(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022065576
(43)【公開日】2022-04-27
(54)【発明の名称】プログラム、方法、情報処理装置、及びシステム
(51)【国際特許分類】
H04N 21/258 20110101AFI20220420BHJP
G16H 20/70 20180101ALI20220420BHJP
A61M 21/02 20060101ALI20220420BHJP
【FI】
H04N21/258
G16H20/70
A61M21/02 Z
A61M21/02 J
【審査請求】未請求
【請求項の数】21
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020174273
(22)【出願日】2020-10-15
(71)【出願人】
【識別番号】519455944
【氏名又は名称】株式会社魔法アプリ
(74)【代理人】
【識別番号】110002815
【氏名又は名称】IPTech特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】福井 健人
(72)【発明者】
【氏名】布施 悠人
(72)【発明者】
【氏名】マークス ニコラス
(72)【発明者】
【氏名】中村 一也
(72)【発明者】
【氏名】小林 耕介
(72)【発明者】
【氏名】高橋 和也
【テーマコード(参考)】
5C164
5L099
【Fターム(参考)】
5C164FA15
5C164SB41S
5C164SC11P
5C164TA08S
5C164YA07
5C164YA11
5L099AA22
(57)【要約】
【課題】恐怖症の治療に必要な情報を適切に記録する。
【解決手段】プロセッサを備えるコンピュータに実行させるためのプログラムであって、プログラムは、プロセッサに、患者である第1のユーザが恐怖感覚を抱く恐怖刺激を含む映像および/または音声を、第1のユーザに提示するステップと、第1のユーザまたは治療者である第2のユーザの操作を通じて、第1のユーザが映像および/または音声を視聴することにより能動的に表明した情報を、映像および/または音声の時系列の情報と関連付けて記録するステップと、を実行させる。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
プロセッサを備えるコンピュータに実行させるためのプログラムであって、前記プログラムは、前記プロセッサに、
患者である第1のユーザが恐怖感覚を抱く恐怖刺激を含む映像および/または音声を、前記第1のユーザに提示するステップと、
前記第1のユーザまたは治療者である第2のユーザの操作を通じて、前記第1のユーザが前記映像および/または音声を視聴することにより能動的に表明した情報を、前記映像および/または音声の時系列の情報と関連付けて記録するステップと、
を実行させるプログラム。
【請求項2】
前記記録するステップにおいて、前記第1のユーザが能動的に表明した情報として、段階的に定義したパラメータ、または、前記第1のユーザによるコメント、または、前記第2のユーザによるコメントの少なくともいずれかを記録する、請求項1に記載のプログラム。
【請求項3】
前記記録するステップは、前記第1のユーザが能動的に表明した情報とは異なる情報を前記第2のユーザから受け付け、前記映像および/または音声の時系列の情報と関連付けて記録する、請求項1に記載のプログラム。
【請求項4】
前記記録するステップにおいて、前記第1のユーザが能動的に表明した情報は、前記映像および/または音声の再生を開始してからの経過時間と関連付けて記録する、請求項1に記載のプログラム。
【請求項5】
前記記録するステップにおいて、前記第1のユーザが能動的に表明した情報は、前記映像および/または音声内で起こったイベントと関連付けて記録する、請求項1に記載のプログラム。
【請求項6】
前記プログラムは、前記プロセッサに、さらに、
前記第1のユーザのバイタルデータを取得するステップを実行させ、
前記取得するステップは、前記第1のユーザのバイタルデータを前記映像および/または音声の時系列の情報と関連付けて記録する、請求項1に記載のプログラム。
【請求項7】
前記プログラムは、前記プロセッサに、さらに、
前記第1のユーザが能動的に表明した情報と、前記第1のユーザのバイタルデータとを関連付けるステップを実行させ、
前記関連付けるステップは、前記第1のユーザが能動的に表明した情報と、前記第1のユーザのバイタルデータとの相関性を計算する、請求項6に記載のプログラム。
【請求項8】
前記取得するステップは、前記第1のユーザから少なくとも2つ以上のバイタルデータを取得し、
前記関連付けるステップは、前記取得するステップが取得したそれぞれのバイタルデータに対して、前記相関性を計算する、請求項7に記載のプログラム。
【請求項9】
前記関連付けるステップは、前記相関性と前記取得したバイタルデータとに基づいて、前記第1のユーザが能動的に表明するであろう情報を推定する、請求項7に記載のプログラム。
【請求項10】
前記プログラムは、前記プロセッサに、さらに、
前記記録するステップで記録した前記第1のユーザが能動的に表明した情報を、前記映像および/または音声の時系列の情報と合わせて表示するステップを実行させ、
前記表示するステップは、前記第1のユーザまたは前記第2のユーザから、前記時系列におけるタイミングの指定を受け付けることに応答して、当該タイミングにおける前記映像および/または音声を表示する、請求項1に記載のプログラム。
【請求項11】
前記表示するステップは、前記指定を受け付けたタイミングから所定の時間分を巻き戻した状態から前記映像および/または音声を表示する、請求項10に記載のプログラム。
【請求項12】
前記表示するステップは、前記指定を受け付けたタイミングに関連するイベントの開始時間から所定の時間分を巻き戻した状態から前記映像および/または音声を表示する、請求項10に記載のプログラム。
【請求項13】
前記表示するステップは、前記第1のユーザのバイタルデータと、前記映像および/または音声の時系列の情報と合わせて表示する、請求項10に記載のプログラム。
【請求項14】
前記プログラムは、前記プロセッサに、さらに、
前記第1のユーザ、または、前記第2のユーザの少なくともいずれかに対して前記第1のユーザが能動的に表明した情報の記録を促すステップを実行させ、
前記促すステップは、前記第1のユーザに対して前記映像および/または音声を再生している間に所定の条件を満たした場合に、前記第1のユーザ、または、前記第2のユーザの少なくともいずれかに対して、前記第1のユーザが能動的に表明した情報の記録を促す通知を行う、請求項1に記載のプログラム。
【請求項15】
前記促すステップは、前記第1のユーザのバイタルデータが所定の条件を満たした場合に、前記第1のユーザ、または、前記第2のユーザの少なくともいずれかに対して、前記第1のユーザが能動的に表明した情報の記録を促す通知を行う、請求項14に記載のプログラム。
【請求項16】
前記促すステップは、前記映像および/または音声が所定の条件を満たした場合に、前記第1のユーザ、または、前記第2のユーザの少なくともいずれかに対して、前記第1のユーザが能動的に表明した情報の記録を促す通知を行う、請求項14に記載のプログラム。
【請求項17】
前記促すステップは、前記第1のユーザが能動的に表明した情報の記録をする間隔が所定の時間を超過した場合に、前記第1のユーザ、または、前記第2のユーザの少なくともいずれかに対して、前記第1のユーザが能動的に表明した情報の記録を促す通知を行う、請求項14に記載のプログラム。
【請求項18】
前記プログラムは、前記プロセッサに、さらに、
前記第1のユーザの過去の診療履歴から情報を抽出するステップを実行させ、
前記抽出するステップは、前記第1のユーザに提示している前記映像および/または音声中の状況を特定し、過去の診療履歴から同様の状況における前記第1のユーザが能動的に表明した情報を抽出する、請求項1に記載のプログラム。
【請求項19】
プロセッサと、メモリを備えるコンピュータにより実行される方法であって、前記方法は、前記プロセッサが、前記メモリに記憶されるプログラムを読み込んで実行することにより、
前記第1のユーザが恐怖感覚を抱く恐怖刺激を含む映像および/または音声を、前記第1のユーザに提示するステップと、
前記第1のユーザまたは前記第2のユーザの操作を通じて、前記第1のユーザが前記映像および/または音声を視聴することにより能動的に表明した情報を、前記映像および/または音声の時系列の情報と関連付けて記録するステップと、
を実行する方法。
【請求項20】
制御部と、記憶部とを備える情報処理装置であって、前記制御部が、前記記憶部に記憶されるプログラムに基づいて動作することにより、
前記第1のユーザが恐怖感覚を抱く恐怖刺激を含む映像および/または音声を、前記第1のユーザに提示するステップと、
前記第1のユーザまたは前記第2のユーザの操作を通じて、前記第1のユーザが前記映像および/または音声を視聴することにより能動的に表明した情報を、前記映像および/または音声の時系列の情報と関連付けて記録するステップと、
