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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022065578
(43)【公開日】2022-04-27
(54)【発明の名称】食器または食品用液体洗浄剤組成物
(51)【国際特許分類】
   C11D 1/68 20060101AFI20220420BHJP
   C11D 3/20 20060101ALI20220420BHJP
   C11D 17/08 20060101ALI20220420BHJP
【FI】
C11D1/68
C11D3/20
C11D17/08
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020174275
(22)【出願日】2020-10-15
(71)【出願人】
【識別番号】000112288
【氏名又は名称】ピジョン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100098796
【弁理士】
【氏名又は名称】新井 全
(74)【代理人】
【識別番号】100121647
【弁理士】
【氏名又は名称】野口 和孝
(74)【代理人】
【識別番号】100111730
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 武泰
(74)【代理人】
【識別番号】100187377
【弁理士】
【氏名又は名称】芳野 理之
(72)【発明者】
【氏名】植松 史帆
(72)【発明者】
【氏名】廣田 知己
(72)【発明者】
【氏名】布施 彩莉
【テーマコード(参考)】
4H003
【Fターム(参考)】
4H003AA03
4H003AC05
4H003AC10
4H003BA12
4H003DA05
4H003DA17
4H003DB02
4H003EB07
4H003EB08
4H003EB13
4H003ED02
4H003FA01
4H003FA04
4H003FA28
4H003FA30
(57)【要約】
【課題】 本発明は、ミルク汚れに特化し、皮膚刺激性と安定性に優れた食器または食品用液体洗浄剤組成物を提供する。
【解決手段】 本発明の食器または食品用液体洗浄剤組成物は、(a)ソルビトールと炭素数12~18の脂肪酸のエステルに、エチレンオキシドが15~40分子付加した非イオン性界面活性剤を、3.0質量%以上15.0質量%以下と、(b)炭素数8~12のアルコールと糖とがグリコシド結合した非イオン性界面活性剤を、2.0質量%以上と、(c)有機酸ナトリウム塩を、3.0質量%以上と、(d)水を、50質量%以上とを含んでなる。これにより、上記課題を解決する。
【選択図】 なし

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a) ソルビトールと炭素数12~18の脂肪酸のエステルに、エチレンオキシドが15~40分子付加した非イオン性界面活性剤を、3.0質量%以上15.0質量%以下と、
(b) 炭素数8~12のアルコールと糖とがグリコシド結合した非イオン性界面活性剤を、2.0質量%以上と、
(c) 有機酸ナトリウム塩を、3.0質量%以上と、
(d) 水を、50質量%以上
とを含んでなる、食器または食品用液体洗浄剤組成物。
【請求項2】
前記(b)成分の非イオン性界面活性剤が、炭素数8~12のアルコールと単糖類とがグリコシド結合したアルキルグルコシドである、請求項1に記載の食器または食品用液体洗浄剤組成物:
【請求項3】
前記(b)成分の非イオン性界面活性剤のHLB値が、10以上である、請求項1または2に記載の食器または食品用液体洗浄剤組成物。
【請求項4】
前記(c)成分を、3.0質量%以上10.0質量%以下を含有する、請求項1~3のいずれか一項に記載の食器または食品用液体洗浄剤組成物。
【請求項5】
前記(a)成分が、ポリソルベート20、またはポリソルベート80である、請求項1~4のいずれか一項に記載の食器または食品用液体洗浄剤組成物。
【請求項6】
前記(c)成分が、クエン酸ナトリウム、グルタミン酸ナトリウム、およびアスパラギン酸ナトリウムからなる群より選択される、請求項1~5のいずれか一項に記載の食器または食品用液体洗浄剤組成物。
【請求項7】
