(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022065064
(43)【公開日】2022-04-26
(54)【発明の名称】演出システム及び演出方法
(51)【国際特許分類】
A63J 5/04 20060101AFI20220419BHJP
G09F 19/00 20060101ALI20220419BHJP
A63H 27/10 20060101ALI20220419BHJP
【FI】
A63J5/04
G09F19/00 D
A63H27/10 B
【審査請求】有
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022019569
(22)【出願日】2022-02-10
(62)【分割の表示】P 2017230919の分割
【原出願日】2017-11-30
(71)【出願人】
【識別番号】501041894
【氏名又は名称】チームラボ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100116850
【弁理士】
【氏名又は名称】廣瀬 隆行
(74)【代理人】
【識別番号】100165847
【弁理士】
【氏名又は名称】関 大祐
(72)【発明者】
【氏名】猪子 寿之
(57)【要約】 (修正有)
【課題】音を利用した演出をより効果的に行う。
【解決手段】演出システム,複数の演出装置1とこれらを制御する制御装置100を備える。演出装置1のそれぞれは,気体を内包したボールと,ボール内に設けられた音出力部を含む内部装置と,ボールの動作を検知する動作検知部と,音出力部から音を出力する音響制御部を含む。制御装置100は,複数の演出装置1に対して音出力部から出力される音のタイミングを同期させるための同期信号を送信し,演出装置1の音響制御部は,動作検知部がボールの動作を検知したときに同期信号に基づいたタイミングで音出力部から音を出力する。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
気体を内包したボールと,
前記ボール内に設けられた発光部及び音出力部を含む内部装置と,を備える
演出装置。
【請求項2】
前記内部装置は,
前記ボールの動作を検知する動作検知部と,
前記動作検知部が前記ボールの動作を検知したときに前記音出力部から音を出力する音響制御部と,をさらに含む
請求項1に記載の演出装置。
【請求項3】
前記内部装置は,外部の制御装置又は他の演出装置から送信された前記発光部又は前記音出力部の制御情報を受信するための無線通信部をさらに含み,
前記発光部又は前記音出力は,前記制御情報に従って駆動する
請求項1に記載の演出装置。
【請求項4】
前記制御情報は,前記音出力部から音を出力するタイミングを同期させるための同期信号を含む
請求項3に記載の演出装置。
【請求項5】
前記ボールは,
気体を充填するための空気孔が設けられた気体室と,
前記気体室と隔てられ,前記内部装置が設けられた装置室と,を有する
請求項1に記載の演出装置。
【請求項6】
椀形の底面を有し,内部の前記底面側に錘部材が設けられた揺動体と,
前記揺動体内に設けられた発光部及び音出力部を含む内部装置と,を備える
演出装置。
【請求項7】
前記内部装置は,
前記揺動体の動作を検知する動作検知部と,
前記動作検知部が前記揺動体の動作を検知したときに前記音出力部から音を出力する音響制御部と,をさらに含む
請求項1に記載の演出装置。
【請求項8】
請求項2又は請求項7に記載の複数の演出装置と,
前記演出装置を制御する制御装置と,を備えた演出システムであって,
前記制御装置は,前記演出装置に対して,前記音出力部から出力される音のタイミングを同期させるための同期信号を送信するものであり,
前記演出装置は,前記動作検知部が前記揺動体の動作を検知したときに,前記同期信号に基づいたタイミングで,前記音出力部から音を出力する
照明演出システム。
【請求項9】
請求項2又は請求項7に記載の複数の演出装置と,
前記演出装置を制御する制御装置と,によって実行される
照明演出方法であって,
前記制御装置が,前記演出装置に対して,前記音出力部から音を出力するタイミングを同期させるための同期信号を送信する工程と,
前記演出装置が,前記動作検知部が前記揺動体の動作を検知したときに,前記同期信号に基づいたタイミングで,前記音出力部から音を出力する工程と,を含む
演出方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は,光と音を利用した演出装置,演出システム,及び演出方法に関する。具体的に説明すると,本発明は,ボールや揺動体の内部に照明機器とスピーカーが備え付けられた演出装置等に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から,コンサートやライブなどのイベントで実施される照明演出として,気体を内包した複数のボール(バルーン)の内部にLEDを備えた発光制御装置を搭載し,各ボール内のLEDを同期させつつそれらの発光色を変化させる方法が提案されている(特許文献1)。例えば,特許文献1には,ボール内の発光制御装置がボールの移動を検知したときにLEDの発光色を変化させることや,あるボールの移動に伴って他の複数のボール内のLEDを一斉に変化させることが開示されている。
【0003】
このようなLEDを備えたボールは,例えばイベント会場内で観客の頭上を自由に浮遊しており,観客がボールを突き上げたり投げたりしたときにその移動の加速度などを検知して発光色がリアルタイムに変化する。このため,観客はそのボールの発光による照明演出を楽しむだけでなく,ボールを自由に動かす楽しみを得ることができる。近年このような発光するボールを利用したインタラクティブな照明演出が人気を博している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで,上記の照明演出システムにおいて,ボールの発光と連動して,効果音などをスピーカーから出力し,光と音を用いた演出を行うことが検討されている。通常,イベント会場内に複数のスピーカーが設置されており,あるボールが観客によって突き上げられたりしたときに,会場内のスピーカーから効果音を出力することが考えられる。しかしながら,会場内のスピーカーから効果音を出力しても,ボールを突き上げた観客は,そのボールの動作と効果音の関連性を認識しづらく,自身の動作に起因して効果音が出力されていることに気づきにくいという問題がある。特に,会場内に多数の観客がいて,ボールの数も複数存在している場合には,上記の問題はより顕著になる。
【0006】
そこで,本発明は,光と音を利用した演出をより効果的に実施できるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の発明者は,上記目的を達成する手段について鋭意検討した結果,ボール(又は起き上がり小法師の様な中空状の揺動体)の内部に発光部と音出力部の両方を搭載することにより,光と音を利用した演出をより効果的に実施できるようになるという知見を得た。そして,本発明者は,上記知見に基づけばより魅力的な演出を実現できることに想到し,本発明を完成させた。具体的に説明すると,本発明は以下の構成・工程を有する。
【0008】
本発明の第1の側面は,ボールを利用した演出装置に関する。第1の側面に係る演出装置は,気体を内包したボールと,このボール内に設けられた発光部及び音出力部を含む内部装置とを備える。発光部が発光すると,ボール(透明又は半透明のもの)がその内部から照明されることとなる。また,音出力部から効果音等が出力されると,ボールの周囲に居る観客等にその音が聴こえることとなる。なお,内部装置がボールに内包されていることが好ましいが,少なくとも発光部及び音出力部がボール内に設けられていればよく,その他の内部装置を構成する機器(電源等)はボールの外部に備わっていてもよい。このように,ボールの内部に発光部及び音出力部の両方を設けることで,ボールの周囲に居る観客に対して,ボールを発光させる演出効果だけでなく,そのボール内から音を出力させる演出効果を,より効果的に提供することができる。特に,観客が実際に触れているボールから音が出力されることとなるため,観客の興味をより強く惹き付けることができる。
【0009】
本発明の演出装置において,内部装置は,ボールの動作を検知する動作検知部と,この動作検知部がボールの動作を検知したときに音出力部から音を出力する音響制御部と,をさらに含むことが好ましい。このように,ボールの動作に応じて音が出力されるように構成することで,観客にボールに触れる楽しみを与えることができる。また,演出装置は,動作検知部がボールの動作を検知したときに発光部の発光状態を変化させる発光制御部をさらに含んでいてもよい。このようにすることで,観客がボールに触れたときに,ボールが発光すると同時にそのボールから効果音等が出力されるため,より観客を楽しませることができる。
【0010】
本発明の演出装置において,内部装置は,無線通信部(無線通信機器)をさらに含むことが好ましい。無線通信部は,外部の制御装置又は他の演出装置から送信された発光部又は音出力部の制御情報を受信する。この場合に,発光部又は音出力部は,外部の制御装置や他の演出装置から受信した制御情報に従って発光する。すなわち,演出装置は,外部の制御装置(コンピュータ)を親機としてそれによって発光状態が制御されるものであってもよいし,複数の演出装置の間でピア・トゥ・ピア方式で相互に制御情報を授受するものであってもよい。このように,演出装置に無線通信部を設けておくことで,光と音による演出の自由度が格段に向上する。
【0011】
本発明の演出装置において,外部の制御装置又は他の演出装置から受け取る制御情報は,音出力部から音を出力するタイミングを同期させるための同期信号を含むことが好ましい。例えば,イベント会場内に複数の演出装置が存在する場合に,各ボールが観客によって叩かれたタイミングでそれぞれ独自に音を出力すると,各ボールから出力された音が会場内で混在し,統一性のない聴き心地の悪い音響効果となる。そこで,本発明では,各演出装置が同期信号に基づいて音を出力するようにすることで,各演出装置が統一されたタイミングで音を出力できるようになる。
【0012】
本発明の演出装置において,ボールは,気体を充填するための空気孔が設けられた気体室と,この気体室と隔てられて内部装置が設けられた装置室とを有することが好ましい。特に,装置室は,内部装置を出し入れする開口部以外の部位が気体室によって囲われて居ることが好ましい。このように,装置室と気体室とを分離し,気体室によって装置室の大部分を囲うようにすることで,装置室内に収容された内部装置を,ボールが観客によって叩かされたり突き上げられたりしたときの衝撃から保護することができる。これにより,内部装置の故障を抑制できる。なお,このようなボールの構造は,ボール内の内部装置が音出力部を有さず,発光部のみを有する場合にも有効である。なお,ここにいう「隔てられている」とは,少なくとも内部装置が気体室と装置室とを自由に行き来できないように隔てられている程度を意味し,例えば内部装置と気体室とを隔てる隔壁に通気孔が形成されている場合であっても両者は隔絶されているといえる。
【0013】
