(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022065469
(43)【公開日】2022-04-27
(54)【発明の名称】交差連結金具及び施工方法
(51)【国際特許分類】
F16B 7/04 20060101AFI20220420BHJP
F16B 2/06 20060101ALI20220420BHJP
E04B 9/18 20060101ALI20220420BHJP
【FI】
F16B7/04 301H
F16B2/06 A
E04B9/18 F
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020174070
(22)【出願日】2020-10-15
(71)【出願人】
【識別番号】398034319
【氏名又は名称】エヌパット株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100117651
【弁理士】
【氏名又は名称】高垣 泰志
(72)【発明者】
【氏名】生野 真
(72)【発明者】
【氏名】石川 将司
【テーマコード(参考)】
3J022
3J039
【Fターム(参考)】
3J022DA11
3J022EA38
3J022EB12
3J022EB14
3J022EC12
3J022EC22
3J022FB12
3J022GA04
3J022GA12
3J022GA14
3J039AA09
3J039BB01
3J039CA02
3J039GA03
(57)【要約】
【課題】2本のボルト部材の交差部を相互に連結する作業を従来よりも簡単かつ効率的に行えるようにする。
【解決手段】2本のボルト部材9,9の交差部を連結する交差連結金具1は、螺子孔11が形成された保持部材2と、螺子孔11に装着される締結ボルト5と、締結ボルト5の軸部5bの先端に装着されるナット6と、締結ボルト5のボルト頭部5aと保持部材2との間に装着され、2本のボルト部材9,9のうちの一方のボルト部材9を保持部材2との間に挟み込む第1挟着部材3と、ナット6と保持部材2との間に装着され、2本のボルト部材9,9のうちの他方のボルト部材9を保持部材2との間に挟み込む第2挟着部材4と、を備える構成である。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
2本のボルト部材の交差部を連結する交差連結金具であって、
螺子孔が形成された保持部材と、
前記螺子孔に装着される締結ボルトと、
前記締結ボルトの軸部の先端に装着されるナットと、
前記締結ボルトの頭部と前記保持部材との間に装着され、前記2本のボルト部材のうちの一方のボルト部材を前記保持部材との間に挟み込む第1挟着部材と、
前記ナットと前記保持部材との間に装着され、前記2本のボルト部材のうちの他方のボルト部材を前記保持部材との間に挟み込む第2挟着部材と、
を備えることを特徴とする交差連結金具。
【請求項2】
前記保持部材は、板材によって構成されることを特徴とする請求項1に記載の交差連結金具。
【請求項3】
前記螺子孔は、前記保持部材の略中心に形成されることを特徴とする請求項1又は2に記載の交差連結金具。
【請求項4】
前記保持部材の両面には、前記螺子孔の周囲に突起部が形成されることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の交差連結金具。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれかに記載の交差連結金具を用いて2本のボルト部材を連結する施工方法であって、
前記第1挟着部材と前記保持部材との間に前記一方のボルト部材を装着し、前記締結ボルトの頭部を締結することによって前記一方のボルト部材を前記保持部材に固定する第1工程と、
前記第1工程が行われた後に、前記第2挟着部材と前記保持部材との間に前記他方のボルト部材を装着し、前記ナットを締結することによって前記他方のボルト部材を前記保持部材に固定する第2工程と、
を有することを特徴とする施工方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、2本のボルト部材の交差部を連結する交差連結金具及びそれを用いて2本のボルト部材を連結する施工方法に関する。
【背景技術】
【0002】
