(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022065510
(43)【公開日】2022-04-27
(54)【発明の名称】自動ドア保守支援装置、自動ドア保守支援方法、自動ドア保守支援プログラム
(51)【国際特許分類】
E05F 15/74 20150101AFI20220420BHJP
E05F 15/643 20150101ALI20220420BHJP
【FI】
E05F15/74
E05F15/643
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020174136
(22)【出願日】2020-10-15
(71)【出願人】
【識別番号】503405689
【氏名又は名称】ナブテスコ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105924
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 賢樹
(72)【発明者】
【氏名】来海 大輔
【テーマコード(参考)】
2E052
【Fターム(参考)】
2E052AA02
2E052BA06
2E052CA06
2E052DA04
2E052DB04
2E052EA15
2E052EB01
2E052EC02
2E052KA25
(57)【要約】
【課題】設置した自動ドアが多数であっても、各自動ドアの保守点検に有用な情報を適切に提示できる自動ドア保守支援装置を提供する。
【解決手段】複数の自動ドアA1~Amの稼働情報を取得する稼働情報取得部2と、複数の自動ドアA1~Amの稼働条件を記録する稼働条件記録部4と、稼働条件記録部4で記録された稼働条件に基づいて、稼働条件が近似している近似稼働条件にある複数の自動ドアを抽出する抽出部5と、抽出部5で抽出された複数の自動ドアの稼働情報を比較して情報提示を行う情報提示部8を備える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の自動ドアの稼働情報を取得する稼働情報取得部と、
前記稼働情報取得部が取得した稼働情報のうち、稼働条件が近似している近似稼働条件にある複数の自動ドアの稼働情報を比較して情報提示を行う情報提示部と
を備える自動ドア保守支援装置。
【請求項2】
複数の自動ドアの稼働条件を記録する稼働条件記録部と、
前記稼働条件記録部で記録された稼働条件に基づいて、近似稼働条件にある複数の自動ドアを抽出する抽出部と
を備え、
前記情報提示部は、前記抽出部で抽出された複数の自動ドアの稼働情報を比較して情報提示を行う
請求項1に記載の自動ドア保守支援装置。
【請求項3】
前記稼働条件は、自動ドアの設置環境データ、自動ドア固有の固有データ、自動ドアの設定データ、自動ドアの稼働履歴データ、の少なくとも一つに基づく情報である
請求項1または2に記載の自動ドア保守支援装置。
【請求項4】
前記設置環境データは、自動ドアが設置される地域に関するデータ、自動ドアが設置される建物や施設に関するデータ、そのほか自動ドアの設置環境に関するデータ、の少なくとも一つを含む
請求項3に記載の自動ドア保守支援装置。
【請求項5】
前記固有データは、自動ドアまたはその部品の型番や仕様に関するデータ、自動ドアの設置の時期や方法に関するデータ、の少なくとも一つを含む、
請求項3または4に記載の自動ドア保守支援装置。
【請求項6】
前記設定データは、自動ドアの通行者の検出に関する設定値、自動ドアの開閉駆動に関する設定値、の少なくとも一つを含む、
請求項3から5のいずれかに記載の自動ドア保守支援装置。
【請求項7】
前記稼働履歴データは、自動ドアの過去の開閉動作の回数、自動ドアの過去の稼働率、の少なくとも一つを含む
請求項3から6のいずれかに記載の自動ドア保守支援装置。
【請求項8】
前記稼働情報取得部は、自動ドアを開閉駆動する駆動部の前記稼働情報を取得し、
前記稼働情報は、前記駆動部における駆動電圧、駆動電流、通電時間の少なくとも一つを含む
請求項1から7のいずれかに記載の自動ドア保守支援装置。
【請求項9】
前記稼働情報取得部は、自動ドアに設けられたセンサの前記稼働情報を取得し、
前記稼働情報は、前記センサにおける検出強度、通電時間の少なくとも一つを含む
請求項1から8のいずれかに記載の自動ドア保守支援装置。
【請求項10】
前記近似稼働条件にある複数の自動ドアの稼働情報を比較して自動ドアの診断を行う診断部を備え、
前記情報提示部は前記診断部の診断結果を提示する
請求項1から9のいずれかに記載の自動ドア保守支援装置。
【請求項11】
複数の自動ドアの稼働情報を取得する稼働情報取得ステップと、
前記稼働情報取得ステップで取得した稼働情報のうち、稼働条件が近似している近似稼働条件にある複数の自動ドアの稼働情報を比較して情報提示を行う情報提示ステップと
を備える自動ドア保守支援方法。
【請求項12】
複数の自動ドアの稼働情報を取得する稼働情報取得ステップと、
前記稼働情報取得ステップで取得した稼働情報のうち、稼働条件が近似している近似稼働条件にある複数の自動ドアの稼働情報を比較して情報提示を行う情報提示ステップと
