(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022006519
(43)【公開日】2022-01-13
(54)【発明の名称】切削装置、切削方法、および回転切削工具
(51)【国際特許分類】
B28D 1/14 20060101AFI20220105BHJP
B23Q 11/00 20060101ALI20220105BHJP
B23C 5/12 20060101ALI20220105BHJP
B23C 5/16 20060101ALI20220105BHJP
B23C 5/28 20060101ALI20220105BHJP
B23Q 11/10 20060101ALI20220105BHJP
B28D 7/02 20060101ALI20220105BHJP
【FI】
B28D1/14
B23Q11/00 M
B23C5/12 Z
B23C5/16
B23C5/28
B23Q11/10 F
B28D7/02
【審査請求】未請求
【請求項の数】17
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020108785
(22)【出願日】2020-06-24
(71)【出願人】
【識別番号】592171131
【氏名又は名称】株式会社ロンビックジャパン
(71)【出願人】
【識別番号】520229910
【氏名又は名称】有限会社エフ・ティー工業
(74)【代理人】
【識別番号】100166051
【弁理士】
【氏名又は名称】駒津 啓佑
(72)【発明者】
【氏名】畑中 友宏
(72)【発明者】
【氏名】遠藤 仁登信
(72)【発明者】
【氏名】小倉 裕也
【テーマコード(参考)】
3C011
3C069
【Fターム(参考)】
3C011BB02
3C011BB05
3C011BB06
3C069AA04
3C069BA09
3C069BB01
3C069BB02
3C069BC01
3C069CA10
3C069DA05
3C069DA07
3C069EA03
3C069EA05
(57)【要約】 (修正有)
【課題】切削液や切削による廃液を排出することなく、また低コストで被削材を切削できる切削装置、切削方法、および切削工具を提供する。
【解決手段】空気圧縮装置110から供給された空気を圧縮空気冷却手段120が冷却し、圧縮空気冷却手段120から排出された冷却圧縮空気を冷却圧縮空気供給口132から棒状の本体の内部に取り入れて冷却圧縮空気を冷却圧縮空気排出口から排出する冷却構造を備えた回転切削工具140が、回転駆動手段130に接続されて被削材を切削する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
被削材を切削する切削装置において、
空気圧縮装置から供給された空気を冷却するための圧縮空気冷却手段と、
前記圧縮空気冷却手段から排出された冷却圧縮空気を冷却圧縮空気供給口から棒状の本体の内部に取り入れて前記冷却圧縮空気を冷却圧縮空気排出口から排出する冷却構造を備え、回転駆動手段に接続されて前記被削材を切削する回転切削工具と、
を備えることを特徴とする切削装置。
【請求項2】
前記圧縮空気冷却手段は、
前記空気圧縮装置から供給された圧縮空気が冷風と熱風とに分離されたうちの前記冷風が前記回転駆動手段に接続されるエアークーラーであること、
を特徴とする請求項1記載の切削装置。
【請求項3】
前記冷却構造は、
前記本体の基端部から先端部にかけて前記冷却圧縮空気が流れる流路、
を備えることを特徴とする請求項1記載の切削装置。
【請求項4】
前記回転切削工具は、
前記本体の先端および周面に切削刃部、
を備えることを特徴とする請求項1記載の切削装置。
【請求項5】
前記切削刃部は、
複数の刃セグメントの配列によって構成され、
前記刃セグメントが螺旋状に配列された少なくとも一つの螺旋配列からなること、
を特徴とする請求項4記載の切削装置。
【請求項6】
前記冷却圧縮空気排出口は、
前記螺旋配列を構成するセグメントと前記本体の回転方向に隣り合うセグメントとの間に形成されること、
を特徴とする請求項5記載の切削装置。
【請求項7】
前記回転切削工具は、
熱伝導率の高い高熱伝導率材で形成されること、
を特徴とする請求項1記載の切削装置。
【請求項8】
前記高熱伝導率材は、
ダイヤモンドチップ材であること、
を特徴とする請求項7記載の切削装置。
【請求項9】
前記回転切削工具によって前記被削材が切削された切削屑を集塵するための集塵手段、
を備えることを特徴とする請求項1記載の切削装置。
【請求項10】
前記集塵手段は、
前記回転切削工具の先端側に開口部が設けられて前記回転切削工具の周囲を覆うカバーと、
前記カバーに接続されて前記カバー内を吸引する集塵機と、
を備えることを特徴とする請求項9記載の切削装置。
【請求項11】
前記カバーは、
前記回転切削工具の長手方向に伸縮自在な蛇腹材であること、
を特徴とする請求項10記載の切削装置。
【請求項12】
前記開口部と前記被削材との間に介在されて前記被削材の不陸に柔軟に対応する不陸緩衝材、
を備えることを特徴とする請求項10記載の切削装置。
【請求項13】
前記回転駆動手段は、
前記空気圧縮装置が圧縮した圧縮空気から回転駆動を発生させる圧縮空気回転駆動手段であること、
を特徴とする請求項1記載の切削装置。
【請求項14】
前記圧縮空気回転駆動手段は、
前記圧縮空気冷却手段が冷却した冷却圧縮空気から回転駆動を発生させる冷却圧縮空気回転駆動手段であって、
前記回転切削工具は、
前記回転駆動手段が前記冷却圧縮空気から前記回転駆動を発生させた後に排出された冷却圧縮空気を冷却圧縮空気供給口から棒状の本体の内部に取り入れて前記冷却圧縮空気を冷却圧縮空気排出口から排出すること、
を特徴とする請求項13記載の切削装置。
【請求項15】
前記回転駆動手段が、
供給された電力によって回転駆動を発生させる電気回転駆動手段の場合であって、
前記回転切削工具は、
前記圧縮空気冷却手段が冷却した冷却圧縮空気を冷却圧縮空気供給口から棒状の本体の内部に取り入れて前記冷却圧縮空気を冷却圧縮空気排出口から排出する冷却構造を備えること、
を特徴とする請求項1記載の切削装置。
【請求項16】
被削材を切削する切削装方法において、
空気圧縮装置から供給された空気を圧縮空気冷却手段が冷却する工程と、
前記圧縮空気冷却手段から排出された冷却圧縮空気を冷却圧縮空気供給口から棒状の本体の内部に取り入れて前記冷却圧縮空気を冷却圧縮空気排出口から排出する冷却構造を備えた回転切削工具が、回転駆動手段に接続されて前記被削材を切削する工程と、
を備えることを特徴とする切削方法。
【請求項17】
回転駆動手段に接続されて被削材を切削する回転切削工具において、
空気圧縮装置から供給された空気を冷却するための圧縮空気冷却手段から排出された冷却圧縮空気を冷却圧縮空気供給口から棒状の本体の内部に取り入れて前記冷却圧縮空気を冷却圧縮空気排出口から排出する冷却構造、
を備えた回転切削工具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、切削装置、切削方法、および切削工具に関し、特に被削材を切削する切削装置、切削方法、および切削工具に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、日本は地震大国と呼ばれるほど地震が多い国であり、地震に対する様々な備えが不可欠となっている。この地震による被害で最も危険なものは建築物の倒壊による災害である。
【0003】
耐震補強されていない多くの建物は、震度6以上の地震で倒壊する可能性があるといわれており、大切な生命や財産を地震などの災害から守るために耐震に対する意識は日々高まっている。
【0004】
過去の地震被害では、建築物の柱際に設置された腰壁や垂れ壁などの雑壁による影響で、柱の大きな被害が報告されている。これは雑壁が柱付近にとりつくことで柱の長さが短くなり、せん断破壊が起きやすくなってしまうのが原因であった。
【0005】
このせん断破壊による柱の損傷は建築物自体の倒壊につながり、被害を大きくしてしまうので大変危険であった。そこで建築物の柱と壁との間にスリットを形成し、柱と壁とを分断することで地震発生時に壁が柱に与える影響を少なくする耐震補強が知られている。
【0006】
図15は、建築物の柱際に耐震スリットを形成した様子を示す図である。
そこで
図15に示すように、柱1、柱2の間に形成された壁体3に窓枠などが設置される開口部4が設けられている。
【0007】
この開口部4が形成されることで、開口部4の下部には床面5までの腰壁3aが形成され、また開口部4の上部には、天井面6から開口部4の上面までの垂れ壁3bが形成される。
【0008】
この柱1および柱2と壁体3との際に耐震スリット7および耐震スリット8を設け、柱1または柱2と壁体3とが繋がっていない状態にし、柱1および柱2の長さが短くならないようにすることで、柱1および柱2の被害を少なくすることができる。このように建築物に耐震スリット7および耐震スリット8を形成することで、建築物の倒壊を最小限に抑えることができる。
