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特開2022-64988カンナビジオールによる脆弱X症候群の処置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022064988
(43)【公開日】2022-04-26
(54)【発明の名称】カンナビジオールによる脆弱X症候群の処置
(51)【国際特許分類】
   A61K 31/05 20060101AFI20220419BHJP
   A61P 25/00 20060101ALI20220419BHJP
【FI】
A61K31/05
A61P25/00
【審査請求】有
【請求項の数】31
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2022015432
(22)【出願日】2022-02-03
(62)【分割の表示】P 2020517930の分割
【原出願日】2018-09-27
(31)【優先権主張番号】62/564,834
(32)【優先日】2017-09-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】62/632,532
(32)【優先日】2018-02-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】520052053
【氏名又は名称】ジナーバ・ファーマシューティカルズ・インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110001173
【氏名又は名称】特許業務法人川口國際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】マルセル・ボン-ミラー
(72)【発明者】
【氏名】ナンシー・ティチ
(72)【発明者】
【氏名】ドナ・ガターマン
(72)【発明者】
【氏名】ジョン・メッセンハイマー
(72)【発明者】
【氏名】テリ・セブリー
(57)【要約】      (修正有)
【課題】自閉症スペクトラム症の1つ以上の行動上の症状を処置する医薬組成物を提供する。
【解決手段】対象中の自閉症スペクトラム症の1つ以上の行動上の症状を処置するための方法において使用するための医薬組成物であって、カンナビジオール(CBD)の有効量を含み、自閉症スペクトラム症の1つ以上の行動上の症状が対象において処置されるために適した経皮投与用に製剤されている、医薬組成物を提供する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象中の脆弱X症候群の1つ以上の行動上の症状を処置する方法であって、カンナビジオール(CBD)の有効量を対象に経皮的に投与することを含み、脆弱X症候群の1つ以上の行動上の症状が対象において処置される、方法。
【請求項2】
CBDが(-)-CBDである、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
CBDの有効量が、1日に合計約50mg~約500mgの間である、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
CBDの有効量が1日に50mgで開始され、1日に500mgまで用量設定される、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
CBDの有効量が1日に50mgで開始され、1日に250mgまで用量設定される、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
CBDの有効量が、1日に250mgで開始される、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
CBDの有効量が、1日に500mgで開始される、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
CBDがゲルとして処方される、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
CBDが、浸透亢進ゲルとして処方される、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
CBDが1日単回投与量として投与される、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
CBDが1日2回投与量としてとして投与される、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
脆弱X症候群の1つ以上の行動上の症状を緩和することが、不安、抑うつ及び気分尺度(ADAMS)の総スコアの改善を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項13】
