(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022065616
(43)【公開日】2022-04-27
(54)【発明の名称】庇
(51)【国際特許分類】
E04F 10/08 20060101AFI20220420BHJP
【FI】
E04F10/08
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021136644
(22)【出願日】2021-08-24
(31)【優先権主張番号】P 2020173739
(32)【優先日】2020-10-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】591181562
【氏名又は名称】アルフィン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000796
【氏名又は名称】特許業務法人三枝国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】中川 実
【テーマコード(参考)】
2E105
【Fターム(参考)】
2E105FF02
2E105GG01
(57)【要約】
【課題】コーキング材の劣化や脱落を防ぎ、コーキング材の交換を頻繁に行う必要がない庇を提供する。
【解決手段】庇1は、庇板2と、庇板2の後端部を支持する固定基板3と、固定基板3の前面に被せられる前面板4とを備える。固定基板3は、複数のボルト挿通孔34が設けられ各ボルト挿通孔34に挿通されるボルト6により建物の壁面に取り付けられる取付板部30と、取付板部30の上端に連設され建物の壁面との間にコーキング材7の充填が可能な溝状の空間部33を形成する堰板部32とを備える。前面板4は、下端が庇板2の後端部上面または固定基板3の前面に支持され、上端に空間部33上に被せられる蓋板部42が設けられる。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
庇板と、前記庇板の後端部を支持する固定基板と、前記固定基板の前面に被せられる前面板とを備え、
前記固定基板は、
複数のボルト挿通孔が設けられ各ボルト挿通孔に挿通されるボルトにより建物の壁面に取り付けられる取付板部と、
前記取付板部の上端に連設され建物の壁面との間にコーキング材の充填が可能な溝状の空間部を形成する堰板部とを備え、
前記前面板は、
下端が前記庇板の後端部上面または前記固定基板の前面に支持され、上端に前記空間部上に被せられる蓋板部が設けられてなる庇。
【請求項2】
前記固定基板は、前記庇板の後端部を支持するための、庇板と一体の支持部を有する請求項1に記載の庇。
【請求項3】
前記固定基板は、前記庇板の後端部を支持するための、庇板から独立した支持部を有し、前記支持部は、前記庇板の後端部を上下より支持する第1、第2の支持板部を有する請求項1に記載の庇。
【請求項4】
前記固定基板の取付板部は、建物の壁面と対向する後面が前記壁面から離れて位置する請求項1に記載の庇。
【請求項5】
前記固定基板の取付板部は、建物の壁面と対向する後面が前記壁面に密接する請求項1に記載の庇。
【請求項6】
前記固定基板の取付板部は、建物の壁面と対向する後面にコーキング材を充填するための凹部が設けられている請求項5に記載の庇。
【請求項7】
前記前面板は、下端が前記固定基板の下部位置に設けられた係止部に回動可能に係止される請求項1に記載の庇。
【請求項8】
前記前面板の蓋板部は、下面に前記堰板部の上端に係止される係止部を備える請求項1に記載の庇。
【請求項9】
前記前面板の蓋板部の後端部上に、建物の壁面に止着される上板部が設けられる請求項1に記載の庇。
【請求項10】
前記上板部は、前記前面板の蓋板部の後端部に一体に連設され、建物の壁面と対向する後面にコーキング材を充填して保持するための保持部を備える請求項9に記載の庇。
【請求項11】
前記上板部は、前記前面板の蓋板部上に被せられる被せ板に設けられ、建物の壁面と対向する後面にコーキング材を充填して保持するための保持部を備える請求項9に記載の庇。
【請求項12】
