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特開2022-64977単層リチウムイオンのバッテリーのセパレーター、セパレーターを含むバッテリー、コンデンサー、スーパーコンデンサーまたはウルトラコンデンサー、バッテリーを利用することによって電気を発生させる方法、及び、バッテリーセパレーターを製造する方法
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  • 特開-単層リチウムイオンのバッテリーのセパレーター、セパレーターを含むバッテリー、コンデンサー、スーパーコンデンサーまたはウルトラコンデンサー、バッテリーを利用することによって電気を発生させる方法、及び、バッテリーセパレーターを製造する方法 図1
  • 特開-単層リチウムイオンのバッテリーのセパレーター、セパレーターを含むバッテリー、コンデンサー、スーパーコンデンサーまたはウルトラコンデンサー、バッテリーを利用することによって電気を発生させる方法、及び、バッテリーセパレーターを製造する方法 図2
  • 特開-単層リチウムイオンのバッテリーのセパレーター、セパレーターを含むバッテリー、コンデンサー、スーパーコンデンサーまたはウルトラコンデンサー、バッテリーを利用することによって電気を発生させる方法、及び、バッテリーセパレーターを製造する方法 図3
  • 特開-単層リチウムイオンのバッテリーのセパレーター、セパレーターを含むバッテリー、コンデンサー、スーパーコンデンサーまたはウルトラコンデンサー、バッテリーを利用することによって電気を発生させる方法、及び、バッテリーセパレーターを製造する方法 図4
  • 特開-単層リチウムイオンのバッテリーのセパレーター、セパレーターを含むバッテリー、コンデンサー、スーパーコンデンサーまたはウルトラコンデンサー、バッテリーを利用することによって電気を発生させる方法、及び、バッテリーセパレーターを製造する方法 図5
  • 特開-単層リチウムイオンのバッテリーのセパレーター、セパレーターを含むバッテリー、コンデンサー、スーパーコンデンサーまたはウルトラコンデンサー、バッテリーを利用することによって電気を発生させる方法、及び、バッテリーセパレーターを製造する方法 図6
  • 特開-単層リチウムイオンのバッテリーのセパレーター、セパレーターを含むバッテリー、コンデンサー、スーパーコンデンサーまたはウルトラコンデンサー、バッテリーを利用することによって電気を発生させる方法、及び、バッテリーセパレーターを製造する方法 図7
  • 特開-単層リチウムイオンのバッテリーのセパレーター、セパレーターを含むバッテリー、コンデンサー、スーパーコンデンサーまたはウルトラコンデンサー、バッテリーを利用することによって電気を発生させる方法、及び、バッテリーセパレーターを製造する方法 図8
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022064977
(43)【公開日】2022-04-26
(54)【発明の名称】単層リチウムイオンのバッテリーのセパレーター、セパレーターを含むバッテリー、コンデンサー、スーパーコンデンサーまたはウルトラコンデンサー、バッテリーを利用することによって電気を発生させる方法、及び、バッテリーセパレーターを製造する方法
(51)【国際特許分類】
   H01M 50/44 20210101AFI20220419BHJP
   H01M 50/489 20210101ALI20220419BHJP
   H01M 50/403 20210101ALI20220419BHJP
   H01M 50/414 20210101ALI20220419BHJP
   H01G 11/52 20130101ALI20220419BHJP
   H01M 50/494 20210101ALI20220419BHJP
【FI】
H01M50/44
H01M50/489
H01M50/403 Z
H01M50/414
H01G11/52
H01M50/494
【審査請求】有
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022014114
(22)【出願日】2022-02-01
(62)【分割の表示】P 2016230376の分割
【原出願日】2012-05-18
(31)【優先権主張番号】13/112,809
(32)【優先日】2011-05-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】513292949
【氏名又は名称】ドリームウィーバー・インターナショナル・インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100091683
【弁理士】
【氏名又は名称】▲吉▼川 俊雄
(72)【発明者】
【氏名】モラン,ブライアン・ジー
(72)【発明者】
【氏名】シェーファー,ジェームズ・エル
(57)【要約】      (修正有)
【課題】低い透気抵抗と小さな細孔サイズを同時に与え、さらには全体的にかつ比較的に等方性のレベルでの高い引張り強度を有し、その一方で、適切な化学的安定性、構造保全性、寸法安定性、および製造上の容易さをもたらすバッテリーセパレーターを提供する。
【解決手段】マイクロファイバーとナノファイバーからなる不織布配合物を含むポリマーのバッテリーセパレーターであって、前記ナノファイバーは1000nm未満の平均の直径を有し、前記マイクロファイバーは3000nmよりも大きな直径を有し、そして前記ナノファイバーとマイクロファイバーは混ざり合っていて、それにより前記ナノファイバーの少なくとも一部が前記マイクロファイバーの間の隙間の中に存在する単層のセパレーター。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
マイクロファイバーとナノファイバーの不織布配合物を含むポリマーのバッテリーセパレーターであって、前記マイクロファイバーとナノファイバーの配合物は前記バッテリーセパレーター内に単層として存在し、前記バッテリーセパレーターが、電解質イオンの通過移動のための多孔度と電極の接触に対する保護を与えるものであり、前記ナノファイバーは1000nm未満の平均の直径を有し、前記マイクロファイバーは3000nmよりも大きな直径を有し、
前記ナノファイバーとマイクロファイバーは混ざり合っていて、それにより前記ナノファイバーの少なくとも一部が前記マイクロファイバーの間の隙間の中に存在する、バッテリーセパレーター。
【請求項2】
バッテリーセパレーターは500kg/cmよりも大きな縦方向(MD)引張り強さを有する、請求項1に記載のバッテリーセパレーター。
【請求項3】
バッテリーセパレーターは250kg/cmよりも大きな横方向(CD)引張り強さを有する、請求項1に記載のバッテリーセパレーター。
【請求項4】
前記ナノファイバーは1.5:1よりも大きな横断アスペクト比を示す、請求項1に記載のバッテリーセパレーター。
【請求項5】
海島型繊維由来のナノファイバーを含む、請求項1に記載のバッテリーセパレーター。
【請求項6】
平均流量細孔サイズは2000nm未満である、請求項1に記載のバッテリーセパレーター。
【請求項7】
厚さが250ミクロン未満である、請求項1に記載のバッテリーセパレーター。
【請求項8】
バッテリーセパレーターは縦方向と横方向の引張り強さに関して等方性であり、そしてバッテリーセパレーターは250kg/cmよりも大きな縦方向(MD)引張り強さを有する、請求項1に記載のバッテリーセパレーター。
【請求項9】
請求項1~8のいずれかに記載のバッテリーセパレーターを含むバッテリー、コンデンサー、スーパーコンデンサーまたはウルトラコンデンサー。
【請求項10】
請求項9のバッテリーを利用することによって電気を発生させる方法。
【請求項11】
単層でポリマーのバッテリーセパレーターを製造する方法であって、この方法は下記の工程:
ポリマーのマイクロファイバーとナノファイバーからなる最初のスラリーを用意すること;
前記スラリーを高剪断湿式堆積不織布製作プロセスに供し、それにより前記ナノファイバーを前記マイクロファイバーともつれさせて単層の不織布を形成させること;