天井スラブなどの天井構造から垂下する複数の吊りボルトが空気調和機などの天井吊り下げ物を支持する構造において、互いに隣接する2本の吊りボルト間に斜め補強材となるブレースボルトを取り付けることにより、地震発生時における天井吊り下げ物の振動を抑制する補強構造が知られている。この種の補強構造において吊りボルトとブレースボルトとを連結するための金具として、従来、例えば特許文献1に開示されている交差連結金具が知られている。
【0003】
従来の交差連結金具は、第1挟着部材と、第2挟着部材と、ベース部材と、弾性部材と、締結ボルトとを備え、第1挟着部材と第2挟着部材との間にベース部材を配置し、締結ボルトによってそれらを相互に連結すると共に、コイルバネで構成される弾性部材を締結ボルトの軸部に装着することで第1挟着部材と第2挟着部材とがベース部材に近接するような付勢力を作用させる構成である。このような構成によれば、締結ボルトがきつく締め付けられていない非締結状態(緩締め状態)であるときに、例えば、第1挟着部材とベース部材との間に吊りボルトなどのボルト部材が装着されると、弾性部材による付勢力によって第1挟着部材とベース部材との間にボルト部材を挟み込んだ状態で交差連結金具をボルト部材に仮止めすることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、従来の交差連結金具は、第1挟着部材とベース部材との間に吊りボルトを挟み込んだ仮止め状態で、第2挟着部材とベース部材との間にブレースボルトを装着しようとすると、弾性部材の付勢力に抗して第2挟着部材とベース部材との間にブレースボルトを差し込めるだけの隙間を生じさせる必要がある。そのため、弾性部材による付勢力が強い場合には、第2挟着部材とベース部材との間にブレースボルトを装着するのに手間が掛かり、使い勝手が悪いという問題がある。
【0006】
また、従来の交差連結金具は、上記問題を解決するために、ベース部材の一端に傾斜したガイド部を設け、そのガイド部がブレースボルトをベース部材と第2挟着部材との間に誘導する構造を採用している。すなわち、ガイド部は、ベース部材の一端を第2挟着部材から離れる方向に傾斜させることによって形成されており、ブレースボルトの外周面をガイド部に向かって押し付けると、ブレースボルトが第2挟着部材とベース部材との間に進入しようとして第2挟着部材とベース部材との隙間を拡開させ、それによってブレースボルトを第2挟着部材とベース部材との間に誘導する、というものである。しかし、交差連結金具が吊りボルトに対して仮止め状態であるときに、ブレースボルトの外周面をガイド部に向かって押し付けると、交差連結金具が吊りボルトの軸芯周りに回動してしまい、ブレースボルトをベース部材と第2挟着部材との間に装着することができない。
【0007】
つまり、従来の交差連結金具は、第1挟着部材とベース部材との間に一方のボルト部材が仮止めされた状態で他方のボルト部材を第2挟着部材とベース部材との間に装着しなければならないため、他方のボルト部材を簡単に第2挟着部材とベース部材との間に装着することができず、2本のボルト部材を連結するのに多大な時間を要することから、作業効率が悪いという問題がある。
【0008】
さらに、工事現場での作業時間を短縮するためには、事前に工場で吊りボルトを所定長さに切断し、吊りボルトの所定位置に交差連結金具を予め取り付けた状態で工事現場に搬入することが望ましい。しかし、従来の交差連結金具は、仮止め状態で吊りボルトに取り付けられるため、工事現場に搬入して作業を開始するまでに、吊りボルトに対する交差連結金具の取り付け位置がずれてしまったり、交差連結金具が吊りボルトから外れて欠落してしまったりするので、事前に吊りボルトに取り付けておくことができない。
【0009】
そこで本発明は、上記課題を解決するためになされたものであり、従来よりも簡単かつ効率的に取り付け作業を行えるようにして作業時間を短縮できるようにした交差連結金具を提供すると共に、その交差連結金具を用いて2本のボルト部材を連結する施工方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するため、第1に、本発明は、2本のボルト部材の交差部を連結する交差連結金具であって、螺子孔が形成された保持部材と、前記螺子孔に装着される締結ボルトと、前記締結ボルトの軸部の先端に装着されるナットと、前記締結ボルトの頭部と前記保持部材との間に装着され、前記2本のボルト部材のうちの一方のボルト部材を前記保持部材との間に挟み込む第1挟着部材と、前記ナットと前記保持部材との間に装着され、前記2本のボルト部材のうちの他方のボルト部材を前記保持部材との間に挟み込む第2挟着部材と、を備えることを特徴とする構成である。