請求項1~11のいずれかに記載の庇であって、両側の開放端に被せられる端板をさらに含み、前記端板の前記固定基板及び前面板に対応する位置にはネジを通すネジ通し孔が設けられ、前記固定基板及び前面板には前記ネジが螺合するネジ穴が設けられる庇。
【請求項13】
前記端板は、庇板の側面に沿って先端部まで延びる延出部を有し、前記延出部の前記庇板の先端に対応する位置にはネジを通すネジ通し孔が設けられ、前記庇板には前記ネジが螺合するネジ穴が設けられる請求項12に記載の庇。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、庇板が前方へ張り出すように庇板の後端部が建物の壁面に固定される庇に関する。
【背景技術】
【0002】
この種の典型的な庇は、庇板の後端部を片持ち状態で支持するための固定基板を備えている。固定基板は、ボルトにより建物の壁面に固定される。庇には、固定基板が庇板の後端部と一体になっているもの(以下「一体型」という。)や、庇板とは独立しているもの(以下「独立型」という。)がある。
【0003】
一体型の庇は、庇の構成がコンパクトであり、固定基板をボルトにより建物の壁面に固定するだけで庇板が前方へ張り出すように設置できるから、庇の設置が容易である。
【0004】
一体型の庇として、先般、
図15に示す構造のものが提案された(例えば、特許文献1参照)。この庇100では、固定基板101はボルト112を挿通するボルト挿通孔101aを有し、固定基板101の前面に前面板102が被せられる。固定基板101及び前面板102は、それぞれの上端に連結片103,104が形成されている。両連結片103,104は上下に重ねられ、ネジ105により結合される。
【0005】
前面板102の上端には、連結片104と分かれて上方へ延びる堰部106が設けられている。この堰部106と壁面9との間にはコーキング材111を充填することが可能な溝状の空間部107が形成される。前面板102の下端には凹部108が形成され、この凹部108が庇板110の上面に形成した突条109に係合されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記した構成の庇100では、コーキング材111が露出するため、雨水や紫外線の影響を受けてコーキング材111が劣化し易く、その結果、雨水が固定基板101と建物の壁面9との隙間に浸入してボルト112に錆を生じさせるおそれがある。また、コーキング材111の劣化によりネジ105が雨水によって錆びつくおそれがある。
そのため、コーキング材111を頻繁に交換する必要があり、保守、点検に手数を要する。また、コーキング材111が空間部107の開口から脱落するおそれもあり、その場合はコーキング材111を補充する必要がある。
【0008】
この発明は、上記の問題に着目してなされたもので、コーキング材の劣化や脱落を防ぎ、コーキング材の交換を頻繁に行う必要がない庇を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
この発明による庇は、庇板と、庇板の後端部を支持する固定基板と、固定基板の前面に被せられる前面板とを備える。固定基板は、複数のボルト挿通孔が設けられ各ボルト挿通孔に挿通されるボルトにより建物の壁面に取り付けられる取付板部と、取付板部の上端に連設され建物の壁面との間にコーキング材の充填が可能な溝状の空間部を形成する堰板部とを備える。前面板は、下端が庇板の後端部上面または固定基板の前面に支持され、上端に空間部上に被せられる蓋板部が設けられている。
【0010】
この発明による庇では、固定基板をボルトにより建物の壁面に固定したとき、固定基板の堰板部と建物の壁面との間にコーキング材の充填が可能な溝状の空間部が形成される。この空間部にコーキング材を充填した後、固定基板の前面に前面板を被せ、空間部の上面の開口を前面板に設けられた蓋板部により塞ぐ。これにより、コーキング材が露出せず、雨水や紫外線の影響を受けてコーキング材が劣化するのを防ぐことができる。また、コーキング材が空間部より脱落するおそれもない。
【0011】