粘度が、20℃で100mPa・s以下である、請求項1~6のいずれか一項に記載の食器または食品用液体洗浄剤組成物。
【請求項8】
pHが、20℃で6以上9以下である、請求項1~7のいずれか一項に記載の食器または食品用液体洗浄剤組成物。
【請求項9】
哺乳瓶の洗浄に用いられる、請求項1~8のいずれか一項に記載の食器または食品用液体洗浄剤組成物。





【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、食器または食品用液体洗浄剤組成物に関する。詳しくは、本発明は、皮膚刺激性と安定性に優れた食器または食品用液体洗浄剤組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
乳幼児が使用するプラスチックス製やガラス製等の哺乳瓶の底部や傷の部分に、ミルク汚れが付着し乾燥すると、洗浄しにくくなるばかりか、菌の発生源になることがある。このような状況は、特に、体力的に抵抗力の低い乳幼児においては、安全上問題である。
このため、乳幼児用の食器の洗浄剤を検討する場合には、ミルク汚れへの対応は重要である。
【0003】
従来、食器用洗浄剤には、洗浄力や泡立ちを良くするため、石鹸や陰イオン界面活性剤が使用されている。ここで、石鹸や陰イオン界面活性剤は、使用態様によっては比較的刺激性が強い場合があることが知られていた。
例えば、特許文献1(特開2005-220200号公報)には、陰イオン界面活性剤を用いた哺乳瓶用の液体洗浄剤組成物が開示されている。
【0004】
しかしながら、乳幼児などの刺激に敏感な使用者が使用する哺乳瓶や乳首などの食器や、野菜や果物などの食品自体の洗浄向けの用途では、より刺激性の低い洗浄剤が望まれる。
【0005】
非イオン性界面活性剤は、洗浄力があり、低刺激性である。しかし、泡立ちが悪いため、使用感としては、必ずしも良好とは言えない。従来の非イオン性界面活性剤を使用した洗浄剤の場合、ミルク汚れの洗浄性と、低刺激性の両立という側面からは必ずしも満足できるものとは言えなかった。
【0006】
非イオン性界面活性剤を用いた洗浄剤組成物としては、例えば、特許文献2(特開平7-188696号公報)に開示されている。しかし、この組成物については、「ミルク汚れに対して洗浄力が維持されているとは言いがたく、更にすすぎ性や低温安定性も充分とは言えなかった」とされている(特許文献1の0003段落を参照)。
【0007】
このため、非イオン性界面活性剤による低刺激性を生かしつつ、ミルク汚れの洗浄にも充分対応でき、使用感も良好で、安定性に優れた洗浄剤組成物が望まれていたといえる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2005-220200号公報
【特許文献2】特開平7-188696号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、ミルク汚れに特化し、皮膚刺激性と安定性に優れた食器または食品用液体洗浄剤組成物を提供することをその目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、石鹸や陰イオン界面活性剤を配合することなく、非イオン性界面活性剤を主成分とした、低刺激性の洗浄剤組成物を検討した。非イオン性界面活性剤を使用した場合に生ずる泡立ち性などの使用感の低下に関しては、特定のタイプの非イオン性界面活性剤を複数、組み合わせることによって、洗浄性を維持しつつ、良好な泡立ち性を実現することに成功した。さらに有機酸ナトリウム塩を配合することによって、低刺激性でありながらも、ミルク汚れに対し効果的な洗浄能力を発揮できることを見出した。
【0011】
本発明はこれら知見に基づくものである。
【0012】
すなわち、本発明によれば以下の発明が提供される。
【0013】
<1> (a) ソルビトールと炭素数12~18の脂肪酸のエステルに、エチレンオキシドが15~40分子付加した非イオン性界面活性剤を、3.0質量%以上15.0質量%以下と、
(b) 炭素数8~12のアルコールと糖とがグリコシド結合した非イオン性界面活性剤を、2.0質量%以上と、
(c) 有機酸ナトリウム塩を、3.0質量%以上と、
(d) 水を、50質量%以上
とを含んでなる、食器または食品用液体洗浄剤組成物。
【0014】