【0011】
第2に、本発明は、上記第1の構成を有する交差連結金具において、前記保持部材は、板材によって構成されることを特徴とする構成である。
【0012】
第3に、本発明は、上記第1又は第2の構成を有する交差連結金具において、前記螺子孔は、前記保持部材の略中心に形成されることを特徴とする構成である。
【0013】
第4に、本発明は、上記第1乃至第3のいずれかの構成を有する交差連結金具において、前記保持部材の両面には、前記螺子孔の周囲に突起部が形成されることを特徴とする構成である。
【0014】
第5に、本発明は、上記第1乃至第4のいずれかの構成を有する交差連結金具を用いて2本のボルト部材を連結する施工方法であって、前記第1挟着部材と前記保持部材との間に前記一方のボルト部材を装着し、前記締結ボルトの頭部を締結することによって前記一方のボルト部材を前記保持部材に固定する第1工程と、前記第1工程が行われた後に、前記第2挟着部材と前記保持部材との間に前記他方のボルト部材を装着し、前記ナットを締結することによって前記他方のボルト部材を前記保持部材に固定する第2工程と、を有することを特徴とする構成である。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、従来よりも簡単かつ効率的に2本のボルト部材の交差部を相互に連結する作業を行うことができるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図2】交差連結金具の各構成部材を分解した状態を示す斜視図である。
【
図3】交差連結金具の設置態様の一例を示す図である。
【
図4】第1挟着部材又は第2挟着部材の側面図である。
【
図5】保持部材と第1挟着部材との間に1つ目のボルト部材を固定する第1工程を示す図である。
【
図6】交差連結金具がボルト部材である吊りボルトに取り付けられた状態を示す斜視図である。
【
図7】保持部材と第2挟着部材との間に2つ目のボルト部材を固定する第2工程を示す斜視図である。
【
図8】ブレースボルトが固定された状態を上から視た図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の好ましい実施形態について図面を参照しつつ詳細に説明する。尚、以下において参照する各図面では互いに共通する部材に同一符号を付しており、それらについての重複する説明は省略する。
【0018】
図1は、本発明の一実施形態における交差連結金具1を示す斜視図である。
図2は、交差連結金具1の各構成部材を分解した状態を示す斜視図である。
図3は、交差連結金具1の設置態様の一例を示す側面図である。
図1乃至
図3に示す交差連結金具1は、2本のボルト部材9,9の交差部を連結するための金具である。
【0019】
例えば、
図3に示すように、交差連結金具1は、天井スラブなどの天井構造100から垂下する吊りボルト7と、一対の吊りボルト7,7間に斜め方向に配設されるブレースボルト8とが交差する交差部110の連結や、一対のブレースボルト8,8が交差する交差部120の連結に使用される。
【0020】
吊りボルト7は、空気調和機などの天井吊り下げ物150を天井空間に吊り下げた状態で支持するボルト部材9である。例えば天井構造100には、天井吊り下げ物150の四隅の位置に設けられている連結部151に接続可能なように4本の吊りボルト7が取り付けられる。それら4本の吊りボルト7は、それぞれの下端部において天井吊り下げ物150の四隅の連結部151に連結され、天井吊り下げ物150を所定の高さ位置で支持する。
【0021】
ブレースボルト8は、それら4本の吊りボルト7のうち、互いに隣接する2本の吊りボルト7間において斜め方向に配設され、上端部が一方の吊りボルト7の上端近傍位置に連結され、下端部が他方の吊りボルト7の下端近傍位置に連結されるボルト部材9である。ブレースボルト8の配設角度は、天井構造100から天井吊り下げ物150の上面までの寸法に応じて適宜調整される。例えば、水平ラインを0°の基準とすると、天井構造100から天井吊り下げ物150の上面までの寸法が長くなれば、ブレースボルト8の配設角度が大きくなり、反対に、天井構造100から天井吊り下げ物150の上面までの寸法が短くなれば、ブレースボルト8の配設角度が小さくなる。交差連結金具1は、そのような多様な角度で配設されるブレースボルト8を吊りボルト7に連結する。
