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特開2022-65075グラム陰性菌に対して活性を有する溶解素ポリペプチド
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  • 特開-グラム陰性菌に対して活性を有する溶解素ポリペプチド 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022065075
(43)【公開日】2022-04-26
(54)【発明の名称】グラム陰性菌に対して活性を有する溶解素ポリペプチド
(51)【国際特許分類】
   A61K 38/16 20060101AFI20220419BHJP
   A61K 38/02 20060101ALI20220419BHJP
   A61K 45/00 20060101ALI20220419BHJP
   A61P 31/04 20060101ALI20220419BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20220419BHJP
   C12N 15/53 20060101ALI20220419BHJP
   C12N 15/63 20060101ALI20220419BHJP
   C12N 1/15 20060101ALI20220419BHJP
   C12N 1/19 20060101ALI20220419BHJP
   C12N 1/21 20060101ALI20220419BHJP
   C12N 5/10 20060101ALI20220419BHJP
【FI】
A61K38/16
A61K38/02 ZNA
A61K45/00
A61P31/04
A61P43/00 121
C12N15/53
C12N15/63 Z
C12N1/15
C12N1/19
C12N1/21
C12N5/10
【審査請求】有
【請求項の数】22
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2022020105
(22)【出願日】2022-02-14
(62)【分割の表示】P 2018513835の分割
【原出願日】2016-09-16
(31)【優先権主張番号】62/220,212
(32)【優先日】2015-09-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】62/247,619
(32)【優先日】2015-10-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】514284475
【氏名又は名称】コントラフェクト コーポレイション
(74)【代理人】
【識別番号】110000796
【氏名又は名称】特許業務法人三枝国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】シュッフ,レイモンド
(72)【発明者】
【氏名】ホッフェンバーグ,サイモン
(72)【発明者】
【氏名】ウィッテキンド,ミカエル
(57)【要約】      (修正有)
【課題】本開示は、緑膿菌(P.aeruginosa)を含むグラム陰性菌によって引き起こされる感染の予防的および治療的な改善および処置に有用な、方法および組成物を提供する。本開示はさらに、グラム陰性菌感染の治療に一般に適した抗生物質の有効性を増強するために、本開示の溶解素ポリペプチドを組み入れ利用する、組成物および方法を提供する。
【解決手段】特定の配列からなる群から選択されるポリペプチド配列に対して少なくとも80%の同一性を有するアミノ酸配列を含む単離された溶解素ポリペプチド、または溶解素活性を有するその断片の有効量;並びに薬剤的に許容できる担体、を含む医薬組成物であって、前記溶解素ポリペプチドが緑膿菌および所望により少なくとも1つの他のグラム陰性菌種を増殖阻害する、またはその菌数を減少させる、または死滅させる、前記医薬組成物とする。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
配列番号1~配列番号10からなる群から選択されるポリペプチド配列に対して少なく
とも80%もしくは少なくとも85%もしくは少なくとも90%もしくは少なくとも95
%の同一性を有するアミノ酸配列を含む単離された溶解素ポリペプチド、または溶解素活
性を有するその断片、の有効量;並びに薬剤的に許容できる担体、を含む医薬組成物であ
って、前記溶解素ポリペプチドが緑膿菌(P. aeruginosa)および所望により少なくとも
1つの他のグラム陰性菌種を増殖阻害する、またはその菌数を減少させる、または死滅さ
せる、前記医薬組成物。
【請求項2】
前記溶解素ポリペプチドまたは断片が、緑膿菌(P. aeruginosa)および所望により少
なくとも1つの他のグラム陰性菌種を増殖阻害する、またはその菌数を減少させる、また
は死滅させるのに有効な量で存在する、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項3】
液剤、懸濁剤、乳濁剤、吸入可能な散剤、エアロゾル剤、または噴霧剤である、請求項
2に記載の医薬組成物。
【請求項4】
グラム陰性菌治療に適した一つまたは複数の抗生物質をさらに含む、請求項2に記載の
医薬組成物。
【請求項5】
配列番号1~配列番号10からなる群から選択される配列に対して少なくとも80%も
しくは少なくとも85%もしくは少なくとも90%もしくは少なくとも95%の配列同一
性を有するアミノ酸配列を含む溶解素ポリペプチド、もしくは溶解素活性を有するその断
片、をコードする核酸分子を含む単離ポリヌクレオチド、または前記ポリヌクレオチドの
相補的配列、を含むベクターであって、コードされた溶解素ポリペプチドが緑膿菌(P. a
eruginosa)および所望により少なくとも1つの他のグラム陰性菌種を増殖阻害する、ま
たはその菌数を減少させる、または死滅させる、前記ベクター。
【請求項6】
配列番号1~配列番号10からなる群から選択される配列に対して少なくとも80%も
しくは少なくとも85%もしくは少なくとも90%もしくは少なくとも95%同一のアミ
ノ酸配列を含む溶解素ポリペプチド、または溶解素活性を有するその断片、をコードする
核酸を含む、組み換え発現ベクターであって、コードされた溶解素ポリペプチドが緑膿菌
(P. aeruginosa)および所望により少なくとも1つの他のグラム陰性菌種を増殖阻害す
る、またはその菌数を減少させる、または死滅させる特性を有し、前記核酸が異種プロモ
ーターに機能的に連結されている、前記組み換え発現ベクター。
【請求項7】
請求項5または6に記載のベクターを含む宿主細胞。
【請求項8】
核酸配列がcDNA配列である、請求項5または6に記載の組換えベクター。
【請求項9】
配列番号1~配列番号10からなる群から選択される配列に対して少なくとも80%も
しくは少なくとも85%もしくは少なくとも90%もしくは少なくとも95%の配列同一
性を有するアミノ酸配列を含む溶解素ポリペプチド、または溶解素活性を有するその断片
、をコードする核酸分子を含む単離ポリヌクレオチドであって、コードされた溶解素ポリ
ペプチドが緑膿菌(P. aeruginosa)および所望により少なくとも1つの他のグラム陰性
菌種を増殖阻害する、またはその菌数を減少させる、または死滅させる、前記単離ポリヌ
クレオチド。
【請求項10】
cDNAである、請求項3に記載のポリヌクレオチド。
【請求項11】
少なくとも1つの他のグラム陰性菌種を増殖阻害する、またはその菌数を減少させる、
または死滅させる方法であって、配列番号1~配列番号10からなる群から選択されるポ
リペプチド配列に対して少なくとも80%同一のアミノ酸配列を含む溶解素ポリペプチド
、またはその活性断片の有効量を含有し、前記溶解素ポリペプチドが緑膿菌(P. aerugin
osa)および所望により少なくとも1つの他のグラム陰性菌種を増殖阻害する、またはそ
の菌数を減少させる、または死滅させる特性を有する、組成物と、前記細菌を接触させる
ことを含む、前記方法。
【請求項12】
緑膿菌(P. aeruginosa)および所望により一つまたは複数の追加のグラム陰性菌種か
らなる群から選択されるグラム陰性菌によって引き起こされる細菌感染を治療する方法で
あって、細菌感染と診断された、その危険性がある、またはその症状を示している対象に
、配列番号1~配列番号10からなる群から選択されるポリペプチド配列に対して少なく
とも80%同一のアミノ酸配列を含む溶解素ポリペプチド、またはその活性断片の有効量
を含有し、前記溶解素ポリペプチドが緑膿菌(P. aeruginosa)および所望により少なく
とも1つの他のグラム陰性菌種を増殖阻害する、またはその菌数を減少させる、または死
滅させる特性を有する、組成物を投与することを含む、前記方法。
【請求項13】
少なくとも1つの他のグラム陰性菌種が、緑膿菌(Pseudomonas aeruginosa)、クレブ
シエラ属種(Klebsiella spp.)、エンテロバクター属種(Enterobacter spp.)、大腸菌
(Escherichia coli)、シトロバクター・フロインデイ(Citrobacter freundii)、ネズ
ミチフス菌(Salmonella typhimurium)、ペスト菌(Yersinia pestis)、および野兎病
菌(Franciscella tulerensis)からなる群から選択される、請求項17または18に記
載の方法。
【請求項14】
溶解素ポリペプチドのアミノ酸配列が、配列番号1~配列番号10からなる群から選択
される配列に対して少なくとも85%もしくは少なくとも90%同一である、または溶解
素活性を有するその断片である、請求項17または18に記載の方法。
【請求項15】
溶解素ポリペプチドのアミノ酸配列が、配列番号1~配列番号10からなる群から選択
される配列に対して少なくとも95%同一である、または溶解素活性を有するその断片で
ある、請求項17または18に記載の方法。
【請求項16】
グラム陰性菌感染が緑膿菌(Pseudomonas aeruginosa)によって引き起こされる感染で
ある、請求項18に記載の方法。
【請求項17】
緑膿菌(P. aeruginosa)および所望により一つまたは複数の追加のグラム陰性菌種か
らなる群から選択されるグラム陰性菌によって引き起こされる局所的または全身的な病原
性細菌感染を治療する方法であって、対象に、配列番号1~配列番号15からなる群から
選択されるポリペプチド配列に対して少なくとも80%同一のアミノ酸配列を含む溶解素
ポリペプチドの有効量を含有する組成物を投与することを含み、
前記ポリペプチドまたはペプチドが緑膿菌(P. aeruginosa)および所望により少なくと
も1つの他のグラム陰性菌を増殖阻害する、またはその菌数を減少させる、または死滅さ
せる特性を有する、前記方法。
【請求項18】
細菌感染を予防または治療する方法であって、細菌感染と診断された、その危険性があ
る、またはその症状を示している対象に、配列番号1~配列番号10からなる群から選択
されるポリペプチド配列に対して少なくとも80%、もしくは少なくとも85%、もしく
は少なくとも90%、もしくは少なくとも95%同一のアミノ酸配列を含む溶解素ポリペ
プチド、またはその断片、の有効量を含有する、第一の有効量の組成物、および、グラム
陰性菌感染の治療に適した第二の有効量の抗生物質、の組合せを同時投与することを含む
、前記方法。
【請求項19】
抗生物質が、セフタジジム、セフェピム、セフォペラゾン、セフトビプロール、シプロ
フロキサシン、レボフロキサシン、アミノグリコシド系抗生物質、イミペネム、メロペネ
ム、ドリペネム、ゲンタマイシン、トブラマイシン、アミカシン、ピペラシリン、チカル
シリン、ペニシリン、リファンピシン、ポリミキシンB、およびコリスチンのうちの一つ
または複数から選択される、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
グラム陰性菌感染の治療に適した抗生物質の有効性を増強するための方法であって、配
列番号1~配列番号10からなる群から選択されるポリペプチド配列に対して少なくとも
80%同一のアミノ酸配列を含む一つもしくは複数の溶解素ポリペプチド、またはその活
性断片、と併せて、抗生物質を同時投与することを含み、前記組み合わせの投与が、抗生
物質または溶解素ポリペプチドまたはその活性断片を個々に投与するよりも、前記グラム
陰性菌を増殖阻害する、またはその菌数を減少させる、または死滅させるのにより有効で
ある、前記方法。
【請求項21】
溶解素ポリペプチドのアミノ酸配列が、配列番号1~配列番号10からなる群から選択
される配列に対して少なくとも90%同一である、または溶解素活性を有するその断片で
ある、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
溶解素ポリペプチドのアミノ酸配列が、配列番号1~配列番号10からなる群から選択
される配列に対して少なくとも95%同一である、または溶解素活性を有するその断片で
ある、請求項20に記載の方法。
【請求項23】
抗生物質が、セフタジジム、セフェピム、セフォペラゾン、セフトビプロール、シプロ
フロキサシン、レボフロキサシン、アミノグリコシド系抗生物質、イミペネム、メロペネ
ム、ドリペネム、ゲンタマイシン、トブラマイシン、アミカシン、ピペラシリン、チカル
シリン、ペニシリン、リファンピシン、ポリミキシンB、およびコリスチンのうちの一つ
または複数から選択される、請求項20に記載の方法。
【請求項24】
配列番号1~配列番号10からなる群から選択されるポリペプチド配列に対して少なく
とも80%もしくは少なくとも85%もしくは少なくとも90%もしくは少なくとも95
%の同一性を有するアミノ酸配列を含む単離溶解素ポリペプチド、または溶解素活性を有
するその断片であって、緑膿菌(P. aeruginosa)および、所望により、少なくとも1つ
の他のグラム陰性菌種を増殖阻害する、またはその菌数を減少させる、または死滅させる
、前記単離溶解素ポリペプチド、または溶解素活性を有するその断片。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本特許出願は、米国2015年9月17日に出願された仮特許出願第62/220,2
12号、および2015年10月28日に出願された同第62/247,619号に基づ
く優先権を主張するものであり;これら仮特許出願の内容はその全体が参照によって本明
細書に援用されるものとする。
技術分野
本開示は全体として、グラム陰性菌によって引き起こされる感染の予防および治療に関
する。より具体的には、本開示は、グラム陰性菌の増殖を予防および/または阻止するこ
とが可能な薬剤および組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
グラム陰性病原菌は、耐性が進化していくことにより、以前は処置が考慮されていたほ
ぼ全ての薬剤にとっての大きな脅威となる。特に懸念されるのは、シプロフロキサシン、
レボフロキサシン、ゲンタマイシン、セフェピム、イミペネム、メロペネムを含むがこれ
らに限定はされない、抗生物質等の多数の抗菌剤に対する耐性を発達し得る、グラム陰性
病原菌である緑膿菌(Pseudomonas aeruginosa)が関与する医療関連感染である(Lister
et al. Clin Microbiol Rev. 4: 582-610 (2009))。個々の薬剤への耐性に加えて、多
剤耐性株の出現と罹患率の増加も、新規抗生物質の不足と合わさって、警戒の原因となっ
ている。多剤耐性がもたらす脅威に対処するために、新規且つ有効なグラム陰性菌感染治
療が明確に求められている。1つの非常に有望なアプローチは、細菌細胞壁の主要な構造
成分(すなわち、ペプチドグリカン)を分解するための、溶解素、自己溶菌酵素、および
いくつかのバクテリオシンを含む、細菌性ペプチドグリカンヒドロラーゼ、またはPGH
、の使用に基づくものである。PGHには、ペプチドグリカンの糖骨格を切断するグルコ
サミニダーゼおよびムラミダーゼ(すなわち、リゾチーム)、ステムペプチド(stem-pep
tide)もしくは架橋を切断するエンドペプチダーゼ、または糖およびペプチド部分を連結
しているアミド結合を切断するL-アラニンアミダーゼが包含される(Bush K., Rec Sci
Tech. (1):43-56 (2012); Reith J. et al. Appl Microbiol Biotechnol. (1):1-11 (20
11))。
【0003】
過去14年間に亘る研究によって、PGHが、組換え発現可能であり、精製可能であり
、感受性菌に外因的に加えることで迅速な溶菌が可能であることが示された。この「外因
性溶菌」現象が、いくつかのグラム陽性病原性微生物に対する、現在開発中の有効な抗菌
戦略の基盤となっている。しかし、グラム陽性菌と比較して、グラム陰性菌感染の治療の
ための溶解素の使用は、細菌細胞壁内の追加の膜層の存在が原因で限定されたものとなっ
ている。外膜(OM)として知られている、この追加の層は、細胞壁内のペプチドグリカ
ン基質への溶解素のアクセスを妨害する。ところが最近になって、グラム陰性菌を死滅さ
せるいくつかの固有の能力を有する、グラム陰性菌および関連バクテリオファージ由来の
いくつかのPGHが報告された(Lood et al., Antimicrob Agents Chemother, 4: 1983-
91, (2015))。殺菌性のグラム陰性菌溶解素について、その活性は、アニオン性のOMへ
の結合を可能にし、下にあるペプチドグリカンへの移行をもたらす、天然配列内の、正電
荷を持つ(且つ両親媒性の)N末端およびC末端のαヘリックスドメインに依るものであ
り得る(Lai et al. Microbiol Biotechnol, 90:529-539 (2011))。近年、この知識を利
用して、グラム陰性の緑膿菌(Pseudomonas aeruginosa)およびアシネトバクター・バウ
マンニ(Acinetobacter baumannii)に対する抗菌活性を求めてカチオン性ペプチドが付
加された、操作された溶解素である、「Artilysin」がつくり出された(Briers
et al., Antimicrob Agents Chemother. 58(7): 3774-84 (2014))。これらのArti
lysinは、溶解素と関連していない、または溶解素に由来しない、外来性のカチオン
性ペプチドと融合した(グラム陽性菌に対して活性を有する)正荷電PGHからなる(Br
iers et al., Antimicrob Agents Chemother. 58(7): 3774-84 (2014); Briers et al. M
Bio. 4:e01379-14 (2014);米国特許第8,846,865号)。
【0004】
本明細書における参照文献の引用は、それらの参照文献が本開示に関連していること、
またはそれらの参照文献が本開示に対する従来技術を構成するものであることの承認と解
釈されないものとする。
【発明の概要】
【0005】
一態様において、本開示は、配列番号1~配列番号10からなる群から選択されるポリ
ペプチド配列に対して少なくとも80%もしくは少なくとも85%もしくは少なくとも9
0%もしくは少なくとも95%の同一性を有するアミノ酸配列を含む単離された溶解素ポ
リペプチド、または溶解素活性を有するその断片、の有効量;並びに薬剤的に許容できる
担体、を含む医薬組成物であって、前記溶解素ポリペプチドが緑膿菌(P. aeruginosa)
および所望により少なくとも1つの他のグラム陰性菌種を増殖阻害する、またはその菌数
を減少させる、または死滅させる、前記医薬組成物を提供する。
【0006】
いくつかの実施形態において、溶解素ポリペプチドまたは断片は、緑膿菌(P. aerugin
osa)および所望により少なくとも1つの他のグラム陰性菌種を増殖阻害する、またはそ
の菌数を減少させる、または死滅させるのに有効な量で存在する。
【0007】
いくつかの実施形態において、前記医薬組成物は、液剤、懸濁剤、乳濁剤、吸入可能な
散剤、エアロゾル剤、または噴霧剤である。
【0008】
いくつかの実施形態において、前記医薬組成物は、グラム陰性菌の処理に適した一つま
たは複数の抗生物質をさらに含む。
【0009】
別の態様において、本開示は、配列番号1~配列番号10からなる群から選択される配
列に対して少なくとも80%もしくは少なくとも85%もしくは少なくとも90%もしく
は少なくとも95%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む溶解素ポリペプチド、もし
くは溶解素活性を有するその断片、をコードする核酸分子を含む単離ポリヌクレオチド、
または前記ポリヌクレオチドの相補的配列、を含むベクターであって、コードされた溶解
素ポリペプチドが緑膿菌(P. aeruginosa)および所望により少なくとも1つの他のグラ
ム陰性菌種を増殖阻害する、またはその菌数を減少させる、または死滅させる、前記ベク
ターを提供する。
【0010】
別の態様において、本開示は、配列番号1~配列番号10からなる群から選択される配
列に対して少なくとも80%もしくは少なくとも85%もしくは少なくとも90%もしく
は少なくとも95%同一のアミノ酸配列を含む溶解素ポリペプチド、または溶解素活性を
有するその断片、をコードする核酸を含む、組み換え発現ベクターであって、コードされ
た溶解素ポリペプチドが緑膿菌(P. aeruginosa)および所望により少なくとも1つの他
のグラム陰性菌種を増殖阻害する、またはその菌数を減少させる、または死滅させる特性
を有し、前記核酸が異種プロモーターに機能的に連結されている、前記組み換え発現ベク
ターを提供する。
【0011】
いくつかの実施形態において、前記核酸配列はcDNA配列である。
【0012】
さらに別の態様において、本開示は、配列番号1~配列番号10からなる群から選択さ
れる配列に対して少なくとも80%もしくは少なくとも85%もしくは少なくとも90%
もしくは少なくとも95%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む溶解素ポリペプチド
、または溶解素活性を有するその断片、をコードする核酸分子を含む単離ポリヌクレオチ
ドであって、コードされた溶解素ポリペプチドが緑膿菌(P. aeruginosa)および所望に
より少なくとも1つの他のグラム陰性菌種を増殖阻害する、またはその菌数を減少させる
、または死滅させる、前記単離ポリヌクレオチドを提供する。
【0013】
いくつかの実施形態において、前記ポリヌクレオチドはcDNAである。
【0014】
別の態様において、本開示は、少なくとも1つの他のグラム陰性菌種を増殖阻害する、
またはその菌数を減少させる、または死滅させる方法であって、配列番号1~配列番号1
0からなる群から選択されるポリペプチド配列に対して少なくとも80%同一のアミノ酸
配列を含む溶解素ポリペプチド、またはその活性断片の有効量を含有し、前記溶解素ポリ
ペプチドが緑膿菌(P. aeruginosa)および所望により少なくとも1つの他のグラム陰性
菌種を増殖阻害する、またはその菌数を減少させる、または死滅させる特性を有する、組
成物と、前記細菌を接触させることを含む、前記方法を提供する。
【0015】
関連の態様において、本開示は、緑膿菌(P. aeruginosa)および所望により一つまた
は複数の追加のグラム陰性菌種からなる群から選択されるグラム陰性菌によって引き起こ
される細菌感染を治療する方法であって、細菌感染と診断された、その危険性がある、ま
たはその症状を示している対象に、配列番号1~配列番号10からなる群から選択される
ポリペプチド配列に対して少なくとも80%同一のアミノ酸配列を含む溶解素ポリペプチ
ド、またはその活性断片の有効量を含有し、前記溶解素ポリペプチドが緑膿菌(P. aerug
inosa)および所望により少なくとも1つの他のグラム陰性菌種を増殖阻害する、または
その菌数を減少させる、または死滅させる特性を有する、組成物を投与することを含む、
前記方法を提供する。
【0016】
別の態様において、本開示は、緑膿菌(P. aeruginosa)および所望により一つまたは
複数の追加のグラム陰性菌種からなる群から選択されるグラム陰性菌によって引き起こさ
れる局所的または全身的な病原性細菌感染を治療する方法であって、対象に、配列番号1
~配列番号15からなる群から選択されるポリペプチド配列に対して少なくとも80%同
一のアミノ酸配列を含む溶解素ポリペプチドの有効量を含有する組成物を投与することを
含み、前記ポリペプチドまたはペプチドが緑膿菌(P. aeruginosa)および所望により少
なくとも1つの他のグラム陰性菌を増殖阻害する、またはその菌数を減少させる、または
死滅させる特性を有する、前記方法を提供する。
【0017】
さらに別の態様において、本開示は、細菌感染を予防または治療する方法であって、細
菌感染と診断された、その危険性がある、またはその症状を示している対象に、配列番号
1~配列番号10からなる群から選択されるポリペプチド配列に対して少なくとも80%
、もしくは少なくとも85%、もしくは少なくとも90%、もしくは少なくとも95%同
一のアミノ酸配列を含む溶解素ポリペプチド、またはその断片、の有効量を含有する、第
一の有効量の組成物、および、グラム陰性菌感染の治療に適した第二の有効量の抗生物質
、の組合せを同時投与することを含む、前記方法を提供する。
【0018】
いくつかの実施形態において、少なくとも1つの他のグラム陰性菌種は、緑膿菌(Pseu
domonas aeruginosa)、クレブシエラ属種(Klebsiella spp.)、エンテロバクター属種
(Enterobacter spp.)、大腸菌(Escherichia coli)、シトロバクター・フロインデイ
(Citrobacter freundii)、ネズミチフス菌(Salmonella typhimurium)、ペスト菌(Ye
rsinia pestis)、および野兎病菌(Franciscella tulerensis)からなる群から選択され
【0019】
いくつかの実施形態において、溶解素ポリペプチドのアミノ酸配列は、配列番号1~配
列番号10からなる群から選択される配列に対して少なくとも85%もしくは少なくとも
90%同一である、または溶解素活性を有するその断片である。
【0020】
いくつかの実施形態において、前記溶解素ポリペプチドのアミノ酸配列は、配列番号1
~配列番号10からなる群から選択される配列に対して少なくとも95%同一である、ま
