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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022006512
(43)【公開日】2022-01-13
(54)【発明の名称】コンバイン
(51)【国際特許分類】
   A01F 12/46 20060101AFI20220105BHJP
【FI】
A01F12/46
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020108773
(22)【出願日】2020-06-24
(71)【出願人】
【識別番号】000001878
【氏名又は名称】三菱マヒンドラ農機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100085394
【弁理士】
【氏名又は名称】廣瀬 哲夫
(74)【代理人】
【識別番号】100165456
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 佑子
(72)【発明者】
【氏名】宗安 規
【テーマコード(参考)】
2B396
【Fターム(参考)】
2B396JA04
2B396JC07
2B396KE03
2B396KE04
2B396LE02
2B396LE03
2B396LE05
2B396LE09
2B396LE18
2B396LP03
2B396LP07
2B396LP09
2B396LP12
2B396LP17
2B396LR02
2B396LR08
2B396LR13
2B396LR19
2B396MA02
2B396MA07
2B396MC02
2B396MC06
2B396MC13
2B396PA02
2B396PA04
2B396PA12
2B396PA13
2B396PA30
2B396PA43
2B396PA46
2B396PA47
2B396PE06
2B396QE02
2B396QE25
2B396QG05
2B396QG06
2B396RA10
2B396RA22
2B396RA23
2B396RA25
2B396RA27
(57)【要約】
【課題】穀粒排出位置の微調整操作が容易なコンバインを提供する。
【解決手段】機体に対して旋回可能に設けられた穀粒排出オーガ5と、穀粒排出オーガ5を旋回させる旋回用アクチュエータ14と、旋回用アクチュエータ14を制御する制御部40と、を備えるコンバイン1であって、制御部40は、穀粒排出オーガ5の任意の旋回範囲を微調整旋回範囲として設定する微調整旋回範囲設定手段と、微調整旋回範囲内で穀粒排出オーガ5を旋回させるとき、微調整旋回範囲外で穀粒排出オーガ5を旋回させるときの旋回速度よりも低速な微調整用旋回速度で穀粒排出オーガ5を旋回させる微調整旋回制御手段と、を備える。
【選択図】図13
【特許請求の範囲】
【請求項1】
機体に対して旋回可能に設けられた穀粒排出オーガと、
前記穀粒排出オーガを旋回させる旋回用アクチュエータと、
前記旋回用アクチュエータを制御する制御部と、を備えるコンバインであって、
前記制御部は、
前記穀粒排出オーガの任意の旋回範囲を微調整旋回範囲として設定する微調整旋回範囲設定手段と、
前記微調整旋回範囲内で前記穀粒排出オーガを旋回させるとき、前記微調整旋回範囲外で前記穀粒排出オーガを旋回させるときの旋回速度よりも低速な微調整用旋回速度で前記穀粒排出オーガを旋回させる微調整旋回制御手段と、を備えることを特徴とするコンバイン。
【請求項2】
前記制御部は、前記微調整旋回範囲内で前記穀粒排出オーガを一定速で旋回可能な旋回速度補正値を用いて前記旋回用アクチュエータを制御する旋回速度補正手段を備えることを特徴とする請求項1に記載のコンバイン。
【請求項3】
前記微調整旋回範囲設定手段は、前記穀粒排出オーガの旋回中における設定操作具の操作に応じて前記微調整旋回範囲を設定することを特徴とする請求項1又は2に記載のコンバイン。
【請求項4】
