(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022065401
(43)【公開日】2022-04-27
(54)【発明の名称】キャスタブル耐火物およびそれを用いた溶鋼鍋
(51)【国際特許分類】
C04B 35/66 20060101AFI20220420BHJP
B22D 41/02 20060101ALI20220420BHJP
【FI】
C04B35/66
B22D41/02 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020173973
(22)【出願日】2020-10-15
(71)【出願人】
【識別番号】000001258
【氏名又は名称】JFEスチール株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001542
【氏名又は名称】特許業務法人銀座マロニエ特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】宮本 陽子
(57)【要約】
【課題】低温においても早期に強度を発現できるとともに使用中に低融物の生成がない施工性のよいキャスタブル耐火物およびそれを用いた溶鋼鍋を提供する。
【解決手段】アルミナ、カーボンおよびマグネシアを含有するキャスタブル耐火物、または、アルミナ、カーボンおよびスピネルを含有するキャスタブル耐火物において、ストロンチウムアルミネートを含有するセメントを7質量%以上20質量%以下、および分散剤を含有し、分散剤を除く原料中のCaOの含有率が0.3質量%以下である。そして、得られたキャスタブル耐火物を溶鋼鍋の内張耐火物として使用する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
アルミナ、カーボンおよびマグネシアを含有するキャスタブル耐火物、または、アルミナ、カーボンおよびスピネルを含有するキャスタブル耐火物において、ストロンチウムアルミネートを含有するセメントを7質量%以上20質量%以下、および分散剤を含有し、分散剤を除く原料中のCaOの含有率が0.3質量%以下であることを特徴とするキャスタブル耐火物。
【請求項2】
前記ストロンチウムアルミネートを含有するセメントを11質量%以上20質量%以下含有することを特徴とする請求項1に記載のキャスタブル耐火物。
【請求項3】
前記ストロンチウムアルミネートを含有するセメントを11質量%以上14質量%以下含有することを特徴とする請求項1に記載のキャスタブル耐火物。
【請求項4】
請求項1~3のいずれか1項に記載のキャスタブル耐火物を、内張耐火物として用いたことを特徴とする溶鋼鍋。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、製鉄所内で使用されるキャスタブル耐火物およびそれを用いた溶鋼鍋に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、製鉄所で使用される耐火物に占めるキャスタブル耐火物の使用比率が増大している。中でも製鋼段階での二次精錬で使用される溶鋼鍋の内張耐火物として、製鉄所内で原料と水を混合して施工するキャスタブル耐火物が広く使用されている。
【0003】
溶鋼鍋内張耐火物の損傷形態としては、熱衝撃やスラグ浸透によるスポーリング、スラグによる侵食によるものが挙げられる。キャスタブル耐火物は、通常、結合剤としてCaOを含有するアルミナセメントを含有しているものが多いが、CaO成分は高温ではAl2O3、MgO、SiO2とともに低融物を生成し、熱間強度低下や化学的侵食をもたらす。
【0004】
これに対し、特許文献1および特許文献2には、SrAl2O4等のストロンチウムアルミネートを含有するキャスタブル耐火物用結合剤と、該結合剤を使用したキャスタブル耐火物に関する技術が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第5290125号明細書
【特許文献2】特許第6499464号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1および特許文献2で開示されるようなストロンチウムアルミネートを含有する結合剤は、CaOが固溶している場合、大量に添加した場合には使用中に低融物を生成するのが問題であった。
