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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022065017
(43)【公開日】2022-04-26
(54)【発明の名称】消火栓装置
(51)【国際特許分類】
   A62C 35/20 20060101AFI20220419BHJP
   A62C 3/00 20060101ALN20220419BHJP
【FI】
A62C35/20
A62C3/00 J
【審査請求】有
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022016938
(22)【出願日】2022-02-07
(62)【分割の表示】P 2017245553の分割
【原出願日】2017-12-21
(71)【出願人】
【識別番号】000233826
【氏名又は名称】能美防災株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002169
【氏名又は名称】彩雲国際特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】松本 大志
(57)【要約】      (修正有)
【課題】筐体の前面に消火用ホースの引き出し口を回動して開閉する消火栓扉を備えた消火栓装置において、消火栓扉のモーメントを小さくできるようにする。また、ダンパーを備えつつも、筐体を薄型化できるようにする。
【解決手段】筐体の前面に設けられる消火用ホース6の引き出し口にヒンジ5によって回動可能に取り付けられて、引き出し口を回動して開閉する消火栓扉4を備える消火栓装置1-2において、消火栓扉4とは別体のものとして、消火栓扉取り付け用のヒンジ5とは別のヒンジ11によって引き出し口に回動可能に取り付けられると共に、消火栓扉4が回転するのに従動して回転するように設けられる従動回動部10をさらに備え、従動回動部10は、部品の取り付け位置を有することを特徴とする。
【選択図】図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
筐体の前面に設けられる消火用ホースの引き出し口にヒンジによって回動可能に取り付けられて、前記引き出し口を回動して開閉する消火栓扉を備える消火栓装置において、
前記消火栓扉とは別体のものとして、前記消火栓扉取り付け用の前記ヒンジとは別のヒンジによって前記引き出し口に回動可能に取り付けられると共に、前記消火栓扉が回転するのに従動して回転するように設けられる従動回動部をさらに備え、
前記従動回動部は、部品の取り付け位置を有することを特徴とする消火栓装置。
【請求項2】
前記消火栓扉は、開扉方向に回転する際、それに従動させて前記従動回動部を回転させるように引き動かす引っ掛け部が設けられることを特徴とする請求項1に記載の消火栓装置。
【請求項3】
前記引っ掛け部は、前記消火栓扉が開扉方向に回転する際、それに遅れて前記従動部を回転させるように引き動かすことを特徴とする請求項2に記載の消火栓装置。
【請求項4】
前記消火栓扉取り付け用の前記ヒンジと前記従動回動部取り付け用の前記ヒンジはいずれも、回転動作を制御するダンパーを有するダンパーヒンジであることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の消火栓装置。
【請求項5】
前記部品の取り付け位置に取り付けられる部品は、消火用ノズルを保持するノズルホルダであることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載の消火栓装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、トンネルに設置される消火栓装置に関する。
【背景技術】
【0002】
