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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022065227
(43)【公開日】2022-04-27
(54)【発明の名称】集光レンズ、及び光モジュール
(51)【国際特許分類】
   G02B 5/10 20060101AFI20220420BHJP
   G02B 5/08 20060101ALI20220420BHJP
   G02B 17/06 20060101ALI20220420BHJP
   H01L 31/0232 20140101ALI20220420BHJP
【FI】
G02B5/10
G02B5/08 A
G02B17/06
H01L31/02 D
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2019044996
(22)【出願日】2019-03-12
(71)【出願人】
【識別番号】000010098
【氏名又は名称】アルプスアルパイン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(72)【発明者】
【氏名】今井 秀行
【テーマコード(参考)】
2H042
2H087
5F849
【Fターム(参考)】
2H042DA02
2H042DA03
2H042DA05
2H042DA12
2H042DA22
2H042DB14
2H042DC02
2H042DD06
2H042DD08
2H042DE07
2H042DE09
2H087KA12
2H087KA22
2H087TA03
2H087TA06
5F849BA18
5F849BA25
5F849BB01
5F849JA12
5F849JA14
5F849XB05
(57)【要約】      (修正有)
【課題】簡単な構成で集光機能と光路変換機能を実現する集光レンズとこれを用いた光モジュールを提供する。
【解決手段】集光レンズ10は、底面11と、底面11に対して鈍角で斜めに延びる傾斜面と、傾斜面に形成された湾曲面13と、湾曲面13に形成された反射膜15と、を有し、湾曲面13は入射光の進行方向を変更するとともに、入射光を底面11と平行な面内の所定の位置に集光する。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
底面と、
前記底面に対して鈍角で斜めに延びる傾斜面と、
前記傾斜面に形成された湾曲面と、
前記湾曲面に形成された反射膜と、
を有し、
前記湾曲面は入射光の進行方向を変更するとともに、前記入射光を前記底面と平行な面内の所定の位置に集光する、
集光レンズ。
【請求項2】
前記湾曲面は、放物線の回転対称軸から所定量偏心した凹面である、請求項1に記載の集光レンズ。
【請求項3】
前記湾曲面は、前記所定の位置での光スポットのサイズが最小となるように設計されている、請求項1または2に記載の集光レンズ。
【請求項4】
前記湾曲面は前記入射光の進行方向を90度曲げる、請求項1~3のいずれか1項に記載の集光レンズ。
【請求項5】
前記傾斜面に、複数の前記湾曲面が形成されている、
請求項1~4のいずれか1項に記載の集光レンズ。
【請求項6】
受光素子と、
入射光を前記受光素子に入射させる集光レンズと、
を有し、前記集光レンズは、
前記受光素子の実装面に置かれる底面と、
前記底面に対して鈍角で斜めに延びる傾斜面と、
前記傾斜面に形成される湾曲面と、
前記湾曲面に形成された反射膜と、
を有し、
前記湾曲面は、前記入射光の進行方向を変更して前記入射光を前記受光素子の受光面に集光する、
光モジュール。
【請求項7】
前記集光レンズの前記傾斜面は、前記底面から前記受光素子の斜め上方に張り出していることを特徴とする請求項6に記載の光モジュール。
【請求項8】
前記湾曲面は、放物線の回転対称軸から所定量偏心した凹面である、請求項6または7に記載の光モジュール。
【請求項9】
前記湾曲面は前記受光面での光スポットのサイズが最小となるように設計されている、請求項6~8のいずれか1項に記載の光モジュール。
