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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022065031
(43)【公開日】2022-04-26
(54)【発明の名称】感熱記録材料用樹脂中空粒子
(51)【国際特許分類】
   B41M 5/42 20060101AFI20220419BHJP
【FI】
B41M5/42 211
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022017581
(22)【出願日】2022-02-08
(62)【分割の表示】P 2021507352の分割
【原出願日】2020-03-17
(31)【優先権主張番号】P 2019053535
(32)【優先日】2019-03-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000188951
【氏名又は名称】松本油脂製薬株式会社
(72)【発明者】
【氏名】阪部 晃一
(72)【発明者】
【氏名】三木 勝志
(57)【要約】
【課題】 本発明の目的は、感度及び精細性に優れた感熱記録材料を作製できる感熱記録材料用樹脂中空粒子を提供することである。
【解決手段】 本発明の感熱記録材料用樹脂中空粒子は、熱可塑性樹脂からなる外殻部と、この外殻部に囲まれた中空部とから構成された感熱記録材料用樹脂中空粒子であって、前記樹脂中空粒子が加熱して気化する炭化水素を含有し、前記炭化水素の内包率が0.2重量%以上である、感熱記録材料用樹脂中空粒子ある。体積平均粒子径が0.1~10μmであると好ましい。
【選択図】 図1

【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱可塑性樹脂からなる外殻部と、この外殻部に囲まれた中空部とから構成された感熱記録材料用樹脂中空粒子であって、
前記樹脂中空粒子が加熱して気化する炭化水素を含有し、
前記炭化水素の内包率が0.2重量%以上である、
感熱記録材料用樹脂中空粒子。
【請求項2】
体積平均粒子径が0.1~10μmである、請求項1に記載の感熱記録材料用樹脂中空粒子。
【請求項3】
前記熱可塑性樹脂がニトリル系単量体を80重量%以上含む重合性成分の重合体である、請求項1又は2に記載の感熱記録材料用樹脂中空粒子。
【請求項4】
前記炭化水素が、沸点が60℃以下の炭化水素(A)を含む、請求項1~3のいずれかに記載の感熱記録材料用樹脂中空粒子。
【請求項5】
中空率が71~95%である、請求項1~4のいずれかに記載の感熱記録材料用樹脂中空粒子。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、感熱記録材料用樹脂中空粒子及びその利用に関する。
【背景技術】
【0002】
情報記録分野において各種の記録材料が実用化されているが、なかでも感熱記録材料は、(1)加熱プロセスのみによる簡易な画像の記録が可能、(2)記録装置が簡単でコンパクト化が容易になり記録材料が取扱易く安価、(3)使用する材料が1成分(感熱紙のみ)などの利点を有するので、情報処理分野、医療計測用レコーダー分野、ファクシミリ分野、自動券売機分野、感熱複写機分野、POSシステム等へのラベル分野、荷物のタグ分野等、多岐にわたり用いられている。
感熱記録材料は、高い熱応答性(感度)と、画像記録時の十分な発色濃度(精細性)が必要である。これらの性質を得るために、特許文献1では、中空率が70%以上である中空粒子を含有した感熱記録媒体が、提案されている。また特許文献2では、中空率が50%以上であるスチレン-アクリルの中空微小球を含有した感熱記録材料が提案されている。
また、感熱記録材料の製造の際、感熱記録材料の記録面を平滑にするために、スーパーキャレンダーによって感熱記録材料に強い力を加える工程を経る場合がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】日本国特開2009-279943号公報
【特許文献2】日本国特開平6-340174号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、非常に強い力が加わるスーパーキャレンダー処理により、特許文献1の中空粒子では、収縮したり、凹んだりして変形してしまい、得られる感熱記録材料の感度、精細性は不十分となることが確認された。また、特許文献2のスチレン-アクリルの中空微小球では中空率が低いため、断熱性が十分でないために低い感度しか得られないことが確認された。
【0005】
本発明の目的は、感度及び精細性に優れた感熱記録材料を作製できる感熱記録材料用樹脂中空粒子を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意検討を行った結果、特定の性能を示す感熱記録材料用樹脂中空粒子であれば、感度及び精細性に優れる感熱記録材料を作製できることを見出し、本発明に到達した。
つまり、本発明は、熱可塑性樹脂からなる外殻部と、この外殻部に囲まれた中空部とから構成された感熱記録材料用樹脂中空粒子であって、前記樹脂中空粒子が加熱して気化する炭化水素を含有し、前記炭化水素の内包率が0.2重量%以上である、感熱記録材料用樹脂中空粒子である。
【0007】
本発明の感熱記録材料用樹脂中空粒子は、体積平均粒子径が0.1~10μmであると好ましい。
【0008】
本発明の感熱記録材料用樹脂中空粒子は、前記可塑性樹脂がニトリル系単量体を80重量%以上含む重合性成分の重合体であると好ましい。
【0009】
本発明の感熱記録材料用樹脂中空粒子は、前記炭化水素が、沸点が60℃以下の炭化水素(A)を含むと好ましい。
【0010】
本発明の感熱記録材料用樹脂中空粒子は、中空率が71~95%であると好ましい。
【発明の効果】
【0011】
本発明の感熱記録材料用樹脂中空粒子は、感度及び精細性に優れた感熱記録材料を作製することができる。
本発明の感熱記録材料用樹脂中空粒子を含有した感熱記録材料は、感度及び精細性に優れる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】樹脂中空粒子の一例を示す概略図である。
図2】感熱記録材料の一例を示す概略図である。
図3】感熱記録材料の一例を示す概略図である。
図4】評価1において、スーパーキャレンダー処理前の感熱記録材料の断面の走査型電子顕微鏡写真である。
図5】評価1において、スーパーキャレンダー処理後の感熱記録材料の断面の走査型電子顕微鏡写真である。
図6】評価8において、スーパーキャレンダー処理前の感熱記録材料の断面の走査型電子顕微鏡写真である。
図7】評価8において、スーパーキャレンダー処理後の感熱記録材料の断面の走査型電子顕微鏡写真である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明の感熱記録材料用樹脂中空粒子は、熱可塑性樹脂からなる外殻部と、この外殻部に囲まれた中空部とから構成される樹脂中空粒子である。以下、本発明の感熱記録材料用樹脂中空粒子について詳しく説明する。
【0014】
〔感熱記録材料用樹脂中空粒子〕
感熱記録材料用樹脂中空粒子(以下、単に樹脂中空粒子ということもある)は、図1に示すように、熱可塑性樹脂からなる外殻部1と、それに囲まれた中空部2とから構成される。樹脂中空粒子は、(ほぼ)球状で、内部に大きな空洞に相当する中空部を有しており、その形状を身近な物品で例示するならば、軟式テニスボールを挙げることができる。
樹脂中空粒子の外殻部は、その外表面と内表面とで囲まれ、端部はなく、連続した形状を有する。外殻部の厚み、すなわち、外表面と内表面との間の距離については、均一であることが好ましいが、不均一であってもよい。
【0015】
本発明の感熱記録材料用樹脂中空粒子は加熱して気化する炭化水素(以下、単に炭化水素ということがある)を含有する。
炭化水素としては、特に限定はないが、たとえば、プロパン、ブタン、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、ノナン、デカン、ドデカン、ウンデカン、トリデカン、テトラデカン、ペンタデカン、ヘキサデカン等の直鎖状炭化水素;イソブタン、イソペンタン、イソヘキサン、イソヘプタン、イソオクタン、イソノナン、イソデカン、イソドデカン、3-メチルウンデカン、イソトリデカン、4-メチルドデカン、イソテトラデカン、イソペンタデカン、イソヘキサデカン等の分岐状炭化水素;シクロペンタン、シクロヘキサン、シクロヘプタン、シクロオクタン、シクロノナン、シクロデカン、シクロドデカン等の脂環状炭化水素等を挙げることができる。これらの炭化水素は、1種または2種以上の混合物で構成されていてもよい。