本発明の第2の側面は,起き上がり小法師の様な揺動体を利用した演出装置に関する。第1の側面に係る演出装置は,揺動体と内部装置を備える。揺動体は,椀形の底面を有し,内部の底面側に錘部材が設けられている。なお,揺動体の底面は,床や地面との接地面となる。このため,揺動体は,起き上がり小法師の様に,倒れても底面を下側として起き上がるものである。内部装置は,揺動体の内部に設けられた発光部及び音出力部を含む。このため,発光部が発光すると,揺動体(透明又は半透明のもの)がその内部から照明されることとなる。また,音出力部から効果音等が出力されると,揺動体の周囲に居る観客等にその音が聴こえることとなる。なお,内部装置全体が揺動体の内包されていることが好ましいが,少なくとも発光部及び音出力部が揺動体内に備えられていればよく,その他の内部装置を構成する機器(電源等)は揺動体の外部に備わっていてもよい。このような揺動体の内部に発光部及び音出力部を備え付けることで,例えば観客によって押されたときに揺れ動く斬新な演出装置を提供することができる。また,本発明の演出装置は,基本的に揺動体の底面が床や地面に接しているため,屋外での照明演出にも好適に利用することができる。
【0014】
本発明の演出装置において,内部装置は,揺動体の動作を検知する動作検知部と,この動作検知部が揺動体の動作を検知したときに音出力部から音を出力する音響制御部と,をさらに含むことが好ましい。このように,揺動体の動作に応じて音が出力されるように構成することで,観客に揺動体に触れる楽しみを与えることができる。また,演出装置は,動作検知部が揺動体の動作を検知したときに発光部の発光状態を変化させる発光制御部をさらに含んでいてもよい。このようにすることで,観客が揺動体に触れたときに,揺動体が発光すると同時にその揺動体から効果音等が出力されるため,より観客を楽しませることができる。
【0015】
本発明の演出装置において,動作検知部は,揺動体の動作の加速度を測定する加速度センサを含むものであってもよい。この場合に,発光制御部は,揺動体の動作の加速度が一定の閾値を超えたときに発光部の発光状態を変化させることが好ましい。これにより,例えば観客が揺動体を強く押したときのように,揺動体に強い衝撃が加わったときに発光部の発光状態が変化するようになる。また,揺動体が風などによってゆっくりと揺れ動くときには発光状態は変化をさせないように制御することもできる。
【0016】
本発明の演出装置において,動作検知部は,揺動体の傾倒角度を測定する傾きセンサを含むものであってもよい。この場合に,発光制御部は,揺動体の動作の加速度が一定の閾値を超えた場合であっても,揺動体の傾倒角度が一定角度範囲内にあるときには,発光部の発光状態を変化させない(発光状態の変化をキャンセルする)こととしてもよい。例えば,観客が揺動体の上部を強く押した場合,揺動体は観客の押し動作により一回目の衝撃を受け,その後地面に接触したときに二回目の衝撃を受ける場合があると考えられる。そのような場合に,観客による一回目の衝撃を受けたときに発光状態を変化させ,地面との接触による二回目の衝撃を受けたときには発光状態を変化させないといった制御が可能になる。
【0017】
本発明の演出装置において,動作検知部は,揺動体の傾倒角度を測定する傾きセンサを含むものであってもよい。この場合に,発光制御部は,揺動体の傾倒角度に応じて発光部の発光状態を変化させることとしてもよい。これにより,揺動体の揺れ動く動作によって例えば発光部の発光状態(発光色や発光強度)が徐々に移り変わるような照明演出が可能になる。
【0018】
本発明の第3の側面は,演出システムに関する。本発明の装置システムは,第1の側面又は第2の側面に係る演出装置(ボール又は揺動体を備えるもの)と,この演出装置を制御する制御装置とを備える。制御装置は,演出装置に対して,音出力部から出力される音のタイミングを同期させるための同期信号を送信する。演出装置は,動作検知部が揺動体の動作を検知したときに,同期信号に基づいたタイミングで,音出力部から音を出力する。このように,複数の演出装置から音が出力されるタイミングを制御することで,同じ会場内に複数の演出装置が存在する場合でも,各演出装置からの音が混在することを回避し,統一性のある聴き心地の良い音響効果を提供することができる。特に,会場内に設けられた外部スピーカーからBGM(Back Ground Music)を出力し,そのBGMと同じBPM(Beats Per Minute)に合わせて各演出装置から効果音(SE:Sound Effect)が出力されるようにすることで,会場全体で統一感のある音楽を奏でることができる。
【0019】
本発明の第4の側面は,演出方法に関する。本発明の演出方法は,第1の側面又は第2の側面に係る演出装置(ボール又は揺動体を備えるもの)と,この演出装置を制御する制御装置とによって実行される。本発明の演出方法は,制御装置が演出装置に対して音出力部から音を出力するタイミングを同期させるための同期信号を送信する工程と,各演出装置が動作検知部によって揺動体の動作を検知したときに同期信号に基づいたタイミングで音出力部から音を出力する工程とを含む。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば,光と音を利用した演出をより効果的に実施できる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】
図1は,演出システムが備える各種装置を模式的に示している。
【
図2】
図2は,ボール型の演出装置の断面構造を模式的に示している。
【
図3】
図3は,各装置の機能構成を示したブロック図である。
【
図4】
図4は,同期信号を利用して各演出装置から出力される効果音(SE)のタイミングを同期させる方法の一例を示している。
【
図5】
図5は,揺動体型の演出装置の断面構造を模式的に示している。
【
図6】
図6は,揺動体の動作の一例を模式的に示している。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下,図面を用いて本発明を実施するための形態について説明する。本発明は,以下に説明する形態に限定されるものではなく,以下の形態から当業者が自明な範囲で適宜変更したものも含む。
【0023】
図1は,本発明の実施形態に係る演出システム10の全体構成を示している。
図1に示されるように,演出システム10は,複数の演出装置1,制御装置100,複数の無線信号受信機300,及び外部スピーカー400を備える。また,
図2は,照明装置1の断面構造を模式的に示している。
図2に示されるように,本実施形態において,各演出装置1は,中空状のボール2と,このボール2の内部に搭載された内部装置200を備える。ボール2は,内部に空気や窒素などの気体が充填されており,イベント会場内を自由に浮遊(移動)する。
【0024】
制御装置100は,本システム全体の制御を行うコンピュータである。内部装置200は,LED等の発光部240やスピーカーなどの音出力部270がボール2の内部に内包された装置であり,基本的には発光部240や音出力部270を駆動させる制御を行う。内部装置200は,複数のボール2のそれぞれに搭載されている。また,本実施形態において,内部装置200は,自己固有の識別情報を含む近距離無線信号(いわゆるビーコン)を発信しており,無線信号受信機300は,内部装置200からの無線信号を受信する。無線信号受信機300は,内部装置200からの無線信号を受信すると,その無線信号の受信強度を測定する。制御装置100又は無線信号受信機300は,内部装置200からの無線信号の受信強度に基づいて,その無線信号受信機300からその内部装置200までの距離を測定する。これにより,制御装置100において,内部装置200(すなわち演出装置1)の空間における位置座標をリアルタイムに把握することができるようになっている。
【0025】
ボール2と内部装置200を備えた複数の演出装置1及び複数の無線信号受信機300はそれぞれ,イベント会場内に配備される。イベント会場については特に制限がなく,屋内であってもよいし屋外であってもよい。複数の無線信号受信機300位置は固定されており,無線信号受信機300にはそれぞれ固有の識別情報(ID番号)が割り当てられている。無線信号受信機300のイベント会場(空間)における位置座標は制御装置100にとって既知であり,制御装置100は,各無線信号受信機300の位置座標と識別情報とを関連付けて記憶することで,どの装置がどの座標に位置しているかを把握している。
【0026】
図2に示されるように,ボール2は,内部に空気や窒素,ヘリウムなどの気体を含む中空状の球体であり,内部から照射された光が透過するように透明又は半透明の柔軟な弾性材料で形成されている。ボール2を形成する材料の例は,シリコーンや合成ゴムである。ボール2の大きさは特に制限されず,その中に内部装置200を内包できる大きさであればよい。例えばボール2は,直径0.1m~5m又は直径0.5~3mであることが好ましく,特に直径1m~2.5mであることが特に好ましい。本システムにおいて,ボール2は比較的軽量な素材で形成され,イベント会場内における観客の頭上をある程度の滞空時間を維持しながら自由に浮遊できるようなものが推奨される。また,ボール2は,イベント会場の大きさに合わせて,ある程度密集できる程度の数が会場内に配備されていることが好ましい。例えば,ボールBは,直径1m~2.5mのものである場合に,20m
2又は10m
2あたり1つ以上存在することが好ましく,5m
2又は1m
2あたり1つ以上存在することが特に好ましい。なお,内部装置200は,少なくとも発光部240と音出力部270がボール2の内部に設けられていればよく,その他の機器についてはボール外部に設けられていてもよい。ただし,内部装置200の故障や離脱を防止するために,ボール2内に内部装置200全体が包含されることが好ましい。
【0027】
また,
図2に示されるように,ボール2の内部空間は,隔壁3によって気体室4と装置室6とに隔てられている。すなわち,気体室4は,空気や窒素などの空気が充填される部屋であり,ボール2を構成する外膜に空気孔5が設けられている。気体室4内の気体は,この空気孔5を介してボール2の外部に放出することもできる。また,空気孔5を介して,気体室4内に気体を充填できる。空気孔5は,気体室4内の気体が容易には漏洩しないように逆止弁が設けられていることが好ましい。また,隔壁3は,ボール2を構成する外膜からボール2の中心に向かって延出している。ボール2のほぼ中心に発光部240を配置させることができるように,隔壁3は少なくともボール2の中心まで達していることが好ましい。また,装置室6内には,内部装置200が配置される。内部装置200は,例えばCPUや制御回路,各種メモリ,各種センサ等が搭載された基板201と,バッテリー202と,LED等の発光部240と,スピーカー等の音出力部270を備える。装置室6は,このような内部装置200を収容するための十分な空間が設けられており,内部装置200は装置室6を形成する隔壁3等に固定されている。また,装置室6には,内部装置200を出し入れることのできる開口部が形成されており,この開口部は通常の状態では蓋部7によって覆われている。蓋部7は,面ファスナーやボタンなどによってボール2の外膜に取り付けることができるようになっている。蓋部7によって装置室6の開口部を覆うことで,外部からは内部装置200を直接視認しにくくなっている。
【0028】
また,ボール2において,装置室6は,開口部が形成されている部分を除き,その周囲が気体室4によって囲われている。このため,装置室6内の内部装置200は,この気体室4によって外部の衝撃などから保護されていることとなる。ボール2全体の体積(気体室4と装置室6の体積の合計)のうち,気体室4は60%~95%又は80%~95%を占めることが好ましい。このように,気体室4によって装置室6を囲うことで,内部装置200の故障を抑制することができる。
【0029】
図3は,演出システム10を構成する各種装置の機能ブロックを示している。以下では,