<2> 前記(b)成分の非イオン性界面活性剤が、炭素数8~12のアルコールと単糖類とがグリコシド結合したアルキルグルコシドである、前記<1>の食器または食品用液体洗浄剤組成物。
【0015】
<3> 前記(b)成分の非イオン性界面活性剤のHLB値が、10以上である、前記<1>または<2>の食器または食品用液体洗浄剤組成物。
【0016】
<4> 前記(c)成分を、3.0質量%以上10.0質量%以下を含有する、前記<1>~<3>のいずれかの食器または食品用液体洗浄剤組成物。
【0017】
<5> 前記(a)成分が、ポリソルベート20、またはポリソルベート80である、前記<1>~<4>のいずれかの食器または食品用液体洗浄剤組成物。
<6> 前記(c)成分が、クエン酸ナトリウム、グルタミン酸ナトリウム、およびアスパラギン酸ナトリウムからなる群より選択される、前記<1>~<5>のいずれかの食器または食品用液体洗浄剤組成物。
【0018】
<7> 粘度が、20℃で100mPa・s以下である、前記<1>~<6>のいずれかの食器または食品用液体洗浄剤組成物。
<8> pHが、20℃で6以上9以下である、前記<1>~<7>のいずれかの食器または食品用液体洗浄剤組成物。
<9> 哺乳瓶の洗浄に用いられる、前記<1>~<8>のいずれかの食器または食品用液体洗浄剤組成物。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、石鹸や陰イオン界面活性剤のような比較的刺激性の強い成分を配合することなく、非イオン性界面活性剤を主成分とした、低刺激性の洗浄剤組成物を提供される。本発明による洗浄剤組成物は、洗浄性や泡立ち性が良好であり、使用感の優れており、ミルク汚れのような従来型の非イオン性界面活性剤を用いた洗浄剤組成物では充分な洗浄が難しかった用途においても効果的に洗浄性能を発揮できる。特に、本発明による洗浄剤組成物は、食器等のミルク汚れの洗浄に、有効性が確認できている。また、本発明による洗浄剤組成物は、このようなミルク汚れの洗浄に特化した効果を有しつつも、皮膚刺激性と安定性、さらに安全性に優れたものである。
【0020】
本発明による洗浄剤組成物は、低刺激性であって安定性、安全性に優れていることから、野菜や果物などの食品の洗浄用途にも安心して使用することができる。
また本発明による洗浄剤組成物は、乳幼児用の食器や野菜など大きな物理力で洗浄することが難しい洗浄対象に対して効果的に使用することができる。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の実施形態について説明する。
【0022】
液体洗浄剤組成物
本発明による液体洗浄剤組成物は、前記したように、下記の(a)~(d)の成分を、下記の割合で含んでなるものである:
(a) ソルビトールと炭素数12~18の脂肪酸のエステルに、エチレンオキシドが15~40分子付加した非イオン性界面活性剤を、3.0質量%以上15.0質量%以下、
(b) 炭素数8~12のアルコールと糖とがグリコシド結合した非イオン性界面活性剤を、2.0質量%以上、
(c) 有機酸ナトリウム塩を、3.0質量%以上、
(d) 水を、50質量%以上。
【0023】
本発明において「液体洗浄剤組成物」は、食器用または食品用であり、食器または食品の洗浄用途に使用する。本発明による洗浄剤組成物は、特にミルク汚れのある食器等に好適に使用することができる。
【0024】
ここで「食器」とは、一般的な食器類であれば特に制限はないが、好ましくは、乳幼児用の食器であり、例えば、哺乳瓶、乳首、搾乳哺乳器、ベビー食器、離乳食用食器、マグカップ類が挙げられる。
【0025】
ここで「食品」とは、液体洗浄剤組成物を適用可能なものであれば特に制限はないが、例えば、野菜や果物などが挙げられる。
さらには、本発明による洗浄剤組成物は、食品製造装置、充填装置など食品を扱う機材の洗浄にも「食品」用途に準じて、有効に使用することができる。
【0026】
よって本発明の好ましい態様によれば、本発明による洗浄剤組成物は、哺乳瓶の洗浄に用いられる。また本発明の別の好ましい態様によれば、本発明による洗浄剤組成物は、野菜の洗浄に用いられる。
【0027】
(a)成分
本発明の液体洗浄剤組成物は、(a)成分として、ソルビトールと炭素数12~18の脂肪酸のエステルに、エチレンオキシドが15~40分子付加した非イオン性界面活性剤を含む。
