(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022065060
(43)【公開日】2022-04-26
(54)【発明の名称】モアレ発生予測装置、モアレ発生予測システム及びモアレ発生予測方法
(51)【国際特許分類】
H04N 1/409 20060101AFI20220419BHJP
G06T 7/42 20170101ALI20220419BHJP
B41J 2/52 20060101ALI20220419BHJP
【FI】
H04N1/409
G06T7/42
B41J2/52
【審査請求】未請求
【請求項の数】15
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022019269
(22)【出願日】2022-02-10
(62)【分割の表示】P 2020124988の分割
【原出願日】2020-07-22
(71)【出願人】
【識別番号】000003193
【氏名又は名称】凸版印刷株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000062
【氏名又は名称】特許業務法人第一国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】長谷 陽太
(57)【要約】 (修正有)
【課題】モアレが発生する領域を予測し、当該領域を含む図柄に対してのみモアレ抑制処理を施すことで、印刷劣化を抑えると共に、モアレの発生を抑制し、良質な印刷を可能にするモアレ発生予測手段、モアレ発生予測システム及びモアレ発生予測方法を提供する。
【解決手段】発声予測システム200において、モアレ発生予測装置は、モアレ発生予測の対象となる入力画像を受信する通信部と、入力画像において、モアレの発生を誘発する周期構造を含む周期構造領域を判定するための周期構造含有判定部と、判定した各周期構造領域に対して所定の周波数解析処理を施すことにより、各周期構造領域においてモアレが発生する危険度を判定し、危険度を各周期構造領域毎に示すモアレ発生予告を生成して出力するモアレ予測部とを含む。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
入力画像を受信する通信部と、
前記入力画像において、モアレの発生を誘発する周期構造を含む周期構造領域を判定するための周期構造含有判定部と、
判定した各周期構造領域に対して所定の周波数解析処理を施すことにより、各周期構造領域においてモアレが発生する危険度を判定し、前記危険度を各周期構造領域毎に示すモアレ発生予告を生成し、出力するモアレ予測部と、
を含むことを特徴とするモアレ発生予測装置。
【請求項2】
前記入力画像は、
ベクターデータ形式の元画像と、ラスターデータ形式の網点画像とを含む、
ことを特徴とする、請求項1に記載のモアレ発生予測装置。
【請求項3】
前記モアレ発生予測装置は、
前処理部を更に含み、
前記前処理部は、
前記入力画像を固定サイズの処理用ブロックに分割する、
ことを特徴とする、請求項2に記載のモアレ発生予測装置。
【請求項4】
前記周期構造含有判定部は、
前記元画像に対して、
所定の色空間へ変換するための色変換処理を施し、
輪郭成分を抽出するための輪郭成分抽出処理を施し、
平滑化処理を施し、
画素の最大値及び最小値を正規化し、
前記所定の周波数解析処理を施すことにより、
前記元画像における周波数のピーク、周波数のピーク強度、又は強度分散のいずれかに基づいて、モアレの発生を誘発する周期構造を含む周期構造領域を前記処理用ブロック毎に判定する、
ことを特徴とする、請求項3に記載のモアレ発生予測装置。
【請求項5】
前記モアレ予測部は、
前記元画像に対して、
所定の色空間へ変換するための色変換処理を施し、
輪郭成分を抽出するための輪郭成分抽出処理を施し、
平滑化処理を施し、
前記網点画像に対して、
所定の色空間へ変換するための色変換処理を施し、
前記元画像の解像度に整合させるための解像度変換処理を施し、
平滑化処理を施した後、
前記元画像と前記網点画像とのピクセル差分を示す差分抽出画像を生成し、
前記差分抽出画像に対して、前記所定の周波数解析処理を施すことにより、
前記差分抽出画像の周波数のピーク、周波数のピーク強度、又は強度分散のいずれかに基づいて、
モアレが発生する危険度を判定し、前記危険度を前記処理用ブロック毎に示すモアレ発生予告を生成する、
ことを特徴とする、請求項4に記載のモアレ発生予測装置。
【請求項6】
前記周期構造含有判定部及び前記モアレ予測部は、
複数の隣接している処理用ブロックをまたぐように重複する重複領域に対して処理を行う、
ことを特徴とする、請求項5に記載のモアレ発生予測装置。
【請求項7】
前記モアレ発生予測装置は、
モアレ抑制処理の対象となる領域を抽出するための領域抽出部を更に含み、
前記領域抽出部は、
前記元画像に対して、
所定の色空間へ変換するための色変換処理を施し、
類似した画素値を有する類似領域を示す要素類似マップを生成する、
ことを特徴とする、請求項6に記載のモアレ発生予測装置。
【請求項8】
前記モアレ発生予測装置は、
モアレ抑制部を更に含み、
前記モアレ抑制部は、
前記モアレ発生予告に基づいて、前記網点画像における前記類似領域毎に、所定のモアレ抑制処理を施すことで、モアレ抑制済み画像を生成する、
ことを特徴とする、請求項7に記載のモアレ発生予測装置。
【請求項9】
クライアント端末と、モアレ発生予測装置とが通信ネットワークを介して接続されるモアレ発生予測システムであって、
前記モアレ発生予測装置は、
入力画像を受信する通信部と、
前記入力画像において、モアレの発生を誘発する周期構造を含む周期構造領域を判定するための周期構造含有判定部と、
判定した各周期構造領域に対して所定の周波数解析処理を施すことにより、各周期構造領域においてモアレが発生する危険度を判定し、前記危険度を各周期構造領域毎に示すモアレ発生予告を生成し、前記クライアント端末に送信するモアレ予測部と、
を含むことを特徴とするモアレ発生予測システム。
【請求項10】
前記入力画像は、
ベクターデータ形式の元画像と、ラスターデータ形式の網点画像とを含み、
前記モアレ発生予測装置は、
前処理部を更に含み、
前記前処理部は、
前記入力画像を固定サイズの処理用ブロックに分割する、
ことを特徴とする、請求項9に記載のモアレ発生予測システム。
【請求項11】
前記モアレ予測部は、
前記元画像に対して、
所定の色空間へ変換するための色変換処理を施し、
輪郭成分を抽出するための輪郭成分抽出処理を施し、
平滑化処理を施し、
前記網点画像に対して、
所定の色空間へ変換するための色変換処理を施し、
前記元画像の解像度に整合させるための解像度変換処理を施し、
平滑化処理を施した後、
前記元画像と前記網点画像とのピクセル差分を示す差分抽出画像を生成し、
前記差分抽出画像に対して、前記所定の周波数解析処理を施すことにより、
前記差分抽出画像の周波数のピーク、周波数のピーク強度、又は強度分散のいずれかに基づいて、
モアレが発生する危険度を判定し、前記危険度を前記処理用ブロック毎に示すモアレ発生予告を生成する、
ことを特徴とする、請求項10に記載のモアレ発生予測システム。
【請求項12】
前記通信部は、
所定の危険度基準を満たす前記処理用ブロックのみについて、前記モアレ発生予告を生成する、
ことを特徴とする、請求項11に記載のモアレ発生予測システム。
【請求項13】
前記モアレ発生予測装置は、
モアレ抑制処理の対象となる領域を抽出するための領域抽出部と、
モアレ抑制部を更に含み
前記領域抽出部は、
前記元画像に対して、
所定の色空間へ変換するための色変換処理を施し、
類似した画素値を有する類似領域を示す要素類似マップを生成し、
前記モアレ抑制部は、
前記モアレ発生予告に基づいて、前記網点画像における前記類似領域毎に、所定のモアレ抑制処理を施すことで、モアレ抑制済み画像を生成する、
ことを特徴とする、請求項11に記載のモアレ発生予測システム。
【請求項14】
前記通信部は、
前記モアレ発生予告と前記モアレ抑制済み画像とを共に前記クライアント端末に送信する、
ことを特徴とする、請求項13に記載のモアレ発生予測システム。
【請求項15】
元画像を受信する工程と、
前記元画像を網点画像に変換する工程と、
前記元画像及び・又は前記網点画像を固定サイズの処理用ブロックに分割する工程と、
前記元画像に対して、所定の色空間へ変換するための色変換処理を施し、輪郭成分を抽出するための輪郭成分抽出処理を施し、平滑化処理を施し、画素の最大値及び最小値を正規化し、前記所定の周波数解析処理を施すことにより、前記元画像における周波数のピーク、周波数のピーク強度、又は強度分散のいずれかに基づいて、モアレの発生を誘発する周期構造を含む周期構造領域を、前記処理用ブロック毎に判定する工程と、
前記元画像に対して、所定の色空間へ変換するための色変換処理を施し、輪郭成分を抽出するための輪郭成分抽出処理を施し、平滑化処理を施し、前記網点画像に対して、所定の色空間へ変換するための色変換処理を施し、前記元画像の解像度に整合させるための解像度変換処理を施し、平滑化処理を施した後、前記元画像と前記網点画像とのピクセル差分を示す差分抽出画像を生成する工程と、
前記差分抽出画像に対して、前記所定の周波数解析処理を施すことにより、前記差分抽出画像の周波数のピーク、周波数のピーク強度、又は強度分散のいずれかに基づいて、モアレが発生する危険度を判定し、前記危険度を前記処理用ブロック毎に示すモアレ発生予告を生成する工程と、