脆弱X症候群の1つ以上の行動上の症状を緩和することが、脆弱Xのための異常行動チェックリスト(ABC-FXS)の1つ以上の指標の改善を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項14】
1つ以上の行動上の症状が、全般性不安、社会的回避、強迫行動、躁病的/多動行動、易刺激性、嗜眠、常同及び不適切な発話からなる群から選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項15】
緩和される行動上の症状が全般性不安である、請求項1に記載の方法。
【請求項16】
緩和される行動上の症状が社会的回避である、請求項1に記載の方法。
【請求項17】
緩和される行動上の症状が強迫行動である、請求項1に記載の方法。
【請求項18】
緩和される行動上の症状が躁病的/多動行動である、請求項1に記載の方法。
【請求項19】
緩和される行動上の症状が易刺激性である、請求項1に記載の方法。
【請求項20】
緩和される行動上の症状が嗜眠である、請求項1に記載の方法。
【請求項21】
緩和される行動上の症状が無応答性である、請求項1に記載の方法。
【請求項22】
緩和される行動上の症状が常同である、請求項1に記載の方法。
【請求項23】
緩和される行動上の症状が不適切な発話である、請求項1に記載の方法。
【請求項24】
緩和される行動上の症状が癇癪/気分変動である、請求項1に記載の方法。
【請求項25】
緩和される行動上の症状が多動性/衝動性である、請求項1に記載の方法。
【請求項26】
CBDが、対象の腕に経皮的に投与される、請求項1に記載の方法。
【請求項27】
CBDが合成CBDである、請求項1に記載の方法。
【請求項28】
CBDが精製されたCBDである、請求項1に記載の方法。
【請求項29】
CBDが植物に由来する、請求項1に記載の方法。
【請求項30】
カンナビジオール(CBD)の有効量を経皮的に投与することが、CBDを経口的に投与することと比べて、少なくとも1つの有害事象の強度を低減する、請求項1に記載の方法。
【請求項31】
少なくとも1つの有害事象が、傾眠、精神賦活効果、肝機能及び胃腸関連有害事象からなる群から選択される、請求項30に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
<関連出願の相互参照>
本願は、2017年9月28日に出願された米国仮出願第62/564,834号及び2018年2月20日に出願された米国仮出願第62/632,532号の利益及び優先権を主張する。これらの各々の内容は、その全体が、参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
本開示は、カンナビジオール(CBD)の有効量を対象に経皮的に投与することによって、対象中の脆弱X症候群の1つ以上の行動上の症状を処置する方法であって、脆弱X症候群の1つ以上の行動上の症状が対象において処置される、方法に関する。
【背景技術】
【0003】
カンナビノイドは、カンナビス(Cannabis)植物中に見出される化学的化合物のクラスである。カンナビス中に含有される2つの主要なカンナビノイドは、カンナビジオール又はCBD及びΔ9-テトラヒドロカンナビノール又はTHCである。CBDは、THCの精神賦活効果を欠く。CBDは、てんかん、関節炎及びがんなどの障害を処置するために使用できることが研究によって示されている。
【0004】
FXSは、男性における最も一般的な遺伝性知的障害であり、女性における知的障害の重大な原因である。FXSは、X染色体上に位置する脆弱X精神遅滞1(FMR1)遺伝子中の変異によって引き起こされ、内在性カンナビノイド(2-AG及びアナンダミド[AEA])の低下を含む内在性カンナビノイド系の調節不全をもたらす。この障害は、シナプスの機能、可塑性及び神経細胞の接続に悪影響を与え、幅広い知的障害、社会不安及び記憶障害をもたらす。米国では、FXSに罹患している約71,000人の患者が存在する。
【0005】
「行動上の問題は、しばしば、親によって報告される最も重大な懸念事項であり、親のストレス及び抑うつの高いレベル及び生活の質の低いレベルには、子供における増大した問題行動が一般に付随する。」 Wheeler A,Raspa M,Bann C,Bishop E,Hassl D,Sacco H,Bailey DB.2014.Anxiety attention problems,hyperactivity,and the Aberrant Behavior Checklist in fragile X syndrome.Am J Med Genet Part A 164A:141-155,141。「その結果、行動上の問題の低減は、FXSのための新薬の効果を試験する進行中の臨床試験の主要な焦点である。」Wheeler、141-142頁。
【0006】