すなわち、(a)成分は、非イオン性界面活性剤であり、具体的には、ソルビトールまたはソルビトールの分子内縮合物であるソルビタンと、炭素数12~18の脂肪酸とのエステルに、エチレンオキシドを15~40分子、付加して得られるものであり、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステルである。
【0028】
ここで、ソルビトールの分子内縮合物、すなわち、ソルビトールが分子内脱水を起こしたものとしては、1,5-ソルビタン、1,4-ソルビタン、2,5-ソルビタン、3,6-ソルビタン、1,4,3,6-ソルバイドなどが挙げられる。
【0029】
ここで、「炭素数12~18の脂肪酸」とは、炭素数12~18の直鎖状または分岐状の飽和脂肪酸または不飽和脂肪酸のいずれであってもよく、具体的には例えば、ラウリン酸、ミリスチン酸、ペンタデシル酸、パルミチン酸、ステアリン酸、オレイン酸、エライジン酸、リノール酸、リノレン酸、イソステアリン酸等が挙げられる。好ましい脂肪酸としては、例えば、ラウリン酸、オレイン酸等が挙げられる。
【0030】
前記したエステルに、付加させるエチレンオキシドとしては、15~40分子であり、好ましくは20~40分子であり、より好ましくは20~30分子である。
【0031】
(a)成分のポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステルの調製については、慣用の方法・条件に従って適宜行うことができる。必要により、例えば、特開2007-91681号公報や、特開2007-254584号公報などを参照してもよい。
【0032】
(a)成分の具体例としては、ポリオキシエチレン(20)ソルビタンモノラウリン酸エステル(ポリソルベート20、またはPEG20ソルビタンココエート)、ポリオキシエチレン(20)ソルビタンモノステアリン酸エステルポリオキシエチレン(20)ソルビタントリステアリン酸エステル、ポリオキシエチレン(20)ソルビタンモノオレイン酸エステル(ポリソルベート80)などが挙げられる。
【0033】
本発明の液体洗浄剤組成物における(a)成分の含有量は、組成物全量に対して、3.0質量%以上15.0質量%以下でである。
(a)成分の含有量が3.0質量%より少ないと、洗浄性能に劣化が見られ、また15.0質量%より大きい、例えば20質量%以上であると、液体洗浄剤組成物としてのバランスが崩れ、(a)成分の分離などを生ずる場合がある。
【0034】
(b)成分
本発明の液体洗浄剤組成物は、(b)成分として、炭素数8~12のアルコールと糖とがグリコシド結合した非イオン性界面活性剤を含む。
すなわち、(b)成分は、非イオン性界面活性剤であり、具体的には、炭素数8~12のアルコールと糖とがグリコシド結合で結ばれた構造を有するアルキルグルコシドである。
【0035】
このような(b)成分であるアルキルグルコシドは、慣用の方法、例えば、グルコースと炭素数8~12のような高級アルコールを酸触媒の存在下においてアセタール化反応させる方法や、グルコースを予めブタノールのような低級アルコールとの間でグリコシドを作り、さらに高級アルコールとの間でアセタール交換を行う方法等によって適宜調製することができる。
【0036】
ここで、「炭素数8~12のアルコール」とは、直鎖状または分岐状のいずれのアルコールであってもよく、飽和または不飽和、芳香族環を有するもののいずれであっても特に制限はない。例えば、オクタノール、2-エチルヘキサノール、デシルアルコール、ドデシルアルコールなどの飽和アルコール、不飽和アルコール、p-メチルベンジルアルコールなどの芳香族アルコールなどが挙げられる。
【0037】
(b)成分における「糖」は、単糖類または二糖類であることが好ましく、より好ましくは単糖類である。糖の具体例としては、グルコース、ガラクトース、マルトース、マンノース、グルコサミン、リボース、キシロース等が挙げられる。
【0038】
さらに、本発明の好ましい態様によれば、(b)成分は、炭素数8~12のアルコールと単糖類とがグリコシド結合したアルキルグルコシドであるである。
【0039】
本発明の液体洗浄剤組成物における(b)成分の含有量は、組成物全量に対して、1.0質量%以上であり、好ましくは2.0質量%以上である。
(b)成分の含有量が1.0質量%より少ないと、洗浄性能に劣化が見られることがある。
【0040】