図3を参照して各種装置の機能構成について詳しく説明する。
【0030】
制御装置100は,各ボール2内の内部装置200の制御など,本システムの全体的な制御を行うコンピュータである。制御装置100は,演出装置1等が配備されたイベント会場内に設置されていることが好ましいが,例えば制御部110の機能をインターネットに接続されたウェブサーバによって実現することもできる。この意味では,制御装置100は,一台のコンピュータによって構築されているものに限られず,複数のコンピュータ(ローカル端末とウェブサーバ等)に機能を分散して構築されたものであってもよい。
【0031】
制御装置100は,制御部110,記憶部120,無線通信部130,操作部140,及び表示部150を含んで構成されている。制御部110としては,CPU又はGPUといったプロセッサを利用することができる。制御部110は,記憶部120に記憶されているプログラムを読み出し,このプログラムに従って所定の演算を行ったり,他の要素を制御する。記憶部120は,制御部110での演算処理に必要な各種データを記憶している。記憶部120のストレージ機能は,例えばHDD及びSDDといった不揮発性メモリによって実現できる。また,記憶部120は,制御部110による演算処理の途中経過などを書き込む又は読み出すためのメモリとしての機能を有してもよい。記憶部120のメモリ機能は,RAMやDRAMといった揮発性メモリにより実現できる。無線通信部130は,内部装置200との間で情報の送受信を行うための通信インターフェースである。無線通信部130としては,Wi-Fi(登録商標)などの公知の無線通信規格に則った通信を行うための無線LANルータなどを採用することができる。操作部140は,マウス,キーボード,タッチパネル,マイクなどの入力装置により構成され,人による操作情報を制御部110に入力する。表示部150は,液晶ディスプレイや有機ELディスプレイのような表示装置である。表示部150は,操作部140と一体となってタッチパネルディスプレイを構成していてもよい。
【0032】
また,制御装置100の制御部110は,同期信号生成部111,音響制御部112,座標情報取得部113,発光データ生成部114,及び動作情報取得部115を含む。これらの各種機能部は,ソフトウェアによって実現されるものであってもよいし,ハードウェアによって実現されるものであってもよい。
【0033】
同期信号生成部111は,複数の演出装置1のそれぞれに送信する同期信号を生成する。同期信号は,各演出装置1が効果音等の音を出力するタイミングを同期させるための信号であり,各演出装置1に対して同じものが同時に送信される。具体的には,同期信号は,音を出力することのできるタイミングを規定しており,例えば各演出装置1に対して一定のテンポで音を出力することを許容する。同期信号生成部111が生成した同期信号は,無線通信部130を介して,各演出装置1の内部装置200に対して一斉に送信される。
【0034】
音響制御部112は,制御装置100に接続された外部スピーカー400の駆動を制御する。音響制御部112は,記憶部120からBGM等の音コンテンツデータを読み出し,その音コンテンツデータに従って外部スピーカー400を制御してBGM等を出力させる。外部スピーカー400は,イベント会場の一又は複数箇所に配置されており,音響制御部112の制御に従って会場内にBGM等を出力する。また,音響制御部112は,記憶部120から読み出した音コンテンツデータのテンポ(BPM)を抽出して,同期信号生成部111に提供してもよい。この場合,同期信号生成部111は,音コンテンツデータのテンポ(BPM)に対応した同期信号を生成する。例えば,外部スピーカー400から流れるBGMのテンポが100bpmである場合,同期信号生成部111は,BGMと同じテンポ(100bpm)の同期信号を生成することとしてもよいし,またはその1/n倍(n=2以上の整数)の同期信号を生成することとしてもよい。なお,nは,2~4程度であることが好ましい。これにより,外部スピーカー400から出力されるBGMのテンポと,各演出装置1から出力される効果音(SE)のタイミングを一致させることができ,会場全体内で統一感のある音楽を奏でることができる。
【0035】
座標情報取得部112は,複数の演出装置1それぞれの位置座標を取得する。本実施形態では,特定の演出装置1の内部装置200が発信する無線信号を複数の無線信号受信機300によって受信することにより,その内部装置200の位置座標を制御装置200において算出することとしている。ただし,各演出装置1の位置座標は各内部装置200にて算出され,制御装置100の座標情報取得部112に提供されることとしてもよい。発光データ生成部114は,各演出装置1の発光部240を制御するための発光データ(制御情報)を生成する。発光データ生成部114は,記憶部120に予め記憶されている発光データを読み出すこととしてもよいし,発光データをリアルタイムに生成するものであってもよい。また,発光データ生成部114は,各演出装置1の位置座標に応じて,その演出装置1に提供する発光データを決定することとしてもよい。つまり,各演出装置1の位置に応じて,発光部240の発光状態が変わることとなる。動作情報取得部115は,内部装置200との通信によってボール2の動作情報を取得する。ここで得られた動作情報は,発光データ生成部114における発光データの生成に利用することもできる。
【0036】
内部装置200は,制御装置100による制御に従って,ボール22内に内包された発光部240の発光状態や,音出力部270から音を出力するタイミングを制御する。内部装置200は,複数のボール2のそれぞれに搭載されており,制御装置100との間で情報の授受を行うことができるとともに,内部装置200同士でピア・トゥ・ピア方式で相互に通信することも可能である。例えば,ある内部装置200が検知したボール2の動作情報を,他の内部装置200に発信することもできるし,また制御装置100から受信した制御情報(同期信号や発光データ等)をある内部装置200から他の内部装置200へと転送することもできる。基本的には制御装置100から内部装置200に音の同期信号や発光データが提供されることとなるが,内部装置200の間で音の同期信号や発光データを転送し合うことで,これらの制御情報を複数の内部装置200全体に素早く行き渡らせることができる。
【0037】
内部装置200は,制御部210,記憶部220,無線通信部230,発光部240,動作検知部250,無線信号発信部260,及びスピーカー270を含んで構成されている。なお,
図3での図示は省略するが,ボール2の内部には内部装置200に電力を供給するバッテリーが備え付けられている。
【0038】
制御部210は,CPU又はGPUといったプロセッサである。制御部210は,記憶部220に記憶されているプログラムを読み出し,このプログラムに従って所定の演算を行ったり,他の要素を制御したりする。
【0039】
記憶部220は,制御部210での演算処理に必要な各種データや,音出力部(スピーカー)270から出力する音響データ(効果音やBGM等)を記憶している。また,内部装置200の記憶部220には,その内部装置200固有の識別情報(ID情報)が格納されている。記憶部220は,HDD及びSDDといった不揮発性メモリや,RAMやDRAMといった揮発性メモリにより実現できる。
【0040】
無線通信部230は,制御装置100や他の内部装置200との間で情報の送受信を行うための通信インターフェースであり,Wi-Fi(登録商標)やBluetooth(登録商標)などの公知の無線通信規格に則った通信を行う。内部装置200の無線通信部230では,制御装置100から音の同期信号や発光データを受信する。また,無線通信部230は,制御装置100に対してボール2の動作情報などを送信することができる。
【0041】
発光部240は,LEDなどの発光素子で構成されている。例えば,発光部240は,赤色LED,緑色LED,及び青色LEDをそれぞれ一又は複数個ずつ有しおり,多階調の色の光を様々な輝度で発光することできるようになっている。
【0042】
動作検知部250は,ボール2の動作を検知するための各種センサで構成される。動作検知部250の例は,加速度を測定するための加速度センサ,傾倒角度や角速度を測定するための傾きセンサ(例えばジャイロセンサ),あるいはボール2の振動を検知するための振動センサなどを一つ又は複数個組み合わせて用いることができる。
【0043】
無線信号発信部260は,自己の識別情報を含む無線信号を発信しており,この無線信号は,会場内に設置された複数の無線信号受信機300によって受信される。無線信号はBluetooth(登録商標)などの公知の近距離無線通信を行うための規格に則って無線信号発信部260から発信されており,複数の無線信号受信機300がそれを受信することで,無線信号受信機300又は制御装置100は,内部装置200から無線信号受信機300までの距離を測定することができる。
【0044】
音出力部270は,制御部210による制御に従って,記憶部220に記憶されている音響データに基づいて,効果音やBGMなどの音響を出力する。音出力部270としては,公知のスピーカーを適宜用いることができる。
【0045】
また,内部装置200の制御部210は,発光制御部211,通信制御部212,及び音響制御部213を含む。これらの各機能部は,ソフトウェアによって実現されるものであってもよいし,ハードウェアによって実現されるものであってもよい。発光制御部211は,制御装置110から受信した発光データに基づいて,LED等の発光部240の発光状態を制御する。通信制御部212は,動作検知部250が検知した情報を無線通信部230を介して制御装置100や他の内部装置200へ送信したり,記憶部220に記憶されている識別情報を無線信号発信部260を介して発信したりするための制御を行う。音響制御部213は,制御装置100から受け取った同期信号に基づいて音出力部270を制御し,この同期信号に従ったタイミングで,記憶部220に記憶されている効果音やBGMなどの音響データを音出力部270から出力させる。
【0046】
ここで,
図4を参照して,複数の演出装置1(内部装置200)から出力される音を同期させる方法を説明する。
図4に示されるように,制御装置100から各演出装置1に対して一斉に同期信号が送信されている。同期信号は,
図4に示されるように,演出装置1が例えば効果音(SE)を出力するタイミングを規定したものであり,特定のテンポに合ったタイミングでのみ演出装置1は効果音(SE)を出力することを許容されている。例えば,
図4では,等間隔の1拍~8拍を有する同期信号の例を模式的に示している。例えば,第1の演出装置1では,第2拍目と第3拍目の間のタイミングで,動作検知部250がボール2の動作を検知したとする。この場合,第1の演出装置1は,すぐに効果音(SE)を出力するのではなく,同期信号の第3拍目と合致するタイミングで,効果音(SE)を出力する。同様に,第2の演出装置1でも,第2拍目と第3拍目の間のタイミングで動作検知部250がボール2の動作を検知した場合,同期信号の第3拍目と合致するタイミングで効果音(SE)を出力する。図示した例では,第1の演出装置1と第2の演出装置1は,動作検知部250がボール2の動作を検知したタイミングが厳密には異なるものの,上記のように同期信号に従って効果音を出力することにより,両方の演出装置1から効果音が出力されるタイミングをほぼ一致させることができる。このように,各演出装置1に対して同期信号を一斉に送信することにより,各演出装置1から効果音が出力されるタイミングを同期させることができる。
【0047】