ここで、「コーキング材」とは、建物の目地、間隙部分などに充填して防水性、気密性などの機能を発揮させる部材のことで、「シーリング材」とも呼ばれる。コーキング材には、形状が決まっている定形のものと、形状が定まっていない不定形のものとがある。不定形のものは、例えばペースト状であり、乾燥するとゴム状に変化する。コーキング材は、チューブに入っていて専用の押出機である「コーキングガン」を用いて施工するものが一般的であるが、これに限られない。
溝状の空間部には、定形のコーキング材と不定形のコーキング材のいずれか1種を充填するが、例えば、空間部の下方に定形のものを充填し、その上に不定形のものを充填してもよい。
【0012】
この発明の一実施態様においては、固定基板は、庇板の後端部を支持するための、庇板と一体の支持部を有する。
【0013】
この実施態様によると、固定基板の取付板部をボルトにより建物の壁面に固定することで、庇は庇板が建物の壁面に張り出すように壁面に設置される。
【0014】
この発明の他の実施態様においては、固定基板は、庇板の後端部を支持するための、庇板から独立した支持部を有する。支持部は、庇板の後端部を上下より支持する第1、第2の支持板部を有する。
【0015】
この実施態様によると、固定基板の取付板部をボルトにより建物の壁面に固定した後、固定基板の第1、第2の支持板部により庇板の後端部を上下より支持することで、庇は、庇板が建物の壁面に張り出すように壁面に設置される。
なお、第1、第2の支持板部は、庇板の後端部をボルト、ナットの締付けなどにより上下より押さえて動かないように保持する態様のものが望ましいが、そのような態様のものに限定されるものではない。
【0016】
固定基板の取付板部は、建物の壁面と対向する後面が壁面から離れて位置するものであってもよく、建物の壁面と対向する後面が壁面に密接するものであってもよい。
【0017】
前者の実施形態では、ボルトないしはナットで取付板部を締付け固定したとき、取付板部が壁面側へわずかに撓むため、その復元力がボルトの頭部やナットに作用して緩みを防止できるという効果がある。
【0018】
後者の実施形態において、固定基板の取付板部の、建物の壁面と対向する後面に、コーキング材を充填するための凹部を設けることができる。なお、凹部に充填するコーキング材は、溝状の空間部に充填するコーキング材と同種のものであってもよく、異種のものであってもよい。
【0019】
この実施形態によると、コーキング材が充填された溝状の空間部を雨水が通過することがあっても、その雨水は凹部に充填されたコーキング材により浸入が防止される。
【0020】
好ましい実施態様においては、前面板は、下端が固定基板の下部位置に設けられた係止部に回動可能に係止される。
【0021】
この実施態様によると、前面板の下端が固定基板の係止部を支点として回動可能であるので、前面板を固定基板の前面に被せる作業が容易となる。
なお、前面板の下端は、固定基板または庇板にネジにより止着することで支持するようにしてもよい。
【0022】
この発明のさらに好ましい実施態様においては、前面板の蓋板部は、下面に堰板部の上端に係止される係止部を備える。
【0023】
この実施態様によると、蓋板部をコーキング材が充填される空間部に被せたとき、係止部が堰板部の上端に係止されて位置決め固定されるので、空間部の上面の開口への蓋板部の施蓋作業が容易かつ確実に行える。なお、係止部の堰板部の上端への係止構造は種々の態様のものが考えられ、特定の態様のものに限定されない。
【0024】
好ましい実施態様においては、前面板の蓋板部の後端部上に、建物の壁面に止着される上板部が設けられる。上板部は、前面板の蓋板部の後端部に一体に連設されるか、前面板の蓋板部上に被せられる被せ板に設けられるもので、望ましくは、建物の壁面と対向する後面にコーキング材を充填して保持するための保持部を備える。なお、保持部に充填するコーキング材は、溝状の空間部に充填するコーキング材と同種のものであってもよく、異種のものであってもよい。
【0025】
この実施態様によると、保持部のコーキング材によってコーキング材が充填される溝状の空間部への雨水の浸入が阻止される。なお、上板部は蓋板部の施蓋状態を保持するために壁面に止着されるだけのもの、すなわち、保持部を備えていないものであってもよい。