前記微調整旋回範囲設定手段は、前記穀粒排出オーガを穀粒排出動作させる穀粒排出操作具が操作された旋回位置を基準旋回位置とし、該基準旋回位置を含む旋回範囲を前記微調整旋回範囲として設定することを特徴とする請求項1又は2に記載のコンバイン。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、旋回可能な穀粒排出オーガを備えるコンバインに関する。
【背景技術】
【0002】
機体に対して旋回可能に設けられた穀粒排出オーガと、穀粒排出オーガを旋回させる旋回用アクチュエータと、旋回用アクチュエータを制御する制御部と、を備えるコンバインが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2000-270671号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
この種のコンバインでは、トラックなどに穀粒を排出する際、穀粒排出オーガの穀粒排出口を所望の穀粒排出位置に位置合わせする必要があるが、穀粒排出オーガの旋回速度が速すぎたり、穀粒排出オーガの撓みや昇降角度によって旋回速度が変動したりすることに起因し、穀粒排出位置の微調整操作が困難になる可能性がある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、上記の如き実情に鑑みこれらの課題を解決することを目的として創作されたものであって、請求項1の発明は、機体に対して旋回可能に設けられた穀粒排出オーガと、前記穀粒排出オーガを旋回させる旋回用アクチュエータと、前記旋回用アクチュエータを制御する制御部と、を備えるコンバインであって、前記制御部は、前記穀粒排出オーガの任意の旋回範囲を微調整旋回範囲として設定する微調整旋回範囲設定手段と、前記微調整旋回範囲内で前記穀粒排出オーガを旋回させるとき、前記微調整旋回範囲外で前記穀粒排出オーガを旋回させるときの旋回速度よりも低速な微調整用旋回速度で前記穀粒排出オーガを旋回させる微調整旋回制御手段と、を備えることを特徴とする。
請求項2の発明は、請求項1に記載のコンバインであって、前記制御部は、前記微調整旋回範囲内で前記穀粒排出オーガを一定速で旋回可能な旋回速度補正値を用いて前記旋回用アクチュエータを制御する旋回速度補正手段を備えることを特徴とする。
請求項3の発明は、請求項1又は2に記載のコンバインであって、前記微調整旋回範囲設定手段は、前記穀粒排出オーガの旋回中における設定操作具の操作に応じて前記微調整旋回範囲を設定することを特徴とする。
請求項4の発明は、請求項1又は2に記載のコンバインであって、前記微調整旋回範囲設定手段は、前記穀粒排出オーガを穀粒排出動作させる穀粒排出操作具が操作された旋回位置を基準旋回位置とし、該基準旋回位置を含む旋回範囲を前記微調整旋回範囲として設定することを特徴とする。
【発明の効果】
【0006】
請求項1の発明によれば、任意に設定可能な微調整旋回範囲内で穀粒排出オーガを旋回させるとき、微調整旋回範囲外で穀粒排出オーガを旋回させるときの旋回速度よりも低速な微調整用旋回速度で穀粒排出オーガを旋回させるので、穀粒排出位置の微調整操作が容易になる。
請求項2の発明によれば、微調整旋回範囲内では、穀粒排出オーガを一定速で旋回可能な旋回速度補正値を用いて旋回用アクチュエータを制御するので、旋回速度の変動によって穀粒排出位置の微調整操作が阻害されることを防止できる。
請求項3の発明によれば、穀粒排出オーガの旋回中における設定操作具の操作に応じて微調整旋回範囲を設定できる。
請求項4の発明によれば、穀粒排出オーガを穀粒排出動作させる穀粒排出操作具が操作された旋回位置を基準旋回位置とし、該基準旋回位置を含む旋回範囲を微調整旋回範囲として設定できる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】本発明の一実施形態に係るコンバインの左側面図である。
図2】本発明の一実施形態に係るコンバインの平面図である。
図3】本発明の一実施形態に係るコンバインのオーガリモコンを示す正面図である。
図4】本発明の一実施形態に係るコンバインの操縦部を示す平面図である。
図5】本発明の一実施形態に係るコンバインの制御構成を示すブロック図である。
