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特開2022-6522繊維製布団篭の変形抑制構造及び繊維製布団篭
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  • 特開-繊維製布団篭の変形抑制構造及び繊維製布団篭 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022006522
(43)【公開日】2022-01-13
(54)【発明の名称】繊維製布団篭の変形抑制構造及び繊維製布団篭
(51)【国際特許分類】
   E02B 3/08 20060101AFI20220105BHJP
   E02D 17/20 20060101ALI20220105BHJP
【FI】
E02B3/08 301
E02D17/20 103G
【審査請求】有
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020108793
(22)【出願日】2020-06-24
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2020-09-23
(71)【出願人】
【識別番号】000201490
【氏名又は名称】前田工繊株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100082418
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 朔生
(74)【代理人】
【識別番号】100167601
【弁理士】
【氏名又は名称】大島 信之
(74)【代理人】
【識別番号】100201329
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 真二郎
(72)【発明者】
【氏名】井坂 慎吾
(72)【発明者】
【氏名】田中 紘一朗
【テーマコード(参考)】
2D044
2D118
【Fターム(参考)】
2D044DB43
2D118BA01
2D118BA14
2D118CA02
2D118CA07
2D118DA01
2D118FA06
2D118GA51
(57)【要約】
【課題】部材の柔軟性・軽量性と高い形状保持性とを両立可能な繊維製布団篭の変形抑制構造及び変形抑制構造を備えた繊維製布団篭を提供すること。
【解決手段】本発明の繊維製布団篭の変形抑制構造1は、繊維製布団篭Aの対向する2つの側面A3の間を連結した拘束ロープ10を備え、拘束ロープ10は、1本の拘束線材11と、拘束線材11の両端から分岐した複数本の連結線材12と、からなり、2つの側面A3の各面において、複数本の連結線材12の先端が、側面A3の経ストランドA31、緯ストランドA32、又はこれらの交点と連結していることによって、側面上A3に、中詰材Bの側圧に対して面状に抵抗可能な面状拘束部20を構成したことを特徴とする。本発明の繊維製布団篭Aは、対向する少なくとも2つの側面A3に、変形抑制構造1を構成し、内部に中詰材Bを充填してなることを特徴とする。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
編地からなる略箱型の繊維製布団篭において、前記繊維製布団篭の内部に充填した中詰材の側圧による側面のはらみ出し変形を抑制するための、繊維製布団篭の変形抑制構造であって、
前記繊維製布団篭の対向する2つの側面の間を連結した拘束ロープを備え、
前記拘束ロープは、1本の拘束線材と、前記拘束線材の両端から分岐した複数本の連結線材と、からなり、
前記2つの側面の各面において、前記複数本の連結線材の先端が、前記側面の経ストランド、緯ストランド、又はこれらの交点と連結していることによって、前記側面上に、中詰材の側圧に対して面状に抵抗可能な面状拘束部を構成したことを特徴とする、
変形抑制構造。
【請求項2】
前記拘束線材の各端における前記複数本の連結線材が、前記拘束線材の延長である中央連結線材と、前記拘束線材と結び合わせた結び目から前記中央連結線材の両側に開いた2本の側方連結線材と、からなることを特徴とする、請求項1に記載の変形抑制構造。
【請求項3】
前記2つの側面の各面において、前記複数本の連結線材の先端が、同じ高さで前記側面と連結していることを特徴とする、請求項1又は2に記載の変形抑制構造。
【請求項4】
前記複数本の連結線材が、前記側面における中央の高さで前記側面と連結していることを特徴とする、請求項3に記載の変形抑制構造。
【請求項5】