炭化水素は、基本的には、気化した状態で樹脂中空粒子の中空部に含有されており、その一部が液化又は固化した状態で樹脂中空粒子中に含有されていてもよい。
【0016】
1つの形態として、炭化水素が、特に限定はないが、本願効果を奏する点で、炭素数3~12の炭化水素から選ばれる少なくとも1種を含むと好ましく、炭素数3~8の炭化水素から選ばれる少なくとも1種を含むとより好ましく、炭素数3~6の炭価水素から選ばれる少なくとも1種を含むと特に好ましい。
【0017】
また、別の形態として、炭化水素が、沸点が60℃以下の炭化水素(A)を含むと、本願効果を奏する観点から、好ましい。炭化水素(A)の沸点の上限は、特に限定はないが、より好ましくは50℃、さらに好ましくは40℃である。一方、炭化水素(A)の沸点の下限は、好ましくは-25℃、より好ましくは-15℃である。
【0018】
本発明の感熱記録材料用樹脂中空粒子は、加熱して気化する炭化水素を含有し、炭化水素の内包率が0.2重量%以上である樹脂中空粒子である。このような樹脂中空粒子であることで、樹脂中空粒子の中空部は高い内圧を有することができ、その内圧により、スーパーキャレンダー処理の際に加わる非常に大きな力に対抗でき、樹脂中空粒子の収縮や凹み等の変形を抑制できると考えられる。これにより、感度及び精細性に優れた感熱記録材料を作製できると考えられる。
【0019】
樹脂中空粒子における、炭化水素の内包率は0.2重量%以上である。炭化水素の内包率が0.2重量%未満であると、樹脂中空粒子の中空部の内圧(以後、単に樹脂中空粒子の内圧ということがある)が低くなり、樹脂中空粒子が変形し、作製される感熱記録材料の感度及び精細性が低下する。炭化水素の内包率は、好ましくは0.5重量%以上、特に好ましくは1.0重量%以上である。炭化水素の内包率の上限は、好ましくは20重量%である。炭化水素の内包量が20重量%超であると、樹脂中空粒子の外殻部が薄くなることで耐圧性が低下し、作製される感熱記録材料の感度および精細性が低下することがある。なお、炭化水素の内包率は、実施例に記載された測定方法によるものである。
【0020】
樹脂中空粒子の外殻部は熱可塑性樹脂からなる。
外殻部を構成する熱可塑性樹脂は、ラジカル反応性を有する炭素-炭素二重結合を1分子中に1個有する単量体(以下、単に単量体ということがある)を必須とし、ラジカル反応性を有する炭素-炭素二重結合を1分子中に2つ以上有する架橋剤を含むことがある重合性成分の重合体である。単量体、架橋剤は共に付加反応が可能な成分であり、架橋剤は熱可塑性樹脂に橋架け構造を導入できる成分である。
【0021】
単量体としては、特に限定はないが、たとえば、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、フマロニトリル、マレオニトリル等のニトリル系単量体;塩化ビニル等のハロゲン化ビニル系単量体;塩化ビニリデン等のハロゲン化ビニリデン系単量体;酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、酪酸ビニル等のビニルエステル系単量体;(メタ)アクリル酸、エタクリル酸、クロトン酸、ケイ皮酸、マレイン酸、イタコン酸、フマル酸等のカルボキシル基含有単量体;カルボキシル基を2つ有する単量体の無水物;メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n-ブチル(メタ)アクリレート、t-ブチル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、フェニル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリル酸エステル系単量体;アクリルアミド、置換アクリルアミド、メタクリルアミド、置換メタクリルアミド等の(メタ)アクリルアミド系単量体;N-フェニルマレイミド、N-シクロヘキシルマレイミド等のマレイミド系単量体;スチレン、α-メチルスチレン等のスチレン系単量体;エチレン、プロピレン、イソブチレン等のエチレン不飽和モノオレフイン系単量体;ビニルメチルエーテル、ビニルエチルエーテル、ビニルイソブチルエーテル等のビニルエーテル系単量体;ビニルメチルケトン等のビニルケトン系単量体;N-ビニルカルバゾール、N-ビニルピロリドン等のN-ビニル系単量体;ビニルナフタリン塩等を挙げることができる。カルボキシル基含有単量体は、一部または全部のカルボキシル基が重合時や重合後に中和されていてもよい。アクリル酸またはメタクリル酸を合わせて(メタ)アクリルということもあり、(メタ)アクリレートは、アクリレートまたはメタクリレートを意味し、(メタ)アクリルは、アクリルまたはメタクリルを意味するものとする。これらの単量体は、1種または2種以上を併用してもよい。
【0022】
重合性成分がニトリル系単量体を含むと、得られる熱可塑性樹脂は高いガスバリア性を有する事ができ、樹脂中空粒子に内包されている炭化水素の保持性に優れ、樹脂中空粒子の内圧をより高めることができ、好ましい。
重合性成分に占めるニトリル系単量体の重量割合は、特に限定はないが、好ましくは80重量%以上、より好ましくは85重量%以上、さらに好ましくは90重量%以上、特に好ましくは95重量%以上である。ニトリル系単量体の重量割合の上限は、好ましくは100重量%である。ニトリル系単量体の重量割合が80重量%未満であると、樹脂中空粒子に内包されている炭化水素の保持性が低下し、樹脂中空粒子の内圧が低下することがあり、樹脂中空粒子を感熱記録材料に用いた際に潰れが発生して、作製される感熱記録材料の感度及び精細性が低下することがある。
【0023】
ニトリル系単量体がアクリロニトリル(以下、単にANということがある)及びメタクリロニトリル(以下、単にMANということがある)を必須に含むと、得られる熱可塑性樹脂は高いガスバリア性だけでなく、剛性と弾性が向上し、樹脂中空粒子の変形をより抑制できるだけでなく、高い膨張性を有することから好ましい。
ニトリル系単量体がAN及びMANを含む場合、ANとMANの重量比(AN/MAN)は、特に限定はないが、好ましくは10/90~90/10である。ANとMANの重量比が10/90未満であると、十分なガスバリア性が得られず、感熱記録材料に使用した際、潰れが発生して感度低下の原因となることがある。一方、ANとMANの重量比が90/10超であると、十分な膨張性が得られないことがあり、断熱性が不十分になるため、樹脂中空粒子を感熱記録材料に用いても十分な効果が得られず、感度が低下することがある。ANとMANの重量比の上限は、より好ましくは80/20、さらに好ましくは75/25、特に好ましくは70/30である。一方、ANとMANの重量比の下限は、さらに好ましくは20/80、より好ましくは25/75、特に好ましくは30/70である。
【0024】
重合性成分は、上述のとおり、架橋剤を含んでいてもよい。架橋剤を用いて重合することにより、得られる熱可塑性樹脂は、高い剛性・弾性を有することができる。
架橋剤としては、特に限定はないが、たとえば、ジビニルベンゼン等の芳香族ジビニル化合物;メタクリル酸アリル、トリアクリルホルマール、トリアリルイソシアネート、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ポリテトラメチレングリコールジアクリレート、1,4-ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6-ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、1,9-ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、PEG#200ジ(メタ)アクリレート、PEG#400ジ(メタ)アクリレート、PEG#600ジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスルトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスルトールテトラアクリレート、ジペンタエリスルトールヘキサアクリレート、2-ブチル-2-エチル-1,3-プロパンジオールジアクリレート、トリシクロデカンジメタノールジ(メタ)アクリレート等の多官能(メタ)アクリレート化合物等を挙げることができる。これらの架橋剤は、1種又は2種以上を併用してもよい。
【0025】