トンネルに設置される消火栓装置は、その筐体前面に消火用ホースの引き出し口を回動して開閉する消火栓扉を備えている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2005-318972号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
消火栓扉は、操作者により操作されて回動して開閉するものであり、扉回転時のモーメントは、小さい方が好ましい。
【0005】
また、消火栓扉と引き出し口との間には、通常、扉の回転動作を制御するダンパーが設けられており、従来、そのダンパーとしては、アーム状の支持部分により消火栓扉を支持するタイプのものが用いられている(特許文献1参照)。近年、筐体の薄型化が進んでいるが、従来用いられているタイプのダンパーは、閉扉時には、そのアーム状の支持部分を含めて全体が筐体内に収納されることになるため、筐体内には、ダンパー収納用のスペースが必要になる。つまり、従来用いられているタイプのダンパーは、筐体の薄型化に対する妨げになっている。
【0006】
この発明は、上記の事情に鑑み、筐体の前面に消火用ホースの引き出し口を回動して開閉する消火栓扉を備えた消火栓装置において、消火栓扉のモーメントを小さくできるようにすることを目的とする。また、ダンパーを備えつつも、筐体を薄型化できるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この発明において、第1の発明は、筐体の前面に設けられる消火用ホースの引き出し口にヒンジによって回動可能に取り付けられて、前記引き出し口を回動して開閉する消火栓扉を備える消火栓装置において、前記消火栓扉は、前記ヒンジに近い側の位置に部品の取り付け位置を有することを特徴とする消火栓装置である。
【0008】
なお、第1の発明において、前記ヒンジは、回転動作を制御するダンパーを有するダンパーヒンジとすることができる。また、前記消火栓扉は、前記ヒンジに近い側の端縁部に扉内容に突出する突縁部を有し、その突縁部に前記部品の取り付け位置を有するものとすることができる。また、前記部品の取り付け位置に取り付けられる部品は、消火用ノズルを保持するノズルホルダとすることができる。
【0009】
この発明において、第2の発明(請求項1及びその従属項に係る発明)は、筐体の前面に設けられる消火用ホースの引き出し口にヒンジによって回動可能に取り付けられて、前記引き出し口を回動して開閉する消火栓扉を備える消火栓装置において、前記消火栓扉とは別体のものとして、前記消火栓扉取り付け用の前記ヒンジとは別のヒンジによって前記引き出し口に回動可能に取り付けられると共に、前記消火栓扉が回転するのに従動して回転するように設けられる従動回動部をさらに備え、前記従動回動部は、部品の取り付け位置を有することを特徴とする消火栓装置である。
【0010】
なお、第2の発明において、前記消火栓扉は、開扉方向に回転する際、それに従動させて前記従動回動部を回転させるように引き動かす引っ掛け部が設けられるものとすることができる。また、前記引っ掛け部は、前記消火栓扉が開扉方向に回転する際、それに遅れて前記従動部を回転させるように引き動かすものとすることができる。また、前記消火栓扉取り付け用の前記ヒンジと前記従動回動部取り付け用の前記ヒンジはいずれも、回転動作を制御するダンパーを有するダンパーヒンジとすることができる。また、前記部品の取り付け位置に取り付けられる部品は、消火用ノズルを保持するノズルホルダとすることができる。
【発明の効果】
【0011】
この発明においては、第1の発明によれば、消火栓扉がヒンジに近い側の位置に部品の取り付け位置を有することにより、取り付けられる部品を含む消火栓扉の重心位置をヒンジに近くすることができる。それにより、消火栓扉が回転する際のモーメントを小さくすることができる。
【0012】
また、第2の発明によれば、従動回動部が部品の取り付け位置を有することにより、取り付けられる部品の荷重を従動回動部側に分散することができ、消火栓扉の荷重を小さくすることができる。それにより、消火栓扉が回転する際のモーメントを小さくすることができる。
【0013】
