(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022065546
(43)【公開日】2022-04-27
(54)【発明の名称】筒状害獣捕獲具
(51)【国際特許分類】
A01M 23/34 20060101AFI20220420BHJP
【FI】
A01M23/34
【審査請求】未請求
【請求項の数】2
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020174197
(22)【出願日】2020-10-15
(71)【出願人】
【識別番号】515027439
【氏名又は名称】工藤 まほ
(71)【出願人】
【識別番号】515027048
【氏名又は名称】河野 優子
(74)【代理人】
【識別番号】100080160
【弁理士】
【氏名又は名称】松尾 憲一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100149205
【弁理士】
【氏名又は名称】市川 泰央
(72)【発明者】
【氏名】三重野 丈一
【テーマコード(参考)】
2B121
【Fターム(参考)】
2B121AA01
2B121BA32
2B121BA41
2B121BA51
2B121EA21
2B121FA20
(57)【要約】
【課題】害獣の逃避行動よりも早く捕縛作動を可能とすることにより、害獣の捕獲率を高める筒状害獣捕獲具を提供する。
【解決手段】筒状害獣捕獲具は、少なくとも害獣の脚体の足部先端から蹄部までの長さ以上又は害獣の脚底面から害獣の脚体のくるぶし部までの高さより深く構成した捕獲ケースを地面に埋設し、捕獲ケースの上端開口部を地表面より下方に位置させ、捕獲ケースの内部に昇降自在に収納し、上端開口部を捕獲ケースの上端開口部より突出させて地表面と略同一高さとなるように構成した踏み筒体と、踏み筒体の突出周壁に囲繞した捕獲ワイヤと、捕獲ワイヤを踏み筒体の突出周壁に囲繞することにより形成した捕獲ワイヤのループ部と、捕獲ワイヤの自由端を緊締自在に連動連結したワイヤループ緊締機構と、より構成してなることとした。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも害獣の脚体の足部先端から蹄部までの長さ以上又は害獣の脚底面から害獣の脚体のくるぶし部までの高さより深く構成した捕獲ケースを地面に埋設し、
捕獲ケースの上端開口部を地表面より下方に位置させ、
捕獲ケースの内部に昇降自在に収納し、上端開口部を捕獲ケースの上端開口部より突出させて地表面と略同一高さとなるように構成した踏み筒体と、
踏み筒体の突出周壁に囲繞した捕獲ワイヤと、
捕獲ワイヤを踏み筒体の突出周壁に囲繞することにより形成した捕獲ワイヤのループ部と、
捕獲ワイヤの自由端を緊締自在に連動連結したワイヤループ緊締機構と、
より構成した筒状害獣捕獲具。
【請求項2】
捕獲ケースの周側壁に捕獲ワイヤ導出用の切欠部を形成し、切欠部から捕獲ケース内に捕獲ワイヤを導入して捕獲ケース上方でループ部を形成するように構成したこと特徴とする請求項1に記載の筒状害獣捕獲具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、害獣捕獲具に関する。
【0002】
従来、害獣捕獲具は、基本的には踏板とループ形状の捕獲ワイヤと踏板の降下(落下)作動を捕獲ワイヤの縮径作動に連動させる捕獲ワイヤ連動機構とより構成されている。
害獣が踏板を踏むと踏板の降下作動に伴い捕獲ワイヤ連動機構を介してループ形状の捕獲ワイヤが縮径作動して害獣の脚部を捕獲する(例えば、特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、害獣が踏板を踏み捕獲ワイヤ連動機構が作動して害獣の脚部を捕縛するまでに害獣が捕獲ワイヤの緊縮作動を察知して脚部を引き上げ蹄や足爪がワイヤの緊締直前のループ部から抜け出てしまい捕獲失敗となることがあった。
【0005】
