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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022065603
(43)【公開日】2022-04-27
(54)【発明の名称】ワイヤのワンウェイ流通規制機構
(51)【国際特許分類】
   F16G 11/10 20060101AFI20220420BHJP
【FI】
F16G11/10 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021049310
(22)【出願日】2021-03-23
(31)【優先権主張番号】P 2020174198
(32)【優先日】2020-10-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】515027439
【氏名又は名称】工藤 まほ
(71)【出願人】
【識別番号】515027048
【氏名又は名称】河野 優子
(74)【代理人】
【識別番号】100080160
【弁理士】
【氏名又は名称】松尾 憲一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100149205
【弁理士】
【氏名又は名称】市川 泰央
(72)【発明者】
【氏名】三重野 丈一
(57)【要約】
【課題】ワイヤを固定するワインウェイ機構と固定されたワイヤを簡易かつ確実に解除する機構とを一体に備えたワイヤのワンウェイ流通規制機構を提供する。
【解決手段】ワイヤのワンウェイ流通規制機構は、固定機構は、内壁をテーパー形状とするストッパー本体と、ストッパー本体内部で摺動可能としたインナーボルトと、インナーボルトの中心部を挿通するワイヤと、インナーボルトの一側一帯に穿孔した複数のボール遊嵌孔と、ボール遊嵌孔に遊嵌自在で、インナーボルトのボール遊嵌孔とストッパー本体のテーパー部とが対応する位置関係になった際にインナーボルトの中心部を挿通するワイヤ表面を圧接するストッパーボールとより構成し、解除機構は、インナーボルトの他側一帯に形成した雄ネジ部と、雄ネジ部と螺合する雌ネジ構造を備えた解除ネジとより構成してなることとした。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
固定機構は、
内壁をテーパー形状とするストッパー本体と、
ストッパー本体内部で摺動可能としたインナーボルトと、
インナーボルトの中心部を挿通するワイヤと、
インナーボルトの一側一帯に穿孔した複数のボール遊嵌孔と、
ボール遊嵌孔に遊嵌自在で、インナーボルトのボール遊嵌孔とストッパー本体のテーパー部とが対応する位置関係になった際にインナーボルトの中心部を挿通するワイヤ表面を圧接するストッパーボールとより構成し、
解除機構は、
インナーボルトの他側一帯に形成した雄ネジ部と、
雄ネジ部と螺合する雌ネジ構造を備えた解除ネジとより構成したことを特徴とするワイヤのワンウェイ流通規制機構とした。
【請求項2】
インナーボルトは、略円錐形状の圧縮バネによりストッパー本体のテーパー形状の縮径方向に移動付勢したことを特徴とする請求項1に記載のワイヤのワンウェイ流通規制機構。
【請求項3】
ボール遊嵌孔は、内周面を中央部から外方に向けて狭窄状のテーパーとすると共に、内側の開口部よりも外側の開口部が大きく形成されたことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のワイヤのワンウェイ流通規制機構。
【請求項4】
ストッパーボールは、表面に摩擦係数を大とする表面処理をしたことを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか1項に記載のワイヤのワンウェイ流通規制機構。
【請求項5】
