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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022065208
(43)【公開日】2022-04-27
(54)【発明の名称】有軌道台車用通信システム
(51)【国際特許分類】
   H04B 10/114 20130101AFI20220420BHJP
   B61B 3/02 20060101ALI20220420BHJP
   G02B 6/00 20060101ALI20220420BHJP
【FI】
H04B10/114
B61B3/02 A
G02B6/00 C
G02B6/00 326
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2019029519
(22)【出願日】2019-02-21
(71)【出願人】
【識別番号】000006297
【氏名又は名称】村田機械株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】899000079
【氏名又は名称】学校法人慶應義塾
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【弁理士】
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100140442
【弁理士】
【氏名又は名称】柴山 健一
(74)【代理人】
【識別番号】100156395
【弁理士】
【氏名又は名称】荒井 寿王
(72)【発明者】
【氏名】石橋 正和
(72)【発明者】
【氏名】春山 真一郎
【テーマコード(参考)】
2H038
5K102
【Fターム(参考)】
2H038AA21
2H038BA42
5K102AA26
5K102AD05
5K102AL11
5K102AL23
5K102AL28
5K102PA14
5K102PB02
5K102PH33
(57)【要約】
【課題】光学的な接続が容易な有軌道台車用通信システムを提供する。
【解決手段】有軌道台車用通信システム100は、軌道2と、軌道2を走行する台車3と、台車3との間で情報を通信するコントローラ4と、を備える有軌道台車1に用いられる。有軌道台車用通信システム100は、コントローラ4から台車3へ第1情報を通信する第1通信系50を備える。第1通信系50は、第1発光素子52、光ファイバ53及び第1受光素子54を含む。第1発光素子52は、コントローラ4に接続され、第1情報を光として出力する。光ファイバ53は、軌道2に沿って配置され、蛍光体又は希土類が添加されたコア53aを有し、第1発光素子52の光が入力されることによりコア53aで発光すると共に、発光した当該光を外部に漏洩させる。第1受光素子54は、台車3に搭載され、光ファイバ53から漏洩した当該光を受光する。
【選択図】図1

【特許請求の範囲】
【請求項1】
軌道と、前記軌道を走行する1又は複数の台車と、前記台車との間で情報を通信するコントローラと、を備える有軌道台車に用いられる通信システムであって、
前記コントローラから前記台車へ第1情報を通信する第1通信系を備え、
前記第1通信系は、
前記コントローラに接続され、前記第1情報を光として出力する第1発光素子と、
前記軌道に沿って配置され、蛍光体又は希土類が添加されたコアを有し、前記第1発光素子の光が入力されることにより前記コアで発光すると共に、発光した当該光を外部に漏洩させる光ファイバと、
前記台車に搭載され、前記光ファイバから漏洩した当該光を受光する第1受光素子と、を含む、有軌道台車用通信システム。
【請求項2】
前記台車から前記コントローラへ第2情報を通信する第2通信系を備える、請求項1に記載の有軌道台車用通信システム。
【請求項3】
前記第2通信系は、前記台車に搭載され、前記第2情報を光として出力する第2発光素子を含み、
前記光ファイバは、前記第1通信系及び前記第2通信系の双方を構成する光ファイバであって、前記第2発光素子の光が当該光ファイバの途中から入力されることにより前記コアで発光する共に、発光した当該光を伝送し、
前記第2通信系は、前記コントローラに接続され、前記光ファイバが伝送した当該光を受光する第2受光素子を含む、請求項2に記載の有軌道台車用通信システム。
【請求項4】
前記第2通信系は、
前記台車に搭載され、前記第2情報を、前記第2発光素子から光として出力される第2信号へ変換する第2変換部と、
前記第2受光素子が光として受信した前記第2信号を、前記第2情報へ変換する第2逆変換部と、を更に含み、
前記第2変換部は、マルチキャリア変調を用いて前記第2情報を前記第2信号に変換する、請求項3に記載の有軌道台車用通信システム。
【請求項5】
前記第1発光素子の光と前記第2発光素子の光とは、互いに異なる周波数域を有する、請求項3又は4に記載の有軌道台車用通信システム。
【請求項6】
前記第1発光素子の光と前記第2発光素子の光とは、時間的に互いにずれて前記光ファイバに入力される、請求項3~5の何れか一項に記載の有軌道台車用通信システム。
【請求項7】
前記第1発光素子の光と前記第2発光素子の光とは、互いに異なる波長帯を有する、請求項3~6の何れか一項に記載の有軌道台車用通信システム。
【請求項8】
前記第1通信系は、
前記第1情報を、前記第1発光素子から光として出力される第1信号に変換する第1変換部と、
前記台車に搭載され、前記第1受光素子が光として受信した前記第1信号を、前記第1情報へ変換する第1逆変換部と、を更に含み、
前記第1変換部は、マルチキャリア変調を用いて前記第1情報を前記第1信号に変換する、請求項1~7の何れか一項に記載の有軌道台車用通信システム。
【請求項9】
前記第1発光素子の光は、赤外光、可視光及び紫外光の少なくとも何れかを含む、請求項1~8の何れか一項に記載の有軌道台車用通信システム。
【請求項10】
前記第2発光素子の光は、赤外光、可視光及び紫外光の少なくとも何れかを含む、請求項3~7の何れか一項に記載の有軌道台車用通信システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有軌道台車用通信システムに関する。
【背景技術】
【0002】
