(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022065369
(43)【公開日】2022-04-27
(54)【発明の名称】蓄電セル及び蓄電セルの製造方法
(51)【国際特許分類】
H01M 50/60 20210101AFI20220420BHJP
H01M 10/0585 20100101ALI20220420BHJP
H01M 50/10 20210101ALI20220420BHJP
【FI】
H01M2/36 101A
H01M10/0585
H01M2/02 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020173898
(22)【出願日】2020-10-15
(71)【出願人】
【識別番号】000003218
【氏名又は名称】株式会社豊田自動織機
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【弁理士】
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100124062
【弁理士】
【氏名又は名称】三上 敬史
(74)【代理人】
【識別番号】100148013
【弁理士】
【氏名又は名称】中山 浩光
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 信清
【テーマコード(参考)】
5H011
5H023
5H029
【Fターム(参考)】
5H011AA09
5H011BB03
5H011CC02
5H011DD12
5H023AA03
5H023AS02
5H023BB10
5H023CC01
5H029AJ14
5H029AK01
5H029AK02
5H029AK03
5H029AK16
5H029AL06
5H029AL07
5H029AL11
5H029AM03
5H029AM04
5H029BJ02
5H029BJ12
5H029CJ06
5H029CJ13
5H029DJ02
5H029DJ04
5H029DJ14
5H029HJ07
5H029HJ12
(57)【要約】
【課題】電解液Eの含浸に要する時間を短縮する。
【解決手段】蓄電セル2は、蓄電セル2の内部と外部とを連通する注液管3を備え、注液管3は、スペーサ14を貫通するように設けられた注液口31と、積層方向から見て短辺22aに沿う向きに延在する第1の内部路32と、積層方向から見て正極活物質層22の短辺22a側から短辺22b側に向かって延在する第2の内部路33c,33dと、を有し、第1の内部路32及び第2の内部路33c,33dのそれぞれには、正極活物質層22と対向する吐出孔38が設けられている。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
集電体の一面に矩形状の活物質層を有し、積層方向に活物質層同士が互いに対向するように配置された一対の電極と、
前記一対の電極間に配置され、前記活物質層間に介在するセパレータと、
前記一対の電極間に配置されると共に、前記積層方向から見て前記活物質層を囲むように配置されたスペーサと、を備える蓄電セルであって、
前記一対の電極と前記一対の電極に接合された前記スペーサとによって電解液の収容空間が形成され、
前記蓄電セルの内部と外部とを連通する注液管を備え、
前記注液管は、
前記スペーサを貫通するように設けられた注液口と、
前記収容空間内において前記活物質層の一端辺側で前記注液口に連続し、前記積層方向から見て前記一端辺に沿う向きに延在する第1の内部路と、
前記収容空間内において前記第1の内部路と交差する向きに連続し、前記積層方向から見て前記活物質層の前記一端辺側から他端辺側に向かって延在する第2の内部路と、を有し、
前記第1の内部路及び前記第2の内部路のそれぞれには、前記活物質層と対向する吐出孔が設けられている蓄電セル。
【請求項2】
前記注液管は、前記第2の内部路を複数有しており、
前記複数の第2の内部路のそれぞれは、前記活物質層の異なる端辺に沿って延在している請求項1記載の蓄電セル。
【請求項3】
前記複数の第2の内部路のそれぞれは、前記活物質層の前記他端辺に達するように延びている請求項2記載の蓄電セル。
【請求項4】
前記第1の内部路及び前記第2の内部路には、前記吐出孔が複数設けられており、
前記複数の吐出孔の面積は、前記注液口からの路長が長い吐出孔ほど大きくなっている請求項2又は3記載の蓄電セル。
【請求項5】
前記注液管は、前記収容空間内において前記複数の第2の内部路同士を結ぶように前記活物質層の前記他端辺に沿って延在する第3の内部路を有し、
前記第3の内部路には、前記活物質層と対向する吐出孔が設けられている請求項4記載の蓄電セル。
【請求項6】
前記第3の内部路には、前記吐出孔が複数設けられており、
前記複数の吐出孔の面積は、前記注液口からの路長が長い吐出孔ほど大きくなっている請求項5記載の蓄電セル。
【請求項7】
前記注液管は、前記集電体及び前記スペーサの少なくとも一方に固定されている請求項1~6のいずれか一項記載の蓄電セル。
【請求項8】
前記活物質層の少なくとも一方は、前記集電体の前記一面に設けられた第1活物質層と、前記第1活物質層上に互いに離間して設けられ、前記積層方向から見て前記活物質層の前記一端辺側から前記他端辺側に向かって延在する溝部を前記活物質層に形成する複数の第2活物質層と、を有し、
前記注液管は、前記収容空間内において前記第1の内部路に連続して前記溝部内に延在する第4の内部路を有している請求項1~7のいずれか一項記載の蓄電セル。
【請求項9】
請求項1~8のいずれか一項に記載の蓄電セルを形成する蓄電セルの製造方法であって、
前記スペーサに前記注液管を固定する注液管固定ステップと、
前記注液管が固定された前記スペーサを前記一対の電極の一方の前記集電体の前記一面における前記活物質層よりも外側の領域に接合するスペーサ接合ステップと、
前記セパレータを介して前記活物質層同士が互いに対向するように、前記一対の電極の一方に前記一対の電極の他方を積層する積層ステップと、
前記注液管が固定された前記スペーサを前記一対の電極の他方の前記集電体の前記一面における前記活物質層よりも外側の領域に接合し、内部に電解液の収容空間を形成する空間形成ステップと、