たは溶解素活性を有するその断片である。
【0021】
いくつかの実施形態では、前記グラム陰性菌感染は緑膿菌(Pseudomonas aeruginosa)
によって引き起こされる感染である。
【0022】
いくつかの実施形態では、前記抗生物質は、セフタジジム、セフェピム、セフォペラゾ
ン、セフトビプロール、シプロフロキサシン、レボフロキサシン、アミノグリコシド系抗
生物質、イミペネム、メロペネム、ドリペネム、ゲンタマイシン、トブラマイシン、アミ
カシン、ピペラシリン、チカルシリン、ペニシリン、リファンピシン、ポリミキシンB、
およびコリスチンのうちの一つまたは複数から選択される。
【0023】
別の態様において、本開示は、グラム陰性菌感染の治療に適した抗生物質の有効性を増
強するための方法であって、配列番号1~配列番号10からなる群から選択されるポリペ
プチド配列に対して少なくとも80%同一のアミノ酸配列を含む一つもしくは複数の溶解
素ポリペプチド、またはその活性断片、と併せて、抗生物質を同時投与することを含み、
前記組み合わせの投与が、抗生物質または溶解素ポリペプチドまたはその活性断片を個々
に投与するよりも、前記グラム陰性菌を増殖阻害する、またはその菌数を減少させる、ま
たは死滅させるのにより有効である、前記方法を提供する。
【0024】
いくつかの実施形態において、前記溶解素ポリペプチドのアミノ酸配列は、配列番号1
~配列番号10からなる群から選択される配列に対して少なくとも90%同一である、ま
たは溶解素活性を有するその断片である。
【0025】
いくつかの実施形態において、前記溶解素ポリペプチドのアミノ酸配列は、配列番号1
~配列番号10からなる群から選択される配列に対して少なくとも95%同一である、ま
たは溶解素活性を有するその断片である。
【0026】
別の態様における、配列番号1~配列番号10からなる群から選択されるポリペプチド
配列に対して少なくとも80%もしくは少なくとも85%もしくは少なくとも90%もし
くは少なくとも95%の同一性を有するアミノ酸配列を含む単離溶解素ポリペプチド、ま
たは溶解素活性を有するその断片であって、緑膿菌(P. aeruginosa)および、所望によ
り、少なくとも1つの他のグラム陰性菌種を増殖阻害する、またはその菌数を減少させる
、または死滅させる、前記単離溶解素ポリペプチド、または溶解素活性を有するその断片
【図面の簡単な説明】
【0027】
図1図1は、本開示において報告される溶解素ポリペプチドGN37のヌクレオチド配列およびアミノ酸配列を示している。図1A(左)はGN37のアミノ酸配列である。図1A(右)はGN37のヌクレオチド配列である。図1BはGN37の模式図であり、GN37が、(VanYスーパーファミリーのメンバーを含む)DD-カルボキシペプチダーゼ活性およびDL-カルボキシペプチダーゼ活性を有するPGHのPeptidase_M15_4ファミリーのメンバーであることを示している。図1Cは、GN37を、グラム陽性の部分相同体(ストレプトマイセス、GenBank配列AGJ50592.1)と、並びに、大腸菌(GenBank WP_001117823.1およびNP_543082.1、共に推定エンドリシン)、エルシニア属種(Yersinia spp.)(GenBank CAJ28446.1、確認されたエンドリシン)、およびアシネトバクター・バウマンニ(Acinetobacter baumannii)(GenBank WP_034684053.1、推定溶解素)を含む他のグラム陰性病原菌由来の推定上または確認されたエンドリシンと、比較している多重配列アラインメントを示している。
【0028】
図2図2は、本開示において報告される溶解素ポリペプチドGN2、GN4、GN14、およびGN43のアミノ酸配列(太字フォント)およびヌクレオチド配列(通常フォント)を示している。
【0029】
図3図3は、種々のGN溶解素ポリペプチドの存在下での、緑膿菌(P. aeruginosa)株PAO1による、コントロールに対しての、蛍光シグナルの誘導倍率(fold induction)を示す棒グラフであり、ここで蛍光は外膜の透過化を示す。
【0030】
図4図4は、緑膿菌(P. aeruginosa)株PAO1に対するGN溶解素ポリペプチドの抗菌活性を示す棒グラフである。コロニー形成単位(CFU)の減少が対数スケールで示されている。
【0031】
図5図5は、GN4由来の5種の溶解素ペプチド、すなわち、PGN4、FGN4-1、FGN4-2、FGN4-3、およびFGN4-4の、アミノ酸配列を示している。
【0032】
図6図6は、緑膿菌(P. aeruginosa)株PAO1に対する各GN4由来溶解素ペプチド(PGN4、FGN4-1、FGN4-2、FGN4-3、およびFGN4-4)の抗菌活性を示す棒グラフである。CFU数の減少が対数目盛に沿って示されている。
【0033】
図7図7は、緑膿菌(P. aeruginosa)株PAO1に対する、プールされたGN溶解素ポリペプチドおよび本開示のGN4由来溶解素ペプチドの、ヒト血清中の抗菌活性を示す棒グラフである。CFU数の減少が対数目盛に沿って示されている。
【発明を実施するための形態】
【0034】
定義
本明細書で使用される場合、以下の用語およびその同族語は、文脈上別の意味であるこ
とが明らかでない限り、これらの用語に付与された意味を有するものとする。
【0035】
「グラム陰性菌」とは、一般的に、グラム染色においてクリスタルバイオレット染色が
脱色される細菌、すなわち、グラム染色プロトコルにおいてクリスタルバイオレット色素
が保持されない細菌を指す。本明細書で使用される場合、用語「グラム陰性菌」は、限定
はされないが、以下の細菌種の一つまたは複数(すなわち、1つまたは組み合わせ)を記
述するものであってよい:アシネトバクター・バウマンニ(Acinetobacter baumannii)
、アシネトバクター・ヘモリティカス(Acinetobacter haemolyticus)、アクチノバチル
ス・アクチノミセタムコミタンス(Actinobacillus actinomycetemcomitans)、アエロモ
ナス・ハイドロフィラ(Aeromonas hydrophila)、バクテロイデス・フラジリス(Bacter
oides fragilis)、バクテロイデス・テタイオタオミクロン(Bacteroides theataioatam
icron)、バクテロイデス・ディスタソニス(Bacteroides distasonis)、バクテロイデ
ス・オバータス(Bacteroides ovatus)、バクテロイデス・ブルガタス(Bacteroides vu
lgatus)、百日咳菌(Bordetella pertussis)、ヤギ流産菌(Brucella melitensis)、
セパシア菌(Burkholderia cepacia)、類鼻疽菌(Burkholderia pseudomallei)、鼻疽
菌(Burkholderia mallei)、プレボテラ・コーポリス(Prevotella corporis)、プレボ
テラ・インターメディア(Prevotella intermedia)、プレボテラ・エンドドンタリス(P
revotella endodontalis)、ポルフィロモナス・アサッカロリティカ(Porphyromonas as
accharolytica)、カンピロバクター・ジェジュニ(Campylobacter jejuni)、カンピロ
バクター・コリ(Campylobacter coli)、カンピロバクター・フィタス(Campylobacter
fetus)、シトロバクター・フロインデイ(Citrobacter freundii)、シトロバクター・
コセリ(Citrobacter koseri)、エドワージエラ・タルダ(Edwarsiella tarda)、エイ
ケネラ・コローデンス(Eikenella corrodens)、エンテロバクター・クロアカ(Enterob
acter cloacae)、エンテロバクター・エアロゲネス(Enterobacter aerogenes)、エン
テロバクター・アグロメランス(Enterobacter agglomerans)、大腸菌(Escherichia co
li)、野兎病菌(Francisella tularensis)、インフルエンザ菌(Haemophilus influenz
ae)、軟性下疳菌(Haemophilus ducreyi)、ピロリ菌(Helicobacter pylori)、キンゲ
ラ・キンゲ(Kingella kingae)、肺炎桿菌(Klebsiella pneumoniae)、クレブシエラ・
オキシトカ(Klebsiella oxytoca)、鼻硬腫菌(Klebsiella rhinoscleromatis)、臭鼻
菌(Klebsiella ozaenae)、在郷軍人病菌(Legionella penumophila)、カタル球菌(Mo
raxella catarrhalis)、モルガン菌(Morganella morganii)、淋菌(Neisseria gonorr
hoeae)、髄膜炎菌(Neisseria meningitidis)、パスツレラ・マルトシダ(Pasteurella
multocida)、プレシオモナス・シゲロイデス(Plesiomonas shigelloides)、プロテウ
ス・ミラビリス(Proteus mirabilis)、プロテウス・ブルガリス(Proteus vulgaris)
、プロテウス・ペンネリ(Proteus penneri)、プロテウス・ミクソファシエンス(Prote
us myxofaciens)、プロビデンシア・スチュアルティ(Providencia stuartii)、プロビ
デンシア・レットゲリ(Providencia rettgeri)、プロビデンシア・アルカリファシエン
ス(Providencia alcalifaciens)、緑膿菌(Pseudomonas aeruginosa)、蛍光菌(Pseud
omonas fluorescens)、チフス菌(Salmonella typhi)、パラチフス菌(Salmonella par
atyphi)、霊菌(Serratia marcescens)、シゲラ・フレックスネリ(Shigella flexneri
)、シゲラ・ボイディ(Shigella boydii)、ソンネ菌(Shigella sonnei)、志賀赤痢菌
(Shigella dysenteriae)、ステノトロフォモナス・マルトフィリア(Stenotrophomonas
maltophilia)、ストレプトバチルス・モニリフォルミス(Streptobacillus moniliform
is)、コレラ菌(Vibrio cholerae)、腸炎ビブリオ(Vibrio parahaemolyticus)、ビブ
リオ・バルニフィカス(Vibrio vulnificus)、ビブリオ・アルギノリチカス(Vibrio al
ginolyticus)、エンテロコリチカ菌(Yersinia enterocolitica)、ペスト菌(Yersinia
pestis)、仮性結核菌(Yersinia pseudotuberculosis)、肺炎クラミジア(Chlamydoph
ila pneumoniae)、クラミドフィラ・トラコマチス(Chlamydophila trachomatis)、発
疹チフスリケッチア(Ricketsia prowazekii)、Q熱コクシエラ(Coxiella burnetii)
、エーリキア・シャフェンシス(Ehrlichia chaffeensis)、またはヘンセラ菌(Bartone
lla hensenae)。本開示の化合物は、病原菌増殖の予防または阻害、および、一つまたは
複数の細菌感染、特に、ただし必ずしも排他的にではなく、グラム陰性菌、特に緑膿菌(
P. aeruginosa)の治療に有用となる。
【0036】
薬剤との関連における用語「殺菌性の」とは、従来的には、初期の細菌集団の間で、少
なくとも3log(99.9%)程度またはより良好な減少に及ぶ、細菌の死を引き起こ
す特性、または、細菌を殺傷することが可能な特性を有していることを意味する。
【0037】
用語「静菌性の」とは、従来的には、細菌細胞の増殖阻害を含む、細菌増殖の阻害によ
り、初期細菌集団の間で2log(99%)以上3log未満の減少を引き起こす特性を
有することを意味する。
【0038】
薬剤との関連における用語「抗菌性の」は、一般的に、静菌剤および殺菌剤の両方を包
含するように使用される。
【0039】
病原体、より具体的には細菌、との関連における用語「薬剤耐性の」は、一般的に、薬
剤の抗菌活性に耐性を有する細菌を指す。より具体的には、薬剤耐性は特に抗生物質耐性
を指す。場合によっては、特定の抗生物質の影響を通常受け易い細菌が、その抗生物質に
対する耐性を生じることで、薬剤耐性の微生物または菌株となることがある。「多剤耐性
の」病原体は、単独療法としてそれぞれ使用された、少なくとも2種の抗菌薬に対する耐
性を生じた病原体である。例えば、緑膿菌(Pseudomonas aeruginosa)のある特定の菌株
は、アミノグリコシド系抗生物質、セファロスポリン系抗生物質、フルオロキノロン系抗
生物質、およびカルバペネム系抗生物質(Antibiotic Resistant
Threats in the United States、2013年、アメリカ合
衆国保健福祉省、疾病予防管理センター)を含む、ほぼ全てまたは全ての抗生物質に対し
て耐性を有することが判明している。当業者であれば、薬剤または抗生物質に対する細菌
の感受性または耐性を判定する通例の実験技術を用いて、ある細菌が薬剤耐性であるかど
うかを容易に判定することができる。
【0040】
用語「薬剤的に許容できる担体」は、生理的に適合性の、あらゆる溶媒、添加剤、賦形
剤、分散媒、可溶化剤、被覆剤、保存剤、等張吸収遅延剤(isotonic and absorption de
laying agent)、界面活性剤、および噴霧剤等を包含する。担体は、薬剤中で典型的に使
用される量において、処置を受ける対象に対して有害でないという意味で、「許容可能」
でなければならない。薬剤的に許容できる担体は、組成物をその使用目的に不適切にする
こと無く、組成物の他の成分に適合する。さらに、薬剤的に許容できる担体は、過度の有
害副作用(毒性、過敏、およびアレルギー反応等)を起こさずに、本明細書で提供される
主題との使用に適している。副作用は、そのリスクが組成物によって与えられる利益を凌
ぐ場合、「過度」とされる。薬剤的に許容できる担体または賦形剤の非限定例には、標準
的な医薬担体、例えば、リン酸緩衝食塩水、水、およびエマルジョン、例えば、水中油型
乳剤およびマイクロエマルション、のいずれもが含まれる。
【0041】
凍結乾燥された溶解素ポリペプチドを含む固体組成物について、尿素またはメスナ等の
賦形剤を含ませることで、安定性を向上させることができる。他の賦形剤としては、増量
剤、緩衝剤、張度調整剤(tonicity modifier)、界面活性剤、保存剤および助溶剤が挙
げられる。
【0042】
溶解素ポリペプチドを含む固体経口用組成物において、適切な薬剤的に許容できる賦形
剤としては、限定はされないが、デンプン、糖類、希釈剤、顆粒化剤、滑沢剤、結合剤、
および崩壊剤等が挙げられる。
【0043】
液体経口用組成物において、適切な薬剤的に許容できる賦形剤としては、限定はされな
いが、水、グリコール、油、アルコール、香味剤、および保存剤等が挙げられる。
【0044】
クリーム剤、ゲル剤、発泡剤、軟膏剤、または噴霧剤等の局所用固体組成物において、
適切な賦形剤としては、限定はされないが、クリーム、セルロース系または油性基剤、乳
化剤、硬化剤、レオロジー調整剤または増粘剤、界面活性剤、皮膚軟化薬、保存剤、保湿
剤、アルカリ化剤または緩衝剤、および溶媒が挙げられる。
【0045】
発泡基剤の製剤に適した賦形剤としては、限定はされないが、プロピレングリコール、
乳化ろう、セチルアルコール、およびステアリン酸グリセリルが挙げられる。有望な保存
剤としては、メチルパラベンおよびプロピルパラベンが挙げられる。
【0046】
用語「有効量」とは、適切な頻度または投与計画で塗布または投与された場合に、細菌
増殖を予防もしくは阻害するのに十分である、または、治療対象の障害(ここでは病原性
微生物の増殖もしくは感染)の発症、重症度、持続期間もしくは進行を防止、低減もしく
は改善する、治療対象の障害の進行を防止する、治療対象の障害の後退を引き起こす、ま
たは、抗生物質療法もしくは静菌剤療法等の別の治療法の予防効果もしくは治療効果を増
強もしくは改善する、量を指す。
【0047】
用語「同時投与する」とは、単一混合物/組成物において、または、別々にではあるが
、例えば同日内もしくは24時間以内の異なる時点に実質的に同時に対象に投与される用
量において等の、溶解素ポリペプチドおよび抗生物質またはあらゆる他の抗菌剤の別々の
逐次投与、並びに、これらの薬剤の実質的に同時の投与、を包含することが意図される。
このような、溶解素ポリペプチドと一つまたは複数の追加の抗菌剤の同時投与は、最長で
数日間、数週間、または数ヵ月間継続する、連続的な処置として提供され得る。さらに、
用途によっては、この同時投与は、連続的または同一の時間に亘るものである必要はない
。例えば、用途が例えば細菌性潰瘍または感染性糖尿病性潰瘍を治療するための局所用抗
菌剤としての用途である場合、最初の抗生物質の使用の24時間以内に溶解素が最初だけ
投与され、その後は、溶解素のさらなる投与無しで該抗生物質の使用が継続され得る。
【0048】
用語「対象」とは、治療を受ける対象を指し、特に、哺乳動物、植物、下等動物、単一
細胞生物または細胞培養物を包含する。例えば、用語「対象」は、グラム陰性菌感染に罹
り易い、またはそれに罹患した、生物、例えば原核生物および真核生物、を包含すること
が意図される。対象の例としては、哺乳類、例えば、ヒト、イヌ、雌ウシ、ウマ、ブタ、
ヒツジ、ヤギ、ネコ、マウス、ウサギ、ラット、および遺伝子組換え非ヒト動物が挙げら
れる。ある特定の実施形態では、対象はヒト、例えば、全身性であるか、特定の器官また
は組織に限定されているかに関わらず、グラム陰性菌感染に罹患した、それに罹患する危
険性がある、またはそれに罹患し易い、ヒトである。
【0049】
用語「ポリペプチド」は、用語「タンパク質」および「ペプチド」と同義的に使用され
、アミノ酸残基から作られる、且つ少なくとも約30アミノ酸残基を有する、重合体を指
す。前記用語は、単離型のポリペプチドだけでなく、その活性断片および誘導体(下記で
定義)も包含する。用語「ポリペプチド」は、下記の溶解素ポリペプチドを含み、且つ溶
解素機能を維持している、融合タンパク質または融合ポリペプチドも包含する。ポリペプ
チドは、天然ポリペプチド、または操作された、もしくは合成によって生成されたポリペ
プチドであり得る。ある特定の溶解素ポリペプチドは、例えば、酵素的もしくは化学的な
切断によって未変性タンパク質から派生させる、もしくは取り出すことが可能であり、ま
たは、従来のペプチド合成法(例えば、固相合成法)もしくは分子生物学的手法(例えば
、Sambrook, J. et al., Molecular Cloning: A Laboratory Manual, Cold Spring Harbo
r Press, Cold Spring Harbor, N.Y. (1989)に開示される手法)を用いて調製することが
可能性があり、または、活性断片をもたらしながら戦略的に切断もしくはセグメント化す
ることが可能であり、本明細書では例えば、GN4の両親媒性ドメインを含むGN4の断
片、および、同一もしくは少なくとも1つの共通の標的細菌に対する溶解素活性を保持す
るそのさらなる切断型が例示される。天然溶解素ポリペプチド(上記の通り、天然溶解素
タンパク質の活性断片も含む)と、少なくとも80%または少なくとも85%または少な
くとも90%または少なくとも95%または少なくとも98%の配列同一性を有する、天
然溶解素ポリペプチドのバリアントも包含される。
【0050】
用語「融合ポリペプチド」とは、異なる特性または機能性を有する2つのドメインまた
はセグメントを典型的には有する融合型発現産物をもたらす、2つ以上の核酸セグメント
の融合から生じた発現産物を指す。より具体的な意味では、用語「融合ポリペプチド」は
、直接的に、またはアミノ酸もしくはペプチドリンカーを介して共有結合した2つ以上の
異種ポリペプチドまたは異種ペプチドを含むポリペプチドまたはペプチドも指す。融合ポ
リペプチドを形成するポリペプチドは、C末端からC末端に、N末端からN末端に、また
はN末端からC末端に連結されることもあるが、典型的にはC末端からN末端に連結され
る。用語「融合ポリペプチド」は、用語「融合タンパク質」と同義的に使用され得る。す
なわち、ある特定の構造「を含むポリペプチド」というオープンエンドの表現は、融合ポ
リペプチド等の記載された構造よりも大きな分子を包含する。
【0051】
用語「異種の」とは、生まれが近接していない、ヌクレオチド配列、ペプチド配列、ま
たはポリペプチド配列を指す。例えば、本開示との関連では、用語「異種の」は、例えば
、増強された溶解素活性を有し得る、溶解素ポリペプチドまたはその活性断片と、カチオ
ン性および/またはポリカチオン性ペプチド、両親媒性ペプチド、スシペプチド(sushi
peptide)(Ding et al. Cell Mol Life Sci., 65(7-8):1202-19 (2008))、デフェンシ
ンペプチド(Ganz, T. Nature Reviews Immunology 3, 710-720 (2003))、疎水性ペプチ
ドおよび/または抗菌ペプチド等の、融合ペプチドまたは融合ポリペプチドが天然に通常
は存在しない、2つ以上のペプチドおよび/またはポリペプチドの組み合わせまたは融合
を記述するために使用され得る。2つ以上の溶解素ポリペプチドまたはその活性断片も、
この定義に包含される。溶解素活性を有する融合ポリペプチドの作製にこれらを使用する
ことができる。
【0052】
用語「活性断片」とは、単離された元のポリペプチドの一つまたは複数の機能または生
物活性を保持する、本明細書で開示される完全長ポリペプチドの部分を指す。例えば、図
2のGN4および図5のその断片(FGN4-1およびFGN4-2)を参照されたい。
本明細書において特に重要な生物活性は、糖骨格切断によるものかペプチド結合切断によ
るものかに関わらず、外膜に穿入し、グラム陰性菌の被膜を加水分解する活性を有する溶
解素の生物活性である。
【0053】
用語「両親媒性ペプチド」とは、親水性官能基および疎水性官能基の両方を有するペプ
チドを指す。疎水性アミノ酸残基と親水性アミノ酸残基とがペプチドの異なる末端に配置
された二次構造が好ましい。これらのペプチドはヘリックス二次構造をとることが多い。
【0054】
用語「カチオン性ペプチド」とは、正電荷を持つアミノ酸残基を有するペプチドを指す
。カチオン性ペプチドは9.0以上のpKa値を有することが好ましい。本開示との関連
における用語「カチオン性ペプチド」は、ポリカチオン性ペプチドも包含する。
【0055】
用語「ポリカチオン性ペプチド」とは、本明細書で使用される場合、正電荷を持つアミ
ノ酸残基、具体的にはリジン残基および/またはアルギニン残基、から主に構成される、
合成によって生成されたペプチドを指す。正に帯電していないアミノ酸残基は、中性電荷
を持つアミノ酸残基および/または負の電荷を持つアミノ酸残基および/または疎水性ア
ミノ酸残基であり得る。
【0056】
用語「疎水性基」とは、水分子に対する親和性が低いかまたは無いが、油性分子に対し
てより高い親和性を有する、アミノ酸側鎖等の化学基を指す。疎水性の物質は、水または
水相への溶解性が低いまたは無い傾向があり、典型的には無極性であるが、油相にはより
高い溶解性を有する傾向がある。疎水性アミノ酸の例としては、グリシン(Gly)、ア
ラニン(Ala)、バリン(Val)、ロイシン(Leu)、イソロイシン(Ile)、
プロリン(Pro)、フェニルアラニン(Phe)、メチオニン(Met)、およびトリ
プトファン(Trp)が挙げられる。
【0057】
本開示との関連における用語「増強する」は、増強されていない場合よりも、抗菌活性
の程度がより高くなることを意味する。「増強する」は、相加効果および相乗効果(超相
加効果)を包含する。
【0058】
作用に関連した用語「相乗的な」または「超相加的な」は、各物質が単独で投与または
塗布されることによって生じる作用を超える、2つの作用物質によってもたらされる有益
な作用を意味する。一方または両方の活性成分が、閾値下(subtreshold)レベルで、す
なわち、その作用物質が個々に使用された場合に、作用を生じない、または作用が非常に
限定されるレベルで、使用され得る。
【0059】
用語「治療(treatment)」とは、ヒトを含む対象が、直接的または間接的に、障害を
治癒する、または病原体を根絶する、または対象の状態を改善することを目的として医療
扶助を受ける、あらゆるプロセス、行為、適用、療法等を指す。治療は、発生率の減少、
もしくは症状の軽減、再発の排除、再発の予防、発生の予防、症状の改善、予後の改善ま
たはこれらの組合せも指す。「治療」はさらに、対象における細菌の菌数、成長速度また
は病原性を減少させることで、対象における細菌感染、または器官もしくは組織もしくは
環境の細菌汚染を管理または低減することも包含する。すなわち、発生率を減少させる「
治療」は、対象であれ環境(environment)であれ、特定の環境(milieu)における少な
くとも1つのグラム陰性細菌の増殖を阻害するのに有効である。一方、既に確立した感染
の「治療」は、感染もしくは汚染の原因であるグラム陰性菌の菌数を減少させること、ま
たは、根絶も含んで、それを死滅させること、を指す。
【0060】
用語「予防する」は、細菌感染等の障害の発生、再発、拡散、発症または確立の予防を
包含する。本開示が感染の完全な予防または感染の確立の予防に限定されることは意図さ
れていない。いくつかの実施形態では、発症の遅延、または後に罹患した疾患の重症度の
低減によって、予防例が構成される。本開示との関連において、罹患した疾患は、そのよ
うな病態に伴う症状がまだ顕在化していない場合、病原性微生物の検出および病原性微生
物の増殖の検出のような、臨床症状と共に顕在化している疾患または潜在性症状と共に顕
在化している疾患の両方を包含する。
【0061】
ペプチドまたはポリペプチドとの関連における用語「誘導体」(本開示に記載されるよ
うに、活性断片を含む)は、例えば、溶解素活性に実質的に悪影響を与えないアミノ酸、
または溶解素活性を実質的に破壊しないアミノ酸以外の、一つまたは複数の化学的部分を
含有するように修飾されたポリペプチドを包含することが意図される。前記化学的部分は
