(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022006565
(43)【公開日】2022-01-13
(54)【発明の名称】エレベータの群管理システム
(51)【国際特許分類】
B66B 1/18 20060101AFI20220105BHJP
【FI】
B66B1/18 N
B66B1/18 D
B66B1/18 K
B66B1/18 Q
B66B1/18 R
【審査請求】有
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020108854
(22)【出願日】2020-06-24
(71)【出願人】
【識別番号】390025265
【氏名又は名称】東芝エレベータ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001737
【氏名又は名称】特許業務法人スズエ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】杉原 俊雄
【テーマコード(参考)】
3F502
【Fターム(参考)】
3F502HA01
3F502HB01
3F502HB02
3F502JA25
3F502JA27
3F502JA48
3F502JA73
3F502MA03
(57)【要約】
【課題】ハイブリッドDCSにおいて、上下呼びと行先呼びの特性を考慮した割当制御によって停車回数を抑え、利用者を効率的に運んで群管理性能の向上を図る。
【解決手段】一実施形態に係るエレベータの群管理システムは、上下呼びが登録された第1の出発階に停車予定を持ち、上記第1の出発階に対して上記上下呼びと同じ方向に応答可能な乗りかごを優先候補として選出する第1の優先割当手段と、行先呼びが登録された第2の出発階と上記行先呼びの行先階に停車予定を持ち、上記行先呼びと同じ方向に応答可能な乗りかごを優先候補として選出する第2の優先割当手段と、上記第1の優先割当手段によって選出された乗りかごに上記上下呼びを割り当て、上記第2の優先割当手段によって選出された乗りかごに上記行先呼びを割り当る割当かご決定手段とを具備する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
乗場で上下呼びを登録するための第1の登録装置と、上記第1の登録装置が設置された階とは異なる階の乗場に設置され、行先呼びを登録するための第2の登録装置とを備えたエレベータの群管理システムにおいて、
上記上下呼びが登録された第1の出発階に停車予定を持ち、上記第1の出発階に対して上記上下呼びと同じ方向に応答可能な乗りかごを優先候補として選出する第1の優先割当手段と、
上記行先呼びが登録された第2の出発階と上記行先呼びの行先階に停車予定を持ち、上記行先呼びと同じ方向に応答可能な乗りかごを優先候補として選出する第2の優先割当手段と、
上記第1の優先割当手段によって選出された乗りかごに上記上下呼びを割り当て、上記第2の優先割当手段によって選出された乗りかごに上記行先呼びを割り当る割当かご決定手段と
を具備したことを特徴とするエレベータの群管理システム。
【請求項2】
上記第2の優先割当手段は、
上記第2の出発階と上記行先呼びの行先階に停車予定を持つ乗りかごについて、
上記行先階の停車予定は上記第2の出発階の停車予定よりも後であり、上記第2の出発階から上記行先階までの間に方向を変えずに運行することを条件とすることを特徴とする請求項1記載のエレベータの群管理システム。
【請求項3】
上記第2の優先割当手段は、
上記第2の出発階と上記行先階のうち、上記行先階のみに停車予定を持つ乗りかごが存在した場合に、上記第2の出発階を停車予定に加えたときに上記行先呼びと同じ方向に応答可能であれば、上記第2の出発階と上記行先階の両方に停車予定を持つ乗りかごよりも優先度を低くして、当該乗りかごを優先候補として選出することを特徴とする請求項1記載のエレベータの群管理システム。
【請求項4】
上記第2の優先割当手段は、
上記第2の出発階を停車予定に加えたときに上記行先呼びと同じ方向に応答可能な乗りかごについて、
上記行先階の停車予定は上記第2の出発階の停車予定よりも後であり、上記第2の出発階から上記行先階までの間に方向を変えずに運行することを条件とすることを特徴とする請求項3記載のエレベータの群管理システム。
【請求項5】
上記第1および第2の優先割当手段は、
上記乗りかごの混雑度を考慮して優先候補を選出することを特徴とする請求項1記載のエレベータの群管理システム。
【請求項6】
上記第1および第2の優先割当手段は、
上記乗りかごが一定値以上の荷重を有し、方向反転せずに応答する場合には、混雑度が高いと判断し、上記乗りかごを優先候補から除外することを特徴とする請求項5記載のエレベータの群管理システム。
【請求項7】
上記第1および第2の優先割当手段は、
上記乗りかごの呼びに対する待ち時間を考慮して優先候補を選出することを特徴とする請求項1記載のエレベータの群管理システム。
【請求項8】
上記第1および第2の優先割当手段は、
上記乗りかごの到着予定時間が第1の閾値以上の場合、あるいは、他の乗りかごの到着予定時間と比べて第2の閾値以上の差を有して大きい場合には、上記乗りかごを優先候補から除外することを特徴とする請求項7記載のエレベータの群管理システム。
【請求項9】
混雑日時を設定する混雑日時設定手段を備え、
上記第1および第2の優先割当手段は、
上記混雑日時設定手段によって設定された混雑日時に優先割当処理を実行することを特徴とする請求項1記載のエレベータの群管理システム。
【請求項10】
上記第1の優先割当手段は、
上記第1の出発階に停車中、または、上記第1の出発階に向けて減速中の乗りかごを含めて優先候補を選出し、
上記第2の優先割当手段は、
上記第2の出発階に停車中、または、上記第2の出発階に向けて減速中の乗りかごを含めて優先候補を選出することを特徴とする請求項1記載のエレベータの群管理システム。
【請求項11】
上記乗りかごが上かごと下かごで構成されるダブルデッキエレベータにおいて、
上記第1の優先割当手段および第2の優先割当手段は、
上記上かごと上記下かごとの位置関係から呼びに対する停車予定階を判断し、その判断結果に基づいて優先候補を選出することを特徴とする請求項1記載のエレベータの群管理システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、エレベータの群管理システムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、乗場にて直接行先階を指定可能な乗場行先階登録装置(HDC:Hall Destination Controller)を備えたエレベータシステムが実用化されている。このようなエレベータシステムを「行先階制御システム(DCS:Destination Control System)」と呼ぶ。DCSは、利用者が乗場で登録した行先階を有する呼び(以下、「行先呼び」と称す)に基づいて、複数台の乗りかごの中から最適な乗りかごを選出して当該乗場に応答させる。この場合、同じ行先階の利用者を同じ乗りかごに乗車させることで、輸送効率の向上を図っている。
