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特開2022-65589IL-1レセプターアンタゴニスト産生促進剤、皮膚外用剤
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  • 特開-IL-1レセプターアンタゴニスト産生促進剤、皮膚外用剤 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022065589
(43)【公開日】2022-04-27
(54)【発明の名称】IL-1レセプターアンタゴニスト産生促進剤、皮膚外用剤
(51)【国際特許分類】
   A61K 36/03 20060101AFI20220420BHJP
   A61K 36/185 20060101ALI20220420BHJP
   A61K 36/48 20060101ALI20220420BHJP
   A61K 36/38 20060101ALI20220420BHJP
   A61K 36/539 20060101ALI20220420BHJP
   A61K 36/258 20060101ALI20220420BHJP
   A61K 36/07 20060101ALI20220420BHJP
   A61K 36/74 20060101ALI20220420BHJP
   A61K 36/25 20060101ALI20220420BHJP
   A61K 36/752 20060101ALI20220420BHJP
   A61K 36/899 20060101ALI20220420BHJP
   A61K 36/738 20060101ALI20220420BHJP
   A61K 36/8994 20060101ALI20220420BHJP
   A61K 36/05 20060101ALI20220420BHJP
   A61P 17/00 20060101ALI20220420BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20220420BHJP
   A61P 37/00 20060101ALI20220420BHJP
   A61K 8/9789 20170101ALI20220420BHJP
   A61K 8/9794 20170101ALI20220420BHJP
   A61K 8/9711 20170101ALI20220420BHJP
   A61K 8/9722 20170101ALI20220420BHJP
   A61K 8/9728 20170101ALI20220420BHJP
   A61Q 19/00 20060101ALI20220420BHJP
   A61Q 19/10 20060101ALI20220420BHJP
【FI】
A61K36/03
A61K36/185
A61K36/48
A61K36/38
A61K36/539
A61K36/258
A61K36/07
A61K36/74
A61K36/25
A61K36/752
A61K36/899
A61K36/738
A61K36/8994
A61K36/05
A61P17/00
A61P43/00 111
A61P43/00 105
A61P37/00
A61K8/9789
A61K8/9794
A61K8/9711
A61K8/9722
A61K8/9728
A61Q19/00
A61Q19/10
【審査請求】未請求
【請求項の数】2
【出願形態】書面
(21)【出願番号】P 2020183947
(22)【出願日】2020-10-15
(71)【出願人】
【識別番号】599000212
【氏名又は名称】香栄興業株式会社
(72)【発明者】
【氏名】中西 智洋
(72)【発明者】
【氏名】金澤 奈奈江
(72)【発明者】
【氏名】三谷 茂樹
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 琢也
【テーマコード(参考)】
4C083
4C088
【Fターム(参考)】
4C083AA031
4C083AA032
4C083AA111
4C083AA112
4C083AB442
4C083AC022
4C083AC072
4C083AC102
4C083AC122
4C083AC132
4C083AC172
4C083AC422
4C083AC442
4C083AC482
4C083AC692
4C083AD112
