(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022065385
(43)【公開日】2022-04-27
(54)【発明の名称】金属切粉飛散防止装置
(51)【国際特許分類】
B23Q 11/08 20060101AFI20220420BHJP
B23B 47/34 20060101ALI20220420BHJP
【FI】
B23Q11/08 F
B23B47/34 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020173937
(22)【出願日】2020-10-15
(71)【出願人】
【識別番号】000211307
【氏名又は名称】中国電力株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000545
【氏名又は名称】特許業務法人大貫小竹国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】大西 和雄
【テーマコード(参考)】
3C036
【Fターム(参考)】
3C036HH08
3C036HH12
(57)【要約】
【課題】本発明は、配電盤等の金属加工部材にドリル等によって穴あけ加工を施す際に生じる金属切粉の飛散を防止するために用いる金属切粉飛散防止装置を提供する。
【解決手段】環状に形成されると共に、加工面4aと対峙する軸方向の一方の端面に磁気吸着力を発生させる加工面吸着用電磁石2と、加工面吸着用電磁石2の内側に配置され、穴あけ加工具が挿入し得るように環状に形成されると共に、内周面に磁気吸着力を発生させる切粉吸着用電磁石3と、加工面吸着用電磁石2及び切粉吸着用電磁石3を収容する筐体6と、を有し、筐体6には、加工面吸着用電磁石2に通電可能な第1電源24と、切粉吸着用電磁石3に通電可能な第2電源34と、加工面吸着用電磁石2への第1電源24からの通電をオンオフする第1スイッチ25と、切粉吸着用電磁石3への第2電源34からの通電をオンオフする第2スイッチ35と、を設ける。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
環状に形成されると共に、加工面と対峙する軸方向の一方の端面に磁気吸着力を発生させる加工面吸着用電磁石と、
前記加工面吸着用電磁石の内側に配置され、穴あけ加工具が挿入し得るように環状に形成されると共に、内周面に磁気吸着力を発生させる切粉吸着用電磁石と、
前記加工面吸着用電磁石及び前記切粉吸着用電磁石を収容する筐体と、を有し、
前記筐体には、前記加工面吸着用電磁石に通電可能な第1電源と、前記切粉吸着用電磁石に通電可能な第2電源と、前記加工面吸着用電磁石への前記第1電源からの通電をオンオフする第1スイッチと、前記切粉吸着用電磁石への前記第2電源からの通電をオンオフする第2スイッチと、が設けられていることを特徴とする金属切粉飛散防止装置。
【請求項2】
環状に形成されると共に加工面と対峙する軸方向の一方の端面に周方向に沿って第1コイル収容溝が環状に形成された第1磁性体、及び、前記第1コイル収容溝に収容された第1励磁コイルを有する加工面吸着用電磁石と、
前記加工面吸着用電磁石の内側に配置され、穴あけ加工具が挿入し得るように環状に形成されると共に、内周面に周方向に沿って第2コイル収容溝が環状に形成された第2磁性体、及び、前記第2コイル収容溝に収容された第2励磁コイルを有する切粉吸着用電磁石と、
前記加工面吸着用電磁石と前記切粉吸着用電磁石を収容する筐体と、を有し、
前記加工面吸着用電磁石と前記切粉吸着用電磁石との間に第1非磁性体が介在され、また、前記切粉吸着用電磁石の前記加工面と対峙する軸方向の一方の端面を覆うように第2非磁性体が設けられ、
