(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022065071
(43)【公開日】2022-04-26
(54)【発明の名称】情報表示装置及び情報表示方法
(51)【国際特許分類】
G08G 3/02 20060101AFI20220419BHJP
【FI】
G08G3/02 A
【審査請求】有
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022019814
(22)【出願日】2022-02-10
(62)【分割の表示】P 2020173114の分割
【原出願日】2015-09-08
(71)【出願人】
【識別番号】000166247
【氏名又は名称】古野電気株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100204825
【弁理士】
【氏名又は名称】渡辺 健一
(72)【発明者】
【氏名】中濱 正洋
(72)【発明者】
【氏名】久保 孝嗣
(57)【要約】 (修正有)
【課題】表示された情報に基づいて危険回避のための操船を容易かつ正確に行うことができる情報表示装置を提供する。
【解決手段】レーダ映像表示装置は、操作部と、最接近位置推定部と、表示データ生成部と、を備える。操作部は、距離を設定する。最接近位置推定部は、他船Ea,Ebの航行情報及び自船Sの航行情報に基づいて、他船Ea,Ebと自船Sとが最接近する時点における他船Ea,Eb及び自船Sのそれぞれの最接近位置Pa,Pb,Psa,Psbを推定する。表示データ生成部は、最接近位置推定部により推定された他船Ea,Ebの最接近位置Pa,Pbと、自船Sの最接近位置を中心とした危険領域Aa,Abと、他船Ea,Eb及び自船Sの現在位置と、を表示する。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
距離を設定する距離設定部と、
他船の航行情報及び自船の航行情報に基づいて、他船と自船とが最接近する時点における他船の針路上の他船の最接近位置、及び自船の針路上の自船の最接近位置のそれぞれを推定する最接近位置推定部と、
前記最接近位置推定部により推定された複数の他船の前記最接近位置と、複数の他船に対する自船の針路上の自船の前記最接近位置のそれぞれを中心とする前記距離設定部で設定された距離に基づく危険領域のそれぞれと、複数の他船及び自船の現在位置と、
を表示可能な表示制御部と、
を備えることを特徴とする情報表示装置。
【請求項2】
請求項1に記載の情報表示装置であって、
前記表示制御部は、他船及び自船のそれぞれが前記最接近位置に到達するまでの推定所要時間である最接近時間を表示することを特徴とする情報表示装置。
【請求項3】
請求項2に記載の情報表示装置であって、
前記表示制御部は、前記最接近時間を、当該最接近時間に対応する前記最接近位置の近傍に表示させることを特徴とする情報表示装置。
【請求項4】
請求項1から3までの何れか一項に記載の情報表示装置であって、
前記表示制御部は、他船の前記現在位置と前記最接近位置とを繋いだ線を、他船の予測航跡として表示することを特徴とする情報表示装置。
【請求項5】
請求項1から4までの何れか一項に記載の情報表示装置であって、
自船の前記最接近位置における前記危険領域及び他船の前記最接近位置は、それらが互いに重なる場合に、前記表示制御部によって表示されることを特徴とする情報表示装置。
【請求項6】
請求項1から4までの何れか一項に記載の情報表示装置であって、
自船の前記最接近位置における前記危険領域及び他船の前記最接近位置は、自船及び他船のそれぞれが前記最接近位置に到達するまでの推定所要時間である最接近時間が所定時間以下である場合に、前記表示制御部によって表示されることを特徴とする情報表示装置。
【請求項7】
請求項1から6までの何れか一項に記載の情報表示装置であって、
前記表示制御部により表示された他船を目標船として選択できる目標船選択部を備え、
前記表示制御部は、前記目標船選択部を介して選択された前記目標船に対応する、自船の前記最接近位置における前記危険領域及び前記目標船の前記最接近位置を強調して表示することを特徴とする情報表示装置。
【請求項8】
請求項1から6までの何れか一項に記載の情報表示装置であって、
前記表示制御部に表示された他船を目標船として選択できる目標船選択部を備え、
前記表示制御部は、表示された複数の他船のうち、前記目標船選択部を介して選択された前記目標船だけについて、自船の前記最接近位置における前記危険領域及び前記目標船の前記最接近位置を表示することを特徴とする情報表示装置。
【請求項9】
請求項1から8までの何れか一項に記載の情報表示装置であって、
前記表示制御部は、他船及び自船の少なくとも何れかについて、前記最接近位置の時間の経過に応じた軌跡を表示することを特徴とする情報表示装置。
【請求項10】
請求項1から9までの何れか一項に記載の情報表示装置であって、
前記表示制御部は、異なる他船に対して、自船の前記最接近位置における前記危険領域及び他船の前記最接近位置を異なる態様で表示することを特徴とする情報表示装置。
【請求項11】
請求項1から10までの何れか一項に記載の情報表示装置であって、
前記表示制御部は、異なる危険度を有する他船に対して、自船の前記最接近位置における前記危険領域及び他船の前記最接近位置のうち少なくとも何れかを、異なる態様で表示することを特徴とする情報表示装置。
【請求項12】
コンピュータが、他船の航行情報及び自船の航行情報に基づいて、他船と自船とが最接近する時点における他船の針路上の他船の最接近位置、及び自船の針路上の自船の最接近位置のそれぞれを推定する最接近位置推定工程と、
コンピュータが、自船の前記最接近位置を中心として、設定された領域距離に基づく危険領域を生成する危険領域生成工程と、
