粘度を低くできる。よって、(A)磁性粉体の含有量が多くても、磁性ペーストの粘度の上昇を抑制することができ、さらに磁性ペーストの硬化物の機械的強度及び密着強度を向上させることが可能となる。通常、分散剤としての(C)酸性分散剤は、揮発性を有さないので、硬化後に得られる硬化物に残留し得る。
【0035】
本発明において、(C)酸性分散剤とは、酸性の分散剤を表し、酸性とはガラス電極法または指示薬法におけるpHが6未満を意味する。すなわち、ガラス電極法または指示薬法におけるpHが6未満である分散剤を酸性分散剤と定義する。ガラス電極法と指示薬法の双方でpH測定可能な場合、ガラス電極法のpHの測定値を優先する。酸性分散剤のpHは、pHメーターを用いたガラス電極法、pH試験紙を用いた指示薬法により測定することができる。ガラス電極法による具体的なpHの測定方法は、30質量%エタノール水溶液に酸性分散剤を溶解させて調製した、分散剤濃度0.067g/mLの測定サンプル(22℃)を、pH計を用いたガラス電極を有するpHメーターにより測定することができる。また、指示薬法による具体的なpHの測定方法は、アセトンに酸性分散剤を溶解させて調製した、分散剤濃度0.1g/mLの測定サンプル(22℃)を、pH試験紙に浸すことにより測定することができる。
【0036】
pHメーターは市販品を用いることができる。市販のpHメーターとしては、例えば、東亜ディーケーケー社製のpHメーター「HM-41X」等が挙げられる。pH試験紙としては、酸性領域のpHが測定可能なpH試験紙(例えば測定領域が、pH0.0~14.0、pH1.0~14.0、pH0.5~5.0のもの等)を用いることができ、例えばアズワン社製のpH試験紙「pH試験紙pH1~14」(pH測定範囲pH1.0~14.0)等が挙げられる。
【0037】
上述のように、酸性分散剤のpHが上記のガラス電極法と指示薬法の双方で測定可能な場合、本発明においては酸性分散剤のpHはガラス電極法の測定値で定義する。酸性分散剤が30質量%エタノール水溶液に不溶で、分散剤濃度0.067g/mLの30質量%エタノール水溶液が調製できない等の理由でガラス電極法による測定ができない場合、分散剤のpHは上記指示薬法のpHで定義する。
【0038】
(C)酸性分散剤のpHとしては、好ましくは4未満、より好ましくは3.8以下、さらに好ましくは3.5以下、3.3以下である。下限は、好ましくは2以上、さらに好ましくは2.2以上、より好ましくは2.4以上である。
【0039】
(C)酸性分散剤は、温度25℃で液状の酸性分散剤と、温度25℃で固体状の酸性分散剤とがある。磁性ペーストは、(C)酸性分散剤として、磁性ペーストの粘度をより低下させる観点から、液状の酸性分散剤を含むことが好ましい。
【0040】
(C)酸性分散剤としては、例えば、適切な種類の酸性の界面活性剤を用いることができる。(C)酸性分散剤は、カルボキシ基、スルホ基、リン酸基等の酸性官能基を有していてもよい。また、(C)酸性分散剤としては、ポリオキシアルキレン鎖、ポリエーテル鎖等を有するポリエーテル化合物であることが好ましい。(C)酸性分散剤としては、ポリエーテル鎖及び酸性官能基を有する化合物であることが好ましい。
【0041】
(C)酸性分散剤は、市販品を用いることができる。その具体例としては、日油社製の「C-2093I」、「SC-1015F(主鎖にイオン性基、グラフト鎖にポリオキシアルキレン鎖を有する多官能櫛型の機能性ポリマー)」、楠本化成社製の「DA―375(ポリエーテル燐酸エステル化合物系分散剤)」;東邦化学工業社製「フォスファノール」シリーズの「RS-410」、「RS-610」、「RS-710」(pHは1.9)(リン酸エステル系分散剤);日油社製「マリアリム」シリーズの「AKM-0531」、「AFB-1521」、「SC-0505K」、「SC-0708A」が挙げられる。(C)酸性分散剤は1種単独で用いてもよく、又は2種以上を併用してもよい。
【0042】
(C)酸性分散剤の含有量は、本発明の効果を顕著に発揮させる観点から、磁性ペースト中の不揮発成分を100質量%とした場合、好ましくは0.1質量%以上、より好ましくは0.3質量%以上、さらに好ましくは0.5質量%以上であり、上限は、好ましくは5質量%以下、より好ましくは4質量%以下、さらに好ましくは3質量%以下である。
【0043】
磁性ペースト中の不揮発成分を100質量%とした場合の(C)酸性分散剤の質量をC1とし、磁性ペースト中の不揮発成分を100質量%とした場合の(A)磁性粉体の質量をA1としたとき、(C1/A1)×100は、好ましくは0.1以上、より好ましくは0.5以上、さらに好ましくは1以上であり、好ましくは10以下、より好ましくは5以下、さらに好ましくは3以下である。(C1/A1)×100が斯かる範囲内となるように(A)成分及び(C)の質量を調整することにより、本発明の所望の効果をより顕著に得ることが可能となる。
【0044】
(C)酸性分散剤の好ましい態様としては、以下のものが挙げられる。
即ち、一実施形態において、(C)酸性分散剤は、東邦化学工業社製「RS-710」でありうる。
また、別の一実施形態において、(C)酸性分散剤は、(C)酸性分散剤(但し、東邦化学工業社製「RS-710」を除く。)でありうる。
また、さらに別の一実施形態において、(C)酸性分散剤は、東邦化学工業社製「RS-710」、「RS-610」、又は「RS-710」でありうる。
また、さらに別の一実施形態において、(C)酸性分散剤は、(C)酸性分散剤(但し、東邦化学工業社製「RS-710」、「RS-610」、及び「RS-710」を除く。)でありうる。
また、さらに別の一実施形態において、(C)酸性分散剤は、リン酸エステル系分散剤でありうる。
また、さらに別の一実施形態において、(C)酸性分散剤は、(C)酸性分散剤(但し、リン酸エステル系分散剤を除く。)でありうる。
【0045】
<(D)硬化剤>
磁性ペーストは、(D)硬化剤を含有する。(D)硬化剤には、(B)エポキシ樹脂を硬化する機能を有するエポキシ樹脂硬化剤と、(B)エポキシ樹脂の硬化速度を促進させる機能を有する硬化促進剤とがある。磁性ペーストは、(D)硬化剤として、エポキシ樹脂硬化剤を含むことが好ましい。(D)硬化剤としては、エポキシ樹脂硬化剤とともに硬化促進剤を含んでいてもよい。硬化促進剤は、通常、エポキシ樹脂硬化剤と併用して用いる。
【0046】
-エポキシ樹脂硬化剤-
エポキシ樹脂硬化剤としては、例えば、フェノール系エポキシ樹脂硬化剤、ナフトール系エポキシ樹脂硬化剤、活性エステル系エポキシ樹脂硬化剤、酸無水物系エポキシ樹脂硬化剤、ベンゾオキサジン系エポキシ樹脂硬化剤、シアネートエステル系エポキシ樹脂硬化剤、及びイミダゾール系エポキシ樹脂硬化剤が挙げられる。エポキシ樹脂硬化剤としては、磁性ペーストの粘度を低下させる観点から、酸無水物系エポキシ樹脂硬化剤、及びイミダゾール系エポキシ樹脂硬化剤が好ましく、さらに得られる硬化物の機械強度の観点からイミダゾール系エポキシ樹脂硬化剤がより好ましい。エポキシ樹脂硬化剤は1種単独で用いてもよく、又は2種以上を併用してもよい。
【0047】
フェノール系エポキシ樹脂硬化剤及びナフトール系エポキシ樹脂硬化剤としては、耐熱性及び耐水性の観点から、ノボラック構造を有するフェノール系エポキシ樹脂硬化剤、又はノボラック構造を有するナフトール系エポキシ樹脂硬化剤が好ましい。フェノール系エポキシ樹脂硬化剤としては、含窒素フェノール系エポキシ樹脂硬化剤が好ましく、トリアジン骨格含有フェノール系エポキシ樹脂硬化剤がより好ましく、トリアジン骨格含有フェノールノボラックエポキシ樹脂硬化剤がさらに好ましい。
【0048】
フェノール系エポキシ樹脂硬化剤及びナフトール系エポキシ樹脂硬化剤の具体例としては、明和化成社製の「MEH-7700」、「MEH-7810」、「MEH-7851」、日本化薬社製の「NHN」、「CBN」、「GPH」、新日鉄住金化学社製の「SN170」、「SN180」、「SN190」、「SN475」、「SN485」、「SN495V」、「SN375」、「SN395」、DIC社製の「TD-2090」、「LA-7052」、「LA-7054」、「LA-1356」、「LA-3018-50P」、「EXB-9500」、「HPC-9500」、「KA-1160」、「KA-1163」、「KA-1165」、群栄化学社製の「GDP-6115L」、「GDP-6115H」等が挙げられる。
【0049】
活性エステル系エポキシ樹脂硬化剤としては、特に制限はないが、一般にフェノールエステル類、チオフェノールエステル類、N-ヒドロキシアミンエステル類、複素環ヒドロキシ化合物のエステル類等の反応活性の高いエステル基を1分子中に2個以上有する化合物が好ましく用いられる。当該活性エステル系エポキシ樹脂硬化剤は、カルボン酸化合物及び/又はチオカルボン酸化合物とヒドロキシ化合物及び/又はチオール化合物との縮合反応によって得られるものが好ましい。特に耐熱性向上の観点から、カルボン酸化合物とヒドロキシ化合物とから得られる活性エステル系エポキシ樹脂硬化剤が好ましく、カルボン酸化合物とフェノール化合物及び/又はナフトール化合物とから得られる活性エステル系エポキシ樹脂硬化剤がより好ましい。カルボン酸化合物としては、例えば安息香酸、酢酸、コハク酸、マレイン酸、イタコン酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、ピロメリット酸等が挙げられる。フェノール化合物又はナフトール化合物としては、例えば、ハイドロキノン、レゾルシン、ビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールS、フェノールフタリン、メチル化ビスフェノールA、メチル化ビスフェノールF、メチル化ビスフェノールS、フェノール、o-クレゾール、m-クレゾール、p-クレゾール、カテコール、α-ナフトール、β-ナフトール、1,5-ジヒドロキシナフタレン、1,6-ジヒドロキシナフタレン、2,6-ジヒドロキシナフタレン、ジヒドロキシベンゾフェノン、トリヒドロキシベンゾフェノン、テトラヒドロキシベンゾフェノン、フロログルシン、ベンゼントリオール、ジシクロペンタジエン型ジフェノール化合物、フェノールノボラック等が挙げられる。ここで、「ジシクロペンタジエン型ジフェノール化合物」とは、ジシクロペンタジエン1分子にフェノール2分子が縮合して得られるジフェノール化合物をいう。
