(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022065103
(43)【公開日】2022-04-26
(54)【発明の名称】支持体材料配合物およびそれを使用する付加製造プロセス
(51)【国際特許分類】
C08F 2/44 20060101AFI20220419BHJP
C08F 220/28 20060101ALI20220419BHJP
C08F 283/06 20060101ALI20220419BHJP
【FI】
C08F2/44 C
C08F220/28
C08F283/06
【審査請求】有
【請求項の数】19
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022022209
(22)【出願日】2022-02-16
(62)【分割の表示】P 2018500768の分割
【原出願日】2016-08-14
(31)【優先権主張番号】62/205,009
(32)【優先日】2015-08-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】62/205,010
(32)【優先日】2015-08-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】513131464
【氏名又は名称】ストラタシス リミテッド
【住所又は居所原語表記】1 Holtzman Street, Science Park, P.O. Box 2496, 7612401 Rehovot, Israel
(74)【代理人】
【識別番号】100103816
【弁理士】
【氏名又は名称】風早 信昭
(74)【代理人】
【識別番号】100120927
【弁理士】
【氏名又は名称】浅野 典子
(72)【発明者】
【氏名】ビダブスキー, ユバル
(72)【発明者】
【氏名】ペリ, ダニ
(72)【発明者】
【氏名】ポクラス, マリアナ
(72)【発明者】
【氏名】レヴィ, アヴラハム
(72)【発明者】
【氏名】マツナー, エイナト
(57)【要約】 (修正有)
【課題】付加製造における支持体材料を形成するために有用な支持体材料配合物を提供する。
【解決手段】ポリオールを含む非硬化性の水混和性ポリマー;第1の水混和性の硬化性材料;少なくとも1種の第2の水混和性の硬化性材料;および開始剤、界面活性剤、染料、顔料および抑制剤のうちの少なくとも1種からなる支持体材料配合物であって、前記第1の水混和性の硬化性材料は、一官能性のポリ(アルキレングリコール)アクリレートを含み、前記第2の水混和性の硬化性材料は下記の式Iによって表され、式中、Raは、H、C(1~4)アルキルおよび親水性基から選択される;kは、2~10の範囲での整数である;かつXおよびYはそれぞれ独立して、少なくとも1個の窒素原子および/または酸素原子を含む水素結合形成部分である。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリオールを含む非硬化性の水混和性ポリマー、
第1の水混和性の硬化性材料、
少なくとも1種の第2の水混和性の硬化性材料、および
開始剤、界面活性剤、染料、顔料および抑制剤のうちの少なくとも1種
からなる支持体材料配合物であって、
前記第1の水混和性の硬化性材料は、一官能性のポリ(アルキレングリコール)アクリレートを含み、
前記第2の水混和性の硬化性材料は下記の式Iによって表され、
式中、
Raは、H、C(1~4)アルキルおよび親水性基から選択される;
kは、2~10の範囲の整数、または2~8の範囲の整数、または2~6の範囲の整数、または2~4の範囲の整数であり、あるいは、2または3である;かつ
XおよびYはそれぞれ独立して、少なくとも1個の窒素原子および/または酸素原子を含む水素結合形成部分である、支持体材料配合物。
【請求項2】
前記第2の水混和性の硬化性材料は、前記水素結合形成化学的部分によって置換されるアクリルアミドである、請求項1に記載の支持体材料配合物。
【請求項3】
Yは、ヒドロキシル、アルコキシ、アリールオキシ、アミン、アルキルアミン、ジアルキルアミン、カルボキシレート、ヒドラジン、カーバメート、ヒドラジン、窒素含有複素脂環および酸素含有複素脂環から選択される、請求項1に記載の支持体材料配合物。
【請求項4】
Xは-O-である、請求項3に記載の支持体材料配合物。
【請求項5】
Raは、第2の水混和性の硬化性材料がアクリレートであるようにHである、請求項4に記載の支持体材料配合物。
【請求項6】
Xは、-NRc-(式中、Rcは、水素、アルキル、シクロアルキルまたはアリールである)である、請求項5に記載の支持体材料配合物。
【請求項7】
Raは、第2の水混和性の硬化性材料がアクリルアミドであるようにHである、請求項6に記載の支持体材料配合物。
【請求項8】
前記水混和性ポリマーは、ポリオールを含む、請求項1~8のいずれかに記載の支持体材料配合物。
【請求項9】
前記ポリオールは、ポリオール3165、ポリプロピレングリコールおよびポリグリセロールからなる群から選択される請求項8に記載の支持体材料配合物。
【請求項10】
前記水混和性ポリマーの濃度は、支持体材料配合物の総重量の30~80重量%の範囲である、請求項1~9のいずれかに記載の支持体材料配合物。
【請求項11】
前記第1の水混和性の硬化性材料の濃度は、支持体材料配合物の総重量の10~20重量%の範囲である、請求項1~10のいずれかに記載の支持体材料配合物。
【請求項12】
前記第2の水混和性の硬化性材料の濃度は、支持体材料配合物の総重量の5~10重量%である、請求項1~11のいずれかに記載の支持体材料配合物。
【請求項13】
前記第1の水混和性の硬化性材料の濃度は、支持体材料配合物の総重量の10~20重量%の範囲であり、前記第2の水混和性の硬化性材料の濃度は、支持体材料配合物の総重量の5~10重量%である、請求項1~10のいずれかに記載の支持体材料配合物。
【請求項14】
前記第1および第2の水混和性の硬化性材料のそれぞれは、UV硬化性材料である、請求項1~13のいずれかに記載の支持体材料配合物。
【請求項15】
前記第2の水混和性の硬化性材料は、アクリレート、メタクリレート、アクリルアミドまたはメタクリルアミドから選択される、請求項1~14のいずれかに記載の支持体材料配合物。
【請求項16】
支持体材料配合物を硬化エネルギーにさらしたときに形成される硬化した支持体材料は、アルカリ性溶液に溶解可能である、請求項1~15のいずれかに記載の支持体材料配合物。
【請求項17】
前記アルカリ性溶液に浸漬されたときの硬化した支持体材料の溶解時間は、前記第2の水混和性の硬化性材料が存在しない同等の支持体材料配合物から作製される硬化した支持体材料の溶解時間の2分の1未満である、請求項16に記載の支持体材料配合物。
【請求項18】
前記硬化した支持体材料から作製され、800mLの前記アルカリ性溶液に浸漬される16グラムの立方体の溶解時間は、2時間未満である、請求項16に記載の支持体材料配合物。
【請求項19】
支持体材料配合物を硬化エネルギーにさらしたときに形成される硬化した支持体材料は、第2の水混和性の硬化性材料が存在せず、かつ、支持体材料配合物と実質的に同じ総濃度の硬化性材料を含む同等の支持体材料配合物から作製される硬化した支持体材料の機械的強度よりも最大でも50%低い機械的強度によって特徴づけられる、請求項1~18のいずれかに記載の支持体材料配合物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、そのいくつかの実施形態において、付加製造(AM)、より具体的には、しかし限定的ではなく、付加製造(例えば、三次元インクジェット印刷など)における支持体材料を形成するために有用な配合物、および、該配合物を利用する付加製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
付加製造(AM)は、任意の形状を有する構造物を加法的形成工程によりコンピューターデータから直接に作製することを可能にする技術である(additive manufacturing;AM)。どのようなAMシステムであってもその基本的動作は、三次元コンピューター造形物を薄い断面物に切り分けること、その結果を二次元位置データに変換すること、そして、そのデータを、三次元構造物を層状様式で作製する制御機器に入れることからなる。
【0003】
付加製造では、三次元印刷(例えば、3Dインクジェット印刷など)、電子ビーム溶融、ステレオリソグラフィー、選択的レーザー焼結、積層体製造、および熱溶解積層法などを含めて、作製方法に対する多くの異なる取り組みが伴う。
【0004】
三次元(3D)印刷プロセス、例えば、3Dインクジェット印刷が、組立て材料の層毎のインクジェット堆積によって行われている。したがって、組立て材料が、層を支持用構造物の上に堆積させるための一組のノズルを有する分配ヘッドから分配される。組立て材料に応じて、層はその後、硬化、すなわち、固体化が、適切な装置を使用して行われ得る。
【0005】
様々な三次元印刷技術が存在しており、これらが、例えば、下記において開示される:米国特許第6259962号、同第6569373号、同第6658314号、同第6850334号、同第6863859号、同第7183335号、同第7209797号、同第7225045号、同第7300619号および同第7500846号、ならびに、公開番号が20130073068である米国特許出願(すべてが、同じ譲受人によるものである)。
【0006】
付加製造(AM)プロセスの期間中に、組立て材料は、所望の物体を生成させるために堆積させられる「造形物材料」(これはまた、「物体材料」または「造形用材料」として知られている)を含む場合があり、また、しばしば、別の材料(「支持体材料」または「支持用材料」)が、所望の物体が組み立てられていくにつれて当該物体への一時的な支えを提供するために使用される。このような他の材料は、本明細書中およびこの技術分野では「支持体材料」または「支持用材料」として示され、物体の特定の領域を組立て期間中に支えるように、また、その後の物体層の適切な垂直方向での配置を確実にするために物体の特定の領域を支えるように使用される。例えば、物体が張出しの特徴または形状(例えば、湾曲した幾何学的形状、負の角度および空隙など)を含む場合、物体は典型的には、印刷期間中に使用され、かつ、作製された物体の最終形状を明らかにするためにその後で除かれる隣接する支持構築物を使用して構築される。
【0007】
造形用材料および支持用材料は最初は液体であり、その後、要求される層形状を形成させるために硬化させられる場合がある。この硬化プロセスが、様々な方法によって、例えば、UV硬化、相変化、結晶化、乾燥などによって行われる場合がある。すべての場合において、支持体材料が造形用材料の近傍に堆積させられ、これにより、複雑な物体幾何形状の形成および物体空隙の充填が可能となる。そのような場合、硬化させられた支持体材料の除去は、困難で、かつ、時間がかかりやすく、また、形成された物体に損傷を与えることがある。
【0008】
現在市販されているプリントヘッド(例えば、インクジェット印刷用ヘッドなど)を使用するときには、支持体材料は、支持体材料が噴射され得るように、作業温度において、すなわち、噴射温度において比較的低い粘度(約10cPs~20cPs)を有しなければならない。さらに、支持体材料は、後続層の組立てを可能にするために迅速に固まらなければならない。加えて、固まった支持体材料は、造形物材料を所定位置に保持するための十分な機械的強度と、幾何学的欠陥を回避するための少ないゆがみとを有しなければならない。
【0009】
支持用材料として使用することができる材料の例には、相変化材料が挙げられ、ワックスが非限定的な一例である。適切に高い温度において、これらの材料は溶融し、したがって、液体状態のときには支持体の除去を可能にする。そのような相変化の欠点の1つが、支持用材料を溶融させるために要求される温度もまた、造形物の変形を、したがって、物体構造物の変形を生じさせ得るということである。
【0010】
支持体材料を除くために知られている方法には、(用具またはウォータージェットによって加えられる)機械的衝撃、同様に、化学的方法(例えば、加熱の有無にかかわらず、溶媒への溶解など)が含まれる。機械的方法は労働集約的であり、小さい入り組んだ部品には適していないことが多い。
【0011】
支持体材料を溶解するために、作製された物体は多くの場合、水に浸けられるか、または、支持体材料を溶解することができる溶媒に浸けられる。支持体材料を溶解するために利用される溶液はまた、本明細書中およびこの技術分野では「清浄液」と呼ばれる。しかしながら、多くの場合において、支持体除去プロセスは、訓練された要員、防護服、および、費用のかかる廃棄物処理を必要とする有害物質、手作業および/または特別な機器を伴うことがある。加えて、溶解プロセスは通常の場合には拡散速度論によって制限され、支持構築物が大きく、かさばるときにはとりわけ、非常に長い期間を必要することがある。そのうえ、後処理が、物体表面における「混合層」の痕跡を除くために必要である場合がある。用語「混合層」は、造形物材料および支持体材料がそれらの間の境界で互いに混じり合うことによって、作製中の物体の表面における2つの材料の間での境界で形成される、混じり合った固まった造形物材料および支持体材料の残留層を示す。
【0012】
加えて、高い温度を支持体除去時に必要とする方法は、温度感受性である造形物材料(例えば、ワックスおよびある種の可撓性材料など)が存在するために問題となる場合がある。支持体材料を除くための機械的方法および溶解方法の両方が、オフィス環境での使用についてはとりわけ問題を含んでおり、この場合、使い易さ、清潔さおよび環境安全性が主な考慮事項である。
【0013】
3D組立てのための水溶性材料が以前に記載されている。例えば、米国特許第6228923号には、選択された材料のリボンをプレートに高圧および高温で押出することを伴う3D組立てプロセスにおける支持体材料として使用されるための水溶性熱可塑性ポリマーのポリ(2-エチル-2-オキサゾリン)が記載される。
【0014】
融解性の結晶性水和物を含む含水支持体材料が米国特許第7255825号に記載される。融解性の結晶性水和物は、固体から液体(すなわち、溶融物)への相変化を通常の場合には周囲温度よりも高い温度で(典型的には、物質に依存して20℃~120℃の間で)受ける。典型的には、融解したとき、融解性の結晶性水和物は、この融解性の結晶性水和物が形成される塩の水溶液に変わる。これらの溶液における水含有量は典型的には、当該溶液をサーマル・インクジェット・プリントヘッドからの噴射のために好適にするために十分に高い。溶融プロセスは可逆的であり、液体状態で分配される材料は、冷えると容易に固体化する。
【0015】
3D物体を組み立てる際の支えに好適な組成物が、例えば、米国特許第7479510号、同第7183335号および同第6569373号(すべてが本譲受人のものである)に記載される。一般には、これらの特許に開示される組成物は、少なくとも1つのUV硬化性(反応性)成分(例えば、アクリル成分)と、少なくとも1つのUV非硬化性成分(例えば、ポリオール成分またはグリコール成分)と、光開始剤とを含む。照射後、これらの組成物は、水にさらされると、またはアルカリ性溶液もしくは酸性溶液にさらされると、または界面活性剤水溶液にさらされると、溶解または膨潤することが可能である半固体物質またはゲル様物質をもたらす。そのような可溶性支持体材料を使用する3D印刷方法論はまた、「可溶性支持体技術」またはSSTとして知られており、その支持体材料配合物が多くの場合、「可溶性支持体材料」または「可溶性支持体材料配合物」と呼ばれる。可溶性支持体材料は有益には、十分な水溶性を特徴とし、その結果、比較的短い期間の期間中に除去されるようにしなければならず、または、有害でない清浄液における十分な溶解性を特徴としなければならず、それにもかかわらず、同時に、印刷された物体を付加製造プロセス時に支えるために十分である機械的特性を示さなければならない。
【0016】
膨潤することのほかに、そのような支持体材料の別の特徴が、水、アルカリ性溶液もしくは酸性溶液、または界面活性剤水溶液にさらされたときに分解できることであり得る。これは、支持体材料が親水性成分から作製されるからである。膨潤プロセス時において、内部の力により、硬化した支持体の破砕および破壊が引き起こされる。加えて、支持体材料は、水にさらされたときに泡を遊離する物質を含有することができ、例えば、重炭酸ナトリウムを含有することができる(この場合、重炭酸ナトリウムは、酸性溶液と接触したとき、CO2に変わる)。この泡により、支持体が造形物から除かれるプロセスが助けられる。
【0017】
さらなる背景技術には、公開番号が2003/0207959である米国特許出願が含まれる。
【発明の概要】
【0018】
3Dインクジェット印刷における改善された支持体材料が求められているが、その要求は未だ満たされていない。
【0019】
本発明者らは今回、現在知られている支持体材料配合物に取って代わる新規な可溶性支持体材料配合物を設計し、首尾よく実施した。これらの配合物を分配し、硬化させたときに得られる、固まった(例えば、硬化した)支持体材料は、アルカリ性溶液を接触させることによって、減少した溶解時間および増大した溶解速度を伴って、その一方で、支持体材料の機械的特性を損なうことなく、容易かつ効率的に除かれることが可能である。
【0020】
本明細書中に記載される支持体材料配合物は、本明細書中に記載されるような硬化性(反応性)成分およびポリマー型の非硬化性成分に加えて、架橋度を硬化した支持体材料において低下させるか、または、他の場合には、支持体材料配合物を硬化させたときに形成される硬化したポリマー成分の間における分子間相互作用を妨げる硬化性成分もまた含む。このさらなる硬化性成分が、硬化した支持体材料の減少した溶解時間に、支持体材料の機械的特性を損なうことなく寄与している。
【0021】
本発明のいくつかの実施形態の1つの局面によれば、
支持体材料配合物であって、
非硬化性の水混和性ポリマー、
第1の水混和性の硬化性材料、および
少なくとも1種の第2の水混和性の硬化性材料
を含み、
第2の硬化性材料は、第1の水混和性材料を硬化エネルギーにさらしたときに形成されるポリマー鎖の間における分子間相互作用を妨げることができるように選択される、
支持体材料配合物が提供される。
【0022】
本明細書中に記載される実施形態のいずれかのいくつかによれば、第2の硬化性材料は、第1の水溶性材料を硬化エネルギーにさらしたときに形成されるポリマー鎖との水素結合を形成することができるように選択される。
【0023】
本明細書中に記載される実施形態のいずれかのいくつかによれば、第1の硬化性材料は、一官能性の硬化性材料と多官能性(例えば、二官能性)の硬化性材料との混合物を含む。
【0024】
本明細書中に記載される実施形態のいずれかのいくつかによれば、第2の硬化性材料は、ポリマー鎖の間における化学的架橋であって、多官能性(例えば、二官能性)の硬化性材料によってもたらされる化学的架橋を妨げることができる。
【0025】
本明細書中に記載される実施形態のいずれかのいくつかによれば、第2の硬化性材料は、ポリマー鎖の間における化学的架橋であって、多官能性(例えば、二官能性)の硬化性材料によってもたらされる化学的架橋の程度を低下させることができる。
【0026】
本明細書中に記載される実施形態のいずれかのいくつかによれば、第2の硬化性材料はポリマー鎖との水素結合を形成することができる。
【0027】
本明細書中に記載される実施形態のいずれかのいくつかによれば、第2の硬化性材料は、少なくとも2つの水素結合形成化学的部分を具備する。
【0028】
本明細書中に記載される実施形態のいずれかのいくつかによれば、少なくとも2つの水素結合形成化学的部分のそれぞれが独立して、酸素および窒素から選択される少なくとも1つの原子を含む。
【0029】
本明細書中に記載される実施形態のいずれかのいくつかによれば、少なくとも2つの水素結合形成化学的部分のそれぞれが独立して、アミド、カルボキシレート、ヒドロキシ、アルコキシ、アリールオキシ、エーテル、アミン、カーバメート、ヒドラジン、窒素含有複素脂環および酸素含有複素脂環から選択される。
