(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022065498
(43)【公開日】2022-04-27
(54)【発明の名称】熱音響システム、熱音響システムの制御方法、及び熱音響システムの調整方法
(51)【国際特許分類】
F25B 9/00 20060101AFI20220420BHJP
【FI】
F25B9/00 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020174120
(22)【出願日】2020-10-15
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成25年度、国立研究開発法人科学技術振興機構、戦略的創造研究推進事業(先端的低炭素化技術開発)「カルノー効率の60%に達する廃熱回生熱音響システム」委託研究、産業技術力強化法第17条の適用を受ける特許出願
(71)【出願人】
【識別番号】000125369
【氏名又は名称】学校法人東海大学
(74)【代理人】
【識別番号】100165179
【弁理士】
【氏名又は名称】田▲崎▼ 聡
(74)【代理人】
【識別番号】100175824
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 淳一
(74)【代理人】
【識別番号】100152272
【弁理士】
【氏名又は名称】川越 雄一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100181722
【弁理士】
【氏名又は名称】春田 洋孝
(72)【発明者】
【氏名】長谷川 真也
(72)【発明者】
【氏名】木村 英樹
(72)【発明者】
【氏名】千賀 麻利子
(72)【発明者】
【氏名】長谷川 龍之介
(57)【要約】
【課題】出力性能を保持しつつも装置構成を任意の大きさに形成することができる熱音響システム、熱音響システムの制御方法、及び熱音響システムの調整方法を提供する。
【解決手段】管路内の振動流を利用した熱音響システム1であって、熱入力により任意の管路長に設定された管路に仕事流を発生もしくは増幅させる少なくとも1つの原動用の熱音響デバイスを含む入力部2と、熱音響デバイスにより発生した仕事流を入力し、出力を取り出す出力部6と、管路Pに接続され振動流の仕事流と音場のうち少なくとも1つを調整する調整部10と、管路長において決定される出力部における出力と調整部における調整量との関係に基づいて、調整部を制御して出力部からの出力を調整する制御部12と、を備える、熱音響システムである。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
管路内の振動流を利用した熱音響システムであって、
熱入力により任意の管路長に設定された前記管路に仕事流を発生もしくは増幅させる少なくとも1つの原動用の熱音響デバイスを含む入力部と、
前記熱音響デバイスにより発生した前記仕事流を入力し、出力を取り出す出力部と、
前記管路に接続され前記振動流の仕事流と音場のうち少なくとも1つを調整する調整部と、
前記管路長において決定される前記出力部における出力と前記調整部における調整量との関係に基づいて、前記調整部を制御して前記出力部からの前記出力を調整する制御部と、を備える、
熱音響システム。
【請求項2】
前記管路から分岐した分岐管が形成されており、
前記調整部は、前記分岐管に接続されている、
請求項1に記載の熱音響システム。
【請求項3】
前記調整部は、リニアモータを備え、
前記制御部は、前記リニアモータにおける電圧の入出力を制御して、前記入力部に形成される音響インピーダンスに応じて前記管路内において前記仕事流を入出力させ、前記分岐管の接続点において、前記入力部と前記出力部とを接続可能な音響インピーダンスを形成する、
請求項2に記載の熱音響システム。
【請求項4】
前記出力部は、他の熱音響デバイスを備え、前記仕事流に基づいて冷熱を出力するように構成されている、
請求項1から3のうちいずれか1項に記載の熱音響システム。
【請求項5】
前記出力部は、発電機を備え、前記仕事流に基づいて発電するように構成されている、
請求項1から4のうちいずれか1項に記載の熱音響システム。
【請求項6】
前記出力部は、パルス管冷凍機を備え、前記仕事流に基づいて冷熱を出力するように構成されている、
請求項1から5のうちいずれか1項に記載の熱音響システム。
【請求項7】
前記入力部は、前記管路内に仕事流を入力するリニアモーターを備える、
請求項1から6のうちいずれか1項に記載の熱音響システム。
【請求項8】
前記管路は、一つの流路を有する直管部と、
前記直管部の一端に設けられたループ状に形成された第1ループ管とを備える、
請求項1から7のうちいずれか1項に記載の熱音響システム。
【請求項9】
前記管路は、前記直管部の他端に設けられたループ状に形成された第2ループ管を備える、
請求項8に記載の熱音響システム。
【請求項10】
前記管路は、ループ状に形成されている、
請求項1から9のうちいずれか1項に記載の熱音響システム。
【請求項11】
前記調整部は、前記管路における任意の位置に設けられている、
請求項1に記載の熱音響システム。
【請求項12】
管路内の振動流を利用した熱音響システムの制御方法であって、
少なくとも1つの原動用の熱音響デバイスを含む入力部に熱を入力して任意の管路長に設定された前記管路に仕事流を発生もしくは増幅させ、
前記管路長において決定される、前記仕事流を入力し出力を取り出す出力部における出力と、調整部における調整量との関係に基づいて、前記調整部により前記管路において前記振動流の仕事流と音場のうち少なくとも1つを調整し、前記出力部からの前記出力を調整する、
熱音響システムの制御方法。
【請求項13】
管路内の振動流を利用した熱音響システムの調整方法であって、
熱入力により任意の管路長に設定された前記管路に仕事流を発生もしくは増幅させる少なくとも1つの原動用の熱音響デバイスを含む入力部と、
前記熱音響デバイスにより発生した前記仕事流を入力し、出力を取り出す出力部と、
前記管路に接続され前記振動流の仕事流と音場のうち少なくとも1つを調整する調整部と、を備える熱音響システムにおいて、
前記入力部における入力の第1検出値と、前記出力部における出力の第2検出値とを取得し、
前記第1検出値と前記第2検出値とに基づいて前記調整部における入出力を調整し、
前記管路長において決定される前記入力部における入力と、前記調整部における調整量と、前記出力部からの出力との関係に基づく前記調整量を決定する、
熱音響システムの調整方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、振動流を利用した熱音響システム、熱音響システムの制御方法、及び熱音響システムの調整方法に関する。
【背景技術】
【0002】
工場や車などの廃熱を再利用する技術が研究されている。廃熱の回生には、外燃機関を利用することが考えられる。外燃機関は、例えば、ランキンサイクルを用いる蒸気タービンや、スターリングサイクルを用いるスターリングエンジンが知られている。これらの外燃機関は、熱源から動力を取り出すように構成されている。
【0003】
その他の外燃機関として、振動流を用いて仕事流と熱流のエネルギー変換を行う蓄熱器を備えた熱音響エンジンが知られている。ここでは、振動流型外燃機関のひとつとして、熱音響エンジンを例にして説明する。熱音響エンジンは、振動流の圧縮膨張がピストンの役割を担うことにより、可動部品を持たずに熱入力から仕事出力や冷却出力を得ることができる。熱音響エンジンの一般的な構造は、単数から無数の狭い流路等を備える多孔質体(蓄熱器)と、外部との吸放熱を行う一対の吸放熱部を有する熱交換器と、熱交換器の上流側と下流側に接続された作動気体が流れる管路とを備えている。この蓄熱器に臨界条件を超える所定の温度勾配(温度差)を流路軸方向に沿って与えると、仕事流の発生・増幅が行われる。
【0004】
進行波音波を用いる進行波型熱音響エンジンでは、熱力学的なサイクルがスターリングサイクルに類似したエネルギー変換が行われるので、熱効率を高められる可能性がある。そのため、進行波型熱音響エンジンは可動部品を持たない、廃熱回生が可能な高効率熱機関として注目されている。
