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特開2022-65572培地交換用フィルター及びこのフィルターを有する培養装置
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  • 特開-培地交換用フィルター及びこのフィルターを有する培養装置 図1
  • 特開-培地交換用フィルター及びこのフィルターを有する培養装置 図2
  • 特開-培地交換用フィルター及びこのフィルターを有する培養装置 図3
  • 特開-培地交換用フィルター及びこのフィルターを有する培養装置 図4
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022065572
(43)【公開日】2022-04-27
(54)【発明の名称】培地交換用フィルター及びこのフィルターを有する培養装置
(51)【国際特許分類】
   C12M 1/12 20060101AFI20220420BHJP
   C12M 1/00 20060101ALI20220420BHJP
【FI】
C12M1/12
C12M1/00 D
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020174267
(22)【出願日】2020-10-15
(71)【出願人】
【識別番号】000171919
【氏名又は名称】佐竹マルチミクス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100102749
【弁理士】
【氏名又は名称】澤木 紀一
(74)【代理人】
【識別番号】100081787
【弁理士】
【氏名又は名称】小山 輝晃
(72)【発明者】
【氏名】加藤 好一
【テーマコード(参考)】
4B029
【Fターム(参考)】
4B029AA01
4B029BB01
4B029CC01
4B029DA04
(57)【要約】
【課題】従来の培養容器に用いられている培地交換用フィルターは、安定した品質を有せず、逆洗が必要で、長時間の連続培地交換を行うことができなかった。
【解決手段】本発明の培地交換用フィルターは、培養物と培地とが容れられた培養容器内の培地のみを通過させ、培養物は通過させない、ダイヤモンドライクカーボンコーティングされた金属メッシュフィルターよりなることを特徴とする。また、本発明の培養装置は、培養物と培地とが容れられる培養容器と、
前記培養容器内から培地を排出する、培養物を通過させず、培地のみを通過させるフィルターを有する培地排出手段とよりなり、上記フィルターは、ダイヤモンドライクカーボンコーティングされた金属メッシュフィルターよりなることを特徴とする。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
培養物と培地とが容れられた培養容器内の培地のみを通過させ、培養物は通過させない、ダイヤモンドライクカーボンコーティングされた金属メッシュフィルターよりなることを特徴とする培地交換用フィルター。
【請求項2】
上記金属メッシュフィルターは、弧状断面の線状ワイヤーからなることを特徴とする請求項1に記載の培地交換用フィルター。
【請求項3】
培養物と培地とが容れられる培養容器と、
前記培養容器内から培地を排出する、培養物を通過させず、培地のみを通過させるフィルターを有する培地排出手段とよりなり、
上記フィルターは、ダイヤモンドライクカーボンコーティングされた金属メッシュフィルターよりなることを特徴とする培養装置。
【請求項4】
上記金属メッシュフィルターは、弧状断面の線状ワイヤーからなることを特徴とする請求項3に記載の培養装置。
【請求項5】
前記培地排出手段は、培地排出管と、培地排出管の端部に設けられたフィルターと、前記培地排出管内を吸引する手段とよりなり、
上記フィルターは、上端開口が、前記培地排出管の下端に液密に接続された、有底の筒状の筒体フィルターであることを特徴とする請求項3または請求項4に記載の培養装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、培地交換用フィルター(培地交換用メンブレンフィルター)、特に、長期間の連続培地交換が可能なフィルター(メンブレンフィルター、膜)に関するものである。
【背景技術】
【0002】
例えば、培養容器内で、iPS細胞や動植物の細胞や菌体等の培養物を連続して培養するためには、培養物を培養液等の培地内で培養しながら、フレッシュな培地を供給し、培養物を含まない、老廃物を含む培地のみを排出する必要がある。
【0003】
図4は、連続して培養物を培養する培養装置を示し、該培養装置は、培養容器1に、該培養容器1内に培地を供するための培地供給管2と、前記培養容器1外に培地を排出するための培地排出管3とを設けると共に、該培地排出管3の下端開口を、前記培養容器1内の内容物中、培養物は通過せず、培地のみを通過するフィルター4で塞ぐ。そして、例えば、上下動撹拌手段5により、前記培養容器1内を撹拌しながら、培養物を培養した後、または、培養しながら、前記培地排出管3を吸引ポンプ6等により吸引し、前記フィルター4を介して、前記培養容器1中の老廃物を含む培地のみを、前記培養容器1外に抜出し、また、前記培地供給管2からフレッシュな培地を前記培養容器1内に供給するようにして、培地の交換を行っている。
【0004】
そして、前記フィルター4の連続培地交換用膜としては、一般に、薄膜フィルター(メンブレンフィルター)が用いられ、該薄膜フィルターとしては、従来、中空糸製や化学合成繊維製のフィルターが用いられていた。
【0005】
例えば、前記培養装置としては、例えば、特許文献1(図5)がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2020-54313号公開公報第5図
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