【0030】
本明細書中に記載される実施形態のいずれかのいくつかによれば、水素結合形成化学的部分の少なくとも2つが、2個~10個の原子(例えば、炭素原子)によって、または2個~8個の原子(例えば、炭素原子)によって、または2個~6個の原子(例えば、炭素原子)によって隔てられる。
【0031】
本明細書中に記載される実施形態のいずれかのいくつかによれば、第1および第2の硬化性材料のそれぞれがUV硬化性材料である。
【0032】
本明細書中に記載される実施形態のいずれかのいくつかによれば、第1および第2硬化性材料のそれぞれが独立して、アクリレート系硬化性部分、メタクリレート系硬化性部分、アクリルアミド系硬化性部分またはメタクリルアミド系硬化性部分を含む。
【0033】
本明細書中に記載される実施形態のいずれかのいくつかによれば、第1の硬化性材料はポリ(アルキレングリコール)アクリレートを含む。
【0034】
本明細書中に記載される実施形態のいずれかのいくつかによれば、第1の硬化性材料は一官能性のポリ(アルキレングリコール)アクリレートを含む。
【0035】
本明細書中に記載される実施形態のいずれかのいくつかによれば、第1の硬化性材料は、一官能性のポリ(アルキレングリコール)アクリレートと、多官能性のポリ(アルキレングリコール)アクリレート、例えば、二官能性のポリ(アルキレングリコール)アクリレートとの混合物を含む。
【0036】
本明細書中に記載される実施形態のいずれかのいくつかによれば、第1の硬化性材料は、ポリ(アルキレングリコール)アクリレートとポリ(アルキレングリコール)ジアクリレートとの混合物を含む。
【0037】
本明細書中に記載される実施形態のいずれかのいくつかによれば、第1の硬化性材料における一官能性ポリ(アルキレングリコール)アクリレートと多官能性(例えば、二官能性)ポリ(アルキレングリコール)アクリレート(例えば、ポリ(アルキレングリコール)ジアクリレート)との間での重量比が70:30から95:5までの範囲である。
【0038】
本明細書中に記載される実施形態のいずれかのいくつかによれば、第2の硬化性材料は、アクリレート系化合物、メタクリレート系化合物、アクリルアミド系化合物またはメタクリルアミド系化合物から選択される。
【0039】
本明細書中に記載される実施形態のいずれかのいくつかによれば、第2の硬化性材料は下記の式Iによって表される:
式中、
Raは、H、C(1~4)アルキルおよび親水性基から選択される;
kは、2~10の範囲での整数、または2~8の範囲での整数、または2~6の範囲での整数、または2~4の範囲での整数であり、あるいは、2または3である;かつ
XおよびYはそれぞれ独立して、少なくとも1個の窒素原子および/または酸素原子を含む水素結合形成部分である。
【0040】
本明細書中に記載される実施形態のいずれかのいくつかによれば、Yは、ヒドロキシル、アルコキシ、アリールオキシ、アミン、アルキルアミン、ジアルキルアミン、カルボキシレート、ヒドラジン、カーバメート、ヒドラジン、窒素含有複素脂環および酸素含有複素脂環から選択される。
【0041】
本明細書中に記載される実施形態のいずれかのいくつかによれば、Xは-O-である。
【0042】
本明細書中に記載される実施形態のいずれかのいくつかによれば、Raは、第2の硬化性材料がアクリレート系化合物であるようにHである。
【0043】
本明細書中に記載される実施形態のいずれかのいくつかによれば、Xは、-NRc-(式中、Rcは、水素、アルキル、シクロアルキルまたはアリールである)である。
【0044】
本明細書中に記載される実施形態のいずれかのいくつかによれば、Raは、第2の硬化性材料がアクリルアミド系化合物であるようにHである。
【0045】
本明細書中に記載される実施形態のいずれかのいくつかによれば、第2の硬化性材料は、少なくとも1つの水素結合形成化学的部分によって置換されるアクリルアミド系化合物である。
【0046】
本明細書中に記載される実施形態のいずれかのいくつかによれば、アクリルアミド系化合物は、ヒドロキシアルキル、アルコキシアルキル、アミノアルキル、アルキルアミノアルキル、ジアルキルアミノアルキル、カルボキシアルキル、ヒドラジノアルキル、カルバモイルアルキル、および、本明細書中に記載されるようないずれかの他の水素結合形成化学的部分によって置換されるアルキルから選択される化学的部分によって置換される。
【0047】
本明細書中に記載される実施形態のいずれかのいくつかによれば、第2の硬化性材料の濃度が配合物の総重量の5重量%~40重量%の範囲である。
【0048】
本明細書中に記載される実施形態のいずれかのいくつかによれば、第1の硬化性材料の濃度が、配合物の総重量の5重量パーセント~40重量パーセントの範囲であり、または5重量パーセント~30重量パーセントの範囲であり、または5重量パーセント~25重量パーセントの範囲であり、または5重量パーセント~20重量パーセントの範囲であり、または10重量パーセント~20重量パーセントの範囲であり、または5重量パーセント~15重量%の範囲であり、または10重量パーセント~15重量%の範囲である。
【0049】
本明細書中に記載される実施形態のいずれかのいくつかによれば、第1の硬化性材料の濃度が配合物の総重量の30重量%未満であり、または25重量%未満であり、または20重量%未満であり、または15重量%未満である。
【0050】
本明細書中に記載される実施形態のいずれかのいくつかによれば、第2の硬化性モノマーの濃度が配合物の総重量の1重量パーセント~40重量パーセントの範囲であり、または1重量パーセント~30重量パーセントの範囲であり、または1重量パーセント~20重量パーセントの範囲であり、または5重量パーセント~20重量パーセントの範囲であり、または5重量パーセント~15重量パーセントの範囲であり、5重量パーセント~10重量%の範囲である。
【0051】
本明細書中に記載される実施形態のいずれかのいくつかによれば、水混和性ポリマーはポリオールを含む。
【0052】
本明細書中に記載される実施形態のいずれかのいくつかによれば、ポリオールは、ポリオール3165、ポリプロピレングリコールおよびポリグリセロールからなる群から選択される。
【0053】
本明細書中に記載される実施形態のいずれかのいくつかによれば、水混和性ポリマーの濃度が配合物の総重量の30重量%~80重量%までの範囲である。
【0054】
本明細書中に記載される実施形態のいずれかのいくつかによれば、配合物はさらに、開始剤、ならびに、必要に応じてさらなる薬剤、例えば、表面活性剤および/または抑制剤および/または安定剤などを含む。
【0055】
本明細書中に記載される実施形態のいずれかのいくつかによれば、配合物を硬化エネルギーにさらしたときに形成される硬化した支持体材料はアルカリ性溶液に溶解可能である。
【0056】
本明細書中に記載される実施形態のいずれかのいくつかによれば、アルカリ性溶液に浸漬されたときの硬化した支持体材料の溶解時間が、それぞれの実施形態のいずれかにおいて本明細書中に記載されるような第2の硬化性材料が存在しない同等の支持体材料配合物から作製される硬化した支持体材料の溶解時間の2分の1未満であり、または4分の1未満である。
【0057】
本明細書中に記載される実施形態のいずれかのいくつかによれば、硬化した支持体材料から作製され、800mLのアルカリ性溶液に浸漬される16グラムの立方体の溶解時間が、10時間未満であり、または5時間未満であり、または2時間である。
【0058】
本明細書中に記載される実施形態のいずれかのいくつかによれば、アルカリ性溶液はアルカリ金属水酸化物を含む。
【0059】
本明細書中に記載される実施形態のいずれかのいくつかによれば、アルカリ性溶液はさらにアルカリ金属ケイ酸塩を含む。
【0060】
本明細書中に記載される実施形態のいずれかのいくつかによれば、支持体材料配合物から作製され(例えば、インクジェット印刷によって印刷され、または鋳型で調製され)、配合物を硬化エネルギーにさらしたときに形成される20mm×20mm×20mmの物体が、少なくとも100Nの機械的強度によって特徴づけられる。
【0061】
本明細書中に記載される実施形態のいずれかのいくつかによれば、配合物を硬化エネルギーにさらしたときに形成される硬化した支持体材料が、第2の硬化性材料が存在せず、かつ、配合物と実質的に同じ総濃度の硬化性材料を含む同等の支持体材料配合物から作製される硬化した支持体材料の機械的強度よりも最大でも50%低い機械的強度によって、または最大でも40%低い機械的強度によって、または最大でも30%低い機械的強度によって特徴づけられる。
【0062】
本発明のいくつかの実施形態の1つの局面によれば、三次元造形物物体を作製する方法であって、複数の層を物体の形状に対応する設定されたパターンで連続して形成するように組立て材料を分配することを含み、組立て材料が造形用材料配合物および支持体材料配合物を含み、支持体材料配合物が、それぞれの実施形態のいずれかにおいて本明細書中に記載されるような配合物を含む、方法が提供される。
【0063】
本明細書中に記載される実施形態のいずれかのいくつかによれば、方法はさらに、分配することに続いて、組立て材料を硬化エネルギーにさらし、それにより、硬化した造形用材料および硬化した支持体材料から構成される印刷された物体を得ることを含む。
【0064】
本明細書中に記載される実施形態のいずれかのいくつかによれば、方法はさらに、硬化した支持体材料を除き、それにより、三次元造形物物体を得ることを含む。
【0065】
本明細書中に記載される実施形態のいずれかのいくつかによれば、除くことは、硬化した支持体材料を清浄液(例えば、アルカリ性溶液)と接触させることを含む。
【0066】
本明細書中に記載される実施形態のいずれかのいくつかによれば、清浄液はアルカリ金属水酸化物を含む。
【0067】
本明細書中に記載される実施形態のいずれかのいくつかによれば、清浄液はさらにアルカリ金属ケイ酸塩を含む。
【0068】
本発明のいくつかの実施形態の1つの局面によれば、本明細書中に記載されるような方法によって作製される三次元物体が提供される。
【0069】
別途定義されない限り、本明細書で使用されるすべての技術的用語および/または科学的用語は、本発明が属する技術分野の当業者によって一般に理解されるのと同じ意味を有する。本明細書に記載される方法および材料と類似または同等である方法および材料を本発明の実施または試験において使用することができるが、例示的な方法および/または材料が下記に記載される。矛盾する場合には、定義を含めて、本特許明細書が優先する。加えて、材料、方法および実施例は例示にすぎず、限定であることは意図されない。
【0070】
本発明の実施形態の方法および/またはシステムを実行することは、選択されたタスクを、手動操作で、自動的にまたはそれらを組み合わせて実行または完了することを含んでいる。さらに、本発明の方法および/またはシステムの実施形態の実際の機器や装置によって、いくつもの選択されたステップを、ハードウェア、ソフトウェア、またはファームウェア、あるいはオペレーティングシステムを用いるそれらの組合せによって実行できる。
【0071】
例えば、本発明の実施形態による選択されたタスクを実行するためのハードウェアは、チップまたは回路として実施されることができる。ソフトウェアとして、本発明の実施形態により選択されたタスクは、コンピュータが適切なオペレーティングシステムを使って実行する複数のソフトウェアの命令のようなソフトウェアとして実施されることができる。本発明の例示的な実施形態において、本明細書に記載される方法および/またはシステムの例示的な実施形態による1つ以上のタスクは、データプロセッサ、例えば複数の命令を実行する計算プラットフォームで実行される。任意選択的に、データプロセッサは、命令および/またはデータを格納するための揮発性メモリ、および/または、命令および/またはデータを格納するための不揮発性記憶装置(例えば、磁気ハードディスク、および/または取り外し可能な記録媒体)を含む。任意選択的に、ネットワーク接続もさらに提供される。ディスプレイおよび/またはユーザ入力装置(例えば、キーボードまたはマウス)も、任意選択的にさらに提供される。
【図面の簡単な説明】
【0072】
本明細書では本発明のいくつかの実施形態を単に例示し添付の図面を参照して説明する。特に詳細に図面を参照して、示されている詳細が例示として本発明の実施形態を例示考察することだけを目的としていることを強調するものである。この点について、図面について行う説明によって、本発明の実施形態を実施する方法は当業者には明らかになるであろう。
【0073】
【
図1】
図1は、本明細書中に記載されるような例示的なアルカリ性溶液における溶解時間で、本明細書中に記載されるような例示的な第1の硬化性材料を含む支持体材料配合物から形成される印刷された16グラムの立方体の、第1の硬化性材料の濃度の関数としての溶解時間(青色棒)と、10%の例示的な第2の硬化性材料(HAA)が第1の硬化性材料に加えられた支持体材料配合物から形成される同じ立方体の溶解時間(紫色棒)とを示す棒グラフである。
【0074】
【
図2】
図2は、本明細書中に記載されるような例示的な第1の硬化性材料を含む支持体材料配合物から形成される印刷された16グラムの立方体について測定される、第1の硬化性材料の濃度の関数としての機械的強度(青色棒)と、10%の例示的な第2の硬化性材料(HAA)が第1の硬化性材料に加えられた支持体材料配合物から形成される同じ立方体の機械的強度(紫色棒)とを示す棒グラフである。
【0075】
【
図3】
図3は、本明細書中に記載されるような例示的なアルカリ性溶液における溶解時間で、本明細書中に記載されるような例示的な第1の硬化性材料を含む支持体材料配合物で形成される様々な造形物物体の、第1の硬化性材料の濃度の関数としての溶解時間と、様々な濃度の例示的な第2の硬化性材料(HAA)が第1の硬化性材料に加えられた支持体材料配合物から形成される同じ立方体の溶解時間とを示す棒グラフである(造形物物体の形状は挿入画で示される)。
【0076】
【
図4】
図4は、本明細書中に記載されるような例示的な第1の硬化性材料を含む支持体材料配合物から形成される印刷された16グラムの立方体について測定される、第1の硬化性材料の濃度の関数としての機械的強度(青色棒)と、10%の例示的な第2の硬化性材料(HAA)が第1の硬化性材料に加えられた支持体材料配合物から形成される同じ立方体の機械的強度(紫色棒)と、5%の例示的な第2の硬化性材料(HAA)と5%の別の例示的な第2の硬化性材料が第1の硬化性材料に加えられた支持体材料配合物から形成される同じ立方体の機械的強度(緑色棒)とを示す棒グラフである。
【0077】
【
図5】
図5は、本明細書中に記載されるような例示的な第1の硬化性材料を含む支持体材料配合物から形成される印刷された16グラムの立方体について測定される、第1の硬化性材料の濃度の関数としての機械的強度(青色棒)と、10%の例示的な第2の硬化性材料(HAA)が第1の硬化性材料に加えられた支持体材料配合物から形成される同じ立方体の機械的強度(紫色棒)と、5%の例示的な第2の硬化性材料(HAA)と5%の別の例示的な第2の硬化性材料が第1の硬化性材料に加えられた支持体材料配合物から形成される同じ立方体の機械的強度(緑色棒)とを示す棒グラフである。
【0078】
【
図6】
図6は、本明細書中に記載されるような30グラムのF4配合物、および、そのアクリルアミド系モノマーが等量のIBOAによって置き換えられた30グラムの類似する配合物(これらの配合物は鋳型に入れられ、UVオーブンにおいて5時間硬化させられた)について測定される、たわみ(M’’M)の関数としての機械的強度(N)を示す比較プロットを示す。
【発明を実施するための形態】
【0079】
本発明は、そのいくつかの実施形態において、付加製造(AM)、より具体的には、しかし限定的ではなく、付加製造(例えば、三次元インクジェット印刷など)における支持体材料を形成するために有用な配合物、および、該配合物を利用する付加製造方法に関する。
【0080】
本発明の少なくとも1つの実施形態を詳しく説明する前に、本発明は、その適用において、下記の説明に示されるか、および/または図面および/または実施例において例示される構成要素および/または方法の組み立ておよび構成の細部に必ずしも限定されないことを理解しなければならない。本発明は他の実施形態が可能であり、または様々な方法で実施または実行されることが可能である。
【0081】
本発明者らは、付加製造における使用に好適な支持体材料配合物であって、典型的には造形用材料配合物を分配することと一緒にではあるが、当該配合物を分配したときに作製される印刷された物体から、少ない溶解時間および大きい溶解速度で、硬化した支持体材料の機械的特性を損なうことなく除くことができる、本明細書中に記載されるような支持体材料配合物について探索してきた。
【0082】
支持体材料配合物が典型的には、水混和性の非硬化性ポリマーと、硬化性材料とを含む。硬化性材料は、一官能性の硬化性材料および/または多官能の硬化性材料ならびに/あるいは架橋剤を含むことができる。
【0083】
例えば、3Dインクジェット印刷に好適な機械的強度によって特徴づけられる硬化した支持体材料は多くの場合、支持体材料配合物を硬化エネルギーにさらしたときに形成されるポリマー鎖の間における分子間相互作用で、機械的強度に寄与する分子間相互作用を硬化時に示す硬化性材料を含む。
【0084】
そのような分子間相互作用には、例えば、水素結合、静電相互作用、芳香族相互作用および化学的架橋が含まれる。
【0085】
例えば、3Dインクジェット印刷に好適な機械的強度によって特徴づけられる硬化した支持体材料は、少なくともある程度の架橋を示す場合がある。すなわち、支持体材料配合物を硬化エネルギーにさらしたときに形成されるポリマー鎖の少なくとも一部がその間で化学的に架橋される。
【0086】
そのような架橋を、例えば、硬化性材料が多官能性の硬化性材料および/または別の架橋剤を含むときに得ることができる。
【0087】
「化学的架橋」または「化学的に架橋された」によって、ポリマー鎖が共有結合を介して互いに連結されること、例えば、2つ以上のポリマー鎖がそれぞれ、架橋性化合物(例えば、多官能性の硬化性材料から形成されるポリマー)に共有結合により結合することが意味される。
【0088】
硬化した支持体材料における化学的に架橋されたポリマー鎖の存在は、硬化した支持体材料に所望の機械的強度を与えると考えられ、それにもかかわらず、そのようなポリマー鎖の存在はまた、水溶液におけるこの硬化した支持体材料の溶解に悪影響を及ぼす。
【0089】
ある程度の架橋を示す、または、そうでなければ、大きい機械的強度を本明細書中に記載されるような分子間相互作用の結果として示す硬化した支持体材料は多くの場合、水溶性ではなく、過酷な条件を、例えば、高濃度のアルカリ性溶液を、その化学的溶解を達成するために必要とする。
【0090】
本発明者らは、硬化した支持体材料の溶解速度および溶解時間に対する、多官能性の硬化性材料の濃度を低下させることの影響を調べてきたが、溶解速度が実際に増大するとはいえ、硬化した支持体材料の機械的強度が逆に低下することを発見している。
【0091】
この問題に対する解決策について探索しながら、本発明者らは、本明細書中に記載される分子間相互作用を妨げることができる硬化性材料を支持体材料配合物に導入し、その一方で、配合物における多官能性の硬化性材料の濃度を低下させることにより、所望の機械的強度を維持しながら、所望の減少した溶解時間および増大した溶解速度によって特徴づけられる硬化した支持体材料を、硬化エネルギーにさらされたときに提供する支持体材料配合物がもたらされることを発見している。
【0092】
本発明者らは、本明細書中に記載されるように、配合物を好適な硬化エネルギーにさらしたときに形成される硬化した支持体材料の機械的強度を損なうことなく、アルカリ性溶液における溶解によって容易かつ効率的に除くことができる新規な支持体材料配合物を設計し、首尾良く調製し、実行している。本発明者らは、これらの新規の配合物が、可溶性の固まった支持体材料を3Dインクジェット印刷法において形成するために使用可能であり、かつ、可溶性の固まった支持体材料を形成するための現在知られている配合物および/または現在利用可能な配合物と比較して改善された性能を示すことを示している。