【0005】
熱音響エンジンで生成した仕事流を出力として取り出す方法として、リニアモータなどの発電機を用いて発電し、入力された仕事流を電気的出力に変換することが考えられる。その他の方法として、熱音響現象を用いたヒートポンプがある。蓄熱器内の流体を音波入力などによって強制振動させると蓄熱器の両端に温度比が生じる。この音波によるヒートポンプ効果を利用すると「冷凍」や「昇温」を行うことができる。
【0006】
例えば、非特許文献1には、熱音響機関で生成した音波によって「冷凍」を行う熱動作冷却器として構成された熱音響デバイスが記載されている。非特許文献2には、熱音響機関で生成した音波によって「発電」を行う熱動作発電機として構成された熱音響デバイスが記載されている。これらの熱音響デバイスに「原動機」として用いられる熱音響機関は、外燃機関であることから、廃熱回生デバイスとして現在、研究開発が進められている。
【0007】
以下、常温熱交換器、蓄熱器、高温熱交換器で構成されるものを「原動機」、常温熱交換器、蓄熱器、冷凍熱交換器で構成されるものを「冷却機」とする。原動機と冷却機を組み合わせることによって可動部品を持たない冷却機を構築することが出来る。Hasegawaらは3つの原動機で駆動する熱音響冷却機の開発を行い、各原動機温度が270℃の時に冷却機温度が-107.4℃での動作を報告した(非特許文献3参照)。上述した従来型の熱音響デバイスは廃熱回生デバイスとしての研究開発が進められており、工場や船舶、自動車といった廃熱が多く排出されている設備や装置に適用されることが想定される(非特許文献4参照)。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】T. Yazaki, T. Biwa, A. Tominaga, “A pistonless Stirling cooler”, Appl. Phys. Lett., 80 (2002) 157-159
【非特許文献2】S. Backhaus, E. Tward, M. Petach, “Traveling-wave thermoacoustic electric generator”, Appl. Phys. Lett., 85, (2004) 1085-1087
【非特許文献3】E. M. Sharify, S. Hasegawa, “Traveling-wave thermoacoustic refrigerator driven by a multistage traveling-wave thermoacoustic engine”, Appl. Therm. Eng., 113 (2017), pp.791-795
【非特許文献4】未利用熱エネルギー革新的活用技術研究組合技術開発センター,“産業分野の排熱実態調査 報告書”,2019年3月
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
上述の可動部品を持たない熱音響冷凍機や熱音響昇温機を構築する場合には、熱音響原動機と熱音響冷凍機の接続点部において音響インピーダンスが一致する必要がある。この音響インピーダンスは圧力振動と体積流速振動の比で与えられるパラメータである。従来の熱動作冷凍機や熱動作昇温機では共振によって音響インピーダンスが一致する条件が満たされるように装置形状を決定している。一般にこの装置構成は以下のようなものが多く用いられる。
【0010】
1:一波長程度の長さをもつループ管内に原動機と冷凍機/昇温機を配置する構成。
2:一波長に対して十分に短い2つのループ内にそれぞれ原動機と冷凍機/昇温機を配置し、その2つのループを1/2波長程度の長さの導波管で接続する構成。
3:両端を閉じた1/2波長長さの直管の一端に熱音響原動機を配置、他端に熱音響冷凍機を配置する構成。
4:一波長に対して十分に短いループに配置された熱音響原動機と直管型の熱音響冷凍機を組み合わせた構成(全長が1/2波長長さ程度)。
5:直管型の熱音響原動機と一波長に対して十分に短いループに配置された熱音響冷凍機を組み合わせた構成(全長が1/2波長長さ程度)。
【0011】
上記装置のいずれの場合でも管路内の波長は使用する作動気体の音速と共振周波数で決定される。従来型の熱音響デバイスは、共振によって管路内に形成される音響インピーダンスに合わせて動作するように管路長を設定するような装置構成に依存せざるを得ず、装置サイズに応じた設置場所を必要とする。しかしながら、熱音響機関の適用が想定される工場や船舶/自動車等の設備や装置に設置する場合には、設置可能箇所に制限があるために装置の小型化を含む装置形状の設計の自由度が求められている。
【0012】
これは、熱音響原動機からの出力を発電機を用いて電力として取り出したい場合にも共通の課題である。熱音響デバイスに発電機を接続する場合にも熱音響原動機と発電機との接続点において音響インピーダンスを一致させる必要がある。また、熱音響原動機に接続される導波管は、発電機が効率よく動作する音響インピーダンスが形成するような管路長に設定される場合が多い。この場合にも、熱音響原動機が動作する音場に依存して導波管部の長さ及び装置サイズが決定される。したがって、上述の熱動作冷凍機や熱動作昇温機と同様に、限られた設置可能範囲に装置を設置するには装置が小型化されることや、装置形状を自由に設計できることが望ましい。発明者らは、熱音響デバイスの小型化や、装置形状の自由な設計について鋭意研究を続けてきた。
【0013】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであって、出力性能を保持しつつも装置構成を任意の大きさに形成することができる熱音響システム、熱音響システムの制御方法、及び熱音響システムの調整方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明の一態様は、管路内の振動流を利用した熱音響システムであって、熱入力により任意の管路長に設定された前記管路に仕事流を発生もしくは増幅させる少なくとも1つの原動用の熱音響デバイスを含む入力部と、前記熱音響デバイスにより発生した前記仕事流を入力し、出力を取り出す出力部と、前記管路に接続され前記振動流の仕事流と音場のうち少なくとも1つを調整する調整部と、前記管路長において決定される前記出力部における出力と前記調整部における調整量との関係に基づいて、前記調整部を制御して前記出力部からの前記出力を調整する制御部と、を備える、熱音響システムである。
【0015】
本発明によれば、管路が任意の管路長に形成されていても、調整部において管路内の仕事流と音場を調整することで、出力部から所望の出力を得ることができる。本発明によれば、出力部における出力が得られる音響インピーダンスに合わせて管路の管路長を形成する必要が無く、設置対象の大きさに合わせて任意の管路長に形成することができる。
【0016】
本発明は、前記管路から分岐した分岐管が形成されており、前記調整部は、前記分岐管に接続されていてもよい。
【0017】
本発明によれば、管路の分岐管に調整部を接続する簡便な構成により、出力部から所望の出力を得ることができる。
【0018】
本発明の前記調整部は、リニアモータを備え、前記制御部は、前記リニアモータにおける電圧の入出力を制御して、前記入力部に形成される音響インピーダンスに応じて前記管路内において前記仕事流を入出力させ、前記分岐管の接続点において、前記入力部と前記出力部とを接続可能な音響インピーダンスを形成してもよい。
【0019】
本発明によれば、調整部がリニアモーターを備える簡便な構成により、入力部に形成される音響インピーダンスに応じて管路内において仕事流を入出力させることで出力部から所望の出力を得ることができる。
【0020】
本発明の前記出力部は、他の熱音響デバイスを備え、前記仕事流に基づいて冷熱を出力するように構成されていてもよい。
【0021】
本発明によれば、出力部に熱音響デバイスを備えることにより、入力した廃熱に基づいて冷熱を出力することができ簡便な構成により、クーラー、冷却器等を実現することができる。
【0022】
本発明の前記出力部は、発電機を備え、前記仕事流に基づいて発電するように構成されていてもよい。