【0003】
ここで、乗場行先階登録装置とは別に、一般的な上下呼びを登録するための上下呼び登録装置を併用する「ハイブリッドDCS」がある。乗場行先階登録装置と上下呼び登録装置は別々の階に設置される。乗場行先階登録装置が設置された階で行先呼びを登録した利用者は、かご内でかご呼びを登録することなく、行先階へ移動できる。また、上下呼び登録装置が設置された階で上下呼びを登録した利用者は、自身の行先階をかご内の操作盤でかご呼びとして登録してから行先階へ移動する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第5511037号公報
【特許文献2】特許第5159794号公報
【特許文献3】特許第5477387号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述したハイブリッドDCSでは、上下呼びと行先呼びが混在して登録される。このため、一般的に知られている割当制御方法を用いて、呼びに対して最も早く応答可能な乗りかごを割当かごとして選出すると、その乗りかごの運行状態(停車階と運転方向など)によっては停車回数が増え、群管理性能が低下する可能性がある。
【0006】
本発明が解決しようとする課題は、ハイブリッドDCSにおいて、上下呼びと行先呼びの特性を考慮した割当制御によって停車回数を抑え、利用者を効率的に運んで群管理性能の向上を図ることのできるエレベータの群管理システムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
一実施形態に係るエレベータの群管理システムは、乗場で上下呼びを登録するための第1の登録装置と、上記第1の登録装置が設置された階とは異なる階の乗場に設置され、行先呼びを登録するための第2の登録装置とを備える。上記エレベータの群管理システムは、上記上下呼びが登録された第1の出発階に停車予定を持ち、上記第1の出発階に対して上記上下呼びと同じ方向に応答可能な乗りかごを優先候補として選出する第1の優先割当手段と、上記行先呼びが登録された第2の出発階と上記行先呼びの行先階に停車予定を持ち、上記行先呼びと同じ方向に応答可能な乗りかごを優先候補として選出する第2の優先割当手段と、上記第1の優先割当手段によって選出された乗りかごに上記上下呼びを割り当て、上記第2の優先割当手段によって選出された乗りかごに上記行先呼びを割り当る割当かご決定手段とを具備することを特徴とする。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】
図1は第1の実施形態に係るエレベータの群管理システムの構成を示すブロック図である。
【
図2】
図2は同実施形態における乗場行先階登録装置の一例を示す図である。
【
図3】
図3は同実施形態における乗場行先階表示装置の一例を示す図である。
【
図4】
図4は同実施形態における行先呼びに対する優先割当制御を説明するための図である。
【
図5】
図5は
図4の記号に関する凡例を説明するための図である。
【
図6】
図6は同実施形態における行先呼びに対する優先割当制御を説明するための図である。
【
図7】
図7は同実施形態における行先呼びに対する優先割当制御を説明するための図である。
【
図8】
図8は同実施形態における上下呼びに対する優先割当制御を説明するための図である。
【
図9】
図9は同実施形態における乗りかごの混雑度を考慮した優先割当制御を説明するための図である。
【
図10】
図10は同実施形態における乗りかごの混雑度を考慮した優先割当制御を説明するための図である。
【
図11】
図11は同実施形態における混雑管理テーブルの一例を示す図である。
【
図12】
図12は同実施形態における一般階の乗場で登録される上下呼びの割当処理を示すフローチャートである。
【
図13】
図13は同実施形態における一般階の乗場で登録される上下呼びの割当処理を示すフローチャートである。
【
図14】
図14は同実施形態におけるHDC設置階の乗場で登録される行先呼びの割当処理を示すフローチャートである。
【
図15】
図15は同実施形態におけるHDC設置階の乗場で登録される行先呼びの割当処理を示すフローチャートである。
【
図16】
図16は第2の実施形態に係るダブルデッキエレベータの群管理システムの構成を示すブロック図である。
【
図17】
図17は上記ダブルデッキエレベータの上かごと下かごの停車予定階を考慮した優先割当制御を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
まず、本発明が前提としているハイブリッドDCSについて説明する。
ハイブリッドDCSは、一部の階に乗場行先階登録装置(HDC)、残りの階に上下呼び登録装置を備える。ハイブリッドDCSは、全ての階に上下呼び登録装置を備えた通常の群管理システムと比べ、利用者が多い環境で利用される。ただし、全ての階にHDCを備えたフルDCSよりも利用者が少ない環境で利用される。
【0010】
ハイブリッドDCSでは、例えば建物の出入口につながる階(出発基準階)や食堂階など、利用者が多い階にHDCが設置される。利用者が少ない階には、通常の上下呼び登録装置が設置される。なお、以下では、HDCが設置された階を「HDC設置階」、通常の上下呼び登録装置が設置された階を「一般階」と呼ぶ。また、呼び(上下呼び/行先呼び)が登録された階のことを「登録階」または「出発階」と呼ぶ。「出発階」とは、呼びに応答した乗りかご(割当かご)が利用者を乗せて出発する階のことを意味する。
【0011】
ここで、多くの利用者がHDC設置階から一般階へ向かう第1の時間帯と、一般階からHDC設置階へ向かう第2の時間帯に混雑が発生する。第1の時間帯は、例えば出勤時間帯や、多数の利用者が食堂階から各階の職場に戻る時間帯(昼食時後半)である。第2の時間帯は、例えば退勤時間帯や、多数の利用者が各階の職場から食堂へ向かう時間帯(昼食時前半)である。一般的に、HDC設置階の方が一般階よりも少ない。このため、HDC設置階から利用者が乗車する第1の時間帯の方が、一般階から利用者が乗車する第2の時間帯よりも1階床当たりの利用者発生頻度が大きくなる。
【0012】
利用者が乗場で登録した呼び(上下呼び/行先呼び)に対し、運転サービスを行う乗りかごを決める制御のことを「割当制御」と言う。この割当制御では、呼びが登録されてから乗りかごが出発階に応答するまでの時間、または、呼びが登録されてから乗りかごが出発階に応答した後で行先階に到着するまでの時間が全ての利用者にとって短くなるような乗りかごを割当かごとして選出することを目的としている。
【0013】