したがって、この発明は、第1と第2のいずれの発明によっても、消火栓扉のモーメントを小さくすることができる。
【0014】
ここで、第1と第2のいずれの発明においても、消火栓扉のモーメントを小さくできることにより、消火栓扉の回転動作を制御するダンパーを十分に働かせることができる。例えば、消火栓扉が下方に回転して開くタイプのもの(前傾式扉)である場合には、消火栓扉を十分にゆっくりと開くようにすることができるし、消火栓扉を十分に軽い力で閉じるようにすることができる。
【0015】
さらに、第1の発明においては、消火栓扉取り付け用のヒンジを、回転動作を制御するダンパーを有するダンパーヒンジとすることにより、第2の発明においては、消火栓扉取り付け用のヒンジと従動回動部取り付け用のヒンジの両方を、回転動作を制御するダンパーを有するダンパーヒンジとすることにより、いずれの発明においても、筐体内にダンパー収納用のスペースを設ける必要をなくすことができる。
【0016】
したがって、この発明は、第1と第2のいずれの発明によっても、ダンパーを備えつつも、筐体を薄型化することができる。
【0017】
さらに、第1の発明においては、消火栓扉を、ヒンジに近い側の端縁部に扉内方に突出する突縁部を有し、その突縁部に部品の取り付け位置を有するものとすることにより、例えば、消火栓扉が前傾式扉である場合、消火栓扉の開扉時、取り付けられる部品の荷重が閉扉方向に作用する状態から開扉方向に作用する状態に変化するタイミングを遅らせることができる。それによっても、消火栓扉が回転する際のモーメントを小さくすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】この発明の第1の実施形態における消火栓装置の正面図であり、消火栓扉が全開している状態(略180度開いている状態)を示したものである。
図2】同上の消火栓装置の拡大側面図である。
図3】同上の消火栓装置の要部拡大上面図(筐体の上部を切り欠いている)であり、消火栓扉が半開している状態(略90度開いている状態)を示したものである。
図4】同上の消火栓装置における消火栓扉の開閉時の様子を側面視で示した説明図であり、(a)が全閉している状態、(b)が半開している状態、(c)が全開している状態をそれぞれ示したものである。
図5】この発明の第2の実施形態における消火栓装置の正面図であり、図1に相当する図である。
図6図5の要部拡大図である。
図7】同上の消火煙装置の消火栓扉と従動回動部の開扉時の様子を側面視で示した説明図であり、図4に相当する図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
この発明の実施形態について、消火用ホースの引き出し口を回動して開閉する消火栓扉として、下方に回転して開くタイプの消火栓扉(前傾式扉)を有する消火栓装置に適用する場合を例に、第1の発明に対応する第1の実施形態と第2の発明に対応する第2の実施形態に分けて、図1乃至図7を参照しつつ説明する。なお、この発明は、上方に回転して開くタイプの消火栓扉(跳ね上げ式扉)を有する消火栓装置に適用することもできる。
【0020】
[第1の実施形態]
まず、第1の実施形態の消火栓装置1-1について、図1乃至図4を参照しつつ説明する。
【0021】
[全体構成]
図1乃至図3に示したように、消火栓装置1は、消火用ホース6が収納されるホース収納部9等を内蔵する筐体2を有している。筐体2の前面には、前面パネル2aが設けられており、その前面パネル2aには、消火用ホース6を外部に引き出すための引き出し口3や、その引き出し口3を開閉する消火栓扉4等が設けられている。
【0022】
なお、図示は省略するが、消火栓装置1は、トンネルに設置されるものである。具体的には、筐体2がトンネルの内壁に形成される箱抜き内に収納されたり、内壁に壁掛けされたり、車道脇の監査路上に置かれたり、監査路内に埋め込まれたりする等してトンネル内に設置されるものである。
【0023】
[消火栓扉]
