(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022006530
(43)【公開日】2022-01-13
(54)【発明の名称】ホルダ
(51)【国際特許分類】
B60R 11/02 20060101AFI20220105BHJP
H04M 1/11 20060101ALI20220105BHJP
【FI】
B60R11/02 W
H04M1/11 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020108808
(22)【出願日】2020-06-24
(71)【出願人】
【識別番号】391019681
【氏名又は名称】株式会社コムテック
(74)【代理人】
【識別番号】110000578
【氏名又は名称】名古屋国際特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】木戸 慶吉郎
【テーマコード(参考)】
3D020
5K023
【Fターム(参考)】
3D020BA06
3D020BC03
3D020BD02
3D020BD14
5K023AA07
5K023BB11
5K023BB27
5K023CC01
5K023DD06
5K023KK10
5K023PP12
5K023PP16
5K023RR08
(57)【要約】
【課題】高い保持能力を実現でき、且つ、容易に開くことが可能なホルダを提供する。
【解決手段】ホルダ1は、クランプ機構20と、回転板30と、リンク機構41,42と、を備える。リンク機構は、回転板に連結される。クランプ機構は、開閉可能に配置された一対の顎部21,22を備える。一対の顎部の少なくとも一方は、リンク機構に連結される。クランプ機構は、回転板の回転によりリンク機構が変位することに応じて一対の顎部を開閉し、閉じた一対の顎部で対象物を挟持することにより、対象物を保持するように構成される。リンク機構は、一対の顎部が閉じるときに、一対の顎部と対象物との接触により第一のリンク51と第二のリンク52との相対位置が変化することに応じて弾性力を発揮させるように構成される。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転板と、
前記回転板に連結されるリンク機構と、
開閉可能に配置された一対の顎部を備えるクランプ機構と、
を備え、
前記一対の顎部の少なくとも一方は、前記リンク機構に連結されており、
前記クランプ機構は、前記回転板の回転により前記リンク機構が変位することに応じて前記一対の顎部を開閉し、閉じた前記一対の顎部で対象物を挟持することにより、前記対象物を保持するように構成され、
前記リンク機構は、相互に連結された第一及び第二のリンクと、前記第一のリンクと前記第二のリンクとの連結部に配置された弾性材と、を備え、前記回転板の回転により前記第一及び第二のリンクが変位し前記一対の顎部が閉じるときに、前記一対の顎部と前記対象物との接触により前記第一のリンクと前記第二のリンクとの相対位置が変化することに応じて前記弾性材からの弾性力を発揮させるように構成され、
前記対象物は、前記弾性力の作用を受けて前記一対の顎部の間で保持されるホルダ。
【請求項2】
前記回転板を回転駆動するように構成されるモータ
を備え、
前記クランプ機構は、前記モータからの動力を前記回転板及び前記リンク機構を介して受けて、前記一対の顎部を開閉するように構成された電動式のクランプ機構である請求項1記載のホルダ。
【請求項3】
前記モータの出力軸が、ギヤの介在なしに前記回転板に接続されている請求項2記載のホルダ。
【請求項4】
前記リンク機構として、前記回転板に連結された第一及び第二のリンク機構を備え、
前記第一のリンク機構は、前記回転板との連結部とは反対側の端部で前記一対の顎部のうちの第一の顎部に連結され、
前記第二のリンク機構は、前記回転板との連結部とは反対側の端部で前記一対の顎部のうちの第二の顎部に連結され、
前記第一及び第二のリンク機構は、前記回転板の回転に応じて、前記第一及び第二の顎部が互いに逆方向に線形移動するように、互いに異なる位置で、前記回転板に連結される請求項1~請求項3のいずれか一項記載のホルダ。
