(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022065483
(43)【公開日】2022-04-27
(54)【発明の名称】コネクタ、コネクタ付き温度センサ及びコネクタ付き延長線
(51)【国際特許分類】
G01K 7/12 20060101AFI20220420BHJP
G01K 7/13 20060101ALI20220420BHJP
G01K 7/02 20210101ALI20220420BHJP
H01R 13/66 20060101ALI20220420BHJP
【FI】
G01K7/12 A
G01K7/13
G01K7/02 A
H01R13/66
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020174094
(22)【出願日】2020-10-15
(71)【出願人】
【識別番号】591124765
【氏名又は名称】ジオマテック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088580
【弁理士】
【氏名又は名称】秋山 敦
(74)【代理人】
【識別番号】100195453
【弁理士】
【氏名又は名称】福士 智恵子
(74)【代理人】
【識別番号】100205501
【弁理士】
【氏名又は名称】角渕 由英
(72)【発明者】
【氏名】宮武 正平
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 和己
【テーマコード(参考)】
2F056
5E021
【Fターム(参考)】
2F056KA03
2F056KA14
2F056KA16
2F056LB05
5E021FB07
5E021FC40
5E021MA12
(57)【要約】
【課題】薄膜熱電対素子に対応可能な交換型のコネクタ、該コネクタ付きの温度センサ、コネクタ付き延長線を提供する。
【解決手段】薄膜熱電対素子50を外部の機器と接続するためのコネクタ1であって、ベース部材10と、カバー部材20と、を備え、ベース部材10は、薄膜熱電対素子50の外部接点52a,53aと接続される電極30と、補正用温度センサ40と、を有し、薄膜熱電対素子50が第1カバー部材21とベース部材10に挟まれることで、外部接点52a,53aが電極30と接続されることにより解決される。
【選択図】
図14
【特許請求の範囲】
【請求項1】
薄膜熱電対素子を外部の機器と接続するためのコネクタであって、
ベース部材と、カバー部材と、を備え、
前記ベース部材は、前記薄膜熱電対素子の外部接点と接続される電極と、補正用温度センサと、を有し、
前記薄膜熱電対素子が前記カバー部材と前記ベース部材に挟まれることで、前記外部接点が前記電極と接続されることを特徴とするコネクタ。
【請求項2】
前記カバー部材は、前記ベース部材に対して回動可能に取り付けられていることを特徴とする請求項1に記載のコネクタ。
【請求項3】
前記ベース部材は、前記外部接点が設けられた前記薄膜熱電対素子の接続端部が載置される載置部を有し、
前記載置部は、前記接続端部と係合する係合部を有していることを特徴とする請求項1又は2に記載のコネクタ。
【請求項4】
前記電極は、丸棒電極であり、
前記ベース部材は、前記載置部に前記丸棒電極を受容する凹溝を備えていることを特徴とする請求項3に記載のコネクタ。
【請求項5】
前記補正用温度センサは、一対の金属線からなる補正用熱電対であり、
前記ベース部材は、前記補正用熱電対を収容する収容凹部と、該収容凹部に設けられた突起部と、を有し、
前記一対の金属線は、前記収容凹部において、前記突起部を囲むように配置されていることを特徴とする請求項4に記載のコネクタ。
【請求項6】
前記凹溝は、前記載置部に近い側が、湾曲した形状であり、前記収容凹部に近い側が、角型形状であることを特徴とする請求項5に記載のコネクタ。
【請求項7】
請求項1乃至6のいずれか一項に記載のコネクタと、
該コネクタに接続された前記薄膜熱電対素子と、を備えることを特徴するコネクタ付き温度センサ。
【請求項8】
請求項1乃至6のいずれか一項に記載のコネクタと、
前記電極に接続された補償導線を有する延長線と、を備えることを特徴とするコネクタ付き延長線。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コネクタ、コネクタ付き温度センサ及びコネクタ付き延長線に関し、より詳細には、薄膜熱電対素子に対応したコネクタ、コネクタ付き温度センサ及びコネクタ付き延長線に関する。