コンピュータが、前記最接近位置推定工程により推定された他船及び自船の前記最接近位置、前記危険領域生成工程により生成された前記危険領域、並びに他船及び自船の現在位置を表示する表示工程と、
を含むことを特徴とする情報表示方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、主として、船舶用情報表示装置に関する。詳細には、自船と他船との衝突を回避するための情報の表示に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、レーダの映像から船舶を追尾し、その動きベクトルを求めて表示するとともに、自船と目標船(他船)との衝突危険度や衝突危険範囲を求める船舶用航行支援装置が知られている。特許文献1、2及び3は、この種の装置を開示する。
【0003】
特許文献1の航行援助装置は、レーダ空中線部より得られた探知物標画像、及び自船情報と他船情報と予想針路情報を用いて演算部にて各予想針路位置における CPA(Closest Point of Approach)、TCPA(Time to CPA)の演算を行い、前記演算の結果からアラーム判定を行 い、判定の結果に応じた危険シンボルを表示部へ画面表示させる構成となっている。
【0004】
特許文献2の可動乗物(特に船舶)の操作評価装置は、自船に対する目標船(他船)の座標及び速度成分データに基づいて計算された目標船との衝突可能点までの自船の予想経路と、衝突可能点を中心とした衝突可能区域と、の相対位置を表示する構成となっている。
【0005】
特許文献3の船舶用航行支援装置は、目標船の相対位置及び速度ベクトルと自船の速力から、自船の周囲に設定された多角形の安全航過領域の各頂点と目標船と の衝突点を求め、各頂点がその衝突点に一致したときの自船位置を自船写像位置として算出し、算出された衝突点毎の自船写像位置を線分で結び、線分で結ばれ た範囲を衝突危険範囲として自船位置及びその速度ベクトルないし目標船位置を重畳表示する構成となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2012-21947号公報
【特許文献2】特公昭51-32475号公報
【特許文献3】特許第2786809号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、上記特許文献1の構成は、衝突予想位置について、画面上の自船のシンボルの色を変化させたり、音声で警告を出したりすることで、接近する他船と衝 突する危険があることを操船者に知らせているだけである。言い換えれば、特許文献1の表示画面には、自船の現在の予定航路に衝突の危険があるという情報し か表示されない。その結果、操船者が避航操船(危険回避のための操船)を行うとき、変速すべきか、変針すべきか、変針が必要な場合にどの方向に変針すべき か、を判断しにくい。また、自船と衝突するおそれがある他船が複数あって、それぞれの他船と時系列的にどの順序で衝突の危険が生じるのかが分かりにくい場 合もあり、このような複雑な状況下では操船が一層難しくなる。
【0008】
この点に関して、特許文献2及び3においては、自船が進入 すると他船との衝突の危険が生じるであろう領域(即ち特許文献2における衝突可能区域及び特許文献3における衝突危険範囲)が表示されている。これによ り、操船者がその衝突可能区域(衝突危険範囲)を参照して、危険回避のための操船を容易に行うことができる。
【0009】
しかし、特 許文献2の衝突可能区域も、特許文献3の衝突危険範囲も、目標船の針路を基にし、目標船の針路上に表示されている。この結果、特に目標船が複数ある場合、 それぞれの目標船の針路が異なるため、衝突可能区域(衝突危険範囲)の表示が雑然としている印象を操船者に与え易くなり、また、その複数の衝突可能区域 (衝突危険範囲)に対応すべき優先順位が分かりにくい。従って、特許文献2及び特許文献3の構成を用いて、操船者が危険回避のための操船を適切かつ正確に 行うことができるとは言いがたい。
【0010】
本発明は以上の事情に鑑みてされたものであり、その目的は、表示された情報に基づいて危険回避のための操船を容易かつ正確に行うことができる情報表示装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段及び効果】
【0011】
本発明の解決しようとする課題は以上の如くであり、次にこの課題を解決するための手段とその効果を説明する。
【0012】
本発明の第1の観点によれば、以下の構成の情報表示装置が提供される。即ち、この情報表示装置は、距離設定部と、最接近位置推定部と、表示制御部と、を備える。前記距離設定部は、距離を設定する。前記最接近位置推定部は、他船の航行情報及び自船の航行情報に基づいて、他船と自船とが最接近する時点における他船の針路上の他船の最接近位置、及び自船の針路上の自船の最接近位置のそれぞれを推定する。前記表示制御部は、前記最接近位置推定部により推定された複数の他船の前記最接近位置と、複数の他船に対する自船の針路上の自船の前記最接近位置のそれぞれを中心とする前記距離設定部で設定された距離に基づく危険領域のそれぞれと、複数の他船及び自船の現在位置と、を表示可能である。
【0013】
これにより、自船と衝突のおそれがある他船との位置関係を分かり易く表示することができるので、操船者がその位置関係を直感的に把握でき、他船との衝突等の危険 を回避する危険回避操船を容易かつ正確に行うことができる。特に、自船と衝突のおそれがある他船が複数ある場合に、それぞれの他船に対応する危険領域が自 船の針路に並んで表示されるので、操船者が各危険領域と自船の現在位置との距離からそれらに対応すべき優先順位を容易に把握することができる。また、危険 領域が多数あっても、それらを並べた状態で(整理した形で)表示できるので、表示が雑然とした印象を操船者に与えにくくすることができる。そして、単純に 自船の最接近位置及び設定された距離に基づいて危険領域を取得するため、他船及び自船の航行情報(針路、速度等)の変化に応じた危険領域の再計算を容易に 行うことができ、装置の計算負荷を低減することができる。