消火栓扉4は、ヒンジ5により引き出し口3に回動可能に取り付けられて、そのヒンジ5が有する回転軸5a回りに回動することにより引き出し口3を開閉する。本実施形態においては、消火栓扉4として、閉扉時下側の端縁部4dが筐体2の横方向(幅方向)に沿う回転軸5aを有するヒンジ5により回動可能に引き出し口3の下端縁3bに取り付けられて、下方に回転して引き出し口3を開く前傾式扉を用いている。また、その全開時の回転角度を略180度とするものを用いている。なお、消火栓扉4は全開時、引き出し口3の下端縁3bから下方に略垂下して、裏面4cが正面方向に略正対する状態になるまで回転する。
【0024】
消火栓扉4の裏面4c側には、各種部品が取り付けられる。本実施形態の場合、消火用ホース6の先端に設けられる消火用ノズル6aを着脱自在に保持するノズルホルダ6bと、消火栓弁(図示省略)を開閉操作するための操作レバー7aを有するレバー機構部7と、消火栓扉4の閉状態をロック・アンロックするためのラッチ8aを有するラッチ機構部8(操作部は扉表面側に設けられる。)等が取り付けられている。
【0025】
そして、消火栓扉4の裏面4c側に取り付けられる部品のうち少なくとも一部は、ヒンジ5に近い側の位置(ヒンジ5側の端縁部4dと反対側の端縁部4eとの間の中間位置よりもヒンジ5側の位置)に取り付けられる。本実施形態の場合、そのような位置にノズルホルダ6bが取り付けられており、常時は、そのノズルホルダ6bに消火用ノズル6aが取り付けられて保持されている。
【0026】
本実施形態の消火栓装置1-1によれば、消火栓扉4に取り付けられる部品の少なくとも一部がヒンジ5に近い側の位置に取り付けられることにより、取り付けられる部品を含む消火栓扉4の重心位置をヒンジ5に近づけることができる。それにより、消火栓扉4が回転する際のモーメントを小さくすることができる。そのため、消火栓扉4の回転動作を制御するダンパー(詳細はヒンジ5が内蔵して有するものとして後記で説明する。)を十分に働かせることができ、消火栓扉4を前傾式扉としている本実施形態の場合、消火栓扉4を十分にゆっくりと開くようにすることができるし、消火栓扉4を十分に軽い力で閉じるようにすることができる。
【0027】
さらに、本実施形態における消火栓扉4について詳細に説明する。
【0028】
消火栓扉4は、具体的には、金属製の平板からなり、その4辺に扉内方に向けて折曲するように形成される端縁部4d、4e、4f、4gを有している。それら端縁部中、ヒンジ5側に位置する下側(閉扉時)の端縁部4dに、扉内方に向けて連続して突出するように形成される突縁部4hが設けられている。そして、端縁部4dの外側の面にヒンジ5が取り付けられている一方、突縁部4hの内側(裏面4cに臨む側)の面に消火用ノズル6aを保持するノズルホルダ6bがヒンジ5に近接して取り付けられており、前記の通り、常時は、そのノズルホルダ6bに消火用ノズル6aが着脱自在に取り付けられて保持されている。
【0029】
本実施形態においては、この取り付け構造により、常時は、消火用ノズル6aをヒンジ5にできるだけ近接させた状態で消火栓扉4にノズルホルダ6bを介して取り付けることができるようになっている。
【0030】
なお、本実施形態においては、端縁部4dと突縁部4hとを連続する一体のものとしているが、別体のものとしてボルト等の締結部材により接続されるものとしてもよい。
【0031】
また、端縁部4dを消火栓扉4の扉内方に扉表面に対して略90度折曲するように形成されるものとして、その端縁部4dに連続して形成される突縁部4hも扉表面に対して略90度折曲するように形成されるものとしており、ノズルホルダ6bが取り付けられる面を消火栓扉4の扉表面に対して略90度の位置にあるものとしているが、突縁部4hをそれ単体で或いは端縁部4dと共に90度より大きい角度で折曲するように設けられるものとして、ノズルホルダ6bの取り付け位置のある面を消火栓扉4の扉表面に対して90度より大きい角度の位置にあるものとしてよい。
【0032】