4C083AD152
4C083AD352
4C083BB51
4C083CC04
4C083CC05
4C083CC07
4C083CC23
4C083DD23
4C083DD31
4C083DD41
4C083EE13
4C088AA07
4C088AA13
4C088AA15
4C088AB12
4C088AB13
4C088AB14
4C088AB16
4C088AB38
4C088AB51
4C088AB59
4C088AB61
4C088AB62
4C088AB74
4C088AB77
4C088AC04
4C088AC05
4C088AC06
4C088AC16
4C088BA05
4C088BA08
4C088CA03
4C088CA25
4C088MA63
4C088NA14
4C088ZA89
4C088ZB02
4C088ZB21
4C088ZC41
(57)【要約】
【課題】紫外線や可視光線、赤外線をはじめとする光線、大気汚染物質、低湿度、界面活性剤といった外部環境刺激によって皮膚で過剰に産生されるインターロイキン-1α(IL-1α)が、炎症・シミ・シワ・ニキビ・乾燥といった肌悩みの主な悪化因子の一つとして知られている。よって、皮膚細胞からの、IL-1αの拮抗阻害物質であるIL-1レセプターアンタゴニスト(IL-1RA)産生を促す剤またはそれを含有する皮膚外用剤の提供が必要となっている。
【解決手段】ホホバ、アズキ、ダイズ、オトギリソウ、オウゴン、ホップ、オタネニンジン、タモギタケ、アセンヤク、セイヨウキズタ、ウンシュウミカン、ハトムギ、マロニエ、シラカバ、レモン、シナノキ、コメヌカ、カニナバラから得られる抽出物および海藻(マコンブおよびアナアオサ)から得られる発酵物が表皮細胞のIL-1RA産生を促進することを見出し、これらIL-1RA産生促進剤を含有する皮膚外用剤を開発するに至った。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ホホバ、アズキ、ダイズ、オトギリソウ、オウゴン、ホップ、オタネニンジン、タモギタケ、アセンヤク、セイヨウキズタ、ウンシュウミカン、ハトムギ、マロニエ、シラカバ、レモン、シナノキ、コメヌカ、カニナバラから得られる抽出物および海藻(マコンブおよびアナアオサ)から得られる発酵物より選ばれる1種又は2種以上の抽出物もしくは発酵物を含有することを特徴とするインターロイキン1レセプターアンタゴニスト(IL-1RA)産生促進剤。
【請求項2】
請求項第1項に記載のIL-1RA産生促進剤を含有することを特徴とする皮膚外用剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、皮膚において、IL-1レセプターアンタゴニスト(以下、IL-1RAと記載)を増やすことで、紫外線などの外部環境刺激によって引き起こされる赤み、炎症、シミ、くすみ、シワ、たるみ、ニキビ、乾燥といった皮膚の諸症状(肌悩み)を予防、改善する皮膚外用剤に関する。
【背景技術】
【0002】
皮膚の炎症やシミ、シワ、ニキビ、乾燥といった諸症状は、慢性炎症が関与している。紫外線などの外部環境刺激によって、表皮細胞から過剰に産生される炎症性因子のインターロイキン-1α(以下、IL-1αと記載)がその引き金とされており、IL-1αによって表皮細胞がプロスタグランジンE(PGE)やIL-6といった更なる炎症性因子の産生を促し、IL-1α自体やその他炎症性因子が、更にシミ、シワ促進因子の産生や活性を上げることが知られている。
【0003】
事実、表皮細胞やヒト皮膚への紫外線照射(非特許文献1)や可視光線中のブルーライト・バイオレットライト照射(非特許文献2)によって、未照射と比べてIL-1αが過剰に産生されることが報告されている。また、UVB照射によって過剰に産生された表皮細胞のIL-1αが、真皮線維芽細胞のエラスターゼやその活性本体であるネプリライシンを活性化し、弾性線維の三次元構造が崩れ、弾力性が低下してシワ形成が起きることも報告されている(非特許文献3)。
【0004】
一般に、炎症性サイトカインの生理活性を阻害する物質が存在することが知られており、皮膚においてよく知られているものの一つがIL-1RAである。文字通り、IL-1RAは、IL-1がIL-1受容体に結合するのを競合的に阻害することで、IL-1の活性を抑制していると考えられている。
【0005】
また、本発明者らは、皮膚老化研究の過程で、IL-1RAがIL-1αによる線維芽細胞のネプリライシン発現亢進を減少させることを見出した(図1)。