【0014】
前記の情報表示装置においては、前記表示制御部は、他船及び自船のそれぞれが前記最接近位置に到達するまでの推定所要時間である最接近時間を表示することが好ましい。
【0015】
これにより、自船と他船との衝突等の危険が発生するまでの時間を把握することができるので、操船者は適切なタイミングで危険回避のための操船を行うことができる。
【0016】
前記の情報表示装置においては、前記表示制御部は、前記最接近時間を、当該最接近時間に対応する前記最接近位置の近傍に表示させることが好ましい。
【0017】
これにより、複数の他船に関する最接近位置が表示された場合、それぞれの最接近位置と最接近時間との対応関係が理解し易くなる。
【0018】
前記の情報表示装置においては、前記表示制御部は、他船の前記現在位置と前記最接近位置とを繋いだ線を、他船の予測航跡として表示することが好ましい。
【0019】
これにより、それぞれの他船と当該他船の最接近位置との対応関係を分かり易く表示することができる。また、操船者が、他船がどの方向から自船の危険領域に入るのかを直感的に把握できるので、危険回避のための操船を一層的確に行うことができる。
【0020】
前記の情報表示装置においては、自船の前記最接近位置における前記危険領域及び他船の前記最接近位置は、それらが互いに重なる場合に、前記表示制御部により表示されることが好ましい。
【0021】
これにより、余計な表示がないため、自船と衝突のおそれがある他船との位置関係を簡潔に表示することができる。
【0022】
前記の情報表示装置においては、自船の前記最接近位置における前記危険領域及び他船の前記最接近位置は、自船及び他船のそれぞれが前記最接近位置に到達するまでの推定所要時間である最接近時間が所定時間以下である場合に、前記表示制御部により表示されることが好ましい。
【0023】
これにより、操船者の注意が必要な情報(危険度が高い情報)だけを絞り込んで表示するので、表示を簡潔にすることができる。
【0024】
前記の情報表示装置においては、以下の構成とすることが好ましい。即ち、この情報表示装置は、前記表示制御部によって表示された他船を目標船として選択で きる目標船選択部を備える。前記表示制御部は、前記目標船選択部を介して選択された前記目標船に対応する、自船の前記最接近位置における前記危険領域及び 前記目標船の前記最接近位置を強調して表示する。
【0025】
これにより、操船者が確認したい他船に関する情報を明確に表示できるので、操船者がその情報を容易に確認することができる。
【0026】
前記の情報表示装置においては、以下の構成とすることが好ましい。即ち、この情報表示装置は、前記表示制御部により表示された他船を目標船として選択でき る目標船選択部を備える。前記表示制御部は、表示された複数の他船のうち、前記目標船選択部を介して選択された前記目標船だけについて、自船の前記最接近 位置における前記危険領域及び前記目標船の前記最接近位置を表示する。
【0027】
これにより、操船者が確認したい他船に関する情報を簡潔かつ明確に表示することができる。
【0028】
前記の情報表示装置においては、他船及び自船の少なくとも何れかについて、前記最接近位置の時間の経過に応じた軌跡を表示することが好ましい。
【0029】
これにより、操船者が他船及び/又は自船の最接近位置の推移を目視で把握することができ、危険回避操船を容易に行うことができる。
【0030】
前記の情報表示装置においては、前記表示制御部は、異なる他船に対して、自船の前記最接近位置における前記危険領域及び他船の前記最接近位置を異なる態様で表示することが好ましい。
【0031】
これにより、複数の他船が表示された場合に、自船及びそれぞれの他船に対応する情報を区別し易く表示することができる。また、自船とそれぞれの他船との対応関係が理解し易くなる。
【0032】
前記の情報表示装置においては、前記表示制御部は、異なる危険度を有する他船に対して、自船の前記最接近位置における前記危険領域及び他船の前記最接近位置のうち少なくとも何れかを、異なる態様で表示することが好ましい。
【0033】
これにより、それぞれの他船の危険度を理解し易くなる。
【0034】
本発明の第2の観点によれば、以下の情報表示方法が提供される。即ち、この情報表示方法は、最接近位置推定工程と、危険領域生成工程と、表示工程と、を含む。前記最接近位置推定工程においては、コンピュータが、他船の航行情報及び自船の航行情報に基づいて、他船と自船とが最接近する時点における他船の針路上の他船の最接近位置、及び自船の針路上の自船の最接近位置のそれぞれを推定する。前記危険領域生成工程においては、コンピュータが、自船の前記最接近位置を中心として、設定された距離に基づく危険領域を生成する。前記表示工程においては、コンピュータが、前記最接近位置推定工程により推定された他船及び自船の前記最接近位置、前記危険領域生成工程により生成された前記危険領域、並びに他船及び自船の現在位置を表示する。
【0035】
これにより、自船と衝突のおそれがある他船との位置関係を分かり易く表示することができる ので、操船者がその位置関係を直感的に把握でき、他船との衝突等の危険を回避する危険回避操船を容易かつ正確に行うことができる。特に、自船と衝突のおそ れがある他船が複数ある場合に、それぞれの他船に対応する危険領域が自船の針路に並んで表示されるので、操船者が各危険領域と自船の現在位置との距離から それらに対応すべき優先順位を容易に把握することができる。また、危険領域が多数あっても、それらを並べた状態で(整理した形で)表示できるので、表示が 雑然とした印象を操船者に与えることがない。そして、単純に自船の最接近位置及び設定された距離に基づいて危険領域を取得するため、他船及び自船の航行情 報(針路、速度等)の変化に応じた危険領域の再計算を容易に行うことができ、当該方法を用いる装置の計算量を低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【
