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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022065160
(43)【公開日】2022-04-26
(54)【発明の名称】壁材の取付具
(51)【国際特許分類】
   E04F 13/08 20060101AFI20220419BHJP
【FI】
E04F13/08 101M
E04F13/08 101D
E04F13/08 101F
E04F13/08 101N
【審査請求】有
【請求項の数】1
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022025745
(22)【出願日】2022-02-22
(62)【分割の表示】P 2020091989の分割
【原出願日】2017-03-09
(71)【出願人】
【識別番号】000110860
【氏名又は名称】ニチハ株式会社
(72)【発明者】
【氏名】澤田 洋平
(57)【要約】
【課題】取付作業の容易化を実現しつつ、施工後の壁の外観上の品質を高めることができる壁材の取付具を提供する。
【解決手段】
取付具100は、少なくとも1つの脚部125Lと、脚部125Lの一端に形成された突出片121と、脚部125Lに形成された少なくとも1つの凸条127、227とを有する可動部材120を備える。取付具100は、少なくとも1つの案内部111Lと、案内部111Lと接続する基部115と、案内部111Lと対向するように基部115から案内部111Lの長手方向に対して略直交する方向へ突出した、少なくとも1つの押え部113Lとを有する固定部材110を備える。また固定部材110は可動部材120に接続可能である。


【選択図】図7

【特許請求の範囲】
【請求項1】
可動部材と、可動部材に接続可能な固定部材とを備えた壁材の取付具であり、
前記可動部材は、
少なくとも1つの脚部と、
前記脚部の一端に形成された突出片と、
前記脚部に形成された少なくとも1つの凸条とを有し、
前記固定部材は、
少なくとも1つの案内部と、
前記案内部と接続する基部と、
前記案内部と対向するように前記基部から前記案内部の長手方向に対して略直交する方向へ突出した、少なくとも1つの押え部とを有している壁材の固定具。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は壁材の取付具に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、構造体に壁材を取り付けるための取付具には、特許文献1~3に開示されたようなものがある。
【0003】
特許文献1に開示の取付具は、固定用金具と係合用金具とを備えている。固定用金具は、窓枠等の下側に配置され、本体固定部が構造体に固定されることにより、予め構造体側に取り付けられている。係合用金具は、係合部が壁材の端部に係合することにより、予め壁材側に取り付けられている。そして、この取付具は、固定用金具に係合用金具が係合することで、構造体側の固定用金具に対し、係合用金具が壁材と共に取り付けられるようになっている。
【0004】
特許文献2に開示の取付具は、取付金具本体と可動部材とを備えている。可動部材は、係合部によって、壁材の端部を係止可能である。また、可動部材は、固定雄ねじが取付金具本体の長穴内で移動する範囲で取付金具本体に対して移動可能である。この取付具は、可動部材の係合部によって壁材の端部を係止した状態で固定雄ねじが締め込まれることにより、取付金具本体と可動部材とが壁材側に取り付けられるようになっている。
【0005】
特許文献3に開示の取付具は、固定金具と係合金具とを備えている。固定金具は、窓枠等の下側に配置され、固定部が構造体に固定されることにより、予め構造体側に取り付けられている。係合金具は、壁材の端部を係止可能である。また、係合金具は、固定金具に浅く差し込まれた状態で、固定金具に対して移動可能に保持されている。そして、係合金具を押し下げることにより、係合金具が固定金具に深く差し込まれ、壁材の端部を係止するとともに、係合金具が固定金具に固定されるようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2007-217972号公報
【特許文献2】特開2010-121387号公報
【特許文献3】特開2010-7446号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、特許文献1に開示の取付具は、構造体側の固定用金具に対し、係合用金具を壁材と共に取り付ける際、壁材の裏面側に位置する係合用金具を固定用金具に係合させることが難しい。この結果、窓枠等の下端と壁材の端部との隙間を小さくすることが難しくなる傾向があり、結果的に施工後の壁の外観を損うおそれがある。
【0008】
また、特許文献2に開示の取付具では、可動部材を固定用雄ねじにより固定する必要があり、施工が面倒となる傾向がある。
【0009】
特許文献3に開示の取付具では、窓枠等の下端と係合金具との間に、係合金具を押し下げるための隙間を確保する必要がある。このため、この隙間を小さくした場合には、作業することが困難となり、施工が面倒となる傾向がある。
【0010】
つまり、上記従来の取付具では、取付作業の容易化を実現しつつ、窓枠等の下端と壁材の端部との隙間を小さくすることが難しい。
【0011】