不安、抑うつ及び気分尺度(ADAMS(Anxiety,Depression,and Mood Scale))は、FXSを含む知的障害を有する患者における不安、抑うつ及び気分のレベルを評価するために臨床医、医師及び研究者によって使用されている手段である。ADAMSは、(i)全般性不安、(ii)社会的回避、(iii)強迫行動、(iv)躁病的/多動行動及び(v)抑うつ気分を含む5つの下位尺度に分けられる質問からなる。各質問は、0(「問題なし」)から3(「重度の問題」)の範囲の4点尺度で、臨床医/医師によって回答される。下位尺度スコアに加えて、ADAMSは総スコアを与える。
【0007】
元来の異常行動チェックリスト(ABC(Aberrant Behavior Checklist))は、「施設内状況での成人の行動上の問題を評価するために設計」された。Wheeler、142頁。それ以来、元来のABCは、施設に収容されていない患者に対処するために、特にFXSに対処するために改変されてきた。同文献。異常行動チェックリスト-FXS専用(ABC-FXS(Aberrant Behavior Checklist-FXS Specific))尺度は、FXSを有する患者中のある種の行動を評価するために、臨床医、医師及び研究者によって使用される。ABC-FXS尺度は、(i)易刺激性、(ii)多動性、(iii)社会的に無応答/嗜眠性、(iv)社会的回避、(v)常同及び(vi)不適切な発話を含む6つの下位尺度を有する。ADAMSと同様に、ABC-FXS尺度は、0(「問題なし」)から3(「問題が重度である」)の範囲の4点リッカート型尺度である。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】Wheeler A,Raspa M,Bann C,Bishop E,Hassl D,Sacco H,Bailey DB.2014.Anxiety attention problems,hyperactivity,and the Aberrant Behavior Checklist in fragile X syndrome.Am J Med Genet Part A 164A:141-155,141
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0009】
本開示は、対象中の脆弱X症候群の1つ以上の行動上の症状を処置する方法に関する。該方法は、カンナビジオール(CBD)の有効量を対象に経皮的に投与することを含み、脆弱X症候群の1つ以上の行動上の症状が前記対象において処置される。
【0010】
いくつかの実施形態において、CBDは、(-)-CBDである。CBDの有効量は、1日に約50mg~約500mgの間であり得る。いくつかの実施形態において、CBDの有効量は1日に約50mgで開始され、1日に約500mgまで用量設定される。CBDの有効量は、1日に約50mgで開始されることができ、1日に約250mgまで用量設定されることができる。いくつかの実施形態において、CBDの有効量は、1日に250mgで開始される。CBDの有効量は、1日に500mgで開始され得る。いくつかの実施形態において、500mgの1日用量が、体重が35kgを上回る患者に投与される。CBDは、1日1回投薬で又は1日2回投薬で投与することができる。いくつかの実施形態において、CBDの有効量は、分割された1日用量で390mgであり得る。
【0011】
CBDは、ゲル又は油剤として処方され得る。いくつかの実施形態において、CBDは、浸透亢進されたゲルとして処方される。ゲルは、1%(重量/重量)CBD~7.5%(重量/重量)の間のCBDを含有することができる。いくつかの実施形態において、ゲルは、4.2%(重量/重量)CBDを含有する。いくつかの実施形態において、ゲルは、7.5%(重量/重量)CBDを含有する。
【0012】
いくつかの実施形態において、経皮調製物は、クリーム、膏薬又は軟膏であり得る。CBDは、包帯、パッド又はパッチによって送達されることができる。
【0013】
脆弱X症候群の1つ以上の行動上の症状を緩和することは、不安、抑うつ及び気分尺度(ADAMS)の総スコアの改善を含むことができる。いくつかの実施形態において、FXSの1つ以上の行動上の症状を緩和することは、ADAMSの1つ以上の下位尺度の改善を含むことができる。脆弱X症候群の1つ以上の行動上の症状を緩和することは、脆弱Xのための異常行動チェックリスト(ABC-FXS)の1つ以上の指標の改善を含むことができる。
【0014】
いくつかの実施形態において、1つ以上の行動上の症状は、全般性不安、社会的回避、強迫行動、躁病的/多動行動、易刺激性、嗜眠、常同及び不適切な発話からなる群から選択される。緩和される行動上の症状は、全般性不安、社会的回避、強迫行動、躁病的/多動行動、易刺激性、嗜眠、常同、不適切な発話、情動機能、心理社会的健康、書くことによる意思疎通、社会化、遊びと娯楽、対処能力、内在化行動、外在化行動、癇癪/気分変動、多動性/衝動性、生活の質の任意の1つ又はこれらのあらゆる組み合わせであり得る。いくつかの実施形態において、単一の症状が緩和される。いくつかの実施形態において、2つ、3つ、4つ、5つ、6つ、7つ、8つ又は9つの症状が緩和される。