をコンピュータに実行させる自動ドア保守支援プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は自動ドアの保守支援技術に関する。
【背景技術】
【0002】
電気等の動力で自動的に開閉する自動ドアは広く普及し、あらゆるタイプの建物や施設に設置されている。自動ドアの正常な稼働を担保するため、通常、設置後に定期的な保守点検が行われる。情報通信技術の発展に伴って、一部の保守点検の作業は遠隔から実施できるが、故障判定や修理は作業員が設置現場に赴いて実施する必要がある。一方で、作業員が設置現場に赴いて保守点検を実施したとしても、結果的に全く異常が発見されないケースも多い。このように、保守点検は必要不可欠な業務だが、効率化できる余地がある。特に、作業員のリソースは限られている場合が多く、その効率的な活用について事業運営上の強い要請が存在する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
自動ドアの保守点検を効率化する技術の一例として、特許文献1には、多数の自動ドアの現状確認に必要な情報を一つの監視画面に集約して、一覧性を向上させる監視システムが開示されている。しかし、画面面積の制約上、一画面中に表示可能な自動ドアの数には自ずと上限がある。また、規模の大きい自動ドア事業者は極めて多数の自動ドアを様々な場所に設置しており、その膨大な情報を一つの監視画面に表示するのは現実的ではない。
【0005】
本発明はこうした状況に鑑みてなされたものであり、その目的は、設置した自動ドアが多数であっても、各自動ドアの保守点検に有用な情報を適切に提示できる自動ドア保守支援装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明のある態様の自動ドア保守支援装置は、複数の自動ドアの稼働情報を取得する稼働情報取得部と、稼働情報取得部が取得した稼働情報のうち、稼働条件が近似している近似稼働条件にある複数の自動ドアの稼働情報を比較して情報提示を行う情報提示部とを備える。
【0007】
多数の自動ドアが設置される場合、その稼働条件は設置場所により異なるが、この態様によれば、近似した稼働条件にある自動ドアの稼働情報が比較されて情報提示がなされる。近似稼働条件にある複数の自動ドアについては、正常稼働時には全ての稼働情報が近似したものとなるが、そのうちのある自動ドアに異常がある場合、その稼働情報は、それ以外の正常稼働中の自動ドアの稼働情報と乖離する。したがって、自動ドアの異常を的確に検知できる。
【0008】
本発明の別の態様は、自動ドア保守支援方法である。この方法は、複数の自動ドアの稼働情報を取得する稼働情報取得ステップと、稼働情報取得ステップで取得した稼働情報のうち、稼働条件が近似している近似稼働条件にある複数の自動ドアの稼働情報を比較して情報提示を行う情報提示ステップとを備える。
【0009】
なお、以上の構成要素の任意の組合せ、本発明の表現を方法、装置、システム、記録媒体、コンピュータプログラムなどの間で変換したものもまた、本発明の態様として有効である。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、設置した自動ドアが多数であっても、稼働条件の近似性に基づいて、各自動ドアの保守点検に有用な情報を適切に提示できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】実施形態に係る自動ドア保守支援装置の構成を模式的に示す図である。
【
図3】自動ドアの機能を概略的に示すブロック図である。
【
図4】近似稼働条件にある自動ドアのコントローラとセンサの稼働情報の一覧表である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
初めに実施形態の概要を説明する。本実施形態の自動ドア保守支援装置は、多数の自動ドアの中から、稼働条件の近似性に基づいて少数の自動ドアを抽出する。稼働条件は、気温や湿度等の設置環境データや、自動ドアの重量や寸法等の固有データによって決まる。稼働条件が近似している自動ドアを抽出して比較することで、劣化や故障の可能性がある自動ドアを効果的に発見できる。
【0013】
図1は、本発明の実施形態に係る自動ドア保守支援装置1の構成を模式的に示す。自動ドア保守支援装置1は、様々な場所に設置された多数の自動ドアの保守作業を支援する。自動ドア保守支援装置1は、稼働情報取得部2と、稼働情報記録部3と、稼働条件記録部4と、抽出部5と、保守対象自動ドア指定部6と、診断部7と、情報提示部8を備える。
【0014】
自動ドア保守支援装置1の詳細な説明を行う前に、その保守支援対象である自動ドアについて、
図2および
図3を参照して説明する。
図2は、自動ドア100を概略的に示す正面図である。
図3は、自動ドア100の機能を概略的に示すブロック図である。
【0015】
図3に示す各機能ブロックは、ハードウェア的には、演算機能、制御機能、記憶機能、入力機能、出力機能を有するコンピュータや、各種の電子素子、機械部品等で実現され、ソフトウェア的にはコンピュータプログラム等によって実現されるが、ここでは、それらの連携によって実現される機能ブロックが描かれる。したがって、これらの機能ブロックがハードウェア、ソフトウェアの組合せによって様々な形態で実現できることは、当業者には理解されるところである。