【0050】
具体的には、ジシクロペンタジエン型ジフェノール構造を含む活性エステル系エポキシ樹脂硬化剤、ナフタレン構造を含む活性エステル系エポキシ樹脂硬化剤、フェノールノボラックのアセチル化物を含む活性エステル系エポキシ樹脂硬化剤、フェノールノボラックのベンゾイル化物を含む活性エステル系エポキシ樹脂硬化剤が好ましい。「ジシクロペンタジエン型ジフェノール構造」とは、フェニレン-ジシクロペンチレン-フェニレンからなる2価の構造を表す。
【0051】
活性エステル系エポキシ樹脂硬化剤の市販品としては、ジシクロペンタジエン型ジフェノール構造を含む活性エステル系エポキシ樹脂硬化剤として、DIC社製の「EXB9451」、「EXB9460」、「EXB9460S」、「HPC-8000-65T」、「HPC-8000H-65TM」、「EXB-8000L-65TM」;ナフタレン構造を含む活性エステル化合物としてDIC社製の「EXB9416-70BK」;フェノールノボラックのアセチル化物を含む活性エステル系エポキシ樹脂硬化剤として三菱ケミカル社製の「DC808」;フェノールノボラックのベンゾイル化物を含む活性エステル系エポキシ樹脂硬化剤として三菱ケミカル社製の「YLH1026」、「YLH1030」、「YLH1048」;フェノールノボラックのアセチル化物である活性エステル系エポキシ樹脂硬化剤として三菱ケミカル社製の「DC808」、等が挙げられる。
【0052】
酸無水物系エポキシ樹脂硬化剤としては、1分子内中に1個以上の酸無水物基を有するエポキシ樹脂硬化剤が挙げられる。酸無水物系エポキシ樹脂硬化剤の具体例としては、無水フタル酸、テトラヒドロ無水フタル酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸、メチルテトラヒドロ無水フタル酸、メチルヘキサヒドロ無水フタル酸、メチルナジック酸無水物、水素化メチルナジック酸無水物、トリアルキルテトラヒドロ無水フタル酸、ドデセニル無水コハク酸、5-(2,5-ジオキソテトラヒドロ-3-フラニル)-3-メチル-3-シクロヘキセン-1,2-ジカルボン酸無水物、無水トリメリット酸、無水ピロメリット酸、ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、オキシジフタル酸二無水物、3,3’-4,4’-ジフェニルスルホンテトラカルボン酸二無水物、1,3,3a,4,5,9b-ヘキサヒドロ-5-(テトラヒドロ-2,5-ジオキソ-3-フラニル)-ナフト[1,2-C]フラン-1,3-ジオン、エチレングリコールビス(アンヒドロトリメリテート)、スチレンとマレイン酸とが共重合したスチレン・マレイン酸樹脂などのポリマー型の酸無水物などが挙げられる。
【0053】
酸無水物系エポキシ樹脂硬化剤の市販品としては、新日本理化社製の「HNA-100」、「MH-700」等が挙げられる。
【0054】
ベンゾオキサジン系エポキシ樹脂硬化剤の具体例としては、昭和高分子社製の「HFB2006M」、四国化成工業社製の「P-d」、「F-a」が挙げられる。
【0055】
シアネートエステル系エポキシ樹脂硬化剤としては、例えば、ビスフェノールAジシアネート、ポリフェノールシアネート、オリゴ(3-メチレン-1,5-フェニレンシアネート)、4,4’-メチレンビス(2,6-ジメチルフェニルシアネート)、4,4’-エチリデンジフェニルジシアネート、ヘキサフルオロビスフェノールAジシアネート、2,2-ビス(4-シアネート)フェニルプロパン、1,1-ビス(4-シアネートフェニルメタン)、ビス(4-シアネート-3,5-ジメチルフェニル)メタン、1,3-ビス(4-シアネートフェニル-1-(メチルエチリデン))ベンゼン、ビス(4-シアネートフェニル)チオエーテル、及びビス(4-シアネートフェニル)エーテル等の2官能シアネート樹脂、フェノールノボラック及びクレゾールノボラック等から誘導される多官能シアネート樹脂、これらシアネート樹脂が一部トリアジン化したプレポリマーなどが挙げられる。シアネートエステル系エポキシ樹脂硬化剤の具体例としては、ロンザジャパン社製の「PT30」及び「PT60」(いずれもフェノールノボラック型多官能シアネートエステル樹脂)、「BA230」、「BA230S75」(ビスフェノールAジシアネートの一部又は全部がトリアジン化され三量体となったプレポリマー)等が挙げられる。
【0056】
イミダゾール系エポキシ樹脂硬化剤としては、例えば、2-メチルイミダゾール、2-ウンデシルイミダゾール、2-ヘプタデシルイミダゾール、1,2-ジメチルイミダゾール、2-エチル-4-メチルイミダゾール、1,2-ジメチルイミダゾール、2-エチル-4-メチルイミダゾール、2-フェニルイミダゾール、2-フェニル-4-メチルイミダゾール、1-ベンジル-2-メチルイミダゾール、1-ベンジル-2-フェニルイミダゾール、1-シアノエチル-2-メチルイミダゾール、1-シアノエチル-2-ウンデシルイミダゾール、1-シアノエチル-2-エチル-4-メチルイミダゾール、1-シアノエチル-2-フェニルイミダゾール、1-シアノエチル-2-ウンデシルイミダゾリウムトリメリテイト、1-シアノエチル-2-フェニルイミダゾリウムトリメリテイト、2,4-ジアミノ-6-[2’-メチルイミダゾリル-(1’)]-エチル-s-トリアジン、2,4-ジアミノ-6-[2’-ウンデシルイミダゾリル-(1’)]-エチル-s-トリアジン、2,4-ジアミノ-6-[2’-エチル-4’-メチルイミダゾリル-(1’)]-エチル-s-トリアジン、2,4-ジアミノ-6-[2’-メチルイミダゾリル-(1’)]-エチル-s-トリアジンイソシアヌル酸付加物、2-フェニルイミダゾールイソシアヌル酸付加物、2-フェニル-4,5-ジヒドロキシメチルイミダゾール、2-フェニル-4-メチル-5-ヒドロキシメチルイミダゾール、2,3-ジヒドロ-1H-ピロロ[1,2-a]ベンズイミダゾール、1-ドデシル-2-メチル-3-ベンジルイミダゾリウムクロライド、2-メチルイミダゾリン、2-フェニルイミダゾリン等のイミダゾール化合物及びイミダゾール化合物とエポキシ樹脂とのアダクト体が挙げられ、2-エチル-4-メチルイミダゾール、1-ベンジル-2-フェニルイミダゾールが好ましい。
【0057】
イミダゾール系エポキシ樹脂硬化剤としては、市販品を用いてもよく、例えば、四国化成工業社製の「2MZA-PW」、「2PHZ-PW」、三菱ケミカル社製の「P200-H50」等が挙げられる。
【0058】
エポキシ樹脂とエポキシ樹脂硬化剤との量比は、[エポキシ樹脂のエポキシ基の合計数]:[エポキシ樹脂硬化剤の反応基の合計数]の比率で、1:0.2~1:2の範囲であることが好ましく、1:0.3~1:1.5の範囲であることがより好ましく、1:0.4~1:1の範囲であることがさらに好ましい。ここで、エポキシ樹脂硬化剤の反応基とは、活性水酸基、活性エステル基等であり、エポキシ樹脂硬化剤の種類によって異なる。また、エポキシ樹脂のエポキシ基の合計数とは、各エポキシ樹脂の不揮発成分の質量をエポキシ当量で除した値をすべてのエポキシ樹脂について合計した値であり、エポキシ樹脂硬化剤の反応基の合計数とは、各エポキシ樹脂硬化剤の不揮発成分の質量を反応基当量で除した値をすべてのエポキシ樹脂硬化剤について合計した値である。エポキシ樹脂とエポキシ樹脂硬化剤との量比をかかる範囲内とすることにより、硬化物としたときの耐熱性がより向上する。
【0059】
-硬化促進剤-
硬化促進剤としては、例えば、アミン系硬化促進剤、イミダゾール系硬化促進剤、リン系硬化促進剤、グアニジン系硬化促進剤、金属系硬化促進剤等が挙げられる。硬化促進剤は、磁性ペーストの粘度を低下させる観点から、アミン系硬化促進剤、イミダゾール系硬化促進剤、及びグアニジン系硬化促進剤が好ましく、さらに得られる硬化物の機械強度を向上させる観点からイミダゾール系硬化促進剤がより好ましい。硬化促進剤は1種単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。硬化促進剤は一般的にエポキシ樹脂硬化剤と併用して用いられる。
【0060】
アミン系硬化促進剤としては、例えば、トリエチルアミン、トリブチルアミン等のトリアルキルアミン、4-ジメチルアミノピリジン、ベンジルジメチルアミン、2,4,6,-トリス(ジメチルアミノメチル)フェノール、1,8-ジアザビシクロ(5,4,0)-ウンデセン等が挙げられ、4-ジメチルアミノピリジン、1,8-ジアザビシクロ(5,4,0)-ウンデセンが好ましい。