有軌道台車用通信システムに関する技術として、例えば特許文献1に記載された移動式監視装置が知られている。特許文献1に記載された移動式監視装置は、走行軌道を走行する移動式監視装置本体と、移動式監視装置本体との間で情報を通信するホストコンピュータと、を備える。ホストコンピュータから移動式監視装置本体に送信される制御命令は、光信号に変換されて漏洩光軸ファイバを伝播される。漏洩光軸ファイバから漏洩した光信号は、移動式監視装置本体において受光される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平5-281393号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、有軌道台車用通信システムでは、コントローラから台車への通信に漏洩光軸ファイバが用いられる場合がある。この場合、例えば、コアに石英ガラスを用いた漏洩光軸ファイバ(例えば、米国コーニング社のFIBRANCE(登録商標))は一般的にコア径が小さいため、該ファイバを光学的に接続する際には、そのコアの位置等を調整することが難しい。よって、光学的な接続が容易ではないという問題がある。
【0005】
そこで、本発明は、光学的な接続が容易な有軌道台車用通信システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一形態に係る有軌道台車用通信システムは、軌道と、軌道を走行する1又は複数の台車と、台車との間で情報を通信するコントローラと、を備える有軌道台車に用いられる通信システムであって、コントローラから台車へ第1情報を通信する第1通信系を備え、第1通信系は、コントローラに接続され、第1情報を光として出力する第1発光素子と、軌道に沿って配置され、蛍光体又は希土類が添加されたコアを有し、第1発光素子の光が入力されることによりコアで発光すると共に、発光した当該光を外部に漏洩させる光ファイバと、台車に搭載され、光ファイバから漏洩した当該光を受光する第1受光素子と、を含む。
【0007】
この有軌道台車用通信システムでは、コントローラに接続された第1発光素子から光が出力され、その光が光ファイバに入力されることで、光ファイバにおいて蛍光体又は希土類が添加されたコアで発光する。発光した光は、光ファイバの外部に漏洩し、台車に搭載された第1受光素子で受光される。このように、本発明の一形態では、コア径の小さい漏洩光軸ファイバを用いずに、コントローラから台車へ第1情報を通信することができる。蛍光体又は希土類が添加されたコアを有する光ファイバは、一般的にはプラスチック光ファイバであり、コアに石英ガラスを用いた漏洩光軸ファイバに比べて、例えばコア径が大きく、光学的な接続に際して調整がし易い。したがって、本発明の一形態によれば、光学的な接続が容易な有軌道台車用通信システムを実現することできる。
【0008】
本発明の一形態に係る有軌道台車用通信システムは、台車からコントローラへ第2情報を通信する第2通信系を備えていてもよい。この構成によれば、第2通信系を利用して、台車からコントローラへの第2情報の通信が可能となる。
【0009】
本発明の一形態に係る有軌道台車用通信システムでは、第2通信系は、台車に搭載され、第2情報を光として出力する第2発光素子を含み、光ファイバは、第1通信系及び第2通信系の双方を構成する光ファイバであって、第2発光素子の光が当該光ファイバの途中から入力されることによりコアで発光する共に、発光した当該光を伝送し、第2通信系は、コントローラに接続され、光ファイバが伝送した当該光を受光する第2受光素子を含んでいてもよい。この構成によれば、1つの光ファイバで双方向通信(コントローラから台車への通信及び台車からコントローラへの通信)が可能となる。
【0010】
本発明の一形態に係る有軌道台車用通信システムでは、第2通信系は、台車に搭載され、第2情報を、第2発光素子から光として出力される第2信号へ変換する第2変換部と、第2受光素子が光として受信した第2信号を、第2情報へ変換する第2逆変換部と、を更に含み、第2変換部は、マルチキャリア変調を用いて第2情報を第2信号に変換してもよい。この構成によれば、第2情報を分割し、分割された第2情報を重ね合わせて(多重化して)同時に送信することができる。第2通信系において高速な通信を行うことが可能となる。
【0011】
本発明の一形態に係る有軌道台車用通信システムでは、第1発光素子の光と第2発光素子の光とは、互いに異なる周波数域を有していてもよい。これにより、光ファイバにおいて第1発光素子の光と第2発光素子の光とが互いに悪影響を及ぼし合うのを抑制することができる。
【0012】
一形態に係る有軌道台車用通信システムでは、第1発光素子の光と第2発光素子の光とは、時間的に互いにずれて光ファイバに入力されてもよい。これにより、光ファイバにおいて第1発光素子の光と第2発光素子の光とが互いに悪影響を及ぼし合うのを抑制することができる。
【0013】
本発明の一形態に係る有軌道台車用通信システムでは、第1発光素子の光と第2発光素子の光とは、互いに異なる波長帯を有していてもよい。これにより、光ファイバにおいて第1発光素子の光と第2発光素子の光とが互いに悪影響を及ぼし合うのを抑制することができる。
【0014】
本発明の一形態に係る有軌道台車用通信システムでは、第1通信系は、第1情報を、第1発光素子から光として出力される第1信号に変換する第1変換部と、台車に搭載され、第1受光素子が光として受信した第1信号を、第1情報へ変換する第1逆変換部と、を更に含み、第1変換部は、マルチキャリア変調を用いて第1情報を第1信号に変換してもよい。この構成によれば、第1情報を分割し、分割された第1情報を重ね合わせて(多重化して)同時に送信することができる。第1通信系において高速な通信を行うことが可能となる。
【0015】
本発明の一形態に係る有軌道台車用通信システムでは、第1発光素子の光は、赤外光、可視光及び紫外光の少なくとも何れかを含んでいてもよい。一形態に係る有軌道台車用通信システムでは、第2発光素子の光は、赤外光、可視光及び紫外光の少なくとも何れかを含んでいてもよい。このような光を用いることにより、電波を用いる場合に比べて、台車とコントローラとの間でより高速なデータ速度を実現できる。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、光学的な接続が容易な有軌道台車用通信システムを提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】一実施形態に係る有軌道台車用通信システムの構成を示す概略図である。