架橋剤はなくてもよいが、重合性成分に占める架橋剤の重量割合については、特に限定はなく、0~10.0重量%であると好ましい。架橋剤の量の上限は、より好ましくは8.0重量%、さらに好ましくは5.0重量%である。一方、架橋剤の量の下限は、好ましくは0.1重量%、より好ましくは0.3重量%、さらに好ましくは0.5重量%である。架橋剤の量が10.0重量%より多いと、樹脂中空粒子が脆くなり、感熱記録材料に用いた際、スーパーキャレンダー処理で変形してしまい、感度および精細性が低下することがある。
【0026】
樹脂中空粒子の体積平均粒子径(以下、単に平均粒子径ということがある)は、特に限定はないが、好ましくは0.1~10μmである。樹脂中空粒子の平均粒子径が0.1μm未満であると、樹脂中空粒子の外殻部が薄くなることで耐圧性が低下し、感熱記録材料を作製する際にスーパーキャレンダー処理で樹脂中空粒子が変形して、感度が低下してしまうことがあり、10μm超であると感熱記録材料の記録面の平滑性が低下し、感熱記録材料に用いた際に精細性が低下することがある。樹脂中空粒子の平均粒子径の上限は、より好ましくは8μm、特に好ましくは6μmである。一方、樹脂中空粒子の平均粒子径の下限は、より好ましくは0.5μm、さらに好ましくは1.0μmである。なお、樹脂中空粒子の体積平均粒子径は、実施例に記載された測定方法によるものである。
【0027】
樹脂中空粒子の中空率は、特に限定はないが、好ましくは71~95%である。中空率が71%未満であると断熱効果が低くなることで樹脂中空粒子を含有させる効果が不十分になり、感熱記録材料の感度が低下することがある。一方、中空率が95%超であると、樹脂中空粒子の外殻部の厚みが薄くなり耐圧性が低下し、作製される感熱記録材料に用いた際にスーパーキャレンダー処理で樹脂中空粒子が変形してしまい、感度が低下することがある。樹脂中空粒子の中空率の上限は、より好ましくは94%、さらに好ましくは93%である。一方、樹脂中空粒子の中空率の下限は、より好ましくは75%、さらに好ましくは80%である。なお、樹脂中空粒子の中空率は、実施例に記載された測定方法によるものである。
【0028】
樹脂中空粒子は圧縮回復性を有していると、耐圧性が高くなり、スーパーキャレンダー処理による樹脂中空粒子の変形を抑制できるため、好ましい。
樹脂中空粒子の圧縮回復率は、特に限定はないが、好ましくは40%以上、さらに好ましくは50%以上、より好ましくは60%以上、特に好ましくは70%以上である。樹脂中空粒子の圧縮回復率が40%未満であると、感熱記録材料に用いた際にスーパーキャレンダー処理により樹脂中空粒子が変形してしまい、作製される感熱記録材料の感度が低下してしまうことがある。なお、樹脂中空粒子の圧縮回復率は、実施例に記載された測定方法によるものである。
【0029】
〔感熱記録材料用樹脂中空粒子の製造方法〕
感熱記録材料用樹脂中空粒子の製造方法としては、たとえば、重合性成分及び炭化水素を含有する油性混合物を水性分散媒中に分散させ、前記重合性成分を重合させて熱膨張性微小球を作製する重合工程と、作製した熱膨張性微小球を加熱膨張させて感熱記録材料用樹脂中空粒子を得る膨張工程の2工程を経る方法を挙げることができる。
【0030】
〔重合工程〕
重合工程は、重合性成分及び炭化水素を含有する油性混合物を水性分散媒中に分散させ、前記重合性成分を重合させて熱膨張性微小球を得る工程をいう。
重合工程では、重合性成分を重合開始剤の存在下で重合させることが好ましい。重合開始剤は、重合性成分や炭化水素とともに油性混合物に含まれるとよい。重合開始剤としては、特に限定はないが、たとえば、ジイソプロピルパーオキシカーボネート、ジオクチルパーオキシジカーボネート、t-ブチルパーオキシラウレート、ラウロイルパーオキサイド、ジオクタノイルパーオキサイド、ベンゾイルパーオキサイド等の過酸化物系化合物;アゾビスイソブチロニトリル、アゾビス(2,4-ジメチルバレロニトリル)、1,1-アゾビス(シクロヘキサン-1-カルボニトリル)、ジメチル2,2’-アゾビス(2-メチルプロピオネート)等のアゾ化合物等を挙げることができる。これらの重合開始剤は、1種又は2種以上を併用してもよい。
【0031】
水性分散媒は、油性混合物を分散させるイオン交換水等の水を主成分とする媒体である。
水性分散媒は、分散安定剤等を含有していてもよい。分散安定剤としては、特に限定はないが、たとえば、コロイダルシリカ等を挙げることができる。分散安定剤の含有量は、油性混合物に合わせて適宜変更する事ができる。
また、水性分散媒は、分散安定助剤を含有してもよい。分散安定助剤としては、特に限定はないが、たとえば、ジエタノールアミンとアジピン酸の縮合物、ポリエチレンイミン、ポリビニルピロリドン等を挙げることができる。分散安定剤の含有量は、油性混合物に合わせて適宜変更する事ができる。
【0032】
水性分散媒は、さらに電解質を含有してもよい。電解質としては、たとえば、塩化ナトリウム、塩化マグネシウム、硫酸ナトリウム等を挙げることができる。電解質の含有量は、油性混合物に合わせて適宜変更する事ができる。
【0033】
重合工程では、所定の粒子径の球状油滴が調製されるように油性混合物を水性分散媒中に乳化分散させる。
油性混合物を乳化分散させる方法としては、たとえば、ホモミキサーやスタティックミキサー等の装置を用いる方法、膜乳化法、超音波分散法等の一般的な分散方法を挙げることができる。
【0034】
次いで、油性混合物が球状油滴として水性分散媒に分散された分散液を加熱することにより、懸濁重合を開始する。重合反応中は、分散液を攪拌するのが好ましく、その攪拌は、たとえば、単量体の浮上や重合後の熱膨張性微小球の沈降を防止できる程度に緩く行えばよい。
重合温度は重合開始剤の種類によって適宜設定することができるが、好ましくは40~100℃、より好ましくは50~90℃の範囲で制御される。反応温度を保持する時間は、0.1~20時間程度が好ましい。
【0035】
〔膨張工程〕
膨張工程は、熱膨張性微小球を加熱膨張させる工程であれば、特に限定はなく、たとえば、公知の乾式加熱膨張法、公知の湿式加熱膨張法を挙げることができる。
膨張工程における加熱方法は、特に限定はないが、たとえば、一般的な接触伝熱型または直接加熱型の加熱装置を用いる方法を挙げることができる。また、加熱の温度条件については、熱膨張性微小球の種類や膨張方法により適宜設定することができるが、好ましくは60~350℃である。
【0036】
樹脂中空粒子は、水を含む感熱記録材料用樹脂中空粒子組成物(以下、単に樹脂中空粒子組成物ということがある)として、感熱記録材料に用いてもよい。感熱記録材料用樹脂中空粒子組成物に占める固形分濃度については、特に限定はないが、好ましくは1~99重量%、より好ましくは15~85重量%、特に好ましくは30~70重量%である。なお、感熱記録材料用樹脂中空粒子組成物の固形分濃度は、実施例に記載された測定方法によるものである。
【0037】
本発明の感熱記録材料用樹脂中空粒子を含有する感熱記録材料は、キャレンダー処理による樹脂中空粒子の潰れを抑制することができるため、感度及び精細製に優れる。
感熱記録材料(以下、単に記録材料ということがある)は、たとえば、一形態として、図2に示すように基材3と、該基材の少なくとも一方の面上に、アンダー層4と、感熱記録層5と、保護層6とをこの順に有する記録材料や、別の一形態として、図3に示すように基材3と、該基材の少なくとも一方の面上に、アンダー層4と、感熱記録層5と、保護層6とをこの順に有し、基材の感熱層を形成する面とは反対の面に接着剤層又は粘着剤層である層7を有する記録材料を挙げることができる。さらに記録材料は必要に応じて、その他の層を有してもよい。
【0038】
〔アンダー層〕
樹脂中空粒子はアンダー層に含まれると、本願効果を奏する点で、好ましい。アンダー層に占める樹脂中空粒子の重量割合は、特に限定はないが、好ましくは20~50重量%、より好ましくは30~40重量%である。
【0039】
アンダー層は結着樹脂(A)を含有する。また、アンダー層は必要に応じて架橋成分(A)やその他成分を含有してもよい。
結着樹脂(A)としては、特に限定はないが、水溶性ポリマー及び水性ポリマーエマルションから選ばれる少なくとも1種のであると好ましい。
【0040】
水溶性ポリマーとしては、特に限定はないが、たとえば、ポリビニルアルコール;カルボキシル基を有するポリビニルアルコール等の変性ポリビニルアルコール;澱粉又はその誘導体;メトキシセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、メチルセルロース、エチルセルロース等のセルロース誘導体;ポリウレタン;ポリアクリル酸ソーダ;ポリビニルピロリドン;アクリルアミド/アクリル酸エステル共重合体;アクリルアミド/アクリル酸エステル/メタクリル酸三元共重合体;スチレン/無水マレイン酸共重合体アルカリ塩;イソブチレン/無水マレイン酸共重合体アルカリ塩;ポリアクリルアミド;アルギン酸ソーダ;ゼラチン;カゼイン等を挙げることができる。これらの水溶性ポリマーは、1種又は2種以上を併用してもよい。
