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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022065541
(43)【公開日】2022-04-27
(54)【発明の名称】排水器具及び貯水装置
(51)【国際特許分類】
   A01G 31/00 20180101AFI20220420BHJP
   E03C 1/22 20060101ALI20220420BHJP
   F16B 9/02 20060101ALI20220420BHJP
   F16L 5/02 20060101ALI20220420BHJP
【FI】
A01G31/00 601B
E03C1/22 A
F16B9/02 K
F16L5/02 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020174181
(22)【出願日】2020-10-15
(71)【出願人】
【識別番号】520251405
【氏名又は名称】株式会社ハンモ
(74)【代理人】
【識別番号】110001612
【氏名又は名称】きさらぎ国際特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】嶋村 茂治
【テーマコード(参考)】
2B314
2D061
3J023
【Fターム(参考)】
2B314ND10
2B314ND50
2B314PB64
2D061DA10
2D061DE01
3J023AA01
3J023BA02
3J023BA05
3J023BB01
3J023CA02
(57)【要約】      (修正有)
【課題】貯留した液体を完全に排出することが可能な排水器具及び貯水装置を提供する。
【解決手段】床板30に形成された排水用開口に取り付け可能な排水器具であって、床板30の表面側に設けられる表面側排水部120と、床板30の裏面側に設けられ、表面側排水部120に取り付け可能な裏面側排水部150とを備え、表面側排水部120及び裏面側排水部150により、床板30の表面側から裏面側に向けて貫通する排水経路110が形成されるよう構成されており、表面側排水部120は、排水用開口内に延出し、裏面側排水部150が取り付けられる筒状の表面側連結部と、表面側連結部の表面側の端部から径方向外側に向けて延出する表面側フランジ部とを備え、表面側フランジ部は、表面側フランジ部の外周部から排水経路110に亘って延びる流水路を有する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
床板に形成された排水用開口に取り付け可能な排水器具であって、
前記床板の表面側に設けられる表面側排水部と、
前記床板の裏面側に設けられ、前記表面側排水部に取り付け可能な裏面側排水部と
を備え、
前記表面側排水部及び前記裏面側排水部により、前記床板の表面側から裏面側に向けて貫通する排水経路が形成されるよう構成されており、
前記表面側排水部は、前記排水用開口内に延出し、前記裏面側排水部が取り付けられる筒状の表面側連結部と、該表面側連結部の表面側の端部から径方向外側に向けて延出する表面側フランジ部とを備え、
前記表面側フランジ部は、該表面側フランジ部の外周部から前記排水経路に亘って延びる流水路を有する
ことを特徴とする排水器具。
【請求項2】
前記流水路は、前記表面側フランジ部の周方向に所定の間隔をおいて複数形成されていることを特徴とする請求項1に記載の排水器具。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の排水器具と、
前記床板及び前記排水用開口を有する水槽と
を備えることを特徴とする貯水装置。
【請求項4】
前記裏面側排水部は、前記表面側排水部の前記表面側フランジ部との間において前記床板を挟持可能な裏面側フランジ部を備え、
前記床板の裏面と前記裏面側排水部の前記裏面側フランジ部との間にガスケットを備える
ことを特徴とする請求項3に記載の貯水装置。
【請求項5】
前記ガスケットは、前記排水経路と整合する位置に孔を有し、
前記ガスケットの前記孔は、前記床板の前記排水用開口よりも小さい径を有する
ことを特徴とする請求項4に記載の貯水装置。
【請求項6】
前記水槽の水位を調整するための水位調整器具を更に備え、
前記表面側排水部の前記表面側フランジ部は、開口部を有し、
前記水位調整器具は、前記表面側フランジ部の前記開口部に係止可能な外周面を有する
ことを特徴とする請求項3~5のいずれか1項に記載の貯水装置。
【請求項7】
前記水位調整器具の前記外周面及び前記表面側フランジ部の前記開口部は、互いに対応する傾斜面を有することを特徴とする請求項6に記載の排水器具。