【0009】
また耐震スリットは新建築物に形成するだけでなく、現在の耐震基準に満たない古い建築物に耐震スリットを形成して耐震補強を施すことで、現在の耐震基準を満たす耐震性能を備えた建築物に改修することができる(たとえば、特許文献1参照)。このようにコンクリート製の壁に耐震スリットを形成するためには、切削工具を備えた切削機で切削することで効率よく施工が行える。
【0010】
図16は、従来の切削工具の一例を示す図である。
図16に示すように、切削工具10は、丸棒状の本体11を備えており、その本体11の先端には例えばダイヤモンド砥粉と金属粉を混合した焼結体(以下、ダイヤモンドチップという。)からなる先端切削刃12が十字状に設けられ、またこの本体11の周面には周面切削刃13が螺旋状に設けられており、本体11の基端部には、切削工具10を切削機本体20に装着するためのチャック部14が形成されている。
【0011】
また切削時に発生する熱による切削工具10の摩耗抑制を目的とした切削液が流れる流路15が、本体11の内部を通って本体11の先端まで設けられており、その切削工具10の先端から切削液が排出される構造となっている。
【0012】
上記のような切削工具10を、ここでは図示しない切削機本体20に装着し、先端から切削液を排出しながら切削工具10の長手方向を軸にして回転させる。回転させた切削工具10の先端を壁体3に向かって接近させることで、先端切削刃12が壁体3の厚さ方向を切削し、壁体3に凹部を形成することができる。
【0013】
また壁体3に凹部を形成した状態で切削工具10を形成する耐震スリットの溝方向に移動させることで、周面切削刃13が壁体3を切削し壁体3に溝部を形成することができる。
【0014】
このようにコンクリート製の壁体3に耐震スリットを形成するには、切削工具10を装着した切削機本体20を用いてコンクリート製の壁体3を切削することで、容易に耐震スリットを形成することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0015】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
しかし上記のような切削方法の場合、切削液を排出しながら切削するため、排出した切削液や、切削したコンクリート粉じんと切削液とが混ざった廃液が排出される問題があった。
【0017】
この排出される切削液や廃液は、施工中や施工後に取り除かなければならない。たとえば地下に設けられたコンクリート製の壁体に耐震スリットを形成する場合には、切削液や廃液を地上まで汲み上げなければならず非常に手間がかかる問題となっていた。
【0018】
たとえば、排出された廃液を濾過して再び切削液として再利用する循環設備を設けることも考えられるが、排出された廃液を汲み上げる装置、廃液を濾過する装置、そして濾過した液体を切削液として循環させる装置などの複数の装置を地下の限られた空間に設けることは非常に困難である。
【0019】
また、上記のような切削方法で排出される切削液や廃液は、漏水の原因になる問題もある。前述のように、耐震スリットは新建築物に形成するだけでなく、耐震基準に満たない古い建築物に耐震スリットを形成して耐震補強を施すこともできる。
ところが、排出された切削液が建築物の屋内側に浸入してしまうと、浸入した切削液によって屋内側に設置されたものが濡れたり破損したりしてしまうことが考えられる。
【0020】
たとえば、複数のコンピュータ機器類が設置されたサーバールームは、一般にセキュリティ状の問題や、温度が安定していることなどから、地下室に設けられている場合が多い。
【0021】
このようなサーバールームに形成された壁体に、耐震スリットを上記のような切削方法で形成した場合、排出された廃液や切削液がサーバールーム内に浸入してしまうと、浸入した切削液によってコンピュータ機器類がショートして、大切なデータが破損してしまう問題がある。
【0022】
このように、壁体に耐震スリットを形成するための切削方法では、切削工程で使用される切削液や廃液が排出されることで施工コストがかかる問題や、排出された切削液や廃液が屋内に浸入することで、屋内に設置されたものに損害を与える原因となっていた。
【0023】
ここで切削液や廃液を排出しないために、切削液を使用しないで切削する方法を考察する。上記のようなダイヤモンドチップを用いた切削工具で切削を行う場合、冷却が行われないと工具の摩耗が激しいため、すぐに切削できなくなる問題がある。
【0024】
具体的には、被削材と切削工具との接触点の温度が場合によっては1000℃を超えてしまうこともあり、このような高温下ではダイヤモンドチップは硬度を維持することができずに、被削材を切削することができなくなってしまう。
【0025】
このため、切削液を使用しないで切削するためには、高頻度で切削工具を交換する必要があり、交換するための時間が増加することで施工時間が増加してしまう問題や、切削工具の交換頻度が増加することで施工コストが増加してしまう問題がある。
【0026】
また切削液を使用しない高温下で切削すると、切削能力が低下した切削工具で切削することで切削断面に凹凸が生じて粗くなることが考えられる。形成された耐震スリットには、雨水等の浸入防止のためポリスチレンフォームなどの弾力性のあるスリット材が挿入される。ところが切削断面に凹凸が生じてしまうと、挿入されるスリット材と切削断面との間に隙間が生じてしまうため、この隙間から雨水等が浸入してしまう問題につながる。
【0027】
また切削液を使用しない高温下で切削することで、被削材と切削工具との接触点が高温になると、高温により被削材が焼け焦げてしまい、被削材にシミのような跡が残ってしまう問題もある。
【0028】
本発明はこのような点に鑑みてなされたものであり、切削液や切削による廃液を排出することなく、また低コストで被削材を切削できる切削装置、切削方法、および切削工具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0029】
本発明では上記問題を解決するために、被削材を切削する切削装置において、空気圧縮装置から供給された空気を冷却するための圧縮空気冷却手段と、前記圧縮空気冷却手段から排出された冷却圧縮空気を冷却圧縮空気供給口から棒状の本体の内部に取り入れて前記冷却圧縮空気を冷却圧縮空気排出口から排出する冷却構造を備え、回転駆動手段に接続されて前記被削材を切削する回転切削工具とを備えることを特徴とする切削装置が提供される。
【0030】
これにより、空気圧縮装置から供給された空気を圧縮空気冷却手段が冷却し、圧縮空気冷却手段から排出された冷却圧縮空気を冷却圧縮空気供給口から棒状の本体の内部に取り入れて冷却圧縮空気を冷却圧縮空気排出口から排出する冷却構造を備えた回転切削工具が、回転駆動手段に接続されて被削材を切削する。
【0031】
また、本発明では、被削材を切削する切削装方法において、空気圧縮装置から供給された空気を圧縮空気冷却手段が冷却する工程と、前記圧縮空気冷却手段から排出された冷却圧縮空気を冷却圧縮空気供給口から棒状の本体の内部に取り入れて前記冷却圧縮空気を冷却圧縮空気排出口から排出する冷却構造を備えた回転切削工具が、回転駆動手段に接続されて前記被削材を切削する工程とを備えることを特徴とする切削方法が提供される。
【0032】
これにより、空気圧縮装置から供給された空気を圧縮空気冷却手段が冷却し、圧縮空気冷却手段から排出された冷却圧縮空気を冷却圧縮空気供給口から棒状の本体の内部に取り入れて冷却圧縮空気を冷却圧縮空気排出口から排出する冷却構造を備えた回転切削工具が、回転駆動手段に接続されて被削材を切削する。
【0033】
また、本発明では、回転駆動手段に接続されて被削材を切削する回転切削工具において、空気圧縮装置から供給された空気を冷却するための圧縮空気冷却手段から排出された冷却圧縮空気を冷却圧縮空気供給口から棒状の本体の内部に取り入れて前記冷却圧縮空気を冷却圧縮空気排出口から排出する冷却構造を備えた回転切削工具が提供される。
【0034】
これにより、空気圧縮装置から供給された空気を圧縮空気冷却手段が冷却し、圧縮空気冷却手段から排出された冷却圧縮空気を冷却圧縮空気供給口から棒状の本体の内部に取り入れて冷却圧縮空気を冷却圧縮空気排出口から排出する冷却構造を備えた回転切削工具が、回転駆動手段に接続されて被削材を切削する。
【発明の効果】
【0035】
本発明の切削装置、切削方法、および回転切削工具によれば、空気圧縮装置から供給された空気を圧縮空気冷却手段が冷却し、圧縮空気冷却手段から排出された冷却圧縮空気を冷却圧縮空気供給口から棒状の本体の内部に取り入れて冷却圧縮空気を冷却圧縮空気排出口から排出する冷却構造を備えた回転切削工具が、回転駆動手段に接続されて被削材を切削するので、切削時に発生する熱を抑制するための切削液を使用することなく切削することができる。このため、切削液や切削による廃液が排出されることがない。
【0036】
