(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022065586
(43)【公開日】2022-04-27
(54)【発明の名称】シート型止水装置
(51)【国際特許分類】
E04H 9/14 20060101AFI20220420BHJP
E06B 5/00 20060101ALI20220420BHJP
【FI】
E04H9/14 Z
E06B5/00 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】書面
(21)【出願番号】P 2020183199
(22)【出願日】2020-10-15
(71)【出願人】
【識別番号】504196492
【氏名又は名称】株式会社高橋監理
(72)【発明者】
【氏名】高橋 龍夫
【テーマコード(参考)】
2E139
2E239
【Fターム(参考)】
2E139AA09
2E139AB11
2E139AC19
2E239AC04
(57)【要約】 (修正有)
【課題】建物等の出入口近くの通路に設置し、洪水等の水の力により自動的に止水シートを上方向に上昇させて通路を止水すると共に、止水シートを採用することにより止水装置を小型化し、製造コストの低減が図れるシート型の止水装置を提供する。
【解決手段】通路床面に止水シート収納箱27を埋め込み、止水シート収納箱27上面に通行用蓋29を載置し、通行用蓋29下面に、ロール巻きした止水シート巻芯と、最上部の止水シート用補強板47を連結部材65で取り付け、地中に止水シート用浮力体収納槽を埋設し、止水シート用浮力体収納槽内部に洪水等の水で浮き上がる止水シート用浮力体を設置し、止水シート用浮力体と通行用蓋29を複数の滑車7,16を介してロープ55等で結合し、止水シート用浮力体が洪水等の水の力で浮き上がることにより通行用蓋29に取り付けた止水シート45と止水シート用補強板47~50が上昇し通路を閉鎖するように構成する。
【選択図】
図7
【特許請求の範囲】
【請求項1】
建物を洪水等の水害から守るためのシート型止水装置において、
通路の床面に止水シート収納箱を埋め込み、止水シート収納箱の上面に通行用蓋を載置すると共に、前記通路の左右両端に通行用蓋を上方に作動させるためのガイド柱を設置し、
止水シート収納箱の内部を2室に区切り、一方の止水シート補強板収納室に上下連結部材で連結した複数枚の止水シート用補強板を配置し、他方の止水シート収納室にロール巻きした止水シートを収納すると共に止水シートの下縁を止水状態に支持し、
前記通行用蓋の下面に、前記ロール巻きした止水シート巻芯と、前記上下連結部材で連結した最上部の止水シート用補強板を連結部材で取り付け、
地中に止水シート用浮力体収納槽を埋設し、止水シート用浮力体収納槽の内部に洪水等の水で浮き上がる止水シート用浮力体を設置し、止水シート用浮力体と前記通行用蓋を複数の滑車を介してロープ等で結合し、止水シート用浮力体が洪水等の水の力で浮き上がることにより通行用蓋に取り付けた止水シートと止水シート用補強板が上昇し通路を閉鎖するように構成したことを特徴とするシート型止水装置。
【請求項2】
前記止水シートを巻き取るための止水シート巻芯にバネを取り付け、ロール巻きした止水シートを上方に引き上げる際、前記止水シートが緩み無く引き上がることができるように構成したことを特徴とする請求項1に記載のシート型止水装置。
【請求項3】
ガイド柱は、平板鋼板を折り曲げ概ねコの字形に成形した止水シート押圧装置収納部と概ねZ形に成形した止水シート補強板設置部で形成したことを特徴とする請求項1又は2に記載のシート型止水装置。
【請求項4】
前記止水シート押圧装置収納部の一方の袖部にV形部を成形すると共に、他方の袖部の内側に、前記V形部と概ね契合する板状のV形押え部を成形した止水シート押圧装置を回動自在に取り付け、最上部まで引き上げた止水シートの縁部を止水シート押圧装置を回動させることにより前記V形部に押圧したことを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載のシート型止水装置。
【請求項5】
止水シート用補強板は、概ねZ型に成形した複数枚の平板鋼板を横向きに重ねて配置し、上下の止水シート用補強板の四隅を互いに鎖等で連結し、洪水等の水により引き上げられた止水シート用補強板の折り曲げたフランジ面で止水シートを背面から押えるように構成したことを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載のシート型止水装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、台風等の自然災害における洪水等の水害時に建物等への浸水を防止するためのシート型の止水装置に関するものである。
【技術分野】
【背景技術】
【0002】
