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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022065349
(43)【公開日】2022-04-27
(54)【発明の名称】トルクセンサ
(51)【国際特許分類】
   G01L 3/10 20060101AFI20220420BHJP
【FI】
G01L3/10 317
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020173868
(22)【出願日】2020-10-15
(71)【出願人】
【識別番号】000203634
【氏名又は名称】多摩川精機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100110423
【弁理士】
【氏名又は名称】曾我 道治
(74)【代理人】
【識別番号】100111648
【弁理士】
【氏名又は名称】梶並 順
(74)【代理人】
【識別番号】100221729
【弁理士】
【氏名又は名称】中尾 圭介
(72)【発明者】
【氏名】濱島 徹
(57)【要約】
【課題】従来よりも簡易な構成により小型化することが可能なトルクセンサを提供する。
【解決手段】回転可能な主軸(111)を有する回転型差動トランス(110)と、主軸(111)の回転に応じて主軸(111)と回転型差動トランス(110)との間でねじれを生じるねじりバネ(120)とを備え、回転型差動トランス(110)は主軸(111)の回転角に対応した電圧を出力する。ここで、主軸(111)に作用するトルクに応じてねじりバネ(120)にねじれが生じるため、主軸(111)の回転角に応じて出力される回転型差動トランス(110)の電圧とねじりバネ(120)の特性とに基づいてトルクを測定する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転可能な主軸(111)を有し、前記主軸(111)の回転角に対応する電圧を出力する回転型差動トランス(110)と、
前記主軸(111)の回転に応じてねじれを生じるねじりバネ(120)と、
を備えたことを特徴とするトルクセンサ。
【請求項2】
前記主軸(111)に取り付けられたアーム(130)と、
前記回転型差動トランス(110)に取り付けられたストッパ(150)と、
を更に備え、
前記アーム(130)は、前記主軸(111)の回転に応じて前記ねじりバネ(120)の一方の端部を回転させ、
前記ストッパ(150)は、前記ねじりバネ(120)の他方の端部の位置を固定する、
ことを特徴とする請求項1に記載のトルクセンサ。
【請求項3】
前記ねじりバネ(120)は、一方の端部に第1フック(121)を備え、他方の端部に第2フック(122)を備えており、
前記主軸(111)が第1方向に回転すると、前記第1フック(121)は前記アーム(130)の動きに応じて第1方向に回転し、前記第2フック(122)は前記ストッパ(150)に位置を固定され、
前記主軸(111)が第2方向に回転すると、前記第1フック(121)は前記ストッパ(150)に位置を固定され、前記第2フック(122)は前記アーム(130)の動きに応じて第2方向に回転する、
ことを特徴とする請求項2に記載のトルクセンサ。
【請求項4】
前記回転型差動トランス(110)から出力される前記電圧と、前記ねじりバネ(120)の特性とに基づいて、前記主軸(111)に作用するトルクを算出する演算部(170)を更に備える、
ことを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか一項に記載のトルクセンサ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、トルクセンサに関し、特に、トルクセンサを従来よりも小型に構成するための新規な改良に関する。
【背景技術】
【0002】
トルクセンサとして、トーションバーの入力側と出力側のねじれによる回転差を検出するものが知られている。
【0003】
例えば、特許文献1に示されるトルクセンサは、トーションバーの両端に一対のレゾルバを配置している。そして、これら一対のレゾルバにより検出されるトーションバーのねじれに基づいて操舵トルクを測定する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2010-48760号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記のトルクセンサにおいて、使用するレゾルバ数に応じた製造コストの上昇、装置の大型化といった問題があった。また、レゾルバの出力を処理するため、RD(Resolver Digital)コンバータ等の複雑な処理回路を用いる必要があった。そして、上記のトルクセンサは、ねじれを持たせるために一定の長さを有するトーションバーを使用しており、使用できる環境が限られるという課題があった。