【請求項10】
前記光モジュールに接続される光ファイバ、
をさらに有し、
前記光ファイバは前記実装面と平行な方向で接続され、
前記湾曲面は、前記光ファイバの端面からの前記入射光の方向を90度変換して、前記入射光を前記受光面に集光する、請求項6~9のいずれか1項に記載の光モジュール。
【請求項11】
前記光モジュールに接続される多芯の光ファイバ、
をさらに有し、
前記傾斜面は、複数の前記湾曲面を有する、
請求項6~9のいずれか1項に記載の光モジュール。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、集光レンズ、及び光モジュールに関する。
【背景技術】
【0002】
スマートフォン等のモバイル機器の普及と、IoT(Internet of Things)の導入により、光ネットワークでのデータ通信量は年々増加し、通信速度と品質のさらなる向上が求められている。その一方で、光通信機器に搭載される個々の光電子部品には、小型化と高密度化が求められている。
【0003】
光通信用の光モジュールでは、フォトダイオード(PD)等の受光素子の受光面は、基板と平行な面内に位置する。光信号を伝送する光ファイバも、一般的に光モジュールの基板面と平行な方向で接続されるため、光ファイバの伝搬軸と受光面の位置関係は平行になる。入力された光信号を受光面に集光するために、図1のように、集光レンズとミラーが用いられる。ミラーは、集光レンズで集光された光の進行方向を約90度曲げて、受光面に入射させる。
【0004】
図1の構成では、集光と光路変換のために別々の光学部品を用いるので、光モジュールの小型化が妨げられる。また、集光レンズとミラーの精密な位置合わせと組み立ての工程が必要である。光モジュールの小型化の観点からは、集光機能と光路変換機能が一体化された光学部品を用いることが望ましい。
【0005】
半導体基板を加工してベース基板に湾曲したミラー面を作り込み、発光素子からの出力光の方向を変換するとともに平行光にコリメートする構成が提案されている(たとえば、特許文献1参照)。
【0006】
また、底面と鋭角を成す傾斜面に凹面を設けて、マウントの上に支持された点光源から出射される光線の広がり角と伝搬方向を偏向する光学素子が提案されている(たとえば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2008-83255号公報
【特許文献2】特開2006-145781号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
図1の集光レンズとミラーをそのまま一体化する場合、複数の面の精密な加工と複数の面への成膜が必要になる。具体的には、光が入射する集光面へ反射防止膜を形成し、光路を変換するミラー面に反射膜を形成し、光の出射面に反射防止膜を形成の形成する必要がある。加工の複雑さと複数の成膜工程により、コストダウンが難しい。
【0009】
本発明は、簡素化された構成で集光機能と光路変換機能を有する集光レンズを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するために、本発明の第1の態様では、集光レンズは、
底面と、
前記底面に対して鈍角で斜めに延びる傾斜面と、
前記傾斜面に形成された湾曲面と、
前記湾曲面に形成された反射膜と、
を有し、
前記湾曲面は入射光の進行方向を変更するとともに、前記入射光を前記底面と平行な面内の所定の位置に集光する。
【0011】
本発明の第2の態様では、光モジュールは、
受光素子と、
入射光を前記受光素子に入射させる集光レンズと、
を有し、前記集光レンズは、
前記受光素子の実装面に置かれる底面と、
前記底面に対して鈍角で斜めに延びる傾斜面と、
前記傾斜面に形成される湾曲面と、
前記湾曲面に形成された反射膜と、
を有し、
前記湾曲面は、前記入射光の進行方向を変更して前記入射光を前記受光素子の受光面に集光する。
【発明の効果】
【0012】