近年、地球の温暖化や環境変化などにより、以前にも増して短時間あたりの降水量が非常に多くなっており、河川の氾濫による水害の発生が数多く見受けられるようになった。
水害による建物への直接的な被害は、住宅の床下浸水や床上浸水である。
とりわけ床上浸水の場合は、家財道具の損壊に留まらず住宅の流失や崩壊まで発展することもあり甚大な被害が発生した。
【0003】
また、増水した河川の水により下水が逆流してマンホール等から下水が噴き出し建物内部に浸水するという水害も発生している。
【0004】
このような水害から建物を守るため、従来から洪水等の水を堰き止めるためのいろいろな止水装置が提案されている。大別すると、起伏式止水装置、スライド式止水装置、片開き扉式止水装置などが提案されている。
1.起伏式止水装置は、建物の出入口の床下に止水板を収納し、浸水時に水の力により止水板が起き上がり通路を塞ぐことにより洪水等の水を堰き止めるように構成されている。
2.スライド式止水装置は、通路の袖部に止水板を配置し、浸水時に止水板を通路側にスライドさせ通路を止水板で堰き止めるように構成されている。
3.片開き扉式止水装置は、外枠に取り付けた扉に止水パッキンを取り付け、扉のヒンジを中心に扉を回転させることにより通路を扉で堰き止めるように構成されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら起伏式止水装置は、止水扉本体を収納するための広いスペースを床下に必要とするため、すでに鉄筋、地中梁等が埋設されている既存の建物の通路の床下に施工するのは難しかった。
スライド式止水装置は、通路の袖部に止水板をスライドさせて収納するための細くて長い収納場所を必要とするため設置場所が限られた。
片開き扉式止水装置は、設置スペースを大きく確保する必要は無いが、耐水性能を高めるため厚く頑丈な金属製扉を必要とするため高価であり、さらに非常時に扉を操作して止水レバー等を閉める作業を伴うため日頃の訓練が必要であった。
【0006】
本発明は、上記した従来技術の問題点を解決すべくなされたもので、建物等の出入口近くの通路に設置し、洪水等の水の力によりロール巻きした止水シートの一端を上方向に自動的に上昇させて通路を止水すると共に、止水シートを採用することにより止水装置を小型化し、製造コストの低減が図れるシート型止水装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
かかる課題を解決するため、請求項1に記載の発明は、建物を洪水等の水害から守るためのシート型止水装置において、通路の床面に止水シート収納箱を埋め込み、止水シート収納箱の上面に通行用蓋を載置すると共に、前記通路の左右両端に通行用蓋を上方に作動させるためのガイド柱を設置し、止水シート収納箱の内部を2室に区切り、一方の止水シート補強板収納室に上下連結部材で連結した複数枚の止水シート用補強板を配置し、他方の止水シート収納室にロール巻きした止水シートを収納すると共に止水シートの下縁を止水状態に支持し、前記通行用蓋の下面に、前記ロール巻きした止水シート巻芯と、前記上下連結部材で連結した最上部の止水シート用補強板を連結部材で取り付け、地中に止水シート用浮力体収納槽を埋設し、止水シート用浮力体収納槽の内部に洪水等の水で浮き上がる止水シート用浮力体を設置し、止水シート用浮力体と前記通行用蓋を複数の滑車を介してロープ等で結合し、止水シート用浮力体が洪水等の水の力で浮き上がることにより通行用蓋に取り付けた止水シートと止水シート用補強板が上昇し通路を閉鎖するように構成したことを特徴とする。
【0008】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の構造に加え、前記止水シートを巻き取るための止水シート巻芯にバネを取り付け、ロール巻きした止水シートを上方に引き上げる際、前記止水シートが緩み無く引き上がることができるように構成したことを特徴とする。
【0009】
請求項3に記載の発明は、請求項1又は2に記載の構造に加え、ガイド柱は、平板鋼板を折り曲げ概ねコの字形に成形した止水シート押圧装置収納部と概ねZ形に成形した止水シート補強板設置部で形成したことを特徴とする。
【0010】
請求項4に記載の発明は、請求項1乃至3のいずれか1項に記載の構造に加え、前記止水シート押圧装置収納部の一方の袖部にV形部を成形すると共に、他方の袖部の内側に、前記V形部と概ね契合する板状のV形押え部を成形した止水シート押圧装置を回動自在に取り付け、最上部まで引き上げた止水シートの縁部を止水シート押圧装置を回動させることにより前記V形部に押圧したことを特徴とする。
【0011】
請求項5に記載の発明は、請求項1乃至4のいずれか1項に記載の構造に加え、止水シート用補強板は、概ねZ型に成形した複数枚の平板鋼板を横向きに重ねて配置し、上下の止水シート用補強板の四隅を互いに鎖等で連結し、洪水等の水により引き上げられた止水シート用補強板の折り曲げたフランジ面で止水シートを背面から押えるように構成したことを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