を含み、このとき、前記不織布は、不織布を形成する前に前記最初のスラリーの中に導入されるナノファイバーの量を決める平均の細孔サイズを示す、前記製造方法。
【請求項12】
前記最初のスラリーの中に存在するマイクロファイバーとナノファイバーは、前記マイクロファイバーからナノファイバーを取り出すフィブリル化プロセスの生成物である、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記最初のスラリーを前記湿式堆積不織布製作プロセスに供する前に前記最初のスラリーにポリマーのマイクロファイバー、ポリマーのナノファイバー、およびこれらの混合物または組み合わせからなる群から選択される第二の繊維を導入する追加の工程を含み、そのように第二の繊維を追加することによって、第二の繊維を用いることなく同じ製造条件に従って前記不織布製作プロセスを行って製造された不織布の特性と比較して、得られる不織布の平均流量細孔サイズが変化する、請求項12に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、網目状にからまったマイクロファイバーとナノファイバーからなる単層で構成される絶縁性(非導電性)で微孔質のポリマーバッテリーセパレーターに関する。このようなセパレーターは、単一の不織布の全体で多孔度と細孔のサイズを任意の所望のレベルに順応させる性能を与える。その結果、本発明のセパレーターは、未達成のレベルの低い多孔度と小さな細孔サイズを有する高強度の材料を可能にする。高剪断加工を介してのポリマーマイクロファイバーのマトリックスの内部および/またはそのような支持体の上でのポリマーナノファイバーの組み合わせも、そのような利益を提供する。セパレーター、そのようなセパレーターを含むバッテリー、そのようなセパレーターを製造する方法、およびバッテリー装置の中でそのようなセパレーターを用いる方法は全て本発明に包含される。
【背景技術】
【0002】
バッテリーは、遠隔の位置における電力発生器として長年にわたって利用されてきた。電極(アノードとカソード)の間での電解質(イオン)の制御された移動によって電力回路が発生し、それにより、電解質の供給源が消耗してそれ以上の電気の発生ができなくなるまで利用できる電気の供給源が与えられる。近年において、再充電が可能なバッテリーが創案され、そのような遠隔の電源としての長寿命化を可能にしたが、そのようなバッテリーを他の電気供給源に一定の期間にわたって接続する必要性がある。しかし、概していえば、そのようなバッテリーを再使用できることは使用のための大きな可能性をもたらし、特に携帯電話やラップトップコンピューターの利用、さらには、機能するのに電気だけを必要とする自動車の実現性をもたらした。
【0003】
このようなバッテリーは典型的に、少なくとも5つの別個の構成要素を有する。ケース(または容器)は、外部への漏れと内部での環境への曝露を防ぐために、安全で信頼できるやり方で全てのものを収容する。ケースの内部にはアノードとカソードがあり、これらはセパレーターによって有効に分離されていて、またアノードとカソードの間でセパレーターの全体での輸送、および/またはセパレーターを通しての輸送を行う電解質溶液(低粘度の液体)がある。今日およびおそらくは将来の再充電可能なバッテリーは、かなり小さくて携帯式の装置の全てを動作させるものであろうが、しかしそれは、自動車の内部に存在するかなり多くのタイプのものについて充電の時期の間の長期間にわたって有効であるようにするために、かなりの電気を発生させる可能性を伴い、そのようなタイプのものの例としては、互いに接触してはならない(少なくとも表面積において)大型の電極や、必要な回路を完結させるための隔膜を持続的かつ定常的に通過する必要のある大量の電解質があり、これらの全てが自動車のエンジンを駆動させるのに十分な電気を供給する助けとなる電力を発生させるレベルのものでなければならない。従って、将来のバッテリーセパレーターの性能と可能性は、現在の工業において未だに提供されていない一定の要件を満たすものでなければならない。
【0004】
概していえば、独立セル型のバッテリーが出現して以来、電極どうしの間の望ましくない接触からの必要な保護を与えるためと、電力を発生させる電池の中で電解質を有効に輸送するために、バッテリーセパレーターが用いられてきた。典型的に、そのような材料は薄膜の構造のものであり、バッテリー装置の重量と容積を低減させるために十分に薄く、それと同時に、上述した必要な特性を付与するものであった。そのようなセパレーターは他の特性を発揮し、また適切なバッテリー機能を可能にするものでなければならない。これらには、化学安定性、イオン種についての適切な多孔度、電解質の輸送のための有効な細孔サイズ、適切な透過性、有効な機械的強度、および高温に晒されたときの(また、温度が異常なほど高いレベルまで上昇した場合に停止する可能性に対する)寸法安定性と機能安定性を保持する能力が含まれる。
【0005】
次に、さらに詳しく述べると、セパレーター材料は多くの異なる場面に耐えられるほど十分な強度と構造を有するものでなければならない。第一に、セパレーターはバッテリーを組み立てる際の応力に対して引裂きや穿刺を受けてはならない。この意味で、セパレーターの全体的な機械的強度は極めて重要であり、特に、縦方向と横方向(すなわち、横断方向)の両方で高い引張り強さの材料が、製造者がそのようなセパレーターを容易に、またそのような重要な工程においてセパレーターが構造的な破損や喪失を受けないための厳重なガイドラインを用いずに扱うことを可能にする。さらに、化学的な観点から、セパレーターは、バッテリー自体の中で(特に十分に充電されたとき)酸化性と還元性の環境に耐えなければならない。使用している間のいかなる破損も、特に構造上の保全性に関して、異常に多くの量の電解質を通過させ、あるいは電極が接触することにさせてしまい、これにより電力の発生能力を破壊し、またバッテリーを全く無能なものにするだろう。従って、気候的かつ化学的な曝露に対する性能以上に、そのようなセパレーターは、貯蔵、製造および使用の間のいずれにおいても、上で述べたのと同様の理由から、寸法安定性(すなわち、ゆがみや溶融)または機械的強度を失ってはならない。
【0006】
しかし同時に、バッテリー自体の高いエネルギーと出力密度の発揮を容易にするために、本質的にセパレーターは適切な厚さを有していなければならない。均一な厚さであることは長いサイクル寿命を可能にするためにも非常に重要であり、セパレーター上のいかなる不均一な摩耗も、適切な電解質の通過と電極の接触に対する保護に関して、不十分な連結を生じさせるだろう。
【0007】
さらに、このようなセパレーターは、そのような隔膜を通してのイオンの適切な輸送と調和するための適切な多孔度と細孔サイズを示さなければならない(また、それら多孔度と細孔サイズは、使用する間のそのようなイオンの輸送を容易にするための一定量の液体電解質を保持するための適切な収容力とも調和しなければならない)。細孔自体は、電極の要素が隔膜を通して侵入および/または通過するのを防ぐために十分に小さくなければならず、また一方で、上述したように、電解質イオンの適切な移動速度を可能にしなければならない。さらに、上述したように、バッテリーセパレーター上の均一な摩耗が、少なくともそのようなシステムにおいて最良に制御された場合に長期間のサイクル寿命を可能にするように、細孔サイズならびに細孔サイズの分布の均一さが、長期間にわたる電力の均一な発生ならびにバッテリー全体についての信頼できる長期間の安定性を提供する。加えて、異常なほどの高温に晒されたときに中の細孔が適切に閉じて、それによりバッテリーが破損したときに過剰で望ましくないイオンの移動が防がれること(すなわち、火災やその他の同様な危険から守られること)が保証されることが有利であろう。
【0008】