図6】本発明の一実施形態に係るコンバインのオーガ旋回位置とオーガ旋回速度との関係を示すグラフである。
図7】本発明の一実施形態に係るコンバインのオーガ旋回制御の作用説明図であり、(a)は旋回操作スイッチ入力を示すタイミングチャート、(b)は旋回モータ出力を示すタイミングチャート、(c)はオーガ先端変位を示すタイミングチャートである。
図8】本発明の一実施形態に係るコンバインのオーガ微調整旋回範囲を示す平面図である。
図9】本発明の一実施形態に係るコンバインの旋回速度計測制御(1/4)を示すフローチャートである。
図10】本発明の一実施形態に係るコンバインの旋回速度計測制御(2/4)を示すフローチャートである。
図11】本発明の一実施形態に係るコンバインの旋回速度計測制御(3/4)を示すフローチャートである。
図12】本発明の一実施形態に係るコンバインの旋回速度計測制御(4/4)を示すフローチャートである。
図13】本発明の一実施形態に係るコンバインの旋回範囲設定制御1を示すフローチャートである。
図14】本発明の一実施形態に係るコンバインの旋回範囲設定制御2を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明の実施の形態について、図面に基づいて説明する。図1及び図2において、1はコンバインであって、該コンバイン1は、茎稈を刈り取る前処理部2と、刈り取った茎稈から穀粒を脱穀して選別する脱穀部3と、選別した穀粒を貯留する穀粒タンク4と、穀粒タンク4内の穀粒を機外に排出する穀粒排出オーガ5と、脱穀済みの排藁を後処理する後処理部6と、運転席7や各種の操作具が設けられる操縦部8と、クローラ式の走行部9と、を備える。
【0009】
穀粒タンク4の下部には、前後方向に沿う横ラセン(図示せず)が内装されており、該横ラセンの回転駆動に応じて穀粒タンク4内の穀粒が穀粒タンク4の後下端部から排出される。穀粒タンク4の後下端部には、穀粒排出オーガ5の縦搬送筒10が旋回自在に連結されており、さらに、縦搬送筒10の上端部には、穀粒排出オーガ5の横搬送筒11が上下昇降自在に連結されている。
【0010】
縦搬送筒10及び横搬送筒11には、横ラセンと同等のラセン搬送体(図示せず)が内装されており、これらのラセン搬送体が横ラセンと一連状に回転駆動されることで、穀粒タンク4内の穀粒が縦搬送筒10を経由して横搬送筒11まで搬送されるとともに、横搬送筒11の先端部に形成される排出口12から排出される。なお、横ラセン及びラセン搬送体の回転駆動及び回転停止は、図示しない穀粒排出クラッチの入り/切りに基づいて操作される。
【0011】
穀粒排出オーガ5(横搬送筒11)は、昇降用アクチュエータ13(例えば、油圧シリンダ)の駆動に応じて任意の昇降位置に操作でき、また、旋回用アクチュエータ14(例えば、電動モータ:図5参照)の駆動に応じて任意の旋回位置に操作できる。図2に示すように、穀粒排出オーガ5の旋回範囲には、格納位置Dと、自動旋回用に設定された排出位置A、B、Cと、が含まれる。旋回範囲A~Cにおいては、手動旋回操作によって任意の旋回位置で穀粒を排出させることができる。また、旋回範囲D~Aは、下降禁止範囲となっている。
【0012】
図3及び図4に示すように、操縦部8には、穀粒排出オーガ5を操作するためのオーガリモコン18が配置されている。本実施形態のオーガリモコン18は、有線リモコンであって、その操作面18aには、穀粒排出オーガ5の排出旋回位置を選択操作する排出位置選択スイッチ19と、選択された排出位置を表示する排出位置インジケータ20A、20B、20Cと、排出クラッチを入り/切り操作する穀粒排出スイッチ21と、排出状態を表示する排出インジケータ22と、穀粒排出オーガ5を選択された排出旋回位置まで自動旋回させる旋回自動スイッチ23と、穀粒排出オーガ5を手動で昇降操作する上昇操作スイッチ24及び下降操作スイッチ25と、穀粒排出オーガ5を手動で旋回操作する右旋回スイッチ26及び左旋回スイッチ27と、が設けられている。
【0013】