前記元画像に対して、所定の色空間へ変換するための色変換処理を施し、類似した画素値を有する類似領域を示す要素類似マップを生成する工程と、
前記モアレ発生予告に基づいて、前記網点画像における前記類似領域毎に、所定のモアレ抑制処理を施すことで、モアレ抑制済み画像を生成し、出力する工程と、
を含むことを特徴とするモアレ発生予測方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示の実施形態は、モアレ発生予測装置、モアレ発生予測システム及びモアレ発生予測方法に関する。
【背景技術】
【0002】
「モアレ(またはモワレ)」とは、周期的な模様や構造を複数重ね合わせたときに、視覚的に発生する干渉縞である。また、物理学的にいうと、モアレとは二つの空間周波数のうなり現象といえる。
このモアレを有用なものとして利用する場合もあるものの、意図しないモアレが発生すると、画像のデザイン性が損なわれ、印刷物の品質の劣化に繋がることがあるため、モアレを望ましくないものとして取り除く手段が提案されている。
【0003】
例えば、特許文献1においては、モアレを除去する手段として、「閾値を用いて入力された画像データから第1のハーフトーン画像データを生成する第1のハーフトーン処理手段と、前記第1のハーフトーン画像データを、前記閾値の周期に対応したサイズを有する第1のフィルタを用いて平滑化する第1のフィルタ処理手段と、前記第1のフィルタに応じた特性を有する第2のフィルタを用いて、前記入力された画像データを平滑化する第2のフィルタ処理手段と、前記第1のフィルタ処理手段によって平滑化された第1のハーフトーン画像データと前記第2のフィルタ処理手段によって平滑化された画像データとの差分に基づき、前記第1のハーフトーン画像データに生じるモアレを評価する評価手段とを備える。」技術が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1には、度合いが異なる2つの平滑化フィルタの差を取ることでモアレを検知し、モアレを除去する処理を行う手段が記載されている。
しかし、特許文献1に記載されている手段では、平滑化フィルターの差分が大きいところを全て、AMスクリーンから、FMスクリーンへ変換するため、モアレが発生しない画像の領域は、モアレが発生する領域と共に処理される。ところが、モアレが発生しない画像の領域に対してモアレ除去処理を施すと、画像におけるオブジェクトの質感を損ねたり、画像のシャープさを低下させたり等、印刷品質の劣化を引き起こすことがある。そのため、特許文献1に記載の手段を適用した場合、モアレが発生しない画像の領域に対してもモアレ除去処理を施すことになるため、処理負荷が大きくなる上、過剰にモアレ防止処理をすることによる劣化が発生する。
従って、モアレが発生する領域を予め予測し、当該領域に対してのみモアレ抑制処理を施す手段があれば望ましい。
【0006】
そこで、本開示の実施形態は、モアレが発生する領域を予測し、当該領域を含む図柄に対してのみモアレ抑制処理を施すことで、印刷劣化を抑えると共に、モアレの発生を抑制し、良質な印刷を可能にするモアレ発生予測手段を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の課題を解決するために、代表的な本開示のモアレ発生予測システムの一つは、クライアント端末と、モアレ発生予測装置とが通信ネットワークを介して接続されるモアレ発生予測システムであって、前記モアレ発生予測装置は、モアレ発生予測の対象となる入力画像を受信した場合、前記入力画像において、モアレの発生を誘発する周期構造を含む周期構造領域を判定するための周期構造含有判定部と、判定した各周期構造領域に対して所定の周波数解析処理を施すことにより、各周期構造領域においてモアレが発生する危険度を判定し、前記危険度を各周期構造領域毎に示すモアレ発生予告を生成し、前記クライアント端末に送信するモアレ予測部とを含む。
【発明の効果】
【0008】
本開示によれば、モアレが発生する領域を予測し、当該領域を含む図柄に対してのみモアレ抑制処理を施すことで、印刷劣化を抑えると共に、モアレの発生を抑制し、良質な印刷を可能にするモアレ発生予測手段を提供することができる。
上記した以外の課題、構成及び効果は、以下の実施形態の説明により明らかにされる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】
図1は、本開示の実施形態を実施するためのコンピュータシステムを示す図である。
【
図2】
図2は、本開示の実施形態に係る発生予測システムの構成の一例を示す図である。
【
図3】
図3は、本開示の実施形態に係るモアレ発生予測処理を含む印刷工程の全体のフローを示す図である。
【
図4】
図4は、本開示の実施形態に係るGUIの一例を示す図である。
【
図5】
図5は、本開示の実施形態に係るモアレ発生予測処理の一例を示す図である。
【
図6】
図6は、本開示の実施形態に係る周期構造含有判定処理の流れの一例を示す図である。
【
図7】
図7は、本開示の実施形態に係る周波数解析の一例を示す図である。
【
図8】
図8は、本開示の実施形態に係るモアレ予測処理の流れの一例を示す図である。
【
図9】
図9は、本開示の実施形態に係る差分抽出画像に対して周波数解析を行う場合の一例を示す図である。
【
図10】
図10は、本開示の実施形態に係る差分抽出画像に対して周波数解析を行った後、閾値を用いてモアレを判定する場合の一例を示す図である。
【
図11】
図11は、本開示の実施形態に係る周波数解析処理に用いられるマスクの一例を示す図である。
【
図12】
図12は、本開示の実施形態に係る抑制処理領域の絞り込み処理の流れの一例を示す図である。
【
図13】
図13は、本開示の実施形態に係るモアレ発生予告の一例を示す図である。
【
図14】
図14は、本開示の実施形態に係る処理用ブロックの一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面を参照して、本開示の実施形態について説明する。なお、この実施形態により本開示が限定されるものではない。また、図面の記載において、同一部分には同一の符号を付して示している。
(本開示の背景及び概要)
【0011】
上述したように、印刷の対象となる画像の中に、縞模様やメッシュ状の模様のような、周期的な模様が存在する場合、画像を印刷用の網点画像に変換し、この模様を網点により再現しようとすると、模様の周期と網点の周期とが干渉し、モアレと呼ばれる、元画像には存在しないテクスチャが現れることがある。特に、周期が大きいモアレが発生し、視認されると使用者に違和感を与え、品質低下の要因となる。
【0012】
例えば、印刷品位の要求特性が厳しいカタログ印刷の場合、モアレが発生すると、カタログの多くのページを再印刷しなければならず、大きなロスが生じる。
【0013】
また、コミックの印刷の場合にも、スクリーントーンを使用した領域が存在すると、このスクリーントーン領域にはモアレが発生しやすいため、大量の印刷ロスの原因となり得る。
【0014】
従来では、このようなモアレは、目視で画像を検査し、手作業でモアレを修正する作業を行っていたが、多くの画像やベージの検査、修正は作業員の労力を要し、負荷が大きい。
【0015】
一方、モアレを防止するために、例えば元画像の高周波成分をあらかじめ除去する手法が一般的であるが、カタログであればその服飾の質感を損ね、コミックであれば、印刷のシャープさを損ねてしまうため、印刷品質の低下と手作業による作業コストが高いことが課題である。
従って、モアレが発生する領域を予め予測し、当該領域に対してのみモアレ抑制処理を施す手段があれば望ましい。
【0016】
そこで、上述したように、本開示によれば、モアレが発生する領域を予測し、当該領域を含む図柄に対してのみモアレ抑制処理を施すことで、印刷劣化を抑えると共に、モアレの発生を抑制し、良質な印刷を可能にするモアレ発生予測手段を提供することができる。
(ハードウエア構成)
【0017】
まず、
図1を参照して、本開示の実施形態を実施するためのコンピュータシステム300について説明する。本明細書で開示される様々な実施形態の機構及び装置は、任意の適切なコンピューティングシステムに適用されてもよい。コンピュータシステム300の主要コンポーネントは、1つ以上のプロセッサ302、メモリ304、端末インターフェース312、ストレージインタフェース314、I/O(入出力)デバイスインタフェース316、及びネットワークインターフェース318を含む。これらのコンポーネントは、メモリバス306、I/Oバス308、バスインターフェースユニット309、及びI/Oバスインターフェースユニット310を介して、相互的に接続されてもよい。
【0018】
コンピュータシステム300は、プロセッサ302と総称される1つ又は複数の汎用プログラマブル中央処理装置(CPU)302A及び302Bを含んでもよい。ある実施形態では、コンピュータシステム300は複数のプロセッサを備えてもよく、また別の実施形態では、コンピュータシステム300は単一のCPUシステムであってもよい。各プロセッサ302は、メモリ304に格納された命令を実行し、オンボードキャッシュを含んでもよい。
【0019】
ある実施形態では、メモリ304は、データ及びプログラムを記憶するためのランダムアクセス半導体メモリ、記憶装置、又は記憶媒体(揮発性又は不揮発性のいずれか)を含んでもよい。メモリ304は、本明細書で説明する機能を実施するプログラム、モジュール、及びデータ構造のすべて又は一部を格納してもよい。例えば、メモリ304は、モアレ予測アプリケーション350を格納していてもよい。ある実施形態では、モアレ予測アプリケーション350は、後述する機能をプロセッサ302上で実行する命令又は記述を含んでもよい。