【0016】
図2または
図3に示されるように、自動ドア100は、開閉駆動される扉部10と、自動ドア100全体を制御するコントローラ20と、通行者を検出するセンサ30と、動力を発生させるドアエンジン40と、動力を扉部10に伝達する動力伝達部50とを主に備える。なお、以下の説明では、
図2における左右方向を水平方向とし、
図2における上下方向を鉛直方向とするが、自動ドア100は任意の姿勢で設置することができ、その設置方向が以下の例に限定されるものではない。
【0017】
扉部10は、それぞれ水平方向に可動に設けられる第1の可動扉11Lと第2の可動扉11Rと、第1の可動扉11Lおよび第2の可動扉11Rが開状態のときにそれぞれと重なる位置に設けられる第1の固定扉12Lと第2の固定扉12Rと、第1の可動扉11Lと第2の可動扉11Rの水平方向の動作をガイドするガイド機構13を備える。第1の可動扉11L、第2の可動扉11R、第1の固定扉12L、第2の固定扉12Rは、鉛直方向の寸法が水平方向の寸法よりも大きい縦長の矩形状に構成される。扉部10の開駆動時には、
図2で左側に示される第1の可動扉11Lが左方向に駆動され、
図2で右側に示される第2の可動扉11Rが右側に駆動される。また、扉部10の閉駆動時には、開駆動時とは逆に、第1の可動扉11Lが右方向に駆動され、第2の可動扉11Rが左方向に駆動される。なお、扉部10を構成する扉の数や形状は上記に限られず、設置場所のニーズに合わせて適宜設計可能である。また、同様に、扉部10の可動方向も水平方向に限られず、水平方向から傾斜した方向としてもよい。
【0018】
ガイド機構13は、走行レール131と、戸車132と、ガイドレール133と、振れ止め部134を備える。走行レール131は、可動扉11L、11Rの上方において、その可動域の全体に亘って水平方向に延伸する柱状のレール部材である。戸車132は、可動扉11L、11Rの上部にそれぞれ二つずつ設けられ、各可動扉11L、11Rを走行レール131に懸架する。各可動扉11L、11Rが水平方向に開閉駆動される際、戸車132が走行レール131を転動するため、円滑な開閉動作が可能となる。ガイドレール133は、可動扉11L、11Rの下方において、その可動域の全体に亘って水平方向に延伸する溝状のレール部材である。振れ止め部134は、可動扉11L、11Rの下部から張り出して溝状のガイドレール133に収まる。各可動扉11L、11Rが水平方向に開閉駆動される際、振れ止め部134がガイドレール133に沿って動くため、各可動扉11L、11Rの見込み方向(
図2の紙面に垂直な方向)の振動を抑制できる。
【0019】
なお、扉部10の開閉に関する各種のパラメータはコントローラ20で設定可能である。例えば、開閉速度、開閉強度、開口幅等を設定できる。開閉速度は、第1の可動扉11Lおよび第2の可動扉11Rの水平方向の速度であり、両扉の速度の方向は互いに逆向きである。両扉で速度の大きさ(速さ)は等しくするのが好適であるが、異なる速さとしてもよい。また、開閉速度は、通常開閉時とそれ以外の時で異なる値を設定してもよい。例えば、扉部10の通常の閉駆動中に、閉じる可動扉11L、11Rに通行者が挟まれるのを緊急回避するために開駆動に切り替えるいわゆる反転の場合、その開駆動時の可動扉11L、11Rの速度は、通常の開駆動時の速度と異なる値を設定してもよい。
【0020】
開閉強度は、可動扉11L、11Rの開閉時の力の大きさであり、後述するモータ41の発生トルク値で制御される。上記の開閉速度と同様に、基本的には可動扉11L、11Rで等しい開閉強度とするのが好適である。また、通常開閉時とそれ以外の時で異なる開閉強度を設定してもよい。開口幅は、扉部10が全開のときの第1の可動扉11Lと第2の可動扉11Rの水平方向の間隔である。
図2に示されるように、第1の可動扉11Lの全閉位置と全開位置の間の移動距離をW1、第2の可動扉11Rの全閉位置と全開位置の間の移動距離をW2とすれば、開口幅はW1+W2で表される。ここで、移動距離W1、W2は、自動ドア100の水平方向寸法に収まる範囲で個別に設定できる。
【0021】
コントローラ20は、制御部21と、ドアエンジン駆動部22と、入出力部23と、記憶部24を備える。制御部21は、マイクロコントローラに実装された演算処理装置で実現され、自動ドア100における各種の情報処理と制御を司る。ドアエンジン駆動部22は、インテリジェントパワーモジュール(IPM)で構成され、制御部21の制御の下でドアエンジン40のモータ41を駆動する電圧ないし電流を発生させる。入出力部23は、自動ドア100内の他の構成要素とのインターフェースである内部インターフェース231と、自動ドア100外とのインターフェースである外部インターフェース232で構成される。
【0022】
内部インターフェース231は、有線または無線の接続により、自動ドア100の各部と様々な情報をやり取りする。後述するセンサ30との関係では、センサ30での検出情報や、センサ30の稼働情報(例えば通電時間)を入力データとして受け取る。また、センサ30の設定値(例えば検出感度)を出力データとしてセンサ30に提供する。
