(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022065263
(43)【公開日】2022-04-27
(54)【発明の名称】作業車の操舵制御装置
(51)【国際特許分類】
B62D 6/00 20060101AFI20220420BHJP
B62D 7/08 20060101ALI20220420BHJP
B62D 5/12 20060101ALI20220420BHJP
B66F 9/22 20060101ALI20220420BHJP
B66F 11/04 20060101ALI20220420BHJP
【FI】
B62D6/00
B62D7/08 A
B62D5/12
B66F9/22 W
B66F11/04
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020173698
(22)【出願日】2020-10-15
(71)【出願人】
【識別番号】000116644
【氏名又は名称】株式会社アイチコーポレーション
(74)【代理人】
【識別番号】100092897
【弁理士】
【氏名又は名称】大西 正悟
(74)【代理人】
【識別番号】100157417
【弁理士】
【氏名又は名称】並木 敏章
(74)【代理人】
【識別番号】100218095
【弁理士】
【氏名又は名称】山崎 一夫
(72)【発明者】
【氏名】須田 元昭
(72)【発明者】
【氏名】寺田 晃太朗
【テーマコード(参考)】
3D034
3D232
3F333
【Fターム(参考)】
3D034BA03
3D034BB01
3D034BC05
3D034BC25
3D034BC26
3D034BC28
3D034BD03
3D034BD06
3D232CC12
3D232CC24
3D232DA03
3D232DA04
3D232DA23
3D232DC35
3D232DD03
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3D232GG04
3D232GG15
3F333AA08
3F333AB15
3F333AC02
3F333DB10
3F333FD07
3F333FE09
(57)【要約】
【課題】長距離走行時の操作性を向上させることが可能な作業車の操舵制御装置を提供する。
【解決手段】作業車は、舵角検出器62により検出された前輪11a(操舵輪)の舵角が、操舵操作が行われた操舵ダイヤル42の操舵操作位置に対応する目標舵角となるように、操舵シリンダ17を作動させる操舵制御を行う操舵制御部52を備えており、操舵制御部52は、操舵制御を行うことにより、舵角検出器62により検出された前輪11aの舵角が、中立舵角を含む所定の角度範囲内で変化する場合、操舵ダイヤル42が操舵操作位置から中立位置に戻ると、操舵シリンダ17を停止させて前輪11aの舵角を維持する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
操舵輪を有して走行可能な走行体と、
前記走行体に設けられた作業装置と、
非操作状態において中立位置に位置するように付勢され、前記中立位置から変位させることによる操舵操作が行われる操舵操作具と、
前記操舵輪の舵角を検出する舵角検出器と、
前記操舵輪の舵角を変化させる操舵アクチュエータと、
前記舵角検出器により検出された前記操舵輪の舵角が、前記操舵操作が行われた前記操舵操作具の操舵操作位置に対応する目標舵角となるように、前記操舵アクチュエータを作動させる操舵制御を行う操舵制御部とを備え、
前記操舵制御部は、前記操舵制御を行うことにより、前記舵角検出器により検出された前記操舵輪の舵角が、前記操舵操作具の前記中立位置に対応する目標舵角である中立舵角を含む所定の角度範囲内で変化する場合、前記操舵操作具が前記操舵操作位置から前記中立位置に戻ると、前記操舵アクチュエータを停止させて前記操舵輪の舵角を維持することを特徴とする作業車の操舵制御装置。
【請求項2】
前記操舵制御部は、前記操舵制御を行うことにより、前記舵角検出器により検出された前記操舵輪の舵角が前記所定の角度範囲を超えて変化する場合、前記操舵操作具が前記操舵操作位置から前記中立位置に戻ると、前記舵角検出器により検出された前記操舵輪の舵角が前記中立舵角となるように、前記操舵アクチュエータを作動させる中立復帰制御を行うことを特徴とする請求項1に記載の作業車の操舵制御装置。
【請求項3】
前記操舵制御部は、前記操舵操作により前記操舵操作具が前記中立位置から変位して再び前記中立位置に戻るまでの間、前記舵角検出器により検出された前記操舵輪の舵角が前記所定の角度範囲内で変化する場合、前記操舵操作具が前記操舵操作位置から前記中立位置に戻ると、前記操舵アクチュエータを停止させて前記操舵輪の舵角を維持し、
前記操舵操作により前記操舵操作具が前記中立位置から変位して再び前記中立位置に戻るまでの間、前記舵角検出器により検出された前記操舵輪の舵角が前記所定の角度範囲を超えて変化する場合、前記操舵操作具が前記操舵操作位置から前記中立位置に戻ると、前記中立復帰制御を行うことを特徴とする請求項2に記載の作業車の操舵制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、走行体に作業装置を備えて構成された作業車の操舵制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
車輪駆動式の走行体に作業装置を備えて構成された作業車として、例えば、走行体に昇降手段を介して作業台を取り付けた高所作業車が知られている。このような高所作業車には種々の形態のものがあるが、その中には、比較的小型の走行体に垂直昇降装置(伸縮ポストやシザース機構等)を設け、当該垂直昇降装置に作業台を取り付けたものがある。このような高所作業車では、作業台に搭乗した作業者が作業台上から走行体の操作および作業台の操作を行うことができるようになっている(例えば、特許文献1を参照)。