【0093】
本明細書中において全体を通して、用語「物体」または用語「印刷された物体」は、製造プロセスの製造物を表す。この用語は、支持体材料を除く前の、本明細書中に記載されるような方法によって得られる製造物を示す。したがって、印刷された物体が、固まった(例えば、硬化した)造形用材料および固まった(例えば、硬化した)支持体材料から作製される。
【0094】
用語「印刷された物体」は、本明細書中において全体を通して使用される場合、印刷された物体全体またはその一部を示す。
【0095】
用語「造形物」は、本明細書中で使用される場合、製造プロセスの最終製造物を表す。この用語は、支持体材料が除かれた後の、本明細書中に記載されるような方法によって得られる製造物を示す。したがって、造形物は、別途示される場合を除き、硬化した造形用材料から本質的になる。この用語はまた、「造形物物体」、「最終物体」として、または単に「物体」として本明細書中では示される。
【0096】
「造形物」、「造形物物体」、「最終物体」および「物体」の用語は、本明細書中において全体を通して使用される場合、物体全体またはその一部を示す。
【0097】
本明細書中において全体を通して、表現「未硬化の組立て材料」は、本明細書中に記載されるように、層を連続して形成するように作製プロセス時に分配される材料をまとめて表す。この表現は、印刷された物体を形成するように分配される未硬化の材料、すなわち、1つまたは複数の未硬化の造形用材料配合物、および、支持体を形成するように分配される未硬化の材料、すなわち、未硬化の支持体材料配合物を包含する。
【0098】
本明細書中において全体を通して、表現「硬化した造形用材料」および表現「固まった造形用材料」(これらは交換可能に使用される)は、分配された組立て材料を硬化にさらしたとき、本明細書中で定義されるように、造形物物体を形成する組立て材料の部分で、硬化した支持体材料を除いた後の組立て材料の部分を表す。硬化した造形用材料は、本明細書中に記載されるように、当該方法で使用される造形用材料配合物に依存して、ただ1つの硬化した材料、または、2つ以上の硬化した材料の混合物であることが可能である。
【0099】
本明細書中において全体を通して、表現「造形用材料配合物」(これはまた、本明細書中では交換可能に、「造形用配合物」として、または単に「配合物」として示される)は、本明細書中に記載されるように、造形物物体を形成するように分配される未硬化の組立て材料の一部を表す。造形用配合物は未硬化の造形用配合物であり、硬化エネルギーにさらされると、最終物体またはその一部を形成するものである。
【0100】
未硬化の組立て材料は1つまたは複数の造形用配合物を含むことができ、そのため、造形物物体の異なる部分が、異なる造形用配合物を硬化させたときに作製されるように、したがって、異なる硬化した造形用材料から、または硬化した造形用材料の異なる混合物から作製されるように分配することができる。
【0101】
本明細書中において全体を通して、表現「固まった支持体材料」は、本明細書中では交換可能に、「硬化した支持体材料」、または単に「支持体材料」とも呼ばれ、作製された最終物体を作製プロセス時に支えるために意図される組立て材料の部分で、プロセスが完了し、固まった造形用材料が得られると除かれる組立て材料の部分を表す。
【0102】
本明細書中において全体を通して、用語「支持体材料配合物」(これはまた、本明細書中では交換可能に、「支持体配合物」、または単に「配合物」と呼ばれる)は、本明細書中に記載されるように、支持体材料を形成するように分配される未硬化の組立て材料の一部を表す。支持体材料配合物は未硬化の配合物であり、硬化エネルギーにさらされると、固まった支持体材料を形成するものである。
【0103】
本明細書中において全体を通して、用語「水混和性(の)」は、少なくとも一部が水に溶解可能または分散可能である物質を表し、すなわち、少なくとも50%の分子が混合時に水に移動する。この用語は、用語「水溶性(の)」および用語「水分散性(の)」を包含する。
【0104】
本明細書中において全体を通して、用語「水溶性(の)」は、等しい体積または重量で水と混合されたとき、均質な溶液が形成される物質を表す。
【0105】
本明細書中において全体を通して、用語「水分散性(の)」は、等しい体積または重量で水と混合されたとき、均質な分散物を形成する物質を表す。
【0106】
本明細書中において全体を通して、表現「溶解速度」は、物質が液体媒体に溶解する速度を表す。溶解速度は、本実施形態との関連では、ある特定量の支持体材料を溶解させるために必要となる時間によって決定することができる。測定された時間が、本明細書中では「溶解時間」として示される。
【0107】
本明細書中において全体を通して、表現「重量パーセント」が支持体材料配合物の実施形態との関連で示されるときは常に、この用語により、本明細書中に記載されるような未硬化の支持体材料配合物の総重量の重量パーセントが意味される。
【0108】
表現「重量パーセント」はまた、本明細書中では「重量%」または「%wt.」と示される。
【0109】
本明細書中において全体を通して、本発明のいくつかの実施形態が、付加製造が3Dインクジェット印刷であることの関連で記載される。しかしながら、他の付加製造プロセス(例えば、これらに限定されないが、SLAおよびDLPなど)が意図される。
【0110】
支持体材料配合物:
本発明者らは、例えば、下記のように特徴づけられる硬化した支持体材料を提供する支持体材料配合物を設計し、首尾良く調製し、実施している:
10時間未満である、または5時間未満である、または2時間である、硬化した支持体材料から作製され、800mLのアルカリ性溶液に浸漬される20×20×20mmの立方体の溶解時間(ただし、アルカリ性溶液は2%wt.のNaOHおよび1%wt.のメタケイ酸ナトリウムを含む);および
上記支持体材料配合物から作製される20mm×20mm×20mmの立方体の機械的強度が、下記の実施例の節において記載されるような圧縮試験によって測定される場合、少なくとも100Nであること。
【0111】
本発明のいくつかの実施形態の1つの局面によれば、下記の成分を含む支持体材料配合物が提供される:
非硬化性の水混和性ポリマー;
第1の水混和性の硬化性材料;および
少なくとも1種の第2の水混和性の硬化性材料。
【0112】
本明細書中において全体を通して、「硬化性材料」は、本明細書中に記載されるように硬化エネルギーにさらされるとき、固体化して、すなわち、固まって、本明細書中で定義されるような硬化した支持体材料を形成する化合物または化合物(モノマー化合物および/またはオリゴマー化合物および/またはポリマー化合物)の混合物である。硬化性材料は典型的には重合可能な材料であり、このような材料は、好適なエネルギー源にさらされるとき、重合および/または架橋を受けるものである。
【0113】
「硬化性材料」はまた、本明細書中およびこの技術分野では「反応性」材料として示される。
【0114】
本明細書中に記載される実施形態のいずれかのいくつかにおいて、硬化性材料は光重合可能な材料であり、これは、本明細書中に記載されるように、放射線にさらされたときに重合するか、または架橋を受け、また、いくつかの実施形態において、硬化性材料はUV硬化性材料であり、これは、本明細書中に記載されるように、UV-可視放射線にさらされたときに重合するか、または架橋を受ける。
【0115】
いくつかの実施形態において、本明細書中に記載されるような硬化性材料は、光誘導のラジカル重合を介して重合する重合可能な材料である。
【0116】
本明細書中に記載される実施形態のいずれかのいくつかにおいて、硬化性材料は、本明細書中に記載されるようにそれぞれが重合可能であるモノマーおよび/またはオリゴマーおよび/または短鎖ポリマーを含むことができる。
【0117】
本明細書中に記載される実施形態のいずれかのいくつかにおいて、硬化性材料が硬化エネルギー(例えば、放射線)にさらされるとき、硬化性材料は鎖伸長および架橋のいずれか1つまたは鎖伸長および架橋の組合せによって重合する。
【0118】
本明細書中に記載される実施形態のいずれかのいくつかにおいて、硬化性材料は、重合反応が起こる硬化エネルギーにさられるとき、ポリマー型の支持体材料を重合反応時に形成することができるモノマーまたはモノマーの混合物である。そのような硬化性材料はまた、本明細書中では「モノマー型硬化性材料」または「硬化性モノマー」と呼ばれる。
【0119】
本明細書中に記載される実施形態のいずれかのいくつかにおいて、硬化性材料は、重合反応が起こる硬化エネルギーにさられるとき、ポリマー型の支持体材料を重合反応時に形成することができるポリマーまたはオリゴマーあるいはポリマーおよび/またはオリゴマーの混合物である。
【0120】
硬化性材料は、一官能性の硬化性材料および/または多官能性の硬化性材料を含むことができる。
【0121】
本明細書中において、一官能性の硬化性材料は、硬化エネルギー(例えば、放射線)にさらされるときに重合を受けることができる1つの官能基を含む。多官能性の硬化性材料は、硬化エネルギー(例えば、放射線)にさらされるときに重合を受けることができ、かつ、加えて、硬化エネルギーにさらされたときに形成されるポリマー鎖の化学的架橋に関与することができる2つ以上の基を含む。
【0122】
本明細書中に記載される実施形態のいずれかのいくつかにおいて、本明細書中に記載される硬化性材料は、本明細書中で定義されるように水溶性または少なくとも水混和性(例えば、水分散性)である。
【0123】
第2の硬化性材料:
本発明のいくつかの実施形態によれば、第2の硬化性材料は、本明細書中に記載されるように、第1の水混和性材料を硬化エネルギーにさらしたときに形成されるポリマー鎖の間における分子間相互作用を妨げることができるように選択される。
【0124】
本発明のいくつかの実施形態によれば、第2の硬化性材料は、第1の水溶性材料を硬化エネルギーにさらしたときに形成されるポリマー鎖との水素結合を形成することができるように選択される。
【0125】
本発明のいくつかの実施形態によれば、第2の硬化性材料は、本明細書中で定義されるように、第1の水溶性材料を硬化エネルギーにさらしたときに形成されるポリマー鎖の間における化学的架橋を妨げることができるように選択される。
【0126】
本発明のいくつかの実施形態によれば、第2の硬化性材料は、ポリマー鎖の間における化学的架橋の程度を低下させることができるように選択される。
【0127】
上記で議論されたように、多官能性の硬化性材料が支持体材料配合物に存在するときに、硬化した支持体材料における化学的架橋を形成させることができる。
【0128】
いくつかの実施形態において、第2の硬化性材料は、支持体材料配合物に存在する多官能性の硬化性材料によってもたらされる化学的架橋を妨げることができ、または、そのような化学的架橋の程度を低下させることができる。
【0129】
いくつかの実施形態において、第2の硬化性材料は、第1の硬化性材料を硬化させたときに形成されるポリマー鎖との水素結合を形成することができ、それにより、これらのポリマー鎖の間における分子間相互作用を低下させ、および/または、これらのポリマー鎖の間における化学的架橋の程度を低下させる。
【0130】
本明細書中に記載される実施形態のいずれかのいくつかによれば、第1の硬化性材料は、本明細書中に記載されるように、一官能性の硬化性材料と、本明細書中に記載されるように、多官能性(例えば、二官能性)の硬化性材料との混合物を含む。
【0131】
本明細書中に記載される実施形態のいずれかのいくつかによれば、第2の硬化性材料は、少なくとも2つの水素結合形成化学的部分を特徴とする。
【0132】
表現「水素結合形成化学的部分」または表現「水素結合形成部分」は、本明細書中で使用される場合、水素結合ドナーまたは水素結合アクセプターであることによって水素結合を形成することができる部分または基または原子を表す。ある種の化学的部分または化学基は水素結合ドナーおよび水素結合アクセプターの両方を含むことができる。
【0133】
本明細書中で使用されるように、また、この技術分野で知られているように、「水素結合」は、強い電気陰性の原子に結合する水素原子が、孤立電子対を有する別の電気陰性原子の近くに存在するときに生じる一種の双極子-双極子引力を形成する比較的弱い結合である。
【0134】
水素結合における水素原子は、2つの相対的に電気陰性の原子の間で部分的に共有される。
【0135】
水素結合は典型的にはエネルギーが1~3kcalmol-1(4~13kJmol-1)であり、(水素原子から測定される)その結合距離が典型的には1.5Å~2.6Åの範囲である。
【0136】
水素結合ドナーは、水素がより強固に関連づけられる原子と、水素原子そのものとの両方を含む基であり、これに対して、水素結合アクセプターは、水素原子にそれほど強固に関連づけられない原子である。水素原子が共有結合により結合する相対的に電気陰性の原子は電子密度を水素原子から引き離し、その結果、水素原子は部分正電荷(δ+)を帯びる。したがって、この水素原子は、部分負電荷(δ-)を有する原子と静電相互作用を介して相互作用することができる。
【0137】
典型的な場合においてドナーおよびアクセプターの両方として水素結合相互作用に関与する原子には、酸素、窒素およびフッ素が含まれる。これらの原子は典型的には、化学基または化学的部分(例えば、カルボニル、カルボキシレート、アミド、ヒドロキシル、アミン、イミン、アルキルフルオリドおよびF2など)の一部を形成する。しかしながら、他の電気陰性原子と、そのような電気陰性原子を含有する化学基または化学的部分とが、水素結合に関与する場合がある。
【0138】
本明細書中に記載される実施形態のいずれかのいくつかによれば、第2の硬化性材料における2つ以上の水素結合形成化学的部分のそれぞれが独立して、本明細書中に記載されるように、水素結合形成に関与する1つまたは複数の酸素原子および/または窒素原子を含む。
【0139】
例示的な水素結合形成化学的部分には、アミド、カルボキシレート、ヒドロキシ、アルコキシ、アリールオキシ、エーテル、アミン、カーバメート、ヒドラジン、窒素含有複素脂環(例えば、ピペリジン、オキサリジン)および酸素含有複素脂環(例えば、テトラヒドロフラン、モルホリン)、ならびに、どのような他の化学的部分であれ、1つまたは複数の窒素原子および/または酸素原子を含む他の化学的部分が含まれるが、これらに限定されない。
【0140】
第2の硬化性モノマーにおける水素結合形成部分は、例えば、水素結合形成部分の間を連結する連結部分とみなすことができる2個~20個の原子、または2個~10個の原子、または2個~8個の原子、または2個~6個の原子、または2個~4個の原子(それらの間におけるどのような部分範囲および中間の値を含む)によって互いに隔てられることが可能である。
【0141】
したがって、いくつかの実施形態において、水素結合形成化学的部分の少なくとも2つの間における距離は、例えば、2個~10の原子であり、または2個~8個の原子であり、または2個~6個の原子であり、または2個~4個の原子である。
【0142】
いくつかの実施形態において、2つ以上の水素結合形成化学的部分がアルキレン鎖によって互いに隔てられ、したがって、上記の原子は炭素原子である。
【0143】
本明細書中に記載される実施形態のいずれかのいくつかによれば、第2の硬化性材料は、本明細書中に記載されるようにUV硬化性材料である。
【0144】
本明細書中に記載される実施形態のいずれかのいくつかによれば、第2の硬化性材料はアクリレート系化合物である。アクリレート系化合物におけるカルボキシレートが、本明細書中に記載されるような水素結合形成部分である。
【0145】
本明細書中に記載される実施形態のいずれかのいくつかによれば、第2の硬化性材料はアクリルアミド系化合物である。アクリルアミド系化合物におけるアミドが、本明細書中に記載されるような水素結合形成部分である。
【0146】
本明細書中に記載される実施形態のいずれかのいくつかによれば、第2の硬化性材料は、本明細書中に記載されるように、1つまたは複数の水素結合形成化学的部分によって置換されるアクリルアミド系化合物である。いくつかの実施形態において、水素結合形成部分およびアミド(これは別の水素結合形成部分である)がアルキルによって互いに連結され、すなわち、アルキルによって隔てられる。
【0147】
いくつかの実施形態において、第2の硬化性材料は、化学的部分(例えば、ヒドロキシアルキル、アルコキシアルキル、アミノアルキル、アルキルアミノアルキル、ジアルキルアミノアルキル、カルボキシアルキル、ヒドラジノアルキル、カルバモイルアルキル、および、本明細書中に記載されるようなどのような他の水素結合形成化学的部分によってでも置換されるアルキルなど、しかし、これらに限定されない)によって置換されるアクリルアミド系化合物である。
【0148】
いくつかの実施形態において、アルキルは、C(1~10)アルキル、またはC(2~10)アルキル、またはC(2~8)アルキル、またはC(2~6)アルキル、またはC(2~4)アルキルであり、あるいはエチルである。
【0149】
本明細書中に記載される実施形態のいずれかのいくつかによれば、第2の硬化性材料は下記の式Iによって表される:
式中、
Raは、H、C(1~4)アルキル(例えば、メチル)から選択され、あるいは、場合により、本明細書中に記載されるように親水性基であることが可能である;
kは、1~10の範囲での整数、または2~10の範囲での整数、または2~8の範囲での整数、または2~6の範囲での整数、または2~4の範囲での整数であり、あるいは2または3である;かつ
XおよびYはそれぞれ独立して、本明細書中に記載されるように、少なくとも1つの窒素原子および/または酸素原子を含む水素結合形成部分である。
【0150】
いくつかの実施形態において、Yは、本明細書中で定義されるように、ヒドロキシル、アルコキシ、アリールオキシ、アミン、アルキルアミン、ジアルキルアミン、カルボキシレート、ヒドラジン、カーバメート、ヒドラジン、窒素含有複素脂環および酸素含有複素脂環であることが可能である。
【0151】
いくつかの実施形態において、Xは-O-であり、また、これらの実施形態のいくつかにおいて、第2の硬化性材料がアクリレート系化合物であるように、RaはHである。Raがメチルであるとき、第2の硬化性材料はメタクリレート系化合物である。
【0152】
いくつかの実施形態において、Xは、本明細書中に記載されるように、-NRc-(式中、Rcは、例えば、水素、アルキル、シクロアルキルまたはアリールであることが可能であり、ただし、アルキル、シクロアルキルおよびアリールは置換または非置換であり得る)である。これらの実施形態において、RaがHであるとき、第2の硬化性材料はアクリルアミド系化合物である。Raがメチルであるとき、第2の硬化性材料はメタクリルアミドである。
【0153】
本明細書中に記載される実施形態のいずれかのいくつかにおいて、第2の硬化性材料は、下記のように定義される式Iによって表される:
XはNHであり、kは2または3であり、かつ、Yはヒドロキシルである。
【0154】
本明細書中に記載される実施形態のいずれかのいくつかにおいて、第2の硬化性材料は、下記のように定義される式Iによって表される:
XはNHであり、kは2または3であり、かつ、Yは、アミン、アルキルアミンまたはジアルキルアミンであり、例えば、ジメチルアミンである。
【0155】
本明細書中に記載される実施形態のいずれかのいくつかにおいて、第2の硬化性材料は、下記のように定義される式Iによって表される:
RaはHであり、XはNHであり、kは2または3であり、かつ、Yはヒドロキシルである。
【0156】
本明細書中に記載される実施形態のいずれかのいくつかにおいて、第2の硬化性材料は、下記のように定義される式Iによって表される:
Raはメチルであり、XはNHであり、kは2または3であり、かつ、Yはヒドロキシルである。
【0157】
本明細書中に記載される実施形態のいずれかのいくつかにおいて、第2の硬化性材料は、下記のように定義される式Iによって表される:
RaはHであり、XはNHであり、kは2または3であり、かつ、Yはジメチルアミンである。
【0158】