複数本の前記拘束ロープによって、前記繊維製布団篭の4つの側面をそれぞれ対向する側面と連結し、交差した2本の前記拘束ロープを交点で結合したことを特徴とする、請求項1乃至4のいずれか一項に記載の変形抑制構造。
【請求項6】
前記側面の経ストランド及び緯ストランドの一部が他より太径の補強ストランドであり、前記連結線材の先端を前記補強ストランドと連結していることを特徴とする、請求項1乃至5のいずれか一項に記載の変形抑制構造。
【請求項7】
対向する少なくとも2つの側面に、請求項1乃至6のいずれか一項に記載の変形抑制構造を構成し、
内部に中詰材を充填してなることを特徴とする、
繊維製布団篭。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は繊維製布団篭の変形抑制構造、及び繊維製布団篭に関し、特に、部材の柔軟性・軽量性と、高い形状保持性とを両立可能な、繊維製布団篭の変形抑制構造、及び変形抑制構造を備えた繊維製布団篭に関する。
【背景技術】
【0002】
河川や海岸における護岸工事や斜面の補強工事等において、籠体の内部に砕石等の中詰材を詰めた布団篭が使用されている。
近年では、腐食防止や軽量化等の目的のため、従来の鍍金鉄線等を編んでなる鉄線製布団篭に替わり、編地で構成した繊維製の布団篭が普及している(特許文献1、2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2001-348833号公報
【特許文献2】実開平7-23023号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来の繊維製布団篭は、全体が柔軟な編地からなるため、中詰材を充填すると、中詰材の内圧により側面がはらみ出して変形しやすい。特に、施工位置に配置する前に吊り上げと転置を繰り返すことで、変形が蓄積され、最終設置時には形体が大きく崩れていることがある。
布団篭の形状が大きく変形することで、出来形が悪くなる他、積み上げが困難になり施工精度が低下する。
【0005】
本発明は、上記のような課題を解決し、部材の柔軟性・軽量性と高い形状保持性とを両立可能な、繊維製布団篭の変形抑制構造及び繊維製布団篭を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の繊維製布団篭の変形抑制構造は、繊維製布団篭の対向する2つの側面の間を連結した拘束ロープを備え、拘束ロープは、1本の拘束線材と、拘束線材の両端から分岐した複数本の連結線材と、からなり、2つの側面の各面において、複数本の連結線材の先端が、側面の経ストランド、緯ストランド、又はこれらの交点と連結していることによって、側面上に、中詰材の側圧に対して面状に抵抗可能な面状拘束部を構成したことを特徴とする。
【0007】
本発明の繊維製布団篭の変形抑制構造は、拘束線材の各端における複数本の連結線材が、拘束線材の延長である中央連結線材と、拘束線材と結び合わせた結び目から中央連結線材の両側に開いた2本の側方連結線材と、からなってもよい。
【0008】
本発明の繊維製布団篭の変形抑制構造は、2つの側面の各面において、複数本の連結線材の先端が、同じ高さで側面と連結していてもよい。
【0009】
本発明の繊維製布団篭の変形抑制構造は、複数本の連結線材が、側面における中央の高さの交点と連結していてもよい。
【0010】
本発明の繊維製布団篭の変形抑制構造は、複数本の拘束ロープによって、繊維製布団篭の4つの側面をそれぞれ対向する側面と連結し、交差した2本の拘束ロープを交点で結合してもよい。
【0011】
本発明の繊維製布団篭の変形抑制構造は、側面の経ストランド及び緯ストランドの一部が他より太径の補強ストランドであり、連結線材の先端を補強ストランドと連結してもよい。
【0012】
本発明の繊維製布団篭は、対向する少なくとも2つの側面に、変形抑制構造を構成し、内部に中詰材を充填してなることを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明の繊維製布団篭の変形抑制構造及び繊維製布団篭は、側面を、1本の拘束線材から分岐した複数の連結線材で拘束することで、中詰材による側圧を側面の編地に分散して面状に抵抗することができる。
これによって、中詰材の充填による側面のはらみ出しを抑制して、繊維製でありながら鉄線製の布団篭以上に整った直方形の出来形を確保でき(図5)、部材の柔軟性・軽量性と高い形状保持性とを両立することができる。
また、3本を個別に結ぶよりも現場において結ぶ点が減るため、現場での作業を簡略化することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明に係る繊維製布団篭の変形抑制構造の説明図。