【0026】
この発明による他の庇は、両側の開放端に被せられる端板をさらに含み、端板の固定基板及び前面板に対応する位置にはネジを通すネジ通し孔が設けられ、固定基板及び前面板にはネジが螺合するネジ穴が設けられる。
【0027】
この実施態様によると、両側の開放端が端板により塞がれるので、庇の設置位置の両側に建造物が存在しないような設置環境の場合に、端板によって開放部分より前面板の内側へ雨水が浸入するのが阻止される。
【0028】
端板は、両側の開放端を塞ぐだけのものであってもよく、庇板の側面に沿って先端まで延びる延出部を有するものであってもよい。この場合、延出部の庇板の先端部に対応する位置にはネジを通すネジ通し孔が設けられ、庇板にはネジが螺合するネジ穴が設けられる。
【発明の効果】
【0029】
この発明によれば、コーキング材の雨水や紫外線による劣化や脱落を防ぐことができ、コーキング材の交換を頻繁に行ったり、コーキング材を補充したりする必要がない。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【発明を実施するための形態】
【0031】
図1~
図3は、この発明の庇1の一実施形態の外観及び構成を示している。
図示例の庇1は、建物の採光用の窓90の真上位置に設置されているが、庇の設置場所は採光用の窓上に限定されない。また、
図1に示す施工形態は、庇1が単体で設置されたものであるが、例えば、
図14に示すように、高層ビルの窓の列に沿って複数の庇1を横並びに連ねるように設置してもよく、施工の態様は限定されない。
なお、以下の庇1の構造説明において、構成部材の壁面9に近い側は「後」、壁面9から遠い側は「前」と表現する。また、建物の壁面9の垂直方向に沿う方向を「上下」、建物の壁面9の水平方向に沿う方向を「左右」という。
【0032】
庇1は、庇板2と、庇板2の後端部を支持し建物の壁面9に固定される固定基板3と、固定基板3の前面に全長にわたって被せられる前面板4と、両側の開放端に被せられる左右一対の端板5,5とを備える。
ここで、「庇板2の後端部」とは、庇板2の後端縁およびその近傍の領域を指すもので、固定基板3が庇2を支持する部分は、図示例のように、必ずしも庇板2の後端縁を含む後端部である必要はない。
【0033】
庇板2は固定基板3と一体であり、この一体の部材はアルミニウムの押出成形品である。後述する前面板4及び端板5も、同様にアルミニウムの押出成形品である。
なお、固定基板3と庇板2と前面板4とは長さ(横幅)を揃えてあるが、例えば、固定基板3及び前面板4は庇板2より短いものであってもよく、長いものであってもよい。
また、この実施例の庇板2は、前端側が薄く後端側が厚い一枚物であるが、必ずしも一枚物に限定されず、複数の板材を前後方向に連結したような構成のものであってもよい。
【0034】
端板5は、庇の設置位置の両側に建造物が存在しないような設置場所で用いられるもので、側方に建物が存在するような設置場所では、雨水が側方から浸入するおそれがないため、必ずしも端板5を用いる必要はない。
端板5は、両側の開放端上に装着される本体部51と、庇板2の側面に沿って庇板2の先端まで延びる延出部52とを有する。
【0035】
端板5の固定基板3及び前面板4に対応する位置にはネジ50を通すネジ通し孔53,54が設けられ、固定基板3及び前面板4にはネジ50が螺合するネジ穴38,46が設けられる。また、延出部52の庇板2の先端部分に対応する位置にはネジ50を通すネジ通し孔55が設けられ、庇板2にはネジ50が螺合するネジ穴21が設けられる。
なお、端板5は、図示例の形態に限られるものではなく、例えば、本体部51のみで構成されるものであってもよい。
【0036】
固定基板3は、
図3及び
図5に示すように、アンカーボルト6及びナット60により建物の壁面9に取り付けられる取付板部30と、取付板部30の下端に庇板2の上面と直角をなすように庇板2と一体に連設される支持部31と、取付板部30の上端に連設され建物の壁面9との間にコーキング材7の充填が可能な溝状の空間部(以下、「溝空間」という。)33を形成する堰板部32とを有する。この溝空間33は、上面が開口しており、この開口よりコーキング材7の充填が行われる。この実施例では、コーキング材7として、不定形のものを用い、コーキングガンにより充填が行われるが、不定形のものに代えて定形のものを用いてもよい。