前記注液口を介して前記蓄電セルの外部から前記収容空間内に注液した前記電解液を、前記第1の内部路及び前記第2の内部路に設けられた前記吐出孔から前記活物質層に向けて吐出する注液ステップと、を備える蓄電セルの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、蓄電セル及び蓄電セルの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の蓄電セルとして、例えば特許文献1に記載の薄型電池に用いられるセルがある。この従来の薄型電池のセルは、シール部により形成された内部空間に、正極及び負極がセパレータを含む電解質層を介して積層された発電要素と、正極及び負極のそれぞれに接続された集電体とを備えている。また、この従来の薄型電池のセルは、シール部を貫通するチューブを備えている。チューブの一端は、シール部により形成された内部空間を臨んでおり、チューブの他端は、シール部の外部空間を臨んでいる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
蓄電セルの製造工程には、注液口を介して電極間に形成された内部空間に電解液を注液する注液工程が含まれる。例えば上述した特許文献1の薄型電池では、シール部を貫通するチューブを用いてセルの内部空間に電解液の注液を実施する。しかしながら、この従来の薄型電池では、チューブの一端がシール部の奥に僅かに入り込んでいるに過ぎないため、正極及び負極の活物質層全体の電解液の含浸に時間を要するという課題があった。特に、複数の蓄電セルを積層して構成される蓄電装置の高出力化及び低背化の両立を目的として蓄電セルを大面積化した場合には、上記の課題が顕著になり易く、活物質層において注液口から遠い部分に電解液が含浸するまでの時間が増大化するという問題があった。
【0005】
このような課題に対し、シール部に複数の注液口を設け、電解液を複数の注液口から注液することが考えられる。しかしながら、注液口は、シール部を貫通して設けられるため、複数の注液口を設けると、蓄電セルのシール性が低下してしまうおそれがある。
【0006】
本開示は、上記課題の解決のためになされたものであり、シール性を担保しつつ、活物質層全体の電解液の含浸に要する時間を短縮できる蓄電セル及び蓄電セルの製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示の一側面に係る蓄電セルは、集電体の一面に矩形状の活物質層を有し、積層方向に活物質層同士が互いに対向するように配置された一対の電極と、一対の電極間に配置され、活物質層間に介在するセパレータと、一対の電極間に配置されると共に、積層方向から見て活物質層を囲むよう配置されたスペーサと、を備える蓄電セルであって、一対の電極と一対の電極に接合されたスペーサとによって電解液の収容空間が形成され、蓄電セルの内部と外部とを連通する注液管を備え、注液管は、スペーサを貫通するように設けられた注液口と、収容空間内において活物質層の一端辺側で注液口に連続し、積層方向から見て一端辺に沿う向きに延在する第1の内部路と、収容空間内において第1の内部路と交差する向きに連続し、積層方向から見て活物質層の一端辺側から他端辺側に向かって延在する第2の内部路と、を有し、第1の内部路及び第2の内部路のそれぞれには、活物質層と対向する吐出孔が設けられている。
【0008】
この蓄電セルでは、蓄電セルの内部と外部とを連通する注液管に、注液口と交差する第1の内部路と、第1の内部路に交差する第2の内部路とが設けられており、注液口から導入された電解液を収容空間内の少なくとも2方向に流すことができる。また、第1の内部路及び第2の内部路のそれぞれには、活物質層と対向する吐出孔が設けられているため、2方向に流れた電解液が吐出孔から活物質層に向けて吐出される。したがって、活物質層全体の電解液の含浸に要する時間を短縮できる。また、この蓄電セルでは、電解液を収容空間内の少なくとも2方向に流すにあたって、スペーサを貫通する注液口を複数設ける必要がないため、シール性も担保できる。
【0009】
注液管は、第2の内部路を複数有しており、複数の第2の内部路のそれぞれは、活物質層の異なる端辺に沿って延在していてもよい。この場合、活物質層の一端辺側から他端辺側に向かってより速やかに電解液を流すことが可能となる。したがって、活物質層全体の電解液の含浸に要する時間を一層短縮できる。
【0010】
複数の第2の内部路のそれぞれは、活物質層の他端辺に達するように延びていてもよい。これにより、活物質層の他端辺側により速やかに且つ確実に電解液を流すことが可能となる。したがって、活物質層全体の電解液の含浸に要する時間を一層短縮できる。
【0011】
第1の内部路及び第2の内部路には、吐出孔が複数設けられており、複数の吐出孔の面積は、注液口からの路長が長い吐出孔ほど大きくなっていてもよい。この場合、注液口に近い位置にある吐出孔で電解液が過剰に吐出されてしまうことを防止でき、活物質層の全体により均一に電解液を行き渡らせることができる。
【0012】
注液管は、収容空間内において複数の第2の内部路同士を結ぶように活物質層の他端辺に沿って延在する第3の内部路を有し、第3の内部路には、活物質層と対向する吐出孔が設けられていてもよい。この場合、注液口から遠い活物質層の他端辺側に電解液をより均一に行き渡らせることができる。
【0013】
第3の内部路には、吐出孔が複数設けられており、複数の吐出孔の面積は、注液口からの路長が長い吐出孔ほど大きくなっていてもよい。この場合、注液口に近い位置にある吐出孔で電解液が過剰に吐出されてしまうことを防止でき、活物質層の全体により均一に電解液を行き渡らせることができる。
【0014】
注液管は、集電体及びスペーサの少なくとも一方に固定されていてもよい。これにより、注液管が収容空間内で位置ずれしてしまうことを抑制できる。
【0015】
活物質層の少なくとも一方は、集電体の一面に設けられた第1活物質層と、第1活物質層上に互いに離間して設けられ、積層方向から見て活物質層の一端辺側から他端辺側に向かって延在する溝部を活物質層に形成する複数の第2活物質層と、を有し、注液管は、収容空間内において第1の内部路に連続して溝部内に延在する第4の内部路を有していてもよい。この場合、活物質層の一端辺側から他端辺側に向かってより速やかに電解液を流すことが可能となる。また、活物質層を多層構成とすることで、蓄電セルを大面積化した場合であっても活物質層の割れや集電体からの剥離を抑制できる。
【0016】
本開示の一側面に係る蓄電セルの製造方法は、上記記載の蓄電セルを形成する蓄電セルの製造方法であって、スペーサに注液管を固定する注液管固定ステップと、注液管が固定されたスペーサを一対の電極の一方の集電体の一面における活物質層よりも外側の領域に接合するスペーサ接合ステップと、セパレータを介して活物質層同士が互いに対向するように、一対の電極の一方に一対の電極の他方を積層する積層ステップと、注液管が固定されたスペーサを一対の電極の他方の集電体の一面における活物質層よりも外側の領域に接合し、内部に電解液の収容空間を形成する空間形成ステップと、注液口を介して蓄電セルの外部から収容空間内に注液した電解液を、第1の内部路及び第2の内部路に設けられた吐出孔から活物質層に向けて吐出する注液ステップと、を備える。