前記筐体には、前記加工面吸着用電磁石に通電可能な第1電源と、前記切粉吸着用電磁石に通電可能な第2電源と、前記加工面吸着用電磁石への前記第1電源からの通電をオンオフする第1スイッチと、前記切粉吸着用電磁石への前記第2電源からの通電をオンオフする第2スイッチと、が設けられていることを特徴とする金属切粉飛散防止装置。
【請求項3】
前記第1電源、前記第2電源、前記第1スイッチ、及び前記第2スイッチは、前記筐体の 前記加工面吸着用電磁石の径方向外側を覆う外周壁、又は、前記加工面吸着用電磁石及び前記切粉吸着用電磁石の前記加工面と対峙する側とは軸方向で反対側の他方の端面を覆う筐体の端壁に設けられていることを特徴とする請求項1又は2記載の金属切粉飛散防止装置。
【請求項4】
前記筐体は、前記加工面吸着用電磁石および前記切粉吸着用電磁石を収容する非磁性体で形成され、前記第1非磁性体が一体に形成されていることを特徴とする請求項2記載の金属切粉飛散防止装置。
【請求項5】
前記筐体は、前記加工面吸着用電磁石を収容する非磁性体で形成された第1筐体部と、前記切粉吸着用電磁石を収容する非磁性体で形成された第2筐体部と、を有し、前記第1非磁性体は、前記第1筐体部と前記第2筐体部の互いに対峙する壁部で形成されていることを特徴とする請求項2記載の金属切粉飛散防止装置。
【請求項6】
前記切粉吸着用電磁石は、着脱自在に取り付けられることを特徴とする請求項1乃至5のいずれかに記載の金属切粉飛散防止装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、配電盤などの金属加工部材にドリル等によって穴あけ加工を施す際に生じる金属切粉の飛散を防止するために用いる金属切粉飛散防止装置に関する。
【背景技術】
【0002】
配電盤などの金属加工部材に電動ドリル等の加工具を用いて穴あけ加工を施す場合には、少なからず金属切粉が発生する。このため、加工具を用いた穴あけ加工においては、飛散する金属切粉を収集するために加工箇所の下方に養生シートを敷設するようにしている。しかしながら、加工箇所が多数になると、加工箇所に合わせて養生シートの敷設位置を都度変更するか多数の養生シートを敷設しなければならないため、加工の準備作業に時間と手間がかかるものであった。また、金属切粉の飛散範囲もまちまちとなるため、切粉を効率よく収集できない不都合もある。
さらに、場所によって、養生シートを加工箇所の下方にうまく敷設することができない場合もあり、このような場所では、金属切粉の収集を効果的に行うことは一層困難となる。
【0003】
そこで、従来においては、特許文献1に示されるような切粉飛散防止具が提案されている。この切粉飛散防止具は、穴あけ加工具が挿入し得るように筒状に形成された挿入部と挿入部の一端部の側において穴あけ加工面に対向するように形成された対向部とを備えた本体と、この本体において前記挿入部の一端部の周囲に対して着脱自在に設けられ、挿入部の一端部の周囲に取り付けられた状態で本体の対向部が穴あけ加工面に対向した際に対向部を挟んだ状態で穴あけ加工面に吸着する永久磁石と、本体において挿入部の他端部に対して着脱自在に設けられ、挿入部の他端部に取り付けられた際に挿入部の他端部の開口を塞ぐ蓋と、を備えて構成し、永久磁石によって、本体部を加工面に吸着させると共に加工面の加工時に発生した金属切粉を挿入部の内面に吸着させ、金属切粉の飛散を防止するだけでなく、発生した金属切粉を容易に収集廃棄できるようにしたものである。
【0004】
また、特許文献2に示されるように、ドリルキリやタップの基部にコイルを巻き付け、コイルに通電することでドリルキリやタップを磁化させ、これによりドリルキリやタップに金属切粉を磁着させて金属切粉の飛散防止を図る穿孔装置も提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2018-153903号公報
