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特開2022-65418活性エネルギー線硬化型塗料組成物、硬化塗膜及び被覆物
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022065418
(43)【公開日】2022-04-27
(54)【発明の名称】活性エネルギー線硬化型塗料組成物、硬化塗膜及び被覆物
(51)【国際特許分類】
   C09D 4/02 20060101AFI20220420BHJP
   C09D 175/14 20060101ALI20220420BHJP
   C09D 167/06 20060101ALI20220420BHJP
   C09D 163/10 20060101ALI20220420BHJP
   C08F 290/00 20060101ALI20220420BHJP
   C08F 220/10 20060101ALI20220420BHJP
【FI】
C09D4/02
C09D175/14
C09D167/06
C09D163/10
C08F290/00
C08F220/10
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020173996
(22)【出願日】2020-10-15
(71)【出願人】
【識別番号】592019589
【氏名又は名称】ダイセル・オルネクス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002239
【氏名又は名称】弁理士法人G-chemical
(72)【発明者】
【氏名】野沢 駿友
【テーマコード(参考)】
4J038
4J100
4J127
【Fターム(参考)】
4J038DB371
4J038DD181
4J038DG031
4J038DG261
4J038DG321
4J038FA121
4J038FA211
4J038FA251
4J038FA261
4J038FA281
4J038GA01
4J038KA06
4J038NA12
4J038PA17
4J038PC08
4J100AL08Q
4J100AL62P
4J100AL63P
4J100AL66P
4J100AL66Q
4J100AL67P
4J100BA02P
4J100BA03P
4J100BA08P
4J100BA15P
4J100BA20P
4J100BA39P
4J100BA65Q
4J100BC12P
4J100BC75P
4J100CA04
4J100FA01
4J100JA01
4J127AA03
4J127BB031
4J127BB041
4J127BB051
4J127BB221
4J127BC151
4J127BD061
4J127BD141
4J127BD171
4J127BD411
4J127BG181
4J127BG18Y
4J127BG271
4J127BG27Y
4J127CB151
4J127CB281
4J127CC331
4J127FA08
(57)【要約】
【課題】
様々な性能の(メタ)アクリレート系樹脂を形成できる多官能(メタ)アクリレート化合物を使用することができ、メラミン樹脂から形成された成形品に対して優れた密着性を示す硬化塗膜となる活性エネルギー線硬化型塗料組成物を提供する。
【解決手段】
本開示は、多官能(メタ)アクリレート化合物である成分(A)と、
リン酸基変性(メタ)アクリレートである成分(B)とを含む活性エネルギー線硬化型塗料組成物であり、
前記成分(B)の含有量が、成分(A)100重量部に対して、1.0~7.0重量部である、活性エネルギー線硬化型塗料組成物を提供する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
多官能(メタ)アクリレート化合物である成分(A)と、
リン酸基変性(メタ)アクリレートである成分(B)とを含む活性エネルギー線硬化型塗料組成物であり、
前記成分(B)の含有量が、前記成分(A)100重量部に対して、1.0~7.0重量部である、活性エネルギー線硬化型塗料組成物。
【請求項2】
前記成分(A)が、多官能(メタ)アクリレートモノマーを含む、請求項1に記載の活性エネルギー線硬化型塗料組成物。
【請求項3】
前記成分(A)が、(メタ)アクリレートオリゴマーを含み、前記(メタ)アクリレートオリゴマーが、ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマー、ポリエステル(メタ)アクリレートオリゴマー及びエポキシ(メタ)アクリレートオリゴマーから選択される少なくとも1種を含む、請求項1に記載の活性エネルギー線硬化型塗料組成物。
【請求項4】
前記成分(A)が、多官能(メタ)アクリレートポリマーを含む、請求項1に記載の活性エネルギー線硬化型塗料組成物。
【請求項5】
更に、光重合開始剤を含む、請求項1~4の何れか1項に記載の活性エネルギー線硬化型塗料組成物。
【請求項6】
更に、揮発性有機溶剤及び/又は反応性希釈剤を、前記成分(A)及び前記成分(B)の合計100重量部に対して、1~1000重量部含む、請求項1~5の何れか1項に記載の活性エネルギー線硬化型塗料組成物。
【請求項7】
請求項1~6の何れか1項に記載の活性エネルギー線硬化型塗料組成物を硬化した硬化塗膜。
【請求項8】
請求項7に記載の硬化塗膜により、メラミン樹脂から形成された成形品が被覆された、被覆物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、活性エネルギー線硬化型塗料組成物、硬化塗膜及び被覆物に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、種々の骨格構造を組み合わせて有することにより、硬度、柔軟性、強靭性、耐溶剤性など、様々な性能を実現できる硬化性(メタ)アクリレート系樹脂が、成型品の表面を保護するコーティング剤として広く用いられている。