【0007】
本発明の目的は、前記課題を解決して、使用中に低融物の生成がない施工性のよいキャスタブル耐火物およびそれを用いた溶鋼鍋を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、SrO-Al2O3-SiO2系およびSrO-MgO-Al2O3系の鉱物が1650℃でも溶融しないこと、および、カーボンを含有するキャスタブル耐火物では、カルシウムアルミネートを含有するアルミナセメントではなくストロンチウムアルミネートを含有するセメントを使用することで、熱処理後の亀裂を抑制できること、を確認し、本発明を開発するに至ったものである。
【0009】
即ち、本発明は、アルミナ、カーボンおよびマグネシアを含有するキャスタブル耐火物、または、アルミナ、カーボンおよびスピネルを含有するキャスタブル耐火物において、ストロンチウムアルミネートを含有するセメントを7質量%以上20質量%以下、および分散剤を含有し、分散剤を除く原料中のCaOの含有率が0.3質量%以下であることを特徴とするキャスタブル耐火物である。
【0010】
なお、前記のように構成される本発明に係るキャスタブル耐火物においては、
(1)前記ストロンチウムアルミネートを含有するセメントを11量%以上20質量%以下含有すること、
(2)前記ストロンチウムアルミネートを含有するセメントを11質量%以上14質量%以下含有すること、
がより好ましい解決手段となるものと考えられる。
【0011】
また、本発明は、上述したキャスタブル耐火物を、内張耐火物として用いたことを特徴とする溶鋼鍋である。
【発明の効果】
【0012】
本発明に係るキャスタブル耐火物によれば、アルミナセメントに替えてストロンチウムアルミネートを含有するセメントを使用することで、セメント由来のCaOの含有が少なくなりCaOによる低融物の生成量が少なく、高い熱間強度と優れた耐食性を得られるようになった。また、分散剤を除く原料中のCaO量を、0.3質量%以下にすることにより、耐食性を落とすことなく、高い熱間強度を得られるようになった。
【0013】
また、アルミナセメントは1400℃以上の環境において、以下の(1)式:
CaAl4O7+4Al2O3→CaAl12O19・・・(1)
の反応により体積膨張を生じる。カーボンを含有しないキャスタブル耐火物は1400℃以上で焼結により収縮するが、カーボンを含有するキャスタブル耐火物ではカーボンが焼結を阻害するため、(1)式の反応により冷却後に線変化率が大きくなり、施工体に亀裂が生じることがある。アルミナセメントではなくストロンチウムアルミネートを含有するセメントを使用すれば、(1)式の反応が生じないので熱処理後も残存膨張は必要以上に大きくならず、施工体に亀裂が生じないという効果もある。
【0014】
さらに、本発明に係る溶鋼鍋では、上述した耐食性や熱間強度等に優れる本発明に係るキャスタブル耐火物を内張耐火物として用いるため、耐用性の高い溶鋼鍋を得ることができる。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明に係るキャスタブル耐火物は、アルミナ、カーボンおよびマグネシアを含有するキャスタブル耐火物、または、アルミナ、カーボンおよびスピネルを含有するキャスタブル耐火物において、ストロンチウムアルミネートを含有するセメントを7質量%以上20質量%以下、および分散剤を含有し、分散剤を除く原料中のCaOの含有率が0.3質量%以下であることを特徴としている。
【0016】
本発明によれば、キャスタブル耐火物中のセメントをアルミナセメントに代えてストロンチウムアルミネートを含有するセメントにしたため、CaOを含む低融物、例えば、1600℃以下で溶融するCa2Al2SiO7、CaAl2SiO6等の生成量が少なくなり、代わりに1650℃でも溶融しないSrAl2Si2O8、Sr0.92Mg0.91Al10.09O17等を生成し、耐食性と熱間強度が向上した。また、CaO量を0.3質量%以下にすることにより、CaOを含む上記の低融物の生成量が少なくなるため耐食性を落とすことなく、高い熱間強度を得られるようになった。さらに、上記(1)式の反応が生じないことにより、熱処理後に亀裂が発生しなくなった。