【請求項5】
前記第一及び第二のリンク機構は、前記回転板の回転方向において互いに180度離れた位置で、前記回転板に連結されている請求項4記載のホルダ。
【請求項6】
前記第一及び第二のリンク機構は、前記一対の顎部が閉じているとき、前記回転板と前記第一のリンク機構との連結点である第一の連結点と、前記回転板と前記第二のリンク機構との連結点である第二の連結点が、前記第一及び第二の顎部の軌道を通る直線上に配置されるように、前記回転板に連結される請求項5記載のホルダ。
【請求項7】
車両内で、前記対象物として、矩形状のスマートフォンを保持するためのホルダとして構成される請求項1~請求項6のいずれか一項記載のホルダ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、ホルダに関する。
【背景技術】
【0002】
矩形状の携帯端末、特にはスマートフォンを車両内で保持するためのホルダが既に知られている。ホルダには、非電動式ホルダと、電動式ホルダと、が含まれる。
【0003】
公知の電動式ホルダは、携帯端末を保持するための把持部をモータにより開閉するように構成される。例えばホルダは、モータに接続されたピニオンギヤと、ピニオンギヤと噛み合う歯を有する左右のラックと、を備え、ピニオンギヤの回転に伴って左右のラックが互い逆方向に移動することにより、これらのラックで構成される把持部が開閉するように構成される(例えば特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来の電動式ホルダでは、モータトルクを保持力として用いて、携帯端末を保持する。この保持方式では、無通電時のトルクが大きいモータを用いて、電動式ホルダを構成することが考えられる。しかしながら、トルクが大きいモータの使用は、製品コストの上昇及び装置の大型化を招く可能性がある。
【0006】
従来の電動式ホルダでは更に、モータと駆動対象との間におけるギヤの存在により生じるバックラッシュに起因して、携帯端末の保持が不安定である。すなわち、バックラッシュに起因して、携帯端末がぐらつく。
【0007】
この他、把持部を閉じるために、更には携帯端末を保持するために、バネを活用することが考えられるが、把持部を閉じる方向に弾性力を働かせるバネ配置では、把持部を開くために、バネの弾性力よりも大きな力が必要である。
【0008】
そこで、本開示の一側面によれば、モータトルクに基づかずに高い保持能力を実現でき、且つ、容易に把持部を開くことが可能なホルダを提供できることが望ましい。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本開示の一側面に係るホルダは、回転板と、リンク機構と、クランプ機構と、を備える。リンク機構は、回転板に連結される。クランプ機構は、開閉可能に配置された一対の顎部を備える。一対の顎部の少なくとも一方は、リンク機構に連結される。
【0010】
クランプ機構は、回転板の回転によりリンク機構が変位することに応じて一対の顎部を開閉し、閉じた一対の顎部で対象物を挟持することにより、対象物を保持するように構成される。
【0011】
本開示の一側面によれば、リンク機構は、相互に連結された第一及び第二のリンクと、第一のリンクと第二のリンクとの連結部に配置された弾性材と、を備える。リンク機構は、回転板の回転により第一及び第二のリンクが変位し一対の顎部が閉じるときに、一対の顎部と対象物との接触により第一のリンクと第二のリンクとの相対位置が変化することに応じて弾性材からの弾性力を発揮させるように構成される。対象物は、弾性力の作用を受けて一対の顎部の間で保持される。
【0012】
上述したホルダによれば、弾性力を用いて対象物を保持するので、モータトルクに基づかずに高い保持能力を実現することができる。しかも、把持部が開閉する向きに配置されたバネにより把持部が閉じる方向に付勢力を働かせるホルダ構成と比較して、一対の顎部を開くために強い力を必要としない。
【0013】
なぜなら、保持に用いられる弾性力は、一対の顎部が閉じるときに、一対の顎部と対象物との接触により生じる第一のリンクと第二のリンクとの相対位置の変化により生じるものであるためである。