【0022】
2本の吊りボルト7,7の間には、2本のブレースボルト8,8が互いに交差するように配置される。そのため、交差連結金具1は、1本の吊りボルト7の上部と下部との互いに異なる高さ位置となる2箇所に取り付けられ、それぞれの高さ位置でブレースボルト8を吊りボルト7に連結する。また、交差連結金具1は、2本のブレースボルト8,8が交差する交差部120において2本のブレースボルト8,8を相互に連結する。
【0023】
この交差連結金具1は、
図1及び
図2に示すように、保持部材2と、第1挟着部材3と、第2挟着部材4と、締結ボルト5と、ナット6とを備えている。保持部材2は、例えば円盤状に形成された金属製の板材10によって構成され、その中心位置に、雌螺子12が形成された螺子孔11を有している。第1挟着部材3は、保持部材2の一方の面に対向して配置され、保持部材2との間に第1のボルト部材9を挟み込んで固定する。第2挟着部材4は、第1挟着部材3と同一形状を有する部材であり、保持部材2の他方の面に対向して配置され、保持部材2との間に第2のボルト部材9を挟み込んで固定する。締結ボルト5は、第1挟着部材3と、保持部材2と、第2挟着部材4とを相互に締結する締結部材であり、例えば六角状のボルト頭部5aと、外周面に雄螺子が形成された軸部5bとを有している。この締結ボルト5の軸部5bに形成されている雄螺子は、保持部材2の螺子孔11に螺合する。ナット6は、締結ボルト5の軸部5bに形成されている雄螺子に螺合する六角ナットであり、軸部5bの先端に装着される。
【0024】
第1挟着部材3は、板状の保持部材2と平行な状態に配置される平板部20と、その平板部20の周縁部を略直角に折り曲げて形成される壁部21とを有している。平板部20の略中央には、締結ボルト5の軸部5bよりも大径の孔22が形成されている。壁部21は、平板部20の周縁部の一部を除き、平板部20の周縁部から保持部材2に向って立設する。この壁部21は、第1挟着部材3の左右両側に互いに平行な一対の壁部21a,21aを有している。そして第1挟着部材3は、互いに平行な一対の壁部21a,21aに、ボルト部材9を保持する保持部23を有している。この保持部23は、例えば、壁部21の先端(保持部材2に向かって突き出た先端)を平板部20に向かって切り欠いた切欠部によって形成される。また、保持部23の上端は、平板部20に形成された孔22よりも下側で、且つ、孔22の下端位置に近接した位置に形成される。これにより、保持部23によって保持されるボルト部材9と締結ボルト5の軸部5bとを互いに近接させることが可能であり、締結ボルト5の軸部5bの軸方向に作用する押圧力のロスを低減することができる。また、第2挟着部材4についても同様である。
【0025】
図4は、第1挟着部材3又は第2挟着部材4の側面図である。
図4に示すように、一対の壁部21a,21aに形成される保持部23の幅D1は、連結対象であるボルト部材9の直径よりも大きく形成される。また、保持部23の深さD2は、連結対象であるボルト部材9の直径よりも小さく形成される。更に、第1挟着部材3又は第2挟着部材4において孔22が形成された位置から遠い側(下側)の壁部21aの突出量D3は、保持部23の深さD2よりも小さく形成される。
【0026】
上記のように構成される第1挟着部材3は、壁部21の先端が保持部材2に向く姿勢で保持部材2の一方の面に対向するように配置される。また、第2挟着部材4は、壁部21の先端が保持部材2に向く姿勢で保持部材2の他方の面に対向するように配置される。
【0027】
保持部材2は、螺子孔11の中心軸が第1挟着部材3及び第2挟着部材4の孔22の中心軸に一致するように配置され、第1挟着部材3及び第2挟着部材4のそれぞれの保持部23に保持されるボルト部材9の外周面に当接できる程度の外形サイズを有している。例えば、保持部材2は、円盤状の外形の内側に第1挟着部材3及び第2挟着部材4のそれぞれがすっぽりと収まる程度の大きさを有していても構わない。ただし、保持部材2のサイズが大きくなると、交差連結金具1が大型化すると共に重量が増すことから取り扱いが困難になる。そのため、保持部材2のサイズは、上述した範囲で可能な限り小さくすることが好ましい。尚、本実施形態では、一例として保持部材2が円盤状の板材10として形成される場合を示しているが、これに限られるものではなく、矩形状の板材として形成されるものであっても良い。
【0028】