【0003】
このようなタイプの作業車における走行体の操作は、走行体の発進停止および前進後退の切り換えを行う(例えば、レバーやダイヤル等からなる)走行操作具と、走行体の舵取り、すなわち操舵操作を行う(例えば、レバーやダイヤル等からなる)操舵操作具とを作業者が操作して行うようになっている。そして、作業台上の作業者が操舵操作具を操作すると、コントローラは、舵角検出器により検出された操舵輪の舵角が操舵操作具の操作状態に応じて設定された操舵輪の目標舵角となるように、操舵アクチュエータを作動させ、リンク機構を介して操舵輪の舵角を変化させる。なお、操舵輪の舵角とは、操舵輪の走行体の前後中心軸に対する偏向角をいう。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記のような作業車では、操作状態の操舵操作具から手を放すと、当該操舵操作具がスプリング等の力によって中立位置に戻り、目標舵角が零になる。そのため、走行体を長距離に亘って走行させる際、走行体の進行方向を直進から僅かに変えたい場合に、中立位置の近傍の位置範囲で操舵操作具の操作を続ける必要があり、長距離走行時の操作性が低下する一因となっていた。
【0006】
本発明は、このような問題に鑑みてなされたものであり、長距離走行時の操作性を向上させることが可能な作業車の操舵制御装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
このような目的達成のため、本発明に係る作業車(例えば、実施形態における高所作業車1)の操舵制御装置は、操舵輪を有して走行可能な走行体と、前記走行体に設けられた作業装置(例えば、実施形態における作業台30)と、非操作状態において中立位置に位置するように付勢され、前記中立位置から変位させることによる操舵操作が行われる操舵操作具(例えば、実施形態における操舵ダイヤル42)と、前記操舵輪の舵角を検出する舵角検出器と、前記操舵輪の舵角を変化させる操舵アクチュエータ(例えば、実施形態における操舵シリンダ17)と、前記舵角検出器により検出された前記操舵輪の舵角が、前記操舵操作が行われた前記操舵操作具の操舵操作位置に対応する目標舵角となるように、前記操舵アクチュエータを作動させる操舵制御を行う操舵制御部とを備え、前記操舵制御部は、前記操舵制御を行うことにより、前記舵角検出器により検出された前記操舵輪の舵角が、前記操舵操作具の前記中立位置に対応する目標舵角である中立舵角を含む所定の角
度範囲内で変化する場合、前記操舵操作具が前記操舵操作位置から前記中立位置に戻ると、前記操舵アクチュエータを停止させて前記操舵輪の舵角を維持する。
【0008】
上述の作業車の操舵制御装置において、前記操舵制御部は、前記操舵制御を行うことにより、前記舵角検出器により検出された前記操舵輪の舵角が前記所定の角度範囲を超えて変化する場合、前記操舵操作具が前記操舵操作位置から前記中立位置に戻ると、前記舵角検出器により検出された前記操舵輪の舵角が前記中立舵角となるように、前記操舵アクチュエータを作動させる中立復帰制御を行うことが好ましい。
【0009】
上述の作業車の操舵制御装置において、前記操舵制御部は、前記操舵操作により前記操舵操作具が前記中立位置から変位して再び前記中立位置に戻るまでの間、前記舵角検出器により検出された前記操舵輪の舵角が前記所定の角度範囲内で変化する場合、前記操舵操作具が前記操舵操作位置から前記中立位置に戻ると、前記操舵アクチュエータを停止させて前記操舵輪の舵角を維持し、前記操舵操作により前記操舵操作具が前記中立位置から変位して再び前記中立位置に戻るまでの間、前記舵角検出器により検出された前記操舵輪の舵角が前記所定の角度範囲を超えて変化する場合、前記操舵操作具が前記操舵操作位置から前記中立位置に戻ると、前記中立復帰制御を行うことが好ましい。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、操舵制御部は、操舵制御を行うことにより、舵角検出器により検出された操舵輪の舵角が、操舵操作具の中立位置に対応する目標舵角である中立舵角を含む所定の角度範囲内で変化する場合、操舵操作具が操舵操作位置から中立位置に戻ると、操舵アクチュエータを停止させて操舵輪の舵角を維持する。これにより、操舵輪の舵角が所定の角度範囲内で変化するように操舵操作具の操舵操作を行う場合、操舵操作具を操舵操作位置から中立位置に戻しても、当該操舵操作具が中立位置に戻った時点における操舵輪の舵角が維持される。従って、走行体を長距離に亘って走行させる際、走行体の進行方向を直進から僅かに変えたい場合に、中立位置の近傍の位置範囲で操舵操作具の操作を続ける必要がない。そのため、長距離走行時の作業車の操作性を向上させることが可能になる。
【0011】
また、操舵制御部は、操舵制御を行うことにより、舵角検出器により検出された操舵輪の舵角が所定の角度範囲を超えて変化する場合、操舵操作具が操舵操作位置から中立位置に戻ると、舵角検出器により検出された操舵輪の舵角が中立舵角となるように、操舵アクチュエータを作動させる中立復帰制御を行う。これにより、操舵輪の舵角が所定の角度範囲を超えて変化するように操舵操作具の操舵操作を行う場合、操舵操作具を操舵操作位置から中立位置に戻すことにより、操舵輪の舵角を中立舵角に戻すことが可能になる。そのため、操舵輪の舵角が所定の角度範囲内の舵角で維持される状態であっても、操舵輪の舵角が所定の角度範囲を超えて変化するように操舵操作具の操舵操作を行うことで、操舵操作具を操舵操作位置から中立位置に戻すことにより、操舵輪の舵角を中立舵角に戻すことができる。
【0012】