【0023】
本発明によれば、出力部に発電機を備えることにより、入力した廃熱に基づいて電力を生成することができ簡便な構成の発電機を実現することができる。
【0024】
本発明の前記出力部は、パルス管冷凍機を備え、前記仕事流に基づいて冷熱を出力するように構成されていてもよい。
【0025】
本発明によれば、出力部にパルス管冷凍機を備えることにより、入力した廃熱に基づいて冷熱を出力することができ、簡便な構成により、冷凍機を実現することができる。
【0026】
本発明の前記入力部は、前記管路内に仕事流を入力するリニアモーターを備えていてもよい。
【0027】
本発明によれば、入力部にリニアモーターが接続されていることにより、入力部における熱音響デバイスの出力を増幅することができる。
【0028】
本発明の前記管路は、一つの流路を有する直管部と、前記直管部の一端に設けられたループ状に形成された第1ループ管とを備えていてもよい。
【0029】
本発明によれば、管路長を短く形成した管路を備える熱音響システムを実現できる。
【0030】
本発明の前記管路は、前記直管部の他端に設けられたループ状に形成された第2ループ管を備えていてもよい。
【0031】
本発明によれば、管路長を短く形成した管路を備える熱音響システムを実現できる。
【0032】
本発明の前記管路は、ループ状に形成されていてもよい。
【0033】
本発明によれば、管路長を短く形成した管路を備える熱音響システムを実現できる。
【0034】
本発明の前記調整部は、前記管路における任意の位置に設けられていてもよい。
【0035】
本発明によれば、調整部を管路における任意の位置に設けることで、熱音響システムの設計の自由度を向上させることができる。
【0036】
本発明の一態様は、管路内の振動流を利用した熱音響システムの制御方法であって、少なくとも1つの原動用の熱音響デバイスを含む入力部に熱入力して任意の管路長に設定された前記管路に仕事流を発生もしくは増幅させ、前記管路長において決定される、前記仕事流を入力し出力を取り出す出力部における出力と、調整部における調整量との関係に基づいて、前記調整部により前記管路において前記振動流の仕事流と音場のうち少なくとも1つを調整し、前記出力部からの前記出力を調整する、熱音響システムの制御方法である。
【0037】
本発明によれば、管路が任意の管路長に形成されていても、調整部において管路内の仕事流を調整することで、出力部から所望の出力を得ることができる。本発明によれば、設置対象の大きさに合わせて任意の管路長に形成された管路を有する熱音響システムから所望の出力を得ることができる。
【0038】
本発明の一態様は、管路内を進行する振動流を利用した熱音響システムの調整方法であって、熱入力により任意の管路長に設定された前記管路に仕事流を発生もしくは増幅させる少なくとも1つの原動用の熱音響デバイスを含む入力部と、前記熱音響デバイスにより発生した前記仕事流を入力し、出力を取り出す出力部と、前記管路に接続され前記振動流の仕事流と音場のうち少なくとも1つを調整する調整部と、を備える熱音響システムにおいて、前記入力部における入力の第1検出値と、前記出力部における出力の第2検出値とを取得し、前記第1検出値と前記第2検出値とに基づいて前記調整部における入出力を調整し、前記管路長において決定される前記入力部における入力と、前記調整部における調整量と、前記出力部からの出力との関係に基づく前記調整量を決定する、熱音響システムの調整方法である。
【0039】
本発明によれば、任意の管路長に形成された管路を形成した際に、管路長において決定される出力部における入力と、調整部における調整量と、出力部からの出力との関係に基づく調整量を決定することができる。
【発明の効果】
【0040】
本発明によれば、出力性能を保持しつつも装置構成を任意の大きさに形成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【
図1】本発明の実施形態に係る熱音響システムの構成を示す図である。
【
図2】管路に設けられた分岐部における作動流体の状態を示す概念図である。
【
図3】熱音響システムの構成を示すブロック図である。
【
図4】変形例1に係る熱音響システムの構成を示す図である。
【
図5】変形例2に係る熱音響システムの構成を示す図である。
【
図6】変形例3に係る熱音響システムの構成を示す図である。
【
図7】変形例4に係る熱音響システムの構成を示す図である。
【
図8】変形例5に係る熱音響システムの構成を示す図である。
【
図9】変形例6に係る熱音響システムの構成を示す図である。
【
図10】変形例7に係る熱音響システムの構成を示す図である。
【
図11】変形例8に係る熱音響システムの構成を示す図である。
【
図12】変形例9に係る熱音響システムの構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0042】
以下、図面を参照しつつ、本発明に係る熱音響システム及び熱音響システムの制御方法の実施形態について説明する。熱音響システムは、任意の管路長に設定された管路内の振動流を利用した熱音響システムである。本発明では熱動作、冷却機や熱動作発電機に接続される導波管が短縮、延長を含む、任意の長さに設計できる熱音響システムを提案する。熱音響システムを構成する導波管には、熱音響システムにおいて、導波管に管内の音場制御器としてリニアモーターを設置し、ドライバーもしくは発電機として動作させて音場の調整を行い、任意の出力を得る手法を提案する。
【0043】
図1に示されるように、熱音響システム1は、内部に作動気体が封入された管路P(流路)と、管路Pに接続された第1熱音響デバイス2(入力部)と、第1熱音響デバイス2に管路Pを介して接続された第2熱音響デバイス6(出力部)と、管路Pに接続された調整部10とを備える。熱音響システム1は、例えば、冷却機として構成されている。
【0044】
管路Pは、設置される領域に応じて任意の管路長に形成されている。管路Pは、例えば、断面が円形の円管状に形成された導波管である。管路Pは、管軸方向に振動流が伝搬するように形成されている。なお、管路Pの形状は管状であればよく、例えば、断面が四角状や三角状に形成されていてもよい。管路P内に封入される作動流体は、窒素、ヘリウム、アルゴン、ヘリウムとアルゴンとの混合気体からなる不活性気体及び空気等の振動流を伝達できる気体である。作動流体は振動流を伝達できればよく、これらの気体に限定されずに他の気体が用いられてもよいし、気体に限らず水やエタノールといった液体部を有していてもよい。
【0045】
管路Pは、ループ状に形成された第1ループ管P1及び第2ループ管P2と、第1ループ管P1と第2ループ管P2とを接続する直管状に形成された直管部P3と、直管部P3と第1ループ管P1から分岐して形成された分岐管P4と、を備える。管路Pにおいて、第1ループ管P1、第2ループ管P2、直管部P3、分岐管P4のそれぞれの管路長は、対称性、音響インピーダンスを考慮せずに設置対象の形状に合わせて任意の長さに形成されていてもよい。
【0046】
管路Pは、管軸が必ずしも同一面に形成されていなくてもよく、第1ループ管P1、第2ループ管P2、直管部P3、分岐管P4のそれぞれの管軸が3次元的に曲げられていてもよい。第1ループ管P1、第2ループ管P2は、流路がループして形成されているものであり、途中に湾曲部や折れ曲がり部が形成されていてもよい。また、直管部P3とは概念的な記載であり、必ずしも直線的に形成されているものだけでなく、一つの流路を有して流路において湾曲部や折れ曲がり部が形成されていてもよい。分岐管P4の形状も同様に湾曲部や折れ曲がり部が形成されていてもよい。
【0047】
直管部P3の一端には、第1ループ管P1が接続されている。直管部P3の他端には、第2ループ管P2が接続されている。直管部P3の一端には、丁字状に分岐した分岐管P4が接続されている。第1ループ管P1の流路内には、熱流から仕事流を発生させる第1熱音響デバイス2が設けられている。
【0048】
第1熱音響デバイス2は、熱音響原動機である。第1熱音響デバイス2は、熱入力により熱音響現象が生じて仕事流を発生、増幅する蓄熱器3と、熱交換を行う第1熱交換器3C及び第2熱交換器3Dを備える。なお、第1熱音響デバイス2は、振動流を利用した原動用の熱音響デバイスであればよく、例えば、定在波型振動流や、進行波型振動流、相変化型振動流等を利用した原動用の熱音響デバイスである。