を実行する情報処理装置。
【請求項21】
患者用システムと、治療者用システムと、サーバと、を備えるシステムであって、
前記患者用システムは、前記第1のユーザが恐怖感覚を抱く恐怖刺激を含む映像および/または音声を、前記第1のユーザに提示する映像処理部を備え、
前記サーバは、前記第1のユーザに提示する映像を生成する恐怖場面描画モジュールと、前記第1のユーザが能動的に表明した情報を記録する診療結果記録モジュールと、を備え、
前記患者用システムと前記治療者用システムとの少なくともいずれかは、前記第1のユーザが能動的に表明した情報を記録する操作を受け付ける操作受付部を備える
システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、プログラム、方法、情報処理装置、及びシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
恐怖症の治療を行うにあたり、高所や閉所など患者が恐怖を感じる状況を体験あるいは想起させ、患者をその状況に慣れさせることで恐怖症の克服を目指す曝露療法という治療法がある。曝露療法の現場においては、患者に恐怖を感じる状況を疑似的に体験させるために、患者が恐怖を感じる状況の映像や、患者が恐怖を感じる状況を再現した仮想空間を用いたシステムが使用されることがある。
【0003】
特許文献1には、患者が恐怖感覚を抱く恐怖刺激を含む音声および/または映像および/または振動を再生して該患者に与えるシステムが開示されている。特許文献1では、患者の生理情報に基づく生理パラメータの値と、予め定められた恐怖感覚の大きさに相当する該生理パラメータに関する閾値とに基づいて、当該患者が抱く恐怖感覚の大きさが予め定められた恐怖感覚の大きさ以上となった期間において前記恐怖刺激印加手段にて再生されている未改善部分を特定可能な未改善部分情報を記憶する旨が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1では、患者が抱く恐怖感覚の大きさを推定するために、患者の心拍数などのバイタルデータを使用している。しかし、患者が抱く恐怖感覚の大きさが完全にバイタルデータとして表出するとは限らない。例えば、発汗量をバイタルデータとして使用する場合、普段から発汗量が多い患者の場合には、バイタルデータが患者が抱く恐怖感覚の大きさを正確に表さない場合がある。
【0006】
従って、恐怖症の治療に必要な情報を適切に記録する技術が必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
一実施の形態によると、プロセッサを備えるコンピュータに実行させるためのプログラムであって、プログラムは、プロセッサに、患者である第1のユーザが恐怖感覚を抱く恐怖刺激を含む映像および/または音声を、第1のユーザに提示するステップと、第1のユーザまたは治療者である第2のユーザの操作を通じて、第1のユーザが映像および/または音声を視聴することにより能動的に表明した情報を、映像および/または音声の時系列の情報と関連付けて記録するステップと、を実行させる。
【発明の効果】
【0008】
本開示によれば、バイタルデータには表出しないが患者が感じている恐怖の感情を、恐怖刺激を含む映像および/または音声の時系列の情報と関連付けて記録することにより、よりいっそう恐怖症の治療に適した技術を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図2】第1の実施の形態のシステム1を構成する患者用システム100のブロック図である。
【
図3】第1の実施の形態のシステム1を構成する治療者用システム500のブロック図である。
【
図4】第1の実施の形態のシステム1を構成するコンピュータ200の機能的な構成を示す図である。
【
図5】第1の実施の形態のシステム1を構成するサーバ700の機能的な構成を示す図である。
【
図6】サーバ700が記憶する、患者データベース900、診療履歴データベース910、恐怖体験ログデータベース920、バイタルログデータベース930、場面設定データベース940、場面詳細データベース950、のデータ構造を示す図である。
【
図7】第1の実施の形態におけるシステム1により、第1の治療フェーズにおいて、患者が恐怖刺激を含む映像を視聴し、患者が能動的に表明した情報を映像の時系列の情報と関連付けて記録する流れの一例を示すフローチャートである。
【
図8】第1の実施の形態におけるシステム1により、第1の治療フェーズにおいて、患者が恐怖刺激を含む映像を視聴し、患者のバイタルデータの情報を映像の時系列の情報と関連付けて記録する流れの一例を示すフローチャートである。
【
図9】第1の実施の形態におけるシステム1により、第2の治療フェーズにおいて、第1の治療フェーズで第1のユーザが能動的に表明した情報を表示し、治療者の操作に基づいて、振り返り用の映像を再生する流れの一例を示すフローチャートである。
【
図10】第1の実施の形態におけるシステム1により、第1の治療フェーズにおいて、所定の条件を満たした場合に、第1のユーザが能動的に表明した情報の記録を促す流れの一例を示すフローチャートである。
【
図11】第1の実施の形態におけるシステム1により、第1の治療フェーズにおいて、第1のユーザに映像を提示している間に、過去の同様の状況における第1のユーザの状態を表示する流れの一例を示すフローチャートである。
【
図12】治療者用システム500の画面例を示す図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、図面を参照しつつ、本開示の実施の形態について説明する。以下の説明では、同一の部品には同一の符号を付してある。それらの名称および機能も同じである。従って、それらについての詳細な説明は繰り返さない。
【0011】
<第1の実施の形態>
<1 システム1の全体構成>
システム1は、恐怖症の治療支援システムである。
図1は、システム1の全体の構成を示す図である。
【0012】
図1に示すように、システム1は、患者用システム100と、治療者用システム500と、サーバ700とを含む。患者用システム100と、治療者用システム500と、サーバ700とは、ネットワーク2を介して通信接続する。サーバ700は、図示しない外部周辺機器とネットワーク2を介して通信接続してもよい。例えば、外部周辺機器は、プリンタ等を含む。
【0013】
<1.1 患者用システムの構成>
図2は、本実施の形態に従う患者用システム100の構成の概略を表す図である。
【0014】
患者用システム100は、コンピュータ200と、HMD110と、コントローラ300と、バイタルデータセンサ400と、HMDセンサ410と、モーションセンサ420と、を備える。HMD110は、モニタ130と、注視センサ140と、マイク170と、スピーカ180とを含む。コントローラ300は、モーションセンサ420を含み得る。
【0015】
ある局面において、コンピュータ200は、インターネットその他のネットワーク2に接続可能であり、ネットワーク2に接続されているサーバ700その他のコンピュータと通信可能である。その他のコンピュータとしては、例えば、治療者用システム500のコンピュータが挙げられる。別の局面において、HMD110は、HMDセンサ410の代わりに、図示しないセンサ190を含み得る。コンピュータ200の詳細な構成は、別途後述する。
【0016】
HMD110は、患者の頭部に装着され、動作中に患者が恐怖を感じる状況を再現した仮想空間を患者に提供し得る。より具体的には、HMD110は、右目用の画像および左目用の画像をモニタ130にそれぞれ表示する。患者の各目がそれぞれの画像を視認すると、患者は、両目の視差に基づき当該画像を3次元画像として認識し得る。HMD110は、モニタを備える所謂ヘッドマウントディスプレイと、スマートフォンその他のモニタを有する端末を装着可能なヘッドマウント機器のいずれをも含み得る。
【0017】
モニタ130は、例えば、非透過型の表示装置として実現される。ある局面において、モニタ130は、患者の両目の前方に位置するようにHMD110の本体に配置されている。従って、患者は、モニタ130に表示される3次元画像を視認すると、仮想空間に没入することができる。ある局面において、仮想空間は、例えば、背景、患者または治療者が操作可能なオブジェクト、患者または治療者が選択可能なメニューの画像を含む。ある局面において、モニタ130は、所謂スマートフォンその他の情報表示端末が備える液晶モニタまたは有機EL(Electro Luminescence)モニタとして実現され得る。
【0018】
別の局面において、モニタ130は、透過型の表示装置として実現され得る。この場合
、HMD110は、
図1に示されるように患者の目を覆う密閉型ではなく、メガネ型のような開放型であり得る。透過型のモニタ130は、その透過率を調整することにより、一時的に非透過型の表示装置として構成可能であってもよい。モニタ130は、仮想空間を構成する画像の一部と、現実空間とを同時に表示する構成を含んでいてもよい。例えば、モニタ130は、HMD110に搭載されたカメラで撮影した現実空間の画像を表示してもよいし、一部の透過率を高く設定することにより現実空間を視認可能にしてもよい。