【請求項8】
前記表面側フランジ部の前記開口部を止水可能な栓部材を更に備え、
前記水位調整器具は、前記栓部材により止水可能に構成されている
ことを特徴とする請求項6又は7に記載の排水器具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、排水器具及び貯水装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
水耕栽培の技術として、栽培ベッドと呼ばれる水槽の上部に植物の苗等の生育体を設け、水槽の下部に培養液を設けることで成長に伴って生育体が培養液を吸い上げるものが知られている(例えば、特許文献1)。栽培ベッドは、培養液を供給するための給水器具と、培養液を排出するための排水器具を備えており、該排水器具に設けられた排水経路を通じて水槽内の培養液を排出できるように構成されている。
【0003】
また、従来、このような排水器具として、図9Aに示す排水器具100´が知られている。従来の排水器具100´は、栽培ベッドの床板30の表面32側に取り付けられる表面側排水部120´と、床板30の裏面34側に取り付けられる裏面側排水部150´とで構成されている。
【0004】
表面側排水部120´は、図9A及び図9Bに示すように、円筒状の表面側連結部130´と、該表面側連結部130´の上端部全域から径方向外側に延出するフランジ部140´とを備えており、裏面側排水部150´は、表面側排水部120´の表面側連結部130´を挿入可能な裏面側連結部を備えている。表面側排水部120´の表面側連結部130´の外周面及び裏面側排水部150´の裏面側連結部の内周面には、それぞれ対応するねじ山が形成されており、互いに螺合されることにより、表面側排水部120´のフランジ部140´と裏面側排水部150´の裏面側連結部の上端部とで床板30を挟持し、該床板30に取り付けられるよう構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第4589773号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、従来の排水器具100´では、表面側排水部120´のフランジ部140´や、該フランジ部140´と床板30との間に介在されるガスケット180及びワッシャ190等の中間部材の厚みにより、図9Aに示すように、貯留した培養液を完全に排出することができず、それゆえ、清掃効率が悪く、老廃物の蓄積や藻(アオコ)の発生等が生じやすいという問題がある。
【0007】
本発明はこのような課題に鑑みてなされたものであり、貯留した液体を完全に排出することが可能な排水器具及び貯水装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る排水器具は、床板に形成された排水用開口に取り付け可能な排水器具であって、前記床板の表面側に設けられる表面側排水部と、前記床板の裏面側に設けられ、前記表面側排水部に取り付け可能な裏面側排水部とを備え、前記表面側排水部及び前記裏面側排水部により、前記床板の表面側から裏面側に向けて貫通する排水経路が形成されるよう構成されており、前記表面側排水部は、前記排水用開口内に延出し、前記裏面側排水部が取り付けられる筒状の表面側連結部と、該表面側連結部の表面側の端部から径方向外側に向けて延出する表面側フランジ部とを備え、前記表面側フランジ部は、該表面側フランジ部の外周部から前記排水経路に亘って延びる流水路を有することを特徴とする。
【0009】
本発明に係る排水器具において、前記流水路は、前記表面側フランジ部の周方向に所定の間隔をおいて複数形成されてもよい。
【0010】
本発明に係る貯水装置は、上述した排水器具と、前記床板及び前記排水用開口を有する水槽とを備えることを特徴とする。
【0011】
本発明に係る貯水装置は、前記裏面側排水部は、前記表面側排水部の前記表面側フランジ部との間において前記床板を挟持可能な裏面側フランジ部を備え、前記床板の裏面と前記裏面側排水部の前記裏面側フランジ部との間にガスケットを備えてもよい。
【0012】
本発明に係る貯水装置において、前記ガスケットは、前記排水経路と整合する位置に孔を有し、前記ガスケットの前記孔は、前記床板の前記排水用開口よりも小さい径を有してもよい。
【0013】
本発明に係る貯水装置は、前記水槽の水位を調整するための水位調整器具を更に備え、前記表面側排水部の前記表面側フランジ部は、開口部を有し、前記水位調整器具は、前記表面側フランジ部の前記開口部に係止可能な外周面を有してもよい。
【0014】
本発明に係る貯水装置において、前記水位調整器具の前記外周面及び前記表面側フランジ部の前記開口部は、互いに対応する傾斜面を有してもよい。