また冷却構造によって回転切削工具が冷却されるので、切削時の高温化を抑制することで回転切削工具の摩耗を低減できる。これにより、回転切削工具のコストを低減することができる。
【0037】
また、切削液や切削による廃液を排出されないので、これらの切削液や廃液を処理する工程を省くことができるので、短い施工時間で切削施工を行うことができる。また、切削液や切削による廃液が排出されないので漏水問題が発生しない。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【
図1】第1の実施の形態に係る切削装置全体を示す全体図である。
【
図2】圧縮空気冷却手段の内部構造および圧縮空気の流れを示す断面図である。
【
図4】回転切削工具の構造例を示す側面図および正面図である。
【
図5】回転切削工具を示す側面図および断面図である。
【
図6】切削刃部の先端部の詳細を示す拡大図である。
【
図7】被削材である壁体に耐震スリットを形成する切削方法の手順例を示す図である。
【
図8】被削材である壁体に回転切削工具を挿入するための水平穴を形成する切削方法の手順を示す図である。
【
図9】回転切削工具を用いて耐震スリットを形成する切削方法の手順を示す図である。
【
図10】第2の実施の形態に係る切削装置全体を示す全体図である。
【
図11】回転駆動手段に装着したカバーの構造例を示す側面図である。
【
図12】被削材である壁体に耐震スリットを形成する切削方法の手順例を示す図である。
【
図13】第3の実施の形態に係る切削装置全体を示す全体図である。
【
図14】第4の実施の形態に係る切削装置全体を示す全体図である。
【
図15】建築物の柱際に耐震スリットを形成した様子を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0039】
〔第1の実施の形態〕
以下、本発明の第1の実施の形態を、図面を参照して詳細に説明する。
図1は、第1の実施の形態に係る切削装置全体を示す全体図である。
図1に示すように切削装置100は、空気圧縮装置110、圧縮空気冷却手段120、圧縮空気回転駆動手段130、および回転切削工具140を備えている。
【0040】
空気圧縮装置110は、強い圧力をかけて気体を圧縮し送出するための装置であって、いわゆるコンプレッサーである。
空気圧縮装置110は圧縮機本体111により空気が圧縮され、圧縮機本体111により製造された圧縮空気は、圧縮機本体111に接続された空気タンク112に貯蔵される。
【0041】
空気タンク112に貯蔵された圧縮空気は圧縮空気弁113より排出される。また圧縮空気弁113はホースHを介して圧縮空気冷却手段120に接続されており、空気圧縮装置110で製造された圧縮空気が圧縮空気冷却手段120に供給される。
【0042】
空気圧縮装置110は、この他、空気タンク112内の圧力の異常上昇を防止するための安全弁や、空気タンク112内の圧力を表示するための圧力計、空気タンク112内に溜まる水などを排出するためのドレン弁や、空気タンク112内の圧力を制御するための制御装置など、圧縮空気を安全に製造し提供するための機器を備えることもできるが、ここでは説明を省略する。
【0043】
圧縮空気冷却手段120は、空気圧縮装置110および圧縮空気回転駆動手段130に接続されており、空気圧縮装置110から供給された圧縮空気を冷却するための装置であって、いわゆるエアークーラーである。
【0044】
圧縮空気冷却手段120は、本体部121、圧縮空気供給口122、加熱圧縮空気排出口123、および冷却圧縮空気排出口124を備えている。
圧縮空気供給口122は、本体部121の一部に設けられており、空気圧縮装置110からホースHを介して供給された圧縮空気を取り入れるためのものである。
【0045】
加熱圧縮空気排出口123は、本体部121の一部に設けられており、圧縮空気供給口122から供給された圧縮空気から冷風と熱風とに分離された圧縮空気のうち熱風、つまり加熱された圧縮空気である加熱圧縮空気を排出するための排出口である。
【0046】
冷却圧縮空気排出口124は、本体部121の一部に設けられており、圧縮空気供給口122から供給された圧縮空気から冷風と熱風とに分離された圧縮空気のうち冷風、つまり冷却された圧縮空気である冷却圧縮空気を排出するための排出口である。
【0047】
加熱圧縮空気排出口123から排出された加熱圧縮空気は空気中に排出される。また冷却圧縮空気排出口124はホースHを介して圧縮空気回転駆動手段130に接続されており、圧縮空気冷却手段120により冷却された冷却圧縮空気が圧縮空気回転駆動手段130に供給される。
【0048】
圧縮空気冷却手段120は、供給される圧縮空気の圧力や風量、排出される圧縮空気の排出量などによって、加熱圧縮空気や冷却圧縮空気の温度は変化する。
具体的には、圧縮空気供給口122から供給される圧縮空気の圧力が0.7MPa、圧縮空気供給口122から供給される圧縮空気の風量が820l/min、圧縮空気供給口122から供給される圧縮空気の温度が16℃の場合、冷却圧縮空気排出口124から排出する風量を205l/minとすると冷却圧縮空気の温度はマイナス49℃、加熱圧縮空気は34℃となる。
【0049】
圧縮空気回転駆動手段130は、ホースHを介して接続される圧縮空気冷却手段120、および回転切削工具140に接続されており、圧縮空気冷却手段120から供給される冷却圧縮空気の圧力から回転駆動を発生させる、いわゆるエアーモーターである。
【0050】
圧縮空気回転駆動手段130は、本体部131、冷却圧縮空気供給口132、動力部133、回転軸部134、および冷却圧縮空気排出口135を備えている。
冷却圧縮空気供給口132は、本体部131の一部に設けられており、圧縮空気冷却手段120からホースHを介して供給された圧縮空気を取り入れるためのものである。
【0051】
動力部133は、本体部121の一部に設けられており、冷却圧縮空気供給口132から供給された冷却圧縮空気による空気の圧力から回転駆動を発生させるためのモーターである。
動力部133には、回転軸部134が接続されており、動力部133により発生された回転駆動が回転軸部134に伝えられて、回転軸部134が回転駆動する。
【0052】
冷却圧縮空気排出口135は、冷却圧縮空気供給口132から供給され、動力部133で回転駆動が発生された冷却圧縮空気を排出するための排出口である。また、冷却圧縮空気供給口132、動力部133および回転軸部134の内部を連通して冷却圧縮空気が流れる流路が設けられ、冷却圧縮空気排出口135は回転軸部134の先端側に設けられ、冷却圧縮空気が回転軸部134の先端から排出される。
【0053】
回転切削工具140は棒状の切削工具であって、圧縮空気回転駆動手段130が有する回転軸部134に接続され、回転駆動する回転軸部134に連動して、回転切削工具140の長手方向を軸にして回転する。
【0054】
回転切削工具140は、棒状の本体部141を備えており、本体部141の先端および周面には切削刃部142が設けられている。また本体部141の基端部には回転切削工具140を圧縮空気回転駆動手段130が有する回転軸部134に装着するためのチャック部143が形成されている。
【0055】
またチャック部143には、圧縮空気回転駆動手段130が有する冷却圧縮空気排出口135に接続されて、冷却圧縮空気排出口135から排出される冷却圧縮空気が供給される冷却圧縮空気供給口144を備え、本体部141の内部を連通して冷却圧縮空気が流れる流路が設けられ、回転切削工具140の所望の位置、たとえば回転切削工具140の先端部などに冷却圧縮空気を排出するための冷却圧縮空気排出口145が設けられる。
【0056】
本実施の形態の切削装置100では、まず空気圧縮装置110が空気を圧縮する。次に空気圧縮装置110が圧縮した空気を圧縮空気冷却手段120が熱風と冷風とに分離する。
【0057】
圧縮空気冷却手段120が圧縮空気を分離することで加熱された圧縮空気は空気中に排出され、冷却された冷却圧縮空気は圧縮空気回転駆動手段130に供給される。圧縮空気回転駆動手段130は圧縮空気冷却手段120から供給された冷却圧縮空気により接続された回転切削工具140を回転させ、圧縮空気冷却手段120から供給された圧縮空気冷却手段120は回転切削工具140の先端から排出される。
【0058】
これにより、回転切削工具140が回転することに伴って、常に冷却された冷却圧縮空気が回転切削工具140を通じて排出されるので、回転切削工具140は冷却され、コンクリート製の壁体を切削しても高温になることがなく、低温下でコンクリート製の壁体を切削することができる。
【0059】
このように冷却圧縮空気を回転切削工具140から排出しながら切削することで、切削時に発生する熱による切削工具10の摩耗抑制を目的とする切削液を使用する必要がなくなる。
【0060】
従来では必要不可欠であった切削液を使用しなくても壁体を切削できるため、切削したコンクリート粉じんと切削液とが混ざった廃液が排出される問題もない。つまり切削液や廃液を処理する設備や、施工後に残った切削液や廃液を処理する手間を省くことができる。