【0003】
一方、メラミン樹脂は、耐熱性、耐水性、耐候性あるいは電気絶縁性といった特性に優れることから、建設材料(化粧板等)、日用品(食器等)や電気機器部品(接続器、転換器、配電盤、絶縁碍子等)などの成形品の材料として広く使用されている。近年、耐擦傷性や耐薬品性のさらなる向上が求められており、これらの表面を、硬化性(メタ)アクリレート系樹脂によって被覆することが試みられている。しかし、硬化性(メタ)アクリレート系樹脂による塗膜は、メラミン樹脂に対して密着性に乏しいため、プライマー層や接着剤層を設けて密着性を改善する必要があった。
【0004】
プライマー層や接着剤層を設けずにメラミン樹脂成形品との密着性を確保する技術として、例えば、特許文献1には、ラジカル反応性基を2つ含むウレタンアクリレート樹脂又はアクリル樹脂と、ラジカル反応性基を6つ以上含むウレタンアクリレート樹脂又はアクリル樹脂とを特定の割合で含有する樹脂組成物の硬化物からなる層と、メラミン樹脂層とを備える化粧板が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2011-094132号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、特許文献1の化粧板は、特定のウレタンアクリレート樹脂又はアクリル樹脂を用いた樹脂組成物においてのみ密着性を実現するものであり、硬度、柔軟性、強靭性、耐溶剤性などの様々な性能について所望の組合せとなるように調整しようとすると選びうるウレタンアクリレート樹脂又はアクリル樹脂の種類に制限があった。
【0007】
従って、本開示の目的は、様々な性能の(メタ)アクリレート系樹脂を形成できる多官能(メタ)アクリレート化合物を使用することができ、メラミン樹脂から形成された成形品に対して優れた密着性を示す硬化塗膜となる、活性エネルギー線硬化型塗料組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本開示の発明者は、上記目的を達成するために鋭意検討した結果、多官能(メタ)アクリレート化合物である成分(A)と、リン酸基変性(メタ)アクリレートである成分(B)とを含む組成物において、メラミン樹脂から形成された成形品に対する優れた密着性を示す硬化塗膜が得られることを見出した。
【0009】
すなわち、本開示は、多官能(メタ)アクリレート化合物である成分(A)と、リン酸基変性(メタ)アクリレートである成分(B)とを含む活性エネルギー線硬化型塗料組成物であり、前記成分(B)の含有量が、前記成分(A)100重量部に対して、1.0~7.0重量部である、活性エネルギー線硬化型塗料組成物を提供する。
【0010】
前記成分(A)は、多官能(メタ)アクリレートモノマーを含むことが好ましい。
【0011】
前記成分(A)は、(メタ)アクリレートオリゴマーを含み、前記(メタ)アクリレートオリゴマーは、ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマー、ポリエステル(メタ)アクリレートオリゴマー及びエポキシ(メタ)アクリレートオリゴマーから選択される少なくとも1種を含むことが好ましい。
【0012】
前記成分(A)は、多官能(メタ)アクリレートポリマーを含むことが好ましい。
【0013】
前記活性エネルギー線硬化型塗料組成物は、光重合開始剤を含んでいてもよい。
【0014】
前記活性エネルギー線硬化型塗料組成物は、揮発性有機溶剤を、前記成分(A)及び前記成分(B)の合計100重量部に対して、1~1000重量部含んでいてもよい。
【0015】
本開示は、また、前記活性エネルギー線硬化型塗料組成物を硬化した硬化塗膜を提供する。
【0016】
本開示は、また、前記硬化塗膜により、メラミン樹脂から形成された成形品が被覆された被覆物を提供する。
【発明の効果】
【0017】
本開示の活性エネルギー線硬化型塗料組成物は上記構成を有するため、様々な性能の(メタ)アクリレート系樹脂を形成できる多官能(メタ)アクリレート化合物を使用することができ、メラミン樹脂から形成された成形品に対して優れた密着性示す硬化塗膜を形成することができる。
【発明を実施するための形態】
【0018】
[活性エネルギー線硬化型塗料組成物]
本開示の活性エネルギー線硬化型塗料組成物は、多官能(メタ)アクリレートである成分(A)と、リン酸基変性(メタ)アクリレートである成分(B)とを含む活性エネルギー線硬化型塗料組成物であり、上記成分(B)の含有量が、上記成分(A)100重量部に対して、1.0~7.0重量部である、活性エネルギー線硬化型塗料組成物である。ここで、「(メタ)アクリレート」とは「アクリレート又はメタクリレート」を意味する。
【0019】
<多官能(メタ)アクリレート化合物(成分(A))>
本願に係る多官能(メタ)アクリレート化合物は、多官能(メタ)アクリレートモノマー、多官能(メタ)アクリレートオリゴマー及び多官能(メタ)アクリレートポリマーから選択される少なくとも1種であることが好ましい。
【0020】
(多官能(メタ)アクリレートモノマー)
本開示に係る多官能(メタ)アクリレートモノマーは、2以上の(メタ)アクリロイル基を有する重合性モノマーである。多官能(メタ)アクリレートモノマーの(メタ)アクリロイル基の数は2~6が好ましく、より好ましくは2~4である。
【0021】
上記多官能(メタ)アクリレートモノマーの分子量は、200~600であることが好ましく、より好ましくは200~500、更に好ましくは400である。