図1】本発明の一実施形態に係るレーダ映像表示装置の構成を示す概略的な斜視図。
【
図2】レーダ映像表示装置の構成を概略的に示す機能ブロック図。
【
図3】レーダ映像表示装置のディスプレイに表示される表示例を示す図。
【
図4】最接近位置のマーク及び危険領域の表示の絞込みを説明する図。
【
図5】選択された船に関する最接近位置及び危険領域を強調して表示する例を示す図。
【
図6】
図3の状態から自船が減速した状況を示す図。
【
図7】自船の最接近位置の軌跡の表示例を示す概略図。
【発明を実施するための形態】
【0037】
次に、図面を参照して本発明の実施の形態を説明する。
図1は、レーダ映像表示装置100の構成を示す概略的な斜視図である。
図2は、レーダ映像表示装置 100の構成を概略的に示す機能ブロック図である。
図3は、レーダ映像表示装置100のディスプレイ10に表示される表示例を示す図である。
【0038】
図1に示すレーダ映像表示装置(情報表示装置)100は、船舶に関する様々な情報を表示可能な装置であって、船舶の航行を支援するための機能として、TT(Target Tracking:目標追尾)機能を有する。
【0039】
ところで、TT機能とは、レーダアンテナ90からの情報に基づいて、自船周囲に存在する他船等の位置、針路及び速度を計算し、他船の今後の予想進路や、自 船と他船との最接近距離CPAや、自船と他船とが最も接近するまでの所要時間TCPA等をシミュレーション計算し、自船と衝突する危険性が高い場合には警 報を発生するものである。
【0040】
このレーダ映像表示装置100は、レーダアンテナ90に電気的に接続されており、当該レーダアンテナ90から受信信号を受信し、探知対象物(例えば他船)の状況を反映するレーダ映像を生成して表示することができる。
【0041】
レーダアンテナ90は、水平面内で360°回転できるように構成され、探知信号としての波長の短いマイクロ波(電磁波等)を送信して周囲の領域をスキャン することで、自船周囲の他船や島等の物標(探知対象物)の情報を探知する。具体的には、レーダアンテナ90は、指向性の高い電磁波を送信するとともに、各 物標からの反射波を受信するように構成されている。
【0042】
レーダ映像表示装置100は、レーダアンテナ90からの情報に基づいて、物標との距離、大きさ及び存在方位を求めてレーダ映像を作成し、ディスプレイ(表示部)10に表示させることができる。
【0043】
レーダ映像表示装置100は、
図1に示すように、ディスプレイ10と、操作部(距離設定部、目標船選択部)20と、制御部30と、を備えている。
【0044】
ディスプレイ10は、液晶ディスプレイ等から構成されており、制御部30からの表示指令に応じて作成されたレーダ映像を表示するとともに、当該レーダ映像等の表示画面に自船及び他船の位置、航跡、最接近位置等を表示することができる。
【0045】
操作部20は、ディスプレイ10の近傍に配置されており、トラックボール21、ボタン22、キーボード23、ダイアル等の操作部材を備えている。操船者は 操作部20を操作することにより、レーダ映像表示装置100に対して様々な指示(例えば、自船の危険領域の大きさを定める距離の設定や、目標船の指定等) を行うことができる。なお、以下の説明では、自船の危険領域の大きさ定めるために設定される領域を、領域距離と呼ぶことがある。
【0046】
制御部30は、
図1に示すように、レーダ映像表示装置100に内蔵されたコンピュータとして構成されている。そして、この制御部30は、
図2に示すよう に、最接近位置推定部32と、最接近時間推定部33と、危険領域生成部34と、表示データ生成部(表示制御部)35と、を備えている。
【0047】
具体的に説明すると、制御部30は、CPU等の演算部と、ROMやRAM等からなる記憶部と、を備えている。この記憶部には、各種の制御プログラムが記憶 されるほか、演算部で行う演算に用いられる演算情報や最接近時間と比較するための所定時間(詳細は後述する)等が記憶されている。
【0048】
前記制御プログラムには、本発明の情報表示方法における最接近位置推定工程、危険領域生成工程、及び表示工程をレーダ映像表示装置100に行わせるための 情報表示プログラムが含まれている。そして、上記のハードウェアとソフトウェアとが協働することにより、制御部30を、最接近位置推定部32、最接近時間 推定部33、危険領域生成部34、表示データ生成部35等として動作させることができる。
【0049】
最接近位置推定部32は、自船の航行情報及び他船の航行情報に基づいて、自船と他船とが将来的に最も接近する時点におけるそれぞれの位置である最接近位置を算出する。なお、この最接近位置は、自船及び他船の航行情報に基づいて、公知の方法で計算することができる。
【0050】
本実施形態において、自船の航行情報は、レーダアンテナ90からの情報に基づいて求めた自船の位置情報、針路情報、速度情報等である。しかし、これに限定 されず、例えば、操船者により設定された針路情報や速度情報などに関する設定データから自船の針路情報や速度情報を求めることもできる。
【0051】
他船の航行情報は、レーダアンテナ90からの情報に基づいて求めた他船の位置情報、速度情報、及び針路情報等である。しかし、これに限定されず、例えば AIS(Automatic Identification System)を用いて他船の上記航行情報を取得することもできる。
【0052】