【0041】
水性ポリマーエマルションとしては、特に限定はないが、たとえば、アクリル樹脂;カルボキシル基を有するアクリル樹脂等の変性アクリル樹脂;スチレン/ブタジエン共重合体、スチレン/ブタジエン/アクリル系共重合体等のラテックス;酢酸ビニル樹脂、酢酸ビニル/アクリル酸共重合体、スチレン/アクリル酸エステル共重合体、アクリル酸エステル樹脂、ポリウレタン樹脂等のエマルション等を挙げることができる。これら水性ポリマーエマルションは1種又は2種以上を併用してもよい。
【0042】
アンダー層における結着樹脂(A)の含有量は、特に限定はないが、樹脂中空粒子100重量部に対して、好ましくは30~300重量部、より好ましくは40~200重量部がより好ましい。
【0043】
架橋成分(A)としては、特に限定はないが、たとえば、オキサゾリン基を有する化合物、グリオキザール誘導体、メチロール誘導体、エピクロルヒドリン誘導体、エポキシ化合物、アジリジン化合物、ヒドラジン、ヒドラジド誘導体、カルボジイミド誘導体等が挙げられる。これら架橋成分は、1種又は2種以上併用してもよい。
その他の成分としては、たとえば、界面活性剤、無機充填剤、有機充填剤、滑剤等を挙げることができる。
【0044】
アンダー層の形成方法としては、特に限定はなく、たとえば、結着樹脂、中空粒子、水、必要に応じて架橋成分やその他の成分を分散機により分散、混合してアンダー層塗布液を調製し、アンダー層塗布液を基材上に塗布し、乾燥させることにより、形成することができる。
アンダー層塗布液の塗布方法としては、特に限定はなく、たとえば、ブレードコート法、グラビアコート法、グラビアオフセットコート法、バーコート法、ロールコート法、ナイフコート法、エアナイフコート法、コンマコート法、Uコンマコート法、AKKUコート法、スムージングコート法、マイクログラビアコート法、リバースロールコート法、4本乃至5本ロールコート法、ディップコート法、カーテンコート法、スライドコート法、ダイコート法等を挙げることができる。
アンダー層の乾燥後の付着量は、特に限定はないが、好ましくは0.5~5g/m、より好ましくは1~5g/mである。
【0045】
〔基材〕
基材としては、その形状、構造、大きさ、材質等については、特に限定はなく、目的に応じて適宜選択することができる。基材の形状としては、たとえば、平板状、シート状などが挙げられ、基材の構造としては、単層構造であってもいし、積層構造であってもよく、基材の大きさとしては、記録材料の大きさ等に応じて適宜選択することができる。
【0046】
基材の材質としては、たとえば、無機材料、有機材料、合成紙及び合成樹脂フィルム等を挙げることができる。これらの基材の材質としては、1種又は2種以上から構成されていてもよい。
無機材料としては、例えば、ガラス、石英、シリコン、酸化シリコン、酸化アルミニウム、SiO、金属などが挙げられる。
有機材料としては、特に限定はないがたとえば、酸性紙、中性紙、上質紙、三酢酸セルロース等のセルロース誘導体を挙げることができる。
合成紙としては、特に限定はないが、たとえば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリアミド等の合成繊維からなるものや、合成繊維を紙の一部、一面、又は両面に貼り付けたもの等を挙げることができる。
合成樹脂フィルムとしては、例えば、ポリプロピレンフィルム、ポリエチレンフィルム、ポリカーボネートフィルム、ポリスチレンフィルム、ポリメチルメタクリレートフィルム等を挙げることができる。またこれらフィルムにおいて製膜、延伸の過程で内部にミクロボイドを発生させたものを使用してもよい。
【0047】
基材の平均厚みは、特に限定はないが、好ましくは10~2000μm、より好ましくは20~1000μmである。
【0048】
〔感熱記録層〕
感熱記録層はロイコ染料、顕色剤及び結着樹脂(B)を含有する。また、感熱記録層は必要に応じてその他の成分を含有してもよい。
【0049】
ロイコ染料としては、特に限定はないが、たとえば、トリフェニルメタン系、フルオラン系、フェノチアジン系、オーラミン系、スピロピラン系、インドリノフタリド系等のロイコ化合物を挙げることができる。
【0050】
前記ロイコ染料としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、3,3-ビス(p-ジメチルアミノフェニル)-フタリド、3,3-ビス(p-ジメチルアミノフェニル)-6-ジメチルアミノフタリド、3,3-ビス(p-ジメチルアミノフェニル)-6-ジエチルアミノフタリド、3,3-ビス(p-ジメチルアミノフェニル)-6-クロルフタリド、3,3-ビス(p-ジブチルアミノフェニル)フタリド、3-シクロヘキシルアミノ-6-クロルフルオラン、3-ジメチルアミノ-5,7-ジメチルフルオラン、3-ジエチルアミノ-7-クロロフルオラン、3-ジエチルアミノ-7-メチルフルオラン、3-ジエチルアミノ-7,8-ベンズフルオラン、3-ジエチルアミノ-6-メチル-7-クロルフルオラン、3-(N-p-トリル-N-エチルアミノ)-6-メチル-7-アニリノフルオラン、2-{N-(3’-トリフルオルメチルフェニル)アミノ}-6-ジエチルアミノフルオラン、2-{3,6-ビス(ジエチルアミノ)-9-(o-クロルアニリノ)キサンチル安息香酸ラクタム}、3-ジエチルアミノ-6-メチル-7-(m-トリクロロメチルアニリノ)フルオラン、3-ジエチルアミノ-7-(o-クロルアニリノ)フルオラン、3-ピロリジノ-6-メチル-7-アニリノフルオラン、3-ジ-n-ブチルアミノ-7-o-クロルアニリノ)フルオラン、3-N-メチル-N,n-アミルアミノ-6-メチル-7-アニリノフルオラン、3-N-メチル-N-シクロヘキシルアミノ-6-メチル-7-アニリノフルオラン、3-ジエチルアミノ-6-メチル-7-アニリノフルオラン、3-(N,N-ジエチルアミノ)-5-メチル-7-(N,N-ジベンジルアミノ)フルオラン、ベンゾイルロイコメチレンブルー、6’-クロロ-8’-メトキシ-ベンゾインドリノ-スピロピラン、6’-ブロモ-3’-メトキシ-ベンゾインドリノ-スピロピラン、3-(2’-ヒドロキシ-4’-ジメチルアミノフェニル)-3-(2’-メトキシ-5’クロルフェニル)フタリド、3-(2’-ヒドロキシ-4’-ジメチルアミノフェニル)-3-(2’-メトキシ-5’-ニトロフェニル)フタリド、3-(2’-ヒドロキシ-4’-ジエチルアミノフェニル)-3-(2’-メトキシ-5’-メチルフェニル)フタリド、3-(2’-メトキシ-4’-ジメチルアミノフェニル)-3-(2’-ヒドロキシ-4’-クロル-5’-メチルフェニル)フタリド、3-(N-エチル-N-テトラヒドロフルフリル)アミノ-6-メチル-7-アニリノフルオラン、3-N-エチル-N-(2-エトキシプロピル)アミノ-6-メチル-7-アニリノフルオラン、3-N-メチル-N-イソブチル-6-メチル-7-アニリノフルオラン、3-モルホリノ-7-(N-プロピル-トリフルオロメチルアニリノ)フルオラン、3-ピロリジノ-7-トリフルオロメチルアニリノフルオラン、3-ジエチルアミノ-5-クロロ-7-(N-ベンジル-トリフルオロメチルアニリノ)フルオラン、3-ピロリジノ-7-(ジ-p-クロルフェニル)メチルアミノフルオラン、3-ジエチルアミノ-5-クロル-7-(α-フェニルエチルアミノ)フルオラン、3-(N-エチル-p-トルイジノ)-7-(α-フェニルエチルアミノ)フルオラン、3-ジエチルアミノ-7-(o-メトキシカルボニルフェニルアミノ)フルオラン、3-ジエチルアミノ-5-メチル-7-(α-フェニルエチルアミノ)フルオラン、3-ジエチルアミノ-7-ピペリジノフルオラン、2-クロロ-3-(N-メチルトルイジノ)-7-(p-n-ブチルアニリノ)フルオラン、3-ジブチルアミノ-6-メチル-7-アニリノフルオラン、3,6-ビス(ジメチルアミノ)フルオレンスピロ(9,3’)-6’-ジメチルアミノフタリド、3-(N-ベンジル-N-シクロヘキシルアミノ)-5,6-ベンゾ-7-α-ナフチルアミノ-4’-プロモフルオラン、3-ジエチルアミノ-6-クロル-7-アニリノフルオラン、3-ジエチルアミノ-6-メチル-7-メシチジノ-4’,5’-ベンゾフルオラン、3-N-メチル-N-イソプロピル-6-メチル-7-アニリノフルオラン、3-N-エチル-N-イソアミル-6