本発明の液体洗浄剤組成物において、(a)成分と(b)成分の合計量が、組成物全体に対して、40質量%以下であることが好ましい。このため、(b)成分の含有量は、37質量%以下であることが好ましい。
【0041】
(c)成分
本発明の液体洗浄剤組成物は、(c)成分として、有機酸ナトリウム塩を含む。
ここで「有機酸」としては、クエン酸、DL-リンゴ酸、DL-酒石酸、グルコン酸等のヒドロキシカルボン酸や、グルタミン酸、アスパラギン酸が好ましい。有機酸ナトリウム塩としては、好ましくは、クエン酸ナトリウム、グルタミン酸ナトリウムやアスパラギン酸ナトリウムが挙げられ、より好ましくは、クエン酸ナトリウムである。クエン酸ナトリウムは、食品にも使用されており、洗浄助剤として効果が期待できる。
【0042】
本発明の液体洗浄剤組成物における(c)成分の含有量は、組成物全量に対して、3.0質量%以上であり、好ましくは、3.0質量%以上であり、かつ、10.0質量%以下である。(c)成分が10質量%より多いと安定性に影響を与える可能性がある。
【0043】
(d)成分
本発明の液体洗浄剤組成物は、(d)成分として、水を含む。
水は、本発明による洗浄剤組成物が前記した(a)成分~(c)成分の含有量を除外し、さらに組成物が必要により任意成分を含む場合はそれも除外した、組成物の残部として、水を含み得る。
【0044】
ここで使用可能な水としては、通常、液体の洗浄剤組成物で使用できる水であれば特に限定されないが、例えば、一般的に使用されている常水、精製水、イオン交換水、純水、超純水、蒸留水等を使用することができる。
【0045】
(d)成分である水は、本発明による洗浄剤組成物が前記した(a)成分~(c)成分の含有量を除外し、さらに組成物が必要により任意成分を含む場合はそれも除外した、組成物の残部を構成しうる。
したがって、本発明の液体洗浄剤組成物における(d)成分の含有量は、組成物全量に対して、50質量%以上である。
【0046】
(e)任意成分
本発明の液体洗浄剤組成物は、前記した(a)~(d)成分を上記の各範囲で含有するものであるが、必要に応じて、本発明の効果を損なわない範囲で、任意成分として公知の液体洗浄剤で用いられる添加剤を適宜使用することができる。
【0047】
添加剤としては、例えば、エタノール、イソプロパノール、ブチルセロソルブ、メチルカルビトールなどの低級アルコール、p-トルエンスルホン酸塩、キシレンスルホン酸塩、プロピレングリコール、エチレングリコール、ポリエチレングリコールなどのグリコール類等の可溶化剤、尿素など水和破壊剤、クエン酸、リンゴ酸等のpH緩衝剤、更に、手荒れ防止剤、着色料、香料、安息香酸塩等の保存料などを用いることができる。
【0048】
本発明による液体洗浄剤組成物は、前記した(a)~(d)成分と、必要により任意成分とを通常の方法により混合均一にして一体化することにより、透明均一な洗浄剤組成物を得ることができる
【0049】
本発明の液体洗浄剤組成物は、その粘度を、ボトルからの排出性、スポンジへの浸透性等の観点から、必要により粘度調整剤等を使用して、20℃で100mPa・s以下となることが好ましい。なお粘度の測定条件は、例えば、公知の回転粘度計を使用して測定することができる。
【0050】
本発明の液体洗浄剤組成物は、使用性、皮膚刺激性、安全性等の観点から、pH調整剤等により、pH値を20℃で6以上9以下とすることが好ましい。
【実施例0051】
以下において、本発明を下記の実施例によって詳細に説明するが、本発明は、これらに限定されるものではない。
【0052】
実験1: (c)成分の配合量の検討
(1-1)材料と方法
表1に示した処方の試料A1~A8を調製した。
ここで、(a)成分として使用した「PEG-20ソルビタンココエート」は、ソルビタンと炭素数12の脂肪酸のエステルに、エチレンオキシドが約20分子付加したものであり、製品名「PHPポリソルベート20」を入手可能であった。
また(b)成分として使用した「デシルグルコシド」は、炭素数10の高級アルコール(デシルアルコール)と糖がグリコシド結合した非イオン性界面活性剤であり、ここでは製品名「マイドール10」を入手可能であった。
【0053】
次いで各試料へ、ミルク0.02gを滴下し、攪拌を行った。均一に攪拌した後、各試料の透過率を下記測定条件にしたがって測定した。測定結果に基づいて以下の基準で洗浄性を評価した。
【0054】
(透過率の測定条件)