そのための方法としては、例えば、新たに乗場で登録された呼びの仮割当や、登録済みの呼び・割当に従って各乗りかごの運行を予測し、その予測結果から呼びに応答するまでの時間が最短となる乗りかごを割当かごとして選ぶ方法がある。ただし、上下呼びについては、利用者が乗りかごに乗車して行先階を指定するまで、乗りかごがどこに向かうのかが分からないため、既知の方法により仮の行先階を捕って運行予測を行うことになる。この方法は、割当処理を行った時点で登録されている呼びに対しては、最も良い乗りかごを選ぶことができる。しかし、新たな呼びが発生し続けるため、実際には割当処理を行う時点の予測結果から最良と考えられる乗りかごを選んでも、最良の運行ができるとは限らない。この問題は、割当かごを決める時点での予測では、将来発生する呼びを反映できないことが原因であり、避けることが難しい。
【0014】
ここで、上下呼びが登録されたときに、その上下呼びの出発階に停車予定を持つ乗りかごに優先的に割り当てる方法が考えられる。この方法によれば、もともと出発階に停車予定を持っていた乗りかごが応答するので、別の乗りかごが応答する場合に比べて停車回数を減らすことができる。しかし、行先呼びに関しては、同じ階で登録した多数の利用者が1つの乗りかごに集中してしまう可能性がある。この場合、乗りかごが各利用者の行先階毎に停車するので、かえって、停車回数が増えて、運行効率が落ちる。
【0015】
以下では、ハイブリッドDCSにおいて、上下呼びと行先呼びの特性を考慮して、乗りかごの停車回数を抑えた割当制御によって利用者を効率的に運ぶ方法について説明する。
なお、開示はあくまで一例にすぎず、以下の実施形態に記載した内容により発明が限定されるものではない。当業者が容易に想到し得る変形は、当然に開示の範囲に含まれる。説明をより明確にするため、図面において、各部分のサイズ、形状等を実際の実施態様に対して変更して模式的に表す場合もある。複数の図面において、対応する要素には同じ参照数字を付して、詳細な説明を省略する場合もある。
【0016】
(第1の実施形態)
図1は第1の実施形態に係るエレベータの群管理システムの構成を示すブロック図であり、複数台の乗りかごが群管理された構成が示されている。なお、乗りかごの台数は任意であり、少なくとも2台以上あれば良い。図中の11a,11b,11c…はエレベータ制御装置、12a,12b,12c…は乗りかごである。
【0017】
エレベータ制御装置11a,11b,11c…は、各号機の乗りかご12a,12b,12c…に対応して設けられている。エレベータ制御装置11aは、A号機の乗りかご12aの運転制御を行う。具体的には、エレベータ制御装置11aは、乗りかご12aを昇降動作させるための図示せぬモータ(巻上機)の制御やドアの開閉制御などを行う。B号機のエレベータ制御装置11b、C号機のエレベータ制御装置11cも同様である。これらのエレベータ制御装置11a,11b,11c…は、CPU、ROM、RAM等を備えたコンピュータによって構成される。乗りかご12a,12b,12c…は、モータ(巻上機)の駆動により昇降路内を昇降動作する。
【0018】
乗りかご12a,12b,12c…には、それぞれにかご呼びを登録するためのかご呼び登録装置13a,13b,13c…が備えられている。「かご呼び」は、図示せぬかご操作盤上に設けられた階床ボタンの操作によって登録される呼びであり、利用者の行先階と乗りかごの情報を含んでいる。
【0019】
ここで、本実施形態は、ハイブリッドDCS方式のエレベータの群管理システムを想定している。ハイブリッドDCSは、上下呼び登録装置21と、乗場行先階登録装置(HDC)22とを備える。上下呼び登録装置21と乗場行先階登録装置22は、それぞれに別の階の乗場に設置されている。上下呼び登録装置21は、図示せぬ上下方向ボタンの操作により、乗場で上下呼びを登録するための第1の登録装置である。上下呼びには、出発階(呼び登録階)と利用者の行先方向(上り方向/下り方向)の情報が含まれている。乗場行先階登録装置22は、乗場で行先呼びを登録するための第2の登録装置である。行先呼びには、出発階(呼び登録階)と利用者の行先階の情報が含まれている。
【0020】
図2に示すように、乗場行先階登録装置22は、利用者の行先階を入力するための操作部22aと、操作部22aによって入力された行先階に向かう乗りかご(割当かご)を利用者に知らせるための表示部22bとを有する。「割当かご」とは、呼びが登録された乗りかごのことである。なお、行先階の入力方法としては、テンキーの操作によるものが一般的であるが、例えばICカードなどを用いた方法であっても良い。また、乗場行先階登録装置22は、乗場から離れた場所に設置されていても良い。
【0021】
図2の例では、利用者が入力した行先階が13階であり、その行先階に対してA号機の乗りかご12aが割り当てられたことが表示されている。利用者は、この表示に従ってA号機の乗場で待機することになる。
【0022】
利用者が円滑に割当かごに乗車できるように、
図3に示すように、乗場24には乗場ドア25の近傍に乗場行先階表示装置(HDI)23が設置されている。乗場行先階表示装置23は、乗りかごの行先階を所定の時間、表示するための装置である。上記「所定の時間」とは、乗場行先階表示装置23の設置階において、その乗りかごの行先階へ向けた応答を完了するまでの間である。
図3の例では、A号機の行先階として7階、11階、13階が表示されている。このような表示により、利用者は乗りかごの行先階を確認した上で乗車できる。
【0023】
なお、
図3の例では、A号機の乗場行先階表示装置23だけが示されているが、実際には各号機毎に乗場行先階表示装置23が設置されており、それぞれに対応した乗りかごの行先階が表示される。
【0024】
群管理制御装置30は、乗りかご12a,12b,12c…の運転を統括的に制御する装置である。群管理制御装置30は、エレベータ制御装置11a,11b,11c…と同様に、CPU、ROM、RAM等を備えたコンピュータによって構成される。本実施形態において、この群管理制御装置30には、呼び管理部31、運転情報取得部32、運行予測部33、割当評価部34、停車判断部35、長待ち判断部36、混雑度判断部37、混雑日時設定部38、優先割当部39、割当かご決定部40、割当出力部41が備えられている。なお、これらは、ソフトウェアによって実現しても良いし、IC(Integrated Circuit)等のハードウェアにより実現しても良いし、ソフトウェアおよびハードウェアを併用して実現しても良い。
【0025】
呼び管理部31は、乗場で登録される上下呼び、行先呼び、かご内で登録されるかご呼びを受け付け、これらの呼びが割り当てられた乗りかごの情報と共に管理する。
【0026】
運転情報取得部32は、エレベータ制御装置11a,11b,11c…を通じて各号機の乗りかご12a,12b,12c…の運転情報(現在位置、運転方向、ドアの開閉状態、荷重など)を取得する。
【0027】
運行予測部33は、現在の乗りかご12a,12b,12c…の位置を出発点にして、登録済みの呼びと、新たに登録された呼びなどに従って乗りかご12a,12b,12c…の運行を予測し、その予測結果から各呼びに対する応答時間などを算出する。