【0049】
蓄熱器3は、作動気体の流線方向に沿って上流側の一端部3Aと下流側の他端部3Bとの間に温度差が生じると、仕事流の発生もしくは増幅を行う。蓄熱器3の一端部3Aには、第1熱交換器3Cが設けられている。蓄熱器3の他端部3Bには、第2熱交換器3Dが設けられている。
【0050】
蓄熱器3は、例えば、単数から複数の小径の流路3Rが形成されている。流路3Rは、蓄熱器3において作動気体の流線方向に沿って開口するように単数から無数に設けられている。蓄熱器3は、例えば、セラミックスで形成されたハニカム構造体や、多数のステンレス鋼メッシュ薄板が積層された構造体により多数の流路3Rが形成される。蓄熱器3は、ガラスパイプなどの細かい流路を形成し振動流が通過できる材料であればよく、これらに限定されない。
【0051】
また、流路3Rは発泡金属やスチールウールなどで形成される形状のほか、金属粉を充填したり凸凹のあるフィルムを丸めたり、異なる流路径(流路幅)・流路形状・厚さを持つ薄板等を組み合わせたりすることで形成されてもよい。
【0052】
流路3Rは、例えば、断面が円管形状、平行平板形状、多角形形状、ピンアレイ形状に形成されている。流路3Rは、異なる流路径(流路幅)・流路形状・厚さを持つ薄板等を組合せにより複数のランダムな形状の流路を有するように形成されてもよい。流路3Rは、異なる流路径(流路幅)・流路形状・厚さを持つ薄板等の所定の組み合わせにより複数のパターンの形状の流路が繰り返して形成されていてもよい。蓄熱器3に温度勾配を生じさせるため、熱源からの熱量が入力される。
【0053】
熱源は、雰囲気温度としての常温に対して温度差を有する熱量を供給するものである。ここで、常温とは、例えば、大気、海水、河川水、湖水、地熱等の周囲の環境により安定的に得られる温度である。常温は、雰囲気温度の他に熱源と温度差を生じさせるように安定的に熱量を供給できる他の熱源から生じる温度であってもよい。熱源は、例えば、廃熱として捨てられる未利用の熱量を利用する。熱源は、常温に対して高温の熱量を与えるものである。熱源は、熱量を得られれば、特に限定されず、例えば、太陽光や地熱等から得られる熱量や、エンジン、工場、各種施設等から発生するの熱量が利用される。熱量は、例えば、第1熱交換器3Cに入力される。
【0054】
第1熱交換器3Cは、蓄熱器3の一端部3Aにおいて熱媒体を介して熱交換を行うよう形成されている。第1熱交換器3Cは、蓄熱器3の一端部3Aに常温に対して温度差を有する熱媒体を介して熱交換する。
【0055】
第2熱交換器3Dは、蓄熱器3の他端部3Bにおいて熱交換を行うよう形成されている。第2熱交換器3Dは、蓄熱器3の他端部3Bに常温の熱媒体を介して熱交換する。熱量の入力方法として、蓄熱器3の一端部3A側には、例えば、第1熱交換器3Cにより高温の熱量を供給する。第1熱交換器3Cには、例えば、高温の気体や液体等の熱媒体を循環させる。その一方で蓄熱器3の他端部3B側には、例えば、第2熱交換器3Dにより常温の熱量を供給する。第2熱交換器3Dには、例えば、常温の気体や液体等の熱媒体を循環させる。
【0056】
この場合、高温側となる蓄熱器3の一端部3A側から常温側となる蓄熱器3の他端部3B側にかけて温度勾配が生成され仕事流の発生もしくは増幅が行われる。上記方法により、蓄熱器3の一端部3Aと他端部3Bとの間に温度勾配(温度差)を生じさせると、蓄熱器3において作動気体の仕事流の発生もしくは増幅が行われ、管路P内を伝搬する。管路P内を伝搬する仕事流からは、仕事を取り出すことができる。
【0057】
取り出した出力は、そのまま、タービン等を動かす仕事として利用してもよいし、冷熱源、温熱源や、電気等の別の出力に変換して利用してもよい。なお、仕事流から取り出した出力の利用方法には、特に制限はなく、例えば、管路Pに第1熱音響デバイス2と異なる他の蓄熱器を有する作動用の第2熱音響デバイス6(他の熱音響デバイス)を用いることができる。作動用の熱音響デバイスによれば、入力された振動流の仕事を熱量に変換(ヒートポンプ効果)して取り出すことができる。
【0058】
この時、作動用の第2熱音響デバイス6の蓄熱器において原動用の第1熱音響デバイス2における気体の流線方向に沿って反対方向の温度勾配を生じさせるようにヒートポンプ効果を行うため、熱音響現象を利用して入力された仕事流から熱量を取り出すことができる。
【0059】
以下、作動用の第2熱音響デバイス6について説明する。上記の原動用の第1熱音響デバイス2と同一の構成については同一の名称を用い、重複する説明は適宜省略する。作動用の第2熱音響デバイス6は、原動用の第1熱音響デバイス2により発生した仕事流を入力し、出力を取り出す出力部として構成されている。
【0060】
作動用の第2熱音響デバイス6は、第2ループ管P2内に設けられた蓄熱器7(第2蓄熱器)と、蓄熱器7の一端部7Aに設けられた第3熱交換器7Cと、蓄熱器7の他端部7Bに設けられた第4熱交換器7Dとを備える。作動用の第2熱音響デバイス6は、例えば、冷熱を取り出すクーラーや冷却機として構成されている。蓄熱器7は、蓄冷器と呼んでもよい。
【0061】
蓄熱器7には、例えば、上流側の一端部7A側から原動用の第1熱音響デバイス2から生じた仕事流が入力される。
【0062】
第3熱交換器7Cは、蓄熱器7の一端部7Aにおいて熱交換を行うよう形成されている。第3熱交換器7Cは、蓄熱器7の一端部7Aを冷却するものである。第3熱交換器7Cは、熱媒体を循環させ、一端部7Aにおいて熱交換を行う。
【0063】
第4熱交換器7Dは、蓄熱器7の他端部7Bにおいて熱交換を行うよう形成されている。第4熱交換器7Dは、例えば、蓄熱器7の他端部7Bから冷熱を取り出すものである。第4熱交換器7Dは、熱媒体を循環させ、他端部7Bにおいて熱交換を行う。
【0064】
例えば、蓄熱器7の一端部7A側に原動用の第1熱音響デバイス2からエネルギー変換により生じた仕事流が入力された場合、ヒートポンプ効果が発生し蓄熱器の流路軸方向に温度差が生じる。この時、第3熱交換器7Cにより一端部7A側を常温の熱媒体と熱交換すると、一端部7A側を基準に温度差が生じ、他端部7B側において吸熱反応が生じる。この時、他端部7B側の第4熱交換器7Dにより熱交換を行うと低温の熱量を取り出すことができる。この反応により、冷却機、クーラー等を構成できる。第2熱音響デバイス6は、構成されるシステムの目的に応じて発電機や昇温機に変更されてもよい。
【0065】
次に、調整部10について説明する。調整部10は、管路P内の振動流の仕事流と音場の両方もしくはいずれか一つを調整するように構成されている。調整部10は、管路P内に形成される音場に応じて、仕事流を入力する音響ドライバーとして動作したり、仕事流を消費する発電機として動作したりすることで音場を制御する。
【0066】
以下、調整部10が管路P内の音場を調整する場合について説明する。調整部10は、原動用の第1熱音響デバイス2の蓄熱器3の温度比の変化に応じて制御され、作動用の第2熱音響デバイス6における出力が設定値となるように調整される。調整部10は、例えば、リニアモータにより構成されている。調整部10は、後述の制御部12により制御される。
【0067】
調整部10は、分岐管P4内を往復するピストン10Aと、ピストンに接続されたピストンロッド10Bと、ピストンロッド10Bを駆動する駆動部10Cと、電源10Dとを備える。ピストンロッド10Bは、磁性体により形成されている。駆動部10Cは、電磁コイルを有し、電源10Dから交流電流が入力されると交流磁界を発生させる。ピストンロッド10Bは、電磁コイルの中心を摺動自在に取り付けられている。電磁コイルに交流磁界が発生すると、ピストンロッド10Bが電磁コイルに対して往復運動する。
【0068】
調整部10は、駆動部10Cを駆動させピストンロッド10Bを往復運動させることにより、連動してピストン10Aを分岐管P4内において往復運動させ、管路P内に仕事流(振動流)を与える。調整部10は、例えば、第2熱音響デバイス6に入力される仕事流と同じ周波数帯の仕事流を発生させ、管路P内の振動流の仕事流を増加させることができる。