上記の構成により、簡素化された構成で集光機能と光路変換機能が実現される。集光レンズの構成が簡素化されているので、この集光レンズを用いた光モジュールの組み立てコストを低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】受光素子へ光信号を入射する従来の光学系の模式図である。
図2】集光レンズとミラーのそのまま一体化したときに生じる問題点を説明する図である。
図3】実施形態の集光レンズの模式図である。
図4】集光レンズの湾曲面の集光特性を説明する図である。
図5】集光レンズの斜視図である。
図6】集光レンズの正面図と側面図である。
図7】集光レンズの湾曲面の特性を示す図である。
図8】レンズの偏心を説明する図である。
図9】受光素子の位置ずれとスポットサイズの関係を示す図である。
図10】多チャネルへの集光レンズの適用例を示す図である。
図11図9の集光レンズの正面図と側面図である。
図12】実施形態の集光レンズを用いた光トランシーバの模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
実施形態の構成を詳細に説明する前に、図1の集光レンズとミラーを単純に一体化した構成に生じる課題を、もう少し詳しく説明する。
【0015】
図2は、図1の集光レンズとミラーをそのまま一体化した構成を示す。この光学部品は光の入射側に設けられる凸面と、光の伝搬方向をほぼ90度曲げる傾斜面と、受光素子(PD)に対向する出射面を有する。凸面は集光機能を有し、傾斜面は反射機能を有する。
【0016】
傾斜面には反射膜が形成されて、入射光を受光素子(PD)の方向へ反射する。一方、入射側の凸面と出射面には反射防止膜が形成され、光損失を抑制して、受光効率を高く維持する。
【0017】
この構成では、少なくとも入射側の凸面と、反射用の傾斜面で成形の精度を確保しなければならない。また、2つの面への反射防止膜の成膜と、一つの面への反射膜の成膜の、トータルで3面の成膜工程が必要である。さらに、一体化された光学部品を受光素子の上方に支持するための支持部材が、別途必要になる。成形精度を要する面の数と成膜を要する面の数は少ない方が望ましい。
【0018】
以下で述べる実施形態では、精密な加工面と成膜工程の数が低減され、簡素化された構成で基板への実装が容易な集光レンズと、これを用いた光モジュールを実現する。
【0019】
図3は、実施形態の集光レンズ10の模式図である。集光レンズ10は、たとえば受光素子40とともに用いられて、光受信サブアセンブリ(ROSA:Receiver Optical Sub-Assembly)30を構成する。ROSA30は、集光レンズ10が適用される光モジュールの一例である。
【0020】
集光レンズ10は、受光素子40が配置される基板50の表面50Sに置かれる底面11と、受光素子40の受光面41に覆いかぶさる湾曲面13を有する。受光面41は、集光レンズ10が配置される基板50の表面50Sと同じ高さ位置にあってもよいし、表面50Sに対して垂直な方向(Z方向)に、ある程度オフセットしていてもよい。
【0021】
湾曲面13は、後述するように、底面11に対して鈍角で傾斜する斜面に形成された凹面である。凹面を覆って、反射膜15が形成されている。湾曲面13と反射膜15で、ミラーを形成する。反射膜15が形成された湾曲面13は、入射光Linの伝搬方向を変換する方向変換機能と、入射光Linを受光素子40に集光する集光機能の双方を有する。入射光Linは、湾曲面13に形成された反射膜15で反射される。反射光は、湾曲面13のレンズ機能によって直接、受光面41に入射する。
【0022】
この構成では、成形の精度を有する面は、湾曲面13だけである。反射膜15は湾曲面13に形成され、それ以外の面に膜を形成する必要はない。また、集光レンズ10は直接基板50上に置かれて、湾曲面13が受光面41に対して覆いかぶさるように張り出しているので、集光レンズ10を支持するための支持部材が不要である。
【0023】
集光レンズ10は、光学接着剤等によって基板50の表面50Sに固定されてもよい。集光レンズ10の固定位置は、たとえば、アクティブアライメント法により受光素子40での受光量が最大となる位置に設定される。
【0024】