図2図1の有軌道台車用通信システムの構成を示す概略断面図である。
図3図1の光ファイバにおける光の漏洩を説明する図である。
図4図1の光ファイバにおいて途中からの光の入力による光の伝送を説明する図である。
図5図1の光ファイバのコアに添加された蛍光体の吸収波長及び放射波長を示す図である。
図6図1の光ファイバの伝送性能を示す図である。
図7】変形例に係る有軌道台車用通信システムの構成を示す概略図である。
図8】OFDM方式を説明するための図である。
図9】OFDM方式を説明するための図である。
図10】OFDM方式を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、図面を参照して種々の実施形態について詳細に説明する。なお、各図面において同一又は相当の部分に対しては同一の符号を付し、重複する説明を省略する。
【0019】
図1に示されるように、有軌道台車用通信システム100は、有軌道台車1に用いられる通信システムである。有軌道台車用通信システム100は、例えば工場内又は倉庫内における天井走行式搬送車システムを構成する。有軌道台車1は、軌道2と、軌道2を走行する台車3と、台車3との間で情報を通信するコントローラ4と、台車3に搭載された台車制御部7と、を備える。
【0020】
有軌道台車用通信システム100は、第1通信系50及び第2通信系60を備えている。第1通信系50は、コントローラ4から台車3へ第1情報を通信する下り通信を行う通信系である。第1通信系50は、第1変換部51と、第1発光素子52と、第1受光素子54と、第1逆変換部55と、を含む。第2通信系60は、台車3からコントローラ4へ第2情報を通信する上り通信を行う通信系である。第2通信系60は、第2変換部61と、第2発光素子62と、第2受光素子64と、第2逆変換部65と、を含む。
【0021】
本実施形態において、第1通信系50は、信号伝送路として光ファイバ53を含み、この光ファイバ53は、第2通信系60の信号伝送路としても機能する。つまり、第1通信系50及び第2通信系60では、光ファイバ53が兼用されており、第1通信系50及び第2通信系60のそれぞれに共通の光ファイバ53が含まれる。
【0022】
図2に示されるように、軌道2は、その断面が下向きU字形状であって台車3の走行経路を形成しており、その内部空間は天井Wに設置された照明に対して遮光されて暗部となっている。軌道2は、例えばボルトB等の締結部材によって天井Wに吊り下げ固定されている。軌道2は、台車3が走行する第1レール2Aと、第1通信系50及び第2通信系60の光ファイバ53が配置された第2レール2Bと、を有している。
【0023】
第1レール2Aは、その延在方向を軸方向とする矩形筒状を呈している。第1レール2Aは、天井Wと対向する上壁21と、上壁21の幅方向の両端それぞれから下方向に延びる側壁22,23と、側壁22,23の下端それぞれから互いに近づくように内側へ水平に延びる走行レール24,25と、を有している。走行レール24と走行レール25との間には、開口が設けられている。第1レール2A内には、台車3の走行ユニット31が配置される。走行レール24,25上には、台車3の走行輪34が載置される。これにより、走行ユニット31は、第1レール2A内を走行可能に構成される。第1レール2Aは、例えばアルミニウム等の金属材料によって構成されている。
【0024】
第2レール2Bは、第1レール2Aの下部に配置されている。第2レール2Bは、第1レール2Aの走行レール24,25の下部それぞれに、例えばボルト等によって固定されている。第2レール2Bの横断面は、内側に向けて開口するU字状を呈している。第2レール2Bは、例えばアルミニウム等の金属材料により構成されている。一対の第2レール2Bのうちの一方の内部には、光ファイバ53を保持するホルダ26が設けられている。
【0025】
ホルダ26は、軌道2に沿って所定間隔で並ぶように複数配置されている。ホルダ26は、第2レール2Bの内側に固定されている。ホルダ26の横断面は、第2レール2Bに倣ったU字状を呈している。このようなホルダ26は、光ファイバ53を第2レール2Bに沿って延びるようにして保持する。これにより、光ファイバ53は、第2レール2Bによって覆われた状態で軌道2に沿って配置される。
【0026】
台車3は、第1レール2A内に配置された走行ユニット31と、荷物が積載される本体部32と、走行ユニット31と本体部32とを連結する連結部33と、を有している。台車3は、例えば第2レール2B内に配置された高周波電流線(不図示)から非接触で電力供給を受けることによって走行する。走行ユニット31には、複数の走行輪34が設けられている。走行輪34は、例えば走行ユニット31内のモータ(不図示)によって回転する。走行輪34は、第1レール2Aの走行レール24,25上に載せられている。連結部33は、走行レール24と走行レール25との間に設けられた開口を通り、且つ、一対の第2レール2Bの間を通るように設けられている。これにより、台車3は、軌道2に吊り下がった状態で軌道2に沿って走行する。
【0027】
台車3には、コントローラ4と通信を行うための通信部35が設けられている。図示する例では、通信部35は、連結部33からホルダ26内に進入するように突出している。通信部35では、光ファイバ53に対向するように第1受光素子54が配置されている。通信部35では、光ファイバ53に対向するように第2発光素子62が配置されている。これにより、台車3は、光ファイバ53と第1受光素子54及び第2発光素子62とが互いに対向した状態で、軌道2に沿って走行する。なお、台車3の構成としては、図2に示される例に限定されず、仕様等に応じて種々の構成を採用できる。
【0028】
図1に戻り、コントローラ4は、台車3との間で情報(信号)を通信する。コントローラ4は、例えば、CPU(Central Processing Unit)、RAM(Random AccessMemory)、及びROM(Read Only Memory)等を含むマイクロコンピュータシステムとして実現できる。コントローラ4は、上位制御装置(不図示)に接続されている。コントローラ4は、第1変換部51に接続された第1コントロール部4aと、第2逆変換部65に接続された第2コントロール部4bと、含む。
