(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022065643
(43)【公開日】2022-04-27
(54)【発明の名称】半導体装置の製造方法、基板処理装置
(51)【国際特許分類】
H01L 21/31 20060101AFI20220420BHJP
H05H 1/00 20060101ALN20220420BHJP
【FI】
H01L21/31 C
H05H1/00 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021167317
(22)【出願日】2021-10-12
(31)【優先権主張番号】63/092462
(32)【優先日】2020-10-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】512144771
【氏名又は名称】エーエスエム アイピー ホールディング ビー.ブイ.
(74)【代理人】
【識別番号】100175178
【弁理士】
【氏名又は名称】桑野 敦司
(72)【発明者】
【氏名】大森 拓
【テーマコード(参考)】
2G084
5F045
【Fターム(参考)】
2G084DD15
2G084DD55
2G084HH02
2G084HH05
2G084HH21
2G084HH22
2G084HH28
2G084HH29
2G084HH34
2G084HH52
5F045AA08
5F045AA15
5F045EE19
5F045EH14
5F045EH19
5F045GB08
5F045GB15
5F045GB16
(57)【要約】
【課題】本開示は、リアルタイムでプラズマ発光強度などを監視、調整できる半導体装置の製造方法と、基板処理装置とを提供することを目的とする。
【解決手段】プラズマを用いた基板への処理において、RFプレートへの電力印加に関する波形であるRF波形を、リアクタからEther CAT(イサーキャット又はイーサキャット)を通じてリアルタイムで取得することと、前記RF波形を利用して、前記RFプレートに印加する電力を調整することと、を備える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
プラズマを用いた基板への処理において、
RFプレートへの電力印加に関する波形であるRF波形を、リアクタからEther CATを通じてリアルタイムで取得することと、
前記RF波形を利用して、前記RFプレートに印加する電力を調整することと、を備えた半導体装置の製造方法。
【請求項2】
前記RF波形の取得では、前記RFプレートへの電力印加を開始してから、予め定められた第1時刻までに前記RFプレートへ印加されたRF波形を前記Ether CATを通じてリアルタイムで取得し、
前記調整では、前記RF波形と予め定められた目標波形とを比較し、前記RF波形の電力値が前記目標波形の電力値より小さければ、前記第1時刻後に前記RFプレートへ印加される電力が目標に近づくように前記RFプレートに印加する電力を増大させる、請求項1に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項3】
前記RF波形の取得と、前記調整は、PEALDプロセスにおける前記RFプレートへの電力印加の度に行う、請求項1又は2に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項4】
前記RF波形の取得は、50msec未満の時間分解能で行うことを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項5】
前記リアクタから前記Ether CATを通じてリアルタイムで取得された前記RF波形が、あらかじめ定められた範囲を超えているときはアラームを出す、請求項1から4のいずれか1項に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項6】
前記RFプレートへの電力印加が始まってから終わるまでのRF波形のデータを、Unique Platform Controller(UPC)のトレンドデータに関連付ける、請求項2に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項7】
前記調整では、RF-ONから前記RFプレートに印加された電力が安定するまでの時間である安定化時間を求め、前記安定化時間から、次回以降前記RFプレートに電力印加すべき時間である必要電力印加時間を求める、請求項1に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項8】
前記安定化時間の終期は、前記RF波形が上限閾値と下限閾値の間を推移する時間が予め定められた時間閾値に達したときである、請求項7に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項9】