【0061】
アミン系硬化促進剤としては、市販品を用いてもよく、例えば、味の素ファインテクノ社製の「PN-50」、「PN-23」、「MY-25」等が挙げられる。
【0062】
イミダゾール系硬化促進剤としては、前記のイミダゾール系エポキシ樹脂硬化剤と同様である。前記イミダゾール系エポキシ樹脂硬化剤は、他のエポキシ樹脂硬化剤と併用して用いる場合、硬化促進剤として機能する場合がある。
【0063】
リン系硬化促進剤としては、例えば、トリフェニルホスフィン、ホスホニウムボレート化合物、テトラフェニルホスホニウムテトラフェニルボレート、n-ブチルホスホニウムテトラフェニルボレート、テトラブチルホスホニウムデカン酸塩、(4-メチルフェニル)トリフェニルホスホニウムチオシアネート、テトラフェニルホスホニウムチオシアネート、ブチルトリフェニルホスホニウムチオシアネート等が挙げられ、トリフェニルホスフィン、テトラブチルホスホニウムデカン酸塩が好ましい。
【0064】
グアニジン系硬化促進剤としては、例えば、ジシアンジアミド、1-メチルグアニジン、1-エチルグアニジン、1-シクロヘキシルグアニジン、1-フェニルグアニジン、1-(o-トリル)グアニジン、ジメチルグアニジン、ジフェニルグアニジン、トリメチルグアニジン、テトラメチルグアニジン、ペンタメチルグアニジン、1,5,7-トリアザビシクロ[4.4.0]デカ-5-エン、7-メチル-1,5,7-トリアザビシクロ[4.4.0]デカ-5-エン、1-メチルビグアニド、1-エチルビグアニド、1-n-ブチルビグアニド、1-n-オクタデシルビグアニド、1,1-ジメチルビグアニド、1,1-ジエチルビグアニド、1-シクロヘキシルビグアニド、1-アリルビグアニド、1-フェニルビグアニド、1-(o-トリル)ビグアニド等が挙げられ、ジシアンジアミド、1,5,7-トリアザビシクロ[4.4.0]デカ-5-エンが好ましい。
【0065】
金属系硬化促進剤としては、例えば、コバルト、銅、亜鉛、鉄、ニッケル、マンガン、スズ等の金属の、有機金属錯体又は有機金属塩が挙げられる。有機金属錯体の具体例としては、コバルト(II)アセチルアセトナート、コバルト(III)アセチルアセトナート等の有機コバルト錯体、銅(II)アセチルアセトナート等の有機銅錯体、亜鉛(II)アセチルアセトナート等の有機亜鉛錯体、鉄(III)アセチルアセトナート等の有機鉄錯体、ニッケル(II)アセチルアセトナート等の有機ニッケル錯体、マンガン(II)アセチルアセトナート等の有機マンガン錯体等が挙げられる。有機金属塩としては、例えば、オクチル酸亜鉛、オクチル酸錫、ナフテン酸亜鉛、ナフテン酸コバルト、ステアリン酸スズ、ステアリン酸亜鉛等が挙げられる。
【0066】
(D)硬化剤の含有量は、磁性ペースト中の不揮発成分を100質量%とした場合、磁性ペーストの粘度を下げ、粘度のポットライフを向上させる観点から、磁性ペースト中の樹脂成分を100質量%とした場合、好ましくは0.1質量%以上、より好ましくは0.3質量%以上、さらに好ましくは0.5質量%以上であり、上限は、好ましくは5質量%以下、より好ましくは3質量%以下、さらに好ましくは1質量%以下である。
【0067】
磁性ペースト中の不揮発成分を100質量%とした場合の(D)硬化剤の質量をD1とし、磁性ペースト中の不揮発成分を100質量%とした場合の(C)酸性分散剤の質量をC1としたとき、C1/D1は、好ましくは0.1以上、より好ましくは0.5以上、さらに好ましくは1以上であり、好ましくは10以下、より好ましくは5以下、さらに好ましくは3以下である。C1/D1が斯かる範囲内となるように(C)成分及び(D)の質量を調整することにより、本発明の所望の効果をより顕著に得ることが可能となる。
【0068】
磁性ペースト中の不揮発成分を100質量%とした場合の(A)磁性粉体の質量をA1とし、磁性ペースト中の不揮発成分を100質量%とした場合の(B)エポキシ樹脂の質量をB1とし、磁性ペースト中の不揮発成分を100質量%とした場合の(C)酸性分散剤の質量をC1とし、磁性ペースト中の不揮発成分を100質量%とした場合の(D)硬化剤の質量をD1としたとき、(B1+C1+D1)/A1は、好ましくは0.01以上、より好ましくは0.05以上、さらに好ましくは0.1以上であり、好ましくは1以下、より好ましくは0.5以下、さらに好ましくは0.3以下である。(B1+C1+D1)/A1が斯かる範囲内となるように(A)成分~(D)成分の質量を調整することにより、本発明の所望の効果をより顕著に得ることが可能となる。
【0069】
磁性ペースト中の不揮発成分を100質量%とした場合の(A)磁性粉体の質量をA1とし、磁性ペースト中の不揮発成分を100質量%とした場合の(C)酸性分散剤の質量をC1とし、磁性ペースト中の不揮発成分を100質量%とした場合の(D)硬化剤の質量をD1としたとき、((C1+D1)/A1)×100は、好ましくは0.1以上、より好ましくは0.5以上、さらに好ましくは1以上であり、好ましくは10以下、より好ましくは5以下、さらに好ましくは3以下である。((C1+D1)/A1)×100が斯かる範囲内となるように(A)成分、(C)成分及び(D)成分の質量を調整することにより、本発明の所望の効果をより顕著に得ることが可能となる。
【0070】
<(E)その他の添加剤>
磁性ペーストは、さらに必要に応じて、(E)その他の添加剤を含んでいてもよく、斯かる他の添加剤としては、例えば、ホウ酸トリエチル等の硬化遅延剤;無機充填材(但し、磁性粉体に該当するものは除く);熱可塑性樹脂;難燃剤;有機充填材;有機銅化合物、有機亜鉛化合物及び有機コバルト化合物等の有機金属化合物;並びに増粘剤;消泡剤;レベリング剤;密着性付与剤;及び着色剤等の樹脂添加剤等が挙げられる。
【0071】
上述した磁性ペースト中に含まれる有機溶剤の含有量は、磁性ペーストの全質量に対して、好ましくは1.0質量%未満、より好ましくは0.8質量%以下、さらに好ましくは0.5質量%以下、特に好ましくは0.1質量%以下である。下限は、特に制限はないが0.001質量%以上、又は含有しないことである。磁性ペーストは、有機溶剤を含まなくてもその粘度を低くすることができる。磁性ペースト中の有機溶剤の量が少ないことにより、有機溶剤の揮発によるボイドの発生を抑制することができる。
【0072】
また、磁性ペーストは、例えば、ドデシルベンゼルスルホン酸ナトリウム、ラウリル酸ナトリウム、ポリオキシエチレンアルキルエーテルサルフェートのアンモニウム塩等のアニオン性分散剤;オルガノシロキサン系分散剤、アセチレングリコール、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルエステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルアミン、ポリオキシエチレンアルキルアミド等の非イオン性分散剤等を含んでいてもよく、又含まなくてもよい。
オルガノシロキサン系分散剤としては、市販品として、ビックケミー社製「BYK347」、「BYK348」等が挙げられる。
ポリオキシアルキレン系分散剤としては、市販品として、日油社製「HKM-50A」、「HKM―150A」等が挙げられる。ポリオキシアルキレン系分散剤とは、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルエステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルアミン、ポリオキシエチレンアルキルアミド等をまとめた総称である。
アセチレングリコールとしては、市販品として、Air Products and Chemicals Inc.製「サーフィノール」シリーズの「82」、「104」、「440」、「465」及び「485」、並びに「オレフィンY」等が挙げられる。
【0073】
磁性ペーストは、一実施形態において、磁性粉体、有機化された層状ケイ酸塩鉱物、及びバインダー樹脂を含み得る。また、磁性ペーストは、他の一実施形態において、磁性粉体、有機化された層状ケイ酸塩鉱物、及びバインダー樹脂を含む磁性ペーストは除かれ得る。これらの実施形態に係る磁性ペーストに含まれ得る、磁性粉体、有機化された層状ケイ酸塩鉱物、及びバインダー樹脂の詳細は、特願2018-139537号の記載を参酌することができる。
【0074】
磁性ペーストは、一実施形態において、平均粒径が1μm以上である磁性粉体、エポキシ樹脂、反応性希釈剤、硬化剤、及び平均粒径が1μm未満であるフィラーを含み得る。また、磁性ペーストは、他の一実施形態において、平均粒径が1μm以上である磁性粉体、エポキシ樹脂、反応性希釈剤、硬化剤、及び平均粒径が1μm未満であるフィラーを含む磁性ペーストは除かれ得る。これらの実施形態に係る磁性ペーストに含まれ得る、平均粒径が1μm以上である磁性粉体、エポキシ樹脂、反応性希釈剤、硬化剤、及び平均粒径が1μm未満であるフィラーの詳細は、特願2018-219667号の記載を参酌することができる。
【0075】
<磁性ペーストの製造方法>
磁性ペーストは、例えば、配合成分を、3本ロール、回転ミキサーなどの撹拌装置を用いて撹拌する方法によって製造できる。
【0076】
<磁性ペーストの物性等>