【0029】
第1コントロール部4aは、台車3に対して送信される第1情報を生成する信号源41を有している。第2コントロール部4bは、台車3から送信された第2情報を上位制御装置に送信する。第1情報としては、例えば台車3を走行や荷物の移載を制御するための信号が含まれ得る。第2情報としては、例えば台車3の状態を示す情報、及び台車3に搭載されたカメラ等によって撮影された画像データ等が含まれ得る。
【0030】
台車制御部7は、台車3に搭載されており、第1逆変換部55及び第2変換部61に接続されている。台車制御部7は、第1コントロール部4aから送信された第1情報に基づいて台車3を制御する。台車制御部7は、台車3からコントローラ4に対して送信される第2情報を生成し、第2情報を第2変換部61に送信する。台車制御部7は、コントローラ4と同様に、CPU、RAM、及びROM等を含むマイクロコンピュータシステムとして実現できる。
【0031】
次に、第1通信系50について具体的に説明する。
【0032】
第1変換部51は、第1コントロール部4aと第1発光素子52との間に接続されている。第1変換部51は、第1コントロール部4aの信号源41で生成された第1情報を電気的な信号である第1信号に変換する。変換された第1信号は、第1発光素子52へ送信される。第1情報から第1信号への変換方法としては、例えば、強度変調の一種であるベースバンド変調等の公知の変換方法が用いられ得る。
【0033】
第1発光素子52は、第1変換部51を介して第1コントロール部4aに接続されている。第1発光素子52は、第1情報を第1変換部51で変換してなる第1信号を、光(光信号)に変換する。これにより、第1発光素子52は、第1情報を光として出力(出射)する。第1発光素子52は、出力した光が光ファイバ53内に導入されるように、光ファイバ53の一端部又は該一端部に近接する位置に設けられている。
【0034】
第1発光素子52としては、例えばレーザダイオード(LD:Laser Diode)又はLED(Light Emitting Diode)等が用いられ得る。なお、第1発光素子52は、高速な応答特性を有し、且つ、鋭い指向性を有していることが好ましい。したがって、レーザダイオードは、LEDよりも第1発光素子52として好適である。第1発光素子52から出力される光は、赤外光、可視光及び紫外光の少なくとも何れかを含む。一例として、第1発光素子52から出力される光は、できるだけ製品コストを抑える観点では658nm程度の赤光が好ましく、また、人の目への安全性を確保する観点では赤外光が好ましい。また、第1発光素子52の出力は、例えば数mW~数十mW程度とすることができる。
【0035】
光ファイバ53は、上述したように、軌道2に沿って配置(張設)されている。第1通信系50の信号伝送路としての光ファイバ53は、第1発光素子52の光が入力されることにより、蛍光体又は希土類が添付されているコアで発光すると共に、発光した当該光を外部に漏洩させる(詳しくは、後述)。光ファイバ53は、その配置された区間において当該光を漏洩させる。光ファイバ53は、可撓性を有する。
【0036】
第1受光素子54は、台車3に搭載されている。より具体的には、第1受光素子54は、台車3の通信部35において、光ファイバ53と対向するように設けられている(図2参照)。第1受光素子54と光ファイバ53との間の距離は、例えば5mm~20mm程度とすることができる。第1受光素子54は、光ファイバ53から漏洩した光を受光し、電気的な信号である第1信号に変換する。第1受光素子54としては、例えばアバランシェフォトダイオード等を用いることができる。
【0037】
第1逆変換部55は、台車3に搭載されている。また、第1逆変換部55は、第1受光素子54と台車制御部7との間に接続されている。第1逆変換部55は、第1受光素子54が光として受信した第1信号を第1情報に逆変換する。逆変換された第1情報は、例えば台車制御部7に送信される。
【0038】
図3に示されるように、光ファイバ53は、蛍光体又は希土類(希土類金属)を含む第1添加物が添加されたコア53aと、コア53aの周囲を囲うクラッド53bと、を有する。光ファイバ53は、例えばプラスチックシンチレーションファイバであり、コア(内側)53aが第1添加物としての蛍光体入りのポリスチレン樹脂、クラッド(外側)53bがメタクリル系樹脂の(一層もしくは二層の)多重構造で、放射線が当たると光る性質を備えている。第1添加物としては、第1発光素子52の光L1に対応する蛍光体又は希土類が用いられる。つまり、第1添加物は、第1発光素子52の光L1によって励起されて発光可能な蛍光体又は希土類である。蛍光体としては、有機蛍光材料が挙げられる(以下の蛍光体で同じ)、希土類としては、例えばエルビウム、イッテルビウム、ネオジウム、ツリウム、又はホルシウム等が挙げられる(以下の希土類で同じ)。
【0039】
光ファイバ53は、その端面から第1発光素子52の光L1が入力される。これにより、当該光L1がコア53aにて伝送されながら、コア53aの第1添加物が励起され、第1添加物から光L2が四方八方に発生する。第1添加物から発生した光L2のうち、コア53aとクラッド53bとの臨界角よりも大きい角度でクラッド53bに入射した光L2は、光ファイバ53外へ漏洩される。すなわち、光ファイバ53では、その一端部から入力された光L1が有する第1信号の伝送及び漏洩を、波動光学的アプローチにより可能にしている。
【0040】
図1に戻り、第2通信系60について具体的に説明する。
【0041】
第2変換部61は、台車制御部7と第2発光素子62との間に接続されている。第2変換部61は、台車制御部7で生成された第2情報を電気的な信号である第2信号に変換する。変換された第2信号は、第2発光素子62へ送信される。第2情報から第2信号への変換方法としては、第1変換部51と同様に、例えばベースバンド変調等の公知の変換方法が用いられ得る。
【0042】