、例えば、アミノ末端のアミノ酸残基を介して、カルボキシ末端のアミノ酸残基を介して
、または内部のアミノ酸残基において、前記ペプチドに共有結合的に連結され得る。その
ような修飾としては、反応性部分における保護基もしくはキャップ形成基の付加、抗体お
よび/もしくは蛍光ラベル等の検出可能な標識の付加、グリコシル化の付加もしくは修飾
、またはPEG(ペグ化)等の嵩高基(bulking group)の付加、並びに、溶解素ポリペ
プチドの活性に実質的に悪影響を与えない、もしくはそれを実質的に破壊しない他の変化
が挙げられる。
【0062】
溶解素ポリペプチドに付加され得る一般的に使用される保護基としては、限定はされな
いが、t-BocおよびFmocが挙げられる。
【0063】
緑色蛍光タンパク質(GFP)、赤色蛍光タンパク質(RFP)、シアン蛍光タンパク
質(CFP)、黄色蛍光タンパク質(YFP)およびmCherryを含むがこれらに限
定はされない、一般的に使用される蛍光ラベルタンパク質は、細胞タンパク質の通常の機
能に干渉することなく、溶解素ポリペプチドに共有結合的もしくは非共有結合的に結合可
能な、または、溶解素ポリペプチドに融合可能な、小型のタンパク質である。典型的には
、蛍光タンパク質をコードするポリヌクレオチドが、溶解素ポリヌクレオチド配列の上流
または下流に挿入される。これにより、細胞機能または結合した溶解素ポリペプチドの機
能に干渉しない、融合タンパク質(例えば、溶解素ポリペプチド::GFP)が産生され
ることとなる。
【0064】
タンパク質へのポリエチレングリコール(PEG)の結合は、多くの医薬用タンパク質
の循環系内半減期を延長するための方法として使用されている。従って、溶解素ポリペプ
チド誘導体との関連において、用語「誘導体」は、一つまたは複数のPEG分子の共有結
合によって化学修飾された溶解素ポリペプチドを包含する。ペグ化溶解素ポリペプチドは
、生物学的活性および治療活性を保持しながら、ペグ化されていない溶解素ポリペプチド
と比較して延長された循環系内半減期を示すことが期待される。
【0065】
溶解素ポリペプチド配列に関連した、用語「パーセントアミノ酸配列同一性」は、本明
細書においては、配列をアラインメントし、必要であればギャップを導入して最大のパー
セント配列同一性を達成した後の、特定の溶解素ポリペプチド配列内のアミノ酸残基と同
一の候補配列内のアミノ酸残基の割合として定義され、いかなる保存的置換も配列同一性
の一部と見なされない。パーセントアミノ酸配列同一性を決定することを目的としたアラ
インメントは、当業者の技術の範囲内である様々な方法で、例えば、BLASTまたはM
egalign(DNASTAR)ソフトウェア等の公的に利用可能なソフトウェアを用
いて、達成することができる。2つ以上のポリペプチド配列は、0%から100%の同一
性、またはそれらの間のあらゆる整数値の同一性をとり得る。本開示との関連において、
2つのポリペプチドは、アミノ酸残基の少なくとも80%(好ましくは少なくとも約85
%、少なくとも約90%、好ましくは少なくとも約95%)が同一である場合に、「実質
的に同一」である。本明細書に記載される用語「パーセント(%)アミノ酸配列同一性」
は、溶解素ペプチドにも当てはまる。すなわち、用語「実質的に同一な」は、本明細書に
記載の単離された溶解素ポリペプチドおよび溶解素ペプチドの変異型、切断型、融合型、
または他の配列修飾型、並びにその活性断片、並びに、基準ポリペプチドとの比較におい
て実質的な配列同一性(例えば上記の一つまたは複数の方法によって測定された場合に、
例えば、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、または少なくとも9
5%の同一性)を有するポリペプチドを包含する。
【0066】
2つのアミノ酸配列は、アミノ酸残基の少なくとも約80%(好ましくは少なくとも約
85%、少なくとも約90%、好ましくは少なくとも約95%)が同一である、または保
存的置換を表す場合に、「実質的に相同」である。本開示の溶解素ポリペプチドの配列は
、溶解素ポリペプチドのアミノ酸のうちの一つまたは複数、または数個、または10%以
下、または15%以下、または20%以下が、類似または保存的アミノ酸置換で置換され
ており、得られた溶解素が、本明細書で開示される溶解素ポリペプチドの活性、抗菌作用
、および/または細菌特異性の特性を有している場合に、実質的に相同である。本明細書
に記載される「実質的に相同な」の意味は、溶解素ペプチドにも当てはまる。
【0067】
用語「吸入可能な組成物」とは、日常呼吸または補助呼吸(例えば、気管気管支内投与
、経肺投与、および/または経鼻投与による)中の、またはそれと協同した、気道への直
接送達用に製剤化されている本開示の医薬組成物を指し、例えば、限定はされないが、微
粒化、噴霧化、乾燥粉末化および/またはエアロゾル化された製剤が挙げられる。
【0068】
用語「生物膜」とは、表面に付着し、それら自身の合成物である水和した重合体マトリ
ックス中に凝集した、細菌を指す。生物膜は、表面上で細胞が互いに接着し合っている、
微生物の凝集物である。これらの接着細胞はしばしば、自ら産生した細胞外高分子物質(
EPS)のマトリックス中に包埋される。生物膜EPSは、スライム(スライムと記載さ
れたもの全てが生物膜というわけではないが)またはプラークとも称され、細胞外DNA
、タンパク質、および多糖類から通常は構成される重合体の集塊である。
【0069】
ある特定の細菌に対する使用に適切である抗生物質という文脈における用語「適切な」
は、耐性が後に生じたとしても、それらの細菌に対して有効であることが判明した抗生物
質を指す。
【0070】
用語「抗菌ペプチド」(AMP)は、実質的に全ての生物において見つけることができ
る、広範な、短鎖の(一般に、6~50アミノ酸残基長)、カチオン性の、遺伝子がコー
ドする、ペプチド抗生物質の一員を指す。様々なAMPが様々な特性を示し、このクラス
の多くのペプチドが、抗生物質としてだけでなく、細胞透過性ペプチドのテンプレートと
しても、集中的に研究されている。少数の共通の特徴(例えば、カチオン性、両親媒性お
よびサイズの短さ)を共有しているが、AMPの配列は大きく異なっており、少なくとも
4つの構造グループ(αヘリックス構造、βシート構造、拡張(extended)構造およびル
ープ構造)が、確認されたAMP高次構造の多様性に対応していると提唱されている。同
様に、抗生物質としてのいくつかの作用機序が提唱されており、例えば、これらペプチド
の多くは第一標的を細胞膜とするが、一方、他のペプチドについては第一標的が細胞質侵
入およびコアとなる代謝機能の破壊であることが示された。AMPは、十分に濃縮される
ことで、特異的な標的結合が無くとも、例えば、ほとんどのAMPの場合のように膜にお
ける細孔の形成によって、協同的な活性を示し得る。しかし、この現象はリン脂質二重層
モデルにおいて確認されただけであり、一部の例では、6リン脂質分子当たり1ペプチド
分子ほどの膜中のAMP濃度が、これらの事象が起こるために必要とされた。これらの濃
度は、完全膜飽和に達してはいないにしろ、それに近い。AMPの最小阻止濃度(MIC
)は典型的には低マイクロモルの範囲にあるため、当然ながら、これらの閾値とAMPの
インビボにおける重要性との関連性に関しての懐疑が生じた(Melo et al., Nature Revi
ews Microbiology, 7, 245-250 (2009))。
【0071】
デフェンシンは、低分子の、カチオン性の、高システイン型および高アルギニン型の抗
菌ペプチドからなる巨大なファミリーであり、脊椎動物および無脊椎動物の両方に存在す
る(Wilmes, M. and Sahl, H., Int J Med Microbiol. ;304(1):93-9 (2014))。デフェ
ンシンはシステインの間隔パターンに応じて5つのグループに分類される:植物デフェン
シン、無脊椎動物デフェンシン、αデフェンシン、βデフェンシン、およびθデフェンシ
ン。αデフェンシン、βデフェンシン、およびθデフェンシンは主に哺乳類に存在する。
αデフェンシンは、好中球および腸管上皮に存在するタンパク質である。βデフェンシン
は、最も広く分布しており、多くの種類の白血球および上皮細胞によって分泌されるθデ
フェンシンは現在のところほとんど見つかっておらず、例えばアカゲザルの白血球で発見
された。デフェンシンは細菌、真菌、並びに多くのエンベロープウイルスおよび非エンベ
ロープウイルスに対して活性を有する。しかし、細菌の十分な死滅に必要な濃度がたいて
い高く、すなわち、マイクロモルの範囲である。生理的な塩条件、二価陽イオンおよび血
清の存在下では、多くのペプチドの活性が制限され得る。さらに、デフェンシンは本開示
の生成物および方法に望ましくない溶血活性をしばしば有する。
【0072】
スシ(Sushi)ペプチドは、補体制御タンパク質(CCP)モジュールまたはショート
コンセンサスリピート(SCR)としても知られている、スシドメインの存在を特徴とす
る。スシドメインは、様々な補体タンパク質および接着タンパク質に存在しており、これ
らのタンパク質は、短い連結配列が挟まれたスシドメインの直列配列を含有する。スシド
メインは、およそ60残基に及ぶコンセンサス配列を含有しており、このコンセンサス配
列は、分子内ジスルフィド結合に関与する4つのインバリアントなシステイン残基、高度
に保存されたトリプトファン残基、並びに保存されたグリシン残基、プロリン残基および
疎水性残基を含有する(Kirkitadze, M. and Barlow, P., Immunol Rev., 180:146-61 (2
001))。スシドメインはタンパク質間相互作用およびタンパク質リガンド相互作用に関与
することが知られている。スシドメインを含有するペプチドは抗菌活性を有することが示
されている(Ding, JL. and Ho, B. Drug Development Research, 62:317-335 (2004))
【0073】
カテリシジンは、カチオン性宿主防御ペプチド(cationic host-defence peptide)(
CHDP)(抗菌療法として提唱されたペプチドクラス)および感染に対する生得的な宿
主防御の重要な構成要素としても知られている、多機能性の抗菌ペプチドである。殺菌性
に加えて、これらのペプチドは、炎症および免疫を調節する能力を有する性質を持つ。最
近、外来性ヒトカテリシジンLL-37の送達が、マウスの急性緑膿菌肺感染モデルにお
いて感染に対する防御的な炎症誘発性反応を増強することが判明し、カテリシジンが介在
する生体内細菌排除の増強が示された(Beaumont et al. PLoS One. 2;9(6):e99029 (201
4))。すなわち、カテリシジン(cathelidicin)によって、直接的な殺菌活性の非存在下
で肺からの細菌排除が効果的に促進され、同時に、感染およびペプチド暴露の両方を必要
とし、且つ天然のカテリシジン産生とは無関係である、初期の好中球反応も増強された。
さらに、カテリシジン欠損マウスは初期の細胞炎症反応は損なわれなかったが、感染に対
する後期の好中球反応がこれらの動物では起こらず、緑膿菌(P. aeruginosa)の排除が
著しく損なわれた。これらの知見によって、体内の肺感染におけるカテリシジンの調節特
性の重要性が示され、感染性環境に特有の、防御的肺内好中球反応の誘導におけるカテリ
シジンの重要な役割が明らかにされた。Beaumont, P.E. et al, PLoS One. 2014; 9(6):
e99029. Published online 2014 Jun 2. doi: 10.1371/journal.pone.0099029。
実施形態
【0074】
本開示はグラム陰性菌に対する新規抗菌剤に関する。具体的には、本開示は、緑膿菌(
Pseudomonas aeruginosa)等のグラム陰性菌に対して活性を有する溶解素ポリペプチド(
その活性断片を含む)に関する。そのような溶解素ポリペプチドの例は、配列番号1~配
列番号10のセット内のアミノ酸配列を有するものである。天然配列は、以前に配列決定
されたが解明が部分的であるファージゲノムから、バイオインフォマティクス技術によっ
て同定された。そのように同定された配列のいくつかは推定エンドリシンと注釈付けされ
ていたが、以前は、これらの配列を有するポリペプチドにはいかなる機能も決定的には帰
属させられていなかった。さらに、推定エンドリシン(endolysisn)として注釈付けされ
たいくつかの配列は、合成後または発現後に、溶解素活性を全く持たなくなるか、または
標的病原体に対して不活性になる。単離、発現および試験の後、バイオインフォマティク
スによって特定された配列のほんの一握りだけが、実際にグラム陰性菌溶解素機能を有す
る。さらに、溶解素の活性断片が特定され、グラム陰性菌溶解素活性を有する、配列が改
変された活性なペプチドおよびポリペプチドが作製された。さらに、本開示においては、
そのような配列改変ペプチド(papetide)としては、溶解素活性を維持する、確認された
天然グラム陰性菌溶解素ポリペプチドの断片、並びに、天然溶解素ポリペプチドまたはそ
の活性断片と80%以上(例えば、少なくとも85%、少なくとも(at lestt)90%
少なくとも85%または少なくとも98%)の配列同一性を有するそのバリアントが含ま
れ、実際には、非同一の部分には、天然アミノ酸残基および非天然(合成)アミノ酸残基
の両方による置換が含まれ得る。本発明者らは、これらのポリペプチドのC末端のαヘリ
ックスドメインがグラム陰性菌溶解素活性に重要であると判断し、その活性を正確に定め
るための研究を行ったが、本明細書で開示される天然溶解素またはその断片に対して80
%以上(例えば、85%、90%、95%または98%または99%)同一の配列を有す
るいかなるペプチドも、緑膿菌(P. aeruginosa)、並びにクレブシエラ属種(Klebsiell
a spp.)、エンテロバクター属種(Enterobacter spp.)、大腸菌(Escherichia coli)
、シトロバクター・フロインデイ(Citrobacter freundii)、ネズミチフス菌(Salmonel
la typhimurium)、ペスト菌(Yersinia pestis)、および野兎病菌(Franciscella tule
rensis)等の他の菌を含む、グラム陰性菌に対する活性について、迅速に試験することが
可能である。このような試験は、例えば実施例2、3、4、または仮想例1に示されてい
る教示に従って行うことができる。当然ながら、試験の手順およびプロトコルはそれ自体
、これらの実施例における手順およびプロトコルに限定されず、抗細菌剤の、実際には抗
微生物(antimicronbial)剤の有効性を評価するための当業者に公知のあらゆる方法であ
ってよい。
【0075】
一実施形態では、本開示は、配列番号1~配列番号10に対して少なくとも80%また
は少なくとも85%または少なくとも90%または少なくとも95%のアミノ酸配列同一
性を有する有効量の溶解素ポリペプチドを対象に投与することを含む、グラム陰性菌によ
って引き起こされた、対象における細菌感染の治療法を提供する。前記細菌は、以下から
なる群から選択され得る:アシネトバクター・バウマンニ(Acinetobacter baumannii)
、アシネトバクター・ヘモリティカス(Acinetobacter haemolyticus)、アクチノバチル
ス・アクチノミセタムコミタンス(Actinobacillus actinomycetemcomitans)、アエロモ
ナス・ハイドロフィラ(Aeromonas hydrophila)、バクテロイデス・フラジリス(Bacter
oides fragilis)、バクテロイデス・テタイオタオミクロン(Bacteroides theataioatam
icron)、バクテロイデス・ディスタソニス(Bacteroides distasonis)、バクテロイデ
ス・オバータス(Bacteroides ovatus)、バクテロイデス・ブルガタス(Bacteroides vu
lgatus)、百日咳菌(Bordetella pertussis)、ヤギ流産菌(Brucella melitensis)、
セパシア菌(Burkholderia cepacia)、類鼻疽菌(Burkholderia pseudomallei)、鼻疽
菌(Burkholderia mallei) フソバクテリウム属(Fusobacterium)、プレボテラ・コー
ポリス(Prevotella corporis)、プレボテラ・インターメディア(Prevotella intermed
ia)、プレボテラ・エンドドンタリス(Prevotella endodontalis)、ポルフィロモナス
・アサッカロリティカ(Porphyromonas asaccharolytica)、カンピロバクター・ジェジ
ュニ(Campylobacter jejuni)、カンピロバクター・フィタス(Campylobacter fetus)
、カンピロバクター・コリ(Campylobacter coli)、シトロバクター・フロインデイ(Ci
trobacter freundii)、シトロバクター・コセリ(Citrobacter koseri)、エドワージエ
ラ・タルダ(Edwarsiella tarda)、エイケネラ・コローデンス(Eikenella corrodens)
、エンテロバクター・クロアカ(Enterobacter cloacae)、エンテロバクター・エアロゲ
ネス(Enterobacter aerogenes)、エンテロバクター・アグロメランス(Enterobacter a
gglomerans)、大腸菌(Escherichia coli)、野兎病菌(Francisella tularensis)、イ
ンフルエンザ菌(Haemophilus influenzae)、軟性下疳菌(Haemophilus ducreyi)、ピ
ロリ菌(Helicobacter pylori)、キンゲラ・キンゲ(Kingella kingae)、肺炎桿菌(Kl
ebsiella pneumoniae)、クレブシエラ・オキシトカ(Klebsiella oxytoca)、鼻硬腫菌
(Klebsiella rhinoscleromatis)、臭鼻菌(Klebsiella ozaenae)、在郷軍人病菌(Leg
ionella penumophila)、カタル球菌(Moraxella catarrhalis)、モルガン菌(Morganel
la morganii)、淋菌(Neisseria gonorrhoeae)、髄膜炎菌(Neisseria meningitidis)
、パスツレラ・マルトシダ(Pasteurella multocida)、プレシオモナス・シゲロイデス
(Plesiomonas shigelloides)、プロテウス・ミラビリス(Proteus mirabilis)、プロ
テウス・ブルガリス(Proteus vulgaris)、プロテウス・ペンネリ(Proteus penneri)
、プロテウス・ミクソファシエンス(Proteus myxofaciens)、プロビデンシア・スチュ
アルティ(Providencia stuartii)、プロビデンシア・レットゲリ(Providencia rettge
ri)、プロビデンシア・アルカリファシエンス(Providencia alcalifaciens)、緑膿菌
(Pseudomonas aeruginosa)、蛍光菌(Pseudomonas fluorescens)、チフス菌(Salmone
lla typhi)、パラチフス菌(Salmonella paratyphi)、霊菌(Serratia marcescens)、
シゲラ・フレックスネリ(Shigella flexneri)、シゲラ・ボイディ(Shigella boydii)
、ソンネ菌(Shigella sonnei)、志賀赤痢菌(Shigella dysenteriae)、ステノトロフ
ォモナス・マルトフィリア(Stenotrophomonas maltophilia)、ストレプトバチルス・モ
ニリフォルミス(Streptobacillus moniliformis)、コレラ菌(Vibrio cholerae)、腸
炎ビブリオ(Vibrio parahaemolyticus)、ビブリオ・バルニフィカス(Vibrio vulnific
us)、ビブリオ・アルギノリチカス(Vibrio alginolyticus)、エンテロコリチカ菌(Ye
rsinia enterocolitica)、ペスト菌(Yersinia pestis)、仮性結核菌(Yersinia pseud
otuberculosis)、肺炎クラミジア(Chlamydia pneumoniae)、トラコーマクラミジア(C
hlamydia trachomatis)、発疹チフスリケッチア(Ricketsia prowazekii)、Q熱コクシ
エラ(Coxiella burnetii)、エーリキア・シャフェンシス(Ehrlichia chafeensis)、
およびヘンセラ菌(Bartonella hensenae)。例えば、特定の実施形態では、前記グラム
陰性菌感染は、以下からなる群から選択される細菌 引き起こされる感染である:アシネ
トバクター・バウマンニ(Acinetobacter baumannii)、百日咳菌(Bordetella pertussi
s)、セパシア菌(Burkholderia cepacia)、類鼻疽菌(Burkholderia pseudomallei)、
鼻疽菌(Burkholderia mallei)、カンピロバクター・ジェジュニ(Campylobacter jejun
i)、カンピロバクター・コリ(Campylobacter coli)、エンテロバクター・クロアカ(E
nterobacter cloacae)、エンテロバクター・エアロゲネス(Enterobacter aerogenes)
、大腸菌(Escherichia coli)、野兎病菌(Francisella tularensis)、インフルエンザ
菌(Haemophilus influenzae)、軟性下疳菌(Haemophilus ducreyi)、ピロリ菌(Helic
obacter pylori)、肺炎桿菌(Klebsiella pneumoniae)、在郷軍人病菌(Legionella pe
numophila)、カタル球菌(Moraxella catarrhalis)、モルガン菌(Morganella morgani
i)、淋菌(Neisseria gonorrhoeae)、髄膜炎菌(Neisseria meningitidis)、パスツレ
ラ・マルトシダ(Pasteurella multocida)、プロテウス・ミラビリス(Proteus mirabil
is)、プロテウス・ブルガリス(Proteus vulgaris)、緑膿菌(Pseudomonas aeruginosa
)、チフス菌(Salmonella typhi)、霊菌(Serratia marcescens)、シゲラ・フレック
スネリ(Shigella flexneri)、シゲラ・ボイディ(Shigella boydii)、ソンネ菌(Shig
ella sonnei)、志賀赤痢菌(Shigella dysenteriae)、ステノトロフォモナス・マルト
フィリア(Stenotrophomonas maltophilia)、コレラ菌(Vibrio cholerae)、および肺
炎クラミジア(Chlamydia pneumoniae)。特定の実施形態では、前記グラム陰性菌感染は
、以下からなる群から選択される細菌のうちの一つまたは複数によって引き起こされる感
染である:ネズミチフス菌(Salmonella typhimurium)、チフス菌(Salmonella typhi)
、赤痢菌属種(Shigella spp.)、大腸菌(Escherichia coli)、アシネトバクター・バ
ウマンニ(Acinetobacter baumanii)、緑膿菌(Pseudomonas aeruginosa)、クレブシエ
ラ肺炎、淋菌(Neisseria gonorrhoeae)、髄膜炎菌(Neisseria meningitides)、セラ
チア属種(Serratia spp.) プロテウス・ミラビリス(Proteus mirabilis)、モルガン
菌(Morganella morganii)、プロビデンシア属種(Providencia spp.)、エドワージエ
ラ属種(Edwardsiella spp.)、エルシニア属種(Yersinia spp.)、インフルエンザ菌(
Haemophilus influenza)、塹壕熱菌(Bartonella quintana)、ブルセラ属種(Brucella
spp.)、百日咳菌(Bordetella pertussis)、バークホルデリア属種(Burkholderia sp
p.)、モラクセラ属種(Moraxella spp.)、野兎病菌(Francisella tularensis)、在郷
軍人病菌(Legionella pneumophila)、Q熱コクシエラ(Coxiella burnetii)、バクテ
ロイデス属種(Bacteroides spp.)、エンテロバクター属種(Enterobacter spp.)、お
よびクラミジア属種(Chlamydia spp.)。
【0076】
(i)本開示の溶解素ペプチドおよび溶解素ポリペプチドが、グラム陰性菌のOMに穿
入してそれらの基質に到達し、係る細菌を死滅させ、細菌コロニーの増殖速度を実質的に
減少させることが可能であるという事実、並びに、(ii)緩衝液および培地中でOMに
貫入するよう操作された、Artilysin等の他の溶解素ポリペプチドによる同様の
観察に基づいて、本開示の溶解素ポリペプチドが一つまたは複数のグラム陰性菌感染の治
療に有用であることが期待される。さらに、Artilysinはヒト血清によって阻害
されると思われることから、本発明の溶解素ポリペプチドが、(もしあれば)カチオン性
ペプチドおよび他の抗菌ペプチドとの融合の前であってさえ、グラム陰性の標的に対して
活性を有するという事実は、Artilysinに優る利点となり得る。Deslouches, B.
et al, Activity of the De Novo Engineered Antimicrobial Peptide WLBU2 against P
seudomonas aeruginosa in Human Serum and Whole Blood: Implications for Systemic
Applications, Antimicrobial Agents & Chemotherapy, Aug. 2005, p. 3208-3216 Vol.