その基本的な理由は、害獣の足首部分が踏板に載り、捕獲ワイヤ連動機構置が作動開始するまでの間に害獣脚部の足首は浅い位置で踏板に至っているため、足首の下方位置でループ部の緊締作動が行われる。すなわち、足首の浅い位置で捕縛ワイヤが作動して緊締が行われるために、害獣が異変を察知した場合には急速に脚部を引き上げることになりワイヤ捕縛作動が間に合わず捕縛失敗となることが多々あった。
【0006】
この発明では、少なくとも害獣脚部の足首までの高さより深く構成した筒状の捕獲ケースと、捕獲ケースの内部に収納し捕獲ケースより突出し地表面と略同位置とした踏み筒体と、踏み筒体の突出周壁に囲繞した捕獲ワイヤと、それに連結したワイヤループ緊締機構部とより構成して課題を解決する害獣の捕獲具に関する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この発明は、少なくとも害獣の脚体の足部先端から蹄部までの長さ以上又は害獣の脚底面から害獣の脚体のくるぶし部までの高さより深く構成した捕獲ケースを地面に埋設し、捕獲ケースの上端開口部を地表面より下方に位置させ、捕獲ケースの内部に昇降自在に収納し、上端開口部を捕獲ケースの上端開口部より突出させて地表面と略同一高さとなるように構成した踏み筒体と、踏み筒体の突出周壁に囲繞した捕獲ワイヤと、捕獲ワイヤを踏み筒体の突出周壁に囲繞することにより形成した捕獲ワイヤのループ部と、捕獲ワイヤの自由端を緊締自在に連動連結したワイヤループ緊締機構と、より構成した筒状害獣捕獲具を提供せんとするものである。
【0008】
また、捕獲ケースの周側壁に捕獲ワイヤ導出用の切欠部を形成し、切欠部から捕獲ケース内に捕獲ワイヤを導入して捕獲ケース上方でループ部を形成するように構成したこと特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
請求項1の発明によれば、少なくとも害獣の脚体の足部先端から蹄部までの長さ以上又は害獣の脚底面から害獣の脚体のくるぶし部までの高さより深く構成した捕獲ケースを地面に埋設し、捕獲ケースの上端開口部を地表面より下方に位置させ、捕獲ケースの内部に昇降自在に収納し、上端開口部を捕獲ケースの上端開口部より突出させて地表面と略同一高さとなるように構成した踏み筒体と、踏み筒体の突出周壁に囲繞した捕獲ワイヤと、捕獲ワイヤを踏み筒体の突出周壁に囲繞することにより形成した捕獲ワイヤのループ部と、捕獲ワイヤの自由端を緊締自在に連動連結したワイヤループ緊締機構と、より構成したことにより、踏板降下作動から捕獲ワイヤ縮径作動までの連動を迅速に、かつ確実に行うことができる。これにより、害獣の捕縛成功率を高める効果がある。
【0010】
請求項2の発明によれば、捕獲ケースの周側壁に捕獲ワイヤ導出用の切欠部を形成し、切欠部から捕獲ケース内も捕獲ワイヤを導入して捕獲ケース上方でループ部を形成するように構成したことにより、ワイヤループ緊締機構部Bの先端部を嵌着し、捕獲ワイヤの自由端部を所定位置に規制することが可能となる。これにより、ワイヤループが突出周壁から不用意に離脱することにより生起される捕獲具の誤作動を防ぐ効果がある。
【0011】
また、切欠き部が捕獲ケースの周側壁に設けられることにより、ワイヤループ緊締機構部を確実に地面内へ隠蔽することが可能となる。このため、害獣に捕獲具の存在を警戒させず、より害獣の捕縛成功率を高める効果もある。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本発明の実施形態における筒状害獣捕獲具を示す斜視図である。
【
図2】本発明の実施形態における筒状害獣捕獲具を地面に設置した状態を示す断面図である。
【
図3】ワイヤループ緊締機構によってループ部が縮径する前の状態を示す横断面図である。
【
図4】ワイヤループ緊締機構によってループ部が縮径した状態を示す横断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
この発明の要旨は、少なくとも害獣の脚体の足部先端から蹄部までの長さ以上又は害獣の脚底面から害獣の脚体のくるぶし部までの高さより深く構成した捕獲ケースを地面に埋設し、捕獲ケースの上端開口部を地表面より下方に位置させ、捕獲ケースの内部に昇降自在に収納し、上端開口部を捕獲ケースの上端開口部より突出させて地表面と略同一高さとなるように構成した踏み筒体と、踏み筒体の突出周壁に囲繞した捕獲ワイヤと、捕獲ワイヤを踏み筒体の突出周壁に囲繞することにより形成した捕獲ワイヤのループ部と、捕獲ワイヤの自由端を緊締自在に連動連結したワイヤループ緊締機構と、より構成した筒状害獣捕獲具を提供せんとするものである。