【0015】
本発明に係る貯水装置は、前記表面側フランジ部の前記開口部を止水可能な栓部材を更に備え、前記水位調整器具は、前記栓部材により止水可能に構成されててもよい。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、貯留した液体を完全に排出することが可能な排水器具及び貯水装置を提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明の実施形態に係る貯水装置を示す概略図である。
図2】本発明の実施形態に係る排水器具を示す分解図である。
図3】本実施形態に係る排水器具を示す断面図である。
図4A】本実施形態に係る表面側排水部を示す斜視図である。
図4B】本実施形態に係る表面側排水部を示す平面図である。
図5】本実施形態に係るガスケットを示す図である。
図6】本実施形態に係る水位調整器具を示す図である。
図7】本実施形態に係る貯水装置で水位調整器具を使用する状態を示す断面図である。
図8A】本実施形態に係る栓部材を示す図である。
図8B】本実施形態に係る貯水装置で栓部材を使用する状態を示す断面図である。
図9A】従来の貯水装置を示す断面図である。
図9B】従来の表面側排水部を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明を実施するための最良の実施形態について、図面を用いて説明する。なお、以下の実施形態は、各請求項に係る発明を限定するものではなく、また、実施形態の中で説明されている特徴の組み合わせの全てが発明の解決手段に必須であるとは限らない。また、図面は、本発明を示すために適宜強調や省略、比率の調整を行った模式的な図となっており、実際の形状や位置関係、比率とは異なる場合がある。
【0019】
[本実施形態に係る貯水装置の構成]
本実施形態に係る貯水装置10は、図1及び図2に示すように、排水用開口36が形成された床板30を有する水槽20と、排水用開口36に取り付け可能な排水器具100とを備えている。また、貯水装置10は、水槽20内に収容される培養液の水位を調整するための水位調整器具200(図6及び図7参照)と、排水器具100からの排水を止めるための栓部材250(図8A及び図8B参照)とを更に備えている。
【0020】
[水槽(栽培ベッド)の構成]
水槽20は、液体を貯留可能な容器であり、本実施形態では、培養液を収容可能な桶状に形成された栽培ベッドである。具体的には、水槽20は、図1に示すように、上面及び長手方向の両端部が開放された断面略コの字状の栽培ベッド本体20Aと、該栽培ベッド本体20Aの両端部を閉塞する一対のエンド部材(図示せず)とを備えており、全体として、培養液を収容可能な桶状に形成されている。
【0021】
栽培ベッド本体20Aは、図2に示すように、長尺矩形に形成された床板30と、該床板30の短手方向の両側縁部から表面32の方向に延出する一対の側板40とを備えている。床板30は、少なくとも一部(本実施形態では、長手方向の一端部かつ短手方向の中央部)に、栽培ベッド本体20A内の培養液を排出するための排水用開口36が設けられている。
【0022】
排水用開口36は、床板30の一部をプレス加工等によって円形に打ち抜くことにより形成されており、排水器具100の後述する表面側排水部120の表面側連結部130を挿通可能な径を有している。床板30は、図2に示すように、栽培ベッド本体20A内の培養液が排水用開口36に向けて流動しやすくなるよう、排水用開口36の近傍が該排水用開口36に向けて僅かに傾斜している。
【0023】
栽培ベッド本体20Aは、金属製の板材をロールフォーミングにより成形することで形成されている。ここで、ロールフォーミングとは、複数組の成型ロールによって平らな素材を目的の断面形状に成型する板金加工方法である。本実施形態に係る栽培ベッド本体20Aは、このようなロールフォーミングにより成形されることにより、長手方向に沿って繋ぎ目なく連続する大型の栽培ベッドを構成することができ、これにより、培養液の液漏れ等のおそれが極めて低いという利点を有する。なお、栽培ベッド本体20Aは、本実施形態では、長手方向の長さが例えば3m~18m程度、短手方向の長さが例えば60cm程度の長尺な形状を有しているが、これに限定されず、長手方向及び短手方向の長さは任意に設定可能である。
【0024】
栽培ベッド本体20Aに用いられる金属としては、例えば、ガルバリウム鋼、ステンレス鋼、アルミニウム、銅、鉄等が例示され、特にガルバリウム鋼、ステンレス鋼が好適であるが、これに限定されるものではない。また、栽培ベッド本体20Aには、金属障害の発生を防ぐために、培養液に対する耐性(腐食防止)を付与するための種々の公知のコーティング処理等が施されることが好ましい。