次に,制御装置100が,複数の演出装置1(内部装置200)の位置座標を取得する処理の一例について詳しく説明する。屋外又は屋内のイベント会場内には,複数の無線信号受信機300が備え付けられており,各受信機300には固有のID情報(識別)が割り当てられている。また,内部装置200の無線信号発信部260は,固有の識別情報を含む無線信号を常時発信している。各無線信号受信機300は,内部装置200が発信している無線信号を受信する。なお,内部装置200が発信する無線信号は近距離通信用のものであるため,内部装置200の付近(無線信号到達範囲内)に位置する無線信号受信機300のみが,その無線信号を受信することとなる。また,内部装置200からの無線信号を受信した無線信号受信機300は,その無線信号に関する情報を制御装置100に送信する。制御装置100の記憶部120には,各無線信号受信機300のID情報に関連付けて,各受信機300が設置されているイベント空間における座標情報が記憶されている。このため,制御装置100の位置座標取得部112は,無線信号受信機300のID情報を参照することで,内部装置200から無線信号を受信した無線信号受信機300の位置座標を特定することができる。
【0048】
また,無線信号受信機300は,無線信号の受信強度を測定することができる。無線信号受信機300が無線信号の受信強度に関する情報を制御装置100に提供すると,制御装置100の位置情報取得部112は,この受信強度に関する情報に基づいて,無線信号受信機300から内部装置200までの距離を算出することができる。なお,無線信号受信機300に内部装置200までの距離を算出させて,求めた距離に関する情報を制御装置100に提供することとしてもよい。このようにして,制御装置100の位置情報取得部112は,内部装置200から無線信号を受信した無線信号受信機300の座標位置と,その内部装置200から無線信号受信機300までの距離を求める。また,内部装置200が発する無線信号を2つ以上の無線信号受信機300によって同時に受信していれば,位置座標取得部112は,2つ以上の無線信号受信機300の座標位置と,それらの受信機200から内部装置200までの距離に基づいて,三角測量法を利用して,無線信号を発している内部装置200の現在位置の2次元座標(x,y)又は3次元座標(x,y,z)を求めることが可能である。このようにして,制御装置100の位置座標取得部112は,各内部装置200それぞれの現在の座標位置の情報をリアルタイムに取得(算出)できる。また,制御装置100は,各内部装置200の現在の座標位置の情報を,それぞれの内部装置200に送信してもよい。
【0049】
なお,上記説明では,制御装置100が内部装置200の座標位置を演算することとしているが,内部装置200自身に自己の座標位置を求めさせて,求めた座標位置を内部装置200から制御装置100へ送信するということも可能である。例えばボールが屋外で運用されるような場合には,各内部装置200にGPS測定装置を設け,各内部装置において現在位置の2次元座標(x,y)を測定することとしてもよい。
【0050】
発光データ生成部114は,上記のようにして取得した各演出装置1(内部装置200)の現在の座標位置に基づいて,内部装置200の発光部250の発光状態を決定することができる。具体的には,実際の空間における各演出装置1の現在の座標位置に応じて,各演出装置1に対して発光部240の発光状態を制御する発光データを提供する。これにより,各演出装置1の現在の位置情報に応じて,統一性のある照明演出を行うことができる。例えば,イベント会場内を複数の領域に分けて,ある領域に属する演出装置1の色を同系色にしたり,イベント会場内全体でグラデーション的に発光色や発光強度を制御することも可能である。
【0051】
発光データ生成部114は,上記の様にして各演出装置1の発光状態を決定し,その結果に応じて,各各演出装置1に提供する固有の発光データを生成する(あるいは記憶部120から読み出す)。発光データは,一定時間の間,各内部装置200の発光部240の発光状況を制御するためタイムライン形式のデータであることが好ましい。内部装置200は,この発光データに従って,規定された時間の間,発光部240の発光状態を制御することとなる。演出装置1は空間内を移動することも想定されるため,発光データは短時間ごとに小まめに生成されることが好ましい。例えば,1つの発光データで発光状態を制御する時間は,1秒~60秒であることが好ましく,10秒~30秒程度であることが特に好ましい。発光データには,例えば,内部装置200固有のID情報と,発光開始時点を指定する情報,発光状態を指定する情報,及び発光終了時点を指定する情報などが含まれる。このようにして,発光データ生成部114において生成された演出装置1ごとの発光データは,無線通信部130を通じて,各演出装置1の内部装置200へと送信される。
【0052】
各演出装置1の内部装置200は,制御装置100から発光データを受信すると,この発光データに従って,発光制御部211により発光部240の発光状態を制御する。また,例えば,発光制御部211は,一度受信した発光データを記憶部220に記憶し,次の発光データを制御装置100から受信するまで,繰り返し同じ発光データに従った制御を行うこととしてもよい。
【0053】
続いて,
図5及び
図6を参照して,演出装置1の内部装置200を,ボール2に代えて揺動体8の内部に収容した場合の実施形態について説明する。
図5は,揺動体8の内部に内部装置200が内包された演出装置1の実施形態を示している。なお,内部装置200の機能及び構成は,前述したものと同じである。
図5に示されるように,揺動体8は,地面や床に接する底面が椀状(例えば半球形状)となっており,その内部の底面側に錘部材9が取り付けられている。このため,揺動体8は,起き上がり小法師のように,倒れても起き上がるように形成されている。
【0054】
揺動体8は,内部に空気や窒素,ヘリウムなどの気体を含む中空状の球体であり,内部から照射された光が透過するように透明又は半透明の柔軟な弾性材料で形成されている。揺動体8を形成する材料の例は,シリコーンや合成ゴムである。揺動体8の大きさは特に制限されず,その内部に内部装置200の発光部を内包できる大きさであればよい。ただし,揺動体8は,観客が立った状態でその上部に容易に触れることのできる高さを有することが好ましい。揺動体8は,0.5m以上又は1m以上の高さを有することが好ましく,例えばその高さは0.5m~3m又は1m~2mであることが好ましい。
【0055】
本システムにおいて,揺動体8は,底面が椀状(半球形状)に形成されており,その底面側の内部に錘部材9が設けられている。揺動体8は,椀状部より上部の形状は特に制限されない。揺動体8は,
図5に示すように全体として卵形をなしているものであってもよいし,椀状の底面と円筒状の上部から構成されるサンドバックの様な形状をなしているものであってもよい。また,錘部材9の重さや取り付け位置は,揺動体8が倒れても,その底面が地面や床に接した状態で揺動体8全体を起き上がらせることのできるように調整されている。錘部材9の例は,砂袋や,水袋,鉛などの金属部材であるが,その材料は特に制限されない。錘部材9は,揺動体8全体よりも重い重量を有することが好ましい。
【0056】
その他,
図5に示されるように,揺動体8は,上記したボール2と同様に,内部空間が隔壁によって気体室4と装置室6とに隔てられている。すなわち,気体室4は,空気や窒素などの空気が充填される部屋であり,揺動体8を構成する外膜に空気孔5が設けられている。空気孔5は,気体室4内の気体が容易には漏洩しないように逆止弁が設けられていることが好ましい。また,隔壁3は,揺動体8を構成する外膜からボール2の中心に向かって延出している。揺動体8のほぼ中心に発光部240を配置させることができるように,隔壁3は少なくとも揺動体8の中心まで達していることが好ましい。また,装置室6内には,内部装置200が配置される。内部装置200は,例えばCPUや制御回路,各種メモリ,各種センサ等が搭載された基板201と,バッテリー202と,LED等の発光部240と,スピーカー等の音出力部270を備える。内部装置200は装置室6を形成する隔壁3等に固定されている。また,装置室6には,内部装置200を出し入れることのできる開口部が形成されており,この開口部は通常の状態では蓋部7によって覆われている。蓋部7は,面ファスナーやボタンなどによって揺動体8の外膜に取り付けることができるようになっている。蓋部7によって装置室6の開口部を覆うことで,外部からは内部装置200を直接視認しにくくなっている。また,揺動体8において,装置室6は,開口部が形成されている部分を除き,その周囲が気体室4によって囲われている。揺動体8全体の体積(気体室4と装置室6の体積の合計)のうち,気体室4は60%~95%又は80%~95%を占めることが好ましい。
【0057】
本実施形態においても,内部装置200の音響制御部213は,動作検知部250によって揺動体8の動作を検知したときに,音出力部270から効果音等を出力させる。具体的には,前述したとおり,内部装置200の音響制御部213は,動作検知部250が揺動体8の動作を検知したときに,制御装置100から受信した同期信号に基づいたタイミングで,音出力部270から効果音等を出力させる。
【0058】
次に,揺動体8の動作に応じて発光状態を変化させる処理について説明する。内部装置200は,加速度センサや傾きセンサなどからなる動作検知部250を備えており,観客により揺動体8が強く押されたり叩かれたりしたときにその加速度や角速度を測定することで,揺動体8の動作を検知する。動作検知部250が揺動体8の急激な動作(具体的には所定の閾値を超える加速度や角速度の変化量)を検知した場合に,発光制御部211は,発光データによらずに,発光部240の発光状態を変化させることとしてもよい。例えば,発光制御部211は発光部240の発光色などをランダムに変化させてもよいし,動作が検知されている間に発光部240を点滅させるなど,発光状態を適宜変化させることができる。
【0059】
また,制御装置100において生成する発光データに,内部装置200において揺動体8の急激な動作を検知したときに発光部240の発光状態を変化させる方法を規定しておいてもよい。例えば,発光データには,揺動体8の急激な動作を検知したときに発光部240を変化させる色などを予め規定しておくことができる。この場合には,発光制御部211は,揺動体8の急激な動作が検知された場合に,発光データに従って発光部240の発光状態を変化させればよい。
【0060】
また,ある内部装置100において揺動体8の急激な動作が検知されたときに,発光制御部211は,自身の発光部240の発光状態を変化させることに加えて,その動作の検知情報を無線通信部230を介して,他の内部装置100にピア・トゥ・ピア方式で送信することができる。この場合に,検知情報を受け取った他の内部装置100は,その検知情報に基づいて,自身の発光部240の発光状態を変化させる。このようにすることで,ある演出装置1(揺動体8)の動作に連動して,他の演出装置1(揺動体8)の発光状態が変化させることが可能である。また,内部装置100同士をピア・トゥ・ピア方式で接続することで,制御装置100を介さずに内部装置100同士を連動させることができるため,光の変化の連動を迅速化させることができる。
【0061】
図6は,揺動体8の動作の一例を示している。
図6(a)に示されるように,揺動体8は,その底面が椀状となっているため,観客によって押されたり叩かれたりしたとき傾倒することになるが,底面付近に錘部材が配置されているため,その重量によって起き上がることとなる。
【0062】
また,