第2発光素子62は、台車3に搭載されている。より具体的には、第2発光素子62は、台車3の通信部35において、光ファイバ53と対向するように設けられている(図2参照)。第2発光素子62は、第2変換部61を介して台車制御部7に接続されている。第2発光素子62は、第2情報を第2変換部61で変換してなる第2信号を光に変換する。これにより、第2発光素子62は、第2情報を光として出力する。
【0043】
第2発光素子62としては、例えばレーザダイオード又はLED等が用いられ得る。なお、第2発光素子62は、高速な応答特性を有し、且つ、鋭い指向性を有していることが好ましい。したがって、レーザダイオードは、LEDよりも第2発光素子62として好適である。一例として、第2発光素子62から出力される光の波長帯は、光ファイバ53としてシンチレーションファイバを利用する場合に405nm程度である。第2発光素子62の出力は、例えば数mW~数十mW程度とすることができる。なお、第2発光素子62から出力される光は、できるだけ製品コストを抑える観点では658nm程度の赤光が好ましく、また、人の目への安全性を確保する観点では赤外光が好ましい。
【0044】
第2発光素子62から出力される光の波長帯は、第1発光素子52から出力される光の波長帯と異なっている。つまり、第1発光素子52の光と第2発光素子62の光とは、互いに異なる波長帯を有する。第1発光素子52の光の色と第2発光素子62の光の色とは、互いに異なっている。
【0045】
なお、第2発光素子62から出力される光の周波数域は、第1発光素子52から出力される光の周波数域とは異なっていてもよい。つまり、第1発光素子52の光と第2発光素子62の光とは、互いに異なる周波数域を有していてもよい。周波数域が異なるとは、中心周波数が異なることを意味する。例えば、中心周波数が異なっていれば、周波数域が完全に重ならないようにずれていてもよいし、周波数域の一部が重なっていてもよい。
【0046】
また、第2発光素子62の光が光ファイバ53に入力されるタイミングは、第1発光素子52の光が光ファイバ53に入力されるタイミングとはずれていてもよい。つまり、第1発光素子52の光と第2発光素子62の光とは、時間的に互いにずれて光ファイバ53に入力されていてもよい。
【0047】
光ファイバ53のコア53aには、蛍光体又は希土類を含む第2添加物が添加されている。ここでは、コア53aに蛍光体が第2添加物として添加されている。第2添加物としては、第2発光素子62の光に対応する蛍光体又は希土類が用いられる。つまり、第2添加物は、第2発光素子62の光によって励起されて発光可能な蛍光体又は希土類である。第2添加物は、第1添加物と異なる添加物である。なお、第2添加物としての蛍光体又は希土類は、第2発光素子62の光によって励起されて発光可能であれば、第1添加物としての蛍光体又は希土類と同じでもよい。
【0048】
第2通信系60の信号伝送路としての光ファイバ53は、第2発光素子62の光が当該光ファイバ53の途中から入力されることにより、コア53aで発光する共に、発光した当該光を伝送させる。換言すると、光ファイバ53は、その伝送路の途中部からの光の入力により生じた光を伝播させる。
【0049】
図4に示されるように、第2発光素子62から出力され、コア53aの外周面から入光した光P1が光ファイバ53のコア53aに入力されると、この光P1によって第2添加物が励起される。これにより、第2添加物から光P2が四方八方に発生する。第2添加物から発生した光P2のうち、コア53aとクラッド53bとの臨界角以下の角度でクラッド53bに入射した光P2は、光ファイバ53内を伝送される。すなわち、光ファイバ53では、光ファイバ53の伝送路の途中部から入力された光P1がもつ第2信号の伝送を、波動光学的アプローチにより可能にしている。
【0050】
図5に光ファイバ53の例を示す。この例の光ファイバ53は、波長が約360nm~450nm程度の光P1を吸収し、波長が約470nm~600nm程度の光P2を放射する。光ファイバ53の最大吸収波長は405nm、最大放射波長は492nmである。
【0051】
第2受光素子64は、第2逆変換部65を介して第2コントロール部4bに接続されている。第2受光素子64は、光ファイバ53によって伝送された光P2を受光し、電気的な信号である第2信号に変換する。第2受光素子64は、光ファイバ53の他端部から出力された光P2を受光できるように、光ファイバ53の他端部又は該他端部に近接する位置に設けられている。第2受光素子64としては、例えばアバランシェフォトダイオード等を用いることができる。
【0052】
第2逆変換部65は、第2受光素子64とコントローラ4との間に接続されている。第2逆変換部65は、第2受光素子64が光P2として受信した第2信号を第2情報に逆変換する。逆変換された第2情報は、例えばコントローラ4に送信される。
【0053】
図6を参照して、一例としての光ファイバ53の伝送性能について説明する。ここでは、伝送性能を評価するために、光ファイバ53に光P1が入力される位置を変化させながら光ファイバ53によって伝送された光P2の強度を測定する実験を行った。光ファイバ53としては、全長が100m程度の波長シフトファイバを使用した。光源としては、波長が405nm、出力が3mWのレーザダイオードを用いた。光源と光ファイバ53との間の距離を5mmに設定した。光ファイバ53の他端部に光検出センサを配置し、光ファイバ53によって伝送された光P2の強度を測定した。
【0054】
図6に示されるように、光ファイバ53に光P1が入力される入力位置と光検出センサとの間の距離が遠くなるにつれて、光P2の強度が低下している。したがって、光P1の入力位置と光検出センサとの間の距離が遠くなるほど、伝送される光P2が減衰することが確認できる。しかしながら、例えば、光P1の入力位置と光検出センサとの間の距離が100mであっても、光P2の強度は約-55dBm程度であり、光源から送信された信号を受信可能な強度が保たれている。したがって、この一例としての光ファイバ53を用い、この光ファイバ53の途中から入力された光P1によって発生する光P2を受信することにより、100m離れた光源から送信された信号を受信できることが確認された。
【0055】
次に、コントローラ4から台車3への下り通信(ダウンリンク)の一例を説明する。
【0056】