【0020】
ある実施形態では、モアレ予測アプリケーション350は、プロセッサベースのシステムの代わりに、またはプロセッサベースのシステムに加えて、半導体デバイス、チップ、論理ゲート、回路、回路カード、および/または他の物理ハードウェアデバイスを介してハードウェアで実施されてもよい。ある実施形態では、モアレ予測アプリケーション350は、命令又は記述以外のデータを含んでもよい。ある実施形態では、カメラ、センサ、または他のデータ入力デバイス(図示せず)が、バスインターフェースユニット309、プロセッサ302、またはコンピュータシステム300の他のハードウェアと直接通信するように提供されてもよい。
【0021】
コンピュータシステム300は、プロセッサ302、メモリ304、表示システム324、及びI/Oバスインターフェースユニット310間の通信を行うバスインターフェースユニット309を含んでもよい。I/Oバスインターフェースユニット310は、様々なI/Oユニットとの間でデータを転送するためのI/Oバス308と連結していてもよい。I/Oバスインターフェースユニット310は、I/Oバス308を介して、I/Oプロセッサ(IOP)又はI/Oアダプタ(IOA)としても知られる複数のI/Oインタフェースユニット312,314,316、及び318と通信してもよい。
【0022】
表示システム324は、表示コントローラ、表示メモリ、又はその両方を含んでもよい。表示コントローラは、ビデオ、オーディオ、又はその両方のデータを表示装置326に提供することができる。また、コンピュータシステム300は、データを収集し、プロセッサ302に当該データを提供するように構成された1つまたは複数のセンサ等のデバイスを含んでもよい。
【0023】
例えば、コンピュータシステム300は、心拍数データやストレスレベルデータ等を収集するバイオメトリックセンサ、湿度データ、温度データ、圧力データ等を収集する環境センサ、及び加速度データ、運動データ等を収集するモーションセンサ等を含んでもよい。これ以外のタイプのセンサも使用可能である。表示システム324は、単独のディスプレイ画面、テレビ、タブレット、又は携帯型デバイスなどの表示装置326に接続されてもよい。
【0024】
I/Oインタフェースユニットは、様々なストレージ又はI/Oデバイスと通信する機能を備える。例えば、端末インタフェースユニット312は、ビデオ表示装置、スピーカテレビ等のユーザ出力デバイスや、キーボード、マウス、キーパッド、タッチパッド、トラックボール、ボタン、ライトペン、又は他のポインティングデバイス等のユーザ入力デバイスのようなユーザI/Oデバイス320の取り付けが可能である。ユーザは、ユーザインターフェースを使用して、ユーザ入力デバイスを操作することで、ユーザI/Oデバイス320及びコンピュータシステム300に対して入力データや指示を入力し、コンピュータシステム300からの出力データを受け取ってもよい。ユーザインターフェースは例えば、ユーザI/Oデバイス320を介して、表示装置に表示されたり、スピーカによって再生されたり、プリンタを介して印刷されてもよい。
【0025】
ストレージインタフェース314は、1つ又は複数のディスクドライブや直接アクセスストレージ装置322(通常は磁気ディスクドライブストレージ装置であるが、単一のディスクドライブとして見えるように構成されたディスクドライブのアレイ又は他のストレージ装置であってもよい)の取り付けが可能である。ある実施形態では、ストレージ装置322は、任意の二次記憶装置として実装されてもよい。メモリ304の内容は、ストレージ装置322に記憶され、必要に応じてストレージ装置322から読み出されてもよい。I/Oデバイスインタフェース316は、プリンタ、ファックスマシン等の他のI/Oデバイスに対するインターフェースを提供してもよい。ネットワークインターフェース318は、コンピュータシステム300と他のデバイスが相互的に通信できるように、通信経路を提供してもよい。この通信経路は、例えば、ネットワーク330であってもよい。
【0026】
ある実施形態では、コンピュータシステム300は、マルチユーザメインフレームコンピュータシステム、シングルユーザシステム、又はサーバコンピュータ等の、直接的ユーザインターフェースを有しない、他のコンピュータシステム(クライアント)からの要求を受信するデバイスであってもよい。他の実施形態では、コンピュータシステム300は、デスクトップコンピュータ、携帯型コンピュータ、ノートパソコン、タブレットコンピュータ、ポケットコンピュータ、電話、スマートフォン、又は任意の他の適切な電子機器であってもよい。
【0027】
次に、
図2を参照して、本開示の実施形態に係るモアレ発生予測システムについて説明する。
【0028】
図2は、本開示の実施形態に係る発生予測システム200の構成の一例を示す図である。
図2に示すように、発生予測システム200は、クライアント端末205、印刷部210、及びモアレ発生予測装置230を含む。また、クライアント端末205、印刷部210、及びモアレ発生予測装置230は、例えば通信ネットワーク225を介して相互的に接続される。
通信ネットワーク225は、例えばインターネットやLAN(Local Area Network)であってもよい。
【0029】
クライアント端末205は、後述するモアレ発生予測処理の対象となる入力画像を、通信ネットワーク225を介してモアレ発生予測に送信する端末である。このクライアント端末205は、個人に利用される端末であってもよく、民間企業等の組織における共有の端末であってもよい。また、このクライアント端末205は、例えば、デスクトップパソコン、ノートパソコン、タブレット、スマートフォン等、任意のデバイスであってもよい。
クライアント端末205のユーザは、例えばクライアント端末205のGUI(Graphical User Interface)を介して、入力画像と、当該入力画像の印刷条件等を入力してもよい。なお、クライアント端末205のGUIの詳細については後述する(
図4参照)。
【0030】
印刷部210は、モアレ発生予測装置230によって生成された、モアレが抑制された後の画像データを印刷するための印刷ユニットである。なお、この印刷部210は、モアレ発生予測装置230のモアレ抑制部236から出力される画像を印刷してもよく、クライアント端末から受信した画像を印刷してもよい。
【0031】
モアレ発生予測装置230は、本開示に実施形態に係るモアレ発生予測方法における処理を実施するための装置である。
図2に示すように、モアレ発生予測装置230は、通信部231、前処理部232、周期構造含有判定部233、モアレ予測部234、領域抽出部235、モアレ抑制部236、及びストレージ部240を含む。モアレ発生予測装置230は、例えばクライアント端末205から受信した入力画像を、これらの機能部を用いて処理することにより、入力画像を構成する複数の領域毎に、モアレが発生する危険度を予測し、例えば危険度が高い領域に対してのみモアレ抑制処理を施すことで、印刷劣化を抑えると共に、モアレの発生を抑制し、良質な印刷を可能にするモアレ発生予測手段を提供することができる。
【0032】
通信部231は、モアレ発生予測装置230と、クライアント端末205と、印刷部210との間で通信される各種情報の送受信を行うための機能部である。例えば、通信部231は、クライアント端末205から受信する入力画像を受信したり、モアレ予測部234又はモアレ抑制部236によって生成される画像をクライアント端末205又は印刷部210に送信したりしてもよい。
【0033】
前処理部232は、モアレ発生予測装置によるモアレ発生予測処理の対象となる画像に対する前処理を行うための機能部である。例えば、前処理部232は、クライアント端末205から受信する、ベクターデータ形式である元画像に対するRIP(Raster Image Processor)処理を施し、ラスターデータ形式である網点画像を生成したり、入力画像を複数の処理用ブロックに分割したりする等、任意の前処理を行ってもよい。
【0034】
周期構造含有判定部233は、元画像において、モアレの発生を誘発する周期構造を含む周期構造領域を判定するための機能部である。後述するように、周期構造含有判定部233は、元画像に対して、所定の色空間へ変換するための色変換処理を施し、輪郭成分を抽出するための輪郭成分抽出処理を施し、平滑化処理を施し、画素の最大値及び最小値を正規化し、所定の周波数解析処理を施すことにより、元画像における周波数のピーク、周波数のピーク強度、又は強度分散のいずれかに基づいて、モアレの発生を誘発する周期構造を含む周期構造領域を判定してもよい。
なお、周期構造含有判定部233の処理の詳細については、
図6を参照して後述する。
【0035】
モアレ予測部234は、周期構造含有判定部233によって判定された各周期構造領域に対して所定の周波数解析処理を施すことにより、各周期構造領域においてモアレが発生する危険度を判定し、危険度を各周期構造領域毎に示すモアレ発生予告を生成し、出力する機能部である。より具体的には、モアレ予測部234は、元画像に対して、所定の色空間へ変換するための色変換処理を施し、輪郭成分を抽出するための輪郭成分抽出処理を施し、平滑化処理を施し、網点画像に対して、所定の色空間へ変換するための色変換処理を施し、元画像の解像度に整合させるための解像度変換処理を施し、平滑化処理を施した後、元画像と前記網点画像とのピクセル差分を示す差分抽出画像を生成し、差分抽出画像に対して、所定の周波数解析処理を施すことにより、差分抽出画像の周波数のピーク、周波数のピーク強度、又は強度分散のいずれかに基づいて、モアレが発生する危険度を判定し、危険度を処理用ブロック毎に示すモアレ発生予告を生成してもよい。