49, No 8; Brogden N. et al, Int J Antimicrob Agents. 2011 September; 38(3): 217-
225. doi:10.1016/j.ijantimicag.2011.05.004; Svenson, J. et al, J. Med. Chem., 20
07, 50 (14), pp 3334-3339。
【0077】
一実施形態では、用語「感染」および「細菌感染」は、とりわけ、気道感染(RTI)
、特に、限定はされないが、下気道感染を指し得る。別の実施形態では、用語「感染」お
よび「細菌感染」は、性行為感染を指し得る。さらに別の実施形態では、用語「感染」お
よび「細菌感染」は、尿路感染を指し得る。別の実施形態では、用語「感染」および「細
菌感染」は、慢性気管支炎の急性増悪(ACEB)を指し得る。さらなる別の実施形態で
は、用語「感染」および「細菌感染」は、嚢胞性線維症(CF)患者の気道感染を指し得
る。さらなる別の実施形態では、用語「感染」および「細菌感染」は、急性中耳炎または
新生児敗血症(neonatal septisemia)を指し得る。さらなる他の実施態様では、用語「
感染」および「細菌感染」は、急性副鼻腔炎を指し得る。一実施形態では、用語「感染」
および「細菌感染」は、薬物耐性菌、さらには多剤耐性菌によって引き起こされる感染を
指し得る。別の実施形態では、用語「感染」および「細菌感染」は、カテーテル関連敗血
症を指し得る。さらに別の実施形態では、用語「感染」および「細菌感染」は、クラミジ
アを指し得る。別の実施形態では、用語「感染」および「細菌感染」は、市中肺炎(CA
P)または院内気道感染を指し得る。さらなる別の実施形態では、用語「感染」および「
細菌感染」は、複雑性皮膚・皮膚組織感染を指し得る。さらなる他の実施態様では、用語
「感染」および「細菌感染」は、非複雑性皮膚・皮膚組織感染を指し得る。一実施形態で
は、用語「感染」および「細菌感染」は、心内膜炎を指し得る。別の実施形態では、用語
「感染」および「細菌感染」は、発熱性好中球減少症を指し得る。さらなる別の実施形態
では、用語「感染」および「細菌感染」は、淋菌性子宮頸管炎を指し得る。さらに別の実
施形態では、用語「感染」および「細菌感染」は、淋菌性尿道炎を指し得る。別の実施形
態では、用語「感染」および「細菌感染」は、院内感染性肺炎(HAP)を指し得る。さ
らなる別の実施形態では、用語「感染」および「細菌感染」は、骨髄炎を指し得る。さら
なる他の実施態様では、用語「感染」および「細菌感染」は、敗血症を指し得る。一般的
なグラム陰性病原菌および関連する感染が本開示の表1に列挙されている。これらの実施
形態、並びに表1に列挙された病原体および疾患は、本方法の使用例として働くことが意
図されており、限定を意図するものではない。
【0078】
【表1】
【0079】
一実施形態では、本開示は、ヒト疾患において最も重要なグラム陰性菌である、緑膿菌
(Pseudomonas aeruginosa)、並びに、クレブシエラ属種(Klebsiella spp.)、エンテ
ロバクター属種(Enterobacter spp.)、大腸菌(Escherichia coli)、シトロバクター
・フロインデイ(Citrobacter freundii)、ネズミチフス菌(Salmonella typhimurium)
、ペスト菌(Yersinia pestis)、および野兎病菌(Franciscella tulerensis)からなる
群から選択されるもの等の、所望により少なくとも1種の追加のグラム陰性菌によって引
き起こされる、対象におけるグラム陰性菌感染の治療法を提供する。
【0080】
一実施形態では、本開示は、緑膿菌(Pseudomonas aeruginosa)によって引き起こされ
る、対象におけるグラム陰性菌感染の治療法を提供する。緑膿菌(Pseudomonas aerugino
sa)(P. aeruginosa)は、環境内に遍在する、オキシダーゼ陽性、グラム陰性、桿状の
生物である。緑膿菌(P. aeruginosa)は、土壌、水、並びに植物および動物の組織を含
むがこれらに限定されない、多数の生息環境で生育可能である。緑膿菌(P. aeruginosa
)は、日和見菌であり、嚢胞性線維症、がん、熱傷、糖尿病性潰瘍または免疫系不全を有
する者等の、感染し易い個人において局所性疾患または全身性疾患を引き起こすことが可
能な、最も問題となる院内病原体の1つである。特に病院では、緑膿菌(P. aeruginosa
)は多くの一般に使用される抗生物質に対して耐性となっている。
【0081】
米国疾病予防管理センターおよび米国院内感染サーベイランスシステムからのデータに
よれば、緑膿菌(P. aeruginosa)は、2番目に多い院内肺炎の原因であり、3番目に多
い尿路感染の原因であり、4番目に多い手術部位感染の原因であり、血流から7番目に高
頻度で単離される病原体であり、且つ、全体的に全部位から5番目に多く単離されるもの
である(Solh and Alhajhusain, J Antimicrob Chemother. 64(2):229-38 (2009))。さ
らに、緑膿菌(P. aeruginosa)は、入院患者に肺炎を引き起こす、最も多い多剤耐性(
MDR)グラム陰性病原菌である(Goossens et al., Clin Microbiol Infect. 980-3 (2
003))。
【0082】
緑膿菌(P. aeruginosa)によって引き起こされる感染の非限定的な例としては、以下
が挙げられる:A)院内感染:1.特に嚢胞性線維症患者および人工呼吸器装着患者にお
ける気道感染;2.菌血症および敗血症;3、創傷感染、特に火傷被害者の創傷感染;4
.尿路感染;5.侵襲性デバイスにおける術後感染;6.汚染薬液の静脈内投与による心
内膜炎;7.後天性免疫不全症候群患者、がん化学療法を受けている患者、ステロイド療
法を受けている患者、造血器腫瘍を有する患者、臓器移植患者、腎置換療法を受けている
患者、および重度の好中球減少症を伴う他の状態を有する患者における感染、B)市中感
染:1.市中気道感染;2.髄膜炎;3.汚染水によって引き起こされる外耳道の毛包炎
および感染;4.高齢者および糖尿病患者における悪性外耳道炎;5.小児踵骨(calean
eus)骨髄炎;6.汚染されたコンタクトレンズと一般に関連した眼感染;7.手が頻繁
に水に曝される人における爪感染等の皮膚感染;8.胃腸管感染;並びに9.筋骨格(mu
scoskeletal)系感染。
【0083】
いくつかの実施形態において、本開示の溶解素ポリペプチドは、緑膿菌(P. aeruginos
a)および/または別のグラム陰性菌に感染する危険性がある対象の治療に使用される。
緑膿菌(P. aeruginosa)または他のグラム陰性菌に感染する危険性がある対象には、例
えば、限定はされないが、嚢胞性線維症患者、好中球減少症患者、壊死性腸炎患者、火傷
被害者、創傷感染患者、並びにより一般的には病院内の患者、具体的には、外科患者、並
びに、カテーテル、例えば中心静脈カテーテル、ヒックマンデバイス、または電気生理学
的心臓用デバイス、例えばペースメーカーおよび埋め込み式除細動器等の埋め込み式医療
用デバイスを用いて治療中の患者が含まれる。緑膿菌(P. aeruginosa)を含むグラム陰
性菌による感染の危険性がある他の患者群には、限定はされないが、関節全置換(例えば
人工膝関節全置換または人工股関節置換)等の埋め込み式プロステーシスを有する患者が
含まれる。
【0084】
一実施形態では、前記対象はグラム陰性菌による呼吸器感染を患っている。別の実施形
態では、前記対象は嚢胞性線維症を患っており、各活性成分は吸入可能組成物、経口用組
成物または頬側用組成物に含まれて独立して投与される。さらに具体的な実施形態では、
前記対象は嚢胞性線維症と関連したグラム陰性菌による呼吸器感染を患っており、各活性
成分は吸入可能組成物に含まれて同時投与される。一実施形態では、前記対象は緑膿菌(
P. aeruginosa)または別のグラム陰性菌に感染した創傷を有している。本開示の方法に
よって治療可能な創傷の一例は、感染した熱傷または感染の危険性がある熱傷である。そ
のような熱傷としては、熱傷、低温熱傷、化学熱傷、電気熱傷、または放射線熱傷が挙げ
られる。
【0085】
さらに、緑膿菌(P. aeruginosa)および他のグラム陰性菌はしばしば、病院内の食物
、洗面台、蛇口、モップ、および呼吸用装置にコロニーを形成する。感染が、媒介物との
接触を介して、または汚染した食物および水の摂取によって、患者から患者に広がる(Ba
rbara Iglewski, Medical Microbiology, 4th edition, Chapter 27, Pseudomonas, 1996
)。
【0086】
一実施形態(emdodiment)において、本開示の溶解素ポリペプチドは、他の治療法と組
み合わせた、対象におけるグラム陰性菌感染(または特徴付けされていない感染)の治療
に使用される。そのような所望による併用療法は、抗生物質もしくは他の殺菌剤もしくは
静菌剤等の追加の治療薬、および/または病原体表面の異なる成分を標的とする(例えば
、外膜の異なる成分を標的とする)別の溶解素を、治療を必要とする患者に同時投与する
ことを含み得る。抗生物質に加えて、殺菌剤および静菌剤としては、限定はされないが、
溶解素、非生体用消毒剤(disinfectatnt)、生体用消毒剤(antiseptics)、および保存
剤が含まれる。これらのいずれも、所望により、本開示の溶解素ポリペプチドと組み合わ
せて使用することができる。
【0087】
抗菌性の非生体用消毒剤としては、限定はされないが、次亜塩素酸塩、クロラミン、ジ
クロロイソシアヌレートおよびトリクロロイソシアヌレート、湿塩素(wet chlorine)、
二酸化塩素、過酢酸、過硫酸カリウム、過ホウ酸ナトリウム、過炭酸ナトリウムおよび尿
素・過酸化水素、ヨードポピドン(iodpovidone)、ヨードチンキ、ヨウ化非イオン性界
面活性剤、エタノール、n-プロパノールおよびイソプロパノールおよびその混合物;2
-フェノキシエタノールおよび1-フェノキシプロパノールおよび2-フェノキシプロパ
ノール、クレゾール、ヘキサクロロフェン、トリクロサン、トリクロロフェノール、トリ
ブロモフェノール、ペンタクロロフェノール、Dibromolおよびその塩、塩化ベン
ザルコニウム、臭化セチルトリメチルアンモニウムまたは塩化セチルトリメチルアンモニ
ウム、塩化ジデシルジメチルアンモニウム、塩化セチルピリジニウム、塩化ベンゼトニウ
ム、クロルヘキシジン、グルコプロタミン(glucoprotamine)、オクテニジン二塩酸塩、
オゾンおよび過マンガン酸溶液、コロイド状銀、硝酸銀、塩化水銀、フェニル水銀塩、銅
、硫酸銅、酸化-塩化銅(copper oxide-chloride)、リン酸、硝酸、硫酸、アミド硫酸
、トルエンスルホン酸、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、および水酸化カルシウムが
挙げられる。
【0088】
本開示の溶解素ポリペプチドと生体用消毒試薬との組み合わせは、抗生物質との組み合
わせよりも、グラム陰性菌に対してより高い有効性を提供し得る。生体用消毒試薬として
は、限定はされないが、デーキン液(Daquin's solution)、次亜塩素酸ナトリウムまた
は次亜塩素酸カリウムの溶液、ナトリウムベンゼンスルホクロラミド(sodium benzenesu
lfochloramide)溶液、ある種のヨード製剤、例えばヨードポビドン、尿素・過酸化水素
溶液およびpH緩衝過酢酸溶液としての過酸化物、消毒性添加剤を含むまたは含まないア
ルコール、弱有機酸、例えばソルビン酸、安息香酸、乳酸およびサリチル酸、いくつかの
フェノール化合物、例えばヘキサクロロフェン、トリクロサンおよびDibromol、
並びに陽イオン活性化合物、例えばベンザルコニウム、クロルヘキシジン、メチルイソチ
アゾロン、α-テルピネオール、チモール、クロロキシレノールオクテニジンの溶液が挙
げられる。
【0089】
本開示の溶解素は、標準ケア用抗生物質(standard care antibiotics)と、または最
後の手段として抗生物質と、個別に、または当業者の技能の範囲内である種々の組合せに
おいて、同時投与することができる。緑膿菌(P. aeruginosa)活性に対して使用される
従来の抗生物質としては、アミノグリコシド系抗生物質、チカルシリン、ウレイドペニシ
リン系抗生物質、セフタジジム、セフェピム、アズトレオナム、カルバペネム系抗生物質
、シプロフロキサシン、レボフロキサシン等(表2)が挙げられる。本開示の溶解素ポリ
ペプチドは、緑膿菌(P. aeruginosa)および表2に列挙される他の菌の治療に使用され
る抗生物質と同時投与され得る。クレブシエラ属種(Klebsiella spp.)、エンテロバク
ター属種(Enterobacter spp.)、大腸菌(Escherichia coli)、シトロバクター・フロ
インデイ(Citrobacter freundii)、ネズミチフス菌(Salmonella typhimurium)、ペス
ト菌(Yersinia pestis)、および野兎病菌(Franciscella tulerensis)等の、他のグラ
ム陰性菌に対する抗生物質の列挙は、緑膿菌(P. aeruginosa)に対しての上記のものと
同様となり、関連する特定の細菌に対する標準ケア用抗生物質、または最後の手段である
抗生物質となる(特定の菌株が標準ケア用抗生物質に耐性を有する場合)。
【0090】
同時投与される追加の所望による治療薬としては、限定はされないが、チカルシリン-
クラブラン酸塩の組合せ、ピペラシリン-タゾバクタムの組合せ、セフタジジム、セフェ
ピム、セフォペラゾン、シプロフロキサシン、レボフロキサシン、イミペネム、メロペネ
ム、ドリペネム、ゲンタマイシン、トブラマイシン、アミカシン、ポリミキシンB、およ
びコリスチン(ポリミキシンE)等の、上記および表2に列挙された抗生物質が挙げられ
る。創傷の治療用に、同時投与される治療薬として、限定はされないが、プロピレングリ
コールヒドロゲル(例えば、SOLUGEL(登録商標)(ジョンソン・エンド・ジョン
ソン社));生体用消毒剤;抗生物質;および副腎皮質ステロイドが挙げられる。
【0091】
【表2】
【0092】
ポリミキシンBおよび近縁のコリスチン(ポリミキシンE)等の抗菌性ペプチドは、緑
膿菌(P. aeruginosa)細菌感染の治療のための抗菌剤として使用されている。すなわち
、一実施形態において、本開示の溶解素ポリペプチドは、ポリミキシンBおよび/または
コリスチンと同時投与されることとなる。
【0093】
本開示の溶解素ポリペプチドと抗生物質との組み合わせにより、効果的な新規の抗菌療
法が提供される。一実施形態では、本開示の溶解素ポリペプチドと一つまたは複数の抗生
物質の同時投与は、溶解素ポリペプチドもしくは抗生物質のいずれかもしくは両方の用量
および含量を減らして、並びに/または、増強された殺菌活性および静菌活性によって頻
度および/もしくは処置時間を減らして、抗生物質耐性の危険性を減らして、および有害
な神経学的副作用もしくは腎臓副作用(例えば、コリスチンもしくはポリミキシンBの使
用と関連した副作用)の危険性を減らして、実行され得る。以前の研究により、全累積コ
リスチン用量が腎障害と関連していることが示されたが、このことは、溶解素ポリペプチ
ド(polypepide)による併用療法を用いた、投与量の減少または治療期間の短縮が、腎毒
性の発生率を減少させ得ることを示唆している(Spapen et al. Ann Intensive Care. 1:
14 (2011))。本明細書で使用される場合、用語「減少した用量」とは、同一活性成分に
よる単独療法と比較した、組み合わせにおける1つの活性成分の用量を指す。「処置時間
」についても同様である。いくつかの実施形態において、組み合わせにおける溶解素また
は抗生物質の用量は、各々の単独療法と比較して、最適以下、またはさらには閾値下であ
り得る。
【0094】
いくつかの実施形態では、本開示の溶解素ポリペプチドは、薬剤耐性グラム陰性菌によ
って引き起こされる感染等の細菌感染の治療に使用される。別の実施形態では、本開示の
溶解素ポリペプチドは、単独または一つもしくは複数の抗生物質と共に、多剤耐性グラム
陰性菌によって引き起こされる感染等の細菌感染の治療に使用される。本開示との関連に
おける薬剤耐性グラム陰性菌または多剤耐性グラム陰性菌には、限定はされないが、緑膿
菌(P. aeruginosa)が含まれる。
【0095】
実際には、感染は一般に、グラム陽性菌種とグラム陰性菌種との混合による、多菌性で
ある(Citron et al. J Clin Microbiol. 45(9): 2819-2828 (2007))。いくつかの実施
形態において、グラム陰性菌に対して活性を有する本開示の溶解素ポリペプチドは、所与
の対象の感染に応じて、グラム陰性菌に対して有効な抗生物質とだけでなく、グラム陽性
菌の治療に適した一つもしくは複数の抗生物質および/または一つもしくは複数の他の溶
解素と組み合わせても、使用することができる。
【0096】
一実施形態において、本開示の溶解素ポリペプチドは、グラム陰性菌の細胞壁を破壊ま
たは分解することができる。好ましい実施形態において、本開示の溶解素ポリペプチドは
、緑膿菌(P. aeruginosa)の細胞壁を破壊または分解することができる。
【0097】
いくつかの実施形態では、本開示は、一つまたは複数の、本明細書で開示される溶解素
ポリペプチドまたはその薬剤的に許容できる組成物を、グラム陰性菌の増殖が阻害される
ような量および条件において、対象に投与する、または特定の環境に送達することを含む
、一つまたは複数のグラム陰性菌の増殖を阻害する方法を提供する。
【0098】
別の実施形態において、本開示は、一つまたは複数の本明細書で開示される溶解素ポリ
ペプチドを、他の臨床的に意義のある剤と組み合わせて、対象に投与することを含む、緑
膿菌(P. aeruginosa)および/または一つもしくは複数の他のグラム陰性菌の増殖を阻
害する方法を提供する。
【0099】
いくつかの実施形態において、本開示は、一つまたは複数の本開示の溶解素ポリペプチ
ドに外膜を接触させる(細菌を暴露する)ことにより、緑膿菌(P. aeruginosa)および
/または一つもしくは複数の他のグラム陰性菌の外膜の透過性を増加させるための方法を
提供する。
【0100】
別の実施形態において、本開示は、抗生物質、殺菌剤、生体用消毒剤等の他の臨床的に
意義のある剤と組み合わせた、本明細書で開示される溶解素ポリペプチドに、外膜を接触
させることにより、緑膿菌(P. aeruginosa)および/または一つもしくは複数の他のグ
ラム陰性菌の外膜の透過性を増加させるための方法を提供する。
【0101】
いくつかの実施形態において、本開示は、一つまたは複数の本明細書で開示される溶解
素ポリペプチドを目的の抗生物質と併せて対象に投与することにより、グラム陰性菌に対
する一つまたは複数の抗生物質の抗生物質活性を、単独で使用された前記抗生物質の活性
と比較して、増強する方法を提供する。前記組み合わせは、細菌に対して有効であり、抗
生物質に対する耐性の克服および/または抗生物質のより低い用量での使用を可能にする
ことで、ポリミキシンBの腎毒性作用および神経毒性作用等の望ましくない副作用を低減
する。
【0102】
本開示の化合物は、単独で、または、例えばEDTA、TRIS、乳酸、ラクトフェリ
ン、ポリミキシン、クエン酸のような金属キレート剤を含むがこれらに限定はされない、
グラム陰性菌の外膜の追加の透過化剤(permeabilizing agent)と組み合わせて、使用す
ることができる(Vaara M. Microbiol Rev. 56(3):395-441 (1992))。
【0103】
一実施形態において、本開示の溶解素ポリペプチドは化学修飾されている。化学修飾と
しては、限定はされないが、化学的部分の付加、新しい結合の生成、および化学的部分の
除去が挙げられる。化学修飾は、アミノ末端またはカルボキシル末端だけでなく、アミノ
酸側鎖を含む、溶解素ポリペプチドのどの位置においても生じ得る。そのような修飾が溶
解素ポリペプチドの2つ以上の部位に存在し得る。さらに、溶解素ポリペプチドの一つま
たは複数の側鎖、または末端基が、当業者に公知の保護基によって保護されていてもよい
【0104】
いくつかの実施形態において、溶解素ポリペプチドは、持続時間を延長させる部分の結
合を含有する。一実施形態では、前記持続時間延長部分はポリエチレングリコールである
。持続時間が延長された治療用ポリペプチドを得るために、ポリエチレングリコール(「
PEG」)が使用されている(Zalipsky, S., Bioconjugate Chemistry, 6:150-165 (199
5); Mehvar, R., J. Pharm. Pharmaceut. Sci., 3:125-136 (2000))。PEG骨格[(C
CH-O-)、n:単量体の反復数]は可動性且つ両親媒性である。溶解素ポリ
ペプチド等の、別の化学成分に結合された場合、PEG重合鎖は係る溶解素ポリペプチド
を免疫応答および他のクリアランス機構から保護し得る。その結果、ペグ化は、薬物動態
を最適化し、生物学的利用能を増大し、免疫原性並びに投与量および/または投与頻度を
減少させることで、溶解素ポリペプチドの有効性および安全性を向上させ得る。「ペグ化
」とは、PEG分子の、別の化合物、例えば溶解素ポリペプチドとの結合を指す。
【0105】
一実施形態において、本開示は、医療用デバイス、病院内および他の健康に関する建物
内または公共の建物内の床、階段、壁および調理台等の表面、並びに手術室、救急室、病
室、診療所、および浴室等における設備の表面の、グラム陰性菌汚染の予防、低減、治療
、または除去に関する。本明細書に記載の組成物を用いて保護できる医療用デバイスの例
としては、限定はされないが、管類および他の表面に出ている医療用デバイス(surface
medical device)、例えば、導尿カテーテル、粘膜採取用(mucous extraction)カテー
テル、吸引カテーテル、臍帯用カニューレ、コンタクトレンズ、子宮内避妊器具、腟内用
デバイスおよび小腸内用デバイス、気管内チューブ、気管支鏡、歯科補綴および歯科矯正
用デバイス、手術用器具、歯科用器具、管類、歯科用送水管、生地、紙、インジケーター
ストリップ(例えば、紙製インジケーターストリップまたはプラスチック製インジケータ
ーストリップ)、接着剤(例えば、ヒドロゲル接着剤、ホットメルト接着剤、または溶剤
型接着剤)、包帯、組織包帯剤(tissue dressing)または組織治癒デバイス、並びに密
封用貼付剤、並びに医療分野で使用されるあらゆる他の表面に出ているデバイスが挙げら
れる。前記デバイスは、様々な種類の電極、外部プロステーシス、固定用テープ、圧迫包
帯、およびモニターを備えていてもよい。医療用デバイスには、挿入部位または埋め込み
部位付近の皮膚等の、挿入部位または埋め込み部位に配置され得る、且つ、グラム陰性菌
によるコロニー形成が起こり易い少なくとも1つの表面を含み得る、いかなるデバイスも
含まれ得る。
【0106】
一実施形態において、本開示の溶解素ポリペプチドは、溶解素ポリペプチドを含む本開
示の組成物を食品に添加することを含む、グラム陰性菌汚染からの食品の保護に使用され
る。そのような食品の例は、肉製品(貯蔵法の施された肉製品、および/または貯蔵法の
施されていない新鮮な肉製品、および/または調理した肉製品)、サラダおよび他の野菜
製品、飲料および乳製品、半加工食品、例えばインスタント食品および乾燥食品等の簡便
な食品である。
【0107】
ヒトに対して細菌が提起する問題の1つに、生物膜の形成がある。生物膜の形成は、表
面上で微生物細胞が互いに付着し合い、細胞外高分子物質(EPS)のマトリックス中に
包埋された場合に起こる。生体高分子(例えば、多糖類、核酸およびタンパク質)および
栄養分に富んだ、そのような保護された環境においての微生物の増殖は、微生物のクロス
トーク(cross-talk)の増強および病原性の増大をもたらす。生物膜はいかなる支持環境
にも発生し得るため、生物膜形成を予防または除去できる方法または組成物が必要とされ
ている。緑膿菌(Pseudomonas aeruginosa)は、肺嚢胞性線維症の粘液栓子、汚染したカ
テーテル、コンタクトレンズ等の、種々の生体表面上および非生体表面上で生物膜を形成
することが示されている(Sharma et al. Biologicals, 42(1):1-7 (2014))。すなわち
、一実施形態において、本開示の溶解素ポリペプチドは、細菌性生物膜、特に緑膿菌(P.