さらに、細孔のサイズと分布はセパレーターの透気抵抗(air resistance)を増大または低下させるかもしれないが、それは、バッテリー自体の中に存在する電解質を適切に通過させるセパレーターの性能を示すものであるセパレーターの単純な寸法を示す。例えば、平均流量細孔サイズ(mean flow pore size)をASTM E-1294に従って測定することができて、この寸法はセパレーターのバリヤー特性を測定するのを助けるために用いることができる。すなわち、細孔サイズが小さいとき、細孔自体の剛性(すなわち、長期間にわたって使用する間に、また設定圧力に晒されたときに、細孔が一定のサイズを維持する能力)は、電極の分離の効果的な制御も可能にする。さらに重要なことは、おそらく、アノード上で結晶(例えば、黒鉛アノード上でのリチウム結晶)が形成する機会(これは、必要な回路の生成を損ない、また長期間にわたるバッテリーの電力発生能力に悪影響を及ぼすであろう)を少なくするために、そのような細孔サイズのレベルが電解質の透過性を制限する能力である。
【0009】
さらに、セパレーターは、製造、貯蔵および使用する間に電解質が電池の全体を十分に満たす能力を損なってはならない。すなわち、電解質が実際に適切にイオンを発生させて隔膜を通してイオンを確実に移動させるために、セパレーターはそれらの段階において適切な吸収性および/または湿潤性を発揮しなければならない。そのような状況においてセパレーターが伝導性でない場合は、電解質はセパレーターの上および中に適切に存在することができず、必要なイオンの伝達は、少なくとも理論上は容易には起こらないであろう。
【0010】
この場合、有効なバッテリーセパレーターの一般的な目的は、電極が接触するあらゆる可能性を徹底的に少なくするが、しかしバッテリーセルの一方の位置から他方の位置への電解質の移動を制御する(すなわち、必要な電力を発生させるために回路を閉じる)能力を備えた材料を提供するために、低い透気抵抗を有し、それと同時に極めて小さな細孔サイズを有することである。現在のところ、それらの特性は同時に効果的には提供されていない。例えば、セルガード(Celgard)は、極めて小さな細孔サイズを有する発泡フィルム(expanded film)のバッテリーセパレーターを発表し販売していて、これは上述した点では非常に良好であるが、しかし、そのような材料について対応する透気抵抗は極めて高く、そのため、そのようなセパレーターの全体的な有効性を制限している。それに対して、デュポン(duPont)はナノファイバーの不織隔膜セパレーターを市販していて、これは極めて低い透気抵抗を与えるが、しかしその細孔サイズは非常に大きい。さらに、これら二つの材料が示す全体的な機械的強度は極めて限定的である。セルガードのセパレーターは縦方向で優れた強度を有するが、しかし横方向(横断方向)での強度はほぼゼロである。そのような低い横方向強度は、少なくとも上で述べた点では、製造する際に非常に繊細な扱いを必要とする。デュポンの材料は、強度が両方向でかなり低いことを除けば、やや良好であり、セルガードの材料よりも高い横方向強度を有する。実際には、デュポンの製品は等方性の材料(縦方向と横方向の両方でほぼ同じ強度を有する材料)に近く、従って、セルガードのタイプよりも扱いに関しては信頼性の高い材料である。しかし、デュポンのセパレーターの測定された引張り強度は実際には極めて低く、従って、使用者はやはり製造する際にその材料を注意深く操作し、そして設置することを強いられる。同様に、これらの先行技術のバッテリーセパレーターの寸法安定性は、これらの引張り強度の問題のためにかなり疑わしく、再充電可能なバッテリーセルの中にあるとき、長期間にわたっては、材料が構造上の保全性を望ましくないほどに失う可能性がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
従って、低い透気抵抗と小さな細孔サイズを同時に与え、さらには全体的にかつ比較的に等方性のレベルでの高い引張り強度を有し、その一方で、適切な化学的安定性、構造保全性、寸法安定性、および製造上の容易さをもたらすバッテリーセパレーターを提供する必要性がなお存在している。さらに、製造上の小さな変更によって(特定の範囲の細孔サイズおよび/または特定の範囲の透気抵抗の測定値のような)目標とする特性レベルを達成することを可能にするバッテリーセパレーターを製造する方法は、バッテリーの製造者の要求を満たす大きな多能性をもたらすであろうが、現在のところ、そのような程度での製造方法はバッテリーセパレーターの工業分野を通して未だに探求されていない。従って、そのような多能な最終結果(すなわち、要求に応じる加工上の変更により目標とする多孔度と透気抵抗のレベル)ならびに必要なレベルの機械的特性、耐熱性、透過性、寸法安定性、停止特性および溶融特性を示す任意の数の隔膜を与えることに関して、効果的でかなり単純かつ容易なバッテリーセパレーターの製造方法が、再充電可能なバッテリーセパレーターの工業において高く評価されるが、そのような材料は得られていない。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の明確な利点は、湿式堆積(wetlaid)不織布製作プロセスによる製造の容易さである。別の明確な利点は、製作プロセスの際に用いられる構成繊維の比率の単なる変更によって、目標とするレベルの細孔サイズ、多孔度および透気抵抗を与える最終的な特性である。本発明のバッテリーセパレーターのさらに別の利点は、長期間の使用ならびにバッテリーの製造段階において使用者に信頼性を与える等方性の強度特性である。低い透気抵抗と小さな細孔サイズを同時に与える本発明のセパレーターの性能は、本発明のさらなる利点である。本発明のバッテリーセパレーターのさらに別の利点は、セパレーター本体を通して電荷を移動させないが、しかし単に、その構造体の中に存在する細孔を通して荷電イオンを輸送させる、特に非導電性の(すなわち、絶縁性の)布を提供することである。さらに別の利点は、材料の高い多孔度であり、これにより、より多くの電解質を流し、また電極が十分に再充電されることによって多くの使用サイクルにわたってエネルギーを保持する能力についての耐久性が増大する。
【0013】
従って、本発明は、マイクロファイバーとナノファイバーからなる不織布配合物を含む絶縁性ポリマーのバッテリーセパレーターに属し、このセパレーターは、電解質イオンの通過移動のための十分な多孔度と前記不織布配合物からなる単層を介しての電極の接触に対する適切な保護を与える。そのような絶縁性のセパレーターを有するバッテリーおよび再充電可能な装置の中で電気を発生させるためにそのようなバッテリーを用いる方法も本発明の中に同様に包含される。さらに、湿式堆積不織布製作法によって絶縁性ポリマーのバッテリーセパレーターを製造する方法も本発明に含まれ、この方法においては、少なくとも1種のポリマー成分からなる多数のポリマーマイクロファイバーまたは少なくとも1種のポリマー成分からなる多数のポリマーナノファイバーまたは前記多数のポリマーマイクロファイバーとナノファイバーの両方が高い剪断環境の中で組み合わされ、それにより多数のフィブリル化(小繊維化:fibrillated)したポリマーマイクロファイバーと多数のナノファイバーのスラリーが形成されて、そのスラリーから単層の布が形成される。
【0014】
本明細書を通して、マイクロファイバーという用語はマイクロメートルの尺度の幅を有するあらゆるポリマー繊維を意味することが意図されていて、それは概して、1000nm超、または3000nm超、または5000nm超、あるいは10000nm超で、約40ミクロン以下の繊維直径を有する。同様に、ナノファイバーという用語はナノメートルの尺度の幅を有するあらゆるポリマー繊維を意味することが意図されていて、それは概して、1000nm未満、あるいは700nm未満、または500nm未満、あるいは300nm未満(小さい場合は約1nm)の直径を有する。同様に、絶縁性という用語は明らかな程度の導電性を示さないことが意図されていて、従って、本発明の布の構造体は布本体の全体で電荷を通さず、しかしその中に存在する細孔を通してだけ電解質イオンを通過させる。
【0015】