-メチル-7-アニリノフルオラン、3-ジエチルアミノ-6-メチル-7-(2’,4’-ジメチルアニリノ)フルオラン、3-モルホリノ-7-(N-プロピル-トリフルオロメチルアニリノ)フルオラン、3-ピロリジノ-7-トリフルオロメチルアニリノフルオラン、3-ジエチルアミノ-5-クロロ-7-(N-ベンジル-トリフルオロメチルアニリノ)フルオラン、3-ピロリジノ-7-(ジ-p-クロルフェニル)メチルアミノフルオラン、3-ジエチルアミノ-5-クロル-(α-フェニルエチルアミノ)フルオラン、3-(N-エチル-p-トルイジノ)-7-(α-フェニルエチルアミノ)フルオラン、3-ジエチルアミノ-7-(o-メトキシカルボニルフェニルアミノ)フルオラン、3-ジエチルアミノ-5-メチル-7-(α-フェニルエチルアミノ)フルオラン、3-ジエチルアミノ-7-ピベリジノフルオラン、2-クロロ-3-(N-メチルトルイジノ)-7-(p-N-ブチルアニリノ)フルオラン、3,6-ビス(ジメチルアミノ)フルオレンスピロ(9,3’)-6’-ジメチルアミノフタリド、3-(N-ベンジル-N-シクロヘキシルアミノ)-5,6-ベンゾ-7-α-ナフチルアミノ-4’-ブロモフルオラン、3-ジエチルアミノ-6-クロル-7-アニリノフルオラン、3-N-エチル-N-(-2-エトキシプロピル)アミノ-6-メチル-7-アニリノフルオラン、3-N-エチル-N-テトラヒドロフルフリルアミノ-6-メチル-7-アニリノフルオラン、3-ジエチルアミノ-6-メチル-7-メシチジノ-4’,5’-ベンゾフルオラン、3-p-ジメチルアミノフェニル)-3-{1,1-ビス(p-ジメチルアミノフェニル)エチレン-2-イル}フタリド、3-(p-ジメチルアミノフェニル)-3-{1,1-ビス(p-ジメチルアミノフェニル)エチレン-2-イル}-6-ジメチルアミノフタリド、3-(p-ジメチルアミノフェニル)-3-(1-p-ジメチルアミノフェニル-1-フェニルエチレン-2-イル)フタリド、3-(p-ジメチルアミノフェニル)-3-(1-p-ジメチルアミノフェニル-1-p-クロロフェニルエチレン-2-イル)-6-ジメチルアミノフタリド、3-(4’-ジメチルアミノ-2’-メトキシ)-3-(1”-p-ジメチルアミノフェニル-1”-p-クロロフェニル-1”,3”-ブタジエン-4”-イル)ベンゾフタリド、3-(4’-ジメチルアミノ-2’-ベンジルオキシ)-3-(1”-p-ジメチルアミノフェニル-1”-フェニル-1”,3”-ブタジエン-4”-イル)ベンゾフタリド、3-ジメチルアミノ-6-ジメチルアミノ-フルオレン-9-スピロ-3’-(6’-ジメチルアミノ)フタリド、3,3-ビス(2-(p-ジメチルアミノフェニル)-2-p-メトキシフェニル)エテニル)-4,5,6,7-テトラクロロフタリド、3-ビス{1,1-ビス(4-ピロリジノフェニル)エチレン-2-イル}-5,6-ジクロロ-4,7-ジプロモフタリド、ビス(p-ジメチルアミノスチリル)-1-ナフタレンスルホニルメタン、ビス(p-ジメチルアミノスチリル)-1-p-トリルスルホニルメタン等を挙げることができる。これらのロイコ染料は、1種又は2種以上を併用してもよい。
【0051】
顕色剤としては、ロイコ染料を発色させる電子受容性の種々の化合物、又は酸化剤等を挙げることができる。このような顕色剤としては、特に限定はないが、たとえば、4,4’-イソプロピリデンビスフェノール、4,4’-イソプロピリデンビス(o-メチルフェノール)、4,4’-セカンダリーブチリデンビスフェノール、4,4’-イソプロピリデンビス(2-ターシャリーブチルフェノール)、p-ニトロ安息香酸亜鉛、1,3,5-トリス(4-ターシャリーブチル-3-ヒドロキシ-2,6-ジメチルベンジル)イソシアヌル酸、2,2-(3,4’-ジヒドロキシジフェニル)プロパン、ビス(4-ヒドロキシ-3-メチルフェニル)スルフィド、4-{β-(p-メトキシフェノキシ)エトキシ}サリチル酸、1,7-ビス(4-ヒドロキシフェニルチオ)-3,5-ジオキサヘプタン、1,5-ビス(4-ヒドロキシフェニチオ)-5-オキサペンタン、フタル酸モノベンジルエステルモノカルシウム塩、4,4’-シクロヘキシリデンジフェノール、4,4’-イソプロピリデンビス(2-クロロフェノール)、2,2’-メチレンビス(4-メチル-6-ターシャリーブチルフェノール)、4,4’-ブチリデンビス(6-ターシャリーブチル-2-メチル)フェノール、1,1,3-トリス(2-メチル-4-ヒドロキシ-5-ターシャリーブチルフェニル)ブタン、1,1,3-トリス(2-メチル-4-ヒドロキシ-5-シクロヘキシルフェニル)ブタン、4,4’-チオビス(6-ターシャリーブチル-2-メチル)フェノール、4,4’-ジフェノールスルホン、4-イソプロポキシ-4’-ヒドロキシジフェニルスルホン、4-ベンジロキシ-4’-ヒドロキシジフェニルスルホン、4,4’-ジフェノールスルホキシド、p-ヒドロキシ安息香酸イソプロピル、p-ヒドロキシ安息香酸ベンジル、プロトカテキユ酸ベンジル、没食子酸ステアリル、没食酸ラウリル、没食子酸オクチル、1,3-ビス(4-ヒドロキシフェニルチオ)-プロパン、N,N’-ジフェニルチオ尿素、N,N’-ジ(m-クロロフェニル)チオ尿素、サリチルアニリド、ビス-(4-ヒドロキシフェニル)酢酸メチルエステル、ビス-(4-ヒドロキシフェニル)酢酸ベンジルエステル、1,3-ビス(4-ヒドロキシクミル)ベンゼン、1,4-ビス(4-ヒドロキシクミル)ベンゼン、2,4’-ジフェノールスルホン、2,2’-ジアリル-4,4’-ジフェノールスルホン、3,4-ジヒドロキシフェニル-4’-メチルジフェニルスルホン、1-アセチルオキシ-2-ナフトエ酸亜鉛、2-アセチルオキシ-1-ナフトエ酸亜鉛、2-アセチルオキシ-3-ナフトエ酸亜鉛、α,α-ビス(4-ヒドロキシフェニル)-α-メチルトルエン、チオシアン酸亜鉛のアンチピリン錯体、テトラブロモビスフェノールA、テトラブロモビスフェノールS、4,4’-チオビス(2-メチルフェノール)、4,4’-チオビス(2-クロロフェノール)等を挙げることができる。これらの顕色剤は、1種又は2種以上を併用してもよい。
顕色剤の含有量は、特に限定はないが、ロイコ染料1重量部に対して、好ましくは1重量部~20重量部、より好ましくは2重量部~10重量部である。
【0052】
結着樹脂(B)としては、特に限定はなく、たとえば、ポリビニルアルコール樹脂、澱粉又はその誘導体;ヒドロキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、メチルセルロース、エチルセルロース等のセルロース誘導体;ポリアクリル酸ソーダ、ポリビニルピロリドン、アクリルアミド-アクリル酸エステル共重合体、アクリルアミド-アクリル酸エステル-メタクリル酸三元共重合体、スチレン-無水マレイン酸共重合体アルカリ塩、イソブチレン-無水マレイン酸共重合体アルカリ塩、ポリアクリルアミド、アルギン酸ソーダ、ゼラチン、カゼイン等の水溶性高分子;ポリ酢酸ビニル、ポリウレタン、ポリアクリル酸、ポリアクリル酸エステル、塩化ビニル-酢酸ビニル共重合体、ポリブチルメタクリレート、エチレン-酢酸ビニル共重合体等のエマルション;スチレン-ブタジエン共重合体、スチレン-ブタジエン-アクリル系共重合体等のラテックス等を挙げることができる。これらの結着樹脂(B)は、1種又は2種以上を併用してもよい。
【0053】
感熱記録層は、必要に応じて感度向上剤を含有してもよい。感度向上剤としては、特に限定はないが、たとえば、ステアリン酸、ベヘン酸等の脂肪酸類;ステアリン酸アミド、パルチミン酸アミド等の脂肪酸アミド類;ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸アルミニウム、ステアリン酸カルシウム、パルチミン酸亜鉛、ベヘン酸亜鉛等の脂肪酸金属塩類;p-ベンジルビフェニル、ターフェニル、トリフェニルメタン、p-ベンジルオキシ安息香酸ベンジル、β-ベンジルオキシナフタレン、β-ナフトエ酸フェニル、1-ヒドロキシ-2-ナフト酸フェニル、1-ヒドロキシ-2-ナフトエ酸メチル、ジフェニルカーボネート、グリコールカーボネート、テレフタル酸ジベンジル、テレフタル酸ジメチル、1,4-ジメトキシナフタレン、1,4-ジエトキシナフタレン、1,4-ジベンジロキシナフタレン、1,2-ジフェノキシエタン、1,2-ビス(3-メチルフェノキシ)エタン、1,2-ビス(4-メチルフェノキシ)エタン、1,4-ジフェノキシ-2-ブテン、1,2-ビス(4-メトキシフェニルチオ)エタン、ジベンゾイルメタン、1,4-ジフェニルチオブタン、1,4-ジフェニルチオ-2-ブテン、1,3-ビス(2-ビニルオキシエトキシ)ベンゼン、1,4-ビス(2-ビニルオキシエトキシ)ベンゼン、p-(2-ビニルオキシエトキシ)ビフェニル、p-アリールオキシビフェニル、p-プロパギルオキシビフェニル、ジベンゾイルオキシメタン、ジベンゾイルオキシプロパン、ジベンジルジスルフィド、1,1-ジフェニルエタノール、1,1-ジフェニルプロパノール、p-ベンジルオキシベンジルアルコール、1,3-フェノキシ-2-プロパノール、N-オクタデシルカルバモイル-p-メトキシカルボニルベンゼン、N-オクタデシルカルバモイルベンゼン、1,2-ビス(4-メトキシフェノキシ)プロパン、1,5-ビス(4-メトキシフェノキシ)-3-オキサペンタン、シュウ酸ジベンジル、シュウ酸ビス(4-メチルベンジル)、シュウ酸ビス(4-クロロベンジル)等を挙げることができる。これら感度向上剤は、1種又は2種以上を併用してもよい。