【特許文献2】実開昭53-163788号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、前者の切粉飛散防止具は、本体を加工面へ吸着させる機能と、切粉を収集する機能を共通の永久磁石によって実現しているので、加工面から取り外す際に永久磁石が本体から外れると、折角回収した切粉が散乱する不都合がある。このような不都合に対処するためには、加工面から本体を取り外す前に穴あけ加工部を挿入する挿入部を蓋で閉めておく必要があり、また、収集した切粉を廃棄するために永久磁石を本体から取り外す際にも蓋が外れないようにする必要があり、切粉の収集から廃棄までに多くの慎重な作業が必要となるものであった。
【0007】
また、後者の穿孔装置は、ドリルキリやタップを基部に巻き付けられたコイルによって磁化させることでドリルキリやタップに金属切粉を直接吸着させるため、金属切粉の収集、廃棄の作業をむき出したドリルキリやタップに近接又は接触して行う必要があり、怪我をする恐れがある。また、金属切粉の全てがドリルキリやタップに吸着するわけではないので、ドリルキリやタップから離散した金属切粉を収集、廃棄できない不都合もある。
【0008】
本発明は、係る事情に鑑みてなされたものであり、金属加工部材の穴あけ加工によって生じる金属切粉を飛散させることなく効果的に収集し、また、加工面からの取り外し時や切粉回収時(廃棄時)においても金属切粉を飛散させる不都合がない金属切粉飛散防止装置を提供することを主たる課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を達成するために、本発明に係る金属切粉飛散防止装置は、環状に形成されると共に、加工面と対峙する軸方向の一方の端面に磁気吸着力を発生させる加工面吸着用電磁石と、前記加工面吸着用電磁石の内側に配置され、穴あけ加工具が挿入し得るように環状に形成されると共に、内周面に磁気吸着力を発生させる切粉吸着用電磁石と、前記加工面吸着用電磁石及び前記切粉吸着用電磁石を収容する筐体と、を有し、
前記筐体には、前記加工面吸着用電磁石に通電可能な第1電源と、前記切粉吸着用電磁石に通電可能な第2電源と、前記加工面吸着用電磁石への前記第1電源からの通電をオンオフする第1スイッチと、前記切粉吸着用電磁石への前記第2電源からの通電をオンオフする第2スイッチと、が設けられていることを特徴としている。
【0010】
このような構成によれば、第1スイッチの入切による加工面吸着用電磁石の磁気吸着力の発生、停止による加工面への吸着、吸着解除と、第2スイッチの入切による切粉吸着用電磁石の磁気吸着力の発生、停止による金属切粉の吸着、吸着解除とによって、加工面に金属切粉飛散防止装置を容易に着脱でき、また、穴あけ加工で生じた金属切粉を容易に吸着分離(収集廃棄)することが可能となる。
【0011】
すなわち、
・ 加工面への切粉飛散防止装置の固定
第1スイッチをオンにして加工面吸着用電磁石に第1電源から通電し、加工面と対峙する軸方向の一方の端面に磁気吸着力を発生させて、切粉飛散防止装置を加工面に吸着させる、
・ 加工面の穴あけ加工による金属切粉の収集
第2スイッチをオンにして切粉吸着用電磁石に第2電源から通電し、切粉吸着用電磁石の内周面に磁気吸着力を発生させ、穴あけ加工具による穴あけ加工で生じた金属切粉を切粉吸着用電磁石に吸着させる、
(3)加工面からの切粉飛散防止装置の取り外し
第1スイッチをオフにして加工面吸着用電磁石への第1電源からの通電を解除し、加工面と対峙する軸方向の一方の端面に発生していた磁気吸着力を消失させ、切粉飛散防止装置を加工面から離す、
(4)金属切粉の廃棄
第2スイッチをオフにして切粉吸着用電磁石への第2電源からの通電を解除し、切粉吸着用電磁石の内周面に発生させていた磁気吸着力を消失させ、収集した金属切粉を分離させる、