締結ボルト5は、軸部5bが第1挟着部材3の孔22に挿入されてから保持部材2の螺子孔11に螺合した状態に挿入され、更に第2挟着部材4の孔22に挿入された後、軸部5bの先端にナット6が装着される。これにより、各部材が
図1に示すように組み付けられて交差連結金具1が構成される。このとき、締結ボルト5は、軸部5bの略中央において保持部材2と螺合しており、軸部5bの先端においてナット6と螺合している。尚、本実施形態の交差連結金具1は、例えば
図1に示すように各部材が組み付けられた状態で出荷される。
【0029】
次に、上記構成を有する交差連結金具1を用いて2本のボルト部材9,9を連結する施工方法について説明する。交差連結金具1を用いて2本のボルト部材9,9を相互に連結する手順は、まず2本のボルト部材9,9のうちの一方のボルト部材9を保持部材2と第1挟着部材3との間に固定し、その後、他方のボルト部材9を保持部材2と第2挟着部材4との間に固定する手順となる。
【0030】
図5乃至
図8は、交差連結金具1を用いて2本のボルト部材9,9を連結する手順を示す図である。まず、
図5は、保持部材2と第1挟着部材3との間に一方のボルト部材9を固定する第1工程を示す図である。
図5(a)に示すように、作業者は、締結ボルト5の軸部5bに装着されているナット6を緩め、ボルト頭部5aとナット6との間隔を十分に広げて保持部材2をボルト頭部5aとナット6との略中間位置に配置する。そして第1挟着部材3を軸部5bに沿ってスライドさせ、ボルト頭部5aに近づけると、第1挟着部材3と保持部材2との間隔が開き、第1挟着部材3の壁部21aと保持部材2との間にボルト部材9を挿入可能な空間25が形成される。このとき、従来のような付勢力が第1挟着部材3に働いていないため、作業者は第1挟着部材3を軸部5bに沿ってスムーズに移動させることが可能であり、簡単な操作でボルト部材9を挿入可能な空間25を形成することできる。また、本実施形態の交差連結金具1では、壁部21aの突出量D3が保持部23の深さD2よりも小さく形成されているため、空間25を形成するために必要となる第1挟着部材3のスライド量を小さくすることが可能であり、交差連結金具1を小型化できるという利点がある。
【0031】
そして作業者は、第1挟着部材3の壁部21aと保持部材2との間に形成された空間25を介して矢印F1で示すようにボルト部材9を第1挟着部材3の保持部23に装着する。これにより、
図5(b)に示すように、2本のボルト部材9のうちの一方のボルト部材9が第1挟着部材3の保持部23の内側に収容された状態となる。
【0032】
次に作業者は、締結ボルト5のボルト頭部5aを電動工具などの工具を用いて締め付ける。これにより、締結ボルト5の軸部5bが保持部材2の螺子孔11を螺合進行し、ボルト頭部5aが第1挟着部材3を保持部材2に向けて押圧する。そして締結ボルト5が保持部材2の螺子孔11に対してきつく締め付けられた第1の締結状態になると、
図5(c)に示すように、第1挟着部材3がボルト部材9を保持部材2の一方の面に押し付けた状態となる。つまり、ボルト部材9は、保持部材2と第1挟着部材3との間に挟み込まれた状態で固定される。このとき、第1挟着部材3の保持部23の深さD2がボルト部材9の直径よりも小さいため、第1挟着部材3は保持部材2に接触することはなく、一定の隙間Pが生じる。そのため、第1挟着部材3は、締結ボルト5による軸力をボルト部材9に対する押圧力として作用させ、保持部材2との間にボルト部材9を強固に挟着することができる。
【0033】
図6は、上記第1工程によって、交差連結金具1がボルト部材9である吊りボルト7に取り付けられた状態を示す図である。
図6に示すように、保持部材2と第1挟着部材3との間に吊りボルト7が挟着されると、交差連結金具1は、吊りボルト7の外周面に係合した状態に固定される。この状態は、従来のような仮止め状態ではない。すなわち、交差連結金具1は、吊りボルト7の軸方向に対して移動せず、しかも吊りボルト7の軸芯を中心に相対回転しない状態に固定される。そして本実施形態の交差連結金具1は、保持部材2と第1挟着部材3との間に一方のボルト部材9が固定された状態で、保持部材2と第2挟着部材4との間に他方のボルト部材9が固定されることにより、優れた作業性を発揮する。
【0034】
図7は、保持部材2と第2挟着部材4との間に他方のボルト部材9を固定する第2工程を示す図である。保持部材2と第1挟着部材3との間に吊りボルト7が固定された状態において、