図4に示すように、操縦部8は、運転席7の前方に設けられるフロント操作パネル28と、運転席7の左側方に設けられるサイド操作パネル29と、運転席7の後方に設けられるリヤ操作パネル30と、を備える。フロント操作パネル28には、機体の操向操作具と前処理部2の昇降操作具に兼用されるジョイスティック型のマルチステアリングレバー31や前述したオーガリモコン18が配置され、サイド操作パネル29には、主変速レバー32、副変速レバー33などが配置されている。また、リヤ操作パネル30には、後述する計測モードスイッチ34や設定スイッチ35が配置されている。
【0014】
図5に示すように、コンバイン1は、穀粒排出オーガ5を制御する制御部40を備える。制御部40の入力側には、前述したオーガリモコン18の操作具、計測モードスイッチ34及び設定スイッチ35に加え、穀粒排出オーガ5(横搬送筒11)の旋回位置を検出する旋回位置検出手段41(例えば、ポテンショメータ)と、穀粒排出オーガ5(横搬送筒11)の昇降傾斜を検出する昇降傾斜検出手段42(例えば、ポテンショメータ)と、穀粒排出オーガ5(横搬送筒11)の格納位置を検出する格納位置検出手段43(例えば、ポテンショメータやリミットスイッチ)と、が接続される一方、制御部40の出力側には、前述した昇降用アクチュエータ13及び旋回用アクチュエータ14に加え、穀粒排出クラッチを入り/切りさせる穀粒排出クラッチ用アクチュエータ44と、ブザー音やランプで警報を報知する報知手段45と、が接続されている。また、制御部40自体は、マイクロコントローラなどを用いて構成されており、時間を計測可能なタイマ40aや、電源OFFによって記憶内容を消失しない不揮発性のメモリ40bを備えている。
【0015】
制御部40は、ハードウェアとソフトウェアの協働により実現する機能構成として、旋回速度算出手段、旋回速度補正値算出手段、旋回速度補正手段、微調整旋回範囲設定手段及び微調整旋回制御手段を備える。
【0016】
旋回速度算出手段は、図6に示すように、穀粒排出オーガ5(横搬送筒11)の旋回方向及び旋回位置毎に、穀粒排出オーガ5の旋回速度を算出する。例えば、穀粒排出オーガ5の旋回中に、タイマ40aで単位時間T(例えば、1秒)を計測しつつ、単位時間当たりの旋回量S(旋回角度)を旋回位置検出手段41の検出値に基づいて特定し、旋回量S/単位時間Tを旋回速度として算出する。
【0017】
穀粒排出オーガ5を旋回させる際には、制御部40から旋回用アクチュエータ14に一定の信号を出力しても、オーガ支持フレームの剛性などに起因して穀粒排出オーガ5に撓み(例えば、横搬送筒11の上下変位)が生じる場合があるため、旋回用アクチュエータ14に作用する荷重が変動し、旋回速度が一定速とならない可能性がある。穀粒排出オーガ5の旋回速度の変動は、例えば、図6に示すように、旋回方向によって略逆方向に現れ、かつその変動量は旋回位置によって大きく異なるので、本実施形態では、穀粒排出オーガ5の穀粒排出可能な旋回範囲(A~C)において、穀粒排出オーガ5を右旋回させながら右旋回速度を算出するとともに、穀粒排出オーガ5を左旋回させながら左旋回速度を算出する。
【0018】
旋回速度補正値算出手段は、穀粒排出オーガ5の旋回方向及び旋回位置毎に、旋回速度算出手段が算出した旋回速度と目標とする旋回速度との差分に基づいて旋回速度補正値を算出する。例えば、旋回速度算出手段が算出した算出旋回速度値と目標旋回速度値とを比較し、算出旋回速度値が目標旋回速度値よりも低いときは、その差分だけ旋回速度を上げるための旋回速度補正値を算出する一方、算出旋回速度値が目標旋回速度値よりも高いときは、その差分だけ旋回速度を下げるための旋回速度補正値を算出する。
【0019】
また、本実施形態の旋回速度補正値算出手段は、穀粒排出オーガ5の昇降角度に基づいて旋回速度補正値をさらに補正する。例えば、穀粒排出オーガ5(横搬送筒11)が水平のときと、上昇しているときとでは、撓みによる旋回速度の変動幅が異なるので、撓みによる旋回速度の変動幅が大きい水平時よりも、撓みによる旋回速度の変動幅が小さい上昇時の旋回速度補正値を小さくする。また、水平角度と上昇角度との中間昇降角度では、その昇降角度に応じて旋回速度補正値を比例的に補正することが好ましい。
【0020】