本発明は、上記従来の実情に鑑みてなされたものであって、取付作業の容易化を実現しつつ、窓枠等の下端と壁材の端部との隙間を小さくすることができ、施工後の壁の外観上の品質を高めることができる壁材の取付具、及び壁構造を提供することを解決すべき課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の第1の態様の壁材の取付具は、以下のものである。
【0013】
可動部材と、可動部材に接続可能な固定部材とを備えた壁材の取付具であり、
前記可動部材は、
少なくとも1つの脚部と、
前記脚部の一端に形成された突出片と、
前記脚部に形成された少なくとも1つの凸条とを有し、
前記固定部材は、
少なくとも1つの案内部と、
前記案内部と接続する基部と、
前記案内部と対向するように前記基部から前記案内部の長手方向に対して略直交する方向へ突出した、少なくとも1つの押え部とを有している壁材の固定具。
【発明の効果】
【0014】
本発明の壁材の取付具は、係止片が壁材の端部を係止する前の位置に可動部材がある状態で、規制部及び被規制部によって、固定部材に対する可動部材の移動範囲を一定に保つことができる。その結果、取付作業の一層の容易化と、取り付けられた壁の外観上の品質の向上とを実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1図1は、実施の形態1の壁構造の斜視図である。
図2図2は、実施の形態1の外壁板の斜視図である。
図3図3は、実施の形態1に係り、外壁板同士の組み付け構成を示す部分斜視図である。
図4図4は、実施の形態1に係り、図1のIV-IV断面を示す部分断面図であって、上下に並ぶ2枚の外壁板の上下合決り部を示す図である。
図5図5は、実施の形態1に係り、窓枠の下方に配置される外壁板の構造体に対する取り付け状態を示す部分斜視図である。
図6図6は、図5のVI-VI断面を示す部分断面図である。
図7図7は、実施の形態1の取付具を示す斜視図である。
図8図8は、実施の形態1の取付具を示す斜視図である。
図9図9は、実施の形態1に係り、固定部材と可動部材とを分離して示す斜視図である。
図10図10は、図7のX-X断面を示す断面図である。
図11図11は、図10のXI-XI断面を示す断面図である。
図12図12は、図6と同様の部分断面図であって、係止片が外壁板の特定端部を係止する前の状態を示す図である。
図13図13は、図6と同様の部分断面図であって、係止片が下向きに移動して外壁板の特定端部を係止し始めた状態を示す図である。
図14図14は、図6のXIV-XIV断面を示す断面図である。
図15図15は、実施の形態2の取付具を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明を具体化した実施の形態1、2を図面を参照しつつ説明する。なお、図1において、垂直上方向を上と表示し、垂直下方向を下と表示する。また、図1の屋外から屋内に向う方向において水平左方向を左と表示し、水平右方向を右と表示する。そして、図2以降の各図に示す各方向は、図1に対応させて表示する。
【0017】
(実施の形態1)
図1に示すように、実施の形態1の壁構造は、壁構造の具体的態様の一例である。この壁構造は、住宅、施設、倉庫等の建物を構成する構造体8に対し、図2及び図3等に示す複数の外壁板2を取り付けたものである。外壁板2は、壁材の一例である。外壁板2は、それ自体が高い強度や剛性を有して建物の外壁を構成する板材である。なお、壁材は外壁板に限定されず、例えば、建物を外装する化粧板、屋内用構造パネル、内装板等であってもよい。
【0018】
図1に示すように、構造体8は、例えば、木造軸組構法によって建築されるものである。構造体8は、複数の構造部材によって構成されている。構造部材には、左右方向に所定の間隔を有して並ぶ複数の柱材や柱材間に配置される間柱等の柱部材9が含まれる。柱部材9の屋外方向を向く外面には、胴縁と呼ばれる支持部材7が図示しない止めネジや釘等によって固定されている。支持部材7も構造部材に含まれる。また、支持部材7と柱部材9との間には、防水シート6が敷設されている。なお、構造体8は、本実施の形態の構成に限定されず、木造枠組壁構法等によって建築されてもよい。また、壁構造を構成する構造体は、例えば、鉄骨造、鉄筋コンクリート造、レンガ造等の躯体であってもよい。
【0019】
図2に示すように、外壁板2は、四辺形状、より具体的には、左右方向に長い略矩形状の板材である。本実施の形態では、外壁板2は、セメントを含む窯業系材料からなる。なお、外壁板2の材質や形状は上記には限定されない。例えば、外壁板2の材質は、金属系材、木質系材、樹脂系材等を適宜選択できる。また、外壁板2の形状は、四辺形状で上下方向に長い略矩形形状の板材等を適宜選択できる。
【0020】
外壁板2の表面2Fは、例えばレンガ柄等のデザインが施された外装面となっている。外壁板2の左端部には、表側左右接合部21が形成されている。外壁板2の右端部には、裏側左右接合部22が形成されている。外壁板2の下端部には、表側上下接合部23が形成されている。外壁板2の上端部には、裏側上下接合部24が形成されている。なお、図2では、外壁板2の大きさに対して、表側左右接合部21、裏側左右接合部22、表側上下接合部23及び裏側上下接合部24の大きさが誇張して図示されている。
【0021】
図2及び図3に示すように、表側左右接合部21は、外壁板2の裏面2Bから表面2Fに向かって段状に形成され、垂直方向、すなわち、外壁板2の左端部に沿って延びている。
【0022】