解除ネジの外側端面に回転操作するための操作部としての複数の突片を設けたことを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか1項に記載のワイヤのワンウェイ流通規制機構。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、ワイヤを流通させるパイプにおいて、ワイヤの一方向の流通を規制するワンウェイ流通規制機構に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、害獣の捕獲の際に使用するトラップ機構は、以下の流れによる原理が一例として採用されている。すなわち、(1)害獣の脚体が踏板を踏む。(2)踏板は、害獣の脚体による上からの押圧応力によって降下沈降する。(3)踏板の降下沈降によって捕獲用ワイヤが縮径作動し、害獣の脚体は捕獲ワイヤによって捕縛される。
【0003】
すなわち、このようなトラップ機構では、捕獲ワイヤが縮径作動することにより、踏板を踏んだ害獣の脚体を捕縛するように構成されている。捕獲ワイヤは、ワイヤ挿通パイプの中心軸上に沿って挿貫流通している。ワイヤ挿通パイプには、捕獲ワイヤが一定方向には自由に挿貫して流通できるが、他方向には流通が規制されて移動しない流通規制構造(以下、ワンウェイ構造とも言う。)が配設されている。ワンウェイ構造は、捕獲ワイヤが害獣の脚体を捕縛した際に、その捕縛状態(捕獲ワイヤの縮径状態)を維持するための固定機構として必須な構成要素である。
【0004】
ワンウェイ構造による固定機構は、ワイヤ挿通パイプの一側(捕獲ワイヤの自由端側)からは引き出し可能であるが、他側(捕獲ワイヤの縮径部側)からは引き出せない、いわゆる逆止弁的な機能である(例えば、特許文献1。)。
【0005】
特許文献1に記載の固定機構は、内面にテーパー面を備えた筒状のケースと、ケースの軸心に沿って往復移動できるホルダーと、ホルダーの径方向へ移動可能に保持される大小二組のボールと、ホルダーの軸心を挿通するワイヤと、を備えている。特許文献1に記載の固定機構では、ケースが備えるテーパー面の狭窄側でボールが押圧され、押圧されたボールがワイヤを圧接することにより固定を行っている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2000-297849号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
係る逆止弁機能を有するワンウェイ機構では、ワンウェイ機構を解除するため解除機構を別途用意する必要がある。例えば、特許文献1で開示されるワンウェイ機構の解除治具は、図4(a)および(b)に示すように、略円筒状の軸部91と、解除治具90を把持する為に軸部91の一端に張り出して構成したフランジ部92と、軸部91およびフランジ部92に形成されたワイヤを受け入れる溝93と、より構成されている。なお、図4(a)は解除治具90の平面図を示し、図4(b)は解除治具90の正面図を示す。
【0008】
この解除治具90を用いてワンウェイ機構を解除する際には、図4(c)および(d)に示すようにテーパー面の狭窄側へと移動したホルダー94を解除治具90でテーパー面の拡開側へと移動させて行う。これにより、ホルダー94が保持したボール95がテーパー面と離れるために、ワイヤ96がボール95による圧接から解放されることに伴ってワンウェイ機構が解除される。なお、図4(c)は解除治具90をワンウェイ機構に挿入する状態を示す側断面図であり、図4(d)は解除治具90がワンウェイ機構を解除した状態を示す側断面図である。
【0009】
このように、特許文献1に開示されるワイヤの固定機構では、ボールがテーパー面の拡開方向へと移動すれば固定解除できるが、緊密にテーパー面と圧接状態にあるボールは解除ピンで操作しても移動しない場合があった。そこで本発明は、上記の問題を解決するために、インナーボルトと解除ネジとによる螺合構造がボール移動のトルクを大とする解除機構をも備えてなるワイヤのワンウェイ流通規制機構を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、固定機構は、内壁をテーパー形状とするストッパー本体と、ストッパー本体内部で摺動可能としたインナーボルトと、インナーボルトの中心部を挿通するワイヤと、インナーボルトの一側一帯に穿孔した複数のボール遊嵌孔と、ボール遊嵌孔に遊嵌自在で、インナーボルトのボール遊嵌孔とストッパー本体のテーパー部とが対応する位置関係になった際にインナーボルトの中心部を挿通するワイヤ表面を圧接するストッパーボールとより構成し、解除機構は、インナーボルトの他側一帯に形成した雄ネジ部と、雄ネジ部と螺合する雌ネジ構造を備えた解除ネジとより構成したことを特徴とするワイヤのワンウェイ流通規制機構とした。