【0022】
上記多官能(メタ)アクリレートモノマーのうち、2官能(メタ)アクリレートモノマーの具体例としては、例えば、(ポリ)エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングルコールジ(メタ)アクリレート、(ポリ)プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,4-ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、4,6-ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、1,9-ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、1,10-デカンジオールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジメタクリレート、3-メチル-1,5-ペンタンジオールジアクリレート、2-ヒドロキシ-3-アクリロイロキシプロピルメタクリレート、ジメチロールトリシクロデカンジアクリレート、ジシクロペンタニルジアクリレートなどが挙げられる。
【0023】
上記多官能(メタ)アクリレートモノマーのうち、3官能(メタ)アクリレートモノマーの具体例としては、例えば、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、エチレンオキサイド変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、プロピレンオキサイド変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、アルキル変性ジペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、トリス(2-アクリロキシエチル)イソシアヌレート、ε-カプロラクトン変性トリス(2-アクリロキシエチル)イソシアヌレートなどが挙げられる。
【0024】
上記多官能(メタ)アクリレートモノマーのうち、4官能(メタ)アクリレートモノマーの具体例としては、例えば、トリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、ペンタエリスルトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、アルキル変性ジペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレートなどが挙げられる。
【0025】
上記多官能(メタ)アクリレートモノマーのうち、5官能(メタ)アクリレートモノマーの具体例としては、例えば、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、アルキル変性ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレートなどが挙げられる。
【0026】
上記多官能(メタ)アクリレートモノマーのうち、6官能(メタ)アクリレートモノマーの具体例としては、例えば、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレートなどが挙げられる。
【0027】
上記多官能(メタ)アクリレートモノマーは、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0028】
(多官能(メタ)アクリレートオリゴマー)
本開示に係る多官能(メタ)アクリレートオリゴマーは、分子中に2以上の(メタ)アクリロイル基(官能基)を有する。上記多官能(メタ)アクリレートオリゴマーは、上記多官能(メタ)アクリレートモノマーが結合したものであってもよいし、ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマー、ポリエステル(メタ)アクリレートオリゴマー、エポキシ(メタ)アクリレートオリゴマー、ポリエーテル(メタ)アクリレートオリゴマー等であってもよい。これらの中でも、均一な塗布膜の形成が容易である点から、ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマー、ポリエステル(メタ)アクリレートオリゴマー、エポキシ(メタ)アクリレートオリゴマーを用いることが好ましい。
【0029】
多官能(メタ)アクリレートオリゴマーの重量平均分子量は、GPC法により測定したポリスチレン換算の値において、400以上9,000未満が好ましく、より好ましくは450~7,500、更に好ましくは500~5,000、特に好ましくは600~3,500、最も好ましくは700~2,000である。
【0030】
上記ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマーは、分子内にポリウレタン結合及び2以上の(メタ)アクリロイル基(官能基)を有する化合物であり、例えば、有機イソシアネート、水酸基含有(メタ)アクリル酸エステル及び任意の多価アルコールによる付加反応生成物等が挙げられる。
【0031】
上記有機イソシアネートとしては、例えば、ブタンジイソシアネート、ペンタンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート等の脂肪族イソシアネート;シクロヘキシルイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、水素化ジフェニルメタンジイソシアネート等の脂環式イソシアネート;トリレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート等の芳香族イソシアネート等が挙げられる。