ある実施形態では、このモアレ発生予告はクライアント端末205に送信されてもよく、別の実施形態では、後述する領域抽出部235及びモアレ抑制部236は、当該モアレ発生予告に基づいて、モアレ抑制処理を施してもよい。
なお、モアレ予測部234の処理の詳細については、
図8を参照して後述する。
【0036】
領域抽出部235は、元画像に対して、所定の色空間へ変換するための色変換処理を施し、類似した画素値を有する類似領域を示す要素類似マップを生成するための機能部である。
なお、領域抽出部235の処理の詳細については、
図12を参照して後述する。
【0037】
モアレ抑制部236は、網点画像における類似領域毎に、所定のモアレ抑制処理を施すための機能部である。モアレ抑制部236が行うモアレ抑制処理として、網点画像の個々のトーン濃度を、同位置の元画像濃度と合致するように、トーンのサイズを調整したり、網点画像のトーン形状を、綺麗なトーンへと変換したりする手段が考えられるが、本開示の実施形態に係るモアレ抑制部236はこれに限定されず、任意のモアレ抑制処理を施してもよい。
【0038】
ストレージ部240は、上述した各機能部によって用いられる各種情報を格納するための記憶領域である。例えば、
図2に示すように、ストレージ部240は、クライアント端末205から受信する、ベクターデータ形式である元画像241や、当該元画像に対してRIP(Raster Image Processor)処理を施すことで生成した、ラスターデータ形式である網点画像242を格納してもよい。ストレージ部240は、例えば、ハードディスクドライブやソリッドステートドライブなどのストレージ装置であってもよく、クラウド型のストレージ領域であってもよい。
【0039】
以上説明したように構成したモアレ発生予測装置230により、モアレが発生する領域を予測し、当該領域を含む図柄に対してのみモアレ抑制処理を施すことで、印刷劣化を抑えると共に、モアレの発生を抑制し、良質な印刷を可能にするモアレ発生予測手段を提供することができる。
【0040】
次に、
図3を参照して、本開示の実施形態に係るモアレ発生予測処理を含む印刷工程の全体のフローについて説明する。
【0041】
図3は、本開示の実施形態に係るモアレ発生予測処理を含む印刷工程360の全体のフローを示す図である。モアレ発生予測処理368、374を除いて、
図3に示す印刷工程360は、いわゆるオフセット印刷と実質的に同様である。そのため、本明細書では、既存の印刷工程の詳細の説明を省略し、本開示の実施形態に係るモアレ発生予測処理を中心に説明する。
【0042】
ステップ362では、まず、データ入稿が行われる。ここでは、印刷を依頼したいユーザは、例えば
図2に示すクライアント端末等を用いて、印刷の対象となる元画像や、印刷の条件等を入力してもよい。
【0043】
次に、ステップ364では、ステップ362で入力された元画像は、印刷用に修正される。例えば、ここでは、ベクターデータ形式である元画像は、RIP処理により、ラスターデータ形式である網点画像に変換されたり、解像度や大きさを調整されたりしてもよい。
【0044】
次に、ステップ366では、印刷対象となる画像における文字・図版・写真などの配置が、例えばステップ362に入力された印刷条件に基づいて調整される。
【0045】
次に、ステップ368では、本開示の実施形態に係るモアレ発生予測処理が行われる。ここでは、モアレ発生予測処理は、印刷対象の画像のそれぞれのパーツ毎に行われる。
なお、このモアレ発生予測処理の詳細については、
図5等を参照して後述する。
【0046】
次に、ステップ370では、印刷対象となる画像のDDCP(Direct Digital Color Proof)が生成され、印刷機に直接的に出力可能なデジタルデータが用意される。
【0047】
次に、ステップ372では、ステップ370で用意されたデジタルデータは、確認が終了した後、印刷の実行段階に移行される(いわゆる「出稿」又は「下版」)。
【0048】
次に、ステップ374では、本開示の実施形態に係るモアレ発生予測処理が行われる。ステップ374で行われるモアレ発生予測処理は、上述したステップ368のモアレ発生予測処理と実質的に同様であるが、ステップ374で行われるモアレ発生予測処理は、印刷用のページ全体に対して行われる点において相違する。
【0049】
次に、ステップ376では、ステップ370で用意されたデジタルデータに基づいて作成された印刷用のフィルム(製版フィルム)を版材に焼き付けることにより、印刷用の刷版が製造される。
【0050】
次に、ステップ377では、印刷機は、ステップ376で製造された刷版を用いて、印刷を行う。
【0051】
以上説明したように、本開示の実施形態に係るモアレ発生予測処理は、既存の一般的なオフセット印刷工程の途中で行われる処理である。また、
図3に示す例では、本開示の実施形態に係るモアレ発生予測処理は、ステップ366の組版工程の終了後と、出稿・下版工程372の終了後との2回実行されているが、本開示はこれに限定されず、モアレ発生予測処理を1回のみ行う構成や、3回以上行う構成も可能である。ただし、モアレを正確に予測・抑制しつつ、印刷工程の全体の効率を維持する観点から、
図3に示すようにモアレ発生予測処理を2回行う構成が望ましい。
【0052】
次に、
図4を参照して、本開示の実施形態に係る入力画像を入力するためのGUIの一例について説明する。
【0053】
図4は、本開示の実施形態に係る入力画像を入力するためのGUI400の一例を示す図である。GUI400は、印刷及び本開示の実施形態に係るモアレ発生予測解析の対象となる入力画像と、当該入力画像の印刷条件を入力するためのインターフェースである。
GUI400を介して入力される入力画像及び印刷条件は、モアレ発生予測装置に送信される。また、GUI400は、例えば、モアレ発生予測装置が、通信ネットワークを介して、クライアント端末に提供するウエブ上のインターフェースやアプリ上のインターフェースであってもよい。
【0054】
まず、GUI400のユーザは、部署・部門402や社員番号403等のユーザ情報を入力する。ある実施形態では、GUI400のユーザは、部署・部門毎に予め用意し、保存されたプリセットの中から、所望のプリセットを選択してもよい。また、ある実施形態では、ユーザがGUI400を介して依頼する印刷・モアレ発生予測のジョブは、当該ユーザの社員番号に対応付けられ、ジョブの結果一覧では、所定の社員番号に対応するジョブの結果のみを表示することができる。これにより、例えばジョブを依頼した本人のみが当該ジョブの結果を確認することができるため、セキュリティを向上させることができる。
【0055】
次に、ユーザは、事前に登録しておいた設定項目のプリセット404、網種405、RIP処理のアルゴリズムの保存場所や号機を指定するRIP処理機の指定406、プロフィール変換の条件(刷版で色変換をかける場合、指定された条件で網点を生成する)407、結果の自動プリントアウト先の設定を指定するプリンター408、印刷で使用する版を指定(例えば、2色刷りの場合には不要版を削除)する使用版409を入力してもよい。
なお、網種405で設定される内容は、例えば網の形状(スクエアドット、チェーンドット等)、インキ毎の網角・線数、書き出す1ビットデータの解像度(2400dpi/4000dpi)、自動オーバープリント(ヌキノセ)の設定を含んでもよい。
また、ここでは、推奨の設定項目を事前に用意しておき、ユーザが特定の設定項目を選ぶ際に、推奨の設定が自動的に選択される構成も可能である。
【0056】
次に、ユーザは、登録開始ボタン410を押すことで、印刷及び本開示の実施形態に係るモアレ発生予測の対象となる入力画像と、当該入力画像の印刷条件を入力してもよい。複数の入力画像がある場合には、ユーザはこれらの複数の入力画像と、それぞれの入力画像に対応する印刷条件を一度に設定してもよい。
【0057】
ここでの入力画像は、少なくともベクターデータ形式の画像(以下、元画像)を含むが、印刷用の網点画像を含んでもよい。例えば、ある実施形態では、元画像と、当該元画像に対応する、RIP処理済みの網点画像とがクライアント端末側で作成され、共にGUI400を介して入力されてもよい。また、別の実施形態では、元画像がGUI400を介して入力された後、当該元画像に対応する、RIP処理済みの網点画像はモアレ発生予測装置側で作成されてもよい。本明細書では、元画像と網点画像とを区別する必要がない場合には、「入力画像」と総称する。
入力画像の形式は、例えばPDF,RAW,JPEG等、任意の形式であってもよい。
【0058】
また、ここでの印刷条件は、例えば色数、色の指定、特色の有無、網種(網点角度、線数)等を含んでもよい。これらの印刷条件は、特定の数値として入力されてもよく、範囲として入力されてもよく、事前に用意されたテンプレートの中から選択されてもよい。ある実施形態では、これらの事前に用意されたテンプレートのそれぞれは、異なる印刷ラインに対応し、当該印刷ライン用の印刷条件を含むものであってもよい。
【0059】