RFプレートに電力印加することで基板にプラズマ処理を施すリアクタと、
前記RFプレートに印加された電力に関する波形であるRF波形を、前記リアクタからEther CATを通じてリアルタイムで取得し、前記RF波形を利用して、前記RFプレートに印加する電力を調整するPMCと、を備えたことを特徴とする基板処理装置。
【請求項10】
前記リアクタから前記Ether CATを通じてリアルタイムで取得された前記RF波形が、あらかじめ定められた範囲を超えているときはアラームを出すUPCを備えた請求項9に記載の基板処理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は半導体装置の製造方法と基板処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、PEALD装置ではPLC loggerと呼ばれる装置を使用して、プラズマ発光に関するアナログデータを監視していた。プラズマ発光に関するデータとは、RF関係のデータと言いかえることができる。例えば、プラズマの発光強度(電圧)のデータはPLC loggerでのみ取り込んでいる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
このPLC loggerは、プラズマ発光に関するアナログデータを例えば50msecの時間分解能で取り込み、その後モニタデータをProcess Module Controller(PMC)へ報告する。PMCはそのデータをログファイルで保存する。このシステムでは、監視対象となるアナログデータを上位コントローラであるUnique Platform Controller(UPC)にリアルタイムで報告することができず、プロセス毎にデータを纏めて報告することになる。したがって、プラズマの発光強度などについては、タイムスタンプで事後的に確認するしかない。
【0005】
そのため、プラズマ発光に関するアナログデータは、UPCのトレンドデータにリアルタイムで紐づけできない。つまり、レシピ制御へのフィードバッグができない。
【0006】
また、従来の基板処理装置では、PLC logger(PLCロガー)の内でデータ取り込みとアラーム判定をするためPLC loggerのソフトウェアが必要となる。そして、PLC loggerは、モニタ実行時はPMCのレシピ実行部と同期をとる必要があるため、モニタ機能を拡張する場合は様々な制限が出る。例えばレシピ設定でより細かくプラズマに関するアナログデータを監視したい場合、PLC loggerではレシピ内容をそのまま受け取れないので、追加設定をPLC loggerに伝えるための情報の追加が必要になり、新しい設定を追加するたびに、ソフトウェアを大幅に変更する必要がある。
【0007】
本開示は、上述のような課題を解決するためになされたもので、リアルタイムでプラズマ発光強度を監視できる半導体装置の製造方法と基板処理装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本開示に係る半導体装置の製造方法は、プラズマを用いた基板への処理において、RFプレートへの電力印加に関する波形であるRF波形を、リアクタからEther CATを通じてリアルタイムで取得することと、前記RF波形を利用して、前記RFプレートに印加する電力を調整することと、を備える。
【0009】
本発明のその他の特徴は以下に明らかにする。
【発明の効果】
【0010】
リアルタイムでプラズマ発光強度を監視できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【発明を実施するための形態】
【0012】
実施の形態.
図1は、基板処理装置の構成例を示す図である。この基板処理装置は、リアクタ10を備えている。リアクタ10は、例えばサセプタ10aとRFプレート10bの平行平板構造を有している。一例によれば、リアクタ10は、サセプタ10aとRFプレート10bの間にガスを提供するガス供給システムを備える。さらに、RFプレート10bに高周波電力を印加するRFユニット10cが提供されている。一例によれば、RFユニット10cは、RFジェネレータと、RFジェネレータとRFプレート10bを接続するマッチングボックスと、を備える。
【0013】
リアクタ10は、RFプレートに電力印加することで、基板にプラズマ処理を施す様々なタイプのリアクタが該当する。例えばRFプレートに2つの異なる高周波電力を印加したり、RFプレートに設けたスリットを介して基板処理に用いるガスを基板に提供したりすることができる。
【0014】