【0061】
また切削液を使用しなくても壁体を切削することができるため、サーバールームが設置されるような地下室の壁体に、耐震スリットを形成する場合でも、切削液による漏水被害がでない。
【0062】
さらに冷却圧縮空気を回転切削工具140から排出しながら切削することで、回転切削工具140と壁体との接点の高温下を抑制しながら壁体を切削できるので、回転切削工具140の摩耗を抑制でき、低コストで耐震スリットを形成することができる。
【0063】
また、回転切削工具140と壁体との接点の高温下を抑制しながら壁体を切削することで、壁体の切削断面を滑らかに形成することができ、壁体の焼け焦げによる変色を防止することができる。
【0064】
また、圧縮空気回転駆動手段130は圧縮された空気の圧力から回転駆動を発生させるため、回転駆動に電力を必要としない。このため雨天時での作業でも圧縮空気回転駆動手段130がショートなどの電気事故が発生することなく安全に被削材を切削することができる。
【0065】
またホースHで圧縮した空気を送るだけで圧縮空気回転駆動手段130が回転駆動を発生させることができるので、雨天時に切削作業が行えるだけでなく水中での作業、たとえば水中に設けられた構造物の切断作業や穿孔作業も電気事故が発生することなく安全に被削材を切削することができる。
【0066】
図2は、圧縮空気冷却手段の内部構造および圧縮空気の流れを示す断面図である。
図2(A)に示すように、圧縮空気冷却手段120は、本体部121、圧縮空気供給口122、加熱圧縮空気排出口123、冷却圧縮空気排出口124、過流発生器125、および調整弁126を備えており、ボルテックス効果を利用したボルテックス・チューブ構造である。
【0067】
図2(B)に示すように、圧縮空気供給口122より供給された圧縮空気(白矢印)は、圧縮空気冷却手段120と本体部121との間に設けられた過流発生器125に流れ込む。
【0068】
過流発生器125に流れ込んだ圧縮空気(白矢印)は、筒状の本体部121内を円周方向に高速回転しながら、過流発生器125から加熱圧縮空気排出口123に向かって移動する。
このとき、
図2(C)に示すように、調整弁126を調節することで、加熱圧縮空気排出口123から排出される圧縮空気(斜線矢印)の量を調節することができる。
【0069】
また、調整弁126によって加熱圧縮空気排出口123から排出されなかった圧縮空気(黒矢印)は、筒状の本体部121内を円周方向に高速回転する圧縮空気(白矢印)の遠心力によって形成される過流の内側の空洞内を、圧縮空気(白矢印)の回転方向と同方向に回転しながら冷却圧縮空気排出口124方向に移動する。
【0070】
このとき圧縮空気(白矢印)は、筒状の本体部121内で回転する遠心力により、圧力および圧縮空気(白矢印)の密度が増加することで圧縮空気(白矢印)の温度は上昇する。
また筒状の本体部121内で回転する圧縮空気(白矢印)は、過流の外側にいくほど圧力が増加するので、温度が上昇し、過流の中心部と外周部との間に圧力差が生じる。
【0071】
さらに調整弁126により圧縮空気(白矢印)は減速され、さらに圧力が高まることで過流の外周側は温度が上昇し、過流の中心部では温度が低下する。
これにより、圧縮空気冷却手段120は、供給された圧縮空気を冷風と熱風とに分離し、圧縮空気を分離することで加熱された圧縮空気(斜線矢印)は加熱圧縮空気排出口123から排出される。
【0072】
また圧縮空気を分離することで冷却された圧縮空気(黒矢印)は冷却圧縮空気排出口124から排出される。
このとき、加熱された圧縮空気(斜線矢印)に供給される熱量と、冷却された圧縮空気(黒矢印)から取り除かれる熱量は常に等しくなるため、調整弁126の調整により、加熱圧縮空気排出口123から排出される加熱圧縮空気の排出量を増加させることで、冷却圧縮空気排出口124から排出される冷却圧縮空気の排出量が低下し、冷却圧縮空気の温度が低下する。
このように、調整弁126を調整することで、冷却圧縮空気排出口124から排出される冷却圧縮空気の排出量や温度を調節することができる。
【0073】
図3は、回転駆動手段の構造例を示す側面図である。
図3に示すように、圧縮空気回転駆動手段130は、本体部131、冷却圧縮空気供給口132、動力部133、回転軸部134、および冷却圧縮空気排出口135を備えている。
【0074】
冷却圧縮空気供給口132は、本体部131の下端部に設けられており、圧縮空気冷却手段120からホースHを介して供給された圧縮空気を取り入れる。
動力部133は、本体部121の内部に設けられており、冷却圧縮空気供給口132から供給された冷却圧縮空気が冷却圧縮空気供給口132から供給され、供給された冷却圧縮空気の圧力を利用して回転駆動を発生させて、接続された回転軸部134を回転させる。
【0075】
冷却圧縮空気排出口135は回転軸部134の先端部に設けられており、冷却圧縮空気供給口132から動力部133を通じて、冷却圧縮空気供給口132から供給された冷却圧縮空気が冷却圧縮空気排出口135から排出される構造になっている。
【0076】
また回転軸部134の先端部には回転切削工具140が接続されており、冷却圧縮空気排出口135は回転切削工具140が有する冷却圧縮空気供給口144に接続されて、圧縮空気回転駆動手段130から排出された冷却圧縮空気が回転切削工具140に供給される。
【0077】
回転切削工具140に供給された冷却圧縮空気は、回転切削工具140に先端に設けられた冷却圧縮空気排出口145から排出される。回転切削工具140が回転しながら被削材を切削していた場合、冷却圧縮空気排出口145から排出される冷却圧縮空気によって
冷却されながら被削材を切削することができる。
【0078】
また、回転切削工具140の内部を連通して冷却圧縮空気が流れる流路が設けられることで、回転切削工具140の内部を常に冷却圧縮空気が流れるので、回転切削工具140全体を内部から冷却することができる。
【0079】
また回転切削工具140は熱伝導率の優れた高熱伝導率材であるダイヤモンド材によるダイヤモンドチップ材を採用することで、回転切削工具140の内部に流れる冷却圧縮空気の冷気を回転切削工具140全体に効率よく伝導することができる。
【0080】
これにより、切削時の被削材と回転切削工具140との接点の高温化を抑制し、回転切削工具140の摩耗や、被削材の変色、切削断面の凹凸を抑制し、効率よく耐震スリットを形成することができる。
【0081】
なお、
図3では、冷却圧縮空気排出口145を回転切削工具140の先端部に設ける例で説明したが、回転切削工具140の周面に冷却圧縮空気排出口145を複数設けることもできる。
【0082】
図4は、回転切削工具の構造例を示す側面図および正面図である。
図4に示すように、回転切削工具140は、本体部141、切削刃部142、チャック部143、冷却圧縮空気供給口144、冷却圧縮空気排出口145、および流路Cを備えている。
【0083】
回転切削工具140は、図示しない圧縮空気回転駆動手段130が有する回転軸部134に着脱可能に装着される。圧縮空気回転駆動手段130が有する回転軸部134は、回転方向を示す矢印Rが示す方向に回転切削工具140を回転させながら被削材に接近させることで、被削材を切削することができるようになっている。
【0084】
回転切削工具140には、丸棒状の本体部141を備えており、本体部141の先端および周面には切削刃部142が設けられている。また本体部141の基端部には、圧縮空気回転駆動手段130が有する回転軸部134に回転切削工具140を装着するためのチャック部143が形成されている。
【0085】
本体部141の先端および周面に設けられた切削刃部142は、形状の異なる複数の刃刃セグメントによって構成されている。具体的には、本体部141の先端に設けられる第一刃セグメント142A、本体部141の側面に設けられる第二刃セグメント142Bおよび第三刃セグメント142Cによって切削刃部142は構成されている。
【0086】
第一刃セグメント142Aは、例えばダイヤモンドチップからなる切削刃であって、本体部141の半径と同じ、または半径より短い長さの立方体の形状をしており、その第一刃セグメント142Aが本体部141の先端に十字状に設けられている。なお第一刃セグメント142Aの大きさ、数量、配置は適宜選択することができる。
【0087】
施工時は、矢印Rが示す回転方向にこの本体部141の先端に設けられた第一刃セグメント142Aが回転することで、被削材である壁体の厚さ方向の切削面を切削することができる。
【0088】
またこの第一刃セグメント142Aは矢印Rが示す回転方向に湾曲した湾曲面142A1を備えており、被削材との接触を緩やかにすることで、加工後の切削面を滑らかに仕上げることができる。
【0089】
第二刃セグメント142Bおよび第三刃セグメント142Cは、本体部141の周面に沿って設けられる大きさの異なる刃セグメントである。第二刃セグメント142Bおよび第三刃セグメント142Cは、例えばダイヤモンドチップからなる切削刃であって、本体部141の径方向の断面図が平行四辺形をした立方体の形状をしている。