という一連の操作を行うことで、切粉飛散防止装置を加工面に容易に着脱させることができ、また、穴あけ加工で生じた金属切粉を容易に吸着分離(収集廃棄)することが可能となる。
【0012】
上述した切粉飛散防止装置のより具体的な構成例としては、環状に形成されると共に加工面と対峙する軸方向の一方の端面に周方向に沿って第1コイル収容溝が環状に形成された第1磁性体、及び、前記第1コイル収容溝に収容された第1励磁コイルを有する加工面吸着用電磁石と、
前記加工面吸着用電磁石の内側に配置され、穴あけ加工具が挿入し得るように環状に形成されると共に、内周面に周方向に沿って第2コイル収容溝が環状に形成された第2磁性体、及び、前記第2コイル収容溝に収容された第2励磁コイルを有する切粉吸着用電磁石と、
前記加工面吸着用電磁石と前記切粉吸着用電磁石を収容する筐体と、を有し、
前記加工面吸着用電磁石と前記切粉吸着用電磁石との間に第1非磁性体が介在され、また、前記切粉吸着用電磁石の前記加工面と対峙する軸方向の一方の端面を覆うように第2非磁性体が設けられ、
前記筐体には、前記加工面吸着用電磁石に通電可能な第1電源と、前記切粉吸着用電磁石に通電可能な第2電源と、前記加工面吸着用電磁石への前記第1電源からの通電をオンオフする第1スイッチと、前記切粉吸着用電磁石への前記第2電源からの通電をオンオフする第2スイッチと、が設けられる構成が考えられる。
【0013】
ここで、前記第1電源、前記第2電源、前記第1スイッチ、及び前記第2スイッチは、前記筐体の前記加工面吸着用電磁石の径方向外側を覆う外周壁、又は、前記加工面吸着用電磁石及び前記切粉吸着用電磁石の前記加工面と対峙する側とは軸方向で反対側の他方の端面を覆う筐体の端壁に設けるとよい。
このような構成とすれば、磁気吸着力を発生させる面を除いた筐体のアクセスしやすい箇所に電源とスイッチが配置されるので、良好な操作性を確保することが可能となる。
【0014】
前記筐体は、加工面吸着用電磁石および切粉吸着用電磁石を収容する非磁性体で形成し、第1非磁性体を一体に形成してもよい。
また、筐体は、加工面吸着用電磁石を収容する非磁性体で形成された第1筐体部と、切粉吸着用電磁石を収容する非磁性体で形成された第2筐体部と、に分けて形成し、前記第1非磁性体は、第1筐体部と第2筐体部の互いに対峙する壁部で形成するようにしてもよい。
【0015】
さらに、切粉吸着用電磁石は着脱自在に取り付けられるようにしてもよい。このような構成とすることで、切粉吸着用電磁石のメンテナンスをより容易に行うことが可能となり、また、仕様が異なる切粉吸着用電磁石を複数用意しておき、作業に適合する切粉吸着用電磁石(例えば、第2筐体部の内径や切粉の吸着能力が適合する切粉吸着用電磁石)を選択して取り付けることも可能となる。
【発明の効果】
【0016】
以上に述べたように、本発明の金属切粉飛散防止装置によれば、加工面と対峙する軸方向の一方の端面に磁気吸着力を発生させる環状の加工面吸着用電磁石と、この加工面吸着用電磁石の内側に配置され、穴あけ加工具が挿入し得るように環状に形成されると共に、内周面に磁気吸着力を発生させる切粉吸着用電磁石とを有し、第1スイッチの入切による加工面吸着用電磁石の磁力の発生、停止による加工面への吸着、吸着解除と、第2スイッチの入切による切粉吸着用電磁石の磁力の発生、停止による金属切粉の吸着、吸着解除を行えるようにしたので、加工面に切粉飛散防止装置を容易に着脱でき、また、穴あけ加工で生じた金属切粉を容易に吸着分離(収集廃棄)することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】
図1は、本発明に係る金属切粉飛散防止装置の第1形態の概略構成を示す断面図である。
【
図2】
図2(a)は、
図1で示す金属切粉飛散防止装置の正面図、
図2(b)は、
図1で示す金属切粉飛散防止装置の裏面図である。
【
図3】