受光素子40の受光面41に対し覆いかぶせるようにするミラー(または湾曲面13)の配置により、ミラーの上面を平坦面にすることができる。上面を平坦面とすることで、光学部品である集光レンズ10を吸着等により容易に掴むことができる。
【0025】
集光レンズ10は、たとえば、光学ガラス、石英ガラス、合成石英ガラス等で形成されるが、高分子またはプラスチック素材のレンズであってもよい。石英系の材料を用いる場合でも、集光レンズ10の成形で精度を要するのは湾曲面13の一面だけであり、図2の構成と比較して成形が容易である。
【0026】
反射膜15は、使用波長での光の吸収がきわめて少ない材料で形成されている。集光レンズ10をROSA30に適用する場合は、1.3μm帯または1.5μm帯で光吸収が起きない材料を用いるのが望ましい。一例として、金属コーティングの場合は、Al、Au、Cr、これらの2種以上の組み合わせが用いられる。金属に替えて、屈折率が異なる誘電体膜を積層にした多層反射膜を用いてもよい。
【0027】
図4は、湾曲面13の集光特性を説明する図である。湾曲面13で反射された光は、受光面41の法線nに対して、1度~数度、斜めに傾いて受光素子40に入射する。集光軸Oxを受光面41の法線nからオフセットさせることで、受光面41で反射された光が元の光路に戻ることを防止する。光通信の場合、戻り光は信号ノイズとなるため、集光軸Oxを受光面41の法線nからわずかに傾けることで、ノイズを低減することができる。
【0028】
図5は、集光レンズ10の斜視図である。集光レンズ10は、基板50への実装面となる底面11と、底面11に対して鈍角で傾斜する傾斜面14と、傾斜面14に形成された凹形状の湾曲面13を有する。湾曲面13には、上述したように、反射膜15が形成されている(図3及び図4参照)。
【0029】
図5の例では、傾斜面14は、底面11から立ち上がる面17で底面11と接続されている。面17を設けることで、集光レンズ10の全体を安定保持するベース部分が形成されるが、この形状に限定されない。傾斜面14は、底面11のエッジから鈍角で斜めに延びていてもよい。底面11と対向する上面12と傾斜面14も、面18で接続されているが、この形状に限定されず、上面12のエッジから傾斜していてもよい。
【0030】
傾斜面14を、底面11に対して鈍角で斜め上方に張り出すことで、湾曲面13で反射された光を、他の光学面を通さずに直接、集光点すなわち受光面へと導くことができる。
【0031】
湾曲面13は、楕円形の凹面または放物面となっている。これは、後述するように光が入する凹レンズの放物面が傾斜面14によって切り取られているからである。湾曲面13の曲率半径、偏心量、コーニック定数等は、光ファイバの出射端の位置、受光素子40の受光面41の位置等に応じて適宜、設計される。好ましい例では、入射光の方向がほぼ90度変換されて、受光面41で集光されるように湾曲面13は設計される。この場合、湾曲面13で反射された光は、最小かつ真円に近いスポットで受光面41に入射する。一例として、湾曲面13の曲率半径Rは0.75mm、コーニック定数Kは-1である。
【0032】
図6は、集光レンズ10の正面図と側面図である。図6(a)に示す正面図は、集光レンズ10を入射方向(Y方向)からみたときの図である。図6(b)に示す側面図は、入射光の光軸を含むYZ面内での図である。
【0033】
傾斜面14に形成されている湾曲面13の輪郭は、図5に示したように楕円形状であるが、集光レンズ10への入射光の方向(Y方向)から見ると、図6(a)のように、ほぼ円形に見える。
【0034】
図6(b)で、集光レンズ10は底面11、上面12、背面16、及び光入射側の前面17及び18を有する。これらの面の成形には、それほど高い精度は必要ない。傾斜面14は、底面11に対して135度前後の角度で傾いている。実際の光路の変換と集光は湾曲面13でなされるので、傾斜面14自体の成形にも高度の精度は不要である。一方、湾曲面13は、受光面41への集光効率が最大となり、かつ受光面41での光スポットが真円となるように精密に成形される。
【0035】