【0014】
従って、本開示の一側面によれば、モータトルクに基づかずに、対象物に対する高い保持能力を実現可能で、且つ、容易に把持部を開くことが可能なホルダを提供することができる。
【0015】
本開示の一側面によれば、ホルダは、回転板を回転駆動するように構成されるモータを備えていてもよい。クランプ機構は、モータからの動力を回転板及びリンク機構を介して受けて、一対の顎部を開閉するように構成された電動式のクランプ機構であってもよい。
【0016】
本開示の一側面によれば、モータの出力軸は、ギヤの介在なしに回転板に接続されてもよい。モータの出力軸と回転板との間の動力伝達経路にギヤが介在しなければ、ギヤによるバックラッシュは生じず、バックラッシュに起因して保持能力が不安定になるのを抑制することができる。
【0017】
本開示の一側面によれば、ホルダは、上述のリンク機構として、回転板に連結された第一及び第二のリンク機構を備えてもよい。第一のリンク機構は、回転板との連結部とは反対側の端部で一対の顎部のうちの第一の顎部に連結されてもよい。第二のリンク機構は、回転板との連結部とは反対側の端部で一対の顎部のうちの第二の顎部に連結されてもよい。
【0018】
第一及び第二のリンク機構は、回転板の回転に応じて、第一及び第二の顎部が互いに逆方向に線形移動するように、回転板に連結されてもよい。第一及び第二のリンク機構を備えるホルダによれば、保持能力及び保持の安定性が向上する。
【0019】
本開示の一側面によれば、第一及び第二のリンク機構は、第一及び第二の顎部が互いに逆方向に線形移動するように、互いに異なる位置で、回転板に連結されてもよい。
【0020】
本開示の一側面によれば、第一及び第二のリンク機構は、回転板の回転方向において互いに180度離れた位置で、回転板に連結されていてもよい。180度の間隔によれば、互いに逆方向に大きく線形移動するように、一対の顎部を回転板に連結することができる。
【0021】
本開示の一側面によれば、第一及び第二のリンク機構は、一対の顎部が閉じているとき、回転板と第一のリンク機構との連結点である第一の連結点と、回転板と第二のリンク機構との連結点である第二の連結点が、第一及び第二の顎部の軌道を通る直線上に配置されるように、回転板に連結されてもよい。
【0022】
一対の顎部が閉じているときに、第一及び第二の連結点が軌道を通る直線上に配置されている場合には、振動等を原因とする対象物からの力の作用により第一及び第二の顎部が軌道に沿って移動しようとしても、回転板を回転させる力が、第一及び第二の顎部からリンク機構を通じて回転板に作用するのを抑制することができる。
【0023】
換言すれば、対象物からの力の作用により回転板が回転し、第一及び第二の顎部が開く方向に移動するのを抑制することができる。従って、上述した第一及び第二の連結点の配置によれば、振動等を原因とする対象物からの力の作用の影響を抑えて、対象物を安定的に保持することができる。
【0024】
本開示の一側面によれば、上述した構成は、車両内で、対象物として、矩形状のスマートフォンを保持するためのホルダに適用されてもよい。こうしたホルダは、車両内でのスマートフォンを安定的に保持するのに役立つ。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【
図2】ホルダの駆動システムに関する説明図である。
【
図3】クランプ機構が閉じているときのホルダの構成を示す図である。
【
図4】クランプ機構が開いているときのホルダの構成を示す図である。
【
図5】クランプ機構が携帯端末を保持しているときのホルダの構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下に本開示の例示的実施形態を、図面を参照しながら説明する。
図1に示す本実施形態のホルダ1は、車室内での携帯端末100の保持に特に適したホルダである。携帯端末100の例には、矩形状のスマートフォンが含まれる。車両乗員は、電話機能、マップ表示機能、及びナビゲーション機能等をハンズフリーで利用するために、スマートフォンをホルダ1に取り付けることができる。
【0027】