【0011】
また、インナーボルトは、略円錐形状の圧縮バネによりストッパー本体のテーパー形状の縮径方向に移動付勢したことを特徴とした。
【0012】
また、ボール遊嵌孔は、内周面を中央部から外方に向けて狭窄状のテーパーとすると共に、内側の開口部よりも外側の開口部が大きく形成されたことを特徴とした。
【0013】
また、ストッパーボールは、表面に摩擦係数を大とする表面処理をしたことを特徴とした。
【0014】
また、解除ネジの外側端面に回転操作するための操作部としての複数の突片を設けたことを特徴とした。
【発明の効果】
【0015】
請求項1に記載の発明によれば、ワイヤの固定を確実に解除することができる。具体的には、本発明は、固定機構は、内壁をテーパー形状とするストッパー本体と、ストッパー本体内部で摺動可能としたインナーボルトと、インナーボルトの中心部を挿通するワイヤと、インナーボルトの一側一帯に穿孔した複数のボール遊嵌孔と、ボール遊嵌孔に遊嵌自在で、インナーボルトのボール遊嵌孔とストッパー本体のテーパー部とが対応する位置関係になった際にインナーボルトの中心部を挿通するワイヤ表面を圧接するストッパーボールとより構成し、解除機構は、インナーボルトの他側一帯に形成した雄ネジ部と、雄ネジ部と螺合する雌ネジ構造を備えた解除ネジとより構成したため、ストッパーボールが緊密にストッパー本体の内壁と圧接状態にある場合であっても、インナーボルトと解除ネジとによる螺合構造によって生起される高いトルクによってストッパーボールを移動させ、ワイヤの固定を確実に解除することができる。
【0016】
請求項2に記載の発明によれば、ワイヤのワンウェイ流通規制における固定機構を素早く作動させる効果がある。具体的には、本発明は、インナーボルトが圧縮バネによってテーパー形状の内壁方向へ移動付勢されているため、ワイヤの一方向流通を固定する機構が瞬時に作動する構成となっている。これにより、高い瞬発力を持つ害獣を対象としても、ワイヤのワンウェイ流通規制の固定機構が素早く作動することによって害獣の高い捕縛率を実現する。
【0017】
請求項3に記載の発明によれば、ワイヤのワンウェイ流通規制における固定機構を素早く作動させる効果がある。具体的には、本発明は、ストッパーボールが内側よりも外側に偏心して配置される構成の為、インナーボルトの少ない動きでもストッパーボールとストッパー本体のテーパー部とが対応することになる。これにより、ストッパーボールが素早くワイヤ表面に圧接することになり、ワイヤのワンウェイ流通規制が瞬間的に作動する。
【0018】
請求項4に記載の発明によれば、ワイヤの一方向流通規制によるワイヤの固定をより強固なものとし、想定外にワイヤの固定が解除されることを回避する効果がある。具体的には、本発明は、ストッパーボールの表面が摩擦係数を大とする表面処理されているため、ワイヤ表面とストッパーボールとの圧接がより強固になる。これにより、捕縛した害獣が暴れてもストッパーボールがワイヤ表面から容易に離れることがなくなる。
【0019】
請求項5に記載の発明によれば、ワイヤの流通の固定と解除との切替操作を容易にすることができるため、害獣の捕獲罠におけるワイヤの設置作業を容易に行うことができる。具体的には、本発明は、解除ネジの外側端面に回転操作するための操作部としての複数の突片を設けため、指を操作部に引っ掛けて解除ネジを把持すれば、少ない力で解除ネジを回転操作することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】本発明にかかるワイヤのワンウェイ流通規制機構を分解した説明図である。