図6(b)では,揺動体8の傾倒角度を模式的に示している。
図3(6)に示した符号θ1は,水平方向(具体的には地面や床)に対する揺動体8の傾倒角度範囲を示している。角度範囲θ1の例は,10~45度又は0~30度である。例えば揺動体の傾倒角度が角度範囲θ1にあることを内部装置200の動作検知部250(具体的には傾きセンサ)が検知している状態において,動作検知部250(具体的には加速度センサ)が急激な動作を検知した場合であっても,発光部240の発光状態は変化しないように規定されている。すなわち,観客が揺動体8の上部を強く押した場合,揺動体8は観客の押し動作により一回目の衝撃を受け,その後地面に接触したときに二回目の衝撃を受ける場合があると考えられる。そのような場合に,観客による一回目の衝撃を受けたときに発光状態を変化させ,地面との接触による二回目の衝撃を受けたときには発光状態を変化させないために,発光状態の変化をOFFにするための角度範囲θ1を予め規定している。
【0063】
なお,上記のように発光状態の変化をOFFにするための角度範囲θ1に代えて,発光状態の変化をONにするための角度範囲θ2を規定しておいてもよい。すなわち,
図6(b)に示した符号θ2では,延長方向に対する揺動体の傾倒角度範囲を示している。角度範囲θ2の例は,10~45度又は0~30度である。例えば揺動体の傾倒角度が角度範囲θ2にあることを内部装置200の動作検知部250(具体的には傾きセンサ)が検知している状態に限り,動作検知部250(具体的には加速度センサ)が急激な動作を検知した場合ときに,発光部240の発光状態は変化するように規定されている。このように,発光状態を変化させることのできる角度範囲を予め規定しておいてもよい。
【0064】
また,発光部240の発光状態を変化させるときに,同時に,音出力部270から効果音などの音響を出力することとしてもよい。すなわち,動作検知部250において揺動体8の急激な動作(具体的には所定の閾値を超える加速度や角速度の変化量)を検知した場合に,音響制御部213は,記憶部220に記憶されている音響データに基づいて,音出力部270から効果音などの音響を出力させる。揺動体が動作する度に音出力部270から出力される音響は変化してもよいし,一定の音響を出力し続けることとしてもよい。また,揺動体8の傾倒角度に応じてスピーカーから出力される音響が変化してもよい。
【0065】
以上,本願明細書では,本発明の内容を表現するために,図面を参照しながら本発明の実施形態の説明を行った。ただし,本発明は,上記実施形態に限定されるものではなく,本願明細書に記載された事項に基づいて当業者が自明な変更形態や改良形態を包含するものである。
【産業上の利用可能性】
【0066】
本発明は,起き上がり小法師の様な演出装置や,それを利用した照明演出システム,照明演出方法に関する。従って,本発明は,屋外でのイベントや,コンサート,ライブなどエンターテイメント産業において好適に利用し得る。
【符号の説明】
【0067】
1…演出装置 2…ボール
3…隔壁 4…気体室
5…空気孔 6…装置室
7…蓋部 8…揺動体
9…錘部材 10…演出システム
100…制御装置 110…制御部
111…同期信号生成部 112…音響制御部
113…座標情報取得部 114…発光データ生成部
115…動作情報取得部 120…記憶部
130…無線通信部 140…操作部
150…表示部 200…内部装置
210…制御部 211…発光制御部
212…通信制御部 213…音響制御部
220…記憶部 230…無線通信部
240…発光部 250…動作検知部
260…無線信号発信部 270…音出力部
300…無線信号受信機
【手続補正書】
【提出日】2022-02-10
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の演出装置と,
前記演出装置を制御する制御装置と,を備えた演出システムであって,
前記複数の演出装置のそれぞれは,
気体を内包したボールと,
前記ボール内に設けられた音出力部を含む内部装置と,
前記ボールの動作を検知する動作検知部と,
前記音出力部から音を出力する音響制御部と,を含み,
前記制御装置は,前記複数の演出装置に対して,前記音出力部から出力される音のタイミングを同期させるための同期信号を送信するものであり,
前記演出装置の前記音響制御部は,前記動作検知部が前記ボールの動作を検知したときに,前記同期信号に基づいたタイミングで,前記音出力部から音を出力する
演出システム。
【請求項2】
複数の演出装置と,
前記演出装置を制御する制御装置と,を備えた演出システムであって,
前記複数の演出装置のそれぞれは,
椀形の底面を有し,内部の前記底面側に錘部材が設けられた揺動体と,
前記揺動体内に設けられた音出力部を含む内部装置と,
前記揺動体の動作を検知する動作検知部と,
前記音出力部から音を出力する音響制御部と,を含み,
前記制御装置は,前記複数の演出装置に対して,前記音出力部から出力される音のタイミングを同期させるための同期信号を送信するものであり,
前記演出装置の前記音響制御部は,前記動作検知部が前記揺動体の動作を検知したときに,前記同期信号に基づいたタイミングで,前記音出力部から音を出力する
演出システム。
【請求項3】
複数の演出装置と,
前記複数の演出装置を制御する制御装置と,によって実行される
演出方法であって,
前記複数の演出装置のそれぞれは,
気体を内包したボールと,
前記ボール内に設けられた音出力部を含む内部装置と,
前記ボールの動作を検知する動作検知部と,
前記音出力部から音を出力する音響制御部と,を含み,
前記制御装置が,前記複数の演出装置に対して,前記音出力部から音を出力するタイミングを同期させるための同期信号を送信する工程と,
前記演出装置の前記音響制御部が,前記動作検知部が前記ボールの動作を検知したときに,前記同期信号に基づいたタイミングで,前記音出力部から音を出力する工程と,を含む
演出方法。
【請求項4】
複数の演出装置と,
前記複数の演出装置を制御する制御装置と,によって実行される
演出方法であって,
前記複数の演出装置のそれぞれは,
椀形の底面を有し,内部の前記底面側に錘部材が設けられた揺動体と,
前記揺動体内に設けられた音出力部を含む内部装置と,
前記揺動体の動作を検知する動作検知部と,
前記音出力部から音を出力する音響制御部と,を含み,
前記制御装置が,前記複数の演出装置に対して,前記音出力部から音を出力するタイミングを同期させるための同期信号を送信する工程と,
前記演出装置の前記音響制御部が,前記動作検知部が前記揺動体の動作を検知したときに,前記同期信号に基づいたタイミングで,前記音出力部から音を出力する工程と,を含む
演出方法。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は,主に音を利用した演出システム及び演出方法に関する。具体的に説明すると,本発明は,ボールや揺動体の内部に主にスピーカーが備え付けられた複数の演出装置を含むシステム等に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から,コンサートやライブなどのイベントで実施される照明演出として,気体を内包した複数のボール(バルーン)の内部にLEDを備えた発光制御装置を搭載し,各ボール内のLEDを同期させつつそれらの発光色を変化させる方法が提案されている(特許文献1)。例えば,特許文献1には,ボール内の発光制御装置がボールの移動を検知したときにLEDの発光色を変化させることや,あるボールの移動に伴って他の複数のボール内のLEDを一斉に変化させることが開示されている。
【0003】
このようなLEDを備えたボールは,例えばイベント会場内で観客の頭上を自由に浮遊しており,観客がボールを突き上げたり投げたりしたときにその移動の加速度などを検知して発光色がリアルタイムに変化する。このため,観客はそのボールの発光による照明演出を楽しむだけでなく,ボールを自由に動かす楽しみを得ることができる。近年このような発光するボールを利用したインタラクティブな照明演出が人気を博している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで,上記の照明演出システムにおいて,ボールの発光と連動して,効果音などをスピーカーから出力し,光と音を用いた演出を行うことが検討されている。通常,イベント会場内に複数のスピーカーが設置されており,あるボールが観客によって突き上げられたりしたときに,会場内のスピーカーから効果音を出力することが考えられる。しかしながら,会場内のスピーカーから効果音を出力しても,ボールを突き上げた観客は,そのボールの動作と効果音の関連性を認識しづらく,自身の動作に起因して効果音が出力されていることに気づきにくいという問題がある。特に,会場内に多数の観客がいて,ボールの数も複数存在している場合には,上記の問題はより顕著になる。
【0006】
そこで,本発明は,主に音を利用した演出をより効果的に実施できるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の発明者は,上記目的を達成する手段について鋭意検討した結果,複数のボール(又は起き上がり小法師の様な中空状の揺動体)の内部に音出力部を搭載するとともに、同期信号に基づいてこの音出力部から発せられる音のタイミングを同期させることにより,音を利用した演出をより効果的に実施できるようになるという知見を得た。そして,本発明者は,上記知見に基づけばより魅力的な演出を実現できることに想到し,本発明を完成させた。具体的に説明すると,本発明は以下の構成・工程を有する。
【0008】
本発明の第1の側面に係る演出システムは,複数の演出装置と,演出装置を制御する制御装置とを備え,複数の演出装置のそれぞれは,気体を内包したボールと,ボール内に設けられた音出力部を含む内部装置と,ボールの動作を検知する動作検知部と,音出力部から音を出力する音響制御部とを含み,制御装置は,複数の演出装置に対して,音出力部から出力される音のタイミングを同期させるための同期信号を送信するものであり,演出装置の音響制御部は,動作検知部がボールの動作を検知したときに,同期信号に基づいたタイミングで,音出力部から音を出力する。このように,複数の演出装置から音が出力されるタイミングを制御することで,同じ会場内に複数の演出装置が存在する場合でも,各演出装置からの音が混在することを回避し,統一性のある聴き心地の良い音響効果を提供することができる。特に,会場内に設けられた外部スピーカーからBGM(Back Ground Music)を出力し,そのBGMと同じBPM(Beats Per Minute)に合わせて各演出装置から効果音(SE:Sound Effect)が出力されるようにすることで,会場全体で統一感のある音楽を奏でることができる。
【0009】
本発明の第2の側面に係る演出システムは,複数の演出装置と,演出装置を制御する制御装置とを備え,複数の演出装置のそれぞれは,椀形の底面を有し内部の前記底面側に錘部材が設けられた揺動体と,揺動体内に設けられた音出力部を含む内部装置と,揺動体の動作を検知する動作検知部と,音出力部から音を出力する音響制御部とを含み,制御装置は,複数の演出装置に対して,音出力部から出力される音のタイミングを同期させるための同期信号を送信するものであり,演出装置の音響制御部は,動作検知部が揺動体の動作を検知したときに,同期信号に基づいたタイミングで,音出力部から音を出力する。
【0010】