請求項1に記載の発明によれば、建物を洪水等の水害から守るためのシート型止水装置において、通路の床面に止水シート収納箱を埋め込み、止水シート収納箱の上面に通行用蓋を載置すると共に、前記通路の左右両端に通行用蓋を上方に作動させるためのガイド柱を設置し、止水シート収納箱の内部を2室に区切り、一方の止水シート補強板収納室に上下連結部材で連結した複数枚の止水シート用補強板を配置し、他方の止水シート収納室にロール巻きした止水シートを収納すると共に止水シートの下縁を止水状態に支持し、前記通行用蓋の下面に、前記ロール巻きした止水シート巻芯と、前記上下連結部材で連結した最上部の止水シート用補強板を連結部材で取り付け、地中に止水シート用浮力体収納槽を埋設し、止水シート用浮力体収納槽の内部に洪水等の水で浮き上がる止水シート用浮力体を設置し、止水シート用浮力体と前記通行用蓋を複数の滑車を介してロープ等で結合し、止水シート用浮力体が洪水等の水の力で浮き上がることにより通行用蓋に取り付けた止水シートと止水シート用補強板が上昇し通路を閉鎖するように構成したことにより、人の力を必要とせず洪水等の水の力で止水シート用浮力材が浮き上がり止水シートが洪水等の水を遮断し、水が通路から建物内に侵入するのを防ぐことが可能になった。
【0013】
請求項2に記載の発明によれば、前記止水シートを巻き取るための止水シート巻芯にバネを取り付け、ロール巻きした止水シートを上方に引き上げる際、前記止水シートが緩み無く引き上がることができるように構成したことにより、簡単な構造で止水シートを緩み無く設置することが可能になった。
【0014】
請求項3に記載の発明によれば、ガイド柱は、平板鋼板を折り曲げ概ねコの字形に成形した止水シート押圧装置収納部と概ねZ形に成形した止水シート補強板設置部で形成したことにより、市販されている安価な平板鋼板を使って高強度のガイド柱を形成することが可能になった。
【0015】
請求項4に記載の発明によれば、前記止水シート押圧装置収納部の一方の袖部にV形部を成形すると共に、他方の袖部の内側に、前記V形部と概ね契合する板状のV形押え部を成形した止水シート押圧装置を回動自在に取り付け、最上部まで引き上げた止水シートの縁部を止水シート押圧装置を回動させることにより前記V形部に押圧したことにより、簡単な構造で洪水等の水が止水シートから漏れるのを防ぐことが可能になった。
【0016】
請求項5に記載の発明によれば、止水シート用補強板は、概ねZ型に成形した複数枚の平板鋼板を横向きに重ねて配置し、上下の止水シート用補強板の四隅を互いに鎖等で連結し、洪水等の水により引き上げられた止水シート用補強板の折り曲げたフランジ面で止水シートを背面から押えるように構成したことにより、簡単な構造で背面より止水シートを押えることにより止水シートにかかる水圧を分散させることが可能になった。
【実施例0017】
以下、この発明の実施の形態について説明する。
図8、
図9は、止水シート押圧装置(A)5、止水シート押圧装置(B)17について説明する。
図8は、平時における止水シート押圧装置(A)5と止水シート押圧装置(B)17の状態を示す。止水シート押圧装置(A)5は
図1で説明した止水シート押圧装置収納部(A)8の袖部(AA)11に成形したV形部(A)6の形状に合致するように平板鋼板の一部をV形押え部(A)76に成形し両端をコの字形に成形した縦長の押え板(A)75と、前記押え板(A)75のV形押え部(A)76に回動自在に取り付けた複数本の押えアーム(A)73と、押えアーム(A)73を固定するため
図1で説明した止水シート押圧装置収納部(A)8の袖部(A)12に成形した折曲部(ヌ)140、折曲部(ヲ)142(
図13で示す)に開けた穴に取り付けた軸(A)74と、軸(A)74を回転させるためのアーム(A)72とアーム(A)72を回動させるための重り棒(A)71で構成され、このように構成された止水シート押圧装置(A)5の重り棒(A)71を下方に押し下げることにより、
図9で示すように押え板(A)75に成形したV形押え部(A)76が止水シート45を
図1で説明したV形部(A)6に押し付け、止水シート45が押え板(A)75とV形部(A)6で密着されることにより洪水等の漏水を防ぐことが可能になった。なお、止水シート押圧装置(B)17についても止水シート押圧装置(A)5と同様に左右対称に同一形状で構成することにより止水シート45からの漏水を防ぐことが可能になった。
以上、実施の形態に基づいて、本発明に係るシート型止水装置について詳細に説明してきたが、本発明は、以上の実施の形態に限定されるものではなく、発明の趣旨を逸脱しない範囲において各種の改変をなしても、本発明の技術的範囲に属するのはもちろんである。