【0023】
外部インターフェース232は、有線または無線の接続により、自動ドア100外の通信機器と様々な情報をやり取りする。例えば、外部インターフェース232は、自動ドア100の設置や保守点検のために現場に赴いた作業員が使用する作業端末と通信可能である。これにより、作業員は作業端末上で、自動ドア100の各部の情報を確認でき、また自動ドア100の各種のデータ(後述する「設置環境データ」、「固有データ」、「設定データ」等)を入力できる。外部インターフェース232がインターネット等の公衆情報通信網を介した通信機能を備える場合は、遠隔にあるコンピュータから自動ドア100の情報確認やデータ入力を行うことができる。
【0024】
記憶部24は、自動ドア100の各種のデータを記憶する汎用メモリである。特に本実施形態では、自動ドア100の稼働情報と稼働条件の記憶に記憶部24が利用される。詳細は後述するが、稼働情報とは、コントローラ20やセンサ30の実際の稼働に伴う情報であり、稼働条件とは、「設置環境データ」「固有データ」「設定データ」「稼働履歴データ」等の自動ドア100を稼働する際の前提となる情報である。このような情報の全てまたは一部が記憶部24に記憶され、本実施形態の自動ドア保守支援装置1で利用される。なお、後述するように、これらの稼働情報および稼働条件は遠隔にあるサーバ等にも記録され、他の自動ドアの稼働情報および稼働条件とともに一元的に参照可能となっている。
【0025】
センサ30は、起動センサ31と、補助センサ32を備える。起動センサ31は、扉部10の上方の無目60の表面に設けられる光電センサである。起動センサ31は、赤外線等の光を床面に向けて発射する投光部と、床面からの反射光を検出する受光部を備える。自動ドア100に通行者が近づいて光を遮ると受光部の受光量が変化するため、通行者を検出できる。このような起動センサ31での検出情報が内部インターフェース231を介してコントローラ20に入力されると、ドアエンジン駆動部22がモータ41を駆動して扉部10を開く。
【0026】
なお、起動センサ31は、マイクロ波等の電波や超音波の反射により通行者を検出する構成としてもよい。また、
図2で31Aとして示すように、可動扉11Lおよび11Rの少なくとも一方に設けられるタッチプレートが通行者によって押されることで通行者を検出する構成としてもよい。
【0027】
補助センサ32は、扉部10の第1の固定扉12Lと第2の固定扉12Rに設けられる光電センサである。補助センサ32は、第1の固定扉12Lおよび第2の固定扉12Rの一方に設けられる投光部と、他方に設けられる受光部を備える。投光部と受光部は床面から同じ高さに設けられ、投光部から水平方向に発射される赤外線等の光を受光部で検出する。扉部10が開いている状態で、その開口部を通行者が通過して光を遮ると受光部の受光量が変化するため、通行者を検出できる。補助センサ32の主な目的は閉保護であり、可動扉11L、11Rの閉動作中に補助センサ32が通行者を検出すると、制御部21は閉駆動を中止して開駆動に切り替える反転制御を行う。これにより、通行者が閉じる可動扉11L、11Rに挟まれるのを防止できる。なお、このような閉保護の制御において、補助センサ32と同様に光電センサで構成される起動センサ31の検出情報を併用することで、通行者の検出精度を高めて安全性を更に向上できる。
【0028】
なお、補助センサ32は、マイクロ波等の電波や超音波の反射により通行者を検出する構成としてもよい。また、補助センサ32は固定扉12L、12Rとは異なる場所に設けてもよい。例えば、起動センサ31と同様に無目60に設けてもよいし、自動ドア100近傍の天井に設置してもよい。このような補助センサ32を複数設ければ、コスト高にはなるものの、安全性が飛躍的に高まる。
【0029】
上記の起動センサ31および補助センサ32は、出力段に増幅器を備えており、各センサでの検出値を、後段のコントローラ20で扱える所定のレベルまで増幅する。したがって、センサの検出強度が低い場合は増幅率が高くなり、センサの検出強度が大きい場合は増幅率が低くなる。このように、各センサの増幅率は各センサの検出強度を示すデータになっている。
【0030】
ドアエンジン40は、回転動力を発生させる動力源としてのモータ41と、モータ41によって回転駆動される駆動プーリ42を備える。モータ41は、各種の公知のモータとして構成できるが、本実施形態では、一例として、ホール素子を用いたエンコーダ41Aを備えるブラシレスモータとする。エンコーダ41Aで検出されたモータ41の回転子の位置が制御部21に入力され、それに応じてドアエンジン駆動部22が駆動電圧ないし駆動電流をモータ41に印加することで、所望の回転動力が発生される。駆動プーリ42は、図示しない歯車機構等を介してモータ41の回転子と連結され、連動して回転する。
【0031】
動力伝達部50は、ドアエンジン40で発生された動力を扉部10に伝達し、可動扉11L、11Rを開閉駆動する。動力伝達部50は、動力伝達ベルト51、従動プーリ52、連結部材53を備える。動力伝達ベルト51は、内周面に多数の歯が形成された環状のタイミングベルトであり、