【0037】
取付板部30には、アンカーボルト6が挿通される複数のボルト挿通孔34が間隔をあけて横一列に設けられている。なお、取付板部30を建物の壁面9に取り付けるためのアンカーボルト6には種々の態様のものがあり、壁面の材質や構造等に応じて最適なものが採択される。
【0038】
図示例のアンカーボルト6は、建物の壁内に埋設される棒状のものであって、壁面9上に突出した部分にナット60をネジ込んで、固定基板3をナット60と壁面9との間で締付け固定する態様のものであるが、この種の態様のアンカーボルトに限らず、例えば、軸部の一端に頭部を有するものであって、壁を貫通させた軸部の先端にナットをネジ込んで、固定基板3を頭部と壁面9との間で締付け固定する態様のものであってもよい。
【0039】
取付板部30は、上端が堰板部32の底部32aと連続し、下端が支持部31の上端に連続している。堰板部32の底部32a及び支持部31の取付板部30との連なり部31aは、取付板部30の後面が壁面9から離れて位置するように、後方へ同じ寸法だけ突出して、壁面9に突き当たっており、これによって、取付板部30の後面と壁面9との間に帯状の隙間Sが形成される。
【0040】
図6は、上記の隙間Sが存在しない実施例であり、取付板部30の厚みを厚く設定し、堰板部32の底部32a及び連なり部31aは後方へ突出していない。取付板部30の後面は建物の壁面9に密接する。
【0041】
図3及び
図6の各実施例では、取付板部30と支持部31との連なり部31aは前方へ突出させており、その突出部分の先端部分を直角に下方へ曲げることで、鉤状をなす係止部37が一体に形成されている。この係止部37には、後述する前面板4の第1の係止部41が係合するようになっている。なお、係止部37は、図示の形態のものに限定されず、例えば
図7に示す実施例のような形態のものであってもよい。
【0042】
前面板4は、固定基板3の取付板部30と対向し平行をなす本体部40と、本体部40の下端に一体に形成される第1の係止部41と、本体部40の上端に一体に形成される蓋板部42とを有する。本体部40は、平板状であり、前面板4の装着時、アンカーボルト6に螺合したナット60が脱落しないように、アンカーボルト6の端面と近接して位置する。
【0043】
第1の係止部41は、本体部40の下端をU字状に折り返して形成されたものであり、折り返し部分が上向きの鉤状部41aとなっている。この鉤状部41aは、固定基板3の前面に突設された下向きの鉤状をなす係止部37の内側に引っ掛かるようにして係止部37と係合する。なお、図示例では、第1の係止部41は固定基板3の下部位置に係止されることによって支持されるが、後述する
図11の実施例のように、庇板2の後端部の上面に止着されることによって支持されるよう構成してもよい。
【0044】
蓋板部42は、平板状であって本体部40に対して鈍角をなすように曲げられており、固定基板3の堰板部32と建物の壁面9との間の溝空間33の開口上に被せられている。この蓋板部42によって溝空間33は塞がれたものとなる。なお、この実施例では、蓋板部42は本体部40の上端に一体に形成されているが、蓋板部42と本体部40とは必ずしも一体である必要はなく、屈曲可能に連結したものであってもよい。
【0045】
蓋板部42の下面には、固定基板3の堰板部32の上端に係止される第2の係止部44が形成されている。この第2の係止部44は、
図4(A)に示すように、固定基板3の全長にわたる突条をもって構成されており、
図4(B)に示すように、前面板4の下端の第1の係止部41を固定基板3の下方より係止部37に係合させた後、この係合部分を支点として前面板4を壁面9の側へ回動して第2の係止部44を堰板部32の上端の後面側へ係合させる。これにより、前面板4が固定基板3の前面に被せられ、かつ蓋板部42が溝空間33の開口を塞いだ状態に位置決め固定される。
【0046】