図2】本発明に係る繊維製布団篭の変形抑制構造の説明図(表示の便宜上蓋面と底面を省略している)。
図3】本発明に係る繊維製布団篭の説明図。
図4】面状拘束部の説明図。
図5】実施例1と比較例との出来形の対比を表す図面代用写真。
図6】実施例2の説明図(表示の便宜上蓋面と底面を省略している)。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、図面を参照しながら本発明の繊維製布団篭の変形抑制構造及び繊維製布団篭について詳細に説明する。
【実施例0016】
[変形抑制構造]
<1>全体の構成(図1)。
本発明の変形抑制構造1は、繊維製布団篭Aの側面A3のはらみ出し変形を抑制するための構造である。
変形抑制構造1は、繊維製布団篭Aの内部に構成され、繊維製布団篭Aの対向する2つの側面A3の間を連結した拘束ロープ10と、繊維製布団篭Aの側面A3に構成した面状拘束部20と、を備える。
詳細には、拘束ロープ10の両端において、複数本の連結線材12が、それぞれ、繊維製布団篭Aの側面A3における経ストランドA31、緯ストランドA32、又はこれらの交点と連結していることで、繊維製布団篭Aの側面における連結線材12との連結線材付近に、面状拘束部20を構成している(図4)。
本例では、略長方形状の繊維製布団篭Aの短辺側の側面A3間を拘束ロープ10で連結し、短辺側の側面A3に面状拘束部20を構成する(図2)。ただしこれに限らず、長辺側の側面A3間を連結して、長辺側の側面A3に面状拘束部20を構成してもよい。
なお、短辺側と長辺側の両側面に面状拘束部20を構成する例については実施例2で後述する。
また本例では、繊維製布団篭Aに連結する拘束ロープ10は1本のみだが、複数本の拘束ロープ10を同一方向に向けて並列配置してもよい。
【0017】
<1.1>繊維製布団篭(図3)。
変形抑制構造1を適用する繊維製布団篭Aは、編地からなる土木資材である。
繊維製布団篭Aは、それぞれ繊維製の編地である、蓋面A1、底面A2、及び4つの側面A3からなる略箱型の形状を呈する。
詳細には、例えばループ状に編んだ太めのストランドを上下に配してこれを側面A3の上辺及び下辺とし、上辺と下辺の間を細めのストランドからなる無結節の編地で連結して側面A3を構成し、上辺のループ内に矩形の編地を連結して蓋面A1を構成し、下辺のループ内に矩形の編地を連結して底面A2を構成する。
実際の使用時には、蓋面A1を備えない、4つの側面A3と底面A2からなる函体の内側に中詰材Bを投入した後に、中詰材Bの上に蓋面A1を載せ、蓋面A1の側辺と側面A3の上辺とを蓋閉じロープで編み込んで封鎖する。
本例では、繊維製布団篭Aを構成する編地としてポリエステル繊維網を採用する。ただしこれに限らず、ポリエチレン繊維他いかなる素材であってもよい。
中詰材Bは、砕石、自然石、コンクリートガラなどから用途に応じて任意に選択することができる。
【0018】
<2>拘束ロープ。
拘束ロープ10は、繊維製布団篭Aの対向する二側面間を連結して、相互に拘束する構成要素である。
本例では拘束ロープ10として、ポリエステル繊維製ロープを採用する。ただしこれに限られず、側面A3の拘束に十分な引張強度と中詰材Bの噛み合わせに耐えうる耐摩耗性を備えていれば、その他いかなる素材であってもよい。
拘束ロープ10は、1本の拘束線材11と、拘束線材11の両端から分岐した複数本の連結線材12からなる。ここで、拘束線材11は、連続した1本の線材の他、別々の2本の線材を中央で結び合わせて1本の線材に構成したものであってもよい。
本例では、連結線材12の本数は拘束線材11の両端に各3本であり、拘束ロープ10の両端が平面視で三又状に分岐する。なお、連結線材12の本数は各3本に限らず、各2本又は各4本以上であってもよい。
【0019】
<2.1>連結線材。
連結線材12は、繊維製布団篭Aの側面A3と連結して、中詰材Bの内圧に対して側面A3を面状に抵抗させる構成要素である。
本例では連結線材12として、拘束線材11の端部の延長である中央連結線材12aと、1本の繊維製ロープの中心を拘束線材11と結び合わせ、繊維製ロープの両端を結び目から中央連結線材12aの両側に展開してなる2本の側方連結線材12bと、の組み合わせを採用する。
この構造によれば、1本の繊維製ロープの両端部付近に別の1本の繊維製ロープを結び付けるだけで、三叉状の連結線材12を容易に形成することができる。
本例では、2本の側方連結線材12bが、中央連結線材12aから左右に約45°の角度を形成し、各連結線材12の先端が、側面A3の同一平面上に連結するように、2本の側方連結線材12bを中央連結線材12aより長くしている。これによって、側面A3にかかる側圧を、3本の連結線材12が均一に分担することができる。