例えば上位コントローラからの指令に基づいて、第1コントロール部4aの信号源41により第1情報を生成する。生成した第1情報は、第1変換部51で第1信号に変換されて第1発光素子52へ送信される。第1発光素子52は、第1信号に応じた光L1を出力する。第1発光素子52からの光L1は、光ファイバ53の一端部から入力され、光ファイバ53内にて伝送される。これと共に、コア53aの第1添加物としての蛍光体が励起されて発光し、発光した光L2が光ファイバ53の周囲へと漏れ出す。
【0057】
このとき、台車3においては、第1受光素子54により、光ファイバ53から漏れ出す光L2を受光し、当該光L2を第1信号に変換する。第1信号は、第1逆変換部55で第1情報に逆変換されて、台車制御部7に送信される。台車制御部7は、第1情報に基づき台車3の走行や荷物の移載を制御する。光ファイバ53が配置された区間では、第1情報に対応する光L2が光ファイバ53から漏れ出しているため、台車3が停止中であっても走行中であっても、途切れることなく第1コントロール部4aから台車3へ第1情報を通信できる。
【0058】
次に、台車3からコントローラ4への上り通信(アップリンク)の一例を説明する。
【0059】
例えば台車3のカメラ等の撮像結果又はステータスに基づいて、台車制御部7により第2情報を生成する。生成した第2情報は、第2変換部61で第2信号に変換されて第2発光素子62へ送信される。第2発光素子62は、第2信号に応じた光P1を出力する。第2発光素子62で出力した光P1は、光ファイバ53の途中から光ファイバ53内に入力される。光ファイバ53では、当該入力により第2添加物としての蛍光体が励起されて発光する。発光した光P2は、光ファイバ53内にて伝送され、光ファイバ53の他端部から出力される。
【0060】
第2受光素子64は、光ファイバ53から出力された光P2を受光し、当該光P2を第2信号へ変換する。第2信号は、第2逆変換部65で第2情報に逆変換された後、第2コントロール部4bを介して上位コントローラへ送信される。光ファイバ53が配置された区間では、第2情報に対応する光P1を台車3の第2発光素子62により光ファイバ53の途中から入力することで、台車3が停止中であっても走行中であっても、途切れることなくから台車3から第2コントロール部4bへ第2情報を通信できる。
【0061】
以上、有軌道台車用通信システム100では、コントローラ4に接続された第1発光素子52から光L1が出力され、光L1が光ファイバ53に入力される。光ファイバ53のコア53aには第1添加物(ここでは蛍光体)が添加されていることから、光L1の光ファイバ53への入力よりコア53aで発光する。発光した光L2は、光ファイバ53の外部に漏洩し、台車3に搭載された第1受光素子54で受光される。このように、有軌道台車用通信システム100では、一般的な漏洩光軸ファイバを用いずに、コントローラ4から台車3へ第1情報を通信することができる。プラスチックシンチレーションファイバである光ファイバ53は、一般的なガラス漏洩光軸ファイバに比べて、例えばコア径が大きく、光学的な接続に際して調整がし易い。したがって、有軌道台車用通信システム100によれば、光学的な接続が容易な通信システムを実現することできる。換言すると、コントローラ4から台車3へ光通信する有軌道台車用通信システム100において、光学的な接続を容易化できる。また、光学的な接続に際して、専用の調整治具も不要となる。
【0062】
有軌道台車用通信システム100は、台車3からコントローラ4へ第2情報を通信する第2通信系60を備えている。この構成によれば、第2通信系60を利用して台車3からコントローラ4への第2情報の通信が可能となる。
【0063】
有軌道台車用通信システム100では、光ファイバ53は、第1通信系50及び第2通信系60の双方を構成する。光ファイバ53は、第1発光素子52の光L1の入力によりコア53aで発光すると共に、発光した光L2を外部に漏洩させるのに加えて、第2発光素子62の光P1が当該光ファイバ53の途中から入力されることによりコア53aで発光する共に、発光した光P2を伝送する。この構成によれば、1つの光ファイバ53で双方向通信(コントローラ4から台車3への下り通信及び台車3からコントローラ4への上り通信)が可能となる。さらに、以下の効果が達成される。設置性を向上させることができる。コントローラ4と台車3との間における第1情報及び第2情報の通信を、光を用いてリアルタイムに行うことが可能である。電波干渉がなく、台車3とコントローラ4との間で高速に通信することができる。
【0064】
有軌道台車用通信システム100では、第1発光素子52の光L1と第2発光素子62の光P1とは、互いに異なる波長帯を有している。これにより、光ファイバ53において第1発光素子52の光L1と第2発光素子62の光P1とが互いに悪影響を及ぼし合うのを抑制することができる。光ファイバ53における上り通信と下り通信との分離を、波長分割多重化で実現することが可能となる。
【0065】
なお、有軌道台車用通信システム100では、第1発光素子52の光L1と第2発光素子62の光P1とは、互いに異なる周波数域を有していてもよい。この場合、光ファイバ53において第1発光素子52の光L1と第2発光素子62の光P1とが互いに悪影響を及ぼし合うのを抑制することができる。光ファイバ53における上り通信と下り通信との分離を、周波数分割多重化で実現することが可能となる。
【0066】
或いは、有軌道台車用通信システム100では、第1発光素子52の光L1と第2発光素子62の光P1とは、時間的に互いにずれて光ファイバに入力されてもよい。この場合、光ファイバ53において第1発光素子52の光L1と第2発光素子62の光P1とが互いに悪影響を及ぼし合うのを抑制することができる。光ファイバ53における上り通信と下り通信との分離を、時分割多重化で実現することが可能となる。
【0067】
有軌道台車用通信システム100では、第1発光素子52の光L1及び第2発光素子62の光P2は、赤外光、可視光及び紫外光の少なくとも何れかを含む。このような光L1,P2を用いることにより、電波を用いる場合に比べて、台車3とコントローラ4との間でより高速なデータ速度を実現できる。
【0068】