【0054】
また、感熱記録層は必要に応じて補助添加剤を含有してもよい。補助添加剤としては、たとえば、2,2’-メチレンビス(4-エチル-6-ターシャリーブチルフェノール)、4,4’-ブチリデンビス(6-ターシャリーブチル-2-メチルフェノール)、1,1,3-トリス(2-メチル-4-ヒドロキシ-5-ターシャリーブチルフェニル)ブタン、1,1,3-トリス(2-メチル-4-ヒドロキシ-5-シクロヘキシルフェニル)ブタン、4,4’-チオビス(6-ターシャリーブチル-2-メチルフェノール)、テトラブロモビスフェノールA、テトラブロモビスフェノールS、4,4’-チオビス(2-メチルフェノール)、4,4’-チオビス(2-クロロフェノール)等のヒンダードフェノール化合物;テトラキス(1,2,2,6,6-ペンタメチル-4-ピペリジル)-1,2,3,4-ブタンテトラカルボキシレート、テトラキス(1,2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジル)-1,2,3,4-ブタンテトラカルボキシレート等のヒンダードアミン化合物等を挙げることができる。
【0055】
感熱記録層に含まれるその他の成分としては、たとえば、界面活性剤、滑剤、填料等を挙げることができる。
滑剤としては、たとえば、高級脂肪酸又はその金属塩、高級脂肪酸アミド、高級脂肪酸エステル、動物性ワックス、植物性ワックス、鉱物性ワックス、石油系ワックス等を挙げることができる。
填料としては、たとえば、炭酸カルシウム、シリカ、酸化亜鉛、酸化チタン、水酸化アルミニウム、水酸化亜鉛、硫酸バリウム、クレー、カオリン、タルク、表面処理されたカルシウム、表面処理されたシリカ等の無機系微粉末;尿素-ホルマリン樹脂、スチレン-メタクリル酸共重合体、ポリスチレン樹脂、塩化ビニリデン樹脂等の有機系微粉末等を挙げることができる。
【0056】
感熱記録層は、一般に知られている方法により形成することができ、たとえば、ロイコ染料及び顕色剤を、結着樹脂(B)、その他の成分と共に、ボールミル、アトライター、サンドミル等の分散機により、分散粒径が0.1~3μmになるまで粉砕分散した後、必要に応じて填料、感度向上剤の分散液等を共に混合して感熱記録層塗布液を調製し、感熱記録層塗布液をアンダー層上に塗布し、乾燥させることによって感熱記録層を形成することができる。
【0057】
感熱記録層塗布液の塗布方法としては、特に限定はないが、たとえば、ブレードコート法、グラビアコート法、グラビアオフセットコート法、バーコート法、ロールコート法、ナイフコート法、エアナイフコート法、コンマコート法、Uコンマコート法、AKKUコート法、スムージングコート法、マイクログラビアコート法、リバースロールコート法、4本乃至5本ロールコート法、ディップコート法、カーテンコート法、スライドコート法、ダイコート法等を挙げることができる。
感熱記録層の乾燥後の付着量は、特に限定はないが、好ましくは1~20g/m、より好ましくは3~10g/mである。
【0058】
〔保護層〕
保護層は結着樹脂(C)を含有し、必要に応じて架橋成分(B)、その他の成分を含有してもよい。
結着樹脂(C)としては、特に限定はないが、水溶性樹脂が好ましい。
水溶性樹脂としては、たとえば、ポリビニルアルコール;カルボキシル基を有するポリビニルアルコール等の変性ポリビニルアルコール;澱粉又はその誘導体;メトキシセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、メチルセルロース、エチルセルロース等のセルロース誘導体;ポリアクリル酸ソーダ、ポリビニルピロリドン、アクリルアミド-アクリル酸エステル共重合体、アクリルアミド-アクリル酸エステル-メタアクリル酸三元共重合体、スチレン-無水マレイン酸共重合体のアリカリ塩、イソブチレン-無水マレイン酸共重合体のアリカリ塩、ポリアクリルアミド、変性ポリアクリルアミド、メチルビニルエーテル-無水マレイン酸共重合体、カルボキシ変性ポリエチレン、ポリビニルアルコール-アクリルアミドブロック共重合体、メラミン-ホルムアルデヒド樹脂、尿素-ホルムアルデヒド樹脂、アルギン酸ソーダ、ゼラチン、カゼイン等を挙げることができる。これらの結着樹脂(C)は、1種又は2種以上を併用してもよい。
【0059】
架橋成分(B)としては、水溶性樹脂と反応するものであれば特に限定はなく、たとえば、グリオキザール誘導体、メチロール誘導体、エピクロルヒドリン、ポリアミドエピクロルヒドリン、エポキシ化合物、アジリジン化合物、ヒドラジン、ヒドラジド誘導体、オキサゾリン誘導体、カルボジイミド誘導体等が挙げられる。これらの架橋成分(B)は、1種又は2種以上を併用してもよい。
【0060】
保護層は、特に制限はなく、一般に知られている方法により形成することができる。
前記保護層の平均厚みは、特に特に限定はないが、好ましくは0.5~5μm、より好ましくは1~3μmである。
【0061】
〔接着剤層又は粘着剤層〕
接着剤層又は粘着剤層は接着成分又は粘着成分を含有する。
粘着成分又は接着成分としては、一般的に用いられているものが使用可能であり、たとえば、ユリア樹脂、メラミン樹脂、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、酢ビ系樹脂、酢酸ビニル-アクリル系共重合体、エチレン-酢酸ビニル系共重合体、アクリル系樹脂、ポリビニルエーテル系樹脂、塩化ビニル-酢酸ビニル系共重合体、ポリスチレン系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリウレタン系樹脂、ポリアミド系樹脂、塩素化ポリオレフィン樹脂、ポリビニルブチラール系樹脂、アクリル酸エステル系共重合体、メタクリル酸エステル系共重合体、天然ゴム、シアノアクリレート系樹脂、シリコン系樹脂等を挙げることができる。
記録材料は、必要に応じて接着剤層又は粘着剤層を支持体の感熱層を形成する面とは反対の面に設けても良い。接着剤層又は粘着剤層には、接着剤層又は粘着剤層を形成したもの(無剥離紙型)と、接着剤層又は粘着剤層の下に剥離紙をつけるもの(剥離紙型)があり、必要に応じて適宜用いられる。
【0062】
〔その他の層〕
記録材料が有するその他の層としては、たとえば、バック層等が挙げられる。
前記バック層は、必要に応じて基材の感熱記録層を設けない側の面上に設けることができる。
バック層はフィラー、結着樹脂(D)を含有する。また、バック層は必要に応じて、滑剤、着色顔料等のその他の成分を含有してもよい。
フィラーとしては、たとえば、無機フィラー又は有機フィラーを用いることができる。前記無機フィラーとしては、たとえば、炭酸塩、ケイ酸塩、金属酸化物、硫酸化合物等を挙げることができる。有機フィラーとしては、たとえば、シリコーン樹脂、セルロース樹脂、エポキシ樹脂、ナイロン樹脂、フェノール樹脂、ポリウレタン樹脂、ユリア樹脂、メラミン樹脂、ポリエステル樹脂、ポリカーボネート樹脂、スチレン系樹脂、アクリル系樹脂、ポリエチレン樹脂、ホルムアルデヒド系樹脂、ポリメチルメタクリレート樹脂等を挙げることができる。
結着樹脂(D)としては、特に限定はないが、たとえば、感熱記録層の結着樹脂(B)と同様のものを用いることができる。
バック層の平均厚みは、特に限定はないが、好ましくは0.1~20μm、より好ましくは0.3~10μmである。
【0063】
記録材料の形状としては、特に限定はないが、たとえば、ラベル状、シート状、ロール状、などを挙げることができ、目的に応じて適宜選択することができる。
記録材料を用いた記録方法としては、特に限定はないが、たとえば、たとえば、サーマルヘッド、レーザーを用いる方法等を挙げることができる。
【0064】