【0015】
CBDは、対象の上腕及び肩に経皮的に投与されることができる。いくつかの実施形態において、CBDは、対象の大腿又は背中に経皮的に投与される。
【0016】
CBDは合成CBDであり得る。CBDは精製されたCBDであり得る。CBDは植物に由来し得る。
【0017】
カンナビジオール(CBD)の有効量を経皮的に投与することは、CBDを経口的に投与することと比べて、少なくとも1つの有害事象又は副作用の強度を低減することができる。少なくとも1つの有害事象又は副作用は、胃腸の(GI)有害事象であり得る。少なくとも1つの有害事象又は副作用は、肝機能であり得る。いくつかの実施形態において、少なくとも1つの有害事象は傾眠である。いくつかの実施形態において、傾眠の頻度及び強度が、有害事象として低減される。
【0018】
別の態様において、CBDの有効量を対象に経皮的に投与することによって、対象中の自閉症スペクトラム症(ASD(autism spectrum disorder))の1つ以上の行動上の症状を処置する方法であって、ASDの1つ以上の行動上の症状が対象において処置される、方法が提供される。
【0019】
ASDは、他の人々と意思疎通し、社会的に交流する能力が損なわれることを一般的に特徴とする多様な症状を有する行動上の診断である。
【0020】
処置されることが可能な、ASDの1つ以上の行動上の症状には、例えば、社会的回避、全般性不安、多動性、抑うつ気分及び強迫行動が含まれる。ASDの1つ以上の行動上の症状を緩和することは、不安、抑うつ及び気分尺度(ADAMS)の総スコアの改善を含むことができる。いくつかの実施形態において、ASDの1つ以上の行動上の症状を緩和することは、ADAMSの1つ以上の下位尺度の改善を含むことができる。
【0021】
いくつかの実施形態において、CBDは、(-)-CBDである。CBDの有効量は、1日に約50mg~約500mgの間であり得る。いくつかの実施形態において、CBDの有効量は1日に約50mgで開始され、1日に約500mgまで用量設定される。CBDの有効量は、1日に約50mgで開始されることができ、1日に約250mgまで用量設定されることができる。いくつかの実施形態において、CBDの有効量は、1日に250mgで開始される。CBDの有効量は、1日に500mgで開始され得る。いくつかの実施形態において、500mgの1日用量が、体重が35kgを上回る患者に投与される。CBDは、1日1回投薬で又は1日2回投薬で投与することができる。いくつかの実施形態において、CBDの有効量は、分割された1日用量で390mgであり得る。
【0022】
CBDは、ゲル又は油剤として処方され得る。いくつかの実施形態において、CBDは、浸透亢進されたゲルとして処方される。ゲルは、1%(重量/重量)CBD~7.5%(重量/重量)の間のCBDを含有することができる。いくつかの実施形態において、ゲルは、4.2%(重量/重量)CBDを含有する。いくつかの実施形態において、ゲルは、7.5%(重量/重量)CBDを含有する。
【0023】
いくつかの実施形態において、経皮調製物は、クリーム、膏薬又は軟膏であり得る。CBDは、包帯、パッド又はパッチによって送達されることができる。
【0024】
ASDの1つ以上の行動上の症状を緩和することは、不安、抑うつ及び気分尺度(ADAMS)の総スコアの改善を含むことができる。いくつかの実施形態において、ASDの1つ以上の行動上の症状を緩和することは、ADAMSの1つ以上の下位尺度の改善を含むことができる。
【0025】
いくつかの実施形態において、1つ以上の行動上の症状は、全般性不安、社会的回避、強迫行動、躁病的/多動行動からなる群から選択される。緩和される行動上の症状は、全般性不安、社会的回避、強迫行動、躁病的/多動行動の任意の1つ又はこれらのあらゆる組み合わせであり得る。いくつかの実施形態において、単一の症状が緩和される。いくつかの実施形態において、2つ、3つ又は4つの行動上の症状が緩和される。
【0026】
CBDは、対象の上腕及び肩に経皮的に投与されることができる。いくつかの実施形態において、CBDは、対象の大腿又は背中に経皮的に投与される。
【0027】
CBDは合成CBDであり得る。CBDは精製されたCBDであり得る。CBDは植物に由来し得る。
【0028】
カンナビジオール(CBD)の有効量を経皮的に投与することは、CBDを経口的に投与することと比べて、少なくとも1つの有害事象又は副作用の強度を低減することができる。少なくとも1つの有害事象又は副作用は、胃腸の(GI)有害事象であり得る。少なくとも1つの有害事象又は副作用は、肝機能有害事象であり得る。いくつかの実施形態において、少なくとも1つの有害事象は傾眠である。いくつかの実施形態において、傾眠の頻度及び強度が、有害事象として低減される。