【0017】
ストロンチウムアルミネートを含有するセメントは、キャスタブル耐火物に対し、7質量%以上20質量%、好ましくは11質量%以上20質量%、より好ましくは11質量%以上14質量%含有する。ここで、ストロンチウムアルミネートを含有するセメントが7質量%未満では、脱枠に必要とされている強度を得られない。また、ストロンチウムアルミネートを含有するセメントが20質量%を超えると、施工性が低下して施工に必要な水分量が増大し、見かけ気孔率増大をもたらす。また、分散剤以外の原料に対するCaO含有量は0.3質量%以下とする。分散剤以外の原料に対するCaO含有量が0.3質量%を超えると、耐食性、熱間強度の低下をもたらす。
【0018】
セメント以外の原料として、耐火性原料としてアルミナ、カーボンおよびマグネシア、または、アルミナ、カーボンおよびスピネル、を含有する。ここで、カーボンとは、鱗状黒鉛、鱗片状黒鉛、土状黒鉛、人造黒鉛、ピッチ、カーボンブラック、無煙炭、コークスなどをいう。結合剤のストロンチウムアルミネートを含有するセメントについては、例えば、SrO=17.2質量%、Al2O3=76.5質量%、CaO=1.5質量%、SiO2=0.1質量%の市販品を使用することが出来る。結合剤としては、ストロンチウムアルミネートを含有するセメントに加えて、アルミナゾル、シリカゾルなどを併用して使用できる。その他、酸化防止剤として、金属シリコンなどの各種金属、炭化珪素、炭化ホウ素などの炭化物を含んでもよい。さらに、耐火性原料の一部として、5質量%以下程度であればシリカヒューム、粘土、を含んでもよい。以上の原料に加えて、ポリカルボン酸系、ポリエーテル系、ポリマー系、ナフタレンスルホン酸系などの各種分散剤、その他、キャスタブル耐火物に一般的に使用される各種添加剤を使用することができるものとする。
【0019】
本発明において、ストロンチウムアルミネートを含有するセメントおよび分散剤を除く原料中のCaOのそれぞれの含有量の他の組成の含有量は、一般的なキャスタブル耐火物で用いられるものと同様で、一例として以下の例が挙げられる。まず、アルミナ、カーボンおよびマグネシアを含むキャスタブル耐火物では、電融アルミナまたは焼結アルミナが39質量%以上85質量%以下、仮焼アルミナが2質量%以上20質量%以下、カーボンが1質量%以上10質量%以下、マグネシアが5質量%以上10質量%以下、分散剤が0.05質量%以上2.5質量%以下である。また、アルミナ、カーボンおよびスピネルを含むキャスタブル耐火物では、アルミナが12質量%以上73質量%以下、仮焼アルミナが2質量%以上20質量%以下、カーボンが1質量%以上10質量%以下、スピネルが17質量%以上37質量%以下、分散剤が0.05質量%以上2.5質量%以下である。
【0020】
骨材のアルミナの一部に、粒径が細かい仮焼アルミナを使用することで、ストロンチウムアルミネートを含有するセメントを使用する際に、特に冬場など気温が低い場合において、施工後1日経過した時点での強度の向上が期待でき、好適である。
【実施例0021】
<実施例1>
以下の表1に、アルミナ-マグネシア-カーボンキャスタブル耐火物に、ストロンチウムアルミネートを含有するセメント(以下、ストロンチウムセメントという)を適用した本発明例1~7と比較例3、4、および、アルミナセメントを適用した比較例2、さらに、アルミナ-マグネシアキャスタブル耐火物に、アルミナセメントを適用した比較例1を示す。
【0022】
本発明例1~4は、いずれも鱗状黒鉛5質量%の場合であって、本発明例1はストロンチウムセメント7質量%、本発明例2はストロンチウムセメント11質量%、本発明例3はストロンチウムセメント14質量%、本発明例4はストロンチウムセメント20質量%を使用したアルミナ-マグネシア-カーボンキャスタブル耐火物である。本発明例5、本発明例6、本発明例7は、いずれもストロンチウムセメント7質量%の場合であって、本発明例5は鱗状黒鉛1質量%、本発明例6は鱗状黒鉛10質量%、本発明例7はピッチ2.5質量%とカーボンブラック2.5質量%を使用したアルミナ-マグネシア-カーボンキャスタブル耐火物である。
【0023】