磁性ペーストは、粘度が低いという特性を示す。よって、磁性ペーストは印刷性に優れる。25℃における粘度は、好ましくは200Pa・s以下、より好ましくは150Pa・s以下、さらに好ましくは100Pa・s未満であり、好ましくは10Pa・s以上、好ましくは20Pa・s以上、より好ましくは30Pa・s以上である。粘度は、例えば、E型粘度計(東機産業社製 RE-80U)を用いて測定することができ、詳細は、後述する実施例に記載の方法で測定できる。
【0077】
磁性ペーストは、通常、粘度のポットライフが向上するという特性を示す。具体的に、磁性ペーストを1週間放置後の25℃における粘度は、好ましくは200Pa・s以下、より好ましくは180Pa・s以下、さらに好ましくは150Pa・s以下、100Pa・s未満であり、好ましくは30Pa・s以上、好ましくは40Pa・s以上、より好ましくは50Pa・s以上である。磁性ペーストを1週間放置後の粘度は、例えば、E型粘度計(東機産業社製 RE-80U)を用いて測定することができ、詳細は、後述する実施例に記載の方法で測定できる。
【0078】
磁性ペーストを、180℃で90分間加熱することにより得られた硬化物は、機械的強度(引張破断強度)に優れるという特性を示す。よって、前記硬化物は、引張破断強度に優れる磁性層をもたらす。引張破断強度としては、好ましくは40MPa以上、より好ましくは45MPa以上、さらに好ましくは50MPa以上である。上限は特に限定されないが、100MPa以下等とし得る。引張破断強度は、後述する実施例に記載の方法で測定できる。
【0079】
磁性ペーストを、180℃で90分間加熱することにより得られた硬化物は、めっき層との間のめっき密着性に優れるという特性を示す。よって、前記硬化物は、めっき層との間の密着強度に優れる磁性層をもたらす。めっき密着性の表す密着強度としては、好ましくは0.2kgf/cm以上、より好ましくは0.21kgf/cm以上、さらに好ましくは0.22kgf/cm以上である。上限は特に限定されないが、10kgf/cm以下等とし得る。密着強度は、後述する実施例に記載の方法で測定できる。
【0080】
磁性ペーストを、180℃で90分間加熱することにより得られた硬化物は、通常、周波数100MHzにおける比透磁率が高いという特性を示す。よって、前記硬化物は、比透磁率が高い磁性層をもたらす。この硬化物の周波数100MHzにおける比透磁率は、好ましくは1以上、より好ましくは2以上、さらに好ましくは4以上である。また、上限は特に限定されないが20以下等とし得る。
【0081】
磁性ペーストを、180℃で90分間加熱することにより得られた硬化物は、通常、周波数100MHzにおける磁性損失が低いという特性を示す。よって、前記硬化物は、磁性損失が低い磁性層をもたらす。この硬化物の周波数100MHzにおける磁性損失は、好ましくは1以下、より好ましくは0.9以下、さらに好ましくは0.8以下である。下限は特に限定されないが0.001以上等とし得る。
【0082】
[硬化物]
本発明の硬化物は、本発明の磁性ペーストを硬化させて得られる。磁性ペーストの硬化条件は、後述する工程(2)の条件を使用してよい。また、磁性ペーストを熱硬化させる前に予備加熱をしてもよく、加熱は予備加熱を含めて複数回行ってもよい。
【0083】
[磁性シート]
磁性シートは、支持体と、該支持体上に設けられた、磁性ペーストで形成された樹脂組成物層とを含む。
【0084】
樹脂組成物層の厚さは、薄型化の観点から、好ましくは250μm以下、より好ましくは200μm以下、さらに好ましくは150μm以下、100μm以下である。樹脂組成物層の厚さの下限は、特に限定されないが、通常、5μm以上等とし得る。
【0085】
支持体としては、例えば、プラスチック材料からなるフィルム、金属箔、離型紙が挙げられ、プラスチック材料からなるフィルム、金属箔が好ましい。
【0086】
支持体としてプラスチック材料からなるフィルムを使用する場合、プラスチック材料としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート(以下「PET」と略称することがある。)、ポリエチレンナフタレート(以下「PEN」と略称することがある。)等のポリエステル、ポリカーボネート(以下「PC」と略称することがある。)、ポリメチルメタクリレート(PMMA)等のアクリル、環状ポリオレフィン、トリアセチルセルロース(TAC)、ポリエーテルサルファイド(PES)、ポリエーテルケトン、ポリイミド等が挙げられる。中でも、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレートが好ましく、安価なポリエチレンテレフタレートが特に好ましい。
【0087】
支持体として金属箔を使用する場合、金属箔としては、例えば、銅箔、アルミニウム箔等が挙げられ、銅箔が好ましい。銅箔としては、銅の単金属からなる箔を用いてもよく、銅と他の金属(例えば、スズ、クロム、銀、マグネシウム、ニッケル、ジルコニウム、ケイ素、チタン等)との合金からなる箔を用いてもよい。
【0088】
支持体は、樹脂組成物層と接合する面にマット処理、コロナ処理を施してあってもよい。
【0089】
また、支持体としては、樹脂組成物層と接合する面に離型層を有する離型層付き支持体を使用してもよい。離型層付き支持体の離型層に使用する離型剤としては、例えば、アルキド樹脂、ポリオレフィン樹脂、ウレタン樹脂、及びシリコーン樹脂からなる群から選択される1種以上の離型剤が挙げられる。離型層付き支持体は、市販品を用いてもよく、例えば、アルキド樹脂系離型剤を主成分とする離型層を有するPETフィルムである、リンテック社製の「SK-1」、「AL-5」、「AL-7」、東レ社製の「ルミラーT60」、帝人社製の「ピューレックス」、ユニチカ社製の「ユニピール」等が挙げられる。
【0090】
支持体の厚みとしては、特に限定されないが、5μm~75μmの範囲が好ましく、10μm~60μmの範囲がより好ましい。なお、離型層付き支持体を使用する場合、離型層付き支持体全体の厚さが上記範囲であることが好ましい。
【0091】
磁性シートは、例えば、有機溶剤に磁性ペーストを溶解した樹脂ワニスを調製し、この樹脂ワニスを、ダイコーター等を用いて支持体上に塗布し、更に乾燥させて樹脂組成物層を形成させることにより製造することができる。なお、ダイコーター等を用いて支持体上に直接磁性ペーストを塗布し、樹脂組成物層を形成させることにより製造することもできる。
【0092】
有機溶剤としては、例えば、アセトン、メチルエチルケトン(MEK)及びシクロヘキサノン等のケトン類、酢酸エチル、酢酸ブチル、セロソルブアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート及びカルビトールアセテート等の酢酸エステル類、セロソルブ及びブチルカルビトール等のカルビトール類、トルエン及びキシレン等の芳香族炭化水素類、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド(DMAc)及びN-メチルピロリドン等のアミド系溶媒等を挙げることができる。有機溶剤は1種単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0093】
乾燥は、加熱、熱風吹きつけ等の公知の方法により実施してよい。乾燥条件は特に限定されないが、樹脂組成物層中の有機溶剤の含有量が10質量%以下、好ましくは5質量%以下となるように乾燥させる。樹脂ワニス中の有機溶剤の沸点によっても異なるが、例えば30質量%~60質量%の有機溶剤を含む樹脂ワニスを用いる場合、50℃~150℃で3分間~10分間乾燥させることにより、樹脂組成物層を形成することができる。
【0094】
磁性シートにおいて、樹脂組成物層の支持体と接合していない面(即ち、支持体とは反対側の面)には、支持体に準じた保護フィルムをさらに積層することができる。保護フィルムの厚さは、特に限定されるものではないが、例えば、1μm~40μmである。保護フィルムを積層することにより、樹脂組成物層の表面へのゴミ等の付着やキズを抑制することができる。磁性シートは、ロール状に巻きとって保存することが可能である。磁性シートが保護フィルムを有する場合、保護フィルムを剥がすことによって使用可能となる。
【0095】
[回路基板及びその製造方法]
第1実施形態の回路基板は、スルーホールを有する基板と、前記スルーホールに充填した、本発明の磁性ペーストの硬化物とを含む。また、第2実施形態の回路基板は、磁性シートの樹脂組成物層の硬化物により形成された磁性層を含む。以下、回路基板の製造方法の第1実施形態及び第2実施形態について説明する。但し、本発明に係る回路基板の製造方法は、以下に例示する第1及び第2実施形態に限定されない。
【0096】
<第1実施形態>
第1実施形態の回路基板は、例えば、下記の工程(1)~(4)を含む製造方法によって製造する。第1実施形態では、磁性ペーストを用いて磁性層を形成することが好ましい。
(1)スルーホールを有する基板のスルーホールに磁性ペーストを充填する工程、
(2)該磁性ペーストを熱硬化させ、硬化物を得る工程、
(3)硬化物又は磁性ペーストの表面を研磨する工程、及び
(4)硬化物を研磨した面に導体層を形成する工程、を含む。
本発明の回路基板の製造方法は、工程(1)~(4)の順で行ってもよく、工程(3)の後に工程(2)を行ってもよい。
【0097】
以下、回路基板を製造するにあたっての上記の工程(1)~(4)について詳細に説明する。
【0098】
<工程(1)>
