(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022065645
(43)【公開日】2022-04-27
(54)【発明の名称】透湿防水性樹脂用ポリウレタン樹脂、透湿防水性樹脂用ポリウレタン樹脂水性分散体、シート材料及び透湿防水布帛
(51)【国際特許分類】
C08G 18/48 20060101AFI20220420BHJP
C08G 18/00 20060101ALI20220420BHJP
C08G 65/20 20060101ALI20220420BHJP
【FI】
C08G18/48 054
C08G18/00 C
C08G65/20
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021168083
(22)【出願日】2021-10-13
(31)【優先権主張番号】P 2020174279
(32)【優先日】2020-10-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000002288
【氏名又は名称】三洋化成工業株式会社
(72)【発明者】
【氏名】市原 栄次
(72)【発明者】
【氏名】柳田 正毅
【テーマコード(参考)】
4J005
4J034
【Fターム(参考)】
4J005AA04
4J005AA08
4J005BB02
4J034CA04
4J034CA22
4J034CB03
4J034CB07
4J034CD01
4J034DA01
4J034DB03
4J034DB07
4J034DG03
4J034DG06
4J034HA01
4J034HA07
4J034HA08
4J034HB12
4J034HC03
4J034HC09
4J034HC12
4J034HC22
4J034HC46
4J034HC52
4J034HC61
4J034HC64
4J034HC65
4J034HC67
4J034HC71
4J034HC73
4J034QB19
4J034QC05
4J034RA03
4J034RA09
(57)【要約】
【課題】水膨潤性を従来の樹脂より抑制した透湿防水性樹脂用ポリウレタン樹脂を提供する。
【解決手段】オキシエチレン基及びオキシテトラメチレン基を有するポリエーテルポリオール(A)と、有機イソシアネート(C)とを構成原料として含むポリウレタン樹脂であって、前記構成原料中の前記ポリエーテルポリオール(A)の含有量が前記構成原料の重量に基づき40重量%~90重量%である透湿防水性樹脂用ポリウレタン樹脂。ポリエーテルポリオール(A)が水に不溶であることが好ましい。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
オキシエチレン基及びオキシテトラメチレン基を有するポリエーテルポリオール(A)と、有機イソシアネート(C)とを構成原料として含むポリウレタン樹脂であって、前記構成原料中の前記ポリエーテルポリオール(A)の含有量が前記構成原料の重量に基づき40重量%~90重量%である透湿防水性樹脂用ポリウレタン樹脂。
【請求項2】
前記ポリエーテルポリオール(A)が水に不溶である請求項1に記載の透湿防水性樹脂用ポリウレタン樹脂。
【請求項3】
前記ポリウレタン樹脂中のオキシエチレン基の含有量が前記ポリウレタン樹脂の重量に基づいて10~40重量%である請求項1または2に記載の透湿防水性樹脂用ポリウレタン樹脂。
【請求項4】
前記ポリウレタン樹脂中のウレタン基及びウレア基の合計含有量が、ポリウレタン樹脂の重量に基づいて0.5~3.8mmol/gである請求項1~3のいずれか1項に記載の透湿防水性樹脂用ポリウレタン樹脂。
【請求項5】
水と請求項1~4のいずれか1項に記載のポリウレタン樹脂とを含有するポリウレタン樹脂水性分散体であって、
前記ポリウレタン樹脂がイソシアネート基末端ウレタンプレポリマー(P)と、鎖伸長剤(D)とを反応させてなるポリウレタン樹脂であり、
イソシアネート基末端ウレタンプレポリマー(P)は、オキシエチレン基及びオキシテトラメチレン基を有するポリエーテルポリオール(A)と、アニオン性基を有する活性水素含有化合物(b1)及び/又はカチオン性基を有する活性水素含有化合物(b2)と、有機イソシアネート(C)とを構成原料とするウレタンプレポリマーである透湿防水性樹脂用ポリウレタン樹脂水性分散体。
【請求項6】
請求項5に記載の透湿防水性樹脂用ポリウレタン樹脂水性分散体を製膜してなるシート材料。
【請求項7】
請求項6に記載のシート材料と前記シート材料の少なくとも一方の面の上に設けた繊維質基材とを含む透湿防水布帛。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は透湿防水性樹脂用ポリウレタン樹脂水性分散体、シート材料及び透湿防水布帛に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、透湿防水素材に用いる透湿性材料としてはポリテトラフルオロエチレン樹脂を延伸して多孔質化させたシートやポリウレタン樹脂の湿式製膜フィルムのような微多孔質シートを利用するもの(例えば、特許文献1参照)等が知られている。しかしながら、従来の多孔質のシートは、汗、汚れ等により目詰まりが発生し透湿性が低下するという問題や、充分な防水性が得られないという問題がある。このような問題点を解決するものとして、親水性を有する透湿性ポリウレタン樹脂をコーティングした無孔質シートが提案されている(例えば、特許文献2参照)。これらの透湿性ポリウレタン樹脂には、親水性セグメントであるポリオキシエチレングリコールや、ポリオキシエチレンとポリオキシプロピレンのブロック共重合体等のポリオール成分が導入されている。
透湿防水性布帛の製造方法としては、離型紙上に表皮層用ウレタン樹脂を塗布、乾燥し、次いでこの上に接着剤を塗布、乾燥したのち、繊維布帛と貼り合わせて熱圧着する方法が一般的である。
従来の透湿防水布帛の製造方法においてはジメチルホルムアミド、トルエン、メチルエチルケトンなどの有機溶剤に溶解された親水性セグメントを有するポリウレタン樹脂が使用されており、防水布帛は乾式法で製造されるため、製造時に、排水及び排気中に、多量の溶剤が放出されることがある。このような事情から、作業環境、水質汚染、大気汚染を防止するために有機溶剤を含まない水性のポリウレタン樹脂を用いた表皮層が検討されている。
しかしながら表皮層として水性のポリウレタン樹脂を用いた場合、水に濡れると膨潤し、衣料が膨れて外観不良が発生したり、剥離したりする問題がある。このような問題を解決するものとして、所定量のカルボキシル基を含有する水性ポリウレタン樹脂を表皮層とする技術が検討されている(例えば、特許文献3参照)。
特許文献3に記載の技術によれば、カルボキシル基と架橋剤とを反応させることによる耐水性を向上が可能ではあるが、水膨潤性の抑制効果が不十分であった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開昭56-26076号公報
【特許文献2】特開昭64-62320号公報
【特許文献3】特開2004-300178号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は上記問題点に鑑みてなされたものであり、本発明の課題は、、従来の樹脂よりも水膨潤性を抑制した透湿防水性樹脂用ポリウレタン樹脂を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは、前記課題を解決すべく鋭意検討した結果、本発明に到達した。すなわち、本発明は、オキシエチレン基及びオキシテトラメチレン基を有するポリエーテルポリオール(A)と、有機イソシアネート(C)とを構成原料として含むポリウレタン樹脂であって、前記構成原料中の前記ポリエーテルポリオール(A)の含有量が前記構成原料の重量に基づき40重量%~90重量%である透湿防水性樹脂用ポリウレタン樹脂;水と前記ポリウレタン樹脂とを含有するポリウレタン樹脂水性分散体であって、前記ポリウレタン樹脂がイソシアネート基末端ウレタンプレポリマー(P)と、鎖伸長剤(D)とを反応させてなるポリウレタン樹脂であり、イソシアネート基末端ウレタンプレポリマー(P)は、オキシエチレン基及びオキシテトラメチレン基を有するポリエーテルポリオール(A)と、アニオン性基を有する活性水素含有化合物(b1)及び/又はカチオン性基を有する活性水素含有化合物(b2)と、有機イソシアネート(C)とを構成原料とするウレタンプレポリマーである透湿防水性樹脂用ポリウレタン樹脂水性分散体;前記透湿防水樹脂用ポリウレタン樹脂水性分散体を製膜してなるシート材料;並びに前記シート材料と当該シート材料の少なくとも一方の面の上に設けた繊維室基材とを含む透湿防水布帛である。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、従来の樹脂よりも水膨潤性を抑制した透湿防水性樹脂用ポリウレタン樹脂を提供することができる。これにより、本発明の透湿防水性樹脂用ポリウレタン樹脂を含有する透湿防水性樹脂用ポリウレタン樹脂分散体を製膜してなるシート材料は、水膨潤性抑制効果に優れる。
【発明を実施するための形態】
【0007】
<透湿防水性樹脂用ポリウレタン樹脂(U)>
本発明における透湿防水性樹脂用ポリウレタン樹脂(U)は、オキシエチレン基及びオキシテトラメチレン基を有するポリエーテルポリオール(A)と、有機イソシアネート(C)とを構成原料として含むポリウレタン樹脂である。本発明の透湿防水性樹脂用ポリウレタン樹脂(U)は、当該ポリウレタン樹脂(U)を構成する構成原料を反応させてなる樹脂である。本明細書においては、「透湿防水性樹脂用ポリウレタン樹脂(U)」を「ポリウレタン樹脂(U)」と呼ぶことがある。
【0008】
透湿防水性樹脂用ポリウレタン樹脂(U)の構成原料であるオキシエチレン基及びオキシテトラメチレン基を有するポリエーテルポリオール(A)[以下「ポリエーテルポリオール(A)」ともいう]としては、例えば2価以上の活性水素を含有する化合物のエチレンオキサイド(EO)及びテトラヒドロフラン(THF)付加物等が挙げられる。
【0009】
ポリエーテルポリオール(A)としては、炭素数2~20のジオールのEO及びTHF付加物{例えば、エチレングリコールのEO及びTHF付加物、1,3-プロピレングリコールのEO及びTHF付加物、1,4-ブタンジオールのEO及びTHF付加物、1,5-ペンタンジオールのEO及びTHF付加物及び1,6-ヘキサンジオールのEO及びTHF付加物等}、炭素数2~20のトリオールのEO及びTHF付加物(例えばグリセリンのEO及びTHF付加物等)、活性水素を2個以上有する炭素数1~20のアミンのEO及びTHF付加物(例えばエチレンジアミンのEO及びTHF付加物等)等が挙げられる。