【0090】
また第二刃セグメント142Bおよび第三刃セグメント142Cは、本体部141の周面に沿って湾曲しており、本体部141の周面に第二刃セグメント142Bおよび第三刃セグメント142Cが回転切削工具140の回転方向に一定の間隔でずれ、かつ第二刃セグメント142Bおよび第三刃セグメント142Cの回転方向の間隔が一定に保たれながら、螺旋状に配置され接着剤などで本体部141に固定されている。
【0091】
これにより回転切削工具140の周面には螺旋状に配列された第二刃セグメント142Bおよび第三刃セグメント142Cと、螺旋状に配列された各刃セグメントとの間には螺旋状の切削屑排出溝Gが形成される。
【0092】
またこの第二刃セグメント142Bおよび第三刃セグメント142Cは回転切削工具140の回転方向と逆方向に傾斜した傾斜面を備えており、切削面との接触を緩やかにすることで、加工後の切削面を滑らかに仕上げることができる。
【0093】
さらに、第二刃セグメント142Bと第三刃セグメント142Cとは、回転切削工具140の回転軸方向の高さが異なっており、第三刃セグメント142Cの高さよりも第二刃セグメント142Bの高さが高く形成されている。
【0094】
また第三刃セグメント142Cの高さよりも高さのある第二刃セグメント142Bは、回転切削工具140の周面の先端部、かつ本体部141から先端方向に突出するように設けられる。また突出した部位は、第一刃セグメント142Aと同じ高さになるように設けられる。
【0095】
また、回転切削工具140の先端から二列目に配列される刃セグメントを回転切削工具140の回転方向に向かって第二刃セグメント142Bと第三刃セグメント142Cとを交互に配列することで、螺旋状に形成された各刃セグメントの回転方向の切削面が段違いになる。これにより切削面を滑らかにすることができる。詳しくは後述する。
【0096】
流路Cは、本体部141の内部に形成された筒状の管であって、冷却圧縮空気供給口144より供給されて流路Cを流れた冷却圧縮空気は本体部141の先端に設けられた冷却圧縮空気排出口145Aおよび周面に設けられた複数の冷却圧縮空気排出口145Bにより排出される。
【0097】
本体部141の先端に設けられた冷却圧縮空気排出口145Aは回転軸中心付近に設けられ、冷却圧縮空気が排出されることで第一刃セグメント142Aが被削材を切削する部位の切削刃摩耗の低減や切削時の高温化を抑制することができる。
【0098】
また冷却圧縮空気排出口145Aから排出された冷却圧縮空気は、被削材の切削屑と一緒に切削屑排出溝Gに流れ込み、回転切削工具140が回転することで切削屑排出溝Gに沿ってチャック部143方向に排出される。
【0099】
本体部141の周面に設けられた冷却圧縮空気排出口145Bは、切削屑排出溝G上に沿って複数設けられる。これにより切削屑排出溝G上に沿って複数設けられた冷却圧縮空気排出口145Bより冷却圧縮空気が排出されるので、被削材を切削した切削屑が切削屑排出溝Gに目詰まりしてしまうことを防止することができる。
【0100】
このように、冷却圧縮空気を排出する冷却圧縮空気排出口145を回転切削工具140の先端および周面に設けることで、切削面全体に冷却圧縮空気が流れ込み、冷却圧縮空気を流しながら被削材を切削することができるので、切削刃部142の偏摩耗や高温による回転切削工具140の損傷を抑制することができる。
【0101】
図5は、回転切削工具を示す側面図および断面図である。
図5(A)は回転切削工具140の先端部A‐Aの断面図を示している。
図5(A)に示すように、本体部141の先端には冷却圧縮空気が排出される冷却圧縮空気排出口145Aが設けられ、冷却圧縮空気排出口145Aを中心に第一刃セグメント142Aが十字状に設けられている。また、本体部141の周面には4つの第二刃セグメント142Bが一定の間隔をあけて対角線上に設けられている。
【0102】
図5(B)は回転切削工具140の先端部B‐Bの断面図を示している。
図5(B)に示すように、本体部141の中心には筒状の冷却圧縮空気が流れる流路Cが設けられており、流路Cから十字状に分岐した冷却圧縮空気排出口145Bが本体部141の周面に設けられている。また冷却圧縮空気排出口145Bは回転切削工具140の周面に形成された切削屑排出溝G上に到達するように配置されている。
【0103】
また本体部141の周面には2つの第二刃セグメント142Bと2つの第三刃セグメント142Cが対角線上に設けられ、各刃セグメントは
図5(A)における第二刃セグメント142Bの位置よりも矢印Rが示す回転方向に移動した位置に配置されている。
【0104】
図5(C)は回転切削工具140の先端部C‐Cの断面図を示している。
図5(C)に示すように、本体部141の中心には筒状の冷却圧縮空気が流れる流路Cが設けられており、流路Cから一の字状に分岐した冷却圧縮空気排出口145Bが本体部141の周面に設けられている。また冷却圧縮空気排出口145Bは回転切削工具140の周面に形成された切削屑排出溝G上に到達するように配置されている。
【0105】
また本体部141の周面には2つの第二刃セグメント142Bと2つの第三刃セグメント142Cが対角線上に設けられ、第二刃セグメント142Bは
図5(B)における第二刃セグメント142Bと同一のため同じ位置、また第三刃セグメント142Cは
図5(B)における第二刃セグメント142Bの位置よりも矢印Rが示す回転方向に移動した位置に配置されている。
【0106】
図5(D)は回転切削工具140の先端部D‐Dの断面図を示している。
図5(D)に示すように、本体部141の中心には筒状の冷却圧縮空気が流れる流路Cが設けられており、流路Cから十字状に分岐した冷却圧縮空気排出口145Bが本体部141の周面に設けられている。また冷却圧縮空気排出口145Bは回転切削工具140の周面に形成された切削屑排出溝G上に到達するように配置されている。
【0107】
また本体部141の周面には4つの第三刃セグメント142Cが、
図5(C)における第二刃セグメント142Bおよび第三刃セグメント142Cの位置よりも矢印Rが示す回転方向に移動した位置に配置されている。
【0108】
図5(D)からチャック部143方向の回転切削工具140の断面図は、
図5(D)と同様に本体部141の周面に備えられた4つの第三刃セグメント142Cが矢印Rの示す回転方向に移動した位置に配置されながら螺旋状を形成して配置されており、冷却圧縮空気排出口145Aが切削屑排出溝Gに沿って設けられる構造となっている。
【0109】
このように、回転切削工具140の先端部から切削屑排出溝Gに沿って一定の感覚で基端部にかけて冷却圧縮空気排出口145Aおよび冷却圧縮空気排出口145Bを設置することで、被削材を切削する回転切削工具140全体に効率よく冷却圧縮空気を流し込むことができる。
【0110】
また周面に設けられる冷却圧縮空気排出口145Bが螺旋状に形成された切削屑排出溝G上に沿って設けられているので、回転切削工具140が回転することで冷却圧縮空気がチャック部143方向に流れていき、より回転切削工具140全体に冷却圧縮空気を回り込ませることができる。これにより切削屑排出溝Gに詰まりやすい切削屑をチャック部143方向に押し流すことができる。
【0111】
図6は、切削刃部の先端部の詳細を示す拡大図である。
前述したように、周面に設けられる第二刃セグメント142Bおよび第三刃セグメント142Cは、回転切削工具140の回転軸方向の高さが異なっている。
【0112】
図6に示すように、回転切削工具140の先端には第二刃セグメント142Bが周面に沿って配置されている。ここで前述したように回転切削工具140の先端からチャック部143方向に向かって2列目に配置される一方の対角線方向の刃セグメントに第二刃セグメント142Bを配置し、他方の対角線方向の刃セグメントに第三刃セグメント142Cを配置することで、螺旋状に形成された各刃セグメントの回転方向の切削面が段違いになる。
【0113】
具体的には、
図6に示す切削屑排出溝Gを挟んで上側の刃セグメントの段差形状と、下側の段差形状とに差Dをもたせることができる。これにより、切削時に各刃セグメントの間に段差があることで生じてしまう切削跡Tを次に回転してくる第三刃セグメント142Cの切削面が切削することができる。つまり切削面をより滑らかに被削材を切削することが可能になる。
【0114】
このように切削面を滑らかにする利点は、形成した耐震スリットに挿入するスリット材の挿入を容易にするためである。通常耐震スリットを形成した後には、スリット内部に緩衝材としてスリット材を挿入し、防水処理を行う。
【0115】
このとき切削跡Tが切削面に残ってしまうと、スリット材の挿入が困難になってしまい施工に時間がかかってしまう。そこでこのように被削材の切削面を滑らかに切削できることで、スリット材の挿入を容易に行うことができる。また挿入するスリット材に傷がつくことも抑制することができる。
【0116】