【0014】
また、筒状害獣捕獲具は、捕獲ケースの周側壁に捕獲ワイヤ導出用の切欠部を形成し、切欠部から捕獲ケース内に捕獲ワイヤを導入して捕獲ケース上方でループ部を形成するように構成したこと特徴とするものである。
【0015】
この発明の実施例を図面に基づき詳説する。なお、
図1および
図2は、本発明にかかる筒状害獣捕獲具の説明図である。
図3および
図4は、筒状害獣捕獲具が備えるワイヤループ緊締機構を説明する横断面図である。
【0016】
この発明は、
図1に示すように、少なくとも害獣の脚体の足部先端から蹄部までの長さ以上又は害獣の脚底面から害獣の脚体のくるぶし部までの高さより深く構成した捕獲ケース10を地面に埋設し、捕獲ケース10の上端開口部を地表面より下方に位置させ、捕獲ケース10の内部に昇降自在に収納し、上端開口部を捕獲ケース10の上端開口部より突出させて地表面と略同一高さとなるように構成した踏み筒体20と、踏み筒体20の突出周壁21に囲繞した捕獲ワイヤ30と、捕獲ワイヤ30を踏み筒体20の突出周壁21に囲繞することにより形成した捕獲ワイヤ30のループ部31と、捕獲ワイヤ30の自由端32を緊締自在に連動連結したワイヤループ緊締機構40と、より構成した筒状害獣捕獲具1である。
【0017】
また、この筒状害獣捕獲具1は、捕獲ケース10の周側壁10bに捕獲ワイヤ30導出用の切欠部11を形成し、切欠部11から捕獲ケース10内に捕獲ワイヤ30を導入して捕獲ケース10上方でループ部31を形成するように構成したこと特徴とする。
【0018】
すなわち、筒状害獣捕獲具1は、捕獲ケース10、踏み筒体20、捕獲ワイヤ30、およびワイヤループ緊締機構40、を主な構成要素として具備している。本発明にかかる筒状害獣捕獲具1の構成要素についての詳細な説明は次の通りである。
【0019】
捕獲ケース10は、
図1および
図2に示すように、上端部が開口した有底の筒体である。捕獲ケース10は、少なくとも害獣の脚体の足部先端から蹄部までの長さ以上又は害獣の脚底面から害獣の脚体のくるぶし部までの高さより深く構成した筒状のケース本体10aを地面に埋設し、上端開口部を地表面より下方に位置させた筒状に構成している。捕獲ケース10の上端開口部が地表面より下方に位置させる際には、捕獲ワイヤ30の直径の高さ分だけ深くケース本体10aを地中に埋設する。
【0020】
捕獲ケース10の周側壁10bには、捕獲ワイヤ30導出用の切欠部11を形成している。より詳細には、切欠部11は、捕獲ケース10の上端部開口近傍の周側壁10bを略コ字状に切欠いて形成している。また、切欠部11は、捕獲ケース10内に捕獲ワイヤ30を導入可能とし、捕獲ケース10の上方でループ部31を形成するように構成している。
【0021】
踏み筒体20は、上端部が開口した有底の筒体であり、捕獲ケース10の内壁と摺動可能な外径を備えている。踏み筒体20は、捕獲ケース10よりも短筒となるように構成されている。かかる構成の踏み筒体20は、捕獲ケース10の内部に昇降自在に収納され、上端開口部を捕獲ケースの上端部よりも突出させて地表面と略同一高さとなるように配置されている。なお、
図1中の符号21は、捕獲ケース10の上端部よりも突出させた踏み筒体20の突出周壁である。
【0022】
踏み筒体20は、捕獲ケース10よりも短筒となるように構成されている。これにより、捕獲ケース10内部に踏み筒体20を収納した際には、捕獲ケース10の底部10cと踏み筒体20の底部20cとの間には、踏み筒体20が降下沈降可能な余剰空間12を生じることとなる。余剰空間12を設けたことにより、害獣が踏み筒体20の底部20cへと脚部を降ろした際には、害獣の体重による上からの押圧応力が踏み筒体20を余剰空間12の高さ分降下沈降させるように構成されている。すなわち、踏み筒体20は、害獣が内部に脚部を踏み入れた時に一般の捕獲具の踏板と同様の機能を果たし、害獣の脚部を後述する捕獲ワイヤ30で捕縛するように構成されている。