ホルダ1は、例えば、図示しない基台又は金具を介して、車室内のダッシュボード又はセンターコンソールに設置される。ホルダ1は、電動式であり、モータ10からの動力を用いて、携帯端末100を挟持するためのクランプ機構20を開閉するように構成される。
【0028】
クランプ機構20は、一対の顎部21,22を備える。一対の顎部21,22は、携帯端末100の画面を見るユーザから見て右側に位置する第一の顎部21と、左側に位置する第二の顎部22と、から構成される。
【0029】
第一及び第二の顎部21,22は、モータ10に駆動されて、
図1の一点鎖線及び二点鎖線矢印で示すように、互いに逆方向に移動する。すなわち、第一の顎部21が右に移動するとき、第二の顎部22は左に移動する。この動作は、一対の顎部21,22又はクランプ機構20が開く動作に対応する。第一の顎部21が左に移動するとき、第二の顎部22は右に移動する。この動作は、一対の顎部21,22又はクランプ機構20が閉じる動作に対応する。
【0030】
携帯端末100は、クランプ機構20が開いた状態で、一対の顎部21,22の間の載置空間に置かれ、クランプ機構20が閉じた状態で、携帯端末100を左右から挟み込む一対の顎部21,22によって保持される。
【0031】
モータ10は、
図2に示すようにケーブルCBを通じてコントローラ60と接続され、コントローラ60からの駆動信号に従って正回転又は負回転する。モータ10が正回転するとき、クランプ機構20は開く方向に動作し、モータ10が負回転するとき、クランプ機構20は閉じる方向に動作する。
【0032】
コントローラ60は、例えば、車室内に設置された車両乗員が操作可能な操作部70からの操作信号に従って、クランプ機構20を開閉するための駆動信号をモータ10に入力する。
【0033】
コントローラ60には、携帯端末100の存在又は接近を検知するための光学センサ80が接続され得る。この場合、コントローラ60は、クランプ機構20が開いている状態で、光学センサ80からの入力信号に基づき、載置空間への携帯端末100の設置を検知したとき、操作部70からの信号なしにクランプ機構20を閉じるようにモータ10を制御し得る。
【0034】
図3には、クランプ機構20が閉じているときのホルダ1の構成が示され、
図4には、クランプ機構20が開いているときのホルダ1の構成が示される。
図5には、クランプ機構20が携帯端末100を保持している状態でのホルダ1の構成が示される。
図5における一点鎖線は、携帯端末100の外形を表す。
図5では、携帯端末100が透明に描写される。
【0035】
図3、
図4、及び
図5のそれぞれにおいて、上段には、上方から見たホルダ1の平面図が示され、下段には、後方から見たホルダ1の側面図が示される。ここでいう上下、左右、及び前後の関係は、
図1に示される。
【0036】
ホルダ1は、上述のモータ10及びクランプ機構20に加えて、回転板30と、第一及び第二のリンク機構41,42と、を備える。モータ10は、ステッピングモータ10であり得る。
【0037】
クランプ機構20は、一対の顎部21,22に加えて、これら顎部21,22の線形移動、換言すれば直線運動を実現するための支持台26を備える。支持台26は、
図4に示すように左右に延びるスリット27を有する。
【0038】
第一及び第二の顎部21,22のそれぞれは、板状の下部構成体23Lと、下部構成体23Lの側端から上方に立設されて、携帯端末100の側面を保持するための上部構成体23Uと、を備える。
【0039】
具体的に、第一の顎部21は、下部構成体23Lの右側端から上部構成体23Uが立設された構成にされる。第二の顎部22は、下部構成体23Lの左側端から上部構成体23Uが立設された構成にされる。第一及び第二の顎部21,22のそれぞれは更に、下部構成体23Lの底面から下方に突出してスリット27内を通るガイド構造23Gを備える。
【0040】
ガイド構造23Gの移動がスリット27により直線方向に規制されることにより、第一及び第二の顎部21,22は、左右に直線運動する。具体的に、第一及び第二の顎部21,22は、支持台26上でスライド移動する。
【0041】