【0025】
[排水器具の構成]
排水器具100は、図1及び図2に示すように、水槽20の床板30の表面32側に設けられる表面側排水部120と、床板30の裏面34側に設けられ、表面側排水部120に取り付け可能な裏面側排水部150とを備えている。そして、排水器具100は、これら表面側排水部120及び裏面側排水部150が互いに連結されることにより、図3に示すように、床板30の表面32側から裏面34側に向けて貫通する排水経路110が形成されるよう構成されている。
【0026】
表面側排水部120は、図2に示すように、排水用開口36内に延出し、裏面側排水部150が取り付けられる筒状の表面側連結部130と、該表面側連結部130の表面側の端部(上端部)から径方向外側に向けて延出する表面側フランジ部140とを備えている。
【0027】
表面側連結部130は、図2及び図4Aに示すように、排水用開口36に挿入可能な径を有する円筒状に形成されており、その外周面に、裏面側排水部150の後述するねじ山に螺合可能なねじ山を有している。
【0028】
表面側フランジ部140は、図4A及び図4Bに示すように、表面側連結部130の内周面に連続する開口部142と、該表面側フランジ部140の外周部から開口部142(排水経路110)に亘って延びる一又は複数(本実施形態では4本)の流水路145とを有している。
【0029】
開口部142は、水位調整器具200と栓部材250との双方を、選択的に装着可能に構成されている。具体的には、開口部142は、図4Aに示すように、開口端(上端)から表面側連結部130の上端に向けて(すなわち、床板30の裏面34側に向けて)縮径する傾斜面143を有している。傾斜面143は、図6及び図7に示すように、水位調整器具200の後述する中間傾斜部220が係止可能に構成されると共に、図8A及び図8Bに示すように、栓部材250の後述する止水面252が係止可能に構成されている。傾斜面143は、水位調整器具200の中間傾斜部220及び栓部材250の止水面252に対応する傾斜角度、具体的には互いに面接触可能な傾斜角度を有することが好ましい。
【0030】
流水路145は、水槽20内の培養液を排水経路110に向けて滞留なく流動させるための溝(間隙)であり、表面側フランジ部140の周方向に所定の間隔をおいて複数形成されている。換言すれば、表面側フランジ部140は、図4A及び図4Bに示すように、表面側連結部130の表面側の端部(上端部)から径方向外側に向けて放射状に延出する複数のフランジ片140a~140dを備え、これら各フランジ片140a~140dの間に流水路145として機能する間隙がそれぞれ形成されている。
【0031】
流水路145は、液残り防止の観点から、図示のように複数形成されることが好ましく、また、図示のように360°の全方位に亘って所定(例えば45°)の位相差で形成されることがより好ましい。ただし、これに限定されず、1本の流水路145のみが形成される構成等の種々の任意の構成を採用可能である。
【0032】
本実施形態に係る排水器具100は、表面側排水部120の表面側フランジ部140と水槽20の床板30の表面32との間にガスケット(シール部材)やワッシャ(摩擦低減部材)等の中間部材を配置させずに、表面側排水部120の表面側フランジ部140を水槽20の床板30の表面32に直接接触させるよう構成されている。これにより、本実施形態に係る排水器具100によれば、より一層、水槽20内の液残りを防止することができる。
【0033】
裏面側排水部150は、図2及び図3に示すように、表面側排水部120の表面側連結部130を挿入可能な円筒状の裏面側連結部170と、該裏面側連結部170の床板30側の端部(上端部)から径方向外側に向けて延出する裏面側フランジ部160とを備えている。
【0034】
裏面側連結部170は、全体として有底筒状に形成されており、該裏面側連結部170長手方向の側面から裏面側連結部170長手方向と直交する方向に向けて延出する配管接続部175を備えている。配管接続部175は、円筒状に形成されており、排水用配管(図示せず)を取り付け可能に構成されている。
【0035】
裏面側連結部170は、表面側排水部120の表面側連結部130を挿入可能な径を有しており、該裏面側連結部170の上端側の内周面に、表面側排水部120の表面側連結部130に形成されたねじ山に螺合可能なねじ山を有している。
【0036】
裏面側フランジ部160は、裏面側連結部170の上端部全域から径方向外側に向けて延出しており、表面側排水部120の表面側フランジ部140との間において、水槽20の床板30を挟持可能に構成されている。本実施形態において、裏面側フランジ部160は、後述するガスケット180及びワッシャ190を覆い隠すことが可能な大きさを有し、全体として略八角形状に形成されているが、これに限定されず、種々の任意の形状を採用可能である。