図3は、加工面に本発明に係る金属切粉飛散防止装置を取付ける(吸着させる)操作を説明する図である。
【
図4】
図4は、加工面に金属切粉飛散防止装置を取り付けた後に、第2スイッチをオンにした時の状態を示す図である。
【
図5】
図5は、加工面を穴あけ加工具によって穴あけ加工する作業を説明する図である。
【
図6】
図6は、穴あけ加工後、金属切粉飛散防止装置を加工面から取り外す操作を説明する図である。
【
図7】
図7は、収集した切粉を廃棄(金属切粉飛散防止装置から分離)する操作を説明する図である。
【
図8】
図8は、本発明に係る金属切粉飛散防止装置の第2形態の概略構成を示す断面図である。
【
図9】
図9は、本発明に係る金属切粉飛散防止装置の第3形態の概略構成を示す断面図である。
【
図10】
図10は、本発明に係る金属切粉飛散防止装置の第4形態の概略構成を示す断面図である。
【
図11】
図11は、本発明に係る金属切粉飛散防止装置の第5形態の概略構成を示す断面図である。なお、
図2を除く各図面において、理解を容易にするため、電源及びスイッチは模式的に示されている。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
【0019】
図1及び
図2において、金属切粉飛散防止装置1の第1形態が示されている。
この金属切粉飛散防止装置1は、加工面吸着用電磁石2と切粉吸着用電磁石3の2つの電磁石を組み合わせて構成されている。
【0020】
加工面吸着用電磁石2は、環状に形成されると共に加工面4aと対峙する軸方向の一方の端面2aに周方向に沿って第1コイル収容溝21が環状に形成された第1磁性体22と、第1コイル収容溝21に収容されて樹脂モールドされた第1励磁コイル23とを有している。
【0021】
切粉吸着用電磁石3は、加工面吸着用電磁石2の内側に配置され、穴あけ加工具5(
図5に示す、例えば電動ドリル)が挿入し得るように環状に形成されると共に、内周面3aに周方向に沿って第2コイル収容溝31が環状に形成された第2磁性体32と、第2コイル収容溝31に収容されて樹脂モールドされた第2励磁コイル33を有している。
【0022】
そして、これら加工面吸着用電磁石2と切粉吸着用電磁石3は、非磁性体からなる筐体6に収容されている。この筐体6は、有底の円筒状に形成されているもので、加工面4aと対峙させる側が開放され、加工面吸着用電磁石2及び切粉吸着用電磁石3の加工面4aと対峙させる面を除いた表面を覆うように外周壁6aと底壁(加工面吸着用電磁石2及び切粉吸着用電磁石3の加工面4aと対峙する側とは軸方向で反対側の端面を覆う筐体6の端壁)6bとを備えている。筐体6の底壁6bには、切粉吸着用電磁石3の内径(第2磁性体32の内径)とほぼ等しい工具挿入孔6cが形成されている。
【0023】
また、筐体6に収容された加工面吸着用電磁石2と切粉吸着用電磁石3との間(第1磁性体22と第2磁性体32との間)には、それぞれの電磁石の磁路が交錯しないようにする第1非磁性体17が介在され、切粉吸着用電磁石3の加工面4aと対峙する軸方向の一方の端面3bには、この端面3bを覆うように設けられて加工面4aとの間に磁路が形成されないようにする第2非磁性体18が設けられている。第1非磁性体17は、加工面吸着用電磁石2と切粉吸着用電磁石3の軸方向の全長に亘って設けられた円筒状に形成され、第2非磁性体18は、切粉吸着用電磁石3の径方向巾とほぼ等しい巾を有するリング状に形成されている。
【0024】
そして、この例においては、筐体6の加工面4aと対峙させる面とは反対側の面、すなわち底壁6bに、加工面吸着用電磁石2に通電可能な第1電源24と、切粉吸着用電磁石3に通電可能な第2電源34と、加工面吸着用電磁石2への第1電源24からの通電をオンオフする第1スイッチ25と、切粉吸着用電磁石3への第2電源34からの通電をオンオフする第2スイッチ35と、が設けられている。