【0019】
ある局面において、モニタ130は、右目用の画像を表示するためのサブモニタと、左目用の画像を表示するためのサブモニタとを含み得る。別の局面において、モニタ130は、右目用の画像と左目用の画像とを一体として表示する構成であってもよい。この場合、モニタ130は、高速シャッタを含む。高速シャッタは、画像がいずれか一方の目にのみ認識されるように、右目用の画像と左目用の画像とを交互に表示可能に作動する。
【0020】
ある局面において、HMD110は、図示せぬ複数の光源を含む。各光源は例えば、赤外線を発するLED(Light Emitting Diode)により実現される。HMDセンサ410は、HMD110の動きを検出するためのポジショントラッキング機能を有する。より具体的には、HMDセンサ410は、HMD110が発する複数の赤外線を読み取り、現実空間内におけるHMD110の位置および傾きを検出する。
【0021】
別の局面において、HMDセンサ410は、カメラにより実現されてもよい。この場合、HMDセンサ410は、カメラから出力されるHMD110の画像情報を用いて、画像解析処理を実行することにより、HMD110の位置および傾きを検出することができる。
【0022】
別の局面において、HMD110は、位置検出器として、HMDセンサ410の代わりに、あるいはHMDセンサ410に加えてセンサ190を備えてもよい。HMD110は、センサ190を用いて、HMD110自身の位置および傾きを検出し得る。例えば、センサ190が角速度センサ、地磁気センサ、あるいは加速度センサである場合、HMD110は、HMDセンサ410の代わりに、これらの各センサのいずれかを用いて、自身の位置および傾きを検出し得る。一例として、センサ190が角速度センサである場合、角速度センサは、現実空間におけるHMD110の3軸周りの角速度を経時的に検出する。HMD110は、各角速度に基づいて、HMD110の3軸周りの角度の時間的変化を算出し、さらに、角度の時間的変化に基づいて、HMD110の傾きを算出する。
【0023】
注視センサ140は、患者の右目および左目の視線が向けられる方向を検出する。つまり、注視センサ140は、患者の視線を検出する。視線の方向の検出は、例えば、公知のアイトラッキング機能によって実現される。注視センサ140は、当該アイトラッキング機能を有するセンサにより実現される。ある局面において、注視センサ140は、右目用のセンサおよび左目用のセンサを含むことが好ましい。注視センサ140は、例えば、患者の右目および左目に赤外光を照射するとともに、照射光に対する角膜および虹彩からの反射光を受けることにより各眼球の回転角を検出するセンサであってもよい。注視センサ140は、検出した各回転角に基づいて、患者の視線を検知することができる。
【0024】
マイク170は、患者の発話を音声信号(電気信号)に変換してコンピュータ200に出力する。スピーカ180は、音声信号を音声に変換して患者に出力する。別の局面において、HMD110は、スピーカ180に替えてイヤホンを含み得る。
【0025】
コントローラ300は、有線または無線によりコンピュータ200に接続されている。コントローラ300は、患者からコンピュータ200への命令の入力を受け付ける。ある局面において、コントローラ300は、患者によって把持可能に構成される。別の局面において、コントローラ300は、患者の身体あるいは衣類の一部に装着可能に構成される。さらに別の局面において、コントローラ300は、コンピュータ200から送信される信号に基づいて、振動、音、光のうちの少なくともいずれかを出力するように構成されてもよい。さらに別の局面において、コントローラ300は、患者から、仮想空間に配置されるオブジェクトの位置や動きを制御するための操作を受け付ける。
【0026】
ある局面において、コントローラ300は、複数の光源を含む。各光源は例えば、赤外線を発するLEDにより実現される。HMDセンサ410は、ポジショントラッキング機能を有する。この場合、HMDセンサ410は、コントローラ300が発する複数の赤外線を読み取り、現実空間内におけるコントローラ300の位置および傾きを検出する。別の局面において、HMDセンサ410は、カメラにより実現されてもよい。この場合、HMDセンサ410は、カメラから出力されるコントローラ300の画像情報を用いて、画像解析処理を実行することにより、コントローラ300の位置および傾きを検出することができる。
【0027】
バイタルデータセンサ400は、患者からバイタルデータを取得する。バイタルデータセンサ400は、図示しない発汗センサや心拍センサ等で実現される。
【0028】
モーションセンサ420は、ある局面において、患者の手に取り付けられて、患者の手の動きを検出する。例えば、モーションセンサ420は、手の回転速度、回転数等を検出する。検出された信号は、コンピュータ200に送られる。モーションセンサ420は、例えば、コントローラ300に設けられている。ある局面において、モーションセンサ420は、例えば、患者に把持可能に構成されたコントローラ300に設けられている。別の局面において、現実空間における安全のため、コントローラ300は、手袋型のように患者の手に装着されることにより容易に飛んで行かないものに装着される。さらに別の局面において、患者に装着されないセンサが患者の手の動きを検出してもよい。例えば、患者を撮影するカメラの信号が、患者の動作を表す信号として、コンピュータ200に入力されてもよい。モーションセンサ420とコンピュータ200とは、一例として、無線により互いに接続される。無線の場合、通信形態は特に限られず、例えば、Bluetooth(登録商標)その他の公知の通信手法が用いられる。
【0029】
<1.2 治療者用システムの構成>
図3は、本実施の形態に従う治療者用システム500の構成の概略を表す図である。
【0030】
治療者用システム500は、コンピュータ200と、出力装置510と、入力装置540とを備える。出力装置510は、モニタ520と、スピーカ530とを含む。入力装置540は、キーボード550と、マウス560と、マイク570と、タッチセンシングデバイス580と、コントローラ590とを含む。
【0031】
ある局面において、コンピュータ200は、インターネットその他のネットワーク2に接続可能であり、ネットワーク2に接続されているサーバ700その他のコンピュータと通信可能である。その他のコンピュータとしては、例えば、患者用システム100のコンピュータが挙げられる。コンピュータ200の詳細な構成は、別途後述する。
【0032】
<1.3 サーバの構成>
サーバ700は、コンピュータ200によって構成される。
【0033】
ある局面において、コンピュータ200は、インターネットその他のネットワーク2に接続可能であり、ネットワーク2に接続されているその他のコンピュータと通信可能である。その他のコンピュータとしては、例えば、患者用システム100のコンピュータや治療者用システム500のコンピュータが挙げられる。コンピュータ200の詳細な構成は、別途後述する。
【0034】
<1.4 コンピュータの構成>
図3を参照して、本実施の形態に係るコンピュータ200について説明する。コンピュータ200は、主たる構成要素として、プロセッサ210と、メモリ220と、ストレージ230と、入出力インターフェイス240と、通信インターフェイス250とを備える。各構成要素は、それぞれ、バスに接続されている。
【0035】
プロセッサ210は、コンピュータ200に与えられる信号に基づいて、あるいは、予め定められた条件が成立したことに基づいて、メモリ220またはストレージ230に格納されているプログラムに含まれる一連の命令を実行する。ある局面において、プロセッサ210は、CPU(Central Processing Unit)、GPU(Graphics Processing Unit)、MPU(Micro Processor Unit)、FPGA(Field-Programmable Gate Array)その他のデバイスとして実現される。
【0036】
メモリ220は、プログラムおよびデータを一時的に保存する。プログラムは、例えば、ストレージ230からロードされる。データは、コンピュータ200に入力されたデータと、プロセッサ210によって生成されたデータとを含む。ある局面において、メモリ220は、RAM(Random Access Memory)その他の揮発メモリとして実現される。
【0037】
ストレージ230は、プログラムおよびデータを永続的に保持する。ストレージ230は、例えば、ROM(Read-Only Memory)、ハードディスク装置、フラッシュメモリ、その他の不揮発記憶装置として実現される。ストレージ230に格納されるプログラムは、システム1において仮想空間を提供するためのプログラム、患者の治療状況を記録および表示するためのプログラム、他のコンピュータとの通信を実現するためのプログラムを含む。ストレージ230に格納されるデータは、仮想空間を規定するためのデータおよびオブジェクト等や患者の診療履歴に関するデータ等を含む。