【0037】
排水器具100は、図2及び図3に示すように、床板30の裏面34及び裏面側排水部150の間に配置されるガスケット(シール部材)180と、該ガスケット180と裏面側排水部150との間に設けられるワッシャ(摩擦低減部材)190とを更に備えている。
【0038】
ガスケット180は、図2に示すように、中心に孔182を有する円環状に形成された弾性部材であり、その表面に、周方向全域に亘って延びる一又は複数の線状凸部181a~181cが設けられている。線状凸部181a~181cは、床板30の裏面34との間における液密性を高めるために形成される突条部位であり、多段的にシールすることが可能となるよう、径の異なる複数(本実施形態では3本)の線状凸部181a~181cが同心円状に配されている。
【0039】
ガスケット180の孔182は、排水用開口36(排水経路110)と整合する位置に形成されており、該孔182の開口径(直径)dは、図5に示すように、水槽20の床板30に設けられた排水用開口36の開口径(直径)Dよりも小さく、かつ、表面側連結部130を挿入可能な径となるように設計されている。
【0040】
以上の構成を備えるガスケット180は、その孔182の中心が排水用開口36の中心と一致するよう、床板30の裏面34と裏面側排水部150の裏面側フランジ部160との間に配置される。これにより、排水器具100によって水槽20の床板30を挟持する際に、ガスケット180がその厚み方向に圧縮され、該ガスケット180の孔182が径方向内側(孔182の直径dが小さくなる方向)に延伸することで、排水器具100及び排水用開口36の接続部からの漏水を防ぐよう構成されている。
【0041】
ワッシャ190は、ガスケット180と同形同大の円環状に形成されており、ガスケット180よりも摩擦係数が低い材料、例えば、ゴムやシリコン等の樹脂材料で形成されている。本実施形態に係る排水器具100は、このような材料で形成されるワッシャ190を備えることにより、ガスケット180と裏面側排水部150との間の摩擦抵抗を低減させることが可能となるため、ガスケット180の破損を防止することが可能となる。
【0042】
以上の構成を備える排水器具100は、図1図3に示すように、床板30の表面32側から排水用開口36内に表面側排水部120の表面側連結部130を挿入した状態において、床板30の裏面34側からガスケット180及びワッシャ190を表面側連結部130の周囲に同心となるよう配置すると共に、該表面側連結部130に裏面側排水部150の裏面側連結部170を連結(螺合)させることで、水槽20に組付けられる。
【0043】
そして、排水器具100は、このように水槽20に組付けられることによって、水槽20内の培養液を、表面側排水部120の表面側フランジ部140に形成された流水路145と、表面側排水部120及び裏面側排水部150により形成された排水経路110とを介して、裏面側排水部150の配管接続部175に接続された排水用配管に排出させることが可能となっている。
【0044】
[水位調整器具の構成]
水位調整器具200は、図6に示すように、全体として円筒形状に形成されており、上端部側に形成された大径部230と、下端部側に形成された小径部210と、大径部230と小径部210との間に形成された中間傾斜部220とを有している。
【0045】
小径部210は、図7に示すように、表面側排水部120の表面側フランジ部140の開口部142及び表面側連結部130の内径よりも小さな外径を有しており、これら開口部142及び表面側連結部130内に挿入可能に構成されている。また、中間傾斜部220は、大径部230の下端から小径部210の上端に亘って径が小さくなるよう傾斜した外周面を有しており、小径部210を開口部142及び表面側連結部130内に挿入した状態において、中間傾斜部220の該外周面が開口部142に係止するよう構成されている。より好適には、中間傾斜部220の外周面は、表面側フランジ部140の開口部142の傾斜面143に嵌合可能な傾斜角を有するテーパー形状に形成されている。
【0046】
一方、大径部230は、表面側排水部120の表面側フランジ部140の開口部142及び表面側連結部130の内径よりも大きな外径を有し、かつ、該開口部142及び表面側連結部130の内径と略同じ内径を有している。これにより、大径部230は、その内部に栓部材250を液密に挿入可能に構成されている。また、中間傾斜部220は、大径部230内に栓部材250が挿入された状態において、栓部材250の後述する止水面252が液密に係止可能な内周面を有している。より好適には、中間傾斜部220の内周面は、栓部材250の止水面252が嵌合可能な傾斜角を有するテーパー形状に形成されている。