【背景技術】
【0002】
温度測定用に作られた二種類の金属の組み合わせからなる素子は熱電対と称され、ゼーベック効果を利用した温度測定素子として古くから利用されてきた技術である。薄型でフレキシブルな温度センサとして薄膜熱電対がある。薄膜熱電対素子は、耐熱フィルムと導電性薄膜で形成されており、小型で狭く入り組んだ場所の温度を測定することが可能である。
【0003】
特許文献1に記載の測温素子は、交換式ではなく、薄膜熱電対素子とコネクタを1対1で組み立て一体化している。具体的には、特許文献1のコネクタは、導電性薄膜素子を補償導線に圧着するため、基板の導電性薄膜を有しない側に圧着用弾性物を備えており、ネジ等によって端子を圧接し、接着剤で補強することが必要である。つまり、薄膜熱電対素子と補償導線を十分に圧接させるため補助材料が必要となる。
【0004】
薄膜熱電対素子の基端部にコネクタが固定されている場合、薄膜熱電対素子が破損した場合に交換ができなかった。そこで、薄膜熱電対素子のみを交換しながら使用できる交換型薄膜熱電対の開発が望まれていた。
【0005】
特許文献2には、帯状の熱電対を挿入して導通接続するコネクタが開示されている。このコネクタでは、薄膜熱電対素子を挿入する場合、摩擦で導電性薄膜がダメージを受け破損してしまう可能性がある。また、特許文献2のコネクタには、補正用の温度センサが組み込まれておらず、薄膜熱電対素子に適用することができない。
【0006】
特許文献3には、板バネ状の端子を備えるスライド式コネクタが開示されている。このコネクタでは、スライド蓋をスライドさせると、板バネで素子が加圧固定される。特許文献3のコネクタには、補正用の温度センサが組み込まれておらず、薄膜熱電対素子に適用することができない。また、一般的に熱電対材料は、板バネ状の端子に加工することが難しい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2010-190735号公報
【特許文献2】特開2015-109156号公報
【特許文献3】特開2012-048952号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
薄膜熱電対素子とリード線との接点における金属細線と薄膜との相違等により、薄膜熱電対素子は、実際の温度差に由来する熱起電力よりも低い値を示すことになる。したがって、薄膜熱電対素子の温度-熱起電力特性は、バルクの熱電対の温度-熱起電力特性とは一致せず、正確な温度測定ができない。
【0009】
つまり、薄膜熱電対素子を交換可能なものとするには、薄膜熱電対素子に対応したコネクタが必要となる。本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、本発明の目的は、薄膜熱電対素子に対応可能な交換型のコネクタ、該コネクタ付きの温度センサ、コネクタ付き延長線を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前記課題は、本発明のコネクタによれば、薄膜熱電対素子を外部の機器と接続するためのコネクタであって、ベース部材と、カバー部材と、を備え、前記ベース部材は、前記薄膜熱電対素子の外部接点と接続される電極と、補正用温度センサと、を有し、前記薄膜熱電対素子が前記カバー部材と前記ベース部材に挟まれることで、前記外部接点が前記電極と接続されること、により解決される。
【0011】
上記構成により、薄膜熱電対素子をコネクタに挿入する方式ではなく挟み込み方式とすることで、カバー部材を開かないと薄膜熱電対素子を設置できない構造となるため、薄膜熱電対素子への摩擦によるダメージを防ぐことが可能となる。
また、補正用温度センサをコネクタに組み込むことで、薄膜熱電対素子の冷接点側の温度を把握することができるため、薄膜熱電対とバルク材料からなる電極の熱起電力の違いに由来する測定温度の誤差を補正して、正確に温度測定を行うことが可能となる。
【0012】
このとき、前記カバー部材は、前記ベース部材に対して回動可能に取り付けられていると好適である。
このように、カバー部材がベース部材に対して回動可能であると、カバー部材を開く操作が容易になるとともに、カバー部材で薄膜熱電対素子を押し付けるようにして挟み込むことが可能となる。