本明細書中に記載される実施形態のいずれかのいくつかにおいて、第2の硬化性材料は、下記のように定義される式Iによって表される:
Raはメチルであり、XはNHであり、kは2または3であり、かつ、Yはジメチルアミンである。
【0159】
本明細書中に記載される実施形態のいずれかのいくつかにおいて、第2の硬化性材料は、1つまたは複数の硬化性材料、あるいは、本明細書中においてそれぞれの実施形態のいずれかに記載される化合物のいずれかの1つまたは複数を含む。
【0160】
本明細書中に記載される実施形態のいずれかのいくつかにおいて、第2の硬化性材料は、本明細書中において式Iによって表される2つ以上の硬化性材料の混合物を含み、また、いくつかの実施形態において、第2の硬化性材料は、本明細書中に記載されるような2つ以上の置換されたアクリルアミド系化合物を含む。
【0161】
本明細書中に記載される実施形態のいずれかのいくつかにおいて、第2の硬化性材料における硬化性材料の1つまたは複数が、100℃よりも高い、または110℃よりも高い、または120℃よりも高い、または130℃よりも高い当該硬化性材料から形成されるポリマーのTgによって特徴づけられる。
【0162】
第1の硬化性材料:
本明細書中に記載される実施形態のいずれかのいくつかにおいて、第1の硬化性材料はUV硬化性材料である。
【0163】
本明細書中に記載される実施形態のいずれかのいくつかにおいて、第1および第2の一官能性材料のそれぞれがUV硬化性材料である。
【0164】
本明細書中に記載される実施形態のいずれかのいくつかにおいて、第1および第2の一官能性材料のそれぞれが独立して、アクリレート系硬化性部分、メタクリレート系硬化性部分、アクリルアミド系硬化性部分またはメタクリルアミド系硬化性部分(1つまたは複数)を含む。
【0165】
本明細書中に記載される実施形態のいずれかのいくつかにおいて、第1の硬化性材料は、一官能性の硬化性材料を含む。
【0166】
本明細書中に記載される実施形態のいずれかのいくつかにおいて、第1の硬化性材料は、多官能性の硬化性材料、例えば、二官能性の硬化性材料を含む。
【0167】
本明細書中に記載される実施形態のいずれかのいくつかにおいて、第1の硬化性材料は、多官能性の硬化性材料、例えば、二官能性の硬化性材料と、一官能性の硬化性材料との混合物を含む。
【0168】
本発明のいくつかの実施形態による第1の硬化性材料を形成する硬化性の一官能性材料は、下記の式IIによって表されるビニル含有化合物の1つまたは複数を含むことができる:
【0169】
式Iにおける(=CH2)基は、当該材料がUV硬化性材料であるように、重合可能な基を表しており、典型的にはUV硬化性基である。
【0170】
いくつかの実施形態において、R1はカルボキシレートであり、当該化合物は一官能性のアクリレート系化合物である。これらの実施形態のいくつかにおいて、R2はメチルであり、当該化合物は一官能性のメタクリレート系化合物である。他の実施形態において、R2は水素であり、当該化合物は一官能性のアクリレート系化合物である。R2は、水素、C(1~4)アルキルであることが可能であり、または親水性基であることが可能である。
【0171】
これらの実施形態のいずれかのいくつかにおいて、カルボキシレート基は-C(=O)-OR’であり、ただし、R’は、例えば、アルキル、シクロアルキル、窒素原子および/または酸素原子を含有する複素脂環基(例えば、モルホリン、テトラヒドロフランおよびオキサリジンなど)、C(1~4)アルキルであって、必要に応じて、例えば、ヒドロキシ、-O-、アミンまたは-NH-の1つまたは複数によって置換または中断されるC(1~4)アルキル、ヒドロキシ、チオール、アルキレングリコール、ポリ(アルキレングリコール)またはオリゴ(アルキレングリコール)から選択される。
【0172】
第1の硬化性材料を形成する例示的な一官能性の硬化性材料がポリ(アルキレングリコール)アクリレートであり、例えば、ポリ(エチレングリコール)アクリレートなどである。他の水溶性のアクリレート系またはメタクリレート系の一官能性モノマーが意図される。
【0173】
第1の硬化性材料を形成する例示的な一官能性の硬化性材料が下記の式IVによって表される:
式中、
nは、2~10の範囲での整数、または2~8の範囲での整数である;
mは、2~6の範囲での整数、好ましくは2~4の範囲での整数であり、あるいは、2または3である;
R’は、水素、アルキル、シクロアルキルまたはアリールであることが可能である;かつ
RaはHまたはC(1~4)アルキルである。
【0174】
式IVの実施形態のいずれかのいくつかにおいて、R’は水素である。
【0175】
式IVの実施形態のいずれかのいくつかにおいて、当該化合物がポリ(エチレングリコール)アクリレートであるように、mは2であり、かつ、RaはHである。
【0176】
式IVの実施形態のいずれかのいくつかにおいて、当該化合物がポリ(エチレングリコール)メタクリレートであるように、mは2であり、かつ、Raはメチルである。式IVの実施形態のいずれかのいくつかにおいて、R’はHであり、また、式IVの実施形態のいずれかのいくつかにおいて、nは、4、5、6、7または8であり、例えば、6である。
【0177】
いくつかの実施形態において、式IIにおけるR1はアミドであり、当該化合物は一官能性のアクリルアミド系化合物である。これらの実施形態のいくつかにおいて、R2はメチルであり、当該化合物は一官能性のメタクリルアミド系化合物である。これらの実施形態のいくつかにおいて、アミドは置換される。例えば、アミド基は、-C(=O)-NR’R’’(式中、R’およびR’’は本明細書中に記載される通りである)である。例示的なそのようなモノマーには、アクリロイルモルホリン(ACMO)が含まれる。他の水溶性のアクリルアミド系またはメタクリルアミド系の一官能性モノマーが意図される。
【0178】
いくつかの実施形態において、R1およびR2の一方または両方が、カルボキシレートまたはアミドではない基であり、例えば、環状アミド(ラクタム)、環状エステル(ラクトン)、ホスファート、ホスホナート、スルファート、スルホナート、アルコキシ、置換アルコキシまたはその他である。そのような実施形態において、硬化性材料は置換ビニルモノマーである。例示的なそのようなビニルモノマーがビニルホスホン酸、およびヒドロキシブチルビニルエーテルである。他の水溶性の一官能性ビニルエーテル、またはそうでない場合には置換ビニルモノマーが意図される。
【0179】
本明細書中に記載される実施形態のいずれかのいくつかにおいて、第1の硬化性材料は、本明細書中に記載されるような一官能性の硬化性モノマーの1つまたは複数を含む。
【0180】
本明細書中に記載される実施形態のいずれかのいくつかにおいて、必要に応じて、また、好ましくは、第1の硬化性材料に関連して記載される一官能性の硬化性材料に加えて、第1の硬化性材料の一部を形成する場合がある二官能性の硬化性モノマーが、下記の式IIIによって表される:
式中、
R
3およびR
4のそれぞれが独立して、水素、C(1~4)アルキルまたは親水性基である;
Lは連結部分である;かつ
X
1およびX
2のそれぞれが独立して、カルボキシレート基、アミド基、または、どのような他の基であれ、式IIにおけるR
1について本明細書中で定義されるような基である。
【0181】
X1およびX2の一方または両方がカルボキシレートである式IIIの二官能性の硬化性モノマーが、二官能性のアクリレート系化合物である。R3およびR4の1つまたは複数がメチルであるとき、硬化性モノマーは二官能性のメタクリレート系化合物である。
【0182】
いくつかの実施形態において、Lはポリマー部分またはオリゴマー部分である。いくつかの実施形態において、Lはアルキレングリコール部分またはポリ(アルキレングリコール)部分であり、あるいは、アルキレングリコール部分またはポリ(アルキレングリコール)部分を含む。いくつかの実施形態において、Lは、1つまたは複数のヘテロ原子(例えば、O、Sなど)によって、あるいはNR’によって場合により中断されるアルキレン部分である。
【0183】
例示的な二官能性の硬化性モノマーには、ポリエチレングリコールジアクリレート、ポリエチレングリコールジメタクリレート、ポリエチレングリコール-ポリエチレングリコールウレタンジアクリレートおよび部分的アクリレート化ポリオールオリゴマーが含まれる。
【0184】
式IIIのいくつかの実施形態において、当該二官能性の硬化性材料がジアクリレート系化合物であるように、R3およびR4はそれぞれが水素であり、かつ、X1およびX2はそれぞれがカルボキシレートである。
【0185】
これらの実施形態のいくつかにおいて、Lはポリ(アルキレングリコール)である。
【0186】
本明細書中に記載される実施形態のいずれかのいくつかにおいて、第1の硬化性材料の一部を形成する二官能性の硬化性材料は、下記の式Vによって表されるポリ(アルキレングリコール)ジアクリレートである:
式中、
nは、2~40の範囲での整数、または2~20の範囲での整数、または2~10の範囲での整数、または2~8の範囲での整数である;
mは、2~6の範囲での整数、好ましくは2~4の範囲での整数であり、あるいは2または3である;かつ、
RaおよびRbはそれぞれが独立して、HまたはC(1~4)アルキルである。
【0187】
これらの実施形態のいくつかにおいて、RaおよびRbはそれぞれがHである。
【0188】
これらの実施形態のいくつかにおいて、mは2である。
【0189】
これらの実施形態のいくつかにおいて、nは、4、5、6、7または8であり、例えば、6である。
【0190】
式IIIのいくつかの実施形態において、当該二官能性の硬化性材料における少なくとも1つの官能性部分がビニルエーテルであるように、X1およびX2の一方または両方が-O-である。
【0191】
第1の硬化性材料の実施形態において意図される多官能性の硬化性材料は、本明細書中に記載されるように、例えば、L連結部分が、-X3-C(=O)-CR5=CH2(式中、X3は、X1およびX2について本明細書中に記載される通りであり、R5は、R3およびR4について本明細書中に記載される通りである)を独立して含む1つまたは複数の部分によって置換される式IIIのものであることが可能である。
【0192】
支持体材料配合物において使用可能であるとしてこの技術分野で知られている他の多官能性の硬化性材料および一官能性の硬化性材料もまた意図される。
【0193】
本明細書中に記載される実施形態のいずれかのいくつかにおいて、支持体材料配合物は、一官能性の硬化性材料と、多官能性の硬化性材料との混合物を含み、また、これらの実施形態のいくつかにおいて、多官能性の硬化性材料は、それぞれの実施形態のいずれかにおいて、また、そのどのような組合せにおいてであっても、本明細書中に記載されるような二官能性の硬化性材料である。
【0194】
硬化した支持体材料をAMプロセスで形成するために使用可能であるどのような他の硬化性モノマーも、本明細書中に記載される硬化性材料に加えて、またはその代わりに、支持体材料配合物に含まれるとして本明細書中では意図される。
【0195】
例示的な他の硬化性モノマーには、限定されないが、ジアクリレート、例えば、ポリウレタンジアクリレートオリゴマーおよび/またはモノマー型ジアクリレートなどが挙げられ、好ましくは、短鎖ジアクリレート、例えば、限定されないが、イソボルニルジアクリレートなどが挙げられる。
【0196】
本明細書中に記載される実施形態のいずれかのいくつかにおいて、第1の硬化性材料は、本明細書中に記載されるようにポリ(アルキレングリコール)アクリレートを含む。
【0197】
本明細書中に記載される実施形態のいずれかのいくつかにおいて、第1の硬化性材料は、一官能性のポリ(アルキレングリコール)アクリレート(例えば、式IV)を含む。
【0198】
本明細書中に記載される実施形態のいずれかのいくつかにおいて、第1の硬化性材料は、一官能性のポリ(アルキレングリコール)アクリレートと、多官能性の、例えば、二官能性のポリ(アルキレングリコール)アクリレートとの混合物を含む。
【0199】
本明細書中に記載される実施形態のいずれかのいくつかにおいて、第1の硬化性材料は、ポリ(アルキレングリコール)アクリレート(例えば、式IVのポリ(アルキレングリコール)アクリレート)と、ポリ(アルキレングリコール)ジアクリレート(例えば、式Vのポリ(アルキレングリコール)ジアクリレート)との混合物を含む。
【0200】
これらの実施形態のいずれかのいくつかにおいて、ポリ(アルキレングリコール)はポリ(エチレングリコール)である。
【0201】
これらの実施形態のいくつかにおいて、第1の硬化性材料における一官能性ポリ(アルキレングリコール)アクリレートと二官能性ポリ(アルキレングリコール)アクリレート(例えば、ポリ(アルキレングリコール)ジアクリレート)との間の重量比が70:30から95:5までの範囲であり、例えば、70:30、75:25、80:20、85:15、90:10または95:5であることが可能である。
【0202】
本明細書中に記載される実施形態のいずれかのいくつかにおいて、第1の硬化性材料は、一官能性の硬化性材料と多官能性の硬化性材料との混合物を含み、これらの材料の間での重量比が50:50から95:5までの範囲であり、例えば、50:50、60:40、70:30、75:25、80:20、85:15、90:10または95:5であることが可能である。
【0203】
水混和性の非硬化性ポリマー:
本明細書中に記載される実施形態のいずれかのいくつかにおいて、支持体材料配合物は、硬化性モノマーに加えて、水混和性のポリマー材料を含み、この場合、水混和性のポリマー材料は、支持体材料配合物において一般に使用される水混和性のポリマー材料のどのようなものであっても可能である。
【0204】
本明細書中に記載される実施形態のいずれかのいくつかにおいて、水混和性のポリマー材料は非硬化性である(これはまた、本明細書中では「非反応性」として示される)。用語「非硬化性(の)」は、どのような条件のもとであっても重合可能でないポリマー材料、あるいは、本明細書中に記載されるような一官能性モノマーが硬化可能である条件のもとで非硬化性である、または、物体の作製において使用されるどのような条件のもとであっても非硬化性であるポリマー材料を包含する。そのようなポリマー材料は典型的には、重合可能な基またはUV-光重合可能な基を含まない。いくつかの実施形態において、ポリマー材料は、本明細書中に記載されるような硬化性モノマーに対して非反応性であり、すなわち、ポリマー材料は、硬化条件を含めて作製条件のもとでは硬化性モノマーと反応せず、また、硬化性モノマーの硬化を妨げることができない。
【0205】
本明細書中に記載される実施形態のいずれかのいくつかにおいて、ポリマー材料は、本明細書中で定義されるように、水溶性または水分散性または水混和性のポリマー材料である。
【0206】
いくつかの実施形態において、ポリマー材料は、本明細書中で定義されるような複数の親水性基をポリマーの骨格鎖の内部に、またはペンダント基としてそのどちらであっても含む。例示的なそのようなポリマー材料がポリオールである。いくつかの代表的な例には、ポリオール3165、ポリプロピレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリグリセロール、これらのポリマーのエトキシル化形態、およびパラフィン油など、ならびに、どのような組合せであれ、それらの組合せが含まれるが、これらに限定されない。
【0207】
本明細書中に記載される実施形態のいずれかのいくつかにおいて、支持体材料配合物はさらに、水混和性で、非硬化性の非ポリマー材料を含み、例えば、プロパンジオール(例えば、1,2-プロパンドイル(propandoil))などを含む。
【0208】
本明細書中に記載される実施形態のいずれかのいくつかにおいて、支持体材料配合物は、本明細書中に記載されるようなポリマー型および非ポリマー型の水混和性の非硬化性材料の2つ以上の混合物を含む水混和性の非硬化性材料を含む。例示的なそのような混合物は、ポリエチレングリコール、プロパンジオールおよびポリオール(例えば、ポリオール3165など)の2つ以上を含む場合がある。
【0209】
さらなる薬剤:
それぞれの実施形態のいずれかにおいて本明細書中に記載されるような支持体材料配合物はさらに、さらなる薬剤を含むことができ、例えば、開始剤、抑制剤および安定剤などを含むことができる。
【0210】
本明細書中に記載される実施形態のいずれかのいくつか、および、どのような組合せであれ、その組み合わせにおいて、支持体材料配合物はさらに、硬化エネルギーまたは硬化条件にさらされたときに硬化性材料の重合を誘導するための開始剤を含む。
【0211】
これらの実施形態のいくつかにおいて、硬化性材料の1つまたは複数あるいはすべてがUV硬化性材料であり、開始剤が光開始剤である。
【0212】
光開始剤は、フリーラジカル光開始剤、カチオン性光開始剤、または、どのような組合せであれ、それらの組合せであることが可能である。
【0213】
フリーラジカル光開始剤は、放射線(例えば、紫外線または可視光など)にさらされるとフリーラジカルを生成し、それによって重合反応を開始させる化合物であれば、どのような化合物であってもよい。好適な光開始剤の限定されない例には、フェニルケトン系化合物、例えば、アルキル/シクロアルキルフェニルケトンなど;ベンゾフェノン系化合物(芳香族ケトン)、例えば、ベンゾフェノン、メチルベンゾフェノン、ミヒラーのケトンおよびキサントン系化合物など;アシルホスフィンオキシド型光開始剤、例えば、2,4,6-トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキシド(TMPO)、2,4,6-トリメチルベンゾイルエトキシフェニルホスフィンオキシド(TEPO)およびビスアシルホスフィンオキシド(BAPO)など;ベンゾイン系化合物およびベンゾインアルキルエーテル、例えば、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテルおよびベンゾインイソプロピルエーテルなどが含まれる。光開始剤の例として、アルファ-アミノケトンおよび1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン(例えば、Igracure(登録商標)184として市販されるもの)が挙げられる。
【0214】
フリーラジカル光開始剤が、単独で、または共開始剤との組合せで使用される場合がある。共開始剤が、UV系において活性であるラジカルを生成させるために第2の分子を必要とする開始剤と一緒に使用される。ベンゾフェノンが、硬化性ラジカルを生成させるために第2の分子(例えば、アミンなど)を必要とする光開始剤の一例である。放射線を吸収した後、ベンゾフェノンは水素引き抜きによって第三級アミンと反応して、アクリレート系化合物の重合を開始させるアルファ-アミノラジカルを生成する。一群の共開始剤の限定されない例として、アルカノールアミン、例えば、トリエチルアミン、メチルジエタノールアミンおよびトリエタノールアミンなどが挙げられる。
【0215】
好適なカチオン性光開始剤には、例えば、重合を開始させるために十分である紫外光および/または可視光にさらされたときに非プロトン酸またはブレンステッド酸を形成する化合物が含まれる。使用される光開始剤は、単一の化合物、2つ以上の活性化合物の混合物、または2つ以上の異なる化合物(すなわち、共開始剤)の組合せである場合がある。好適なカチオン性光開始剤の限定されない例には、アリールジアゾニウム塩、ジアリールヨードニウム塩、トリアリールスルホニウム塩およびトリアリールセレノニウム塩などが含まれる。例示的なカチオン性光開始剤の1つがトリアリールソルホニウム(triarylsolfonium)ヘキサフルオロアンチモナート塩の混合物である。
【0216】
本明細書中に記載される実施形態のいずれかのいくつかにおいて、未硬化の支持体材料配合物はさらに、作製プロセスにおいて有益に使用される1つまたは複数のさらなる薬剤を含む場合がある。そのような薬剤には、例えば、表面活性剤、抑制剤および安定剤が含まれる。
【0217】