【0069】
調整部10は、発電機として用いられてもよい。調整部10において、分岐管P4から仕事流が入力されることにより、ピストン10Aが分岐管P4内において往復運動する。ピストン10Aの動きに連動してピストンロッド10Bが往復運動することにより、交流磁界が発生し、電磁コイル内に交流電流が流れる。調整部10は、例えば、第1熱音響デバイス2により発生する仕事流に基づいて発電し、管路P内の振動流の仕事流を減少させることができる。
【0070】
調整部10は、音場や振動流の調整が可能であれば上記の構成に限らず、部品の増減があったり構成の変更があってもよく、これに限らない。また調整部10は、管路P内の振動流の仕事流を調整できるのであればリニアモータ以外のデバイスが用いられてもよい。
【0071】
図2に示されるように、管路Pの分岐管P4において、作動流体の流速振幅を分けることが可能である。このとき分岐管P4における作動流体の圧力振幅は変化しない(P
engine=P
Ref=P
linear)。分岐管P4において作動流体の体積流速振幅の総和は保存される(U
engine=U
Ref+U
linea)。作動流体の流速振幅の分かれる割合は、管路Pに接続されている第2熱音響デバイス6及び調整部10のインピーダンスZによって決定される。
【0072】
調整部10の振動振幅は、電源10Dから入力される電圧によって制御することができる。調整部10は、発電機として用いられてもよい。調整部10は、入出力が制御されることにより第1熱音響デバイス2と第2熱音響デバイス6との接続に必要な音響インピーダンスを共振によらずに実現することができる。この結果、調整部10は、共振によって音響インピーダンスが実現された場合に比して短い、あるいは長い長さの管路Pで接続することができる。即ち、管路Pは、共振によって音響インピーダンスが実現された場合に比して任意の管路長に形成されていてもよい。従って、管路Pは、調整部10が設けられていることにより、任意の管路長に形成することができる。
【0073】
また、後述のように、出力部に発電機が接続された場合、任意の管路長に形成された管路P内において発電機が動作する音響インピーダンスになるように調整部10の入出力を調整することで、入力部における熱音響原動機との接続を可能とする。
【0074】
調整部10の振動振幅は、熱源の温度が変化すると、原動用の第1熱音響デバイス2から出力される仕事流が変化する。この場合、調整部10において入出力される電圧を調整して、分岐管P4の接続点における音響インピーダンスを調整し、作動用の第2熱音響デバイス6へ流れる仕事流もしくは管路の音場を任意の値に調整する。調整部10は、リニアモータの入出力が調整されることにより、入力部に形成される音響インピーダンスに応じて、管路P内において仕事流を入出力する。調整部10は、分岐管P4の接続点において、入力部と出力部とを接続可能な音響インピーダンスを形成する。
【0075】
調整部10における仕事流の入出力が調整されることにより、第2熱音響デバイス6における出力を任意の値に調整することができる。従って、調整部10は、管路P内から仕事流を出力すると共に、管路P内に仕事流を入力することができる。即ち、調整部10は、管路P内において仕事流を入出力して出力部の出力を調整する。調整部10によれば、リニアモーターと熱動作冷却機/昇温機もしくは熱音響発電機を接合することによって共振によって決定される導波管長に依存せずに動作を行う事ができる。
【0076】
熱音響システム1によれば、装置の設置範囲に合うように管路Pの長さを任意の長さに短縮、延長することができるため、例えば、自動車や船舶などの移動体内部において設置範囲が限られている場合や、工場、発電所等や各種施設、店舗、家屋等の建屋において設置位置が限定される場合においても熱動作冷却機・熱動作昇温機、熱動作発電機を動作させることが可能となる。
【0077】
次に熱音響システム1の制御について説明する。以下、上記の構成と同一の構成については適宜説明を省略する。
【0078】
図3に示されるように、熱音響システム1は、原動用の第1熱音響デバイス2(入力部)と、第1熱音響デバイス2の出力値を検出する第1検出部4と、作動用の第2熱音響デバイス6(出力部)と、第2熱音響デバイス6(出力部)の出力値を検出する第2検出部8と、管路Pに接続された調整部10と、調整部10の動作を制御する制御部12とを備える。
【0079】
なお、
図3において、制御部12を熱音響システム1に独立したシステムとして直接接続した形で記載しているが、制御部12は、熱音響システム1に直接接続されずに、Wi-Fiや無線等の通信システムによってネットワークに接続された端末装置に設けられていてもよい。また、制御部12は、熱音響システム1内において、調整部10、第1熱音響デバイス2、出力部(第2熱音響デバイス6)、管路Pのいずれかの一部として構成されてもよく、調整部を制御できれば、制御部12の構成位置および構成方法は特に限定されない。
【0080】
第1検出部4は、例えば、第1熱音響デバイス2の蓄熱器3の高温の一端部3A側の温度TH及び低温の他端部3B側の温度TCを検出する。第1検出部4により検出された第1出力値は、制御部12に出力される。第2検出部8は、例えば、第2熱音響デバイス6の蓄熱器7の一端部7A側の温度TC及び低温の他端部7B側の温度TRを検出する。第2検出部8により検出された第2出力値は、制御部12に出力される。
【0081】
制御部12は、第1出力値に基づいて蓄熱器3における温度比(TH/TC)を算出する。制御部12は、第2出力値に基づいて蓄熱器7における温度比(TR/TC)を算出する。
【0082】
制御部12は、例えば、蓄熱器3における温度比及び蓄熱器7における温度比の算出結果に基づいて、蓄熱器3及び蓄熱器7から生じる出力値(仕事流)を算出する。ここで、任意の管路長に形成された管路Pにおける調整部10の調整量が熱音響システム1が構成された最初の時点において設定される。以下、管路内の振動流を利用した熱音響システム1の調整方法について説明する。
【0083】
作業者は、蓄熱器3の第1検出値と蓄熱器7の第2検出値とをモニタしつつ、調整部10の調整量となる入出力値を調整する。作業者は、管路Pの管路長において決定される第1熱音響デバイス2(入力部)における出力と、調整部に10おける調整量との関係を記録し、調整量と第2熱音響デバイス6(出力部)における出力との関係をマップ化し、データベース化する。データベース化は、装置構成時に制御部12が自動調整してもよい。
【0084】
即ち、作業者は、第1熱音響デバイス2(入力部)における入力の第1検出値と、第2熱音響デバイス6(出力部)における出力の第2検出値とを取得し、第1検出値と第2検出値とに基づいて調整部10における入出力を調整する。そして、作業者は、管路Pの管路長において決定される第1熱音響デバイス2(入力部)における入力と、調整部10における調整量と、第2熱音響デバイス6(出力部)からの出力との関係に基づく調整量を決定する。
【0085】
制御部12は、データベースに基づいて、管路Pの管路長において決定される第2熱音響デバイス6(出力部)における出力と調整部10における調整量との関係に基づいて、調整部10を制御して第2熱音響デバイス6(出力部)からの出力を調整する。
【0086】
この時、制御部12は、調整部10の電源10Dを制御してリニアモータの入出力を調整して、第1熱音響デバイス2(入力部)に形成される音響インピーダンスに応じて、管路P内において仕事流を入出力させ、分岐管P4の接続点において、第2熱音響デバイス6(出力部)において所望の出力が得られるように、第1熱音響デバイス2(入力部)と第2熱音響デバイス6(出力部)とを接続可能な音響インピーダンスを形成する。
【0087】
上述したように、熱音響システム1によれば、管路Pが任意の管路長に形成されていても、調整部10の入出力を調整することにより、従来のように管路Pの管路長により音響インピーダンスの共振を調整する必要がなく、第2熱音響デバイス6(出力部)において任意の出力値を出力することができる。
【0088】