【0017】
この蓄電セルの製造方法では、蓄電セルの内部と外部とを連通する注液管に、注液口と交差する第1の内部路と、第1の内部路に交差する第2の内部路とが設けられており、注液口から導入された電解液を収容空間内の少なくとも2方向に流すことができる。また、第1の内部路及び第2の内部路のそれぞれには、活物質層と対向する吐出孔が設けられているため、2方向に流れた電解液が吐出孔から活物質層に向けて吐出される。したがって、活物質層全体の電解液の含浸に要する時間を短縮できる。また、この蓄電セルでは、電解液を収容空間内の少なくとも2方向に流すにあたって、スペーサを貫通する注液口を複数設ける必要がないため、シール性も担保できる。
【発明の効果】
【0018】
本開示によれば、シール性を担保しつつ、活物質層全体の電解液の含浸に要する時間を短縮できる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】第1実施形態に係る蓄電セルを含んで構成される蓄電装置を示す概略的な断面図である。
【
図2】
図1に示した蓄電装置を構成する単セルを示す概略的な断面図である。
【
図3】
図2におけるIII―III線断面図である。
【
図4】注液管の配置例を示す要部拡大断面図である。
【
図5】
図2に示した蓄電セルの製造方法を示すフローチャートである。
【
図6】注液管接合ステップの一例を示す斜視図である。
【
図7】スペーサ接合ステップの一例を示す斜視図である。
【
図8】積層ステップ及び空間形成ステップの一例を示す斜視図である。
【
図10】第2実施形態に係る蓄電セルの要部を示す断面図である。
【
図11】第3実施形態に係る蓄電セルの要部を示す断面図である。
【
図12】第4実施形態に係る蓄電セルを示す要部拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、図面を参照しながら、本開示の一側面に係る蓄電セル及び蓄電セルの製造方法の好適な実施形態について詳細に説明する。
【0021】
図1は、第1実施形態に係る蓄電セルを含んで構成される蓄電装置を示す概略的な断面図であり、
図2は、
図1に示した蓄電装置を構成する単セルを示す概略的な断面図である。
図1に示す蓄電装置1は、例えば、フォークリフト、ハイブリッド自動車、電気自動車等の各種車両のバッテリに用いられる装置である。蓄電装置1は、例えばニッケル水素二次電池又はリチウムイオン二次電池等の二次電池である。本実施形態では、蓄電装置1がリチウムイオン二次電池である場合を例示する。
【0022】
蓄電装置1は、複数の蓄電セル2が積層方向に積層されてなるセルスタック5を含んで構成されている。蓄電装置1は、車両の床下などへの配置を考慮し、全体として扁平な直方体形状をなしている。蓄電装置1は、高容量化及び低背化の両立のため、積層方向から見た場合に、蓄電セル2の一辺の長さが1mを超えるような大面積の装置となっている。
【0023】
図2に示すように、各蓄電セル2は、正極11と、負極12と、セパレータ13と、スペーサ14とを備えている。正極11は、集電体21と、集電体21の一面21aに設けられた正極活物質層22とを有し、積層方向から見て矩形状に形成されている。負極12は、集電体21と、集電体21の一面21aに設けられた負極活物質層23とを有し、積層方向から見て正極11と同等の矩形状に形成されている。なお、本明細書では必要により、正極11及び負極12が積層された方向を「積層方向」と称す。
【0024】
同一セル内の正極11及び負極12は、正極活物質層22と負極活物質層23とが互いに対向するように配置されている。本実施形態では、正極活物質層22及び負極活物質層23は、いずれも矩形状に形成されている。負極活物質層23は、正極活物質層22よりも一回り大きく形成されており、積層方向から見た場合に、正極活物質層22の形成領域の全体が負極活物質層23の形成領域内に位置している。
【0025】
集電体21は、一面21aとは反対側の他方面21bを有している。正極11及び負極12のいずれにおいても、集電体21の他方面21bは、活物質層が形成されない面となっている。
図1に示すように、セルスタック5では、一の蓄電セル2の正極11における集電体21の他方面21bと、一の蓄電セル2と隣り合う別の蓄電セル2の負極12における集電体21の他方面21bとが互いに接するように蓄電セル2が積層され、複数の蓄電セル2が電気的に直列に接続されている。セルスタック5では、積層方向に隣り合う蓄電セル2,2により、互いに接する正極11の集電体21及び負極12の集電体21を一つの電極体とする疑似的なバイポーラ電極10が形成されている。
【0026】
バイポーラ電極10は、互いに隣接する2つの集電体21,21、正極活物質層22、及び負極活物質層23を含んで構成されている。セルスタック5において、積層方向の一端には、終端電極としての正極11の集電体21が配置されている。積層方向の他端には、終端電極としての負極12の集電体21が配置されている。
【0027】
集電体21は、蓄電装置1の放電又は充電の間、正極活物質層22及び負極活物質層23に電流を供給するための化学的に不活性な電気伝導体である。集電体21を構成する材料としては、例えば金属材料、導電性樹脂材料、導電性無機材料等が挙げられる。導電性樹脂材料としては、例えば導電性高分子材料、或いは非導電性高分子材料に必要に応じて導電性フィラーが添加された樹脂等が挙げられる。
【0028】
集電体21は、前述した金属材料又は導電性樹脂材料を含む1以上の層を含む複数層を備えていてもよい。集電体21の表面には、メッキ処理又はスプレーコート等の公知の方法により被覆層が形成されていてもよい。集電体21は、例えば板状、箔状、シート状、フィルム状、メッシュ状等の形態であってもよい。集電体21を金属箔とする場合、例えばアルミニウム箔、銅箔、ニッケル箔、チタン箔、ステンレス鋼箔等を用いることができる。
【0029】
集電体21として、銅箔、アルミ箔、又はステンレス鋼箔(例えばJIS G 4305:2015にて規定されるSUS304、SUS316、SUS301、SUS304等)を用いた場合、集電体21の機械的強度を容易に確保できる。集電体21は、上記金属の合金箔又はクラッド箔であってもよい。本実施形態では、正極11の集電体21は、アルミニウム箔であり、負極12の集電体21は、銅箔である。箔状の集電体21を用いる場合、集電体21の厚みは、例えば1μm~100μmとすることができる。