各連結線材12の先端は、側面のストランドに結び付けて連結する。
本例では、3本の連結線材12の先端をそれぞれ、束ね合わせた2本の経ストランドA31に、側面A3の同じ高さで結び付けて連結する。
ただし連結線材12の連結先はこれに限らず、束ねていない1本の経ストランドA31、1本又は束ねた複数本の緯ストランドA32、経ストランドA31とA32の交点、に連結してもよい。
【0020】
<3>面状拘束部(図4)。
面状拘束部20は、中詰材Bの側圧による側面A3のはらみ出しに対して、面状に抵抗する構成要素である。
面状拘束部20は、繊維製布団篭Aの側面A3上において、拘束ロープ10の連結線材12との連結部付近に構成される。
詳細には、面状拘束部20は、側面A3の編地上において、連結線材12と結び付いた少なくとも2本のストランドと、これと近接する直交方向の複数のストランドとによって略四角形状の範囲に構成される。
面状拘束部20は、1本の拘束線材11の両端から分岐した複数の連結線材12と、複数点で連結されることで、中詰材Bによる側圧を、連結線材12に連結した複数のストランドと、これと近接する直交方向の複数のストランドとによって井桁状に分散して伝達し、側圧に対して面状に抵抗する。
これによって、側面A3の変形量を小さくして、側面A3のはらみ出しを防ぐことができる。
なお、仮に分岐した連結線材を有さない1本物の拘束ロープを、複数本並行して配置しても、各拘束ロープは、側圧に対して相互に独立して抵抗するため、十分な変形抑制機能は期待できない。また、本発明の変形抑制構造1と同数の連結点を確保するために、本発明の変形抑制構造1の2倍以上の拘束ロープが必要となるため、コストが嵩む上、中詰材の内部を多数の拘束ロープが横断することによって中詰材が上下に縁切りされ、構造の一体性が損なわれる。
【0021】
<4>従来技術との比較。
本発明の変形抑制構造1を備えた繊維製布団篭A(実施例1)、従来技術の繊維製布団篭(比較例1)、及び鉄線製布団篭(比較例2)の内部にそれぞれ中詰材を充填し、出来形を比較した(図5)。
比較例1の繊維製布団篭は、中詰材の充填により側面がはらみ出し、これに伴って蓋面の周辺が陥没して形状が大きく崩れている。
比較例2の鉄線製布団篭は、比較例1より変形量は少ないものの、内圧により側面がはらみ出し変形している。
これら比較例に対し、実施例1の繊維製布団篭Aは、変形抑制構造1によって側面のはらみ出しを効果的に抑制し、最も整った直方形状を維持できることが観取できる。
【実施例0022】
[拘束ロープを交差した例]
実施例1では繊維製布団篭Aの対向する2つの側面A3の内、短辺側の2側面間、又は長辺側の2側面間のいずれか一方向のみに拘束ロープ10を配置したが、本例では、2本の拘束ロープ10を交差させて、短辺側の2側面間および長辺側の2側面間を二方向に連結する。
拘束ロープ10の本数に限定はなく、本例では短辺側の側面A3間を1本の第1拘束ロープ10aで連結し、長辺側の側面A3間を2本の第2拘束ロープ10bで連結する(図6)。
また、第1拘束ロープ10aと第2拘束ロープ10bとは、交点で結び目を作って相互に連結する。これによって、交差する複数の拘束ロープ10が相互に直交方向に拘束しあうことで、変形抑制構造1による変形抑止機能が高まる。
【実施例0023】
[補強ストランドを設けた例]
本例では、側面A3を構成するストランドの内一部を、他のストランドより太径の補強ストランドA33とし、拘束ロープ10の連結線材12をこの補強ストランド33に連結する。
補強ストランド33は、例えば経ストランドA31と緯ストランドA32のいずれか一方向のストランドを、全て他方向のストランドより太径の補強ストランド33としてもよいし、ラッセル機で網地を作製する段階で、連結線材12と連結する一部のストランドのみを太径に製網してもよい。
本例の場合、側面A3を構成する編地全体を重厚にすることなく、必要な一部のみを補強ストランド33とした合理的構造によって、コストを抑制しつつ、繊維製布団篭Aのはらみ出し変形を効率的に抑制することができる。
【符号の説明】
【0024】
1 変形抑制構造
10 拘束ロープ
10a 第1拘束ロープ
10b 第2拘束ロープ
11 拘束線材
12 連結線材
12a 中央連結線材
12b 側方連結線材
20 面状拘束部
A 繊維製布団篭
A1 蓋面
A2 底面
A3 側面
A31 経ストランド
A32 緯ストランド
A33 補強ストランド
B 中詰材
図1
図2
図3
図4
図5
図6