【0006】
以上から、紫外線、可視光線、赤外線といった光線や大気汚染物質、低湿度、界面活性剤などの外部環境刺激により、皮膚細胞からIL-1αが過剰に産生されることで悪化するとされる炎症、シミ、シワ、ニキビ、乾燥などの皮膚の諸症状を緩和することが重要だが、IL-1α拮抗阻害物質のIL-1RA産生を促進する植物抽出物などの化粧品原料を皮膚外用剤に配合する対策が考えられた。
【0007】
前述の例として、酵母抽出物とビタミンB2を含有する皮膚細胞のIL-1レセプターアンタゴニスト(IL-1RA)産生促進組成物(特許文献1)が報告されている。しかし、IL-1RA産生促進剤の報告例は少なく、有効性を発揮する成分が更に発見されれば、有効性の観点だけでなく、製剤上での安定性など様々な点を考慮して皮膚外用剤を開発する上でも有用であると考えられた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2018-080128号公報
【非特許文献】
【0009】
【非特許文献1】上出良一,日本化粧品技術者会誌30(3),265-272,(1996)
【非特許文献2】中西智洋ら,第85回SCCJ研究討論会講演要旨集,28-29(2019)
【非特許文献3】芋川玄爾,Fragrance Journal,45(6),12-44(2017)
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
以上から、本発明は皮膚細胞のIL-1RA産生促進剤を配合することで、外部環境刺激での過剰なIL-1α産生による炎症やシミ、シワ、ニキビ、乾燥などの諸症状を予防・改善が可能な皮膚外用剤を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
前記課題を達成するため、表皮細胞のIL-1RA産生を促進する天然素材由来の抽出物および発酵物の探索を行った。本発明者は、天然素材の抽出物を主として、約70個のサンプルについて試験を行い鋭意検討した。
その結果、ホホバ、アズキ、ダイズ(クロマメ)、オトギリソウ、オウゴン、ホップ、オタネニンジン、タモギタケ、アセンヤク、セイヨウキズタ、ウンシュウミカン、ハトムギ、マロニエ、シラカバ、レモン、シナノキ、コメヌカ、カニナバラから得られる抽出物および海藻(マコンブおよびアナアオサ)から得られる発酵物が、表皮細胞のIL-1RA産生を促進することを見出した。
【発明の効果】
【0012】
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明は、IL-1RA産生促進剤を含有する皮膚外用剤により、紫外線などの外部環境刺激によるシミ、シワなどの肌悩みを予防・改善することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】IL-1αで線維芽細胞のネプリライシン発現が亢進し、IL-1RAによって、ネプリライシン発現亢進を減少することを示した免疫染色画像である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明におけるIL-1RA産生促進剤は、具体的には、下記の表1に示す天然素材由来の抽出物および発酵物である。なお、これらの抽出物および発酵物は、1種又は2種以上で本発明のIL-1RA産生促進剤およびそれらを含む皮膚外用剤として使用することができる。
【0015】
【表1】
【0016】
天然素材の部位
本発明における天然素材の部位は、表1の部位に限定されるわけではなく、全草、地上部、葉、花、茎、根茎、種子、根、果実など適宜使用することができる。
【0017】
抽出溶媒
本発明にあって、溶媒抽出する場合、抽出溶媒として、水、適切な有機溶媒(アルコール類、エステル類、アセトン類、アルカン類など)及びこれらの二種以上の混合物が使用される。有機溶媒については、直鎖または分岐鎖を有する炭素数1~5の低級アルコール、直鎖または分岐鎖を有する炭素数1~5の低級エステル、直鎖または分岐鎖を有する炭素数1~5の低級アセトン、常温常圧時に液体であるアルカンなどが使用される。直鎖または分岐鎖を有する炭素数1~5の低級アルコールの具体例としては、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、1,3-ブチレングリコール、プロピレングリコール、グリセリン等が好ましくは挙げられ、より好ましくは、メタノール、エタノールが挙げられる。直鎖または分岐鎖を有する炭素数1~5の低級エステルの具体例としては、酢酸メチル、酢酸エチル等が好ましくは挙げられ、より好ましくは酢酸エチルが挙げられる。直鎖または分岐鎖を有する炭素数1~5の低級アセトンとしては、メチルエチルケトン、アセトン等が挙げられ、より好ましくはアセトンが挙げられる。常温常圧時に液体であるアルカンとしては、ヘキサンなどが挙げられる。本発明にあっては、溶媒で抽出した溶媒抽出物をそのまま使用する場合、安全性の観点も考慮し、これら溶媒の中でも食品としても使用されるものを選択し使用することが好ましく、より好ましくは水、エタノール及びこれらの混合物である。