比較例1は、アルミナセメント7質量%を使用したアルミナ-マグネシアキャスタブル耐火物である。比較例2は、アルミナセメント7質量%を使用したアルミナ-マグネシア-カーボンキャスタブル耐火物である。比較例3は、ストロンチウムセメント量が本発明範囲より少ない6質量%を使用したアルミナ-マグネシア-カーボンキャスタブル耐火物である。比較例4は、ストロンチウムセメント量が本発明例より多い21質量%であって、CaO含有量が本発明範囲より多いアルミナ-マグネシア-カーボンキャスタブル耐火物である。
【0024】
各原料を表1に従い、鱗状黒鉛、ピッチ、カーボンブラックのみ別袋にして2.5kgになるように秤量、配合した後、粉体、液体とも5℃になっている冷蔵庫で1晩保存した。翌日、冷蔵庫から取り出して、鱗状黒鉛、ピッチ、カーボンブラック以外の原料を万能型ミキサーに入れ、1分間撹拌後に前記液体を入れ、2分間撹拌後、鱗状黒鉛、ピッチ、カーボンブラックを入れてさらに1分間撹拌した。その後、40×40×160mmの金型に流し込み、テーブル状バイブレーターで30秒加振した後、5℃になっている冷蔵庫に保管した。1日後に冷蔵庫から取り出し、脱型してJIS R 2553に従い、万能試験機を用いて曲げ試験を行った。曲げ試験の結果が0.8MPa以上あれば、冬季でも翌日に脱枠可能と判断する。
【0025】
別途、各原料を表1に従い、鱗状黒鉛、ピッチ、カーボンブラックのみ別袋にして2.5kgになるように秤量、配合した後、鱗状黒鉛、ピッチ、カーボンブラック以外の原料を万能型ミキサーに入れて1分間撹拌し、液体を入れて2分間撹拌後、鱗状黒鉛、ピッチ、カーボンブラックを入れてさらに1分間撹拌した。熱間曲げ試験用は30×30×120mmの金型に流し込み、スラグ侵食試験用は40×40×40mmの金型に流し込んだ。型枠に流し込んだ後はテーブル状バイブレーターで30秒加振した。20℃で1日養生後に脱型した。
【0026】
30×30×120mmのサンプルは、110℃×24時間乾燥した後、比較例1以外のサンプルは炭化珪素製の容器にコークスブリーズと共に入れて、比較例1のサンプルは容器に入れずに1400℃×3時間電気炉で熱処理を行い、1400℃に制御された電気炉内にコークスブリーズと共に入れてクロスヘッド下降速度0.5mm/分で熱間曲げ試験を行った。
【0027】
40×40×40mmのサンプルは、110℃×24時間乾燥した後、1650℃×1時間、電気炉で窒素ガスを流しながら熱処理を行った。サンプル上部にφ20×15mm穴をあけ、その穴の中にFe2O3=0.9質量%、SiO2=5.0質量%、Al2O3=13.2質量%、CaCO3=77.2質量%、MgO=3.8質量%に調整した試薬を7g詰めて、再度1650℃×1時間、電気炉で窒素ガスを流しながら熱処理を行った。冷却後に試験前後の穴の直径の寸法変化を測定し、溶損厚みを求め、比較例1を100として規格化し、溶損指数とした。結果を以下の表1に示す。
【0028】
【0029】
表1の結果から以下のことがわかる。本発明例1~7は、いずれも5℃×1日養生後の曲げ強度が0.8MPa以上となり、ストロンチウムセメントを11質量%以上使用した本発明例2~4は、アルミナセメントを7質量%使用した比較例1および2より高強度となった。ストロンチウムセメントを6質量%使用した比較例3は、5℃×1日養生後の曲げ強度が0.8MPa未満となった。
【0030】
鱗状黒鉛5質量%、アルミナセメント7質量%を使用した比較例2は、1400℃×3時間熱処理後に膨張して亀裂が発生し、熱処理後の特性を評価することが出来なかったが、本発明例1~7は、いずれもアルミナセメント7質量%を使用した比較例1より1400℃×3時間熱処理後の線変化率が小さくなった。
【0031】
本発明例1~7は、いずれもアルミナセメント7質量%を使用した比較例1と比べて1400℃熱間曲げ強度が大きくなった。また、CaO分が少ないため、溶損指数が比較例1と比べて同等以下となり、耐食性が同等以上となった。
【0032】
ストロンチウムセメント量が本発明例より多く、CaO分が多い比較例4では、CaOの多さと施工に必要な水量が8.8質量%と多いため、溶損指数が比較例1より大きくなり、耐食性が劣った。
【0033】
<実施例2>