支持台26は、モータ10の出力軸11を挿通するための挿通孔(図示せず)を更に備える。モータ10は、支持台26の下方から、出力軸11が挿通孔を貫通するように支持台26に装着され、支持台26に固定される。挿通孔は、モータ10の出力軸11よりも大径に構成されており、モータ10の出力軸11は、挿通孔と干渉することなく回転する。
【0042】
回転板30は、支持台26から突出するモータ10の出力軸11と嵌合するように、支持台26上に配置される。具体的に、回転板30は、中心に、モータ10の出力軸11を挿入するための嵌合孔31を備える。モータ10の出力軸11は、ダブルDカット軸であり、嵌合孔31は、この出力軸11と嵌合する相似形状を有する。
【0043】
回転板30は、この嵌合により出力軸11に対して固定され、モータ10の回転に応じて回転し、回転板30に連結される第一及び第二のリンク機構41,42に作用する。この回転板30は、回転リンクとして機能する。
【0044】
第一及び第二のリンク機構41,42は、同一構成のリンク機構が180度向きを変えて支持台26に配置されたものである。第一及び第二のリンク機構41,42は、それぞれ、第一のリンク51と、第二のリンク52と、バネ55と、を備える。
【0045】
第一のリンク51は、第一端部が回転板30に連結され、第一端部とは反対側の第二端部が第二のリンク52に連結されるように構成される。第二のリンク52は、第一端部が第一のリンク51に接続され、第一端部とは反対側の第二端部が対応する顎部21,22に連結されるように配置にされる。具体的に、第一のリンク機構41が有する第二のリンク52は、第一の顎部21に連結され、第二のリンク機構42が有する第二のリンク52は、第二の顎部22に連結される。
【0046】
図3、
図4、及び
図5から理解できるように、第一及び第二のリンク51,52は、それぞれ、90度の円弧形状のリンクであり、第一及び第二のリンク51,52の組は、180度の円弧状配置のリンク構造を示す。
【0047】
バネ55は、アーム56を有するトーションバネ55であり、第一のリンク51と第二のリンク52との連結部JTに設けられる。第一及び第二のリンク51,52のそれぞれには、連結部JTの近傍にアーム56の移動を規制する凸部53が設けられている。
【0048】
凸部53がアーム56と係合することにより、バネ55は、二つのアーム56がなす角度θが小さくなる方向に、第一のリンク51と第二のリンク52とが相対移動したとき、角度θを広げる方向の弾性力を発揮するように配置される。
【0049】
バネ55は、第一及び第二のリンク51,52の組が180度の円弧状配置にあるとき、ほぼ弾性力が働かないように配置される。以下では、第一及び第二のリンク51,52の組が初期配置である180度の円弧状配置から、角度θが小さくなる方向に移動するとき、第一及び第二のリンク51,52が「広がる」と表現する。一方、角度θが大きくなる方向に移動するとき、第一及び第二のリンク51,52が「閉じる」と表現する。第一及び第二のリンク51,52の組の180度の円弧状配置、即ち初期配置のことを、通常姿勢と表現する。
【0050】
第一及び第二のリンク51,52は更に、第一のリンク51及び第二のリンク52のそれぞれの連結部JT側の端部が互いに干渉することにより、180度の円弧状配置から更に閉じる方向には移動しないように構成される。すなわち、第一及び第二のリンク機構41,42のそれぞれは、角度θを小さくする方向への力の作用がない限りは、第一及び第二のリンク51,52の通常姿勢を維持するように構成される。
【0051】
また、第一のリンク機構41は、クランプ機構20が閉じた状態で、回転板30の左側に位置する第一の連結点P1で回転板30と連結される。第二のリンク機構42は、クランプ機構20が閉じた状態で、第一の連結点P1とは異なる、回転板30の右側に位置する第二の連結点P2で回転板30と連結される。
【0052】
第一及び第二の連結点P1,P2は、回転板30の回転方向に対して互いに180度離れた位置にある。特には、第一の連結点P1及び第二の連結点P2は、クランプ機構20が閉じた状態で、第一及び第二の顎部21,22の軌道を通る直線LN上に配置される。
【0053】
図3及び