裏側左右接合部22は、外壁板2の表面2Fから裏面2Bに向かって段状に形成され、垂直方向、すなわち、外壁板2の右端部に沿って延びている。裏側左右接合部22における屋外方向を向く平坦面には、コーキング22Sが設けられている。コーキング22Sは、裏側左右接合部22に沿って直線状に配設されている。なお、コーキングは必須ではなく、コーキング22Sを省略することもできる。
【0023】
表側上下接合部23は、外壁板2の裏面2Bから表面2Fに向かって段状に形成され、左右方向、すなわち、外壁板2の下端部に沿って延びている。表側上下接合部23には、上向きに略テーパ状に凹む係合凹部23Aが形成されている。
【0024】
裏側上下接合部24は、外壁板2の表面2Fから裏面2Bに向かって段状に形成され、左右方向、すなわち、外壁板2の上端部に沿って延びている。裏側上下接合部24における屋外方向を向く平坦面には、コーキング24Sが設けられている。コーキング24Sは、裏側上下接合部24に沿って直線状に配設されている。なお、コーキングは必須ではなく、コーキング24Sを省略することもできる。裏側上下接合部24には、コーキング24Sよりも上方において上向きに略テーパ状に突出する係合凸部24Aが形成されている。
【0025】
図4に示すように、下側の外壁板2の裏側上下接合部24と、上側の外壁板2の表側上下接合部23とが重なり合うことによって、上下方向に隣接する外壁板2同士の間に、左右方向に延びる上下合決り部が形成される。図示は省略するが、右側の外壁板2の表側左右接合部21と、左側の外壁板2の裏側左右接合部22とが重なり合うことによって、左右方向に隣接する外壁板2同士の間に、左右合決り部が形成される。すなわち、外壁板2は、表側左右接合部21、裏側左右接合部22、表側上下接合部23及び裏側上下接合部24を備える、いわゆる「四方合決り構造」である板材である。
【0026】
このような構成である各外壁板2は、以下のようにして、図1に示す張り始め用取付具60、図1及び図4に示す合決り部用取付具70、及び図5図11に示す実施の形態1の取付具100を用いて構造体8に取り付けられる。
【0027】
図1に示すように、構造体8の外面の下端部には、水切り部材8G及び張り始め用取付具60が設けられている。水切り部材8G及び張り始め用取付具60は周知の構成であるので図示は簡略する。張り始め用取付具60は、柱部材9の下端部に固定された平板部分と、その平板部分の下端から屋外方向に屈曲する屈曲部分とを含んでいる。張り始め用取付具60は、その屈曲部分が張り始めの外壁板2の係合凹部23Aを係止することにより、水切り部材8Gよりも上方の位置で、張り始めの外壁板2の下端部を支持するようになっている。
【0028】
図1及び図4に示すように、構造体8の外面には、複数の合決り部用取付具70が上下方向及び左右方向に互いに離間する状態で設けられている。図4に示すように、合決り部用取付具70は、上下方向に隣接する外壁板2の上下合決り部の近傍の位置で、固定部75を支持部材7に当接させ、締結具としてのネジ70Bにより構造体8に固定されるようになっている。
【0029】
当接部77は、固定部75から離間するように屋外方向に膨出している。支承部71は、当接部77における上下方向の略中間部から屋外方向に突出し、かつ左右方向に延びている。上係止部73は、支承部71の先端部から上向きに突出している。下係止部74は、支承部71の先端部から下向きに突出している。
【0030】
下係止部74が下側の外壁板の係合凸部24Aを係止する。上係止部73が上側の外壁板の係合凹部23Aを係止する。支承部71が上側の外壁板2の下端部を支承する。そして、当接部77が上下の外壁板2の裏面2Bに当接し、構造体8と外壁板2の裏面2Bとの間に通気空間を確保する。これにより、合決り部用取付具70は、上下方向に隣接する外壁板2の上下合決り部を支持するようになっている。
【0031】
このような作業を他の外壁板2についても実施することにより、各外壁板2は、上下方向及び左右方向に隣接する状態で構造体8に支持され、構造体8の外面を覆う。
【0032】
図1に示すように、外壁板2は、構造体8における窓枠8W等の開口部の近傍に取り付けられる場合がある。この場合において、窓枠8Wとの干渉を避けるために、外壁板2における裏側上下接合部24を含む一部を切断した上で、その外壁板2を構造体8に取り付け、その外壁板2の切断されてなる端部を窓枠8Wに下方から隣接させる。
【0033】
また、図示は省略するが、外壁板2は、構造体8におけるベランダや軒下等の近傍に取り付けられる場合、ベランダ等との干渉を避けるために、外壁板2における裏側上下接合部24を含む一部を切断した上で、その外壁板2が構造体8に取り付けられ、その外壁板2の切断されてなる端部をベランダ等に下方から隣接させる。
【0034】
ここで、これらの外壁板2の切断されてなる端部を特定端部2Pとする。図5図11に示す実施の形態1の取付具100は、以下に説明するように、外壁板2の特定端部2Pを支持するものである。なお、以下の説明では、特定端部2Pを窓枠8Wに下方から隣接させる状態で取付具100によって支持する構成について説明し、特定端部2Pをベランダや軒下等に隣接させる状態で取付具100によって支持する構成については、同様であるので説明を省略する。また、特定端部2Pは、窓枠8W、ベランダ、軒下等の形状に応じて、傾斜する場合もあり得る。
【0035】
図5及び図6に示す例では、取付具100は、窓枠8Wの下辺を構成するアルミニウム製のサッシ80に下方から隣接する状態で、ベース部材150を介して構造体8に固定されて、外壁板2の特定端部2Pを支持している。なお、取付具100の形状等の説明に関し、上下方向、左右方向及び屋内外方向は、取付具100が構造体8に取り付けられた状態を基準とする。図7に示すように、本実施の形態では、第1方向は下向きの方向である。第1方向とは逆向きの方向は上向きの方向である。第1方向と交差する第2方向は屋外方向である。