【0028】
割当評価部34は、運行予測部33の予測結果に基づいて、新たな呼びを乗りかご12a,12b,12c…のそれぞれに割り当てた場合の評価値を所定の評価関数式に従って算出する。なお、評価値は、その値が小さいほど、評価が高いことを意味している。したがって、評価値が最も小さい乗りかごが割当かごとして選出されることになる。この割当評価部34は、通常の割当制御を実現するための構成要素である。これに対し、停車判断部35、長待ち判断部36、混雑度判断部37、優先割当部39は、後述する優先度割当制御を実現するための構成要素である。
【0029】
停車判断部35は、運行予測部33で得られた予測結果に基づいて、上下呼びが登録された階(以下、第1の出発階と称す)に停車予定を持つ乗りかごの有無を判断する。また、停車判断部35は、運行予測部33で得られた予測結果に基づいて、行先呼びが登録された階(以下、第2の出発階と称す)と当該行先呼びの行先階に停車予定を持つ乗りかごの有無を判断する。
【0030】
長待ち判断部36は、運行予測部33で得られた予測結果に基づいて、上下呼びまたは行先呼びに対する待ち時間を判断する。優先度割当制御では、この待ち時間を考慮して優先候補が選出される。
【0031】
混雑度判断部37は、運行予測部33で得られた予測結果に基づいて、乗りかごの混雑度を判断する。優先度割当制御では、この混雑度を考慮して優先候補が選出される。
【0032】
混雑日時設定部38は、混雑日時(混雑する曜日、時間など)を設定する。この混雑日時設定部38によって設定された混雑日時に関する情報は、後述する混雑管理テーブルTBに記憶される(
図11参照)。優先度割当制御は、この混雑管理テーブルTBに記憶された混雑日時に実行される。
【0033】
優先割当部39は、上下呼びまたは行先呼びが登録された際に、これらの呼びを優先的に乗りかごに割り当てるための優先割当処理を実行する。この優先割当部39は、上下呼びの優先割当処理を実行する第1の優先割当部39aと、行先呼びの優先割当処理を実行する第2の優先割当部39bに分けられる。第1の優先割当部39aは、上下呼びの登録階である第1の出発階に停車予定を持ち、上記第1の出発階に対して当該上下呼びと同じ方向に応答可能な乗りかごを優先候補として選出する。第2の優先割当部39bは、行先呼びの登録階である第2の出発階と行先呼びで指定された行先階に停車予定を持ち、当該行先呼びと同じ方向に応答可能な乗りかごを優先候補として選出する。ただし、行先階の停車予定は、第2の出発階の停車予定よりも後であり、第2の出発階から行先階までの間に方向を変えずに運行することを条件とする。
【0034】
割当かご決定部40は、割当評価部34または優先割当部39を用いて最終的な割当かごを決定する。優先割当部39から優先候補が選出されていれば、その優先候補の中の乗りかごが優先的に割当かごとして決定される。
【0035】
割当出力部41は、エレベータ制御装置11a,11b,11c…の中の割当かごに対応したエレベータ制御装置に割当信号を出力して、その割当かごを呼びの出発階に応答させる。また、割当出力部41は、乗場行先階登録装置22に割当かごの情報を送って、乗場行先階登録装置22の表示部22bに表示させる。また、割当出力部41は、割当かごに対応した乗場行先階表示装置23に行先階を表示させる。
【0036】
次に、本実施形態のハイブリッドDCSにおける上下呼びと行先呼びの特性を考慮した割当制御について説明する。
【0037】
(1)行先呼びに対する優先割当制御
HDC設置階で登録される行先呼びに関しては、出発階と行先階の両方に停車予定を持つ乗りかごにその行先呼びを優先的に割り当てる。ただし、行先階の停車予定は、出発階の停車予定よりも後であり、出発階から行先階までの間に方向を変えずに運行することを条件とする。
【0038】
図4に具体例を示す。
図5は図中の記号に関する凡例である。
例えば、A号機の乗りかごに1階→4階、1階→8階の行先呼びが割当済みの状況で、4階のHDCで8階行きの行先呼びが新たに登録されたとする。この場合、A号機の乗りかごは4階と8階に既に停車予定を持ち、かつ、4階出発後は方向を変えずに8階まで運行するので、A号機に当該行先呼びを優先的に割り当てる。
【0039】
また、既に出発階に停車中の乗りかごも同様である。例えば、4階のHDCで8階行先の行先呼び登録されたとき、現在4階で停車中であり、8階に停車予定を持ち、4階から出発した後は方向を変えずに8階まで運行可能な乗りかごが優先候補となる。ただし、出発階だけが一致する乗りかごは候補対象外とする。ハイブリッドDCSにおいて、HDC設置階は、他の階よりも多くの利用者が乗車する特別な階である。出発階だけが一致した乗りかごに行先呼びを優先的に割り当てると、特定の乗りかごだけが多数の利用者を引き受け、停車階が増える可能性が高い。
【0040】
図6は、1階のHDCで2~8階へ向かう多数の利用者が1人ずつ行先呼びを登録した例を示している。出発階だけが一致する乗りかごを優先すると、全ての行先呼びがC号機の乗りかごに割り当てられ、停車回数が増えてしまう。これに対し、出発階と行先階のうち、行先階だけが一致する乗りかごを優先することには、各乗りかごをスムーズに運転する上で、ある程度の価値がある。「スムーズに運転する」とは、昇降路を1周するのに要する時間を短くできることを意味する。出発階・行先階の両方が一致する場合と比べると、出発階に対する停車回数は増えるが、多数の利用者が同じ乗りかごに集中することはない。したがって、行先階だけが一致する乗りかごについては、出発階に停車予定を追加した場合に、出発階から行先階まで、方向を変えずに応答可能であれば、出発階・行先階の両方が一致する乗りかごよりも低い優先度で優先候補(第二優先)に含めるようにして良い。
【0041】
例えば、
図7に示すように、4階から6階へ向かう利用者に対し、4階の出発階のみ停車予定を持つA号機ではなく、6階の行先階に停車予定を持つB号機に割り当てる。なお、優先可能な乗りかごが存在しない場合には、通常通りの方法で割当かごを決めるものとする。
【0042】
(2)上下呼びに対する優先割当制御
一般階で登録される上下呼びは、出発階と方向の情報しかなく、行先階は分からない。また、複数の利用者が同じ階から同じ方向に利用する場合は、最初の利用者は上下呼びの登録操作を行うが、2人目以降の利用者は、既に同じ方向の上下呼びを登録済みであれば、登録操作を行うことはない。したがって、上下呼び1件に対する行先階の個数は1件とは限らない。
【0043】
HDC設置階では、行先呼びの出発階に停車予定を持つ乗りかごを優先して割り当てると、特定の乗りかごに利用者が偏る弊害が発生する。これに対し、一般階では、HDC設置階に比べて利用者が少ないので、上下呼びの出発階に停車予定を持つ乗りかごに優先して割り当てても、特定の乗りかごに利用者の偏りは発生しにくい。また、出発階に停車予定を持つ乗りかご(または出発階に停車中、減速中の乗りかご)に上下呼びを割り当てることで、他の乗りかごに割り当てる場合と比べて、出発階に対する乗りかごの停車回数を1回減らすことができる。