有軌道台車用通信システム100では、第1通信系50は、第1変換部51及び第1逆変換部55を更に含む。これにより、変換された第1信号を用いて、台車3とコントローラ4との間の通信を行うことが可能である。また、有軌道台車用通信システム100では、第2通信系60は、第2変換部61及び第2逆変換部65を更に含む。これにより、変換された第2信号を用いて、台車3とコントローラ4との間の通信を行うことが可能である。
【0069】
有軌道台車用通信システム100では、光ファイバ53は、第2レール2Bによって覆われた状態で軌道2に沿って配置されている。これにより、光ファイバ53から漏洩した光L2が軌道2の外部に漏れることが抑制される。光ファイバ53から漏洩した光L2が外部の装置等に影響を及ぼすことを抑制できる。また、外部の光が光ファイバ53に入力されることも抑制されるので、通信が外部の光(例えば天井Wに設置された照明等)によって妨げられることを抑制できる。
【0070】
有軌道台車用通信システム100では、光ファイバ53は可撓性を有している。これにより、例えば軌道2がカーブを有する場合であっても、光ファイバ53を当該軌道2に沿って容易に配置することができる。
【0071】
なお、光L1を既存の漏洩光軸ファイバに入力し、入力した光L1を既存の漏洩光軸ファイバで伝送及び漏洩させ、漏洩させた光L1を受光することで、第1情報を通信する第1通信系(以下、「既存第1通信系」という)も考えられる。しかしこの場合、入力する光L1は鋭い指向性を有することから、例えば別の他の既存第1通信系で当該光L1が漏れていると、その光L1を受光してしまって正確な通信が困難になる可能性がある。この点、有軌道台車用通信システム100の第1通信系50では、光ファイバ53は、入力した光L1とは異なる光L2を漏洩させ、この光L2を受光する。よって、第1通信系50において正確な通信を行うことが可能となる。
【0072】
光ファイバ53のコア53aに添加する第1添加物及び第2添加物の種類を適宜調整することで、光ファイバ53で発光させる光L2,光P2の波長を所望に調整することが可能となる。また、光ファイバ53のコア53aに添加する第1添加物及び第2添加物の量を適宜調整することで、光ファイバ53で発光させる光L2,光P2の光量を所望に調整することが可能となる。
【0073】
コア53aに添加する第1添加物として、第1色(例えば青色)の光L1で励起されて第2色(例えば緑色)の光L2を発光する蛍光体又は希土類を用い、コア53aに添加する第2添加物として、第3色(例えばオレンジ色)の光P1で励起されて第4色(例えば青色)の光P2を発光する蛍光体又は希土類を用いてもよい。この場合、第1~第4色はそれぞれ異なる色であることから、目視により光L1,L2,P1,P2のそれぞれを確認することができる。
【0074】
光ファイバ53に光L1,P1として不可視の光(紫外光等)を入力し、光ファイバ53のコア53aで光L2,光P2として可視光を発光させてもよい。これにより、光L2,光P2の発光の有無を目視で確認することができ、ひいては、通信中かどうかを目視で確認することができる。
【0075】
また、光ファイバ53に入力する光L1,P1及び光ファイバ53のコア53aで発光させる光L2,光P2の少なくとも何れかとして、不可視の光(紫外光等)を用いてもよい。この場合、目にやさしい光ファイバ53のコア53aで光L2,光P2として可視光を発光させてもよい。これにより、ユーザの目に与えるダメージ、疲労及び負担を抑制することができる。
【0076】
図7は、変形例に係る有軌道台車用通信システム200を説明する図である。なお、以下の説明では、有軌道台車用通信システム100(図1参照)と異なる点について説明し、重複する説明は省略する。
【0077】
図7に示されるように、変形例に係る有軌道台車用通信システム200は、有軌道台車201に用いられる。有軌道台車201は、第1コントロール部4a(図1参照)及び第2コントロール部4b(図1参照)に代えて、これらの双方の機能を有する1つのコントローラ204を備えている。この場合、光ファイバ53は、例えばU字状に湾曲される。このような有軌道台車用通信システム200においても、上記効果、すなわち、光学的な接続が容易な通信システムを実現する等の効果を奏する。
【0078】
以上、本発明の実施形態について説明してきたが、本発明は上記実施形態に限定されず、種々の変更を行うことができる。
【0079】
上記実施形態では、第2通信系60は、光ファイバ53を第1通信系50と兼用して台車3からコントローラ4へ第2情報を通信したが、これに限定されない。例えば第2通信系60は、光ファイバ53とは別の他の光ファイバ53を用い、独立して第2情報を通信してもよい。第2通信系60は、光通信以外の方式で通信してもよい。第2通信系60は、有線で通信してもよいし、無線で通信してもよい。第2通信系は、例えば漏洩同軸ケーブルを用いて通信してもよい。
【0080】
上記実施形態では、有軌道台車用通信システム100が第1通信系50及び第2通信系60を1つずつ備える例について説明したが、有軌道台車用通信システム100は、複数の第1通信系50及び複数の第2通信系60を備えていてもよい。この場合、複数の第1通信系50又は複数の第2通信系60を用いて台車3とコントローラ4との間の通信を行うことができるので、台車3とコントローラ4との間の通信速度を更に向上させることができる。
【0081】
つまり、第1通信系50及び第2通信系60として複数本の光ファイバ53を平行に配置してもよい。この場合、各光ファイバ53を、制御信号の伝送用、管理情報の伝送用又は撮像画像の伝送用等の用途に応じて使い分けることができる。また、台車3の数が複数である場合、通信する台車3毎に光ファイバ53を使い分けることで、使用する帯域を広げることができる。また、各光ファイバ53によって伝送される光の波長を互いに異ならせることもできる。
【0082】
上記実施形態では、第1通信系50は、第1受光素子54を覆い、光ファイバ53から漏洩される光L2のみを通過させるフィルタを更に有していてもよい。これにより、光ファイバ53から漏洩される光L2以外の光(第2発光素子62から出力される光P1及び外光等)を遮蔽することができる。したがって、第1通信系50による第1情報の通信をより確実に行うことができる。同様に、第2通信系60は、第2受光素子64を覆い、光ファイバ53によって伝送される光P2のみを通過させるフィルタを更に有していてもよい。これにより、光ファイバ53によって伝送される光P2以外の光(第1発光素子52から出力される光L1及び外光等)を遮蔽することができる。したがって、第2通信系60による第2情報の通信をより確実に行うことができる。