【0036】
ベース部材150は、左右方向に長く延びる型材であり、設置箇所に応じた長さに適宜切断されて使用される。ベース部材150は、基板部155、支持板部154、連結部151及び頂面部153を有している。
【0037】
基板部155は、平板状に延びている。基板部155には、締結具としての釘やネジ等を挿通するための固定孔155Hが複数設けられている。各固定孔155Hの数や間隔は、構造体8の構成等に応じて適宜設定される。
【0038】
ベース部材150の基板部155を除く部分、すなわち、連結部151、支持板部154及び頂面部153は、略C字断面形状部分を構成している。より詳しくは、連結部151は、基板部155の上端縁に接続し、屋外方向に屈曲して構造体8から離間するように延び、かつ左右方向に延びている。連結部151には、上下方向に貫通する貫通孔151Hが複数設けられている。支持板部154は、下端縁が連結部151の先端縁に接続し、基板部155と略平行に、平板状に延びている。頂面部153は、支持板部154の上端縁に接続し、屋内方向に向かって構造体8に接近するように延び、かつ左右方向に延びている。
【0039】
ベース部材150は、以下のようにして、構造体8に固定されている。すなわち、サッシ80の下向き表面である底壁部81に、ベース部材150の頂面部153を下から当接させるか、又は双方の間に僅かな隙間を確保する。そして、図5に示すように、基板部155と構造体8との間に、防水シート6及び防水テープ6Tを介在させた状態で、基板部155の固定孔155Hに締結具としてのネジ150Bをねじ込む作業を複数個所において行うことにより、基板部155が構造体8に強固に固定される。
【0040】
基板部155が構造体8に固定された状態では、支持板部154は、構造体8から屋外方向に離間する。そして、連結部151と支持板部154と頂面部153とに囲まれた空間は、貫通孔151Hによって外部との通気が可能となっている。
【0041】
図7図11に示すように、取付具100は、固定部材110と可動部材120とを備えている。本実施の形態では、固定部材110と可動部材120とはそれぞれ、1枚の金属板が打ち抜き加工、プレス加工及び折り曲げ加工等されることによって製造されている。
【0042】
固定部材110は、上下方向に長い略矩形状の基部115を含んでいる。基部115の屋内方向を向く面は、上下方向及び左右方向に延びる基準面115Sとされている。基部115には、固定孔115Hが貫設されている。基部115は、基準面115Sをベース部材150の支持板部154と接触させた状態で、ネジ100Bや釘等の締結具を固定孔115Hを介してベース部材150の支持板部154にねじ込むことにより、構造体8に固定可能である。なお、基部115は、柱部材9等に直接固定されることも可能である。
【0043】
固定部材110は、案内部111L、111R及び押え部113L、113Rを有している。
【0044】
左方の案内部111Lは、基部115の左端縁に接続する略C字断面形状部分である。右方の案内部111Rは、基部115の右端縁に接続する略C字断面形状部分である。つまり、案内部111L、111Rは、基部115を左右方向において挟む位置に一対設けられ、基部115から延びる板状片である。案内部111L、111Rのそれぞれの基部115に隣接する部位には、略矩形状の切り欠き部111Cが形成されている。
【0045】
左方の押え部113Lは、切り欠き部111Cに対応する案内部111Lの部分が切り起こされて形成されたものであり、左方の案内部111Lの切り欠き部111C内に位置するように、基部115の左端縁から延びる略L字断面形状部分である。右方の押え部113Rは、同様に案内部111Rの部分が切り起こされて形成されたものであり、右方の案内部111Rの切り欠き部111C内に位置するように、基部115の右端縁から延びる略L字断面形状部分である。つまり、押え部113L、113Rは、基部115を左右方向において挟む位置に一対設けられ、基部115から案内部111L、111Rと対向しつつ延びる小片である。
【0046】
案内部111L、111Rのそれぞれの屋内方向を向く面は、案内面111Aである。案内面111Aは、基準面115Sから屋外方向に離間する位置で基準面115Sと平行に延びている。
【0047】
押え部113L、113Rのそれぞれの屋外方向を向く面は、押え面113Aである。押え面113Aは、基準面115Sから屋外方向に離間する位置で、かつ案内面111Aから屋内方向に離間する位置で基準面115Sと平行に延びている。
【0048】
案内部111L、111Rはそれぞれ、線状突起部116を有している。線状突起部116は、案内部111L、111Rの屋外方向を向く面から屋外方向に膨出し、かつ上下方向に延びている。線状突起部116の下端は、切り欠き部111Cの上端に達している。線状突起部116の上端は、案内面111Aの上端よりも下方に位置している。
【0049】
線状突起部116の屋外方向を向く頂面は、支持面116Aとされている。支持面116Aは、基準面115Sと平行に上下方向に延びている。
【0050】
線状突起部116の支持面116Aとは反対を向く裏面には、上下方向に延び、かつ屋外方向に凹む溝部である凹部が形成されており、その凹部が規制部117とされている。線状突起部116は、このように支持面116A及び規制部117としての役割を有する他に、案内部111L、111Rを補強するリブとしての役割も有している。