【0023】
また、捕獲ケース10の底部10cおよび踏み筒体20の底部20cには、
図2中符号13に示すような排水口を形成する態様とすることもできる。このように、排水口13を設けることにより、捕獲ケース10および踏み筒体20の内部に水が溜まることを防ぐことができる。これにより、両ケース10、20に水が溜まることにより生じる違和感をなくし、害獣に警戒させないようにする効果がある。
【0024】
捕獲ワイヤ30は、踏み筒体20の突出周壁21を囲繞することで形成したループ部31と、ループ部31の左右両側部から延びる自由端32とより構成されている。より詳細には、捕獲ワイヤ30は複数の金属線を撚り合わせて形成した1本のワイヤであり、略中央部を折り返すことで二又形状を構成している。二又形状の基端部近傍がループ部31となり、二又形状の両側部が自由端32となる。
【0025】
二又形状の左右の先端側(自由端32)は、後述するワイヤル―プ緊締機構40の内部を挿通している。これにより、捕獲ワイヤ30による二又形状の基端部側は、ワイヤル―プ緊締機構40が備えるワイヤガイド体41によりループ部31を構成することとなる。
【0026】
捕獲ワイヤ30のループ部31は、以下の機構により縮径して害獣の脚を捕縛する。詳細は後述するが、ワイヤル―プ緊締機構40は、ループ部31を縮径する力が常時働いている。ループ部31は踏み筒体20の突出周壁21を囲繞して形成されるため、かかる状態ではループ部31が突出周壁21によって縮径を規制されているため、ワイヤル―プ緊締機構40による縮径が作動しない態様となっている。すなわち、捕獲ワイヤ30のループ部31の縮径は、害獣が踏み筒体20を脚で踏み抜くことによってループ部31を突出周壁21から離脱させ、ワイヤル―プ緊締機構40によるループ部31の縮径作動が生起されることにより引き起こされる。
【0027】
ワイヤル―プ緊締機構40は、
図3に示すように、先端に設けられたワイヤガイド体41と、ワイヤガイド体41と連結する2本の内側パイプ43と、内側パイプ43を外嵌する外側パイプ44と、内側パイプ43の内壁と外側パイプ44の内壁とにより構成される内部空間45に配置された圧縮コイルバネ46と、外側パイプの端部(ワイヤガイド体41とは反対位置)に設けられたストッパー機能体50と、より構成されている。
【0028】
ワイヤル―プ緊締機構40には、捕獲ワイヤ30が内部を挿通している。これにより、捕獲ワイヤ30は、ワイヤル―プ緊締機構40(ワイヤガイド体41)を境としてループ部31と左右の自由端32とを構成することとなる。なお、自由端32は、左右それぞれが緊締自在にワイヤル―プ緊締機構40と連動連結している。
【0029】
ワイヤガイド体41は、平面視で略楕円形ブロックで構成されており、頂部から底部へと貫通するように2個のガイド孔42が穿設されている。ガイド孔42は、同一径で頂部側から底部側にかけて互いの間隔を狭くするテーパー状間隔としている。すなわち、ガイド孔42は、捕獲ワイヤ30が貫通して、ループ部31と両側自由端32との境部分に対応している。しかも、2つのガイド孔42がテーパー状間隔となるように構成されている為、捕獲ワイヤ30は自由端32から暫時拡開してループ部31を構成することとなる。ワイヤガイド体41を係る構成とすることは、捕獲ワイヤ30の通過に伴うガイド孔42周壁面の摩損を防ぐことができる。
【0030】
内側パイプ43は、下端部開放の有蓋に構成された短い筒体である。内側パイプ43の蓋部43aの中央部には、捕獲ワイヤ30が挿貫可能な孔が設けられており、蓋部43aの孔がワイヤガイド体41のガイド孔42と内部連通状態になるように連結している。内側パイプ43の他端部(開放側)は、後述する外側パイプ44の内部に遊嵌している。
【0031】
外側パイプ44は、内側パイプ43を外嵌する上下開放筒体であって、内側パイプ43よりも長い筒体で構成されている。外側パイプ44は、一端部の開口が内側パイプ43を外嵌し、他端部が後述するストッパー機能体50の外筒51と内部連通状態に結合している。
【0032】
圧縮コイルバネ46は、