図4から理解できるように、携帯端末100が載置されていない状態でクランプ機構20が閉じた状態から回転板30が反時計周りに回転するとき、第一及び第二のリンク機構41,42は、第一及び第二のリンク51,52が通常姿勢を保ったまま回転板30の回転に応じて全体的に傾きながら左右に移動するように変位する。この変位により、第一及び第二の顎部21,22は、左右逆方向に開くように移動する。
【0054】
回転板30が、クランプ機構20が閉じているときの初期角度から180度回転するとき、すなわち、第一及び第二の連結点P1,P2がそれぞれ反時計回りに180度移動するとき、第一及び第二の顎部21,22は最大限左右に開いた状態にされる。この状態で、携帯端末100は、第一及び第二の顎部21,22の上部構成体23Uの間における載置空間に載置される。
【0055】
その後、操作部70を通じたユーザ操作に応じてモータ10が負回転して、回転板30が時計周りに回転することにより、クランプ機構20は、閉じられる。回転板30がモータ10により180度回転駆動されて初期角度まで戻ると、クランプ機構20の閉じる動作は完了する。
【0056】
携帯端末100が載置されていない状態でクランプ機構20が閉じるとき、第一及び第二のリンク機構41,42は、第一及び第二のリンク51,52の全体が180度の円弧状配置を保ったまま回転板30の回転に応じて傾きながら左右に移動するように変位し、一対の顎部21,22を閉じるように移動させる。
【0057】
一方、携帯端末100が載置されている状態でクランプ機構20が閉じるとき、第一及び第二のリンク機構41,42は、一対の顎部21,22の上部構成体23Uが携帯端末100と接触して移動を阻害されるまでは、携帯端末100が載置されていない状態と同様に、通常姿勢を保ったまま、一対の顎部21,22が閉じる方向に移動する。
【0058】
一対の顎部21,22の上部構成体23Uが携帯端末100と接触して移動を阻害され始めると、通常姿勢が崩れて、基本的には第一のリンク51だけが、回転板30の回転に応じて変位する。
【0059】
すなわち、第一のリンク51は、回転板30の回転に応じて、回転板30との連結点P1,P2が初期位置に戻るように変位するが、第二のリンク52は、上記阻害により、第一のリンク51及び顎部(第一の顎部21又は第二の顎部22)に対して角度変位を伴うだけで、回転板30側に近づく方向には変位することができなくなる。
【0060】
このとき、互いに連結される第一のリンク51及び第二のリンク52は、広がる方向に相対変位する。すなわち、第一のリンク51と第二のリンク52との相対位置は、その連結部JTに存在するバネ55のアーム56がなす角度θを小さくする方向に、変化する。
【0061】
この相対位置の変化により、バネ55には、広がった第一及び第二のリンク51,52を閉じる方向への弾性力が生じる。この弾性力は、第二のリンク52を介して、一対の顎部21,22が携帯端末100を挟持するための力に変換される。これにより、携帯端末100は、弾性力の作用を受けて、一対の顎部21,22の間で保持される。
【0062】
ここで注目すべきなのは、携帯端末100を保持した状態でクランプ機構20が閉じる場合であっても、回転板30は、携帯端末100がない場合と同様に初期角度まで戻ることである。すなわち、このホルダ1は、モータトルクを活用せずに、バネ55の弾性力、特には携帯端末100と一対の顎部21,22との接触により生じるトーションバネ55のねじれによる弾性力を利用して、携帯端末100を保持する。
【0063】
無通電時のモータトルクを活用せずに、クランプ機構20に生じるバネ55の弾性力で携帯端末100を保持できることは、トルクの大きいモータを使用せずに、高い保持力を有するホルダ1を構成することができることを意味する。
【0064】
更に言えば、このホルダ1は、保持力に第一及び第二のリンク51,52の相対変位により生じるトーションバネ55のねじれ方向の弾性力を利用するものであるため、モータ10の動力でクランプ機構20を開くときに、バネ55の弾性力に打ち勝つための追加のトルクが必要ない。
【0065】