aeruginosa)が形成した、または緑膿菌(P. aeruginosa)の寄与により形成された細菌
性生物膜の、予防、防除、破壊、および治療のために使用され得る。
【0108】
本開示の溶解素ポリペプチドは、インビボにおいて、例えば、対象における細菌感染を
治療するために、並びに、インビトロにおいて、例えば、培養液中の細胞(例えば、細菌
)を処理して細胞培養物の細菌汚染レベルを排除または低減するために、使用され得る。
【0109】
溶解素ポリペプチドの生産法
一実施形態において、本開示は、一つまたは複数の溶解素ポリペプチドをコードする溶
解素ポリヌクレオチドを含む宿主細胞を適切な条件下で培養して前記ポリペプチドを発現
させることを含む、一つまたは複数のグラム陰性菌、好ましくは緑膿菌(P. aeruginosa
)、を死滅させる、またはその増殖を阻害する本開示の溶解素ポリペプチドの生産法を含
む。
【0110】
高レベルの溶解素ポリペプチド発現を得るために、典型的には、溶解素ポリヌクレオチ
ド配列を適切な発現ベクター内の発現制御配列に機能的に連結し、該発現ベクターを用い
て適切な宿主細胞を形質転換することによって、溶解素ポリヌクレオチド配列が発現され
る。そのような、本開示の溶解素ポリペプチドをコードするポリヌクレオチド配列の発現
制御配列への機能的な連結には、該ポリヌクレオチド(DNA)配列の上流への、正しい
読み枠での、開始コドンATGの提供も含まれる。概して、宿主におけるポリヌクレオチ
ドの維持、増殖もしくは発現、および/またはポリペプチドの発現に適したいかなる系ま
たはベクターも、溶解素ポリペプチドの発現に使用されてよい。適切なDNA/ポリヌク
レオチド配列は、例えば、Sambrook et al., Molecular Cloning, A Laboratory Manual
に記載の手法等、種々の周知且つ常用の手法のいずれによっても発現系内に挿入されてよ
い。さらに、簡便な単離法を可能にするために、例えば、c-myc、ビオチン、ポリヒ
スチジン等、タグを溶解素ポリペプチドに付加することもできる。そのような発現系のた
めのキットは市販されている。
【0111】
種々様々な宿主/発現ベクターの組合せが、本開示の溶解素ポリペプチドをコードする
ポリヌクレオチド(polynucleotude)配列の発現に使用され得る。多数の適切なベクター
が当業者に公知であり、市販されている。適切なベクターの例は、Sambrook et al, eds.
, Molecular Cloning: A Laboratory Manual (3rd Ed.), Vols. 1-3, Cold Spring Harbo
r Laboratory (2001)に記載されている。そのようなベクターとしては、特に、染色体ベ
クター、エピソーマルベクターおよびウイルス由来ベクター、例えば、細菌プラスミド由
来ベクター、バクテリオファージ由来ベクター、トランスポゾン由来ベクター、酵母エピ
ソーム由来ベクター、挿入因子由来ベクター、酵母染色体因子由来ベクター、バキュロウ
イルス、パポーバウイルス、例えば、SV40、ワクシニアウイルス、アデノウイルス、
鶏痘ウイルス、仮性狂犬病ウイルスおよびレトロウイルス、等のウイルス由来のベクター
、並びに、これらの組合せに由来するベクター、例えばプラスミドおよびバクテリオファ
ージ遺伝因子に由来するベクター、例えばコスミドおよびファージミド、が挙げられる。
さらに、これらのベクターは、本開示の溶解素ポリペプチドの恒常的発現または誘導性発
現を可能にし得る。より具体的には、適切なベクターとしては、限定はされないが、SV
40および公知の細菌性プラスミドの誘導体、例えば、大腸菌プラスミドcolEl、p
CRl、pBR322、pMB9およびこれらの誘導体、RP4、pBAD24およびp
BAD-TOPO等のプラスミド;ファージDNA、例えば、ファージλの多数の誘導体
、例えば、NM989、並びに他のファージDNA、例えば、M13および糸状一本鎖フ
ァージDNA;2Dプラスミド等の酵母プラスミドまたはその誘導体;真核細胞において
有用なベクター、例えば昆虫または哺乳類細胞において有用なベクター;プラスミドおよ
びファージDNAの組合せに由来するベクター、例えば、ファージDNAまたは他の発現
制御配列を使用するように改変されたプラスミド;等が挙げられる。上記のベクターの多
くが、ニュー・イングランド・バイオラボ社(New England Biolabs)、アドジーン社(A
ddgene)、クロンテック社(Clontech)、ライフテクノロジーズ社(Life Technologies
)等の販売会社から市販されており、その多くが適切な宿主細胞も提供している。
【0112】
さらに、ベクターは種々の調節エレメント(発現レベルを調節するためのプロモーター
、リボソーム結合部位、ターミネーター、エンハンサー、種々のシスエレメントを含む)
を含む場合があり、宿主細胞に応じて構築される。溶解素ポリペプチドをコードするポリ
ヌクレオチド配列を発現させるために、種々様々な発現制御配列(機能的に連結したポリ
ヌクレオチド配列の発現を制御する配列)のいずれも、これらのベクター内で使用されて
よい。有用な制御配列としては、限定はされないが、SV40ウイルス、CMVウイルス
、ワクシニアウイルス、ポリオーマウイルスまたはアデノウイルスの初期プロモーターま
たは後期プロモーター、lac系、trp系、TAC系、TRC系、LTR系、ファージ
λの主要なオペレーター領域およびプロモーター領域、fdコートタンパク質の制御領域
、3-ホスホグリセリン酸キナーゼまたは他の解糖酵素のプロモーター、酸性ホスファタ
ーゼ(例えば、Pho5)のプロモーター、酵母接合因子のプロモーター、細菌内発現用
の大腸菌(E. coli)プロモーター、並びに原核細胞もしくは真核細胞またはそれらのウ
イルスの遺伝子の発現を制御することが知られている他のプロモーター配列、並びにこれ
らの種々の組合せが挙げられる。
【0113】
本開示の溶解素ポリペプチドの発現においては、種々様々な宿主細胞が有用である。本
開示の溶解素ポリペプチドの発現に適した宿主細胞の非限定的な例としては、周知の真核
生物宿主および原核生物宿主、例えば、大腸菌株、シュードモナス属菌株、バチルス属菌
株、ストレプトマイセス属菌株、酵母等の真菌、並びに、動物細胞、例えばCHO細胞、
Rl.l細胞、B-W細胞およびL-M細胞、アフリカミドリザル腎細胞(例えば、CO
S1、COS7、BSC1、BSC40、およびBMT10)、昆虫細胞(例えば、Sf
9)、並びに組織培養におけるヒト細胞および植物細胞が挙げられる。発現用宿主はいか
なる公知の発現用宿主細胞であってもよいが、好ましい実施形態では、発現用宿主は大腸
菌株の1つである。これらには、限定はされないが、Top10(サーモ・フィッシャー
・サイエンティフィック社(Thermo Fisher Scientific))、DH5α(サーモ・フィッ
シャー・サイエンティフィック社)、XL1-Blue(アジレント・テクノロジー社(
Agilent Technologies))、SCS110(ストラタジーン社(Stratagene))、JM1
09(プロメガ社(Promega))、LMG194(ATCC社)、およびBL21(サー
モ・フィッシャー・サイエンティフィック社)等の市販の大腸菌株が含まれる。宿主系と
して大腸菌(E. coli)を使用するいくつかの利点は以下である:高速の増殖機構(最適
な環境条件下での倍加時間が約20分間)(Sezonov et al., J. Bacteriol. 189 8746-8
749 (2007))、高密度培養の達成が容易、外来DNAによる形質転換が容易且つ高速、等
。プラスミド選択および菌株選択を含む、大腸菌(E. coli)におけるタンパク質発現に
関する詳細は、Rosano, G. and Ceccarelli, E., Front Microbiol., 5: 172 (2014)で詳
細に論じられている。
【0114】
溶解素ポリペプチドおよびそのベクターの効率的な発現は、最適な発現シグナル(転写
レベルおよび翻訳レベルでの両方)、正しいタンパク質フォールディング、および細胞増
殖の特徴等、種々の因子に依存している。ベクターを構築するための方法および構築され
た組換えベクターを宿主細胞に導入するための方法については、当該技術分野において公
知の従来法を利用することができる。全てのベクター、発現制御配列、および宿主が、本
開示の溶解素ペプチドをコードするポリヌクレオチド配列の発現にとって等しく良好に機
能するわけではないと理解されているが、当業者であれば、必要以上の実験を行うことな
く適切なベクター、発現制御配列、および宿主を選択して、本開示の範囲から逸脱するこ
となく所望の発現を達成することができる。いくつかの実施形態において、本発明者らは
発現レベルと発現されたポリペプチドの活性との間に相関性があることを見出し、すなわ
ち、特に大腸菌(E.coli)発現系において、適度な発現レベル(例えば約1~10mg/
リットル)によって、大腸菌(E.coli)においてより高いレベル(例えば約20~約10
0mg/リットル)で発現された溶解素ポリペプチドよりも、活性レベルがより高い溶解
素ポリペプチドが産生され、このより高い発現レベルによって、完全に不活性なポリペプ
チドが産生される場合があった。
【0115】
本開示の溶解素ポリペプチドは、組換え細胞培養物から、周知の方法によって回収およ
び精製することができ、その周知の方法としては、硫酸アンモニウム沈殿またはエタノー
ル沈殿、酸抽出、陰イオン交換クロマトグラフィーまたは陽イオン交換クロマトグラフィ
ー、ホスホセルロースクロマトグラフィー、疎水性相互作用クロマトグラフィー、アフィ
ニティークロマトグラフィー、ヒドロキシルアパタイトクロマトグラフィー、およびレク
チンクロマトグラフィーが挙げられる。高速液体クロマトグラフィーも溶解素ポリペプチ
ドの精製に用いることができる。
【0116】
あるいは、本開示の溶解素ポリペプチドの産生に使用されるベクター系は無細胞発現系
であってもよい。種々の無細胞発現系が市販されており、例えば、限定はされないが、プ
ロメガ社、ライフテクノロジーズ社、クロンテック社等から入手可能なものが挙げられる
【0117】
上記のように、タンパク質の産生および精製についても、たくさんの選択肢がある。以
下に、本発明者らは、大腸菌(E.coli)における本開示の溶解素ポリペプチドの産生に使
用することができる一般的なプロトコルを、非限定的な例として挙げる。タンパク質の産
生および精製において考慮されるべき適切な方法および戦略の例は、Structural Genomic
s Consortium, Nat Methods., 5(2): 135-146 (2008)に詳細に記載されている。
例示的なプロトコル:
1. 溶解素ポリペプチドをコードするDNAを全遺伝子合成によって作製する。
2. 次にDNA断片を、pBAD24(アラビノースにより誘導可能)等の、好ましく
は誘導ベクターにライゲーションし、それで大腸菌(E.coli)細胞(例えば、TOP10
、インビトロジェン社、カールズバッド、カリフォルニア州CA)を形質転換させる。
3. 形質転換した細菌を、溶原培地(LB)、ベクター誘導剤(例えば、0.2%アラ
ビノース)および選択(selsctable)マーカー(例えば、50μg/mlカルベニシリン
)等のブロスを添加した寒天板上に広げ、好ましくは一晩、37℃でインキュベートする

4. 溶解素プラスミドを含有する大腸菌(E.coli)Top10細胞の単一クロース(si
ngle close)培養物を、選択マーカーを添加したブロス(例えば、50μg/mlカルベ
ニシリンを添加したLB)中で好ましくは一晩、37℃で増殖させる。この培養物は、選
択マーカーを添加した新鮮培地(例えば、カルベニシリンを添加したLB)で例えば1:
200希釈され、例えばさらに3時間インキュベートされる場合がある。誘導剤(induci
ble agent)(例えば、0.2%L-アラビノース)の添加により溶解素発現を誘導し、
細胞を好ましくは一晩、30℃でインキュベートする。
5. 細胞ペレットを緩衝液(例えば、20mM Tris、pH6.8)に再懸濁し、
ホモジナイズする。
6. タンパク質の可溶化および精製(一つまたは複数のクロマトグラフ法を使用)を、
適切なイオン強度の一価の塩、例えば、300~500mM相当のイオン強度のNaCl
、を含有する十分に緩衝化された溶液中で実行する。
7. 固定化金属アフィニティークロマトグラフィー(IMAC)を最初の精製工程とし
て使用することが好ましい。追加の精製が必要な場合、分子ふるいクロマトグラフィー(
ゲル濾過)を、さらなる段階において使用することができる。必要であれば、イオン交換
クロマトグラフィーを最終工程として使用することができる。
【0118】
溶解素ポリペプチドの同定
本開示は、対数期の緑膿菌(Pseudomonas aeruginosa)株PAO1に対して強力な抗菌
活性を有する5種の溶解素の同定(実施例1および実施例2)に基づいている。本開示の
溶解素ポリペプチドの同定のために、本発明者らは、抗菌性についてのスクリーニングと
併せて、バイオインフォマティクスに基づいたアプローチを用いた。そのようにして同定
された配列のうち、いくつかは以前に推定エンドリシンと注釈付けされたものであった。
しかしながら、それらの実質的過半数(本発明者らは80超のポリペプチドをスクリーニ
ングした)が、いかなる溶解素活性も持たない、すなわち、標的生物である緑膿菌(P. a
eruginosa)に対して活性を持たないことを、本発明者らは見出した。活性を有すること
が認められた前記5種の溶解素を、GN37(配列番号1)、GN2(配列番号2)、G
N4(配列番号3)、GN14(配列番号4)、およびGN43(配列番号5)と命名し
た。まず、本発明者らは、精製された(合成され、発現ベクターpBAD26にクローニ
ングされ、その後精製された)溶解素の、緑膿菌(P. aeruginosa)の外膜(OM)に対
する透過性を評価した(実施例1)。
【0119】
ほとんどのグラム陰性菌は、疎水性の化合物を拒み、1-N-フェニルナフチルアミン
(NPN)、クリスタルバイオレット、または8-アニリノ-1-ナフタレンスルホン酸
(ANS)等の疎水性剤の取り込みをさせない。疎水性化合物に対するこの強力な抵抗性
は外膜(OM)の存在によるものであり、OMは、OMをペプチドグリカンに繋留してO
Mを安定に維持する結合タンパク質を含む。その疎水的な性質により、NPNは、疎水性
条件下では強い蛍光を発し、水性条件下では弱い蛍光を発する(J Sokatch, The biology
of pseudomonas, December 2012, Elsevier)。よって、NPN蛍光を外膜透過性の測定
値として用いることができる。
【0120】
本開示において、多数の溶解素(GN1、GN2、GN4、GN8、GN14、GN2
0、GN22、GN26、GN27、GN28、GN30、GN37、およびGN43)
の、緑膿菌(P. aeruginosa)株PAO1のOMに対する透過性は、上記溶解素の存在下
または非存在下で、PAO1細胞と一緒にNPNをインキュベートすることによって試験
された。図3に示すように、GN37(配列番号1)、GN2(配列番号2)、GN4(
配列番号3)、GN14(配列番号4)、およびGN43(配列番号5)の存在下におけ
るNPNのインキュベーションは、溶解素の非存在下で放出された蛍光(ネガティブコン
トロール)と比較して、より多くの蛍光誘導をもたらした。さらに、これら5つの溶解素
(GN2、GN4、GN14、GN37、およびGN43)のそれぞれが、確立された透
過化剤EDTA(エチレンジアミン四酢酸)によって生じるOM透過性と比較して、有意
により強いOM透過性を生じた。さらに、前記5つの溶解素のそれぞれが、緑膿菌(P. a
eruginosa)の治療で最終手段として使用される公知の抗生物質、ポリミキシンB(PM
B)と同等以上に、OMを透過性にした。本開示の活性な溶解素は、概して、GN14の
場合の15アミノ酸残基からGN43の場合の33アミノ酸残基までサイズが異なる、C
末端αヘリックス両親媒性ドメインを有する(N末端に有するGN14は除く)。αヘリ
ックス両親媒性ドメインの配列を含む、GN2、GN4、GN14、GN37、およびG
N43の共通の特徴を、表3に挙げる。ポリペプチドの二次構造は、Jpred4(ht
tp://www.compbio.dundee.ac.uk/jpred/)等の種
々のソフトウェアプログラムを用いて決定することができる。両親媒性αヘリックスは、
具体的には、Helical Wheel(http://kael.net/heli
cal.htm)を用いて調べられた。GN37(配列番号11)、GN2(配列番号1
2)、GN4(配列番号13)、GN14(配列番号14)、およびGN43(配列番号
15)の核酸配列も示す(図1Aおよび図2)。
【0121】
【表3】
【0122】
GN2、GN4、GN14、GN37、およびGN43が強力な膜透過化活性を示した
ことから、これら5つの溶解素の、緑膿菌(P. aeruginosa)株PAO1に対する抗菌活
性をそれぞれ評価した(実施例2)。ポジティブコントロールとして使用されたEDTA
およびPMBに加えて、ヒトリゾチームおよびノボビオシンも含めた。ヒトリゾチーム(
HuLYS)は、肺感染の病態生理に関与する、種々の組織、細胞、および分泌物に存在
する天然抗菌ペプチドである(Callewaert et al. J. Biosci. 35:127-160 (2010))。ヒ
トリゾチームは、細菌細胞壁のペプチドグリカンの分解によって、グラム陽性菌および緑
膿菌(P. aeruginosa)を含むグラム陰性菌の両方に対して有効であることが示されてい
る。ノボビオシン(Albamycin、Cathamycin、Spheromyci
n)は、ストレプトマイセス・ニーベウス(Streptomyces niveus)から単離されたアミ
ノクマリン系抗生物質である。ノボビオシンの活性は大部分がグラム陽性菌に対してのも
のであるが、ある特定のグラム陰性菌株も感受性が高い(Lindsey Grayson, Kucers’ Th
e Use of Antibiotics: A Clinical Review of Antibacterial, Antifungal and Antivir
al Drugs, CRC Press 6th Edition, 2010)。
【0123】
図4に示すように、5つ全ての溶解素(GN2、GN4、GN14、GN37、および
GN43)が、HuLYS単独またはノボビオシン単独と比較して、緑膿菌(P. aerugin
osa)株PAO1に対してより高い抗菌活性を示し、一方で、GN4、GN14、および
GN37は、EDTAおよびPMBの抗菌活性と同等の抗菌活性を示した。
【0124】
GN37は、抗シュードモナスPGH活性の供給源として以前に使用されたことがない
、緑膿菌(P. aeruginosa)の捕食者である、ミカビブリオ・アエルギノサヴォルス(Mic
avibrio aeruginosavorus)から得られたものである。MDR緑膿菌(P. aeruginosa)を
防除するための生物ベース薬剤として、生きたミカビブリオ・アエルギノサヴォルス(Mi
cavibrio aeruginosavorus)を使用することが提唱された(Dashiff et al. J Appl., 11
0(2):431-44 (2011))。しかし、本発明者らが知る限り、この生物を、抗微生物タンパク
質、PGH、バクテリオシン、抗生物質等のそれぞれの供給源として使用したという報告
は無い。本発明者らは、緑膿菌(Pseudomonas aeruginosa)の表面に付着し内部から栄養
分を絞り取る生物体表生の捕食性細菌が、外膜および細胞壁に穴をあける抗シュードモナ
スPGH活性をコードしているはずだと推論した。これの推論に基づき、ミカビブリオ・
アエルギノサヴォルス(Micavibrio aeruginosavorus)株ARL-13のゲノム配列を、
PGH様酵素として注釈付けされた遺伝子について調査した。5種のヒドロラーゼを同定
、クローニング、および抗シュードモナス活性についてスクリーニングした。現在GN3
7と命名されている遺伝子座は、寒天重層プレート上にクリアゾーン(ハローゾーン)を
形成した唯一のORFであった。よって、GN37の独特な供給源および実施例3に記載
される強力な活性の理由から、GN37をさらに詳細に調べた。実施例3に示されるよう
に、GN37を種々の公知または推定上の溶解素と比較する多重配列アラインメントによ
って、GN37が、ミトレシンA(Mitrecin A)と67%しか同一性を持たないことが明
らかになった(Farris and Steinberg, Lett Appl Microbiol., 58(5):493-502 (2014);
および米国特許出願公開第20140094401A1号)。GN37と異なり、ミトレ
シンAは、グラム陽性菌(すなわち、ストレプトマイセス属)のゲノムにおいて同定され
た。さらに、ミトレシンAについて報告された活性は、(およそ当量濃度の)GN37の
活性と比較して非常に弱い。ミトレシンAは、処理のたった1時間後に3log超の減少
を達成したGN37と比較して、(仮性結核菌(Yersinia pseudotuberculosis)に対し
て)16時間のインキュベーションを通して細菌生存率において1log未満の減少を達
成しただけであった。
【0125】
本明細書にて開示される完全長の溶解素に加えて、本開示は、本開示の溶解素のC末端
αヘリックス両親媒性ドメインに基づく、ペプチド誘導体を提供する。このドメインを含
むポリペプチドのC末端(および/またはN末端)の漸進的切断(アミノ酸欠失)によっ
て、最小長の活性溶解素ペプチドにまで短くした、活性溶解素ペプチド断片を得ることが
できる。そのようなペプチドは、αヘリックスを破壊しないような、切断されたC(また
はN)末端への一つまたは複数のアミノ酸(天然溶解素のアミノ酸以外)の付加によって
、さらに修飾することができる。C末端αヘリックス両親媒性ドメインおよびN末端αヘ
リックス両親媒性ドメインは共に、バイオインフォマティクス的なアプローチを用いて同
定可能である。αヘリックスを破壊しないアミノ酸の例は、αヘリックス領域を伸長する
、または膜挿入を促進する、疎水性残基または荷電残基である。アミノ酸付加は、溶解素
ポリペプチドGN4を用いてさらに説明される(実施例4、図5)。FGN4-1ペプチ
ド(配列番号7)およびFGN4-2ペプチド(配列番号8)は、それぞれ修飾を含む、
GN4(配列番号3)、PGN4(配列番号6)、FGN4-3(配列番号9)、および