図7は、被削材である壁体に耐震スリットを形成する切削方法の手順例を示す図である。
図7に示すように、回転切削工具140を用いて被削材である壁体200に耐震スリットを形成するには(A)~(C)の手順で壁体200に耐震スリットである溝部を形成する。
【0117】
図7(A)は圧縮空気回転駆動手段130に回転切削工具140を装着し、壁体200を切削する前の状態を示している。
図7(A)に示すように、回転切削工具140の先端を壁体200向けて回転切削工具140が鉛直になるように設置し、圧縮空気回転駆動手段130を駆動させた状態で回転切削工具140の先端を壁体200に徐々に近づけていく。
【0118】
図7(B)は回転駆動した回転切削工具140が壁体200を切削した様子を示している。
図7(A)の状態から、圧縮空気回転駆動手段130を駆動させた状態で回転切削工具140の先端を壁体200に徐々に近づけていくと、やがて回転切削工具140の先端に設けられた切削刃部142である第一刃セグメント142Aおよび第二刃セグメント142Bが壁体200を接触し、切削刃部142が壁体200を切削し始める。
【0119】
この状態で、さらに壁体200の厚さ方向に回転切削工具140を移動させることで、切削刃部142である第一刃セグメント142Aおよび第二刃セグメント142Bが壁体200を厚さ方向に切削し、壁体200に水平穴210を形成する。
【0120】
図7(C)は回転切削工具140を取り付けた圧縮空気回転駆動手段130を用いて、壁体200を切削することで耐震スリットである溝部を形成した様子を示している。
図7(C)に示すように、
図7(B)の状態から回転切削工具140を装着した圧縮空気回転駆動手段130を鉛直下方向に移動させて壁体200を切削刃部142である第三刃セグメント142Cで鉛直方向に切削し、壁体200に耐震スリットとなる溝部を形成する。
【0121】
このように回転切削工具140の周面に備えられた切削刃部142である第一刃セグメント142Aおよび第二刃セグメント142Bで壁体200に水平方向の水平穴210を形成し、第二刃セグメント142Bおよび第三刃セグメント142Cで壁体200を切削することで、耐震スリットである溝部を形成することができる。
【0122】
図8は、被削材である壁体に回転切削工具を挿入するための水平穴を形成する切削方法の手順を示す図である。
図7では、回転駆動させた回転切削工具140のみを用いて耐震スリットを形成する方法を説明したが、ここでは回転切削工具140とは別に水平穴210のみを形成するためのコアドリルビット300を使用し、その後、回転切削工具140で耐震スリットである溝部を形成する方法を説明する。
【0123】
図8に示すように、回転切削工具140を用いて壁体200に耐震スリットを形成する前にはあらかじめ(A)~(D)の手順で壁体200に水平穴210を形成する下準備を行う。
【0124】
図8(A)は圧縮空気回転駆動手段130にコアドリルビット300を装着し、壁体200を切削する一定の深さまで水平穴210を形成した様子を示している。このように回転切削工具140を使用する前に、あらかじめ回転切削工具140を壁体200に挿入できる水平穴210を形成する。
【0125】
なお、この場合でも圧縮空気回転駆動手段130は、冷却された冷却圧縮空気をコアドリルビット300に流しながら切削することで、コアドリルビット300の高温化を防止することができる。
【0126】
図8(B)はコアドリルビット300を装着した圧縮空気回転駆動手段130で壁体200に円筒状の穴を形成した様子を示している。コアドリルビット300を装着した圧縮空気回転駆動手段130で穿孔が完了すると、壁体200からコアドリルビット300を装着した圧縮空気回転駆動手段130を抜去する。その後、壁体200には円筒状のコンクリート220が残された状態となる。
【0127】
図8(C)は壁体200に残されたコンクリート220を取り除く作業を示す図である。壁体200に残されたコンクリート220は、コアドリルビット300などによって形成された穴の隙間にバール400などを差し込み、コンクリート220を壁体200の内部で分割して外部に取り出す。
【0128】
図8(D)は壁体200に残されたコンクリート220を撤去した跡の様子を示している。
図8(C)のように壁体200に残されたコンクリート220は、分割して外部に取り出すが、完全にコンクリート220を外部に取り出すことは困難であり、どうしても形成された穴の奥はコンクリート片221が残ってしまう。この残されたコンクリート片221は後に使用する回転切削工具140で切削する。
【0129】
このように、回転切削工具140を使用して耐震スリットを形成するためには、あらかじめ回転切削工具140を挿入する穴を形成し、後に説明するように回転切削工具140を用いて溝状の耐震スリットを形成することで、回転切削工具140やコアドリルビット300の摩耗を分散することができる。
【0130】
図9は、回転切削工具を用いて耐震スリットを形成する切削方法の手順を示す図である。
図9に示すように、回転切削工具140を用いて(A)~(C)の手順で壁体200に耐震スリットである溝部を形成する。
【0131】
図9(A)は圧縮空気回転駆動手段130に回転切削工具140を装着し、壁体200にあらかじめ形成された水平穴210に回転切削工具140を挿入した様子を示している。
図9(A)に示すように、壁体200にあらかじめ設けられた水平穴210に回転切削工具140を挿入している。
【0132】
壁体200に形成された水平穴210の奥にはコンクリート片221が残されており、回転切削工具140を回転させながら壁体200の厚さ方向に回転切削工具140を装着した圧縮空気回転駆動手段130を移動させることでコンクリート片221を切削することができる。
【0133】
図9(B)は回転切削工具140を装着した圧縮空気回転駆動手段130を用いて、壁体200に形成された凹部の奥に残されたコンクリート片221を切削した直後を示している。
【0134】
この状態で、さらに壁体200の厚さ方向に回転切削工具140を移動させることで、切削刃部142である第一刃セグメント142Aおよび第二刃セグメント142Bが壁体200を厚さ方向に切削し、壁体200に水平穴210を形成する。
【0135】
図9(C)は回転切削工具140を取り付けた圧縮空気回転駆動手段130を用いて、壁体200を切削することで耐震スリットである溝部を形成した様子を示している。
【0136】
図9(C)に示すように、
図7(B)の状態から回転切削工具140を装着した圧縮空気回転駆動手段130を鉛直下方向に移動させて壁体200を切削刃部142である第三刃セグメント142Cで鉛直方向に切削し、壁体200に耐震スリットとなる溝部を形成する。
【0137】
このようにコアドリルビット300で壁体200に水平方向の水平穴210を形成し、回転切削工具140が有する第二刃セグメント142Bおよび第三刃セグメント142Cで壁体200を切削することで、耐震スリットである溝部を形成することができる。
以上のように、
図7の工程、または
図8および
図9の工程を経て壁体200に溝部である耐震スリットを形成することができる。
【0138】
なお、本実の形態では、回転切削工具140を取り付けた圧縮空気回転駆動手段130を鉛直下方向に移動させて壁体200に溝部である耐震スリットを形成したが、回転切削工具140を取り付けた圧縮空気回転駆動手段130を鉛直上方向または水平方向に移動させて壁体200に溝部である耐震スリットを形成してもよい。また垂直方向に限らず、対角線方向など任意に設定することができる。
【0139】
また、本実の形態では、回転切削工具140が有する本体部141の内部に形成された筒状の流路Cに、冷却圧縮空気供給口144より供給された冷却圧縮空気を取り入れ、本体部141の先端に設けられた冷却圧縮空気排出口145Aおよび周面に設けられた複数の冷却圧縮空気排出口145Bから冷却圧縮空気を排出することで、回転切削工具140を冷却したが、回転して被削材を切削する回転切削工具140の外部から、回転切削工具140に圧縮空気回転駆動手段130から排出される冷却圧縮空気の一部を吹き付けることで、回転切削工具140を冷却するようにすることもできる。
【0140】
また、本実の形態では、圧縮空気回転駆動手段130としてエアーモーターを例として説明したが、圧縮空気回転駆動手段130は供給された電力によって回転駆動を発生させる電気回転駆動手段、たとえば電気ドリルであってもよい。
【0141】
この場合、圧縮空気冷却手段120によって冷却された冷却圧縮空気は、たとえば冷却圧縮空気供給口144に接続され、冷却圧縮空気供給口144より供給されて流路Cを流れた冷却圧縮空気は本体部141の先端に設けられた冷却圧縮空気排出口145Aおよび周面に設けられた複数の冷却圧縮空気排出口145Bにより排出される。
【0142】
これにより、回転切削工具140と壁体との接点の高温下を抑制しながら壁体を切削できるので、回転切削工具140の摩耗を抑制でき、低コストで耐震スリットを形成することができる。
【0143】