なお、第1電源24及び第1スイッチ25と第2電源34及び第2スイッチ35は、筐体1の加工面吸着用電磁石2の径方向外側を覆う外周壁6aに設けてもよい。
【0025】
以上の構成において、次に、金属切粉飛散防止装置1を用いて配電盤等の金属加工部材4の穴あけ加工時に生じる金属切粉を収集、廃棄する一例の操作について説明する。
【0026】
先ず、
図3に示すように、加工面4aに金属切粉飛散防止装置1を取付けるには、第1スイッチ25をオンにして第1電源24から加工面吸着用電磁石2の第1励磁コイル23に通電し、加工面吸着用電磁石2の軸方向の一方の端面2aに磁気吸着力を発生させる。この状態で、金属切粉飛散防止装置1を加工面4aに近づけると、第1磁性体22と加工面4aとの間に磁路が形成されて吸着力が発生し、金属切粉飛散防止装置1を加工面4aに吸着させることが可能となる。
【0027】
金属切粉飛散防止装置1を加工面4aに吸着させた状態で、次に、
図4に示すように、第2スイッチ35をオンにする。すると、第2電源34から切粉吸着用電磁石3の第2励磁コイル33に通電し、切粉吸着用電磁石3の内周面3aに磁気吸着力10が発生する。前述したように、切粉吸着用電磁石3の加工面4aと対峙する軸方向の一方の端面3bには、加工面4aとの間に磁路が形成されないように第2非磁性体18が設けられているため、切粉吸着用電磁石3は、加工面4aとの吸着には寄与せず、内側を通過しようとする金属切粉を吸着可能な状態となる。
【0028】
また、加工面吸着用電磁石2と切粉吸着用電磁石3との間には第1非磁性体17が配されているため、互いの電磁石の磁路は交錯することがなく、それぞれの電磁石の機能が阻害されることはない(加工面吸着用電磁石2は、金属切粉飛散防止装置1を加工面4aに吸着させるだけの機能を有し、切粉吸着用電磁石3の機能に影響を与えることがなく、また、切粉吸着用電磁石3は、金属切粉を吸着させるだけの機能を有し、加工面吸着用電磁石2の機能に影響を与えることがない)。
【0029】
以上までの操作が終了した後に、次に、
図5に示すように、穴あけ加工具5を工具挿入孔6cから挿入し、加工面4a(金属加工部材4)を穴あけ加工する。この穴あけ加工により金属切粉40が発生するが、切粉吸着用電磁石3の内周面3aには、磁気吸着力10が発生しているため、発生した金属切粉40は、内周面3aに吸着され、工具挿入孔6cから飛散することがない。
【0030】
穴あけ加工が終了した後に、次に、金属切粉飛散防止装置1を手で持って、
図6に示すように、第1スイッチ25をオフにする。すると、第1電源24から加工面吸着用電磁石2の第1励磁コイル23への通電がなくなり、加工面吸着用電磁石2の磁気吸着力10が消失する。この状態においては、加工面4aから金属切粉飛散防止装置1の取り外しが可能となるので、作業員は、加工面4aから金属切粉飛散防止装置1を遠ざける。この状態においては、金属切粉40が切粉吸着用電磁石3の内周面3aに吸着した状態を維持しているので、加工面4aからの金属切粉飛散防止装置1の取り外し時に金属切粉が散乱することはない。
【0031】
その後、
図7に示すように、加工面4aから外した金属切粉飛散防止装置1を、ゴミ箱41上に移動させ、筐体6の開放側を下方に向けた状態として第2スイッチ35をオフにする。すると、第2電源34から切粉吸着用電磁石3の第2励磁コイル33への通電がなくなり、切粉吸着用電磁石3の磁気吸着力10が消失し、切粉吸着用電磁石3に吸着していた金属切粉40をゴミ箱41へ落下させ、廃棄することが可能となる。
【0032】
したがって、以上の金属切粉飛散防止装置1によれば、第1スイッチ25の入切による加工面吸着用電磁石2の磁気吸着力の発生、停止によって、加工面4aへの吸着、吸着解除を行うことができ、また、第2スイッチ35の入切による切粉吸着用電磁石3の磁気吸着力の発生、停止によって、金属切粉の吸着、吸着解除を行うことが可能となるので、加工面4aに金属切粉飛散防止装置1を容易に着脱でき、また、穴あけ加工で生じた金属切粉を容易に吸着分離(収集廃棄)することが可能となる。