【0051】
次に、可動部材120について説明する。可動部材120は、一対の脚部125L、125Rを含んでいる。脚部125L、125Rは、可動本体の一例である。脚部125L、125Rはそれぞれ、上下方向に長い略矩形板状片であり、左右方向において互いに離間している。
【0052】
脚部125L、125Rはそれぞれ、第1面125Fと第2面125Bとを含んでいる。第1面125Fは、脚部125L、125Rにおける屋外方向を向く面である。第2面125Bは、脚部125L、125Rにおける屋内方向を向く面である。脚部125L、125Rのそれぞれの略中間部には、被規制部127が凸設されている。被規制部127は、第1面125Fから屋外方向に膨出する半球状の凸部である。
【0053】
可動部材120は、突出片121及び係止片123を有している。突出片121及び係止片123は、左方の脚部125Lと右方の脚部125Rとに跨って設けられている。
【0054】
より詳しくは、突出片121は、屋内外方向及び左右方向に延びる略矩形板状片である。突出片121の後端縁のうちの左部分は、左方の脚部125Lの上端に接続している。突出片121の後端縁のうちの右部分は、右方の脚部125Rの上端に接続している。つまり、突出片121は、一対の脚部125L、125Rの上端から屋外方向に突出している。
【0055】
係止片123は、突出片121の先端縁から屈曲して下向きに突出し、かつ左右方向に延びている。係止部123は、下方かつ左方の角部と、下方かつ右方の角部とが切り取られて、下向きに先細るテーパ形状とされている。なお、係止部123の下端縁を下に膨らむ円弧形状とすることもできる。
【0056】
可動部材120の脚部125L、125Rは、固定部材110の案内部111L、111Rによって上下方向に移動可能に案内されるとともに、固定部材110の押え部113L、113Rによって案内部111L、111Rに向けて押圧されている。
【0057】
より詳しくは、図10に示すように、左方の脚部125Lは、左方の案内部111Lに配置されている。そして、左方の案内部111Lの案内面111Aは、左方の脚部125Lの第1面125Fと面接触している。左方の押え部113の押え面113Aは、左方の脚部125Lの第2面125Bと面接触して、左方の脚部125Lを左方の案内部111Lの案内面111Aに向けて押圧している。左方の脚部125Lの被規制部127は、左方の案内部111Lの規制部117の内側に位置している。
【0058】
図10及び図11に示すように、右方の脚部125Rは、右方の案内部111Rに配置されている。そして、右方の案内部111Rの案内面111Aは、右方の脚部125Rの第1面125Fと面接触している。右方の押え部113の押え面113Aは、右方の脚部125Rの第2面125Bと面接触して、右方の脚部125Rを右方の案内部111Lの案内面111Aに向けて押圧している。右方の脚部125Rの被規制部127は、右方の案内部111Rの規制部117の内側に位置している。
【0059】
こうして、可動部材120は、一対の脚部125L、125Rが固定部材110の案内面111A及び押え面113Aによって挟持され、それらの面接触による摩擦係合によって、上下方向に移動可能に固定部材110に支持されている。
【0060】
脚部125L、125Rが案内部111L、111Rに案内されて上下方向に移動する際、可動部材120の被規制部127が固定部材110の規制部117内を摺動する。これにより、可動部材120の固定部材110に対する傾斜や横ずれが抑制される。
【0061】
図11に可動部材120を実線で示すように、係止片123は、脚部125L、125Rが下向きに移動することにより、固定部材110に最も接近する接近位置に変位する。図5図7に示す係止片123の位置も、接近位置である。
【0062】
その一方、図11に可動部材120を二点鎖線で示すように、係止片123は、脚部125L、125Rが上向きに移動することにより、固定部材110から最も離間する離間位置に変位する。図8及び図12に示す係止片123の位置も、離間位置である。
【0063】
図13に示す係止片123の位置は、接近位置と離間位置との間の位置である。図11に示すように、係止片123が接近位置と離間位置との間で変位する際の可動部材120の移動範囲をR1とする。
【0064】
図11に可動部材120を実線で示すように、可動部材120の移動範囲R1の下限は、下向きに移動する可動部材120の突出片121の根元部に、案内部111L、111Rの上端が当接して規制されることにより定められている。
【0065】
図11に可動部材120を二点鎖線で示すように、可動部材120の移動範囲R1の上限は、上向きに移動する可動部材120の被規制部127に、規制部117の上端部が当接して規制されることにより定められている。
【0066】
なお、係止片123が接近位置と離間位置との間にある場合、案内面111Aと第1面125Fとの面接触、及び押え面113Aと第2面125Bとの面接触による摩擦係合によって、係止片123がその位置に保持されるようになっている。
【0067】
図7及び図11に示すように、脚部125L、125Rのそれぞれの第1面125Fの下端部は、目印部129とされている。目印部129は、係止片123が接近位置にある状態で、固定部材110の案内部111L、111Rから露出する。その一方、図8に示すように、目印部129は、係止片123が離間位置にある状態で、固定部材110の案内部111L、111Rに覆われ、露出しないようになっている。