図2】本発明にかかるワイヤのワンウェイ流通規制機構の固定機構および解除機構の状態を説明する側断面図である。
図3】本発明にかかるワイヤのワンウェイ流通規制機構がワイヤと係合する状態を説明する図である。
図4】従来技術(先行技術1)に開示の解除治具を説明する図である。
図5】本発明にかかるワイヤのワンウェイ流通規制機構の使用状態を説明する斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本発明の要旨は、固定機構は、内壁をテーパー形状とするストッパー本体と、ストッパー本体内部で摺動可能としたインナーボルトと、インナーボルトの中心部を挿通するワイヤと、インナーボルトの一側一帯に穿孔した複数のボール遊嵌孔と、ボール遊嵌孔に遊嵌自在で、インナーボルトのボール遊嵌孔とストッパー本体のテーパー部とが対応する位置関係になった際にインナーボルトの中心部を挿通するワイヤ表面を圧接するストッパーボールとより構成し、解除機構は、インナーボルトの他側一帯に形成した雄ネジ部と、雄ネジ部と螺合する雌ネジ構造を備えた解除ネジとより構成したことを特徴とするワイヤのワンウェイ流通規制機構を提供することにある。
【0022】
また、インナーボルトは、略円錐形状の圧縮バネによりストッパー本体のテーパー形状の縮径方向に移動付勢したことにある。
【0023】
また、ボール遊嵌孔は、内周面を中央部から外方に向けて狭窄状のテーパーとすると共に、内側の開口部よりも外側の開口部が大きく形成されたことにある。
【0024】
また、ストッパーボールは、表面に摩擦係数を大とする表面処理をしたことにある。
【0025】
また、解除ネジの外側端面に回転操作するための操作部としての複数の突片を設けたことを特徴とする。
【0026】
以下、本発明に係る係るワイヤのワンウェイ流通規制機構が備える固定機構および解除機構を図面に基づき詳細に説明する。
【0027】
本発明にかかるワイヤのワンウェイ流通規制機構1において、固定機構は、図1に示すように、内壁10bをテーパー形状(以下、テーパー部11とも言う)とするストッパー本体10と、ストッパー本体10内部で摺動可能としたインナーボルト30と、インナーボルト30の中心部を挿通するワイヤW(図3を参照)と、インナーボルト30の一側一帯に穿孔した複数のボール遊嵌孔41と、ボール遊嵌孔41に遊嵌自在で、インナーボルト30のボール遊嵌孔41とストッパー本体10のテーパー部11とが対応する位置関係になった際にインナーボルト30の中心部を挿通するワイヤW表面を圧接するストッパーボール42とより構成されている。
【0028】
また、解除機構は、図1に示すように、インナーボルト30の他側一帯に形成した雄ネジ部60と、雄ネジ部60と螺合する雌ネジ構造を備えた解除ネジ20とより構成されている。
【0029】
また、インナーボルト30は、図2に示すように、略円錐形状の圧縮バネ70によりストッパー本体10のテーパー形状11の縮径方向に移動付勢している。
【0030】
また、ボール遊嵌孔41は、内周面を中央部から外方に向けて狭窄状のテーパーとすると共に、内側の開口部よりも外側の開口部が大きく形成されている。
【0031】
また、ストッパーボール42は、図1に示すように、表面に摩擦係数を大とする表面処理をされている。
【0032】
すなわち、本発明に係るワイヤのワンウェイ流通規制機構1は、図1に示すように、中空筒状のストッパー本体10と、ストッパー本体10の基端側開口10a側と対向する位置に配置された略環状形の解除ネジ20と、ストッパー本体10の基端側開口10aから内部空間に挿入されるとともに、解除ネジ20とネジ構造によって螺合するインナーボルト30と、より構成されている。また、ワンウェイ流通規制機構1において、ストッパー本体10および解除ネジ20は、インナーボルト30を外嵌するとともに、それぞれが同軸心配置された構成となっている。また、ワンウェイ流通規制機構1は、全体としては、正面視では略矩形、平面視では中央に開口を備えた円形となるように構成されている。本発明にかかるワンウェイ流通規制機構1の構成要素について詳細な説明は次の通りである。
【0033】