これらのポリエーテルポリオール(A)のうち、得られるシート材料の風合い及び製造の容易さの観点から、好ましくは炭素数2~20のジオールのEO及びTHF付加物であり、より好ましくは、エチレングリコールのEO及びTHF付加物、1,3-プロピレングリコールのEO及びTHF付加物及び1,4-ブタンジオールのEO及びTHF付加物からなる群より選ばれる少なくとも1種であり、更に好ましくはエチレングリコールのEO及びTHF付加物及び/又は1,4-ブタンジオールのEO及びTHF付加物である。
【0010】
ポリエーテルポリオール(A)は、好ましくは、2価以上の活性水素含有化合物、EO及びTHFを触媒の存在下に重合してなるポリエーテルポリオールである。ポリエーテルポリオール(A)は、触媒を用い、2価以上の活性水素含有化合物を出発物質とし、エチレンオキサイドとテトラヒドロフランとを重合して得ることができる。触媒としては、酸性物質を好ましく用いることができ、例えばルイス酸、固体酸、超強酸等を用いることができる。
【0011】
ルイス酸としては、ホウ素、アルミニウム、スズ、アンチモン、鉄、リン、亜鉛、チタン、ジルコニウム及びベリリウム等のハロゲン化物又はアルキル化合物等が挙げられる。具体的には三フッ化ホウ素、三塩化ホウ素等のホウ素のハロゲン化物;トリフェニルホウ素、トリ(t-ブチル)ホウ素、トリス(ペンタフルオロフェニル)ホウ素、ビス(ペンタフルオロフェニル)-t-ブチルホウ素、ビス(ペンタフルオロフェニル)フッ化ホウ素、ジ(t-ブチル)フッ化ホウ素及び(ペンタフルオロフェニル)2フッ化ホウ素等のホウ素のアルキル化合物;塩化アルミニウム及び臭化アルミニウム等のアルミニウムのハロゲン化物;トリエチルアルミニウム、トリフェニルアルミニウム、ジフェニル-t-ブチルアルミニウム、トリス(ペンタフルオロフェニル)アルミニウム、ビス(ペンタフルオロフェニル)-t-ブチルアルミニウム、ビス(ペンタフルオロフェニル)フッ化アルミニウム、ジ(t-ブチル)フッ化アルミニウム、(ペンタフルオロフェニル)2フッ化アルミニウム及び(t-ブチル)2フッ化アルミニウム等のアルミニウムのアルキル化合物;四フッ化スズ及び四塩化スズ等のスズのハロゲン化物;フッ化アンチモン、塩化アンチモン、塩化第二鉄、五フッ化リン、塩化亜鉛、ジエチル亜鉛、四塩化チタン、塩化ジルコニウム、及び塩化ベリリウム等が挙げられる。
ルイス酸は1種類を単独で用いてもよく、2種以上を使用してもよい。
これらのうち好ましいものはホウ素、アルミニウム、スズ、アンチモン、鉄、リン、亜鉛、チタン、ジルコニウム及びベリリウムからなる群より選ばれる少なくとも1種のハロゲン化物であり、より好ましいものは、ホウ素のハロゲン化物、アルミニウムのハロゲン化物、及びスズのハロゲン化物であり、特に好ましいものは三フッ化ホウ素である。
【0012】
これらのルイス酸は単独で使用してもよいが、種々の有機化合物との錯体も知られており以下の錯体を用いてもよい。このような錯体としては例えば、ジメチルエーテル錯体、ジエチルエーテル錯体及びTHF錯体等のエーテル錯体;酢酸錯体等のカルボン酸錯体;アルコール錯体;アミン錯体;フェノール錯体等が挙げられる。これらの錯体の内、好ましくは三フッ化ホウ素エーテル錯体、及び三フッ化ホウ素テトラヒドロフラン錯体であり、更に好ましくは三フッ化ホウ素テトラヒドロフラン錯体である。
【0013】
固体酸としては、例えば粘度鉱物(例えばカオリナイト及びモンモリロナイト等)ゼオライト、陽イオン交換樹脂、金属酸化物(例えば酸化亜鉛及び酸化アルミニウム等)、並びにヘテロポリ酸等が挙げられる。
【0014】
超強酸としては、トリフルオロメタンスルホン酸及びフルオロスルホン酸等が挙げられる。
【0015】
これらの酸性物質の中で交互共重合性の高さの観点から好ましくはルイス酸であり、更に好ましくは三フッ化ホウ素エーテル錯体、及び三フッ化ホウ素テトラヒドロフラン錯体であり、特に好ましくは三フッ化ホウ素テトラヒドロフラン錯体である。
【0016】
ポリエーテルポリオール(A)を構成する2価以上の活性水素を含有する化合物としては、2価の活性水素含有化合物{例えば炭素数2~20のグリコール[炭素数2~12の直鎖又は分岐の脂肪族2価アルコール(エチレングリコール、1,3-プロピレングリコール、1,4-ブタンジオール、1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、1,7-ヘプタンジオール、1,8-オクタンジオール、1,9-ノナンジオール、1,10-ドデカンジオール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール及びテトラエチレングリコール等の直鎖アルコール;1,2-、1,3-又は2,3-ブタンジオール、2-メチル-1,4-ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、2,2-ジエチル-1,3-プロパンジオール、2-メチル-1,5-ペンタンジオール、3-メチル-1,5-ペンタンジオール、2-メチル-1,6-ヘキサンジオール、3-メチル-1,6-ヘキサンジオール、2-メチル-1,7-ヘプタンジオール、3-メチル-1,7-ヘプタンジオール、4-メチル-1,7-ヘプタンジオール、2-メチル-1,8-オクタンジオール、3-メチル-1,8-オクタンジオール及び4-メチルオクタンジオール等の分岐アルコール等)、炭素数6~20の脂環式2価アルコール[1,4-シクロヘキサンジオール、1,3-シクロヘキサンジメタノール、1,4-シクロヘキサンジオール、1,3-シクロペンタンジオール、1,4-シクロヘプタンジオール、2,5-ビス(ヒドロキシメチル)-1,4-ジオキサン、2,7-ノルボルナンジオール、テトラヒドロフランジメタノール、1,4-ビス(ヒドロキシエトキシ)シクロヘキサン、1,4-ビス(ヒドロキシメチル)シクロヘキサン及び2,2-ビス(4-ヒドロキシシクロヘキシル)プロパン等]}、3価以上の活性水素含有化合物{例えば炭素数3~20の3価アルコール[脂肪族トリオール(グリセリン及びトリメチロールプロパン等)等]、炭素数5~20の4~8価アルコール[脂肪族ポリオール(ペンタエリスリトール、ソルビトール、マンニトール、ソルビタン、ジグリセリン及びジペンタエリスリトール等)]、糖類(ショ糖、グルコース、マンノース、フルクトース、メチルグルコシド及びその誘導体)等}が挙げられる。
前記2価以上の活性水素含有化合物のうち、本発明の透湿防水性樹脂用ポリウレタン樹脂を用いて得られる皮膜又はシート材料(以下単に「得られるシート材料等」という)の透湿性及び風合いの観点から、2価の活性水素含有化合物が好ましく、更に好ましくはエチレングリコール、1,3-プロピレングリコール及び1,4-ブタンジオールである。
【0017】
本発明において、ポリエーテルポリオール(A)は、水膨潤性を抑制する効果に優れるという観点から、2価以上の活性水素含有化合物、EO及びTHFを触媒(三フッ化ホウ素テトラヒドロフラン錯体)の存在下で重合してなるポリエーテルポリオールであることが好ましい。当該態様が好ましい理由は以下のように推測される。ポリエーテルポリオール(A)を製造する際、2価以上の活性水素含有化合物へのEOとTHFの付加はカチオン重合で進み、ランダム重合又は交互共重合の何れかで進むと考えられている。三フッ化ホウ素テトラヒドロフラン錯体を触媒に用いた場合は、製造途中のEO及びTHFの付加状態から交互共重合性が高くなり、交互共重合性が高い構造のポリエーテルポリオール(A)が得られると推測される。このような構造に起因して水膨潤性抑制効果が優れると推測される。
【0018】
ポリエーテルポリオール(A)のオキシエチレン基とオキシテトラメチレン基との比率は1H-NMRによって定量されるエチレンオキサイド基のメチレン基とテトラメチレンオキサイド基の内部メチレン基との比率から算出される。
(A)を構成するオキシエチレン基とオキシテトラメチレン基との重量比(オキシエチレン基/オキシテトラメチレン基)は透湿性及び耐水性の観点から40/60~60/40が好ましい。
【0019】
ポリエーテルポリオール(A)中のオキシエチレン基の重量割合は、(A)の重量に基づき、20~60重量%が好ましい。また、ポリエーテルポリオール(A)中のオキシテトラメチレン基の重量割合は、(A)の重量に基づき、20~60重量%が好ましい。
【0020】
ポリエーテルポリオール(A)の数平均分子量(以下、Mnと略記)は得られるシート材料等の強度及び耐水性の観点から好ましくは500~5,000であり、更に好ましくは700~4,000、特に好ましくは1,000~3,000である。
【0021】
なお、本発明におけるポリエーテルポリオール(A)のMnは、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーにより、例えば以下の条件で測定することができる。
装置:「Waters Alliance 2695」[Waters社製]
カラム:「Guardcolumn Super H-L」(1本)、「TSKgel SuperH2000、TSKgel SuperH3000、TSKgel SuperH4000(いずれも東ソー株式会社製)を各1本連結したもの」
試料溶液:0.25重量%のテトラヒドロフラン溶液
溶液注入量:10μl
流量:0.6ml/分
測定温度:40℃
検出装置:屈折率検出器
基準物質:標準ポリエチレングリコール
【0022】
ポリエーテルポリオール(A)は、水に不溶であっても水に溶解するものであってもよい。本発明において、「水に不溶」とは、20℃の水100mlにポリエーテルポリオール(A)1gを入れて5分間混合して30分静置した後の目視観察により、白濁及び/又は相分離が認められることを意味する。本発明において「水に溶解する」とは、20℃の水100mlにポリエーテルポリオール(A)1gを入れて5分間混合して30分静置した後の目視観察により白濁及び相分離が認められないことをいう。本発明においては、ポリウレタン樹脂(U)の耐水性の観点からポリエーテルポリオール(A)は水に不溶であるものが好ましい。
【0023】
透湿防水性樹脂用ポリウレタン樹脂(U)の構成原料である有機イソシアネート(C)としては、ポリウレタン樹脂の製造に使用されているものを使用することができる。有機イソシアネート(C)としては、2~3個又はそれ以上のイソシアネート基を有する炭素数6~20(イソシアネート基中の炭素を除く、以下同様)の芳香族ポリイソシアネート(c1)、炭素数2~18の脂肪族ポリイソシアネート(c2)、炭素数4~15の脂環式ポリイソシアネート(c3)、炭素数8~15の芳香脂肪族ポリイソシアネート(c4)及び(c1)~(c4)の誘導体(例えばイソシアヌレート化物)が挙げられる。有機イソシアネート(C)は1種を単独で用いても2種以上を併用してもよい。