図3の平面視において、上部が内側パイプ43の蓋部43aにより、下部が後述するストッパー機能体50により圧縮されて内部空間45内に収納されている。圧縮して収納された圧縮コイルバネ46は、捕獲ワイヤ30のループ部31を伴った固定形態によって伸長方向への付勢力を貯め込んだ状態が維持されている。すなわち、捕獲ワイヤ30は、ストッパー機能体50によって両側自由端32の一部をそれぞれ固定され、他端のループ部31を踏み筒体20の突出周壁21に囲繞することで、両側を不動状態とする固定形態を構成している。したがって、圧縮して収納された圧縮コイルバネ46は、ストッパー機能体50と踏み筒体20とにより捕獲ワイヤ30の両端側の動きを規制されているために、伸長方向への付勢力を解放することができず、圧縮状態のままで内部空間45中に収納されている。
【0033】
内側パイプ43、外側パイプ44、および圧縮コイルバネ46は、
図3に示すように、それぞれの中心軸が一致するように構成されており、その中心軸上を捕獲ワイヤ30が挿貫している。なお、内側パイプ43、外側パイプ44、および圧縮コイルバネ46の内、一番内側(中心軸側)に配置される圧縮コイルバネ46は、捕獲ワイヤ30と干渉しないように、捕獲ワイヤ30との間には十分な隙間が設けられている。
【0034】
ストッパー機能体50は、ワイヤル―プ緊締機構40の内部を挿通する捕獲ワイヤ30の動きを規制する部材である。より具体的には、ストッパー機能体50は、捕獲ワイヤ30の自由端32側を引っ張ることによりループ部31を縮径する動き(
図3中における矢印X方向)には干渉しないが、ループ部31側を引っ張ることによりループ部31を拡開する動き(
図3中における矢印Y方向)に対しては捕獲ワイヤ30の動きを規制する部材である。
【0035】
ストッパー機能体50は、
図3に示すように、内部中空状の外筒51と、外筒51の内部に収納された内筒52と、外筒51の内部に収納され内筒52を上部に押圧付勢するスプリング53と、より構成されている。
【0036】
外筒51の両端部の中心には、捕獲ワイヤ30が外筒51を挿通するための孔が設けられている。外筒51の中空部は、内周面がワイヤループ緊締機構40側に向かって漸次縮径するテーパー状に構成されている。
【0037】
内筒52は、上下開放の筒体であり、捕獲ワイヤ30が中空部を挿通している。内筒52の長手部周壁には、複数のボール遊嵌孔54が穿設されている。ボール遊嵌孔54は、内筒52の周壁から中空部まで貫通しており、ボール遊嵌孔54の内周面は、内側から外側(内筒52の周壁および中空部)に向けて狭窄状のテーパー状に構成されている。
【0038】
ボール遊嵌孔54には、捕獲ワイヤ30の表面を圧着固定するストッパーボール55が遊嵌されている。すなわち、内筒52の周壁側と中空部側には、ボール遊嵌孔54を介してストッパーボール55の周面が外部へ露出するように構成されている。なお、ストッパーボール55の周面は、微小な溝を設けたり、微細粒子を接着させる表面処理を施したりすることにより摩擦係数を大としている。
【0039】
かかる構成により、内筒52が外筒51の上部に移動し、内筒52のボール遊嵌孔54と外筒51のテーパー部とが対応する位置関係になれば、外筒51のテーパー部がストッパーボール55を内側へと押し込むように作用する。内側へ押し込まれたストッパーボール55は、内筒52の中心部を挿貫する捕獲ワイヤ30の表面を圧接状態となる。ストッパーボール55による圧接付勢力によって、捕獲ワイヤ30は動きが規制されることとなる。
【0040】
スプリング53は、内筒52を上部(外筒51のテーパー部側)に押圧付勢している。これにより、捕獲ワイヤ30が自由端32側に引っ張られた場合は、内筒52がスプリング53を収縮させて下方に移動する。内筒52が下方に移動することにより、捕獲ワイヤ30は、外筒51のテーパー部とストッパーボール55とにより生起される圧接状態から解放され、動きの規制を受けることがない。
【0041】
しかし、捕獲ワイヤ30がループ部31側に引っ張られた場合は、内筒52を上部(外筒51のテーパー部側)に押圧付勢されている為に、外筒51のテーパー部とストッパーボール55とにより圧接状態が生起され、即座に動きが規制されることとなる。
【0042】