最接近時間推定部33は、最接近位置推定部32により推定された最接近位置と、自船又は他船の現在位置及び速度と、に基づいて、自船又は他船がそれぞれの最接近位置に到達するまでの推定所要時間である最接近時間を算出する。
【0053】
危険領域生成部34は、操船者が操作部20を介して設定した領域距離及び自船の航行情報に基づいて危険領域を生成し、表示データ生成部35へ出力する。当 該危険領域は、自船の将来の予測位置に基づいて定められるものであり、その時点での当該領域内に他船の予測位置が入っていた場合に、自船がその他船と衝突 する危険性が高いことを目安として示す領域である。
【0054】
本実施形態において、危険領域は、自船の位置を中心とし、操船者により設定された領域距離を半径とする円として作成される。従って、簡単な処理で危険領域を生成することができるので、計算の負荷を軽減できる。
【0055】
表示データ生成部35は、最接近位置推定部32、最接近時間推定部33、危険領域生成部34及び操作部20からの情報に基づいて、ディスプレイ10に表示 する表示データを生成し、ディスプレイ10に表示するように制御する。具体的には、表示データ生成部35は、
図3に示すように、当該表示データ生成部35 から出力された表示データ(例えば、自船S及び他船Ea,Ebの現在位置、自船及び他船のそれぞれの最接近位置Psa,Psb,Pa,Pb、自船の危険領 域Aa,Ab等)を、マーク等の形で2次元的に表現するようにディスプレイ10に表示させる。
【0056】
図3に示す例において、表 示データ生成部35は、ディスプレイ10が、4つの他船Ea,Eb,Ec,Edの位置と、そのうち2つの他船Ea,Ebについての最接近位置Pa,Pb と、を表示するように制御する。なお、以下では、自船と他船とが最も接近する時点を「最接近タイミング」と呼ぶことがある。他船Ea,Ebのそれぞれの最 接近位置Pa,Pbは、当該他船Ea,Ebにおけるそれぞれの最接近タイミングでの位置を意味する。
【0057】
また、表示データ生 成部35は、ディスプレイ10が、自船Sの位置と、自船Sの最接近位置Psa,Psbと、を表示するように制御する。なお、自船Sの最接近位置Pa,Pb は、接近相手となる他船Ea,Ebについてそれぞれ求められる最接近タイミングでの自船Sの位置を意味する。更に、ディスプレイ10には、自船Sの最接近 位置Psa,Psbを基準にした危険領域Aa,Abが表示されている。
【0058】
操船者は、ディスプレイ10に表示された上記の情報を見ることで、危険回避のためにどのように操船すべきかを的確に判断することができる。以下、例として、他船Ea及び自船Sに関する情報の表示について、詳細に説明する。
【0059】
図3に示すように、ディスプレイ10においては、自船Sの現在位置に自船Sのマーク(大きい船形マーク)が表示され、他船Eaの現在位置に他船Eaのマー ク(大きい円形マーク)が表示される。また、ディスプレイ10には、自船Sの最接近位置Psa(自船Sと他船Eaについての最接近タイミングにおける自船 Sの位置)が小さい船形マークで表示され、他船Eaの最接近位置Pa(上記の最接近タイミングにおける他船Eaの位置)が小さい菱形マークで表示される。 なお、自船Sの最接近位置Psa及び他船Eaの最接近位置Paは、最接近位置推定部32により推定される。更に、ディスプレイ10には、自船Sの最接近位 置Psaを基準として危険領域生成部34により生成された危険領域Aaが表示されている。
【0060】
この
図3に示す表示画面から、操船者は、自船S及び他船Eaの現在位置、最接近位置、針路等の航行情報を理解することができる。また、操船者は、自船Sの現在の針路及び速度で航行を続けると他船Eaと衝突するおそれがある等の衝突危険情報を把握することができる。
【0061】
具体的には、上記の大きい船形マークは、自船Sが現在航行している位置を表すように表示されている。小さい船形マークは、自船Sと他船Eaに関する最接近 タイミングでの自船Sの位置(最接近位置Psa)を表すように表示されている。従って、自船Sを表す大小の船形マークから自船Sの現在位置及び最接近位置 Psaを容易に理解することができる。
【0062】
同じように、上記の大きい円形マークは、他船Eaが現在航行している位置を表すよ うに表示されている。小さい菱形マークは、自船Sと他船Eaに関する最接近タイミングでの当該他船Eaの位置(最接近位置Pa)を表すように表示されてい る。従って、他船Eaを表す2つのマークから他船Eaの現在位置及び最接近位置Paを容易に理解することができる。
【0063】
な お、自船S及び他船Eaの現在位置及び最接近位置を表すマークは、形を異ならせて表示させることに限定されず、形は同一で大きさを異ならせて表示させても 良い。また、例えば、同一の形及び大きさのマークを用いて、現在位置におけるマークを実線で表示し、最接近位置におけるマークを点線で表示しても良い。
【0064】
図3の表示を見れば、自船Sと他船Eaに関する最接近タイミングで、他船Eaが危険領域Aa内に存在することが、危険領域の円と小さい菱形マークとの位置 関係から一目瞭然である。従って、操船者は、この
図3に示す表示画面から自船Sの現在の針路及び速度で航行を続けると、自船Sが他船Eaと衝突するおそれ があることを直感的に把握することができる。
【0065】
以上により、操船者は、
図3に示す表示画面から取得した情報に基づいて、例えば自船Sを減速させたり、自船Sを
図3における右側に転舵させたりすることによって、他船Eaとの衝突を回避できることを容易に理解することができる。
【0066】
ところで、複数の他船Ea,Eb,Ec,Edに関する情報が表示されているとき、本実施形態のレーダ映像表示装置100においては、
図3に示すように、必 要に応じて、互いに異なるマーク(シンボル)でそれぞれの他船Ea,Eb,Ec,Edを表示している。これにより、複数の他船Ea,Eb,Ec,Edが表 示された場合に、それぞれの他船に対応する情報を区別し易く表示することができる。