【0030】
正極活物質層22は、電荷担体を吸蔵及び放出可能である正極活物質を含んで構成されている。正極活物質としては、例えば層状岩塩構造を有するリチウム複合金属酸化物、スピネル構造の金属酸化物、ポリアニオン系化合物などが挙げられる。2種以上の正極活物質を併用してもよい。本実施形態では、正極活物質層22は、複合酸化物としてのオリビン型リン酸鉄リチウム(LiFePO4)を含んで構成されている。
【0031】
負極活物質層23は、電荷担体を吸蔵及び放出可能である負極活物質を含んで構成されている。負極活物質は、単体、合金、化合物のいずれであってもよい。負極活物質としては、例えば炭素、金属化合物、リチウムと合金化可能な元素、若しくはその化合物などが挙げられる。炭素としては、天然黒鉛、人造黒鉛が挙げられる。人造黒鉛としては、高配向性グラファイト、メソカーボンマイクロビーズ等が挙げられる。リチウムと合金化可能な元素の例としては、シリコン(ケイ素)及びスズが挙げられる。本実施形態では、負極活物質層23は、炭素系材料としての黒鉛を含んで構成されている。
【0032】
正極活物質層22及び負極活物質層23のそれぞれには、必要に応じて電気伝導性を高めるための導電助剤、結着剤、電解質(ポリマーマトリクス、イオン伝導性ポリマー、電解液等)、イオン伝導性を高めるための電解質支持塩(リチウム塩)等が含まれていてもよい。活物質層に含まれる成分、当該成分の配合比、及び活物質層の厚さに特に限定はなく、リチウムイオン二次電池についての従来公知の知見が適宜参照され得る。
【0033】
正極活物質層22及び負極活物質層23の厚さは、例えば2μm~150μmである。集電体21の表面に活物質層を形成させるには、ロールコート法等の従来から公知の方法を用いることができる。正極11又は負極12の熱安定性を向上させるために、集電体21の片面又は両面、或いは活物質層の表面に耐熱層を設けてもよい。耐熱層は、例えば無機粒子と結着剤とを含んで構成され、その他に増粘剤等の添加剤を含んでいてもよい。
【0034】
導電助剤は、正極11又は負極12の導電性を高めるために添加され得る。導電助剤は、例えばアセチレンブラック、カーボンブラック、グラファイト等である。結着剤としては、例えばポリフッ化ビニリデン、ポリテトラフルオロエチレン、フッ素ゴム等の含フッ素樹脂、ポリプロピレン、ポリエチレン等の熱可塑性樹脂、ポリイミド、ポリアミドイミド等のイミド系樹脂、アルコキシシリル基含有樹脂、ポリ(メタ)アクリル酸等のアクリル系樹脂、スチレン-ブタジエンゴム(SBR)、カルボキシメチルセルロース、アルギン酸ナトリウム、アルギン酸アンモニウム等のアルギン酸塩、水溶性セルロースエステル架橋体、デンプン-アクリル酸グラフト重合体などが挙げられる。これらの結着剤は、単独で又は複数で用いられ得る。溶媒には、例えば、水、N-メチル-2-ピロリドン(NMP)等が用いられる。
【0035】
セパレータ13は、正極11と負極12とを隔離することで、両極の接触による短絡を防止しつつ、リチウムイオン等の電荷担体を通過させる部材である。セパレータ13は、正極11の正極活物質層22と負極12の負極活物質層23との間に介在する。これにより、セパレータ13は、蓄電セル2をスタックした際に隣り合うバイポーラ電極10,10間の短絡を防止する。
【0036】
セパレータ13の基材層は、例えば電解質を吸収保持するポリマーを含む多孔性シート又は不織布によって構成されている。基材層を構成する材料としては、例えばポリプロピレン、ポリエチレン、ポリオレフィン、ポリエステルなどが挙げられる。基材層は、単層構造或いは多層構造のいずれであってもよい。基材層が多層構造をなす場合、例えば接着層、耐熱層としてのセラミック層等を有してもよい。本実施形態では、このセパレータ13の基材層に電解質が含浸されている。
【0037】
電解質としては、例えば非水溶媒と非水溶媒に溶解した電解質塩とを含む液体電解質(電解液)が挙げられる。電解質塩として、例えば、LiClO4、LiAsF6、LiPF6、LiBF4、LiCF3SO3、LiN(FSO2)2、LiN(CF3SO2)2等の公知のリチウム塩を使用できる。また、非水溶媒として、環状カーボネート類、環状エステル類、鎖状カーボネート類、鎖状エステル類、エーテル類等の公知の溶媒を使用できる。なお、これら公知の溶媒材料を二種以上組合せて用いてもよい。
【0038】
スペーサ14は、正極11の集電体21と負極12の集電体21との間に配置され、積層方向から見て正極活物質層22及び負極活物質層23を囲むように、正極11の集電体21及び負極12の集電体21に接合されている。スペーサ14と集電体21とを接合する際には、例えばヒータ等の加熱手段を用いることにより、集電体21側からスペーサ14にそれぞれ熱を加え、金属と樹脂との異種材接合を行ってもよい。スペーサ14は、絶縁材料を含み、正極11の集電体21と負極12の集電体21との間を絶縁することによって、集電体21間の短絡を防止する。スペーサ14を構成する材料としては、例えばポリエチレン(PE)、ポリスチレン、ABS樹脂、変性ポリプロピレン(変性PP)、アクリロニトリルスチレン(AS)樹脂といった種々の樹脂材料が挙げられる。
【0039】
本実施形態において、スペーサ14は、平面視で矩形の枠状に形成され、平面視で矩形状に形成された正極活物質層22又は負極活物質層23の周囲を取り囲むように集電体21の周縁部21eに沿って配置されている。上述したセパレータ13の縁部13aは、スペーサ14の内壁部分に埋設されている。これにより、セパレータ13は、スペーサ14によって保持された状態となっている。
【0040】
本実施形態では、各蓄電セル2に配置されるスペーサ14は、一対の集電体21間に位置する部分と、平面視で集電体21の周縁部21eよりも外側に位置する部分とを有している。セルスタック5の積層方向に隣り合うスペーサ14,14において、集電体21の周縁部21eよりも外側に位置する部分同士は、互いに接合されて一体化している。これにより、複数のスペーサ14が一体化されて封止体14fが形成されている。封止体14fは、セルスタック5の積層方向の一端に配置された集電体21から積層方向の他端に配置された集電体21まで積層方向に延在する筒状部分を構成している。隣り合うスペーサ14,14同士を接合する方法としては、例えば、熱溶着、超音波溶着又は赤外線溶着など、公知の溶着方法が用いられる。
【0041】