【0006】
本発明は、以上のような課題を解決するために、簡易な構成により小型化することが可能なトルクセンサを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この発明に係るトルクセンサは、回転可能な主軸を有し、主軸の回転角に対応する電圧を出力する回転型差動トランスと、主軸の回転に応じてねじれを生じるねじりバネとを備えたことを特徴とする。
【0008】
この発明に係るトルクセンサにおいて、主軸に取り付けられたアームと、回転型差動トランスに取り付けられたストッパと、を更に備え、アームは、主軸の回転に応じてねじりバネの一方の端部を回転させ、ストッパは、ねじりバネの他方の端部の位置を固定することを特徴とする。
【0009】
この発明に係るトルクセンサにおいて、ねじりバネは、一方の端部に第1フックを備え、他方の端部に第2フックを備えており、主軸が第1方向に回転すると、第1フックはアームの動きに応じて第1方向に回転し、第2フックはストッパに位置を固定され、主軸が第2方向に回転すると、第1フックはストッパに位置を固定され、第2フックはアームの動きに応じて第2方向に回転する、ことを特徴とする。
この発明に係るトルクセンサにおいて、回転型差動トランスから出力される電圧と、ねじりバネの特性とに基づいて、主軸に作用するトルクを算出する演算部を更に備える、ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
この発明に係るトルクセンサは、回転可能な主軸を有する回転型差動トランスと、主軸の回転に応じてねじれを生じるねじりバネとを備えており、主軸の回転に応じてねじりバネにねじれが生じ、回転型差動トランスは回転角に対応した電圧を出力する。ここで、主軸を回転させると共に主軸の回転に応じてねじりバネにねじれを生じさせており、主軸の回転のトルクはねじりバネのねじり応力と等しくなる。このため、主軸の回転角に応じて回転型差動トランスから出力される電圧と、ねじりバネの特性とに基づいて、主軸に作用するトルクを測定できる。従って、簡易な構成により小型化することが可能なトルクセンサを実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】実施の形態1のトルクセンサの構成を示す構成図である。
図2】実施の形態1のトルクセンサの構成からストッパを取り外した状態を示す構成図である。
図3】実施の形態1のトルクセンサのトルク測定時において、主軸が時計回りに回転した動作状態を示す説明図である。
図4】実施の形態1のトルクセンサのトルク測定時において、主軸が反時計回りに回転した動作状態を示す説明図である。
図5】実施の形態1のトルクセンサに使用されるねじりバネを示す説明図である。
図6】実施の形態1のトルクセンサに使用されるねじりバネの特性を示す特性図である。
図7】実施の形態1のトルクセンサに使用される回転型差動トランスの特性を示す特性図である。
図8】実施の形態1のトルクセンサの特性を示す説明図である。
図9】実施の形態1のトルクセンサにおいて演算を行う構成を示す構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明のトルクセンサの実施の形態につき、図面を用いて説明する。
【0013】
実施の形態1.
はじめに、実施の形態1におけるトルクセンサ100の構成について、図1を参照して説明する。
図1は、実施の形態1のトルクセンサ100の構成を示す構成図である。ここで、図1の(a)はトルクセンサ100の正面図、図1の(b)はトルクセンサ100の左側面図、図1の(c)はトルクセンサ100の右側面図、図1の(d)はトルクセンサ100の平面図である。そして、図1の(a)~(d)のそれぞれは、同一縮尺で正投影図法により記載されている。
【0014】
[トルクセンサ100の構成]
図1において、トルクセンサ100は、主に、回転型差動トランス110と、ねじりバネ120と、アーム130と、ストッパ150とを有している。なお、図1は、トルク測定実行前のトルクセンサ100の状態を示している。
【0015】
回転型差動トランス110には、回転可能な主軸111が設けられている。主軸111には、図示されない測定対象物を取り付け可能である。回転型差動トランス110は、主軸111の回転角に対応した電圧を出力する。
【0016】
