(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022065579
(43)【公開日】2022-04-27
(54)【発明の名称】微細粒子付着防止剤
(51)【国際特許分類】
A61K 8/84 20060101AFI20220420BHJP
A61K 8/36 20060101ALI20220420BHJP
A61K 8/19 20060101ALI20220420BHJP
A61K 8/00 20060101ALI20220420BHJP
C09K 3/00 20060101ALI20220420BHJP
【FI】
A61K8/84
A61K8/36
A61K8/19
A61K8/00
C09K3/00 R
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020174276
(22)【出願日】2020-10-15
(71)【出願人】
【識別番号】000112288
【氏名又は名称】ピジョン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100098796
【弁理士】
【氏名又は名称】新井 全
(74)【代理人】
【識別番号】100121647
【弁理士】
【氏名又は名称】野口 和孝
(74)【代理人】
【識別番号】100111730
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 武泰
(74)【代理人】
【識別番号】100187377
【弁理士】
【氏名又は名称】芳野 理之
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 利彦
【テーマコード(参考)】
4C083
【Fターム(参考)】
4C083AB011
4C083AB012
4C083AB082
4C083AB102
4C083AC122
4C083AC302
4C083AC442
4C083BB42
4C083CC01
4C083CC31
4C083DD08
4C083DD27
(57)【要約】
【課題】 本発明は、毛髪や衣類等に塗布・噴霧することによって、これら毛髪や衣類等への花粉やPM2.5のような微細粒子の付着・吸着を未然に防ぐことができる、簡便かつ安全性の高い微細粒子付着防止剤であって、従来よりも、より効果的な微細粒子付着防止剤を提供する。
【解決手段】 本発明の微細粒子付着防止剤は、ポリリジンと、有機酸及び無機酸からなる群より選択される助剤とを含んでなる。これにより、上記課題を解決する。
【選択図】 なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリリジンと、有機酸及び無機酸からなる群より選択される助剤とを含んでなる、微細粒子付着防止剤。
【請求項2】
助剤が有機酸である、請求項1に記載の微細粒子付着防止剤。
【請求項3】
助剤を、前記除け剤全量に対して、0.2質量%以上含む、請求項1または2に記載の微細粒子付着防止剤。
【請求項4】
ポリリジンを、前記除け剤全量に対して、0.01質量%以上含む、請求項1~3のいずれか一項に記載の微細粒子付着防止剤。
【請求項5】
微細粒子が、花粉またはPM2.5である、請求項1~4のいずれか一項に記載の微細粒子付着防止剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、微細粒子付着防止剤に関する。詳しくは本発明は、毛髪や衣類等への花粉やPM2.5等の微細粒子の付着・吸着を防ぐことができる微細粒子付着防止剤に関する。
【背景技術】
【0002】
花粉症は、スギ花粉やヒノキ、ブタクサ、イネ等の多くの花粉がアレルゲンとなって発病する。最近ではスギ花粉が飛散する2~4月頃だけでなく一年中発症する傾向にあり、その患者の数は増加の傾向にある。
しかしながら、花粉症の治療法はまだ確立されていないのが現状であり、花粉症患者は外出時に目、鼻、口に花粉がなるべく触れないようにマスクや眼鏡、ゴーグル、帽子などで自己防御している。ところが、外出から帰って屋内に入ると、屋外で衣服や体に付着した花粉を持ち込むことになり、これが原因で発症するという問題点があった。
【0003】
そこで、予防策として、できるだけ花粉を遠ざける環境を維持するため、例えば、外出から帰ったら家に入る前に、衣服や毛髪を払って、それらに付着した花粉を落としてから家に入るなどの対策が考えられる。