FGN4-4(配列番号10)のペプチド断片であるが(図5)、PGN4およびFGN
4-3は、試験されたその他のGN4ペプチドよりも高い抗菌活性を示すことが生存率ア
ッセイによって示された(図6)。PGN4-4は、39アミノ酸ポリペプチドであり、
31アミノ酸ポリペプチドのFGN4-2およびB型肝炎カプシドから単離された8残基
の抗菌性ペプチド(SQSRESQC)を含む。すなわち、図6に示されるように、SQ
SRESQCペプチドの付加はFGN4-2の活性を増強する。天然断片FGN4-1と
、付加されたC末端システイン(FGN4-4)を有するFGN4-4との比較は、C末
端へのシステインの付加がFGN4-1の活性を増強したことを示している。システイン
付加が二量体化を促進し、活性を増強するかどうかを確認するために、システインが付加
された。その結果は、末端のシステインは活性を増強することを示している。追加の修飾
として、11個のC末端残基が除去されたFGN4-2が挙げられる。これらの残基は(
タンパク質二次構造を考慮すると)αヘリックス構造には必要ではなく、本発明者らは、
活性が維持されるかどうかを確かめるための精査を行った。11残基全ての除去によって
活性は確かに低減されはしたが、本段落の初めに記載された修飾等の他の修飾によって、
活性は回復可能であり、実際に向上させることができた。上記に照らし合わせて、当業者
であれば、このドメインのC末端から、またはN末端から、または両方から、一つまたは
複数のアミノ酸残基を漸進的に欠失させていく溶解素ポリペプチドを作製し、そのような
ポリペプチド(polypetide)を、単独で、またはグラム陰性菌に対して活性を有する一つ
もしくは複数の抗生物質と組み合わせて、緑膿菌(P. aeruginosa)および/または別の
グラム陰性菌に対する活性(すなわち、それを阻害する能力、それの菌数を減少させる能
力、またはそれを死滅させる能力)について調べることによって、C末端αヘリックス両
親媒性ドメインがインタクトである切断型溶解素を容易に作製することができる。このよ
うな試験は、例えば実施例2、3、4、または仮想例1に示されている教示に従って行う
ことができる。当然ながら、試験の手順およびプロトコルはそれ自体、これらの実施例に
おける手順およびプロトコルに限定されず、抗細菌剤の、実際には抗微生物剤の有効性を
評価するための当業者に公知のあらゆる方法であってよい。
【0126】
ヒト血清中の抗菌活性の解析のために、GN溶解素ポリペプチドおよびGNペプチドを
、MIC未満の濃度のポリミキシンBの存在下および非存在下にそれぞれプールした(実
施例5、図7)。PMBは、緑膿菌(P. aeruginosa)に対して活性を有する強力な抗生
物質であり、1mcg/mlの濃度において、ヒト血清中での1時間の処理の後に、生存
率において2log10未満の減少をもたらした。GN4ペプチドプール(各ペプチドを
25mcg/mlで含有、図7では「ペプチドプール」と標識)単独は、生存率の減少を
もたらさず、溶解素ポリペプチドプール(各GN溶解素を25mcg/mlの濃度で含有
)単独は、2log10未満の生存率の減少をもたらしたのみである(図7)。しかし、
PMBと組み合わされた場合、ペプチドプールおよび溶解素プールの両方が、4log1
0以上の生存率減少をもたらした(図7)。これらの知見は、PMBと本開示のGN溶解
素ポリペプチドとの組み合わせの強力な相加効果、またはさらには相乗効果を示している
。個々の溶解素ポリペプチドも、プールとしてではなく個別に使用された場合、緑膿菌(
P. aeruginosa)等のグラム陰性菌の生存率において実質的減少をもたらすことが予想さ
れる。図7に関する知見は、ペプチドプール単独が、図6から予想される活性ほど活性が
高くないというものである。これは、多くの抗菌剤の生物活性がヒト血清の存在下では減
弱されることが原因である可能性が最も高い(Zhanel et al., Antimicrob Agents Chemo
ther. 42(9): 2427-2430 (1998))。しかし、溶解素プールがPMBと共に同時投与され
ると、血清の存在にもかかわらず、溶解素プールの抗菌活性は回復する(図7)。すなわ
ち、ヒト血清の存在下での溶解素プールの抗菌活性の減少は、PMBの存在下では阻害性
でなくなる、ペプチドプール中のペプチド同士の拮抗する活性によるものであり得る。あ
るいは、ヒト血清中に存在する一つまたは複数のタンパク質が、PMBの添加によって抑
制される拮抗作用を、溶解素プールに対して有しているのかもしれない。これら2つの考
えられるシナリオは、個々の溶解素ポリペプチドを用いたアッセイを反復し、PMBの存
在下または非存在下において血清中で前記アッセイを実行し、これらの結果を、溶解素プ
ールを用いて得られた結果と比較することで、区別が可能である。さらに、血清中の溶解
素プール活性の阻害は、溶解素と外膜との間の静電気的(electrostatinc)相互作用を破
壊する、高い塩濃度が原因であった可能性もある。
【0127】
本開示のGN溶解素ポリペプチドは、従来の抗生物質、ワクチン、および抗毒素療法と
異なる細菌活性(bacterial activity)を有し、グラム陰性菌によって引き起こされる感
染との闘いで有用である。実施例に示されるように、他の処置と異なり、溶解素は、迅速
な殺菌作用を、MIC未満の量で使用された場合は静菌作用を示し、黄色ブドウ球菌(S.
aureus)、化膿性連鎖球菌(S. pyogenes)、肺炎連鎖球菌(S. pneumoniae)、炭疽菌
(B. anthracis)、およびセレウス菌(B. cereus)を含むグラム陽性菌に対して特定の
溶解素を用いて得られた以前の結果を反映して、一連の抗生物質耐性細菌に対して活性を
有し、耐性の発達と関連付けられていない(Fischetti, V. Curr Opin Microbiol., 11(5
): 393-400 (2008))。本開示に基づけば、臨床背景において、溶解素は、薬剤耐性菌お
よび多剤耐性菌から生じる感染を治療するための強力な代替物となる。グラム陰性菌の既
存の耐性機構は、溶解素のPGH活性に対する感受性に影響を与えないはずである。
【0128】
本開示の溶解素ポリペプチドは、グラム陰性菌感染の治療用に開発されている、既存の
PGHと異なっている。前述のArtilysinは、外来性のカチオン性ペプチドと融
合した正荷電PGHからなる(Briers et al., Antimicrob Agents Chemother. 58(7): 3
774-84 (2014); Briers et al. MBio. 4:e01379-14 (2014);米国特許8,846,86
5号)。さらにArtilysinは、エンドリシン由来ではない、ポリカチオン性ペプ
チドを使用している。一方、本開示の溶解素ポリペプチド(polypetide)のポリカチオン
性領域は、緑膿菌(P. aeruginosa)に対する標的化効率の向上をもたらすと期待される
特徴である、緑膿菌(P. aeruginosa)のOMとの天然での相互作用とその不安定化を起
こす、溶解素に由来している。
【0129】
本明細書に記載のように単離され組換えによって作製される、溶解素ポリペプチドに付
加された抗菌性カチオン性ペプチドを含有する融合ポリペプチドも確かに企図されてはい
るが、本開示の溶解素ポリペプチドは、抗菌性カチオン性ペプチドの付加で修飾されてい
なくてもよい。しかし、付加されたカチオン性ペプチドまたは他の抗微生物性(抗細菌性
)ペプチドが存在していなくても、本開示の溶解素ポリペプチドは、静菌活性および殺菌
活性の両方を含む、かなりの抗グラム陰性菌活性を有する。上記にかかわらず、本開示は
、抗菌ペプチド(AMP、デフェンシン、スシペプチド(sushi peptide)、カチオン性
ペプチド、ポリカチオン性ペプチド、両親媒性ペプチド、疎水性ペプチド)に融合された
天然のグラム陰性菌抗菌機能を有する溶解素ポリペプチドを含む融合溶解素ポリペプチド
も企図しており、米国特許出願第2015/0118731号、並びに国際特許出願国際
公開第2014/0120074号、同第2015/070912号;同第2015/0
71436号;同第2015/070911号;同第2015/071437号;同第2
012/085259号;同第2014/001572号、および同第2013/034
4055号に記載されるもの等を広げる。追加の殺菌性セグメント、すなわち、融合前か
らそれ自体が殺菌活性を有するセグメントまたは親溶解素ポリペプチドの殺菌活性に積極
的に貢献するセグメントを含有する融合ポリペプチドも企図されている。
【0130】
医薬組成物および調製
本開示の組成物は、水剤、懸濁剤、乳剤、錠剤、丸剤、ペレット剤、カプセル剤、液体
を含有するカプセル剤、散剤、徐放性製剤、坐剤、タンポン塗布用乳剤(tampon applica
tions emulsion)、エアロゾル剤、噴霧剤、懸濁剤、菓子錠剤、トローチ剤、キャンディ
、注入剤、チューインガム、軟膏剤、スミア(smear)、徐放性貼付剤、液体を吸収した
ワイプ(liquid absorbed wipe)、およびこれらの組合せの形態をとることができる。
【0131】
本開示の組成物またはその薬剤的に許容できる形態の投与は、局所投与であってもよい
し(すなわち、前記医薬組成物がその作用が所望される場所に直接(例えば創傷に直接)
塗布される)、または全身投与であってもよい。全身投与は、経腸投与または経口投与(
すなわち、物質が消化管を介して与えられる)、非経口投与(すなわち、物質が注射もし
くは吸入等による消化管以外の他の経路によって与えられる)であり得る。すなわち、本
開示の溶解素ポリペプチドは、経口的に、非経口的に、吸入によって、局所的に、経直腸
的に、経鼻的に、頬側に、もしくは埋め込み型リザーバーを介して、またはあらゆる他の
公知の方法によって、対象に投与することができる。本開示の溶解素ポリペプチドは、持
続放出剤形を用いても投与することができる。
【0132】
経口投与用に、本開示の溶解素ポリペプチドは、固形製剤または液状製剤、例えば、錠
剤、カプセル剤、散剤、水剤、懸濁剤および分散体に製剤化することができる。前記化合
物は、例えば、ラクトース、スクロース、コーンスターチ、ゼラチン、ジャガイモデンプ
ン、アルギン酸および/またはステアリン酸マグネシウム等の賦形剤と一緒に製剤化する
ことができる。
【0133】
錠剤および丸剤等の固体組成物の調製のために、本開示の溶解素ポリペプチドまたはそ
の断片を、医薬用賦形剤と混合して、固体の製剤化前組成物(preformulation compositi
on)を形成させる。所望により、錠剤は標準的な技術によって糖衣錠としてもよいし、腸
溶錠としてもよい。持効性作用という利点をもたらす剤形を得るために、錠剤または丸剤
を被覆または配合してもよい。例えば、錠剤または丸剤は、内部用量成分(inner dosage
component)および外部用量成分(outer dosage component)を含んで、外部用量成分が
内部用量成分を包む形態をとってもよい。これら2つの成分は腸溶性層で分離可能であり
、腸溶性層は、胃での分解を阻止し、内部成分がインタクトなままで十二指腸へと通過す
ること、またはその放出が遅延されることを可能にする働きをする。種々の材料をそのよ
うな腸溶性の層またはコーティングに使用することができ、そのような材料としては、い
くつかの高分子酸、並びに、シェラック、セチルアルコール、およびセルロースアセテー
ト等の材料と高分子酸の混合物が挙げられる。
【0134】
本開示の局所用組成物は、薬剤的に許容される担体または生理学的に許容される担体、
例えば、皮膚科学的に許容される担体または耳に(otically)許容される担体、をさらに
含んでもよい。そのような担体は、皮膚科学的に許容される担体の場合、皮膚、爪、粘膜
、組織および/または毛と適合性であることが好ましく、これらの要件を満たす従来的に
使用されているあらゆる皮膚科用担体が含まれ得る。耳に許容される担体の場合、担体は
耳の全ての部位と適合性であることが好ましい。そのような担体は当業者により容易に選
択可能である。本開示の化合物の局所投与のための担体としては、限定はされないが、ミ
ネラルオイル、流動石油、白色石油、プロピレングリコール、ポリオキシエチレンおよび
/またはポリオキシプロピレン化合物、乳化ろう、モノステアリン酸ソルビタン、ポリソ
ルベート60、セチルエステルワックス、セテアリルアルコール、2-オクチルドデカノ
ール、ベンジルアルコール、並びに水が挙げられる。皮膚用軟膏剤の製剤化において、本
開示の有効成分は、油性炭化水素基剤、無水吸収性基剤、油中水型吸収性基剤、水中油型
水除去性(water-removable)基剤および/または水溶性基剤中で製剤化され得る。耳用
組成物の製剤化において、本開示の有効成分は、水性重合体懸濁液、例えば、デキストラ
ン、ポリエチレングリコール、ポリビニルピロリドン、多糖ゲル、Gelrite(登録
商標)、ヒドロキシプロピルメチルセルロースのようなセルロース系重合体、およびアク
リル酸の重合体または共重合体等のカルボキシ基含有重合体、並びに他の重合体粘滑薬等
の担体中で製剤化され得る。本開示による局所用組成物は、局所投与に適したいかなる形
態であってもよく、例えば、水性、水性-アルコール性または油性の溶液、ローション剤
または血清分散液(serum dispersion)、水性、無水または油性のゲル剤、水相中の脂肪
相の分散によって得られる乳剤(OAVもしくは水中油型)または、逆に、(W/Oもし
くは油中水型)、マイクロエマルションまたはマイクロカプセル、イオン型および/また
は非イオン型の微小粒子または脂質小胞分散体、クリーム剤、ローション剤、ゲル剤、発
泡剤(通常、加圧されたキャニスター、適切な塗布器 乳化剤および不活性な噴霧剤を必
要とする)、エッセンス、乳汁、懸濁剤、または貼付剤の形態であってよい。本開示の局
所用組成物は、親水性または親油性のゲル化剤、親水性または親油性の活性薬剤、保存剤
、抗酸化剤、溶媒、芳香剤、充填剤、日焼け止め、吸臭剤(odor-absorber)および染料
等の補助剤を含有してもよい。さらなる態様において、前記局所的抗菌性組成物は、対象
の皮膚または他の組織に接着または付随することが可能な、経皮貼布、包帯材(dressing
)、パッド、ラップ、マトリックスおよび絆創膏(bandage)等のデバイスと共同して投
与される場合があり、本開示による、治療有効量の一つまたは複数の抗菌性溶解素ポリペ
プチドを送達可能である。
【0135】
一実施形態において、本開示の局所用組成物は、局所的な熱傷の治療に使用される一つ
または複数の成分をさらに含む。そのような成分としては、典型的には、限定はされない
が、プロピレングリコールヒドロゲル;グリコール、セルロース誘導体および水溶性アル
ミニウム塩の組合せ;消毒剤;抗生物質;並びに副腎皮質ステロイドが挙げられる。保湿
剤(例えば、固形または液状のワックスエステル)、吸収促進剤(例えば、親水性の粘土
、またはデンプン)、増粘剤(viscocity building agent)、および皮膚保護剤が追加さ
れてもよい。局所製剤はうがい薬等のリンス剤の形態をとってもよい。例えば、国際公開
第2004/004650号を参照されたい。
【0136】
本開示の化合物は、適切な量の溶解素ポリペプチドおよび担体を含む治療薬の注射によ
って投与されてもよい。例えば、前記溶解素ポリペプチドを、筋肉内に、くも膜下腔内に
、真皮下に、皮下に、または静脈内に投与することで、グラム陰性菌による感染、より具
体的には緑膿菌(P. aeruginosa)によって引き起こされる感染を治療することができる
。前記担体は、蒸留水、食塩水、アルブミン、血清、またはこれらのあらゆる組み合わせ
から構成され得る。さらに、非経口注射の医薬組成物は、以下のうちの一つまたは複数に
加えて、溶解素ポリペプチドの薬剤的に許容できる水溶液または非水溶液を含み得る:使
用の直前に無菌の注射剤または分散液へ再構成するための、pH緩衝液、補助剤(例えば
、保存剤、湿潤剤、乳化剤、および分散剤)、リポソーム製剤、ナノ粒子、分散液、懸濁
液またはエマルジョン並びに無菌散剤。
【0137】
非経口注射が選択された投与様式である場合、等張製剤が使用されることが好ましい。
一般的に、等張性のための添加剤には、塩化ナトリウム、ブドウ糖、マンニトール、ソル
ビトール、およびラクトースが包含され得る。リン酸緩衝食塩水等の等張液が好ましい場
合もある。安定剤にはゼラチンおよびアルブミンが包含され得る。血管収縮剤を前記製剤
に追加することができる。このタイプの適用による医薬品は、無菌且つ発熱物質を含まず
に与えられる。
【0138】
希釈剤は、例えば、エタノール、プロピレングリコール、油または薬剤的に許容できる
乳化剤もしくは界面活性剤等の一つまたは複数の他の賦形剤をさらに含み得る。
【0139】
別の実施形態において、本開示の組成物は吸入可能な組成物である。本開示の吸入可能
組成物は薬剤的に許容できる担体をさらに含むことができる。一実施形態では、本開示の
溶解素ポリペプチドは、乾燥した吸入可能な散剤として製剤化されるのが有利である。特
定の実施形態では、溶解素ポリペプチド吸引用溶液が、エアロゾル送達のための噴霧剤と
共にさらに製剤化され得る。ある実施形態では、水剤が噴霧され得る。
【0140】
薬剤と噴霧剤との間の表面張力および界面張力を低下させる目的で、界面活性剤を本開
示の吸引可能な医薬組成物に添加することができる。薬剤、噴霧剤および賦形剤が懸濁液
を形成する場合、界面活性剤は必要である場合もあるし、必要でない場合もある。薬剤、
噴霧剤および賦形剤が溶液を形成する場合、界面活性剤は、その特定の薬剤および賦形剤
の溶解性に部分的に依存して、必要である場合もあるし、必要でない場合もある。界面活
性剤は、薬剤と非反応性であり、且つ、薬剤、賦形剤および噴霧剤の間の表面張力を実質
的に減少させ、且つ/または、バルブ滑沢剤として働く、あらゆる好適な無毒の化合物で
あり得る。
【0141】
適切な界面活性剤の例としては、限定はされないが、オレイン酸;ソルビタントリオレ
エート;塩化セチルピリジニウム;ソーヤレシチン;ポリオキシエチレン(20)ソルビ
タンモノラウレート;ポリオキシエチレン(10)ステアリルエーテル;ポリオキシエチ
レン(2)オレイルエーテル;ポリオキシプロピレン-ポリオキシエチレンエチレンジア
ミンブロックコポリマー;ポリオキシエチレン(20)モノステアリン酸ソルビタン;ポ
リオキシエチレン(20)ソルビタンモノオレート;ポリオキシプロピレン-ポリオキシ
エチレンブロックコポリマー;エトキシ化ヒマシ油;およびこれらの組み合せが挙げられ
る。
【0142】
適切な噴霧剤の例としては、限定はされないが、ジクロロジフルオロメタン、トリクロ
ロフルオロメタン、ジクロロ-テトラフルオロエタンおよび二酸化炭素が挙げられる。
【0143】
吸入可能組成物での使用に適した賦形剤の例としては、限定はされないが、ラクトース
、デンプン、中鎖脂肪酸のプロピレングリコールジエステル;中鎖脂肪酸、短鎖脂肪酸、
もしくは長鎖脂肪酸、またはこれらの組み合わせのトリグリセリドエステル;ペルフルオ
ロジメチルシクロブタン;ペルフルオロシクロブタン;ポリエチレングリコール;メント
ール;Lauroglycol;ジエチレングリコールモノエチルエーテル;ポリグリコ
ール化された中鎖脂肪酸グリセリド;アルコール;ユーカリ油;短鎖脂肪酸;およびこれ
らの組み合わせが挙げられる。
【0144】
いくつかの実施形態において、本開示の組成物は経鼻適用(nasal application)を含
む。経鼻適用としては、例えば、鼻腔用スプレー、点鼻薬、鼻軟膏、鼻洗浄液、鼻内注射
、鼻腔タンポン挿入、気管支用スプレーおよび吸入器、またはのど飴、うがい薬もしくは
含嗽薬の使用による間接的な適用、または鼻孔もしくは顔に塗布される軟膏剤の使用によ
る適用、またはこれらの組み合わせ、並びに同様の適用法が挙げられる。
【0145】
別の実施形態では、本開示の医薬組成物は補足的な剤を含有し、例えば、一つもしくは
複数の抗菌剤および/または一つもしくは複数の従来の抗生物質を含有する。感染治療の
促進または抗菌作用の増強を目的として、一つまたは複数の本開示の溶解素ポリペプチド
を含有する治療薬は、溶解素ポリペプチドの殺菌活性も増強し得る少なくとも1つの補足
的な剤をさらに含んでいてもよい。前記補足的な剤は、グラム陰性菌の処置に使用される
一つまたは複数の抗生物質であり得る。好ましい実施形態において、前記補足的な剤は、
緑膿菌(P. aeruginosa)によって引き起こされる感染の治療に使用される抗生物質また
は抗菌剤である。
【0146】
対象への投与量および投与頻度
本開示の組成物は、単位剤形で提供されてもよく、当該技術分野において周知のいかな
る方法で調製されてもよい。単一剤形を作製するために担体物質と組み合わせることがで
きる活性成分の量は、治療対象の宿主、感染性細菌への受容者の暴露期間、対象の大きさ
および体重、並びに特定の投与様式に応じて異なる。単一剤形を作製するために担体物質
と組み合わせることができる活性成分の量は、一般的には、治療効果をもたらす各化合物
の量である。一般的には、100%中、活性成分の総量は約1%~約99%、好ましくは
約5%~約70%、最も好ましくは約10%~約30%の範囲をとる。
【0147】
投与される投与量は、治療対象の感染の活性、治療対象の対象の年齢、健康および全身
健康状態、特定の溶解素ポリペプチドの活性、もしあれば、本開示の溶解素ポリペプチド
と組み合わせられる抗生物質の性質および活性、並びにそのような組み合わせの併用効果
を含む、いくつかの因子に依存する。概して、投与される本溶解素ポリペプチドの有効量
は、最長14日間、1日1~4回投与される、1~50mg/kgの範囲内に含まれると
予想される。抗生物質も使用される場合、抗生物質は、標準的な投与計画で、またはより
低い量で、投与される。しかし、そのような投与量および投与計画は全て(溶解素ポリペ
プチドの投与量および投与計画であろうが、溶解素ポリペプチドと併せて投与されるいか
なる抗生物質の投与量および投与計画であろうが)、最適化を受ける。最適な投与量は、
当業者の技能の範囲内であるが、本開示を念頭に置いた、インビトロおよびインビボでの
パイロット有効性実験を行うことにより決定することができる。
【0148】
いくつかの実施形態において、活性溶解素ポリペプチドユニットへの暴露時間は、望ま
しい活性溶解素ポリペプチドの濃度(ユニット/ml)に影響し得る。「長期」または「
遅」放出担体に分類される担体(例えば、ある種の鼻腔用スプレーまたは菓子錠剤等)は
、より低い濃度の溶解素ポリペプチド(ユニット/ml)を、ただしより長期間に亘って
、保持または提供することができるが、一方、「短期」または「高速」放出担体(例えば