図7(a)に示すように、作業者は、第2挟着部材4を軸部5bに沿ってスライドさせ、ナット6に近づけると、第2挟着部材4と保持部材2との間隔が開き、第2挟着部材4の壁部21aと保持部材2との間にボルト部材9であるブレースボルト8を挿入可能な空間を形成することができる。このときも従来のような付勢力が第2挟着部材4に働いていないため、作業者は第2挟着部材4を軸部5bに沿ってスムーズに移動させることが可能であり、簡単な操作でブレースボルト8を挿入可能な空間を保持部材2と第2挟着部材4との間に形成することができる。
【0035】
そして作業者は、保持部材2と第2挟着部材4との間に形成された空間を介して矢印F2で示すようにブレースボルト8を第2挟着部材4の保持部23に装着する。このとき、交差連結金具1は、吊りボルト7に対して姿勢変化しない状態に固定されているため、ブレースボルト8を第2挟着部材4や保持部材2に押し当てたとしても、交差連結金具1が吊りボルト7の軸芯周りに回動することがない。そのため、作業者は、保持部材2と第2挟着部材4との間の空間を介してスムーズにブレースボルト8を第2挟着部材4の保持部23の内側に装着することが可能であり、作業性に優れている。第2挟着部材4の保持部23の内側にブレースボルト8が装着されると、
図7(b)に示す状態となる。
【0036】
次に作業者は、締結ボルト5の軸部5bに装着されているナット6を電動工具などの工具を用いて締め付ける。これにより、ナット6が締結ボルト5の軸部5bに沿って螺合進行し、ナット6が第2挟着部材4を保持部材2に向けて押圧する。そしてナット6が軸部5bに対してきつく締め付けられた第2の締結状態になると、
図7(c)に示すように、第2挟着部材4がブレースボルト8を保持部材2の他方の面に押し付けた状態となる。つまり、ブレースボルト8は、保持部材2と第2挟着部材4との間に挟み込まれた状態で固定される。
【0037】
図8は、
図7(c)と同じ状態を上から視た平面図である。
図8に示すように、保持部材2と第2挟着部材4との間にブレースボルト8が固定されたとき、第2挟着部材4の保持部23の深さD2がブレースボルト8の直径よりも小さいため、第2挟着部材4は保持部材2に接触することはなく、一定の隙間Pが生じる。そのため、ナット6が締め付けられることによる押圧力は第2挟着部材4を介してブレースボルト8に作用し、保持部材2と第2挟着部材4との間にブレースボルト8を強固に挟着することができる。
【0038】
このように本実施形態の交差連結金具1は、先に保持部材2と第1挟着部材3との間に2つのボルト部材9,9のうちの一方のボルト部材9を装着して締結ボルト5を締め付けることにより、ボルト部材9を保持部材2と第1挟着部材3との間に挟み込まれた状態で固定する。その後、保持部材2と第2挟着部材4との間に他方のボルト部材9を装着してナット6を締め付けることにより、交差連結金具1は、2本のボルト部材9,9の交差部を連結した状態に固定することができる。
【0039】
尚、上記とは反対に、先に保持部材2と第2挟着部材4との間に1つ目のボルト部材9を装着してナット6を締め付けてしまうと、次に保持部材2と第1挟着部材3との間に2つ目のボルト部材9を装着して締結ボルト5を締め付けた際にナット6が緩んでしまうことがある。その場合は、再度、ナット6の締め付けが必要となり、作業効率が低下する。そのため、本実施形態の交差連結金具1を使用する場合の最も効率的な施工手順は、上述したように、先に保持部材2と第1挟着部材3との間に1つ目のボルト部材9を装着して締結ボルト5を締め付け、次に保持部材2と第2挟着部材4との間に2つ目のボルト部材9を装着してナット6を締め付けるという手順である。
【0040】
以上のように本実施形態の交差連結金具1は、螺子孔11が形成された保持部材2と、その螺子孔11に装着される締結ボルト5と、締結ボルト5の軸部5bの先端に装着されるナット6と、締結ボルト5のボルト頭部5aと保持部材2との間に装着され、2本のボルト部材9,9のうちの一方のボルト部材9を保持部材2との間に挟み込む第1挟着部材3と、ナット6と保持部材2との間に装着され、2本のボルト部材9,9のうちの他方のボルト部材9を保持部材2との間に挟み込む第2挟着部材4と、を備える構成である。
【0041】
このような構成によれば、保持部材2と第1挟着部材3との間に一方のボルト部材9を装着する際、又は、保持部材2と第2挟着部材との間に他方のボルト部材9を装着する際に、第1挟着部材3又は第2挟着部材4を締結ボルト5の軸部5bに沿ってスライドさせることにより簡単にボルト部材9を差し込むための空間を形成することができる。そのため、保持部材2と第1挟着部材3との間、又は、保持部材2と第2挟着部材4との間に、ボルト部材9を差し込んで装着する際に手間が掛からず、使い勝手が良い。