【0032】
上記水酸基含有(メタ)アクリル酸エステルとしては、例えば、(メタ)アクリル酸2-ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸2-ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸3-ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸2-ヒドロキシブチル、(メタ)アクリル酸3-ヒドロキシブチル、(メタ)アクリル酸4-ヒドロキシブチル、(メタ)アクリル酸2,3-ヒドロキシプロピル等が挙げられる。
【0033】
上記多価アルコールとしては、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、ネオペンチルグリコール、ペンタンジオール、ブタンジオール等が挙げられる。
【0034】
上記ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマーの市販品としては、例えば、「EBECRYL 230」、「EBECRYL 1290」(以上、ダイセル・オルネクス(株)製)、「CN 929」、「CN 964」(以上、サートマー社製)、「紫光UV-1700B」、「紫光UV-3000B」、「紫光UV-7000B」(以上、三菱ケミカル(株)製)等が挙げられる。
【0035】
上記ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマーの有する(メタ)アクリロイル基(官能基)の数は、2~12が好ましく、より好ましくは3~10、更に好ましくは4~8である。
【0036】
また、上記ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマーの硬化物の引張強度(破断強度)は、本開示の硬化塗膜が密着性に優れるものとなる傾向がある点から、5MPa以上が好ましく、より好ましくは20MPa以上、更に好ましくは40MPa以上である。引張強度(破断強度)の上限は、例えば100MPa、好ましくは70MPaである。引張強度は、例えば、ガラス板上に流延塗布し照射量800mJ/cm2で硬化させた硬化物(長さ7cm、幅1cm、厚み100μm)についてチャック間距離2cm、引張速度200mm/sとして測定することができる。
【0037】
上記ポリエステル(メタ)アクリレートオリゴマーは、分子内にエステル結合及び2以上の(メタ)アクリロイル基(官能基)を有する化合物であり、例えば、ポリエステルポリオールの(メタ)アクリレート化物等が挙げられる。上記(メタ)アクリレート化物は、例えば、多塩基酸と多価アルコールを重縮合して得られるポリエステルポリオールの主鎖末端、あるいは鎖中の水酸基と、(メタ)アクリル酸及び/又はカルボキシル基含有(メタ)アクリル酸エステルとのエステル化反応により得ることができる。
【0038】
上記多塩基酸としては、例えば、シュウ酸、コハク酸、マロン酸、アジピン酸、セバシン酸、アゼライン酸、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、無水コハク酸、無水マレイン酸等の脂肪族系多塩基酸;ダイマー酸、シクロヘキサンジカルボン酸、テトラヒドロ無水フタル酸等の脂環式系多塩基酸;フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、ビフェニルジカルボン酸、トリメリット酸、ピロメリット酸等の芳香族系多塩基酸が挙げられる。
【0039】
上記多価アルコールとしては、例えば、グリコール、ヘキサンジオール、ジエチレングリコール、トリプロピレングリコール、シクロヘキサンジメタノール、ポリオール等が挙げられる。
【0040】
上記カルボキシル基含有(メタ)アクリル酸エステルとしては、例えば、β-カルボキシエチル(メタ)アクリレート、コハク酸モノ(2-アクリロイルオキシエチル)、コハク酸モノ(2-メタクリロイルオキシエチル)、(メタ)アクリル酸ダイマー等が挙げられる。
【0041】
上記ポリエステル(メタ)アクリレートオリゴマーの市販品としては、例えば、「アロニックス M-7100」、「アロニックス M-8560」(以上、東亞合成(株)製)、「EBECRYL 884」、「EBECRYL 1830」(以上、ダイセル・オルネクス(株)製)等が挙げられる。
【0042】
上記ポリエステル(メタ)アクリレートオリゴマーの有する(メタ)アクリロイル基(官能基)の数は、2~10が好ましく、より好ましくは3~9、更に好ましくは4~8である。
【0043】
また、上記ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマーの酸価は、50mgKOH/g以下が好ましく、より好ましくは45mgKOH/g以下、更に好ましくは40mgKOH/g以下である。下限は0.5mgKOH/gが好ましく、より好ましくは5mgKOH/gである。
【0044】
また、上記ポリエステル(メタ)アクリレートオリゴマーの硬化物の引張強度(破断強度)は、本開示の硬化塗膜が密着性に優れるものとなる傾向がある点から、5MPa以上が好ましく、より好ましくは30MPa以上、更に好ましくは50MPa以上である。引張強度(破断強度)の上限は、例えば100MPa、好ましくは90MPaである。引張強度は、例えば、ガラス板上に流延塗布し照射量800mJ/cm2で硬化させた硬化物(長さ7cm、幅1cm、厚み100μm)についてチャック間距離2cm、引張速度200mm/sとして測定することができる。
【0045】