ここで、本実施形態において、消火栓扉4の左右の端縁部4f、4gの形状はいずれも、その幅(扉の厚み方向の長さ)がヒンジ5に近い端縁部4dの側(回転の中心側)から反対のヒンジ5に遠い端縁部4eの側(回転の変位側)に行くほど小さくなっている(図2の端縁部4gの形状参照)。この形状により、消火栓扉4の扉自体(取り付けられる部品を除く扉単体)の重心位置をヒンジ5に近づけることができるようになっている。すなわち、この形状によっても、消火栓扉4のモーメントを小さくすることができるようになっている。
【0033】
[ノズルホルダ]
ノズルホルダ6bは、消火用ノズル6aを掴むようにして保持する掴持部6cと、その掴持部6cが先端に設けられると共に基端側に突縁部4hへの取付部が設けられる支柱部6dとからなる。ノズルホルダ6bにおいて、支柱部6dは、基端側の取付部によって突縁部4hの扉裏面4cに臨む側の面上に立設されて設けられており、先端側の掴持部6cは、それに保持される消火用ノズル6aを消火栓扉4の幅方向に沿って横向きに扉裏面4c上に位置させる配置で設けられている。支柱部6dに設けられる取付部としては、図示は省略するが、略L字状の曲折部として、その曲折部をボルト等の締結部材により突縁部4hに取り付けられるものとすることができる。なお、本実施形態の場合、ノズルホルダ6bの数を消火栓扉4の幅方向に並んで2個としているが、その数は適宜変更することができる。
【0034】
[ヒンジ(消火栓扉用)]
ヒンジ5は、図2に示したように、その回転軸5a回りに回転する2つの回動連結部5b、5cを有しており、一方の回動連結部5bが消火栓扉4の端縁部4dに接続されると共に、他方の回動連結部5cが引き出し口3の下端縁3bに接続されて、消火栓扉4が下方に回転して引き出し口3を開く前傾式扉となるように設けられている。そして、本実施形態においては、ヒンジ5は、消火栓扉4の回転動作を制御するダンパーを内蔵して有するダンパーヒンジを用いている。このダンパーヒンジを用いることにより、筐体2内にダンパーを収納するスペースを設ける必要をなくすことができ、消火栓扉4の回転動作を制御するダンパーを備えつつも、筐体4の薄型化をすることができるようになっている。なお、本実施形態の場合、ヒンジ5の数を消火栓扉4の幅方向に並んで2個としているが、
その数は適宜変更することができる。
【0035】
ここで、本実施形態の消火栓装置1-1における消火栓扉4の開閉時の動作について説明する。
【0036】
図4は、消火栓扉4の開閉時の動作を3つの段階に分けて示したものであり、(a)が全閉状態、(b)が半開状態、(c)が全開状態をそれぞれ示している。なお、ノズルホルダ6bに保持される消火用ノズル6aの図示は省略している。
【0037】
ノズルホルダ6bは、消火栓扉4の開閉時、同図の(a)乃至(c)に示したように変位するが、どの段階においても、ヒンジ5との位置関係に変化はない。消火用ノズル6aは、そのようなノズルホルダ6bに取り付けられて、消火栓扉4の開閉時、ヒンジ5に近い位置を常に維持して変位する。それにより、消火栓扉4は開閉時、ノズルホルダ6b及びそれに保持される消火用ノズル6aを含めた重心位置がヒンジ5に常に近い状態で回転するので、そのモーメントは小さくなっている。また、ノズルホルダ6b及びそれに保持される消火用ノズル6aの荷重は、(a)の位置では消火栓扉4を閉じる方向に作用しているのが、(b)の位置へ消火栓扉4が回転するまでに徐々に消火煙扉4を開く方向に作用するように変化するが、その取付位置が突縁部4hに設けられていることにより、消火栓扉4の裏面4cに取り付けられている場合に比べ、その変化が遅くなるので、それによっても、消火栓扉4のモーメントは小さくなっている。このため、ノズルホルダ6bが消火栓扉4の裏面4cに取り付けられている場合に比べ、ノズルホルダ6bの掴持部6cの位置が同じであり、消火用ノズル6aが保持される位置が同じであっても、消火栓扉4のモーメントを小さくすることができ、消火栓扉4の回転速度を遅くすることができる。なお、ノズルホルダ6bが取り付けられている突縁部4h上の位置とヒンジ5との距離が短くなっていることによっても、消火栓扉4のモーメントは小さくなっている。
【0038】
[第2の実施形態]