いくつかの実施形態において、本明細書中に記載されるような支持体材料配合物は表面活性剤を含む。表面活性剤が、配合物の表面張力を、噴射のために、または他の印刷プロセスのために必要とされる値(これは典型的には30dyne/cm前後である)にまで低下させるために使用される場合がある。例示的なそのような薬剤の1つがシリコーン系表面添加剤であり、例えば、限定されないが、BYK-345として市販される表面剤などである。
【0218】
いくつかの実施形態において、本明細書中に記載されるような支持体材料配合物はさらに、作製プロセスの期間中で、かつ、支持体材料配合物が硬化条件に供される前での硬化性材料の事前の重合を抑制する抑制剤を含む。例示的な安定剤(抑制剤)の1つがトリス(N-ニトロソ-N-フェニルヒドロキシルアミン)アルミニウム塩(NPAL)(例えば、FirstCure(登録商標)NPALで市販されるもの)である。
【0219】
好適な安定剤には、例えば、配合物を高温において安定化させる熱安定剤が含まれる。
【0220】
本明細書中に記載される実施形態のいずれかのいくつかにおいて、支持体材料配合物はシリコンポリエーテルを含まない。
【0221】
例示的な支持体材料配合物:
本明細書中に記載される実施形態のいずれかのいくつかによれば、支持体材料配合物は、非硬化性の水混和性ポリマーの濃度が配合物の総重量の30重量%~80重量%の範囲であるようにされる。
【0222】
本明細書中に記載される実施形態のいずれかのいくつかによれば、支持体材料配合物は、第2の硬化性材料の濃度が配合物の総重量の5重量%~40重量%の範囲であるようにされる。いくつかの実施形態では、第2の硬化性材料の濃度は、配合物の総重量の5重量%~30重量%、または5重量%~20重量%、または5重量%~10重量%の範囲である。
【0223】
本明細書中に記載される実施形態のいずれかのいくつかによれば、支持体材料配合物は、第2の硬化性材料の濃度が配合物の総重量の1重量%~40重量%、または1重量%~30重量%、または1重量%~20重量%、または5重量%~20重量%、または5重量%~15重量%、または5重量%~10重量%の範囲であるようにされる。
【0224】
これらの実施形態による第2の硬化性材料は2つ以上の硬化性材料の混合物であることが可能であり、上記濃度はこれらの材料の総濃度に対して当てはまる。
【0225】
2つの硬化性材料の混合物が第2の硬化性材料を形成するとき、これらの材料の重量比が50:50から95:5までであることが可能であり、例えば、50:50であること、または60:40であること、または70:30であること、または80:20であること、または90:10であること、または10:90であること、または80:20であること、または70:30であること、または40:60であることが可能である。
【0226】
本明細書中に記載される実施形態のいずれかのいくつかによれば、支持体材料配合物は、第1の硬化性材料の濃度が配合物の総重量の5重量パーセント~40重量パーセントの範囲であるように、または5重量パーセント~30重量パーセントの範囲であるように、または5重量パーセント~25重量パーセントの範囲であるように、または5重量パーセント~20重量パーセントの範囲であるように、または10重量パーセント~20重量パーセントの範囲であるように、または5重量パーセント~15重量パーセントの範囲であるように、または10重量パーセント~15重量パーセントの範囲であるようにされる。
【0227】
本明細書中に記載される実施形態のいずれかのいくつかによれば、支持体材料配合物は、第1の硬化性材料の濃度が配合物の総重量の30重量%未満であるように、または20重量%未満であるように、または15重量%であるようにされる。
【0228】
本明細書中に記載される実施形態のいずれかのいくつかによれば、支持体材料配合物は、第1および第2の硬化性材料の総濃度が配合物の総重量の10重量パーセント~45重量パーセントの範囲であるように、または10重量パーセント~40重量パーセントの範囲であるように、または10重量パーセント~30重量パーセントの範囲であるように、または15重量パーセント~45重量パーセントの範囲であるように、または10重量パーセント~20重量パーセントの範囲であるようにされる。第1および第2の硬化性材料の濃度のどのような組合せであっても意図される。
【0229】
本明細書中に記載される実施形態のいずれかのいくつかによれば、支持体材料配合物は、第1の硬化性材料が、一官能性の硬化性材料と、多官能性(例えば、二官能性)の硬化性材料との混合物を、本明細書中に記載されるような重量比で含み、一官能性の硬化性材料の濃度が配合物の総重量の5重量パーセント~35重量パーセントの範囲であり、または5重量パーセント~30重量パーセントの範囲であり、かつ、多官能性(例えば、二官能性)の硬化性材料の濃度が配合物の総重量の0.5重量パーセント~10重量パーセントの範囲であり、または0.5重量パーセント~8重量パーセントの範囲であり、または0.5重量パーセント~5重量パーセントの範囲であるようにされる。
【0230】
本明細書中に記載される実施形態のいずれかのいくつかによれば、支持体材料配合物は、成分が下記であるようにされる:
水混和性の非硬化性ポリマーの濃度が配合物の総重量の30重量%~80重量%の範囲である;
第1の硬化性材料が、一官能性の硬化性材料と、多官能性(例えば、二官能性)の硬化性材料との混合物を、例えば、90:10の重量比で含む;
一官能性の硬化性材料の濃度が配合物の総重量の5重量パーセント~35重量パーセントの範囲であり、または5重量パーセント~30重量パーセントの範囲である;
多官能性(例えば二官能性)の硬化性材料の濃度が配合物の総重量の0.5重量パーセント~10重量パーセントの範囲であり、または0.5重量パーセント~8重量パーセントの範囲であり、または0.5重量パーセント~5重量パーセントの範囲である;かつ
第2の硬化性材料が、1つまたは複数の硬化性材料を、組成物の総重量の5重量パーセント~40重量パーセントの総濃度で、または5重量パーセント~15重量パーセントの総濃度で含む。
【0231】
本明細書中に記載される実施形態のいずれかのいくつかによれば、支持体材料配合物は、成分が下記であるようにされる:
水混和性の非硬化性ポリマーの濃度が配合物の総重量の30重量%~80重量%の範囲であり、または40重量%~80重量%の範囲である;
第1の硬化性材料が、一官能性の硬化性材料を、配合物の総重量の5重量パーセント~35重量パーセントの範囲である濃度で、または10重量パーセント~30重量パーセントの範囲である濃度で含む;かつ
第2の硬化性材料が、硬化性材料を組成物の総重量の5重量パーセント~40重量パーセントの濃度で、または5重量パーセント~15重量パーセントの濃度で含む。
【0232】
これらの実施形態のいずれかのいくつかによれば、第1の硬化性材料は、ポリ(アルキレングリコール)アクリレート(例えば、式IVのポリ(アルキレングリコール)アクリレート)を、必要な場合にはポリ(アルキレングリコール)ジアクリレート(例えば、式Vのポリ(アルキレングリコール)ジアクリレート)との組合せで含む。これらの実施形態のいずれかのいくつかにおいて、ポリ(アルキレングリコール)はポリ(エチレングリコール)である。
【0233】
本明細書中に記載される実施形態のいずれかのいくつかによれば、配合物は多官能性の硬化性材料を含まず、また、いくつかの実施形態において、配合物はポリ(アルキレングリコール)ジアクリレート(例えば、式Vのポリ(アルキレングリコール)ジアクリレート)を含まない。
【0234】
上記実施形態のいずれかのいくつかによれば、第2の硬化性モノマーは、下記のように定義される式Iによって表される化合物を含む:
RaはHであり、XはNHであり、kは2または3であり、かつ、Yはヒドロキシルである。
【0235】
上記実施形態のいずれかのいくつかにおいて、第2の硬化性材料は、下記のように定義される式Iによって表される化合物を含む:
Raはメチルであり、XはNHであり、kは2または3であり、かつ、Yはヒドロキシルである。
【0236】
上記実施形態のいずれかのいくつかにおいて、第2の硬化性材料は、下記のように定義される式Iによって表される化合物を含む:
RaはHであり、XはNHであり、kは2または3であり、かつ、Yはジメチルアミンである。
【0237】
上記実施形態のいずれかのいくつかにおいて、第2の硬化性材料は、下記のように定義される式Iによって表される化合物を含む:
Raはメチルであり、XはNHであり、kは2または3であり、かつ、Yはジメチルアミンである。
【0238】
これらの実施形態のいくつかによれば、支持体材料配合物はさらに、組成物の総重量の0.1重量パーセント~2重量パーセントの濃度での開始剤(例えば、光開始剤)と、
組成物の総重量の0~2重量パーセントの濃度での界面活性剤と
を含む。
【0239】
本明細書中に記載される実施形態のいずれかのいくつかにおいて、支持体材料配合物に含まれる硬化性材料のそれぞれが、本明細書中で定義されるようにUV硬化性材料であり、例えば、アクリレート系化合物またはメタクリレート系化合物またはアクリルアミド系化合物またはメタクリルアミド系化合物(一官能性または多官能性のモノマーまたはオリゴマー)である。
【0240】
性質:
本明細書中に記載される実施形態のいずれかのいくつかによれば、支持体材料配合物は、3Dインクジェット印刷に好適な粘度を示す。
【0241】
例示的な実施形態において、造形用配合物の粘度は作業温度において30cps未満であり、または25cps未満であり、または20cps未満である。いくつかの実施形態において、配合物の粘度は室温においてより高く、例えば、室温において50cpsを超えることができ、または80cpsを超えることができる。
【0242】
本明細書中に記載される実施形態のいずれかのいくつかにおいて、支持体材料配合物は、室温において10cps~20cpsの粘度を示すようにされる。いくつかの実施形態において、第1および第2の硬化性材料、ならびに、ポリマー材料、そして、それぞれの濃度は、配合物が、本明細書中に記載されるような所望の粘度を(硬化前に)示すように選択され、または操作される。
【0243】
本明細書中に記載される実施形態のいずれかのいくつかによれば、配合物を硬化エネルギーにさらしたときに形成される硬化した支持体材料はアルカリ性溶液に溶解可能である。
【0244】
本明細書中に記載される実施形態のいずれかのいくつかによれば、アルカリ性溶液に浸漬されたときの硬化した支持体材料の溶解時間が、第2の硬化性材料が存在しない同等の支持体材料配合物から作製される硬化した支持体材料の溶解時間の2分の1未満であり、または4分の1未満である。
【0245】
「同等の支持体材料配合物」によって、本明細書中に記載されるような、かつ、支持体配合物の水混和性ポリマー材料と同一である水混和性の非硬化性ポリマー材料と、本明細書中に記載されるような第1の硬化性材料とを含む支持体材料配合物であって、同等の配合物における第1の硬化性材料の濃度が支持体材料配合物における第1および第2の硬化性材料の総濃度と実質的に同じである支持体材料配合物が意味される。
【0246】
本明細書中に記載される実施形態のいずれかのいくつかによれば、硬化した支持体材料から作製され、800mLのアルカリ性溶液に浸漬される16グラムの立方体(例えば、20mm×20mm×20mmの立方体)の溶解時間が、10時間未満であり、または5時間未満であり、または2時間であり、好ましくは2時間未満である。
【0247】
いくつかの実施形態によれば、アルカリ性溶液はアルカリ金属水酸化物を含む。
【0248】
いくつかの実施形態によれば、アルカリ性溶液はさらにアルカリ金属ケイ酸塩を含む。
【0249】
いくつかの実施形態によれば、支持体材料配合物は、当該支持体材料配合物から作製される硬化した支持体材料が、アルカリ金属水酸化物およびアルカリ金属ケイ酸塩の混合物を含むアルカリ性溶液に溶解可能であり、かつ、上記溶解時間がそのようなアルカリ性溶液に関してであるようにされる。
【0250】
いくつかの実施形態において、アルカリ性溶液は、溶液の総重量の1重量パーセント~3重量パーセントの範囲である濃度でのアルカリ金属ケイ酸塩と、溶液の総重量の1重量パーセント~3重量パーセントの範囲である濃度でのアルカリ金属水酸化物とを含む。
【0251】
アルカリ性溶液のいくつかの実施形態において、アルカリ金属水酸化物の濃度が溶液の総重量の2重量パーセントである。
【0252】
アルカリ性溶液のいくつかの実施形態において、アルカリ金属ケイ酸塩の濃度が溶液の総重量の1重量パーセントである。
【0253】
アルカリ性溶液のいくつかの実施形態において、アルカリ性溶液は水酸化ナトリウムを1重量パーセント~3重量パーセントの範囲である濃度で、または2重量パーセントの濃度で含み、かつ、メタケイ酸ナトリウムを1重量パーセント~3重量パーセントの濃度で、または1重量パーセントの濃度で含む。
【0254】
本明細書中に記載される実施形態のいずれかのいくつかによれば、支持体材料配合物から作製され、該配合物を硬化エネルギーにさらしたときに形成される20mm×20mm×20mmの物体が、少なくとも100Nの機械的強度によって特徴づけられる。
【0255】
アルカリ性溶液のいくつかの実施形態において、配合物を硬化エネルギーにさらしたときに形成される硬化した支持体材料が、本明細書中で定義されるように、第2の硬化性材料が存在しない同等の支持体材料配合物で、該配合物と実質的に同じ総濃度の硬化性材料を含む同等の支持体材料配合物から作製される硬化した支持体材料の機械的強度よりも最大でも50%低い機械的強度によって、または最大でも40%低い機械的強度によって、または最大でも30%低い機械的強度によって特徴づけられる。
【0256】
造形物作製:
本発明のいくつかの実施形態の1つの局面によれば、本明細書中に記載されるような支持体材料配合物を利用する三次元造形物物体を作製する方法が提供される。この方法はまた、本明細書中では作製プロセスまたは造形物作製プロセスとして示される。いくつかの実施形態において、この方法は、未硬化の組立て材料を、物体の形状に対応する設定されたパターンで複数の層を連続して形成するように分配することを含む。いくつかの実施形態において、(未硬化の)組立て材料は、それぞれの実施形態のいずれかにおいて本明細書中に記載されるような造形用材料配合物および支持体材料配合物を含む。
【0257】
造形用材料配合物は、付加製造(例えば、3Dインクジェット印刷など)において使用されるどのような造形用材料配合物であっても可能であり、好ましくは、支持体材料配合物が硬化可能である同じ条件のもとで硬化可能である。支持体材料配合物は、それぞれの実施形態のいずれかにおいて、また、そのどのような組合せにおいてであっても本明細書中に記載される通りである。
【0258】
本発明のいくつかの実施形態によれば、上記作製方法は三次元造形物物体の付加製造である。
【0259】
この局面のいくつかの実施形態によれば、それぞれの層の形成が、少なくとも1つの未硬化の組立て材料を分配し、分配された組立て材料を硬化エネルギーまたは硬化条件にさらして、それにより、硬化した造形用材料および硬化した支持体材料から構成される硬化した組立て材料を形成することによって達成される。
【0260】
本明細書中に記載される実施形態のいずれかのいくつかによれば、付加製造は好ましくは、三次元インクジェット印刷によるものである。
【0261】
本実施形態の方法により、三次元物体が、当該物体の形状に対応する設定されたパターンで複数の層を形成することによって層状様式で製造される。
【0262】
それぞれの層が、二次元表面を走査し、パターン化する付加製造装置によって形成される。走査しながら、装置は二次元の層または表面における複数の目標位置を訪れ、それぞれの目標位置または一群の目標位置について、その目標位置または一群の目標位置が組立て材料によって占有されるべきか否か、および、どのタイプの組立て材料(例えば、造形用材料配合物または支持体材料配合物)がその目標位置に送達されるべきかを決定する。この決定が表面のコンピューター画像に従って行われる。
【0263】
AMが三次元印刷によって行われるとき、本明細書中で定義されるような未硬化の組立て材料が、組立て材料を支持用構造物の上に層で堆積させるための一組のノズルを有する分配ヘッドから分配される。したがって、AM装置は組立て材料を占有されるべき目標位置に分配し、他の目標位置を空白のままにする。この装置は典型的には、異なる組立て材料を分配するためにそれぞれが設定され得る複数の分配ヘッドを含む。したがって、異なる目標位置が、異なる組立て材料(例えば、本明細書中で定義されるような造形用配合物および/または支持配合物)によって占有され得る。
【0264】
本発明のこの局面の実施形態のいずれかのいくつかにおいて、方法は、物体の形状に対応する3D印刷データを受け取ることから始まる。このデータは、例えば、コンピューターの物体データに基づく作製命令に関するデジタルデータを、例えば、Standard Tessellation Language(STL)フォーマットもしくはStereoLithography Contour(SLC)フォーマット、Virtual Reality Modeling Language(VRML)、Additive Manufacturing File(AMF)フォーマット、Drawing Exchange Format(DXF)、Polygon File Format(PLY)、または、どのような他のフォーマットであれ、コンピューター支援設計(CAD)に好適な他のフォーマットの形式で送信するホストコンピューターから受け取ることができる。
【0265】
次に、本明細書中に記載されるような未硬化の組立て材料の液滴が、印刷データに従って、少なくとも2つの異なるマルチノズルインクジェット印刷ヘッドを使用して受け取り媒体の上に層で分配される。受け取り媒体は、三次元インクジェットシステムのトレー、または以前の堆積層であることが可能である。未硬化の組立て材料は、それぞれの実施形態のいずれかについて、また、どのような組合せであっても、その組合せについて本明細書中に記載されるような支持体材料配合物を含む。
【0266】
本発明のいくつかの実施形態において、分配することが、周囲環境のもとで行われる。
【0267】
必要に応じて、分配される前に、未硬化の組立て材料またはその一部(例えば、組立て材料の1つまたは複数の配合物)が分配に先立って加熱される。これらの実施形態は、比較的高い粘度を3Dインクジェット印刷システムの作業チャンバーの動作温度において有する未硬化の組立て材料配合物については特に有用である。配合物の加熱が好ましくは、それぞれの配合物を3Dインクジェット印刷システムの印刷ヘッドのノズルから噴射することを可能にする温度にまで行われる。本発明のいくつかの実施形態において、加熱は、それぞれの配合物が最大でもXセンチポアズの粘度を示す温度にまで行われ、ただし、Xは約30センチポアズであり、好ましくは約25センチポアズであり、より好ましくは約20センチポアズであり、あるいは、18センチポアズ、または16センチポイズ、または14センチポアズ、または12センチポアズ、または10センチポアズである。
【0268】
加熱は、それぞれの配合物を3D印刷システムの印刷ヘッドに装填する前に、あるいは、配合物が印刷ヘッドに存在する間に、または、組成物が印刷ヘッドのノズルを通過する間に実行することができる。
【0269】
いくつかの実施形態において、加熱が、それぞれの組成物を印刷ヘッドに装填する前に実行され、その結果、組成物による印刷ヘッドの目詰まりを、その粘度が高すぎる場合には避けるようにされる。
【0270】
いくつかの実施形態において、加熱が、印刷ヘッドを加熱することによって、少なくとも第1および/または第2の組成物が印刷ヘッドのノズルを通過している間に実行される。
【0271】
未硬化の組立て材料が3D印刷データに従って受け取り媒体の上に分配されると、方法は必要に応じて、また、好ましくは、分配された組立て材料を、硬化を達成するための条件にさらすことによって継続する。いくつかの実施形態において、分配された組立て材料は、硬化エネルギーを堆積層に加えることによって硬化エネルギーにさらされる。好ましくは、硬化が、層を堆積させた後、そして前の層を堆積させる前にそれぞれの個々の層に対して施される。
【0272】