図2の右側において駆動プーリ42に巻き付けられ、
図2の左側において従動プーリ52に巻き付けられる。この状態において動力伝達ベルト51の水平方向の寸法は、駆動プーリ42と従動プーリ52の水平方向の距離に等しく、また可動扉11L、11Rの可動域の水平方向の寸法と同程度である。モータ41により駆動プーリ42が回転すると、動力伝達ベルト51を介して従動プーリ52が連動して回転する。
【0032】
連結部材53は、可動扉11L、11Rをそれぞれ動力伝達ベルト51に連結して、開閉駆動する。ここで、一方の可動扉は動力伝達ベルト51の上側に連結され、他方の可動扉は動力伝達ベルト51の下側に連結される。
図2の例では、動力伝達ベルト51が反時計回りに回転すると、第1の可動扉11Lが左側に移動し第2の可動扉11Rが右側に移動する開動作となり、動力伝達ベルト51が時計回りに回転すると、第1の可動扉11Lが右側に移動し第2の可動扉11Rが左側に移動する閉動作となる。
【0033】
以上のような構成の自動ドア100において、起動センサ31が通行者を検出すると、コントローラ20の制御の下、ドアエンジン40が反時計回りの回転動力を発生させ、扉部10を開駆動する。また、開駆動後、通行者が検出されない状態が所定時間継続した場合は、コントローラ20の制御の下、ドアエンジン40が時計回りの回転動力を発生させ、扉部10を閉駆動する。なお、閉駆動中に補助センサ32や起動センサ31が通行者を検出すると、コントローラ20が閉駆動から開駆動に切り替える反転制御を行う。
【0034】
図1に戻り、本実施形態の自動ドア保守支援装置1を詳細に説明する。自動ドア保守支援装置1は、様々な場所に設置された多数(mを自然数としてm個とする)の自動ドアA1~Amの保守作業を支援する。ここで、各自動ドアA1~Amは、典型的には
図2および
図3で説明したような標準的な構成を有するが、異なる型番や仕様の自動ドアが含まれる。また、型番や仕様が同じであっても、設置環境、設置方法、設定値等は自動ドア毎に異なり、その意味で完全に同一な自動ドアは存在しない。また、設置後の稼働状況も自動ドア毎に異なる。
【0035】
稼働情報取得部2は、複数の自動ドアA1~Amの稼働情報を取得する。稼働情報は各自動ドアA1~Amの実際の稼働に伴う情報である。
図2および
図3に示した自動ドア100では、大別して以下の稼働情報を取得できる。
・コントローラ20の稼働情報
・センサ30の稼働情報
【0036】
コントローラ20の稼働情報とは、具体的には、ドアエンジン駆動部22がモータ41を駆動する際の電圧、電流、1駆動当たりの通電時間等である。これらの稼働情報は、自動ドア100の劣化や故障の診断に利用できる。すなわち、自動ドア100が劣化または故障している場合、通常の駆動電圧や駆動電流では所期の開閉駆動ができないため、制御ループ等を通じて駆動電圧や駆動電流が過大または過小となり、異常を検知できる。また、自動ドア100が劣化または故障している場合、所期の開閉駆動ができないため、通電時間が通常よりも長くなり、異常を検知できる。
【0037】
センサ30の稼働情報とは、具体的には、起動センサ31および補助センサ32の検出強度、1検出当たりの通電時間等である。ここで検出強度とは、光電センサの場合は受光量である。また、上述の通り、センサの出力段に信号を所定レベルまで増幅する増幅器が設けられる場合は、その増幅率も検出強度を示す稼働情報となる。これらの稼働情報は、自動ドア100の劣化や故障の診断、特にセンサ30自身の劣化や故障の診断に利用できる。すなわち、センサ30が劣化または故障している場合、検出強度が過小(増幅率は過大)または過大(増幅率は過小)となり、異常を検知できる。また、センサ30が劣化または故障している場合、所期の検出動作ができないため、通電時間が通常よりも長くなり、異常を検知できる。
【0038】
以上のような自動ドア100の稼働情報は記憶部24に記憶され、自動ドア保守支援装置1による保守点検のために読み出して利用できる。例えば、自動ドア100の設置現場に赴いた作業員が作業端末を介して外部インターフェース232に接続し、記憶部24に記憶された稼働情報を読み出せる。この場合、稼働情報取得部2の機能は作業端末内に実現される。また、自動ドア100の外部インターフェース232が通信機能を有する場合は、インターネット等の公衆情報通信網を介して、サーバ等の遠隔のコンピュータから記憶部24に記憶された稼働情報を読み出せる。この場合、稼働情報取得部2の機能は遠隔のコンピュータ内に実現される。また、外部インターフェース232と遠隔のコンピュータが公衆情報通信網に常時接続されていれば、稼働情報をリアルタイムで遠隔のコンピュータに送信できる。この場合は記憶部24に稼働情報を記憶しなくてもよい。
【0039】
なお、以上の説明から明らかなように、稼働情報取得部2の機能は、特定の機器内に固定的に実現されるものではなく、様々な機器(作業端末や遠隔のコンピュータ)内に必要に応じて実現される。そして、これらの稼働情報取得部2で随時取得される自動ドアA1~Amの稼働情報は、サーバ等のストレージ領域に構成される稼働情報記録部3に一元的に記録され、現場作業員の作業端末や遠隔にあるコンピュータから随時アクセスできる。ここで、稼働情報記録部3には、全ての自動ドアの全ての稼働情報を全期間または一定期間に亘ってそのまま記録してもよいし、全期間または一定期間の稼働情報に基づく平均値等の統計値を記録してもよい。