【0068】
図7図11に示すように、突出片121には、第1工具係合部121Uが設けられている。第1工具係合部121Uは、突出片121の上面である。
【0069】
係止片123の上下方向の中間部には、第2工具係合部123Hが設けられている。第2工具係合部123Hは、左右方向に長い矩形状の穴であり、屋内外方向において係止片123を貫通している。可動部材120を屋内外方向から見た場合、すなわち、図10の矢印Z方向から見た場合、第2工具係合部123Hは、左方の脚部125Lと右方の脚部125Rとの間で、係止片123に設けられている。
【0070】
図13に示すように、第1工具係合部121Uは、例えばマイナスドライバー等の先端が平たい工具T1が当接することにより、下向きの力F1を受けることが可能となっている。
【0071】
図12に示すように、第2工具係合部123Hは、工具T1が挿入されることにより、第1工具係合部121U、すなわち突出片121の上面よりも下方にずれた位置で、下向きの力F1を受けることが可能となっている。
【0072】
<作用効果>
次に、このような構成である取付具100を用いて、外壁板2の特定端部2Pを支持する施工方法について説明する。
【0073】
初めに、外壁板2を上述したサッシ80の底壁部81に適合する寸法に切断する。これによって、外壁板2における裏側上下接合部24を含む一部が切り落とされ、特定端部2Pが形成される。
【0074】
そして、図14に示すように、外壁板2の特定端部2Pに、溝加工によって溝部2Sを形成する。より詳しくは、円形の回転刃をモータで回転させる電気丸のこ等を使用し、回転刃によって、外壁板2の特定端部2Pに溝部2Sを切削加工する。これにより、溝部2Sは、底面2Tが円弧状に凹んで、中央部分が深く、左端及び右端に向かうにつれて浅くなる。図6に示すように、溝部2Sの対向する内側面同士の間隔は、係止部123の板厚よりも僅かに大きく設定されている。
【0075】
次に、図12に示すように、取付具100をベース部材150に取り付ける。この時、可動部材120は、係止片123が固定部材110から最も離間する離間位置にある状態とされている。この状態は、規制部117と被規制部127とが当接する位置であるため、作業者はこの状態を容易に確認できる。仮に作業中に係止片123の位置が下方にずれたとしても、目印部129が下方に突出するため、目視によっても、係止片123が適切な位置にあるか否かを確認できるようになっている。取付具100は、外壁板2の特定端部2Pに形成された溝部2Sに対応する位置で、固定部材110の基部115をベース部材150の支持板部154に接触させた状態に位置決めされる。この際、可動部材120の第1工具係合部121U、すなわち突出片121の上面は、サッシ80の底壁部81に下から当接するか、又は双方の間に僅かな隙間がある状態とされる。そして、ネジ100Bや釘等の締結具を固定孔115Hを介して支持板部154にねじ込むことにより、取付具100は構造体8に固定される。
【0076】
次に、図1に示す張り始め用取付具60、又は図4に示す合決り部用取付具70によって、外壁板2の下端部に形成された表側上下接合部23を支持させた後、図12に示すように、外壁板2の裏面2Bを取付具100の固体部材110の支持面116Aに当接させる。
【0077】
この状態では、可動部材120の係止部123は、特定端部2Pの溝部2Sに上から対向する位置にある。そして、係止部123の下端は、特定端部2Pから1~3mm程度上方に離間している。係止部123の下端が特定端部2Pから離間する距離は一例であり、外壁板2の特定端部2Pの裏面2Bを支持面116Aに当接可能であれば、上記の値より小さくもよく、略0mmに近くてもよい。
【0078】
次に、マイナスドライバー等の工具T1を矩形状の穴である第2工具係合部123Hに挿入し、その矩形穴の下端縁を下向きに押圧する。これにより、第2工具係合部123Hが下向きの力F1を受けるので、可動部材120の係止部123が下向きに移動する。第2工具係合部123Hは、係止片123の中央に設けられ、その両側に一対の脚部125L、125Rが配置されている。このため、下向きの力F1は、脚部125L、125Rに均等に伝達されるので、可動部材120をスムーズに移動させることができる。その結果、第2工具係合部123Hが外壁板2の特定端部2Pから露出する範囲で、係止部123の下端側が外壁板2の特定端部2Pの溝部2Sに進入する。
【0079】
次に、図13に示すように、工具T1を第1工具係合部121U、すなわち、突出片121の上面に当接させ、その上面を下向きに押圧する。これにより、第1工具係合部121Uが下向きの力F1を受けるので、可動部材120の係止部123がさらに下向きに移動する。その結果、図6に示すように、突出片121が外壁板2の特定端部2Pに当接し、係止部123の全体が外壁板2の特定端部2Pの溝部2Sに進入した状態となる。
【0080】
図14に示すように、この状態では、テーパ形状の係止部123は、溝部2Sの円弧状に凹む底面2Tに沿う。また、図6に示すように、係止部123は、溝部2Sの対向する内側面同士によって挟まれる。
【0081】
こうして、取付具100は、外壁板2の特定端部2Pを窓枠8Wに下方から隣接させた状態で良好に支持することができる。
【0082】