硬化エネルギーまたは硬化条件は、例えば、使用される組立て材料に依存して、放射線、例えば、紫外線もしくは可視線、または他の電磁放射線など、あるいは電子ビーム線であることが可能である。分配された層に加えられる硬化エネルギーまたは硬化条件は、造形用材料配合物および支持体材料配合物を硬化させるために、または固体化させるために、または固まらせるために役立つ。好ましくは、同じ硬化エネルギーまたは硬化条件が、造形用材料および支持体材料の両方の硬化を達成するために加えられる。あるいは、異なる硬化エネルギーまたは硬化条件が、分配された組立て材料に、造形用材料配合物および支持体材料配合物の硬化を達成するために同時に、または連続して加えられる。
【0273】
本発明のこの局面の実施形態のいずれかのいくつかによれば、組立て材料が、物体を形成するために分配され、硬化エネルギーまたは硬化条件が加えられると、硬化した支持体材料が除かれて、それにより、最終的な三次元物体を得る。
【0274】
本明細書中に記載される実施形態のいずれかのいくつかによれば、支持体材料が、硬化した支持体材料を清浄組成物(例えば、本明細書中に記載されるそれぞれの実施形態のいずれかにおいて、また、そのどのような組合せにおいてであっても記載されるようなアルカリ性溶液)と接触させることによって除かれる。
【0275】
接触させることが、この技術分野で知られている様々な手段によって、例えば、印刷された物体を水溶液(例えば、アルカリ性溶液)に浸漬することによって、および/または、アルカリ性溶液を物体に噴射することによって行われる場合がある。接触させることを手作業によって、または自動化された様式で行うことができる。硬化した支持体材料を除くために使用可能であるどのようなシステムまたは装置であっても意図される。
【0276】
本明細書中に記載される実施形態のいずれかのいくつかにおいて、接触させることが、印刷された物体における硬化した支持体材料の量およびその幾何学的形状と相関関係にある期間にわたって行われる。例えば、本明細書中に記載されるような例示的な支持体材料配合物のみから作製される16グラムの20×20×20mmの立方体については、接触させることが、最大でも120分の期間にわたって行われる。
【0277】
いくつかの実施形態において、接触させることが、本明細書中で定義されるような同等の支持体材料配合物から作製される硬化した支持体材料を除くために必要とされる期間と比較して、少なくとも20%少ない期間、少なくとも30%少ない期間、少なくとも40%少ない期間、少なくとも50%少ない期間、また、それどころか、60%少ない期間、100%少ない期間、200%少ない期間、300%少ない期間、400$少ない期間、またはそれらよりも短い期間行われる。
【0278】
いくつかの実施形態において、接触させることが、清浄組成物を取り替えることなく(例えば、新しい使用分の清浄組成物を、硬化した支持体材料の除去が行われる装置またはシステムに導入することなく)行われる。
【0279】
本明細書中に記載される実施形態のいずれかのいくつかにおいて、支持体材料の除去が、単独であろうと、または、本明細書中に記載されるようなアルカリ性溶液における溶解との組合せであろうと、硬化した支持体材料の機械的除去によって行われる。支持体材料を機械的に除くためにこの技術分野で知られているどのような手段であっても意図される。
【0280】
物体(例えば、造形物物体)のAMに好適などのようなシステムであっても、本明細書中に記載されるような方法を実行するために使用可能である。
【0281】
本発明のいくつかの実施形態に従った物体のAMに好適なシステムの代表的かつ限定されない一例では、複数の分配ヘッドを含む分配ユニットを有する付加製造装置が含まれる。それぞれのヘッドが好ましくは、液体の(未硬化の)組立て材料が通って分配される1つまたは複数のノズルのアレイを備える。
【0282】
必須ではないが、好ましくは、AM装置は三次元インクジェット印刷装置であり、そのような場合、分配ヘッドはインクジェット印刷ヘッドであり、組立て材料がインクジェット技術により分配される。このことは、必ずしもそうである必要はない。これは、いくつかの用途については、付加製造装置が三次元印刷技術を用いることが必要でない場合があるからである。本発明の様々な例示的な実施形態により意図される付加製造装置の代表的な例には、限定されないが、結合剤ジェット粉末に基づく装置、溶融堆積造形装置および溶融材料堆積装置が含まれる。
【0283】
それぞれの分配ヘッドには、必要に応じて、また、好ましくは、温度制御ユニット(例えば、温度センサーおよび/または加熱装置)および材料レベルセンサーを必要に応じて含む場合がある1つまたは複数の組立て材料リザーバーを介して供給される。組立て材料を分配するために、電圧シグナルが、材料の液滴を、例えば、圧電インクジェット印刷技術でのように、分配ヘッドノズルを介して選択的に堆積させるために分配ヘッドに加えられる。それぞれのヘッドの吐出速度が、ノズルの数、ノズルのタイプ、および、加えられた電圧シグナル速度(周波数)に依存する。そのような分配ヘッドが、三次元自由造形物作製(solid freeform fabrication)の技術分野の当業者には知られている。
【0284】
必須ではないが、必要な場合には、分配ノズルまたは分配ノズルアレイの総数は、分配ノズルの半数が、支持体材料配合物を分配するように指定され、かつ、分配ノズルの半数が、造形用材料配合物を分配するように指定されるように、すなわち、造形用材料を噴射するノズルの数が、支持体材料を噴射するノズルの数と同じであるように選択される。しかしながら、そのことは、本発明の範囲を限定するために意図されないこと、および、造形用材料堆積ヘッド(造形用ヘッド)の数と、支持体材料堆積ヘッド(支持体ヘッド)の数とは異なり得ることが理解されなければならない。一般には、造形用ヘッドの数、支持体ヘッドの数、および、それぞれのヘッドまたはヘッドアレイにおけるノズルの数は、支持体材料の最大分配速度と造形用材料の最大分配速度との間での所定の比率aをもたらすように選択される。所定の比率aの値は好ましくは、それぞれの形成された層において、造形用材料の高さが支持体材料の高さに等しいことを保証するように選択される。aについての典型的な値が約0.6~約1.5である。
【0285】
例えば、a=1の場合、支持体材料配合物の全体的な分配速度は一般に、すべての造形用ヘッドおよび支持体ヘッドが作動するときには造形用材料配合物の全体的な分配速度と同じである。
【0286】
好ましい実施形態において、p個のノズルからなるm個のアレイをそれぞれが有するM個の造形用ヘッドと、q個のノズルからなるs個のアレイをそれぞれが有するS個の支持体ヘッドとが、M×m×p=S×s×qであるように存在する。M×m個の造形用アレイおよびS×s個の支持体アレイのそれぞれを、アレイ群からの組立ておよび解体を行うことができる別個の物理的ユニットとして製造することができる。この実施形態において、それぞれのそのようなアレイは必要に応じて、また、好ましくは、それ自身の温度制御ユニットおよび材料レベルセンサーを備え、個々に制御された電圧をその動作のために受け取る。
【0287】
AM装置はさらに、硬化エネルギーまたは硬化条件の1つまたは複数の供給源を含むことができる硬化ユニットを含むことができる。硬化源は、使用される造形用材料配合物に依存して、例えば、放射線源(例えば、紫外線ランプまたは可視光ランプまたは赤外線ランプ、あるいは電磁放射線の他の供給源など)、または電子ビーム源であることが可能である。硬化エネルギー源は、組立て材料配合物の硬化または固体化のために役立つ。
【0288】
分配ヘッドおよび硬化エネルギー源(例えば、放射線源)供給源は好ましくは、作業表面(受け取り媒体)として役立つトレーの上で往復運動するために好ましくは作動可能であるフレームまたはブロックに取り付けられる。本発明のいくつかの実施形態において、硬化エネルギー(例えば、放射線)源がブロックに取り付けられ、その結果、分配ヘッドが通った後で、分配ヘッドによって分配されたばかりの材料を少なくとも部分的に硬化させ、または固体化させることが続くようにされる。一般的な慣例によれば、トレーはX-Y面に配置され、好ましくは、(Z方向に沿って)垂直方向に、典型的には下方に移動するように設定される。本発明の様々な例示的な実施形態において、AM装置はさらに、新しく形成された層の厚さを、次の層がその上に形成される前に整え、一様にし、および/または確立するために役立つ1つまたは複数のレベリング装置(例えば、ローラー)を備える。レベリング装置は好ましくは、レベリング処理期間中に生じる過剰物を集めるための廃棄物収集装置を備える。廃棄物収集装置は、過剰物を廃棄物タンクまたは廃棄物カートリッジに送達するどのような機構であっても備え得る。
【0289】
使用時において、本明細書中に記載されるような分配ヘッドは走査方向(これは本明細書中ではX方向として示される)に動き、組立て材料を、分配ヘッドがトレーの上を通過する過程において所定の設定で選択的に分配する。組立て材料は典型的には、1つまたは複数のタイプの支持体材料配合物と、1つまたは複数のタイプの造形用材料配合物とを含む。分配ヘッドが通過した後には、造形用材料配合物および支持体材料配合物を硬化エネルギーまたは硬化条件(例えば、放射線)の供給源によって硬化させることが続く。分配ヘッドが逆方向に通過して、堆積させられたばかりの層についてのその出発点に戻る際において、組立て材料のさらなる分配が所定の設定に従って行われる場合がある。分配ヘッドの順方向通過および/または逆方向通過の際において、このように形成された層が、好ましくは、分配ヘッドの経路をその順方向および/または逆方向の動きでたどるレベリング装置によって整えられる場合がある。分配ヘッドがX方向に沿ってその出発点に戻ると、分配ヘッドは割出し方向(これは本明細書中ではY方向として示される)に沿って別の位置に移動し、同じ層をX方向に沿った往復運動によって組み立てることを続けることがある。あるいは、分配ヘッドは、順方向の動きと、逆方向の動きとの間で、または、2回以上の順方向-逆方向の動きの後で、Y方向に移動する場合がある。ただ1つの層を完成させるために分配ヘッドによって行われる一連の走査が、本明細書中では1回の走査サイクルとして示される。
【0290】
層が完成すると、トレーは、続いて印刷されることになる層の所望の厚さに従って、所定のZレベルにまでZ方向に下げられる。この手順が、造形用材料と支持体材料とを層状様式で含む三次元物体を形成するために繰り返される。
【0291】
いくつかの実施形態において、トレーが、層内において、分配ヘッドの順方向通過および逆方向通過の間にZ方向に移される場合がある。そのようなZ移動が、レベリング装置が一方向で表面と接触することを生じさせ、逆方向で接触することを防止するために行われる。
【0292】
本明細書中に記載されるような方法を実施するためのシステムは必要に応じて、また、好ましくは、組立て材料容器または組立て材料カートリッジを備え、かつ、複数の組立て材料配合物(本明細書中に記載されるような造形用材料配合物および支持体材料配合物)を作製装置に供給する組立て材料供給装置を備える。
【0293】
システムはさらに、作製装置を制御する制御ユニットと、必要に応じて、また、好ましくは同様に、本明細書中に記載されるような供給装置とを備える場合がある。制御ユニットは好ましくは、Standard Tessellation Language(STL)フォーマット、または、どのようなフォーマットであれ、他のフォーマット(例えば、限定されないが、上述のフォーマットなど)の形式でコンピューター可読媒体(好ましくは、非一時的な媒体)に記憶される、コンピューターの物体データに基づく作製命令に関するデジタルデータを送信するデータプロセッサーと通信する。典型的には、制御ユニットは、それぞれの分配ヘッドまたは分配ノズルアレイに加えられる電圧と、それぞれの印刷ヘッドにおける組立て材料の温度とを制御する。
【0294】
製造データが制御ユニットにロードされると、制御ユニットは、使用者の介入を伴うことなく作動することができる。いくつかの実施形態において、制御ユニットは、例えば、データプロセッサーを使用して、または、制御ユニットと通信するユーザーインタフェースを使用して、操作者からのさらなる入力を受け取る。ユーザーインタフェースは、この技術分野で知られているどのようなタイプのものであっても可能である(例えば、限定されないが、キーボードおよびタッチスクリーンなど)。例えば、制御ユニットは、さらなる入力として、1つまたは複数の組立て材料タイプおよび/または組立て材料属性、例えば、限定されないが、色、特性ひずみおよび/または転移温度、粘度、電気的性質、磁気的性質などを受け取ることができる。他の属性および属性群もまた意図される。
【0295】
いくつかの実施形態では、異なる材料を異なる分配ヘッドから分配することによって物体を作製することが意図される。これらの実施形態は、とりわけ、材料を所与の数の材料から選択し、選択された材料とそれらの性質との所望の組合せを規定することを可能にする。本実施形態によれば、層に関してそれぞれの材料の堆積の空間位置が、異なる材料による異なる三次元空間位置の占有を達成するために、あるいは、2つ以上の異なる材料による実質的に同じ三次元位置または隣接する三次元位置の占有を達成し、その結果、層内における材料の堆積後の空間的結合を可能にするようにし、それにより、複合材料をそれぞれの位置において形成するためにそのどちらであっても規定される。
【0296】
造形用材料のどのような堆積後結合または堆積後混合であっても意図される。例えば、ある特定の材料が分配されると、当該材料はその元々の性質を保つ場合がある。しかしながら、この材料が、同じ位置または近くの位置において分配される別の造形用材料または他の分配された材料と同時に分配されるとき、分配された材料に対して異なる性質を有する複合材料が形成される。
【0297】
したがって、本実施形態は広範囲の材料組合せ物の堆積を可能にし、また、物体の異なる部分が、物体のそれぞれの部分を特徴づけるために望まれる性質に従って、材料の多数の異なる組合せからなり得る物体の作製を可能にする。
【0298】
本明細書中に記載されるようなAMシステムの原理および動作に関するさらなる詳細が、公開番号が2013/0073068号である米国特許出願に見出される(その内容は本明細書により参照によって組み込まれる)。
【0299】
本明細書中に記載される方法およびシステムのそれぞれのいくつかの実施形態によれば、未硬化の組立て材料は、本明細書中に記載されるような少なくとも1つの支持体材料配合物を含む。
【0300】
造形物物体:
本発明のいくつかの実施形態の1つの局面によれば、その実施形態のいずれかにおいて、また、そのどのような組合せにおいてであっても、本明細書中に記載されるような方法によって調製される三次元造形物物体が提供される。
【0301】
本発明のいくつかの実施形態の1つの局面によれば、本明細書中に記載されるようなAM方法によって作製される3D造形物物体が提供される。
【0302】
本明細書中で使用される用語「約」は、±10%を示す。
【0303】
用語「含む/備える(comprises、comprising、includes、including)」、「有する(having)」、およびそれらの同根語は、「含むが、それらに限定されない(including but not limited to)」ことを意味する。
【0304】
用語「からなる(consisting of)」は、「含み、それらに限定される(including and limited to)」ことを意味する。
【0305】
表現「から本質的になる(consisting essentially of)」は、さらなる成分、工程および/または部分が、主張される組成物、方法または構造の基本的かつ新規な特徴を実質的に変化させない場合にだけ、組成物、方法または構造がさらなる成分、工程および/または部分を含み得ることを意味する。
【0306】
本明細書中で使用される場合、単数形態(「a」、「an」および「the」)は、文脈がそうでないことを明確に示さない限り、複数の参照物を包含する。例えば、用語「化合物(a compound)」または用語「少なくとも1つの化合物」は、その混合物を含めて、複数の化合物を包含し得る。本開示を通して、本発明の様々な態様が範囲形式で提示され得る。範囲形式での記載は単に便宜上および簡潔化のためであり、本発明の範囲に対する柔軟性のない限定として解釈すべきでないことを理解しなければならない。従って、範囲の記載は、具体的に開示された可能なすべての部分範囲、ならびに、その範囲に含まれる個々の数値を有すると見なさなければならない。例えば、1~6などの範囲の記載は、具体的に開示された部分範囲(例えば、1~3、1~4、1~5、2~4、2~6、3~6など)、ならびに、その範囲に含まれる個々の数値(例えば、1、2、3、4、5および6)を有すると見なさなければならない。このことは、範囲の広さにかかわらず、適用される。
【0307】
数値範囲が本明細書中で示される場合には常に、示された範囲に含まれる任意の言及された数字(分数または整数)を含むことが意味される。第1の示された数字および第2の示された数字「の範囲である/の間の範囲」という表現、および、第1の示された数字「から」第2の示された数「まで及ぶ/までの範囲」という表現は、交換可能に使用され、第1の示された数字と、第2の示された数字と、その間のすべての分数および整数とを含むことが意味される。
【0308】
本明細書中で使用される用語「方法(method)」は、所与の課題を達成するための様式、手段、技術および手順を示し、これには、化学、薬理学、生物学、生化学および医学の技術分野の実施者に知られているそのような様式、手段、技術および手順、または、知られている様式、手段、技術および手順から、化学、薬理学、生物学、生化学および医学の技術分野の実施者によって容易に開発されるそのような様式、手段、技術および手順が含まれるが、それらに限定されない。
【0309】
明確にするため別個の実施形態の文脈で説明されている本発明の特定の特徴が、単一の実施形態に組み合わせて提供されることもできることは分かるであろう。逆に、簡潔にするため単一の実施形態で説明されている本発明の各種の特徴は別個にまたは適切なサブコンビネーションで、あるいは本発明の他の記載される実施形態において好適なように提供することもできる。種々の実施形態の文脈において記載される特定の特徴は、その実施形態がそれらの要素なしに動作不能である場合を除いては、それらの実施形態の不可欠な特徴であると見なされるべきではない。
【0310】
本明細書中において全体を通して、表現「連結部分」または表現「連結基」は、化合物中において2つ以上の部分または基をつなぐ基を表す。連結部分は、二官能性または三官能性の化合物に典型的には由来し、2つまたは3つの他の部分にその2つまたは3つの原子を介してそれぞれつながれる二価基部分または三価基部分と見なすことができる。
【0311】
例示的な連結部分には、本明細書中で定義されるように、1つまたは複数のヘテロ原子によって場合により中断される炭化水素部分もしくは炭化水素鎖、および/または、連結基として定義されるときには下記で列挙される化学基のいずれかが含まれる。
【0312】
化学基が本明細書中で「末端基」と呼ばれるとき、当該化学基は、別の基にその1つの原子を介してつながれる置換基として解釈されなければならない。
【0313】
本明細書中において全体を通して、用語「炭化水素」は、炭素原子および水素原子から主に構成される化学基をまとめて表す。炭化水素は、アルキル、アルケン、アルキン、アリールおよび/またはシクロアルキルから構成されることが可能であり、これらのそれぞれが置換または非置換であることが可能であり、また、1つまたは複数のヘテロ原子によって中断されることが可能である。炭素原子の数は2~20の範囲であることが可能であり、好ましくはそれよりも少なく、例えば、1~10であり、または1~6であり、または1~4である。炭化水素は連結基または末端基であることが可能である。
【0314】
本明細書で使用される用語「アミン」は、-NRxRy基および-NRx-基の両方を記載し、ここでRxおよびRyはそれぞれ独立して水素、アルキル、シクロアルキル、またはアリールであり、これらの用語は本明細書中下記で定義される。