なお、ここまで、蓄熱器3における温度比及び蓄熱器7における温度比の算出結果に基づいた制御方法を説明をしてきたが、調整部10は、第1熱音響デバイス2から発生する音場の変化に基づいて、制御部12が管路P内の振動流の仕事流を減少又は増幅させてもよいし、第1検出部で第2熱音響デバイス6(出力部)の出力を検出し、出力値に基づいて制御部12が管路P内の振動流の仕事流を減少又は増幅させてもよい。
【0089】
また、ここまでは、制御部12もしくは調整部10の外部に検出部を有する実施例において制御方法について述べたが、必ずしも検出部を制御部や調整部の外部に設ける必要はなく、制御部12もしくは調整部10が検出部を兼ねていてもよい。また、第1検出部4、第2検出部8の各検出部は、温度を検出するものとしたが、これに限らず、温度以外の各種パラメータを検出するものであってもよい。
【0090】
第1検出部4、第2検出部8の各検出部は、原動用の原動機の温度、冷却機の温度、原動機から出力される仕事流、管路Pに励起している周波数、管路Pにおける位相、管路Pにおけるインピーダンス、管路Pにおける振動振幅、管路Pにおける圧力振幅、管路Pにおける流速振幅の各パラメータのうち、少なくとも1つを検出してもよい。制御部12は、検出部により検出された各種パラメータの検出値に応じて調整部10を調整し、第2熱音響デバイス6(出力部)の出力値を調整してもよい。
【0091】
さらに、制御方法は管路P内の振動流の仕事流や音場の変化について検出部からの検出と制御部12と調整部10からの調整からをイタレーションしながら制御を行ってもよく、もしくはパラメータ変化に応じて任意の値とするのに必要な変化パラメータに対する調整値をデータベース化しておくことで制御を行ってもよい。熱音響システム1は、データベース化された調整値を記憶する記憶部(不図示)を備えていてもよく、調整値は、ネットワークに接続されたサーバ装置(不図示)から制御部12に提供されるものであってもよい。また、制御部12は、ネットワークに接続された端末装置に設けられていてもよい。即ち、熱音響システム1は、ネットワークから遠隔操作されるものであってもよい。
【0092】
以下、熱音響システムの変形例について説明する。以下の説明では、上記実施形態と同一の構成については同一の名称及び符号を用い、重複する説明は適宜省略する。なお、熱音響デバイスでの仕事の取り出し方は「冷却」「昇温」「発電」などが上げられる。なお、「発電」に関してはリニアモーターを用いる手法、衝動タービンを用いる手法など様々な手法が上げられるが、今回紹介する例に限らず適応可能である。以下の例では多くの例を「冷却」で説明を行うが、「冷却」を「昇温」や「発電」に置き換えることも問題ない。
【0093】
[変形例1]
図4に示されるように、熱音響システム1Aは、任意の管路長に形成された管路Pにおいて第1ループ管P1、第2ループ管P2、直管部P3、及び分岐管P4が形成されている。直管部P3の一端側には、第1ループ管P1が接続されている。直管部P3の他端側には、第1ループ管P1が接続されている。分岐管P4は、直管部P3の流路の途中から丁字状に分岐している。即ち、分岐管P4は、一端が直管部P3の流路の途中に接続されている。
【0094】
管路Pにおいて、第1ループ管P1、第2ループ管P2、直管部P3、分岐管P4のそれぞれの管路長は、対称性、音響インピーダンスを考慮せずに設置対象の形状に合わせて任意の長さに形成されていてもよい。管路Pは、管軸が必ずしも同一面に形成されていなくてもよく、第1ループ管P1、第2ループ管P2、直管部P3、分岐管P4のそれぞれの管軸が3次元的に曲げられていてもよい。第1ループ管P1、第2ループ管P2は、流路がループして形成されているものであり、途中に湾曲部や折れ曲がり部が形成されていてもよい。また、直管部P3とは概念的な記載であり、必ずしも直線的に形成されているものだけでなく、一つの流路を有して流路において湾曲部や折れ曲がり部が形成されていてもよい。分岐管P4の形状も同様に湾曲部や折れ曲がり部が形成されていてもよい。
【0095】
接続点が直管部P3の流路の途中に設けられている。第1ループ管P1には、熱音響原動機となる第1熱音響デバイス2が設けられている。第2ループ管P2には、熱音響冷却機となる第2熱音響デバイス6が設けられている。分岐管P4の他端には、調整部10が接続されている。
【0096】
熱音響システム1Aにおいては、調整部10を第1熱音響デバイス2内に形成される音響インピーダンスに応じて、仕事流を入力するドライバーや仕事を吸収する発電機として用いる。調整部10は、第1熱音響デバイス2と第2熱音響デバイス6とを接続可能な音響インピーダンスを、任意の管路長に形成された直管部P3と分岐管P4との接続点において発生させる。即ち、第1熱音響デバイス2と第2熱音響デバイス6とを接続可能な音響インピーダンスを発生させる接続点は、第1ループ管P1と直管部P3との接続点だけでなく(
図1参照)、管路Pの他の任意の位置に設けられていてもよい。
【0097】
管路Pにおいて、直管部P3、分岐管P4のそれぞれの管路長は、対称性、音響インピーダンスを考慮せずに設置対象の形状に合わせて任意の長さに形成されていてもよい。管路Pは、管軸が必ずしも同一面に形成されていなくてもよく、直管部P3、分岐管P4のそれぞれの管軸が3次元的に曲げられていてもよい。また、直管部P3とは概念的な記載であり、必ずしも直線的に形成されているものだけでなく、一つの流路を有して流路において湾曲部や折れ曲がり部が形成されていてもよい。分岐管P4の形状も同様に湾曲部や折れ曲がり部が形成されていてもよい。
【0098】
上述したように、熱音響原動機によって動作する熱音響冷却機に関して説明した。熱音響冷却機は、熱音響昇温機、パルス管冷却機、リニア発電機に置き換えてもよい。また、熱音響原動機や熱音響冷却機をループ管内ではなく直管部P3に配置してもよい。また、熱音響原動機のかわりに音響ドライバーを用いて仕事流の入力を行ってもよい。さらに、熱音響原動機を仕事流の発生ではなく仕事流の増幅として用いるように配置された箇所があってもよい。
【0099】
[変形例2]
図5に示されるように、変形例2にかかる熱音響システム1Bは、管路Pにおいて、第2ループ管P2と、直管部P3と分岐管P4とが形成されている。直管部P3の一端側には、入力用のリニアモーター15が接続されている。直管部P3一端側の途中には第1熱音響デバイス2が設けられている。第2ループ管P2には、第2熱音響デバイス6が設けられている。直管部P3の他端側には、第2ループ管P2が接続されている。直管部P3の途中から分岐管P4が分岐している。分岐管P4の一端側には直管部P3に接続され、他端側には調整部10が接続されている。
【0100】
管路Pにおいて、第2ループ管P2、直管部P3、分岐管P4のそれぞれの管路長は、対称性、音響インピーダンスを考慮せずに設置対象の形状に合わせて任意の長さに形成されていてもよい。管路Pは、管軸が必ずしも同一面に形成されていなくてもよく、第2ループ管P2、直管部P3、分岐管P4のそれぞれの管軸が3次元的に曲げられていてもよい。第2ループ管P2は、流路がループして形成されているものであり、途中に湾曲部や折れ曲がり部が形成されていてもよい。また、直管部P3とは概念的な記載であり、必ずしも直線的に形成されているものだけでなく、一つの流路を有して流路において湾曲部や折れ曲がり部が形成されていてもよい。分岐管P4の形状も同様に湾曲部や折れ曲がり部が形成されていてもよい。
【0101】
リニアモーター15からは、管路P内に仕事流が入力される。第1熱音響デバイス2において、入力された仕事流が増幅される。増幅された仕事流は、第2熱音響デバイス6に入力され、冷却された熱を出力する。第2熱音響デバイス6における出力は、調整部10が入出力する仕事流の調整量により調整される。熱音響システム1Bによれば、直管部P3に設けられた第1熱音響デバイス2側に仕事流を入力するリニアモーター15が設けられていることにより、第1熱音響デバイス2と第2熱音響デバイス6とを接続する直管部P3の管路長を短く、あるいは長く形成することができる。
【0102】
[変形例3]