以下の表2に、アルミナ-スピネル-カーボンキャスタブル耐火物に、ストロンチウムセメントを適用した本発明例11~17と比較例13、14、および、アルミナセメントを適用した比較例12、さらに、アルミナ-スピネルキャスタブル耐火物に、アルミナセメントを適用した比較例11を示す。
【0034】
本発明例11~14は、いずれも鱗状黒鉛3質量%の場合であって、本発明例11はストロンチウムセメント7質量%、本発明例12はストロンチウムセメント11質量%、本発明例13はストロンチウムセメント14質量%、本発明例14はストロンチウムセメント20質量%を使用したアルミナ-スピネル-カーボンキャスタブル耐火物である。本発明例15~17は、いずれもストロンチウムセメント7質量%の場合であって、本発明例15は鱗状黒鉛1質量%、本発明例16は鱗状黒鉛10質量%、本発明例17はピッチ1.5質量%とカーボンブラック1.5質量%を使用したアルミナ-スピネル-カーボンキャスタブル耐火物である。
【0035】
比較例11は、アルミナセメント7質量%を使用したアルミナ-スピネルキャスタブル耐火物である。比較例12は、アルミナセメント7質量%を使用したアルミナ-スピネル-カーボンキャスタブル耐火物である。比較例13は、ストロンチウムセメント量が本発明範囲より少ない6質量%を使用したアルミナ-スピネル-カーボンキャスタブル耐火物である。比較例14は、ストロンチウムセメント量が本発明例より多い21質量%であって、CaO分が本発明範囲より多いアルミナ-スピネル-カーボンキャスタブル耐火物である。
【0036】
各原料を使用して、実施例1と同様にサンプルを作製し、作製したサンプルを評価した。結果を以下の表2に示す。
【0037】
【0038】
表2の結果から以下のことがわかる。本発明例11~17は、いずれも5℃×1日養生後の曲げ強度が0.8MPa以上となり、ストロンチウムセメントを11質量%以上使用した本発明例12~14は、アルミナセメント7質量%を使用した比較例11および12より高強度となった。ストロンチウムセメントを6質量%使用した比較例12は、5℃×1日養生後の曲げ強度が0.8MPa未満となった。
【0039】
鱗状黒鉛3質量%、アルミナセメント7質量%を含有する比較例12は、1400℃×3時間熱処理後に膨張し、施工体に亀裂が発生したが、本発明例11~17は、いずれもアルミナセメント7質量%を含有する比較例11と同等の線変化率となり、亀裂は発生しなかった。
【0040】
本発明例11~17は、いずれもアルミナセメント7質量%を使用した比較例11と比べて1400℃熱間曲げ強度が大きくなった。また、CaO分が少ないため溶損指数が比較例11と比べて同等以下となり、耐食性が同等以上であった。
【0041】
ストロンチウムセメント量が本発明例より多く、CaO分が多い比較例14では、CaOの多さと施工に必要な水量が8.5質量%と多いため、溶損指数が比較例11より大きくなり、耐食性が劣った。
【0042】
<実施例3>
本発明例12のアルミナ-スピネル-カーボンキャスタブル耐火物を、容量300tの溶鋼鍋の敷部に11.5tを流し込み施工した。また、比較例1のアルミナ-マグネシアキャスタブル耐火物を、別の300t溶鋼鍋の敷部に12t流し込み施工した。いずれも1日後に鋼浴部にアルミナ-マグネシアキャスタブル耐火物を流し込み、スラグライン部にマグネシア-カーボンれんがを積んだ。その後、どちらの溶鋼鍋も同じ条件で乾燥・予熱して溶鋼を受鋼した。本発明例12の方が施工量が少ないのは、黒鉛のかさ比重がアルミナより小さいことから、アルミナ-スピネル-カーボンキャスタブル耐火物の方がアルミナ-マグネシアキャスタブル耐火物よりかさ比重が小さくなるためである。比較例1では110回使用後に補修を行ったのに対し、本発明例では132回使用することが出来た。
【0043】
【0044】
上述した実施例から明らかなように、本発明に係るキャスタブル耐火物は、高い熱間強度と優れた耐食性を得ることができ、施工体に亀裂が生じにくい。そのため、本発明に係るキャスタブル耐火物を内張耐火物として用いた溶鋼鍋は、高熱の下で使用されても高い耐用性を有する。
本発明に係るキャスタブル耐火物は、上記の実施例に限定されるものではなく、本発明の範囲において種々の応用を加えることが可能であり、製鉄所内で使用されるキャスタブル耐火物全てにおいて応用が可能である。