ねじりバネ120は、一方の端部に設けられた第1フック121と他方の端部に設けられた第2フック122とによりアーム130とストッパ150とを一定の力で挟み、主軸111と接触しないように、主軸111の周囲に配置されている。そして、ねじりバネ120は、主軸111の回転に応じて、主軸111と回転型差動トランス110の本体部との間でねじれを生じる。
【0017】
アーム130は、主軸111に対して平行になるように、ネジ141、スペーサ142及びナット143を用いて、主軸111に対して取り付けられている。アーム130には、主軸111の回転に伴って第1フック121を軸周りに回転させる凹部形状の第1駆動部131と、主軸111の回転に伴って第2フック122を軸周りに回転させる凹部形状の第2駆動部132と、が設けられている。
【0018】
ストッパ150は、ネジ161とスペーサ162を用いて、主軸111を中心としてアーム130より外側に位置するように、回転型差動トランス110の本体部の取り付け穴163(図2を参照)に取り付けられている。ストッパ150には、第1フック121の位置を固定する凹部形状の第1固定部151と、第2フック122の位置を固定する凹部形状の第2固定部152とが設けられている。
【0019】
トルク測定実行前において、アーム130は、ねじりバネ120の第1フック121と第2フック122とにより挟まれている。この際、第1駆動部131に第1フック121が位置し、第2駆動部132に第2フック122が位置している。また、トルク測定実行前において、ストッパ150は、主軸111を中心としてアーム130より外側で、アーム130と共にねじりバネ120の第1フック121と第2フック122とにより挟まれている。この際に、第1固定部151に第1フック121が位置し、第2固定部152に第2フック122が位置している。
【0020】
トルク測定時において、後述する測定対象物の回転に応じて主軸111がいずれかの方向に回転すると、第1フック121または第2フック122のいずれか一方の位置はストッパ150に固定され、第1フック121または第2フック122のいずれか他方はアーム130の動きに応じて回転することにより、ねじりバネ120にねじれが生じる。
【0021】
ここで、ストッパ150の内側に存在するアーム130について、ねじりバネ120との関係を分かりやすく示すため、トルクセンサ100から、ストッパ150を取り外した状態を図2に示す。図2は、実施の形態1のトルクセンサ100の構成からストッパ150を取り外した状態を示す構成図である。ここで、図2の(a)はトルクセンサ100の正面図、図2の(b)はトルクセンサ100の左側面図、図2の(c)はトルクセンサ100の右側面図、図2の(d)はトルクセンサ100の平面図である。そして、図2の(a)~(d)のそれぞれは、同一縮尺で正投影図法により記載されている。
【0022】
図2に示すように、アーム130は、主軸111を中心として、ねじりバネ120の環状部分より外側であって、ストッパ150より内側の位置に、ネジ141、スペーサ142及びナット143を用いて、主軸111に対して平行に取り付けられている。トルク測定実行前において、アーム130は、ねじりバネ120の第1フック121と第2フック122とにより挟まれている。この際、第1駆動部131に第1フック121が位置し、第2駆動部132に第2フック122が位置している。
【0023】
[トルクセンサ100の動作]
次に、トルクセンサ100の動作を、図3及び図4を用いて説明する。図3は、実施の形態1のトルクセンサ100のトルク測定時において、主軸が時計回りに回転した動作状態を示す説明図である。図4は、実施の形態1のトルクセンサ100のトルク測定時において、主軸が反時計回りに回転した動作状態を示す説明図である。図3及び図4において、トルクセンサ100は、トルク測定時に安定した状態を保てるように、基準面1に設置されている。また、トルクセンサ100の主軸111には、測定対象物30の軸31がカップリング20を介して接続されている。
【0024】
測定対象物30の回転に応じて主軸111がいずれかの方向に回転すると、第1フック121または第2フック122のいずれか一方の位置はストッパ150に固定され、第1フック121または第2フック122のいずれか他方はアーム130の動きに応じて回転する。この際に、回転型差動トランス110は、主軸111の回転角に対応した電圧を出力する。
【0025】
具体的には、図3のように、測定対象物30の回転に応じて主軸111が時計回りの方向(以下、第1方向)に回転すると、主軸111の回転に伴ってアーム130は第1方向に回転する。ここで、第1フック121は、アーム130の動きに応じて、第1駆動部131と共に第1方向に回転する。そして、第2フック122はストッパ150の第1固定部151に固定されたままの状態である。