その後、サッシ80の底壁部81と、外壁板2の特定端部2Pと隙間に、発泡樹脂等からなるバックアップ材89が挿入され、さらに、シーリング材88が充填される。以上、述べたように、取付具100を用いることにより、外壁板2の特定端部2Pと窓枠8Wとの距離を小さくすることができる。これによって、施工後の壁の外観上の品質が向上する。なお、通常、サッシ80の先端側には、底壁部81よりも下方に垂れ下がる隠蔽部82が形成されている。この底壁部81から隠蔽部82の下端までの長さL82をサッシ80の底壁部81と、外壁板2の特定端部2Pとの隙間S1よりも長くなるように設定した場合、隠蔽部82により、シーリング材88が隠蔽されるので、サッシ80及び外壁板2の特定端部2Pの周辺の美観が一層向上する。
【0083】
以上のように、この取付具100では、第1工具係合部121U及び第2工具係合部123Hを有することにより、係止片123を複数段階で移動させる。このため、図12に示すように、係止片123が外壁板2の特定端部2Pを係止する前の位置、すなわち係止片123が固定部材110から最も離間する離間位置に可動部材120がある状態で、サッシ80の底壁部81と、可動部材120の突出片121との間に工具T1等を差し込むための隙間を確保しなくてもよい。
【0084】
したがって、実施の態様1の外壁板2の取付具100及び壁構造では、取付作業の容易化を実現しつつ、窓枠8W等の下端、例えばサッシ80の底壁部81と、外壁板2の特定端部2Pとの隙間S1を小さくすることができる。よって、施工後の壁の外観上の品質を高めることができる。
【0085】
また、この取付具100では、図13等に示すように、第1工具係合部121Uは、突出片121の上面からなる。このため、突出片121に第1工具係合部121Uを容易に形成できる。
【0086】
さらに、この取付具100では、図12等に示すように、第2工具係合部123Hは、屋内外方向において係止片123を貫通する穴である。このため、係止片123に第2工具係合部123Hを嵩張らないように容易に形成できる。また、マイナスドライバー等の工具T1を第2工具係合部123Hに挿入することにより、工具T1を第2工具係合部123Hに確実に係合させることができる。その結果、取付具100の小型化と、取付作業の一層の容易化とを実現できる。
【0087】
また、この取付具100では、図11に可動部材120を二点鎖線で示すように、可動部材120の被規制部127に、固定部材110の規制部117の上端部が当接することによって、固定部材110に対して可動部材120が離間する距離を一定に保つことができる。これによって、不必要に固定部材110から可動部材120が離れた状態で取付具100が窓枠8W等の下部に固定されることを防止できる。すなわち、窓枠8W等の下面と取付具100との距離が離れることにより、窓枠8W等の下部と外壁板2の特定端部2Pとの隙間が大きくなることを防止できる。
【0088】
さらに、この取付具100では、図10及び図11等に示すように、規制部117は、案内部111L、111Rに設けられた上下方向に延びる凹部であり、被規制部127は、一対の脚部125L、125Rに設けられた凸部からなるため、規制部117及び被規制部127を容易に形成できる。
【0089】
また、この取付具100では、図10及び図11等に示すように、線状突起部116の裏面の溝部を規制部117とすることにより、規制部117の構成を小型化できる。また、線状突起部116が案内部111L、111Rを補強するリブとしても機能するため、案内部111L、111R及び押え部113L、113Rが可動部材120を好適に案内できる。また、図12等に示すように、線状突起部116を支持面116Aとし、外壁板2を支持することができる。また、外壁板2を取り付ける際、その支持面116Aによって、外壁板2の特定端部2Pが係止片123に接近するように案内することができる。
【0090】
さらに、この取付具100では、図7及び図11に示すように、目印部129は、係止片123が接近位置にある状態で、固定部材110の案内部111L、111Rから露出する。その一方、図8に示すように、目印部129は、係止片123が離間位置にある状態で、固定部材110の案内部111L、111Rに覆われ、露出しないようになっている。このような目印部129によって、外壁板2を取り付ける際に、係止片123が最上端まで上げられた適切な位置にあることを目視により確認できるため、取付作業の一層の容易化を実現できる。
【0091】
また、この取付具100では、一対の脚部125L、125Rが固定部材110の案内面111A及び押え面113Aによって挟持され、それらの面接触による摩擦係合によって上下方向に移動可能に固定部材110に支持される構成により、取付具100を簡素化できる。また、摩擦係合により、第1工具係合部121U及び第2工具係合部123Hに工具T1を係合させて一対の脚部125L、125Rを容易に移動させることができる。その結果、取付作業の一層の容易化を実現できる。
【0092】
さらに、この取付具100では、図9等に示すように、固定部材110を構成する一枚の金属板の折り曲げや切り起こし等により、案内部111L、111R及び押え部113L、113Rを容易に形成でき、さらに、案内部111L、111Rの一面である案内面111Aと、押え部113L、113Rの一面である押え面113Aとを容易に形成できる。また、押え部113L、113Rの形状、大きさ、折り曲げ角度等を適宜選択することにより、摩擦係合による摺動抵抗の大きさを容易に調整できる。
【0093】