記録材料の態様としては、たとえば、感熱記録ラベルや感熱磁気記録紙等を挙げることができる。また、記録材料の用途としては、例えば、生鮮食料品、弁当、惣菜用等のPOS分野;図書、文書等の複写分野;ファクシミリ等の通信分野;券売機、レシート、領収書等の発券分野;航空機業界のバッゲージ用タグなどの多方面に用いることができる。
【実施例0065】
以下の実施例および比較例で本発明を詳細に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。以下において、断りのない限り、「%」とは「重量%」を意味し、「部」とは「重量部」を意味するものとする。また、以下において、簡単のために感熱記録材料用樹脂中空粒子を「樹脂中空粒子」又は「中空粒子」ということがある。
【0066】
〔樹脂中空粒子に含有される炭化水素の内包率の測定〕
樹脂中空粒子に含有される炭化水素の内包率は、ヘッドスペース ガスクロマトグラフィー法により、以下のようにして測定した。
20mLヘッドスペースバイアルに0.1gの樹脂中空粒子を秤取し、フッ素樹脂で被覆したシリコーンゴム製セプタムをアルミニウム製のキャップを用いてヘッドスペースバイアルを密栓した。密栓したヘッドスペースバイアルを170℃で20分間加熱し、ヘリウムで0.5分間加圧後、気相(ヘッドスペース)を3mL採取し、これをガスクロマトグラフに導入し、樹脂中空粒子に含有される炭化水素の内包率を測定した。
ヘッドスペース ガスクロマトグラフィー法の分析条件は以下のとおりとした。
(分析条件)
GCカラム;Agilent社製 DB-624 長さ30m、内径0.25mm、膜厚1.40μm)
検出器:FID、温度200℃
昇温プログラム:40℃で6分間保持した後、200℃まで20℃/分で昇温させ、200℃到達後3分間保持する。
注入口温度:200℃
ガス導入量:3mL
ヘリウム流量:1mL/min
スプリット比:10:1
定量方法は検量線法を採用し、以下の方法で実施した。
(定量方法の条件)
既知量の試料をDMFに溶解させた溶液5μLを20mLヘッドスペースバイアルに採取し、フッ素樹脂で被覆したシリコーンゴム製セプタムをアルミニウム製のキャップを用いてヘッドスペースバイアルを密栓した。密栓したヘッドスペースバイアルを170℃で20分間加熱し、ヘリウムで0.5分間加圧後、気相(ヘッドスペース)を3mL採取し、これをガスクロマトグラフに導入した。
【0067】
〔体積平均粒子径の測定〕
レーザー回折散乱式粒度分布測定装置(Microtrac ASVR、日機装社製)を使用して、測定をおこなった。体積平均粒子径は体積基準測定によるD50値を採用した。
【0068】
〔感熱記録材料用樹脂中空粒子組成物の固形分濃度の測定〕
測定装置として、赤外線水分計(FD-230型、ケット科学研究所製)を用いて感熱記録材料用樹脂中空粒子組成物の含水率を測定し、得られた値より感熱記録材料用樹脂中空粒子組成物の固形分濃度を算出した。
【0069】
〔樹脂中空粒子の真比重の測定〕
樹脂中空粒子の真比重は環境温度25℃、相対湿度50%の雰囲気下においてイソプロピルアルコールを用いた液浸法(アルキメデス法)により測定した。
具体的には、容量100ccのメスフラスコを空にし、乾燥後、メスフラスコ重量(WB1)を秤量した。秤量したメスフラスコにイソプロピルアルコールをメニスカスまで正確に満たした後、イソプロピルアルコール100ccの充満されたメスフラスコの重量(WB2)を秤量した。
また、容量100ccのメスフラスコを空にし、乾燥後、メスフラスコ重量(WS1)を秤量した。秤量したメスフラスコに約50ccの樹脂中空粒子を充填して、メスフラスコの重量(WS2)を秤量した。そして、樹脂中空粒子の充填されたメスフラスコに、イソプロピルアルコールを気泡が入らないようにメニスカスまで正確に満たした後の重量(WS3)を秤量した。そして、得られたWB1、WB2、WS1、WS2およびWS3を下式に導入して、樹脂中空粒子の真比重(d)を計算した。
d={(WS2-WS1)×(WB2-WB1)/100}/{(WB2-WB1)-(WS3-WS2)}
【0070】
〔中空率の測定〕
樹脂中空粒子を走査型電子顕微鏡(株式会社キーエンス社製のVE-8800、加速電圧20kV、倍率2000倍)で撮影した。得られた電子顕微鏡写真を用いて、無作為に選んだ樹脂中空粒子20個について外径および内径(中空粒子の中空部の直径)を観察して、それぞれの樹脂中空粒子の外径と内径の大きさから、外径と内径の比を下記式より算出し、それぞれ算出された外径と内径の比の値の平均値を樹脂中空粒子の中空率とした。
中空率(%)=(樹脂中空粒子の内径/樹脂中空粒子の外径)×100
【0071】
〔圧縮回復率の測定〕
樹脂中空粒子2.00mgを直径6mm(内径5.65mm)および深さ4.8mmのアルミカップに入れ、樹脂中空粒子層の上部に直径5.6mmおよび厚み0.1mmのアルミ蓋を載せたものを試料とした。次いで、DMA(DMAQ800型、TAinstruments社製)を使用し、この試料に70℃の環境下で加圧子によりアルミ蓋の上部から2.5Nの力を加えた状態での樹脂中空粒子層の高さL1を測定した。その後、樹脂中空粒子層を2.5Nから18Nまで10N/minの速度で加圧後、18Nから2.5Nまで10N/minの速度で除圧する操作を、8回繰り返した後、加圧子によりアルミ蓋上部から2.5Nの力を加えた状態の樹脂中空粒子層の高さL2を測定した。そして、下記式に示すように、測定した樹脂中空粒子層の高さL1とL2との比を、樹脂中空粒子の圧縮回復率と定義した。
圧縮回復性(%)=(L2/L1)×100
【0072】
〔実施例1〕
イオン交換水500gに、コロイダルシリカ(有効濃度20重量%)100gおよびアジピン酸-ジエタノールアミンの縮合物3gを加えた後、得られた混合物のpHを3.0-4.0に調整し、水性分散媒を調製した。
これとは別に、アクリロニトリル48g、メタクリロニトリル112g、アクリル酸メチル40g、エチレングリコールジメタクリレート2g、2,2’-アゾビスイソブチロニトリル2g、イソブタン60gを混合して油性混合物を調製した。
水性分散媒および油性混合物を混合し、得られた混合液をホモミキサーにより12000rpmで5分間分散して、懸濁液を調製した。この懸濁液を容量1.5リットルの加圧反応器に移して窒素置換をしてから反応初期圧0.2MPaにし、80rpmで攪拌しつつ重合温度60℃で15時間重合し、熱膨張性微小球を得た。得られた熱膨張性微小球Aを、特開昭62-201231号公報記載の湿式加熱膨張法に従い、発泡温度100~140℃の範囲で調整し所望の中空率となるよう加熱処理し、遠心脱水機で脱水を行い、固形分濃度33重量%である樹脂中空粒子Aを含有した樹脂中空粒子組成物A(すなわち、水の濃度が67重量%)を得た。得られた樹脂中空粒子Aの物性を表4に示す。
【0073】
〔実施例2~6、比較例1~4〕
実施例1で用いた水性分散媒、油性混合物を構成する各種成分及びその量を、表1に示すものに変更する以外は同様にして樹脂中空粒子B~Iをそれぞれ製造し、樹脂中空粒子をそれぞれ含有した樹脂中空粒子組成物B~Iを得た。なお、樹脂中空粒子組成物B~Iの固形分濃度はいずれも33重量%となるように調整した。樹脂中空粒子B~Iの物性を表1に示す。
【0074】
【表1】
【0075】
表1では単量体、架橋剤及び開始剤を以下の略号で示す。
AN:アクリロニトリル
MAN:メタクリロニトリル
MA:アクリル酸メチル
MMA:メタクリル酸メチル
IBX:イソボルニルメタクリレート
EDMA:エチレングリコールジメタクリレート
AIBN:2,2’-アゾビスイソブチロニトリル
OPP:ジ-2-エチルヘキシルパーオキシジカーボネート
【0076】
〔感熱記録材料の感度及び精細性の評価〕
以下の条件、手順にて感熱記録材料を作製した。
〔評価1〕
(アンダー層形成用液の調製)
・樹脂中空粒子組成物A(樹脂中空粒子Aを含有、固形分濃度33重量%):20重量部
・スチレン/ブタジエン共重合ラテックス(固形分濃度47.5重量%):20重量部
・ポリビニルアルコール10重量%水溶液(株式会社クラレ製、PVA117):20重量部
・イオン交換水:40重量部
上記を混合攪拌してアンダー層形成液を調製した。
【0077】
(感熱記録層形成用液の調製)
<染料分散液>
・ロイコ染料(3-ジブチルアミノ-6-メチル-7-アニリノフルオラン):20重量部
・イタコン酸変性ポリビニルアルコール10重量%水溶液(株式会社クラレ製、25-88KL):40重量部
・界面活性剤(日本乳化剤株式会社製、Newcol290、固形分濃度100重量%):0.2重量部
・イオン交換水:40重量部
上記混合物をサンドグラインダーを用いて、平均粒径が0.5μmとなるように分散して、染料分散液を調製した。
【0078】
<顕色剤分散液>