【0040】
稼働条件記録部4は、複数の自動ドアA1~Amの稼働条件を記録する。上記の「稼働情報」が、自動ドアのコントローラやセンサの実際の稼働に伴う情報であるのに対し、「稼働条件」は、自動ドアを稼働する際の前提条件に関する情報である。稼働条件を構成するデータは、以下の四種類に大別される。
(1)設置環境データ
(2)固有データ
(3)設定データ
(4)稼働履歴データ
【0041】
設置環境データとは、自動ドアが設置される地域に関するデータ、自動ドアが設置される建物や施設に関するデータ、そのほか自動ドアの設置環境に関するデータである。設置地域に関するデータは、例えば、その地域の気温、湿度、昼夜の寒暖差、風速、風向き、降水量、日照等の天気、天候、気候に関する気象データや、台風や地震等の自然災害の被災履歴やリスクのデータ、海や山に近い等の地理や地形に関するデータが挙げられる。また、自動ドアが設置される建物や施設に関するデータは、例えば、建物の工法や構造、自動ドアの設置階数、自動ドア設置階のフロアプラン、自動ドア設置場所の床面、壁面、天井面の材質、自動ドア設置場所の空調や日照の条件、施設のタイプ(病院、学校等)が挙げられる。
【0042】
固有データとは、自動ドアまたはその部品の型番や仕様に関するデータ、自動ドアの設置の時期や方法に関するデータ等である。自動ドアの仕様は様々なデータを含むが、ドアの重量、寸法、形状、材質が特に重要である。自動ドアの設置の時期としては、最初に設置した年月日に加え、交換や修理を行った年月日も記録できる。自動ドアの設置方法に関するデータとしては、自動ドアの設置方角や、起動センサ31や補助センサ32の床面からの取り付け高さ等を記録できる。
【0043】
設定データとは、自動ドアの開閉駆動に関する設定値、自動ドアの通行者の検出に関する設定値等である。開閉駆動に関する設定値としては、
図2に関して上述した扉部10の開閉速度、開閉強度、開口幅が例示される。これらの開閉駆動の設定値は記憶部24に記憶され、それに基づいてドアエンジン駆動部22がモータ41を駆動して所望の開閉速度、開閉強度、開口幅を実現する。また、自動ドアの通行者の検出に関する設定値としては、起動センサ31および補助センサ32の検出感度が例示される。ここで、検出感度は、通行者を検出したと判定する受光量の閾値で設定される。閾値が小さい場合に検出感度が高く、小さい受光量でも検出があったと判定する。逆に閾値が大きい場合に検出感度が低く、小さい受光量では検出があったと判定しない。
【0044】
稼働履歴データとは、自動ドアの過去の開閉動作の回数、自動ドアの過去の稼働率等である。過去の開閉動作の回数は設置時からの累計の回数でもよいし、過去の一定期間内での累計の回数でもよい。また、通常の開閉動作の回数と、閉駆動中に開駆動に反転した回数を区別して記録することが好ましい。通常の開閉動作に比べて反転動作は自動ドアにかかる負担が大きく、反転回数が多い自動ドアは優先的に保守点検する必要があるためである。過去の稼働率は、例えば一日当たりの開閉動作の回数として記録できる。
【0045】
以上のような各自動ドアの稼働条件の記録は、例えば次のように行われる。「設置環境データ」および「固有データ」は、自動ドアが設置された後は基本的には変化しないデータも多いため、これらのデータは自動ドアの設置時にまとめて記録する。記録作業は現場で設置を担当する作業員や、遠隔から設置作業を監督する監督員がマニュアルで行ってもよいし、項目によっては人手を介さずに自動入力させてもよい。設置後に変化するデータ、例えば、設置環境データに含まれる気象データや、自然災害の被災履歴やリスクのデータは随時更新する。これらは自動ドアと直接関係しないデータなので、設置現場に行かずともインターネット等を通じて容易に入手可能である。また、部品の交換や設置方法の調整等により固有データが変化した場合も、適宜更新できる。
【0046】
「設定データ」は、自動ドアの設置時の初期設定データを作業員や監督員が記録する。設置後に設定データが変更された場合は、それに基づき稼働条件を更新する。「稼働履歴データ」は、各自動ドアの記憶部24に逐次記録される。自動ドア100の外部インターフェース232が通信機能を有する場合は、インターネット等の公衆情報通信網を介して、サーバ等の遠隔のコンピュータに直接稼働履歴データを記録してもよい。
【0047】
以上のような自動ドア100の稼働条件の全部または一部は、自動ドア100のローカルの記憶部24にも記憶できるが、作業員または監督員のマニュアル操作に基づき、またはネットワークを介して自動的に読み出して、サーバ等のストレージ領域に構成される稼働条件記録部4に一元的に記録するのが好ましい。これにより、自動ドア保守支援装置1の後段で、多数の自動ドアの稼働条件を参照した適切な処理を行うことができる。
【0048】
抽出部5は、稼働条件記録部4で記録された稼働条件に基づいて、近似稼働条件にある複数の自動ドアを抽出する。具体的には、保守対象自動ドア指定部6によって指定された保守対象の自動ドアと、それと近似稼働条件にある他の自動ドアを抽出する。