マイクロファイバーとナノファイバーのこのような組み合わせについてはバッテリーセパレーターの分野においては未だ研究されておらず、特に、そのような目的のために二つの基本成分からなる単層の不織布を与える可能性については研究されていない。マイクロファイバー成分は、上述した必要な化学的耐性と耐熱性を与え、またマイクロファイバー構造体を形成する能力を備えた任意の適当なポリマーであってよい。同様に、このようなマイクロファイバーは、その表面積を増大させて、不織布を製作するプロセスの際に多数のこれらのマイクロファイバーどうしが望ましい程度に絡むのを容易にするために、ファイバーを形成する間または形成後にフィブリル化させてもよい(あるいは、プラズマへの曝露やその他同種類の処理のような、任意の他の類似の方法で処理してもよい)。このようなポリマー成分としては、アクリル樹脂(例えば、ポリアクリロニトリル)、ポリオレフィン(例えば、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリブチレン、およびコポリマーを含む他のもの)、ポリアミド、ポリビニルアルコール、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリスルホン、ポリビニルフルオリド、ポリビニリデンフルオリド、ポリビニリデンフルオリド-ヘキサフルオロプロピレン、ポリメチルペンテン、ポリフェニレンスルフィド、ポリアセチル、ポリウレタン、芳香族ポリアミド、半芳香族ポリアミド、ポリプロピレンテレフタレート、ポリメチルメタクリレート、ポリスチレン、およびこれらのポリマーの配合物、混合物およびコポリマーがあるだろう。ポリアクリレート、ポリエステルおよびポリオレフィンがおそらく好ましい。
【0016】
製作した後の不織布の構造全体の接触安定性と寸法安定性を所望の程度にするために、繊維を接着剤を用いて予備処理してもよい。ナノファイバーは、マイクロファイバーの場合と同様のタイプの化学薬品および高温への曝露に耐えられるように、任意の同様のポリマー成分のものであってよい。ナノファイバーのサイズのために、製造された不織布の表面上またはそれらの隙間の中での絡みの増大を与えるための製造後の処理を、そのようなナノファイバー材料に対して行う必要はない。しかし、重要なことは、実際の不織布そのものを製作する際に同時に、生じるマイクロファイバーの不織布支持体の上および内部にナノファイバーの望ましい導入を行うために、十分に高い剪断作用の環境の下でナノファイバーをマイクロファイバーと合体させる必要があることである。言い換えると、不織布の製造プロセスの中で両方のタイプの繊維材料を供給するとき、それら異なるタイプの繊維どうしで適切な程度の絡みを最も良く生じさせ、それにより所望の単層の布構造を形成するために、製造者は十分な量の混合と高剪断条件を付与するべきである。同様に、高剪断タイプに加えて、マイクロファイバーの隙間の中にナノファイバーの適切な導入と残留位置を確実にするために、湿式堆積不織プロセスのような製作方法がおそらく望ましい。製造する際に水の流れを増大させると、乾燥絡み合いの方法を用いるよりも大きな割合でそれらの隙間の中に極めて小さなナノファイバーが取り込まれ、それにより上述の隙間充填能力が得られるだろう。このようにして得られる不織布構造は、厚さ、多孔度、および最も重要な細孔サイズに関して大きな均一さを示すだろう。
【0017】
そのような湿式堆積法に従う一つの方法においては、パルプ状の配合物の中で予めフィブリル化したマイクロファイバーが提供され、その配合物は、例えば、約80重量%以下の水性配合物を含む(水単独が好ましいが、湿式堆積プロセスが可能であって後の蒸発が促進される他の溶媒を用いることもでき、それには例えば、特定の非極性アルコールが含まれる)。そのようなやり方で処理された予めフィブリル化したマイクロファイバーは一定の量のすでに存在するナノファイバーを有する(これはフィブリル化を行う際にマイクロファイバー自体から除去される残留生成物であるが、しかし後にマイクロファイバーのメッシュの全体からは除去されない)。この予めフィブリル化したファイバーはフィブリル化の工程の結果としてパルプ状を呈し、予めフィブリル化したマイクロファイバーとナノファイバーを伴った上述の水性溶媒を含むスラリー状の配合物となる。次いで、このスラリー状の配合物は選択された量の他のマイクロファイバーおよび/またはナノファイバー(好ましくは、これらもパルプ状またはスラリー状である)と混合され、次いで、実際の繊維固形分の濃度が極めて低いこの配合物(すなわち、90重量%以上が水またはその他の水性溶媒)は、平らな表面上に置かれて高い剪断作用の環境に供される。その表面は溶媒が溶離するほどに十分に多孔質であり、従って、互いに絡み合ったフィブリル化したマイクロファイバーを含む所望の湿式堆積不織物である単一の布の層となり、各々のマイクロファイバーの間に隙間があり、またそれらの隙間の中と大きなマイクロファイバーの表面上にナノファイバーが存在する。予めフィブリル化したマイクロファイバーのパルプに添加されるナノファイバーの量により、これがマイクロファイバーの隙間の間に多量に充填され、全体として小さな平均の細孔サイズが得られ、そのサイズは特に、予めフィブリル化したパルプだけから単に製造される湿式堆積不織布と比較して小さい。反対に、このとき、予めフィブリル化したファイバーのスラリーにマイクロファイバーを添加すると、生じる湿式堆積不織物である単一層の布には、予めフィブリル化したファイバーのスラリーだけの場合よりも大きな平均の細孔サイズがもたらされるだろう。ナノファイバーおよび/またはマイクロファイバーの添加量によって異なる平均の細孔サイズを目標に定めるこの特性により、製造者は、任意の所望の平均細孔サイズのレベルを達成する可能性を得る。また、得られた単一層の布をカレンダー(calendar)に掛けるか、またはそれの厚さを変更する可能性により、透気抵抗と平均の細孔サイズの寸法の両方に関しての可能性をさらに大きくする可能性を製造者は得る。このようなダイアルイン(調整:dial-in)プロセスは、バッテリーセパレーターの工業においては未だに探求されていなかった。
【0018】
ナノファイバーとマイクロファイバーを組み合わせたものの絡み合いを可能にする、不織布シートを製造する他の方法も、本発明のバッテリーセパレーターを製作するために用いることができる。一つの方法は、別個のナノファイバーとマイクロファイバーで開始し、そしてそれらを上述した方法において合体させることであろう。他のそのような方法としては、カーディング、クロスラッピング、ハイドロエンタングリング(水流交絡)、エアレイド、ニードルパンチ、またはその他の方法があり、これらにより、マイクロファイバーを用いて絡み合ったメッシュおよびそれらマイクロファイバーの間の隙間を充填するナノファイバーを形成することができる。
【0019】
上述したように、マイクロファイバーの隙間が事実上「細孔」自体を形成し、そしてそれらの開口の中をナノファイバーが埋めて、中のサイズが低下し、それは不織布構造体の全体にわたって実質的に均一な程度に行われる。本発明の全体について全く予期せざる利益は、特に要求に応じて様々なレベルの多孔度を目標に定めることに関して、マイクロファイバーとナノファイバーの濃度だけを単に変更することによって、生じる不織布構造体の中の細孔サイズを調整する能力である。従って、例えば、最初の不織布製作プロセスにおいて70%のマイクロファイバーと30%のナノファイバーの比率にしたとき、LからMまでの範囲の細孔サイズが得られ、一方、60%のマイクロファイバーと40%のナノファイバーの組み合わせは効果的に小さな細孔サイズ分布を与えるだろう(その範囲もいっそう均一になる)。従って、そのような予期せざる結果は、上で述べたように、かなり簡単な製造変更によって、最終的な使用者のために要求に応じた細孔の結果を与える。そのようにして生じる細孔サイズは測定することができて、平均流量細孔サイズ(mean flow pore size)が得られる。そのような平均流量細孔サイズは2000nm未満、さらには1000nm未満、好ましくは700nm未満、より好ましくは500nm未満であろう。
【0020】