【0024】
炭素数6~20の芳香族ポリイソシアネート(c1)としては、1,3-又は1,4-フェニレンジイソシアネート、2,4-又は2,6-トリレンジイソシアネート(TDI)、4,4’-又は2,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、1,5-ナフチレンジイソシアネート、4,4’,4’’-トリフェニルメタントリイソシアネート、m-又はp-イソシアナトフェニルスルホニルイソシアネート及びクルードMDI等が挙げられる。
【0025】
炭素数2~18の脂肪族ポリイソシアネート(c2)としては、エチレンジイソシアネート、テトラメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)、ドデカメチレンジイソシアネート、2,2,4-トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、リジンジイソシアネート及び2-イソシアナトエチル-2,6-ジイソシアナトヘキサノエート等が挙げられる。
【0026】
炭素数4~15の脂環式ポリイソシアネート(c3)としては、イソホロンジイソシアネート(IPDI)、4,4-ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート(水添MDI)、シクロヘキシレンジイソシアネート、メチルシクロヘキシレンジイソシアネート(水添TDI)、ビス(2-イソシアナトエチル)-4-シクロヘキセン-1,2-ジカルボキシレート及び2,5-又は2,6-ノルボルナンジイソシアネート等が挙げられる。
【0027】
炭素数8~15の芳香脂肪族ポリイソシアネート(c4)としては、m-又はp-キシリレンジイソシアネート(XDI)及びα,α,α’,α’-テトラメチルキシリレンジイソシアネート(TMXDI)等が挙げられる。
【0028】
有機イソシアネート(C)のうち、得られるシート材料等の強度及び耐候性の観点から好ましいのは炭素数2~18の脂肪族ポリイソシアネート(c2)及び炭素数4~15の脂環式ポリイソシアネート(c3)であり、更に好ましいのは前記(c3)であり、特に好ましいのはIPDI及び水添MDIである。
【0029】
透湿防水性樹脂用ポリウレタン樹脂(U)を構成する構成原料中のポリエーテルポリオール(A)の含有量は、構成原料の重量に基づき40重量%~90重量%であり、好ましくは40量%~80重量%であり、更に好ましくは50重量%~70重量%である。
前記ポリエーテルポリオール(A)の含有量が40重量%未満であると透湿性が不足することがあり、90重量%を超えると得られるシート材料の強度が不足することがある。
透湿防水性樹脂用ポリウレタン樹脂(U)を構成する構成原料中の有機イソシアネート(C)の含有量は、得られるシート材料の強度の観点から構成原料の重量に基づいて、好ましくは10量%~50重量%であり、更に好ましくは20重量%~40重量%である。
【0030】
透湿防水性樹脂用ポリウレタン樹脂(U)を構成する構成原料は、オキシエチレン基及びオキシテトラメチレン基を有するポリエーテルポリオール(A)及び有機イソシアネート(C)以外の他の成分を含みうる。このような他の成分としてポリエーテルポリオール(A)以外の他のポリオールが挙げられる。ポリエーテルポリオール(A)以外の他のポリオールとしては、アニオン性基及びカチオン性基を有さないMnが300以上のポリオール(a1)及びアニオン性基及びカチオン性基を有さない化学式量又はMnが300未満のポリオール(a2)から選ばれるポリオール等が挙げられる。以下において、「アニオン性基及びカチオン性基を有さないMnが300以上のポリオール(a1)」を「Mnが300以上のポリオール(a1)」と呼び、「アニオン性基及びカチオン性基を有さない、化学式量又はMnが300未満のポリオール(a2)」を「Mnが300未満のポリオール(a2)」と呼ぶ。これらの他のポリオールは、1種を単独で用いても2種以上を併用してもよい。
Mnが300以上のポリオール(a1)としては、ポリエーテルポリオール(a11)及びポリエステルポリオール(a12)が挙げられる。Mnが300以上のポリエーテルポリオール(a11)としては、脂肪族ポリエーテルポリオール及び芳香環含有ポリエーテルポリオール等が挙げられる。
【0031】
脂肪族ポリエーテルポリオールとしては、オキシエチレン基及びオキシテトラメチレン基を有するポリエーテルポリオール(A)以外の炭素数2~20の脂肪族多価アルコールの炭素数2~12のアルキレンオキサイド(以下AOと略記する場合がある)付加物等が挙げられる。
【0032】
炭素数2~20の脂肪族多価アルコールの炭素数2~12のAO付加物を構成する炭素数2~20の脂肪族多価アルコールとしては、炭素数2~12の直鎖又は分岐の脂肪族2価アルコール[エチレングリコール、1,3-プロピレングリコール、1,4-ブタンジオール、1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、1,7-ヘプタンジオール、1,8-オクタンジオール、1,9-ノナンジオール、1,10-ドデカンジオール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール及びテトラエチレングリコール等の直鎖アルコール;1,2-、1,3-又は2,3-ブタンジオール、2-メチル-1,4-ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、2,2-ジエチル-1,3-プロパンジオール、2-メチル-1,5-ペンタンジオール、3-メチル-1,5-ペンタンジオール、2-メチル-1,6-ヘキサンジオール、3-メチル-1,6-ヘキサンジオール、2-メチル-1,7-ヘプタンジオール、3-メチル-1,7-ヘプタンジオール、4-メチル-1,7-ヘプタンジオール、2-メチル-1,8-オクタンジオール、3-メチル-1,8-オクタンジオール及び4-メチルオクタンジオール等の分岐アルコール等];炭素数6~20の脂環式2価アルコール[1,4-シクロヘキサンジオール、1,3-シクロヘキサンジメタノール、1,4-シクロヘキサンジオール、1,3-シクロペンタンジオール、1,4-シクロヘプタンジオール、2,5-ビス(ヒドロキシメチル)-1,4-ジオキサン、2,7-ノルボルナンジオール、テトラヒドロフランジメタノール、1,4-ビス(ヒドロキシエトキシ)シクロヘキサン、1,4-ビス(ヒドロキシメチル)シクロヘキサン及び2,2-ビス(4-ヒドロキシシクロヘキシル)プロパン等];炭素数3~20の3価アルコール[脂肪族トリオール(グリセリン及びトリメチロールプロパン等)等];炭素数5~20の4~8価アルコール[脂肪族ポリオール(ペンタエリスリトール、ソルビトール、マンニトール、ソルビタン、ジグリセリン及びジペンタエリスリトール等);糖類(ショ糖、グルコース、マンノース、フルクトース、メチルグルコシド及びその誘導体)];等が挙げられる。
【0033】
炭素数2~20の脂肪族多価アルコールの炭素数2~12のAO付加物を構成する炭素数2~12のAOとしては、エチレンオキサイド、1,2-又は1,3-プロピレンオキサイド(以下POと略記する場合がある)、1,2-、2,3-又は1,3-ブチレンオキサイド、テトラヒドロフラン、3-メチルテトラヒドロフラン、α-オレフィンオキサイド、スチレンオキサイド及びエピハロヒドリン(エピクロルヒドリン等)等が挙げられる。
【0034】
脂肪族ポリエーテルポリオールの具体例としては、前記オキシエチレン基及びオキシテトラメチレン基を有するポリエーテルポリオール(A)以外のものであって、ポリオキシアルキレンポリオール[ポリエチレングリコール(以下、PEGと略記)等]、ポリオキシプロピレンポリオール[ポリプロピレングリコール等]、ポリオキシエチレン/プロピレンポリオール及びポリテトラメチレンエーテルグリコール等が挙げられる。
【0035】
脂肪族ポリエーテルポリオールの市販品としては、PTMG1000[Mn=1,000のポリ(オキシテトラメチレン)グリコール、三菱化学(株)製]、PTMG2000[Mn=2,000のポリ(オキシテトラメチレン)グリコール、三菱化学(株)製]、PTMG3000[Mn=3,000のポリ(オキシテトラメチレン)グリコール、三菱化学(株)製]、PTGL2000[Mn=2,000の変性ポリ(オキシテトラメチレン)グリコール、保土谷化学工業(株)製]、PTGL3000[Mn=3,000の変性ポリ(オキシテトラメチレン)グリコール、保土谷化学工業(株)製]及びサンニックスジオールGP-3000[Mn=3,000のポリ(オキシプロピレン)トリオール、三洋化成工業(株)製]等が挙げられる。
【0036】
芳香環含有ポリエーテルポリオールとしては、前記オキシエチレン基及びオキシテトラメチレン基を有するポリエーテルポリオール(A)以外のものであって、炭素数8~20の芳香脂肪族2価アルコール[m-又はp-キシリレングリコール、ビス(ヒドロキシエチル)ベンゼン及びビス(ヒドロキシエトキシ)ベンゼン等]のAO付加物及びビスフェノール化合物(ビスフェノールA、ビスフェノールB、ビスフェノールS及びビスフェノールF)のAO付加物等が挙げられる。
【0037】
芳香環含有ポリエーテルポリオールの具体例としては、例えばビスフェノールAのEO付加物(ビスフェノールAのEO2モル付加物、ビスフェノールAのEO4モル付加物、ビスフェノールAのEO6モル付加物、ビスフェノールAのEO8モル付加物、ビスフェノールAのEO10モル付加物及びビスフェノールAのEO20モル付加物等)及びビスフェノールAのPO付加物(ビスフェノールAのPO2モル付加物、ビスフェノールAのPO3モル付加物及びビスフェノールAのPO5モル付加物等)等のビスフェノール骨格を有するポリオール並びにレゾルシンのEO又はPO付加物等が挙げられる。
【0038】
Mnが300以上のポリエーテルポリオール(a11)のMnは、ポリウレタン樹脂(U)の機械物性の観点から、好ましくは300以上、更に好ましくは300~10,000、特に好ましくは300~6,000である。
【0039】
Mnが300以上のポリエステルポリオール(a12)としては、縮合型ポリエステルポリオール、ポリラクトンポリオール、ポリカーボネートポリオール及びヒマシ油系ポリオール等が挙げられる。
【0040】
縮合型ポリエステルポリオールとしては、後述の化学式量又はMnが300未満の低分子ポリオール(a2)と炭素数2~10の多価カルボン酸又はそのエステル形成性誘導体とのポリエステルポリオール等が挙げられる。