また、操舵制御部は、操舵操作により操舵操作具が中立位置から変位して再び中立位置に戻るまでの間、舵角検出器により検出された操舵輪の舵角が所定の角度範囲内で変化する場合、操舵操作具が操舵操作位置から中立位置に戻ると、操舵アクチュエータを停止させて操舵輪の舵角を維持する。また、操舵制御部は、操舵操作により操舵操作具が中立位置から変位して再び中立位置に戻るまでの間、舵角検出器により検出された操舵輪の舵角が所定の角度範囲を超えて変化する場合、操舵操作具が操舵操作位置から中立位置に戻ると、中立復帰制御を行う。これにより、操舵輪の舵角が所定の角度範囲内で変化するように操舵操作具の操舵操作を行うことで、操舵操作具を操舵操作位置から中立位置に戻すことにより、当該操舵操作具が中立位置に戻った時点における操舵輪の舵角を維持することが可能になる。また、操舵輪の舵角が所定の角度範囲を超えて変化するように操舵操作具
の操舵操作を行うことで、操舵操作具を操舵操作位置から中立位置に戻すことにより、操舵輪の舵角を中立舵角に戻すことが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】高所作業車の制御系を示すブロック図である。
【
図4】(A)は操舵シリンダの伸長量が零の場合の前輪の舵角を示す模式図であり、(B)は操舵シリンダの伸長量が正の値の場合の前輪の舵角を示す模式図であり、(C)は操舵シリンダの伸長量が負の値の場合の前輪の舵角を示す模式図である。
【
図6】操舵ダイヤルの操舵操作に応じた制御フローの一例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、図面を参照して本発明の好ましい実施形態について説明する。
図2は、本発明の一実施形態に係る操舵制御装置を備えた高所作業車1を示している。
【0015】
この高所作業車1は、いわゆる垂直昇降式の高所作業車である。高所作業車1は、前後左右に設けられた4つのタイヤ車輪11を有して走行可能な走行体10と、走行体10に垂直上方に延びて設けられた伸縮ポスト20と、伸縮ポスト20に支持された作業者搭乗用の作業台30とを備えて構成される。走行体10は、内部に走行モータ(油圧モータ)12を備えており(
図3を参照)、この走行モータ12により後部のタイヤ車輪11(以下、後輪11bと称する)を駆動し、また前部のタイヤ車輪11(以下、前輪11aと称する)を操舵して走行することができるようになっている。
【0016】
伸縮ポスト20は、走行体10に垂直上方に延びて設けられた下部ポスト21と、下部ポスト21に対して入れ子式に設けられた上部ポスト22とから構成される。伸縮ポスト20は、昇降シリンダ(油圧シリンダ)23を内蔵しており(
図1を参照)、昇降シリンダ23の伸縮作動により上部ポスト22を上下方向に昇降させて、上下方向に伸縮させることができるようになっている。作業台30は、上部ポスト22に取り付けられており、伸縮ポスト20の上下方向の伸縮作動により昇降移動させることができるようになっている。
【0017】
作業台30には、操作ボックス40が取り付けられている(
図5も参照)。
図5に示すように、操作ボックス40には、走行体10の発進停止および前進後退の切り換えを行う走行操作レバー41と、走行体10の舵取り操作(すなわち、操舵輪である前輪11aの操舵操作)を行う操舵ダイヤル42と、作業台30の昇降操作を行う昇降操作レバー43とが設けられている。作業台30に搭乗した作業者は、走行操作レバー41、操舵ダイヤル42、および昇降操作レバー43を操作して、走行体10の走行・操舵および作業台30の昇降を行うことにより、任意の作業位置に移動することができる。
【0018】
操舵輪である前輪11aと操舵ダイヤル42とは、ステアリング装置を介して間接的に連動連結されている。ステアリング装置は、
図3に示すように、前輪11aに繋がるステアリングリンク機構13と、ステアリングリンク機構13を駆動して前輪11aの舵角γ(前輪11aの走行体10の前後中心軸に対する偏向角。
図4を参照)を変化させる操舵シリンダ(油圧シリンダ)17と、操舵ダイヤル42の操舵操作に応じて操舵シリンダ17の作動制御を行うコントローラ50(
図1を参照)とから構成される。
【0019】
ステアリングリンク機構13は、
図3に示すように、前輪11aを回転自在に支持する
左右の前輪支持部材14と、左右の前輪支持部材14を連結するタイロッド16とを有して構成される。左右の前輪支持部材14はそれぞれ、上下方向に延びたキングピン15を介して走行体10に取り付けられており、キングピン15回りに揺動できるようになっている。また、左右の前輪支持部材14にはそれぞれ、アーム部14aが走行体10の後方に延びて設けられている。タイロッド16の両端は、連結ピンP1によって、左右の前輪支持部材14のアーム部14aに連結される。
【0020】
操舵シリンダ17の一端は、連結ピンP2によって、ステアリングリンク機構13を構成する左側の前輪支持部材14のアーム部14aに連結される。操舵シリンダ17の他端は、連結ピンP3によって、走行体10のシリンダ連結部(図示せず)に連結される。このため、操舵シリンダ17を伸縮作動させることにより、左側の前輪支持部材14をキングピン15回りに揺動させることができ、タイロッド16を介して右側の前輪支持部材14を左側の前輪支持部材14と同時かつ同方向に揺動させることができる。そして、操舵シリンダ17を伸長作動させることにより、左右の前輪11aを右方向に向けることができ、操舵シリンダ17を縮小作動させることにより、左右の前輪11aを左方向に向けることができる。
【0021】
図4に示すように、操舵シリンダ17の伸縮量Δが零(Δ=0)のときには、前輪11aの舵角γが零(γ=0)となる(
図4(A)を参照)。ここで、前輪11aが右方向に偏向した状態の舵角γの符号を正、前輪11aが左方向に偏向した状態の舵角γの符号を負と定義する。操舵シリンダ17の伸長量Δが正の値(Δ>0)のときには、前輪11aの舵角γが正の値(γ>0)となる(
図4(B)を参照)。操舵シリンダ17の伸縮量Δが負の値(Δ<0)のときには、前輪11aの舵角γが負の値(γ<0)となる(
図4(C)を参照)。
【0022】