図7は、集光レンズ10の湾曲面13の特性を示す図、図8はレンズの偏心を説明する図である。図7(a)は、湾曲面13で形成される凹レンズによる反射と集光を示す模式図、図7(b)は凹レンズの偏心量(mm)と反射角度(degree)の関係を示す。図7(a)と図7(b)では、湾曲面13で形成される凹レンズの曲率半径Rを0.75mm、コーニック定数Kを-1(放物面)としている。
【0036】
レンズの偏心量が0mmのときは、図8(a)に示すように、反射ミラーの中心にビームが法線方向から入射し、入射した方向に光が反射される。このときの反射角は0度である。偏心量ゼロの位置は、入射光束が放物線の回転対称軸と一致する場合と言い換えてもよい。
【0037】
入射光束が放物線の回転対称軸から径方向に離れるにつれて、反射角が大きくなる。ここでは、入射ビームの中心軸に対する反射ビームの中心軸の角度を「反射角」と呼ぶ。また、放物線の回転対称軸から受光面へ近づく方向の偏心量をプラス、受光面から離れる方向の偏心量をマイナスとする。
【0038】
集光レンズ10に入射する光を、湾曲面13でほぼ90度曲げて受光面に集光するためには、図8(b)に示すように、放物面で形成される凹面ミラーの中心(すなわち放物線の回転対称軸)から、-0.75mm偏心した位置に光が入射する設計にすればよい。
【0039】
図9は、受光素子の位置ずれとスポットサイズの関係を示す図である。図7と同様に、湾曲面13で形成される凹レンズの曲率半径Rは0.75mm、コーニック定数Kは-1である。
【0040】
図9(a)に示すように、湾曲面13で反射された光は受光面に向かって集光される。図9(b)は、受光素子(PD)40のZ方向の位置ずれ量(mm)と、受光素子40上のスポットサイズ(μm)の関係を示す図である。上述のように、湾曲面13は、受光素子40の受光面でのスポットが真円かつ最小となるように設計されている。受光素子40の高さ方向のずれは、相対的には湾曲面の高さ方向の位置ずれである。
【0041】
集光レンズ10の湾曲面13の位置は、受光面でのスポットサイズが最小となる位置に設定される。
【0042】
図10は、多チャネルへの集光レンズの適用例を示す図である。集光レンズ20は、底面21から鈍角で張り出す傾斜面24に、複数の湾曲面23-1~23-4(以下、適宜「湾曲面23」と総称する)が形成されている。この集光レンズ20は、4チャネルの光受信器に適用することができる。この場合、基板側には4つの受光素子40のアイレが用いられる。
【0043】
湾曲面23-1~23-4は、図7図9を参照して説明したように、入射光の方向がほぼ90度曲げられて受光面に集光するように、偏心量と高さ位置が設計されている。各湾曲面23で反射された光は、他の光学面を通過せずに、直接対応する受光素子40に最小のスポットサイズで集光される。これにより、受光効率を高く維持することができる。
【0044】
図11は、集光レンズ20の正面図と側面図である。図11(a)に示す正面図は、集光レンズ20を入射方向(Y方向)からみたときの図である。図11(b)に示す側面図は、入射光の光軸を含むYZ面内での図である。
【0045】
傾斜面24での湾曲面23-1~23-4の底面の輪郭は楕円形状であるが、集光レンズ20への入射光(Y方向に伝搬するビーム)に対しては、図11(a)に示すようにほぼ円形である。
【0046】
図11(b)の側面図で、集光レンズ20の底面21、上面22、背面26、光入射側の面27、及び面28の成形には、それほど高い精度は必要ない。傾斜面24は、底面21に対して135度前後の角度で傾いている。実際の光路の変換と集光は湾曲面23-1~23-4のそれぞれで行われるので、傾斜面24自体の成形に高度の精度は不要である。
【0047】
一方、湾曲面23-1~23-4は、それぞれ入射光の方向がほぼ90度変換されて、対応する受光素子40の受光面41への集光効率が最大となるように、精密に加工されている。湾曲面23-1~23-4には、反射膜25が形成されている。湾曲面23-1~23-4は同じ傾斜面24に形成されているので、一度の成膜で複数の湾曲面23に反射膜25を形成することができる。これにより、小型で集光性能の高い多チャネルの集光レンズ20が実現される。
【0048】