工程(1)を行うにあたって、磁性ペーストを準備する工程を含んでいてもよい。磁性ペーストは、上記において説明したとおりである。
【0099】
また、工程(1)を行うにあたって、
図1に一例を示すように、支持基板11、並びに該支持基板11の両表面に設けられた銅箔等の金属からなる第1金属層12、及び第2金属層13を備えるコア基板10を準備する工程を含んでいてもよい。支持基板11の材料の例としては、ガラスエポキシ基板、金属基板、ポリエステル基板、ポリイミド基板、BTレジン基板、熱硬化型ポリフェニレンエーテル基板等の絶縁性基材が挙げられる。第1及び第2金属層の材料の例としては、キャリア付銅箔、後述する導体層の材料等が挙げられる。
【0100】
また、
図2に一例を示すように、コア基板10にスルーホール14を形成する工程を含んでいてもよい。スルーホール14は、例えば、ドリル、レーザー照射、プラズマ照射等により形成することができる。具体的には、ドリル等を用いてコア基板10に貫通穴を形成することにより、スルーホール14を形成することができる。
【0101】
スルーホール14の形成は、市販されているドリル装置を用いて実施することができる。市販されているドリル装置としては、例えば、日立ビアメカニクス社製「ND-1S211」等が挙げられる。
【0102】
コア基板10にスルーホール14を形成した後、
図3に一例を示すように、コア基板10の粗化処理を行い、スルーホール14内、第1金属層12の表面上、及び第2金属層13の表面上にめっき層20を形成する工程を含んでいてもよい。
【0103】
前記の粗化処理としては、乾式及び湿式のいずれの粗化処理を行ってもよい。乾式の粗化処理の例としては、プラズマ処理等が挙げられる。また、湿式の粗化処理の例としては、膨潤液による膨潤処理、酸化剤による粗化処理、及び、中和液による中和処理をこの順に行う方法が挙げられる。
【0104】
めっき層20は、めっき法により形成され、めっき法によりめっき層20が形成される手順は、後述する工程(4)における導体層の形成と同様である。
【0105】
スルーホール14内にめっき層20を形成されたコア基板10を用意した後で、
図4に一例を示すように、磁性ペースト30aをスルーホール14へ充填する。充填方法としては、例えば、スキージを介してスルーホール14へ磁性ペースト30aを充填する方法、カートリッジを介して磁性ペースト30aを充填する方法、マスク印刷して磁性ペースト30aを充填する方法、ロールコート法、インクジェット法等が挙げられる。
【0106】
<工程(2)>
工程(2)では、スルーホール14内に磁性ペースト30aを充填後、磁性ペースト30aを熱硬化して、
図5に一例を示すように、スルーホール14内に硬化物層(磁性層)30を形成する。磁性ペースト30aの熱硬化条件は、磁性ペースト30aの組成や種類によっても異なるが、硬化温度は好ましくは120℃以上、より好ましくは130℃以上、さらに好ましくは150℃以上であり、好ましくは240℃以下、より好ましくは220℃以下、さらに好ましくは200℃以下である。磁性ペースト30aの硬化時間は、好ましくは5分以上、より好ましくは10分以上、さらに好ましくは15分以上であり、好ましくは120分以下、より好ましくは100分以下、さらに好ましくは90分以下である。
【0107】
工程(2)における磁性層30の硬化度としては、好ましくは80%以上、より好ましくは85%以上、さらに好ましくは90%以上である。硬化度は、例えば示差走査熱量測定装置を用いて測定することができる。
【0108】
磁性ペースト30aを熱硬化させる前に、磁性ペースト30aに対して、硬化温度よりも低い温度で加熱する予備加熱処理を施してもよい。例えば、磁性ペースト30aを熱硬化させるのに先立ち、通常50℃以上120℃未満(好ましくは60℃以上110℃以下、より好ましくは70℃以上100℃以下)の温度にて、磁性ペースト30aを、通常5分間以上(好ましくは5分間~150分間、より好ましくは15分間~120分間)、予備加熱してもよい。
【0109】
<工程(3)>
工程(3)では、
図6に一例を示すように、コア基板10から突出又は付着している余剰の磁性層30を研磨することにより除去し、平坦化する。研磨方法としては、コア基板10から突出又は付着している余剰の磁性層30を研磨することができる方法を用いることができる。このような研磨方法としては、例えば、バフ研磨、ベルト研磨等が挙げられる。市販されているバフ研磨装置としては石井表記社製「NT-700IM」等が挙げられる。
【0110】
磁性層の研磨面の算術平均粗さ(Ra)としては、めっき密着性を向上させる観点から、好ましくは300nm以上、より好ましくは350nm以上、さらに好ましくは400nm以上である。上限は、好ましくは1000nm以下、より好ましくは900nm以下、さらに好ましくは800nm以下である。表面粗さ(Ra)は、例えば、非接触型表面粗さ計を用いて測定することができる。
【0111】
工程(2)の後に工程(3)を行う場合、工程(2)後工程(3)前に、磁性層の硬化度をさらに高める等の目的で、必要により熱処理を施してもよい。前記熱処理における温度は上記した硬化温度に準じて行えばよく、好ましくは120℃以上、より好ましくは130℃以上、さらに好ましくは150℃以上であり、好ましくは240℃以下、より好ましくは220℃以下、さらに好ましくは200℃以下である。熱処理時間は、好ましくは5分以上、より好ましくは10分以上、さらに好ましくは15分以上であり、好ましくは90分以下、より好ましくは70分以下、さらに好ましくは60分以下である。
【0112】
また、工程(2)の前に工程(3)を行う場合、工程(3)の前に、磁性ペーストの硬化温度よりも低い温度で加熱する予備加熱処理を施してもよい。前記予備加熱処理における温度は、好ましくは100℃以上、より好ましくは110℃以上、さらに好ましくは120℃以上であり、好ましくは240℃以下、より好ましくは220℃以下、さらに好ましくは200℃以下である。熱処理時間は、好ましくは5分以上、より好ましくは10分以上、さらに好ましくは15分以上であり、好ましくは90分以下、より好ましくは70分以下、さらに好ましくは60分以下である。
【0113】
<工程(4)>
工程(4)では、
図7に一例を示すように、磁性層30の研磨面、及びめっき層20上に導体層40を形成する。さらに、導体層40を形成後、
図8に一例を示すように、エッチング等の処理により導体層40、第1金属層12、第2金属層13、及びめっき層20の一部を除去してパターン導体層41を形成してもよい。本発明では、工程(3)にて硬化物を研磨しているので、磁性層を粗化処理する工程を含まない。
図7では、導体層40はコア基板10の両面に形成されているが、導体層40は、コア基板10の一方の面のみに形成してもよい。
【0114】
導体層の形成方法は、例えば、めっき法、スパッタ法、蒸着法などが挙げられ、中でもめっき法が好ましい。好適な実施形態では、セミアディティブ法、フルアディティブ法等の適切な方法によって硬化物の表面にめっきして、所望の配線パターンを有するパターン導体層を形成する。導体層の材料としては、例えば、金、白金、パラジウム、銀、銅、アルミニウム、コバルト、クロム、亜鉛、ニッケル、チタン、タングステン、鉄、スズ、インジウム等の単金属;金、白金、パラジウム、銀、銅、アルミニウム、コバルト、クロム、亜鉛、ニッケル、チタン、タングステン、鉄、スズ及びインジウムの群から選択される2種以上の金属の合金が挙げられる。中でも、汎用性、コスト、パターニングの容易性等の観点から、クロム、ニッケル、チタン、アルミニウム、亜鉛、金、パラジウム、銀若しくは銅、又はニッケルクロム合金、銅ニッケル合金、銅チタン合金を用いることが好ましく、クロム、ニッケル、チタン、アルミニウム、亜鉛、金、パラジウム、銀若しくは銅、又はニッケルクロム合金を用いることがより好ましく、銅を用いることがさらに好ましい。
【0115】
ここで、硬化物を研磨した面上にパターン導体層を形成する実施形態の例を、詳細に説明する。硬化物を研磨した面に、無電解めっきにより、めっきシード層を形成する。次いで、形成されためっきシード層上に、電解めっきにより電解めっき層を形成し、必要に応じて、不要なめっきシード層をエッチング等の処理により除去して、所望の配線パターンを有する導体層を形成できる。導体層形成後、導体層のピール強度を向上させる等の目的で、必要によりアニール処理を行ってもよい。アニール処理は、例えば、回路基板を150~200℃で20~90分間加熱することにより行うことができる。
【0116】
パターン導体層の厚さは、薄型化の観点から、好ましくは70μm以下であり、より好ましくは60μm以下であり、さらに好ましくは50μm以下、さらにより好ましくは40μm以下、特に好ましくは30μm以下、20μm以下、15μm以下又は10μm以下である。下限は好ましくは1μm以上、より好ましくは3μm以上、さらに好ましくは5μm以上である。
【0117】
<第2実施形態>
第2実施形態の回路基板は、磁性ペーストの硬化物により形成された磁性層を含む。第2実施形態では、磁性シートを用いて磁性層を形成することが好ましい。以下、製品基板の製造方法の第2実施形態について説明する。第1実施形態と説明が重複する箇所は適宜説明を省略する。
【0118】
第2実施形態の回路基板は、例えば、下記の工程(A)~(D)を含む製造方法によって製造する。