本発明にかかる筒状害獣捕獲具1の構成は上述の通りである。以下、本発明にかかる筒状害獣捕獲具1によって害獣を捕縛する工程を説明する。
【0043】
筒状害獣捕獲具1を配置する地面を掘り、その穴には捕獲ケース10が埋設される。捕獲ケース10の上部開口面は、地表面よりもやや低い高さとなるように配置される。埋設された捕獲ケース10の開口には、踏み筒体20を嵌め込み、踏み筒体20の上部開口面が地表と略同一高さとなるように配置する。
【0044】
踏み筒体20を捕獲ケース10と高さをずらして嵌め込むことにより形成された突出周壁21には、捕獲ワイヤ30を囲繞することによってループ部31を形成する。ループ部31を除いた捕獲ワイヤ30、並びにワイヤル―プ緊締機構40は、捕獲ケース10に形成された切欠部11を通過させることで、配置する位置を規制することにより安定させている。
【0045】
踏み筒体20の開口部には、
図1に示すような、隠蔽プレート22を設けることで、目視による筒状害獣捕獲具1の存在を隠してもよい。具体的には、隠蔽プレート22は、踏み筒体20の開口部の内径と略同じ径からなる板体で構成されている。嵌合させた踏み筒体20に嵌合させた隠蔽プレート22上面には薄く落ち葉等を被せることにより、周囲の景色と一体化させ、害獣の捕縛率を向上させる効果が期待できる。なお、隠蔽プレート22の素材としては、発砲スチロールが好適に採用される。発泡スチロール製の隠蔽プレート22は、害獣が脚を踏み込んだ際の力で容易に損壊し、後述する筒状害獣捕獲具1の害獣捕縛工程を妨げない効果がある。
【0046】
かかる状態の筒状害獣捕獲具1の踏み筒体20に害獣が脚を踏み込めば、踏み筒体20と害獣の脚は余剰空間12の高さ分降下沈降する。踏み筒体20の降下沈降と同時に、突出周壁21に囲繞した捕獲ワイヤ30は踏み筒体20から離脱することとなる。
【0047】
捕獲ワイヤ30が踏み筒体20から離脱することにより、ループ部31の維持規制がなくなり、ワイヤル―プ緊締機構40に圧縮収納されていた圧縮コイルバネ46が圧縮解除されて弾性方向に伸長する(
図4を参照)。これにより、ワイヤガイド体41と内側パイプ43とが、外側パイプ44から離反して捕獲ワイヤ30のループ部31を縮径させるとともに、害獣の脚を捕縛する。
【0048】
また、ワイヤル―プ緊締機構40の外側パイプ44は、平面視で2本が左右に並んで配置されている。この2本の外側パイプ44は、一体となるように外形ケース47で包皮することもできる。これにより、圧縮コイルバネ46が飛び出す方向を同方向へと支持することができ、素早い圧縮コイルバネ46の飛び出し作動と、ループ部31の縮径とによる害獣の確実な緊締を可能とする。
【0049】
以上のように、捕獲ケース10から上端を突出させた踏み筒体20が沈降することにより、突出周壁21に囲繞した捕獲ワイヤ30がワイヤル―プ緊締機構40を作動させて害獣の脚部を緊締して捕縛する。この際に、害獣の脚体の足部先端から蹄部までの長さ以上又は害獣の脚底面から害獣の脚体のくるぶし部までの高さより深く形成された捕獲ケース10は、沈降に伴う捕獲ワイヤ30の緊締作動を深い位置、すなわち害獣の足首近辺で行うことができるの為に、害獣が異常を察知して脚部を引き上げても十分に捕獲ワイヤ30での捕縛を可能とすることができる。
【0050】
このように、害獣捕獲具が備える捕獲ケースにおいて、少なくとも害獣の脚体の足部先端から蹄部までの長さ以上又は害獣の脚底面から害獣の脚体のくるぶし部までの高さより深く構成した筒状のケース本体を地面に埋設し、上端開口部を地表面より下方に位置させたことにより、確実に害獣捕獲を行うことができる。
【符号の説明】
【0051】
1 筒状害獣捕獲具
10 捕獲ケース
10a ケース本体
10b 周側壁
10c 底部
11 切欠部
12 余剰空間
13 排水口
20 踏み筒体
20c 底部
21 突出周壁
22 隠蔽プレート
30 捕獲ワイヤ
31 ループ部
32 自由端
40 ワイヤル―プ緊締機構
41 ワイヤガイド体
42 ガイド孔
43 内側パイプ
43a 蓋部
44 外側パイプ
45 内部空間
46 圧縮コイルバネ
47 外形ケース
50 ストッパー機能体
51 外筒
52 内筒
53 スプリング
54 ボール遊嵌孔
55 ストッパーボール