【0013】
このとき、前記ベース部材は、前記外部接点が設けられた前記薄膜熱電対素子の接続端部が載置される載置部を有し、前記載置部は、前記接続端部と係合する係合部を有していると好適である。
このように、ベース部が備える係合部が、薄膜熱電対素子の接続端部と係合することで、コネクタのカバー部材を閉めたときに、コネクタから薄膜熱電対素子が抜け落ちることが防止されるとともに、薄膜熱電対素子の外部接点と電極との電気的接触が確実なものとなる。
【0014】
このとき、前記電極は、丸棒電極であり、前記ベース部材は、前記載置部に前記丸棒電極を受容する凹溝を備えていると好適である。
このような構成によれば、電極として加工性の悪い材料、例えば、クロメルやアルメルを用いる場合であっても、その形状を薄い平板にすることなく、丸棒状態のまま電極(端子)へと加工することが可能となる。丸棒は入手しやすく、切断や曲げ加工も容易であるため、電極の加工性が平板と比べて改善し、電極(端子)を低コストで容易に作成することができる。
【0015】
このとき、前記補正用温度センサは、一対の金属線からなる補正用熱電対であり、前記ベース部材は、前記補正用熱電対を収容する収容凹部と、該収容凹部に設けられた突起部と、を有し、前記一対の金属線は、前記収容凹部において、前記突起部を囲むように配置されていると好適である。
このような構成によれば、補正用熱電対を構成する一対の金属線の先端を溶接してリング形状とし、突起部を囲むようにして引っ掛けることで、物理的な強度を高めることができる。
【0016】
このとき、前記凹溝は、前記載置部に近い側が、湾曲した形状であり、前記収容凹部に近い側が、角型形状であると好適である。
このような構成によれば、丸棒電極を凹溝に挿入する際、補正用熱電対を収容する凹部に近い角溝から挿入することで、収容凹部を大きくすることなくコネクタ1のサイズをコンパクトなものとしつつ、電極の取付性が良好なものとなる。
【0017】
前記課題は、本発明のコネクタ付き温度センサによれば、上記のコネクタと、該コネクタに接続された前記薄膜熱電対素子と、を備えること、により解決される。
前記課題は、本発明のコネクタ付き延長線によれば、上記のコネクタと、前記電極に接続された補償導線を有する延長線と、を備えること、により解決される。
【発明の効果】
【0018】
本発明のコネクタ、コネクタ付き温度センサ及びコネクタ付き延長線は、薄膜熱電対素子を挟み込むことで摩擦によるダメージを防ぐことが可能となる。また、本発明のコネクタ、コネクタ付き温度センサ及びコネクタ付き延長線は、補正用温度センサにより薄膜熱電対素子の冷接点側の温度を把握することができるため、正確に温度測定を行うことが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1A】本発明の一実施形態に係るコネクタに接続される薄膜熱電対素子を示す概略模式図である。
【
図2】本発明の一実施形態に係るコネクタ(コネクタ付き延長線)及び薄膜熱電対素子を示す概略模式図である。
【
図5】コネクタのカバー部材を閉じた状態の外観図である。
【
図6】コネクタのカバー部材を開いた状態の外観図である。
【
図9】ベース部材と薄膜熱電対素子の係合部を示す模式図である。
【
図10】ベース部材に電極を取り付けた状態を示す正面図である。
【
図11】ベース部材における補正用熱電対の配置を示す模式的斜視図である。
【
図12】コネクタの配線を示す模式的斜視図である。
【
図13】コネクタに薄膜熱電対素子を取り付ける手順を説明する斜視図である。
【
図14】コネクタに薄膜熱電対素子を取り付ける手順を説明する斜視図である。
【
図15】コネクタに薄膜熱電対素子を取り付ける手順を説明する斜視図である。
【
図16】コネクタに薄膜熱電対素子を取り付ける手順を説明する斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の一実施形態に係るコネクタ、コネクタ付き温度センサ及びコネクタ付き延長線について
図1乃至
図18を参照して説明する。
【0021】
<薄膜熱電対素子50>
図1A及び