【発明を実施するための形態】
【0029】
本明細書において使用される「処置する」又は「処置」という用語は、ヒトなどの対象中の症状、疾病若しくは障害の少なくとも1つの症状(行動上の症状など)を軽減し、改善し、和らげ(relieving)、若しくは緩和する(alleviating)こと、又は症状、疾病若しくは障害と関連する確認可能な測定値の改善を表す。
【0030】
本明細書において使用される「臨床的有効性」という用語は、食品医薬品局(FDA)又はいずれかの外国の対応する機関、臨床試験を通じて示されるように、所望の効果をヒトに生成する能力を表す。
【0031】
本明細書において使用される「カンナビジオール」又は「CBD」という用語は、カンナビジオール;カンナビジオールプロドラッグ;カンナビジオール、カンナビジオールプロドラッグ及びカンナビジオール誘導体の薬学的に許容される塩を含む、カンナビジオールの薬学的に許容される誘導体を表す。CBDには、2-[3-メチル-6-(1-メチルエテニル)-2-シクロヘキセン-1-イル]-5-ペンチル-1,3-ベンゼンジオール並びにその薬学的に許容される、塩、溶媒和物、代謝物(例えば、皮膚代謝物)及び代謝前駆体が含まれる。CBDの合成は、例えば、Petilka et al,Helv.Chim.Acta,52:1102(1969)及びMechoulam et al.,J.Am.Chem.Sco.,87:3273(1965)に記載されており、これらは、参照により本明細書に組み込まれる。
【0032】
本明細書において使用される「経皮的に投与する」という用語は、CBDが皮膚に浸透するのに有効な条件下で、患者の又は対象の皮膚とCBDを接触させることを表す。
【0033】
脆弱X症候群(FXS)は、知的障害、行動上及び学習の困難並びに様々な身体的特徴を引き起こす遺伝的症状である。FXSは、男性4,000人に1人、女性8,000人に1人に発症する。FXSを有する患者は、ASDの1つ以上の特徴を示し得る。
【0034】
本開示は、カンナビジオール(CBD)の有効量を対象に経皮的に投与することによって、対象中の脆弱X症候群の1つ以上の行動上の症状を処置する方法であって、脆弱X症候群の1つ以上の行動上の症状が対象において処置される、方法に関する。
【0035】
臨床及び前臨床データは、てんかん、関節炎、がん及び脆弱X症候群を処置する上でのCBDの潜在的能力を裏付ける。CBDの治療的レベルの持続された及び調節された送達を可能にするための革新的な経皮技術を使用する治療用医薬が開発された。カンナビノイド(例えば、CBD)の経皮送達は、薬物が皮膚を通じて血流中に直接吸収されることを可能にするので、経口投薬を上回る利点を有する。これは、初回通過肝臓代謝を回避するので、活性薬学的成分のより低い投薬量レベルを可能にし、より高い生体利用可能性及び改善された安全特性を有する可能性を秘める。経皮送達は胃腸管も回避するので、望まれない精神賦活効果を伴い得る、GI関連有害事象の機会及び胃酸によるCBDのTHCへの分解の可能性を低下させる。さらに、CBDの経皮送達は、CBDの経口投薬に通例存在する傾眠有害事象の強度及び頻度を低下させる。CBDの経皮送達は、CBDの経口投薬に通例存在する肝機能有害事象を回避することができる。いくつかの実施形態において、CBDの有効量を経皮的に投与することは、CBDを経口的に投与することと比べて、約15%~約95%、少なくとも1つの有害事象の強度を低下させる。
【0036】
CBDはゲル形態であり得、1日に1回又は2回の投薬で、調節された薬物送達を経皮的に与えるように設計されている透明な、浸透亢進されたゲルとして薬学的に製造することができる。CBDゲルは、1%(重量/重量)CBD~7.5%(重量/重量)の間のCBDであり得る。CBDゲルは、例えば、4.2%(重量/重量)CBD又は7.5%(重量/重量)CBD)を有することができる。CBDゲルは、患者の上腕及び肩、背中、大腿又はこれらのあらゆる組み合わせに、患者又は介護者によって局所的に塗布されることができる。
【0037】
CBDゲルは、希釈剤及び担体並びに湿潤剤、防腐剤及び懸濁及び分散剤などの他の慣用の賦形剤を含むことができる。
【0038】
CBDゲルは、可溶化剤、浸透亢進剤、可溶化物質、抗酸化剤、増量剤、増粘剤及び/又はpH調節物質を含むことができる。CBDゲルの組成物は、例えば、a.組成物の約0.1%~約20%(重量/重量)の量で存在するカンナビジオール;b.組成物の約15%~約95%(重量/重量)の量で存在する1~6の間の炭素原子を有する低級アルコール;c.組成物の約0.1%~約20%(重量/重量)の量で存在する第一の浸透亢進剤;及びd.組成物を合計100%(重量/重量)にするのに十分な量の水であり得る。CBDゲルのその他の処方は、国際公開第2010/127033号パンフレットに見出すことができ、その内容全体は、参照により本明細書に組み込まれる。
【実施例0039】
[実施例1]:研究デザイン及びデータ