なお、第2の係止部44の堰板部32の上端との係止構造は、図示の態様に限定されず、例えば、
図7及び
図8に示す態様のものであってもよい。
【0047】
図7に示す実施例では、第2の係止部44は、突条の先端に鋭角状の引っ掛かり部が形成されており、この引っ掛かり部が堰板部32の上端に係合する。なお、同図に示す実施例では、溝空間33内に仕切壁部35が形成され、これにより係合部分にコーキング材7が入り込まないようになっている。
【0048】
図8に示す実施例では、堰板部32の上端に凹溝39が形成されており、その凹溝39に突条よりなる第2の係止部44が係入するものである。
【0049】
前面板4は、蓋板部42の後端部に連設された上板部43をさらに備える。上板部43は、建物の壁面9に沿って蓋板部42の上方へ延びている。上板部43の後面と壁面9との間には隙間が形成され、この隙間はコーキング材8を充填して保持するための保持部45を構成する。上板部43には、上板部43を建物の壁面9にネジ80により固定してコーキング材8を保持するための複数のネジ通し孔43aが間隔をあけて横一列に形成されている。
【0050】
この実施例では、コーキング材8は、上板部43と壁面9との間をシールするもので、例えば、ポリ塩化ビニルを基材とした独立気泡構造の発泡シール材などの定形のものが用いられるが、必ずしも定形のものに限定されず、不定形のものであってもよい。
【0051】
上記の実施例では、上板部43は前面板4の蓋板部42の後端部に一体に連設されているが、
図9に示されるように、前面板4の蓋板部42上に被せられる被せ板120に形成されたものであってもよい。この被せ板120は前端縁部121が屈曲し前面板4の本体部40に係合するものである。なお、上板部43は、
図3の実施例と同様の構成であり、ここでは詳細な説明を省略する。
【0052】
図10は、上記した上板部43を備えていない実施例である。この実施例では、固定基板3の取付基板30の、建物の壁面9と対向する後面に、コーキング材8を充填するための凹部130を形成している。凹部130はアンカーボルト6の位置に形成しているが、これに限らず、アンカーボルト6の上方位置に形成してもよい。
【0053】
図11は、固定基板3と庇板2とが独立している態様の実施例を示している。
図示例の固定基板3は、建物の壁面9に固定される取付板部30と、取付板部30に一体に形成され庇板2の後端部を支持するための支持部31とを備える。支持部31は、庇板2の後端部を上下より支持する第1、第2の支持板部31A,31Bを有しており、庇板2の後端部は第1、第2の支持板部31A,31B間に上下より挟まれた状態でボルト61及びナット62により締付け固定される。
【0054】
取付板部30には、第1の支持板部31Aの上方位置と、第1、第2の支持板部31A,31B間に、それぞれアンカーボルト6,6が挿通される複数のボルト挿通孔34が間隔をあけて横一列に設けられている。
【0055】
取付板部30の上端には、底部32aを有する堰板部32が連設されている。堰板部32は、建物の壁面9との間にコーキング材7の充填が可能な溝空間33を形成する。
【0056】
固定基板3の前面に前面板4が全長にわたって被せられる。前面板4は、湾曲形状の本体部40と、本体部40の下端に一体に形成される止着部48と、本体部40の上端に一体に形成される蓋板部42と、蓋板部42の後端部に連設された上板部43とを有する。止着部48は、庇板2の後端部の上面にネジ22により止着される。
【0057】
蓋板部42は、平板状であって本体部40に対して鈍角をなすように曲げられており、固定基板3の堰板部32と建物の壁面9との間の溝空間33の上面の開口上に被せられている。
【0058】
蓋板部42の下面には、固定基板3の堰板部32の上端に係止される係止部44が形成されている。図示の係止部44は固定基板3の全長にわたる突条をもって構成されているが、係止構造はこれに限定されない。
【0059】
上板部43の後面と壁面9との間には隙間が形成され、この隙間はコーキング材8を充填して保持するための保持部45を構成する。上板部43には、上板部43を建物の壁面9にネジ80により固定してコーキング材8を保持するための複数のネジ通し孔43aが間隔をあけて横一列に形成されている。