【0026】
また、図4のように、測定対象物30の回転に応じて主軸111が反時計回りの方向(以下、第2方向)に回転すると、主軸111の回転に伴ってアーム130は第2方向に回転する。ここで、第1フック121は、ストッパ150の第1固定部151に固定されたままの状態である。そして、第2フック122は、アーム130の動きに応じて、第2駆動部132と共に第2方向に回転する。
【0027】
上記図3及び図4の場合、測定対象物30の回転に応じて主軸111を回転させると共に、主軸111の回転に応じてねじりバネ120にねじれを生じさせている。これにより、測定対象物30の回転のトルクは、ねじりバネ120のねじり応力と等しい。ここで、回転型差動トランス110から出力される電圧は主軸111の回転角に対応した電圧であり、ねじりバネ120のねじり角に対応するねじり応力を示している。すなわち、回転型差動トランス110から出力される電圧は、主軸111に作用するトルクを示している。このため、主軸111の回転角に応じて回転型差動トランス110から出力される電圧と、ねじりバネ120の特性とに基づいて、ねじりバネ120のねじり応力、すなわち、主軸111に作用するトルクを測定できる。
【0028】
[トルクセンサ100の各部の詳細説明]
以下、トルクセンサ100を構成する各部の詳細について説明する。まず、図5を参照して、ねじりバネ120について説明する。図5は、実施の形態1のトルクセンサ100に使用されるねじりバネ120を示す説明図である。ねじりバネ120は、複数巻きのコイル部123と、一方の端部に設けられた第1フック121と、他方の端部に設けられた第2フック122とを備えて構成されたコイルばねである。ここで、Dはねじりバネ120外径と内径の平均である平均径、dはバネ材の線径である。
【0029】
次に、図6を参照して、ねじりバネ120のねじれ角θとトルクTとの特性について数式を用いて説明する。図6は、実施の形態1のトルクセンサ100に使用されるねじりバネ120の特性を示す特性図である。図6において、横軸は、ねじりバネ120のねじれ角θ[°]を示し、縦軸は、トルクT[Nm]を示している。ねじりバネ120において、使用する線材、線径d、平均径Dにより、固有のバネ定数k1が定まる。
【0030】
ここで、ねじりバネ120のねじれ角θとトルクTとの関係は、
T=k1・θ …(1)式、
と表せる。
また、有効巻数をNa、縦弾性係数をEとした場合、ねじりバネ120の特性としてのバネ定数k1は、
k1=π・E・d/(11520・D・Na) …(2)式、
と表せる。
【0031】
従って、図6に示すように、トルクT[Nm]は、ねじれ角θ[°]の絶対値に一次比例する。なお、図6において、ねじれ角θ[°]が正の領域は、第1フック121によりねじりバネ120を第1方向に巻き込む状態である。また、図6において、ねじれ角θ[°]が負の領域は、第2フック122によりねじりバネ120を第1方向とは反対方向の第2方向に巻き込む状態である。
【0032】
次に、図7を参照して、回転型差動トランス110の出力特性を説明する。図7は、実施の形態1のトルクセンサ100に使用される回転型差動トランス110の特性を示す特性図である。
図7において、横軸は、回転型差動トランス110の回転角θ[°]を示し、縦軸は、電圧V[Vrms]を示している。ここで、Vaは回転型差動トランス110内のA相に生じる電圧Vaを示し、Vbは回転型差動トランス110内のB相に生じる電圧Vbを示し、Voutは電圧Vaから電圧Vbを差し引いた回転型差動トランス110の出力電圧Vout(=Va-Vb)を示している。また、VsumはA相に生じる電圧VaとB相に生じる電圧Vbとの和電圧Vsum(=Va+Vb)を示している。
この図7に示すように、回転型差動トランス110は、回転角θ[°]に一次比例して出力電圧Vout[Vrms]を直線的に変化させる特性を有している。
ここで、回転型差動トランス110の感度定数をk2とすると、回転型差動トランス110の出力電圧Vout[Vrms]を、
Vout=k2・θ …(3)式、
と表せる。
従って、上記の(1)及び(3)式を整理して、
T=k1・θ
=k1・(1/k2)・Vout
=(k1/k2)・Vout
のように、出力電圧Vout [Vrms]と、バネ定数k1と、感度定数k2とから、トルクT[Nm]を求めることができる。なお、バネ定数k1と感度定数k2とを係数と考えた場合、出力電圧VoutからトルクTを算出することができる。
【0033】