(A)磁性シートを、樹脂組成物層が内層基板と接合するように内層基板に積層し、磁性層を形成する工程、
(B)磁性層に穴あけ加工を行う工程、
(C)磁性層の表面を研磨する工程、及び
(D)磁性層の研磨した面に導体層を形成する工程、を含む。
【0119】
以下、回路基板を製造するにあたっての上記の工程(A)~(D)について詳細に説明する。
【0120】
<(A)工程>
(A)工程は、磁性シートを、樹脂組成物層が内層基板と接合するように内層基板に積層し、磁性層を形成する工程である。(A)工程の一実施形態として、磁性シートを、樹脂組成物層が内層基板と接合するように内層基板に積層し、樹脂組成物層を熱硬化して磁性層を形成する。
【0121】
(A)工程において、
図9に一例を示すように、支持体330と、該支持体330上に設けられた樹脂組成物層320aとを含む磁性シート310を、樹脂組成物層320aが内層基板200と接合するように、内層基板200に積層させる。
【0122】
内層基板200は、絶縁性の基板である。内層基板200の材料としては、例えば、ガラスエポキシ基板、金属基板、ポリエステル基板、ポリイミド基板、BTレジン基板、熱硬化型ポリフェニレンエーテル基板等の絶縁性基材が挙げられる。内層基板200は、その厚さ内に配線等が作り込まれた内層回路基板であってもよい。
【0123】
図9に一例を示すように、内層基板200は、第1主表面200a上に設けられる第1導体層420と、第2主表面200b上に設けられる外部端子240とを有している。第1導体層420は、複数の配線を含んでいてもよい。図示例ではインダクタ素子のコイル状導電性構造体400を構成する配線のみが示されている。外部端子240は図示されていない外部の装置等と電気的に接続するための端子である。外部端子240は、第2主表面200bに設けられる導体層の一部として構成することができる。
【0124】
第1導体層420、及び外部端子240を構成し得る導体材料としては、第1実施形態の「<工程(4)>」欄において説明した導体層の材料と同様である。
【0125】
第1導体層420、及び外部端子240は、単層構造であっても、異なる種類の金属若しくは合金からなる単金属層又は合金層が2層以上積層した複層構造であってもよい。また、第1導体層420、外部端子240の厚さは、後述する第2導体層440と同様である。
【0126】
第1導体層420及び外部端子240のライン(L)/スペース(S)比は特に制限されないが、表面の凹凸を減少させて平滑性に優れる磁性層を得る観点から、通常、900/900μm以下、好ましくは700/700μm以下、より好ましくは500/500μm以下、さらに好ましくは300/300μm以下、さらにより好ましくは200/200μm以下である。ライン/スペース比の下限は特に制限されないが、スペースへの樹脂組成物層の埋め込みを良好にする観点から、好ましくは1/1μm以上である。
【0127】
内層基板200は第1主表面200aから第2主表面200bに至るように内層基板200を貫通する複数のスルーホール220を有していてもよい。スルーホール220にはスルーホール内配線220aが設けられている。スルーホール内配線220aは、第1導体層420と外部端子240とを電気的に接続している。
【0128】
樹脂組成物層320aと内層基板200との接合は、例えば、支持体330側から、磁性シート310を内層基板200に加熱圧着することにより行うことができる。磁性シート310を内層基板200に加熱圧着する部材(以下、「加熱圧着部材」ともいう。)としては、例えば、加熱された金属板(ステンレス(SUS)鏡板等)又は金属ロール(SUSロール)等が挙げられる。なお、加熱圧着部材を磁性シート310に直接的に接触させてプレスするのではなく、内層基板200の表面の凹凸に磁性シート310が十分に追随するよう、耐熱ゴム等の弾性材からなるシート等を介してプレスするのが好ましい。
【0129】
加熱圧着する際の温度は、好ましくは80℃~160℃、より好ましくは90℃~140℃、さらに好ましくは100℃~120℃の範囲であり、加熱圧着する際の圧力は、好ましくは0.098MPa~1.77MPa、より好ましくは0.29MPa~1.47MPaの範囲であり、加熱圧着する際の時間は、好ましくは20秒間~400秒間、より好ましくは30秒間~300秒間の範囲である。磁性シートと内層基板との接合は、圧力26.7hPa以下の減圧条件下で実施することが好ましい。
【0130】
磁性シート310の樹脂組成物層320aと内層基板200との接合は、市販の真空ラミネーターによって行うことができる。市販の真空ラミネーターとしては、例えば、名機製作所社製の真空加圧式ラミネーター、ニッコー・マテリアルズ社製のバキュームアプリケーター等が挙げられる。
【0131】
磁性シート310と内層基板200との接合の後に、常圧下(大気圧下)、例えば、加熱圧着部材を支持体側からプレスすることにより、積層された磁性シート310の平滑化処理を行ってもよい。平滑化処理のプレス条件は、上記積層の加熱圧着条件と同様の条件とすることができる。平滑化処理は、市販のラミネーターによって行うことができる。なお、積層と平滑化処理とは、上記の市販の真空ラミネーターを用いて連続的に行ってもよい。
【0132】
磁性シートを内層基板に積層した後、樹脂組成物層を熱硬化して磁性層を形成する。
図10に一例を示すように、内層基板200に接合させた樹脂組成物層320aを熱硬化し第1磁性層320を形成する。
【0133】
樹脂組成物層320aの熱硬化条件は、樹脂組成物の組成や種類によっても異なるが、硬化温度は好ましくは120℃以上、より好ましくは130℃以上、さらに好ましくは150℃以上であり、好ましくは240℃以下、より好ましくは220℃以下、さらに好ましくは200℃以下である。樹脂組成物層320aの硬化時間は、好ましくは5分以上、より好ましくは10分以上、さらに好ましくは15分以上であり、好ましくは120分以下、より好ましくは100分以下、さらに好ましくは90分以下である。
【0134】
支持体330は、(A)工程の熱硬化後と(B)工程との間に除去してもよく、(B)工程の後に剥離してもよい。
【0135】
<(B)工程>
(B)工程において、
図11に一例を示すように、第1磁性層320に穴あけ加工をし、ビアホール360を形成する。ビアホール360は、第1導体層420と、後述する第2導体層440とを電気的に接続するための経路となる。ビアホール360の形成は、磁性層の形成に使用した樹脂組成物の組成等に応じて、例えば、ドリル、レーザー、プラズマ等を使用して実施してよい。ホールの寸法や形状は、プリント配線板のデザインに応じて適宜決定してよい。
【0136】
<(C)工程>
(C)工程において、ビアホールを形成した磁性層の表面を研磨する。(C)工程における研磨方法としては、第1実施形態の「<工程(3)>」欄において説明したものと同様の研磨により行うことができる。
【0137】
磁性層の研磨面の算術平均粗さ(Ra)としては、めっき密着性を向上させる観点から、好ましくは300nm以上、より好ましくは350nm以上、さらに好ましくは400nm以上である。上限は、好ましくは1000nm以下、より好ましくは900nm以下、さらに好ましくは800nm以下である。表面粗さ(Ra)は、例えば、非接触型表面粗さ計を用いて測定することができる。
【0138】
<(D)工程>
(D)工程では、
図12に一例を示すように、第1磁性層320上に、第2導体層440を形成する。
【0139】
第2導体層440を構成し得る導体材料としては、第1実施形態の「<工程(4)>」欄において説明した導体層の材料と同様である。
【0140】
第2導体層440の厚さは、薄型化の観点から、好ましくは70μm以下であり、より好ましくは60μm以下であり、さらに好ましくは50μm以下、さらにより好ましくは40μm以下、特に好ましくは30μm以下、20μm以下、15μm以下又は10μm以下である。下限は好ましくは1μm以上、より好ましくは3μm以上、さらに好ましくは5μm以上である。
【0141】
第2導体層440は、めっきにより形成することができる。第2導体層440は、例えば、無電解めっき工程、マスクパターン形成工程、電解めっき工程、フラッシュエッチング工程を含むセミアディティブ法、フルアディティブ法等の湿式めっき法により形成されることが好ましい。湿式めっき法を用いて第2導体層440を形成することにより、所望の配線パターンを含む第2導体層440として形成することができる。なお、この工程により、ビアホール360内にビアホール内配線360aが併せて形成される。
【0142】
第1導体層420及び第2導体層440は、例えば後述する
図13~15に一例を示すように、渦巻状に設けられていてもよい。一例において、第2導体層440の渦巻状の配線部のうちの中心側の一端はビアホール内配線360aにより第1導体層420の渦巻状の配線部のうちの中心側の一端に電気的に接続されている。第2導体層440の渦巻状の配線部のうちの外周側の他端はビアホール内配線360aにより第1導体層42のランド420aに電気的に接続されている。よって第2導体層440の渦巻状の配線部のうちの外周側の他端はビアホール内配線360a、ランド420a、スルーホール内配線220aを経て外部端子240に電気的に接続される。
【0143】