縮合型ポリエステルポリオールに使用される化学式量又はMnが300未満の低分子ポリオールの内で好ましいのは、機械物性の観点から、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,4-ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,6-ヘキサングリコール、ビスフェノールAのEO又はPO低モル付加物及びこれらの混合物である。
【0041】
縮合型ポリエステルポリオールに使用される炭素数2~10の多価カルボン酸又はそのエステル形成性誘導体としては、脂肪族ジカルボン酸(コハク酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバチン酸、フマル酸及びマレイン酸等)、脂環式ジカルボン酸(ダイマー酸等)、芳香族ジカルボン酸(テレフタル酸、イソフタル酸及びフタル酸等)、3価又はそれ以上のポリカルボン酸(トリメリット酸及びピロメリット酸等)、これらの無水物(無水コハク酸、無水マレイン酸、無水フタル酸及び無水トリメリット酸等)、これらの酸ハロゲン化物(アジピン酸ジクロライド等)、これらの低分子量アルキルエステル(コハク酸ジメチル及びフタル酸ジメチル等)並びにこれらの混合物が挙げられる。
【0042】
縮合型ポリエステルポリオールの具体例としては、ポリエチレンアジペートジオール、ポリブチレンアジペートジオール、ポリヘキサメチレンアジペートジオール、ポリヘキサメチレンイソフタレートジオール、ポリネオペンチルアジペートジオール、ポリエチレンプロピレンアジペートジオール、ポリエチレンブチレンアジペートジオール、ポリブチレンヘキサメチレンアジペートジオール、ポリジエチレンアジペートジオール、ポリ(ポリテトラメチレンエーテル)アジペートジオール、ポリ(3-メチルペンチレンアジペート)ジオール、ポリエチレンアゼレートジオール、ポリエチレンセバケートジオール、ポリブチレンアゼレートジオール、ポリブチレンセバケートジオール及びポリネオペンチルテレフタレートジオール等が挙げられる。
【0043】
縮合型ポリエステルポリオールの市販品としては、サンエスター2610[Mn=1,000のポリエチレンアジペートジオール、三洋化成工業(株)製]、サンエスター4620[Mn=2,000のポリテトラメチレンアジペートジオール]、サンエスター2620[Mn=2,000のポリエチレンアジペートジオール、三洋化成工業(株)製]、クラレポリオールP-2010[Mn=2,000のポリ-3-メチル-1,5-ペンタンアジペートジオール]、クラレポリオールP-3010[Mn=3,000のポリ-3-メチル-1,5-ペンタンアジペートジオール]及びクラレポリオールP-6010[Mn=6,000のポリ-3-メチル-1,5-ペンタンアジペートジオール]等が挙げられる。
【0044】
ポリラクトンポリオールは、前記低分子量多価アルコールへのラクトンの重付加物であり、ラクトンとしては、炭素数4~12のラクトン(例えばγ-ブチロラクトン、γ-バレロラクトン及びε-カプロラクトン)等が挙げられる。
ポリラクトンポリオールの具体例としては、例えばポリカプロラクトンジオール、ポリバレロラクトンジオール及びポリカプロラクトントリオール等が挙げられる。
【0045】
ポリカーボネートポリオールとしては、前記炭素数2~20の脂肪族多価アルコールと、低分子カーボネート化合物(例えば、アルキル基の炭素数1~6のジアルキルカーボネート、炭素数2~6のアルキレン基を有するアルキレンカーボネート及び炭素数6~9のアリール基を有するジアリールカーボネート)とを、脱アルコール反応させながら縮合させることによって製造されるポリカーボネートポリオール等が挙げられる。炭素数2~20の脂肪族多価アルコール及びアルキレンカーボネートはそれぞれ2種以上併用してもよい。
【0046】
ポリカーボネートポリオールの具体例としては、ポリヘキサメチレンカーボネートジオール、ポリペンタメチレンカーボネートジオール、ポリテトラメチレンカーボネートジオール及びポリ(テトラメチレン/ヘキサメチレン)カーボネートジオール(例えば1,4-ブタンジオールと1,6-ヘキサンジオールをジアルキルカーボネートと脱アルコール反応させながら縮合させて得られるジオール)等が挙げられる。
【0047】
ポリカーボネートポリオールの市販品としては、ニッポラン980R[Mn=2,000のポリヘキサメチレンカーボネートジオール、日本ポリウレタン工業(株)製]、クラレポリオールC-3090[Mn=3,000のポリ(3-メチル-5-ペンタンジオール/ヘキサメチレン)カーボネートジオール]及びT4672[Mn=2,000のポリ(テトラメチレン/ヘキサメチレン)カーボネートジオール、旭化成ケミカルズ(株)製]等が挙げられる。
【0048】
ヒマシ油系ポリオールには、ヒマシ油及びポリオール又はAOで変性された変性ヒマシ油が含まれる。変性ヒマシ油はヒマシ油とポリオールとのエステル交換及び/又はAO付加により製造できる。ヒマシ油系ポリオールとしては、ヒマシ油、トリメチロールプロパン変性ヒマシ油、ペンタエリスリトール変性ヒマシ油及びヒマシ油のEO(4~30モル)付加物等が挙げられる。
【0049】
ポリエステルポリオール(a12)の内で好ましいのは、機械物性の観点から、縮合型ポリエステルポリオール及びポリラクトンポリオールである。
【0050】
Mnが300未満のポリオール(a2)としては、前記炭素数2~20の脂肪族多価アルコールのAO付加物、前記炭素数8~20の芳香脂肪族2価アルコールのAO付加物又は前記ビスフェノール化合物のAO付加物であって化学式量又はMn
が300未満のもの及び前記炭素数2~20の脂肪族多価アルコール等が挙げられる。
【0051】
これらの内、耐水性及び耐熱黄変性の観点から好ましいのは、炭素数2~20の脂肪族多価アルコールであり、より好ましくは2~3価の脂肪族アルコールであり、とりわけ脂肪族3価のアルコールはポリウレタン樹脂粒子中に架橋構造を形成させることができ、得られるシート材料等の耐水性及び耐薬品性向上という効果を得ることができる観点から特に好ましい。脂肪族2価アルコールとしては、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,4-ブタンジオール、ネオペンチルグリコール及び1,6-ヘキサンジオールが特に好ましく、脂肪族3価アルコールとしては、トリメチロールプロパンが特に好ましい。
【0052】
ポリエーテルポリオール(A)とともにMnが300以上のポリオール(a1)及び/又はMnが300未満のポリオール(a2)を併用する場合の(a1)及び(a2)の合計の含有量は、透湿性が目標とする性能を発揮すれば特に制約は無いが、ポリエーテルポリオール(A)、Mnが300以上のポリオール(a1)及びMnが300未満のポリオール(a2)の合計重量に基づき好ましくは60重量%以下、更に好ましくは40重量%以下である。
【0053】
本発明の透湿防水性樹脂用ポリウレタン樹脂(U)を構成する構成原料は、ポリエーテルポリオール(A)、Mnが300以上のポリオール(a1)及びMnが300未満のポリオール(a2)以外の他の活性水素含有化合物(B)をさらに含んでいてもよい。前記他の活性水素含有化合物(B)としては、アニオン性基を有する活性水素含有化合物(b1)、カチオン性基を有する活性水素含有化合物(b2)、アニオン性基及びカチオン性基を有さないジオール(b3)、及び2価のジアミン(b5)等が挙げられる。前記他の活性水素含有化合物(B)は1種を単独で用いても2種以上を併用してもよい。
【0054】
アニオン性基を有する活性水素含有化合物(b1)としては、例えばアニオン性基としてカルボキシル基を含有し、炭素数が2~10の化合物[ジアルキロールアルカン酸(例えば2,2-ジメチロールプロピオン酸、2,2-ジメチロールブタン酸、2,2-ジメチロールヘプタン酸及び2,2-ジメチロールオクタン酸)、酒石酸及びアミノ酸(例えばグリシン、アラニン及びバリン)等]、アニオン性基としてスルホン酸基を含有し、炭素数が2~16の化合物[3-(2,3-ジヒドロキシプロポキシ)-1-プロパンスルホン酸及びスルホイソフタル酸ジ(エチレングリコール)エステル等]、アニオン性基としてスルファミン酸基を含有し、炭素数が2~10の化合物[N,N-ビス(2-ヒドロキシルエチル)スルファミン酸等]等並びにこれらの化合物を中和剤で中和した塩が挙げられる。
【0055】
アニオン性基を有する活性水素含有化合物(b1)の塩に用いられる中和剤としては、例えばアンモニア、炭素数1~20のアミン化合物又はアルカリ金属水酸化物(水酸化ナトリウム、水酸化カリウム及び水酸化リチウム等)が挙げられる。
炭素数1~20のアミン化合物としては、モノメチルアミン、モノエチルアミン、モノブチルアミン及びモノエタノールアミン等の1級アミン、ジメチルアミン、ジエチルアミン、ジブチルアミン、ジエタノールアミン及びジイソプロパノールアミン、メチルプロパノールアミン等の2級アミン並びにトリメチルアミン、トリエチルアミン、ジメチルエチルアミン、ジメチルモノエタノールアミン及びトリエタノールアミン等の3級アミンが挙げられる。
【0056】
アニオン性基を有する活性水素含有化合物(b1)の塩に用いられる中和剤としては、生成するポリウレタン樹脂水性分散体の乾燥性及び得られるシート材料等の耐水性の観点から、25℃における蒸気圧が高い化合物が好適である。このような観点から、(b1)の塩に用いられる中和剤としては、アンモニア、モノメチルアミン、モノエチルアミン、ジメチルアミン、ジエチルアミン、トリメチルアミン、トリエチルアミン及びジメチルエチルアミンが好ましい。
【0057】
アニオン性基を有する活性水素含有化合物(b1)の内、得られるシート材料等の樹脂物性及びポリウレタン樹脂水性分散体の分散安定性の観点から好ましいのは、2,2-ジメチロールプロピオン酸及び2,2-ジメチロールブタン酸及びこれらの塩類であり、更に好ましいのは2,2-ジメチロールプロピオン酸及び2,2-ジメチロールブタン酸のアンモニア又は炭素数1~20のアミン化合物による中和塩である。
【0058】
カチオン性基を有する活性水素含有化合物(b2)としては、例えばカチオン性基として3級アミノ基を有し、活性水素原子として水酸基を有する化合物、炭素数1~20の3級アミノ基含有ジオール[N-アルキルジアルカノールアミン(例えばN-メチルジエタノールアミン、N-プロピルジエタノールアミン、N-ブチルジエタノールアミン及びN-メチルジプロパノールアミン)及びN,N-ジアルキルモノアルカノールアミン(例えばN,N-ジメチルエタノールアミン)等]等の化合物を中和剤で中和した塩が挙げられる。
【0059】
カチオン性基を有する活性水素含有化合物(b2)に用いられる中和剤としては、例えば炭素数1~10のモノカルボン酸(例えばギ酸、酢酸、プロパン酸等)、炭酸、炭酸ジメチル、硫酸ジメチル、メチルクロライド及びベンジルクロライド等が挙げられる。