【0083】
上記実施形態では、有軌道台車用通信システム100が第1変換部51、第1逆変換部55、第2変換部61及び第2逆変換部65を備える例について説明したが、有軌道台車用通信システム100は、第1変換部51、第1逆変換部55、第2変換部61及び第2逆変換部65を備えていなくてもよい。すなわち、有軌道台車用通信システム100では、第1情報及び第2情報を、それぞれ、第1信号及び第2信号に変換せずに光通信してもよい。
【0084】
上記実施形態では、光ファイバ53を複数備え、複数の光ファイバ53同士が増幅器を介して直列に接続されていてもよい。このように複数の光ファイバ53同士を直列に接続する場合、光L2が漏洩される区間及び光P2が伝送される距離を延ばすことができる。また、光L1,P2を増幅器により増幅することが可能となる。
【0085】
上記実施形態では、第1発光素子52の光L1及び第2発光素子62の光P1の双方が、赤外光、可視光及び紫外光の少なくとも何れかを含んでいるが、これらの光L1,P1のうち何れか一方が、赤外光、可視光及び紫外光の少なくとも何れかを含んでいればよい。上記実施形態では、台車3が1台である例について説明したが、台車3の数は複数であってもよい。
【0086】
上記実施形態では、光ファイバ53が可撓性を有する例について説明したが、光ファイバ53は可撓性を有していなくてもよい。上記実施形態において、光ファイバ53を軌道2に沿って配置する構成は、図2に示される例に限定されず、種々の配置構成を採用してもよい。
【0087】
上記実施形態は、例えば工場内又は倉庫内における天井走行式搬送車システムに適用した通信システムであるが、適用先の搬送車システム(有軌道台車)は特に限定されない。本発明は、半導体ウェハを収容したFOUP(Front Opening Unified Pod)を搬送する天井走行式搬送車システムに適用した通信システムであってもよいし、工場又は倉庫内で物品を搬送する地上走行式搬送車システムに適用した通信システムであってもよい。
【0088】
上記実施形態では、第1情報から第1信号への変調方式、及び、第2情報から第2信号への変調方式として、強度変調の一種であるベースバンド変調を用いる例について説明したが、当該変調方式は特に限定されない。第1変換部51(図1参照)は、マルチキャリア変調を用いて第1情報を第1信号に変換してもよい。同様に、第2変換部61(図1参照)は、マルチキャリア変調を用いて第2情報を第2信号に変換してもよい。マルチキャリア変調の一例として、OFDM(Orthogonal Frequency Division Multiplexing)方式が用いられ得る。以下、図8図10を参照して、第1変換部51及び第2変換部61の少なくとも何れかに実装可能なアプリケーションである、OFDM方式のマルチキャリア変調について説明する。図8図10は、OFDM方式を説明するための図である。
【0089】
OFDM方式では、例えば図8に示されるように、送信したい情報(すなわち、第1情報又は第2情報)をいくつかの系列に分割する。そして、それぞれの系列に対して異なるサブキャリアを割り当てて変調し、各系列に分割された情報を一括に送信する。図8に示される例では、送信したい情報を第1系列D1、第2系列D2、第3系列D3、及び第4系列D4の4つの系列に分割し、第1サブキャリアS1、第2サブキャリアS2、第3サブキャリアS3、及び第4サブキャリアS4の4種類のサブキャリアを用いて変調を行う。第1~第4サブキャリアS1,S2,S3,S4のそれぞれは、図9に示されるように、互いに異なる周波数を有している。また、OFDM方式で用いられる各サブキャリアS1,S2,S3,S4は、互いに直交している。ここで、「直交」とは、第1~第4サブキャリアS1,S2,S3,S4のそれぞれの波の位相が90度ずれている状態を言う。第1~第4サブキャリアS1,S2,S3,S4の信号の強さと周波数との関係をグラフにすると、例えば図10に示されるような波形となる。各サブキャリアS1,S2,S3,S4の波形は、サイドローブが抑制された状態となっている。各サブキャリアS1,S2,S3,S4が互いに直交していることにより、各サブキャリアS1,S2,S3,S4は、一のサブキャリアの中心周波数(電力密度が最大となる点)と他のサブキャリアのヌル点(電力密度が0となる点)とが一致するように重なり合う。例えば、第2サブキャリアS2の中心周波数においては、第1サブキャリアS1、第3サブキャリアS3、及び第4サブキャリアS4の信号の強さは0となっている。このため、限られた周波数帯に複数のサブキャリアを重ね合わせても(すなわち、複数のサブキャリアを束ねても)、サブキャリア同士の干渉を抑制することができる。
【0090】
このように、OFDM方式のマルチキャリア変調を用いて第1情報から第1信号への変換を行うことにより、分割された第1情報を重ね合わせて(多重化して)同時に送信することができるため、高速マルチチャネル化を図ることができる。したがって、第1通信系50において高速な通信を行うことができる。OFDM方式のマルチキャリア変調を用いて第2情報から第2信号へ変換を行うことにより、分割された第2情報を重ね合わせて(多重化して)同時に送信することができるため、高速マルチチャネル化を図ることができる。したがって、第2通信系60において高速な通信を行うことができる。なお、第1変換部51における変調方式と第2変換部61における変調方式とは、同一であってもよいし、互いに異なっていてもよい。
【符号の説明】
【0091】
1,201…有軌道台車、2…軌道、3…台車、4,204…コントローラ、50…第1通信系、51…第1変換部、52…第1発光素子、53…光ファイバ、53a…コア、54…第1受光素子、55…第1逆変換部、60…第2通信系、61…第2変換部、62…第2発光素子、64…第2受光素子、65…第2逆変換部、100,200…有軌道台車用通信システム、L1,L1,P1,P2…光。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10