上記エポキシ(メタ)アクリレートオリゴマーとしては、例えば、オキシラン環含有化合物と、(メタ)アクリル酸及び/又はカルボキシル基含有(メタ)アクリル酸エステルとの付加反応生成物等が挙げられる。
【0046】
上記オキシラン環含有化合物としては、例えば、ビスフェノール型エポキシ等の芳香族エポキシ化合物、炭素数2~20のジオールのジグリシジルエーテル等の脂肪族エポキシ化合物、脂環式エポキシ化合物等が挙げられる。
【0047】
上記カルボキシル基含有(メタ)アクリル酸エステルとしては、例えば、(メタ)アクリル酸、β-カルボキシエチル(メタ)アクリレート、コハク酸モノ(2-アクリロイルオキシエチル)、コハク酸モノ(2-メタクリロイルオキシエチル)、(メタ)アクリル酸ダイマー、(メタ)アクリル酸カプロラクタム変性等が挙げられる。
【0048】
上記エポキシ(メタ)アクリレートオリゴマーの具体例としては、例えば、ビスフェノール型エポキシアクリレート、ノボラック型エポキシアクリレート、脂肪族型エポキシアクリレート、グリシジルエステル型アクリレート等が挙げられる。市販品としては、例えば、「EBECRYL 3701」(ダイセル・オルネクス(株)製)等が挙げられる。
【0049】
上記エポキシ(メタ)アクリレートオリゴマーの有する(メタ)アクリロイル基(官能基)の数は、2~10が好ましく、より好ましくは2~7、更に好ましくは2~5である。
【0050】
また、上記エポキシ(メタ)アクリレートオリゴマーの酸価は、15mgKOH/g以下が好ましく、より好ましくは11mgKOH/g以下、更に好ましくは7mgKOH/g以下である。下限は0.5mgKOH/gが好ましく、より好ましくは0.9mgKOH/gである。
【0051】
また、上記ポリエステル(メタ)アクリレートオリゴマーの硬化物の引張強度(破断強度)は、本開示の硬化塗膜が密着性に優れるものとなる傾向がある点から、5MPa以上が好ましく、より好ましくは30MPa以上、更に好ましくは50MPa以上である。引張強度(破断強度)の上限は、例えば100MPa、好ましくは90MPaである。引張強度は、例えば、ガラス板上に流延塗布し照射量800mJ/cm2で硬化させた硬化物(長さ7cm、幅1cm、厚み100μm)についてチャック間距離2cm、引張速度200mm/sとして測定することができる。
【0052】
上記多官能(メタ)アクリレートオリゴマーは、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0053】
(多官能(メタ)アクリレートポリマー)
本開示に係る多官能(メタ)アクリレートポリマーは、分子中に2以上の(メタ)アクリロイル基(官能基)を有する重合体である。
【0054】
上記多官能(メタ)アクリレートポリマーは、側鎖に2以上の(メタ)アクリロイル基(官能基)を有するビニル化合物重合体であり、例えば、(メタ)アクリル酸エステルとオキシラン環含有(メタ)アクリル酸エステルとの反応物に、(メタ)アクリル酸及び/又はカルボキシル基含有(メタ)アクリル酸エステルを付加したもの、あるいは、(メタ)アクリル酸エステル及び/又は(メタ)アクリル酸との反応物にオキシラン環含有(メタ)アクリル酸エステルを付加したもの等が挙げられる。
【0055】
上記(メタ)アクリル酸エステルとしては、例えば、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸n-プロピル、(メタ)アクリル酸i-プロピル、(メタ)アクリル酸n-ブチル、(メタ)アクリル酸s-ブチル、(メタ)アクリル酸n-アミル、(メタ)アクリル酸s-アミル、(メタ)アクリル酸n-ヘキシル、(メタ)アクリル酸2-エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸イソデシル、(メタ)アクリル酸トリデシル、(メタ)アクリル酸オクチル、(メタ)アクリル酸イソオクチル、(メタ)アクリル酸ラウリル、(メタ)アクリル酸ステアリル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸テトラヒドロフルフリル、(メタ)アクリル酸ジシクロペンタニル等の(メタ)アクリル酸アルキルエステル;(メタ)アクリル酸2-メトキシエチル、(メタ)アクリル酸2-エトキシエチル、(メタ)アクリル酸2-フェノキシエチル等の(メタ)アクリル酸アルコキシ含有アルキルエステルが挙げられる。
【0056】
上記カルボキシル基含有(メタ)アクリル酸エステルとしては、例えば、β-カルボキシエチル(メタ)アクリレート、コハク酸モノ(2-アクリロイルオキシエチル)、コハク酸モノ(2-メタクリロイルオキシエチル)、(メタ)アクリル酸ダイマー、(メタ)アクリル酸カプロラクタム変性等が挙げられる。
【0057】
上記オキシラン環含有(メタ)アクリル酸エステルとしては、例えば、(メタ)アクリル酸グリシジル、(メタ)アクリル酸β-メチルグリシジル、(メタ)アクリル酸β-エチルグリシジル、ビニルベンジルグリシジルエーテル、アリルグリシジルエーテル、(メタ)アクリル酸(3,4-エポキシシクロヘキシル)メチル、ビニルシクロヘキセンオキシド等が挙げられる。
【0058】
上記多官能(メタ)アクリレートポリマーの市販品としては、例えば、「EBECRYL 1200」(ダイセル・オルネクス(株)製)等が挙げられる。
【0059】
上記多官能(メタ)アクリレートポリマーの有する(メタ)アクリロイル基(官能基)の数は、2~20が好ましく、より好ましくは2~15、更に好ましくは2~12である。
【0060】