【0315】
従って、アミン基は、第一級アミン(ここでRxおよびRyの両方は水素である)、または第二級アミン(ここでRxは水素でありかつRyはアルキル、シクロアルキル、もしくはアリールである)、または第三級アミン(ここでRxおよびRyはそれぞれ独立してアルキル、シクロアルキルもしくはアリールである)であり得る。
【0316】
代替的に、RxおよびRyはそれぞれ独立してヒドロキシアルキル、トリハロアルキル、シクロアルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、ヘテロアリール、複素脂環、アミン、ハリド、スルホネート、スルホキシド、ホスホネート、ヒドロキシ、アルコキシ、アリールオキシ、チオヒドロキシ、チオアルコキシ、チオアリールオキシ、シアノ、ニトロ、アゾ、スルホンアミド、カルボニル、C-カルボキシレート、O-カルボキシレート、N-チオカーバメート、O-チオカーバメート、尿素、チオ尿素、N-カーバメート、O-カーバメート、C-アミド、N-アミド、グアニル、グアニジン、またはヒドラジンであり得る。
【0317】
用語「アミン」は、当該アミンが末端基である場合には、本明細書中下記で定義されるように、-NRxRy基を表すために本明細書中では使用され、また、当該アミンが連結基または連結部分の一部である場合には-NRx-基を表すために本明細書中では使用される。
【0318】
用語「アルキル」は、直鎖基および分枝鎖基を含む飽和した脂肪族炭化水素を記載する。好ましくは、アルキル基は1個~20個の炭素原子を有する。数値範囲、例えば「1個~20個」が本明細書で述べられる場合は常に、それは基(この場合はアルキル基)が1個の炭素原子、2個の炭素原子、3個の炭素原子などの20個までの炭素原子を含むということを意味する。さらに好ましくは、アルキル基は、1個~10個の炭素原子を有する中程度のサイズのアルキルである。最も好ましくは、他に示さない限り、アルキル基は、1個~4個の炭素原子を有する低級アルキルである(C(1-4)アルキル)。アルキル基は、置換または非置換であり得る。置換されたアルキルは一つ以上の置換基を有することができ、それぞれの置換基は独立して、例えば、ヒドロキシアルキル、トリハロアルキル、シクロアルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、ヘテロアリール、複素脂環、アミン、ハリド、スルホネート、スルホキシド、ホスホネート、ヒドロキシ、アルコキシ、アリールオキシ、チオヒドロキシ、チオアルコキシ、チオアリールオキシ、シアノ、ニトロ、アゾ、スルフォンアミド、C-カルボキシレート、O-カルボキシレート、N-チオカーバメート、O-チオカーバメート、尿素、チオ尿素、N-カーバメート、O-カーバメート、C-アミド、N-アミド、グアニル、グアニジン、またはヒドラジンであり得る。
【0319】
アルキル基は、単一の隣接原子に結合された末端基(この用語は本明細書中上記で定義される通りである)、またはその鎖中の少なくとも二つの炭素を介して二つ以上の成分を連結する連結基(この用語は本明細書中上記で定義される通りである)であり得る。アルキルが連結基であるとき、それはまた、「アルキレン」または「アルキレン鎖」として本明細書中に言及される。
【0320】
本明細書中で使用されるアルケンおよびアルキンは、一つ以上の二重結合または三重結合をそれぞれ含む、本明細書中で定義されるアルキルである。
【0321】
用語「シクロアルキル」基は、環の1つまたは複数が完全共役のπ電子系を有しない、すべて炭素からなる単環基または縮合環(すなわち、隣接炭素原子対を共有する環)基を記載する。例示は、限定されないが、シクロヘキサン、アダマチン、ノルボルニル、イソボルニル、及びその類似物を含む。シクロアルキル基は、置換または非置換であり得る。置換されたシクロアルキルは一つ以上の置換基を有することができ、それぞれの置換基は独立して、例えば、ヒドロキシアルキル、トリハロアルキル、シクロアルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、ヘテロアリール、複素脂環、アミン、ハリド、スルホネート、スルホキシド、ホスホネート、ヒドロキシ、アルコキシ、アリールオキシ、チオヒドロキシ、チオアルコキシ、チオアリールオキシ、シアノ、ニトロ、アゾ、スルフォンアミド、C-カルボキシレート、O-カルボキシレート、N-チオカーバメート、O-チオカーバメート、尿素、チオ尿素、N-カーバメート、O-カーバメート、C-アミド、N-アミド、グアニル、グアニジン、またはヒドラジンであり得る。シクロアルキル基は、単一の隣接原子に結合された末端基(この用語は本明細書中上記で定義される通りである)、またはその鎖中の少なくとも二つの炭素を介して二つ以上の成分を連結する連結基(この用語は本明細書中上記で定義される通りである)であり得る。
【0322】
用語「複素脂環」基は、例えば、窒素、酸素およびイオウなどの1個または複数個の原子を環(1つまたは複数)に有する単環基または縮合環基を記載する。環はまた、1つまたは複数の二重結合を有することができる。しかしながら、環は完全共役のπ電子系を有しない。代表的な例はピペリジン、ピペラジン、テトラヒドロフラン、テトラヒドロピラン、モルホリノおよびその類似物である。複素脂環基は、置換または非置換であり得る。置換された複素脂環は一つ以上の置換基を有することができ、それぞれの置換基は独立して、例えば、ヒドロキシアルキル、トリハロアルキル、シクロアルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、ヘテロアリール、複素脂環、アミン、ハリド、スルホネート、スルホキシド、ホスホネート、ヒドロキシ、アルコキシ、アリールオキシ、チオヒドロキシ、チオアルコキシ、チオアリールオキシ、シアノ、ニトロ、アゾ、スルフォンアミド、C-カルボキシレート、O-カルボキシレート、N-チオカーバメート、O-チオカーバメート、尿素、チオ尿素、N-カーバメート、O-カーバメート、C-アミド、N-アミド、グアニル、グアニジン、またはヒドラジンであり得る。複素脂環基は、単一の隣接原子に結合された末端基(この用語は本明細書中上記で定義される通りである)、またはその鎖中の少なくとも二つの炭素を介して二つ以上の成分を連結する連結基(この用語は本明細書中上記で定義される通りである)であり得る。
【0323】
用語「アリール」基は、完全共役のπ電子系を有する、すべて炭素からなる単環基または縮合多環(すなわち、隣接炭素原子対を共有する環)基を記載する。アリール基は、置換または非置換であり得る。置換されたアリールは一つ以上の置換基を有することができ、それぞれの置換基は独立して、例えば、ヒドロキシアルキル、トリハロアルキル、シクロアルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、ヘテロアリール、複素脂環、アミン、ハリド、スルホネート、スルホキシド、ホスホネート、ヒドロキシ、アルコキシ、アリールオキシ、チオヒドロキシ、チオアルコキシ、チオアリールオキシ、シアノ、ニトロ、アゾ、スルフォンアミド、C-カルボキシレート、O-カルボキシレート、N-チオカーバメート、O-チオカーバメート、尿素、チオ尿素、N-カーバメート、O-カーバメート、C-アミド、N-アミド、グアニル、グアニジン、またはヒドラジンであり得る。アリール基は、単一の隣接原子に結合された末端基(この用語は本明細書中上記で定義される通りである)、またはその鎖中の少なくとも二つの炭素を介して二つ以上の成分を連結する連結基(この用語は本明細書中上記で定義される通りである)であり得る。
【0324】
用語「ヘテロアリール」基は、例えば、窒素、酸素およびイオウなどの1個または複数個の原子を環(1つまたは複数)に有し、さらには完全共役のπ電子系を有する単環基または縮合環(すなわち、隣接炭素原子対を共有する環)基を記載する。ヘテロアリール基の非限定的な例には、ピロール、フラン、チオフェン、イミダゾール、オキサゾール、チアゾール、ピラゾール、ピリジン、ピリミジン、キノリン、イソキノリンおよびプリンが含まれる。ヘテロアリール基は、置換または非置換であり得る。置換されたヘテロアリールは一つ以上の置換基を有することができ、それぞれの置換基は独立して、例えば、ヒドロキシアルキル、トリハロアルキル、シクロアルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、ヘテロアリール、複素脂環、アミン、ハリド、スルホネート、スルホキシド、ホスホネート、ヒドロキシ、アルコキシ、アリールオキシ、チオヒドロキシ、チオアルコキシ、チオアリールオキシ、シアノ、ニトロ、アゾ、スルフォンアミド、C-カルボキシレート、O-カルボキシレート、N-チオカーバメート、O-チオカーバメート、尿素、チオ尿素、N-カーバメート、O-カーバメート、C-アミド、N-アミド、グアニル、グアニジン、またはヒドラジンであり得る。ヘテロアリール基は、単一の隣接原子に結合された末端基(この用語は本明細書中上記で定義される通りである)、またはその鎖中の少なくとも二つの炭素を介して二つ以上の成分を連結する連結基(この用語は本明細書中上記で定義される通りである)であり得る。代表的な例はピリジン、ピロール、オキサゾール、インドール、プリンおよびその類似物である。
【0325】
用語「ハリド」および「ハロ」は、フッ素、塩素、臭素、または沃素を記載する。
【0326】
用語「ハロアルキル」は、1つまたは複数のハリドによってさらに置換された、上記で定義されるアルキル基を記載する。
【0327】
用語「スルファート」は、-O-S(=O)2-ORx末端基または-O-S(=O)2-O-連結基(これらの用語は本明細書中上記で定義される通りである)(式中、Rxは本明細書中上記で定義される通りである)を記載する。
【0328】
用語「チオスルファート」は、-O-S(=S)(=O)-ORx末端基または-O-S(=S)(=O)-O-連結基(これらの用語は本明細書中上記で定義される通りである)(式中、Rxは本明細書中上記で定義される通りである)を記載する。
【0329】
用語「スルファイト」は、-O-S(=O)-O-Rx末端基または-O-S(=O)-O-連結基(これらの用語は本明細書中上記で定義される通りである)(式中、Rx′は本明細書中上記で定義される通りである)を記載する。
【0330】
用語「チオスルファイト」は、-O-S(=S)-O-Rx末端基または-O-S(=S)-O-連結基(これらの用語は本明細書中上記で定義される通りである)(式中、Rxは本明細書中上記で定義される通りである)を記載する。
【0331】
用語「スルフィナート」は、-S(=O)-ORx末端基または-S(=O)-O-連結基(これらの用語は本明細書中上記で定義される通りである)(式中、Rxは本明細書中上記で定義される通りである)を記載する。
【0332】
用語「スルホキシド」または「スルフィニル」は、-S(=O)Rx末端基または-S(=O)-連結基(これらの用語は本明細書中上記で定義される通りである)(式中、Rxは本明細書中上記で定義される通りである)を記載する。
【0333】
用語「スルホネート」は、-S(=O)2-Rx末端基または-S(=O)2-連結基(これらの用語は本明細書中上記で定義される通りである)(式中、Rxは本明細書中上記で定義される通りである)を記載する。
【0334】
用語「S-スルホンアミド」は、-S(=O)2-NRxRy末端基または-S(=O)2-NRx-連結基(これらの用語は本明細書中上記で定義される通りである)(式中、RxおよびRyは本明細書中上記で定義される通りである)を記載する。
【0335】
用語「N-スルホンアミド」は、RxS(=O)2-NRy末端基または-S(=O)2-NRx-連結基(これらの用語は本明細書中上記で定義される通りである)(式中、RxおよびRyは本明細書中上記で定義される通りである)を記載する。
【0336】
用語「ジスルフィド」は、-S-SRx末端基またはS-S-連結基(これらの用語は本明細書中上記で定義される通りである)(式中、Rxは本明細書中上記で定義される通りである)を記載する。
【0337】
用語「ホスホナート」は、本明細書中で定義されるようなRxおよびRyを有する-P(=O)(ORx)(ORy)末端基または-P(=O)(ORx)(O)-連結基を表す(これらの表現は本明細書中上記で定義される通りである)。
【0338】
用語「チオホスホナート」は、本明細書中で定義されるようなRxおよびRyを有する-P(=S)(ORx)(ORy)末端基または-P(=S)(ORx)(O)-連結基を表す(これらの表現は本明細書中上記で定義される通りである)。
【0339】
用語「ホスフィニル」は、本明細書中上記で定義されるようなRxおよびRyを有する-PRxRy末端基または-PRx-連結基を表す(これらの表現は本明細書中上記で定義される通りである)。
【0340】
用語「ホスフィンオキシド」は、本明細書中で定義されるようなRxおよびRyを有する-P(=O)(Rx)(Ry)末端基または-P(=O)(Rx)-連結基を表す(これらの表現は本明細書中上記で定義される通りである)。
【0341】
用語「ホスフィンスルフィド」は、本明細書中で定義されるようなRxおよびRyを有する-P(=S)(Rx)(Ry)末端基または-P(=S)(Rx)-連結基を表す(これらの表現は本明細書中上記で定義される通りである)。
【0342】
用語「ホスファイト」は、本明細書中で定義されるようなRxおよびRyを有する-O-PRx(=O)(ORy)末端基または-O-PRx(=O)(O)-連結基を表す(これらの表現は本明細書中上記で定義される通りである)。
【0343】
用語「カルボニル」または用語「カルボネート」は、本明細書中で使用される場合、本明細書中で定義されるようなRxを有する-C(=O)-Rx末端基または-C(=O)-連結基を表す(これらの表現は本明細書中上記で定義される通りである)。
【0344】
用語「チオカルボニル」は、本明細書中で使用される場合、本明細書中で定義されるようなRxを有する-C(=S)-Rx末端基または-C(=S)-連結基を表す(これらの表現は本明細書中上記で定義される通りである)。
【0345】
用語「オキソ」は、本明細書中で使用される場合、(=O)基を表し、この場合、酸素原子が、示された位置における原子(例えば、炭素原子)に二重結合によって連結される。
【0346】
用語「チオオキソ」は、本明細書中で使用される場合、(=S)基を表し、この場合、イオウ原子が、示された位置における原子(例えば、炭素原子)に二重結合によって連結される。
【0347】
用語「オキシム」は、=N-OH末端基または=N-O-連結基(これらの用語は本明細書中上記で定義される通りである)を記載する。
【0348】
用語「ヒドロキシル」は、-OH基を記載する。
【0349】
用語「アルコキシ」は、本明細書中で定義される通り-O-アルキル基および-O-シクロアルキル基の両方を記載する。
【0350】
用語「アリールオキシ」は、本明細書中で定義される通り-O-アリール基および-O-ヘテロアリール基の両方を記載する。
【0351】
用語「チオヒドロキシ」は、-SH基を記載する。
【0352】
用語「チオアルコキシ」は、本明細書中で定義される通り-S-アルキル基および-S-シクロアルキル基の両方を記載する。
【0353】
用語「チオアリールオキシ」は、本明細書中で定義される通り-S-アリール基および-S-ヘテロアリール基の両方を記載する。
【0354】
「ヒドロキシアルキル」は、本明細書中で「アルコール」としても言及され、ヒドロキシ基によって置換される、本明細書中で定義されるアルキルを記載する。
【0355】
用語「シアノ」は、-C≡N基を記載する。
【0356】
用語「イソシアネート」は、-N=C=O基を記載する。
【0357】
用語「イソチオシアネート」は、-N=C=S基を記載する。
【0358】
用語「ニトロ」は、-NO2基を記載する。
【0359】
用語「アシルハリド」は、-(C=O)Rz基(式中、Rzは本明細書中上記で定義される通りハリドである)を記載する。
【0360】
用語「アゾ」または「ジアゾ」は、-N=NRx末端基または-N=N-連結基(これらの用語は本明細書中上記で定義される通りである)(式中、Rxは本明細書中上記で定義される通りである)を記載する。
【0361】
用語「パーオキソ」は、-O-ORx末端基または-O-O-連結基(これらの用語は本明細書中上記で定義される通りである)(式中、Rxは本明細書中上記で定義される通りである)を記載する。
【0362】
用語「カルボキシレート」は、本明細書中で使用される場合、C-カルボキシレートおよびO-カルボキシレートを包含する。
【0363】
用語「C-カルボキシレート」は、-C(=O)-ORx末端基または-C(=O)-O-連結基(これらの用語は本明細書中上記で定義される通りである)(式中、Rxは本明細書中上記で定義される通りである)を記載する。
【0364】
用語「O-カルボキシレート」は、-OC(=O)Rx末端基または-OC(=O)-連結基(これらの用語は本明細書中上記で定義される通りである)(式中、Rxは本明細書中上記で定義される通りである)を記載する。
【0365】
カルボキシレートは直鎖または環状であることが可能である。環状であるとき、Rxと炭素原子とが一緒に連結されて、C-カルボキシレートで環を形成し、この基はまた、ラクトンとして示される。あるいは、RxとOとが一緒に連結されて、O-カルボキシレートで環を形成する。環状カルボキシレートは、例えば、形成された環における原子が別の基に連結されるときには、連結基として機能することができる。
【0366】
用語「チオカルボキシレート」は、本明細書中で使用される場合、C-チオカルボキシレートおよびO-チオカルボキシレートを包含する。
【0367】
用語「C-チオカルボキシレート」は、-C(=S)ORx末端基または-C(=S)-O-連結基(これらの用語は本明細書中上記で定義される通りである)(式中、Rxは本明細書中上記で定義される通りである)を記載する。
【0368】
用語「O-チオカルボキシレート」は、-OC(=S)Rx末端基または-OC(=S)-連結基(これらの用語は本明細書中上記で定義される通りである)(式中、Rxは本明細書中上記で定義される通りである)を記載する。
【0369】
チオカルボキシレートは直鎖または環状であることが可能である。環状であるとき、Rxと炭素原子とが一緒に連結されて、C-チオカルボキシレートで環を形成し、この基はまた、チオラクトンとして示される。あるいは、RxとOとが一緒に連結されて、O-チオカルボキシレートで環を形成する。環状チオカルボキシレートは、例えば、形成された環における原子が別の基に連結されるときには、連結基として機能することができる。
【0370】
用語「カーバメート」は、本明細書中で使用される場合、N-カーバメートおよびO-カーバメートを包含する。
【0371】
用語「N-カーバメート」は、RyOC(=O)-NRx-末端基または-OC(=O)-NRx-連結基(これらの用語は本明細書中上記で定義される通りである)(式中、RxおよびRyは本明細書中上記で定義される通りである)を記載する。
【0372】
用語「O-カーバメート」は、-OC(=O)-NRxRy末端基または-OC(=O)-NRx-連結基(これらの用語は本明細書中上記で定義される通りである)(式中、RxおよびRyは本明細書中上記で定義される通りである)を記載する。
【0373】
カーバメートは直鎖または環状であることが可能である。環状であるとき、Rxと炭素原子とが一緒に連結されて、O-カーバメートで環を形成する。あるいは、RxとOとが一緒に連結されて、N-カーバメートで環を形成する。環状カーバメートは、例えば、形成された環における原子が別の基に連結されるときには、連結基として機能することができる。
【0374】
用語「カーバメート」は、本明細書中で使用される場合、N-カーバメートおよびO-カーバメートを包含する。
【0375】
用語「チオカーバメート」は、本明細書中で使用される場合、N-チオカーバメートおよびO-チオカーバメートを包含する。
【0376】
用語「O-チオカーバメート」は、-OC(=S)-NRxRy末端基または-OC(=S)-NRx-連結基(これらの用語は本明細書中上記で定義される通りである)(式中、RxおよびRyは本明細書中上記で定義される通りである)を記載する。