ストッパー本体10は、図1に示すように、周壁が肉厚に形成された中空状の円筒体であって、両端部の軸心上にはワイヤWが貫通するための円形の開口が形成されている。また、ストッパー本体10の中空部内壁10bは、基端部(図1中では右側)から先端側(図1中では左側)に向けて漸次縮径するテーパー形状に構成されている。
【0034】
解除ネジ20は、雌ネジ構造を備えた略環体形状の部材である。解除ネジ20は、図1および図5に示すように、インナーボルト30に螺合する雌ネジ構造を備えると共に、略T字状に形成された解除ネジ本体21と、解除ネジ本体21のT字縦辺に相当する筒体部21aから径方向に向けて立設された操作部22と、より構成されている。解除ネジ20に操作部22を設けることにより、解除ネジ本体21を把持して行う回転操作が確実に実施できると共に、解除ネジ本体21の操作が可及的に少ない力で実行可能となる。
【0035】
図5は、本発明に係るワイヤのワンウェイ流通規制機構の使用状態を説明する斜視図である。図5(a)に示すように解除ネジ20は、操作部22を把持して解除ネジ本体21を規制解除方向に回転操作すれば、インナーボルト30をストッパー本体10内から外方に引き出してワイヤWの流通の規制を解除するように構成されている。また図5(b)に示すように解除ネジ20は、操作部22を把持して解除ネジ本体21を規制方向に回転操作すれば、インナーボルト30をストッパー本体10内に留置してワイヤWの流通を規制するように構成されている。
【0036】
操作部22は、解除ネジ本体21の周面に180度の方向に突設した突片23よりなる。突片23の数や位置は、指で把持しての操作が容易であれば特に限定されない。具体的には、図5に示すように筒体部21aの左右周面に2つ配置する。また、略Y字状となるように放射状に配置したり、クロス状にとなるように多数配置することも可能である。
【0037】
係る構成要素を備えてなるストッパー本体10および解除ネジ20は、ストッパー本体の基端側開口10aと解除ネジ20の解除ネジ本体21のT字横辺部とが対向するように配置されている。そして、ストッパー本体10および解除ネジ20は、後述するインナーボルト30を外嵌するように配置されている。
【0038】
インナーボルト30は、図1に示すように、ストッパー本体10の基端側に設けられたホルダー部40と、ホルダー部40の端部(ストッパー本体10の基端部側)と連結する予備部50と、予備部50の端部(ホルダー部40とは反対側)と連結する雄ネジ部60とより構成されている中空状の筒体である。インナーボルト30において、ホルダー部40、予備部50、および雄ネジ部60は同軸心上が中空構造となっており、これらの連結によって一体に構成される中空部31には、ワイヤWが貫通するように構成されている。
【0039】
ホルダー部40は、図1に示すように、径方向外方に向けて突出する拡径環体である。このホルダー部40において、ストッパー本体10の中空部内壁10bと対向する周壁40aには、略球形のボール遊嵌孔41が複数箇所に穿設されている。それぞれのボール遊嵌孔41には、ボール遊嵌孔41と略同形状のストッパーボール42が遊嵌している。
【0040】
ボール遊嵌孔41は、ホルダー部40の周壁40aからインナーボルト30内部の中空部31まで貫通している。ボール遊嵌孔41の内周面は、ボール遊嵌孔41中央部から外方(周壁40aおよび中空部31)に向けて狭窄状のテーパー形状に構成されている。
【0041】
ストッパーボール42は、ボール遊嵌孔41を貫通して周壁40a側および中空部31側に周面が外部に露出するように配置されている。しかも、ボール遊嵌孔41の開口は、内側(中空部31側)よりも外側(周壁40a側)を大きく形成しているため、ストッパーボール42が外側(周壁40a側)に偏心して位置することとなる。これにより、ストッパーボール42は、ストッパー本体10のテーパー部11と密着しやすくなり、後述するワイヤWの固定機構が生起されやすくなる。なお、ストッパーボール42は摩擦係数を大とするために、その周面には、微小な複数個の溝を形成したり、微細粒子を接着させたりする表面処理を施ことができる。