しかしながら、さらに製造者には、単層構造体の様々な厚さを要求に応じて設定することによる、本発明のバッテリーセパレーターの所望の特性を制御する他の手段がある。そのような厚さの特性は、最初の湿式堆積製作方法のプロセスパラメーターだけによって設定されるか、あるいは得られた布を製造者が後にカレンダー(calendar)に掛けることによって任意の所望の厚さにすることができる。そのような厚さは250マイクロメートル未満、好ましくは100マイクロメートル未満、より好ましくは50マイクロメートル未満、より好ましくは35マイクロメートル未満、最も好ましくは25マイクロメートル未満であろう。上で言及したように、バッテリーを使用する際の短絡を防ぐためにバッテリーのアノードとカソードの間での接触を防ぐ能力が必要であり、セパレーターの厚さとその中での制御された細孔サイズが、そのような結果を達成するための重要な手段を提供する。しかし、バッテリーセパレーターの厚さは、閉鎖されたバッテリーセルの中の他の構成部品の利用可能な容積、ならびにその中に供給される電解質溶液の量にも影響を及ぼすかもしれない。これら関係する状況の全体が、多数の変数に関して有効なセパレーターを必要とする。従って、本発明の製造方法とそれによって製造される単層のバッテリーセパレーターにより、製造の有利な容易さならびに要求に応じて有効な細孔サイズと透気抵抗特性を提供する能力は、この開発を、現在用いられ販売されている最新のバッテリーセパレーターとは明確に区別されたものにする。
【0021】
加えて、マイクロファイバーとナノファイバーを一緒に含む単層のセパレーターが本発
明の中に包含されるが、そのような布の構造体からなる複数の層の使用、あるいは本発明のバッテリーセパレーターの布からなる単一層と別のタイプの布からなる少なくとも1つの他の層からなる複数の層の使用も採用することができて、それらも本明細書で説明している発明全体の範囲内のものである、ということに留意すべきである。
【0022】
ここで説明しているバッテリーセパレーターは、一次バッテリーと再充電式バッテリーの技術を改良するのに明らかに有用であるだけでなく、コンデンサー、スーパーコンデンサーおよびウルトラコンデンサーのような他の形態の電解質伝導性エネルギー貯蔵技術のためにも用いることができる。実際に、本発明のセパレーターの細孔サイズについて可能な制御は、これらの装置のエネルギー損失、充電速度およびその他の特性の著しい改善を可能にするであろう。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1図1は先行技術の発泡フィルム(expanded film)のバッテリーセパレーターのSEM顕微鏡写真である。
図2図2は先行技術のナノファイバー不織布のバッテリーセパレーターのSEM顕微鏡写真である。
図3図3は本発明のマイクロファイバー/ナノファイバー不織布のバッテリーセパレーター構造体の1つのおそらくは好ましい態様のものの3000倍でのSEM顕微鏡写真である。
図4図4は本発明のマイクロファイバー/ナノファイバー不織布のバッテリーセパレーター構造体の1つのおそらくは好ましい態様のものの15000倍でのSEM顕微鏡写真である。
図5図5は本発明のマイクロファイバー/ナノファイバー不織布のバッテリーセパレーター構造体の別のおそらくは好ましい態様のものの2000倍でのSEM顕微鏡写真である。
図6図6は本発明のマイクロファイバー/ナノファイバー不織布のバッテリーセパレーター構造体の別のおそらくは好ましい態様のものの2000倍でのSEM顕微鏡写真である。
図7図7は本発明のマイクロファイバー/ナノファイバー不織布のバッテリーセパレーター構造体の別のおそらくは好ましい態様のものの2000倍でのSEM顕微鏡写真である。
図8図8は本発明のバッテリーセパレーターを含む本発明の再充電可能なリチウムイオンバッテリーの分解組み立て図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0024】
本発明の全ての特徴とその好ましい態様を、以下の例示としての(しかし非限定的な)図面および実施例と関連させて十分に詳しく説明する。
【0025】
マイクロファイバーおよびナノファイバーの製造
上で示したように、マイクロファイバーを、内部のバッテリーセル条件と関連して適切な化学的耐性と耐熱性を与える任意のポリマー(またはポリマー配合物)から構成することができ、それはまた、ここで示される範囲内で適当な繊維構造体を形成する能力、さらには不織布を製作する際の絡み合いを容易にするための繊維自体の表面積を増大させるためのフィブリル化または類似の技術によって処理できる可能性を与える。そのような繊維は、溶融紡糸、湿式紡糸、溶液紡糸、メルトブロー、およびその他の方法などの慣用の繊維製造方法によって製造することができる。さらに、そのような繊維は二成分繊維として開始することができ、また、解繊パイ繊維(splittable pie fibers)、海上島繊維(islands-in-the-sea fibers)などのように、さらなる加工によってサイズおよび/または形状を縮小または変更することができる。そのような繊維は、さらなる加工のために適当な長さに切断してもよく、その長さは1インチ未満、または1/2インチ未満、さらには1/4未満であってよい。そのような繊維は、もっと小さな繊維にフィブリル化することもでき、あるいは湿式堆積(wetlaid)不織布を形成するのに有利な繊維にフィブリル化することもできる。
【0026】
本発明において用いるためのナノファイバーは、海上島(islands-in-the-sea)の技術、遠心紡糸、電解紡糸(electrospinning)、フィルムまたは繊維のフィブリル化、その他同種類のもののような、幾つかの慣用の技術によって製造することができる。帝人(Teijin)とヒルズ(Hills)の両者は、おそらくは好ましい海上島ナノファイバーを市場に出した(帝人のものは、70nmの直径を有するポリエチレンテレフタレート繊維であるNanoFrontファイバーとして市販されている)。DienesとFiberRioの両者は、遠心紡糸技術を用いてナノファイバーを製造する装置を市場に出している。電解紡糸によるナノファイバーの製造は、duPont、E-Spin Technologiesによって、あるいはElmarcoによってこの目的のために市販されている装置において、実施されている。フィルムからフィブリル化されるナノファイバーは米国特許6110588号、6432347号および6432532号において開示されていて、これらの全体が参考文献として本明細書に取り込まれる。他の繊維からフィブリル化されるナノファイバーは、高剪断性の研磨処理によってそのようにすることができる。フィブリル化セルロースとアクリル系繊維から製造されるナノファイバーは、Engineered Fiber TechnologiesによってEFTEC(登録商標)という商品名で市販されている。それらのナノファイバーのいずれも、繊維を分離するための切断と高剪断スラリー加工によってさらに加工することができ、それにより湿式堆積不織布加工に供することができる。そのような高剪断加工は、必要なマイクロファイバーの存在下で行なってもよく、あるいはそれを伴わずに行なってもよい。
【0027】
一般に、フィブリル化によって製造されるナノファイバーは、米国特許6110588号(これは参考文献として本明細書に取り込まれる)に詳しく記載されているような横断アスペクト比とは異なる横断アスペクト比を有する。従って、一つの好ましい態様において、ナノファイバーは1.5:1よりも大きな横断アスペクト比を有し、好ましくは3.0:1よりも大きく、より好ましくは5.0:1よりも大きな横断アスペクト比を有する。
【0028】
従って、このような目的のためにはアクリル樹脂、ポリエステルおよびポリオレフィンの繊維が特に好ましく、フィブリル化アクリル樹脂繊維がおそらくは最も好ましい。しかしながら、この場合も、これは、この目的のためのおそらくは好ましいタイプのポリマーの一つの指標として単に提示しているのであり、そのような目的のための可能性のあるポリマー材料またはポリマー配合物の範囲を限定することを意図してはいない。
【0029】