図6に示されるように、変形例3にかかる熱音響システム1Cは、管路Pにおいて、直管部P3、分岐管P4が形成されている。直管部P3の流路の途中からは、分岐管P4が接続されている。分岐管P4の一端側は、直管部P3に接続されている。分岐管P4の他端側には、調整部10が接続されている。直管部P3の一端側には、第1熱音響デバイス2が設けられている、直管部P3の他端側には、第2熱音響デバイス6(出力部)がパルス管冷凍機20に置き換えられて構成されている。第2熱音響デバイス6(出力部)は、パルス管冷凍機20を備え、仕事流に基づいて冷熱を出力するように構成されている。
【0103】
管路Pにおいて、直管部P3、分岐管P4のそれぞれの管路長は、対称性、音響インピーダンスを考慮せずに設置対象の形状に合わせて任意の長さに形成されていてもよい。管路Pは、管軸が必ずしも同一面に形成されていなくてもよく、直管部P3、分岐管P4のそれぞれの管軸が3次元的に曲げられていてもよい。また、直管部P3とは概念的な記載であり、必ずしも直線的に形成されているものだけでなく、一つの流路を有して流路において湾曲部や折れ曲がり部が形成されていてもよい。分岐管P4の形状も同様に湾曲部や折れ曲がり部が形成されていてもよい。
【0104】
パルス管冷凍機20は、一端21A側が直管部P3の他端に接続された蓄熱器21(蓄冷器)と、蓄熱器21の他端21B側に一端22Aが接続されたパルス管22と、パルス管22の他端22B側に一端23Aが接続された細管23と、細管23の他端23B側に接続されたタンク24とを備える。蓄熱器21の一端21A側には、作動流体の振動流が入力される。蓄熱器21内部の気体は、振動に応じて圧縮と膨張を繰り返す。
【0105】
パルス管22内においては、蓄熱器21に入力された振動に応じて気体がピストンのように往復する。パルス管22内において、圧力振動とパルス管22内でのガスピストンの変位との位相差に基づいて、気体が膨張する一端21A側に冷却作用が生じる。第1熱音響デバイス2に入力された熱により発生した振動流は、パルス管冷凍機20に入力される。パルス管冷凍機20における出力は、調整部10が入出力する仕事流の調整量により調整される。熱音響システム1Cによれば、管路Pが直管部P3と分岐管P4とにより形成されていることにより、管路長を短く、あるいは長く形成することができる。
【0106】
[変形例4]
図7に示されるように、変形例4にかかる熱音響システム1Dは、管路Pにおいて、第1ループ管P1、直管部P3、分岐管P4が形成されている。分岐管P4の一端側は、直管部P3の流路の途中に接続されている。分岐管P4の他端側には、調整部10が接続されている。直管部P3の一端側には、第1ループ管P1が接続されている。第1ループ管P1には、第1熱音響デバイス2が設けられている。直管部P3の他端側には、パルス管冷凍機20が設けられている。
【0107】
管路Pにおいて、第1ループ管P1、直管部P3、分岐管P4のそれぞれの管路長は、対称性、音響インピーダンスを考慮せずに設置対象の形状に合わせて任意の長さに形成されていてもよい。管路Pは、管軸が必ずしも同一面に形成されていなくてもよく、第1ループ管P1、直管部P3、分岐管P4のそれぞれの管軸が3次元的に曲げられていてもよい。第1ループ管P1は、流路がループして形成されているものであり、途中に湾曲部や折れ曲がり部が形成されていてもよい。また、直管部P3とは概念的な記載であり、必ずしも直線的に形成されているものだけでなく、一つの流路を有して流路において湾曲部や折れ曲がり部が形成されていてもよい。分岐管P4の形状も同様に湾曲部や折れ曲がり部が形成されていてもよい。
【0108】
第1熱音響デバイス2に入力された熱により発生した振動流は、パルス管冷凍機20に入力される。パルス管冷凍機20における出力は、調整部10が入出力する仕事流の調整量により調整される。熱音響システム1Dによれば、管路Pの管路長を短く、あるいは長く形成することができる。
【0109】
[変形例5]
図8に示されるように、変形例5にかかる熱音響システム1Eは、管路Pにおいて、直管部P3、第2ループ管P2、分岐管P4が形成されている。直管部P3の一端側には、第1熱音響デバイス2が設けられている。直管部P3の他端側には、第2ループ管P2が接続されている。直管部P3の流路の途中には、分岐管P4が接続されている。第2ループ管P2には、第2熱音響デバイス6が設けられている。分岐管P4の一端側は、直管部P3の流路の途中に接続されている。分岐管P4の他端側には、調整部10が接続されている。
【0110】
管路Pにおいて、第2ループ管P2、直管部P3、分岐管P4のそれぞれの管路長は、対称性、音響インピーダンスを考慮せずに設置対象の形状に合わせて任意の長さに形成されていてもよい。管路Pは、管軸が必ずしも同一面に形成されていなくてもよく、第2ループ管P2、直管部P3、分岐管P4のそれぞれの管軸が3次元的に曲げられていてもよい。第2ループ管P2は、流路がループして形成されているものであり、途中に湾曲部や折れ曲がり部が形成されていてもよい。また、直管部P3とは概念的な記載であり、必ずしも直線的に形成されているものだけでなく、一つの流路を有して流路において湾曲部や折れ曲がり部が形成されていてもよい。分岐管P4の形状も同様に湾曲部や折れ曲がり部が形成されていてもよい。
【0111】
第1熱音響デバイス2に入力された熱により発生した振動流は、第2熱音響デバイス6に入力される。第2熱音響デバイス6における出力は、調整部10が入出力する仕事流の調整量により調整される。熱音響システム1Eによれば、管路Pの管路長を短く、あるいは長く形成することができる。
【0112】
[変形例6]
図9に示されるように、変形例6にかかる熱音響システム1Fは、管路Pにおいて、単一のループ状に形成されたループ管P5と、ループ管P5から分岐した分岐管P4が形成されている。ループ管P5の流路の途中には、第1熱音響デバイス2と第2熱音響デバイス6が設けられている。第1熱音響デバイス2と第2熱音響デバイス6との間のループ管P5の流路の途中には、分岐管P4が接続されている。分岐管P4の一端側は、ループ管P5の流路の途中に接続されている。分岐管P4の他端側には、調整部10が接続されている。
【0113】
管路Pにおいて、ループ管P5、分岐管P4のそれぞれの管路長は、対称性、音響インピーダンスを考慮せずに設置対象の形状に合わせて任意の長さに形成されていてもよい。管路Pは、管軸が必ずしも同一面に形成されていなくてもよく、ループ管P5、分岐管P4のそれぞれの管軸が3次元的に曲げられていてもよい。ループ管P5は、流路がループして形成されているものであり、途中に湾曲部や折れ曲がり部が形成されていてもよい。また、分岐管P4の形状も同様に湾曲部や折れ曲がり部が形成されていてもよい。
【0114】
第1熱音響デバイス2に入力された熱により発生した振動流は、第2熱音響デバイス6に入力される。第2熱音響デバイス6における出力は、調整部10が入出力する仕事流の調整量により調整される。熱音響システム1Fによれば、管路Pの管路長を短く、あるいは長く形成することができる。
【0115】
上述したように、熱音響システムが熱音響原動機、熱音響冷却機、昇温機、パルス管冷却機により構成されているものを例示した。熱音響システムは、入力側の熱音響原動機と出力側の発電機とを接続して構成されていてもよい。
【0116】
[変形例7]
図10に示されるように、変形例7にかかる熱音響システム1Gは、管路Pにおいて、直管部P3、分岐管P4が形成されている。直管部P3の一端側には、第1熱音響デバイス2が設けられている。直管部P3の他端側には、発電機50が接続されている。発電機50は、例えば、リニアモーターを備え、発電した電力により仕事を取り出す外部抵抗となる負荷51が接続されている。直管部P3の流路の途中には分岐管P4が接続されている。分岐管P4の一端側に、直管部P3が接続されており、他端側には、調整部10が接続されている。
【0117】
管路Pにおいて、直管部P3、分岐管P4のそれぞれの管路長は、対称性、音響インピーダンスを考慮せずに設置対象の形状に合わせて任意の長さに形成されていてもよい。管路Pは、管軸が必ずしも同一面に形成されていなくてもよく、直管部P3、分岐管P4のそれぞれの管軸が3次元的に曲げられていてもよい。また、直管部P3とは概念的な記載であり、必ずしも直線的に形成されているものだけでなく、一つの流路を有して流路において湾曲部や折れ曲がり部が形成されていてもよい。分岐管P4の形状も同様に湾曲部や折れ曲がり部が形成されていてもよい。