また、上記多官能(メタ)アクリレートポリマーの硬化物の破断伸度は、本開示の硬化塗膜が密着性に優れるものとなる傾向がある点から、2%以上が好ましく、より好ましくは5%以上、更に好ましくは7%以上である。引張伸度の上限は、例えば20%、好ましくは15%である。引張伸度は、例えば、ガラス板上に流延塗布し照射量800mJ/cm2で硬化させた硬化物(長さ7cm、幅1cm、厚み100μm)についてチャック間距離2cm、引張速度200mm/sとして測定することができる。
【0061】
上記多官能(メタ)アクリレートポリマーは、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0062】
上記多官能(メタ)アクリレートポリマーの重量平均分子量は、GPC法により測定したポリスチレン換算の値において、9,000~50,000であることが好ましく、より好ましくは9,500~40,000、更に好ましくは9,800~30,000である。
【0063】
上記多官能(メタ)アクリレートポリマーの市販品としては、例えば、「EBECRYL 1200」(ダイセル・オルネクス(株)製)等が挙げられる。
【0064】
これら多官能(メタ)アクリレートポリマーは、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0065】
上記活性エネルギー線硬化型塗料組成物は、上記多官能(メタ)アクリレート化合物(成分(A))以外に、他の樹脂成分(成分(A)以外の、モノマー、オリゴマー、ポリマー(水酸基含有ビニル化合物重合体等)など)を含有していてもよいが、成分(A)と上記他の樹脂成分との合計100重量%中の成分(A)の含有量は、硬化塗膜について優れた密着性得られやすくなる点から、90重量%以上が好ましく、より好ましくは95重量%以上である。上限は、100重量%が好ましく、98重量%であってもよい。
【0066】
<リン酸基変性(メタ)アクリレート(成分(B))>
上記リン酸変性(メタ)アクリレートは、リン酸エステル基を有する(メタ)アクリレート化合物であり、例えば、1分子中に(メタ)アクリロイル基およびヒドロキシ基を有する(メタ)アクリレート化合物とリン酸との反応物である。本開示の活性エネルギー線硬化型塗料組成物は、リン酸基変性(メタ)アクリレートを含むことにより、メラミン樹脂に対して優れた密着性を示す。
【0067】
1分子中に(メタ)アクリロイル基およびヒドロキシ基を有する化合物は、例えば、(メタ)アクリル酸及び/又は(メタ)アクリル酸エステルと、多価アルコール(アルキレングリコール、グリセリン等)とを、多価アルコールのヒドロキシ基が残る量比で反応させる方法、又は、(メタ)アクリル酸にアルキレンオキシド(エチレンオキシド、プロピレンオキシド等)を付加させる方法で得ることができる。
【0068】
上記リン酸変性(メタ)アクリレートの市販品としては、例えば、「EBECRYL 168」(オルネクス(株)製)、日本化薬(株)製の「KAYAMER PM-2」、「KAYAMER PM-21」、「ライトエステル P-1M」、「ライトエステル P-2M」、「ライトアクリレート P-1A(N)」(以上、共栄社化学(株)製)、「JPA-514」(城北化学工業(株)製)が挙げられる。
【0069】
上記リン酸変性(メタ)アクリレートの有する(メタ)アクリロイル基(官能基)の数は、1~7が好ましく、より好ましくは1~5、更に好ましくは1~3である。また、上記リン酸変性(メタ)アクリレートの酸価は、400mgKOH/g以下が好ましく、より好ましくは350mgKOH/g以下、更に好ましくは300mgKOH/g以下である。下限は50mgKOH/gが好ましく、より好ましくは100mgKOH/gである。
【0070】
上記リン酸変性(メタ)アクリレートの含有量は、上記成分(A)100重量部に対して、1.0~9.0重量部であり、好ましくは1.2~8.0重量部、より好ましくは1.5~7.0重量部である。上記リン酸変性(メタ)アクリレートの使用量が上記範囲内であると、硬化塗膜について優れた密着性が得られやすくなる。
【0071】
<光重合開始剤>
本開示の活性エネルギー線硬化型塗料組成物は、光重合開始剤を含んでいてもよい。光重合開始剤としては、活性エネルギー線の種類や、成分(A)及び成分(B)の種類によって異なり特に限定されないが、公知の光ラジカル重合開始剤や光カチオン重合開始剤を用いることができる。上記光重合開始剤としては、例えば、N,N-ジメチルアミノアセトフェノン、2-ベンジル-2-ジメチルアミノ-1-(4-モルホリノフェニル)-1-ブタノン、2-(ジメチルアミノ)-2-[(4-メチルフェニル)メチル]-[4-(4-モルホリニル)フェニル]-1-ブタノン、2-メチル-1-[4-(メチルチオ)フェニル]-2-モルホリノプロパン-1-オン等のα-アミノアルキルフェノン系光重合開始剤;2-(アセチルオキシイミノメチル)チオキサンテン-9-オン等のオキシムエステル系光重合開始剤;ベンゾフェノン、メチルベンゾフェノン、o-ベンゾイル安息香酸等のベンゾフェノン系光重合開始剤;ジフェニル-(2,4,6-トリメチルベンゾイル)ホスフィンオキシド、エチル-(2,4,6-トリメチルベンゾイル)フェニルホスフィネート等のアシルホスフィンオキシド系光重合開始剤;アセトフェノン、1-ヒドロキシ-シクロヘキシルフェニルケトン等のアセトフェノン系光重合開始剤などが挙げられる。中でも、アシルホスフィンオキシド系光重合開始剤、アセトフェノン系光重合開始剤が好ましい。これらの光重合開始剤は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0072】
上記光開始剤の含有量は、上記成分(A)及び成分(B)の合計100重量部に対して、1.0~10.0重量部が好ましく、より好ましくは2.0~8.0重量部、更に好ましくは3.0~6.0重量部である。光重合開始剤の使用量が上記範囲内であると、硬化不良を引き起こしにくく、硬化物に光重合開始剤由来の臭気が残存しにくくなる。