【0004】
しかしながら、毎回、衣服等を払うことは手間のかかることでもあり、また、衣服等についた花粉を払っても必ずしも充分な対処となり得ない場合も多い。
【0005】
例えば、特許文献1(特許4562585号公報)には、特定の両性イオン基を有するモノマーユニットをモノマーとして含むポリマーを含む花粉吸着防止剤が開示されている。
【0006】
また、花粉以外にも、衣服などに付着して人体に影響を及ぼしうる有害物質としては、PM2.5(微小粒子状物質)やハウスダストなども知られている。
【0007】
PM2.5は、大気中に浮遊している粒子径2.5μm以下の粒子のことをいい、近年、大気汚染の指標として着目されている。PM2.5は、粒子径が非常に小さいため、肺の奥深くまで入りやすく、喘息や気管支炎などの呼吸器系疾患への影響、肺がんリスクの上昇、循環器系への影響等の健康への影響が懸念されている。
【0008】
このような状況のもと、毛髪や衣類等への花粉やPM2.5等の有害な微細粒子の付着・吸着を未然に防ぐことができる、より簡易で効果的な手段が望まれていたといえる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、毛髪や衣類等に塗布・噴霧することによって、これら毛髪や衣類等への花粉やPM2.5等の微細粒子の付着・吸着を未然に防ぐことができる、簡便かつ安全性の高い微細粒子付着防止剤であって、従来よりも、より効果的な微細粒子付着防止剤を提供することをその目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者らは、ポリリジンに、有機酸または無機酸を助剤として組み合わせて使用することで、優れた花粉をはじめとする微細粒子の付着防止効果が得られることを見いだした。ポリリジンについては、特許文献1で単独では効果が弱かったことが記載されていたことから、ポリリジンに助剤を組み合わせることで、従来に比べても優れた効果が得られたことは予想外のことであった。ポリリジン及び有機酸はいずれも食品にも利用されうる成分であることから、安心で、かつ安全性も高いことが確認されているものである。このため、ポリリジンと助剤とを組み合わせて使用することで、簡便かつ安全性の高い微細粒子付着防止剤を提供し得ることが判明した。
【0012】
本発明はこれら知見に基づくものである。
【0013】
すなわち、本発明によれば以下の発明が提供される。
【0014】
<1> ポリリジンと、有機酸及び無機酸からなる群より選択される助剤とを含んでなる、微細粒子付着防止剤。
【0015】
<2> 助剤が有機酸である、前記<1>の微細粒子付着防止剤。
【0016】
<3> 助剤を、前記除け剤全量に対して、0.2質量%以上含む、前記<1>または<2>の微細粒子付着防止剤。
【0017】
<4> ポリリジンを、前記除け剤全量に対して、0.01質量%以上含む、前記<1>~<3>のいずれかの微細粒子付着防止剤。
【0018】
<5> 微細粒子が、花粉またはPM2.5である、前記<1>~<4>のいずれの微細粒子付着防止剤。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、毛髪や衣類等に塗布・噴霧することによって、これら毛髪や衣類等への花粉やPM2.5等の微細粒子の付着・吸着を未然に防ぐことができる、簡便かつ安全性の高い微細粒子付着防止剤であって、従来よりも、より効果的な微細粒子付着防止剤が提供される。本発明の微細粒子付着防止剤で用いられる成分は、従来から、化粧品や食品でも使用されうるものであることから、需要者にとって安心感があり、また既に安全性の確認されたものであるといえる。さらに、この微細粒子付着防止剤は、花粉やPM2.5のみならず、ハウスダストなどの微細粒子に対しても同様の除け効果が期待できるものである。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の実施形態について説明する。
【0022】
微細粒子付着防止剤
本発明による微細粒子付着防止剤は、前記したように、ポリリジンと、有機酸及び無機酸からなる群より選択される助剤とを含んでなるものである。
【0023】