次に、第2の実施形態の消火栓装置1-2について、図5乃至図7を参照しつつ説明する。なお、前記の消火栓装置1-1と異なる構成部分についてのみ説明することとし、同じ構成部分については同一図面符号を付して説明を省略する。
【0039】
[従動回動部]
図5及び図6に示したように、消火栓装置1-2は、消火栓装置1-1における突縁部4hに代わって部品の取り付け位置が設けられるものとして、従動回動部10を備えている。
【0040】
従動回動部10は、消火栓扉4とは別体のものとして、消火栓扉用のヒンジ5とは別のヒンジ11によって引き出し口3に回動可能に取り付けられており、また、消火栓扉4が回転するのに従動して回転するように設けられている。そして、従動回動部10には、消火栓装置1-1における突縁部4hに代わり、消火栓扉4の裏面4c側に取り付けられる部品のうちの少なくとも一部が取り付けられる。
【0041】
本実施形態の消火栓装置1-2によれば、従動回動部10を備えていることにより、取り付けられる部品の荷重を従動回動部10側に分散することができ、消火栓扉4の荷重を小さくすることができる。それにより、消火栓扉4が回転する際のモーメントを小さくすることができる。
【0042】
この従動回動部10は、本実施形態の場合、消火栓扉4の扉内方の突縁部4hの一部を切り欠いた位置に位置する立片をなすものとして、前記のヒンジ11によって回動可能に引き出し口3に取り付けられている。そして、この従動回動部10には、消火栓扉4の裏面4cに臨む側の面に消火栓装置1-1と同様、消火用ノズル6aを保持するノズルホルダ6bがヒンジ11に近接して取り付けられており、常時は、そのノズルホルダ6bに消火用ノズル6aが取り付けられて保持されている。
【0043】
[ヒンジ(従動回動部用)]
ヒンジ11は、ヒンジ5の回転軸5aと同じ軸線上に位置する回転軸回りに回転する2つの回動連結部(図示省略)を有しており、一方の回動連結部が従動回動部10に接続されると共に、他方の回動連結部が引き出し口3の下端縁3bに接続され、従動回動部10を消火栓扉4と同じ方向に回動可能にするものとして設けられている。
【0044】
ヒンジ11としては、ヒンジ5と同様、従動回動部10の回転動作を制御するダンパーを内蔵して有するダンパーヒンジを用いており、筐体2内にダンパーを収納するスペースを設ける必要をなくすことができるものとしている。
【0045】
[引っ掛け部]
消火栓扉4には、その開扉方向への回転に従動させて前記の従動回動部10を回転させる引っ掛け部12が設けられている。
【0046】
本実施形態において、引っ掛け部12は、消火栓扉4の突縁部4hの背面(裏面4c側とは反対の面)に基端側が固定される支柱部12aと、その支柱部12aの先端側から側方に延在し、従動回動部10の背面(ノズルホルダ6bが取り付けられる側とは反対の面)が回転軌跡中に位置するように設けられる接触部12bとを有するものとしており、全体が略L字の形状をなすものとしている。
【0047】
引っ掛け部12は、消火栓扉4が開扉方向に回転する際、接触部12bが従動回動部10の背面に後方から接触し、従動回動部10を後方から引っ掛けて前方に回転させるように動作するものであるが、本実施形態の場合、消火栓扉4の全閉時には接触部12bが従動回動部10の背面から離間するものとして、消火栓扉4の開扉方向への回転の途中で接触部12b従動回動部10の背面と接触するものとしている。すなわち、消火栓扉4が全閉状態から開扉方向に回転する際、その回転に遅れて従動回動部10を回転させるように動作するものとしている。なお、消火栓扉4の全閉時における接触部12bと従動回動部10の背面との角度間隔を変えることにより、従動回動部10を消火栓扉4に遅れて回転させるタイミングを変えることができる。
【0048】
この引っ掛け部12については、消火栓扉4の開扉方向への回転に従動させて従動回動部10を回転させることのできるものであればよく、前記のような構成に限定されるわけではない。すなわち、消火栓扉4の開扉方向への回転に従動させて従動回動部10を回転させることのできるものであれば、種々の構成のものを用いることができる。
【0049】