【0042】
予備部50は、図1に示すように、ホルダー部40よりも細く構成された周壁が平滑な筒体である。予備部50の長手方向の長さ(図1中では左右幅の長さ)は、後述する圧縮バネ70がインナーボルト30に外嵌して圧縮された時の長さ(図1中では左右幅の長さ)以上に構成することが好ましい。係る構成の予備部50を設けることにより、解除ネジ20の解除操作に伴うインナーボルト30の過剰な締め付けによる圧縮バネ70およびインナーボルト30の損壊を防ぐことができる。
【0043】
雄ネジ部60は、図1に示すように、予備部50と略同径の筒状体である。雄ネジ部60は、径方向外方に向かって複数の溝が形成されており、解除ネジ20と螺合する雄ネジ構造を備えている。インナーボルト30は、雄ネジ部60を備えることにより、解除ネジ20が固定解除操作される際には、ストッパー本体10の基端側開口10a側へと向けて引き出されるように構成される。
【0044】
このような構成要素を備えてなるインナーボルト30は、ストッパー本体10および解除ネジ20に挿嵌するように配置されている。具体的には、インナーボルト30は、ストッパーボール42がストッパー本体10のテーパー部11と対向するように配置されると共に、雄ネジ部60が解除ネジ20の解除ネジ本体21と螺合するように配置されている。
【0045】
インナーボルト30がストッパー本体10の基端側開口10aからストッパー本体10の中空部に挿入される際には、図1に示すように、ストッパー本体10の基端側開口10a側に向けて漸次拡径する圧縮バネ70が、インナーボルト30の予備部50と雄ネジ部60に外観するように配置される。また、ストッパー本体10の基端側開口10aは、インナーボルト30および圧縮バネ70を収納した後、キャップ体80で封止される。
【0046】
圧縮バネ70は、図1に示すように、インナーボルト30のホルダー部40とキャップ体80との間に配置されることにより、ストッパー本体10が備えるテーパー部11の縮径側へとインナーボルト30を押圧付勢している。また、圧縮バネ70は、略円錐形状の不等ピッチコイルバネを採用しているため、ワンウェイ流通規制機構1の可及的な小型化が実現できる。すなわち、圧縮バネ70は、ホルダー部40の拡径環体の側面40bに密着側を基端として、キャップ体80に向けて漸次拡開する構成となっている。係る圧縮バネ70が限界まで圧縮された場合の長さは、円筒形状の等ピッチコイルバネを採用した場合の長さよりも短くなる。これにより、圧縮バネ70を内蔵するストッパー本体10、および圧縮バネ70が外嵌するインナーボルト30の予備部50が小型に形成される。その結果、これらが一体となって形成されるワンウェイ流通規制機構1は可及的に小型化される。
【0047】
キャップ体80は、図1に示すように、ストッパー本体10と略同径の板体であって、中央部にはワイヤWが貫通する為の開口が形成されている。キャップ体80は内側(図1における左側)で圧縮バネ70と密着して、圧縮バネ70をインナーボルト30のホルダー部40に押圧付勢している。
【0048】
しかも、キャップ体80は外側(図1における右側)で解除ネジ20と対向するように配置されているため、インナーボルト30の移動を規制する作用をも備えている。具体的には、インナーボルト30は圧縮バネ70によってテーパー部11の縮径側へと常時押圧されているが、インナーボルト30の雄ねじ部60に螺合した解除ネジ20がキャップ体80と係合することによってインナーボルト30の移動を規制している。すなわち、キャップ体80は、解除ネジ20の移動を規制することによって、間接的にインナーボルト30の移動を規制する作用を備えている。
【0049】
以上説明したように、本発明に係るワンウェイ流通規制機構1は、ストッパー本体10、ストッパー本体10の中空部に配置されたインナーボルト30と圧縮バネ70とキャップ体80、並びにインナーボルト30の雄ネジ部60に螺合する解除ネジ20より構成されている。ワンウェイ流通規制機構1は、長手方向の中心軸上に連通する孔を形成しており、この連通孔にはワイヤWが貫通している。
【0050】