図3の表示例では、他船Ea,Ecについては、TT機能により追尾され ている他船であり、丸形のマークで表示されている。一方、他船Eb,Edについては、AISにより取得された他船であり、三角形のマークで表示されてい る。しかし、これに限定されず、それぞれの他船を任意の形のマークで表現することもできる。
【0067】
そして、自船Sと衝突のおそれがある他船Ea,Ebに関する情報が、操船者がそれぞれの情報を容易に区別できるように、異なる色(異なる態様)で表示されている。なお、
図3においては、異なる太さの線により異なる色を表している。
【0068】
具体的には、他船Ea、その最接近位置Pa、他船Eaとの関係での自船Sの最接近位置Psa、及び危険領域Aaを例えば赤色で表示し、他船Eb、その最接 近位置Pb、他船Ebとの関係での自船Sの最接近位置Psb、及び危険領域Abを例えば黄色で表示する。これにより、複数の他船Ea,Ebが表示されてい る場合、それぞれの他船Ea,Ebに対応する情報を容易に区別することができるので、危険回避のための操船を一層正確に行うことができる。
【0069】
ただし、他船の最接近位置Pa,Pbの表示態様は、上記に限定されない。例えば、他船の最接近位置Pa,Pbを示すマークは、小さな菱形に限らず、当該他 船の種類や危険度に応じて形、大きさ、色を異ならせて表示するように構成することができる。また、危険領域Aa,Abの色も、上記に限定されず、当該他船 の種類や危険度に応じて変更することができる。
【0070】
なお、他船の種類としては、例えば、上記のようにTT機能で追尾している もの、AISにより取得されたもの等を挙げることができる。また、危険度に応じて色を変更する場合の一例として、CPAが所定値以下でかつTCPAが所定 値以下である場合は赤色で表示し、CPAのみが所定値以下である場合は黄色で表示し、上記の何れでもないときは青色で表示することが考えられる。
【0071】
上記で説明したように、本実施形態のレーダ映像表示装置100においては、他船Ea,Ebが進入すると自船Sと衝突の可能性が高くなる領域である危険領域 Aa,Abが、自船Sの最接近位置Psa,Psbを中心として生成されている。即ち、危険領域Aa,Abは、常に自船Sの針路上の点を中心として表示され ることになる。
【0072】
これにより、衝突に注意しなければならない他船Ea,Ebが複数ある複雑な状況においても、表示される各危険領域Aa,Abと自船Sの現在位置との遠近関係を直感的に把握することができる。
【0073】
例えば、
図3に示すように、他船Ea,Ebのそれぞれに対応する自船Sの危険領域Aa,Abは、自船Sの針路上に並んで表示される。
図3に示す表示画面か ら、危険領域Aaが危険領域Abより自船Sの現在位置に近いことが容易に分かる。このように、操船者が、他船Eaとの衝突の危険が他船Ebとの衝突の危険 より先に発生することを直感的に認識できるので、先ず他船Eaとの衝突回避の観点を優先して操船すべきことを容易に把握することができる。
【0074】
また、
図3に示すように、他船Ea,Ebのそれぞれと自船Sとが最接近するまでの推定所要時間である最接近時間(最接近タイミングまでの時間)が、それぞれの最接近位置Pa,Pbの近傍に表示されている。この最接近時間は、最接近時間推定部33により求められる。
【0075】
図3に示すように、自船Sと他船Eaとの最接近時間が5分であることを示す「5min」の文字が他船Eaの最接近位置Paの近傍に表示され、自船Sと他船 Ebとの最接近時間が9分であることを示す「9min」の文字が他船Ebの最接近位置Pbの近傍に表示されている。これにより、各最接近時間と他船 Ea,Ebとの対応関係が容易に分かるとともに、現時点で時間的余裕がどの程度残されているかを理解することができる。従って、操船者は、適切なタイミン グで危険回避のための操船を行うことができる。
【0076】
ところで、上記の最接近時間の表示に加えて、表示された最接近時間が所定 時間より短い場合、警報音等を発生させたり、最接近時間、当該最接近時間に対応する他船Ea,Ebの最接近位置Pa,Pb、及び/又は自船Sの危険領域 Aa,Abを点滅させたりすることで、操船者の注意を喚起することもできる。なお、この所定時間は、自船Sの速度に基づいて制御部30により決められても 良いし、操船者の操作により設定されても良い。
【0077】
また、
図3に示すように、他船Ea,Ebの現在位置と最接近位置 Pa,Pbとを繋ぐように直線(線)が表示されている。他船Ea,Ebの最接近位置Pa,Pbは、他船Ea,Ebの航行情報に基づいて推定されるので、当 該線を、他船Ea,Ebの予測航跡Ta,Tbとして用いることができる。
【0078】
これにより、最接近位置Pa及び他船Eaと、最 接近位置Pb及び他船Ebと、の対応関係の視認性を高めることができる。そして、その予測航跡Ta,Tbから、他船Ea,Ebの針路を一層直感的に把握す ることができるので、他船Ea,Ebがどの方向から自船Sの危険領域Aa,Abに進入するのかを容易に推測することができ、危険回避のための操船を一層的 確に行うことができる。
【0079】
知られているように、輻輳海域においては、相当に多くの他船がディスプレイ10に表示されることになる。多数の他船に関する情報を全てディスプレイ10に表示すると、画面の表示が雑然となるので、操船者がそれぞれの他船に関する情報を確認しにくくなる。
【0080】
この点、本実施形態のレーダ映像表示装置100においては、最接近位置及び危険領域に関する表示について、適宜の条件により絞込みが行われている。この結 果、
図3では4つの他船Ea,Eb,Ec,Edが表示されているのに対し、最接近位置及び危険領域は、そのうち2つの他船Ea,Ebに関するものだけが表 示されている。
【0081】