【0033】
図8乃至
図11において、本発明の他の形態が示されている。
【0034】
図8に示す形態(第2形態)は、非磁性体で形成される筐体1に加工面吸着用電磁石2と切粉吸着用電磁石3とを隔てる第1非磁性体17が一体に形成されている例である。なお、他の構成は、第1形態と同様であるので、同一箇所に同一符号を付して説明を省略する。
このような構造にすることで、第1非磁性体17を取り付ける作業が不要となり、また、第1非磁性体17の取り付け時に筐体と第1非磁性体との間に隙間が形成されて磁路の一部が交錯するような不都合もなくなる。
【0035】
図9に示す形態(第3形態)は、筐体6が、加工面吸着用電磁石2を収容する非磁性体で形成された第1筐体部61と、切粉吸着用電磁石3を収容する非磁性体で形成された第2筐体部62とに分けて形成されている例である。その結果、前記第1非磁性体17は、第1筐体部61と第2筐体部62の互いに対峙する壁部61a,62aで形成されている。なお、他の構成は、第1形態と同様であるので、同一箇所に同一符号を付して説明を省略する。
このような構造においては、加工面吸着用電磁石2と切粉吸着用電磁石3を別々に作成した後に組み合わせて一体化させることが可能となり、製造が容易となる。
【0036】
図10に示す形態(第4形態)は、第2磁性体32の後端側の内周縁に、内側へ向けて突出する環状の突条36を設けた例である。なお、他の構成は、第1形態と同様であるので、同一箇所に同一符号を付して説明を省略する。
このような構成においては、切粉吸着用電磁石3の内側で飛散しようとする金属切粉が、工具挿入孔6cから飛散、落下することをより確実に防ぐことが可能となる。
なお、このような内側へ向けて突出する環状の突条36は、筐体の工具挿入孔6cの径を切粉吸着用電磁石3の内径よりも小さくすることで形成してもよい。
【0037】
図11に示す形態(第5形態)は、切粉吸着用電磁石3を加工面吸着用電磁石2が取り付けられた筐体6に着脱自在に取り付ける例である。第2励磁コイル33と第2電源34及び第2スイッチ35とを接続するリード線の途中に着脱可能なコネクタ(例えば、第2磁性体32の底壁6bと対峙する面にジャック37、底壁6bの第2磁性体32と対峙する面にプラグ38)を設け、筐体6に切粉吸着用電磁石3を挿着させればコネクタが接続されるような構成が考えられる。
このような構成によれば、切粉吸着用電磁石3を取り外すことで、切粉吸着用電磁石3のメンテナンスを容易に行うことができ、また、仕様が異なる切粉吸着用電磁石3を複数用意しておき、作業に適合する切粉吸着用電磁石3を選択して取り付けることが可能となる。
【0038】
なお、以上の構成においては、第1スイッチ25と第2スイッチ35を直接操作する例について説明したが、スイッチのオンオフ操作は遠隔で行うようにしてもよい。また、金属加工部材の例として、配電盤を例にしたが、穴あけ加工具で穴あけ加工を行う他の金属加工部材に対して、同様の金属切粉飛散防止装置を利用できることは言うまでもない。
【符号の説明】
【0039】
1 金属切粉飛散防止装置
2 加工面吸着用電磁石
2a 一方の端面
3 切粉吸着用電磁石
3a 内周面
3b 一方の端面
4 加工部材
4a 加工面
5 穴あけ加工具
6 筐体
6a 外周壁
6b 底壁
6c 工具挿入孔
17 第1非磁性体
18 第2非磁性体
21 第1コイル収容溝
22 第1磁性体
23 第1励磁コイル
24 第1電源
25 第1スイッチ
31 第2コイル収容溝
32 第2磁性体
33 第2励磁コイル
34 第2電源
35 第2スイッチ
61 第1筐体部
62 第2筐体部