スペーサ14は、当該スペーサ14、正極11の集電体21、及び負極12の集電体21によって囲まれた収容空間Sを形成する。この収容空間Sには、セパレータ13、正極活物質層22、及び負極活物質層23が、電解液に含浸された状態で収容されている。本実施形態において、スペーサ14は、正極11の集電体21及び負極12の集電体21との間の収容空間Sを封止する封止部としても機能し、収容空間Sに収容された電解液が外部に漏出することを防止する。スペーサ14は、蓄電装置1の外部から収容空間S内への水分の侵入を防止し得る。また、スペーサ14は、例えば充放電反応等によって正極11又は負極12から発生したガスが蓄電装置1の外部に漏出することを防止する。
【0042】
蓄電装置1は、セルスタック5の積層方向においてセルスタック5を挟むように配置された一対の通電体(正極通電板40及び負極通電板50)を備えている。正極通電板40及び負極通電板50は、良導電性材料によって構成されている。正極通電板40及び負極通電板50の構成材料としては、例えば集電体21の構成材料と同じ材料が用いられる。正極通電板40及び負極通電板50の厚さは、セルスタック5に用いられた集電体21の厚さより大きくてもよい。正極通電板40は、積層方向の一端において最も外側に配置された正極11の集電体21に電気的に接続されている。負極通電板50は、積層方向の他端において最も外側に配置された負極12の集電体21に電気的に接続されている。正極通電板40及び負極通電板50のそれぞれに設けられた端子を通じて蓄電装置1の充放電が行われる。
【0043】
セルスタック5の積層方向において最も外側に配置された集電体21と正極通電板40又は負極通電板50との間には、両部材間の導電接触を良好にする目的で、導電層30が更に配置されていてもよい。この場合、導電層30は、集電体21の他方面21bに密着していてもよい。導電層30は、例えば集電体21の硬度よりも低い硬度を有している。導電層30は、アセチレンブラック又はグラファイト等のカーボンを含む層であってもよく、Auを含むメッキ層であってもよい。
【0044】
続いて、上述した蓄電セル2の構造について更に詳細に説明する。
【0045】
図3は、
図2におけるIII―III線断面図である。同図は、蓄電セル2をセパレータ13と正極11の正極活物質層22との接触面で断面とした図であり、当該断面において正極11側を図示している。
図3に示すように、正極11の集電体21の一面21aの中央部分には、正極活物質層22の形成領域Rが設けられている。本実施形態では、正極活物質層22の形成領域Rは、集電体21に対して一回り小さい相似形の長方形状となっており、集電体21の周縁部21eは、活物質層が形成されない領域(いわゆる未塗工領域)となっている。また、正極11の集電体21の周縁部21eには、上述した枠状のスペーサ14が正極活物質層22の形成領域Rから離間した状態で接合されている。これにより、正極活物質層22とスペーサ14との間には、集電体21の平面視において矩形の環状をなす隙間Sa,Sb,Sc,Sdが、正極活物質層22の周囲を取り囲むように設けられている。これらの隙間Sa,Sb,Sc,Sdは、上述した収容空間Sの一部を構成している。
【0046】
上述した枠状のスペーサ14は、スペーサ14の一方の短辺側の一端部14aと、スペーサ14の他方の短辺側の他端部14bと、スペーサ14の一方の長辺側の一端部14cと、スペーサ14の他方の長辺側の他端部14dと、によって構成されている。また、長方形状の正極活物質層22の各辺は、正極活物質層22の一方の短辺側であって一端部14aと対向する短辺22a(一端辺)と、正極活物質層22の他方の短辺側であって、他端部14bと対向する短辺22b(他端辺)と、正極活物質層22の一方の長辺側であって一端部14cと対向する長辺22c(端辺)と、正極活物質層22の他方の長辺側であって他端部14dと対向する長辺22d(端辺)と、によって構成されている。短辺22aは、隙間Sa側に位置し、短辺22bは、隙間Sb側に位置している。長辺22cは、隙間Sc側に位置し、長辺22dは、隙間Sd側に位置している。
【0047】
また、
図3に示すように、蓄電セル2は、外部から収容空間S内に電解液を注液し、収容空間S内に配置された正極活物質層22及びセパレータ13に電解液を含浸させるための注液管3を有している。注液管3は、絶縁性、可撓性、及び電解液に対する耐腐食性を有する材料によって形成され、蓄電セル2の内部と外部とを連通するように設けられている。注液管3の形成材料としては、例えばポリプロピレンやポリエチレンなどが挙げられる。本実施形態では、注液管3が延在する方向と垂直な面において、注液管3の断面形状は、円形となっているが、これに限られず、楕円形、矩形といった他の形状であってもよい。
【0048】
注液管3は、注液口31と、第1の内部路32と、第2の内部路33と、によって構成されている。注液口31は、スペーサ14を貫通するように設けられた部分である。注液口31は、平面視においてスペーサ14の一端部14aが延在する方向と垂直な方向に延びている。注液口31の一端部31aは、蓄電セル2の外部に突出し、注液口31の他端部31bは、隙間Saまで延びている。また、注液口31の一端部31aは、蓄電セル2の外部に突出していなくてもよい。電解液の注液後、注液口31の一端部31aは閉鎖され、蓄電セル2が封止される。
【0049】
第1の内部路32は、蓄電セル2の隙間Sa内において、正極活物質層22の短辺22aで注液口31に連続し、積層方向から見て注液口31と交差する向きに延在する部分である。第1の内部路32は、隙間Saの略全長にわたって延びている。第1の内部路32の中間部分は、注液口31の他端部31bに接続されている。第1の内部路32の一端部32aは、隙間Scまで延びており、第1の内部路32の他端部32bは、隙間Sdまで延びている。第1の内部路32の側面部32cは、スペーサ14の一端部14aの内側面14g及び集電体21の一面21aの双方に固定されている。第1の内部路32の側面部32cには、吐出孔38が設けられている。本実施形態では、吐出孔38は、略円形状をなしており、第1の内部路32が延在する方向において、注液口31の他端部31bを挟んで1つずつ設けられている。吐出孔38のそれぞれは、側面部32cにおいて正極活物質層22と対向するように設けられている。
【0050】