【0018】
抽出溶媒の添加量は、植物原体の量、抽出温度等に適合させて適宜定めることができる。また、溶媒抽出は、常温、常圧下で行って良く、抽出温度は各溶媒の沸点等を考慮して適宜定めることができる。
【0019】
本発明にあっては、溶媒抽出する場合、原体と溶媒の重量比率は、1:20~1:1であり、好ましくは1:15~1:5であり、より好ましくは1:10である。また、抽出する際に加温するときの温度は、常温(15~25℃)から100℃以下程度である。
【0020】
なお、本発明にあっては、必ずしも溶媒抽出を実施しなくてもよく、天然素材から絞るなどして得られる液汁や油などをもって抽出物としてもよい。
【0021】
濃縮
本発明の別の態様によれば、溶媒抽出物から溶媒を除去した抽出物を得ることができる。溶媒を除去する方法としては、一般的には、減圧濃縮、加熱濃縮、通風濃縮、冷凍濃縮、噴霧濃縮、およびその他の濃縮方法、またはこれらの混合方法を用いることができる。濃縮の際の、圧力、温度、風力、噴霧等は、得られる抽出物の量及び使用用途に併せて適宜設定することができる。本発明においては、減圧濃縮が好ましくは利用される。減圧濃縮を行う場合、圧力、温度は得られる濃縮物の量及び使用用途に併せて適宜設定することができる。
【0022】
本発明で使用する抽出物は、そのまま用いてもよいが、必要に応じてろ過、濃縮してもよい。また、抽出物をカラムクロマト法、向流分配法などにより、分画、精製して用いることもできる。更に、上記のものを減圧乾燥又は凍結乾燥した後、粉末又はペースト状に調製し適宜製剤化して用いることもできる。
【0023】
乾燥/乾燥物
本発明の別の態様によれば、抽出物または溶媒を除去した抽出物を、乾燥し、乾燥物を得ることができる。本発明において、乾燥方法は、天日乾燥、(熱)風乾燥、真空乾燥、通気乾燥、流動乾燥、噴霧乾燥、凍結乾燥、減圧乾燥、赤外線乾燥、高周波乾燥、およびその他の乾燥法、またはこれらの混合方法が用いられる。乾燥は、上記した濃縮と同時に行われても良い。
【0024】
皮膚外用剤
本発明による組成物は、皮膚に適応した場合の使用感と安全性に優れているため、皮膚外用剤に配合するのに好適である。この皮膚外用剤は、具体的には植物を中心とする天然素材由来の抽出物および発酵物を含んでなる皮膚外用剤である。皮膚外用剤の種類としては、例えばクリーム、化粧水、乳液、ローション、クレンジングジェル、パック、軟膏など様々なものが挙げられる。本発明における、一般的な天然素材由来の抽出物の添加量は、皮膚外用剤の総重量に対して、約0.0001重量%以上であり、20重量%以下である。なお、抽出物が液汁や油、発酵物などの場合に関しては、そのものの特性や性状によって安全性なども考慮しつつ、皮膚外用剤の総重量に対して、約0.0001重量%以上であり、100重量%(抽出物や発酵物をそのまま使用)以下とする。
本発明による抽出組成物をそのまま使用する場合は、溶質である乾燥固形分の含有量が上記範囲内であれば、その抽出液濃度等は何ら限定されるものではない。
【0025】
本発明の皮膚外用剤は、通常の皮膚外用剤として知られる種々の形態の基剤に配合して調製することができ、外用剤の形態として特に限定されず、例えば、乳液、クリーム、化粧水等の任意の剤形を選択することができる。また、一般化粧料に限定されるものではなく、医薬品、医薬部外品、薬用化粧料を包含する。
【0026】
本発明の皮膚外用剤において、[0011]項に記載の天然素材由来の抽出物や発酵物とともに構成成分として利用可能なものは例えば、保湿剤・紫外線吸収剤・複合脂質・活性酸素消去作用を有する物質・抗炎症剤・ビタミンおよびその誘導体・油性成分・界面活性剤・防腐剤・粉体成分・精製水・高分子化合物・ゲル化剤・酸化防止剤・コレステロール類・植物ステロール類・リポプロテイン類・微生物由来成分・藻類抽出物・血行促進剤・抗脂漏剤・増粘剤・着色料・美容成分などが挙げられ、本発明の効果を損なわない範囲で適宜選択して用いることができる。