【0038】
別の局面において、ストレージ230は、メモリカードのように着脱可能な記憶装置として実現されてもよい。さらに別の局面において、コンピュータ200に内蔵されたストレージ230の代わりに、外部の記憶装置に保存されているプログラムおよびデータを使用する構成が使用されてもよい。このような構成によれば、例えば、病院施設のように複数のシステム1が使用される場面において、プログラムやデータの更新を一括して行うことが可能になる。
【0039】
入出力インターフェイス240は、HMD110、HMDセンサ410、モーションセンサ420、バイタルデータセンサ400、および出力装置510、入力装置540との間で信号を通信する。HMD110に含まれるモニタ130、注視センサ140、マイク170およびスピーカ180は、HMD110の入出力インターフェイス240を介してコンピュータ200との通信を行ない得る。ある局面において、入出力インターフェイス240は、USB(Universal Serial Bus)、DVI(Digital Visual Interface)、HDMI(登録商標)(High-Definition Multimedia Interface)その他の端子を用いて実現される。入出力インターフェイス240は上述のものに限られない。
【0040】
ある局面において、入出力インターフェイス240は、さらに、コントローラ300およびコントローラ590と通信し得る。例えば、入出力インターフェイス240は、コントローラ300、コントローラ590、モーションセンサ420から出力された信号の入力を受ける。別の局面において、入出力インターフェイス240は、プロセッサ210から出力された命令を、コントローラ300およびコントローラ590に送る。当該命令は、振動、音声出力、発光等をコントローラ300およびコントローラ590に指示する。コントローラ300およびコントローラ590は、当該命令を受信すると、その命令に応じて、振動、音声出力または発光のいずれかを実行する。
【0041】
通信インターフェイス250は、ネットワーク2に接続されて、ネットワーク2に接続されている他のコンピュータ(例えば、サーバ700)と通信する。ある局面において、通信インターフェイス250は、例えば、LAN(Local Area Network)その他の有線通信インターフェイス、あるいは、WiFi(Wireless Fidelity)、Bluetooth(登録商標)、NFC(Near Field Communication)その他の無線通信インターフェイスとして実現される。通信インターフェイス250は上述のものに限られない。
【0042】
ある局面において、プロセッサ210は、ストレージ230にアクセスし、ストレージ230に格納されている1つ以上のプログラムをメモリ220にロードし、当該プログラムに含まれる一連の命令を実行する。当該1つ以上のプログラムは、コンピュータ200のオペレーティングシステム、仮想空間を提供するためのアプリケーションプログラム、仮想空間で実行可能なソフトウェア等を含み得る。プロセッサ210は、入出力インターフェイス240を介して、仮想空間を提供するための信号をHMD110に送る。HMD110は、その信号に基づいてモニタ130に映像を表示する。
【0043】
図2に示される例では、コンピュータ200は、HMD110の外部に設けられる構成が示されているが、別の局面において、コンピュータ200は、HMD110に内蔵されてもよい。一例として、モニタ130を含む携帯型の情報通信端末(例えば、スマートフォン)がコンピュータ200として機能してもよい。
【0044】
<1.5 患者用システムおよび治療者用システムの機能図>
図4は、患者用システム100および治療者用システム500の機能を示したブロック図である。
図2に示すように、患者用システム100および治療者用システム500は、通信部601と、記憶部602と、制御部603と、操作受付部604と、映像処理部605と、音声処理部606と、を含む。コンピュータ200は、
図2では特に図示していない機能および構成(例えば、電力を保持するためのバッテリー、バッテリーから各回路への電力の供給を制御する電力供給回路など)も有している。
図2に示すように、コンピュータ200に含まれる各ブロックは、バス等により電気的に接続される。
【0045】
通信部601は、コンピュータ200が他の機器と通信するための構成を有する。
【0046】
操作受付部604は、ユーザの入力操作を受け付けるための機構を有する。
【0047】
映像処理部605は、音声信号の入出力を行うための構成を有する。音声処理部606は、音声信号の入出力を行うための構成を有する。
【0048】
記憶部602は、例えばフラッシュメモリ等により構成され、コンピュータ200が使用するデータおよびプログラムを記憶する。ある局面において、記憶部602は、患者情報620、診療履歴情報621、恐怖場面情報622、診療結果情報623を記憶する。
【0049】
患者情報620は、恐怖症の治療を受ける患者に関する情報である。例えば、患者情報620は、患者が治療を希望する恐怖症の種別等の情報を含む。
【0050】
診療履歴情報621は、患者の診療履歴に関する情報である。例えば、診療履歴情報621は、患者が診療を受けた日時等の情報を含む。
【0051】
恐怖場面情報622は、患者が恐怖を感じる状況を再現した恐怖場面に関する情報である。例えば、恐怖場面情報622は、患者に表示する恐怖場面の種類等の情報を含む。
【0052】
診療結果情報623は、患者の診療結果に関する情報である。例えば、診療結果情報623は、診療中に患者が能動的に表明した情報に関するコメント等の情報を含む。例えば、コメントは、電車が近づくのを見て不安を覚えた等の情報を含む。
【0053】
制御部603は、記憶部602に記憶されるプログラムを読み込んで、プログラムに含まれる命令を実行することにより、コンピュータ200の動作を制御する。制御部603は、例えば予めコンピュータ200にインストールされているアプリケーションである。制御部603は、プログラムに従って動作することにより、入力操作受付部610と、送受信部611と、データ処理部612と、通知制御部613としての機能を発揮する。
【0054】
入力操作受付部610は、キーボード550、マウス560等の入力装置540に対するユーザの入力操作を受け付ける処理を行う。入力操作受付部610は、第1のユーザや第2のユーザが行った操作の種別を判定する。
【0055】
送受信部611は、コンピュータ200が、サーバ700等の外部の装置と、通信プロトコルに従ってデータを送受信するための処理を行う。
【0056】
データ処理部612は、コンピュータ200が入力を受け付けたデータに対し、プログラムに従って演算を行い、演算結果をメモリ220等に出力する処理を行う。
【0057】
通知制御部613は、ユーザに対し情報を提示する処理を行う。通知制御部613は、表示画像をモニタに表示させる処理、音声をスピーカに出力させる処理、等を行う。
【0058】
<1.6 サーバの機能図>
図5は、サーバ700の機能的な構成を示す図である。
図3に示すように、サーバ700は、通信部801と、記憶部802と、制御部803としての機能を発揮する。
【0059】
通信部801は、サーバ700が外部の装置と通信するための処理を行う。
【0060】
記憶部802は、サーバ700が使用するデータおよびプログラムを記憶する。記憶部802は、患者データベース900、診療履歴データベース910、恐怖体験ログデータベース920、バイタルログデータベース930、場面設定データベース940、場面詳細データベース950を記憶する。
【0061】
患者データベース900は、システム1を通じて診療を行う患者に関する情報を保持するためのデータベースである。詳細は後述する。
【0062】
診療履歴データベース910は、システム1を通じて患者に対して行われた診療の履歴に関する情報を保持するためのデータベースである。詳細は後述する。
【0063】
恐怖体験ログデータベース920は、システム1を通じて患者が恐怖感覚を抱く恐怖刺激を含む映像および/または音声を視聴している状態である恐怖体験に関する情報を保持するためのデータベースである。恐怖体験ログデータベース920は、恐怖体験中に患者が視聴している映像および/または音声の内容と、恐怖体験中の患者の状態とを、恐怖体験ログとして記録する。詳細は後述する。
【0064】
バイタルログデータベース930は、システム1を通じて患者が恐怖体験中に取得されたバイタルデータである、バイタルログに関する情報を保持するためのデータベースである。詳細は後述する。
【0065】
場面設定データベース940は、システム1を通じて患者に提示するための仮想空間に関する情報を保持するためのデータベースである。詳細は後述する。
【0066】
場面詳細データベース950は、場面設定データベース940に記録された仮想空間に含まれるオブジェクトに関する情報を保持するためのデータベースである。詳細は後述する。