以上説明した設定項目、入力画像、及び印刷条件の情報は、通信ネットワークを介してモアレ発生予測装置に送信される。その後、当該入力画像を後述するモアレ発生予測処理で解析し、モアレが発生すると予測される領域に対してのみモアレ抑制処理を施すことで、印刷劣化を抑えると共に、モアレの発生を抑制し、良質な印刷を行うことができる。
【0060】
次に、
図5を参照して、本開示の実施形態に係るモアレ発生予測処理について説明する。
【0061】
図5は、本開示の実施形態に係るモアレ発生予測処理500の一例を示す図である。
図5に示すモアレ発生予測処理500は、例えば
図2に示すモアレ発生予測装置230によって行われる処理であり、モアレが発生する領域を予測し、当該領域を含む図柄に対してのみモアレ抑制処理を施すための処理である。
なお、ここでのモアレ発生予測処理500は、
図3を参照して説明したモアレ発生予測処理368、374に対応する処理である。
【0062】
まず、ステップ510では、モアレ発生予測装置は、印刷及びモアレ発生予測処理の対象となる入力画像を入力する。ここでは、モアレ発生予測装置は、例えば
図4を参照して説明したGUI400を介して設定された入力画像及び印刷条件を受信してもよい。
ここで受信する入力画像のファイル形式は、例えばJPEG,GIF,TIFF,BMP,PNG等、任意のファイル形式であってもよい。また、入力画像のサイズは、10,000x10,000画素から、1,000,000x1,000,000画素であり、大きな画像データであってもよい。
【0063】
この際には、モアレ発生予測装置は、入力画像として、ベクターデータ形式の画像と、当該元画像に対応する、RIP処理済みの網点画像との両方を入力してもよいが、ベクターデータ形式の元画像のみがクライアント端末から送信される場合には、当該元画像に対してRIP処理を施し、ラスターデータ形式の網点画像を生成してもよい。
【0064】
また、入力画像を入力した後、モアレ発生予測装置の前処理部232は、受信した入力画像を固定サイズの区画である処理用領域に分割してもよい。処理用ブロックのサイズは、例えば、2のべき乗のサイズが好ましいが、特に限定されない。また、処理用ブロックは、縦横が同じサイズであることが好ましい。処理用ブロックのサイズの例として、例えば128x128、256x256、512x512、1024x1024、2048x2048等を使用することができる。
なお、処理用ブロックの実サイズは、2mm以上、50mm以下であってもよい。
また、前処理部は、入力画像の解像度を変換し、600dpi以上、2400dpi以下として設定してもよい。
【0065】
以降の処理(例えば構造含有エリアを抽出する処理520と、モアレ検知処理530)では、モアレを誘発する周期構造の有無の判定や、モアレ検知の判定は、処理用ブロック毎に行われる。より具体的には、離散フーリエ変換した2次元データから、特有のピークが存在するかを判定することで、モアレを誘発する周期構造の有無を判定することができる。処理用ブロックに分割する理由は、様々な周期構造を含んだ状態で判定するよりも、小領域に区切って解析した方が任意のパターン情報を反映しやすいため、ブロック分割を行うことが望ましいからである。
【0066】
次に、ステップ520では、モアレ発生予測装置の周期構造含有判定部は、ベクターデータ形式の元画像に対して、モアレの発生を誘発する周期構造を含む周期構造領域を判定する。
なお、周期構造含有判定処理の詳細については
図6を参照して後述する。
【0067】
次に、ステップ530では、モアレ発生予測装置のモアレ予測部は、周期構造含有判定部によって判定された各周期構造領域に対して所定の周波数解析処理を施すことにより、各周期構造領域においてモアレが発生する危険度を判定し、危険度を各周期構造領域毎に示すモアレ発生予告を生成する。
なお、モアレ予測処理の詳細については
図8を参照して後述する。
【0068】
次に、ステップ540では、モアレ発生予測装置の領域抽出部は、元画像に対して、
所定の色空間へ変換するための色変換処理を施し、類似した画素値を有する類似領域を示す要素類似マップを生成することで、ステップ530のモアレ予測処理の対象となった領域と同一の図柄の領域である類似領域を抽出する。
なお、抑制処理領域の絞り込み処理については
図12を参照して後述する。
【0069】
次に、ステップ550では、モアレ発生予測装置のモアレ抑制部は、ステップ540で抽出された類似領域に対して、所定のモアレ抑制処理を実施する。モアレ予測部が行うモアレ抑制処理として、網点画像の個々のトーン濃度を、同位置の元画像濃度と合致するように、トーンのサイズを調整する方法や、網点画像のトーン形状を、綺麗なトーンへと変換したりする方法が考えられるが、本開示の実施形態に係るモアレ予測処理はこれに限定されず、任意のモアレ抑制処理を施してもよい。
【0070】
次に、ステップ560では、モアレ発生予測装置のモアレ抑制部によって処理された、モアレが抑制された画像をクライアント端末又は印刷部に出力する。
【0071】
以上説明したモアレ発生予測処理によれば、モアレが発生する領域を予測し、当該領域を含む図柄に対してのみモアレ抑制処理を施すことで、印刷劣化を抑えると共に、モアレの発生を抑制し、良質な印刷を行うことができる。
【0072】
次に、
図6を参照して、本開示の実施形態に係る周期構造含有判定処理について説明する。
【0073】
図6は、本開示の実施形態に係る周期構造含有判定処理520の流れの一例を示す図である。
図6に示す周期構造含有判定処理520は、
図2に示す周期構造含有判定部233によって行われる処理であり、元画像において、モアレの発生を誘発する周期構造を含む周期構造領域を判定するための処理である。
【0074】
原則として、モアレは、元画像に含まれる周期構造と、網点のピッチ・角度とが干渉することによって発生するものである。従って、上述したように、元画像を構成する処理用ブロックのそれぞれに対して、本開示の実施形態に係る周期構造含有判定処理520を施すことにより、当該元画像において、モアレの発生を誘発する周期構造を含む周期構造領域を判定することができる。また、後述するように、このように判定された周期構造領域に対して所定の周波数解析処理を施すことにより、各周期構造領域においてモアレが発生する危険度を判定し、危険度を各周期構造領域毎に示すモアレ発生予告を生成することができる。
なお、周期構造を含まないと判定された処理用ブロックについては、後述するモアレ予測処理、モアレ抑制処理等を行わない。このように、モアレの発生を誘発する周期構造を含むブロックに対してのみ、後述するモアレ予測処理、モアレ抑制処理等を行うことで、従来のモアレ抑制手段に比較して、処理速度が高速化し、モアレを含まない余分な領域に対してモアレ抑制処理を施すことにより生じる品質劣化を抑えることができる。
【0075】
まず、ステップ521では、周期構造含有判定部は、元画像を入力する。ここでは、周期構造含有判定部は、例えば通信部を用いてクライアント端末から受信され、前処理部によって前処理された元画像をストレージ部から取得してもよい。
【0076】
次に、ステップ522では、周期構造含有判定部は、元画像を任意の色空間へ変換するための色変換処理を施す。この色変換処理では、RGBの色からなる元画像を、LUV色空間やLAB空間への変換してもよい。
変換した色の成分の内、視感度が高い輝度成分を用いることができる。また、a*とb*でも視感度の違いあるため、その差に応じた重みづけを行ってもよい。更に、a*とb*のいずれか一方のみを用いてもよい。
【0077】
次に、ステップ523では、周期構造含有判定部は、元画像の輪郭成分を抽出した(すなわち、除去・排除した)マスクを生成する。
より具体的には、元画像における周期構造の有無を判定する際、オブジェクトの輪郭付近等の、急激に輝度が変化する境界が処理用ブロック中に存在する場合には、その境界の部分による高周波数成分がノイズとなり、判定時のS/N比(Signal/Noise Ratio)が低下することがある。そのため、急激な輝度変化が存在する境界を除去する前処理をした後、周波数分析をすることが望ましい。
従って、周期構造含有判定部は、色変換後の元画像に対して、輪郭成分を抽出したマスクの生成を行うことで、S/N比を避け、周期構造含有判定の精度を向上させることができる。
【0078】
次に、ステップ524では、周期構造含有判定部は、元画像における画素の最大値及び最小値を正規化する処理を行う。
より具体的には、後述する周波数解析では、離散フーリエ変換した2次元データから、特有のピークが含まれるか否かを判定することで、モアレの発生を誘発する周期構造を判定することができる。元画像における周期構造の有無を判定する際、前述の輪郭成分を除去した上、構造の濃度情報(色・明度情報)を正規化することにより、周期構造含有判定の精度を更に向上させることができる。一例としては、色変換後の元画像に対して平滑化処理を施し、平滑化前後の差分を抽出して、画素値の最大・最小値が特定値となるように正規化を行うことができるが、本開示はこれに限定されず、任意の正規化手段を用いてもよい。
【0079】
次に、ステップ525では、周期構造含有判定部は、上記した色変換処理、輪郭マスク生成処理、及び正規化処理を受けた元画像に対して、周波数解析処理を行う。この際の周波数解析処理としては、例えばFFT(高速フーリエ変換:Fast Fourier Transform)が代表的なアルゴリズムとして挙げられる。FFTとは、離散データに対するフーリエ変換であるDFT(離散フーリエ変換:Discrete Fourier Transform)を高速化したアルゴリズムである。