【実施例0027】
次に実施例および比較例を挙げて本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれになんら制約されるものではない。また使用した天然素材由来の抽出物および発酵物についての抽出方法、発酵方法についても何ら限定されるものではない。
【0028】
<製造例1>天然素材由来抽出物(ホホバ種子油)の製法
ホホバの乾燥した種子から圧搾法により粗ホホバ油をしぼり取り、活性白土で脱色後、蒸留、脱臭して、抽出物1(植物油)を得た。
【0029】
<製造例2>天然素材由来含水エタノール抽出物の製法
表1の部位の天然素材10gに20倍量の50%(w/w)エタノール200gを加え、50℃にて5時間抽出し、ろ過濃縮した後、凍結乾燥、粉末化し、抽出物を得た(抽出物4~7、9~17)。
【0030】
<製造例3>天然素材由来水抽出物の製法
表1の部位の天然素材10gに20倍量の精製水200gを加え、50℃5時間抽出し、ろ過濃縮後、凍結乾燥、粉末化し、抽出物を得た(抽出物2~3、8)。
【0031】
次に、発酵物についての製法を記載する。
発酵に使用する乳酸菌としては、例えば、ラクトバチルス属、エンテロコッカス属、ラクトコッカス属、ペディオコッカス属、ロイコノストック属、ストレプトコッカス属、ビフィドバクテリウム属等が挙げられ、具体的には、ラクトバチルス・カゼイ(Lactobacillus casei)、ラクトバチルス・プランタルム(Lactobacillus plantarum)、ラクトバチルス・ブレビス(Lactobacillus brevis)、ラクトバチルス・デルブレッキー(Lactobacillus delbrueckii)、エンテロコッカス・フェカリス(Enterococcus faecalis)、エンテロコッカス・フェシウム(Enterococcus faecium)、エンテロコッカス・カセリフルバス(Enterococcus casseliflavus)、ラクトコッカス・ラクティス(Lactococcus lactis)、ペディオコッカス・ペントサセウス(Pediococcus pentosaceus)、ロイコノストック・メセンテロイデス(Leuconostoc mesenteroides)、バチルス・コアグランス(Bacillus coagulans)等を挙げることができる。ここに列挙した乳酸菌から選択される1種を単独で用いることができるほか、2種以上を混合して用いることもできる。なお、乳酸菌として市販されているものを用いてもよいが、野菜、豆類、穀類、海藻類などの植物素材にて生息しているものを採取して用いてもよく、あるいは植物以外の素材(例えばキノコ類)にて生息しているものを採取して用いることもできる。
酵母は、サッカロマイセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)、サッカロマイセス・バヤヌス(Saccharomyces bayanus)、サッカロマイセス・パストリアヌス(Saccharomyces pastorlanus)等のサッカロマイセス属、シゾサッカロマイセス・ポンベ(Schizosaccharomyces pombe)等のシゾサッカロマイセス属、キャンディダ・ウチリス(Candida utilis)等のキャンディダ属、クルイベロマイセス・マルキシアヌス(Kluyveromyces marxianus)等のクルイベロマイセス属等に属する菌が使用でき、単独でも用いることができるほか、2種以上を混合して用いることもできる。
麹菌は、黄麹菌のアスペルギルス・オリゼ(Aspergillus oryzae)、およびアスペルギルス・ソーヤ(Aspergillus sojae)、アスペルギルス・ルーチェンシス(Aspergillus luchuensis)黒麹菌のアスペルギルス・ニガー(Aspergillus niger)、アスペルギルス・アワモリ(Aspergillus awamori)、およびアスペルギルス・サイトイ(Aspergillus saitoi)、並びに白麹菌のアスペルギルス・ウサミ(Aspergillus usamii)、およびアスペルギルス・カワチ(Aspergillus kawachii)などが挙げられるが、望ましくは乳酸菌ラクトバチルス・プランタルム(Lactobacillus plantarum)、ラクトバチルス・ブレビス(Lactobacillus brevis)、エンテロコッカス・フェカリス(Enterococcus faecalis)エンテロコッカス・カセリフルバス(Enterococcus casseliflavus)である。