合計20人の患者(平均年齢=10.8、標準偏差=4.0)が、12週の研究に参加した。FMR1全変異の分子的記録によって確認された、脆弱Xを有する6~17歳の年齢(平均=11.2、標準偏差=3.96)の患者18人(男性14人、女性4人)が、12週を通じて、非盲検でのFAB-C研究を終了した。投与されている他の医薬にCBDゲルを添加した。研究の最初の6週は、患者における投薬を用量設定するように設計された。投薬は、1日に50mgCBDで開始され、1日に250mgCBDまで増加することができた。研究の7~12週は、6週までに、1日に最大250mgCBDに確立された用量で患者が処置された維持期間から構成された。研究の完了時に、患者は、最大12ヶ月間の非盲検延長研究に入ることができた。
【0040】
本試験の主要な評価項目は、ベースラインから12週までの不安、抑うつ及び気分尺度(ADAMS)の総スコアの変化であった。ADAMSは、全般性不安、社会的回避、強迫行動、躁病的/多動行動及び抑うつ気分を評価するために設計された28項目の尺度である。ADAMSは、FXSを有する患者において検証されてきた。
【0041】
主要な評価項目に対する結果が、ADAMS総スコアに対するベースライン及び12週での有効性尺度平均(標準偏差)値を詳述する表1に要約されている。
【0042】
【表1】
【0043】
ADAMSの下位尺度が、ベースライン及び12週での有効性尺度平均(標準偏差)値を詳述する表2に要約されている。
【0044】
【表2】
【0045】
ベースライン総スコアと比べて、CBD経皮ゲルで処置された患者は、ADAMS総スコアに44%の低下を有する(p<0.0001)。さらに、CBD経皮ゲル処置された患者は、12週において、1つを除く全てのADAMS下位尺度(すなわち、躁病的/多動行動、社会的回避、全般性不安及び強迫行動)で、ベースラインと比べて統計的に及び臨床的に有意な改善を有する。ADAMSの抑うつ気分下位尺度に対しては、有意な変化は観察されなかった。
【0046】
異常行動チェックリスト-FXS専用(ABC-FXS)、小児不安評価尺度(PARS-R(Pediatric Anxiety Rating Scale))、不安、多動性及び癇癪/気分易変性に対する視覚的アナログ尺度(VAS)、ヴァインランド適応行動(VLD(Vineland Adaptive Behavior))III及び小児の生活の質(PedsQLTM)を含む複数の二次的有効性評価項目。PARS-Rとヴァインランド尺度はいずれも臨床医によって評価されるのに対して、その他の尺度は介護者によって評価される。
【0047】
主要な評価項目及び二次的評価項目は、薬物投与の前及び薬物投与の12週後に評価された。二次的評価項目の結果は、ADAMSで実証された結果を強化する。ADAMSから得られる知見と合致して、CBD経皮ゲルを服用する患者は、ABC-FXSの全ての下位尺度(すなわち、易刺激性、多動性、社会的に無応答/嗜眠性、社会的回避、常同及び不適切な発話)及びPARS-Rの両総スコア計算値(すなわち、5及び7項目)に、統計学的及び臨床的に有意な12週の低下を示した。
【0048】
PedsQLの身体的機能、学校適応及び社会適応下位尺度並びにVLDのいくつかの下位尺度(例えば、意思疎通、日常生活技能)を除き、全ての残りの尺度についても、患者は、ベースラインと12週のスコアの間で有意な改善を示した。VLD及びADAMSはいずれも、試験の延長第2相においても実施されている。
【0049】
ABC-FXSから得られた結果が、ベースライン及び12週での有効性尺度平均(標準偏差)値を詳述する表3に要約されている。
【0050】
【表3】
【0051】
PARS-Rから得られた結果が、ベースライン及び12週での有効性尺度平均(標準偏差)値を詳述する表4に要約されている。
【0052】
【表4】
【0053】
不安、多動性及び癇癪/気分易変性に対するVASから得られた結果が表5に要約されている。
【0054】
【表5】
【0055】
PedsQLから得られた結果が、ベースライン及び12週での有効性尺度平均(標準偏差)値を詳述する表6に要約されている。
【0056】
【表6】
【0057】
VLDIIIから得られた結果が、ベースライン及び12週での有効性尺度平均(標準偏差)値を詳述する表7に要約されている。
【0058】
【表7】
【0059】
12週の処置を終了した18人の患者のうち、総合的な不安と抑うつの平均的な改善(ADAMS総スコア)は44%に達し(p<0.01)、全般性不安(51%;p<0.01)及び強迫行動下位尺度(48%;p<0.05)に対して特に有益性が観察された。さらに、28%(多動性下位尺度;p0<.05)~60%(常同下位尺度;p0<.01)の範囲にわたる、ABCFXSによって測定された改善が、異常な行動において観察され、処置期間の間に、社会的回避(p<0.01)及び社会的無応答性/嗜眠下位尺度がそれぞれ55%改善した(p<0.01)。個別の症状を越えて、生活の質が17%改善された(p=0.01)。