、含嗽薬等)は、高濃度の溶解素ポリペプチド(ユニット/ml)を、ただしより短期間
に亘って、保持または提供することができる。さらにより高いユニット/mlの投与量ま
たはより低いユニット/mlの投与量を有することが必要となる状況もある。
【0149】
本開示のあらゆる溶解素ポリペプチドに関して、治療的有効量が、細胞培養アッセイま
たは動物モデル(通常はマウス、ウサギ、イヌ、またはブタ)において、最初に見積もら
れ得る。動物モデルは、望ましい濃度範囲および投与経路の達成にも使用され得る。次に
、得られた情報を用いて、ヒトにおける有効量および投与経路が求められ得る。十分なレ
ベルの有効成分(active ingridient)を与えるために、または所望の効果を維持するた
めに、投与量および投与がさらに調整され得る。考慮され得る追加の因子としては、病状
の重症度、患者の年齢、体重および性別;食事、所望の処置時間、投与方法、投与の時間
および頻度、薬剤の組み合わせ、反応感度、並びに治療法に対する耐性/応答、並びに治
療医の判断が挙げられる。
【0150】
治療レジメンは、連日投与(例えば、毎日、1回、2回、3回等)、一日おき(例えば
、一日おきに、1回、2回、3回等)、週2回、週1回、2週間に1回、月1回等を伴い
得る。一実施形態において、処置は持続点滴として与えられ得る。単位用量が複数回投与
され得る。臨床症状の監視により必要とされるように、間隔は不規則であってもよい。あ
るいは、単位用量は徐放性製剤として投与され得るが、この場合、より少ない頻度の投与
が求められる。投与量および頻度は患者に応じて異なり得る。そのような指針は、局所投
与(localized administration)、例えば、鼻腔内投与、吸入投与、直腸内投与等、また
は全身投与、例えば、経口投与、直腸内投与(例えば、浣腸)、筋肉内投与、腹腔内投与
、静脈内投与、皮下投与、経尿道投与等のために調整されることは、当業者によって理解
される。
【実施例0151】
実施例1
グラム陰性菌溶解素の同定
グラム陰性菌を死滅させるのに使用され得る、推定PGH候補を、バイオインフォマテ
ィクス検索プロトコルを用いて同定した。まず、本発明者らは、バクテリオファージ溶解
素を求めた検索語によりスクリーニングをかけた注釈付けゲノム配列から得られた緑膿菌
(P. aeruginosa)PGHの候補リストを作成した。前記候補リストには、「アミダーゼ
」、「リゾチーム」、「グルコサミニダーゼ」、「エンドペプチダーゼ」、「ペプチドグ
リカンヒドロラーゼ」、「溶菌性トランスグリコシラーゼ」、「エンドリシン」、「溶解
素」、および「細胞壁ヒドロラーゼ」が含まれた。次に、このように同定されたPGHを
BLASTP解析による検索に用いて、GenBank内の全ての緑膿菌(P. aeruginos
a)ゲノム配列(緑膿菌(P. aeruginosa)群;Taxid:136841)およびミカビ
ブリオ・アエルギノサヴォルス(Micavibrio aeruginosavorus)株ARL-13のゲノム
配列を検索し、より大きな推定PGH群を作成した。次に、46種のPGHから構成され
る、この群の一部を、さらなる研究のために選び出した。本研究に含める基準は、配列保
存に関しての多様性とし、一連の推定上の触媒活性/細胞壁結合活性を有する、高度に保
存された酵素および保存性が低い酵素の両方を含めた。これら46種のPGHを合成し、
細菌発現ベクターpBAD24(Guzman et al., J Bacteriol. (14):4121-30 (1995))
にクローニングし、それで大腸菌(E.coli)株Top10(ライフテクノロジーズ社)を
形質転換した。活性評価のため、全ての大腸菌(E.coli)クローン(ベクターコントロー
ルを含む)を、プレートベースのアッセイを用いて、緑膿菌(P. aeruginosa)株PAO
1に対する溶菌活性についてスクリーニングした。次いで、陽性クローンをさらに、液体
LB培地中の可溶性タンパク質の誘導について、文献(Schuch et al., Nature, 418 (69
00):884-9, (2002))の通りに解析した。可溶性且つ活性を有する溶解素について、誘導
した培地の大腸菌(E.coli)粗抽出液を次に、疎水性蛍光プローブ1-N-フェニルナフ
チルアミン(1-N-phenylnaphtthylmine)(NPN)を用いて、緑膿菌(P. aeruguinosa
)株PAO1の透過化(permeabilizaton)を誘導する能力について調べた。このNPN
アッセイは、細菌外膜を破壊する化合物のスクリーニングのための標準的な方法である(
Helander and Mattila-Sandholm, J Appl Microbiol., 88(2):213-9. (2000))。このス
クリーニングアプローチによって、最終的に、緑膿菌(Pseudomonas aeruginosa)株、お
よび他のグラム陰性菌(例えば、ミカビブリオ・アエルギノサヴォルス(Micavibrio aer
uginosavorus))、並びにマリンメタゲノミクスを用いて同定されたもの、のゲノム内の
5種の候補PGH(N末端αヘリックスドメインおよびC末端αヘリックスドメインを有
する)が導かれた。得られたタンパク質を次に、ペネム系抗生物質に耐性を有する(Okam
oto et al. Antimicrob Agents Chemother. 45(7):1964-71 (2001))緑膿菌(P. aerugin
osa)株PAO1に対する抗菌活性について試験した。
【0152】
精製された溶解素の活性を評価するため、緑膿菌(P. aeruginosa)株PAO1による
疎水性蛍光プローブ1-N-フェニルナフチルアミン(1-N-phenylnaphtthylmine)(N
PN)の取り込みを調べた。グラム陰性菌の外膜は溶解素およびNPNを含む疎水性化合
物に対する透過障壁の働きをし、GNの透過化活性の評価が可能であるため、疎水性化合
物の内部標的への到達能によってGNの透過化活性を評価した。すなわち、NPNは、通
常外膜によって排除されるが、外膜の脂質二重層内へのパーティション(partition)の
際に、顕著な蛍光強度を示す。
【0153】
緑膿菌(P. aeruginosa)PAO1はアメリカ合衆国培養細胞系統保存機関(ATCC
)から入手した。細菌を、37℃、250rpmの振盪恒温器内で、LB培地(シグマ・
アルドリッチ社)中、10CFU/mlの初期濃度で培養した。緑膿菌(P. aeruginos
a)培養物を対数期の始めまで増殖させ(A550~0.3)、そこに各候補溶解素(G
N)を10mcg/mlの濃度で添加した。NPNの取り込みを測定するため、10μM
NPNを、PBS中のGN1、GN2、GN4、GN8、GN14、GN20、GN2
2、GN26、GN27、GN28、GN30、GN37、およびGN43を含有する対
数増殖期細胞に添加し、蛍光分光光度計を用いて1時間の時点の420nmにおける蛍光
をモニターした(図3)。抗生物質ポリミキシンB(5mcg/ml)およびEDTA(
1mM)をポジティブコントロールとして使用し、一方で、NPNで処理したが溶解素を
添加しなかった細胞をネガティブコントロールとして使用した。
【0154】
図3に示されるように、緑膿菌(P. aeruginosa)細胞がNPN存在下でGN2(配列
番号2)、GN4(配列番号3)、GN14(配列番号4)、GN37(配列番号1)、
またはGN43(配列番号5)で処理された場合に、強い蛍光シグナルが認められた(灰
色のバー)。各溶解素の一般的特徴を表4に示す。
【0155】
まとめると、これらの結果により、グラム陰性菌のOMを透過(permeate)する能力を
示す一連のGN溶解素が同定され、異種ペプチドセグメントの追加という手段を講じる必
要なく、グラム陰性菌に対して活性を有する溶解素を同定する、第一の工程が確立される
【0156】
【表4】
【0157】
実施例2
GN溶解素はグラム陰性菌に対して強い抗菌活性を示す
精製された溶解素の抗菌活性を評価するため、個々のGN溶解素と一緒にインキュベー
トした後の生緑膿菌(P. aeruginosa)株PAO1の生存率を評価した。簡潔に説明する
と、10個のPAO1細胞を、25mcg/mlの濃度の表示のGN溶解素で、1時間
(37℃、撹拌無し)、20mMトリス塩酸(pH7.2)緩衝液の存在下で処理した。
ポリミキシンB(PMB、25mcg/ml)、ノボビオシン(Nov、5mcg/ml
)、EDTA(1mM)およびヒトリゾチーム(HuLYZ、25mcg/ml)をコン
トロールとして用いた。検出の閾値は2.0Log10CFU/mlであった。
【0158】
図4が示すように、GN溶解素はHuLYZまたはノボビオシンのいずれよりも高い抗
菌活性をそれぞれ示したが、一方で、GN4(配列番号3)、GN14(配列番号4)、
およびGN37(配列番号1)は、EDTAとの比較ではより強い抗菌活性を、PMBと
の比較では同等の抗菌活性を、それぞれ示した。
【0159】
この実験は、GNがグラム陰性菌に対する従来の抗生物質、ヒトリゾチームまたはキレ
ート化剤EDTAのいずれよりも、同等以上の抗菌活性を示すことが可能であることを明
らかにしている。
【0160】
実施例3
GN37は非常に有効な抗グラム陰性菌剤である
GN37溶解素は、ミカビブリオ・アエルギノサヴォルス(Micavibrio aeruginosavor
us)の381-bp MICA_542遺伝子座にコードされる、126アミノ酸ポリペ
プチドである(図1A)。ミカビブリオ・アエルギノサヴォルス(M. aeruginosavorus)
は、緑膿菌(P. aeruginosa)の捕食者であるが、抗シュードモナスPGH活性の供給源
として以前に使用されたことがない。GN37溶解素は、9.69の予測pIを持つ、高
度正電荷タンパク質である。さらに、GN37は、(VanYスーパーファミリーのメン
バーを含む)DD-カルボキシペプチダーゼ活性およびDL-カルボキシペプチダーゼ活
性を有するPGHのPeptidase_M15_4ファミリーのメンバーである(図1
B)。BLASTP解析によれば、GN37(配列番号1)は、50種超の異なるグラム
陰性菌種および1種のグラム陽性菌種由来のタンパク質に対して67%以下の同一性を有
する。図1Cには多重配列アラインメントが示されており、GN37が、グラム陽性菌の
相同体(ストレプトマイセス属由来、GenBank配列AGJ50592.1)、並び
に大腸菌(E.coli)由来のタンパク質(WP_001117823.1およびNP_54
3082.1)、エルシニア属種(Yersinia spp.)由来のタンパク質(CAJ2844
6.1)およびアシネトバクター・バウマンニ(Acinetobacter baumannii)由来のタン
パク質(WP_034684053.1)を含むグラム陰性病原菌由来のタンパク質と比
較されている。重要なことであるが、GN37に対して67%超の同一性を有する配列は
公開データベース内に存在しない。

実施例4
GN4のペプチド誘導体は強力な抗菌活性を示す
完全長の溶解素に加えて、GN4の5種のペプチド誘導体(αベースのヘリックスC末
端断片に対応)を作製し、それらについても調べた(図5)。第一のペプチド(FGN4
-1、(配列番号7))は42アミノ酸C末端αヘリックスドメインに対応している。こ
の領域がGN4のC末端αヘリックス両親媒性ドメインを作製するために十分であるとい
う、タンパク質二次構造予測の考慮により、これに達した(あるいは、C末端そのもを漸
進的に切断し、活性に対する影響を毎回検査することによって、達成できた)。追加の修
飾の原理は、本明細書の別の場所に記載されている。
【0161】
単一のC末端システインをFGN4-1(配列番号7)に付加して、FGN4-4(配
列番号10)を作製した。3種のさらなるペプチドでは、FGN4-1の11個のC末端
残基が、いずれも除去されているか(FGN4-2、(配列番号8))、除去されて1個
のリジン(K)残基で置換されているか(FGN4-3、(配列番号9))、B型肝炎カ
プシドから同定された8残基の抗菌性ペプチドとなっている(PGN4、(配列番号6)
)。B型肝炎ペプチドは、SQSRESQCであり、Immune Epitope D
atabaseによるEpitope ID番号は96916である。10個のPAO
1細胞を、10mcg/mlの濃度の表示のペプチド誘導体で、1時間(37℃、撹拌無
し)、20mMトリス塩酸(pH7.2)緩衝液の存在下で処理した死滅アッセイ(kill
ing assay)において、各GN4由来ペプチドの抗菌活性を調べた(図6)。検出の閾値
は2.0log10CFU/mlであった。図6に示されるように、各試験ペプチドはい
くらかの抗菌活性(ネガティブコントロールとして用いた緩衝液と比較して)を示し、一
方、FGN4-1およびFGN4-4は、優れた活性を示し、細胞生存率を4log以上
減少させた。
【0162】
実施例5
GN溶解素およびGNペプチドはロバストな抗細菌性を示す
次に、GN溶解素およびGN-ペプチド抗細菌性をヒト血清中で評価した。緑膿菌(P.
aeruginosa)細胞をヒト血清中、37℃で1時間、撹拌無しでインキュベートし、PA
O1の対数期に対する活性を調べた。GN溶解素およびGNペプチド(25mcg/ml
)をそれぞれ、MIC未満の濃度のポリミキシンB(PMB)(1mcg/ml)の存在
下および非存在下でプールした。検出の閾値は2.0log10CFU/mlであった。
図7に示されるように、GN溶解素プール単独は、ポリミキシンB(Polymxin B)が示し
た抗細菌性と同様の抗細菌性を示した。さらに、PMBと組み合わされた場合、ペプチド
プールおよび溶解素プールの両方が、4log10以上の生存率減少をもたらした。
【0163】
まとめると、これらの知見は、ヒト血清中での、PMBと溶解素ポリペプチド(GN)
または溶解素ペプチドとの間の強い相加活性または相乗活性を示している。先の研究によ
り、組み合わされた溶解素混合物の個々の成分の強い抗菌活性が示されているため、溶解
素プールだけでなく、個々の溶解素成分も、抗生物質との強い相加活性または相乗活性を
示すと予想される(Loeffler et al. Antimicrob Agents Chemother. Jan; 47(1): 375-3
77 (2003))。
【0164】
仮想例1
単離されたGN溶解素の試験
本実施例の目的は、本明細書に記載のGN溶解素ポリペプチドおよびGN4のペプチド
誘導体の各々が、緑膿菌(P. aeruginosa)以外のグラム陰性菌株の増殖阻害または死滅
が可能であるかを確認することである。このために、単離された本開示のポリペプチド(
本明細書に記載され、従来技術によって生成された、と表現される場合がある)を、全て
市販の、肺炎桿菌(Klebsiella pneumoniae)NCTC9633(ATCC13883)
、エンテロバクター・エアロゲネス(Enterobacter aerogenes)NCTC10006(A
TCC13048)、シトロバクター・フロインデイ(Citrobacter freundii)NCT9
750(ATCC8090)、ネズミチフス菌(Salmonella typhimurium)CDC651
6-60(ATCC14028)、ペスト菌(Yersinia pestis)(ATCC BAA-
1511D-5)、野兎病菌(Francisella tulerensis)(ATCC6223)および大
腸菌(Escherichia coli)DSM1103(ATCC25822)等の種々のグラム陰性
菌に対する抗菌活性について試験する。この実験の追加の腕において、前記菌株は、一つ
または複数の標準的なケア用抗生物質に対して耐性を示すように選択され得る(例えば、
多剤耐性の緑膿菌(P. aeruginosa)Br667株)。
【0165】
簡潔に説明すると、GN溶解素ポリペプチドおよびGN4ペプチドを、5~15mcg
/mlの濃度で、1時間(37℃、撹拌無し)、20mMトリス塩酸(pH7.2)緩衝
液の存在下で、試験する。検出の閾値は2.0Log10CFU/mlとする。溶解素ポ
リペプチドまたはその断片のそれぞれの活性を、単独で、またはポリミキシンB等のグラ
ム陰性菌に対して活性を有する抗生物質、もしくはゲンタマイシン等のグラム陰性菌に対
して活性を有する別の抗生物質と組み合わせて、試験する。溶解素ポリペプチドの抗生物
質に対する耐性を克服する能力が試験される、この実験の腕において、前記選択された抗
生物質が、前記特定の細菌が耐性を示す抗生物質となる。平板計数法でCFU/mLを求
めるために、様々な時点(0、1、4および8時間)で、100μLの一定分量の接種菌
液を培地から取り出す。
【0166】
グラム陰性菌の外膜構造の保存、並びに緑膿菌(P. aeruginosa)に対する本開示およ
び実施例のGN4および前述のその誘導体および他の溶解素の有効性に基づけば、本開示
の溶解素ポリペプチドは、さらなる(緑膿菌(P. aeruginosa)以外の)グラム陰性菌株
に対しても抗菌活性を示すと予想される。

仮想例2
GN溶解素/溶解素ペプチドと追加の抗生物質との間の相乗効果および相加効果の試験
実施例5に記載の実験計画と同様に、本明細書で開示される溶解素ポリペプチドを、追
加の(PMB以外の)抗生物質と組み合わせて使用した場合の相乗効果または相加効果に
ついて試験する。GN溶解素およびGN-ペプチドの相乗的または相加的な抗細菌性をヒ
ト血清中で評価する。緑膿菌(P. aeruginosa)をヒト血清中、37℃で1時間、撹拌無
しでインキュベートし、PAO1の対数期に対する活性を調べる。GN溶解素およびGN
ペプチド(10~25mcg/ml)をそれぞれ、ノボビオシン、アミノグリコシド、カ
ルバペネム、セフタジジム(第3世代)、セフェピム(第4世代)、セフトビプロール(
第5世代)、フルオロキノロン、ピペラシリン、チカルシリン、コリスチン、リファマイ
シン(例えば、リファンピシン、リファブチン、リファペンチン等)、およびペニシリン
等の、MIC未満の濃度の抗生物質の存在下および非存在下でインキュベートする。平板
計数法により細菌の生存率をCFU/mL単位で求める。
【0167】
仮想例3
インビボ肺炎モデルを用いる多剤耐性緑膿菌(P. aeruginosa)治療用の溶解素ポリペプ
チドの試験
成体C57ブラックマウスを、特定の無菌条件下、ケージ内で、管理環境に維持する。
マウスを、酸素を送り込んだ(oxygenated)チャンバ内でセボラン(アボット・ラボラト
リーズ社(Abbot Laboratories))の吸引により短時間麻酔し、頭を高めて仰臥位に置く
。多剤耐性緑膿菌(P. aeruginosa)株Ka02細菌の接種菌液(50μlの乳酸加リン
ゲル液中10cfu)を、胃管栄養針を用いて各マウスの左肺にゆっくりと注入する。
【0168】
マウスを3つの実験治療群に無作為に分ける。この3つの群は以下からなる:1)感染
の1時間後に食塩水を静脈内投与され、その後、感染後5時間の時点で1回のさらなる腹
腔内投与を受ける、食塩水処置群(n=5);2)GN4を感染の1時間後に20mg/
kgの用量で静脈内投与され、その後、感染後5時間の時点で15mg/kgの用量の1
回のさらなる腹腔内投与を受ける、溶解素ポリペプチドGN4群(n=5);並びに、3
)「Tienam」(メルク社)](活性成分はカルバペネム系抗生物質のイミペネム)
を感染の1時間後に25mg/kgの用量で腹腔内投与され、その後、感染後5時間、2
4時間、29時間、48時間および53時間の時点で25mg/kgのさらなる腹腔内投
与を受ける、ポジティブコントロール-イミペネム処置群(n=5)。
【0169】
感染後9日目まで、12時間毎に3群全ての生存をモニターする。同じ実験計画を用い
て、本明細書で開示されるさらなる溶解素ポリペプチドのインビボにおける抗菌活性を試
験する。
【0170】
仮想例4
マウス好中球減少症モデルにおける緑膿菌(Pseudomonas aeruginosa)誘導性敗血症に対
する溶解素ポリペプチドの防御ポテンシャルの試験
緑膿菌(Pseudomonas aeruginosa)による侵襲性感染に対する溶解素ポリペプチドの防
御的有効性を、文献(Pier et al. Infect. Immun. 57:174-179 (1989); Schreiber et a
l. J. Immunol. 146:188-193 (1991))に記載の好中球減少症マウスモデルにおいて測定
する。成体BALB/c ByJマウス(ジャクソン・ラボラトリーズ社(Jackson Labo
ratories)、バーハーバー、メーン州)を、無菌の、シュードモナスを含まない環境下で
維持する。好中球減少症は、1日目、3日目、および5日目に、各マウスに、3mgのシ
クロホスファミド(Cytoxan′、ブリストル・マイヤーズスクイブ社(Bristol-
Myers Squibb)、プリンストン、ニュージャージー州)を腹腔内投与することによって確
立される。5日目は、シクロホスファミドを時点0時間に投与し、2時間後に溶解素(2
0mg/kg)またはPBSコントロールを腹腔内投与し、その後、10cfuの生緑
膿菌(Pseudomonas aeruginosa)06ad PAを2時間後に腹腔内投与する。その後毎
日マウスをモニターし、死亡率を成績として測定する。さらに、動物の治療用の最適な溶
解素濃度を求めるために、追加の濃度の溶解素ポリペプチドを試験する。
【0171】
同じ実験計画を用いて、本明細書で開示されるさらなる溶解素ポリペプチドのインビボ
における防御的抗菌活性を試験する。
【0172】
仮想例5
ヒト対象における全身感染の治療
多剤耐性緑膿菌(P. aeruginosa)による全身性呼吸器感染(systemic respiratory in
fection)と診断された患者を、一つまたは複数の本明細書で開示される溶解素ポリペプ
チドと組み合わせた、静脈内ポリミキシンBまたはエアロゾル化ポリミキシンBで処置す
る。
【0173】
静脈内ポリミキシンBの推奨投与量は1.5~2.5mg/kg/日(1mg=10,
000IU)である(Sobieszczyk ME et al., J Antimicrob Chemother., 54(2):566-9
(2004))。ポリミキシンBの静脈内注射は、60~90分間かけて、15日間与える。一
つまたは複数の本開示の溶解素ポリペプチド(polypetide)を含む医薬組成物を、所定の
濃度で毎日静脈内投与する。あるいは、エアロゾル化ポリミキシンB療法を、毎日(14
日間)、2.5mg/kg/日で、一つまたは複数の本開示の溶解素ポリペプチド(poly
petide)を含む医薬組成物と組み合わせて、施行する。個々の患者の臨床状態に応じて、
治療レジメン(treatment regiment)の期間および/または濃度は変動し得る。さらに、