元画像に対するFFTにより生成されるパワースペクトル画像は、中心位置を周波数ゼロとして、各方位の周波数成分を中心から離れるにつれて周波数が高くなるように分布させたものである。
【0080】
モアレの発生を誘発させる周期構造を含む画像の周波数分布の特徴として、強度の高い周波数成分が特定の領域に集中すること、最大ピーク強度が高いこと、高周波領域にも強度が高い周波数成分を取り得ることが挙げられる。
一方、周期構造を含まない画像の周波数分布では、強度の高い周波数成分が低周波領域に分散される。
【0081】
よって、ステップ525では、周期構造含有判定部は、モアレの発生を誘発させる周期構造の有無を判定するためには、ピーク位置、ピーク強度および、周波数分布を任意角度刻みに分割した際の強度分散を、特徴値として定量的に算出する。その後、これで得られた特徴値に対して評価を行い、各ブロック毎にモアレが発生する危険度を判定することができる。
なお、特徴値の評価方法として、それぞれの特徴値に閾値を設けて評価する手法や、回帰分析後に尤度で評価する手法、クラスター分析によりモアレ有無を分類する手法、又は上記を組み合わせた手法が挙げられる。
【0082】
次に、ステップ526では、上述した処理によって判定された周期構造を含む周期構造領域の情報は、モアレ予測部に出力される。
【0083】
次に、
図7を参照して、本開示の実施形態に係る周波数解析について説明する。
【0084】
図7は、本開示の実施形態に係る周波数解析の一例を示す図である。上述したように、本開示の実施形態に係るモアレ発生予測処理において、入力画像(元画像及び/又は網点画像)に対して周波数解析処理を施すことにより、入力画像においてモアレの発生を誘発する周期構造を判定し、モアレが発生する危険度を予測することができる。
図7は、入力画像710、720のそれぞれに対して周波数解析処理を施した周波数解析済み画像715、725を示す図である。上述したように、モアレは明暗の周期構造であるため、モアレの発生を誘発させる周期構造を含む画像の周波数分布の特徴として、強度の高い周波数成分が特定の領域に集中すること、最大ピーク強度が高いこと、高周波領域にも強度が高い周波数成分を取り得ることが挙げられる。
一方、周期構造を含まない画像の周波数分布では、強度の高い周波数成分が低周波領域に分散される。
従って、本開示の実施形態に係る周波数解析処理を入力画像に対して施すことにより、当該入力画像においてモアレを誘発させる周期構造が存在するか否かを判断することができる。
【0085】
一例として、入力画像710に対して上述した周波数解析処理を施すことにより、一定の間隔で離間している、ピーク強度が高いスペクトル成分を有する周波数解析済み画像715が得られる。この周波数解析済み画像715に現れるスペクトル成分の周期的な分布とピークの強度とから、入力画像710は、モアレを誘発する周期構造を有するものとして判定される。
一方、別の一例として、入力画像720に対して上述した周波数解析処理を施すことにより、強度の高いスペクトル成分が低周波領域に分散される周波数分布を有する周波数解析済み画像720が得られる。この周波数解析済み画像720のスペクトル成分の分散から、入力画像720は、モアレを誘発する周期構造を有しないものとして判定される。
【0086】
従って、以下説明したように、任意の入力画像に対して本開示の実施形態に係る周波数解析処理を施すことにより、モアレを誘発する周期構造を含む領域を判定することができる。また、モアレを誘発する周期構造を含む領域のみに対してモアレ抑制処理を施すことにより、印刷劣化を抑えると共に、モアレの発生を抑制し、良質な印刷物を提供することができる。
【0087】
次に、
図8を参照して、本開示の実施形態に係るモアレ予測処理について説明する。
【0088】
図8は、本開示の実施形態に係るモアレ予測処理530の流れの一例を示す図である。
図6に示すモアレ予測処理530は、
図2に示すモアレ予測部234によって行われる処理であり、モアレを誘発する周期構造を含むと判定された周期構造領域の処理用ブロック毎にモアレを予測し、モアレが発生する危険度を判定するための処理である。
【0089】
RIP処理から得られる網点画像と元画像は、解像度や描写方法に相違があるものの、色・明度・図柄情報といったモアレ以外の成分が等しい。従って、モアレ予測処理530では、両画像の解像度・描写を揃えて比較することで、モアレ成分の抽出が可能となる。その後、このモアレ成分に対する周波数解析を行うことで、周期構造領域の処理用ブロック毎にモアレの発生を予測し、モアレが発生する危険度を判定することができる。
【0090】
まず、ステップ531a及びステップ531bでは、元画像及び網点画像が入力される。ここでは、モアレ予測部は、周期構造含有判定処理が施された元画像と、当該元画像に対応する網点画像をストレージ部から取得してもよい。
【0091】
次に、ステップ532a及びステップ532bでは、モアレ予測部は、元画像及び網点画像に対して、所定の色空間へ変換するための色変換処理を施す。
より具体的には、元画像及び網点画像は、CMYK(Cyan Magenta Yellow Black)のように分版された画像データであるが、複数の版が重なることによってモアレが発現するケースもある。従って、各版の画像同士で比較しても抽出できないモアレが存在するため、複数の版が重なることによって発生するモアレを検知するためには、版の情報を結合し、色変換を行うことが望ましい。色変換の例としては、LabやLUV空間等があげられる。
なお、以降の処理は得られた明度画像(例えばL)及び色画像(例えばa、b)に対して行われる。また、ここでは、上述した周期構造含有判定で生成された元画像の色変換結果を用いてもよい。
【0092】
次に、ステップ533では、モアレ予測部は、元画像の輪郭成分を抽出した(すなわち、除去・排除するための)マスクを生成する。
網点画像に対して後述する解像度変換を施す際、網点画像は、元画像に対して、図柄の輪郭がずれたり、輪郭に太り・細りが生じる可能性がある。そのため、後述する差分抽出処理を行う際、網点画像及び元画像を比較し、画像同士で濃度差を求めると、正確な差分を抽出できない可能性がる。また、画像内で細かい描写の領域では、マクロで見ると錯視効果により違和感がないものの、画素値のデータそのものを網点画像と元画像で比較すると、誤差が大きく生じる傾向がある。
従って、上記のことを鑑み、より良質な差分を抽出するためには、元画像に対して輪郭成分の抽出を行い、輪郭領域を解析対象から排除する輪郭マスクの作成を行う。
なお、ここでは、上述した周期構造含有判定で生成された輪郭マスクを用いてもよい。
【0093】
次に、ステップ534aでは、モアレ予測部は、元画像に対する平滑化処理を行う。この平滑化処理は、元画像に対してフィルタ処理を施し、注目画素に対して近傍の画素値の情報を含めつつ平滑化する処理である。平滑化処理のフィルタとしては、周辺画素に対する重みが一律である移動平均フィルタや、注目画素に近いほど重みが大きいガウシアンフィルタが挙げられ、どちらを使用してもよい。
なお、平滑化の度合いは平滑化フィルタのサイズに依存し、線数が大きい程、フィルタのサイズを小さくした方が望ましい。線数が小さいと、網点が大きい為、網点を消す為には強く平滑化をかける必要があり、線数が大きい時に強く平滑化をかけると、新たなモアレが発生してしまう恐れがある。
【0094】
次に、ステップ534bでは、モアレ予測部は、網点画像の解像度を元画像の解像度に整合させるための解像度変換処理と、平滑化処理とを網点画像に対して行う。
解像度変換処理を行う前の状態では、網点画像は1bitのデータであり、解像度が高い。一方、元画像は8bitのグレースケールで描写され、網点画像に比べると解像度が低い(例えば、網点画像は2400dpi、元画像は600dpi等のようなケースが考えられる)。従って、より良質な差分を抽出するためには、網点画像に対する解像度変換と、描写を揃えるための平滑化を行うことが望ましい。
解像度変換の代表的な方法としては、ニアレストネイバー法、バイキュービック法、バイリニア法等が挙げられる。ただし、ニアレストネイバー法で網点画像を圧縮すると、網点画像が粗くなりすぎてしまい、バイキュービック法で圧縮すると、補間時の平滑化が強すぎる為、後々の解析で不具合が生じることがある。その為、バイリニア法による解像度圧縮が望ましい。
なお、ステップ534bで網点画像に対して施される平滑化処理は、ステップ534aで元画像に対して施される平滑化処理と実質的に同様であるため、ここではその説明を省略する。また、網点画像に対する処理の順序として、色変換後に解像度変換・平滑化をすることが望ましい。これは、前述の版を重ねることで発現するモアレの強度成分が弱まってしまうためである。
【0095】
次に、ステップ535では、モアレ予測部は、上述した色変換処理、平滑化処理、及び・又は解像度変換処理を受けた網点画像と元画像のピクセル差分を表す差分抽出画像を生成し、この差分抽出画像に対して上述した輪郭マスクを乗算させることで、モアレ成分を抽出する。
【0096】
次に、ステップ536では、モアレ予測部は、上記の処理を経た画像データに対し、周波数解析処理を行う。ここでの周波数解析処理は、例えば
図4を参照して説明した構造含有判定処理における周波数解析処理と実質的に同様であるため、ここではその詳細の説明を省略する。
ここでの周波数解析処理では、周波数成分のピーク位置、ピーク強度および、周波数分布を任意角度刻みに分割した際の強度分散を、特徴値として定量的に算出する。その後、これで得られた特徴値に基づいて評価を行い、各ブロック毎にモアレが発生する危険度を判定することができる。