【0073】
本開示の活性エネルギー線硬化型塗料組成物には、本開示の効果を損ねない範囲において、揮発性有機溶剤、反応性希釈剤である単官能(メタ)アクリレート、種々の添加剤が配合されてもよい。
【0074】
揮発性有機溶剤としては、例えば、1.0気圧における沸点が200℃を超えない有機溶剤(例えば、アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン系溶剤;酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸メトキシエチル等のエステル系溶剤;ジエチルエーテル、エチレングリコールメチルエーテル、ジオキサン等のエーテル系溶剤;トルエン、キシレン等の芳香族溶剤;ペンタン、ヘキサン等の脂肪族系溶剤;塩化メチレン、クロロベンゼン、クロロホルム等のハロゲン系溶剤;イソプロパノール、ブタノール等のアルコール系溶剤等)が挙げられる。
【0075】
上記揮発性有機溶剤の配合量は、上記成分(A)100重量部に対して、例えば、1~1000重量部が好ましく、より好ましくは10~750重量部、更に好ましくは20~600重量部である。
【0076】
反応性希釈剤である単官能(メタ)アクリレートとしては、特に限定されず、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、グリセリンモノ(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニル(メタ)アクリレート、n-ブチル(メタ)アクリレート、β-カルボキシエチル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、オクチル/デシル(メタ)アクリレート、n-オクチル(メタ)アクリレート、イソオクチルアクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、tert-ブチル(メタ)アクリレート、イソデシル(メタ)アクリレート、n-ラウリル(メタ)アクリレート、n-ステアリル(メタ)アクリレート、シクリヘキシル(メタ)アクリレート、その他アルキル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート等が挙げられる。中でも、n-オクチル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、オクチル/デシル(メタ)アクリレートが好ましく、n-オクチル(メタ)アクリレートが特に好ましい。単官能(メタ)アクリレートは、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0077】
上記単官能(メタ)アクリレートの配合量は、上記成分(A)100重量部に対して、例えば、0~10重量部が好ましく、より好ましくは0~5重量部である。
【0078】
その他の添加剤としては、例えば、フィラー、染顔料、表面調整剤(シリコーン系表面調整剤、フッ素系表面調整剤、ポリアクリレート系表面調整剤等、好ましくはポリアクリレート系表面調整剤)、紫外線吸収剤、光安定剤、消泡剤、分散剤、チクソトロピー性付与剤等が挙げられる。これらの添加剤の配合量は、上記成分(A)及び成分(B)の合計100重量部に対して、例えば、0~10重量部が好ましく、より好ましくは0.05~5重量部である。
【0079】
本開示の活性エネルギー線硬化型塗料組成物は、上記成分(A)、上記成分(B)及び必要に応じて上記光重合開始剤、揮発性有機溶剤及び/又は反応性希釈剤、並びに、その他の添加剤を混合して製造することができる。混合の手段としては、公知乃至慣用の手段、例えば、ディゾルバー、ホモジナイザー等の各種ミキサー、ニーダー、ロール、ビーズミル、条好転式攪拌装置等を使用できる。混合の際の温度、回転数等の条件は、特に限定されず、適宜設定可能である。
【0080】
本開示の活性エネルギー線硬化型塗料組成物は、メラミン樹脂からなる成形品(メラミン樹脂により被覆された成形品を含む)の被覆に好適に用いられる。
【0081】
[硬化塗膜]
本開示の硬化塗膜は、上記活性エネルギー線硬化型塗料組成物が硬化した硬化物により形成される。上記効果塗膜は、例えば、本開示の活性エネルギー線硬化型塗料組成物を基材等の対象物に塗布した後、紫外線や電子線等の活性エネルギー線を照射して硬化することにより得ることができる。塗布の方法としては、公知乃至慣用の方法を用いることができ、例えばコーティング法、キャスティング法等が挙げられる。紫外線照射を行う際の光源としては、例えば、高圧水銀灯、超高圧水銀灯、カーボンアーク灯、キセノン灯、メタルハライド灯等が用いられる。紫外線の照射時間は、光源の種類、光源と塗布面との距離、その他の条件等により異なるが、長くとも数十秒であり、通常は数秒である。紫外線照射後は、更に、必要に応じて加熱を行って硬化の完全を図ることもできる。一方、電子線照射の場合は、例えば、50~1000KeVの範囲のエネルギーを持つ電子線を用い、2~5Mradの照射量とすることが好ましい。通常、ランプ出力80~300W/cm程度の照射源が用いられる。また、硬化塗膜の厚さは、通常、1~20μm程度であり、好ましくは3~15μm程度である。
【0082】
本開示の硬化塗膜は、メラミン樹脂からなる成形品の他に、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリカーボネート、ポリメタクリレート、塩化ビニル樹脂等のプラスチック製の物品、上記物品のプラスチック表面に金属蒸着を行ったもの、ガラス、木材、金属板、紙等の各種物品に対しても優れた密着性を示すので、これら他の物品を、被覆する対象物としてもよい。