【0377】
用語「N-チオカーバメート」は、RyOC(=S)NRx-末端基または-OC(=S)NRx-連結基(これらの用語は本明細書中上記で定義される通りである)(式中、RxおよびRyは本明細書中上記で定義される通りである)を記載する。
【0378】
チオカーバメートは、カーバメートについて本明細書中に記載したように、直鎖または環状であることが可能である。
【0379】
用語「ジチオカーバメート」は、本明細書中で使用される場合、S-ジチオカーバメートおよびO-チオジチオカーバメートを包含する。
【0380】
用語「S-ジチオカーバメート」は、-SC(=S)-NRxRy末端基または-SC(=S)NRx-連結基(これらの用語は本明細書中上記で定義される通りである)(式中、RxおよびRyは本明細書中上記で定義される通りである)を記載する。
【0381】
用語「N-ジチオカーバメート」は、RySC(=S)NRx-末端基または-SC(=S)NRx-連結基(これらの用語は本明細書中上記で定義される通りである)(式中、RxおよびRyは本明細書中上記で定義される通りである)を記載する。
【0382】
用語「尿素」(「ウレイド」とも称される)は、-NRxC(=O)-NRyRq末端基または-NRxC(=O)-NRy-連結基(これらの用語は本明細書中上記で定義される通りである)(式中、RzおよびRyは本明細書中上記で定義される通りであり、RqはRxおよびRyについて本明細書中で定義される通りである)を記載する。
【0383】
用語「チオ尿素」(「チオウレイド」とも称される)は、-NRxC(=S)-NRyRq末端基または-NRx-C(=S)-NRy-連結基(これらの用語は本明細書中上記で定義される通りである)(式中、Rx,RyおよびRqは本明細書中上記で定義される通りである)を記載する。
【0384】
用語「アミド」は、本明細書中で使用される場合、C-アミドおよびN-アミドを包含する。
【0385】
用語「C-アミド」は、-C(=O)-NRxRy末端基または-C(=O)-NRx-連結基(これらの用語は本明細書中上記で定義される通りである)(式中、RxおよびRyは本明細書中上記で定義される通りである)を記載する。
【0386】
用語「N-アミド」は、RxC(=O)-NRy-末端基またはRxC(=O)-N-連結基(これらの用語は本明細書中上記で定義される通りである)(式中、RxおよびRyは本明細書中上記で定義される通りである)を記載する。
【0387】
アミドは直鎖または環状であることが可能である。環状であるとき、Rxと炭素原子とが一緒に連結されて、C-アミドで環を形成し、この基はまた、ラクタムとして示される。環状アミドは、例えば、形成された環における原子が別の基に連結されるときには、連結基として機能することができる。
【0388】
用語「グアニル」は、RxRyNC(=N)-末端基または-RxNC(=N)-連結基(これらの用語は本明細書中上記で定義される通りである)(式中、RxおよびRyは本明細書中上記で定義される通りである)を記載する。
【0389】
用語「グアニジン」は、-RxNC(=N)-NRyRq末端基または-RxNC(=N)-NRy-連結基(これらの用語は本明細書中上記で定義される通りである)(式中、Rx,RyおよびRqは本明細書中上記で定義される通りである)を記載する。
【0390】
用語「ヒドラジン」は、-NRx-NRyRq末端基または-NRx-NRy-連結基(これらの用語は本明細書中上記で定義される通りである)(式中、Rx,RyおよびRqは本明細書中上記で定義される通りである)を記載する。
【0391】
本明細書中で使用される場合、用語「ヒドラジド」は、Rx、RyおよびRqが本明細書中で定義される通りである-C(=O)-NRx-NRyRq末端基または-C(=O)-NRx-NRy-連結基を表す(これらの表現は本明細書中上記で定義される通りである)。
【0392】
本明細書中で使用される場合、用語「チオヒドラジド」は、Rx、RyおよびRqが本明細書中で定義される通りである-C(=S)-NRx-NRyRq末端基または-C(=S)-NRx-NRy-連結基を表す(これらの表現は本明細書中上記で定義される通りである)。
【0393】
本明細書中で使用される場合、用語「アルキレングリコール」は-O-[(CRxRy)z-O]y-Rq末端基または-O-[(CRxRy)z-O]y-連結基を表し、ただし、式中、Rx、RyおよびRqは本明細書中で定義される通りであり、zは1~10の整数であり、好ましくは2~6の整数であり、より好ましくは2または3の整数であり、yは1またはそれ以上の整数である。好ましくは、RxおよびRyはともに水素である。zが2であり、かつ、yが1であるとき、この基はエチレングリコールである。zが3であり、かつ、yが1であるとき、この基はプロピレングリコールである。
【0394】
yが4よりも大きいとき、このアルキレングリコールは本明細書中ではポリ(アルキレングリコール)として示される。本発明のいくつかの実施形態において、ポリ(アルキレングリコール)基またはポリ(アルキレングリコール)部分は、zが10~200であるように、好ましくは10~100であるように、より好ましくは10~50であるように、10個~200個の繰り返しアルキレングリコールユニットを有することができる。
【0395】
本明細書中上記に描かれるような、および、下記の請求項の節において特許請求されるような本発明の様々な実施形態および態様のそれぞれは、実験的裏付けが下記の実施例において見出される。
【実施例0396】
次に下記の実施例が参照されるが、下記の実施例は、上記の説明と一緒に、本発明を非限定様式で例示する。
【0397】
実施例1
AMプロセス(例えば、3Dインクジェット印刷など)のための可溶性支持体技術において使用可能である例示的な市販されている材料は、非硬化性(非反応性)のポリマー材料、例えば、ポリオール(例えば、グリコール)など、ならびに、一官能性および二官能性の硬化性モノマーまたは硬化性オリゴマーの混合物を含む場合がある。
【0398】
例示的な一官能性の硬化性材料(硬化性のモノマー、オリゴマーまたはポリマー)には、ポリ(アルキレングリコール)アクリレート、例えば、限定されないが、SARTOMER社によって販売されるPEGモノアクリレート試薬(例えば、SR-256、SR-410、SR-550など)、GEO(登録商標)によって販売されるPEGメタクリレート試薬(例えば、Bisomer(登録商標)MPEG350MA、Bisomer(登録商標)およびPEM6 LDなど)、および、GEOによって販売されるPPGアクリレート試薬(例えば、Bisomer(登録商標)PPA6など)などがある。
【0399】
これらの例示的な一官能性の材料はまとめて、下記の一般式IVによって表すことができる:
式中、
nは、2~10の範囲での整数、または2~8の範囲での整数である;
mは、2~6の範囲での整数、好ましくは2~4の範囲での整数であり、あるいは、2または3である;
R’は、水素、アルキル、シクロアルキルまたはアリールであることが可能である;かつ
RaはHまたはC(1~4)アルキルである。
【0400】
例示的な二官能性の硬化性材料(硬化性のモノマー、オリゴマーポリマー)には、下記の一般式Vによって表すことができる二官能性のポリ(アルキレングリコール)ジアクリレートが含まれる:
式中、
nは、2~40の範囲での整数、または2~20の範囲での整数、または2~10の範囲での整数、または2~8の範囲での整数である;
mは、2~6の範囲での整数、好ましくは2~4の範囲での整数であり、あるいは2または3である;かつ、
RaおよびRbはそれぞれが独立して、HまたはC(1~4)アルキルである。
【0401】
二官能性の硬化性材料が支持体材料配合物に存在するとき、この二官能性の硬化性材料は、硬化性材料を硬化させたときに形成される2つ以上のポリマー鎖を共有結合により連結する化学的架橋剤として作用する場合がある。結果として、硬化した支持体材料は、二官能性の硬化性材料の濃度および種類に依存して、架橋されたポリマー鎖を含み、したがって、ある程度の化学的架橋を含む。
【0402】
硬化した支持体材料における化学的に架橋されたポリマー鎖の存在は、硬化した支持体材料に所望の機械的強度を与えると考えられ、それにもかかわらず、そのようなポリマー鎖の存在はまた、水溶液におけるこの硬化した支持体材料の溶解に悪影響を及ぼす。
【0403】
例えば、本明細書中に記載されるように、例えば、重量比で70:30から95:5までの範囲である比率でのポリ(アルキレングリコール)モノアクリレートとポリ(アルキレングリコール)ジアクリレートとの混合物を35重量%~40重量%(例えば、38.1重量%)の硬化性モノマーの総濃度で含む支持体材料配合物は水に不溶性であり、かつ、典型的には濃アルカリ性溶液(例えば、5%のNaOH溶液)に溶解可能であり、それにもかかわらず、溶解速度が比較的低く、溶解時間が大きい。例えば、2%水酸化ナトリウムおよび1%メタケイ酸ナトリウムの800mLの清浄液に連続撹拌下で浸漬される、そのような支持体材料配合物を使用して印刷された16グラム(20×20×20mm)の立方体の完全な溶解が、11時間後に認められた。加えて、清浄液の飽和が、5重量%の溶解した可溶性材料が溶液に存在するときに既に認められる。
【0404】
本明細書中に記載されるように、一官能性および二官能性の硬化性モノマー(例えば、アクリレート系モノマー)の混合物を含む支持体材料配合物の溶解速度を増大させようとする試みにおいて、本発明者らは、可溶性支持体配合物における硬化性モノマーの総濃度を低下させることの影響を調べている。
【0405】
この趣旨において、3つの配合物(これらは本明細書中では、F1、F2およびF3と称される)を、下記のように、一官能性および二官能性のポリ(アルキレングリコール)アクリレートモノマーの混合物(これは本明細書中下記では「ポリ(アルキレングリコール)アクリレート混合物」として示される)の様々な総濃度を用いて調製した:F1-38.1重量%のポリ(アルキレングリコール)アクリレート混合物、F2-26.7重量%のポリ(アルキレングリコール)アクリレート混合物、および、F3-21.7重量%のポリ(アルキレングリコール)アクリレート混合物。これらの配合物のそれぞれにおける一官能性アクリレート対二官能性アクリレートの重量比が約90:10であった。
【0406】
それぞれの配合物が、上記で示された濃度でのポリ(アルキレングリコール)アクリレート混合物に加えて、非硬化性ポリオールを30重量パーセント~80重量パーセントの濃度で、光開始剤(例えば、BAPOタイプの光開始剤)を0.1重量パーセント~2重量パーセントの濃度で、抑制剤を0.1重量パーセント~2重量パーセントの濃度で、かつ、界面活性剤を0.1重量パーセント~2重量パーセントの濃度で含有した。
【0407】
そのような支持体材料配合物を使用して(本明細書中に記載されるような3Dインクジェット印刷によって)印刷され、硬化させた16グラム(20mm×20mm×20mm)の立方体を、2%wt.水酸化ナトリウムおよび1%wt.メタケイ酸ナトリウムの800mLの清浄液に浸漬した。
図1に示されるように、ポリ(アルキレングリコール)アクリレート混合物の濃度を(F1における38.1%wt.から、F2における26.7%wt.にまで)約30%低下させることにより、溶解時間が約2分の1に減少し、また、ポリ(アルキレングリコール)アクリレート混合物の濃度を(F1における38.1%wt.から、F3における21.7%wt.にまで)約43%低下させることによって、溶解時間が約4.5分の1未満に減少した。
【0408】
支持体材料配合物におけるポリ(アルキレングリコール)アクリレート混合物の濃度を低下させることの効果を明らかにするために、F1、F2およびF3から印刷される物体の機械的強度を求めた。
【0409】
機械的強度を、標準的な圧縮永久ひずみパラメーターで操作されるLLOYD張力計(モデルLR5K PLUS)を使用して行われる圧縮試験によって求めた。機械的強度が上述の立方体に関してNによって表される。
【0410】
結果が
図2に示され、これらの結果は、硬化した支持体配合物の機械的強度における劇的な低下を、ポリ(アルキレングリコール)アクリレート混合物の濃度を低下させることの結果として示している。これらの結果はさらに、26.7%wt.のポリ(アルキレングリコール)アクリレート混合物が、ある特定の(例えば、PolyJet)3D印刷システムにおいて造形物を支えるための硬化した支持体材料の十分な機械的強度を提供する、ポリ(アルキレングリコール)アクリレート混合物の濃度の最低限度であることを示している。
【0411】
どのような特定の理論によってであってもとらわれることはないが、本発明者らは、ポリ(アルキレングリコール)アクリレート混合物を含有する配合物の比較的大きい溶解時間が、おそらくは二官能性のアクリレート系モノマーによってもたらされる化学的架橋であると思われる、配合物を硬化させたときに形成されるポリマー鎖の間における分子間相互作用のためであると考えている。
【0412】
改善された溶解時間を、硬化した支持体材料の機械的特性を損なうことなく示すであろう新規の支持体材料配合物を求める際に、本発明者らは、ポリ(アルキレングリコール)アクリレート混合物におけるモノマーの少なくとも一部を、硬化したときに形成されるポリマー鎖の間における分子間相互作用(例えば、化学的架橋)を妨げ得る硬化性モノマーによって置き換えることを考え出した。
【0413】
本発明者らは、そのような硬化性モノマーは、硬化した支持体材料における他のポリマー鎖と非共有結合性相互作用を介して、例えば、水素結合を介して相互作用するポリマー鎖を形成することができるに違いないと考えた。したがって、そのような硬化性モノマーは、水素結合相互作用に関与し得る少なくとも2つの化学的部分(この用語は本明細書中で定義される通りである)を示さなければならない。そのような化学的部分はまた、本明細書中では「水素結合形成化学的部分」と呼ばれる。
【0414】
したがって、本発明者らは、本明細書中では「F4」と呼ばれる新規な配合物を設計した。この配合物は、16.7%wt.の上記ポリ(アルキレングリコール)アクリレート混合物と、10%wt.の水溶性アクリルアミド系化合物とを含み、当該水溶性アクリルアミド系化合物が、アミド基による1つの水素結合形成化学的部分と、アミドの置換基によるさらなる結合形成化学的部分とを特徴とし、ただし、すべての他の成分は、配合物F1、配合物F2および配合物F3の場合と同じである。
【0415】
例示的なそのようなアクリルアミド化合物は下記の式Iによって表すことができる:
式中、Raは水素またはC(1~4)アルキルである;
kは、2~10の整数、または2~8の整数、または2~6の整数、または2~4の整数であり、あるいは2または3である;かつ、
Yは、本明細書中に記載されるように、水素結合形成化学的部分であり、例えば、酸素または窒素を含有する部分(例えば、ヒドロキシル、アミン、アルキルアミンおよびジアルキルアミンなど)である。
【0416】
図1に示されるように、例示的な配合物F4を用いて印刷される硬化した支持体材料の溶解時間が、F2と比較した場合、3分の1未満に大幅に減少した。
【0417】
驚くべきことに、
図2に示されるように、この硬化した支持体材料の機械的強度が、F2と比較した場合、F4についてはほぼ3倍高くなっており、(例えば、PolyJet)3D印刷システムにおける支持体材料の要求と合致していた。
【0418】
F4配合物によって示される改善された溶解時間がさらなる研究において実証された。
【0419】
F1、F2、F3およびF4の各配合物を使用して、様々な形状物、すなわち、Brain Gear(BG)、Lego、および、Small Fluteを印刷した。硬化させたとき、印刷された物体を、Jig清浄システムにおける5%のNaOH溶液による溶解に供した。
【0420】
結果が
図3に示される。ポリ(アルキレングリコール)アクリレート混合物の濃度を38.1%wt.(F1)から26.7%wt.(F2)にまで低下させると、溶解時間がBG部品およびLego部品については2分の1に減少したことを認めることができる。ポリ(アルキレングリコール)アクリレート混合物の濃度を26.7%wt.未満に低下させ、アクリルアミド系モノマーを加えて、ポリ(アルキレングリコール)アクリレート混合物およびさらなるアクリルアミド系モノマーの26.7%wt.の総モノマー濃度となるようにすること(F4)によって、溶解時間が、F1と比較した場合、Lego部品については約4分の1に減少し、また、F1と比較した場合、BG部品については約10分の1に減少した。
【0421】
加えて、F4配合物から調製される硬化した支持体材料は、機械的に壊れやすい特性を可能にし、その結果、実質的な量の硬化した支持体材料が穏やかな機械的手段によって容易に除かれ得るようにするために十分に柔らかいことが示された。したがって、この硬化した支持体材料では、化学的溶解を使用する必要性が回避されるかもしれない。
【0422】
さらなる実験において、1つの水素結合形成化学的部分をアミドとすること、および、1つの水素結合形成化学的部分をアミドの置換基とすることを特徴とする2つのアクリルアミド系モノマーの混合物を調べた。
【0423】
これらの実験において、比較的高いTg(例えば、120℃よりも高いTg、または130℃よりも高いTg、例えば、135℃のTg)を特徴とする本明細書中に記載されるようなアクリルアミド系モノマーを支持体材料配合物に加えた。
【0424】
このさらなるアクリルアミド系モノマーは、他の高Tgモノマーの溶解時間よりもはるかに短い、水における溶解時間を示す、剛直で、硬い耐熱性の水溶性固体ポリマーを形成するものとして選択された。
【0425】
配合物F5は、16.7%wt.のポリ(アルキレングリコール)アクリレート混合物と、5%wt.の、F4で使用されるアクリルアミド系モノマーと、高いTgおよび水における少ない溶解時間を特徴とする5%wt.のさらなるアクリルアミド系モノマーとを含有し、ただし、すべての他の成分はF1~F4の場合と同じである。溶解時間および機械的強度を、本明細書中上記の実施例1においてF1~F4(
図1および
図2)について記載されるように求めた。
【0426】
図4に示されるように、配合物F5から印刷される硬化した支持体材料の溶解時間がF4の溶解時間の2分の1未満であった。
【0427】
図5に示されるように、硬化した支持体材料の機械的強度が、F4と比較して、約50%増大した。
【0428】
上記で記載される調べられたアクリルアミド化合物に起因すると考えられる水素結合形成が実際に、該化合物を含有する支持体材料配合物の改善された性能の原因となっていることを検証するために、イソボルニルアクリレート(IBOA)を含有する配合物を調べた。
【0429】
IBOAは、水素結合を形成することができる2つの基を特徴としない高Tgモノマーである。
【0430】
30グラムの本明細書中に記載されるようなF4配合物と、上記アクリルアミド系モノマーが等量のIBOAによって置き換えられる30グラムの同様な配合物とを鋳型に入れ、UVオーブンにおいて5時間硬化させた。
【0431】
硬化した配合物のそれぞれの機械的強度を、本明細書中に記載されるようにLLOYD張力計(圧縮永久ひずみ)で測定した。
【0432】
得られたデータが
図6に示される。得られたデータは、実質的により大きい機械的強度がF4配合物によって示されたことを明瞭に示す。
【0433】
本発明はその特定の実施態様によって説明してきたが、多くの別法、変更および変形があることは当業者には明らかであることは明白である。従って、本発明は、本願の請求項の精神と広い範囲の中に入るこのような別法、変更および変形すべてを包含するものである。
【0434】
本明細書で挙げた刊行物、特許および特許出願はすべて、個々の刊行物、特許および特許出願が各々あたかも具体的にかつ個々に引用提示されているのと同程度に、全体を本明細書に援用するものである。さらに、本願で引用または確認したことは本発明の先行技術として利用できるという自白とみなすべきではない。節の見出しが使用されている程度まで、それらは必ずしも限定であると解釈されるべきではない。