【0049】
保守対象自動ドア指定部6は、例えば次のように保守対象の自動ドアを指定する。作業員が特定の自動ドアの設置現場に赴いて保守点検作業を行う場合、その自動ドアを保守対象に指定する。また、コンピュータの操作に基づき、遠隔にある任意の自動ドアを保守対象に指定してもよい。さらに、マニュアルでの保守対象の指定がない場合は、コンピュータが巡回的に各自動ドアを順番に保守対象に指定してもよい。また、劣化や故障の兆候が見られる自動ドアが発見された場合は、それを自動的に保守対象に指定してもよい。
【0050】
抽出部5は、上記の保守対象の自動ドアと、それ以外の自動ドアが近似稼働条件にあるか否かを判定するが、その判定基準は、上述の「設置環境データ」、「固有データ」、「設定データ」、「稼働履歴データ」に基づき適宜設定可能である。
【0051】
例えば、稼働条件を構成する上記のデータのうち、演算可能なデータ(例えば、気温や湿度等の気候関連の数値、自動ドアの重量や寸法、自動ドアの各種設定値、自動ドアの過去の稼働率や稼働回数の値)については、保守対象の自動ドアとの差分値を演算し、それらが所定の閾値よりも小さい自動ドアが近似稼働条件にあると判定できる。このとき、近似稼働条件の判定において各データの優先度が異なる場合、各データの差分値に重み付けを行うことで優先度の違いを反映できる。
【0052】
また、稼働条件を構成する上記のデータのうち、演算不可能なデータ(例えば、自動ドアの設置地域の地理や地形に関するデータ、自動ドアの設置建物に関するデータ、自動ドアまたはその部品の型番、自動ドアの設置方法)については、演算によらない近似判定の基準を予め設定できる。例えば型番については、同一の型番の製品だけでなく同じ製品シリーズに属する別の型番の製品は近似とし、別の製品シリーズに属する製品は非近似とできる。
【0053】
上記のような近似判定の基準は予め設定してもよいし、保守のニーズに応じてユーザがその都度設定してもよい。後者の例として、台風や地震等の自然災害の被害を受けた地域の自動ドアの緊急保守対応を行う場合、「設置環境データ」に含まれる地域データに基づき、該当地域の自動ドアを抽出する近似判定の基準を容易に設定できる。
【0054】
このように任意の近似判定の基準を設定することで、抽出部5は所望の観点から近似稼働条件にある複数の自動ドアを抽出できる。本実施形態では、抽出部5がm個の自動ドアA1~Amの中から複数の自動ドアを抽出する際に、保守対象自動ドア指定部6によって指定された自動ドアB1と、それと近似稼働条件にあるn-1個の自動ドアB2~Bnの、合計n個の自動ドアB1~Bnを抽出するものとする。ここで、自動ドアB1~Bnの集合は、自動ドアA1~Amの集合の部分集合であり、nはm以下である。
【0055】
診断部7は、稼働情報取得部2が取得した稼働情報のうち、抽出部5で抽出された近似稼働条件にある複数の自動ドアB1~Bnの稼働情報を比較して自動ドアB1~Bnの診断を行い、情報提示部8はその診断結果やその他の情報提示を行う。最も単純な情報提示の態様は、
図4で示すような、n個の自動ドアB1~Bnのコントローラとセンサの稼働情報の一覧表である。各セルに表示される各自動ドアの各稼働情報の値は、現在の瞬時値または最新の値でもよいし、一定期間の稼働情報に基づく平均値等の統計値でもよい。ここで、n個の自動ドアB1~Bnは近似稼働条件にあるため、全てが正常に稼働していれば、その稼働情報に有意な差異はないはずである。一方、自動ドアが劣化または故障している場合、上述したように、その稼働情報に異常が生じる。
【0056】
したがって、
図4の一覧表において、他の自動ドアと比べて稼働情報が有意に異なる自動ドアがあれば、その劣化または故障が疑われ、優先的に保守対応を行うことができる。ここで、このような異常値を一覧表中で発見しやすくするために、他の自動ドアと有意に異なる稼働情報のセルや、その自動ドア番号のセルをハイライトして表示するとよい。なお、この情報提示は保守対象自動ドア指定部6で指定された自動ドアB1を主対象として行われるが、結果的に自動ドアB1の稼働情報には異常がなく、むしろ他の自動ドアB2~Bnの稼働情報の異常を発見できることもある。したがって、本実施形態によれば、多数の自動ドアの中から劣化や故障の可能性のある自動ドアを効果的に発見できる。
【0057】
また、自動ドアを個別で診断した際に劣化や故障の顕著な兆候が見られない場合でも、
図4の一覧表において近似稼働条件にある他の自動ドアと稼働情報を比較することで、まだ顕在化していない劣化や故障のわずかな兆候を発見できる。したがって、本実施形態によれば、劣化や故障の兆候を早期に発見して、予防措置を迅速に講じることができる。
【0058】
図4の例は、情報提示部8が一覧表を提示し、それを見たユーザに自動ドアの診断を促すものだったが、診断部7が自律的に自動ドアB1~Bnの稼働情報を比較して上記のような診断を行い、情報提示部8がその診断結果を提示してもよい。このときの診断結果の提示の態様は任意であるが、少なくとも保守対象自動ドア指定部で指定された自動ドアB1の診断結果を提示し、それに加えて他の自動ドアB2~Bnに異常が発見された場合はそれを報知するのが好ましい。