【0044】
ハイブリッドDCSでは、一般階からの乗車が多くなる混雑帯は、利用者が特定の階に向かうことが多い。例えば、出発基準階へ向かう退勤時間帯、食堂階へ向かう昼食時間帯の前半などである。この場合、同じ乗りかごに複数の利用者が乗車しても、停車回数は増加しにくい。したがって、新たに登録された上下呼びに対し、その出発階に停車予定(停車中または減速中を含む)であり、当該上下呼びと同じ方向に応答可能な乗りかごに優先的に割り当てることで、運行効率が上がる。
【0045】
図8の例では、3階の利用者が上下呼び登録装置の下方向のボタンを押したときに、3階に停車予定を持つ下方向運転中のB号機の乗りかごに下方向の呼びが割り当てられる様子を示している。上方向運転中のA号機の乗りかごや、3階に停車予定を持たないC号機の乗りかごに割り当てる場合と比べると、乗りかごの停車回数の増加を抑えられる。
【0046】
(3)優先する乗りかごが複数存在する場合
上記(1)(2)で優先候補として選出された乗りかごが複数存在した場合には、新たに登録された呼び(上下呼び/行先呼び)の出発階に、最も早く応答可能な乗りかごを1台選んで、その乗りかごに当該呼びを割り当てる。ただし、行先呼びに関しては、出発階・行先階ともに停車予定を持つ乗りかごの優先度は、行先階のみに停車予定を持つ乗りかごよりも高くする。
【0047】
(4)乗りかごの混雑度を考慮した優先割当制御
上記(1)(2)で優先候補として選出されても、乗りかごの荷重が一定値以上であり、新たに登録した呼び(上下呼び/行先呼び)に対し、方向反転しないで出発階に応答する場合には、応答後も引き続き混雑していると予想される。このような乗りかごは混雑度が高いため、優先候補から除外することが好ましい。一方、多数の利用者を乗せた乗りかごであっても、方向反転してから呼びの出発階に向かう場合には、すべての利用者を降車させているので、混雑度は低いと考えられる。このような乗りかごは、優先候補に含められる。
【0048】
例えば、
図9に示すように、A号機の乗りかごが混雑状態にあるとする。このA号機の乗りかごが1階で方向反転してから4階の行先呼びに応答する場合には、優先候補に含めることができる。一方、
図10に示すように、B号機の乗りかごが混雑状態にあり、方向反転しないままに3階の下方向の呼びに応答する場合には、優先候補から除外される。
【0049】
(5)混雑日時に優先割当制御を実施
上記(1)(2)の優先割当制御は、各階の利用者が多く、混雑状況にある場合を前提としている。混雑していなければ、後に発生する利用者の呼びを考慮して、乗りかごを早く周回させる必要性は低い。この場合には、新たに登録きれた呼びの仮割当と、登録済みの呼び・割当を対象に運行予測を行い、その予測結果から通常通りの方法で割当かごを選べば良い。
【0050】
そこで、例えば
図11に示すように、所定の操作により予め設定された混雑日時(曜日と時間)を混雑管理テーブルTBに記億しておき、この混雑管理テーブルTBに記憶された混雑日時(曜日と時間)に従って、上記(1)(2)の優先割当制御を実施する。
【0051】
(6)待ち時間を考慮した優先割当制御
上記(1)(2)によって優先割当の候補となった乗りかごが、新たに発生した呼び(上下呼び/行先呼び)の出発階に到着するまでの時間が長すぎる場合には、利用者の待ち時間を考えて、優先割当を適用しないことが好ましい。
【0052】
具体的には、以下のいずれかの条件が成立した場合には優先割当制御を適用しない。
条件1:優先する乗りかごの予測到着時間の最短値が、長待ちとして設定された第1の閾値以上になる場合
条件2:優先する乗りかごの予測到着時間の最短値が、優先しない他の乗りかごの予測到着時間の最短値よりも長く、両者の差が予め設定された第2の閾値以上になる場合。
【0053】
例えば、A,B号機の乗りかごが優先候補として選出されたとする。A号機の乗りかごの予測到着時間が65秒、B号機の乗りかごの予測到着時間が72秒であるとする。ここで、第1の閾値が60秒に設定されている場合、上記条件1により、A,B号機の乗りかごへの優先割当は行われない。
【0054】
また、A,B号機の乗りかごが優先候補として選出されたとする。A,B号機の乗りかごの予測到着時問が55秒,66秒であり、C,D号機の乗りかごの予測到着時問が35秒,22秒であるとする。ここで、第2の閾値が30秒に設定されている場合、優先する乗りかごの予測到着時間の最短値(55秒)と他の乗りかごの予測到着時間の最短値(22秒)との差が第2の閾値(30秒)以上になるので、上記条件2により、A,B号機の乗りかごへの優先割当は行われない。
【0055】
以下に、具体的な処理動作について、(a)上下呼びの割当処理、(b)行先呼びの割当処理に分けて詳しく説明する。
【0056】
(a)上下呼びの割当処理
図12および
図13は一般階の乗場で登録される上下呼びの割当処理を示すフローチャートである。このフローチャートには、上記(2)-(6)に関する処理が含まれる。
【0057】
一般階の乗場には、上下呼び登録装置21が設置されている。上下呼び登録装置21の操作によって上下呼びが登録されると(ステップA11のYes)、群管理制御装置30は、その上下呼びを呼び管理部31に記憶した後、現在の日時が予め混雑日時設定部38によって設定された混雑日時に該当するか否かを判断する(ステップA12)。
【0058】
詳しくは、群管理制御装置30は、現在の日時(曜日と時間)が混雑管理テーブルTBに記憶されている混雑日時と一致するか否かを判断する。現在の日時が混雑日時に該当しない場合(ステップA12のNo)、群管理制御装置30は、割当評価部34を通じて通常の割当処理を実行し、この割当処理によって選出された乗りかごに当該呼びを割り当てる(ステップA27)。
【0059】
一方、現在の日時が混雑日時に該当する場合には(ステップA12のYes)、群管理制御装置30は、優先割当部39の第1の優先割当部39aを通じて、以下のような優先割当処理を実行する。
【0060】
すなわち、まず、第1の優先割当部39aは、各号機の乗りかご12a,12b,12c…の運転状態情報に基づいて、かご内荷重が一定以上あり、かつ、方向反転せずに当該呼びに応答可能な乗りかごが存在するか否かを判断する(ステップA14)。該当する乗りかごが存在した場合(ステップA14のYes)、第1の優先割当部39aは、応答時の混雑度が高いと判断して、当該乗りかごの管理番号に「優先しない」ことを示す情報を付加して、優先候補から除外する(ステップA17)。
【0061】