また、ロゼッタパターンを含む高周波ノイズが判定に与える影響を緩和させ、人の視感度を反映させるために、ローパスフィルタを介すと精度向上が望まれる。ローパスフィルタは直流成分から遠ざかるにつれて強度が減衰するGaussianフィルタやWelchフィルタが望ましい。ローパスフィルタのサイズはグリッドサイズに合わせて、人の視感度と類似するサイズとする。
なお、特徴値の抽出において、ピーク位置の情報を色濃く反映させるために
図9を参照して後述する2種類のマスクを用いて、低周波、高周波領域に関して別々で特徴値を抽出することで、評価精度の向上が望まれる。低周波、高周波領域の境界は、固定値としてもよく、線数の関数としてもよい。関数は、単調関数としてもよい。
【0097】
周波数解析処理を施すことにより得られた特徴値に対して評価を行い、各処理用ブロックに対してモアレが発生する危険度を判定する。ここでは、モアレが発生する危険度とは、モアレが発生する可能性を示す尺度であり、任意の数の段階で表現されてもよい。例えば、ある実施形態では、モアレが発生する危険度は、3:モアレが発生する可能性がない、2:モアレが発生する可能性がある、1:モアレが発生する可能性が高い等の3段階で表現されてもよい。また、ある実施形態では、処理用ブロックのそれぞれは、当該ブロックにおいてモアレが発生する可能性に応じて所定の疑似カラーで着色されてもよい(灰色:モアレが発生する可能性がない、黄色:モアレが発生する可能性がある、赤色:モアレが発生する可能性が高い)。また別の実施形態では、処理用ブロックのそれぞれは、当該ブロックにおいてモアレが発生する確率をパーセントとして表現してもよい。
なお、上述した評価方法として、それぞれの特徴値に閾値を設けて評価する手法や、回帰分析後に尤度で評価する手法、クラスター分析によりモアレ有無を分類する手法、上記を組み合わせた手法が挙げられる。また、判定の閾値は2段階で設定しても良い。例えば、緩い条件を「モアレ注意報」、厳しい条件を「モアレ警報」とした時に、画像修正工程ではモアレ注意報を元に判断し、刷版工程ではモアレ警報を元に判断する等の使い分けが可能となる。
【0098】
次に、ステップ537では、モアレ予測部は、モアレが発生する危険度を各処理用ブロック毎に示すモアレ発生予告を生成し、出力してもよい。上述したように、このモアレ発生予告は、例えば、モアレが発生する危険度を各処理用ブロック毎に示す画像であってもよい(
図12参照)。
ある実施形態では、モアレ予測部は、生成したモアレ発生予告をクライアント端末に送信した後、当該モアレ発生予告を受信したクライアント端末は、モアレ抑制処理をクライアント端末側で行ってもよい。
また別の実施形態では、モアレ予測部は、生成したモアレ発生予告を領域抽出部235に出力した後、モアレ抑制処理がモアレ発生予測装置側で行われてもよい。その後、通信部は、モアレ発生予告と、モアレ抑制処理を施した画像とを共にクライアント端末に送信してもよい。
また別の実施形態では、モアレ予測部は、所定の危険度基準を満たす(例えば、モアレが発生する危険度が高い)処理用ブロックのみを抽出して、クライアント端末に送信してもよい。これにより、送信するデータの容量を抑えることができる。
【0099】
以上説明した処理により、元画像を構成する複数の処理用ブロック毎に、モアレが発生する危険度を予測することができる。また、この危険度に基づいて、モアレが発生すると予測される処理用ブロックのみに対してモアレ抑制処理を施すことにより、印刷劣化を抑えると共に、モアレの発生を抑制し、良質な印刷を行うことができる。
【0100】
次に、
図9~
図10を参照して、本開示の実施形態に係る差分抽出画像に対して周波数解析を行う場合の一例について説明する。
【0101】
図9は、本開示の実施形態に係る差分抽出画像に対して周波数解析を行う場合の一例を示す図である。上述したように、本開示の実施形態に係るモアレ発生予測処理において、
元画像と網点画像とを比較することで生成した差分抽出画像に対して周波数解析処理を施すことにより、周波数成分のピーク位置、ピーク強度および、周波数分布を任意角度刻みに分割した際の強度分散を、特徴値として定量的に算出することができ、これらの特徴値に基づいて、モアレが発生する危険度を予測することができる。
図9は、差分抽出画像910、920のそれぞれに対して周波数解析処理を施した周波数解析済み画像915、925を示す図である。
【0102】
一例として、差分抽出画像910に対して上述した周波数解析処理を施すことにより、
一定の間隔で離間している、ピーク強度が高いスペクトル成分を有する周波数解析済み画像915が得られる。
一方、別の一例として、差分抽出画像820に対して上述した周波数解析処理を施すことにより、強度の高い周波数成分が低周波領域に分散される周波数分布を有する周波数解析済み画像925が得られる。
【0103】
図10は、本開示の実施形態に係る差分抽出画像に対して周波数解析を行った後、閾値を用いてモアレを判定する場合の一例を示す図である。より具体的には、
図10は、
図9に示す周波数解析済み画像915、925のそれぞれに対して二つのフィルター(ここでは、狭域フィルター及び広域フィルター)を適用し、この二つのフィルター内の値の比を、モアレを判定するための閾値として設定する場合の一例を示す。この閾値を用いることで、ノイズとモアレとを判別することができる。
【0104】
例えば、周波数解析済み画像915に対して狭域フィルター及び広域フィルターを適用すると、狭域フィルター内のスペクトル成分の総和Enarrowと、広域フィルター内のスペクトル成分の総和Ewideとの比であるEnarrow/Ewideが0.7と算出される。
一方、周波数解析済み画像925に対して狭域フィルター及び広域フィルターを適用すると、狭域フィルター内のスペクトル成分の総和Enarrowと、広域フィルター内のスペクトル成分の総和Ewideとの比であるEnarrow/Ewideが0.3と算出される。
【0105】
モアレを判定するための閾値として、0.5≦Enarrow/Ewide≦0.99を設定したとする。つまり、狭域フィルター内のスペクトル成分の総和Enarrowと、広域フィルター内のスペクトル成分の総和Ewideとの比であるEnarrow/Ewideが0.5≦Enarrow/Ewide≦0.99を満たす場合には、当該画像にモアレが存在すると判定し、Enarrow/Ewideが0.5未満の場合には、当該画像がノイズであると判定される。
【0106】
このように、対象の画像に対して周波数解析処理を施した後、二つのフィルター(ここでは、狭域フィルター及び広域フィルター)を適用し、この二つのフィルター内の値の比を、モアレを判定するための閾値として設定することで、この閾値に基づいて、対象の画像においてモアレが発生するかを予測することができる。
また、上記の閾値に加えて、Enarrow、Ewideの絶対値をモアレの強さとの指標としてもよい。そのときの閾値は、画像や印刷の種別等に応じてオペレーターによって設定されてもよい。
【0107】
次に、
図11を参照して、本開示の実施形態に係る周波数解析処理に用いられるマスクについて説明する。
【0108】
図11は、本開示の実施形態に係る周波数解析処理に用いられるマスクの一例を示す図である。上述したように、本開示の実施形態に係る周波数解析処理では、周波数成分のピーク位置、ピーク強度および、周波数分布を任意角度刻みに分割した際の強度分散を、特徴値として定量的に算出することができる。この特徴値の算出において、ピーク位置の情報を色濃く反映させるためには、マスクを用いることが望ましい。ここで用いるマスクの一例としては、例えば、
図11に示す低周波マスク1110と、高周波マスク1120とが挙げられる。
図11に示す低周波マスク1110と、高周波マスク1120との2種類のマスクを周波数解析処理において用いることで、低周波領域と高周波領域とのそれぞれについて、特徴値を個別に算出することができるため、上述したモアレの評価精度を向上させることができる。
また、低周波領域及び高周波領域の境界は、固定値としてもよく、線数の関数としてもよい。この関数は、単調関数としてもよい。
なお、
図11に示す低周波マスク1110と、高周波マスク1120において、白い領域は有効画素を示している。
【0109】
次に、
図12を参照して、本開示の実施形態に係る抑制処理領域の絞り込み処理について説明する。
【0110】
図12は、本開示の実施形態に係る抑制処理領域の絞り込み処理540の流れの一例を示す図である。
図12に示す抑制処理領域の絞り込み処理540は、
図2に示す領域抽出部235によって行われる処理であり、類似要素を有する類似領域を抽出するための処理である。
【0111】
より具体的には、上述したモアレ予測処理が終了した段階では、任意サイズの処理用ブロック単位でモアレが発生する危険度を示すモアレ発生予告が得られる。モアレが発生すると予測される処理用ブロックに対してモアレ抑制処理を行うことで、当該モアレを除去することができる。ただし、処理用ブロック毎に抑制処理を施すと、ブロック状にモアレ抑制処理有無が視認される可能性がある。つまり、画像において類似している描写や図柄の処理用ブロックが存在しており、これらの処理用ブロックの一部のみに対してモアレ抑制処理を施すと、モアレ抑制処理が施されている処理用ブロックと、モアレ抑制処理が施されていない処理用ブロックとで、視覚的な差異が発生し、ユーザに違和感を与える可能性がる。
そこで、本開示の実施形態に係る抑制処理領域の絞り込み処理540では、元画像を、