・測定機器:紫外線可視光分光光度計(島津、UVmini-1240)
・測定波長範囲:10mm角形石英製セル
・セル:10mm角形、石英製
・測定波長: 420nm
【0055】
(透過率に基づく洗浄性の評価法)
透過率85%以上の場合を「〇」とし、それ以下を「×」とした。
【0056】
(1-2)結果
結果は表1に示される通りであった。
【0057】
【表1】
【0058】
実験2: (b)成分の配合量の検討
(2-1)材料と方法
表2に示した処方の試料B1~B5を調製した。
使用した材料については、上記実験1と同様にした。
【0059】
次いで各試料へ、ミルク0.05gを滴下し、攪拌を行った。均一に攪拌した後、各試料の透過率を実験1と同様に測定した。測定結果に基づいて以下の基準で洗浄性を評価した。
【0060】
(透過率に基づく洗浄性の評価法)
透過率50%以上の場合を「〇」とし、それ以下を「×」とした。
【0061】
(2-2)結果
結果は表2に示される通りであった。
【0062】
【表2】
【0063】
実験3: クエン酸Na代替成分の検討
(3-1)材料と方法
表3に示した処方の試料C1~C8を調製した。
使用した材料については、上記実験1と同様にした。
また(c)成分としてクエン酸ナトリウムの代わりに、表3に示した各成分を使用した(試料C4~C8)。
【0064】
次いで各試料へ、ミルク0.02gを滴下し、攪拌を行った。均一に攪拌した後、各試料の透過率を実験1と同様に測定した。測定結果に基づいて以下の基準で洗浄性を評価した。
【0065】
(透過率に基づく洗浄性の評価法)
透過率70%以上の場合を「〇」とし、透過率が70%より低くかつ透過率60%以上の場合を「△」とし、さらにそれ以下を「×」とした。
【0066】
(安定性の評価)
各試料の10%溶液を調製し、これらを-5℃の条件下に5日間保持し、析出の発生等の溶液の状態を目視評価した。
【0067】
(3-2)結果
結果は表3に示される通りであった。
試料C4(乳酸Ca)の透過率の評価は「〇」であったが、析出を生じた。したがって、総合評価としては、「×」と評価した。
【0068】
結果にあるように、クエン酸Na、乳酸Ca、グルタミン酸Na、およびアスパラギン酸Naで透過率は大きくなった。中でもクエン酸Na、乳酸Caの影響が大きかった。水酸化Naは添加することによって透過率が小さくなった。
以上から、クエン酸ナトリウムの代替成分として、グルタミン酸Na,アスパラギン酸Naについても一定の効果があると考えられた。
【0069】
【表3】

実験4: (a)成分の脂肪酸における炭素数の検討
(4-1)材料と方法
表4に示した処方の試料D1を調製した。
ここで、(a)成分として使用した「ポリソルベート80」は、オレイン酸ポリオキシエチレンソルビタンであり、ソルビタンと炭素数18の脂肪酸のエステルに、エチレンオキシドが約20分子付加したものである。、製品名「EMALEX ET-8020」を入手可能であった。これ以外の使用した材料については、上記実験1と同様にした。
【0070】
次いで各試料へ、ミルク0.02gを滴下し、攪拌を行った。均一に攪拌した後、各試料の透過率を実験1と同様に測定した。測定結果に基づいて以下の基準で洗浄性を評価した。
【0071】
(透過率の評価法)
透過率70%以上の場合を「〇」とし、透過率が70%より低くかつ透過率60%以上の場合を「△」とし、さらにそれ以下を「×」とした。
【0072】
(4-2)結果
結果は表4に示される通りであった。
【0073】
【表4】

実験5: (a)成分および(b)成分の量の上限、および(d)成分の量の下限の検討
(5-1)材料と方法
表5に示した処方の試料E1~E8を調製した。
使用した材料については、上記実験1および実験4と同様にした。
【0074】
各試料について均一に攪拌した後、各試料の成分の溶解状態を、外観から目視で観察し、評価した。
一旦静置した後に、溶解状態が維持されていたものは「溶解」と評価した。一方、溶解が充分でなく分離していたり、成分の一部がドレッシング状態となって分かれやすくなっていたりした場合は、「分離」と評価した・
【0075】
(5-2)結果
結果は表5に示される通りであった。
結果から、(a)成分は3~15質量%、(b)成分は1質量%以上、(d)成分は50質量%以上で安定な製剤となることがわかった。
【0076】
【表5】