次に、第1の優先割当部39aは、混雑度が低いと判断された乗りかごの中で、当該呼びの出発階に停車予定を持つ乗りかごを検索する。詳しくは、第1の優先割当部39aは、当該呼びの出発階に向けて減速中、または、その出発階に停車中であり、当該呼びと同じ方向に応答可能な乗りかごが存在するか否かを判断する(ステップA15)。また、第1の優先割当部39aは、当該呼びの出発階に停車予定を持ち、当該呼びと同じ方向に応答可能な乗りかごが存在するか否かを判断する(ステップA16)。
【0062】
上記ステップA15またはA16において、該当する乗りかごが存在すれば、第1の優先割当部39aは、当該乗りかごの管理番号に「優先する」ことを示す情報を付加して、優先候補に含める(ステップA18)。
【0063】
ステップA13~A19の処理を運行中の乗りかごの台数分、繰り返し行う。これにより、当該呼びを乗りかご12a,12b,12c…のいずれかに割り当てる場合に、優先する乗りかご(優先する情報が付された乗りかご)と、優先しない乗りかご(優先しない情報が付された乗りかご)に分けられる。
【0064】
優先する乗りかごが1台も存在しなかった場合には(ステップA20のNo)、群管理制御装置30は、割当評価部34を通じて通常の割当処理を実行し、この割当処理によって選出された乗りかごに当該呼びを割り当てる(ステップA27)。優先する乗りかごが少なくとも1台以上存在した場合には(ステップA20のYes)、第1の優先割当部39aが継続され、以下のような待ち時間の判断処理によって割当かごが決定される。
【0065】
すなわち、第1の優先割当部39aは、優先する乗りかごの中で、当該呼びの出発階に到着するまでの時間(到着予定時間)が最短のかごc1を抽出する(ステップA21)。このかごc1の到着予定時間が予め設定された第1の閾値TH1以上であれば(ステップA22のYes)、待ち時間が長くなるため、優先度処理は中止され、通常の割当処理によって割当かごが決定される(ステップA27)。
【0066】
一方、かごc1の到着予定時間が予め設定された第1の閾値TH1未満であり(ステップA22のNo)、優先しない乗りかごも存在しなければ(ステップA23のNo)、かごc1が割当かごとして決定され、かごc1に当該呼びが割り当てられる(ステップA26)。
【0067】
また、優先しない乗りかごが少なくとも1台以上存在した場合には(ステップA23のYes)、第1の優先割当部39aは、優先しない乗りかごの中で当該呼びの出発階に到着するまでの時間(到着予定時間)が最短のかごc2を抽出する(ステップA24)。そして、かごc1の到着予定時間がかごc2の到着予定時間に第2の閾値TH2を加えた時間以上であった場合には(ステップA25のYes)、優先度処理は中止され、通常の割当処理によって割当かごが決定される(ステップA27)。
【0068】
かごc1の到着予定時間がかごc2の到着予定時間に第2の閾値TH2を加えた時間未満であった場合、つまり、かごc1が優先しないかごc2と比べ、当該呼びの出発階に応答するまでの時間が大きく劣らない場合は(ステップA25のNo)、かごc1が割当かごとして決定され、かごc1に当該呼びが割り当てられる(ステップA26)。
【0069】
(b)行先呼びの割当処理
図14および
図15はHDC設置階の乗場で登録される行先呼びの割当処理を示すフローチャートである。このフローチャートには、上記(1),(3)-(6)に関する処理が含まれる。
【0070】
HDC設置階の乗場には、
図2に示したような乗場行先階登録装置22が設置されている。乗場行先階登録装置22の操作によって行先呼びが登録されると(ステップB11のYes)、群管理制御装置30は、その行先呼びを呼び管理部31に記憶した後、現在の日時が予め混雑日時設定部38によって設定された混雑日時に該当するか否かを判断する(ステップB12)。
【0071】
詳しくは、群管理制御装置30は、現在の日時(曜日と時間)が混雑管理テーブルTBに記憶されている混雑日時と一致するか否かを判断する。現在の日時が混雑日時に該当しない場合(ステップB12のNo)、群管理制御装置30は、割当評価部34を通じて通常の割当処理を実行し、この割当処理によって選出された乗りかごに当該呼びを割り当てる(ステップB31)。
【0072】
一方、現在の日時が混雑日時に該当する場合には(ステップB12のYes)、群管理制御装置30は、優先割当部39の第2の優先割当部39bを通じて、以下のような優先割当処理を実行する。
【0073】
すなわち、まず、第2の優先割当部39bは、各号機の乗りかご12a,12b,12c…の運転状態情報に基づいて、かご内荷重が一定以上あり、かつ、方向反転せずに当該呼びに応答可能な乗りかごが存在するか否かを判断する(ステップB14)。該当する乗りかごが存在した場合(ステップB14のYes)、第2の優先割当部39bは、応答時の混雑度が高いと判断して、当該乗りかごの管理番号に「優先度0」を示す情報を付加して、優先候補から除外する(ステップB18)。「優先度0」は、優先しないことを意味する。
【0074】
次に、第2の優先割当部39bは、混雑度が低いと判断された乗りかごの中で、当該呼びの行先階に停車予定を持つ乗りかごを検索する。なお、行先階の停車予定は、出発階の停車予定よりも後である。詳しくは、第2の優先割当部39bは、当該呼びの行先階に停車予定であり、かつ、出発階に当該呼びの方向で応答する予定を加えた場合に、出発階から方向反転せずに行先階に運行可能な乗りかごを検索する(ステップB15)。その結果、行先階に停車予定を持たない乗りかごが存在した場合には(ステップB15のNo)、第2の優先割当部39bは、当該乗りかごの管理番号に「優先度0」を示す情報を付加して、優先候補から除外する(ステップB18)。
【0075】
次に、第2の優先割当部39bは、行先階に停車予定を持つ乗りかごの中で、当該呼びの出発階に停車予定を持つ乗りかごを検索する。詳しくは、第2の優先割当部39bは、当該呼びの出発階に向けて減速中、または、その出発階に停車中であり、当該呼びと同じ方向に応答可能な乗りかごが存在するか否かを判断する(ステップB16)。また、第2の優先割当部39bは、当該呼びの出発階に停車予定を持ち、当該呼びと同じ方向に応答可能な乗りかごが存在するか否かを判断する(ステップB17)。
【0076】
上記ステップB16またはB17において、該当する乗りかごが存在すれば、第2の優先割当部39bは、当該乗りかごの管理番号に「優先度2」を示す情報を付加して、優先候補に含める(ステップB20)。
【0077】
また、当該呼びの行先階だけに停車予定を持つ乗りかごが存在した場合(ステップB16のNo,B17のNo)、第2の優先割当部39bは、当該呼びの出発階を停車予定に加えて、当該呼びと同じ方向に応答可能な否かを判断する(ステップB17a)。ただし、行先階の停車予定は、出発階の停車予定よりも後であり、行先階から方向反転せずに出発階に運行することを条件とする。応答可能であれば(ステップB17aのYes)、第2の優先割当部39bは、当該乗りかごの管理番号に「優先度1」を示す情報を付加して、優先候補に含める(ステップB19)。「優先度1」は、「優先度2」よりも優先度が低い。つまり、当該呼びの行先階だけに停車予定を持つ乗りかごについては、当該呼びの出発階を停車予定に加えることで、当該呼びの出発階と行先階の両方に停車予定を持つ乗りかごよりも優先度を低くして、優先候補に含める。