【0067】
制御部803は、サーバ700のプロセッサ210がプログラムに従って処理を行うことにより、各種モジュールとして示す機能を発揮する。
【0068】
受信制御モジュール810は、サーバ700が外部の装置から通信プロトコルに従って信号を受信する処理を制御する。
【0069】
送信制御モジュール820は、サーバ700が外部の装置に対し通信プロトコルに従って信号を送信する処理を制御する。
【0070】
恐怖場面描画モジュール830は、システム1を通じて患者に恐怖体験を提供するための仮想空間を描画する処理を制御する。詳細は後述する。
【0071】
診療結果記録モジュール840は、システム1を通じて患者に行った診療結果を記録する処理を制御する。詳細は後述する。
【0072】
診療結果解析モジュール850は、システム1を通じて患者に行った診療結果を解析する処理を制御する。詳細は後述する。
【0073】
診療結果描画モジュール860は、システム1を通じて患者に行った診療結果を描画する処理を制御する。詳細は後述する。
【0074】
診療結果抽出モジュール870は、システム1を通じて患者に行った診療結果を抽出する処理を制御する。詳細は後述する。
【0075】
<2 データ構造>
図6は、サーバ700が記憶する患者データベース900、診療履歴データベース910、恐怖体験ログデータベース920、バイタルログデータベース930、場面設定データベース940、場面詳細データベース950のデータ構造を示す図である。以下、患者が恐怖症の治療を行う事例を例として説明する。
【0076】
患者データベース900には、図示しているように、(1)患者ID、(2)氏名、(3)主治医、(4)ステータス、(5)診療履歴IDを項目別に格納されている。また、図示していない項目として、患者の性別、年齢、住所などを含めてもよい。
【0077】
サーバ700は、治療者から患者に関する情報を受け付け、その内容に関する情報を患者データベース900に記録する。
【0078】
項目「患者ID」は、患者を識別する情報である。
【0079】
項目「氏名」は、患者IDに対応する患者の氏名に関する情報である。
【0080】
項目「主治医」は、患者の診療を主に担当する医師に関する情報である。
【0081】
項目「ステータス」は、患者の治療状況に関する情報である。例えば、ステータスは、治療中、完治、等の情報を含む。
【0082】
項目「診療履歴ID」は、患者の診療履歴を記録した情報であり、その詳細は診療履歴データベース910に格納されている。
【0083】
診療履歴データベース910には、図示しているように、(1)診療履歴ID、(2)診療日時、(3)診療担当、(4)恐怖場面、(5)恐怖体験ログ、(6)バイタルログ、を項目別に格納されている。
【0084】
サーバ700は、治療者から各回の診療に関する情報を受け付け、その内容に関する情報を診療履歴データベース910に記録する。
【0085】
項目「診療履歴ID」は、各回の診療を特定するための情報である。
【0086】
項目「診療日時」は、診療を行った日時に関する情報である。
【0087】
項目「診療担当」は、診療を担当した医師に関する情報である。
【0088】
項目「恐怖場面」は、診療時に使用した恐怖場面を識別するための情報であり、その詳細は場面設定データベース940に格納されている。
【0089】
項目「恐怖体験ログ」は、診療時の恐怖体験中に記録された恐怖体験ログに関する情報であり、その詳細は恐怖体験ログデータベース920に格納されている。
【0090】
項目「バイタルログ」は、診療時の恐怖体験中に記録された患者のバイタルデータに関する情報であり、その詳細はバイタルログデータベース930に格納されている。
【0091】
恐怖体験ログデータベース920には、図示しているように、(1)発生時刻、(2)種別、(3)詳細、を項目別に格納されている。サーバ700は、恐怖体験ログに関する情報を恐怖体験ログデータベース920に記録する。
【0092】
項目「発生時刻」は、恐怖体験ログが記録された日時に関する情報である。
【0093】
項目「種別」は、記録した恐怖体験ログの種別に関する情報である。例えば、種別は、映像中で起こったイベントの情報や、患者あるいは医師による不安度の記録等の情報を含む。
【0094】
項目「種別」は、映像内で起こったイベントの情報として、キャラクタがドアAを通過した、映像中に電車が出現した、映像中で電車が近づく音声が聞こえ始めた等の、映像中の特徴的な状況を記録してもよい。項目「種別」は、映像内で起こったイベントの情報として、電車内の人物を増やした、映像内の電車の音を大きくした等の、映像中の状況の変化を記録してもよい。あるいは、項目「種別」は、注視センサ140で患者の視線を検出し、患者が電車を注視した等の状況を記録してもよい。
【0095】
項目「詳細」は、記録した恐怖体験ログの詳細に関する情報である。例えば、詳細は、恐怖場面中のドアAを通過したといった状況記録や、不安度80(患者の操作による記録)等の情報を含む。
【0096】
バイタルログデータベース930には、図示しているように、(1)バイタル記録時刻、(2)心拍数、(3)発汗量、を項目別に格納されている。バイタルログデータベース930は図示しない、血中酸素濃度、呼吸のリズム・パターン・回数等、抹消温度、体温、脳波、眼球の動作、患者の体の動作、血圧、意識、発話量、声量、咀嚼、嚥等の情報を、バイタルデータとして項目別に格納してもよい。サーバ700は、バイタルデータセンサ400、またはHMD110が備える注視センサ140やマイク170等から患者のバイタルデータを取得し、バイタルログデータベース930に記録する。
【0097】
項目「バイタル記録時刻」は、患者のバイタルデータを記録した日時に関する情報である。
【0098】
項目「心拍数」は、患者の心拍数に関する情報である。
【0099】
項目「発汗量」は、患者の発汗量に関する情報である。
【0100】
場面設定データベース940には、図示しているように、(1)恐怖場面ID、(2)種別、(3)対象、(4)場面詳細ID、を項目別に格納されている。
【0101】
項目「恐怖場面ID」は、患者の診療に使用する恐怖画面を識別する情報である。
【0102】
項目「種別」は、恐怖場面IDに対応する恐怖場面の種別に関する情報である。例えば、種別は、電車、エレベータ、等の情報を含む。
【0103】
項目「対象」は、診療の対象に関する情報である。例えば、対象は、閉所恐怖症、高所恐怖症、等の情報を含む。
【0104】
項目「場面詳細ID」は、恐怖場面の詳細に関する情報であり、その詳細は場面詳細データベース950に格納されている。
【0105】
場面詳細データベース950には、図示しているように、(1)オブジェクトID、(2)シーン、(3)名称、(4)表示有無、(5)操作有無、を項目別に格納されている。
【0106】
項目「オブジェクトID」は、恐怖場面に含まれるオブジェクトを識別する情報である。
【0107】
項目「シーン」は、恐怖場面に含まれるシーンを識別する情報である。例えば、電車の恐怖場面に含まれるシーンとして、駅のホーム、電車の中、等があり、それぞれがシーンA、シーンB、等の形で記録されている。
【0108】
項目「名称」は、オブジェクトIDに対応するオブジェクトの名称に関する情報である。例えば、名称は、ドアA、人A、等の情報を含む。
【0109】
項目「表示有無」は、オブジェクトIDに対応するオブジェクトの表示に関する情報である。例えば、表示有無は、表示が必須である、表示の有無が可能、等の情報を含む。
【0110】
項目「操作有無」は、オブジェクトIDに対応するオブジェクトの操作に関する情報である。例えば、操作有無は、開閉が可能、操作不可、等の情報を含む。
【0111】
<3 動作>
以下、
図7から
図11を参照しながら、システム1を介して患者が抱える恐怖症の治療を支援する処理について説明する。
【0112】
システム1は、患者である第1のユーザが恐怖感覚を抱く恐怖刺激を含む映像を第1のユーザに提示し、第1のユーザが能動的に表明した情報を記録する、第1の治療フェーズを支援する機能を備える。さらに、システム1は、第1のユーザと治療者である第2のユーザとで第1の治療フェーズの状況を振り返る、第2の治療フェーズを支援する機能を備える。
【0113】
患者用システム100および治療者用システム500は、第1の治療フェーズにおいて、第1のユーザが恐怖感覚を抱く恐怖刺激を含む映像である、第1の映像をそれぞれのモニタに表示する。さらに、治療者用システム500は、第2の治療フェーズにおいて、第1のユーザが恐怖感覚を抱く恐怖刺激を含む映像である、第2の映像を表示する。
【0114】
第2の映像は、第1の映像を録画した映像でもよいし、第1の治療フェーズにおいて第1のユーザと第2のユーザとが行った操作内容等の履歴に基づいて、第1の映像と同様の映像を新たに生成してもよい。また、システム1は、第1の映像および第2の映像の代わりに、第1のユーザが恐怖感覚を抱く恐怖刺激を含む音声を使用してもよい。
【0115】