【0047】
以上の構成を備える水位調整器具200は、該水位調整器具200の小径部210を表面側フランジ部140の開口部142に挿入する際に、該開口部142の内面に水位調整器具200の中間傾斜部220が嵌合するよう構成されており、図7に示すように、水位調整器具200を表面側排水部120に取り付けることで、貯水装置10の水位を大径部230の高さに応じた所望の水位に設定可能に構成されている。なお、大径部230の高さは、培養液の所望する水位に応じて任意に設定することが可能である。また、高さが異なる他の水位調整器具と交換したり、大径部230の高さを可変な構造にしたりすることで、培養液の水位を任意に変更することも可能である。
【0048】
[栓部材の構成]
栓部材250は、図8Aに示すように、円錐台状に形成されており、その外周面に、表面側排水部120の開口部142又は水位調整器具200に液密に嵌合して止水可能な止水面252を有している。すなわち、栓部材250は、表面側排水部120の開口部142に直接挿入して止水することが可能であると共に(図8B参照)、水位調整器具200に挿入して止水することも可能に構成されている。好適には、止水面252は、表面側排水部120の開口部142の傾斜面143及び水位調整器具200の中間傾斜部220の内周面に嵌合可能な傾斜角を有している。
【0049】
また、栓部材250は、図8Bに示すように、表面側排水部120の開口部142及び水位調整器具200に挿入した際に、段差なく嵌合可能な高さを有することが好ましい。栓部材250は、その上端面に持ち手255が設けられており、表面側排水部120の開口部142及び水位調整器具200に段差なく嵌合した状態においても容易に取り外すことが可能となっている。
【0050】
栓部材250の材料は、防水性を有する材料であれば特に制限なく用いることが可能であるが、表面側排水部120の開口部142及び水位調整器具200に挿入された際に弾性変形して液密性を高める観点から、ゴム等の弾性を有する材料で形成されることが好ましい。
【0051】
[本実施形態に係る排水器具及び貯水装置の利点]
以上説明したように、本実施形態に係る排水器具100は、表面側排水部120の表面側フランジ部140が、該表面側フランジ部140の外周部から排水経路110に亘って延びる流水路145を有しているため、水槽20内の培養液(液体)を完全に排水することが可能である。
【0052】
また、本実施形態に係る排水器具100は、流水路145が表面側フランジ部140の周方向に所定の間隔をおいて複数形成されているため、流水路145が1つのみ形成される場合と比較して短時間で排水することが可能であると共に、2以上の方向から排水することが可能となり、より一層液残りを防止することが可能になるという利点を有している。
【0053】
さらに、本実施形態に係る貯水装置10は、床板30の裏面34と裏面側排水部150の裏面側フランジ部160との間にガスケット180を備えることにより、排水器具100及び排水用開口36の接続部から漏水することを防ぐことが可能であるという利点を有している。
【0054】
特に、本実施形態に係る貯水装置10において、ガスケット180は、床板30の排水用開口36よりも径の小さい孔182を備えることにより、排水器具100によって水槽20の床板30を挟持する際に、ガスケット180が該ガスケット180の径方向と直交する方向に圧縮され、該ガスケット180の孔182が径方向内側(孔182の直径dが小さくなる方向)に延伸することで、より一層、排水器具100及び排水用開口36の接続部から漏水することを防ぐことが可能であるという利点を有している。
【0055】
さらに、本実施形態に係る貯水装置10は、水槽20の水位を調整するための水位調整器具200が、表面側フランジ部140の開口部142に係止可能な外周面を有しているため、表面側排水部120の開口部142に水位調整器具200を挿入するだけで、水槽20内の培養液(液体)の水位を水位調整器具200の高さに応じた水位に調整することが可能であるという利点を有している。
【0056】
特に、本実施形態に係る貯水装置10では、水位調整器具200の外周面及び表面側フランジ部140の開口部142が互いに対応する傾斜面を有しているため、水位調整器具200と開口部142との接続部から漏水することを防ぐことが可能であるという利点を有している。
【0057】