このリアクタ10は、Ether CATスレーブであるアナログインプットユニット(AIユニット)12を介して、PMC14に接続されている。一例によれば、PMC14はレシピ実行部14aを備えている。レシピ実行部14aは処理回路を含み、その処理回路は専用のハードウェアであっても、メモリに格納されるプログラムを実行するCPU(Central Processing Unit、中央処理装置、処理装置、演算装置、マイクロプロセッサ、マイクロコンピュータ、プロセッサ、DSPともいう)であってもよい。
【0015】
図2は、処理回路が専用のハードウェアである場合のレシピ実行部14aのブロック図である。レシピ実行部は、受信装置20aと、処理回路20bと、出力装置20cを備える。受信装置20aは、レシピを使用した基板処理で測定されたアナログデータを受信する。受信装置20aは、例えば、RFプレート10bへの電力印加に関する波形であるRF波形を、リアクタ10からEther CATを通じてリアルタイムで取得する。RF波形とは、例えば、進行波電力、反射波電力、RFプレートに印加される電圧値、又はRFプレートに流れる電流値などの波形である。
【0016】
処理回路20bは、例えば単一回路、複合回路、プログラム化したプロセッサ、並列プログラム化したプロセッサ、ASIC、FPGA、またはこれらを組み合わせたものが該当する。レシピ実行部の各機能をそれぞれの処理回路で実現してもよいし各機能をまとめて処理回路で実現してもよい。一例によれば、処理回路20bは、受信装置20aで取得したRF波形を利用して、RFプレート10bに印加する電力を調整するコントローラとして機能する。
【0017】
出力装置20cは、基本的にはレシピの内容に基づきRFユニット10cに対して指令を出す。一例によれば、この指令には、RFパワー、RFパワーの印加時間、RFパワーの印加の周期、RFパワーの印加回数、などが含まれる。さらに、出力装置20cは、上述のとおり処理回路20bが印加電力を調整した場合には、その調整を実現するための指令をRFユニット10cに出す。一例によれば、出力装置20cからADSボード18と呼ばれるインターフェースを介してRFユニット10cにRF関係のすべての指示が出される。
【0018】
図3は、処理回路がCPUである場合のレシピ実行部14aの構成例を示すブロック図である。この場合、上述の一連の処理はプログラム制御される。レシピに基づくRFユニット10cへの指令と、RFプレート10bに印加する電力の調整が自動的に遂行される。
図3のように処理回路30bがCPUの場合は、レシピ実行部14aの各機能は、ソフトウェア、ファームウェア、またはソフトウェアとファームウェアとの組み合わせにより実現される。ソフトウェア又はファームウェアはプログラムとして記述され、コンピュータで読み取り可能な記憶媒体30cに格納される。上述の電力調整のための情報も記憶媒体30cに格納される。一例によれば、このプログラムは、レシピに基づきRFユニット10cに指令を出すことと、上述の電力調整を反映した指令をRFユニット10cに出すことと、をコンピュータに実行させる。
【0019】
図2,3どちらの構成においても、レシピ実行部14aは、レシピの実行のための指令と、プラズマ処理の調整のための指令を、RFユニット10cに出す。
【0020】
図1には、PMC14に接続されたUPC16が図示されている。一例によれば、UPC16は、PMC14で作成したアナログデータのトレンドデータを保存し、それを監視する。一例によれば、PMC14は異常検知用コントローラとして機能する。PMC14は、算出部、記憶部、アラーム判定部、及びセンサ監視部などを備え得る。一例によれば、PMC14はリアクタ10からEther CATを通じてリアルタイムで取得されたRF波形が、あらかじめ定められた範囲を超えているときはアラームを出す。一例によれば、UPC16はPMC14からアラーム信号を受け、それを表示または記録する。
【0021】
図4は、RFプレート10bに印加する電圧の調整例を示す電圧波形図である。実線の波形は目標波形である。時刻t1にRFプレート10bへのRFパワーの印加が始まる。PMC14は、RFプレート10bに電力印加したことで得られたRF波形を、リアクタ10からEther CATを通じてリアルタイムで取得する。PMC14が取得した電圧波形は破線で示されている。目標波形では、時刻t1から時刻t2まで電圧が急上昇するスパイクが生じ、その後、電圧Vpを維持する。一例によれば、電圧Vpはプラズマを生じさせるのに十分な電圧である。
【0022】
PMC14は、リアルタイムでRF波形を取得しつつ、そのRF波形を利用して、RFプレート10bに印加する電力を調整することの要否を判定する。
図4の例では、PMC14は、RFプレート10bへの電力印加を開始した時刻t1から、予め定められた第1時刻t2までのRF波形を、予め定められた目標波形と比較し、RF波形の値が目標波形の値より小さければ、RFプレートに印加する電力の調整が必要と判定する。