【0083】
[被覆物]
本開示の被覆物は、メラミン樹脂から形成された成形品の表面が、上記硬化塗膜によって被覆された被覆物である。上記被覆物は、耐熱性、耐水性、耐候性、電気絶縁性、耐擦傷性や耐薬品性等に優れるので、例えば、建設材料(化粧板等)、日用品(食器等)や電気機器部品(接続器、転換器、配電盤、絶縁碍子等)などの用途に好適に用いることができる。
【0084】
以上、本開示の各構成及びそれらの組合せ等は一例であって、本開示の主旨から逸脱しない範囲において、適宜、構成の付加、省略、置換及び変更が可能である。また、本開示は、実施形態によって限定されることはなく、特許請求の範囲の記載によってのみ限定される。
【実施例0085】
以下に、実施例に基づいて本開示をより詳細に説明するが、本開示はこれらの実施例により何ら限定されるものではない。
【0086】
実施例、比較例で用いた多官能(メタ)アクリレート(多官能(メタ)アクリレートモノマー、多官能(メタ)アクリレートオリゴマー、多官能(メタ)アクリレートポリマー)、リン酸基変性(メタ)アクリレート及び光重合開始剤は、以下の通りである。
【0087】
<成分(A)、多官能(メタ)アクリレート>
(多官能(メタ)アクリレートモノマー)
・PETIA:ペンタエリスリトールトリアクリレート(分子量298)と、ペンタエリスリトールテトラアクリレート(分子量352)の混合物、製品名「PETIA」、ダイセル・オルネクス(株)製
【0088】
(多官能(メタ)アクリレートオリゴマー)
・EBECRYL1290:ウレタンアクリレートオリゴマー(重量平均分子量1,000、官能基数6、硬化物の引張強度46MPa)、製品名「EBECRYL 1290」、ダイセル・オルネクス(株)製
・EBECRYL1830:ポリエステルアクリレートオリゴマー(重量平均分子量1,500、官能基数6、酸価30mgKOH/g、硬化物の引張強度77MPa)、製品名「EBECRYL 1830」、ダイセル・オルネクス(株)製
・EBECRYL3701:エポキシアクリレートオリゴマー(重量平均分子量850、官能基数2、酸価5mgKOH/g、硬化物の引張強度79MPa)、製品名「EBECRYL 3701」、ダイセル・オルネクス(株)製
・EBECRYL1200:多官能(メタ)アクリレートポリマー(重量平均分子量10,000、官能基数10、硬化物の引張伸度10%)、製品名「EBECRYL 1200」、ダイセル・オルネクス(株)製
【0089】
<成分(B)、リン酸基変性(メタ)アクリレート>
・EBECRYL168:リン酸基変性メタクリレート(官能基数1.5、酸価290mgKOH/g)、製品名「EBECRYL 168」、ダイセル・オルネクス(株)製
【0090】
<光重合開始剤>
・Omni184:1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、製品名「Omnirad 184」、IGM Resins社製
・OmniTPO:ジフェニル(2,4,6-トリメチルベンゾイル)ホスフィンオキシド、製品名「Omnirad TPO H」、IGM Resins社製
【0091】
以下に、実施例及び比較例として、活性エネルギー線硬化型塗料組成物の調製、密着性の評価方法について説明する。
【0092】
(実施例1)
多官能(メタ)アクリレートとしてウレタンアクリレートオリゴマー(EBECRYL1290)100重量部に、リン酸基変性メタクリレート(EBECRYL168)3.0重量部、光重合開始剤(Omni184)4.1重量部及び光重合開始剤(OmniTPO)1.0重量部、次いで、表面調整剤としてBYK-361N(ポリアクリレート系表面調整剤、製品名「BYK-361N」、ビックケミージャパン(株)製)1.0重量部を撹拌しつつ配合した後に、揮発性有機溶剤として2-ブタノン(MEK)400重量部を配合することによって、活性エネルギー線硬化型塗料組成物を調製した。
【0093】
(実施例2~6、比較例1~7)
表1に示す含有量となるように、多官能(メタ)アクリレート、光重合開始剤(Omni184、OmniTPO)、リン酸基変性メタクリレート(EBECRYL168)、表面調整剤(BYK-361N)、揮発性有機溶剤を配合した以外は、実施例1と同様にして、活性エネルギー線硬化型塗料組成物を調製した。
【0094】
[密着性]
メラミン塗装板(スタンダードテストピース社製、SPCC-SD(カチオン電着、白色塗装)、150mm×70mm)に、実施例1~6及び比較例1~7で得られた活性エネルギー線硬化型塗料組成物をバーコーターを用いて、硬化後の塗膜の厚みが2μmになるように塗布した後、100℃で20秒乾燥し、次いで、紫外線照射機(アイグラフィックス社製、EYE INVERTOR GRANDAGE ECS-4011GX)を用いて、ピーク照度160mW/cm2、積算光量500mJ/cm2の条件で紫外線を照射して硬化させることによって、硬化塗膜により被覆された試験片を作製した。試験片の一方の面にカッターを用いて十文字に切れ込みを入れた後に、十文字上に粘着テープ(ニチバン(株)製)を貼り、これを剥がした。剥がした後の硬化塗膜の付着状態を目視によって観察し、以下のように評価した。結果を表1に示した。
〇:硬化塗膜の剥離がなかった
×:硬化塗膜の剥離があった

【0095】
【表1】

【0096】
実施例1~6に示したように、成分(B)を含有する活性エネルギー線硬化型塗料組成物を硬化した硬化塗膜は、何れについても優れた密着性(〇)を有することが分った。一方、成分(B)を含まない比較例1~5、成分(B)の含有量が少ない比較例6、及び成分(B)の含有量が多い比較例7は、何れも劣った密着性(×)を示すものであった。