第2の内部路33は、蓄電セル2の収容空間S内において第1の内部路32と交差する向きに連続し、積層方向から見て正極活物質層22の短辺22a側から短辺22b側に延在する部分である。本実施形態では、第2の内部路33は、第2の内部路33c,33dによって構成されている。第2の内部路33cの一端部33aは、第1の内部路32の一端部32aに接続されている。第2の内部路33cは、隙間Scにおいて正極活物質層22の長辺22cに沿って延びており、第2の内部路33cの他端部33bは、第2の内部路33cが延在する方向において正極活物質層22の短辺22bに揃えられている。第2の内部路33dの一端部33aは、第1の内部路32の他端部32bに接続されている。第2の内部路33dは、隙間Sdにおいて正極活物質層22の長辺22dに沿って延びており、第2の内部路33dの他端部33bは、第2の内部路33dが延在する方向において正極活物質層22の短辺22bに揃えられている。すなわち、第2の内部路33cの長さは、第2の内部路33dの長さと略等しくなっている。
【0051】
第2の内部路33c,33dの側面部33eには、複数の吐出孔38が設けられている。本実施形態では、吐出孔38のそれぞれは、第2の内部路33c,33dの側面部33eに等間隔に設けられている。本実施形態では、
図4に示すように、第2の内部路33cの側面部33eは、スペーサ14の一端部14cの内側面14g及び集電体21の一面21aの双方に固定されており、吐出孔38のそれぞれは、側面部33eにおいて正極活物質層22と対向するように設けられている。吐出孔38の面積は、注液口31からの路長が長い吐出孔38ほど大きくなっている。すなわち、第2の内部路33cが延在する方向において、吐出孔38の面積は、第2の内部路33cの他端部33b側に近づくにつれて大きくなっている。また、第2の内部路33cの一端部33aに最も近い吐出孔38の面積は、第1の内部路32の側面部32cに設けられた吐出孔38の面積よりも大きくなっている。
【0052】
図4には図示していないが、第2の内部路33dについても同様である。すなわち、第2の内部路33dの側面部33eは、スペーサ14の他端部14dの内側面14g及び集電体21の一面21aの双方に接合されており、吐出孔38のそれぞれは、正極活物質層22と対向するように設けられている。吐出孔38の面積は、注液口31からの路長が長い吐出孔38ほど大きくなっている。すなわち、第2の内部路33dが延在する方向において、吐出孔38の面積は、第2の内部路33dの他端部33b側に近づくにつれて大きくなっている。また、第2の内部路33dの一端部33aに最も近い吐出孔38の面積は、第1の内部路32の側面部32cに設けられた吐出孔38の面積よりも大きくなっている。
【0053】
第1の内部路32及び第2の内部路33に設けられた吐出孔38の面積は、上記のとおり、注液口31からの路長が長い吐出孔38ほど大きくなっていてもよい。しかし、例えば第2の内部路33に設けられた複数の吐出孔38の面積は、全て略等しくなっており、第1の内部路32の複数の吐出孔38の面積よりも大きくなっていてもよい。また、例えば第2の内部路33cに設けられた吐出孔38の面積は、第2の内部路33dに設けられた吐出孔38の面積よりも大きくなっていてもよいし、略等しくてもよい。
【0054】
以上のような注液管3によれば、注液口31の一端部31aに導入された電解液は、注液口31の他端部31bから第1の内部路32に流れて二股に分岐し、第2の内部路33c,33dの他端部33bからそれぞれ収容空間S内に吐出される。また、第2の内部路33c,33dを流れる電解液の一部は、第2の内部路33c,33dの他端部33bに到達する前に吐出孔38のそれぞれから正極活物質層22に向かって吐出される。第2の内部路33c,33dの他端部33b及び各吐出孔38から吐出された電解液は、セパレータ13、正極活物質層22、負極活物質層23にそれぞれ含浸される。
【0055】
続いて、以上のような蓄電セル2を製造する方法を説明する。
図5は、
図2に示した蓄電セルの製造方法を示すフローチャートである。同図に示すように、蓄電セル2の製造方法は、注液管固定ステップS01と、スペーサ接合ステップS02と、積層ステップS03と、空間形成ステップS04と、注液ステップS05と、を備えている。
【0056】
注液管固定ステップS01では、
図6に示すように、スペーサ14の一端部14cの内側面14g、他端部14dの内側面14g、及び一端部14aの内側面14gに注液管3を固定する。注液管固定ステップS01では、第1の内部路32及び第2の内部路33の少なくとも一方をスペーサ14に固定する。本実施形態では、第1の内部路32の側面部32cのうち、積層方向から見て吐出孔38と反対側の部分をスペーサ14の一端部14aの内側面14gに固定する。第2の内部路33についても、第1の内部路32と同様に、第2の内部路33c,33dの側面部33eのうち、積層方向から見て吐出孔38と反対側の部分をそれぞれスペーサ14の内側面14gに固定する。注液管3の注液口31は、スペーサ14の一端部14aと交差させる。すなわち、積層方向から見て、注液口31の一端部31aをスペーサ14の外部に配置し、注液口31の他端部31bをスペーサ14の内部に配置する。注液管3をスペーサ14に固定する方法としては、例えば、熱溶着、超音波溶着又は赤外線溶着など、公知の溶着方法が用いられる。
【0057】
スペーサ接合ステップS02では、
図7に示すように、注液管3が固定されたスペーサ14を、正極11の集電体21の一面21aの正極活物質層22よりも外側の周縁部21e(
図3参照)に接合する。スペーサ14と正極11の集電体21とを接合する際には、例えばヒータ等の加熱手段を用いることにより、集電体21側からスペーサ14にそれぞれ熱を加え、金属と樹脂との異種材接合を行ってもよい。また、正極活物質層22の短辺22aとスペーサ14の一端部14aとの間に注液管3の第1の内部路32を配置する。また、正極活物質層22の長辺22cとスペーサ14の一端部14cとの間に第2の内部路33cを配置し、正極活物質層22の長辺22dとスペーサ14の他端部14dとの間に第2の内部路33dを配置する。この時、第2の内部路33c,33dの側面部33eに設けられた吐出孔38が正極活物質層22と対向するように第2の内部路33c,33dを配置する。
【0058】
積層ステップS03では、
図8に示すように、セパレータ13(
図8では不図示)を介して正極活物質層22及び負極活物質層23が互いに対向するように、正極11に負極12を積層する。積層ステップS03に続く空間形成ステップS04では、注液管3が固定されたスペーサ14を負極12の集電体21の一面21aにおける負極活物質層23よりも外側の周縁部21eに接合し、内部に電解液の収容空間Sを形成する。すなわち、本実施形態では、隙間Saに第1の内部路32を配置し、隙間Scに第2の内部路33cを配置し、隙間Sdに第2の内部路33dを配置する。スペーサ14と負極12の集電体21とを接合する際には、スペーサ14と正極11の集電体21とを接合する方法と同様の方法を用いることができる。