図12は、実施形態の集光レンズ10または20を用いた光トランシーバ100の模式図である。光トランシーバ100は、実施形態の集光レンズが適用される光モジュールの一例である。
【0049】
光トランシーバ100は、ROSA30と、光送信サブアセンブリ(TOSA:Transmitter Optical Sub-Assembly)60と、デジタル信号プロセッサ(DSP:Digital Signal Processor)70を有する。集光レンズ10または20(以下、単に「集光レンズ10」とする)は、受信側のROSA30に用いられる。
【0050】
光トランシーバ100は、光コネクタ80を介して、光ファイバ81、及び82に接続されている。この例では、ROSA30とTOSA60に、1本ずつの光ファイバが接続されているが、図9のような4チャネルの集光レンズ20を用いる場合は、受信側と送信側でそれぞれ4芯の光ファイバケーブルを用いてもよい。
【0051】
ROSA30は、受光素子40と、受信光を受光素子40に導く集光レンズ10と、受光素子40で検出された光電流を増幅して電圧信号に変換するトランスインピーダンスアンプ(TIA)を有する。光ファイバ81の端面から出射される光信号は、集光レンズ10で伝搬方向がほぼ90度変換され、かつ受光素子40の受光面に集光される。集光レンズ10は簡単な構成でROSA30のパッケージ基板等に配置されており、ROSA30を小型化することができる。また、湾曲面13にだけ反射膜15を有するので、製造コストが低減される。湾曲面13は、受光面での光スポットが最小かつ円形になるようにパラメータが設計されており、受光効率を高く維持することができる。
【0052】
ROSA30から出力されるアナログ電気信号は、デジタルサンプリングされて、DSP70で処理される。
【0053】
送信側の構成は本発明と直接は関係しないので説明を省略するが、DSP70からTOSA60に、入力データに相当する論理値を表わす電気信号が入力される。TOSA60では、レーザ等の光源から出射される光が、入力データを表わすアナログ駆動信号で高速に変調され、光信号が光ファイバ82に出力される。
【0054】
実施形態の光モジュールは、光通信で有用に用いられる。
【0055】
上述した実施形態及び特許請求の範囲で、入射光の方向を「90度変換する」というときは、厳密に入射光の中心軸が90度曲がるわけではなく、90度またはその前後の角度で反射されることを意味する。また、受光面での光スポットが「真円」というときは、完全な真円のスポットが形成されるわけではなく、真円に近い形状に集光されることを意味し、許容範囲内での歪みを含むものとする。
【0056】
本発明は上述した実施形態に限定されず、多様な変形例を含む。集光レンズ10の背面16は、必ずしも底面11から垂直に立ち上がっている必要はなく、底面11に対して鋭角または鈍角で立ち上がっていてもよい。同様に、集光レンズ20の背面26は、必ずしも底面21から垂直に立ち上がっている必要はなく、底面21に対して鋭角または鈍角で立ち上がっていてもよい。多チャネルの集光レンズ20で実現されるチャネル数は4つに限定されず、光ファイバアレイの芯数と配列に応じて、8チャネル、16チャネル等にすることができる。傾斜面24での湾曲面23の配列は一列に限定されず、たとえば4チャネル×2列、8チャネル×2列に構成することもできる。
【0057】
複数の湾曲面23は、一度の成膜工程で反射膜25によって覆われるので、製造工程が簡素化される。多チャネル用の集光レンズ20を実装基板に置くことで、底面21から鈍角で張り出した傾斜面24に形成された湾曲面23が受光素子のアレイと対向し、入射光の光路を変換して受光面に集光することができる。これにより、光モジュールが小型化され、かつ受光効率を高く維持することができる。
【符号の説明】
【0058】
10、20 集光レンズ
11,21 底面
13、23-1~23-4 湾曲面
14、24 傾斜面
15、25 反射膜
30 ROSA(光モジュール)
40 受光素子
41 受光面
50 基板
50S の表面
80 光コネクタ
100 光トランシーバ(光モジュール)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12