次に、上記構成の高所作業車1における、作業台30の操作ボックス40に設けられた走行操作レバー41、操舵ダイヤル42、および昇降操作レバー43の操作に応じた作動制御について、
図1を用いて説明する。
図1は、走行体10の走行・操舵および作業台30の昇降に関する信号および動力の伝達経路を示している。
【0023】
走行操作レバー41は、非操作状態において中立位置(
図5に示すように垂直姿勢の位置)に位置し、この中立位置を基準に前方もしくは後方へ傾動させる操作(以降、この操作を走行操作と称する場合がある)を行うことができるようになっている。そして、走行操作レバー41は、走行操作状態において手を放すと、内蔵されたスプリングの力によって自動で中立位置に戻る構成となっている。走行操作レバー41の操作状態(中立位置を基準とする操作方向および操作量)は、操作ボックス40内に設けられたポテンショメータ等からなる走行操作検出器41aにより検出される。走行操作検出器41aにより検出された走行操作レバー41の操作状態に関する情報は、作業台30もしくは走行体10に備えられたコントローラ50に入力されるようになっている。
【0024】
なお、走行操作レバー41を中立位置よりも前方へ傾動させる走行操作は、走行体10の前進走行指令に相当し、走行操作レバー41を傾動させる量が大きい程、コントローラ50において前進走行時における目標走行速度が大きい値に設定される。また、走行操作レバー41を中立位置よりも後方へ傾動させる走行操作は、走行体10の後退走行指令に相当し、走行操作レバー41を傾動させる量が大きい程、コントローラ50において後退走行時における目標走行速度が大きい値に設定される。また、走行操作レバー41を中立位置に戻す中立復帰操作は、走行体10の停止指令に相当する。
【0025】
操舵ダイヤル42は、非操作状態において中立位置(
図5に示すように、操舵ダイヤル42に記されたマークM1と操作ボックス40に記されたマークM2とが一致する位置)
に位置し、この中立位置を基準に右回り(時計回り)もしくは左回り(反時計回り)に回転変位させる操舵操作を行うことができるようになっている。そして、操舵ダイヤル42は、操舵操作状態において手を放すと、内蔵されたスプリングの力によって自動で中立位置に戻る構成となっている。操舵ダイヤル42の操作状態(中立位置を基準とした操作方向および操作量)は、操作ボックス40内に設けられたポテンショメータ等からなる操舵操作検出器42aにより検出される。操舵操作検出器42aにより検出された操舵ダイヤル42の操作状態に関する情報は、コントローラ50に入力されるようになっている。
【0026】
なお、操舵ダイヤル42を右回りに回転変位させる操舵操作は、前輪11aの右方向への操舵指令に相当し、操舵ダイヤル42を右回りに回転変位させる量が大きい程、コントローラ50において右方向への目標舵角が大きい値に設定される。また、操舵ダイヤル42を左回りに回転変位させる操舵操作は、前輪11aの左方向への操舵指令に相当し、操舵ダイヤル42を左回りに回転変位させる量が大きい程、コントローラ50において左方向への目標舵角が大きい値に設定される。また、操舵ダイヤル42を中立位置に戻す中立復帰操作は、前輪11aを舵角零の状態(γ=0の状態。
図4(A)を参照)にする指令に相当する。
【0027】
昇降操作レバー43は、非操作状態において中立位置(
図5に示すように垂直姿勢の位置)に位置し、この中立位置を基準に前方もしくは後方へ傾動させる昇降操作を行うことができるようになっている。そして、昇降操作レバー43は、昇降操作状態において手を放すと、内蔵されたスプリングの力によって自動で中立位置に戻る構成となっている。昇降操作レバー43の操作状態(中立位置を基準とした操作方向および操作量)は、操作ボックス40内に設けられたポテンショメータ等からなる昇降操作検出器43aにより検出される。昇降操作検出器43aにより検出された昇降操作レバー43の操作状態に関する情報は、コントローラ50に入力されるようになっている。
【0028】
なお、昇降操作レバー43を中立位置よりも前方へ傾動させる昇降操作は、作業台30の下降指令に相当し、昇降操作レバー43を傾動させる量が大きい程、コントローラ50において作業台30の下降時における目標作動速度が大きい値に設定される。また、昇降操作レバー43を中立位置よりも後方へ傾動させる昇降操作は、作業台30の上昇指令に相当し、昇降操作レバー43を傾動させる量が大きい程、コントローラ50において作業台30の上昇時における目標作動速度が大きい値に設定される。また、昇降操作レバー43を中立位置に戻す中立復帰操作は、作業台30の停止指令に相当する。
【0029】
走行体10の内部には、電動モータや小型エンジン等からなる動力源(図示せず)によって駆動される油圧ポンプP(
図1を参照)が設けられている。油圧ポンプPから吐出された圧油は、走行制御バルブ71経由で走行モータ12に供給されるようになっている。なお、走行体10の駆動輪である左右の後輪11bは、走行モータ12によりギヤボックス18を介して駆動される左右の車軸19に取り付けられている(
図3を参照)。コントローラ50は、走行操作レバー41の操作状態に応じて走行制御バルブ71のスプール(図示せず)を電磁駆動する。これにより、作業台30上の作業者は、走行操作レバー41の走行操作によって、走行体10の発進停止および進行方向(前進後退)の切り換えと、走行速度の設定とを行うことができる。
【0030】
また、油圧ポンプPから吐出された圧油は、操舵制御バルブ72経由で操舵シリンダ17に供給されるようになっている。コントローラ50は、操舵ダイヤル42の操作状態に応じて操舵制御バルブ72のスプール(図示せず)を電磁駆動する。これにより、作業台30上の作業者は、操舵ダイヤル42の操舵操作により操舵シリンダ17の伸縮操作を行って、前輪11aの操舵を行うことができる。
【0031】