ここで、本実施形態の消火栓装置1-2における消火栓扉4の開扉時の動作について説明する。
【0050】
図7は、消火栓扉4の開扉時の動作を3つの段階に分けて示したものであり、(a)が全閉状態、(b)が半開状態、(c)が全開状態をそれぞれ示している。なお、図4と同様、ノズルホルダ6bに保持される消火用ノズル6aの図示は省略している。
【0051】
本実施形態の場合、消火栓扉4の開扉方向への回転に従動して従動回動部10が回転する。従動回動部10には消火用ノズル6aを保持するノズルホルダ6bが取り付けられており、それらの荷重は従動回動部10側に分散される。それにより、消火栓扉4のモーメントを小さくできている。さらに、(a)の位置から消火栓扉4が開扉方向に回転すると、先ずは消火栓扉4のみが回転するが、その回転の途中で引っ掛け部12の接触部12bが従動回動部10の背面に接触し、従動回動部10を引っ掛けて消火栓扉4の開扉方向に引き動かして回転させる。その際、消火用ノズル6aを保持するノズルホルダ6bの掴持部6cがヒンジ11の回転軸の真上を超える(b)の位置あたりから、従動回動部10の荷重(ノズルホルダ6b及びそれに保持される消火用ノズル6aの荷重を含む。)が消火栓扉4の閉扉方向に従動回動部10を回転させるように作用する側から開扉方向に回転させるように作用する側に変化するが、その変化があるまでは、引っ掛け部12によって引き動かされる従動回動部10の荷重は消火栓扉4の開扉方向の回転に対してはモーメントを小さくするように作用する。つまり、ノズルホルダ6bと消火用ノズル6aの荷重を従動回動部10側に分散していることにより、消火栓扉4のモーメントを小さくできているのに加え、従動回動部10の荷重が消火栓扉4の閉扉方向に従動回動部10を回転させるように作用する間は、従動回動部10の荷重によっても消火栓扉4のモーメントを小さくできている。そして、従動回動部10の荷重が消火栓扉4の開扉方向に従動回動部10を回転させるように作用する側に変化した後は、その荷重によって消火栓扉4の開扉方向に消火栓扉4が回転するのに続いて(c)の位置まで回転する。なお、本実施形態の場合、消火栓扉4が開扉方向に回転する際、消火栓扉4の回転に遅れて従動回動部10が回転するものとしていることにより、従動回動部10の荷重が消火栓扉4の閉扉方向に従動回動部10を回転させるように作用する側から開扉方向に回転させるように作用する側に変化するタイミングを遅くすることもできており、従動回動部10の荷重によっても消火栓扉4のモーメントを小さくできている時間を長くすることもできている。
【0052】
以上、この発明の実施形態について、第1の実施形態と第2の実施形態とに分けて説明したが、この発明は上記の実施形態に限定されるものではなく、種々の変更が可能である。
【0053】
例えば、いずれの実施形態においても、消火栓扉4は、全閉位置と全開位置との間で略180度回転するものに代えて、略90度回転するものにしてもよい。また、消火栓扉4は、上方に回転して開放するタイプの消火栓扉(跳ね上げ式扉)としてもよい。その場合、消火栓扉4の閉扉時上側の端縁部4eを筐体2の横方向(幅方向)に沿う回転軸を有するヒンジ部材により回動可能に引き出し口3の上端縁3aに取り付けることになる。また、ヒンジ5に近い側の位置に取り付ける部品についてもノズルホルダ6bに限定されるものではなく、例えば、レバー機構部7、ラッチ機構部8等であってもよい。
【符号の説明】
【0054】
1-1,1-2:消火栓装置 2:筐体 2a:前面パネル 3:引き出し口
3a:上端縁 3b:下端縁 4:消火栓扉 4c:裏面
4d~4g:端縁部 4h:突縁部 5:ヒンジ(消火栓扉用)
5a:回転軸 5b~5c:回動連結部 6:消火用ホース
6a:消火用ノズル 6b:ノズルホルダ 6c:掴持部 6d:支柱部
7:レバー機構部 7a:操作レバー 8:ラッチ機構部 8a:ラッチ
9:ホース収納部 10:従動回動部 11:ヒンジ 12:引っ掛け部
12a:支柱部 12b:接触部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7