コイル状導電性構造体400は、第1導体層420の一部分である渦巻状の配線部、第2導体層440の一部分である渦巻状の配線部、第1導体層420の渦巻状の配線部と第2導体層440の渦巻状の配線部とを電気的に接続しているビアホール内配線360aにより構成されている。
【0144】
(D)工程後、さらに導体層上に磁性層を形成する工程を行ってもよい。詳細は、
図14に一例を示すように、第2導体層440及びビアホール内配線360aが形成された第1磁性層320上に第2磁性層340を形成する。第2磁性層は既に説明した工程と同様の工程により形成してもよい。
【0145】
[インダクタ部品]
インダクタ部品は、本発明の回路基板を含む。このようなインダクタ部品は、第1実施形態の回路基板の製造方法により得られた回路基板を含む場合、前記の磁性ペーストの硬化物の周囲の少なくとも一部に導体によって形成されたインダクタパターンを有する。このようなインダクタ部品は、例えば特開2016-197624号公報に記載のものを適用できる。
【0146】
また、第2実施形態の回路基板の製造方法により得られた回路基板を含む場合、インダクタ基板は、磁性層と、この磁性層に少なくとも一部分が埋め込まれた導電性構造体とを有しており、この導電性構造体と、磁性層の厚さ方向に延在し、かつ導電性構造体に囲まれた磁性層のうちの一部分によって構成されるインダクタ素子を含んでいる。ここで
図13は、インダクタ素子を内蔵するインダクタ基板をその厚さ方向の一方からみた模式的な平面図である。
図14は、
図13に示すII-II一点鎖線で示した位置で切断したインダクタ基板の切断端面を示す模式的な図である。
図15は、インダクタ基板のうちの第1導体層の構成を説明するための模式的な平面図である。
【0147】
回路基板100は、
図13及び
図14に一例として示されるように、複数の磁性層(第1磁性層320、第2磁性層340)及び複数の導体層(第1導体層420、第2導体層440)を有する、即ちビルドアップ磁性層及びビルドアップ導体層を有するビルドアップ配線板である。また、インダクタ基板100は、内層基板200を備えている。
【0148】
図14より、第1磁性層320及び第2磁性層340は一体的な磁性層としてみることができる磁性部300を構成している。よってコイル状導電性構造体400は、磁性部300に少なくとも一部分が埋め込まれるように設けられている。すなわち、本実施形態のインダクタ基板100において、インダクタ素子はコイル状導電性構造体400と、磁性部300の厚さ方向に延在し、かつコイル状導電性構造体400に囲まれた磁性部300のうちの一部分である芯部によって構成されている。
【0149】
図15に一例として示されるように、第1導体層420はコイル状導電性構造体400を構成するための渦巻状の配線部と、スルーホール内配線220aと電気的に接続される矩形状のランド420aとを含んでいる。図示例では渦巻状の配線部は直線状部と直角に屈曲する屈曲部とランド420aを迂回する迂回部を含んでいる。図示例では第1導体層420の渦巻状の配線部は全体の輪郭が略矩形状であって、中心側からその外側に向かうにあたり反時計回りに巻いている形状を有している。
【0150】
同様に、第1磁性層320上には第2導体層440が設けられている。第2導体層440はコイル状導電性構造体400を構成するための渦巻状の配線部を含んでいる。
図13又は
図14では渦巻状の配線部は直線状部と直角に屈曲する屈曲部とを含んでいる。
図13又は
図14では第2導体層440の渦巻状の配線部は全体の輪郭が略矩形状であって、中心側からその外側に向かうにあたり時計回りに巻いている形状を有している。
【0151】
このようなインダクタ部品は、半導体チップ等の電子部品を搭載するための配線板として用いることができ、かかる配線板を内層基板として使用した(多層)プリント配線板として用いることもできる。また、かかる配線板を個片化したチップインダクタ部品として用いることもでき、該チップインダクタ部品を表面実装したプリント配線板として用いることもできる。
【0152】
またかかる配線板を用いて、種々の態様の半導体装置を製造することができる。かかる配線板を含む半導体装置は、電気製品(例えば、コンピューター、携帯電話、デジタルカメラおよびテレビ等)および乗物(例えば、自動二輪車、自動車、電車、船舶および航空機等)等に好適に用いることができる。
【実施例0153】
以下、本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。なお、以下の記載において、量を表す「部」及び「%」は、別途明示のない限り、それぞれ「質量部」及び「質量%」を意味する。
【0154】
<分散剤のpHの測定1(ガラス電極法)>
測定に使用するpHメーター(東亜ディーケーケー社製「HM-41X」)は、中性りん酸塩標準液(pH6.86、東亜ディーケーケー社製)、フタル酸塩標準液(pH4.01、東亜ディーケーケー社製)、及びほう酸塩標準液(pH9.18、東亜ディーケーケー社製)を用いて、22℃で校正を行った。99.5体積%無水エタノール(富士フィルム和光純薬社製)と純水を用いて調製した、30質量%エタノール水溶液に対し、各分散剤を少しずつ添加して溶解させ、分散剤濃度0.067g/mLの測定サンプルを作製した。作製した測定サンプルのpHを、22℃で、先の要領で校正を行ったpHメーターを用いたガラス電極法により測定した。3回測定を行い、その平均値を分散剤のpHとした。
【0155】
<分散剤のpHの測定2(指示薬法)>
アセトンに酸性分散剤を溶解させ、分散剤濃度0.1g/mLの測定サンプル(22℃)を作製した。pH試験紙を静かに浸し、引き上げて余分な水分を乾燥させた。試験紙の湿っている部分の色を色見本と見比べ、最も近い色のpHを各サンプルのpHとした。
【0156】
<実施例1:磁性ペースト1の調製>
エポキシ樹脂(「ZX-1059」、ビスフェノールA型エポキシ樹脂とビスフェノールF型エポキシ樹脂の混合品、日鉄ケミカル&マテリアル社製)15質量部、エポキシ樹脂(「ZX-1658GS」、環状脂肪族ジグリシジルエーテル、日鉄ケミカル&マテリアル社製)5質量部、酸性分散剤(「C-2093I」、ナノ粒子用酸性分散剤、日油社製、ガラス電極法でのpH=2.9、指示薬法でのpH=2)1.1質量部、硬化剤(「2MZA-PW」、イミダゾール系エポキシ樹脂硬化剤、四国化成社製)1質量部、磁性粉体(「M05S」、Fe-Mn系フェライト、平均粒径3μm、パウダーテック社製)110質量部を混合し、磁性ペースト1を調製した。
【0157】
<実施例2:磁性ペースト2の調製>
実施例1において、エポキシ樹脂(「ZX-1658GS」、環状脂肪族ジグリシジルエーテル、日鉄ケミカル&マテリアル社製)5質量部を、エポキシ樹脂(「EX-201」、レゾルシノールジグリシジルエーテル、ナガセケムテックス社製)5質量部に変え、酸性分散剤(「C-2093I」、ナノ粒子用酸性分散剤、日油社製、ガラス電極法でのpH=2.9、指示薬法でのpH=2)1.1質量部を、酸性分散剤(「SC―1015F」、ポリオキシアルキレン鎖を有する多官能櫛型の機能性ポリマー、日油社製、ガラス電極法でのpH=3.3、指示薬法でのpH=3)1.1質量部に変えた。以上の事項以外は実施例1と同様にして磁性ペースト2を調製した。
【0158】
<実施例3:磁性ペースト3の調製>
実施例1において、酸性分散剤(「C-2093I」、ナノ粒子用酸性分散剤、日油社製、ガラス電極法でのpH=2.9、指示薬法でのpH=2)を、酸性分散剤(「DA-375」、ポリエーテル燐酸エステル、楠本化成社製、指示薬法でのpH3、30質量%エタノール水溶液に溶解しないため、ガラス電極法では測定不可)1.1質量部に変えた。以上の事項以外は実施例1と同様にして磁性ペースト3を調製した。
【0159】
<実施例4:磁性ペースト4の調製>
実施例1において、酸性分散剤(「C-2093I」、ナノ粒子用酸性分散剤、日油社製、ガラス電極法でのpH=2.9、指示薬法でのpH=2)の量を、1.1質量部から2.2質量部に変えた。以上の事項以外は実施例1と同様にして磁性ペースト4を調製した。
【0160】
<実施例5:磁性ペースト5の調製>
実施例1において、
1)エポキシ樹脂(「ZX-1059」、ビスフェノールA型エポキシ樹脂とビスフェノールF型エポキシ樹脂の混合品、日鉄ケミカル&マテリアル社製)の量を15質量部から18質量部に変え、
2)エポキシ樹脂(「ZX-1658GS」、環状脂肪族ジグリシジルエーテル、日鉄ケミカル&マテリアル社製)5質量部を、エポキシ樹脂(「EX-201」、レゾルシノールジグリシジルエーテル、ナガセケムテックス社製)2質量部に変え、
3)酸性分散剤(「C-2093I」、ナノ粒子用酸性分散剤、日油社製、ガラス電極法でのpH=2.9、指示薬法でのpH=2)の量を1.1質量部から0.8質量部に変え、
4)磁性粉体(「M05S」、Fe-Mn系フェライト、平均粒径3μm、パウダーテック社製)の量を110質量部から75質量部に変えた。
以上の事項以外は実施例1と同様にして磁性ペースト5を調製した。
【0161】
<実施例6:磁性ペースト6の調製>
実施例1において、
1)エポキシ樹脂(「ZX-1059」、ビスフェノールA型エポキシ樹脂とビスフェノールF型エポキシ樹脂の混合品、日鉄ケミカル&マテリアル社製)の量を15質量部から5質量部に変え、
2)エポキシ樹脂(「ZX-1658GS」、環状脂肪族ジグリシジルエーテル、日鉄ケミカル&マテリアル社製)の量を5質量部から10質量部に変え、