ここで微細粒子付着防止剤とは、微細粒子付着防止剤組成物のことであり、微細粒子吸着防止剤または微細粒子吸着防止剤組成物と言い換えることもできるものである。ここで「微細粒子付着防止」とは、毛髪や衣類等への花粉やPM2.5等の空中に浮遊する微細粒子の付着・吸着を未然に防ぐことができることを意味する。微細粒子付着防止剤は、毛髪や衣類等に塗布・噴霧することによって、この微細粒子付着防止効果を奏することが期待できるものである。
本発明において、「微細粒子」とは、空中に浮遊し毛髪や衣類、人体に付着・吸着されうる微細な粒子をいい、花粉、PM2.5、ハウスダストなどが包含される。好ましくは、微細粒子は、花粉、およびPM2.5であり、さらに好ましくは、花粉である。
【0024】
また本発明においては、微細粒子付着防止剤は、花粉やPM2.5のみならず、ハウスダストなどのような有害な微細粒子の毛髪や衣類等への付着・吸着を未然に防ぐこともできる。
【0025】
ポリリジンは、必須アミノ酸の一つであるリジンの低分子の天然ホモポリマーであり、食品や化粧品等において天然の防腐剤などとして、従来より利用されている。このため、安全性の高いものとして確認されているものである。
【0026】
本発明において使用される助剤は、有機酸及び無機酸からなる群より選択されるものである。ここで、有機酸としては、クエン酸、エチドロン酸、リンゴ酸、コハク酸、乳酸、フマル酸、酒石酸、グルコン酸、安息香酸、脂肪酸など挙げられる。また無機酸としては、リン酸、塩酸、硫酸などが挙げられる。好ましい助剤としては、有機酸であり、より好ましいものは、クエン酸、エチドロン酸であり、さらに好ましいものは、クエン酸である。
【0027】
本発明の微細粒子付着防止剤において、ポリリジンの含有量は、微細粒子付着防止剤全量に対して、0.01質量%以上であることが好ましく、より好ましくは0.1質量%以上である。
【0028】
本発明の微細粒子付着防止剤において、助剤の含有量は、微細粒子付着防止剤全量に対して、0.2質量%以上であることが好ましく、より好ましくは0.3質量%以上である。
【0029】
本発明の微細粒子付着防止剤は、残部の成分として水を使用しうる。ここで使用可能な水としては、通常、液体の洗浄剤組成物で使用できる水であれば特に限定されないが、例えば、一般的に使用されている常水、精製水、イオン交換水、純水、超純水、蒸留水等を使用することができる。
【0030】
本発明の微細粒子付着防止剤は、本発明の効果を損なわない範囲で、任意成分として公知の添加剤を適宜使用することができる。添加剤としては、例えば、エタノール、イソプロパノール、ブチルセロソルブ、メチルカルビトールなどの低級アルコール、p-トルエンスルホン酸塩、キシレンスルホン酸塩、プロピレングリコール、エチレングリコール、ポリエチレングリコールなどのグリコール類等の可溶化剤や安定化剤、ポリソルベートなどの界面活性剤、pH緩衝剤、更に、手荒れ防止剤、着色料、香料、安息香酸塩等の保存料などを用いることができる。
【0031】
さらに本発明の微細粒子付着防止剤は、他の抗菌成分などを加えることもできる。
【0032】
本発明の微細粒子付着防止剤の剤型は、スプレー、ローション等、任意の剤型とすることができ、特に限定されない。使用性や利便性の観点からスプレーとして用いるのが好ましい。
【0033】
スプレーとして用いる場合、水、低級アルコール(例えばエチルアルコール等)、さらには所望により揮発性油を含む水溶液を原液として用いることができる。また、エアゾールタイプのスプレーとして用いる場合、上記ポリマーを配合した原液を噴射剤とともにエアゾール容器に加圧封入する。噴射剤としては、プロパン、ブタンおよびイソブタンを主成分とする液化石油ガス(LPG)、ジメチルエーテル(DME)および炭酸ガス、窒素ガス等の圧縮ガス等の単独またはそれらの混合物を使用することができる。中でも液化石油ガス(LPG)、ジメチルエーテル(DME)等が好ましく用いられる。
【0034】
本発明の微細粒子付着防止剤の使用方法としては、例えばスプレーの場合、微細粒子の付着または吸着を防止したい対象物(衣服、毛髪、など)にあらかじめ噴霧しておくことにより、これら対象物への微細粒子の付着または吸着を積極的に防止することができる。これにより、例えば従来、外出から帰ったら衣服を払って、衣服に付着した微細粒子を落としてから家に入る、ふとんを干した後は、掃除機でふとんを吸引して微細粒子を吸い取る等の方法で、微細粒子の家の中への持込み・侵入を防いでいたのを、あらかじめ衣服、ふとん等に本発明の微細粒子付着防止剤をスプレー噴霧しておくことにより、微細粒子の付着・吸着を防止することができ、微細粒子の家の中への持込み・浸入を容易かつ簡便に防ぐことができる。