【0042】
また、上記構成によれば、先に、保持部材2と第1挟着部材3との間に一方のボルト部材9を装着して締結ボルト5を締め付けた締結状態とすることにより、交差連結金具1を一方のボルト部材9に固定することが可能である。そのため、保持部材2と第2挟着部材4との間に他方のボルト部材9を装着する際に、交差連結金具1が一方のボルト部材9の軸芯周りに回動してしまうことを防止することが可能であり、簡単且つ効率的に他方のボルト部材9を保持部材2と第2挟着部材4との間に装着することができる。それ故、本実施形態の交差連結金具1は、2本のボルト部材9,9の交差部を連結する際の作業効率に優れており、従来よりも短時間で施工を完了することができる。特に、
図3に示したように、複数箇所に交差連結金具1を取り付ける必要がある場合には、1つ1つの交差連結金具1を短時間で取り付けることができるため、複数の交差連結金具1の全てを極めて短時間で取り付けることができるという利点がある。
【0043】
さらに、上記構成によれば、事前に工場で1つのボルト部材9を所定長さに切断し、そのボルト部材9の所定位置に交差連結金具1を予め取り付けた状態で工事現場に搬入することができる。すなわち、本実施形態の交差連結金具1は、保持部材2と第1挟着部材3との間にボルト部材9を挟み込んだ状態でボルト部材9の所定位置に予め固定しておくことができるため、工事現場に搬入して作業を開始するまでに、ボルト部材9に対する交差連結金具1の取り付け位置がずれてしまったり、交差連結金具1がボルト部材9から外れて欠落してしまったりする可能性がないため、事前に工場でボルト部材9に取り付けた状態で工事現場に搬入することができるのである。そのため、工事現場における作業は、1つのボルト部材9に予め固定されている交差連結金具1に対してもう1つのボルト部材9を取り付けるだけの作業となり、工事現場における作業時間を短縮することができる。それ故、本実施形態の交差連結金具1は、工事現場における作業効率を著しく改善することができるという利点もある。
【0044】
以上、本発明に関する好ましい実施形態を説明したが、本発明は、上記実施形態において説明したものに限定されるものではない。すなわち、本発明には、上記各実施形態において説明したものに種々の変形例を適用したものの含まれる。
【0045】
例えば、上記実施形態では、保持部材2が板材によって構成される場合を例示した。しかし、保持部材2は必ずしも板材に限られるものではなく、ブロック状の形状であっても構わない。ただし、ブロック状よりも板状の方が保持部材2の厚みを小さくすることが可能であり、交差連結金具1の小型化や軽量化に寄与する。尚、保持部材2がブロック状であっても、上述した螺子孔11は、保持部材2の略中心となる位置に形成されることが好ましい。螺子孔11を保持部材2の略中心となる位置に形成することにより、保持部材2のサイズを小さくできるという利点がある。
【0046】
また、上記実施形態では、円盤状に形成される保持部材2の表裏両面が平坦面である場合を例示した。しかし、保持部材2の両面は平坦面であるものに限られない。例えば、
図9に示すように、保持部材2の両面は、螺子孔11の周囲に突起部15が形成されたものであっても構わない。この突起部15は、連結対象であるボルト部材9の外周面に形成された螺子溝に係合させるためのものである。そのため、
図9に示すように、保持部材2の表裏両面に突起部15を形成することにより、互いに連結されるボルト部材9,9の軸方向の滑りを抑制することが可能であり、2本のボルト部材9,9の交差部をより強固に固定することができるという利点がある。尚、突起部15は、
図9に示すような線状の突起に限らず、粒状の突起であっても良いし、又、鋲状の突起あっても良い。
【0047】
また、上記実施形態では、主として吊りボルト7とブレースボルト8とを連結する態様を例示したが、交差連結金具1による連結対象となるボルト部材9,9は、必ずしも吊りボルト7やブレースボルト8などに限られない。
【符号の説明】
【0048】
1…交差連結金具、2…保持部材、3…第1挟着部材、4…第2挟着部材、5…締結ボルト、5a…ボルト頭部、5b…軸部、6…ナット、7…吊りボルト(ボルト部材)、8…ブレースボルト(ボルト部材)、9…ボルト部材、11…螺子孔、15…突起部。