図1Bは本実施形態に係るコネクタ1に接続される薄膜熱電対素子50の概略模式図である。薄膜熱電対素子50は、長尺矩形状のフィルムなどの基板51上に異なる金属からなる一対の薄膜により形成され、長手方向に沿って平行に延びる一対の導電性薄膜52及び53を備えている。一対の導電性薄膜52及び53は、一方の端部側(先端部側、前端部側)で交差して、交差した箇所は接続して被対象物の測温用である測温用接点54となっている。一対の導電性薄膜52及び53の他端側(基端部側、後端部側)には、外部接点52a及び53aを備えている。
【0022】
薄膜熱電対素子50は、外部接点52a及び53aにおいて、ベース部材10の載置部11に設けられた一対の電極30とそれぞれ接続される。導電性薄膜52及び53はそれぞれ異種材料であり、測温用接点54において、導電性薄膜52及び53が重なるように接合されている。
【0023】
薄膜熱電対素子50を形成する基板51として、ガラス、樹脂フィルム、金属などを用いることができる。但し、基板51を金属などの導電性のある材料とする場合には、予め金属表面にSiO2、Al2O3等の絶縁膜を形成した上で薄膜熱電対素子を形成する必要がある。したがって、好ましくは樹脂フィルムを用いるのが良い。ガラス、樹脂フィルムは金属などの導電性のある基板のように、前処理を必要とすることがないため、操作が煩雑になることが無く、好適である。また、樹脂フィルムはその可撓性により、薄膜熱電対素子の強度を高めることができる。さらに好ましくは、ポリイミドフィルムを用いるのが良い。ポリイミドフィルムは、折り曲げることが可能で基板を数ミクロンの厚さにしても壊れにくく取り扱いが容易である点と、200℃を超える温度でも比較的安定している点において、薄膜熱電対素子の基板として適した材料である。
【0024】
基板51の厚さは、1μm以上150μm以下とすることが好ましく、より好ましくは1μm以上50μm以下、特に好ましくは1μm以上18μm以下であるとよい。
【0025】
薄膜熱電対素子50の導電性薄膜を構成する異種金属の組み合わせとしては、クロメル-アルメル、PtRh-Pt、クロメル-コンスタンタン、ナイクロシル-ナイシル、Cu-コンスタンタン、Fe-コンスタンタン、Ir-IrRh、W-Re、Au-Pt、Pt-Pd、Bi-Sbなどを用いることができる。好ましくは、使用温度範囲が広く、温度と熱起電力の関係が直線的である、クロメル-アルメルの組み合わせを用いるのが良い。
【0026】
導電性薄膜を形成するための方法としては、スパッタリング法、電子ビーム蒸着法、加熱蒸着法等の真空成膜法や、塗布法等を用いることができる。好ましくは、より薄く均一に薄膜を形成できる真空成膜法を用いるのが良い。さらに好ましくは、蒸着物質との原子組成のずれが少なく、均一に成膜ができるスパッタリング法を用いるのが良い。
【0027】
薄膜熱電対素子50は保護膜50aにより覆われていることが望ましい。保護膜50aは薄膜熱電対素子の耐環境性を高めると共に、薄膜熱電対素子が外力により変形した際に懸念されるクラックの発生を防ぐ効果もあるためである。適用可能な保護膜50aは、SiO2、Al2O3などを蒸着法、スパッタリング法、ディッピング法等により形成した絶縁膜、スクリーン印刷法によるポリイミドフィルムなどである。好ましくは、耐熱性および耐薬品性が高く、接着性の高いポリイミドフィルムを用いるのがよい。
【0028】
導電性薄膜52及び53の厚さは、10nm以上1μm以下とすることが好ましく、より好ましくは100nm以上700nm以下、より好ましくは150nm以上550nm以下であるとよい。
【0029】
薄膜熱電対素子50の基板51の接続端部51aは、中心付近において厚み方向に貫通をした貫通孔51bと、左右方向(幅方向)の両側部に中心に向かって形成された切り欠き部51cが形成されている。また、基板51の接続端部51aにおいて、外部接点52a及び53aとは反対側には、補強部材55が設けられていてもよい。
【0030】
<コネクタ1>
本実施形態のコネクタ1は、薄膜熱電対素子50を外部の機器(例えば、温度表示器)と接続するためのコネクタである。コネクタ1は、延長線としてのリード線1a及び機器接続端部1bを有するコネクタ付き延長線3である(
図2)。コネクタ1は、薄膜熱電対素子50が接続されることで、コネクタ付き温度センサ2を構成する。
【0031】
コネクタ1は、ベース部材10と、ベース部材10に取り付けられたカバー部材20と、を備えている。カバー部材20は、後述するように、第1カバー部材21と第2カバー部材22とが接続ピン23によって回動可能に接続されて構成されている。コネクタ1を形成するベース部材10、カバー部材20等の材料としては、絶縁体であれば特に限定されるものではないが、例えば、熱可塑性プラスチックなどを用いることが可能である。