3)酸性分散剤(「C-2093I」、ナノ粒子用酸性分散剤、日油社製、ガラス電極法でのpH=2.9、指示薬法でのpH=2)の量を、1.1質量部から2.5質量部に変え、
4)磁性粉体(「M05S」、Fe-Mn系フェライト、平均粒径3μm、パウダーテック社製)の量を、110質量部から250質量部に変えた。
以上の事項以外は実施例1と同様にして磁性ペースト6を調製した。
【0162】
<実施例7:磁性ペースト7の調製>
実施例4において、酸性分散剤(「C-2093I」、ナノ粒子用酸性分散剤、日油社製、ガラス電極法でのpH=2.9、指示薬法でのpH=2)の量を、2.2質量部から3質量部に変え、磁性粉体(「M05S」、Fe-Mn系フェライト、平均粒径3μm、パウダーテック社製)110質量部を、磁性粉体(「AW2-08 PF3F」、Fe-Cr-Si系合金(アモルファス)、平均粒径3.0μm、エプソンアトミックス社製)150質量部に変えた。以上の事項以外は実施例4と同様にして磁性ペースト7を調製した。
【0163】
<比較例1:磁性ペースト8の調製>
実施例1において、酸性分散剤(「C-2093I」、ナノ粒子用酸性分散剤、日油社製、ガラス電極法pH2.9、指示薬法pH2)1.1質量部を、分散剤(「SNウェット125」、シリコーン系界面活性剤、サンノプコ社製、ガラス電極法でのpH=7.5、指示薬法でのpH=7)1.1質量部に変えた。以上の事項以外は実施例1と同様にして磁性ペースト8を調製した。
【0164】
<比較例2:磁性ペースト9の調製>
実施例1において、酸性分散剤(「C-2093I」、ナノ粒子用酸性分散剤、日油社製、ガラス電極法でのpH=2.9、指示薬法でのpH=2)1.1質量部を、分散剤(「SNウェット980」、シリコーン系界面活性剤、サンノプコ社製、ガラス電極法でのpH=9.8、指示薬法でのpH=9)1.1質量部に変えた。以上の事項以外は実施例1と同様にして磁性ペースト9を調製した。
【0165】
<比較例3:磁性ペースト10の調製>
実施例1において、酸性分散剤(「C-2093I」、ナノ粒子用酸性分散剤、日油社製、ガラス電極法でのpH=2.9、指示薬法でのpH=2)1.1質量部を、分散剤(「DOPA―100」、シリカ用分散剤、共栄社化学社製、ガラス電極法でのpH=9.9、指示薬法でのpH=11)1.1質量部に変えた。以上の事項以外は実施例1と同様にして磁性ペースト10を調製した。
【0166】
<比較例4:磁性ペースト11の調製>
実施例1において、分散剤(「C-2093I」、ナノ粒子用酸性分散剤、日油社製、ガラス電極法でのpH=2.9、指示薬法でのpH=2)1.1質量部を用いなかった。以上の事項以外は実施例1と同様にして磁性ペースト11を調製した。
【0167】
<磁性ペーストの粘度の測定>
磁性ペースト1~11の温度を25±2℃に保ち、E型粘度計(東機産業社製「RE-80U」、3°×R9.7コーン、回転数は5rpm)を用いて25℃での粘度を測定した。また、測定した粘度を印刷性および気泡の抜けやすさの観点から以下の基準で評価した。
○:100Pa・s未満
△:100Pa・s以上、200Pa・s未満
×:200Pa・s以上
【0168】
<1週間経過後の磁性ペーストの粘度の測定>
磁性ペースト1~11の温度を25±2℃に保ちながら1週間放置した。E型粘度計(東機産業社製「RE-80U」、3°×R9.7コーン、回転数は5rpm)を用いて25℃での粘度を測定した。また、測定した粘度を印刷性および気泡の抜けやすさの観点から以下の基準で評価した。
○:100Pa・s未満
△:100Pa・s以上、200Pa・s未満
×:200Pa・s以上
【0169】
<機械的強度(引張破断強度)の測定>
支持体として、シリコン系離型剤処理を施したポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム(リンテック社製「PET501010」、厚さ50μm)を用意した。各磁性ペースト1~11を上記PETフィルムの離型面上に、乾燥後のペースト層の厚みが100μmとなるよう、ドクターブレードにて均一に塗布し、磁性シートを得た。得られた磁性シートを180℃で90分間加熱することによりペースト層を熱硬化し、支持体を剥離することによりシート状の硬化物を得た。得られたサンプルをJIS K7127に準拠し、引張破断強度測定を行った。測定結果は以下の基準に従い、評価した。
○:50MPa以上
△:40MPa以上、50MPa未満
×:40MPa未満
【0170】
<めっき銅との密着強度の測定>
内層基板として、ガラス布基材エポキシ樹脂両面銅張積層板(銅箔の厚さ18μm、基板厚み0.3mm、松下電工社製R5715ES)の両面をマイクロエッチング剤(メック社製CZ8100)にて1μmエッチングして銅表面の粗化処理を行ったものを用意した。
【0171】
各磁性ペースト1~11を上記内層基板上に、乾燥後のペースト層の厚みが50μmとなるよう、ドクターブレードにて均一に塗布し、ペースト層を形成した。ペースト層を130℃で30分間加熱し、さらに145℃で30分加熱することにより熱硬化し、磁性層を形成した。形成した磁性層の表面のバフ研磨を実施した後、180℃で30分加熱することにより熱処理を行った。
【0172】
磁性層の表面をバフ研磨した内層基板を、PdCl2を含む無電解めっき用溶液に40℃で5分間浸漬し、次に無電解銅めっき液に25℃で20分間浸漬した。150℃にて30分間加熱してアニール処理を行った後に、硫酸銅電解めっきを行い、磁性層上に30μmの厚さで導体層を形成した。次に、アニール処理を180℃にて60分間行った。この基板を評価基板とした。
【0173】
この評価基板の導体層に、幅10mm、長さ100mmの部分の切込みをいれ、この一端を剥がしてつかみ具(ティー・エス・イー社製、オートコム型試験機「AC-50C-SL」)で掴み、室温中にて、50mm/分の速度で垂直方向に35mmを引き剥がした時の荷重(kgf/cm)を測定した結果を以下の基準に従い、評価した。
○:0.2kgf/cm以上
×:0.2kgf/cm未満
【0174】
<比透磁率、磁性損失の測定>
支持体として、シリコン系離型剤処理を施したポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム(リンテック社製「PET501010」、厚さ50μm)を用意した。各磁性ペースト1~12を上記PETフィルムの離型面上に、乾燥後のペースト層の厚みが100μmとなるよう、ドクターブレードにて均一に塗布し、磁性シートを得た。得られた磁性シートを180℃で90分間加熱することによりペースト層を熱硬化し、支持体を剥離することによりシート状の硬化物を得た。得られた硬化物を、幅5mm、長さ18mmの試験片に切断し、評価サンプルとした。この評価サンプルを、アジレントテクノロジーズ(Agilent Technologies社製、「HP8362B」)を用いて、3ターンコイル法にて測定周波数を100MHzとし、室温23℃にて比透磁率(μ’)及び磁性損失(μ’’)を測定した。
【0175】
【0176】
<回路基板の製造>
内層基板として、ガラス布基材エポキシ樹脂両面銅張積層板(銅箔の厚さ18μm、基板厚み0.3mm、松下電工社製R5715ES)を用意した。
【0177】
上記内層基板に直径0.35mmのスルーホールを1mmピッチで形成した後に、粗化工程を実施した。粗化工程としては、膨潤液であるアトテックジャパン社製のジエチレングリコールモノブチルエーテル含有のスエリングディップ・セキュリガンドPに60℃で5分間浸漬し、次に粗化液として、アトテックジャパン社製のコンセントレート・コンパクトP(KMnO4:60g/L、NaOH:40g/Lの水溶液)に80℃で10分間浸漬し、水洗処理後、最後に中和液として、アトテックジャパン社製のリダクションソリューシン・セキュリガントPに40℃で5分間浸漬した。その後、130℃で15分乾燥した。これによりスルーホール壁面の粗化処理とスミア除去とを行った。
【0178】
次にPdCl2を含む無電解めっき用溶液に40℃で5分間浸漬した後に、無電解銅めっき液に25℃で20分間浸漬した。150℃にて30分間加熱してアニール処理を行った後に、硫酸銅電解めっきを行った。次に、アニール処理を190℃にて60分間行うことで、スルーホール内にめっき層を形成し、スルーホール基板を得た。
【0179】
実施例1で作製した磁性ペースト1を上記スルーホール基板上に印刷し、スルーホール内に磁性ペースト1を充填し、ペースト層を形成した。ペースト層を形成した後、130℃で30分間加熱し、さらに150℃で30分加熱した。
【0180】
次に、ペースト層及びスルーホール基板の表面をバフ研磨した。さらに180℃で30分加熱することによりペースト層を熱硬化し、磁性層を得た。
【0181】
スルーホール基板を、PdCl2を含む無電解めっき用溶液に40℃で5分間浸漬し、次に無電解銅めっき液に25℃で20分間浸漬した。150℃にて30分間加熱してアニール処理を行った後に、硫酸銅電解めっきを行い、磁性層上に30μmの厚さで導体層を形成した。次に、アニール処理を180℃にて60分間行った。次にエッチングレジストを形成し、エッチングによるパターン形成し、回路基板を得た。
【0182】
この回路基板は、磁性層の表面と導体層との間の界面で剥離や膨れは無く、めっき密着性は良好であった。