図7は、第1の実施の形態におけるシステム1により、第1の治療フェーズにおいて、患者が恐怖刺激を含む映像を視聴し、患者が能動的に表明した情報を映像の時系列の情報と関連付けて記録する流れの一例を示すフローチャートである。
【0116】
ステップS1011において、治療者用システム500は、第1のユーザの診療に使用する恐怖場面に関する情報を第2のユーザから受け付け、その情報をサーバ700に送信する。
【0117】
治療者用システム500は、第2のユーザから、診療に使用する恐怖場面の情報のみを受け付けてもよいし、恐怖場面のどのシーンから体験を開始するかについての情報を合わせて受け付けてもよい。また、治療者用システム500は、第2のユーザが恐怖場面を選択するための補助として、閉所恐怖症や高所恐怖症など、患者の治療の対象となる恐怖症の情報を第2のユーザから受け付けることで、恐怖場面を抽出してもよい。
【0118】
ステップS1012において、恐怖場面描画モジュール830は、治療者用システム500から恐怖場面の情報を受信し、場面設定データベース940、場面詳細データベース950の情報に基づいて恐怖場面を再現した仮想空間を生成する。さらに、恐怖場面描画モジュール830は、前記仮想空間に基づいて第1の映像を生成する。
【0119】
例えば、恐怖場面描画モジュール830は、仮想空間内に人物を模したキャラクタを配置し、キャラクタの視界に対応した映像を生成する。恐怖場面描画モジュール830は、患者用システム100が備えるコントローラ300および治療者用システム500が備えるコントローラ590から操作を受け付けて、仮想空間内のキャラクタを移動させることで、第1の映像を生成してもよい。また、恐怖場面描画モジュール830は、患者用システム100が備えるHMDセンサ410を介して、第1のユーザの頭の動きを取得し、キャラクタの頭部を同期させることで、第1の映像を生成してもよい。
【0120】
恐怖場面描画モジュール830は、第1のユーザの身長に関する情報を取得し、仮想空間内のキャラクタのサイズを変更することで、第1の映像を生成してもよい。また、恐怖場面描画モジュール830は、仮想空間内のオブジェクトの表示有無について、第2のユーザから入力を受け付けることで、第1の映像を生成してもよい。恐怖場面描画モジュール830は、オブジェクトの表示有無に関する設定を場面詳細データベース950に記録して、次回の治療を行う際に、その設定を自動的に反映させてもよい。
【0121】
ステップS1013において、患者用システム100は、第1のユーザに対して第1の映像を提示する。患者用システム100は、第1の映像をサーバ700から受信し、HMD110にその映像を表示する。
【0122】
ステップS1014において、診療結果記録モジュール840は、第1の映像内で起こったイベントの内容と発生時刻を恐怖体験ログデータベース920に記録する。例えば、診療結果記録モジュール840は、仮想空間内のキャラクタがドアAを通過したことを、その発生時刻とともに記録する。
【0123】
ステップS1015において、患者用システム100または治療者用システム500は、第1のユーザが能動的に表明した情報の入力を受け付け、その情報をサーバ700に送信する。
【0124】
患者用システム100または治療者用システム500は、第1のユーザが能動的に表明した情報を0~100、A~E等の段階的なパラメータで受け付けてもよいし、第1のユーザあるいは第2のユーザによるコメントとして受け付けてもよい。
【0125】
治療者用システム500は、第1のユーザが能動的に表明した情報を、入力装置540に含まれるキーボード550、マウス560、タッチセンシングデバイス580等から入力を受け付けてもよい。治療者用システム500は、第1のユーザが能動的に表明した情報を、マイク570から入力を受け付けてもよい。
【0126】
患者用システム100は、第1のユーザが能動的に表明した情報を、コントローラ300等から入力を受け付ける。患者用システム100は、第1のユーザが能動的に表明した情報を、マイク170から入力を受け付けてもよい。患者用システム100または治療者用システム500は、各々が備えるマイクから入力された情報を音声データとして録音してもよい。
【0127】
治療者用システム500は、第1のユーザが能動的に表明した情報に加えて、第1のユーザが能動的に表明した情報とは異なる情報の入力を受け付け、その情報をサーバ700に送信してもよい。例えば、治療者用システム500は、第2のユーザが第1のユーザを観察して得た所感をコメントとして記録してもよい。あるいは、治療者用システム500は、バイタルデータセンサ400から取得した第1のユーザのバイタルデータに関する所感をコメントとして記録してもよい。
【0128】
ステップS1016において、診療結果記録モジュール840は、第1のユーザが能動的に表明した情報を、第1の映像の時系列の情報と関連付けた形で、恐怖体験ログデータベース920に記録する。
【0129】
診療結果記録モジュール840は、第1のユーザが能動的に表明した情報を、第1の映像の再生を開始してからの経過時間と合わせて記録してもよい。診療結果記録モジュール840は、第1のユーザが能動的に表明した情報を、その情報の入力を受け付けた時刻と合わせて記録してもよい。診療結果記録モジュール840は、第1のユーザが能動的に表明した情報の入力を受け付けた時刻と、第1の映像の再生を開始した時刻とを比較することで、第1の映像の再生を開始してからの経過時間を計算してもよい。
【0130】
診療結果記録モジュール840は、第1のユーザが能動的に表明した情報を、第1の映像内で起こったイベントと関連付けて記録してもよい。例えば、診療結果記録モジュール840は、第1のユーザが能動的に表明した情報を、ドアAを通過した後である、あるいは、ドアAを通過してX秒後である、ドアAを通過するX秒前である、等の形で記録してもよい。
【0131】
診療結果記録モジュール840は、第1のユーザが能動的に表明した情報に加えて、第1のユーザが能動的に表明した情報とは異なる情報を、第1の映像の時系列の情報と関連付けた形で、恐怖体験ログデータベース920に記録してもよい。例えば、診療結果記録モジュール840は、第1のユーザの身体が震えているというコメントを、第1の映像の再生を開始してからの経過時間と合わせて記録してもよい。
【0132】
これにより、第1のユーザが能動的に表明した情報を、第1の映像の時系列の情報と関連付けて記録することができる。
【0133】
図8は、第1の実施の形態におけるシステム1により、第1の治療フェーズにおいて、患者が恐怖刺激を含む映像を視聴し、患者のバイタルデータの情報を映像の時系列の情報と関連付けて記録する流れの一例を示すフローチャートである。
【0134】
ステップS1111において、患者用システム100は、バイタルデータセンサ400から第1のユーザのバイタルデータを取得し、その情報をサーバ700に送信する。バイタルデータは、例えば、発汗量、心拍数等の情報を含み、2つ以上の情報を同時に取得およびサーバ700に送信してもよい。
【0135】
ステップS1112において、診療結果記録モジュール840は、第1のユーザのバイタルデータの情報を、第1の映像の時系列の情報と関連付けた形で、バイタルログデータベース930に記録する。診療結果記録モジュール840は、バイタルデータの情報を第1の映像の時系列の情報と関連付ける方法として、ステップS1016で示したいずれかの方法を使用してもよい。
【0136】
ステップS1113において、診療結果解析モジュール850は、第1のユーザが能動的に表明した情報と、第1のユーザのバイタルデータの情報とを関連付ける。例えば、診療結果解析モジュール850は、第1のユーザが能動的に表明した情報と、第1のユーザのバイタルデータの情報との時系列を揃えた形で、それぞれの変化量を対応付ける。
【0137】
ステップS1114において、診療結果解析モジュール850は、第1のユーザから取得したそれぞれのバイタルデータと、第1のユーザが能動的に表明した情報との相関性を計算する。例えば、診療結果解析モジュール850は、第1のユーザが恐怖を感じたタイミングで、心拍数の変化が大きく、発汗量の変化が小さい等の計算を行う。診療結果解析モジュール850は、第1のユーザが能動的に表明した情報を数値として段階的に記録し、心拍数および発汗量との相関係数を計算することで、相関性を計算してもよい。
【0138】
ステップS1115において、診療結果解析モジュール850は、ステップS1114で計算した相関性と、第1のユーザから取得したバイタルデータの情報とに基づいて、第1のユーザが能動的に表明するであろう情報を推定する。例えば、診療結果解析モジュール850は、第1のユーザの心拍数の変化が大きくなった場合に、第1のユーザが能動的に表明するであろう情報が変化する可能性が高いと推定する。
【0139】
診療結果解析モジュール850は、第1のユーザが能動的に表明するであろう情報が変化した場合に、第1のユーザまたは第2のユーザに対して、第1のユーザが能動的に表明する情報の記録を促してもよい。
【0140】
これにより、第1のユーザが能動的に表明した情報と第1のユーザのバイタルデータの情報とを関連付けて記録するとともに、その相関性を計算し、第1のユーザが能動的に表明した情報を推定することができる。