本発明の第3の側面に係る演出方法は,複数の演出装置と,複数の演出装置を制御する制御装置とによって実行される方法であって,複数の演出装置のそれぞれは,気体を内包したボールと,ボール内に設けられた音出力部を含む内部装置と,ボールの動作を検知する動作検知部と,音出力部から音を出力する音響制御部とを含み,制御装置が複数の演出装置に対して音出力部から音を出力するタイミングを同期させるための同期信号を送信する工程と,演出装置の音響制御部が動作検知部がボールの動作を検知したときに同期信号に基づいたタイミングで音出力部から音を出力する工程とを含む。
【0011】
本発明の第4の側面に係る演出方法は,複数の演出装置と,複数の演出装置を制御する制御装置とによって実行される方法であって,複数の演出装置のそれぞれは,椀形の底面を有し内部の底面側に錘部材が設けられた揺動体と,揺動体内に設けられた音出力部を含む内部装置と,揺動体の動作を検知する動作検知部と,音出力部から音を出力する音響制御部とを含み,制御装置が複数の演出装置に対して音出力部から音を出力するタイミングを同期させるための同期信号を送信する工程と,演出装置の音響制御部が動作検知部が揺動体の動作を検知したときに同期信号に基づいたタイミングで音出力部から音を出力する工程とを含む。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば,音を利用した演出をより効果的に実施できる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】
図1は,演出システムが備える各種装置を模式的に示している。
【
図2】
図2は,ボール型の演出装置の断面構造を模式的に示している。
【
図3】
図3は,各装置の機能構成を示したブロック図である。
【
図4】
図4は,同期信号を利用して各演出装置から出力される効果音(SE)のタイミングを同期させる方法の一例を示している。
【
図5】
図5は,揺動体型の演出装置の断面構造を模式的に示している。
【
図6】
図6は,揺動体の動作の一例を模式的に示している。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下,図面を用いて本発明を実施するための形態について説明する。本発明は,以下に説明する形態に限定されるものではなく,以下の形態から当業者が自明な範囲で適宜変更したものも含む。
【0015】
図1は,本発明の実施形態に係る演出システム10の全体構成を示している。
図1に示されるように,演出システム10は,複数の演出装置1,制御装置100,複数の無線信号受信機300,及び外部スピーカー400を備える。また,
図2は,
演出装置1の断面構造を模式的に示している。
図2に示されるように,本実施形態において,各演出装置1は,中空状のボール2と,このボール2の内部に搭載された内部装置200を備える。ボール2は,内部に空気や窒素などの気体が充填されており,イベント会場内を自由に浮遊(移動)する。
【0016】
制御装置100は,本システム全体の制御を行うコンピュータである。内部装置200は,LED等の発光部240やスピーカーなどの音出力部270がボール2の内部に内包された装置であり,基本的には発光部240や音出力部270を駆動させる制御を行う。内部装置200は,複数のボール2のそれぞれに搭載されている。また,本実施形態において,内部装置200は,自己固有の識別情報を含む近距離無線信号(いわゆるビーコン)を発信しており,無線信号受信機300は,内部装置200からの無線信号を受信する。無線信号受信機300は,内部装置200からの無線信号を受信すると,その無線信号の受信強度を測定する。制御装置100又は無線信号受信機300は,内部装置200からの無線信号の受信強度に基づいて,その無線信号受信機300からその内部装置200までの距離を測定する。これにより,制御装置100において,内部装置200(すなわち演出装置1)の空間における位置座標をリアルタイムに把握することができるようになっている。
【0017】
ボール2と内部装置200を備えた複数の演出装置1及び複数の無線信号受信機300はそれぞれ,イベント会場内に配備される。イベント会場については特に制限がなく,屋内であってもよいし屋外であってもよい。複数の無線信号受信機300位置は固定されており,無線信号受信機300にはそれぞれ固有の識別情報(ID番号)が割り当てられている。無線信号受信機300のイベント会場(空間)における位置座標は制御装置100にとって既知であり,制御装置100は,各無線信号受信機300の位置座標と識別情報とを関連付けて記憶することで,どの装置がどの座標に位置しているかを把握している。
【0018】
図2に示されるように,ボール2は,内部に空気や窒素,ヘリウムなどの気体を含む中空状の球体であり,内部から照射された光が透過するように透明又は半透明の柔軟な弾性材料で形成されている。ボール2を形成する材料の例は,シリコーンや合成ゴムである。ボール2の大きさは特に制限されず,その中に内部装置200を内包できる大きさであればよい。例えばボール2は,直径0.1m~5m又は直径0.5~3mであることが好ましく,特に直径1m~2.5mであることが特に好ましい。本システムにおいて,ボール2は比較的軽量な素材で形成され,イベント会場内における観客の頭上をある程度の滞空時間を維持しながら自由に浮遊できるようなものが推奨される。また,ボール2は,イベント会場の大きさに合わせて,ある程度密集できる程度の数が会場内に配備されていることが好ましい。例えば,ボール
2は,直径1m~2.5mのものである場合に,20m
2又は10m
2あたり1つ以上存在することが好ましく,5m
2又は1m
2あたり1つ以上存在することが特に好ましい。なお,内部装置200は,少なくとも発光部240と音出力部270がボール2の内部に設けられていればよく,その他の機器についてはボール外部に設けられていてもよい。ただし,内部装置200の故障や離脱を防止するために,ボール2内に内部装置200全体が包含されることが好ましい。
【0019】
また,
図2に示されるように,ボール2の内部空間は,隔壁3によって気体室4と装置室6とに隔てられている。すなわち,気体室4は,空気や窒素などの空気が充填される部屋であり,ボール2を構成する外膜に空気孔5が設けられている。気体室4内の気体は,この空気孔5を介してボール2の外部に放出することもできる。また,空気孔5を介して,気体室4内に気体を充填できる。空気孔5は,気体室4内の気体が容易には漏洩しないように逆止弁が設けられていることが好ましい。また,隔壁3は,ボール2を構成する外膜からボール2の中心に向かって延出している。ボール2のほぼ中心に発光部240を配置させることができるように,隔壁3は少なくともボール2の中心まで達していることが好ましい。また,装置室6内には,内部装置200が配置される。内部装置200は,例えばCPUや制御回路,各種メモリ,各種センサ等が搭載された基板201と,バッテリー202と,LED等の発光部240と,スピーカー等の音出力部270を備える。装置室6は,このような内部装置200を収容するための十分な空間が設けられており,内部装置200は装置室6を形成する隔壁3等に固定されている。また,装置室6には,内部装置200を出し入れることのできる開口部が形成されており,この開口部は通常の状態では蓋部7によって覆われている。蓋部7は,面ファスナーやボタンなどによってボール2の外膜に取り付けることができるようになっている。蓋部7によって装置室6の開口部を覆うことで,外部からは内部装置200を直接視認しにくくなっている。
【0020】
また,ボール2において,装置室6は,開口部が形成されている部分を除き,その周囲が気体室4によって囲われている。このため,装置室6内の内部装置200は,この気体室4によって外部の衝撃などから保護されていることとなる。ボール2全体の体積(気体室4と装置室6の体積の合計)のうち,気体室4は60%~95%又は80%~95%を占めることが好ましい。このように,気体室4によって装置室6を囲うことで,内部装置200の故障を抑制することができる。
【0021】
図3は,演出システム10を構成する各種装置の機能ブロックを示している。以下では,
図3を参照して各種装置の機能構成について詳しく説明する。
【0022】
制御装置100は,各ボール2内の内部装置200の制御など,本システムの全体的な制御を行うコンピュータである。制御装置100は,演出装置1等が配備されたイベント会場内に設置されていることが好ましいが,例えば制御部110の機能をインターネットに接続されたウェブサーバによって実現することもできる。この意味では,制御装置100は,一台のコンピュータによって構築されているものに限られず,複数のコンピュータ(ローカル端末とウェブサーバ等)に機能を分散して構築されたものであってもよい。
【0023】
制御装置100は,制御部110,記憶部120,無線通信部130,操作部140,及び表示部150を含んで構成されている。制御部110としては,CPU又はGPUといったプロセッサを利用することができる。制御部110は,記憶部120に記憶されているプログラムを読み出し,このプログラムに従って所定の演算を行ったり,他の要素を制御する。記憶部120は,制御部110での演算処理に必要な各種データを記憶している。記憶部120のストレージ機能は,例えばHDD及びSDDといった不揮発性メモリによって実現できる。また,記憶部120は,制御部110による演算処理の途中経過などを書き込む又は読み出すためのメモリとしての機能を有してもよい。記憶部120のメモリ機能は,RAMやDRAMといった揮発性メモリにより実現できる。無線通信部130は,内部装置200との間で情報の送受信を行うための通信インターフェースである。無線通信部130としては,Wi-Fi(登録商標)などの公知の無線通信規格に則った通信を行うための無線LANルータなどを採用することができる。操作部140は,マウス,キーボード,タッチパネル,マイクなどの入力装置により構成され,人による操作情報を制御部110に入力する。表示部150は,液晶ディスプレイや有機ELディスプレイのような表示装置である。表示部150は,操作部140と一体となってタッチパネルディスプレイを構成していてもよい。
【0024】
また,制御装置100の制御部110は,同期信号生成部111,音響制御部112,座標情報取得部113,発光データ生成部114,及び動作情報取得部115を含む。これらの各種機能部は,ソフトウェアによって実現されるものであってもよいし,ハードウェアによって実現されるものであってもよい。
【0025】
同期信号生成部111は,複数の演出装置1のそれぞれに送信する同期信号を生成する。同期信号は,各演出装置1が効果音等の音を出力するタイミングを同期させるための信号であり,各演出装置1に対して同じものが同時に送信される。具体的には,同期信号は,音を出力することのできるタイミングを規定しており,例えば各演出装置1に対して一定のテンポで音を出力することを許容する。同期信号生成部111が生成した同期信号は,無線通信部130を介して,各演出装置1の内部装置200に対して一斉に送信される。
【0026】
音響制御部112は,制御装置100に接続された外部スピーカー400の駆動を制御する。音響制御部112は,記憶部120からBGM等の音コンテンツデータを読み出し,その音コンテンツデータに従って外部スピーカー400を制御してBGM等を出力させる。外部スピーカー400は,イベント会場の一又は複数箇所に配置されており,音響制御部112の制御に従って会場内にBGM等を出力する。また,音響制御部112は,記憶部120から読み出した音コンテンツデータのテンポ(BPM)を抽出して,同期信号生成部111に提供してもよい。この場合,同期信号生成部111は,音コンテンツデータのテンポ(BPM)に対応した同期信号を生成する。例えば,外部スピーカー400から流れるBGMのテンポが100bpmである場合,同期信号生成部111は,BGMと同じテンポ(100bpm)の同期信号を生成することとしてもよいし,またはその1/n倍(n=2以上の整数)の同期信号を生成することとしてもよい。なお,nは,2~4程度であることが好ましい。これにより,外部スピーカー400から出力されるBGMのテンポと,各演出装置1から出力される効果音(SE)のタイミングを一致させることができ,会場全体内で統一感のある音楽を奏でることができる。