【0032】
(ベース部材10)
図3及び
図4に示されるように、ベース部材10は、表面10a(上面)、裏面10b(下面)、裏面10bに形成されたナット受容部10c、前面10d、後面10e、側面10fを備えている。ベース部材10は、薄膜熱電対素子50の外部接点52a及び53aと接続される一対の電極30と、補正用温度センサとしての補正用熱電対40と、を有している。
【0033】
ベース部材10は、前方に薄膜熱電対素子50の接続端部51aが載置される載置部11を有している。載置部11は、その中央部に貫通孔12が形成されている。また、載置部11は、薄膜熱電対素子50を接続端部51aに形成された切り欠き部51cと係合する位置決め凸部13(係合部)を有している。
【0034】
ベース部材10の載置部11が備える位置決め凸部13は、薄膜熱電対素子50の接続端部51aに形成された切り欠き部51cと対応しており、コネクタ1における薄膜熱電対素子50の接続端部51aの位置を決めることが可能となっている(後述する
図9)。
【0035】
また、ベース部材10が位置決め凸部13を備えることで、蓋としての第1カバー部材21を開かない場合には、載置部11に薄膜熱電対素子50を装着することができないようになっている。具体的には、第1カバー部材21を開かない場合において、薄膜熱電対素子50を前方から載置部11に挿入することが位置決め凸部13によって阻止される。
【0036】
載置部11は、貫通孔12の両方の側部に、電極30を受容する凹溝として、断面Ω形状に湾曲した形状の丸溝14a及び角型形状の角溝14bが形成されている。丸溝14aは、載置部11に近い前側に位置し、角溝14bは、補正センサ収容部15の収容凹部16に近い後側に位置している。角溝14bは、その幅が丸溝14aよりも広くなっている。
【0037】
熱電対素線としての電極30を丸溝14aに挿入する際、後方側(収容凹部16が設けられている側)から挿入する。このとき、後述する補正センサ収容部15の収容凹部16が狭すぎる場合や、角溝14bがなく全域が丸溝14aである場合には、電極30を、載置部11に挿入して配置することができない。本実施形態のコネクタ1では、電極30を受容する溝を、丸溝14aと角溝14bの組み合わせとすることで、コネクタ1のサイズをコンパクトなものとしつつ、電極30の取付性を両立している。
【0038】
ベース部材10は、後述する補正用温度センサとしての補正用熱電対40を収容する補正センサ収容部15を有している。補正センサ収容部15の収容凹部16には、上方のカバー部材20に向かって突出する突起部17が形成されている。補正センサ収容部15の後端側には、貫通孔18が形成されている。
【0039】
(カバー部材20)
図5乃至
図8に示されるように、カバー部材20は、ネジB1、皿ネジB2及び六角ナットN1、N2などの締結部材によって、ベース部材10に対して取り付けられている。カバー部材20は、前方側の第1カバー部材21と、後方側の第2カバー部材22が接続ピン23によって回動可能に接続されて構成されている。
【0040】
第1カバー部材21には、上下方向にザグリ部21a及び貫通孔21bが形成されている。また、第1カバー部材21には、左右方向(幅方向)の両側部に中心に向かって形成された凹部21cが形成されている。
【0041】
第2カバー部材22は、左右方向(幅方向)の両側部において、第1カバー部材21の後端部を挟み込むように突出した蝶番部22aを有している。蝶番部22aにおいて、接続ピン23が第1カバー部材21及び第2カバー部材22に形成された不図示の貫通孔に挿通されている。また、第2カバー部材22には、上下方向に連通した面取り部22b及び開口22cが形成されている。
【0042】
本実施形態のコネクタ1では、蓋としての第1カバー部材21を開閉する度に、ネジB1が外れてしまわないように、脱落防止ネジを用いることが好ましい。また、ザグリ部21aや面取り部22bがあることでネジB1や皿ネジB2の頭部を隠すことができる。
【0043】
(電極30)
図7及び