【0141】
図9は、第1の実施の形態におけるシステム1により、第2の治療フェーズにおいて、第1の治療フェーズで第1のユーザが能動的に表明した情報を表示し、治療者の操作に基づいて、振り返り用の映像を再生する流れの一例を示すフローチャートである。
【0142】
ステップS1211において、治療者用システム500は、第1の治療フェーズ中に第1のユーザが能動的に表明した情報を、第1の映像の時系列の情報と関連付けて表示する。治療者用システム500は、サーバ700の診療結果描画モジュール860が生成した内容を受信し、その情報をモニタ520に表示してもよい。
【0143】
例えば、治療者用システム500は、第1の映像の再生を開始した時刻からの経過時間を横軸、第1のユーザが能動的に表明した情報を段階的に記録した数値を縦軸としたグラフを表示してもよい。治療者用システム500は、第1の映像の再生を開始した時刻からの経過時間に加えて、第1の映像からその時刻に対応した静止画を切り出した画像や、第1の映像を複数のパートに分割した名称等の情報を合わせて表示してもよい。治療者用システム500は、例えば、第1の映像のパート名として、駅のホーム、電車の車内等の情報を表示してもよいし、シーンA、シーンB等の情報を表示してもよい。
【0144】
治療者用システム500は、第1の映像の時系列の情報と関連付けて、第1のユーザが能動的に表明した情報以外の情報を合わせて表示してもよい。例えば、治療者用システム500は、第1の映像の時系列の情報と関連付けて、第1のユーザのバイタルデータの情報を表示してもよい。あるいは、治療者用システム500は、第1の映像の時系列の情報と関連付けて、第2のユーザが第1のユーザを観察して得た所感に関するコメントを表示してもよい。
【0145】
治療者用システム500は、第1の映像の時系列の情報と関連付けて、第1の映像内で起こったイベントの内容を表示してもよい。例えば、治療者用システム500は、第1の映像の再生を開始した時刻から10秒後にドアAを通過した等の情報を表示してもよい。
【0146】
治療者用システム500は、上述と異なる方法で第1のユーザが能動的に表明した情報を、第1の映像の時系列の情報と関連付けて表示してもよい。例えば、治療者用システム500は、第1の映像の再生を開始した時刻からの経過時間と第1のユーザが能動的に表明した情報を記録したコメントとを対応付けて表として表示してもよい。
【0147】
ステップS1212において、治療者用システム500は、モニタ520に表示した情報から所定の位置または範囲に対する指定を受け付ける。例えば、治療者用システム500は、第1のユーザが能動的に表明した情報をグラフとして表示し、任意の位置または範囲に対する指定をマウス560やタッチセンシングデバイス580の操作等によって受け付ける。
【0148】
治療者用システム500は、指定された位置または範囲から第1の映像の再生を開始した時刻からの経過時間を計算し、その情報をサーバ700に送信する。あるいは、治療者用システム500は、指定された位置または範囲から第1の映像内で起こったイベントを特定し、その情報をサーバ700に送信する。
【0149】
ステップS1213において、診療結果描画モジュール860は、治療者用システム500から受信した情報に基づいて、第1の映像の開始位置を特定し、患者用システム100と治療者用システム500との少なくともいずれかに送信する。
【0150】
ステップS1214において、患者用システム100あるいは治療者用システム500は、サーバ700から受信した情報に基づいて、第2の映像として映像の再生を開始する。システム1は、第1の映像を録画して、その一部を第2の映像として再生してもよい。あるいは、システム1は、第1の治療フェーズにおいて患者用システム100と治療者用システム500から受け付けた操作履歴から、第1の映像を再現した第2の映像を新たに生成してもよい。あるいは、システム1は、患者用システム100が備えるHMDセンサ410が取得した患者の頭の動きの情報等から、第1の映像を再現した第2の映像を新たに生成してもよい。
【0151】
患者用システム100あるいは治療者用システム500は、前記特定した第1の映像の開始位置から所定の時間分を巻き戻した状態から第2の映像として再生を開始してもよい。あるいは、患者用システム100あるいは治療者用システム500は、前記特定した第1の映像内で起こったイベントの開始位置から所定の時間分を巻き戻した状態から第2の映像として再生を開始してもよい。
【0152】
これにより、第1のユーザが能動的に表明した情報の記録に基づいて、患者が恐怖感覚を抱いた状況を特定し、その状況を再現した映像を効率よく再生することができる。
【0153】
図10は、第1の実施の形態におけるシステム1により、第1の治療フェーズにおいて、所定の条件を満たした場合に、第1のユーザが能動的に表明した情報の記録を促す流れの一例を示すフローチャートである。
【0154】
ステップS1311において、診療結果記録モジュール840は、第1の治療フェーズ中に所定の条件を満たしているかを判定する。
【0155】
診療結果記録モジュール840は、第1の治療フェーズ中に第1のユーザのバイタルデータが所定の条件を満たした場合に、前記所定の条件を満たしていると判定する。例えば、診療結果記録モジュール840は、第1のユーザの心拍数が所定の値を越えた場合に、前記所定の条件を満たしていると判定する。
【0156】
診療結果記録モジュール840は、第1の治療フェーズ中に第1の映像が所定の条件を満たした場合に、前記所定の条件を満たしていると判定する。例えば、診療結果記録モジュール840は、第1の映像においてキャラクタがドアAを通過した場合に、前記所定の条件を満たしていると判定する。
【0157】
診療結果記録モジュール840は、第1の治療フェーズ中に第1のユーザが能動的に表明した情報の記録をする間隔が所定の時間を超過した場合に、前記所定の条件を満たしていると判定する。例えば、診療結果記録モジュール840は、第1のユーザが能動的に表明した情報を、第1のユーザまたは第2のユーザのいずれかが最後に記録してから60秒以上が経過した場合に、前記所定の条件を満たしていると判定する。
【0158】
診療結果記録モジュール840は、第1の治療フェーズ中に所定の条件を満たした場合に、患者用システム100と、治療者用システム500との少なくともいずれかに、第1のユーザが能動的に表明した情報の記録を促す情報を送信する。
【0159】
ステップS1312において、患者用システム100と治療者用システム500の少なくともいずれかは、第1のユーザが能動的に表明した情報を記録するよう促す通知を行う。患者用システム100あるいは治療者用システム500は、モニタ130やモニタ520に所定のメッセージや記号を表示することで通知を行ってもよい。患者用システム100あるいは治療者用システム500は、スピーカ180やスピーカ530から所定の音声を再生することで通知を行ってもよい。患者用システム100あるいは治療者用システム500は、コントローラ300やコントローラ590が備える振動装置を振動させることで通知を行ってもよい。
【0160】
これにより、第1のユーザが能動的に表明した情報を適切なタイミングで記録することができる。
【0161】
図11は、第1の実施の形態におけるシステム1により、第1の治療フェーズにおいて、第1のユーザに映像を提示している間に、過去の同様の状況における第1のユーザの状態を表示する流れの一例を示すフローチャートである。
【0162】
ステップS1411は、ステップS1013と同様の処理となるため繰り返さない。
【0163】
ステップS1412において、診療結果抽出モジュール870は、第1の治療フェーズ中における第1の映像の状況を特定する。例えば、診療結果抽出モジュール870は、第1の映像内で起こっているイベントの情報から、第1の映像の状況を特定する。例えば、診療結果抽出モジュール870は、第1の映像内でキャラクタがドアAを通過したことを把握する。
【0164】
ステップS1413において、診療結果抽出モジュール870は、診療履歴データベース910および恐怖体験ログデータベース920に記録された過去の診療履歴から、前記特定した第1の映像の状況と同様の場面を抽出する。さらに、診療結果抽出モジュール870は、過去の診療履歴から抽出した場面において、第1のユーザが過去に能動的に表明した情報を抽出する。例えば、診療結果抽出モジュール870は、1週間前の診療時に、キャラクタがドアAを通過したタイミングにおいて第1のユーザが能動的に表明した情報を、診療履歴データベース910および恐怖体験ログデータベース920から抽出する。
【0165】
診療結果抽出モジュール870は、第1のユーザが過去に能動的に表明した情報に加えて、前記特定した第1の映像の状況と同様の場面における、第1のユーザのバイタルデータを合わせて抽出してもよい。
【0166】
さらに、サーバ700は、診療結果抽出モジュール870が抽出した情報を治療者用システム500に送信する。
【0167】