【0027】
座標情報取得部113は,複数の演出装置1それぞれの位置座標を取得する。本実施形態では,特定の演出装置1の内部装置200が発信する無線信号を複数の無線信号受信機300によって受信することにより,その内部装置200の位置座標を制御装置100において算出することとしている。ただし,各演出装置1の位置座標は各内部装置200にて算出され,制御装置100の座標情報取得部113に提供されることとしてもよい。発光データ生成部114は,各演出装置1の発光部240を制御するための発光データ(制御情報)を生成する。発光データ生成部114は,記憶部120に予め記憶されている発光データを読み出すこととしてもよいし,発光データをリアルタイムに生成するものであってもよい。また,発光データ生成部114は,各演出装置1の位置座標に応じて,その演出装置1に提供する発光データを決定することとしてもよい。つまり,各演出装置1の位置に応じて,発光部240の発光状態が変わることとなる。動作情報取得部115は,内部装置200との通信によってボール2の動作情報を取得する。ここで得られた動作情報は,発光データ生成部114における発光データの生成に利用することもできる。
【0028】
内部装置200は,制御装置100による制御に従って,ボール2内に内包された発光部240の発光状態や,音出力部270から音を出力するタイミングを制御する。内部装置200は,複数のボール2のそれぞれに搭載されており,制御装置100との間で情報の授受を行うことができるとともに,内部装置200同士でピア・トゥ・ピア方式で相互に通信することも可能である。例えば,ある内部装置200が検知したボール2の動作情報を,他の内部装置200に発信することもできるし,また制御装置100から受信した制御情報(同期信号や発光データ等)をある内部装置200から他の内部装置200へと転送することもできる。基本的には制御装置100から内部装置200に音の同期信号や発光データが提供されることとなるが,内部装置200の間で音の同期信号や発光データを転送し合うことで,これらの制御情報を複数の内部装置200全体に素早く行き渡らせることができる。
【0029】
内部装置200は,制御部210,記憶部220,無線通信部230,発光部240,動作検知部250,無線信号発信部260,及びスピーカー270を含んで構成されている。なお,
図3での図示は省略するが,ボール2の内部には内部装置200に電力を供給するバッテリーが備え付けられている。
【0030】
制御部210は,CPU又はGPUといったプロセッサである。制御部210は,記憶部220に記憶されているプログラムを読み出し,このプログラムに従って所定の演算を行ったり,他の要素を制御したりする。
【0031】
記憶部220は,制御部210での演算処理に必要な各種データや,音出力部(スピーカー)270から出力する音響データ(効果音やBGM等)を記憶している。また,内部装置200の記憶部220には,その内部装置200固有の識別情報(ID情報)が格納されている。記憶部220は,HDD及びSDDといった不揮発性メモリや,RAMやDRAMといった揮発性メモリにより実現できる。
【0032】
無線通信部230は,制御装置100や他の内部装置200との間で情報の送受信を行うための通信インターフェースであり,Wi-Fi(登録商標)やBluetooth(登録商標)などの公知の無線通信規格に則った通信を行う。内部装置200の無線通信部230では,制御装置100から音の同期信号や発光データを受信する。また,無線通信部230は,制御装置100に対してボール2の動作情報などを送信することができる。
【0033】
発光部240は,LEDなどの発光素子で構成されている。例えば,発光部240は,赤色LED,緑色LED,及び青色LEDをそれぞれ一又は複数個ずつ有しおり,多階調の色の光を様々な輝度で発光することできるようになっている。
【0034】
動作検知部250は,ボール2の動作を検知するための各種センサで構成される。動作検知部250の例は,加速度を測定するための加速度センサ,傾倒角度や角速度を測定するための傾きセンサ(例えばジャイロセンサ),あるいはボール2の振動を検知するための振動センサなどを一つ又は複数個組み合わせて用いることができる。
【0035】
無線信号発信部260は,自己の識別情報を含む無線信号を発信しており,この無線信号は,会場内に設置された複数の無線信号受信機300によって受信される。無線信号はBluetooth(登録商標)などの公知の近距離無線通信を行うための規格に則って無線信号発信部260から発信されており,複数の無線信号受信機300がそれを受信することで,無線信号受信機300又は制御装置100は,内部装置200から無線信号受信機300までの距離を測定することができる。
【0036】
音出力部270は,制御部210による制御に従って,記憶部220に記憶されている音響データに基づいて,効果音やBGMなどの音響を出力する。音出力部270としては,公知のスピーカーを適宜用いることができる。
【0037】
また,内部装置200の制御部210は,発光制御部211,通信制御部212,及び音響制御部213を含む。これらの各機能部は,ソフトウェアによって実現されるものであってもよいし,ハードウェアによって実現されるものであってもよい。発光制御部211は,制御装置100から受信した発光データに基づいて,LED等の発光部240の発光状態を制御する。通信制御部212は,動作検知部250が検知した情報を無線通信部230を介して制御装置100や他の内部装置200へ送信したり,記憶部220に記憶されている識別情報を無線信号発信部260を介して発信したりするための制御を行う。音響制御部213は,制御装置100から受け取った同期信号に基づいて音出力部270を制御し,この同期信号に従ったタイミングで,記憶部220に記憶されている効果音やBGMなどの音響データを音出力部270から出力させる。
【0038】
ここで,
図4を参照して,複数の演出装置1(内部装置200)から出力される音を同期させる方法を説明する。
図4に示されるように,制御装置100から各演出装置1に対して一斉に同期信号が送信されている。同期信号は,
図4に示されるように,演出装置1が例えば効果音(SE)を出力するタイミングを規定したものであり,特定のテンポに合ったタイミングでのみ演出装置1は効果音(SE)を出力することを許容されている。例えば,
図4では,等間隔の1拍~8拍を有する同期信号の例を模式的に示している。例えば,第1の演出装置1では,第2拍目と第3拍目の間のタイミングで,動作検知部250がボール2の動作を検知したとする。この場合,第1の演出装置1は,すぐに効果音(SE)を出力するのではなく,同期信号の第3拍目と合致するタイミングで,効果音(SE)を出力する。同様に,第2の演出装置1でも,第2拍目と第3拍目の間のタイミングで動作検知部250がボール2の動作を検知した場合,同期信号の第3拍目と合致するタイミングで効果音(SE)を出力する。図示した例では,第1の演出装置1と第2の演出装置1は,動作検知部250がボール2の動作を検知したタイミングが厳密には異なるものの,上記のように同期信号に従って効果音を出力することにより,両方の演出装置1から効果音が出力されるタイミングをほぼ一致させることができる。このように,各演出装置1に対して同期信号を一斉に送信することにより,各演出装置1から効果音が出力されるタイミングを同期させることができる。
【0039】
次に,制御装置100が,複数の演出装置1(内部装置200)の位置座標を取得する処理の一例について詳しく説明する。屋外又は屋内のイベント会場内には,複数の無線信号受信機300が備え付けられており,各受信機300には固有のID情報(識別)が割り当てられている。また,内部装置200の無線信号発信部260は,固有の識別情報を含む無線信号を常時発信している。各無線信号受信機300は,内部装置200が発信している無線信号を受信する。なお,内部装置200が発信する無線信号は近距離通信用のものであるため,内部装置200の付近(無線信号到達範囲内)に位置する無線信号受信機300のみが,その無線信号を受信することとなる。また,内部装置200からの無線信号を受信した無線信号受信機300は,その無線信号に関する情報を制御装置100に送信する。制御装置100の記憶部120には,各無線信号受信機300のID情報に関連付けて,各受信機300が設置されているイベント空間における座標情報が記憶されている。このため,制御装置100の位置座標取得部113は,無線信号受信機300のID情報を参照することで,内部装置200から無線信号を受信した無線信号受信機300の位置座標を特定することができる。
【0040】
また,無線信号受信機300は,無線信号の受信強度を測定することができる。無線信号受信機300が無線信号の受信強度に関する情報を制御装置100に提供すると,制御装置100の位置情報取得部113は,この受信強度に関する情報に基づいて,無線信号受信機300から内部装置200までの距離を算出することができる。なお,無線信号受信機300に内部装置200までの距離を算出させて,求めた距離に関する情報を制御装置100に提供することとしてもよい。このようにして,制御装置100の位置情報取得部113は,内部装置200から無線信号を受信した無線信号受信機300の座標位置と,その内部装置200から無線信号受信機300までの距離を求める。また,内部装置200が発する無線信号を2つ以上の無線信号受信機300によって同時に受信していれば,位置座標取得部113は,2つ以上の無線信号受信機300の座標位置と,それらの受信機300から内部装置200までの距離に基づいて,三角測量法を利用して,無線信号を発している内部装置200の現在位置の2次元座標(x,y)又は3次元座標(x,y,z)を求めることが可能である。このようにして,制御装置100の位置座標取得部113は,各内部装置200それぞれの現在の座標位置の情報をリアルタイムに取得(算出)できる。また,制御装置100は,各内部装置200の現在の座標位置の情報を,それぞれの内部装置200に送信してもよい。
【0041】
なお,上記説明では,制御装置100が内部装置200の座標位置を演算することとしているが,内部装置200自身に自己の座標位置を求めさせて,求めた座標位置を内部装置200から制御装置100へ送信するということも可能である。例えばボールが屋外で運用されるような場合には,各内部装置200にGPS測定装置を設け,各内部装置において現在位置の2次元座標(x,y)を測定することとしてもよい。
【0042】
発光データ生成部114は,上記のようにして取得した各演出装置1(内部装置200)の現在の座標位置に基づいて,内部装置200の発光部240の発光状態を決定することができる。具体的には,実際の空間における各演出装置1の現在の座標位置に応じて,各演出装置1に対して発光部240の発光状態を制御する発光データを提供する。これにより,各演出装置1の現在の位置情報に応じて,統一性のある照明演出を行うことができる。例えば,イベント会場内を複数の領域に分けて,ある領域に属する演出装置1の色を同系色にしたり,イベント会場内全体でグラデーション的に発光色や発光強度を制御することも可能である。