以下、表示の絞込みについて詳細に説明する。レーダ映像表示装置100の制御部30は、自船Sの最接近位 置における危険領域内に他船の最接近位置が入っていない場合、自船Sの最接近位置、他船の最接近位置、自船Sの危険領域、及び最接近時間を何れも表示しな いように構成されている。言い換えれば、本実施形態のレーダ映像表示装置100においては、他船の最接近位置が、当該他船と対応する自船Sの危険領域内に 入っている場合(重なっている場合)にのみ、上記の情報を表示する。
【0082】
具体的に説明すると、
図4に鎖線で想像的に示すよう に、他船Ecが自船Sと最接近する時点における最接近位置Pcは、それに対応する自船Sの最接近位置Pscを中心とする危険領域Acの範囲外である。これ は、現時点では、自船Sと他船Ecとが衝突する危険性が低いことを意味する。そこで、制御部30(表示データ生成部35)は、当該他船Ecの最接近位置 Pc、予測航跡Tc、他船Ecに対応する自船Sの最接近位置Psc、及び危険領域Acを表示しないように制御する。これにより、ディスプレイ10の表示を 簡潔にすることができる。
【0083】
また、本実施形態のレーダ映像表示装置100においては、自船と他船とが最接近するまでの時間を基準とする表示の絞込みも行われている。
【0084】
具体的には、制御部30は先ず、最接近位置及び危険領域を表示するか否かを決めるために予め設定された所定時間(例えば、10分)を記憶部から取得する。 その後、制御部30は、最接近位置が危険領域に入っていた他船Ea,Eb,Edのそれぞれについて、最接近時間推定部33により求めた最接近時間を上記の 所定時間と比較する。
図4に鎖線で想像的に示すように、他船Edの最接近位置Pdは、それに対応する自船Sの最接近位置Psdを中心とする危険領域Adに 入っているものの、最接近時間は11分であり、上記の所定時間(10分)を上回る。そこで、制御部30(表示データ生成部35)は、当該他船Ed及び自船 Sの最接近位置Pd,Psd、最接近位置Psdを中心とする自船Sの危険領域Ad、及び最接近時間を表示しないように制御する。一方、制御部30(表示 データ生成部35)は、それ以外の他船Ea,Ebについては、当該他船Ea,Ebの最接近位置Pa,Pb、自船Sの最接近位置Psa,Psb、最接近位置 Psa,Psbのそれぞれを中心とする自船Sの危険領域Aa,Ab、及び最接近時間をディスプレイ10に表示させる。
【0085】
制御部30が上記の処理を行うことにより、特に、複数の他船と衝突する可能性がある場合、衝突が発生するまでの時間による危険度に応じて、最接近位置等の情報を選択的にディスプレイ10に表示させることができるので、表示を一層簡潔にすることができる。
【0086】
また、本実施形態のレーダ映像表示装置100においては、操船者が操作部20を介して選択された目標船に関する情報の表示を強調して表示することもでき る。例えば、操船者が操作部20を介して他船Eaを選択したとき、制御部30(表示データ生成部35)は当該他船Eaを目標船として認識し、当該目標船で ある他船Eaに関する情報の表示を、それ以外の他船Ebに関する情報の表示と異なる色又は線種により表現するように表示データを作成して、ディスプレイ 10へ出力する。この結果、操船者が選択した目標船(他船)Eaに関する情報は、
図5に示すように、他船Ebに関する情報より目立つように表示される。
【0087】
なお、目標船である他船Eaに関する情報を目立つように表示させる方法としては、例えば、操船者の注意を引き易い色等で表示させる方法や、点滅するように 表示させる方法や、他の他船に関する情報を無彩色(例えば、灰色)又は点線で表示させ、目標船に関する情報を有彩色又は実線で表示させる方法等を挙げるこ とができる。
【0088】
また、目標船である他船Ea以外の他船に関する最接近位置、予測航跡を表示せず、当該他船Eaに関する情報 だけを表示しても良い。この場合、表示画面が一層簡潔になるとともに、操船者が確認したい他船に関する情報を明確に表示でき、操船者がその情報を容易に確 認することができる。
【0089】
本実施形態のレーダ映像表示装置100においては、上記で説明したように、衝突を予防するための他 船Ea,Eb及び自船Sに関する情報を、それぞれの対応関係、また、それらの対応優先順位を分かり易く表示しているので、操船者が危険回避のための操船を 容易かつ正確に行うことができる。
【0090】
例えば、
図3に示す表示画面に表示された状況では、他船Eaの自船Sに対する最接近位 置Paは、自船Sの最接近位置Psaを中心とする危険領域Aaのうち、当該最接近位置Psaより自船Sの現在位置からみて遠方側にある。この場合、自船S を増速させるよりも減速させる方が、衝突を容易に回避できると考えられる。
図6には、自船Sが減速することにより危険領域Aaが移動し、他船Eaの最接近 位置Paが危険領域Aaから外部に出た状況が示されている。なお、他船Ea,Ebの最接近位置Pa,Pbが危険領域Aa,Abから外れると、自船の最接近 位置Psa,Psb、他船の最接近位置Pa,Pb、及び危険領域Aa,Abは本来画面に表示されなくなるが、
図6ではこれらを鎖線で想像的に描いている。 このように、他船Ea,Ebの最接近位置Pa,Pbが自船Sの最接近位置Psa,Psbを中心とする危険領域Aa,Abに入った場合、操船者が当該危険領 域Aa,Abから他船Ea,Ebの最接近位置Pa,Pbを外に出すように意識しながら操船することで、衝突回避を的確に行うことができる。
【0091】
なお、自船S及び他船Ea,Ebの航行情報に基づく自船Sの最接近位置Psa,Psbを過去の所定時間分記憶しておき、時間経過に応じた最接近位置Psa,Psbの軌跡を、操船者が容易に確認できるようにディスプレイ10に表示しても良い(軌跡表示モード)。
【0092】
以下、他船Eaに対応する自船Sの最接近位置Psaの軌跡の表示を例として説明する。