(b2)に用いられる中和剤としては、生成するポリウレタン樹脂の水性分散体の乾燥性及び得られるシート材料等の耐水性の観点から、25℃における蒸気圧が高い化合物が好適である。このような観点から(b2)に用いられる中和剤としては、炭素数1~10のモノカルボン酸及び炭酸が好ましく、更に好ましいのはギ酸及び炭酸、特に好ましいのは炭酸である。
【0060】
(b1)に用いられる中和剤及び(b2)に用いられる中和剤は、ウレタン化反応前、ウレタン化反応中、ウレタン化反応後、水分散工程前、水分散工程中又は水分散後のいずれの時期に添加しても良いが、ウレタン樹脂の安定性及び水性分散体の安定性の観点から、水分散工程前又は水分散工程中に添加することが好ましい。
【0061】
アニオン性基及びカチオン性基を有さないジオール(b3)としては、炭素数2~20の直鎖又は分岐の脂肪族2価アルコール[エチレングリコール、1,3-プロピレングリコール、1,4-ブタンジオール、1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、1,7-ヘプタンジオール、1,8-オクタンジオール、1,9-ノナンジオール、1,10-ドデカンジオール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール及びテトラエチレングリコール等の直鎖アルコール;1,2-、1,3-又は2,3-ブタンジオール、2-メチル-1,4-ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、2,2-ジエチル-1,3-プロパンジオール、2-メチル-1,5-ペンタンジオール、3-メチル-1,5-ペンタンジオール、2-メチル-1,6-ヘキサンジオール、3-メチル-1,6-ヘキサンジオール、2-メチル-1,7-ヘプタンジオール、3-メチル-1,7-ヘプタンジオール、4-メチル-1,7-ヘプタンジオール、2-メチル-1,8-オクタンジオール、3-メチル-1,8-オクタンジオール及び4-メチルオクタンジオール等の分岐アルコール等];炭素数6~20の脂環式2価アルコール[1,4-シクロヘキサンジオール、1,3-シクロヘキサンジメタノール、1,4-シクロヘキサンジオール、1,3-シクロペンタンジオール、1,4-シクロヘプタンジオール、2,5-ビス(ヒドロキシメチル)-1,4-ジオキサン、2,7-ノルボルナンジオール、テトラヒドロフランジメタノール、1,4-ビス(ヒドロキシエトキシ)シクロヘキサン、1,4-ビス(ヒドロキシメチル)シクロヘキサン及び2,2-ビス(4-ヒドロキシシクロヘキシル)プロパン等]等が挙げられる。
【0062】
2価のジアミン(b5)としては、炭素数2~20の脂肪族ジアミン(エチレンジアミン及びヘキサメチレンジアミン等)、炭素数6~20の脂環式ジアミン(1,3-又は1,4-ジアミノシクロヘキサン、4,4’-又は2,4’-ジシクロヘキシルメタンジアミン及びイソホロンジアミン等)、炭素数6~20の芳香族ジアミン(1,3-又は1,4-フェニレンジアミン、2,4-又は2,6-トリレンジアミン、4,4’-又は2,4’-メチレンビスアニリン等)、炭素数8~20の芳香脂肪族ジアミン[1,3-又は1,4-キシリレンジアミン、ビス(アミノエチル)ベンゼン、ビス(アミノプロピル)ベンゼン及びビス(アミノブチル)ベンゼン等]及び炭素数3~20の複素環式ジアミン[2,4-ジアミノ-1,3,5-トリアジン、ピペラジン及びN-(2-アミノエチル)ピペラジン等]等が挙げられる。
【0063】
他の活性水素含有化合物(B)としては、好ましくはアニオン性基を有する活性水素含有化合物(b1)及びカチオン性基を有する活性水素含有化合物(b2)から選ばれる一種以上の化合物であり、より好ましくはアニオン性基を有する活性水素含有化合物(b1)であり、得られるシート材料等の物性及びポリウレタン樹脂水性分散体の分散安定性の観点から、2,2-ジメチロールプロピオン酸が特に好ましい。
【0064】
ポリウレタン樹脂(U)の構成原料が他の活性水素含有化合物(B)を含む場合、他の活性水素含有化合物(B)の含有量は、得られるシート材料の強度の観点から、ポリウレタン樹脂(U)を構成する構成原料の重量に基づいて、好ましくは0.01重量%~20重量%であり、更に好ましくは5重量%~10重量%である。
【0065】
また、透湿防水樹脂用ポリウレタン樹脂(U)を水性分散体とする場合、他の活性水素含有化合物(B)の使用量は、(U)中のアニオン性基又はカチオン性基の含有量が、ポリウレタン樹脂(U)の重量を基準として、好ましくは0.32~3.2重量%、更に好ましくは0.40~2.0重量%となるよう調節する。
アニオン性基又はカチオン性基の含有量が0.32重量%以上であればポリウレタン樹脂水性分散体の分散安定性が良好であり、アニオン性基又はカチオン性基の含有量が3.2重量%以下であるとポリウレタン樹脂(U)の耐水膨潤性及び耐水性がより良好である傾向がある。
【0066】
本発明におけるアニオン性基又はカチオン性基の含有量とは、未中和のアニオン性基又はカチオン性基の重量%を意味し、対イオンの重量は含まない。例えば、(b1)におけるアニオン性基の含有量は、2,2-ジメチロールプロピオン酸のトリエチルアミン塩の場合は、カルボキシル基(-COOH)の重量%を、3-(2,3-ジヒドロキシプロポキシ)-1-プロパンスルホン酸のトリエチルアミン塩の場合はスルホ基(-SO3H)の重量%を意味する。また、(b2)におけるカチオン性基の含有量は、3級アミノ基中の窒素原子のみの重量%を意味する。
【0067】
本発明の透湿防水性樹脂用ポリウレタン樹脂(U)は、オキシエチレン基及びオキシテトラメチレン基を有するポリエーテルポリオール(A)と有機イソシアネート(C)とを反応させて得られるポリウレタンであってもよいし、前記ポリエーテルポリオール(A)と、アニオン性基を有する活性水素含有化合物(b1)及び/又はカチオン性基を有する活性水素含有化合物(b2)と、前記有機イソシアネート(C)とを反応させてイソシアネート基末端ウレタンプレポリマー(P)を得た後、当該ウレタンプレポリマー(P)と鎖伸長剤(D)とを反応させることにより得られるものであってもよい。鎖延長剤については後述する。
【0068】
本発明のポリウレタン樹脂(U)の製造方法としては、例えば、オキシエチレン基及びオキシテトラメチレン基を有するポリエーテルポリオール(A)と、有機イソシアネート(C)とを含む構成原料を反応させる工程(工程1)を含む製造方法等が挙げられる。
工程1においては、前記ポリエーテルポリオール(A)を40~90重量%含む構成原料を用いる。
【0069】
本発明のポリウレタン樹脂(U)の製造方法は、前記工程1で用いるオキシエチレン基及びオキシテトラメチレン基を有するポリエーテルポリオール(A)の製造工程(工程A1)を含んでいてもよい。当該工程A1としては、2価以上の活性水素含有化合物、EO及びTHFを触媒の存在下で重合する工程(工程A11)を含んでいることが好ましい。当該工程A11で用いる、2価以上の活性水素含有化合物及び触媒としては、ポリエーテルポリオール(A)の説明で例示したものを用いることができる。工程A11において用いる触媒としては三フッ化ホウ素テトラヒドロフラン錯体が好ましい。
【0070】
本発明のポリウレタン樹脂(U)がウレタンプレポリマー(P)を経て得られるものである場合、工程1において、前記ポリエーテルポリオール(A)と、アニオン性基を有する活性水素含有化合物(b1)及び/又はカチオン性基を有する活性水素含有化合物(b2)と、前記有機イソシアネート(C)とを構成原料とし、当該構成原料を反応させてウレタンプレポリマー(P)を得る。このようにして得られたウレタンプレポリマー(P))と鎖伸長剤(D)とを反応させる工程(工程2)を行うことでポリウレタン樹脂(U)が得られる。
【0071】
鎖伸長剤(D)としては、水、炭素数2~10のジアミン類(エチレンジアミン、プロピレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、イソホロンジアミン、トルエンジアミン及びピペラジン等)、炭素数2~10のポリアルキレンポリアミン類(ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン及びテトラエチレンペンタミン等)、ヒドラジン又はその誘導体(二塩基酸ジヒドラジド例えばアジピン酸ジヒドラジド等)及び炭素数2~10のアミノアルコール類(エタノールアミン、ジエタノールアミン、2-アミノ-2-メチルプロパノール及びトリエタノールアミン等)等が挙げられる。
これらの内、皮膜及びシート材料の耐水性、耐薬品性、密着性、破断伸度の観点から好ましいものはエチレンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン及びテトラエチレンペンタミンである。鎖伸長剤(D)は1種を単独で用いても2種以上を併用してもよい。
前記鎖伸長剤(D)を使用する場合、鎖伸長剤(D)の含有量は、得られるシート材料の強度の観点から、透湿防水性樹脂用ポリウレタン樹脂(U)の重量に基づいて、好ましくは0.01量%~20重量%であり、更に好ましくは0.01重量%~10重量%である。
【0072】
透湿防水性樹脂用ポリウレタン樹脂(U)の製造においては、必要により反応停止剤を使用することができる。反応停止剤としては、炭素数1~8のモノアルコール類(メタノール、エタノール、イソプロパノール、セロソルブ類及びカルビトール類等)及び炭素数1~10のモノアミン類(モノメチルアミン、モノエチルアミン、モノブチルアミン、ジブチルアミン及びモノオクチルアミン等のモノ又はジアルキルアミン;モノエタノールアミン、ジエタノールアミン及びジイソプロパノールアミン等のモノ又はジアルカノールアミン等)が挙げられる。反応停止剤は1種を単独で用いても2種以上を併用してもよい。
【0073】
本発明における透湿防水性樹脂用ポリウレタン樹脂(U)は、必要により酸化防止剤、着色防止剤、耐候安定剤、可塑剤及び離型剤等の添加剤を含有することができる。これらの添加剤の使用量は(U)の重量を基準として好ましくは10重量%以下、更に好ましくは3重量%以下、特に好ましくは1重量%以下である。
【0074】
本発明の透湿防水性樹脂用ポリウレタン樹脂(U)中のオキシエチレン基の含有量は、透湿性と耐水性の観点から、ポリウレタン樹脂(U)の重量に基づいて好ましくは10~40重量%であり、更に好ましくは15~35重量%である。
【0075】
ポリウレタン樹脂(U)中のウレタン基及びウレア基の合計含有量は、得られるシート材料等の強度と透湿性の観点から、ポリウレタン樹脂(U)の重量に基づいて好ましくは0.5~3.8mmol/gであり、更に好ましくは1.0~3.8mmol/gである。
【0076】
