(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022065686
(43)【公開日】2022-04-28
(54)【発明の名称】壁パネル
(51)【国際特許分類】
E04C 2/04 20060101AFI20220421BHJP
E04F 13/14 20060101ALI20220421BHJP
E04F 13/15 20060101ALI20220421BHJP
B32B 13/04 20060101ALI20220421BHJP
E04F 13/02 20060101ALI20220421BHJP
【FI】
E04C2/04 E
E04F13/14 102A
E04F13/14 102D
E04F13/15
B32B13/04
E04F13/02 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020174309
(22)【出願日】2020-10-16
(71)【出願人】
【識別番号】303067353
【氏名又は名称】株式会社岩や
(74)【代理人】
【識別番号】100129207
【弁理士】
【氏名又は名称】中越 貴宣
(72)【発明者】
【氏名】岩川 和弘
【テーマコード(参考)】
2E110
2E162
4F100
【Fターム(参考)】
2E110AA02
2E110AA14
2E110AA28
2E110AA42
2E110AB04
2E110BA03
2E110BA04
2E110BA12
2E110BB03
2E110BC12
2E110DA02
2E110DA06
2E110EA00
2E110GA28
2E110GB02X
2E110GB18X
2E110GB23X
2E110GB32W
2E110GB42Z
2E110GB53Z
2E162CA11
2E162CA24
2E162CD17
2E162EA16
2E162FA12
4F100AC10C
4F100AE01B
4F100AG00A
4F100AK01C
4F100BA03
4F100BA10A
4F100BA10C
4F100DC16C
4F100GB07
4F100JL10A
(57)【要約】
【課題】 耐火性、断熱性、調湿性、メンテナンス性に優れ、施工が容易で低コスト化が図られる壁パネルを提供する。
【解決手段】 本発明の一実施形態に係る壁パネル10は、少なくともコンクリート基体12と、コンクリート基体12の表側12aに貼設されたガラス板14と、コンクリート基体12の裏側12bに形成された凹部15に配設された土壁部16とを含んで成り、土壁部16が1の壁土層16aまたは複数の壁土層で形成されている。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
コンクリート基体と、
前記コンクリート基体の表側に貼設されたガラス板と、
前記コンクリート基体の裏側に形成された凹部に配設された土壁部と、
を含んで成り、
前記土壁部が1または複数の壁土層で形成されていることを特徴とする壁パネル。
【請求項2】
前記壁土層に樹脂メッシュ板が埋設されていることを特徴とする請求項1に記載の壁パネル。
【請求項3】
前記コンクリート基体に、該コンクリート基体の横方向に複数の連結用管部材が配設されていることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の壁パネル。
【請求項4】
前記土壁部に、前記コンクリート基体の縦方向に1乃至複数の樹脂メッシュ管が埋設され、該樹脂メッシュ管に砂が充填され、該樹脂メッシュ管の上端側が前記コンクリート基体の上面に露出していることを特徴とする請求項1から請求項3の何れかに記載の壁パネル。
【請求項5】
前記コンクリート基体の表側に相対する前記ガラス板の裏側に着色が施されていることを特徴とする請求項1から請求項4の何れかに記載の壁パネル。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建築物における壁材として好適な壁パネルに関する。
【背景技術】
【0002】
鉄筋コンクリート構造物におけるコンクリート壁は耐火性や遮音性に優れ、特にコンクリート打ち放し仕上げはデザイン性にも優れる。しかしながら、コンクリートは熱伝導率が高く、外気の影響を受けやすいため、夏は暑く、冬は寒い。更に、断熱施工がされていなければ冷暖房も効きづらいため、光熱費が嵩むといった問題がある。
【0003】
一方、木造や軽量鉄骨造の建築物における壁には石膏ボードやパーティクルボード、構造用合板などが使用されるのが一般的である。これらは比較的安価であり、施工性も高いが、特にパーティクルボードや構造用合板などはホルムアルデヒドによるシックハウスの問題がある。
【0004】