【0059】
注液ステップS05では、
図9に示すように、注液口31を介して蓄電セル2の外部から収容空間S内に注液した電解液Eを、第1の内部路32及び第2の内部路33に設けられた吐出孔38から正極活物質層22に向けて吐出する。注液口31の一端部31aに導入された電解液Eは、注液口31の他端部31bから第1の内部路32に流れて二股に分岐し、第2の内部路33c,33dの他端部33bからそれぞれ収容空間S内に吐出される。また、第2の内部路33c,33dを流れる電解液Eの一部は、第2の内部路33c,33dの他端部33bに到達する前に吐出孔38のそれぞれから正極活物質層22に向かって吐出される。第2の内部路33c,33dの他端部33b及び各吐出孔38から吐出された電解液Eは、セパレータ13、正極活物質層22、負極活物質層23にそれぞれ含浸される。その後、注液口31の一端部31aを閉鎖し、蓄電セル2を封止する。これにより、
図2に示した蓄電セル2が得られる。
【0060】
この蓄電セル2では、蓄電セル2の内部と外部とを連通する注液管3に、注液口31と交差する第1の内部路32と、第1の内部路32に交差する第2の内部路33c,33dが設けられており、注液口31から導入された電解液を収容空間S内の少なくとも2方向に流すことができる。また、第1の内部路32及び第2の内部路33c,33dのそれぞれには、正極活物質層22と対向する吐出孔38が設けられているため、2方向に流れた電解液が吐出孔38から正極活物質層22に向けて吐出される。したがって、正極活物質層22の電解液の含浸に要する時間を短縮できる。また同様に、負極活物質層23の電解液の含浸に要する時間も短縮できる。また、この蓄電セル2では、電解液を収容空間S内の少なくとも2方向に流すにあたって、スペーサ14を貫通する注液口31を複数設ける必要がないため、シール性も担保できる。
【0061】
本実施形態では、注液管3は、第2の内部路33c,33dを有しており、第2の内部路33cは、正極活物質層22の長辺22cに沿って延在しており、第2の内部路33dは、正極活物質層22の長辺22dに沿って延在している。この場合、正極活物質層22の短辺22a側から短辺22b側に向かってより速やかに電解液を流すことが可能となる。したがって、正極活物質層22の電解液の含浸に要する時間を一層短縮できる。また同様に、負極活物質層23の電解液の含浸に要する時間も短縮できる。
【0062】
本実施形態では、第2の内部路33c,33dのそれぞれは、正極活物質層22の短辺22bに達するように延びている。これにより、正極活物質層22の短辺22b側により速やかに且つ確実に電解液を流すことが可能となる。したがって、正極活物質層22の電解液の含浸に要する時間を一層短縮できる。また同様に、負極活物質層23の電解液の含浸に要する時間も短縮できる。
【0063】
本実施形態では、第1の内部路32及び第2の内部路33c,33dには、吐出孔38が複数設けられており、複数の吐出孔38の面積は、注液口31からの路長が長い吐出孔38ほど大きくなっている。この場合、注液口31に近い位置にある吐出孔38で電解液が過剰に吐出されてしまうことを防止でき、正極活物質層22及び負極活物質層23の全体により均一に電解液を行き渡らせることができる。
【0064】
本実施形態では、注液管3は、集電体21及びスペーサ14の少なくとも一方に固定されている。これにより、注液管3が収容空間S内で位置ずれしてしまうことを抑制できる。
【0065】
この蓄電セル2の製造方法では、蓄電セル2の内部と外部とを連通する注液管3に、注液口31と交差する第1の内部路32と、第1の内部路32に交差する第2の内部路33c,33dが設けられており、注液口31から導入された電解液Eを収容空間S内の少なくとも2方向に流すことができる。また、第1の内部路32及び第2の内部路33c,33dのそれぞれには、正極活物質層22と対向する吐出孔38が設けられているため、2方向に流れた電解液Eが吐出孔38から正極活物質層22に向けて吐出される。したがって、正極活物質層22の電解液Eの含浸に要する時間を短縮できる。また同様に、負極活物質層23の電解液Eの含浸に要する時間も短縮できる。また、この蓄電セル2では、電解液Eを収容空間S内の少なくとも2方向に流すにあたって、スペーサ14を貫通する注液口31を複数設ける必要がないため、シール性も担保できる。
【0066】
図10は、第2実施形態に係る蓄電セルの要部を示す断面図である。第2実施形態では、注液管3は、平面視において第1の内部路32と対向する第3の内部路37を有している。第3の内部路37は、隙間Sbにおいて正極活物質層22の短辺22bに沿って延びている。第3の内部路37の一端部37aは、第2の内部路33cの他端部33bに接続されており、第3の内部路37の他端部37bは、第2の内部路33dの他端部33bに接続されている。
【0067】
第3の内部路37の側面部37cには、第1の内部路32の側面部32cと同様に、複数の吐出孔38が設けられている。すなわち、吐出孔38のそれぞれは、略円形状をなしており、第3の内部路37の側面部37cに、等間隔に設けられている。第2実施形態では、第3の内部路37の側面部37cは、スペーサ14の他端部14bの内側面14g及び集電体21の一面21aの双方に固定されており、吐出孔38のそれぞれは、側面部37cにおいて正極活物質層22と対向するように設けられている。第1の内部路32及び第2の内部路33と同様に、吐出孔38の面積は、注液口31からの路長が長い吐出孔38ほど大きくなっている。すなわち、第3の内部路37の側面部37cに設けられた吐出孔38の面積は、第2の内部路33c,33dの他端部33bに最も近い位置に設けられた吐出孔38の面積よりも大きくなっている。また、第3の内部路37の吐出孔38の面積についても、適宜変更することができる。
【0068】
本実施形態では、注液管3は、収容空間S内において第2の内部路33c,33d同士を結ぶように正極活物質層22の短辺22bに沿って延在する第3の内部路37を有し、第3の内部路37には、正極活物質層22と対向する吐出孔38が設けられている。この場合、注液口31から遠い正極活物質層22の短辺22b側に電解液をより均一に行き渡らせることができる。また同様に、負極活物質層23の短辺側にも電解液をより均一に行き渡らせることができる。
【0069】
本実施形態では、第3の内部路37には、吐出孔38が複数設けられており、吐出孔38のそれぞれの面積は、注液口31からの路長が長い吐出孔38ほど大きくなっている。この場合、注液口31に近い位置にある吐出孔38で電解液が過剰に吐出されてしまうことを防止でき、正極活物質層22及び負極活物質層23の全体により均一に電解液を行き渡らせることができる。