ポリウレタン樹脂(U)中のウレタン基の含有量及びウレア基の含有量は、オキシエチレン基及びオキシテトラメチレン基を有するポリエーテルポリオール(A)、有機イソシアネート(C)、ならびに、必要により用いる他の活性水素含有化合物(B)及び鎖伸長剤(D)の種類及び使用量等を調整することにより、所望の範囲とすることができる。
ウレタン基及びウレア基含量は、窒素分析計によって定量されるN原子含量と1H-NMRによって定量されるウレタン基とウレア基の比率及びアロハネート基及びビューレット基含量から算出される。
【0077】
本発明の透湿防水性樹脂用ポリウレタン樹脂(U)のMnは、好ましくは5,000以上であり、得られるシート材料等の機械的物性、耐薬品性及び耐衝撃性等の観点から、更に好ましくは10,000~500,000である。Mnが5,000以上であるとシート材料等の機械的物性及び耐久性等が良好である。
【0078】
透湿防水性樹脂用ポリウレタン樹脂(U)のMnは、オキシエチレン基及びオキシテトラメチレン基を有するポリエーテルポリオール(A)、有機イソシアネート(C)、並びに、必要により前記他の活性水素含有化合物(B)及び鎖伸長剤(D)の種類及び使用量等を調整することにより、所望の範囲にすることができる。
【0079】
本発明における透湿防水性樹脂用ポリウレタン樹脂(U)のMnゲルパーミエーションクロマトグラフィーにより、例えば以下の条件で測定することができる。
装置:「HLC-8220GPC」[東ソー(株)製]
カラム:「Guardcolumn α」+「TSKgel α-M」[いずれも東ソー(株)製]
試料溶液:0.125重量%のジメチルホルムアミド溶液
溶液注入量:100μl
流量:1ml/分
測定温度:40℃
検出装置:屈折率検出器
基準物質:標準ポリスチレン
【0080】
透湿防水性樹脂用ポリウレタン樹脂(U)のガラス転移点は、得られるシート材料等の耐寒性及び破断伸度の観点から-90~-20℃であることが好ましく、更に好ましくは-85~-30℃である。
本発明におけるガラス転移点は、「Rheogel E-4000」[(株)ユービーエム製]で測定される。
【0081】
透湿防水性樹脂用ポリウレタン樹脂(U)は粒子状であってもよく、水を含む液体中に粒子状のポリウレタン樹脂(U)が分散された水性分散体状であることがより好ましい。水性分散体中ポリウレタン樹脂(U)の体積平均粒子径(Dv)は、0.01~1μmが好ましく、ポリウレタン樹脂水性分散体の分散安定性の観点から、より好ましくは0.02~0.7μm、更に好ましくは0.03~0.4μmである。(Dv)が0.01μm以上であるとハンドリング性が良好であり、1μm以下であると分散安定性が良好である。
【0082】
ポリウレタン樹脂(U)の体積平均粒子径(Dv)は、(U)中の親水性基、分散剤量及び分散工程で使用する分散機の種類及び運転条件によって制御できる。従って、(U)の体積平均粒子径(Dv)を所望の範囲とするためには、分散工程において、後述の回転式分散機、超音波式分散機及び混練機から選択される装置を用いると共に、必要により(U)中に導入される親水性基の含有量と、必要により添加する分散剤(h)の量を適宜調整すればよい。
体積平均粒子径(Dv)は光散乱粒度分布測定装置で測定される。
【0083】
<透湿防水性樹脂用ポリウレタン樹脂水性分散体及びその製造方法>
本発明の透湿防水樹脂用ポリウレタン樹脂水性分散体は、水と透湿防水樹脂用ポリウレタン樹脂とを含有する。
本発明のポリウレタン樹脂水性分散体に含まれる透湿防水性樹脂用ポリウレタン樹脂(U)はイソシアネート基末端ウレタンプレポリマー(P)と、鎖伸長剤(D)とを反応させてなるポリウレタン樹脂であり、、イソシアネート基末端ウレタンプレポリマー(P)は、オキシエチレン基及びオキシテトラメチレン基を有するポリエーテルポリオール(A)と、アニオン性基を有する活性水素含有化合物(b1)及び/又はカチオン性基を有する活性水素含有化合物(b2)と、有機イソシアネート(C)とを構成原料とするウレタンプレポリマーであることが好ましい。 上述の好ましいポリウレタン樹脂(U)は、オキシエチレン基及びオキシテトラメチレン基を有するポリエーテルポリオール(A)と、アニオン性基を有する活性水素含有化合物(b1)及び/又はカチオン性基を有する活性水素含有化合物(b2)と、有機イソシアネート(C)とを反応させて得られるイソシアネート基末端ウレタンプレポリマー(P)を水中に分散した後に前記ウレタンプレポリマー(P)と鎖伸長剤(D)を反応させることにより製造される。
本発明におけるポリウレタン樹脂水性分散体は、前記ウレタンプレポリマー(P)の分散性及び水性分散体の安定性の観点から、必要によりウレタンプレポリマー(P)を分散剤(h)の存在下で水に分散させることができる。
【0084】
分散剤(h)としては、ノニオン性界面活性剤(h1)、アニオン性界面活性剤(h2)、カチオン性界面活性剤(h3)、両性界面活性剤(h4)及びその他の乳化分散剤(h5)が挙げられる。(h)は1種を単独で用いても2種以上を併用してもよい。
【0085】
ノニオン性界面活性剤(h1)としては、例えばAO付加型ノニオン性界面活性剤及び多価アルコール型ノニオン性界面活性剤が挙げられる。AO付加型としては、炭素数10~20の脂肪族アルコールのEO付加物、フェノールのEO付加物、ノニルフェノールのEO付加物、炭素数8~22のアルキルアミンのEO付加物及びポリプロピレングリコールのEO付加物等が挙げられ、多価アルコール型としては、多価(3~8価又はそれ以上)アルコール(炭素数2~30)の脂肪酸(炭素数8~24)エステル(例えばグリセリンモノステアレート、グリセリンモノオレエート、ソルビタンモノラウレート及びソルビタンモノオレエート等)及びアルキル(炭素数4~24)ポリ(重合度1~10)グリコシド等が挙げられる。
【0086】
アニオン性界面活性剤(h2)としては、例えば炭素数8~24の炭化水素基を有するエーテルカルボン酸又はその塩[ラウリルエーテル酢酸ナトリウム及び(ポリ)オキシエチレン(付加モル数1~100)ラウリルエーテル酢酸ナトリウム等];炭素数8~24の炭化水素基を有する硫酸エステル又はエーテル硫酸エステル及びそれらの塩[ラウリル硫酸ナトリウム、(ポリ)オキシエチレン(付加モル数1~100)ラウリル硫酸ナトリウム、(ポリ)オキシエチレン(付加モル数1~100)ラウリル硫酸トリエタノールアミン及び(ポリ)オキシエチレン(付加モル数1~100)ヤシ油脂肪酸モノエタノールアミド硫酸ナトリウム等];炭素数8~24の炭化水素基を有するスルホン酸塩[ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム等];炭素数8~24の炭化水素基を1個又は2個有するスルホコハク酸塩;炭素数8~24の炭化水素基を有するリン酸エステル又はエーテルリン酸エステル及びそれらの塩[ラウリルリン酸ナトリウム及び(ポリ)オキシエチレン(付加モル数1~100)ラウリルエーテルリン酸ナトリウム等];炭素数8~24の炭化水素基を有する脂肪酸塩[ラウリン酸ナトリウム及びラウリン酸トリエタノールアミン等];並びに炭素数8~24の炭化水素基を有するアシル化アミノ酸塩[ヤシ油脂肪酸メチルタウリンナトリウム、ヤシ油脂肪酸サルコシンナトリウム、ヤシ油脂肪酸サルコシントリエタノールアミン、N-ヤシ油脂肪酸アシル-L-グルタミン酸トリエタノールアミン、N-ヤシ油脂肪酸アシル-L-グルタミン酸ナトリウム及びラウロイルメチル-β-アラニンナトリウム等]が挙げられる。
【0087】
カチオン性界面活性剤(h3)としては、例えば第4級アンモニウム塩型[塩化ステアリルトリメチルアンモニウム、塩化ベヘニルトリメチルアンモニウム、塩化ジステアリルジメチルアンモニウム及びエチル硫酸ラノリン脂肪酸アミノプロピルエチルジメチルアンモニウム等]並びにアミン塩型[ステアリン酸ジエチルアミノエチルアミド乳酸塩、ジラウリルアミン塩酸塩及びオレイルアミン乳酸塩等]が挙げられる。
【0088】
両性界面活性剤(h4)としては、例えばベタイン型両性界面活性剤[ヤシ油脂肪酸アミドプロピルジメチルアミノ酢酸ベタイン、ラウリルジメチルアミノ酢酸ベタイン、2-アルキル-N-カルボキシメチル-N-ヒドロキシエチルイミダゾリニウムベタイン、ラウリルヒドロキシスルホベタイン及びラウロイルアミドエチルヒドロキシエチルカルボキシメチルベタインヒドロキシプロピルリン酸ナトリウム等]並びにアミノ酸型両性界面活性剤[β-ラウリルアミノプロピオン酸ナトリウム等]が挙げられる。
【0089】
その他の乳化分散剤(h5)としては、例えばポリビニルアルコール、デンプン及びその誘導体、カルボキシメチルセルロース、メチルセルロース及びヒドロキシエチルセルロース等のセルロース誘導体並びにポリアクリル酸ソーダ等のカルボキシル基含有(共)重合体及び米国特許第5906704号明細書に記載のウレタン基又はエステル基を有する乳化分散剤[例えばポリカプロラクトンポリオールとポリエーテルジオールをポリイソシアネートで連結させたもの]等が挙げられる。
【0090】
分散剤(h)は、末端イソシアネート基含有ポリウレタンプレポリマー(P)のウレタン化反応前、ウレタン化反応中、ウレタン化反応後、(P)の水分散工程前、水分散工程中又は水分散後のいずれの時期に添加しても良いが、(P)の分散性及び水性分散体の安定性の観点から、水分散工程前又は水分散工程中に添加することが好ましい。
【0091】
分散剤(h)の含有量は末端イソシアネート基含有ポリウレタンプレポリマー(P)の重量を基準として好ましくは0.01~20重量%、更に好ましくは0.01~10重量%、特に好ましくは0.1~5重量%である。
【0092】
本発明における末端イソシアネート基含有ポリウレタンプレポリマー(P)は、オキシエチレン基及びオキシテトラメチレン基を有するポリエーテルポリオール(A)と、有機イソシアネート(C)と、必要により前記他の活性水素含有化合物(B)とをイソシアネート基/活性水素含有基の当量比が一般的に1.1~2.0となる割合で加熱可能な設備で加熱して反応することで得られる。例えば、容器中に(P)の原料を仕込んで均一撹拌後、加熱乾燥機や加熱炉で無撹拌下に加熱する方法や、簡易加圧反応装置(オートクレーブ)、フラスコ、一軸若しくは二軸の混練機、プラストミル又は万能混練機等で、攪拌又は混練しながら加熱して反応する方法等が挙げられる。
【0093】
ウレタンプレポリマー(P)を製造する際、均質な(P)を得る観点から、オキシエチレン基及びオキシテトラメチレン基を有するポリエーテルポリオール(A)と、アニオン性基を有する活性水素含有化合物(b1)及び/又はカチオン性基を有する活性水素含有化合物(b2)と、有機イソシアネート(C)とを有機溶剤の存在下で反応させることが好ましい。また、VOC低減の観点から、(P)の反応時に使用した有機溶剤は、(P)の反応工程の後の工程(例えば、鎖伸長剤による伸長工程中又は伸長工程後等)で留去することが好ましい。
【0094】