また、油圧ポンプPから吐出された圧油は、昇降制御バルブ73経由で昇降シリンダ23に供給されるようになっている。コントローラ50は、昇降操作レバー43の操作状態に応じて昇降制御バルブ73のスプール(図示せず)を電磁駆動する。これにより、作業台30上の作業者は、昇降操作レバー43の昇降操作によって、作業台30の昇降移動を行うことができる。
【0032】
走行体10には、後輪11bの車軸19の回転数から走行体10の走行速度を検出する走行速度検出器61と、前輪支持部材14のキングピン15回りの回転角から前輪11aの舵角を検出する舵角検出器(例えば、ポテンショメータ)62とが設けられている(
図1を参照)。伸縮ポスト20には、昇降シリンダ23の作動速度等から作業台30の昇降速度を検出する昇降速度検出器63が内蔵されている(
図1を参照)。走行速度検出器61により検出された走行体10の走行速度の情報、舵角検出器62により検出された舵角の情報、および昇降速度検出器63により検出された作業台30の昇降速度の情報は、いずれもコントローラ50に入力されるようになっている。
【0033】
コントローラ50は、走行制御部51と、操舵制御部52と、昇降制御部53とを有している。走行制御部51は、走行操作検出器41aにより検出された走行操作レバー41の操作状態(中立位置を基準とした操作方向および操作量)に関する情報が入力されると、入力された走行操作レバー41の操作状態に関する情報に基づいて、走行体10の目標走行速度を設定する。そして、走行制御部51は、走行速度検出器61により検出された走行体10の走行速度が、走行操作レバー41の操作状態、例えば、中立位置を基準とした操作方向および操作量で走行操作が行われた走行操作レバー41の走行操作位置に応じて設定された目標走行速度となるように、走行制御バルブ71のスプールを駆動して走行モータ12を回転作動させる走行制御を行う。
【0034】
操舵制御部52は、操舵操作検出器42aにより検出された操舵ダイヤル42の操作状態(中立位置を基準とした操作方向および操作量)に関する情報が入力されると、入力された操舵ダイヤル42の操作状態に関する情報に基づいて、前輪11aの目標舵角を設定する。そして、操舵制御部52は、舵角検出器62により検出された前輪11aの舵角が、操舵ダイヤル42の操作状態、例えば、中立位置を基準とした操作方向および操作量で操舵操作が行われた操舵ダイヤル42の操舵操作位置に応じて設定された目標舵角となるように、操舵制御バルブ72を駆動して操舵シリンダ17を伸縮作動させる操舵制御を行う。
【0035】
昇降制御部53は、昇降操作検出器43aにより検出された昇降操作レバー43の操作状態(中立位置を基準とした操作方向および操作量)に関する情報が入力されると、入力された昇降操作レバー43の操作状態に関する情報に基づいて、作業台30の目標昇降速度を設定する。そして、昇降制御部53は、昇降速度検出器63により検出された作業台30の昇降速度が、昇降操作レバー43の操作状態、例えば、中立位置を基準とした操作方向および操作量で昇降操作が行われた昇降操作レバー43の昇降操作位置に応じて設定された目標昇降速度となるように、昇降制御バルブ73のスプールを駆動して昇降シリンダ23の伸縮作動させる昇降制御を行う。
【0036】
以上のように構成される高所作業車1を用いて高所作業を行う際には、まず、作業台30に搭乗した作業者が、操作ボックス40の走行操作レバー41および操舵ダイヤル42を操作して、走行体10(高所作業車1)を作業場所へ走行移動させる。続いて、作業台30上の作業者が、操作ボックス40の昇降操作レバー43を操作して、作業台30を上昇させて任意の作業高さに位置させる。作業終了後は、作業台30上の作業者が、昇降操作レバー43を操作して、作業台30を下降させて走行体10上に格納する。そして、作業台30上の作業者が、走行操作レバー41および操舵ダイヤル42を操作して、走行体
10(高所作業車1)を保管場所へ走行移動させる。
【0037】
ここで、操舵ダイヤル42の操舵操作に応じた作動制御の具体例について、
図6を用いて説明する。
図6は、操舵ダイヤル42の操舵操作に応じた制御フローの一例を示している。
【0038】
ステップS101において、コントローラ50は、舵角検出器62により検出された前輪11aの舵角が零(0°)であり、且つ、操舵ダイヤル42が中立位置に位置しているか否かを判定する。なお、コントローラ50は、操舵操作検出器42aから入力された操舵ダイヤル42の操作状態(中立位置を基準とした操作方向および操作量)に関する情報に基づいて、操舵ダイヤル42が中立位置に位置しているか否かを判定する。
【0039】
ステップS101における判定がYESの場合、ステップS102に進む。ステップS102において、コントローラ50は、中立復帰キャンセルフラグ=ONに設定し、次のステップS103に進む。一方、ステップS101における判定がNOの場合、ステップS103に進む。
【0040】
ステップS103において、コントローラ50は、舵角検出器62により検出された前輪11aの舵角が、中立舵角を含む所定の角度範囲内であるか否かを判定する。なお、中立舵角は、操舵ダイヤル42の中立位置に対応する前輪11aの目標舵角であり、本実施形態では零(0°)に設定される。所定の角度範囲は、前輪11aの舵角を所望の舵角で維持するための零近傍の角度範囲(例えば±5°の角度範囲)に設定される。
【0041】
ステップS103における判定がNOの場合、ステップS104に進む。ステップS104において、コントローラ50は、中立復帰キャンセルフラグ=OFFに設定し、次のステップS105に進む。一方、ステップS103における判定がYESの場合、ステップS105に進む。
【0042】
ステップS105において、コントローラ50は、操舵操作により操舵ダイヤル42が中立位置から回転変位した操舵操作位置に位置しているか否かを判定する。なお、コントローラ50は、操舵操作検出器42aから入力された操舵ダイヤル42の操作状態に関する情報に基づいて、操舵ダイヤル42が中立位置から回転変位した操舵操作位置に位置しているか否かを判定する。