図10に示されるように、電極30は、丸棒電極(断面が円形の丸棒素線)であり、ベース部材10の載置部11に形成された丸溝14a及び角溝14bに受容される。電極30が丸溝14a及び角溝14bに受容された状態において、電極上面30aが、載置部11に露出する。
【0044】
電極30の電極上面30aが、載置部11にわずかに露出するようにすることで、電極上面30aが、薄膜熱電対素子50の外部接点52a及び53aとの接触箇所となる。このような構成によれば、加工することが難しいクロメルやアルメルなどの金属であっても、丸棒素線を最小の加工で電極30として使用することができる。
【0045】
2本の電極30には、第1補償導線31及び第2補償導線32がそれぞれ接続されている。コネクタ1に薄膜熱電対素子50が取り付けられることで、それぞれの電極30の電極上面30aと、薄膜熱電対素子50の外部接点52a及び53aが互いに電気的に接続される。
【0046】
(補正用熱電対40)
図11及び
図12に示されるように、補正用熱電対40は、一対の第1金属線41及び第2金属線42からなり、ベース部材10の収容凹部16に設けられた突起部17を囲むように配置されている。補正用熱電対40は、薄膜熱電対素子50の外部接点52a及び53aと離間した近傍に測温接点43(接点)を有している。
【0047】
薄膜熱電対素子50は、第1補償導線31及び第2補償導線32(リード線)との接点における金属細線と薄膜との相違等により、薄膜熱電対素子50は、実際の温度差に由来する熱起電力よりも低い値を示すことになる。したがって、薄膜熱電対素子50の温度-熱起電力特性は、バルクの熱電対の温度-熱起電力特性とは一致しない。
【0048】
そこで、薄膜熱電対素子50を用いた正確な温度測定のために、コネクタ1における温度を測定する必要があるため、そのための補正用熱電対40をコネクタ1の収容凹部16の中に配置している。この収容凹部16には、上方に向かって突出するピンとして突起部17が形成されている。補正用熱電対40は、第1金属線41及び第2金属線42の先端を溶接し、リング形状になっているため、突起部17を囲むようにして引っ掛けられている。
【0049】
このような構成によれば、補正用熱電対40の測温接点43を載置部11と突起部17との間に配置することで、第1金属線41及び第2金属線42の先端における物理的な強度を高めることができる。
【0050】
(ベース部材10とカバー部材20の接続について)
ベース部材10に対するカバー部材20の取り付け(組み付け)について説明する。まず、ベース部材10の表面10a側では、後方の一対の貫通孔18と、第2カバー部材22の開口22cが上下方向に重ねられた状態において、皿ネジB2がそれぞれ挿通される(
図13)。そして、ベース部材10の裏面10b側では、貫通孔18に対応する後方側の一対のナット受容部10cに六角ナットN2がそれぞれ受容され、皿ネジB2と螺合する(
図8)。このようにして、ベース部材10にカバー部材20の第2カバー部材22が取り付けられる。
【0051】
第1カバー部材21は、接続ピン23を回転軸として回動可能である(
図14)。ベース部材10の載置部11に、薄膜熱電対素子50の接続端部51aが載置された状態(
図15)で、第1カバー部材21を上方から重ねるようにして閉鎖することで、薄膜熱電対素子50が第1カバー部材21とベース部材10に挟まれる(
図16)。
【0052】
このようにして、第1カバー部材21の貫通孔21b、薄膜熱電対素子50の貫通孔51b、ベース部材10の貫通孔12が上下方向に重ねられた状態において、ネジB1が挿通される(
図16)。そして、ベース部材10の裏面10b側では、貫通孔12に対応する前方側のナット受容部10cに六角ナットN1が受容され、ネジB1と螺合する。このようにして、ベース部材10にカバー部材20の第1カバー部材21が取り付けられる。
【0053】
このとき、
図17及び
図18に示されるように、第1カバー部材21において、接続ピン23の箇所が支点となり、ネジB1及び六角ナットN1を締め付けることで、貫通孔21b周囲が力点となり、第1カバー部材21の先端部が作用点となり、薄膜熱電対素子50を押し付ける。このようにして、薄膜熱電対素子50がコネクタ1に取り付けられる。
【0054】