描写や図柄が共通している類似領域毎に分けて、モアレ抑制処理を類似領域単位で行うことで、上述したモアレ抑制処理の有無が視認される課題を解決することができる。
以下では、抑制処理領域の絞り込み処理540の詳細について説明する。なお、抑制処理領域の絞り込み処理540は、処理用ブロックに分割されていない元画像に対して行われる処理である。
【0112】
まず、ステップ541では、領域抽出部235は、元画像を入力する。ここでは、領域抽出部235は、元画像をモアレ発生予測装置のストレージ部から取得してもよい。
【0113】
次に、ステップ542では、領域抽出部235は、元画像を任意の色空間へ変換するための色変換処理を施す。この色変換処理では、RGBの色からなる元画像を、LUV色空間やLAB空間への変換してもよい。
なお、ここでは、領域抽出部235は、例えば上述した周期構造含有判定処理520において生成された元画像の色変換結果を用いてもよい。
【0114】
次に、領域抽出部235は、元画像を描写や図柄が共通している類似領域毎に分けて、これらの類似した画素値を有する類似領域を示す要素類似マップを生成する。
ここでは、元画像を描写や図柄が共通している類似領域毎に切り分ける手法として、元画像に対してSobel値を算出し、平滑化処理を行うことが考えられる。この処理により、描写や図柄毎に類似した画素値を有する要素類似マップが生成される。また、類似領域毎の切り分けに関しては、上記の処理のように微細な周期構造有無で類似領域を分ける方法が望ましい。
上述の通り、モアレが発生するのは微細な周期構造を含む場合に限り、かつ同一な図柄を持つ類似領域であれば、上記処理により一面に均一な画素値が分布するため、上記の手法は以降の処理に無駄がなく、意図に即した手法となる。
なお、類似領域を分ける方法は、明度や色度に着目した手法や、セマンティックセグメンテーション等の画像処理を用いてもよい。
【0115】
当処理で得られた要素類似マップに対して、輪郭抽出を施すことで、各類似領域の境界線の情報が得られる。
【0116】
次に、ステップ544では、領域抽出部235は、ステップ543で得られた類似領域の境界線情報と、上述したモアレ予測処理530によって得られたモアレ発生予告を基に、
抑制処理を施す領域を選定する。ここでは、情報結合の方法はFloodFill(塗りつぶしアルゴリズム)を用いてもよいし、その他画像処理手法を用いてもよい。
【0117】
以上説明した抑制処理領域の絞り込み処理540により、元画像を、描写や図柄が共通している類似領域毎に分けることができるため、モアレ抑制処理を類似領域単位で行うことが可能となる。抑制処理領域の絞り込み処理540によって抽出された類似領域は、
図5に示すモアレ発生予測処理500におけるモアレ抑制処理へと進み、モアレ抑制処理を受ける。
【0118】
次に、
図13を参照して、本開示の実施形態に係るモアレ発生予告について説明する。
【0119】
図13は、本開示の実施形態に係るモアレ発生予告1300の一例を示す図である。上述したように、本開示の実施形態に係るモアレ発生予告1300は、モアレが発生する危険度を各処理用ブロック毎に示す情報である。
図13に示すように、ある実施形態では、このモアレ発生予告1300は、モアレが発生する危険度を各処理用ブロック毎に示す画像であってもよい。
【0120】
上述したように、
図13に示すモアレ発生予告1300において、各処理用ブロックのそれぞれは、当該ブロックにおいてモアレが発生する可能性に応じて所定の疑似カラーで着色されてもよい。例えば、モアレ発生予告1300においてモアレが発生する可能性がない処理用ブロック1330を灰色、モアレが発生する可能性がある処理用ブロック1320(注意報エリア)を黄色、モアレが発生する可能性が高い処理用ブロック1310を赤色としてもよい。
【0121】
次に、
図14を参照して、本開示の実施形態に係る処理用ブロックの一例について説明する。
【0122】
図14は、本開示の実施形態に係る処理用ブロックの一例を示す図である。上述したように、ここでの処理用ブロックとは、元画像を固定サイズの区画に分割した小領域であり、処理の対象となる単位である。
【0123】
図14に示すように、元画像1410は、20個(4×5)の固定サイズの処理用ブロック1415に分割されてもよい。処理用ブロック1415のサイズは、例えば、2のべき乗のサイズが好ましいが、特に限定されない。また、処理用ブロックは、縦横が同じサイズであることが好ましい。処理用ブロックのサイズの例として、例えば128x128、256x256、512x512、1024x1024、2048x2048等を使用することができる。
なお、処理用ブロックの実サイズは、2mm以上、50mm以下であってもよい。
【0124】
上述したように、本開示の実施形態に係る処理(例えば構造含有エリアを抽出する処理520と、モアレ検知処理530)は、処理用ブロック毎に行われる。また、ある実施形態では、処理用ブロック毎に対して行われる処理は、処理用ブロック1つずつのみならず、複数の隣接している処理用ブロックをまたぐように重複する、処理用ブロックと同一サイズの重複領域1430に対して行われてもよい。例えば、
図14に示すように、この重複領域1430は、処理用ブロックの半分だけずらした領域であってもよい。
このように、処理用ブロックに対する処理に加えて、複数の隣接している処理用ブロックをまたぐように重複する重複領域1430を行うと、処理量が増加するが、処理用ブロックをまたぐ部分におけるモアレの予測確度を高めることができる。
【0125】
図14に示すような一定サイズの処理用ブロック1415を用いることで、計算の高速化を図ることができる上、処理のメモリの削減やキャッシュヒット率を向上させることができる。また、複数の隣接している処理用ブロックをまたぐように重複する重複領域1430を用いることで、処理用ブロックの境界をまたぐ周期構造と、処理用ブロック内での差異を小さくすることができる。
【0126】
更に、
図14に示す処理用ブロック1415をより小さいサブブロック1445に分割することができる。これらのサブブロック1445は、例えば処理用ブロック1415の半分のサイズや、1/4のサイズであってもよい。また、これらのサブブロック1445は、重複領域1430のフーリエ変換の計算の際にすでに計算済みのサブブロックの結果を流用することができるため、処理の効率化を図ることができる。
このように、サブブロックを用いて、処理用ブロックを重複する重複領域を設けることにより、モアレを誘発する周期構造の判定精度を向上させることができる。
【0127】
以上、本開示の実施の形態について説明したが、本開示は、上述した実施の形態に限定されるものではなく、本開示の要旨を逸脱しない範囲において種々の変更が可能である。
【0128】
以上、本発明を実施するための最良の形態について、添付図面を参照しながら説明したが、本開示の範囲は、図示され記載された実施形態に限定されるものではなく、本発明が目的とするものと均等な効果をもたらす全ての実施形態をも含むことができる。さらに、本開示の範囲は、請求項により画される発明の特徴(feature)に限定されるものではなく、全ての開示されたそれぞれの特徴(feature)、その特徴(feature)のあらゆる組み合わせも含む。
本開示で用いられる「部」、「システム」、「ネットワーク」という用語は、物理的存在である。物理的存在は、電気回路、その付随デバイス、または、それらを有線/無線で接続したものとできる。これらは、特定の機能を有するものとできる。特定の機能を有したこれらの組合せは、各機能の組合せにより相乗的効果を発現できる。
【0129】
本開示および特に添付の請求の範囲内で使用される用語(例えば、添付の請求の範囲の本文)は、一般的に、「オープンな」用語として意図される(例えば、「有する」という用語は、「少なくとも有する」と解釈すべきであり、「含む」という用語は「含むがそれに限定されない」などと解釈されるべきである)。
また、用語、構成、特徴(feature)、側面、実施形態を解釈する場合、必要に応じて図面を参照すべきである。図面により、直接的かつ一義的に導き出せる事項は、テキストと同等に、補正の根拠となるべきである。
【0130】
さらに、特定の数の導入された請求項の記載が意図される場合、そのような意図は、請求項に明示的に記載され、そのような記載がない場合、そのような意図は存在しない。例えば、理解を助けるために、以下の添付の請求の範囲は、「少なくとも1つ」および「1つまたは複数」の導入句の使用を含み、請求の列挙を導入することができる。しかしながら、そのような語句の使用は、不定冠詞「a」または「an」によるクレーム記載の導入が、そのようなクレームを含む特定のクレームを、そのような記載を1つだけ含む実施形態に限定することを意味すると解釈されるべきではない。「1つ以上」または「少なくとも1つ」の冒頭の語句および「a」または「an」などの不定冠詞(例えば、「a」および/または「an」)は、少なくとも「少なくとも」を意味すると解釈されるべきである。「1つ」または「1つ以上」)。請求項の記述を導入するために使用される明確な記事の使用についても同様である。
【符号の説明】
【0131】
200 発生予測システム
205 クライアント端末
210 印刷部
225 通信ネットワーク
230 モアレ発生予測装置
231 通信部
232 前処理部
233 周期構造含有判定部
234 モアレ予測部
235 領域抽出部
236 モアレ抑制部
240 ストレージ部
241 元画像
242 網点画像