従って、本実施形態のホルダ1は、弾性力で把持部を閉じるホルダ構成と比較して、携帯端末100の保持に弾性力を活用しているのにもかかわらず、小さいモータトルクで、クランプ機構20を開くことができる。
【0066】
更に、このホルダ1によれば、クランプ機構20が閉じたときに、第一及び第二のリンク機構41,42と回転板30との連結点P1,P2が、更には、回転板30の中心点が一対の顎部21,22の軌道を通る直線LN上にある。
【0067】
このような連結点P1,P2の配置によれば、振動等を原因とする携帯端末100からの力の作用により第一及び第二の顎部21,22が軌道に沿って左右に移動しようとしても、回転板30を回転させる力が、第一及び第二の顎部21,22から第一及び第二のリンク機構41,42を通じて回転板30に作用するのを抑制することができる。
【0068】
従って、このホルダ1によれば、回転板30に対する追加のロック機構なしに、携帯端末100からの力の作用により回転板30が回転し、第一及び第二の顎部21,22が開く方向に移動するのを抑制することができ、携帯端末100を安定的に保持することができる。
【0069】
更に、このホルダ1によれば、モータ10の出力軸11が、回転板30にギヤを介さず直接接続されているので、バックラッシュに起因したクランプ機構20のぐらつきが生じない。ギヤの回転による雑音がないので、クランプ機構20を静かに開閉することも可能である。
【0070】
従って、本実施形態によれば、優れたホルダ1を提供することができる。例えば、モータトルクに基づかずに、対象物に対する高い保持能力を実現可能で、且つ、小さいモータトルクで容易にクランプ機構20を開くことが可能なホルダ1を提供することができる。
【0071】
以上に、本開示の例示的実施形態を説明したが、本開示は、上述の実施形態に限定されるものではなく、種々の態様を採ることができる。例えば、上述のホルダ1によれば、第一及び第二の顎部21,22の両方が、左右に移動して、クランプ機構20の開閉が実現される。
【0072】
しかしながら、第一及び第二の顎部21,22の一方が、固定された状態で、他方の顎部が左右に移動することにより、クランプ機構20の開閉が実現されてもよい。この場合、ホルダには、リンク機構が一つのみ設けられ得る。
【0073】
また、第一及び第二のリンク51,52は、円弧形状ではなく直線形状であってもよい。例えば、第一及び第二のリンク機構41,42は、直線形状の二つのリンクが、所定角度を有した状態で連結された構成にされてもよい。
【0074】
バネ55は、第一及び第二のリンク51,52を閉じる方向に弾性力が作用するように配置されればよく、トーションバネ以外の弾性材に置換されてもよい。例えば、引張コイルバネを、第一のリンク51の回転板30側の端部と、第二のリンク52の顎部側の端部との間に架けるように接続して、第一及び第二のリンク51,52を閉じる方向に弾性力が作用するように、引張コイルバネが配置されてもよい。
【0075】
この他、バックラッシュに起因するぐらつきを許容範囲内に抑えることができる場合には、モータ10と回転板30との間にギヤが設けられてもよい。すなわち、モータ10と回転板30とはギヤを介して接続されてもよい。ホルダ1は、モータ10を備えずに手動で回転板30を回転させる非電動式のホルダとして構成されてもよい。
【0076】
上記実施形態における1つの構成要素が有する機能は、複数の構成要素に分散して設けられてもよい。複数の構成要素が有する機能は、1つの構成要素に統合されてもよい。上記実施形態の構成の一部は、省略されてもよい。特許請求の範囲に記載の文言から特定される技術思想に含まれるあらゆる態様が本開示の実施形態である。
【符号の説明】
【0077】
1…ホルダ、10…モータ、11…出力軸、20…クランプ機構、21…第一の顎部、22…第二の顎部、23G…ガイド構造、23L…下部構成体、23U…上部構成体、26…支持台、27…スリット、30…回転板、31…嵌合孔、41…第一のリンク機構、42…第二のリンク機構、51…第一のリンク、52…第二のリンク、53…凸部、55…バネ、56…アーム、60…コントローラ、70…操作部、80…光学センサ、100…携帯端末、CB…ケーブル、JT…連結部、P1,P2…連結点。