なお、圧縮空気回転駆動手段130に電気ドリルを用いた場合に、圧縮空気冷却手段120と冷却圧縮空気供給口144に接続するためには、従来、切削液を流していた流路に、切削液の代わりに圧縮空気冷却手段120が冷却した冷却圧縮空気を流すことで、圧縮空気冷却手段120と冷却圧縮空気供給口144に接続するこができる。これにより、従来、切削液が流れていた流路に圧縮空気冷却手段120が冷却した冷却圧縮空気を流すことができる。
【0144】
〔第2の実施の形態〕
次に、本発明の第2の実施の形態について説明する。本実施の形態の切削装置は、切削屑を集塵するための集塵手段を備えること以外は、第1の実施の形態で示した構成とほぼ同様である。このため、上記第1の実施の形態とほぼ同様の構成部分については同一の符号を付すなどして適宜その説明を省略する。
【0145】
以下、本発明の第2の実施の形態を、図面を参照して詳細に説明する。
図10は、第2の実施の形態に係る切削装置全体を示す全体図である。
図10に示すように切削装置100は、空気圧縮装置110、圧縮空気冷却手段120、圧縮空気回転駆動手段130、回転切削工具140、および集塵手段150を備えている。
【0146】
集塵手段150は、回転切削工具140が回転することで切削した被削材であるコンクリート製の壁体の切削屑を集塵するためのものであって、集塵機本体151、フィルター部152、およびカバー153を備えている。
【0147】
カバー153は、回転切削工具140の周面を覆うように設けられ、回転切削工具140の先端側が開口された筒状のカバー部材である。カバー153のうち回転切削工具140の基端側は、圧縮空気回転駆動手段130に密着するように取り付けられており、カバー153を被削材であるコンクリート製の壁体に押し付けることで、カバー153の開口部が閉口されて密閉される。
【0148】
またカバー153は、回転切削工具140の長手方向に伸縮自在な蛇腹折り円筒による蛇腹材である。これにより、回転切削工具140の先端側を被削材に押し付けて被削材を切削する際に、カバー153が密閉された状態で収縮する。
【0149】
また蛇腹折り円筒が備えるバネ特性により、カバー153の先端を被削材に押し当てることで収縮されたカバー153は、復元力によりカバー153が伸長方向に力が働く。このため、カバー153の開口部は、適度に被削材に押し返されて閉口される。これにより、カバー153は圧縮空気回転駆動手段130と被削材とで密閉される。
【0150】
カバー153の一部には、ホースHを介して集塵機本体151が接続されており、ホースHを介してカバー153内の空気が集塵機本体151の動作によって吸引される。カバー153内の切削屑は、ホースHを通って集塵機本体151に吸引され、フィルター部152に切削屑が蓄積される。フィルター部152によって切削屑が取り除かれて浄化された空気は、図示しない排出口から外部に排出される。
【0151】
カバー153が被削材と圧縮空気回転駆動手段130とによって密閉された状態で、回転切削工具140が被削材を切削するので、切削によって生じた切削屑はカバー153内にとどめることができる。
【0152】
カバー153内にとどまった切削屑は、集塵機本体151によってホースHを介して吸引されてフィルター部152に切削屑が蓄積される。これにより切削屑が周囲に飛散することなく切削作業を行うことができる。
【0153】
図11は、回転駆動手段に装着したカバーの構造例を示す側面図である。
図11に示すように、カバー153は、本体部131に連結され、回転切削工具140および回転軸部134の周面を覆うように設けられ、回転切削工具140の先端側が開口されている。
【0154】
カバー153の開口部には、被削材であるコンクリート製の壁体の壁面に形成される不陸に柔軟に対応する弾性を備えた不陸緩衝材154を備えることができる。不陸緩衝材154はカバー153先端側に形成された開口部の形状と同様の形状、たとえばドーナツ状の円形の緩衝材である。
【0155】
この不陸緩衝材154の弾性により不陸緩衝材154が壁面に隙間なく柔軟に対応することができるため、カバー153の先端側に形成された開口部を被削材に密着することができる。これにより、切削屑が外部に飛散することなく切削作業を行うことができる。
【0156】
不陸緩衝材154の例としては、多数の繊維や針金などを植え付けられたブラシ材、または空気は通すが、切削屑は通さないような、スポンジ等の多孔性の柔軟材料などが挙げられる。
【0157】
図12は、被削材である壁体に耐震スリットを形成する切削方法の手順例を示す図である。
図12に示すように、集塵手段150が有するカバー153を周囲に備えた回転切削工具140を用いて被削材である壁体200に耐震スリットを形成するには(A)~(C)の手順で壁体200に耐震スリットである溝部を形成する。
【0158】
図12(A)は圧縮空気回転駆動手段130に回転切削工具140およびカバー153を装着し、壁体200を切削する前の状態を示している。
図12(A)に示すように、まず回転切削工具140の先端をカバー153で覆える長さまで回転切削工具140の長手方向に伸縮するカバー153を伸長させる。
【0159】
次に、回転切削工具140の先端およびカバー153の先端開口部に設けられた不陸緩衝材154を壁体200向け、回転切削工具140が鉛直になるように設置し、圧縮空気回転駆動手段130を駆動させた状態で回転切削工具140の先端および不陸緩衝材154を壁体200に徐々に近づけていく。
【0160】
図12(B)は集塵手段150が有するカバー153を周囲に備えた回転切削工具140が回転駆動することで壁体200を切削した様子を示している。
図12(A)の状態から、圧縮空気回転駆動手段130を駆動させた状態で回転切削工具140の先端および不陸緩衝材154を壁体200に徐々に近づけていくと、やがて不陸緩衝材154が壁体200の壁面に接触する。
【0161】
さらに回転切削工具140の先端を壁体200に近づけることで、不陸緩衝材154が壁面に接触した状態でカバー153が収縮する。やがて回転切削工具140の先端に設けられた切削刃部142である第一刃セグメント142Aおよび第二刃セグメント142Bが壁体200を接触し、切削刃部142が壁体200を切削し始める。
【0162】
この状態で、さらに壁体200の厚さ方向に回転切削工具140を移動させることで、切削刃部142である第一刃セグメント142Aおよび第二刃セグメント142Bが壁体200を厚さ方向に切削し、壁体200に水平穴210を形成する。
【0163】
このとき回転切削工具140が壁体200を切削することで生じる切削屑は、カバー153および不陸緩衝材154が壁体200の壁面に密着しているので、カバー153内にとどまり、カバー153に連結したここでは図示しないホースHを介して、集塵機本体151によって吸引される。
【0164】
図7(C)は集塵手段150が有するカバー153を周囲に備えた回転切削工具140を取り付けた圧縮空気回転駆動手段130を用いて、壁体200を切削することで耐震スリットである溝部を形成した様子を示している。
【0165】
図7(C)に示すように、
図7(B)の状態から回転切削工具140を装着した圧縮空気回転駆動手段130を鉛直下方向に移動させて壁体200を切削刃部142である第三刃セグメント142Cで鉛直方向に切削し、壁体200に耐震スリットとなる溝部を形成する。
【0166】
このように回転切削工具140の周面に備えられた切削刃部142である第一刃セグメント142Aおよび第二刃セグメント142Bで壁体200に水平方向の水平穴210を形成し、第二刃セグメント142Bおよび第三刃セグメント142Cで壁体200を切削することで、耐震スリットである溝部を形成することができる。
【0167】
このとき回転切削工具140が壁体200を切削することで生じる切削屑は、カバー153および不陸緩衝材154が壁体200の壁面に密着しているので、カバー153内にとどまり、カバー153に連結したここでは図示しないホースHを介して、集塵機本体151によって吸引される。
【0168】
以上により、切削装置100は、集塵手段150を備えることで、壁体200を切削するときに生じる切削屑が、集塵手段150が有するカバー153の内部にとどまり、集塵機本体151がカバー153内を吸引するため、切削屑が周囲に飛散することなく切削作業を行うことができる。
【0169】
次に、本発明の第3の実施の形態について説明する。本実施の形態の切削装置は、空気圧縮装置、圧縮空気冷却手段、回転駆動手段、および回転切削工具の接続方法が異なること以外は、第1の実施の形態で示した構成とほぼ同様である。このため、上記第1の実施の形態とほぼ同様の構成部分については同一の符号を付すなどして適宜その説明を省略する。
【0170】
〔第3の実施の形態〕
以下、本発明の第3の実施の形態を、図面を参照して詳細に説明する。
図13は、第3の実施の形態に係る切削装置全体を示す全体図である。
図13に示すように切削装置100は、空気圧縮装置110、圧縮空気冷却手段120、圧縮空気回転駆動手段130、および回転切削工具140を備えている。