【0070】
図11は、第3実施形態に係る蓄電セルの要部を示す断面図である。第3実施形態では、正極11の集電体21上に正極活物質層22の2つの形成領域Rが形成されている。2つの形成領域Rは、集電体21上において積層方向から見て2分割されている。本実施形態では、注液管3は、3つの第2の内部路33を有している。注液管3は、第2の内部路33c,33dに加え、第2の内部路33fを有している。第2の内部路33fは、平面視において、2つの正極活物質層22の間に形成された隙間Seに配置されている。第2の内部路33fの一端部33aは、第1の内部路32の中間部分に接続されている。第2の内部路33fの他端部33bは、正極活物質層22の短辺22bに揃えられている。
【0071】
第2の内部路33fが延在する方向において、第2の内部路33fの長さは、第2の内部路33c,33d長さと略等しくなっている。第2の内部路33fの側面部33eには、2つの正極活物質層22にそれぞれ対向するように一対の吐出孔38,38が設けられている。一対の吐出孔38,38は、第2の内部路33fが延在する方向において、等間隔に並ぶように設けられている。第2の内部路33c,33dと同様に、吐出孔38の面積は、注液口31からの路長が長い吐出孔38ほど大きくなっている。すなわち、第2の内部路33fの側面部33eに設けられた吐出孔38の面積は、第2の内部路33c,33dの他端部33bに最も近い位置に設けられた吐出孔38の面積よりも大きくなっている。
【0072】
このような構成によっても、蓄電セル2の内部と外部とを連通する注液管3に、注液口31と交差する第1の内部路32と、第1の内部路32に交差する第2の内部路33c,33dが設けられており、注液口31から導入された電解液を収容空間S内の少なくとも2方向に流すことができる。また、第1の内部路32及び第2の内部路33c,33dのそれぞれには、正極活物質層22と対向する吐出孔38が設けられているため、2方向に流れた電解液が吐出孔38から正極活物質層22に向けて吐出される。したがって、正極活物質層22の電解液の含浸に要する時間を短縮できる。また同様に、負極活物質層23の電解液の含浸に要する時間も短縮できる。また、この蓄電セル2では、電解液を収容空間S内の少なくとも2方向に流すにあたって、スペーサ14を貫通する注液口31を複数設ける必要がないため、シール性も担保できる。
【0073】
図12は、第4実施形態に係る蓄電セルを示す要部拡大断面図である。この変形例では、同図に示すように、正極11における正極活物質層22が第1活物質層22g及び第2活物質層22hの2層構成となっている。第2活物質層22hにおける正極活物質の密度は、第1活物質層22gにおける正極活物質の密度よりも大きくなっていてもよい。また、第2活物質層22hの厚さは、第1活物質層22gの厚さよりも大きくなっていてもよい。第1活物質層22gの形成領域Rは、集電体21よりも一回り小さい矩形状となっており、第2活物質層22hの形成領域Rは、第1活物質層22g上において積層方向から見て2分割されている。第2活物質層22hの形成領域は、互いに等しい形状の矩形状となっている。積層方向から見て2つの第2活物質層22hの間には、溝部70が形成されている。
【0074】
第4実施形態では、注液管3の第2の内部路33f(第4の内部路)は、収容空間S内において第1の内部路32に連続して溝部70内に延在している。第2の内部路33fは、第1活物質層22gの上において、積層方向から見て2つの第2活物質層22hの間に形成された溝部70に配置されている。また、第2の内部路33fは、積層方向において、セパレータ13及び第1活物質層22gに挟まれるように配置されている。第2の内部路33fの側面部33eには、2つの第2活物質層22hにそれぞれ対向するように一対の吐出孔38,38が設けられている。第3実施形態と同様に、第2の内部路33c,33dの側面部33eに設けられた複数の吐出孔38は、それぞれ第1活物質層22gに対向するように設けられている。
【0075】
本実施形態では、正極活物質層22の少なくとも一方は、集電体21の一面21aに設けられた第1活物質層22gと、第1活物質層22g上に互いに離間して設けられ、積層方向から見て正極活物質層22の短辺22a側から短辺22b側に向かって延在する溝部70を正極活物質層22に形成する複数の第2活物質層22hと、を有し、注液管3は、収容空間S内において第1の内部路32に連続して溝部70内に延在する第2の内部路33fを有している。この場合、注液口31から遠い正極活物質層22の短辺22b側に向かってより速やかに電解液を流すことが可能となる。また同様に、負極活物質層23の短辺側に向かってより速やかに電解液を流すことが可能となる。また、正極活物質層22を多層構成とすることで、蓄電セル2を大面積化した場合であっても正極活物質層22の割れや集電体21からの剥離を抑制できる。
【0076】
以上、本開示の好適な実施形態について説明してきたが、本開示は必ずしも上述した実施形態に限定されるものではない。上記実施形態では、注液管3は、積層方向において正極11の集電体21及びセパレータ13の間に配置されているが、例えば負極12の集電体21及びセパレータ13の間に配置されていてもよい。
【0077】
また、上記実施形態では、吐出孔38は、略円形状をなしており、第1の内部路32の側面部32c、第3の内部路37の側面部37c、第2の内部路33c,33dの側面部33eにおいて、正極活物質層22と対向するように設けられている。しかし、吐出孔38の形状、間隔、位置、面積、及び配置数は、本開示の効果を奏する限りにおいて適宜変更することができる。
【0078】
また、上記実施形態では、注液管3は、スペーサ14及び正極11の集電体21の両方に固定されているが、どちらか一方にのみ固定されていてもよい。また、上記実施形態では、第2の内部路33cの長さは、第2の内部路33dの長さ及び第2の内部路33fの長さとそれぞれ略等しくなっているが、互いに異なっていてもよい。
【符号の説明】
【0079】
2…蓄電セル、3…注液管、11…正極(電極)、12…負極(電極)、13…セパレータ、14…スペーサ、21…集電体、21a…一面、22…正極活物質層(活物質層)、22a…短辺(一端辺)、22b…短辺(他端辺)、22c,22d…長辺(端辺)、22g…第1活物質層、22h…第2活物質層、23…負極活物質層(活物質層)、32…第1の内部路、33,33c,33d…第2の内部路、33f…第2の内部路(第4の内部路)、37…第3の内部路、38…吐出孔、70…溝部、E…電解液、S…収容空間。