【0032】
発酵基質については天然素材そのものでもよいし、抽出物などでもよい。
海藻については、紅藻類、褐藻類、緑藻類など特に限定しないが、望ましくはアナアオサ、マコンブである。海藻の形態は、特に限定されず、例えば、生、又は乾燥した海藻の粉砕物や粉末等が使用できる。
【0033】
<製造例4>製法 天然素材由来発酵物
天然素材由来発酵物の製造例として、海藻発酵物の例を記載する。
製造例3と同様に、表1の部位のアナアオサまたはマコンブ10gに20倍量の精製水200gを加え、50℃5時間抽出し、ろ過濃縮して得たアナアオサエキスとマコンブエキスを発酵する対象として使用した。
固形分濃度1.5質量%に調整後、滅菌処理したアナアオサエキスに予め前培養して活性化したEnterococcus faecalis(乳酸球菌D株)またはEnterococcus casseliflavus(乳酸球菌E株)を10個/mLになるように播種し、好気性条件下で30℃、48時間、撹拌培養し、発酵培養液を得た。発酵培養液をろ過後、凍結乾燥、粉末化し、乳酸球菌D/アナアオサエキス発酵液(発酵物1)および乳酸球菌E/アナアオサエキス発酵液(発酵物2)の粉末を得た。
固形分濃度1.5質量%に調整後、滅菌処理したマコンブエキスに予め前培養して活性化したLactobacillus brevis(乳酸桿菌B株)を10個/mLになるように播種し、好気性条件下で30℃、48時間、撹拌培養し、発酵培養液を得た。培養液をろ過後、凍結乾燥、粉末化し、乳酸桿菌B/マコンブエキス発酵液(発酵物3)の粉末を得た。
【0034】
(試験例1)表皮細胞のIL-1RA産生促進の評価試験
本項では、天然素材由来の抽出物および発酵物が、ヒト皮膚のIL-1RA産生を促進するかの指標として、抽出物や発酵物を含有する培地で培養することによって、表皮細胞のIL-1RA産生が増加するかどうかについての試験を実施した。
ヒト不死化表皮細胞(HaCaT細胞)を5%ウシ胎児血清(以下FBSと略記)含有DMEM培地にて培養維持し、継代時にDMEM培地を用いて、24穴プレートに1.5×10個/穴ずつ播種し、37℃、5%炭酸ガス下、24時間培養した。
試験試料は、製造例1~4にて調製した抽出物1~17および発酵物1~3を使用した。
試験試料の添加は下記の様に実施した。
(抽出物1)
DMEM培地に試料を溶解させ、フィルター滅菌した培地で48時間同条件にて培養した。コントロール細胞については、培地のみで同条件にて培養した。
(抽出物2~17および発酵物1~3、陽性対照)
陽性対照として、L-アスコルビン酸りん酸エステルマグネシウム塩(富士フイルム和光純薬製)を使用した。精製水に試験試料を溶解し、フィルター滅菌した溶液を添加したDMEM培地に交換し、48時間同条件にて培養した。抽出物を含有しないコントロール細胞については、フィルター滅菌した精製水(滅菌水)を上記と同量添加したDMEM培地に交換し、同条件にて培養した。
48時間培養後、培養上清を回収し、IL-1RA測定まで-80℃のディープフリーザーに保管した。上清のタンパク定量は、BCA Protein Assay kit(Thermo Fisher Scientific)を使用して実施した。IL-1RA測定については、ELISAキット(R&D Systems)によって測定した。IL-1RA(pg)/Protein(mg)値を算出し、コントロール細胞の値を100%としたときの試験試料の促進率(%)を算出して比較した。
【0035】
試験試料のIL-1RA産生促進効果の結果を表2に示す。
【表2】
【0036】
表2に示す通り、各天然素材由来の抽出物(抽出物1~18)および発酵物(1~3)を含有する培地にて培養した表皮細胞において、コントロール細胞のIL-1RA産生率(100%)と比較して、5%以上上昇することを確認した。
また、陽性対照のビタミンC誘導体においても促進されたことから、本試験にて適切に評価可能であることも確認された。
【0037】
本発明による皮膚外用剤への天然素材由来の抽出物の配合例を下記に示す。なお、配合例は本発明を限定するものではない。
【0038】
(配合例1)クリーム
下記の成分(1)~(10)、これとは別に下記成分(11)~(14)及び(16)を75℃に加温溶解し、乳化し、攪拌しながら50℃まで冷却し、成分(15)を加え、クリームを調整した。