図7に簡略的に示す表示画面の例では、自船Sの最接近位置Psaの時 間経過に応じた推移が表示されている。なお、
図7では、現在の最接近位置がPsaで、現在から所定時間前の最接近位置がP'saで、更に所定時間前の最接 近位置がP"saで、それぞれ示されている。最接近位置を示すマークは、過去になるにつれて背景色と近い色となるように色を異ならせて表示することが好ま しい(
図7では、図面での説明の便宜上、表示色の違いがハッチング間隔の違いにより表現されている)。
【0093】
このように、表示 データ生成部35が自船Sの最接近位置Psaの時間経過に応じた推移をディスプレイ10に表示するように制御することで、当該最接近位置Psaの時間的な 変化を表現することができる。従って、操船者が、今までの操船によって危険を回避できそうか、それとも追加的な操船が必要か等を容易に判断することができ る。
【0094】
また、自船Sの最接近位置の軌跡を表示することに限定されず、他船の最接近位置の時間経過に応じた軌跡を表示しても良い。他船の最接近位置の時間的な変化を軌跡として表示することで、他船の動きを好適に把握でき、避航操船を一層的確に行うことができる。
【0095】
以上に説明したように、本実施形態のレーダ映像表示装置100は、操作部20と、最接近位置推定部32と、表示データ生成部35と、を備える。操作部20 は、距離を設定する。最接近位置推定部32は、他船Ea,Ebの航行情報及び自船Sの航行情報に基づいて、他船Ea,Ebと自船Sとが最接近する時点にお ける他船Ea,Eb及び自船Sのそれぞれの最接近位置Pa,Pb,Psa,Psbを推定する。表示データ生成部35は、最接近位置推定部32により推定さ れた他船Ea,Ebの最接近位置Pa,Pbと、自船Sの最接近位置を中心とした危険領域Aa,Abと、他船Ea,Eb及び自船Sの現在位置と、を表示す る。
【0096】
これにより、自船Sと衝突のおそれがある他船Ea,Ebとの位置関係を分かり易く表示することができるので、操船者 がその位置関係を直感的に把握でき、他船Ea,Ebとの衝突等を回避するための操船を容易かつ正確に行うことができる。特に、自船Sと衝突のおそれがある 他船が複数ある場合に、それぞれの他船Ea,Ebに対応する危険領域Aa,Abが自船Sの針路に並んで表示されるので、操船者が各危険領域Aa,Abと自 船Sの現在位置との距離からそれらに対応すべき優先順位を容易に把握することができる。また、危険領域Aa,Abが多数あっても、それらを並べた状態で (整理した形で)表示できるので、表示が雑然とした印象を操船者に与えにくくすることができる。そして、単純に自船Sの最接近位置及び設定された距離に基 づいて危険領域Aa,Abを取得するため、他船Ea,Eb及び自船Sの航行情報(針路、速度等)の変化に応じた危険領域Aa,Abの再計算を容易に行うこ とができ、装置の計算負荷を低減することができる。
【0097】
以上に本発明の好適な実施の形態を説明したが、上記の構成は例えば以下のように変更することができる。
【0098】
上記の実施形態においては、領域距離は操船者の操作によって設定されている。しかしながらこれに限定されず、例えば、制御部30が、自船の速度に応じて領域距離を自動的に設定しても良い。
【0099】
また、他船及び自船を示すマークは、他船及び自船の針路を表現できる任意の形状(例えば、矢印、三角形、船形等)を用いることができる。これにより、そのマークの形状から、他船及び自船の針路を容易に理解することができる。
【0100】
上記の実施形態の表示画面において、自船の現在位置を中心とした前記危険領域を表示するように構成しても良い。
【0101】
自船の最接近位置Psa,Psbのマークの表示は、省略されても良い。この場合でも、自船の最接近位置は常に危険領域Aa,Abの中心にあるので、ユーザは自船の最接近位置を容易に把握することができる。
【0102】
自船の過去の最接近位置の推移は、
図7のように複数のマークで表現されることに代えて、例えば線により表現されても良い。他船の過去の最接近位置についても同様である。
【0103】
最接近時間の表示の態様は任意に変更することができる。例えば最接近時間を、上記のように文字(数字)により表示することに代えて、例えば棒グラフや円グラフ等により表示することもできる。
【0104】
上記の実施形態では、設定された領域距離は、危険領域の半径として取り扱われる。しかしながら、これに代えて、円状の危険領域の直径としての距離を領域距離として設定できるように構成しても良い。
【0105】
ディスプレイ10に、他船の予測航跡Ta,Tbに代えて、又はこれに加えて、当該他船の速度ベクトルを表示しても良い。
【0106】
領域距離とは別に表示距離を設定できるように構成し、他船の最接近位置Pa,Pbが前記危険領域Aa,Abから外れていても、当該最接近位置Pa,Pbと 自船の最接近位置Psa,Psbとの距離が前記表示距離以下であれば、他船の最接近位置Pa,Pb、自船の最接近位置Psa,Psb、及び危険領域 Aa,Abを表示するようにしても良い。
【0107】
上記の説明はノースアップの例であるが、本発明の表示は、ヘディングアップでの表示にも適用することができる。
【0108】
本発明は、様々な形態の情報表示装置に適用することができる。例えば、レーダアンテナと接続されるレーダ専用の情報表示装置として構成することもでき、また、各種の情報(海図の情報等)を統合して表示可能なマルチファンクションディスプレイとして構成することもできる。
【符号の説明】
【0109】
10 ディスプレイ(表示部)
20 操作部(領域距離設定部、目標船選択部)
32 最接近位置推定部
35 表示データ生成部(表示制御部)
100 レーダ映像表示装置(情報表示装置)
Aa,Ab,Ac,Ad 危険領域
Pa,Pb,Pc,Pd 他船の最接近位置
Psa,Psb,Psc,Psd 自船の最接近位置
Ta,Tb,Tc,Td 予測航跡