【0043】
ステップS105における判定がYESの場合、ステップS106に進む。ステップS106において、コントローラ50の操舵制御部52は、操舵操作検出器42aから入力された操舵ダイヤル42の操作状態に関する情報に基づいて、操舵ダイヤル42の操舵操作位置に対応する前輪11aの目標舵角を設定する。そして、操舵制御部52は、舵角検出器62により検出された前輪11aの舵角が、操舵ダイヤル42の操舵操作位置に対応する目標舵角となるように、操舵制御バルブ72を駆動して操舵シリンダ17を伸縮作動させる操舵制御を行う。そして、この場合における制御フローが終了する。
【0044】
ステップS105における判定がNOの場合、ステップS107に進む。ステップS107において、コントローラ50は、中立復帰キャンセルフラグ=ONであるか否かを判定する。ステップS107における判定がNOの場合、ステップS108に進む。ステップS108において、コントローラ50の操舵制御部52は、前輪11aの目標舵角を操舵ダイヤル42の中立位置に対応する中立舵角に(すなわち、零(0°)に)設定する。そして、操舵制御部52は、舵角検出器62により検出された前輪11aの舵角が、中立舵角となる(すなわち、零(0°)となる)ように、操舵制御バルブ72を駆動して操舵シリンダ17を伸縮作動させる中立復帰制御を行う。そして、この場合における制御フロ
ーが終了する。
【0045】
ステップS107における判定がYESの場合、ステップS109に進む。ステップS109において、コントローラ50の操舵制御部52は、操舵シリンダ17を伸縮作動させる制御を行わずに、操舵シリンダ17を停止させた状態で前輪11aの舵角を維持する。そして、この場合における制御フローが終了する。
【0046】
ところで、走行体10が直進走行中の場合、舵角検出器62により検出される前輪11aの舵角は零(0°)であり、操舵ダイヤル42は中立位置に位置する。そのため、
図6の制御フローでは、ステップS101において判定がYESとなり、ステップS102に進む。ステップS102において中立復帰キャンセルフラグ=ONに設定され、ステップS103に進む。前輪11aの舵角が所定の角度範囲内の零(0°)であるため、ステップS103において判定がYESとなり、ステップS105に進む。操舵ダイヤル42が操舵操作位置ではなく中立位置に位置するため、ステップS105において判定がNOとなり、ステップS107に進む。前述したように、中立復帰キャンセルフラグ=ONであるため、ステップS107において判定がYESとなり、ステップS109に進む。そして、ステップS109において、コントローラ50の操舵制御部52は、操舵シリンダ17を伸縮作動させる制御を行わずに、操舵シリンダ17を停止させた状態で前輪11aの舵角を維持する。これにより、前輪11aの舵角は、零(0°)で維持される。
【0047】
次に、走行体10の直進走行中に、操舵ダイヤル42が右回り方向に操舵操作されて、操舵ダイヤル42が中立位置から大きく回転変位した操舵操作位置に位置する場合について述べる。この場合、
図6の制御フローでは、ステップS101において判定がNOとなり、ステップS103に進む。前輪11aの舵角が所定の角度範囲内の零(0°)であるため、ステップS103において判定がYESとなり、ステップS105に進む。操舵ダイヤル42が操舵操作位置に位置するため、ステップS105において判定がYESとなり、ステップS106に進む。ステップS106において、コントローラ50の操舵制御部52は、操舵ダイヤル42の操舵操作位置に対応して、例えば目標舵角を+30°(右方向30°)に設定する。そして、操舵制御部52は、舵角検出器62により検出された前輪11aの舵角が目標舵角(+30°)と一致するまで、操舵シリンダ17を伸長作動させる操舵制御を行う。これにより、前輪11aの舵角は、零(0°)から+30°に変化する。
【0048】
続いて、操舵制御部52の操舵制御により前輪11aの舵角が+30°になった状態で、操舵ダイヤル42から手を放して、操舵ダイヤル42が(内蔵されたスプリングの力によって)操舵操作位置から中立位置に戻る場合について述べる。この場合、
図6の制御フローでは、ステップS101において判定がNOとなり、ステップS103に進む。前輪11aの舵角が所定の角度範囲を超えた+30°であるため、ステップS103において判定がNOとなり、ステップS104に進む。ステップS104において、中立復帰キャンセルフラグ=OFFに設定され、ステップS105に進む。操舵ダイヤル42が操舵操作位置ではなく中立位置に位置するため、ステップS105において判定がNOとなり、ステップS107に進む。前述したように、中立復帰キャンセルフラグ=OFFであるため、ステップS107において判定がNOとなり、ステップS108に進む。ステップS108において、コントローラ50の操舵制御部52は、目標舵角を中立舵角(零(0°))に設定する。そして、操舵制御部52は、舵角検出器62により検出された前輪11aの舵角が中立舵角(零(0°))と一致するまで、操舵シリンダ17を縮小作動させる中立復帰制御を行う。これにより、前輪11aの舵角は、+30°から零(0°)に戻る。
【0049】
次に、走行体10の直進走行中に、操舵ダイヤル42が右回り方向に操舵操作されて、
操舵ダイヤル42が中立位置から比較的小さく回転変位した操舵操作位置に位置する場合について述べる。この場合、
図6の制御フローでは、ステップS101において判定がNOとなり、ステップS103に進む。前輪11aの舵角が所定の角度範囲内の零(0°)であるため、ステップS103において判定がYESとなり、ステップS105に進む。操舵ダイヤル42が操舵操作位置に位置するため、ステップS105において判定がYESとなり、ステップS106に進む。ステップS106において、コントローラ50の操舵制御部52は、操舵ダイヤル42の操舵操作位置に対応して、例えば目標舵角を+4°(右方向4°)に設定する。そして、操舵制御部52は、舵角検出器62により検出された前輪11aの舵角が目標舵角(+4°)と一致するまで、操舵シリンダ17を伸長作動させる操舵制御を行う。これにより、前輪11aの舵角は、零(0°)から+4°に変化する。