(成分) (重量%)
(1)抽出物1(ホホバ種子油) 3.0%
(2)スクワラン 2.0%
(3)メチルポリシロキサン 0.5%
(4)ステアリルアルコール 0.5%
(5)セチルアルコール 0.5%
(6)トリ(カプリル・カプリン酸)グリセリル 12.5%
(7)モノステアリン酸グリセリル 5.0%
(8)モノステアリン酸ジグリセリル 1.5%
(9)モノステアリン酸デカグリセリル 3.0%
(10)パラオキシ安息香酸プロピル 0.1%
(11)キサンタンガム 0.1%
(12)抽出物12(ハトムギ種子エキス) 0.005%
(13)1,3-ブチレングリコール 2.5%
(14)パラオキシ安息香酸メチル 0.2%
(15)香料 0.1%
(16)精製水 残量
【0039】
(配合例2)化粧水
下記成分(7)~(9)を混合溶解させてA液とし、これとは別に下記成分(1)~(6)及び(10)を混合溶解させてB液とし、A液とB液を均一に混合し、化粧水を得た。
(成分) (重量%)
(1)グリセリン 5.0%
(2)1,3-ブチレングリコール 5.0%
(3)メロン胎座エキス 0.05%
(4)ザクロ花エキス 0.005%
(5)発酵物2(乳酸球菌E/アナアオサエキス発酵液) 0.05%
(6)ポリオキシエチレンソルビタンラウリン酸エステル 1.2%
(7)エチルアルコール 5.0%
(8)フェノキシエタノール 0.1%
(9)香料 0.1%
(10)精製水 残量
【0040】
(配合例3)乳液
下記成分(1)~(10)、これとは別に下記成分(11)~(14)及び(16)を75℃で加熱溶解させてそれぞれA液及びB液とし、A液にB液を加えて乳化し、攪拌しながら50℃まで冷却し、成分(15)を加え、乳液を調製した。
(成分) (重量%)
(1)抽出物1(ホホバ種子油) 1.0%
(2)スクワラン 2.0%
(3)ベヘニルアルコール 1.0%
(4)トリ(カプリル・カプリン酸)グリセリル 2.0%
(5)テトラグリセリン縮合リシノレイン酸 0.1%
(6)モノオレイン酸プロピレングリコール 0.5%
(7)モノステアリン酸グリセリル 1.0%
(8)モノミリスチン酸ヘキサグリセリル 1.0%
(9)モノミリスチン酸デカグリセリル 0.5%
(10)パラオキシ安息香酸プロピル 0.1%
(11)抽出物8(タモギタケエキス) 0.005%
(12)ベルゲニアリグラタ根エキス 0.005%
(13)1,3-ブチレングリコール 3.0%
(14)パラオキシ安息香酸メチル 0.1%
(15)香料 0.1%
(16)精製水 残量
【0041】
(配合例4)クレンジングジェル
下記成分(1)~(3)、これとは別に下記成分(4)~(8)及び(10)を70℃に加熱溶解させてそれぞれA液及びB液とし、A液にB液を加えて均一になるまで攪拌する。攪拌しながら、50℃まで冷却し、成分(9)を加えてクレンジングジェルを調製した。
(成分) (重量%)
(1)モノミリスチン酸ヘキサグリセリル 20.0%
(2)流動パラフィン 59.7%
(3)パラオキシ安息香酸エステル 0.3%
(4)発酵物1(乳酸桿菌D/アナアオサエキス発酵液) 0.05%
(5)ホホバ葉エキス 0.001%
(6)フトモモ葉エキス 0.005%
(7)濃グリセリン 5.0%
(8)ソルビトール 5.0%
(9)香料 0.1%
(10)精製水 残量
【0042】
(配合例5)パック剤
下記成分(1)~(8)及び(13)を70℃に加熱溶解しA液とし、(10)~(12)を混合してB液とする。B液をA液に混合した後、冷却し(9)を均一に分散してパックを調製した。
(成分) (重量%)
(1)ポリビニルアルコール 20.0%
(2)グリセリン 5.0%
(3)カオリン 6.0%
(4)抽出物17(コメヌカエキス) 0.005%
(5)抽出物18(カニナバラ果実エキス) 0.005%
(6)ラベンダー花エキス 0.005%
(7)ヤグルマギク花エキス 0.005%
(8)クインスシードエキス 0.1%
(9)塩化ベンザルコニウム 20.0%
(10)エタノール 20.0%
(11)パラオキシ安息香酸メチル 0.2%
(12)香料 0.1%
(13)精製水 残量
【0043】
本発明においては、複数の天然素材由来の抽出物および発酵物が、表皮細胞のIL-1RA産生促進剤であることを確認した。これらの抽出物および発酵物を含有する皮膚外用剤は、外部環境刺激で過剰に産生されたIL-1αによる炎症シミ、シワ、ニキビ、乾燥といった肌悩みを予防・改善する効果があることを見出した。
図1