・4-ヒドロキシ-4’-イソプロポキシジフェニルスルホン:20重量部
・イタコン酸変性ポリビニルアルコール10重量%水溶液(株式会社クラレ製、25-88KL):20重量部
・非晶質シリカ(水澤化学工業株式会社製、ミズカシルP527):15重量部
・界面活性剤(日信化学工業株式会社製、PD-001、固形分濃度100重量%):0.2重量部
・イオン交換水:60重量部
上記混合物をサンドグラインダーを用いて、体積平均粒径が1.0μmとなるように分散して、染料分散液を調製した。
【0079】
次に、染料分散液20重量部、顕色分散液40重量部、スチレン-ブタジエン共重合体ラテックス(固形分濃度47.5重量%)5重量部、イタコン酸変性ポリビニルアルコール10重量%水溶液10重量部、及びイオン交換水40重量部を混合攪拌して、感熱記録層形成液を調製した。
【0080】
<填剤A分散液>
・水酸化アルミニウム:30重量部
・イタコン酸変性ポリビニルアルコール10重量%水溶液(株式会社クラレ製、25-88KL):30重量部
・イオン交換水:40重量部
上記混合物をサンドグラインダーを用いて、体積平均粒径が0.5μmとなるように分散して、填剤A分散液を調製した。
【0081】
(保護層形成液の調製)
・填剤A分散液:30重量部
・ジアセトン変性ポリビニルアルコール10重量%水溶液(日本酢ビ・ポバール株式会社製、DF-17):50重量部
・架橋成分(B)液(アジピン酸ジヒドラジド、固形分濃度10重量%):20重量部
・モンタン酸エステルワックス分散液(固形分濃度30重量%):5重量部
・イオン交換水:15重量部
上記を混合攪拌して、保護層形成液を調製した。
【0082】
次に、基材として坪量62g/mの紙表面に、乾燥付着量が1.5g/mになるようにアンダー層形成液を塗工し、その上に乾燥付着量が3.0g/mになるように感熱記録層形成液を塗布及び乾燥し、さらにその上に乾燥付着量が2.0g/mになるように保護層形成液を塗布及び乾燥し、その後、スーパーキャレンダーにて感熱記録層側の王研式平滑度が2000sになるように表面処理し、感熱記録材料1を得た。
【0083】
〔評価2~5、7~10〕
評価1で用いたアンダー層に用いる樹脂中空粒子組成物Aを、表2に示すように樹脂中空粒子B~Iを含有する樹脂中空粒子組成物B~Iに変更する以外は同様にして感熱記録材料2~5と感熱記録材料7~10を得た。
【0084】
〔評価6〕
評価5において、平滑度が1000sになるようにスーパーキャレンダーによるキャレンダー条件を調整した以外は、評価5と同様にして感熱記録材料6を得た。なお、平滑度が高くなるにつれ、感熱記録材料を製造する際に、記録材料にかかる力が高くなる。
【0085】
〔評価11〕
評価1で用いたアンダー層に用いる樹脂中空粒子組成物Aを、中空率50%、平均粒径1.0μmの中空粒子:25重量部(ダウケミカル社製 HP-1055 固形分濃度26.5重量%、単にHP-1000ということがある)に変更した以外は、実施例1と同様にして感熱記録材料11を得た。
【0086】
〔評価12〕
評価1で用いたアンダー層に用いる樹脂中空粒子組成物Aを、実施例1の重合工程で得られた熱膨張性微小球A:20重量部(固形分濃度33%)に変更した以外は実施例1と同様にして感熱記録材料12を得た。
【0087】
次に、評価1~12で得られた感熱記録材料を用いて、以下のようにして、感度及び精細性、感熱記録材料に含有される炭化水素量を評価した。結果を表2に示す。
【0088】
〔感度〕
感熱記録材料を印字シミュレーター(大倉電機株式会社製)にて、ヘッド電力0.45w/ドット、1ライン記録時間20ms/line、走査線密度8×3.85ドット/mmの条件下で、パルス巾0.2ms~1.2msで印字し、印字濃度をマクベス反射濃度計RD-914(マクベス社製)にて測定した。この時、画像濃度1.0を得るために必要としたパルス巾を算出し、そのエネルギー値から、以下の数式にしたがって評価8を基準とした場合の感度倍率を算出し、下記基準で評価した。
感度倍率=(評価8のパルス巾)/(測定したサンプルのパルス巾)
(評価基準)
◎:感度倍率が1.11以上
○:感度倍率が1.01以上1.10以下
×:感度倍率が1.00以下
【0089】
〔精細性〕
各感熱記録材料(印刷部を設けない感熱記録材料)について、DATAMAX社製サーマルラベルプリンターI-4308を用いて印字速度8ipsで、印字濃度が0.80になるように任意の文字、画像を印字し、印字画像を目視観察し、下記基準で評価した。
(評価基準)
◎:文字、画像、白抜けはない。
○:文字、画像に僅かに白抜けがあるが、認識はできる。
×:文字、画像に白抜けがあり、認識できない。
【0090】
〔感熱記録材料の総合評価〕
各評価における感度評価及び詳細性評価のうち、最も低い評価を総合評価とした。
【0091】
〔感熱記録材料に含有される炭化水素量の測定〕
各感熱記録材料中に含有される炭化水素の重量は、ヘッドスペース ガスクロマトグラフィー法により、以下のようにして測定した。
20mLヘッドスペースバイアルに、樹脂中空粒子を含有する感熱記録材料(感熱記録材料が接着剤層又は粘着剤層を含有している場合は、秤取前に該層を取り除いた)を0.02g秤取し、フッ素樹脂で被覆したシリコーンゴム製セプタムをアルミニウム製のキャップを用いてヘッドスペースバイアルを密栓した。密栓したヘッドスペースバイアルを170℃で20分間加熱し、ヘリウムで0.5分間加圧後、気相(ヘッドスペース)を3mL採取し、これをガスクロマトグラフに導入し、感熱記録材料中の炭化水素の重量割合を測定した。
ヘッドスペース ガスクロマトグラフィー分析の条件は以下のとおりとした。
(分析条件)
GCカラム;Agilent社製 DB-624 長さ30m、内径0.25mm、膜厚1.40μm)
検出器:FID、温度200℃
昇温プログラム:40℃で6分間保持した後、200℃まで20℃/分で昇温させ、200℃到達後3分間保持する。
注入口温度:200℃
ガス導入量:3mL
ヘリウム流量:1mL/min
スプリット比:10:1
定量方法は検量線法を採用し、以下の方法で実施した。
(定量方法の条件)
既知量の試料をDMFに溶解させた溶液5μLを20mLヘッドスペースバイアルに採取し、フッ素樹脂で被覆したシリコーンゴム製セプタムをアルミニウム製のキャップを用いてヘッドスペースバイアルを密栓した。密栓したヘッドスペースバイアルを170℃で20分間加熱し、ヘリウムで0.5分間加圧後、気相(ヘッドスペース)を3mL採取し、これをガスクロマトグラフに導入した。
【0092】
〔感熱記録材料の面積あたりに含有する炭化水素の含有量の測定〕
樹脂中空粒子を含有する各感熱記録材料を0.02g秤取し、その面積を測定し、感熱記録材料の坪量(g/m)を測定した。
次に、上記方法により測定された感熱記録材料の炭化水素重量と感熱記録材料の坪量より、下記の方法により、樹脂中空粒子を含有する感熱記録材料1mあたりに含有される炭化水素重量を算出した。
樹脂中空粒子を含有する感熱記録材料0.02g中に含有される炭化水素の重量=M(mg)
樹脂中空粒子を含有する感熱記録材料0.02gの面積=S(m
として、感熱記録材料1mあたりに含有される炭化水素重量C(g/m)から
C = M÷S(g/m
より算出した。
【0093】
【表2】
【0094】
なお、評価1の感熱記録材料のスーパーキャレンダー処理前及びスーパーキャレンダー処理後の断面の走査型電子顕微鏡写真をそれぞれ図4及び図5に示し、評価8の感熱記録材料のスーパーキャレンダー処理前及びスーパーキャレンダー処理後の断面の走査型電子顕微鏡写真をそれぞれ、図6及び図7に示す。図4及び図5に示すように、評価1の感熱記録材料においては、スーパーキャレンダー処理を行う前後で樹脂中空粒子の形状変化がほとんどない(スーパーキャレンダー処理による樹脂中空粒子の潰れがない)ことが観察された。これとは対象的に、アンダー層に用いる樹脂中空粒子を、炭化水素を含有しないものに変更した評価8では、図6及び図7に示すように、スーパーキャレンダー処理を行う前後で樹脂中空粒子の形状変化している(スーパーキャレンダー処理によって樹脂中空粒子の潰れが発生している)ことが観察された。
【0095】
本発明の感熱記録材料用樹脂中空粒子は、サーマルプリンタ等に対応可能な記録材料に使用でき、特に、ロイコ染料等を含む感熱記録材料に好適である。また、転写型や昇華型の記録材料にも使用することができる。
【符号の説明】
【0096】
1 外殻部
2 中空部
3 基材
4 アンダー層
5 感熱記録層
6 保護層
7 接着剤層又は粘着剤層

図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7