旋回速度補正手段は、旋回速度補正値算出手段が算出した旋回速度補正値を用いて旋回用アクチュエータ14を制御する。例えば、旋回用アクチュエータ14が一定速で回転するモータの場合、旋回速度補正手段は、モータを駆動させるインチングパルスのパルス幅変調制御に基づいて穀粒排出オーガの旋回速度を補正する。例えば、右旋回時の旋回速度を下げ、左旋回時の旋回速度を上げる補正を行う場合、図7の(b)に示すように、スイッチ入力(図7の(a))に応じてモータに出力するパルス幅を右旋回時は狭くし、左旋回時は広くする。このときのオーガ先端の1パルス当たりの旋回方向変位量は、右旋回時及び左旋回時のいずれにおいても同じとなる。なお、旋回用アクチュエータ14が回転速度を増減速可能なモータの場合、旋回速度補正手段は、モータの回転速度制御に基づいて穀粒排出オーガ5の旋回速度を補正することができる。
【0021】
以上のような旋回速度算出手段、旋回速度補正値算出手段及び旋回速度補正手段によれば、穀粒排出オーガ5の撓みなどに起因する旋回速度変動を抑制し、穀粒排出オーガ5を略一定速で旋回させることができるので、穀粒排出オーガ5の旋回操作及び停止操作が容易になるだけでなく、穀粒排出位置を精度良く微調整することが可能になる。
【0022】
微調整旋回範囲設定手段は、穀粒排出オーガ5の任意の旋回範囲を微調整旋回範囲として設定する。微調整旋回範囲とは、その他の旋回範囲で穀粒排出オーガ5を旋回させるときよりも低速な微調整用旋回速度で穀粒排出オーガ5を旋回させる旋回範囲を意味する。
【0023】
本実施形態の微調整旋回範囲設定手段は、穀粒排出オーガ5の任意の旋回範囲を微調整旋回範囲として設定する方法として3つの設定パターンを備えており、いずれかのパターンを任意に選択できる。
【0024】
第1設定パターンでは、図8に示すように、穀粒排出オーガ5を穀粒排出動作させる操作(穀粒排出スイッチ21の入り操作)が行われた旋回位置を基準旋回位置Xとし、該基準旋回位置Xを含む旋回範囲を微調整旋回範囲として設定する。例えば、基準旋回位置Xを中心とし、その右旋回方向及び左旋回方向の所定角度θ1の範囲を微調整旋回範囲として設定する(具体的な処理手順は図13のフローチャート参照)。
【0025】
第2設定パターンでは、排出位置選択スイッチ19で選択された穀粒排出位置(A、B、Cのいずれか)を基準旋回位置Yとし、該基準旋回位置Yを含む旋回範囲を微調整旋回範囲として設定する。例えば、図8に示すように、基準旋回位置Yを中心とし、その右旋回方向及び左旋回方向の所定角度θ1の範囲を微調整旋回範囲として設定する(具体的な処理手順の図示は省略)。
【0026】
第3設定パターンでは、穀粒排出オーガ5の旋回中における設定スイッチ35の操作に応じて微調整旋回範囲を設定する(具体的な処理手順は図14のフローチャート参照)。例えば、微調整旋回範囲設定モードによる穀粒排出オーガ5の右旋回中に、設定スイッチ35のON操作を判断したら、そのときの旋回位置を選択位置1として記憶し、その後、設定スイッチ35のOFF操作を判断したら、そのときの旋回位置を選択位置2として記憶し、選択位置1と選択位置2との間を微調整旋回範囲として設定する。
【0027】
微調整旋回制御手段は、微調整旋回範囲内で穀粒排出オーガ5を旋回させるとき、微調整旋回範囲外で穀粒排出オーガ5を旋回させるときの旋回速度よりも低速な微調整用旋回速度で穀粒排出オーガ5を旋回させる。また、本実施形態の微調整旋回制御手段は、微調整旋回範囲内では、穀粒排出オーガ5を一定速で旋回可能な旋回速度補正値(旋回速度補正値算出手段の算出値)を用いて旋回用アクチュエータ14を制御する一方、微調整旋回範囲外では、旋回速度補正値を用いることなく旋回用アクチュエータ14を制御する。これにより、微調整旋回範囲内では、旋回速度の変動によって穀粒排出位置の微調整操作が阻害されることを防止できる一方、微調整旋回範囲外では、速度補正処理を省略して迅速な旋回が可能になる。
【0028】