また、本実施形態に係る貯水装置10は、表面側フランジ部140の開口部142に止水可能な栓部材250を更に備え、水位調整器具200が、栓部材250により止水可能に構成されていることにより、表面側排水部120と水位調整器具200とで栓部材250を共用することが可能であり、設備コストを抑えることができるという利点を有している。
【0058】
[変形例]
以上、本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明の技術的範囲は、上述した実施形態に記載の範囲には限定されない。上記実施形態には、多様な変更又は改良を加えることが可能である。
【0059】
例えば、上述した実施形態では、水槽20が培養液を収容可能な栽培ベッドであるものとして説明したが、これに限定されるものではなく、水槽は、液体を貯留可能な容器であればよい。
【0060】
上述した実施形態では、流水路145が表面側フランジ部140の周方向に所定の間隔をおいて複数形成されるものとして説明したが、これに限定されず、液体が水槽20内に貯留することなく排水可能な構成であれば、流水路の本数及び配置は任意に変更することが可能である。
【0061】
上述した実施形態では、裏面側排水部150が裏面側フランジ部160を備え、床板30の裏面34と裏面側排水部150の裏面側フランジ部160との間にガスケット180を備えるものとして説明したが、これに限定されず、排水器具100及び排水用開口36の接続部から漏水しない構成であれば、ガスケット180を有さない構成とすることも可能である。このような構成としては、例えば、裏面側フランジ部160の表面に防水部材を備える構成や、床板30の裏面34が防水部材を備える構成等が例示される。
【0062】
上述した実施形態では、ガスケット180が床板30の排水用開口36よりも径の小さい孔182を備えるものとして説明したが、これに限定されず、ガスケット180が備える孔182の直径dは、排水用開口36の直径D以上であっても良い。
【0063】
上述した実施形態では、水槽20の水位を調整するための水位調整器具200を備え、該水位調整器具200が表面側フランジ部140の開口部142に係止可能な外周面を有するものとして説明したが、これに限定されず、表面側フランジ部140の開口部142に係止不能な水位調整器具を用いても良いし、水位調整器具200を備えない構成としても良い。
【0064】
上述した実施形態では、水位調整器具200及び表面側フランジ部140の開口部142が互いに対応する傾斜面を有するものとして説明したが、これに限定されず、水位調整器具200と表面側フランジ部140の接続部から漏水しない構成であれば、種々の任意の構成を採用可能である。
【0065】
上述した実施形態では、表面側フランジ部140の開口部142を止水可能な栓部材250を更に備え、水位調整器具200が、栓部材250により止水合可能に構成されるものとして説明したが、これに限定されず、水位調整器具200を止水不能な栓部材250を用いても良いし、栓部材250を備えない構成としても良い。
【0066】
上述した実施形態では、排水器具100が、ガスケット180と裏面側排水部150との間に設けられるワッシャ190を備えるものとして説明したが、これに限定されず、水槽20の床板30と裏面側排水部150との間においてガスケット180を挟持する際に、該ガスケット180が破損すること防ぐことが可能な構成であれば、種々の任意の構成を採用可能である。
【0067】
上述した実施形態では、裏面側連結部170が、全体として有底筒状に形成されており、該裏面側連結部170長手方向の側面から裏面側連結部170長手方向と直交する方向に向けて延出する配管接続部175を備えるものとして説明したが、これに限定されず、裏面側連結部170は、種々の任意の構成を採用可能である。
【0068】
上記のような変形例が本発明の範囲に含まれることは、特許請求の範囲の記載から明らかである。
【符号の説明】
【0069】
10 :貯水装置
20 :水槽(栽培ベッド)
20A :栽培ベッド本体
30 :床板
32 :表面
34 :裏面
36 :排水用開口
40 :側板
100 :排水器具
110 :排水経路
120 :表面側排水部
130 :表面側連結部
140 :表面側フランジ部
140a~140d :フランジ片
142 :開口部
143 :傾斜面
145 :流水路
150 :裏面側排水部
160 :裏面側フランジ部
170 :裏面側連結部
175 :配管接続部
180 :ガスケット
181a~181c :線状凸部
182 :孔
190 :ワッシャ
200 :水位調整器具
210 :小径部
220 :中間傾斜部
230 :大径部
250 :栓部材
252 :止水面
255 :持ち手
図1
図2
図3
図4A
図4B
図5
図6
図7
図8A
図8B
図9A
図9B