【0118】
熱音響システム1Gによれば、第1熱音響デバイス2に入力された熱エネルギーから仕事流を発生させ、調整部10により調整された仕事流を発電機50に入力して発電を行うことができる。発電機50は、リニアモーターだけでなく、衝動タービン等の他の発電機が用いられてもく、上記実施形態に限らず適応可能である。熱音響システム1Gによれば、管路Pの管路長を短く、あるいは長く形成することができる。
【0119】
[変形例8]
変形例7にかかる熱音響システム1Gの入力部の第1熱音響デバイス2には、仕事流を入力するリニアモーター15が接続されていてもよい。
【0120】
図11に示されるように、変形例8にかかる熱音響システム1Hは、管路Pにおいて、直管部P3、分岐管P4が形成されている。直管部P3の一端側には、第1熱音響デバイス2が設けられている。第1熱音響デバイス2には、リニアモーター15が仕事流を入力するように接続されている。直管部P3の他端側には、発電機50が接続されている。発電機50は、例えば、リニアモーターを備え、発電した電力により仕事を取り出す外部抵抗となる負荷51が接続されている。直管部P3の流路の途中には分岐管P4が接続されている。分岐管P4の一端側に、直管部P3が接続されており、他端側には、調整部10が接続されている。
【0121】
管路Pにおいて、直管部P3、分岐管P4のそれぞれの管路長は、対称性、音響インピーダンスを考慮せずに設置対象の形状に合わせて任意の長さに形成されていてもよい。管路Pは、管軸が必ずしも同一面に形成されていなくてもよく、直管部P3、分岐管P4のそれぞれの管軸が3次元的に曲げられていてもよい。また、直管部P3とは概念的な記載であり、必ずしも直線的に形成されているものだけでなく、一つの流路を有して流路において湾曲部や折れ曲がり部が形成されていてもよい。分岐管P4の形状も同様に湾曲部や折れ曲がり部が形成されていてもよい。
【0122】
熱音響システム1Hによれば、リニアモーター15により入力された仕事流を第1熱音響デバイス2において増幅し、調整部10により調整された仕事流を発電機50に入力して発電を行うことができる。発電機50は、リニアモーターだけでなく、衝動タービン等の他の発電機が用いられてもよく、上記実施形態に限らず適応可能である。熱音響システム1Hによれば、管路Pを任意の管路長に形成でき、管路Pを短く、あるいは長く形成することができる。
【0123】
[変形例9]
図12に示されるように、変形例9にかかる熱音響システム1Jは、管路Pにおいて、単一のループ状に形成されたループ管P5と、ループ管P5の途中に直管部P6が形成されている。ループ管P5の流路の途中には、第1熱音響デバイス2と第2熱音響デバイス6が設けられている。第1熱音響デバイス2と第2熱音響デバイス6との間のループ管P5の流路の途中には、直管部P6が形成されている。直管部P6には、調整部11が設けられている。
【0124】
管路Pにおいて、ループ管P5、直管部P6のそれぞれの管路長は、対称性、音響インピーダンスを考慮せずに設置対象の形状に合わせて任意の長さに形成されていてもよい。管路Pは、管軸が必ずしも同一面に形成されていなくてもよく、ループ管P5、直管部P6のそれぞれの管軸が3次元的に曲げられていてもよい。ループ管P5は、流路がループして形成されているものであり、途中に湾曲部や折れ曲がり部が形成されていてもよい。また、直管部P6とは概念的な記載であり、必ずしも直線的に形成されているものだけでなく、一つの流路を有して流路において湾曲部や折れ曲がり部が形成されていてもよい。
【0125】
調整部11は、直管部P6内を往復する一対のピストン11Aと、ピストン11Aに接続されたピストンロッド11Bと、一対のピストンロッド11Bを駆動する駆動部11Cと、電源11Dとを備える。ピストンロッド11Bは、磁性体により形成されている。駆動部11Cは、電磁コイルを有し、電源11Dから交流電流が入力されると交流磁界を発生させる。ピストンロッド11Bは、電磁コイルの中心を摺動自在に取り付けられている。電磁コイルに交流磁界が発生すると、ピストンロッド11Bが電磁コイルに対して往復運動する。この時、一対のピストンロッド11B同士は、互いに離間及び近位する方向に往復運動する。
【0126】
調整部11は、駆動部11Cを駆動させピストンロッド11Bを往復運動させることにより、連動してピストン11Aを分岐管P4内において往復運動させ、管路P内に仕事流(振動流)を与える。調整部11は、例えば、第2熱音響デバイス6に入力される仕事流と同じ周波数帯の仕事流を発生させ、管路P内の振動流の仕事流を増加させることができる。また、調整部11は管路P内の仕事流(振動流)を受け発電機として動作することで仕事流を減少させてもよい。
【0127】
第1熱音響デバイス2に入力された熱により発生した振動流は、第2熱音響デバイス6に入力される。第2熱音響デバイス6における出力は、調整部11が入出力する仕事流の調整量により調整される。熱音響システム1Jによれば、管路Pの管路長を短く、あるいは長く形成することができる。
【0128】
上述した実施形態の熱音響システムによれば、第1熱音響デバイス2(入力部)及び第2熱音響デバイス6(出力部)において共振によって音響インピーダンスが一致する条件が満たされるように管路Pの管路長が調整されていなくても、調整部10が管路P内において仕事流を入出力することにより、任意の管路長に形成された管路Pにおいて第2熱音響デバイス6(出力部)から所望の出力を得ることができる。実施形態の熱音響システムによれば、管路Pを従来よりも短く、あるいは長く形成することができ、設置対象の形状に合わせて自由に設計ができる。
【0129】
上述したように、実施形態に係る熱音響システムは、調整部を接続することが可能であれば様々な装置構成により実現される。また、実施形態に係る熱音響システムは、設計要素として存在する以下のパラメータに関わらず適用可能である。
(1)作動気体の種類、平均圧力
(2)蓄熱器の流路径、長さ、材質
(3)管路の大きさ、長さ、形状(円管、矩形管)
(4)原動機、冷却機位置での断面積変化の有無
(5)管路断面積変化の有無
(6)熱音響デバイス内における原動機の数
(7)熱音響デバイス内における冷却機、発電機など仕事の取り出し口の数
【0130】
また、上記実施例については原動機がループ管や直管内に設置される構成であったが、仕事流の増幅・発生が可能であればこの形状に限らず、第1熱音響デバイス2(入力部)である熱音響原動機、制御部、調整部、検出部、第2熱音響デバイス6(出力部)の形状や数および組み合わせおよび配置によらず実施例の形状に限定されない。さらに、振動流の発生自体を熱音響原動機から行わず、振動流の入力源があってもよい。
【0131】
以上のように、熱音響現象を例に説明を行ったが、本発明は、熱音響現象に基づいた熱音響機関に限定されず、流体の振動流を利用する蓄熱器を備えるスターリングエンジン、パルス管冷凍機、GM冷凍機、スターリングクーラー、ヒートパイプ、熱音響機関等のエネルギー変換装置に適用可能である。
【0132】
以上では、制御要素として仕事流を例に説明を行ったが、制御要素として存在する以下のパラメータに関わらず適用可能である。
(1)周波数
(2)位相
(3)インピーダンス
(4)振動振幅
(5)圧力振幅
(6)流速振幅
【符号の説明】
【0133】
1、1A-1J 熱音響システム、2 第1熱音響デバイス(入力部)、3 蓄熱器、3A 一端部、3B 他端部、3C 第1熱交換器、3D 第2熱交換器、3R 流路、4 第1検出部、6 第2熱音響デバイス、6 第2熱音響デバイス(出力部)、7 蓄熱器、7A 一端部、7B 他端部、7C 第3熱交換器、7D 第4熱交換器、8 第2検出部、10 調整部、10A ピストン、10B ピストンロッド、10C 駆動部、10D 電源、12 制御部、15 リニアモーター、20 パルス管冷凍機、21 蓄熱器、21A 一端、21B 他端、22 パルス管、22A 一端、22B 他端、23 細管、23A 一端、23B 他端、24 タンク、50 発電機、51 負荷、P 管路、P1 第1ループ管、P2 第2ループ管、P3 直管部、P4 分岐管、P5 ループ管