つぎに、上記のような機能構成を実現する制御部40の具体的な処理手順について、図9図14を参照して説明する。なお、図9図12に示す旋回速度計測制御は、前述した旋回速度算出手段及び旋回速度補正値算出手段を実現し、図13に示す旋回範囲設定制御1は、前述した微調整旋回範囲設定手段(第1設定パターン)、微調整旋回制御手段及び旋回速度補正手段を実現し、図14に示す旋回範囲設定制御2は、前述した微調整旋回範囲設定手段(第3設定パターン)を実現する。
【0029】
図9図12に示す旋回速度計測制御は、コンバイン1の出荷前、又は出荷後に左右旋回速度に差が生じた際に平地で実行される。その際、穀粒排出オーガ5は格納位置に格納されているものとする。
【0030】
図9図12に示すように、制御部40は、旋回速度計測制御において、まず、旋回速度計測制御の開始条件が成立したか否かを判断する(S101~S104)。本実施形態の開始条件には、走行停止状態であること(S101)、非作業状態(刈取・脱穀クラッチが切り状態)であること(S102)、計測モードがON状態(計測モードスイッチ34のON操作あり)であること(S103)、旋回自動スイッチ23がON操作されたこと(S104)が含まれており、制御部40は、これらの判断結果がすべてYESの場合は次のステップS105に進み、それ以外の場合は上位ルーチンに復帰する。
【0031】
制御部40は、ステップS105において、穀粒排出オーガ5の移動開始を報知(例えば、報知手段45のブザー音)した後、穀粒排出オーガ5を所定高さ(上限高さ)まで上昇させ(S106)、穀粒排出オーガ5の右旋回を開始する(S107)。制御部40は、穀粒排出オーガ5の右旋回中、旋回停止操作を判断しつつ(S108)、穀粒排出オーガ5が旋回位置Aに到達したか否かを判断する(S109)。制御部40は、穀粒排出オーガ5が旋回位置Aに到達する前に、旋回停止操作ありと判断した場合は、旋回速度計測制御の中止操作であると判断し、穀粒排出オーガ5の旋回を停止した後(S110)、上位ルーチンに復帰する。
【0032】
一方、制御部40は、穀粒排出オーガ5が旋回位置Aに到達したと判断した場合、穀粒排出オーガ5の右旋回を停止して、穀粒排出オーガ5の下降を開始した後(S111)、穀粒排出オーガ5が所定高さ(水平高さ)まで下降したか否かを判断し(S112)、該判断結果がYESになったら、穀粒排出オーガ5の下降を停止した後、右旋回速度の計測処理、及び計測データの保存処理を開始するとともに(S113)、穀粒排出オーガ5の右旋回を開始する(S114)。
【0033】
制御部40は、穀粒排出オーガ5の右旋回中、旋回停止操作を判断しつつ(S115)、穀粒排出オーガ5が旋回位置Cに到達したか否かを判断する(S116)。制御部40は、穀粒排出オーガ5が旋回位置Cに到達する前に、旋回停止操作ありと判断した場合は、旋回速度計測制御の中止操作であると判断し、穀粒排出オーガ5の旋回を停止した後(S117)、上位ルーチンに復帰する。
【0034】
一方、制御部40は、穀粒排出オーガ5が旋回位置Cに到達したと判断した場合、穀粒排出オーガ5の右旋回を停止して、右旋回の速度計測を終了する(S117)。つぎに、制御部40は、穀粒排出オーガ5の移動開始を再び報知した後(S118)、左旋回速度の計測処理、及び計測データの保存処理を開始するとともに(S119)、穀粒排出オーガ5の左旋回を開始する(S120)。
【0035】
制御部40は、穀粒排出オーガ5の左旋回中、旋回停止操作を判断しつつ(S121)、穀粒排出オーガ5が旋回位置Aに到達したか否かを判断する(S122)。制御部40は、穀粒排出オーガ5が旋回位置Aに到達する前に、旋回停止操作ありと判断した場合は、旋回速度計測制御の中止操作であると判断し、穀粒排出オーガ5の旋回を停止した後(S123)、上位ルーチンに復帰する。
【0036】
一方、制御部40は、穀粒排出オーガ5が旋回位置Aに到達したと判断した場合、穀粒排出オーガ5の左旋回を停止して、左旋回の速度計測を終了する(S124)。つぎに、制御部40は、穀粒排出オーガ5の上昇を開始した後(S125)、穀粒排出オーガ5が所定高さ(上限高さ)まで上昇したか否かを判断し(S126)、該判断結果がYESになったら、穀粒排出オーガ5の左旋回を開始する(S127)。制御部40は、穀粒排出オーガ5の左旋回中、旋回停止操作を判断しつつ(S128)、穀粒排出オーガ5が格納位置Dに到達したか否かを判断する(S129)。制御部40は、穀粒排出オーガ5が格納位置Dに到達する前に、旋回停止操作ありと判断した場合は、旋回速度計測制御の中止操作であると判断し、穀粒排出オーガ5の旋回を停止した後(S130)、上位ルーチンに復帰する。