図4の場合、時刻t1-t2の破線の波形は、同期間の目標波形と比べると電圧不足であるので、このままでは、プラズマを生じさせるのに必要な電圧Vpに到達せず、プラズマが生成されないおそれがある。そこで、PMC14は、第1時刻t2後にRFプレートへ印加される電力が目標に近づくようにRFプレート10bに印加する電力を増大させる。RFプレートへの印加電力の増大量は、電圧がVpに達する程度にすることができる。これにより、
図4の例では、時刻t2の後に、破線のとおり電圧が上昇し、電圧Vpに達している。なお、波形の上には、フォワードパワーを時刻t2のタイミングで上昇させたことも示されている。
【0023】
別の例によれば、PMC14は、RF波形と予め定められた目標波形とを比較し、RF波形の電力値が目標波形の電力値より大きければ、第1時刻t2の後にRFプレートへ印加される電力が目標に近づくようにRFプレートに印加する電力を減少させる。さらに別の例によれば、PMCは、RF波形と目標波形の差が予め定められた値を超えたときに、その差を小さくするようにRFプレートに印加する電力を調整する。この例では時刻t2において電力調整の要否を判定したが、時刻t2よりも前までのデータで電力調整の要否を判断してもよいし、時刻t2の後までのデータで電力調整の要否を判断してもよい。
【0024】
一例によれば、RF波形の取得と、電力の調整は、PEALDプロセスにおけるRFプレートへの電力印加の度に行うこととしてもよい。そうすると、RFパワーがRFプレートに印加されるたびにプラズマの生成を確実にすることができる。なお、RF波形の取得は、50msec未満の時間分解能で行うことができる。
【0025】
このように、Ether CATというプロトコルをRFの管理に用いることで、PMC14でRF波形をリアルタイムでモニタし、モニタ結果に応じた電力調整を可能とする。このような例によれば、PMC14内のアプリケーション(モジュール)、具体的にはレシピ実行部14aだけで、監視システムを構築することが可能となる。このため、モニタ機能の拡張性を高めることができ、例えば上述した電力調整、又は後述する電力調整が可能となる。一例によれば、PMC14においてRF波形をリアルタイムで監視し、アラームの要否を判定する。例えば、リアクタ10からEther CATを通じてリアルタイムで取得されたRF波形が、あらかじめ定められた範囲を超えているときはPMC14はリアルタイムでアラームを出す。UPC16は、PMC14からアラームを受け、それを表示または記録することで、ユーザがリアルタイムでアラームを知ることができる。さらに、RFプレート10bへの電力印加が始まってから終わるまでのRF波形のデータを、UPCのトレンドデータに関連付けることもできる。
【0026】
図5は、別の例に係るRFプレートに印加する電力の調整を示す図である。実線は実際に測定された電圧波形である。この調整では、まず、RF-ONからRFプレートに印加された電力が安定するまでの時間である安定化時間を求める。RFプレートに印加された電圧がアッパリミット(UL)とローワーリミット(LL)の間にある時間が時間閾値を超えたときである時刻Taが、安定化時間の終期である。RF波形についていえば、安定化時間の終期は、RF波形が上限閾値と下限閾値の間を推移する時間が予め定められた時間閾値に達したときである。
【0027】
安定した電圧を提供する時間を確保することは、意図するプラズマプロセスを実現することを可能とする。そこで、PMC14は、安定化時間から、次回以降RFプレートに電力印加すべき時間である必要電力印加時間を求める。例えば安定化時間と、あらかじめ定められた時間との和を、必要電力印加時間とすることができる。そして、PMC14からRFユニット10Cに、必要電力印加時間だけRFプレートに電力印加するよう指令を出す。これにより最適なRF印加時間を実現できる。PMC14では、上述のとおり、Ether CATによってリアルタイムでRF波形を見られるので、複数のレシピを順次試していき、最適な設定を作ることができる。PLC loggerを用いたシステムでこれを行おうとするとPLC loggerにログデータがたまり、PLC loggerが大きなデータを保存できないので、PLC loggerはPMCへ頻繁にログデータを送ることになってしまう。さらに、PMCはログデータをログファイルとしてUPCの所定の領域に書き込む。PMCによる頻繁な書き込み動作は、UPCを高負荷とする。UPCに保存されたログファイルは、タイムスタンプの参照を介してのみ、チェックできる。しかし、PMCによってRF波形をリアルタイムで監視することは、RF波形をグラフ化して設定を調整することを可能とする。
【0028】
上述の基板処理装置は、例えばPEALD装置として提供される。
図4、5を参照しつつ説明した調整例は一例であり、RF波形のリアルタイムモニタによって、RFに関する他のパラメータを調整することもできる。
【符号の説明】
【0029】
10 リアクタ、 10b RFプレート、 12 AIユニット、 14 PMC、 20b 処理回路