静脈内ポリミキシンBまたはエアロゾル化ポリミキシンBは、1日のうちに複数回に分け
て投与可能である。静脈内ポリミキシンおよびエアロゾル化ポリミキシンの使用に関する
詳細な情報は、例えば、Falagas et al. Clin Med Res. 4(2): 138-146 (2006)に記載さ
れている。
【0174】
治療終了時に、患者を細菌排除(microbiological clearance)および安全性について
評価する。全身性呼吸器感染患者の治療は、患者に置ける、前記感染に伴う症状の低減お
よび/または原因となる細菌集団の減少もしくは根絶をもたらすと期待される。
【0175】
仮想例6
ヒト対象における糖尿病性潰瘍の局所的治療
糖尿病患者の間で、糖尿病性足部潰瘍感染は、真性糖尿病の重症な合併症の1つであり
、入院の主な原因の1つである。重要なことであるが、緑膿菌(P. aeruginosa)は糖尿
病性足部潰瘍において重篤な組織傷害を頻繁に引き起こす(Sivanmaliappan and Sevanan
, Int J Microbiol. article ID: 605195 (2011))。糖尿病性足部潰瘍感染の治療におけ
る本開示の溶解素ポリペプチド(polypetide)の有効性を示すために、臨床試験を実施す
る。
【0176】
まず、個々の患者の創傷培養検体を、緑膿菌(P. aeruginosa)の存在について試験す
る。次に、一つまたは複数の本開示の(例えば、プール中の)溶解素ポリペプチドに対す
る緑膿菌(P. aeruginosa)の感受性を、臨床・検査標準協会(CLSI)基準(van der
Heijden et al. Ann Clin Microbiol Antimicrob.6:8 (2007))に従って、例えばディ
スク拡散法を用いて、確認する。あるいは、患者を、溶解素に対する細菌感受性の基準を
満たすように前もって選択しておく。並行して、使用される適切な抗生物質(例えば、ポ
リミキシンB)に対する個々の菌株の感受性をインビトロで決定する(あるいは、患者を
、特定の抗生物質に対する細菌感受性の基準を満たすように前もって選択しておく)。感
受性菌株、例えば、緑膿菌(P. aeruginosa)ATCC27853(ポリミキシンに対し
て感受性)は、品質管理(QC)として使用され得る。さらに、溶解素ポリペプチドおよ
びポリミキシンB等の最適な抗生物質の両方を含む併用療法に対する、創傷培養検体中に
存在する緑膿菌(P. aeruginosa)の感受性を(創傷環境による溶解素阻害の可能性を除
外するために:実施例5および図7、並びに上記のそれについての考察を参照)、行う。
【0177】
インビトロ感受性研究の後に、糖尿病性潰瘍感染の治療における本開示の溶解素ポリペ
プチドのインビボでの有効性が試験される。溶解素は注射(例えば、静脈内注射または皮
下注射注射)で投与されてもよいし、あるいは、局所製剤として創傷に直接塗布すること
もできる。さらに、抗生物質が、特定の抗生物質の標準的な投薬に従って指示される通り
に、全身投与(経口投与もしくは非経口投与)されてもよく、あるいは局所投与されても
よい、糖尿病性潰瘍の治療に使用される抗生物質と組み合わせて、溶解素ポリペプチドを
試験する。例えば、ポリミキシンBが溶解素ポリペプチドとの組み合わせで使用される場
合、静脈内ポリミキシンBの推奨投与量は1.5~2.5mg/kg/日である。
【0178】
糖尿病性足部潰瘍感染は一般的にグラム陽性菌種およびグラム陰性菌種が混合された多
菌性であるため(Citron et al. J Clin Microbiol. 45(9): 2819-2828 (2007))、本開
示の溶解素ポリペプチドは、所与の患者の足部潰瘍感染に存在するグラム陽性菌の治療に
適した、2つ以上の抗生物質および/または一つもしくは複数の他の溶解素と組み合わせ
て、使用され得る。溶解素処置によって、例えば、細菌集団の対数減少もしくは根絶の観
点から、またはあらゆる他の臨床的もしくは実験室的な改善尺度の観点から、高い有効率
(response rate)がもたらされると期待される。本開示による溶解素および抗生物質の
組み合わせに対する応答は、溶解素と抗生物質が協同すると、さらにより高くなると期待
される。実際に、溶解素または抗生物質の一方または両方の投与量を、有効性を犠牲にす
ることなく減少させることが可能な場合がある。
【0179】
仮想例7
ヒト対象における熱傷の局所的治療
熱傷創感染は、治癒を遅らせ、瘢痕を促進し、菌血症、敗血症または臓器不全をもたら
し得ることから、重大な懸念となる。緑膿菌(P. aeruginosa)は最も一般的な熱傷感染
源である(Church et al. Clinical Microbiology Reviews, 19 (2), 403 - 434 (2006)
)。本開示の溶解素ポリペプチドは緑膿菌(P. aeruginosa)に対して活性を有すること
が示されたため、単独療法として、または有利には一つもしくは複数の抗生物質と組み合
わせて、そのような感染の治療に使用できると期待される。
【0180】
本開示の溶解素ポリペプチドを含む、クリーム、ゲル、および/または気泡の形態の局
所用組成物は、I度熱傷、II度熱傷、およびIII度熱傷を含む、様々な程度の熱傷を
患う患者の患部皮膚領域に塗布される。抗生物質または追加の活性薬剤(異なる標的生物
に対して活性を有する溶解素および所望によりこれらの標的生物に対する抗生物質)を含
むまたは含まない、溶解素ポリペプチドを含有する局所用組成物は、様々な時間間隔で患
部熱傷領域に直接塗布される。
【0181】
溶解素ポリペプチドの局所投与は、原因である細菌集団の減少または根絶だけでなく、
患者の症状の低減または消失ももたらすと期待される。

***
【0182】
上記実施例は、本明細書に記載の方法および特徴の例示であり、限定を意図するもので
はない。さらに、上記実施例は、本開示に対する一般的な適用性の記述を含み、そのよう
な記述は、それらが現れた特定の実施例に限定されず、本明細書に記載される実験結果の
より広い意味の結論の記述および表現を構成する。
【0183】
引用された全ての参考文献の内容は、あらゆる目的のために、完全な複写の如く、全体
が参照によって本明細書に援用される。

配列番号1:
GN37
ポリペプチド配列
MTYTLSKRSLDNLKGVHPDLVAVVHRAIQLTPVDFAVIEGLRSVSRQKEL VAAGASKTMNSRHLTGHAVDLAAYVNGIR
WDWPLYDAIAVAVKAAAKELG VAIVWGGDWTTFKDGPHFELDRSKYR
配列番号2:
GN2
ポリペプチド配列
MKISLEGLSLIKKFEGCKLEAYKCSAGVWTIGYGHTAGVKEGDVCTQEEAEKLLRGDIFKFEEYVQDSVKVDLDQSQFDA
LVAWTFNLGPGNLRSSTMLKKLNNGEYESVPFEMRRWNKAGGKTLDGLIRRRQAESLLFESKEWHQV
配列番号3
GN4
ポリペプチド配列
MRTSQRGIDLIKSFEGLRLSAYQDSVGVWTIGYGTTRGVTRYMTITVEQAERMLSNDIQRFEPELDRLAKVPLNQNQWDA
LMSFVYNLGAANLASSTLLKLLNKGDYQGAADQFPRWVNAGGKRLDGLVKRRAAERALFLEPLS
配列番号4
GN14
ポリペプチド配列
MNNELPWVAEARKYIGLREDTSKTSHNPKLLAMLDRMGEFSNESRAWWHDDETPWCGLFVGYCLGVAGRYVVREWYRARA
WEAPQLTKLDRPAYGALVTFTRSGGGHVGFIVGKDARGNLMVLGGNQSNAVSIAPFAVSRVTGYFWPSFWRNKTAVKSVP
FEERYSLPLLKSNGELSTNEA
配列番号5
GN43
ポリペプチド配列
MKRTTLNLELESNTDRLLQEKDDLLPQSVTNSSDEGTPFAQVEGASDDNTAEQDSDKPGASVADADTKPVDPEWKTITVA
SGDTLSTVFTKAGLSTSAMHDMLTSSKDAKRFTHLKVGQEVKLKLDPKGELQALRVKQSELETIGLDKTDKGYSFKREKA
QIDLHTAYAHGRITSSLFVAGRNAGLPYNLVTSLSNIFGYDIDFALDLREGDEFDVIYEQHKVNGKQVATGNILAARFVN
RGKTYTAVRYTNKQGNTSYYRADGSSMRKAFIRTPVDFARISSRFSLGRRHPILNKIRAHKGVDYAAPIGTPIKATGDGK
ILEAGRKGGYGNAVVIQHGQRYRTIYGHMSRFAKGIRAGTSVKQGQIIGYVGMTGLATGPHLHYEFQINGRHVDPLSAKL
PMADPLGGADRKRFMAQTQPMIARMDQEKKTLLALNKQR
配列番号6
PGN4
ポリペプチド配列
NKGDYQGAADQFPRWVNAGGKRLDGLVKRRASQSRESQC
配列番号7
FGN4-1
ポリペプチド配列
NKGDYQGAADQFPRWVNAGGKRLDGLVKRRAAERALFLEPLS
配列番号8
FGN4-2
ポリペプチド配列
NKGDYQGAADQFPRWVNAGGKRLDGLVKRRA
配列番号9
FGN4-3
ポリペプチド配列
NKGDYQGAADQFPRWVNAGGKRLDGLVKRRK
配列番号10
FGN4-4
ポリペプチド配列
NKGDYQGAADQFPRWVNAGGKRLDGLVKRRAAERALFLEPLSC
配列番号11
GN37
ポリヌクレオチド配列
ATGACATACACCCTGAGCAAAAGAAGCCTGGATAACCTAAAAGGCGTTCATCCCGATCTGGTTGCCGTTGTCCATCGCGC
CATCCAGCTTACACCGGTTGATTTCGCGGTGATCGAAGGCCTGCGCTCCGTATCCCGCCAAAAGGAACTGGTGGCCGCCG
GCGCCAGCAAGACCATGAACAGCCGACACCTGACAGGCCATGCGGTTGATCTAGCCGCTTACGTCAATGGCATCCGCTGG
GACTGGCCCCTGTATGACGCCATCGCCGTGGCTGTGAAAGCCGCAGCAAAGGAATTGGGTGTGGCCATCGTGTGGGGCGG
TGACTGGACCACGTTTAAGGATGGCCCGCACTTTGAACTGGATCGGAGCAAATACAGATGA
配列番号12
GN2
ポリヌクレオチド配列
ATGAAAATTAGTTTAGAGGGATTATCTCTCATCAAAAAATTTGAGGGTTGTAAACTAGAAGCATACAAATGTTCTGCAGG
AGTGTGGACTATAGGTTATGGTCATACTGCAGGTGTAAAAGAAGGTGATGTTTGCACACAAGAGGAAGCTGAAAAATTAT
TAAGAGGAGATATCTTTAAATTTGAAGAGTATGTGCAAGATAGTGTAAAGGTTGATTTAGACCAAAGTCAATTTGACGCA
TTAGTTGCATGGACATTTAATTTAGGCCCAGGTAATTTAAGAAGTTCAACCATGTTGAAAAAATTAAATAATGGAGAGTA
TGAATCTGTTCCTTTCGAAATGAGAAGGTGGAATAAAGCAGGTGGTAAAACCTTAGATGGTTTAATCAGAAGACGCCAAG
CAGAATCATTATTATTTGAAAGTAAAGAGTGGCATCAAGTATAA
配列番号13
GN4
ポリヌクレオチド配列
ATGCGTACATCCCAACGAGGCATCGACCTCATCAAATCCTTCGAGGGCCTGCGCCTGTCCGCTTACCAGGACTCGGTGGG
TGTCTGGACCATAGGTTACGGCACCACTCGGGGCGTCACCCGCTACATGACGATCACCGTCGAGCAGGCCGAGCGGATGC
TGTCGAACGACATTCAGCGCTTCGAGCCAGAGCTAGACAGGCTGGCGAAGGTGCCACTGAACCAGAACCAGTGGGATGCC
CTGATGAGCTTCGTGTACAACCTGGGCGCGGCCAATCTGGCGTCGTCCACGCTGCTCAAGCTGCTGAACAAGGGTGACTA
CCAGGGAGCAGCGGACCAGTTCCCGCGCTGGGTGAATGCGGGCGGTAAGCGCTTGGATGGTCTGGTTAAGCGTCGAGCAG
CCGAGCGTGCGCTGTTCCTGGAGCCACTATCGTGA
配列番号14
GN14
ポリヌクレオチド配列
ATGAATAACGAACTTCCTTGGGTAGCCGAAGCCCGAAAGTATATCGGCCTTCGCGAAGACACTTCGAAGACTTCGCATAA
CCCGAAACTTCTTGCCATGCTTGACCGCATGGGCGAATTTTCCAACGAATCCCGCGCTTGGTGGCACGACGACGAAACGC
CTTGGTGCGGACTGTTCGTCGGCTATTGCTTGGGCGTTGCCGGGCGCTACGTCGTCCGCGAATGGTACAGGGCGCGGGCA
TGGGAAGCCCCGCAGCTTACGAAGCTTGACCGGCCCGCATACGGCGCGCTTGTGACCTTCACGCGAAGCGGCGGCGGCCA
CGTCGGTTTTATTGTGGGCAAGGATGCGCGCGGAAATCTTATGGTTCTTGGCGGTAATCAGTCGAACGCCGTAAGTATCG
CACCGTTCGCAGTATCCCGCGTAACCGGCTATTTCTGGCCGTCGTTCTGGCGAAACAAGACCGCAGTTAAAAGCGTTCCG
TTTGAAGAACGTTATTCGCTGCCGCTGTTGAAGTCGAACGGCGAACTTTCGACGAATGAAGCGTAA
配列番号15
GN43
ポリヌクレオチド配列
ATGAATAACGAACTTCCTTGGGTAGCCGAAGCCCGAAAGTATATCGGCCTTCGCGAAGACACTTCGAAGACTTCGCATAA
CCCGAAACTTCTTGCCATGCTTGACCGCATGGGCGAATTTTCCAACGAATCCCGCGCTTGGTGGCACGACGACGAAACGC
CTTGGTGCGGACTGTTCGTCGGCTATTGCTTGGGCGTTGCCGGGCGCTACGTCGTCCGCGAATGGTACAGGGCGCGGGCA
TGGGAAGCCCCGCAGCTTACGAAGCTTGACCGGCCCGCATACGGCGCGCTTGTGACCTTCACGCGAAGCGGCGGCGGCCA
CGTCGGTTTTATTGTGGGCAAGGATGCGCGCGGAAATCTTATGGTTCTTGGCGGTAATCAGTCGAACGCCGTAAGTATCG
CACCGTTCGCAGTATCCCGCGTAACCGGCTATTTCTGGCCGTCGTTCTGGCGAAACAAGACCGCAGTTAAAAGCGTTCCG
TTTGAAGAACGTTATTCGCTGCCGCTGTTGAAGTCGAACGGCGAACTTTCGACGAATGAAGCGTAA
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
【配列表】
2022065075000001.app
【手続補正書】
【提出日】2022-02-15
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
配列番号3及び配列番号6~10からなる群より選択されるポリペプチド配列に対して少なくとも90%の同一性を有するアミノ酸配列を含む単離された溶解素ポリペプチド又は溶解活性を有するその断片、並びに、薬学的に許容できる担体を含む医薬組成物であって、前記溶解素ポリペプチドは緑膿菌(P. aeruginosa)及び所望により少なくとも1つの他のグラム陰性菌種を増殖阻害する、又はその菌数を減少させる、又は死滅させる医薬組成物。
【請求項2】
前記溶解素ポリペプチドが緑膿菌(P. aeruginosa)及び所望により少なくとも1つの他のグラム陰性菌種を増殖阻害する、又はその菌数を減少させる、又は死滅させるのに有効な量で存在する、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項3】
液剤、懸濁剤、乳濁剤、吸入可能な散剤、エアロゾル剤、又は噴霧剤である、請求項1又は2に記載の医薬組成物。
【請求項4】
グラム陰性菌感染の治療に適した一つ又は複数の抗生物質をさらに含む、請求項1~3のいずれかに記載の医薬組成物。
【請求項5】
配列番号3及び配列番号6~10からなる群より選択される配列に対して少なくとも90%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む溶解素ポリペプチド又は溶解活性を有するその断片をコードする核酸分子を含む単離されたポリヌクレオチド、或いは、前記ポリヌクレオチドの相補配列を含むベクターであって、前記コードされる溶解素ポリペプチドは緑膿菌(P. aeruginosa)及び所望により少なくとも1つの他のグラム陰性菌種を増殖阻害する、又はその菌数を減少させる、又は死滅させるベクター。
【請求項6】
配列番号3及び配列番号6~10からなる群より選択される配列に対して少なくとも90%同一であるアミノ酸配列を含む溶解素ポリペプチド又は溶解活性を有するその断片をコードする核酸を含み、前記核酸は異種プロモーターに機能的に連結されている組換え発現ベクターであって、前記コードされる溶解素ポリペプチドは緑膿菌(P. aeruginosa)及び所望により少なくとも1つの他のグラム陰性菌種を増殖阻害する、又はその菌数を減少させる、又は死滅させる組換え発現ベクター。
【請求項7】
請求項5又は6に記載のベクターを含む宿主細胞。
【請求項8】
前記核酸配列はcDNA配列である、請求項5又は6に記載のベクター。
【請求項9】
配列番号3及び配列番号6~10からなる群より選択される配列に対して少なくとも90%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む溶解素ポリペプチド又は溶解活性を有するその断片をコードする核酸分子を含む単離されたポリヌクレオチドであって、前記コードされる溶解素ポリペプチドは緑膿菌(P. aeruginosa)及び所望により少なくとも1つの他のグラム陰性菌種を増殖阻害する、又はその菌数を減少させる、又は死滅させるポリヌクレオチド。
【請求項10】
cDNAである、請求項9に記載のポリヌクレオチド。
【請求項11】
少なくとも1つのグラム陰性菌種を増殖阻害する、又はその菌数を減少させる、又は死滅させるための医薬を製造するための、請求項1~4のいずれかに記載の医薬組成物の使用。
【請求項12】
細菌感染と診断された、その危険性がある、又はその症状を示している対象において緑膿菌(P. aeruginosa)及び所望により一つ又は複数の追加のグラム陰性菌種によって引き起こされる細菌感染を治療するための医薬を製造するための、請求項1~4のいずれかに記載の医薬組成物の使用。
【請求項13】
前記一つ又は複数の追加のグラム陰性菌種が、クレブシエラ属種(Klebsiella spp.)、エンテロバクター属種(Enterobacter spp.)、大腸菌(Escherichia coli)、シトロバクター・フロインデイ(Citrobacter freundii)、ネズミチフス菌(Salmonella typhimurium)、ペスト菌(Yersinia pestis)、及び野兎病菌(Francisella tulerensis)からなる群より選択される、請求項11又は12に記載の使用。
【請求項14】
前記溶解素ポリペプチドが、配列番号3及び配列番号6~10からなる群より選択される配列に対して少なくとも95%同一であるアミノ酸配列を含む、請求項11~13のいずれかに記載の使用。
【請求項15】
前記グラム陰性菌感染が、緑膿菌(Pseudomonas aeruginosa)によって引き起こされる感染である、請求項11~14のいずれかに記載の使用。
【請求項16】
対象において緑膿菌(P. aeruginosa)及び所望により一つ又は複数の追加のグラム陰性菌種によって引き起こされる局所的又は全身的な病原性細菌感染を治療するための医薬を製造するための、請求項1~4のいずれかに記載の医薬組成物の使用。
【請求項17】
細菌感染と診断された、その危険性がある、又はその症状を示している対象においてグラム陰性菌感染を予防又は治療するための医薬を製造するための、請求項1~4のいずれかに記載の医薬組成物の使用であって、前記医薬組成物は、グラム陰性菌感染の治療に適した抗生物質と組み合わせて共投与されるものである使用。
【請求項18】
前記抗生物質が、セフタジジム、セフェピム、セフォペラゾン、セフトビプロール、シプロフロキサシン、レボフロキサシン、アミノグリコシド系抗生物質、イミペネム、メロペネム、ドリペネム、ゲンタマイシン、トブラマイシン、アミカシン、ピペラシリン、チカルシリン、ペニシリン、リファンピシン、ポリミキシンB、及びコリスチンのうちの一つ又は複数から選択される、請求項17に記載の使用。
【請求項19】
グラム陰性菌感染の治療に適した抗生物質の有効性を増強するための医薬を製造するための、請求項1~4のいずれかに記載の医薬組成物の使用であって、前記医薬組成物は前記抗生物質と組み合わせて共投与されるものであり、前記組み合わせの投与が、前記抗生物質又は前記溶解素ポリペプチドを個々に投与するよりも、前記グラム陰性菌を増殖阻害する、又はその菌数を減少させる、又は死滅させるのにより有効である使用。
【請求項20】
前記溶解素ポリペプチドが、配列番号3及び配列番号6~10からなる群より選択される配列に対して少なくとも95%同一であるアミノ酸配列を含む、請求項19に記載の使用。
【請求項21】
前記抗生物質が、セフタジジム、セフェピム、セフォペラゾン、セフトビプロール、シプロフロキサシン、レボフロキサシン、アミノグリコシド系抗生物質、イミペネム、メロペネム、ドリペネム、ゲンタマイシン、トブラマイシン、アミカシン、ピペラシリン、チカルシリン、ペニシリン、リファンピシン、ポリミキシンB、及びコリスチンのうちの一つ又は複数から選択される、請求項19に記載の使用。
【請求項22】
配列番号3及び配列番号6~10からなる群より選択されるポリペプチド配列に対して少なくとも90%の同一性を有するアミノ酸配列を含む単離された溶解素ポリペプチドであって、緑膿菌(P. aeruginosa)及び所望により少なくとも1つの他のグラム陰性菌種を増殖阻害する、又はその菌数を減少させる、又は死滅させる溶解素ポリペプチド、又は溶解活性を有するその断片。
【外国語明細書】