【0037】
一方、制御部40は、穀粒排出オーガ5が格納位置Dに到達したと判断した場合、穀粒排出オーガ5の左旋回を停止して、穀粒排出オーガ5の下降を開始した後(S131)、穀粒排出オーガ5が所定高さ(格納高さ)まで下降したか否かを判断し(S132)、該判断結果がYESになったら、穀粒排出オーガ5の下降を停止した後(S133)、計測データに基づいて左旋回速度データ及び右旋回速度データの更新処理を実行した後(S134)、計測モードをOFF状態に切換えて旋回速度計測制御を終了する(S135)。
【0038】
計測データに基づく左旋回速度データ及び右旋回速度データの更新処理(S134)は、例えば、左旋回時の旋回速度計測データと基準旋回速度データ(一定速旋回速度データ)との差分に基づいて左旋回補正値を算出した後、旧左旋回速度データに左旋回補正値を加えて新左旋回速度データを作成し、これを旧左旋回速度データに上書きする。また、右旋回時の旋回速度計測データと基準旋回速度データ(一定速旋回速度データ)との差分に基づいて右旋回補正値を算出した後、旧右旋回速度データに右旋回補正値を加えて新右旋回速度データを作成し、これを旧右旋回速度データに上書きする。
【0039】
なお、本実施形態の制御部40は、微調整旋回範囲内では、低速旋回用の新右旋回速度データ及び新左旋回速度データを使用して旋回用アクチュエータ14を制御し、微調整旋回範囲外では、補正処理が行われない通常の右旋回速度データ及び左旋回速度データを使用して旋回用アクチュエータ14を制御するが、微調整旋回範囲外において、高速旋回用の新右旋回速度データ及び新左旋回速度データを使用して旋回用アクチュエータ14を制御してもよい。また、本実施形態の旋回速度計測制御では、右旋回時の旋回速度と、左旋回時の旋回速度を計測しているが、いずれか一方の旋回速度を計測し、該計測結果に基づいて他方の旋回速度を推定するようにしてもよい。
【0040】
図13に示すように、制御部40は、旋回範囲設定制御1において、まず、穀粒排出スイッチ21のON操作を判断し(S201)、この判断結果がNOの場合は、排出クラッチを切り状態に維持し(S202)、上位ルーチンに復帰する。一方、ステップS201の判断結果がYESの場合、制御部40は、排出クラッチを入り状態へ切換えるとともに(S203)、現在の旋回位置を基準にして左右方向に所定の旋回角度範囲を含む微調整旋回範囲を設定する(S204)。
【0041】
つぎに、制御部40は、右旋回スイッチ26及び左旋回スイッチ27のON操作を判断し(S205、S206)、いずれの操作もない場合は上位ルーチンに復帰する一方、右旋回スイッチ26がON操作されたと判断した場合は、通常の右旋回速度データ(補正処理なし)から低速旋回用の新右旋回速度データ(補正処理あり)に設定変更した上で穀粒排出オーガ5を右旋回させる(S207)。制御部40は、右旋回開始後、右旋回スイッチ26のON状態が継続中であるか否かの判断と(S208)、穀粒排出オーガ5の旋回位置が微調整旋回範囲内であるか否かの判断(S209)を繰り返し、穀粒排出オーガ5の旋回位置が微調整旋回範囲から外れたら、低速旋回用の新右旋回速度データ(補正処理あり)から通常の右旋回速度データ(補正処理なし)への設定変更を行う(S210)。
【0042】
一方、制御部40は、左旋回スイッチ27がON操作されたと判断した場合は、通常の左旋回速度データ(補正処理なし)から低速旋回用の新左旋回速度データ(補正処理あり)に設定変更した上で穀粒排出オーガ5を左旋回させる(S211)。制御部40は、左旋回開始後、左旋回スイッチ27のON状態が継続中であるか否かの判断と(S212)、穀粒排出オーガ5の旋回位置が微調整旋回範囲内であるか否かの判断(S213)を繰り返し、穀粒排出オーガ5の旋回位置が微調整旋回範囲から外れたら、低速旋回用の新左旋回速度データ(補正処理あり)から通常の左旋回速度データ(補正処理なし)への設定変更を行う(S214)。