【0035】
本発明の微細粒子付着防止剤による微細粒子付着防止効果は持続性に優れる一方、洗浄等により容易に除去することができる。噴霧・塗布は花粉やPM2.5のような微細粒子に接触しやすい部位(例えば衣服であれば上着等)に塗布・噴霧するのが好ましい。
【0036】
以下において、本発明を下記の実施例によって詳細に説明するが、本発明は、これらに限定されるものではない。
【0037】
実験1: 助剤の検討
(1-1)材料と方法
下記配合の微細粒子付着防止剤を調製した。
ポリリジン 0.05質量%
助剤(表1に示したもの) 0.10質量%
精製水 残部
【0038】
調製した微細粒子付着防止剤の試料0.1gを、プロワイプ(パルプ)に染みこませた。これによって、攪拌棒(ポリアセタール製)を100回こすった後、攪拌棒を、微細粒子である花粉(スギ花粉 ITEA社)に付着させた(3cm 10秒間)。
なお、作業はネオプレンゴムを利用し、静電気が発生しやすい環境にて実施した(約24℃、約45%湿度)。
【0039】
花粉の付着後の撹拌棒全体の重量を測定し、これを5回繰り返し、平均値を求めた。
【0040】
得られた平均値を用いて、花粉の付着前後の攪拌棒の重量を測定し、それらの差を算出し、微細粒子付着量(g)とした。
【0041】
次いで、試料を使用しない他は上記と同様に花粉を付着させた対照サンプル(無試料)の微細粒子付着量と、各試料を染みこませた撹拌棒に花粉を付着させた各サンプルの微細粒子付着量から、下記の式に基づいて、微細粒子よけ率(%)を算出した。
微細粒子よけ率(%)=100-「各試料」微細粒子付着量/「無試料」微細粒子付着量×100
なお、微細粒子付着よけ率は、数値が高いほど微細粒子付着防止効果が高いことを示す。
【0042】
(1-2)結果
結果は表1に示される通りであった。
結果から、有機酸のなかでは、クエン酸が最も優れた微細粒子付着防止効果を示した。
【0043】
【0044】
実験2: 助剤配合量の検討
(2-1)材料と方法
実験1からポリリジンに対して、酸を組み合わせた場合の微細粒子付着防止効果を、酸の使用量を適宜変えて検討し、酸の使用量を検討した。酸としては、化粧品や食品における利用経験を考慮して、クエン酸を選択した。
【0045】
助剤としてクエン酸を使用し、クエン酸の配合量を0~1.0%まで順次変えた以外は、上記実験1と同様にして実験を行った。
【0046】
(2-2)結果
結果は
図1のグラフに示される通りであった。
クエン酸の配合量を増やしていくと、少なくとも、0.20質量%までは微細粒子付着防止効果が強まることがわかった。なお、クエン酸の配合量が0.2質量%より高い範囲では、効果はそれ以上強まらず、一定であった。
【0047】
実験3: ポリリジン配合量の検討
(3-1)材料と方法
ポリリジンの配合用量を0~1.0%まで変えた以外は、上記実験1と同様にして実験を行った。
【0048】
(3-2)結果
結果は
図2のグラフに示される通りであった。
ポリリジンの配合量を増やしていくと、少なくとも、0.01%質量程度まで微細粒子付着防止効果が、ポリリジン配合量に応じて、強まるとわかった。なお、ポリリジンの配合量が0.01質量%より高い範囲では、効果はそれ以上強まらず、一定であった。
【0049】
実験4: PM2.5に対する効果の検討
(4-1)材料と方法
被験試料として、下記の(i)~(iii)を使用し、かつ、撹拌棒へ花粉を付着させる代わりに、黄砂・PM2.5類似品(関東ローム(焼成品)、JIS試験用粉体1-11種(平均粒子径:2.5μm:日本粉体技術協会))を使用した以外は、実験1と同様にして試験を行った。
【0050】
<被験試料>
(i) 精製水のみ
(ii) 本発明による微細粒子付着防止剤
ポリリジン 0.70 質量%
クエン酸 0.30 質量%
クエン酸ナトリウム 0.30 質量%
ポリソルベート80 0.40 質量%
プロピレングリコール 25.0 質量%
水 残部
(iii) 市販品(アレルスクリーンEX(商品名)、スプレー剤、S社製)
【0051】
(4-2)結果
結果は
図3のグラフに示される通りであった。
本発明の微細粒子付着防止剤が、PM2.5の除け効果、すなわち、微細粒子付着防止効果に優れていることが確認された。