連続培地交換用フィルターとしては、長期間、安定して目詰まりなくワークする膜(フィルター)が必要不可欠であり、これらを防ぐために、原材料にコーティングをしたり、目詰まりを防止したりするために、定期的に逆洗を行うなど、工夫が必要であった。
【0008】
しかしながら、コーティング剤の溶出防止やムラのない施工が必要で、また、逆洗時の細胞に与えるせん断ダメージ等、種々の課題があった。
【0009】
本発明は、安定した品質を有し、かつ、逆洗を行うことなく、長時間の連続培地交換を行うことのできる培地交換用フィルターを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の培地交換用フィルターは、培養物と培地とが容れられた培養容器内の培地のみを通過させ、培養物は通過させない、ダイヤモンドライクカーボンコーティングされた金属メッシュフィルターよりなることを特徴とする。
【0011】
また、本発明の培養装置は、培養物と培地とが容れられる培養容器と、前記培養容器内から培地を排出する、培養物を通過させず、培地のみを通過させるフィルターを有する培地排出手段とよりなり、上記フィルターは、ダイヤモンドライクカーボンコーティングされた金属メッシュフィルターよりなることを特徴とする。
【0012】
また、上記培地排出手段は、培地排出管と、培地排出管の端部に設けられたフィルターと、前記培地排出管内を吸引する手段とよりなり、前記フィルターは、上端開口が、前記培地排出管の下端に液密に接続された、有底の筒状の筒体フィルターであることを特徴とする。
【0013】
また、上記金属メッシュフィルターは、弧状断面の線状ワイヤーからなることを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、安定した品質を有し、かつ、逆洗を行うことなく、長時間の連続培地交換を行うことができるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明の培地交換用フィルターを有する培養装置の説明図である。
図2】本発明のフィルターの説明用断面図である。
図3】本発明の他のフィルターの説明用断面図である。
図4】従来の培地交換用フィルターを有する培養装置の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明を実施するための形態の実施例を以下に示す。
【0017】
なお、従来と同じ部分には、同じ符号をつけ、その説明を省略する。
【実施例0018】
本発明の実施例1を図1によって説明する。
【0019】
本発明においては、培地交換用フィルター(培地交換用メンブレンフィルター)として、従来のように、中空糸製や化学合成繊維製のフィルターを用いる代わりに、培養物は通過せず、培地のみを通過する孔が複数形成された、ダイヤモンドライクカーボンコーティング(DLCコーティング)された、金属製のメッシュ状(多孔状)のフィルター(金属メッシュフィルター)を用いるようにする。
【0020】
上記金属製メッシュフィルターは、例えば、線状のワイヤーを縦横等に組み、接点を結合してメッシュ構造に形成したワイヤーメッシュフィルターや、板体に孔(パンチ孔、エッチング孔等)を開けてメッシュ状に形成したフィルター等がある。
【0021】
なお、前記孔の開口形状は、角形状や、円形状や、楕円形状等、特に制限はないが、目詰まりをより防ぐためにも、円形状、楕円形状、弧状で形成された形状が好ましく、角がある場合であっても、その角が鋭角状でないものが好ましい。
【0022】
また、例えば、円形断面(または、楕円状断面、または、弧状形状に形成された断面)の線状ワイヤーを用いて形成したワイヤーメッシュフィルターの方が、図2に示すように、フィルター8の孔8aの開口縁部の断面形状が、弧状に形成されるため、図3に示すように、例えば、開口縁部の断面形状が、角状、直角状、鋭角状になる、平面板をくり抜き等により形成した孔9aからなるフィルター9に比べて、目詰まり等が解消され、好ましい。なお、平面板をくり抜き等により形成したものであっても、孔の開口縁部の断面形状が弧状の場合は、好ましい。
【0023】
また、金属としては、錆びない材質であれば、特に限定はないが、例えば、EP処理(電解研磨処理)されたステンレスが好ましい。
【0024】
なお、前記フィルターは、前記培地排出管3の下端開口を塞ぐ、平面シート状(平面板状)のフィルターの他に、例えば、図1に示すように、上端開口が、前記培地排出管3の下端に液密に接続された、有底の円筒状の筒体フィルター7より構成されるようにしてもよい。
【0025】
なお、7aは、上記フィルター7に複数形成された、培養物は通過せず、培地のみを通過する孔を示す。
【0026】
孔の径は、内容物の性質により定まるが、例えば、1μm以上であり、例えば、3μm~100μmが好ましく、特に、5μm~75μmが好ましい。
【0027】
筒体フィルターとすることにより、培地交換面積を増やすことができ、有効に培地交換ができるようになる。
【0028】
なお、上記フィルターの形状として、板状、筒状としたが、その他の形状でもよく、特に制限はない。
【0029】
本発明によれば、金属メッシュを用いることにより、形状維持が容易となり、長期間の使用が可能となる。
【0030】
また、コーティング(被覆)のない金属メッシュの場合、細胞の付着が著しく、目詰まりを起こしてしまうので、長期運用が困難であるが、種々実験等により、金属に比べて、摩擦係数が極端に低いダイヤモンドライクカーボンをコーティングした金属メッシュフィルターを用いたところ、劇的に、細胞等の付着や目詰まりを改善でき、長期間の連続培地交換が可能となった。
【産業上の利用可能性】
【0031】
本発明は、医療品関係、食品関係等におけるあらゆる培養装置に適用可能である。
【符号の説明】
【0032】
1 培養容器
2 培地供給管
3 培地排出管
4 フィルター
5 撹拌手段
6 ポンプ
7 筒体フィルター
7a 孔
8 フィルター
8a 孔
9 フィルター
9a 孔
図1
図2
図3
図4