【0043】
また、制御部40は、ステップS208又はステップS212において、右旋回スイッチ26又は左旋回スイッチ27のON状態継続が途絶えたと判断した場合は、穀粒排出オーガ5の旋回を停止させた後(S215)、右旋回スイッチ26のON操作(S216)及び左旋回スイッチ27のON操作(S217)を判断し、右旋回スイッチ26がON操作されたと判断した場合は、ステップS209に移行し、左旋回スイッチ27がON操作されたと判断した場合は、ステップS213に移行する。
【0044】
図14に示すように、制御部40は、旋回範囲設定制御2において、まず、設定スイッチ35の長押し操作を判断し(S301)、該判断結果がYESの場合は、微調整旋回範囲設定モードへの切換操作であると判断し、ステップS302に進む一方、判断結果がNOの場合は、上位ルーチンに復帰する。
【0045】
制御部40は、ステップS302に進むと、穀粒排出オーガ5の格納位置Dから旋回位置Cに向けた自動旋回を開始するとともに、設定スイッチ35のON操作を判断する(S303)。制御部40は、設定スイッチ35がON操作されたと判断したら、穀粒排出オーガ5の現在の旋回位置を選択位置1として設定保存した後(S304)、設定スイッチ35がOFF操作されたか否かの判断と(S305)、穀粒排出オーガ5が旋回位置Cに到達したか否かの判断(S306)を振り返す。
【0046】
制御部40は、穀粒排出オーガ5が旋回位置Cに到達する前に設定スイッチ35がOFF操作されたと判断したら、穀粒排出オーガ5の現在の旋回位置を選択位置2して設定保存した後(S307)、選択位置1と選択位置2との間の旋回範囲を微調整旋回範囲として保存する(S308)。一方、制御部40は、設定スイッチ35がOFF操作されることなく、穀粒排出オーガ5が旋回位置Cに到達した場合、旋回位置Cを選択位置2として設定保存した後(S309)、選択位置1と選択位置2との間の旋回範囲を微調整旋回範囲として保存する(S308)。
【0047】
叙述の如く構成された本実施形態によれば、機体に対して旋回可能に設けられた穀粒排出オーガ5と、穀粒排出オーガ5を旋回させる旋回用アクチュエータ14と、旋回用アクチュエータ14を制御する制御部40と、を備えるコンバイン1であって、制御部40は、穀粒排出オーガ5の任意の旋回範囲を微調整旋回範囲として設定する微調整旋回範囲設定手段と、微調整旋回範囲内で穀粒排出オーガ5を旋回させるとき、微調整旋回範囲外で穀粒排出オーガ5を旋回させるときの旋回速度よりも低速な微調整用旋回速度で穀粒排出オーガ5を旋回させる微調整旋回制御手段と、を備えるので、穀粒排出位置の微調整操作が容易になる。
【0048】
また、制御部40は、微調整旋回範囲内で穀粒排出オーガ5を一定速で旋回可能な旋回速度補正値を用いて旋回用アクチュエータ14を制御する旋回速度補正手段を備えるので、旋回速度の変動によって穀粒排出位置の微調整操作が阻害されることを防止できる。
【0049】
また、微調整旋回範囲設定手段(第3設定パターン)は、穀粒排出オーガ5の旋回中における設定スイッチ35の操作に応じて微調整旋回範囲を設定するので、自由度の高い微調整旋回範囲設定を行うことができる。
【0050】
また、微調整旋回範囲設定手段(第1設定パターン)は、穀粒排出オーガ5を穀粒排出動作させる穀粒排出スイッチ21が操作された旋回位置を基準旋回位置とし、該基準旋回位置を含む旋回範囲を微調整旋回範囲として設定するので、微調整旋回範囲を設定するための特別な操作を不要とできる。
【符号の説明】
【0051】
1 コンバイン
4 穀粒タンク
5 穀粒排出オーガ
10 縦搬送筒
11 横搬送筒
13 昇降用アクチュエータ
14 旋回用アクチュエータ
18 オーガリモコン
34 計測モードスイッチ
35 設定スイッチ
40 制御部
41 旋回位置検出手段
図1
図2
図3
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図14