【0043】
発光データ生成部114は,上記の様にして各演出装置1の発光状態を決定し,その結果に応じて,各各演出装置1に提供する固有の発光データを生成する(あるいは記憶部120から読み出す)。発光データは,一定時間の間,各内部装置200の発光部240の発光状況を制御するためタイムライン形式のデータであることが好ましい。内部装置200は,この発光データに従って,規定された時間の間,発光部240の発光状態を制御することとなる。演出装置1は空間内を移動することも想定されるため,発光データは短時間ごとに小まめに生成されることが好ましい。例えば,1つの発光データで発光状態を制御する時間は,1秒~60秒であることが好ましく,10秒~30秒程度であることが特に好ましい。発光データには,例えば,内部装置200固有のID情報と,発光開始時点を指定する情報,発光状態を指定する情報,及び発光終了時点を指定する情報などが含まれる。このようにして,発光データ生成部114において生成された演出装置1ごとの発光データは,無線通信部130を通じて,各演出装置1の内部装置200へと送信される。
【0044】
各演出装置1の内部装置200は,制御装置100から発光データを受信すると,この発光データに従って,発光制御部211により発光部240の発光状態を制御する。また,例えば,発光制御部211は,一度受信した発光データを記憶部220に記憶し,次の発光データを制御装置100から受信するまで,繰り返し同じ発光データに従った制御を行うこととしてもよい。
【0045】
続いて,
図5及び
図6を参照して,演出装置1の内部装置200を,ボール2に代えて揺動体8の内部に収容した場合の実施形態について説明する。
図5は,揺動体8の内部に内部装置200が内包された演出装置1の実施形態を示している。なお,内部装置200の機能及び構成は,前述したものと同じである。
図5に示されるように,揺動体8は,地面や床に接する底面が椀状(例えば半球形状)となっており,その内部の底面側に錘部材9が取り付けられている。このため,揺動体8は,起き上がり小法師のように,倒れても起き上がるように形成されている。
【0046】
揺動体8は,内部に空気や窒素,ヘリウムなどの気体を含む中空状の球体であり,内部から照射された光が透過するように透明又は半透明の柔軟な弾性材料で形成されている。揺動体8を形成する材料の例は,シリコーンや合成ゴムである。揺動体8の大きさは特に制限されず,その内部に内部装置200の発光部を内包できる大きさであればよい。ただし,揺動体8は,観客が立った状態でその上部に容易に触れることのできる高さを有することが好ましい。揺動体8は,0.5m以上又は1m以上の高さを有することが好ましく,例えばその高さは0.5m~3m又は1m~2mであることが好ましい。
【0047】
本システムにおいて,揺動体8は,底面が椀状(半球形状)に形成されており,その底面側の内部に錘部材9が設けられている。揺動体8は,椀状部より上部の形状は特に制限されない。揺動体8は,
図5に示すように全体として卵形をなしているものであってもよいし,椀状の底面と円筒状の上部から構成されるサンドバックの様な形状をなしているものであってもよい。また,錘部材9の重さや取り付け位置は,揺動体8が倒れても,その底面が地面や床に接した状態で揺動体8全体を起き上がらせることのできるように調整されている。錘部材9の例は,砂袋や,水袋,鉛などの金属部材であるが,その材料は特に制限されない。錘部材9は,揺動体8全体よりも重い重量を有することが好ましい。
【0048】
その他,
図5に示されるように,揺動体8は,上記したボール2と同様に,内部空間が隔壁によって気体室4と装置室6とに隔てられている。すなわち,気体室4は,空気や窒素などの空気が充填される部屋であり,揺動体8を構成する外膜に空気孔5が設けられている。空気孔5は,気体室4内の気体が容易には漏洩しないように逆止弁が設けられていることが好ましい。また,隔壁3は,揺動体8を構成する外膜から
揺動体8の中心に向かって延出している。揺動体8のほぼ中心に発光部240を配置させることができるように,隔壁3は少なくとも揺動体8の中心まで達していることが好ましい。また,装置室6内には,内部装置200が配置される。内部装置200は,例えばCPUや制御回路,各種メモリ,各種センサ等が搭載された基板201と,バッテリー202と,LED等の発光部240と,スピーカー等の音出力部270を備える。内部装置200は装置室6を形成する隔壁3等に固定されている。また,装置室6には,内部装置200を出し入れることのできる開口部が形成されており,この開口部は通常の状態では蓋部7によって覆われている。蓋部7は,面ファスナーやボタンなどによって揺動体8の外膜に取り付けることができるようになっている。蓋部7によって装置室6の開口部を覆うことで,外部からは内部装置200を直接視認しにくくなっている。また,揺動体8において,装置室6は,開口部が形成されている部分を除き,その周囲が気体室4によって囲われている。揺動体8全体の体積(気体室4と装置室6の体積の合計)のうち,気体室4は60%~95%又は80%~95%を占めることが好ましい。
【0049】
本実施形態においても,内部装置200の音響制御部213は,動作検知部250によって揺動体8の動作を検知したときに,音出力部270から効果音等を出力させる。具体的には,前述したとおり,内部装置200の音響制御部213は,動作検知部250が揺動体8の動作を検知したときに,制御装置100から受信した同期信号に基づいたタイミングで,音出力部270から効果音等を出力させる。
【0050】
次に,揺動体8の動作に応じて発光状態を変化させる処理について説明する。内部装置200は,加速度センサや傾きセンサなどからなる動作検知部250を備えており,観客により揺動体8が強く押されたり叩かれたりしたときにその加速度や角速度を測定することで,揺動体8の動作を検知する。動作検知部250が揺動体8の急激な動作(具体的には所定の閾値を超える加速度や角速度の変化量)を検知した場合に,発光制御部211は,発光データによらずに,発光部240の発光状態を変化させることとしてもよい。例えば,発光制御部211は発光部240の発光色などをランダムに変化させてもよいし,動作が検知されている間に発光部240を点滅させるなど,発光状態を適宜変化させることができる。
【0051】
また,制御装置100において生成する発光データに,内部装置200において揺動体8の急激な動作を検知したときに発光部240の発光状態を変化させる方法を規定しておいてもよい。例えば,発光データには,揺動体8の急激な動作を検知したときに発光部240を変化させる色などを予め規定しておくことができる。この場合には,発光制御部211は,揺動体8の急激な動作が検知された場合に,発光データに従って発光部240の発光状態を変化させればよい。
【0052】
また,ある内部装置200において揺動体8の急激な動作が検知されたときに,発光制御部211は,自身の発光部240の発光状態を変化させることに加えて,その動作の検知情報を無線通信部230を介して,他の内部装置200にピア・トゥ・ピア方式で送信することができる。この場合に,検知情報を受け取った他の内部装置200は,その検知情報に基づいて,自身の発光部240の発光状態を変化させる。このようにすることで,ある演出装置1(揺動体8)の動作に連動して,他の演出装置1(揺動体8)の発光状態が変化させることが可能である。また,内部装置200同士をピア・トゥ・ピア方式で接続することで,制御装置100を介さずに内部装置200同士を連動させることができるため,光の変化の連動を迅速化させることができる。
【0053】
図6は,揺動体8の動作の一例を示している。
図6(a)に示されるように,揺動体8は,その底面が椀状となっているため,観客によって押されたり叩かれたりしたとき傾倒することになるが,底面付近に錘部材が配置されているため,その重量によって起き上がることとなる。
【0054】
また,
図6(b)では,揺動体8の傾倒角度を模式的に示している。図
6(
b)に示した符号θ1は,水平方向(具体的には地面や床)に対する揺動体8の傾倒角度範囲を示している。角度範囲θ1の例は,10~45度又は0~30度である。例えば揺動体の傾倒角度が角度範囲θ1にあることを内部装置200の動作検知部250(具体的には傾きセンサ)が検知している状態において,動作検知部250(具体的には加速度センサ)が急激な動作を検知した場合であっても,発光部240の発光状態は変化しないように規定されている。すなわち,観客が揺動体8の上部を強く押した場合,揺動体8は観客の押し動作により一回目の衝撃を受け,その後地面に接触したときに二回目の衝撃を受ける場合があると考えられる。そのような場合に,観客による一回目の衝撃を受けたときに発光状態を変化させ,地面との接触による二回目の衝撃を受けたときには発光状態を変化させないために,発光状態の変化をOFFにするための角度範囲θ1を予め規定している。
【0055】
なお,上記のように発光状態の変化をOFFにするための角度範囲θ1に代えて,発光状態の変化をONにするための角度範囲θ2を規定しておいてもよい。すなわち,
図6(b)に示した符号θ2では,延長方向に対する揺動体の傾倒角度範囲を示している。角度範囲θ2の例は,10~45度又は0~30度である。例えば揺動体の傾倒角度が角度範囲θ2にあることを内部装置200の動作検知部250(具体的には傾きセンサ)が検知している状態に限り,動作検知部250(具体的には加速度センサ)が急激な動作を検知した場合ときに,発光部240の発光状態は変化するように規定されている。このように,発光状態を変化させることのできる角度範囲を予め規定しておいてもよい。
【0056】
また,発光部240の発光状態を変化させるときに,同時に,音出力部270から効果音などの音響を出力することとしてもよい。すなわち,動作検知部250において揺動体8の急激な動作(具体的には所定の閾値を超える加速度や角速度の変化量)を検知した場合に,音響制御部213は,記憶部220に記憶されている音響データに基づいて,音出力部270から効果音などの音響を出力させる。揺動体が動作する度に音出力部270から出力される音響は変化してもよいし,一定の音響を出力し続けることとしてもよい。また,揺動体8の傾倒角度に応じてスピーカーから出力される音響が変化してもよい。
【0057】
以上,本願明細書では,本発明の内容を表現するために,図面を参照しながら本発明の実施形態の説明を行った。ただし,本発明は,上記実施形態に限定されるものではなく,本願明細書に記載された事項に基づいて当業者が自明な変更形態や改良形態を包含するものである。
【産業上の利用可能性】
【0058】
本発明は,起き上がり小法師の様な演出装置や,それを利用した演出システム,演出方法に関する。従って,本発明は,屋外でのイベントや,コンサート,ライブなどエンターテイメント産業において好適に利用し得る。
【符号の説明】
【0059】
1…演出装置 2…ボール
3…隔壁 4…気体室
5…空気孔 6…装置室
7…蓋部 8…揺動体
9…錘部材 10…演出システム
100…制御装置 110…制御部
111…同期信号生成部 112…音響制御部
113…座標情報取得部 114…発光データ生成部
115…動作情報取得部 120…記憶部
130…無線通信部 140…操作部
150…表示部 200…内部装置
210…制御部 211…発光制御部
212…通信制御部 213…音響制御部
220…記憶部 230…無線通信部
240…発光部 250…動作検知部
260…無線信号発信部 270…音出力部
300…無線信号受信機