なお、図中、56は、第2の支持板部31B上に被せられる下カバーであり、57は、前面板4及び下カバー56に設けられ図示しない端板を固定するためのネジを螺合させるネジ穴である。
【0060】
上記した
図11の実施例では、前面板4は下端が庇板2の後端部の上面にネジ止めされているが、
図12に示す実施例のように、第1の支持板部31Aの先端と前面板4の下端とにそれぞれ係止部37,41を形成し、前面板4の下端の係止部41を第1の支持板部31Aの先端の係止部37に係止されるようにしてもよい。
【0061】
また、
図11及び
図12の各実施例では、固定基板3は第1の支持板部31Aの上方位置と、第1、第2の支持板部31A,31B間とがそれぞれアンカーボルト6及びナット60により固定されているが、
図13に示す実施例のように、第1,第2の支持板部31A,31B間で固定基板3をアンカーボルト6及びナット60により固定するものであってもよい。この実施例では、溝空間33と上板部43の保持部45とにコーキング材7,8を充填しているが、上板部43を設けずに固定基板3の取付板部30に凹部130(図中、二点鎖線で示す。)を形成して凹部130にコーキング材8を充填するようにしてもよい。
【0062】
図1~
図10に示す実施例では、固定基板3をアンカーボルト6及びナット60により建物の壁面9に固定することで、庇1は庇板2が建物の壁面9より張り出すように壁面9に設置される。
また、
図11~
図13に示す実施例では、固定基板3をアンカーボルト6及びナット60により建物の壁面9に固定した後、第1、第2の支持板部31A,31B間に庇板2を挿入してボルト61及びナット62により庇板2の後端部を保持することで、庇1は庇板2が建物の壁面9より張り出すように壁面9に設置される。
【0063】
図4(A)に示すように、固定基板3を壁面9に取り付けることにより、固定基板3の堰板部32と建物の壁面9との間にコーキング材7の充填が可能な上面開口の溝空間33が形成され、この溝空間33にコーキング材7を充填する。
【0064】
次に、固定基板3の前面に前面板4を被せるのに、
図4(B)に示すように、まず、前面板4を傾けた状態で前面板4の第1の係止部41を固定基板3の係止部37に係合させる。この状態での係合は、緩い係合であるので、前面板4は下端が固定基板3に拘束されるものの、係合部分を支点として前面板4を回動することが可能である。
【0065】
かくして、前面板4を壁面9の側へ回動することで、固定基板3の前面に前面板4を容易に被せることができ、また、コーキング材7が充填される溝空間33を前面板4に設けられた蓋板部42により塞ぐことができる。施蓋によってコーキング材7は露出せず、雨水や紫外線の影響を受けてコーキング材7が劣化するのを防ぐことができ、また、コーキング材7が溝空間33より脱落するおそれもない。
【0066】
さらに、前面板4は、蓋板部42の後端部に連設される上板部43を備え、上板部43は、建物の壁面9と対向する後面にコーキング材8を充填して保持するための保持部45を備えるので、保持部45内に保持されたコーキング材8によって、コーキング材7が充填される溝空間33への雨水の浸入が防止される。
【0067】
さらにまた、前面板4の係止部41の鉤状部分41aと固定基板3の係止部37とが緊密に係合することで、この係合部分からの雨水の浸入も抑えられる。
また、両側の開放端が端板5により塞がれるので、開放端より雨水が浸入するのが阻止される。
【0068】
以上、この発明の実施形態について説明したが、この発明は上記した実施形態に限定されるものではなく、この発明の趣旨を逸脱しない限りにおいて種々の変更が可能である。
【符号の説明】
【0069】
1 庇
2 庇板
3 固定基板
4 前面板
5 端板
6 アンカーボルト
7,8 コーキング材
21,38,46 ネジ穴
30 取付板部
31 支持部
32 堰板部
33 溝状の空間部(溝空間)
34 ボルト挿通孔
37 係止部
41,44 係止部
42 蓋板部
43 上板部
45 保持部
50 ネジ
53,54,55 ネジ通し孔
60 ナット
80 ネジ