【0050】
続いて、操舵制御部52の操舵制御により前輪11aの舵角が+4°になった状態で、操舵ダイヤル42から手を放して、操舵ダイヤル42が(内蔵されたスプリングの力によって)操舵操作位置から中立位置に戻る場合について述べる。この場合、
図6の制御フローでは、ステップS101において判定がNOとなり、ステップS103に進む。前輪11aの舵角が所定の角度範囲内の+4°であるため、ステップS103において判定がYESとなり、ステップS105に進む。操舵ダイヤル42が操舵操作位置ではなく中立位置に位置するため、ステップS105において判定がNOとなり、ステップS107に進む。中立復帰キャンセルフラグ=ONであるため、ステップS107において判定がYESとなり、ステップS109に進む。そして、ステップS109において、コントローラ50の操舵制御部52は、操舵シリンダ17を縮小作動させる中立復帰制御を行わずに、操舵シリンダ17を停止させて前輪11aの舵角を維持する。なおこの場合、操舵ダイヤル42は、+4°と中立舵角(零(0°))との間の舵角(例えば、+2°や+3°等)に対応する操舵操作位置を通過するが、操舵ダイヤル42が操舵シリンダ17を停止した前輪11aの舵角である+4°を超える操作ではないため、操舵制御が行われることなく
中立位置に戻る。そのため、前輪11aの舵角は、操舵ダイヤル42が中立位置に戻る前の操舵操作位置における舵角、すなわち+4°で維持される。
【0051】
次に、前輪11aの舵角が+4°で維持された状態で、操舵ダイヤル42が左回り方向に操舵操作されて、操舵ダイヤル42が中立位置から僅かに回転変位した操舵操作位置に位置する場合について述べる。この場合、
図6の制御フローでは、ステップS101において判定がNOとなり、ステップS103に進む。前輪11aの舵角が所定の角度範囲内の+4°であるため、ステップS103において判定がYESとなり、ステップS105に進む。操舵ダイヤル42が操舵操作位置に位置するため、ステップS105において判定がYESとなり、ステップS106に進む。ステップS106において、コントローラ50の操舵制御部52は、操舵ダイヤル42の操舵操作位置に対応して、例えば目標舵角を-2°(左方向2°)に設定する。そして、操舵制御部52は、舵角検出器62により検出された前輪11aの舵角が目標舵角(-2°)と一致するまで、操舵シリンダ17を縮小作動させる操舵制御を行う。これにより、前輪11aの舵角は、+4°から-2°に変化する。
【0052】
続いて、操舵制御部52の操舵制御により前輪11aの舵角が-2°になった状態で、操舵ダイヤル42から手を放して、操舵ダイヤル42が(内蔵されたスプリングの力によって)操舵操作位置から中立位置に戻る場合について述べる。この場合、
図6の制御フローでは、前述した、操舵制御部52の操舵制御により前輪11aの舵角が+4°になった状態で、操舵ダイヤル42が操舵操作位置から中立位置に戻る場合と同様の処理が行われる。なおこの場合、操舵ダイヤル42は、-2°と中立舵角(零(0°))との間の舵角(例えば、-1°等)に対応する操舵操作位置を通過するが、操舵ダイヤル42が操舵シリンダ17を停止した前輪11aの舵角である-2°を超える操作ではないため、操舵制
御が行われることなく中立位置に戻る。そのため、前輪11aの舵角は、操舵ダイヤル42が中立位置に戻る前の操舵操作位置における舵角、すなわち-2°で維持される。このように、前輪11aの舵角が所定の角度範囲内(例えば±5°の角度範囲内)で変化する場合には、操舵ダイヤル42が操舵操作位置から中立位置に戻っても、このときの前輪11aの舵角、すなわち、操舵ダイヤル42が中立位置に戻った時点における前輪11aの舵角が維持される。また、前輪11aの舵角が所定の角度範囲内の舵角で維持される状態であっても、操舵ダイヤル42を中立位置を超えて反対方向に操舵操作することにより、前輪11aの舵角を中立舵角(零(0°))に近い舵角(例えば、±1°や±2°等)にすることができる。
【0053】
次に、前輪11aの舵角が+4°で維持された状態で、操舵ダイヤル42が右回り方向に操舵操作されて、操舵ダイヤル42が中立位置から比較的大きく回転変位した操舵操作位置に位置する場合について述べる。この場合、
図6の制御フローでは、ステップS101において判定がNOとなり、ステップS103に進む。前輪11aの舵角が所定の角度範囲内の+4°であるため、ステップS103において判定がYESとなり、ステップS105に進む。操舵ダイヤル42が操舵操作位置に位置するため、ステップS105において判定がYESとなり、ステップS106に進む。ステップS106において、コントローラ50の操舵制御部52は、操舵ダイヤル42の操舵操作位置に対応して、例えば目標舵角を+15°(右方向15°)に設定する。そして、操舵制御部52は、舵角検出器62により検出された前輪11aの舵角が目標舵角(+15°)と一致するまで、操舵シリンダ17を伸長作動させる操舵制御を行う。これにより、前輪11aの舵角は、+4°から+15°に変化する。
【0054】
続いて、操舵制御部52の操舵制御により前輪11aの舵角が+15°になった状態で、操舵ダイヤル42から手を放して、操舵ダイヤル42が(内蔵されたスプリングの力によって)操舵操作位置から中立位置に戻る場合について述べる。この場合、