有機溶剤としては、ケトン系溶剤(例えばアセトン及びメチルエチルケトン)、エステル系溶剤(例えば酢酸エチル)、エーテル系溶剤(例えばテトラヒドロフラン)、アミド系溶剤(例えばN,N-ジメチルホルムアミド及びN-メチルピロリドン)、アルコール系溶剤(例えばイソプロピルアルコール)及び芳香族炭化水素系溶剤(例えばトルエン)等が挙げられ、特にアセトンを用いることが好ましい。本発明における透湿防水性樹脂用ポリウレタン樹脂水性分散体には、水以外に上記有機溶剤を含んでいてもよい。
【0095】
末端イソシアネート基含有ポリウレタンプレポリマー(P)の形成は、(P)のアロハネート基及びビューレット基の生成抑制の観点から、60~120℃が好ましく、更に好ましくは60~110℃であり、最も好ましくは60~100℃である。また、(P)を製造する際の時間は、使用する設備により適宜選択することができるが、一般的に1分~100時間が好ましく、更に好ましくは3分~30時間であり、特に好ましくは5分~20時間である。この範囲であれば、本発明の効果を十分に発揮できる(P)が得られる。
【0096】
ウレタン化反応速度をコントロールするために、公知の反応触媒(オクチル酸錫及びビスマスオクチル酸塩等)及び反応遅延剤(リン酸等)等を使用することができる。これらの触媒又は反応遅延剤の添加量は、(P)の重量を基準として、好ましくは0.001~3重量%、更に好ましくは0.005~2重量%、特に好ましくは0.01~1重量%である。
【0097】
ウレタンプレポリマー(P)を水中に分散する装置としては、分散能力のある装置であれば使用可能であるが、温度調整、粒状又はブロック状樹脂の供給及び分散能力等の観点から、回転式分散混合装置、超音波式分散機又は混練機を用いることが好ましく、なかでも分散能力が特に優れる回転式分散混合装置が更に好ましい。
【0098】
回転式分散混合装置の主たる分散原理は、駆動部の回転等によって処理物に外部から剪断力を与えて微粒子化し、分散させるというものである。また、回転式分散混合装置は、常圧、減圧又は加圧下で稼働させることができる。
【0099】
回転式分散混合装置としては、例えばマックスブレンドやヘリカル翼等の一般的な攪拌羽を有する混合装置、TKホモミキサー[プライミクス(株)製]、クレアミックス[エムテクニック(株)製]、フィルミックス[プライミクス(株)製]、ウルトラターラッ
クス[IKA(株)製]、エバラマイルダー[荏原製作所(株)製]、キャビトロン(ユーロテック社製)及びバイオミキサー[日本精機(株)製]等が例示される。
【0100】
回転式分散混合装置を用いてウレタンプレポリマー(P)を分散処理する際の回転数は、分散能力の観点から、好ましくは10~30000rpm、更に好ましくは20~20000rpm、特に好ましくは30~10000rpmである。
【0101】
超音波式分散装置の主たる分散原理は、駆動部の振動によって処理物に外部からエネルギーを与えて微粒子化し、分散させるというものである。また、超音波式分散装置は、常圧、減圧又は加圧下で稼働させることができる。
【0102】
超音波式分散装置としては、池本理化工業(株)、コスモ・バイオ(株)及び(株)ギンセン等から市販されている超音波式分散装置等を使用できる。
【0103】
超音波式分散装置を用いてウレタンプレポリマー(P)を分散処理する際の振動数は、分散能力の観点から、好ましくは1~100kHz、更に好ましくは3~60kHz、特に好ましくは10~30kHzである。
【0104】
混練機の主たる分散原理は、混練機の回転部で処理物を練ることでエネルギーを与えて微粒子化し、分散させるというものである。また混練機は、常圧、減圧又は加圧下で稼働させることができる。
【0105】
混練機としては、二軸押出機[池貝(株)製PCM-30等]、ニーダー[(株)栗本鐵工所製KRCニーダー等]、万能混合機[プライミクス(株)製ハイビスミックス等]及びプラストミル[(株)東洋精機製作所製ラボプラストミル等]等が例示される。
【0106】
混練機を用いてウレタンプレポリマー(P)を分散処理する際の回転数は、分散能力の観点から、好ましくは1~1000rpm、更に好ましくは3~500rpm、特に好ましくは10~200rpmである。
【0107】
分散装置に供給されるウレタンプレポリマー(P)と水の重量比は、目的とする水性分散体の樹脂成分含有量によって適宜選択されるが、好ましくは、(P)/水=10/2~10/100であり、更に好ましくは10/5~10/50である。
【0108】
また、(P)と水を分散装置で処理する時間は、分散性の観点から、好ましくは10秒~10時間、更に好ましくは1分~3時間、最も好ましくは10~60分である。
【0109】
分散装置にて分散を行う際は、必要に応じて、pH調整剤、消泡剤、抑泡剤、酸化防止剤、着色防止剤、可塑剤及び離型剤等から選ばれる添加剤を1種以上を添加することができる。また、必要に応じて、分散後に脱溶剤、濃縮及び希釈等を行ってもよい。
【0110】
ウレタンプレポリマー(P)を分散させた後に、鎖伸長剤(D)及び必要に反応停止剤を反応させる装置としては特に限定されないが、上記分散装置又はスタティックミキサー等で混合しながら反応させることが好ましい。
【0111】
本発明のポリウレタン樹脂水性分散体の固形分(不揮発性成分)の濃度は、水性分散体の取り扱い易さの観点から、好ましくは20~65重量%、更に好ましくは25~55重量%である。固形分の濃度は、水性分散体約1gをペトリ皿上にうすく伸ばし、精秤した後、循環式定温乾燥機を用いて130℃で、45分間加熱した後の重量を精秤し、加熱前の重量に対する加熱後の残存重量の割合(百分率)を計算することにより得ることができる。
【0112】
本発明のポリウレタン樹脂水性分散体の粘度は、好ましくは10~100,000mPa・s、更に好ましくは10~5,000mPa・sである。粘度はBL型粘度計を用いて、25℃の定温下で測定することができる。
本発明のポリウレタン樹脂水性分散体のpHは、好ましくは2~12、更に好ましくは4~10である。pHは、pH Meter M-12[堀場製作所(株)製]で、25℃で測定することができる。
【0113】
本発明のポリウレタン樹脂水性分散体は、必要によりその他の樹脂、架橋剤及び添加剤(触媒、顔料、顔料分散剤、粘度調整剤、消泡剤、レベリング剤、防腐剤、劣化防止剤、安定化剤及び凍結防止剤等)を1種又は2種以上添加することができる。
【0114】
その他の樹脂としては、例えば本発明におけるポリウレタン樹脂(U)以外の水分散性又は水溶性のポリウレタン樹脂、ポリアクリル樹脂及びポリエステル樹脂等が挙げられる。
【0115】
架橋剤としてはブロックイソシアネート化合物、メラミン化合物、オキサゾリン化合物、カルボジイミド化合物、アジリジン化合物、エポキシ化合物及びヒドラジン化合物等が挙げられる。架橋剤は、1種を単独で用いても2種以上を併用してもよい。 架橋剤の添加量はポリウレタン樹脂水性分散体の固形分の重量を基準として、好ましくは30重量%以下、更に好ましくは0.1~20重量%である。
【0116】
粘度調整剤としては増粘剤、例えば無機系粘度調整剤(ケイ酸ソーダ及びベントナイト等)、セルロース系粘度調整剤(Mnが20,000以上のメチルセルロール、カルボキシメチルセルロース及びヒドロキシメチルセルロース等)、タンパク質系粘度調整剤(カゼイン、カゼインソーダ及びカゼインアンモニウム等)、アクリル系(Mnが20,000以上のポリアクリル酸ナトリウム及びポリアクリル酸アンモニウム等)及びビニル系粘度調整剤(Mnが20,000以上のポリビニルアルコール等)が挙げられる。
消泡剤としては、長鎖アルコール(オクチルアルコール等)、ソルビタン誘導体(ソルビタンモノオレート等)及びシリコーンオイル(ポリメチルシロキサン及びポリエーテル変性シリコーン等)等が挙げられる。
【0117】
防腐剤としては、有機窒素硫黄化合物系防腐剤及び有機硫黄ハロゲン化物系防腐剤等が挙げられる。
劣化防止剤及び安定化剤(紫外線吸収剤及び酸化防止剤等)としてはヒンダードフェノール系、ヒンダードアミン系、ヒドラジン系、リン系、ベンゾフェノン系又はベンゾトリアゾール系劣化防止剤及び安定化剤等が挙げられる。
凍結防止剤としては、エチレングリコール及びプロピレングリコール等が挙げられる。
粘度調整剤、消泡剤、防腐剤、劣化防止剤、安定化剤及び凍結防止剤の含有量は、用いられる用途における前記の各組成物の重量を基準としてそれぞれ好ましくは5重量%以下、更に好ましくは3重量%以下である。
【0118】
<シート材料>
本発明のシート材料は、本発明の透湿防水性樹脂用ポリウレタン樹脂水性分散体を製膜してなるシート材料である。ポリウレタン樹脂分散体を、離型性の基剤(例えば離型紙、離型布等)に塗布した後乾燥させることにより透湿防水性を有するシート材料を得ることができる。
【0119】
上記のシート材料の製造方法について、更に詳細に説明する。まず、上記ポリウレタン樹脂分散体からなる塗布液を調製し、これをナイフコータ、パイプコータ又はバーコータ等を用いて離型紙上に塗布する。その後、100~160℃程度で30秒~5分間程度、エアーオーブン等の乾燥機で乾燥させることにより、ポリウレタン樹脂からなるシート材料を形成させる。該シート材料の厚みは、10~50μm程度が好ましい。シート材料の厚みは、塗布液を塗布する際、コータのスリットのクリアランスの調整や、塗布、乾燥を繰り返すことで調整することができる。
【0120】
当該シート材料は、繊維質基材の少なくとも片面に貼り合わせることにより透湿防水布帛とすることができる。繊維質基材については後述する。
【0121】
<透湿防水布帛>
本発明の透湿防水布帛は、本発明のシート材料と、当該シート材料の少なくとも一方の面に設けた繊維質基材とを含む。
繊維質基材のベース素材としては、綿、麻及びレーヨン等のセルロース系繊維、並びにポリエステル、ポリアミド及びポリオレフィン等の合成繊維等が挙げられる。繊維質基材の形態としては、織物、編物及び不織布等が挙げられ、これらのうち好ましくは織物及び編物である。
【0122】
本発明の透湿防水布帛の製造方法としては、例えば以下の(1)~(3)の方法が挙げられる。
(1)繊維質基材の一方の面の少なくとも一部と、本発明の防水性樹脂用ポリウレタン樹脂からなる表皮層とが接着されてなる透湿防水布帛の製造方法
この製造方法は、離型紙、ポリウレタン樹脂からなる表皮層、及び接着剤からなる接着層をこの順に積層してなる積層体の接着層側の面に、繊維質基材の片面の少なくとも一部を貼り合わせた後、離型紙を剥がすことにより透湿防水布帛を製造する方法である。当該製造方法は、具体的には、ポリウレタン樹脂分散体の塗布液を離型紙上に塗布して透湿防水性の層を形成する工程、該透湿防水性の層の上に接着剤を塗布して接着層を形成する工程、繊維質基材の片面の少なくとも一部を接着層に貼り付ける工程、及び離型紙を剥がす工程を含む。