薄膜熱電対素子50がコネクタ1に取り付けた状態では、薄膜熱電対素子50の接続端部51aに形成された切り欠き部51cが、ベース部材10の載置部11に形成された位置決め凸部13と係合する。更に、第1カバー部材21が、その凹部21cが位置決め凸部13と係合するようにして接続端部51aの上に配置される。このようにして、薄膜熱電対素子50が、コネクタ1のベース部材10及び第1カバー部材21に安定して挟み込まれるため、薄膜熱電対素子50がコネクタ1から抜け落ちてしまうことが抑制される。
【0055】
コネクタ1では、その材料にエンジニアプラスチックを選定することで、各貫通孔にネジ溝を切ることは可能ではあるが、繰り返して使用することや、十分に締め付けを行うことを考慮すると、ネジB1、皿ネジB2及び六角ナットN1、N2などの締結部材によって、ベース部材10に対してカバー部材20を取り付けるようにすると好適である。
【0056】
以上のように、薄膜熱電対素子50の接続端部51aがカバー部材20の第1カバー部材21とベース部材10の載置部11との間に挟まれることで、薄膜熱電対素子50の外部接点52a,53aが電極30とそれぞれ接続される。
【0057】
コネクタ1に薄膜熱電対素子50が取り付けられた状態では、薄膜熱電対素子50の外部接点52a及び53aが、電極30とそれぞれ当接する。また、補正センサ収容部15の収容凹部16においては、電極30の後端部において、第1補償導線31及び第2補償導線32がそれぞれ接続されている。
【0058】
さらに、電極30の後端部の近傍に他の金属細線からなる補正用熱電対40の測温接点43がある。第1補償導線31は補正用熱電対40の第1金属線41と同一材料であり、第2補償導線32は補正用熱電対40の第2金属線42と同一材料である。また、薄膜熱電対素子50の導電性薄膜52及び53の材料は、対応するそれぞれの電極30、第1補償導線31及び第2補償導線32とそれぞれ同一材料である。
【0059】
補正用熱電対40の測温接点43(接点)を、電極30と第1補償導線31及び第2補償導線32の接続箇所の近傍に設置することにより、正確な温度を測定することができる。このとき、第1補償導線31及び第2補償導線32、第1金属線41及び第2金属線42は、リード線1a(延長線)を構成し、このリード線1aの端部に設けられた機器接続端部1bにおいて不図示の温度表示器(外部の機器の一例)に接続されている。
【0060】
<コネクタ付き温度センサ2及びコネクタ付き延長線3>
本実施形態のコネクタ1は、薄膜熱電対素子50を接続することでコネクタ付き温度センサ2を構成する(
図2及び
図16)。また、本実施形態のコネクタ1は、電極30に接続された第1補償導線31及び第2補償導線32を有するリード線1a(延長線)と組み合わされることでコネクタ付き延長線3を構成する(
図2)。これらのコネクタ付き温度センサ2及びコネクタ付き延長線3によれば、薄膜熱電対素子を交換可能なものとすることができる。
【産業上の利用可能性】
【0061】
本発明のコネクタ、コネクタ付き温度センサ及びコネクタ付き延長線を用いることにより、薄膜熱電対素子を交換可能なものとすることができる。薄膜熱電対素子を用いた温度測定の利用分野は、特に限定されるものではないが、極小部の温度測定を好適に行うことが可能であり、例えば、燃料電池、加熱ローラー、熱プレス、電子回路部品発熱温度、化学反応温度、瞬間加熱温度などを測定することができる。
【符号の説明】
【0062】
1 コネクタ
1a リード線(延長線)
1b 機器接続端部
2 コネクタ付き温度センサ
3 コネクタ付き延長線
10 ベース部材
10a 表面
10b 裏面
10c ナット受容部
10d 前面
10e 後面
10f 側面
11 載置部
12 貫通孔
13 位置決め凸部(係合部)
14a 丸溝
14b 角溝
15 補正センサ収容部
16 収容凹部
17 突起部
18 貫通孔
20 カバー部材
21 第1カバー部材
21a ザグリ部
21b 貫通孔
21c 凹部
22 第2カバー部材
22a 蝶番部
22b 面取り部
22c 開口
23 接続ピン
30 電極
30a 電極上面
31 第1補償導線(補償導線)
32 第2補償導線(補償導線)
40 補正用熱電対
41 第1金属線(金属線)
42 第2金属線(金属線)
43 補正用熱電対の測温接点(接点)
50 薄膜熱電対素子
50a 保護膜
51 基板
51a 接続端部
51b 貫通孔
51c 切り欠き部
52,53 導電性薄膜
52a,53a 外部接点
54 測温用接点
55 補強部材
B1 ネジ
B2 皿ネジ
N1 六角ナット
N2 六角ナット