ステップS1414において、治療者用システム500は、サーバ700から受信した情報をモニタ520に表示する。治療者用システム500は、第1の映像をモニタ520に表示しながら、同様の状況で過去に第1のユーザが能動的に表明した情報を同時に表示することができる。
【0168】
これにより、過去の診療履歴を効率的に参照しながら、治療を行うことができる。
【0169】
<4 画面例>
図12(A)から
図12(B)は、治療者用システム500の画面例を示す図である。
【0170】
図12の画面例(A)は、第1の実施の形態に係る治療者用システム500において、第1の治療フェーズにおける局面を示す図である。画面例(A)に示すように、治療者用システム500は、モニタ520に第1の映像を表示するとともに、第1のユーザが能動的に表明した情報に関する入力や、第1の映像を変化させるための操作等を第2のユーザから受け付ける。治療者用システム500は、第1の映像の再生を開始してから第1のユーザが能動的に表明した情報や、第1の映像の再生を開始してから取得した第1のユーザのバイタルデータの情報を表示してもよい。治療者用システム500は、過去の診療履歴から抽出した情報を表示してもよい。
【0171】
治療者用システム500は、第1の治療フェーズ画面521Aに図示していない内容を含めてもよい。例えば、治療者用システム500は、第1の映像の再生を開始してからの経過時間を、第1の治療フェーズ画面521Aに含めてもよい。
【0172】
図12の画面例(B)は、第1の実施の形態に係る治療者用システム500において、第2の治療フェーズにおける局面を示す図である。画面例(B)に示すように、治療者用システム500は、モニタ520に、第1の治療フェーズで第1のユーザが能動的に表明した情報を、第1の映像の時系列の情報と関連付けて表示する。治療者用システム500は、第2の映像を合わせて表示してもよい。
【0173】
治療者用システム500は、第2の治療フェーズ画面521Bに図示していない内容を含めてもよい。例えば、治療者用システム500は、第1の治療フェーズにおける第1のユーザのバイタルデータの推移を、第2の治療フェーズ画面521Bに含めてもよい。
【0174】
<小括>
以上のように、本開示によると、恐怖症の治療に必要な情報を適切に記録することが可能となる。
【0175】
<5 付記>
以上の各実施の形態で説明した事項を以下に付記する。
【0176】
(付記1)プロセッサを備えるコンピュータに実行させるためのプログラムであって、前記プログラムは、前記プロセッサに、患者である第1のユーザが恐怖感覚を抱く恐怖刺激を含む映像および/または音声を、前記第1のユーザに提示するステップ(S1013)と、前記第1のユーザまたは治療者である第2のユーザの操作を通じて(S1015)、前記第1のユーザが前記映像および/または音声を視聴することにより能動的に表明した情報を、前記映像および/または音声の時系列の情報と関連付けて記録するステップ(S1016)と、を実行させるプログラム。
【0177】
(付記2)前記記録するステップにおいて、前記第1のユーザが能動的に表明した情報として、段階的に定義したパラメータ、または、前記第1のユーザによるコメント、または、第2のユーザによるコメントの少なくともいずれかを記録する、(付記1)に記載のプログラム。
【0178】
(付記3)前記記録するステップは、前記第1のユーザが能動的に表明した情報とは異なる情報を前記第2のユーザから受け付け、前記映像および/または音声の時系列の情報と関連付けて記録する、(付記1)に記載のプログラム。
【0179】
(付記4)前記記録するステップにおいて、前記第1のユーザが能動的に表明した情報は、前記映像および/または音声の再生を開始してからの経過時間と関連付けて記録する、(付記1)に記載のプログラム。
【0180】
(付記5)前記記録するステップにおいて、前記第1のユーザが能動的に表明した情報は、前記映像および/または音声内で起こったイベントと関連付けて記録する、(付記1)に記載のプログラム。
【0181】
(付記6)前記プログラムは、前記プロセッサに、さらに、前記第1のユーザのバイタルデータを取得するステップ(S1111)を実行させ、前記取得するステップは、前記第1のユーザのバイタルデータを前記映像および/または音声の時系列の情報と関連付けて記録する(S1112)、(付記1)に記載のプログラム。
【0182】
(付記7)前記プログラムは、前記プロセッサに、さらに、前記第1のユーザが能動的に表明した情報と、前記第1のユーザのバイタルデータとを関連付けるステップ(S1113)を実行させ、前記関連付けるステップは、前記第1のユーザが能動的に表明した情報と、前記第1のユーザのバイタルデータとの相関性を計算する(S1114)、(付記6)に記載のプログラム。
【0183】
(付記8)前記取得するステップは、前記第1のユーザから少なくとも2つ以上のバイタルデータを取得し、前記関連付けるステップは、前記取得するステップが取得したそれぞれのバイタルデータに対して、前記相関性を計算する(S1114)、(付記7)に記載のプログラム。
【0184】
(付記9)前記関連付けるステップは、前記相関性と前記取得したバイタルデータとに基づいて、前記第1のユーザが能動的に表明するであろう情報を推定する(S1115)、(付記7)に記載のプログラム。
【0185】
(付記10)前記プログラムは、前記プロセッサに、さらに、前記記録するステップで記録した前記第1のユーザが能動的に表明した情報を、前記映像および/または音声の時系列の情報と合わせて表示するステップ(S1211)を実行させ、前記表示するステップは、前記第1のユーザまたは前記第2のユーザから、前記時系列におけるタイミングの指定を受け付ける(S1212)ことに応答して、当該タイミングにおける前記映像および/または音声を表示する(S1213、S1214)、(付記1)に記載のプログラム。
【0186】
(付記11)前記表示するステップは、前記指定を受け付けたタイミングから所定の時間分を巻き戻した状態から前記映像および/または音声を表示する、(付記10)に記載のプログラム。
【0187】
(付記12)前記表示するステップは、前記指定を受け付けたタイミングに関連するイベントの開始時間から所定の時間分を巻き戻した状態から前記映像および/または音声を表示する、(付記10)に記載のプログラム。
【0188】
(付記13)前記表示するステップは、前記第1のユーザのバイタルデータと、前記映像および/または音声の時系列の情報と合わせて表示する、(付記10)に記載のプログラム。
【0189】
(付記14)前記プログラムは、前記プロセッサに、さらに、前記第1のユーザ、または、前記第2のユーザの少なくともいずれかに対して前記第1のユーザが能動的に表明した情報の記録を促すステップを実行させ、前記促すステップは、前記第1のユーザに対して前記映像および/または音声を再生している間に所定の条件を満たした場合に(S1311)、前記第1のユーザ、または、前記第2のユーザの少なくともいずれかに対して、前記第1のユーザが能動的に表明した情報の記録を促す通知を行う(S1312)、(付記1)に記載のプログラム。
【0190】
(付記15)前記促すステップは、前記第1のユーザのバイタルデータが所定の条件を満たした場合に、前記第1のユーザ、または、前記第2のユーザの少なくともいずれかに対して、前記第1のユーザが能動的に表明した情報の記録を促す通知を行う(S1312)、(付記14)に記載のプログラム。
【0191】
(付記16)前記促すステップは、前記映像および/または音声が所定の条件を満たした場合に、前記第1のユーザ、または、前記第2のユーザの少なくともいずれかに対して、前記第1のユーザが能動的に表明した情報の記録を促す通知を行う(S1312)、(付記14)に記載のプログラム。
【0192】
(付記17)前記促すステップは、前記第1のユーザが能動的に表明した情報の記録をする間隔が所定の時間を超過した場合に、前記第1のユーザ、または、前記第2のユーザの少なくともいずれかに対して、前記第1のユーザが能動的に表明した情報の記録を促す通知を行う(S1312)、(付記14)に記載のプログラム。
【0193】
(付記18)前記プログラムは、前記プロセッサに、さらに、前記第1のユーザの過去の診療履歴から情報を抽出するステップを実行させ、
前記抽出するステップは、前記第1のユーザに提示している前記映像および/または音声中の状況を特定し(S1412)、過去の診療履歴から同様の状況における第1のユーザが能動的に表明した情報を抽出する(S1413)、(付記1)に記載のプログラム。
【符号の説明】
【0194】
100 患者用システム、500 治療者用システム、700 サーバ、802 サーバの記憶部、803 サーバの制御部、830 恐怖場面描画モジュール、840 診療結果記録モジュール、850 診療結果解析モジュール、860 診療結果描画モジュール、870 診療結果抽出モジュール、900 患者データベース、910 診療履歴データベース、920 恐怖体験ログデータベース、930 バイタルログデータベース、940 場面設定データベース、950 場面詳細データベース。