図6の制御フローでは、ステップS101において判定がNOとなり、ステップS103に進む。前輪11aの舵角が所定の角度範囲を超えた+15°であるため、ステップS103において判定がNOとなり、ステップS104に進む。ステップS104において、中立復帰キャンセルフラグ=OFFに設定され、ステップS105に進む。操舵ダイヤル42が操舵操作位置ではなく中立位置に位置するため、ステップS105において判定がNOとなり、ステップS107に進む。前述したように、中立復帰キャンセルフラグ=OFFであるため、ステップS107において判定がNOとなり、ステップS108に進む。ステップS108において、コントローラ50の操舵制御部52は、目標舵角を中立舵角(零(0°))に設定する。そして、操舵制御部52は、舵角検出器62により検出された前輪11aの舵角が中立舵角(零(0°))と一致するまで、操舵シリンダ17を縮小作動させる中立復帰制御を行う。これにより、前輪11aの舵角は、+15°から零(0°)に戻る。このように、前輪11aの舵角が所定の角度範囲内の舵角で維持される状態であっても、前輪11aの舵角が所定の角度範囲を超えて変化するように操舵ダイヤル42の操舵操作を行うことで、操舵ダイヤル42を操舵操作位置から中立位置に戻すことにより、前輪11aの舵角を中立舵角(零(0°))に戻すことができる。
【0055】
以上で説明したように、本実施形態によれば、操舵制御部52は、操舵制御を行うことにより、舵角検出器62により検出された前輪11a(操舵輪)の舵角が、中立舵角(零(0°))を含む所定の角度範囲内で変化する場合、操舵ダイヤル42が操舵操作位置から中立位置に戻ると、操舵シリンダ17を停止させて前輪11aの舵角を維持する。これにより、前輪11aの舵角が所定の角度範囲内で変化するように操舵ダイヤル42の操舵操作を行う場合、操舵ダイヤル42を操舵操作位置から中立位置に戻しても、当該操舵ダイヤル42が中立位置に戻った時点における前輪11aの舵角が維持される。従って、走行体10を長距離に亘って走行させる際、走行体10の進行方向を直進から僅かに変えた
い場合に、中立位置の近傍の位置範囲で操舵ダイヤル42の操作を続ける必要がない。そのため、長距離走行時の高所作業車1の操作性を向上させることが可能になる。
【0056】
また、操舵制御部52は、操舵制御を行うことにより、舵角検出器62により検出された前輪11aの舵角が所定の角度範囲を超えて変化する場合、操舵ダイヤル42が操舵操作位置から中立位置に戻ると、舵角検出器62により検出された前輪11aの舵角が中立舵角となるように、操舵シリンダ17を作動させる中立復帰制御を行う。これにより、前輪11aの舵角が所定の角度範囲を超えて変化するように操舵ダイヤル42の操舵操作を行う場合、操舵ダイヤル42を操舵操作位置から中立位置に戻すことにより、前輪11aの舵角を中立舵角(零(0°))に戻すことが可能になる。そのため、前輪11aの舵角が所定の角度範囲内の舵角で維持される状態であっても、前輪11aの舵角が所定の角度範囲を超えて変化するように操舵ダイヤル42の操舵操作を行うことで、操舵ダイヤル42を操舵操作位置から中立位置に戻すことにより、前輪11aの舵角を中立舵角に戻すことができる。
【0057】
また、操舵制御部52は、操舵操作により操舵ダイヤル42が中立位置から変位して再び中立位置に戻るまでの間、舵角検出器62により検出された前輪11aの舵角が所定の角度範囲内で変化する場合、操舵ダイヤル42が操舵操作位置から中立位置に戻ると、操舵シリンダ17を停止させて前輪11aの舵角を維持する。また、操舵制御部52は、操舵操作により操舵ダイヤル42が中立位置から変位して再び中立位置に戻るまでの間、舵角検出器62により検出された前輪11aの舵角が所定の角度範囲を超えて変化する場合、操舵ダイヤル42が操舵操作位置から中立位置に戻ると、中立復帰制御を行う。これにより、前輪11aの舵角が所定の角度範囲内で変化するように操舵ダイヤル42の操舵操作を行うことで、操舵ダイヤル42を操舵操作位置から中立位置に戻すことにより、当該操舵ダイヤル42が中立位置に戻った時点における前輪11aの舵角を維持することが可能になる。また、前輪11aの舵角が所定の角度範囲を超えて変化するように操舵ダイヤル42の操舵操作を行うことで、操舵ダイヤル42を操舵操作位置から中立位置に戻すことにより、前輪11aの舵角を中立舵角(零(0°))に戻すことが可能になる。
【0058】
上述の実施形態において、前輪11aの舵角が所定の角度範囲内の舵角で維持される状態で、前輪11aの舵角が所定の角度範囲を超えて変化するように操舵ダイヤル42の操舵操作を行うことで、操舵ダイヤル42を操舵操作位置から中立位置に戻すことにより、前輪11aの舵角を中立舵角(零(0°))に戻すことができるが、これに限られるものではない。例えば、前輪11aの舵角が所定の角度範囲内の舵角で維持される状態で、リセットボタン等(図示せず)の操作に応じて前輪11aの舵角を中立舵角に戻すこと可能な中立復帰手段(図示せず)を設けるようにしてもよい。
【0059】
上述の実施形態において、操舵操作を行うための操舵操作具として、中立位置から回転変位させる操舵操作を行う操舵ダイヤル42が用いられているが、これに限られるものではなく、例えば、中立位置から傾動させる操舵操作を行う操舵操作レバーが用いられるようにしてもよい。
【0060】
上述の実施形態において、走行モータ12は、油圧モータを用いて構成されているが、これに限られるものではなく、電動モータを用いて構成されてもよい。
【0061】
上述の実施形態において、走行体10に、作業台30を昇降させることが可能な伸縮ポスト20が設けられているが、これに限られるものではない。例えば、走行体に、作業台を昇降させることが可能なシザースリンク機構が設けられてもよく、作業台を上下移動させることが可能なブームが設けられてもよい。また、作業台30に限らず、車輪駆動式の走行体にクレーン等の作業装置を備えて構成された作業車においても、本発明を適用する
ことが可能である。
【符号の説明】
【0062】
1 高所作業車
10 走行体
20 伸縮ポスト
30 作業台
17 操舵シリンダ
40 操作ボックス
42 操舵ダイヤル
50 コントローラ
52 舵角設定部
62 舵角検出器