【0078】
ステップB13~B21の処理を運行中の乗りかごの台数分、繰り返し行う。これにより、当該呼びを乗りかご12a,12b,12c…のいずれかに割り当てる場合に、最も優先する乗りかご(優先度2の情報が付された乗りかご)と、次に優先する乗りかご(優先度1の情報が付された乗りかご)と、優先しない乗りかご(優先度0の情報が付された乗りかご)に分けられる。
【0079】
次に、xを2から1に変えて優先度xの乗りかごを検索する(ステップB22~B29)。その結果、優先度xの乗りかごが存在しなかった場合、つまり、優先する乗りかごが1台も存在しなかった場合には(ステップB23のNo)、通常の割当処理によって割当かごが決定される(ステップB31)。
【0080】
優先度xの乗りかごが存在した場合には(ステップB23のYes)、第2の優先割当部39bが継続され、以下のような待ち時間の判断処理によって割当かごが決定される。
【0081】
すなわち、第2の優先割当部39bは、優先度xの乗りかごの中で、当該呼びの出発階に到着するまでの時間(到着予定時間)が最短のかごc1を抽出する(ステップB24)。このかごc1の到着予定時間が予め設定された第1の閾値TH1以上であれば(ステップB25のYes)、待ち時間が長くなるため、第2の優先割当部39bは、優先度xの乗りかごに対する優先度処理を中止する(ステップB29へ進む)。
【0082】
一方、かごc1の到着予定時間が予め設定された第1の閾値TH1未満であり(ステップB25のNo)、優先度がx未満の乗りかごも存在しなければ(ステップB26のNo)、かごc1が割当かごとして決定され、かごc1に当該呼びが割り当てられる(ステップB30)。「優先度がx未満の乗りかご」とは、現在チェック中の乗りかごよりも優先度の低い乗りかごのことであり、例えば優先度2の乗りかごをチェック中であれば、優先度1の乗りかごと、優先度0の乗りかごを含む。
【0083】
優先度がx未満の乗りかごが少なくとも1台以上存在した場合には(ステップB26のYes)、第2の優先割当部39bは、優先度x未満の乗りかごの中で当該呼びの出発階に到着するまでの時間(到着予定時間)が最短のかごc2を抽出する(ステップB27)。そして、かごc1の到着予定時間がかごc2の到着予定時間に第2の閾値TH2を加えた時間以上であった場合には(ステップB28のYes)、第2の優先割当部39bは、優先度xに対する優先度処理を中止する(ステップB29へ進む)。
【0084】
かごc1の到着予定時間がかごc2の到着予定時間に第2の閾値TH2を加えた時間未満であった場合、つまり、かごc1が優先しないかごc2と比べ、当該呼びの出発階に応答するまでの時間が大きく劣らない場合は(ステップB28のNo)、かごc1が割当かごとして決定され、かごc1に当該呼びが割り当てられる(ステップB30)。
【0085】
このように第1の実施形態によれば、ハイブリッドDCSにおいて、一般階の乗場で登録された上下呼びについては、出発階に停車予定(停車中、減速中を含む)の乗りかごを優先候補とし、HDC設置階の乗場で登録された行先呼びについては、出発階と行先階に停車予定(停車中、減速中を含む)の乗りかごを優先候補として割当制御を行う。これにより、乗りかごの停車回数を減らすことができ、その結果、単位時間当たりの周回回数を増やして運行効率を上げることができる。さらに、乗りかごの混雑度や待ち時間を考慮して優先候補を選出すれば、さらに効率的な運行を実現できる。
【0086】
(第2の実施形態)
次に、第2の実施形態について説明する。
上記第1の実施形態では、1つのかご室を有するエレベータを想定して説明したが、第2の実施形態では、かご室を上下2段に構成したダブルデッキエレベータを想定している。
【0087】
図16は第2の実施形態に係るダブルデッキエレベータの群管理システムの構成を示すブロック図である。なお、
図16の例では、A~C号機の3台だけを示しているが、少なくとも2台以上の号機が群管理された構成であれば良い。各号機はダブルデッキエレベータであり、それぞれに上かごと下かごを有する。
【0088】
A号機の上かご51aと下かご52aは、上下方向(昇降方向)に連結されている。上かご51aは下かご52aが停車した階の1つ上の階に同じタイミングで停車し、下かご52aは上かご51aが停車した階の1つ下の階に同じタイミングで停車する。上かご51aと下かご52aには、それぞれにかご呼びを登録するためのかご呼び登録装置53a,54aが備えられている。「かご呼び」は、図示せぬかご操作盤上に設けられた階床ボタンの操作によって登録される呼びであり、利用者の行先階と乗りかごの情報を含んでいる。B号機、C号機についても同様の構成である。
【0089】
なお、ハイブリッドDCSとしてシステム全体の構成については、上記第1の実施形態と同様であるため、同一符号を付して、ここではその詳しい説明を省略する。
【0090】
上記第1の実施形態で説明した優先割当制御は、ダブルデッキエレベータの群管理システムにも適用できる。ダブルデッキエレベータでは、下かごに対する呼び(上下呼びまたは行先呼び)の割り当ては、下かごに対する停車予定だけでなく、下かごの1つ上の階に上かごが停車予定であることも考慮して、優先割当を行う。同様に、上かごに対する呼び(上下呼びまたは行先呼び)の割り当ては、上かごに対する停車予定だけでなく、上かごの1つ下の階に下かごが停車予定であることも考慮して、優先割当を行う。
【0091】
例えば
図17に示すように、1階と2階、5階と6階がHDC設置階であるとする。なお、各号機において、下かごの呼びや割当を表す記号は左側、上かごの呼びや割当を表す記号は右側に示している。
【0092】
いま、2階の乗場で6階行きの行先呼びが登録され、2階の乗場で10階行きの行先呼びが登録され、それぞれにA号機の上かごに割り当てられている。ここで、5階の乗場で9階行きの行先呼びが新たに登録されたとする。例えば、A号機の上かごが6階と10階に応答する場合には、A号機の下かごが5階と9階に応答することになるので、A号機の下かごに当該行先呼び呼びが優先割当されることになる。
【0093】
すなわち、下かごへの割当を考える場合に、上かごと下かごの同時応答を考慮して、上かごの停車予定階は、階床を1つ下げて、下かごの停車予定階として扱う。下かごの停車予定階は、階床を1つ上げて、上かごの停車予定階として扱う。停車するときの方向は、上かごと下かごで共通あるとして、処理を進めれば良い。一般階で登録される上下呼びについても同様であり、上かごと下かごとの位置関係から当該上下呼びの出発階に停車予定を持つ乗りかごに対して優先割当を行えば良い。また、上記(3)~(6)の処理に関しても同様に適用される。
【0094】