【0123】
(2)繊維質基材の両面の少なくとも一部と本発明の防水性樹脂用ポリウレタン樹脂からなる表皮層とがそれぞれ接着されてなる透湿防水布帛の製造方法
ポリウレタン樹脂分散体の塗布液を離型紙上に塗布して表皮層を形成する工程、該表皮層上に接着剤を塗布して接着層を形成する工程、該接着層に上記(1)で得られた透湿防水布帛の繊維質基材側の少なくとも一部の面を貼り付ける工程、及び離型紙を剥がす工程を含む製造方法。
【0124】
(3)ポリウレタン樹脂からなる透湿防水層の両面の少なくとも一部と複数の繊維質基材とがそれぞれ接着されてなる透湿防水布帛の製造方法:
上記(1)で得られた透湿防水布帛の表皮層上に接着剤を塗布して接着層を形成する工程、及び該接着層に繊維質基材を貼り付ける工程を含む製造方法。
【0125】
上記の製造方法により得られた透湿防水布帛には、必要に応じフッ素系、シリコン系等の撥水剤を用いて撥水処理を行ってもよい。また、貼り付ける工程においては必要に応じ熱圧着を行ってもよい。
更に、離型紙を剥離した後の表皮層上(先に貼り合せた繊維質基材の反対側の面)に、再度、接着剤を付与し、その面と他に準備した別の繊維質基材とを貼り付けて、繊維質基材と繊維質基材の間に表皮層を有するものとしてもよい。貼り付ける工程においては必要に応じ熱圧着を行ってもよい。
【0126】
本発明の透湿防水布帛は、透湿性および耐水性に優れ、従来のものよりも水膨潤性を抑制できるので、フィッシングや登山等の際のアウトドアウェア、スキー関連ウェア、ウィンドブレーカー、アスレチックウェア、ゴルフウェア、レインウェア、カジュアルコート、屋外作業着、手袋、靴及びテント等の登山用具、紙オムツ、生理用品などの透湿性が要求されるような衛生材料用バックシート等に好適に用いることができる。
【実施例0127】
以下、実施例を以て本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されない。
【0128】
製造例1 [ポリエーテルポリオール(A-1)の製造]
撹拌装置、温度制御装置付きのステンレス製オートクレーブに1,4-ブタンジオール24.3重量部、テトラヒドロフラン423.3重量部及び三フッ化ホウ素テトラヒドロフラン錯体4.1重量部を入れた後、窒素置換し、50℃に加熱してエチレンオキサイド217.1重量部を反応温度が45~55℃になるように制御しながら連続的に投入した。得られた触媒を含む粗ポリオールに48重量%水酸化カリウム水溶液2.4重量部を加えて触媒を中和した後、ケイ酸マグネシウム及びケイソウ土を用いてろ過した後、130℃、圧力3.0kPaで脱水を行った。得られたポリエーテルポリオール(A-1)は、水酸基価56.0mgKOH/g、Mn2,000、EO/THFの重量比は39/61、水に不溶であった。
【0129】
製造例2 [ポリエーテルポリオール(A-2)の製造]
撹拌装置、温度制御装置付きのステンレス製オートクレーブに1,4-ブタンジオール30.1重量部、テトラヒドロフラン367重量部及び三フッ化ホウ素テトラヒドロフラン錯体4.3重量部を入れた後、窒素置換し、50℃に加熱してエチレンオキサイド285.8重量部を反応温度が45~55℃になるように制御しながら連続的に投入した。得られた触媒を含む粗ポリオールに48重量%水酸化カリウム水溶液1.9重量部を加えて触媒を中和した後、ケイ酸マグネシウム及びケイソウ土を用いてアルカリ除去したのち、130℃、圧力3.0kPaで脱水を行った。得られたポリエーテルポリオール(A-2)は、水酸基価56.1mgKOH/g、Mn2,000、EO/THFの重量比は48/52、水に不溶であった。
【0130】
製造例3 [ポリエーテルポリオール(A-3)の製造]
撹拌装置、温度制御装置付きのステンレス製オートクレーブに1,4-ブタンジオール24.3重量部、テトラヒドロフラン868.6重量部及び三フッ化ホウ素テトラヒドロフラン錯体7.6重量部を入れた後、窒素置換し、50℃に加熱してエチレンオキサイド499.0重量部を反応温度が45~55℃になるように制御しながら連続的に投入した。得られた触媒を含む粗ポリオールに48重量%水酸化カリウム水溶液2.4重量部を加えて触媒を中和した後、ケイ酸マグネシウム及びケイソウ土を用いてろ過した後、130℃、圧力3.0kPaで脱水を行った。得られたポリエーテルポリオール(A-3)は、水酸基価22.4mgKOH/g、Mn5,000、EO/THFの重量比は38/62、水に不溶であった。
【0131】
製造例4 [ポリエーテルポリオール(A-4)の製造]
製造例1の三フッ化ホウ素テトラヒドロフラン錯体に代えて四塩化スズ5重量部を触媒として用い、30~40℃でEOを滴下し、6時間熟成した以外は同様の操作を行い比較のポリエーテルポリオール(A-4)を得た。水酸基価55.6mgKOH/g、Mn2,020、EO/THFの重量比は41/59、水に不溶であった。
【0132】
製造例5 [ポリエーテルポリオール(A-5)の製造]
使用するテトラヒドロフラン及びエチレンオキサイドの部数を各々324重量部及び263重量部とした以外は製造例1と同様の操作を行い比較のポリエーテルポリオール(A-5)を得た。
水酸基価56.3mgKOH/g、Mn1990、EO/THFの重量比は69/31、水に可溶であった。
【0133】
<製造例6~18>
撹拌機及び加熱装置を備えた簡易加圧反応装置に表1に記載の各原料(重量部)を仕込んで85℃で10時間攪拌してウレタン化反応を行い、ウレタンプレポリマー(P-1)~(P-13)のメチルエチルケトン溶液を製造した。
【0134】
<比較製造例1>
撹拌機及び加熱装置を備えた簡易加圧反応装置に表1に記載の各原料を仕込んで85℃で10時間攪拌してウレタン化反応を行い、ウレタンプレポリマー(P’-1)のメチルエチルケトン溶液を製造した。
【0135】
【0136】
<実施例1>
攪拌機及び加熱反応装置を備えた反応装置に表2記載の各原料を次のように仕込んだ。製造例6で得られたウレタンプレポリマー(P-1)のメチルエチルエチルケトン溶液100重量部を入れ、40℃で撹拌しながら、中和剤としてのトリエチルアミン0.94重量部を加え、60rpmで30分間均一化した後、温度を60℃に保ち、500rpmで攪拌下、イオン交換水96.8重量部を徐々に添加することで乳化した後、鎖伸長剤としてエチレンジアミン22.7重量部を加え1時間撹拌した後、減圧下(-0.06MPa)65℃で3時間かけてメチルエチルケトンを留去し、透湿防水性樹脂用ポリウレタン樹脂(U-1)を含む透湿防水性樹脂用ポリウレタン樹脂水性分散体(Q-1)を得た。
【0137】
<実施例2~13及び比較例1~4>
表2に記載の原料を用いること以外は実施例1と同様にして、透湿防水性樹脂用ポリウレタン樹脂(U)をそれぞれ含む透湿防水性樹脂用ポリウレタン樹脂水性分散体(Q-2)~(Q-10)及び比較用の透湿防水性樹脂用ポリウレタン樹脂水性分散体(Q’-1)~(Q’-4)を得た。
【0138】
実施例1~13及び比較例1~4で得られた透湿防水性樹脂用ポリウレタン樹脂水性分散体(Q-1)~(Q-13)及び(Q’-1)~(Q’-4)の各種物性値及び評価結果を表2に示す。尚、本発明における各種物性値の測定方法及び評価方法は以下の通りである。但し、比較例3は離型紙からフィルムを剥がすことができず評価ができなかった。
【0139】
【表2】
カルボジライトV-02(日清紡ケミカル株式会社製、ポリカルボジイミド樹脂)
【0140】
[評価方法]
<透湿防水性樹脂用ポリウレタン樹脂水性分散体の分散安定性>
透湿防水性樹脂用ポリウレタン樹脂水性分散体を25℃で12時間静置して、沈降物の発生を目視にて評価した。沈降物が発生しない場合を○、沈降物が発生した場合を×とした。
【0141】
<透湿防水性樹脂用ポリウレタン樹脂水性分散体のフィルムの透湿性の評価>
離型紙上に透湿防水性樹脂用ポリウレタン樹脂水性分散体を乾燥後のフィルム膜厚が16μmの厚さになるように塗布し、80℃で10分間、更に120℃で1分乾燥させて透湿防水性樹脂用ポリウレタン樹脂水性分散体を製膜してなるフィルム(シート材料)を得た。得られたフィルムの透湿性を測定した。フィルムの透湿度(A-1透湿度)の測定は、JIS L-1099-2012のA-1法(塩化カルシウム法)に基づいて行った。A-1透湿度は、2000g/m2・24時間以上であると良好である。
【0142】
<耐水圧の測定方法(耐水性の評価)>
離型紙上にポリウレタン樹脂水性分散体を乾燥後のフィルム膜厚が16μmの厚さになるように塗布し、80℃で10分間、更に120℃で1分乾燥させて耐水性測定用のフィルムを得た。得られた耐水性測定用フィルムについて、JIS L1092-1998(高耐水圧法)に準じて、耐水圧を測定した。水圧をかけることにより試験片が伸びる場合には、試験片の上にナイロンタフタ(密度:縦糸+横糸=210本/2.54cm相当)を重ねた後に、試験機に取り付けて測定した。耐水圧は10000mmH2O以上であると良好である。
【0143】
<透湿防水性樹脂用ポリウレタン樹脂水性分散体の皮膜の水膨潤性(水膨潤率)>
縦10cm×横20cm×深さ1cmのポリプロピレン製モールドに、乾燥後のフィルム膜厚が200μmになる量の透湿防水性樹脂用ポリウレタン樹脂水性分散体を流し込み、室温で12時間乾燥後、循風乾燥機で、105℃で3時間加熱乾燥することによって水膨潤性試験用のフィルムを得た。フィルムから幅1cm、長さ10cmの試験片を切り出し、間に8cm間隔の標線を2本引き、イオン交換水に2時間浸漬して膨潤させた後の標線間距離L1(cm)を測った。当該測定値を用いて下記式により水膨潤率を算出した。水膨潤率が9%以下であると良好であり、5%以下であると更に良好である。
水膨潤率(%)=100×[(L1)-(L0)]/(L0)
L0:ウレタンフィルムの水浸漬前の長さ(cm)(本試験例では8cm)
L1:ウレタンフィルムの水浸漬後の長さ(cm)
【0144】
<ポリウレタン樹脂水性分散体のフィルムの風合いの評価>
上記水膨潤性試験用に作製したフィルム(フィルム膜厚が200μmのもの)の風合いを評価した。当該試験は手の触感による官能試験で行い、比較例4のフィルムに対する触感を下記基準により評価した。
◎:比較例4のフィルムよりも柔らかい触感(極めてソフト)
○:比較例4のフィルムと同程度の柔らかい触感(ソフト)
×:比較例4のフィルムよりも硬い触感(ハード)
本発明の透湿防水樹脂用ポリウレタン樹脂は、水膨潤性抑制効果に優れる。また本発明の透湿防水樹脂用ポリウレタン樹脂は透湿性および耐水性にも優れ、風合いがよいことから、フィッシングや登山等の際のアウトドアウェア、スキー関連ウェア、ウィンドブレーカー、アスレチックウェア、ゴルフウェア、レインウェア、カジュアルコート、屋外作業着、手袋、靴及びテント等の登山用具等に用いられる透湿防水素材として特に有用である。