本発明に係るワンウェイ流通規制機構1は、基本的には固定機構が作動してワイヤの動きを規制する固定状態となっているが、解除ネジ20を解除操作することによってワイヤの動きが規制されない解除状態とすることができる。
【0051】
固定機構によるワイヤの流通規制は、図2(a)に示すように、解除ネジ20をインナーボルト30の雄ネジ部60先端側に位置するように回転操作(以下、固定操作とも言う。)することにより生起される。具体的には、解除ネジ20を雄ねじ部60先端側へと配置すれば、圧縮バネ70の押圧付勢力によってインナーボルト30のホルダー部40がストッパー本体10のテーパー部11の縮径側へと可及的に移動されることになる。
【0052】
係る固定操作下では、ワイヤWが一方向(図3(a)中の矢印X方向を参照)に引っ張られた場合はワイヤWが固定されるが、ワイヤWが他方向(図3(a)中の矢印Y方向を参照)に引っ張られた場合はワイヤWが流通する。係る固定操作下において、圧縮バネ70がインナーボルト30を押圧付勢することによって、ストッパーボール42がストッパー本体10の周壁10aに形成されたテーパー部11よって内側へと常時押圧されている。その結果、ストッパーボール42がワイヤWの表面に圧接状態となることによってワイヤWを固定している。
【0053】
一方で、係る固定操作下では、ワイヤWが他方向(図3(a)中の矢印Y方向を参照)に引っ張られた場合は、ワイヤWの移動に付随してインナーボルト30がストッパー本体10に形成されたテーパー部11の拡開側へと移動することになる。係るインナーボルト30の移動によって、ストッパーボール42は、ストッパー本体10のテーパー部11から内側へと押圧されない位置へと配置されるため、ワイヤWの流通が規制されることはない。
【0054】
解除機構によるワイヤの流通規制の解除は、図2(b)に示すように、解除ネジ20をインナーボルト30の雄ネジ部60基端側(予備部50側)に位置するように回転操作(以下、解除操作とも言う。)することにより生起される。具体的には、解除ネジ20を雄ねじ部60基端側へと配置すれば、圧縮バネ70の押圧付勢力を受けるインナーボルト30は、解除ネジ20とキャップ体80との移動規制によって、可及的にテーパー部11の拡開側(キャップ体80側)に留まることになる。
【0055】
係る解除操作下では、ワイヤWは、一定方向図3(a)中の矢印X方向を参照))に引っ張られた場合、および他方向図3(a)中の矢印Y方向を参照)に引っ張られた場合でも流通する。係る解除操作下においても、インナーボルト30は、圧縮バネ70による押圧付勢を受けているが、解除ネジ20とキャップ体80との移動規制によって可及的にテーパー部11の拡開側に留まっている。係る状態では、ストッパーボール42は、テーパー部11とは対応することがなくなり、ワイヤWを内側へと圧着状態とすることができなくなっている。その結果、係る解除操作下では、ワイヤWは両方向に流通が可能な状態となる。
【0056】
このように、本発明に係るワイヤのワンウェイ流通規制機構1は、ワイヤWの固定状態と解除状態とを自由に切り替え操作可能となる。その結果、ワンウェイ流通規制機構1を組み込んだワイヤは、解除ネジ20とインナーボルト30との螺合構造によって生起される高いトルクによってストッパーボールを移動させ、確実かつ容易に流通規制の解除を可能としている。ワイヤのワンウェイ流通規制機構1は、害獣の捕縛を目的とする以外にも利用できる。例えば、工業製品、建築現場、或いは防災用品等にも利用できる。
【符号の説明】
【0057】
1 ワンウェイ流通規制機構
10 ストッパー本体
10a ストッパー本体の基端側開口
10b ストッパー本体の中空部内壁
11 テーパー部
20 解除ネジ
21 解除ネジ本体
21 解除ネジ本体の筒体部
22 操作部
23 突片
30 インナーボルト
31 インナーボルト中空部
40 ホルダー部
40a ホルダー部周壁
40b ホルダー部側面
41 ボール遊嵌孔
42 ストッパーボール
50 予備部
60 雄ネジ部
70 圧縮バネ
80 キャップ体
W 捕獲ワイヤ
図1
図2
図3
図4
図5