このように第2の実施形態によれば、ダブルデッキエレベータであっても、上かごと下かごとの位置関係を考慮して優先割当を行うことで、停車回数を低減でき、その結果、単位時間当たりの周回回数を増やして運行効率を上げることができる。
【0095】
以上述べた少なくとも1つの実施形態によれば、ハイブリッドDCSにおいて、上下呼びと行先呼びの特性を考慮した割当制御によって停車回数を抑え、利用者を効率的に運んで群管理性能の向上を図ることのできるエレベータの群管理システムを提供することができる。
【0096】
なお、本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0097】
11a,11b,11c…エレベータ制御装置、12a,12b,12c…乗りかご、13a,13b,13c…かご呼び登録装置、21…上下呼び登録装置、22…乗場行先階登録装置、23…乗場行先階表示装置、30…群管理制御装置、31…呼び管理部、32…運転情報取得部、33…運行予測部、34…割当評価部、35…停車判断部、36…長待ち判断部、37…混雑度判断部、38…混雑日時設定部、39…優先割当部、39a…第1の優先割当部、39b…第2の優先割当部、40…割当かご決定部、41…割当出力部、51a~51c…上かご、52a~52c…下かご、53a~53c…かご呼び登録装置、54a~54c…かご呼び登録装置。
【手続補正書】
【提出日】2021-09-16
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
乗場で上下呼びを登録するための第1の登録装置と、上記第1の登録装置が設置された階とは異なる階の乗場に設置され、行先呼びを登録するための第2の登録装置とを備えたエレベータの群管理システムにおいて、
上記上下呼びが登録された第1の出発階に停車予定を持ち、上記第1の出発階に対して上記上下呼びと同じ方向に応答可能な乗りかごを優先候補として選出する第1の優先割当手段と、
上記行先呼びが登録された第2の出発階と上記行先呼びの行先階に停車予定を持ち、上記行先呼びと同じ方向に応答可能な乗りかごを優先候補として選出する第2の優先割当手段と、
上記第1の優先割当手段によって選出された乗りかごに上記上下呼びを割り当て、上記第2の優先割当手段によって選出された乗りかごに上記行先呼びを割り当てる割当かご決定手段とを具備し、
上記第2の優先割当手段は、
上記第2の出発階と上記行先階のうち、上記行先階のみに停車予定を持つ乗りかごが存在した場合に、上記第2の出発階を停車予定に加えたときに上記行先呼びと同じ方向に応答可能であれば、上記第2の出発階と上記行先階の両方に停車予定を持つ乗りかごよりも優先度を低くして、当該乗りかごを優先候補として選出することを特徴とするエレベータの群管理システム。
【請求項2】
上記第2の優先割当手段は、
上記第2の出発階と上記行先呼びの行先階に停車予定を持つ乗りかごについて、
上記行先階の停車予定は上記第2の出発階の停車予定よりも後であり、上記第2の出発階から上記行先階までの間に方向を変えずに運行することを条件とすることを特徴とする請求項1記載のエレベータの群管理システム。
【請求項3】
上記第2の優先割当手段は、
上記第2の出発階を停車予定に加えたときに上記行先呼びと同じ方向に応答可能な乗りかごについて、
上記行先階の停車予定は上記第2の出発階の停車予定よりも後であり、上記第2の出発階から上記行先階までの間に方向を変えずに運行することを条件とすることを特徴とする請求項1記載のエレベータの群管理システム。
【請求項4】
上記第1および第2の優先割当手段は、
上記乗りかごの混雑度を考慮して優先候補を選出することを特徴とする請求項1記載のエレベータの群管理システム。
【請求項5】
上記第1および第2の優先割当手段は、
上記乗りかごが一定値以上の荷重を有し、方向反転せずに応答する場合には、混雑度が高いと判断し、上記乗りかごを優先候補から除外することを特徴とする請求項5記載のエレベータの群管理システム。
【請求項6】
上記第1および第2の優先割当手段は、
上記乗りかごの呼びに対する待ち時間を考慮して優先候補を選出することを特徴とする請求項1記載のエレベータの群管理システム。
【請求項7】
上記第1および第2の優先割当手段は、
上記乗りかごの到着予定時間が第1の閾値以上の場合、あるいは、他の乗りかごの到着予定時間と比べて第2の閾値以上の差を有して大きい場合には、上記乗りかごを優先候補から除外することを特徴とする請求項6記載のエレベータの群管理システム。
【請求項8】
混雑日時を設定する混雑日時設定手段を備え、
上記第1および第2の優先割当手段は、
上記混雑日時設定手段によって設定された混雑日時に優先割当処理を実行することを特徴とする請求項1記載のエレベータの群管理システム。
【請求項9】
上記第1の優先割当手段は、
上記第1の出発階に停車中、または、上記第1の出発階に向けて減速中の乗りかごを含めて優先候補を選出し、
上記第2の優先割当手段は、
上記第2の出発階に停車中、または、上記第2の出発階に向けて減速中の乗りかごを含めて優先候補を選出することを特徴とする請求項1記載のエレベータの群管理システム。
【請求項10】
上記乗りかごが上かごと下かごで構成されるダブルデッキエレベータにおいて、
上記第1の優先割当手段および第2の優先割当手段は、
上記上かごと上記下かごとの位置関係から呼びに対する停車予定階を判断し、その判断結果に基づいて優先候補を選出することを特徴とする請求項1記載のエレベータの群管理システム。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0007
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0007】
一実施形態に係るエレベータの群管理システムは、乗場で上下呼びを登録するための第1の登録装置と、上記第1の登録装置が設置された階とは異なる階の乗場に設置され、行先呼びを登録するための第2の登録装置とを備える。上記エレベータの群管理システムは、上記上下呼びが登録された第1の出発階に停車予定を持ち、上記第1の出発階に対して上記上下呼びと同じ方向に応答可能な乗りかごを優先候補として選出する第1の優先割当手段と、上記行先呼びが登録された第2の出発階と上記行先呼びの行先階に停車予定を持ち、上記行先呼びと同じ方向に応答可能な乗りかごを優先候補として選出する第2の優先割当手段と、上記第1の優先割当手段によって選出された乗りかごに上記上下呼びを割り当て、上記第2の優先割当手段によって選出された乗りかごに上記行先呼びを割り当てる割当かご決定手段とを具備する。
上記エレベータの群管理システムにおいて、上記第2の優先割当手段は、上記第2の出発階と上記行先階のうち、上記行先階のみに停車予定を持つ乗りかごが存在した場合に、上記第2の出発階を停車予定に加えたときに上記行先呼びと同じ方向に応答可能であれば、上記第2の出発階と上記行先階の両方に停車予定を持つ乗りかごよりも優先度を低くして、当該乗りかごを優先候補として選出することを特徴とする。