【0060】
本試験は、その主要な評価項目を首尾よく充足し、ベースラインと比べて12週において、総ADAMSスコアの44%の改善(P<0.0001)を達成した。本試験は、易刺激性、多動性、社会的無応答性、社会的回避、常同及び不適切な発話を含むFXSの主要な症状を記述するABC-FXSの全ての指標の臨床的に有意な改善も達成した。
【0061】
12週の非盲検研究後に、患者は、1年の非盲検延長研究に参入することが許可された。最初の12週の研究を終了した18人の患者のうち72%(n=13)が延長研究に参入した。非盲検の延長研究は進行中であり、38週(最初の研究の12週及び延長研究の最長6ヶ月)を通じて、いくつかのデータが収集された。延長研究から得られた結果は、収集された2つの指標(ADAMS及びABCFXS)で継続的な進展を実証する。実際に、38週の訪問を終了した者(n=4)は、総合的な不安及び抑うつにおけるスクリーニングから著しい進展を示し、参加者は、74%のADAMS総スコアの平均的改善を経験した。異常な行動に対して、38週で75%(易刺激性下位尺度)から96%(社会的回避下位尺度)及び97%(社会的に無応答/嗜眠下位尺度)の範囲にわたる類似の改善が観察された。
【0062】
非盲検延長研究は進行を継続しており、51週を通じてデータが収集されている。結果は、表8(ABCFXS)及び表(ADAMS)に要約されている。
【0063】
【表8】
【0064】
【表9】
【0065】
CBDゲルは良好に忍容され、優れた皮膚忍容性を有していた。既存の湿疹の悪化のために、1人の患者が中断した。他の有害事象は中断をもたらさず、有害事象は重度とは考えられなかった。最も一般的な有害事象は軽度~中度の胃腸炎(n=6)及び上気道感染(n=5)であった。しかしながら、12週の処置期間の間に、患者は薬物関連GI事象を経験せず、THCは血漿中に検出されなかった。
【0066】
本試験の臨床的結果は、彼らの症状を処置するための承認された治療上の選択肢を現在有しない世界中の多くのFXS患者にとって重要である。本データ、特に、ADAMS、ABC-FXS及びPARS-Rによって測定された不安、社会的回避及び易刺激性の改善が重要である。CBDゲルは、FXSを有する小児及び青年で極めてよく忍容された。
【0067】
[実施例2]:親によって報告された患者の研究書
これは、介護者によって報告された、上記研究に参加し、延長研究を継続している7歳児に関する報告である。介護者の息子は、全変異脆弱X症候群を有している。彼は、本試験の前に、言葉を使わず、重度の知的障害、視覚的障害があり、未だおむつが必要で、2時間ごとに栄養管によって栄養補給する必要がある極めて重度の胃腸の問題を有していると報告されている。本試験を開始する前に、この小児は、アイコンタクトをしたことが全くなく、著しい精神的苦痛なしに家から外出できることは稀であり、何らかの形態の意思疎通を開始することは全くなく、両親を含めて触られることを極度に嫌い、家族でさえ隣に座ることを許さず、誰かが部屋の中に歩いて入ると部屋を出て行った。
【0068】
試験の最初の2週以内に、この患者は、より多くのアイコンタクトをし始め、彼の家族との身体的接触、例えば、母親の手を握ることを開始し、家族と同じ部屋の中にいることを求めるなど、家族との感情的接触を開始し、家族が初めての休暇を一緒に取ることができる程度まで外出能力の改善を示した。
【0069】
最初の試験の終了及び延長された試験に入った数週後に、介護者は、患者に別の大きな変化を記録した。彼は、家族に挨拶を始め、より複雑なゲームを開始して取り組み、全ての選択をただ拒絶する代わりに物事に対する選好性を示し/共有し、家族のペットを受け入れ始めた。彼は、動揺せずに、医師が自分に触れ、握ることも許容した。患者は、本当に初めて、身体的合図(手話)を使用し始めた。患者は、母親を慕う気持ちを本当に初めて極めて明瞭に伝え、母親に抱擁され、抱えられることを強く望んだ。
【0070】
患者は、より幸せであり、よりくつろいでおり、以前にはできなかった態様で世間と関わることができ、以前にはできなかった新たな技能を学習することができると報告されている。患者の教師、セラピスト及び補助者も、患者の変化に言及した。
【手続補正書】
【提出日】2022-02-15
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象中の自閉症スペクトラム症の1つ以上の行動上の症状を処置するための方法において使用するための医薬組成物であって、カンナビジオール(CBD)の有効量を含み、自閉症スペクトラム症の1つ以上の行動上の症状が対象において処置されるために適した経皮投与用に製剤されている、医薬組成物。
【請求項2】
CBDが(-)-CBDである、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項3】
CBDの有効量が、1日に合計約50mg~約500mgの間である、請求項1又は2に記載の医薬組成物。