次に、図8を参照して、回転型差動トランス110とねじりバネ120とを用いたトルクセンサ100の特性を説明する。図8は、実施の形態1のトルクセンサ100の特性を示す説明図である。図8は、ねじりバネ120のねじれ角θとトルクTとの特性を一点鎖線で示し、回転型差動トランス110の出力特性を二点鎖線で示している。ここで、図8の横軸は、ねじりバネ120のねじれ角θと回転型差動トランス110の回転角θとを示し、縦軸は、ねじりバネ120のトルクTと回転型差動トランス110の出力電圧Voutを示している。なお、ねじりバネ120のねじれ角θは、回転型差動トランス110の回転角θに基づくものである。従って、ねじれ角θと回転角θとは一致している。
【0034】
例えば、測定対象物30について測定#1を実行した場合、トルクセンサ100において回転型差動トランス110の出力電圧Vout1であったとする(図8中の(11)参照)。まず、この出力電圧Vout1に対応する回転型差動トランス110の回転角θ1[°]を求める(図8中の(12)~(13)参照)。そして、ねじりバネ120のねじれ角θ1に対応するトルクT1[Nm]を求める(図8中の(13)~(14)~(15)参照)。
【0035】
また、測定対象物30について測定#2を実行した場合、トルクセンサ100において回転型差動トランス110の出力電圧Vout2であったとする(図8中の(21)参照)。まず、この出力電圧Vout2に対応する回転型差動トランス110の回転角θ2[°]を求める(図8中の(22)~(23)参照)。そして、ねじりバネ120のねじれ角θ2に対応するトルクT2[Nm]を求める(図8中の(23)~(24)~(25)参照)。
ここで、測定#2において回転型差動トランス110の出力電圧Vout2の符号がマイナスであることから、符号がプラスの出力電圧Vout1の測定#1とは反対方向の回転であることがわかる。
【0036】
以上の測定#1と測定#2において、上述した数式を用いた演算により、回転角θ1とθ2とからトルクT1とT2とを算出できる。また、測定対象物30の回転の方向によらず、起点からのねじれ角θ1とθ2の絶対値に基づいてトルクT1とT2が定まるため、出力電圧Voutとねじれ角θについて絶対値として演算を行ってよい。
【0037】
次に、トルクセンサ100において回転型差動トランス110の出力電圧Voutについて演算を行うことでトルクTを算出する構成について、図9を参照して説明する。図9は、実施の形態1のトルクセンサ100において演算を行う構成を示す構成図である。
図9において、トルクセンサ100において、回転型差動トランス110の出力に演算部170が接続されている。
演算部170は、テーブル180に格納されているバネ定数k1及び感度定数k2と、回転型差動トランス110の出力電圧Voutとから、
トルクT=(k1/k2)・Vout
の式に従ってトルクTを算出する。
【0038】
なお、このテーブル180と演算部170とを、汎用のデジタルマルチメータのスケーリング演算機能を用いて実現することが可能である。従って、実施の形態1のトルクセンサ100によると、簡易な構成で、高速かつ高精度にトルクを測定できる。
【0039】
実施の形態1のトルクセンサ100は、回転型差動トランス110とねじりバネ120とを用いて、回転型差動トランス110の出力電圧Vout、バネ定数k1、及び感度定数k2とからトルクTを算出しているため、トーションバー等を用いる従来方式と比較して、簡易な構成により小型化することが可能になる。
【0040】
また、実施の形態1のトルクセンサ100は、ねじりバネ120を用いているため、トーションバーと比較してねじれ角θを大きくすることができる。このため、実施の形態1のトルクセンサ100は、測定レンジを従来よりも広げることが可能になる。すなわち、従来と比較して、小さいトルクから大きいトルクまでを、1台のトルクセンサ100により測定することが可能になる。
【0041】
また、実施の形態1のトルクセンサ100において、バネ定数k1の異なるねじりバネ120を使用する、または、バネ定数k1の異なるねじりバネ120に交換可能に構成することで、トルクTの測定レンジを変更することが可能になる。
【0042】
また、出力電圧Vout、バネ定数k1、及び感度定数k2を用いた簡易な演算によりトルクTを算出しているため、従来のRDコンバータ等の複雑な処理回路を用いる必要がなくなり、簡易な処理回路により高速かつ高精度にトルクを測定できる。
【0043】
また、図7に示すVsumのように、回転型差動トランス110のA相の電圧VaとB相の電圧Vbの和であるVsum=Va+Vbは、常に一定の電圧になる特性を有している。従って、回転型差動トランス110のA相またはB相の少なくとも一方の巻線に断線が発生すると、和電圧Vsumは一定電圧よりも低下する。この特性を利用し、演算部170は、和電圧Vsumを監視することにより、トルクセンサ100の故障を検知することができる。
【0044】