また、この取付具100では、可動本体である一対の脚部125L、125Rは、一対の案内部111L、111Rのそれぞれに配置されている。そして、図10に示すように、可動部材120を屋内外方向から見た場合、第2工具係合部123Hは、左方の脚部125Lと右方の脚部125Rとの間で、係止片123に設けられている。このような簡素な構成により、可動部材120を移動させる際に、下向きの力F1が左方の脚部125Lと右方の脚部125Rとに均等に伝達される。その結果、可動部材120が案内部111L、111Rに対して傾斜することを抑制でき、可動部材120が移動する際に案内部111L、111Rに引っ掛かることを防止できる。その結果、取付作業の一層の容易化を実現できる。
【0094】
(実施の形態2)
図15に示すように、実施の形態2の取付具200では、可動部材120の係止片123に、2つの第2工具係合部123Hが上下に並んで設けられている。また、固定部材110の下側の端部に規制部217が設けられ、可動部材120の下側の端部に被規制部227が設けられている。これに伴い、固定部材110は線状突起部116及び規制部117を有しておらず、可動部材120は被規制部127を有していない。また、実施の形態1では線状突起部116の頂面が支持面116Aとされていたが、その代わりに、案内部111L、111Rの屋外方向を向く面が直接、支持面となっている。実施の形態2のその他の構成は、実施の形態1と同様である。このため、実施の形態1と同一の構成については同一の符号を付して図示及び説明を省略又は簡略する。
【0095】
規制部217は、案内部111L、111Rの下端である。被規制部227は、脚部125L、125Rのそれぞれの下端から屈曲して屋外方向に短く突出する小片である。被規制部227の先端は、支持面116Aよりも屋内方向にずれた位置にあり、支持される外壁板2の裏面2Bに接触しないようになっている。
【0096】
係止片123が接近位置にある状態では、規制部217と被規制部227とは最も離間している。図示は省略するが、係止片123が固定部材110から最も離間する離間位置に可動部材120がある状態で、可動部材120の被規制部227に、固定部材110の規制部217が当接する。
【0097】
このような構成である実施の形態2の取付具200でも、実施の形態1の取付具100と同様に、取付作業の容易化を実現しつつ、窓枠8W等の下端、具体的にはサッシ80の底壁部81と、外壁板2の特定端部2Pとの隙間S1を小さくすることができる。
【0098】
また、この取付具200では、下の第2工具係合部123Hに工具T1を挿入して、係止片123を下向きに移動させ、次に、上の第2工具係合部123Hに工具T1を挿入して、係止片123を下向きに移動させ、最後に、第1工具係合部121Uに工具T1を当接させて、係止片123を下向きに移動させることができる。その結果、窓枠8W等の下端、具体的にはサッシ80の底壁部81と、外壁板2の特定端部2Pとの隙間S1を一層小さくすることができる。
【0099】
以上において、本発明の形態を実施の形態1、2に即して説明したが、本発明の形態は上記実施の形態1、2に制限されるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更して適用できることはいうまでもない。
【0100】
例えば、第1工具係合部は、突出片121の上面でなくてもよく、突出片に別途、穴、溝、突起等を設けてもよい。第2工具係合部は、穴でなくてもよく、例えば、溝でも、突起でもよい。第1工具係合部及び第2工具係合部は、複数設けられてもよい。
【0101】
案内部及び押え部は、摩擦係合によって可動部材を保持する構成には限定されない。可動部材に突起を設け、案内部の所定の位置に穴を設け、突起が穴に進入する位置で、案内部及び押え部が可動部材を保持するようにしてもよい。
【0102】
目印部は、係止片が接近位置にある状態で固定部材に覆われる一方、係止片が離間位置にある状態で固定部材から露出してもよい。
【0103】
上述した実施の形態では、案内部と押え部とが一枚の板材からなり、一体的に構成されている。しかし、固定部材を第1の板材と第2の板材とからなる2枚の板材から構成してもよい。すなわち、第1の板材が基部及び案内部を形成し、第2の板材が案内部に対向する状態で第1の板材に接合されて押え部を形成し、第1の板材の案内部と、第2の板材の押え部とで可動部材の可動本体を挟む構成としてもよい。
【0104】
また、実施の形態1では、線状突起部116は規制部117及び支持面116Aとして機能する他、案内部111L、111Rを補強するリブとしての機能も有している。しかし、これらの機能を別個の部材とすることもできる。例えば、案内部111L、111Rを補強するリブを別個に設けたり、実施の形態2の様に、支持面116Aを線状突起部とせず、案内部111L、111Rの屋外方向を向く面をそのまま、外壁板2の裏面2Bを支持する支持面としてもよい。
【符号の説明】
【0105】
8…構造体
2…壁材(外壁板)
100…取付具
115…基部
110…固定部材
125L、125R…可動本体(一対の脚部)
120…可動部材
111L、111R…案内部
113L、113R…押え部
121…突出片
123…係止片
F1…第1方向の力
121U…第1工具係合部
123H…第2工具係合部
117、217…規制部
127、227…被規制部
R1…可動部材の移動範囲
116…線状突起部
129…目印部
125F…可動本体の第1面
125B…可動本体の第2面
111A…案内面
113A…押え面
2P…壁材の端部(特定端部)


図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15