【0059】
また、以上のような自動ドア保守支援装置1は、自動ドアの設置後の保守支援だけでなく、自動ドア設置時の施工品質管理にも使用できる。新しい自動ドアを設置する際、予めその稼働条件を稼働条件記録部4に記録するとともに、保守対象自動ドア指定部6で保守対象に指定する。すると、抽出部5が新規設置自動ドアと近似稼働条件にある他の設置済自動ドアを抽出し、診断部7および情報提示部8が新規設置自動ドアと設置済自動ドアの稼働情報を比較して情報提示を行う。設置現場の作業員の施工中または施工確認時に新規設置自動ドアの稼働情報を作業端末(稼働情報取得部2)で随時取得し、それが近似稼働条件にある他の設置済自動ドアの稼働情報と有意な差異がなければ、施工品質が良好と判定できる。一方、新規設置自動ドアと設置済自動ドアで稼働情報に有意な差異がある場合、新規設置自動ドアが適切に施工されていない可能性が高く、作業員はその場で必要な調整作業を行うことができる。
【0060】
以上のような自動ドア保守支援装置1の各機能は、主に、自動ドア設置現場の作業員が使用する作業端末と、サーバ等の遠隔にあるコンピュータ内に実現される。稼働情報取得部2については上述したが、作業端末を介して設置現場で稼働情報を取得する場合は作業端末内に実現され、コンピュータを介して遠隔から稼働情報を取得する場合はコンピュータ内に実現される。稼働情報記録部3と稼働条件記録部4についても上述したが、これらに格納された情報を後段の処理で現場の作業端末ないし遠隔のコンピュータから利用可能とするため、サーバ等のコンピュータのストレージ領域に実現される。
【0061】
抽出部5、保守対象自動ドア指定部6、診断部7、情報提示部8は、自動ドア設置現場での保守点検の際は作業端末内に実現され、遠隔のコンピュータからの保守点検の際はコンピュータ内に実現される。前者の場合、作業端末でその現場の自動ドアを指定し(保守対象自動ドア指定部6)、作業端末内に実現される抽出部5が稼働条件記録部4にアクセスして近似稼働条件にある他の自動ドアを抽出し、これらの自動ドアの稼働情報の比較に基づく診断結果等を作業端末の表示画面等で提示する(診断部7、情報提示部8)。同様に、後者の場合、遠隔のコンピュータで任意の自動ドアを保守対象に指定し(保守対象自動ドア指定部6)、コンピュータ内に実現される抽出部5が稼働条件記録部4にアクセスして近似稼働条件にある他の自動ドアを抽出し、これらの自動ドアの稼働情報の比較に基づく診断結果等をコンピュータの表示画面等で提示する(診断部7、情報提示部8)。
【0062】
以上、本発明を実施形態に基づいて説明した。実施形態は例示であり、それらの各構成要素や各処理プロセスの組合せにいろいろな変形例が可能なこと、またそうした変形例も本発明の範囲にあることは当業者に理解されるところである。
【0063】
実施形態では、稼働情報取得部2が全ての自動ドアA1~Amの稼働情報を取得し、抽出部5での近似判定に基づき抽出された自動ドアB1~Bnの稼働情報を情報提示部8が提示していたが、稼働情報取得部2に近似判定の機能を設け、最初から近似稼働条件にある自動ドアB1~Bnの稼働情報のみを取得し、それを情報提示部8が提示してもよい。
【0064】
実施形態では、建物に設置される自動ドアを対象とする自動ドア保守支援装置1について説明したが、電車やバスの駅等の施設に設けられる自動ドアの保守支援も行うことができる。特に駅の場合、一つの駅に乗客の乗降を支援する多数のプラットホームドア(自動ドア)が設けられている。これらのプラットホームドアは基本的には同一構造であり、しかも同一の駅に設けられているため、近似稼働条件にあるといえる場合が多い。したがって、抽出部5における近似判定の処理を簡略化できる。なお、日照等の影響の少ない地下鉄の駅のプラットホームドアは近似稼働条件にある可能性が高いが、地上駅の場合はプラットホームの場所によって日照条件が大きく異なることもあるので、一概に近似稼働条件にあるとはいえない。
【0065】
なお、実施形態で説明した各装置の機能構成はハードウェア資源またはソフトウェア資源により、あるいはハードウェア資源とソフトウェア資源の協働により実現できる。ハードウェア資源としてプロセッサ、ROM、RAM、その他のLSIを利用できる。ソフトウェア資源としてオペレーティングシステム、アプリケーション等のプログラムを利用できる。
【0066】
本明細書で開示した実施形態のうち、複数の機能が分散して設けられているものは、当該複数の機能の一部又は全部を集約して設けても良く、逆に複数の機能が集約して設けられているものを、当該複数の機能の一部又は全部が分散するように設けることができる。機能が集約されているか分散されているかにかかわらず、発明の目的を達成できるように構成されていればよい。
【符号の説明】
【0067】
1 自動ドア保守支援装置、2 稼働情報取得部、3 稼働情報記録部、4 稼働条件記録部、5 抽出部、6 保守対象自動ドア指定部、7 診断部、8 情報提示部、10 扉部、20 コントローラ、21 制御部、22 ドアエンジン駆動部、23 入出力部、24 記憶部、30 センサ、31 起動センサ、32 補助センサ、40 ドアエンジン、41 モータ、100 自動ドア。