図1図2はそれぞれ、前述したCelgardの発泡フィルム材料とduPontのナノファイバー不織布バッテリーセパレーター材料の典型的な構造の顕微鏡写真を示す。明らかに、Celgardのセパレーターのフィルム構造は細孔サイズの相似性を示し、明らかに全てがフィルム押出しによって形成されて、それによってかなり均一な構成で破壊された表面を示している。duPontのセパレーターは厳密にナノファイバーだけから製造されたものであり、繊維のサイズと直径の均一さが明白である。これらのナノファイバー自体の不織布構造の故に、このセパレーターの縦方向と横方向の両方での全体的な引張り強さは(これら両方向でほぼ均一ではあるが)極めて低い。従って、このようなセパレーターをバッテリーセルの中で用いた場合、全体的な強度自体が製造者が直面しなければならない別の困難さをもたらすけれども、そのような材料は均一に処理することができるだろう。それに対して、図1のセパレーターは、同じ方向での(すなわち、一方向でのフィルムの押出しによる)細孔の生成による細溝を示し、極めて高い縦方向の引張り強さを示すが、あいにくと、この材料の横方向での引張り強さは無いに等しく、このため、前述したように、バッテリーの製造環境で実際に用いるには極めて困難でかなり疑わしいバッテリーセパレーター材料である。
【0030】
図3図4における顕微鏡写真の形態で示す本発明の材料は、これら二つの先行技術の製品とは全く異なる構造のものである。最初にマイクロファイバーとナノファイバーを組み合わせた1つのおそらくは好ましい態様のものとしては、EFTEC(登録商標)A-010-4のフィブリル化ポリアクリロニトリル繊維があり、これはナノファイバーとマイクロファイバーの高い個体数を有する(これから製造される繊維と布は、過去においてバッテリーセパレーター材料として用いられたことはなかった)。このような組み合わせたものの中に存在するものとして生じるナノファイバーは、最初のマイクロファイバーがフィブリル化した結果としての残留物である。これらの材料で製造された不織布シートが図3図4に示されている。例として、これらの繊維をベース材料として用いることができ、これに、不織布の細孔サイズやその他の特性を制御する手段として、さらなるマイクロファイバーまたはさらなるナノファイバーを添加することができ、あるいはそのような材料を不織布バッテリーセパレーター自体として用いてもよい。添加された追加のマイクロファイバーを含むそのようなシートの例を図5、6および7に示す。アクリル樹脂マイクロファイバー/ナノファイバーの典型的な特性を下に示す。
【0031】
【表1】
【0032】
前述したように、これらの繊維は実際にはパルプ状の配合物の中に存在し、従って、湿式堆積される不織布の製造体系の中に容易に導入することができる。
【実施例0033】
不織布の製造方法
次いで、湿式堆積製造プロセスの中に一緒に導入する前に、両方の成分の異なる濃度を与えるために、材料を組み合わせたものを計り分けた。TAPPI試験法T-205(これは本明細書に参考文献として組み込まれる)に従って手すきシート(handsheet)を製造した(基
本的には、前述したように、極めて高い水性溶媒濃度の配合で高い剪断条件の下で一緒に混合し(これは湿式堆積製造において典型的に用いられ、そして繊維の「精製」として説明される)、そして最終的には湿った構造体を平らな表面上に置いて溶媒を蒸発させる)。最終的な不織布構造体を形成するために、幾つかの異なる組み合わせのものを製造した。この方法においては、各々のシートの中に含有させる材料の最初の量を調整することによって、様々な主成分の重量に応じるような調節だけを行った。材料と比率を表2に示す。
【0034】
図5、6および7は共に、構造が下の例3に相関するものである。これらの顕微鏡写真から構造の類似性(大きなマイクロファイバーと小さなナノファイバー)が明白であり、またこれらの構造の中で、より少ない量でナノファイバーが存在することも明らかである。
【0035】
布の厚さを測定し、次いで、リチウムイオン再充電型バッテリーセルの中に組み込むために適当なサイズと形状に切断した。しかし、そのような組み込みを行う前に、適当なバッテリーセパレーターとしての可能性に関して、バッテリーセパレーターの布のサンプルを様々な特性について分析し、そして試験を行った。さらに、米国特許7112389号(これは参考文献として本明細書に取り込まれる)に係るバッテリーセパレーターのナノファイバーの隔膜ならびにCelgardからのバッテリーセパレーターフィルムについての比
較例が、その特許の中の試験およびCelgardの製品文献から報告される。
【0036】
実施例
TAPPI試験法T-205に従って、Engineered Fiber TechnologiesのEFTEC(登録商標)A-010-04フィブリル化アクリル系繊維(マイクロファイバーとナノファイバーの組み合わせ)(「基布」と記載される)およびFiber Visions T426繊維(1フィラメント当り2デニール、5mmの長さに切断したもの)およびポリプロピレンとポリエチレンから製造されて約17ミクロンの直径を有する二成分繊維(「添加した繊維」と記載される)を用いて、実施例1~21のものを製造した。それらの実施例の各々の繊維の量、調節後の基本重量、厚さ(キャリパー)、見掛け密度および多孔率を表2に示す。調節後の基本重量、厚さ、見掛け密度および気孔率については、TAPPI T-220(これは参考文献として本明細書に
取り込まれる)に従って試験を行った。
【0037】
【表2】
【0038】
多孔率が高くなるほど、このバッテリーの中のピーク出力は大きくなる。このような高度な結果から、理論的には、少なくとも、特定の装置(例えば自動車)を駆動させるための必要な出力レベルを与えるのに必要なバッテリーの数は、個々のバッテリーから得られる出力の増大によって減少するであろう。そのような利益は、有効な透気抵抗バリヤーによっても増すであろう。本発明のセパレーターの多孔度は、マイクロファイバーに対するナノファイバーの比率、ナノファイバーのタイプ、およびカレンダー仕上げ(calendaring)のような後加工によっても制御することができ、これについては以下で明らかになるであろう。
【0039】
バッテリーセパレーター基材の分析と試験
試験手順は以下の通りであった。
【0040】
米国特許7112389号(これは参考文献として本明細書に取り込まれる)における方法に従って多孔率を計算した。結果を%で報告するが、これはバッテリーの中にあるときに空気または非固形物質(例えば電解液)で充填されるセパレーターのバルクの部分に相当する。
【0041】
TAPPI試験法T460(これは参考文献として本明細書に取り込まれる)に従ってガーレイ
透気抵抗を試験した。この試験のために用いられた装置はガーレイデンソメーターのモデル4110である。試験を行うために、サンプルをデンソメーターの中に差し込んで固定した。シリンダーの勾配を100cc(100ml)のラインまで上げて、次いで、その自重によって滴下させた。100ccの空気がサンプルを通過するのに要する(秒での)時間を記録した。結果を秒/100ccで報告するが、これは100立方センチメートルの空気がセパレーターを通過するのに要する時間である。
【0042】
ASTM E-1294「自動化液体ポロシメーターを用いる隔膜フィルターの細孔サイズの特性のための標準的試験法」に従って平均流量細孔サイズ(mean flow pore size)について試験したが、この試験法は毛管流ポロシメーターを用いてASTMF 316による自動化バブルポイント法(泡立ち点法)を用いるものである。試験はPorous Materials, Inc.(ニューヨーク、Ithaca)によって行われた。
【0043】
セパレーターの通気度は、一定の容積の空気が軽微な圧力の下で標準の面積を流通するのに要する時間の長さである。その手順はASTMD-726-58に記載されている。
【0044】
引張り特性、ガーレイ透気抵抗および平均流量細孔サイズを表3に示す。
【0045】
【表3】
【0046】
従って、本発明の実施例のものは極めて小さな平均の細孔サイズを示し、このことは、バッテリーのための多数回の再充電サイクルを行うことが可能であることを示す。さらに、ナノファイバー材料とマイクロファイバー材料の比率を変化させると細孔サイズも変化することによって、細孔サイズを制御できることが示されている。これはいずれの先行技術においても存在しない重要な利点であり、従って、この技術を用いれば、最終使用者の要求に応じてバッテリーの製造者によって細孔サイズを調整することができる。従って、再充電可能な時計のバッテリー、携帯電話またはラップトップコンピューターとは異なる特性を有するように、セパレーターを電動工具や自動車の用途のために設計することができる。
【0047】