[実施の形態により得られる効果]
実施の形態1に説明したトルクセンサ100は、回転可能な主軸111を有する回転型差動トランス110と、主軸111の回転に応じてねじれを生じるねじりバネ120とを備えており、主軸111の回転に応じてねじりバネ120にねじれが生じ、回転型差動トランス110は回転角に対応した電圧を出力する。ここで、主軸111を回転させると共に主軸の回転に応じてねじりバネ120にねじれを生じさせており、主軸111の回転のトルクはねじりバネ120のねじり応力と等しい。このため、主軸111の回転角に応じて回転型差動トランス110から出力される電圧と、ねじりバネ120の特性とに基づいて、主軸111に作用するトルクを測定できる。従って、簡易な構成により小型化することが可能なトルクセンサ100を実現できる。
【0045】
実施の形態1に説明したトルクセンサ100において、主軸111に取り付けられたアーム130と、回転型差動トランス110に取り付けられたストッパ150と、を更に備える。ここで、ストッパ150はねじりバネ120の一方の端部の位置を固定し、アーム130は主軸111の回転に応じてねじりバネ120の他方の端部を回転させる。これにより、主軸111がいずれかの方向に回転すると、ねじりバネ120のいずれか一方の端部の位置はストッパ150に固定され、ねじりバネ120のいずれか他方の端部はアーム130の動きに応じて回転することにより、ねじりバネ120にねじれが生じる。従って、主軸111を回転させることにより、回転型差動トランス110に取り付けられたストッパ150を基準として、アーム130を介してねじりバネ120にねじれを確実に生じさせることにより、主軸111の回転角に応じて回転型差動トランス110から出力される電圧とねじりバネ120の特性とに基づいて、確実にトルクを測定可能な小型のトルクセンサ100を実現できる。
【0046】
実施の形態1に説明したトルクセンサ100において、ねじりバネ120は、一方の端部に第1フック121を備え、他方の端部に第2フック122を備えている。ここで、主軸111が第1方向に回転すると、第1フック121はストッパ150に位置を固定され、第2フック122はアーム130の動きに応じて第1方向に回転する。一方、主軸111が第2方向に回転すると、第2フック122はストッパ150に位置を固定され、第1フック121はアーム130の動きに応じて第2方向に回転する。従って、主軸111の第1方向の回転と第2方向の回転とのいずれにも対応して、確実にトルクを測定することが可能な小型のトルクセンサ100を実現できる。
【0047】
実施の形態1に説明したトルクセンサ100において、演算部170は、回転型差動トランス110から出力される電圧Voutに基づいて、主軸111に作用するトルクTを算出する。これにより、従来のRDコンバータ等の複雑な処理回路を用いることなく、簡易な処理回路の演算により高速かつ高精度にトルクを測定できる。
【0048】
[その他の実施の形態]
以上のトルクセンサ100において、ねじりバネ120と測定対象物30とは、回転型差動トランス110に対して主軸111の同じ側に設けられているが、この構成に限定されるものではない。例えば、主軸111を回転型差動トランス110に貫通させた状態に設け、主軸の一端の側にねじりバネ120、アーム130、及びストッパ150を設け、主軸の他端の側にカップリング20を介して測定対象物30を取り付けてもよい。
【0049】
アーム130とストッパ150とは、一部に凹部を有する長方形の板状のものを示したが、これに限定されず各種の変更が可能である。例えば、第1駆動部131と第2駆動部132とを、それぞれ独立した状態の第1アームと第2アームに設けることが可能である。
【産業上の利用可能性】
【0050】
本発明のトルクセンサ100は、トーションバーを用いた従来のトルクセンサに比べて小型かつ簡易な構成であって、かつ、簡易な処理回路の演算により高速かつ高精度にトルクを測定できる。このため、トルクセンサ100を、航空機などの移動体における精密なトルク測定に使用可能である。
【符号の説明】
【0051】
1 基準面、20 カップリング、30 測定対象物、31 軸、100 トルクセンサ、110 回転型差動トランス、111 主軸、120 ねじりバネ、121 第1フック、122 第2フック、123 コイル部、130 アーム、 131 第1駆動部、132 第2駆動部、141 ネジ、142 スペーサ、143 ナット、150 ストッパ、151 第1固定部、152 第2固定部、161 ネジ、162 スペーサ、163 取り付け穴、170 演算部、180 テーブル。
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