【請求項4】
前記方法において、CBDの有効量が1日に50mgで開始され、1日に500mgまで用量設定される、請求項1~3のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項5】
前記方法において、CBDの有効量が1日に50mgで開始され、1日に250mgまで用量設定される、請求項1~3のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項6】
前記方法において、CBDの有効量が、1日に250mgで開始される、請求項1~3のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項7】
前記方法において、CBDの有効量が、1日に500mgで開始される、請求項1~3のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項8】
CBDがゲルとして製剤化されている、請求項1~7のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項9】
CBDが、浸透亢進ゲルとして製剤化されている、請求項8に記載の医薬組成物。
【請求項10】
CBDが1日単回投与量として製剤化されている、請求項1~9のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項11】
CBDが1日2回投与量としてとして製剤化されている、請求項1~10のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項12】
自閉症スペクトラム症の1つ以上の行動上の症状を緩和することが、不安、抑うつ及び気分尺度(ADAMS)の総スコアの改善を含む、請求項1~11のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項13】
自閉症スペクトラム症の1つ以上の行動上の症状を緩和することが、異常行動チェックリスト(ABC-FXS)の1つ以上の指標の改善を含む、請求項1~11のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項14】
1つ以上の行動上の症状が、全般性不安、社会的回避、強迫行動、躁病的/多動行動、易刺激性、嗜眠、常同及び不適切な発話からなる群から選択される、請求項1~13のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項15】
緩和される行動上の症状が全般性不安である、請求項14に記載の医薬組成物。
【請求項16】
緩和される行動上の症状が社会的回避である、請求項14に記載の医薬組成物。
【請求項17】
緩和される行動上の症状が強迫行動である、請求項14に記載の医薬組成物。
【請求項18】
緩和される行動上の症状が躁病的/多動行動である、請求項14に記載の医薬組成物。
【請求項19】
緩和される行動上の症状が易刺激性である、請求項14に記載の医薬組成物。
【請求項20】
緩和される行動上の症状が嗜眠である、請求項14に記載の医薬組成物。
【請求項21】
緩和される行動上の症状が無応答性である、請求項14に記載の医薬組成物。
【請求項22】
緩和される行動上の症状が常同である、請求項14に記載の医薬組成物。
【請求項23】
緩和される行動上の症状が不適切な発話である、請求項14に記載の医薬組成物。
【請求項24】
緩和される行動上の症状が癇癪/気分変動である、請求項14に記載の医薬組成物。
【請求項25】
緩和される行動上の症状が多動性/衝動性である、請求項14に記載の医薬組成物。
【請求項26】
CBDが、対象の腕への経皮的投与用に製剤化されている、請求項1~25のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項27】
CBDが合成CBDである、請求項1~26のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項28】
CBDが精製されたCBDである、請求項1~26のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項29】
CBDが植物に由来する、請求項1~26のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項30】
カンナビジオール(CBD)の有効量を経皮的に投与することが、CBDを経口的に投与することと比べて、少なくとも1つの有害事象の強度を低減する、請求項1~29のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項31】
少なくとも1つの有害事象が、傾眠、精神賦活効果、肝機能及び胃腸関連有害事象からなる群から選択される、請求項30に記載の医薬組成物。
【外国語明細書】