挙げられた実施例における引張り特性は等方性であり、すなわち、全ての方向で同じで、縦方向と横方向との間で差異がない。比較例は縦方向(MD:machine direction)と横方向(CD:cross direction)の引張り強さの間でかなり相違する引張り特性を示す。一般に、ナノファイバーを基材とするバッテリーセパレーターは非常に弱い。従って、本発明の一つの利点は引張り強さであり、これがバッテリーの製造における迅速な加工、バッテリーの緊密な巻繊、およびバッテリーの使用における高い耐久性を可能にする。そのようなMD引張り強さは好ましくは250kg/cm2よりも大きく、より好ましくは500kg/cm2よりも大きく、そして最も好ましくは1000kg/cm2よりも大きい。CD引張り強さについての要求値はもっと小さく、好ましくは100kg/cm2よりも大きく、より好ましくは250kg/cm2よりも大きく、そして最も好ましくは500kg/cm2よりも大きい。
【0048】
前に指摘したように、カレンダー仕上げとマイクロファイバーに対するナノファイバーの個体数を増大させることによって全体的な平均の細孔サイズは小さくなり、さらにこのことによっても、本発明の技術については、要求に応じて特定の寸法を目標に定める能力があることが示される。
【0049】
先行技術の水準を示すために、二つの比較例についての試験結果を提示する。第一の比較例(CE1)は米国特許7112389号において電解紡糸をしたナノファイバーの例であり、この場合、比較の目的のための典型的な例として実施例4を採用している。第二の比較例(CE2)はCelgard 2325の隔膜セパレーターである。試験結果は製造業者であるPolyporeからのものであり、その製品についての文献で報告されたものである。これらの材料について報告した結果を下の表4に示す。
【0050】
【表4】
【0051】
本発明のセパレーターの等方的な特性は、いずれかの方向における強度を犠牲にすることなく、さらに薄い材料を製造するための可能性を示す。そのような結果は、より多くの量の電解質を存在させながら、より軽くて薄く、そしてより安価なバッテリーを可能にし、さらには、おそらく改善された電力を生み出すために電極の表面積を大きくすることを可能にする。さらに、バッテリーの電極が互いにプレスされるときに、電極が接触するのが防止されるようにプレスするためには引張り強さを必要とする。CE2の引張り強さは縦方向(MD)においては高いが、しかし横方向(CD)においては極めて低い。CE1のMD引張り強さは極めて低く、またCDについては報告されておらず、このことは製造と処理の観点から製品全体の有用性を制限する。
【0052】
透気抵抗が低いほど、バッテリーの中で利用可能で使用できる出力は大きくなり、また再充電するときのエネルギーロスは少なくなる。また、透気抵抗性が低くなるほど、バッテリー全体に及ぼす熱の影響は低下する。本発明の実施例は比較例と比べて、特にCE2の比較例と比べて比較的低い結果を示す。しかし、CE1の比較例は、多孔度と細孔サイズとの組み合わせにおいて非常に低く、また上述した引張り強さの大きさとの組み合わせにおいても低く、このようなバッテリーセパレーターの欠点は明白である。本発明の技術は全ての観点から全体的に良好な効果をもたらす。加えて、厚さの制御ならびに布の構造体全体の中に存在するナノファイバーの量とともに、本発明のセパレーターの透気抵抗をCE1の材料と一致するほどの低いレベルまで改変することができ、ここで採用される本発明の技術によって得られる結果は予期せざるほどに良好で有益であることがさらに明らかである。
【0053】
バッテリーセパレーターの厚さの範囲は15ミクロンから100ミクロン以上までである。高い強度とともに、12gsmのシートを困難を伴わずに製造することができるようであり、またカレンダー仕上げによって厚さを低下させることができて、それにより十分な範囲の有用なシート厚さをこの技術を用いて実現することができる。例えば、12gsmのシートは、25gsm(すなわち、約40ミクロン)で製造されるシートの半分の厚さを有するだろう。シートのカレンダー仕上げあるいは圧縮によってこの厚さを50%低下させることができ、それにより厚さは20ミクロンとなる。圧縮による改善によって、より薄いシートを製造することができ、さらにもっと薄いシートに圧縮することができ、これらの全てが本発明の範囲内に包含されるだろう。
【0054】
バッテリーの構成と実際のバッテリーの試験結果
図8は、本発明のセパレーター18を中に含む本発明のバッテリー10の1つの可能性のある態様を示す。バッテリーセル10はハウジング12を含み、ハウジングの中に他の全ての構成部品が存在し、環境汚染を防ぐとともにセルからの電解質の漏れを防ぐように、しっかりと密封されている。アノード14がカソード16と縦列させて設けられ、それらの二つの間に少なくとも1つのバッテリーセパレーター18がある。アノード14にアノードの導線20が取り付けられ、一方、カソード16にカソードの導線22が取り付けられている。アノード14はアノード容器24の中に収容されていて、一方、カソードはカソードカバー26の中に収容されている。アノード14とカソード16がハウジング12ならびにアノード容器24およびカソードカバー26に触れないように分離するために、絶縁体28が存在する。カソードカバー26は安全ベント30を含み、セル10の中で圧力をかけることを可能にするためにガスケット32が存在する。最後に、ハウジング12の内周の回りにサーミスタ34が存在する。必要なイオンの生成を与えるために、封止する前にセルに液体電解質が添加される。従って、セパレーター18はアノード14とカソード16の接触を防ぐのを助けるとともに、電解質から生成する選択されたイオンが電解質の中を通って移動するのを可能にする。バッテリーセルの一般的な構成はこのような構造として記述されるものであるが、しかし、バッテリーセル自体のサイズと構造に応じて、各々の内部構成部品についてのサイズと形状についての構成は相違する。このような状態において、実質的に円形の固体構成要素からなるコイン電池バッテリーが、そのような電池の中でのセパレーターの有効性についての適当な試験を行うために製造された。
【0055】
このような目的で、対称的なリチウム箔-セパレーター-リチウム箔2016コイン電池を製造し、そして電気抵抗について試験を行い、次いで、非対称の炭素電極-セパレーター-リチウム箔2016コイン電池を製造することによって、最初にセパレーターの電気的特性について試験した。試験は、Georgia Institute of Technology School of Materials Science and Engineering におけるナノテクノロジー研究所において行われた。対称的なリチウム-セパレーター-リチウム2016コイン電池については、選択したセパレーターから5/8インチの円形体を切り出し、アルゴンを満たしたグローブボックスの
真空室の中で70℃で約12時間にわたって乾燥し、そして次のものの中に組み込んだ:
(a)対称的なリチウム箔-セパレーター-リチウム箔2016コイン電池、および
(b)非対称の炭素電極-セパレーター-リチウム箔2016コイン電池。
【0056】
用いた電解質は、EC:DMC:DEC混合物(容量で1:1:1)の中の1MのLiPF6であった。リチウム箔を0.45mmの厚さに伸ばし、そして1層または2層のセパレーターをこの調査において用いた。Celgard 2325セパレーターであるCE2が、同様の試験のための具体的な比較例であった。
【0057】
二日間貯蔵した後、組み立てた二つの電極のLi-セパレーター-Liコイン電池のそれぞれについて0.01Hzから100kHzまでの周波数範囲において定電位電気化学インピーダンス分光分析(EIS)の測定を行った。
【0058】
各々の電池は全抵抗について次の寄与要素を含んでいた:(i)電解質/セパレーターにおけるLiイオンの輸送;(ii)各々のLi電極についての固体と電解質の界面層(SEI層)でのLiイオンの輸送;(iii)Li電池の接点における電子の輸送。抵抗についてのこれらの要素の中で、(iii)の電子の輸送は一般に無視することができて、一方、(i)の電解質の中でのLiイオンの輸送は通常、この周波数範囲においては、それらの高い特性周波数のために半円(semicircle)を与えない。