【0171】
空気タンク112に貯蔵された圧縮空気は圧縮空気弁113より排出される。また圧縮空気弁113はホースHを介して分岐カプラーBCに接続されており、圧縮空気弁113より排出された圧縮空気は分岐カプラーBCによって分岐され、一方がホースHを介して圧縮空気冷却手段120に接続され、他方がホースHを介して圧縮空気回転駆動手段130に接続される。
【0172】
これにより、空気圧縮装置110で製造された圧縮空気は、圧縮空気冷却手段120および圧縮空気回転駆動手段130に供給される。なお、ここでは圧縮空気弁113より排出された圧縮空気は分岐カプラーBCによって分岐する例でしますが、この他にも、圧縮空気冷却手段120および圧縮空気回転駆動手段130にそれぞれ異なる空気圧縮装置110を接続することもできる。
【0173】
圧縮空気冷却手段120は、空気圧縮装置110および圧縮空気回転駆動手段130に接続されており、空気圧縮装置110から供給された圧縮空気を冷却するための装置であって、いわゆるエアークーラーである。
【0174】
圧縮空気冷却手段120は、本体部121、圧縮空気供給口122、加熱圧縮空気排出口123、および冷却圧縮空気排出口124を備えている。
圧縮空気供給口122は、本体部121の一部に設けられており、空気圧縮装置110から分岐カプラーBCおよびホースHを介して供給された圧縮空気を取り入れるためのものである。
【0175】
冷却圧縮空気排出口124はホースHおよび回転継手であるスイベルジョイントSJを介して圧縮空気回転駆動手段130が有する回転軸部134に接続されており、圧縮空気冷却手段120により冷却された冷却圧縮空気が回転軸部134に接続される回転切削工具140に供給される。
【0176】
圧縮空気回転駆動手段130は、ホースHおよび分岐カプラーBCを介して接続される空気圧縮装置110、および回転切削工具140に接続されており、空気圧縮装置110から供給される圧縮空気の圧力から回転駆動を発生させる、いわゆるエアーモーターである。
【0177】
圧縮空気回転駆動手段130は、本体部131、圧縮空気供給口132A、動力部133、回転軸部134、および圧縮空気排出口135Aを備えている。
冷却圧縮空気供給口132は、本体部131の一部に設けられており、空気圧縮装置110からホースHおよび分岐カプラーBCを介して供給された圧縮空気を取り入れるためのものである。
【0178】
動力部133は、本体部121の一部に設けられており、圧縮空気供給口132Aから供給された圧縮空気による空気の圧力から回転駆動を発生させるためのモーターである。
動力部133には、回転軸部134が接続されており、動力部133により発生された回転駆動が回転軸部134に伝えられて、回転軸部134が回転駆動する。
【0179】
圧縮空気排出口135Aは、圧縮空気供給口132Aから供給され、動力部133で回転駆動が発生された圧縮空気を排出するための排出口である。また、圧縮空気供給口132A、動力部133を連通して圧縮空気が流れる流路が設けられ、圧縮空気排出口135Aを介して、圧縮空気は外気中に排出される。
【0180】
またチャック部143には、スイベルジョイントSJを介して圧縮空気冷却手段120から供給された冷却圧縮空気の流路が接続されて、スイベルジョイントSJを介して流される冷却圧縮空気が供給される冷却圧縮空気供給口144を備えている。
【0181】
本体部141の内部を連通して冷却圧縮空気供給口144から供給された冷却圧縮空気が流れる流路が設けられ、回転切削工具140の所望の位置、たとえば回転切削工具140の先端部などに供給された冷却圧縮空気を排出するための冷却圧縮空気排出口145が設けられる。
【0182】
本実施の形態の切削装置100では、まず空気圧縮装置110が空気を圧縮する。次に空気圧縮装置110が圧縮した空気が分岐され、分岐カプラーBCを介して供給された圧縮空気を圧縮空気冷却手段120が熱風と冷風とに分離する。
これと同時に、分岐カプラーBCを介して供給された圧縮空気によって圧縮空気回転駆動手段130が回転駆動し、この回転駆動によって回転切削工具140が回転する。
【0183】
圧縮空気冷却手段120が圧縮空気を分離することで加熱された圧縮空気は空気中に排出され、冷却された冷却圧縮空気はスイベルジョイントSJを介して回転する回転切削工具140に供給される。
【0184】
これにより、回転切削工具140が回転することに伴って、常に冷却された冷却圧縮空気が回転切削工具140を通じて排出されるので、回転切削工具140は冷却され、コンクリート製の壁体を切削しても高温になることがなく、低温下でコンクリート製の壁体を切削することができる。
【0185】
このように冷却圧縮空気を回転切削工具140から排出しながら切削することで、切削時に発生する熱による切削工具10の摩耗抑制を目的とする切削液を使用する必要がなくなる。
【0186】
〔第4の実施の形態〕
以下、本発明の第4の実施の形態を、図面を参照して詳細に説明する。
図14は、第4の実施の形態に係る切削装置全体を示す全体図である。
図14に示すように切削装置100は、空気圧縮装置110、圧縮空気冷却手段120、電気回転駆動手段160、および回転切削工具140を備えている。
【0187】
空気タンク112に貯蔵された圧縮空気は圧縮空気弁113より排出される。また圧縮空気弁113はホースHを介して圧縮空気冷却手段120に接続されており、空気圧縮装置110で製造された圧縮空気が圧縮空気冷却手段120に供給される。
【0188】
圧縮空気冷却手段120は、空気圧縮装置110および電気回転駆動手段160に接続されており、空気圧縮装置110から供給された圧縮空気を冷却するための装置であって、いわゆるエアークーラーである。
【0189】
圧縮空気冷却手段120は、本体部121、圧縮空気供給口122、加熱圧縮空気排出口123、および冷却圧縮空気排出口124を備えている。
圧縮空気供給口122は、本体部121の一部に設けられており、空気圧縮装置110からホースHを介して供給された圧縮空気を取り入れるためのものである。
【0190】
冷却圧縮空気排出口124はホースHおよび回転継手であるスイベルジョイントSJを介して電気回転駆動手段160が有する回転軸部162に接続されており、圧縮空気冷却手段120により冷却された冷却圧縮空気が回転軸部162に接続される回転切削工具140に供給される。
【0191】
電気回転駆動手段160は、ここでは図示しない商用電源や発電機などの電源に接続されており、電源から供給された電力により回転駆動を動力部161が発生させて回転軸部162を回転させる、いわゆる電気ドリルである。
【0192】
チャック部143には、スイベルジョイントSJを介して圧縮空気冷却手段120から供給された冷却圧縮空気の流路が接続されて、スイベルジョイントSJを介して流される冷却圧縮空気が供給される冷却圧縮空気供給口144を備えている。
【0193】
本体部141の内部を連通して冷却圧縮空気供給口144から供給された冷却圧縮空気が流れる流路が設けられ、回転切削工具140の所望の位置、たとえば回転切削工具140の先端部などに供給された冷却圧縮空気を排出するための冷却圧縮空気排出口145が設けられる。
【0194】
本実施の形態の切削装置100では、まず空気圧縮装置110が空気を圧縮する。次に空気圧縮装置110が圧縮した空気が分岐され、分岐カプラーBCを介して供給された圧縮空気を圧縮空気冷却手段120が熱風と冷風とに分離する。
これと同時に、分岐カプラーBCを介して供給された圧縮空気によって圧縮空気回転駆動手段130が回転駆動し、この回転駆動によって回転切削工具140が回転する。
【0195】
圧縮空気冷却手段120が圧縮空気を分離することで加熱された圧縮空気は空気中に排出され、冷却された冷却圧縮空気はスイベルジョイントSJを介して回転する回転切削工具140に供給される。
【0196】
これにより、回転切削工具140が回転することに伴って、常に冷却された冷却圧縮空気が回転切削工具140を通じて排出されるので、回転切削工具140は冷却され、コンクリート製の壁体を切削しても高温になることがなく、低温下でコンクリート製の壁体を切削することができる。
【0197】
このように冷却圧縮空気を回転切削工具140から排出しながら切削することで、切削時に発生する熱による切削工具10の摩耗抑制を目的とする切削液を使用する必要がなくなる。
【符号の説明】
【0198】
100 切削装置
110 空気圧縮装置
111 圧縮機本体
112 空気タンク
113 圧縮空気弁
120 圧縮空気冷却手段
121、131、141 本体部
122 圧縮空気供給口
123 加熱圧縮空気排出口
124、135、145、145A、145B 冷却圧縮空気排出口
125 過流発生器
126 調整弁
130 回転駆動手段
132、144 冷却圧縮空気供給口
132A 圧縮空気供給口
133 動力部
134 回転軸部
135A 圧縮空気排出口
140 回転切削工具
H ホース