【0059】
主として(i)の電解質/セパレーターにおけるLiイオンの輸送が重要なので、関連するナイキストプロットの高い周波数範囲について注目した。セパレーターを通るイオンの輸送についての全抵抗は高い周波数における全抵抗Zの実部の値に近かったが、このとき複素インピーダンスの虚部の成分はゼロになる。前述したように、境界面と電極の電気抵抗はイオンの抵抗よりもずっと小さく、従って、無視することができる。
【0060】
AC EIS分析の結果を下の表5に要約する。イオンの抵抗はセパレーターにおける電解質の抵抗値であり、これはRi=I×A/tの式から計算され、ここでRiはイオンのインピーダンスであり、Iはオームでのインピーダンスであり、Aは平方センチメートルでのセルの面積であり、そしてtはセンチメートルでのセパレーターの厚さである。これからわかるように、実施例19の単層で示されているように、マイクロファイバーとナノファイバーの適当な組み合わせを用いることによってセルのイオンのインピーダンスを70%以上低下させることができる。さらに、適当な組み合わせを選択することによって、インピーダンスを広範囲のインピーダンスの中の任意の数値に調整することができる。このような特性を調整できるこの能力は、本発明の重要な利点である。
【0061】
【表5】
【0062】
セパレーター/電解質の層でのイオンの抵抗は、一つの層につき2~6オームの範囲であった。比較の調査によって、実施例18および19はCelgard 2325セパレーターであるCE2の値に極めて近いことが示された。
【0063】
非対称の炭素電極-セパレーター-リチウム箔2016コイン電池について、炭素電極はPureblack(登録商標)炭素とカルボキシメチルセルロース(CMC)結合剤を主成分
とするものであった。電極の組成は次の通りであった:Pureblack(登録商標)-88.85重量%、CMC(MM250kDa,DS0.9)-11.15重量%。電池を組み立てる前に、電極を真空中で100℃において二日間乾燥させた。上で用いたものと同じタイプの電解質(EC:DMC:DEC混合物(容量で1:1:1)の中の1MのLiPF6)を、この場合も用いた。C/20のゆっくりした速度において収集した最初のLiの挿入と抜き取りのサイクルの結果を下の表6に示す。
【0064】
【表6】
【0065】
最初のサイクルにおける電極の容量とクーロン効率は、実施例18、12およびCelgardのセパレーターであるCE2を含む電池について類似している。次いで、中くらいの速度において、本発明のセパレーターは、有効な結果であって、異方性のCelgardの材料と類似する結果を示した。しかし、実際には実施例34によって15%の増加が認められ、これはこのようなセパレーターの性能に関して予想をはるかに上回るものであった。従って、本発明の材料は全体的に、現在の産業において用いられている標準的なものの性能と近似するか、それを上回るかのいずれかである。
【0066】
当業者であれば本発明の範囲内での様々な変更を本発明の精神から逸脱することなく成しうることが、理解されるべきである。従って、本発明は、先行技術によって認められている程度に広く、また必要であれば明細書を考慮して、添付する特許請求の範囲によって定義されるものであることを欲する。
本明細書は以下の発明の開示を包含する。
[1]マイクロファイバーとナノファイバーからなる不織布配合物を含むポリマーのバッテリーセパレーターであって、単層の前記セパレーターが、電解質イオンの通過移動のための十分な多孔度と前記不織布配合物からなる単層を介しての電極の接触に対する適切な保護を与えるものである、前記バッテリーセパレーター。
[2]繊維からなる単一の層を含み、前記の層はナノファイバーとマイクロファイバーの両方を含み、前記ナノファイバーは1000nm未満の平均の直径を有し、前記マイクロファイバーは3000nmよりも大きな直径を有し、そして前記ナノファイバーとマイクロファイバーは混ざり合っていて、それにより前記ナノファイバーの少なくとも一部が前記マイクロファイバーの間の隙間の中に存在する、[1]に記載のバッテリーセパレーター。
[3]セパレーターは250kg/cm2よりも大きな縦方向(MD)引張り強さを有
する、[1]に記載のバッテリーセパレーター。
[4]セパレーターは500kg/cm2よりも大きな縦方向(MD)引張り強さを有する、[3]に記載のバッテリーセパレーター。
[5]セパレーターは100kg/cm2よりも大きな横方向(CD)引張り強さを有
する、[1]に記載のバッテリーセパレーター。
[6]セパレーターは250kg/cm2よりも大きな横方向(CD)引張り強さを有
する、[5]に記載のバッテリーセパレーター。
[7]前記ナノファイバーは1.5:1よりも大きな横断アスペクト比を示す、[1]に記載のバッテリーセパレーター。
[8]海上島(islands-in-the-sea)を形成するナノファイバーを含む、[1]に記載のバッテリーセパレーター。
[9]平均流量細孔サイズ(mean flow pore size)は2000nm未満である、[1
]に記載のバッテリーセパレーター。
[10]厚さが250ミクロン未満である、[1]に記載のバッテリーセパレーター。
[11]厚さが100ミクロン未満である、[10]に記載のバッテリーセパレーター。
[12]セパレーターは250kg/cm2よりも大きな縦方向(MD)引張り強さを有する、[2]に記載のバッテリーセパレーター。
[13]セパレーターは100kg/cm2よりも大きな横方向(CD)引張り強さを有する、[2]に記載のバッテリーセパレーター。
[14]前記ナノファイバーは1.5:1よりも大きな横断アスペクト比を示す、[2]に記載のバッテリーセパレーター。
[15]平均流量細孔サイズ(mean flow pore size)は2000nm未満である、[
2に記載のバッテリーセパレーター。
[16]厚さが250ミクロン未満である、請求項2に記載のバッテリーセパレーター。
[17]セパレーターは縦方向と横方向の引張り強さに関して等方性であり、そして前記セパレーターは250kg/cm2よりも大きな縦方向引張り強さを有する、[1]に記載のバッテリーセパレーター。
[18][1]に記載のバッテリーセパレーターを含むバッテリー、キャパシター、スーパーキャパシターまたはウルトラキャパシター。
[19][18]のバッテリーを利用することによって電気を発生させる方法。
[20]単層でポリマーのバッテリーセパレーターを製造する方法であって、この方法は下記の工程:
ポリマーのマイクロファイバーとナノファイバーからなる最初のスラリーを用意すること;
前記スラリーを高剪断湿式堆積不織布製作プロセスに供し、それにより前記ナノファイバーを前記マイクロファイバーともつれさせて単層の不織布を形成させること;
を含み、このとき、前記不織布は、不織布を形成する前に前記最初のスラリーの中に導入されるナノファイバーの量を決める平均の細孔サイズを示す、前記製造方法。
[21]前記最初のスラリーの中に存在するマイクロファイバーとナノファイバーは、前記マイクロファイバーからナノファイバーを取り出すフィブリル化プロセスの生成物である、[20]に記載の方法。
[22]前記最初のスラリーを前記湿式堆積不織布製作プロセスに供する前に前記最初のスラリーにポリマーのマイクロファイバー、ポリマーのナノファイバー、およびこれらの混合物または組み合わせからなる群から選択される第二の繊維を導入する追加の工程を含み、そのように第二の繊維を追加することによって、第二の繊維を用いることなく同じ製造条件に従って前記不織布製作プロセスを行って製造された不織布の特性と比較して、得られる不織布の平均流量細孔サイズ(mean flow pore size)が変化する、[21]に記載の方法。
【符号の説明】
【0067】
10 バッテリーセル、 12 ハウジング、 14 アノード、 16 カソード、18 セパレーター、 20 アノードの導線、 22 カソードの導線、 24 アノード容器、 26 カソードカバー、 28 絶縁体、 30 安全ベント、 32 ガスケット、 34 サーミスタ。
図1
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図8