そこで、耐火性や断熱性、更には調湿性に優れ、健康被害を抑制できる壁材が種々開示されている(例えば、特許文献1および2参照。)。特許文献1に開示された建築用軽量土壁パネルの一態様は、構造用合板および挿着支持木枠と竹止用桟で構成された外壁面体において、籾殼と接着剤、防腐剤、防蟻剤を混合し乾燥させて固化した断熱材ボードを、外壁面体の挿着支持木枠と竹止用桟との間に被着して断熱材ボードの上面を防湿シートで被覆し、その上部に木舞下地となる竹を挿着支持木枠と竹止用桟に取り付け、木舞下地に土と籾殻、藁、石灰、水で組成された土壁材混合物を塗着して覆い、土壁材混合物の上面に表面亀裂防止用ネットを被着して乾燥させたことを特徴とする。
【0005】
そして、この特許文献1に開示された建築用軽量土壁パネルの一態様によると、土壁の良さである、住む人の人体に安全な素材を用い、夏涼しく冬温かい、そして防火にも優れ、環境にも良い利点をそのまま生かせ、壁材としてパネル化で工場内製作できることによって、建築現場で行う壁面工事は軽量土壁パネルを取り付ける工事で左官工事が不要となるため、建築工期の大幅な短縮を実現し、また、建築設計に自由に形状を製作或いは、切断が可能である、と記載されている。
【0006】
また、特許文献2に開示された建築用壁材の一態様は、基材上に、少なくとも、母材及び潜熱蓄熱材料を含有する第1の層を有し、前記第1の層中の前記潜熱蓄熱材料の含有量が10~30質量%であることを特徴とする。
【0007】
そして、この特許文献2に開示された建築用壁材の一態様によると、蓄熱性に優れるため、住宅内の室温の変化を低く保ち、快適な暮らしが実現できると共に、難燃性にも優れた住宅を提供することができ、また、蓄熱性及び難燃性に加え、調湿性及びホルムアルデヒド等のシックハウス原因物質抑制にも優れるため、より快適に暮らせる住宅を提供することができる、と記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2003-035007号公報
【特許文献2】特開2019-112929号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
特許文献1に開示された建築用軽量土壁パネルの一態様や特許文献2に開示された建築用壁材の一態様によると、調湿性や耐火性、断熱性などに優れた土壁を利用した壁材が提供されるものと思料する。
【0010】
しかしながら、特許文献1に開示された建築用軽量土壁パネルの一態様は、工場内での製作が可能とはいえ、土壁パネルの構造が比較的複雑であり、更に簡単に製作が可能な土壁パネルであることが望まれる。また、特許文献2に開示された建築用壁材の一態様は、構成は簡素であるが、使用する材料が非常に特殊であるとともに、基材表面に塗布する工程には熟練度が要求されるものと思料する。
【0011】
そこで本願発明者は、上記の問題点に鑑み、耐火性、断熱性、調湿性、メンテナンス性に優れ、施工が容易で低コスト化が図られる壁パネルを提供するべく鋭意検討を重ねた結果、本発明に至ったのである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
即ち、本発明の壁パネルは、コンクリート基体と、前記コンクリート基体の表側に貼設されたガラス板と、前記コンクリート基体の裏側に形成された凹部に配設された土壁部と、を含んで成り、前記土壁部が1または複数の壁土層で形成されていることを特徴とする。
【0013】
また、本発明の壁パネルにおいて、前記壁土層に樹脂メッシュ板が埋設されていることを特徴とする。
【0014】
更に、本発明の壁パネルにおいて、前記コンクリート基体に、該コンクリート基体の横方向に複数の連結用管部材が配設されていることを特徴とする。
【0015】
また、本発明の壁パネルにおいて、前記土壁部に、前記コンクリート基体の縦方向に1乃至複数の樹脂メッシュ管が埋設され、該樹脂メッシュ管に砂が充填され、該樹脂メッシュ管の上端側が前記コンクリート基体の上面に露出していることを特徴とする。
【0016】
更にまた、本発明の壁パネルにおいて、前記コンクリート基体の表側に相対する前記ガラス板の裏側に着色が施されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0017】
本発明の壁パネルによると、コンクリート製でありながら、耐火性、断熱性、調湿性、メンテナンス性に優れ、建築物の施工が容易であると共に低コスト化を図ることができる。
【0018】
また、本発明の壁パネルにおいて、壁土層に樹脂メッシュ板が埋設されていることによって、土壁部の脱落を防止することができる。
【0019】
更に、本発明の壁パネルにおいて、コンクリート基体に、該コンクリート基体の横方向に複数の連結用管部材が配設されていることによって、複数の壁パネルを横方向に強固に連結することが容易にでき、1枚あたりのサイズ、重量を抑制しつつ、大きな壁面を形成することができる。
【0020】
また、本発明の壁パネルにおいて、土壁部に、コンクリート基体の縦方向に1乃至複数の樹脂メッシュ管が埋設され、該樹脂メッシュ管に砂が充填され、該樹脂メッシュ管の上端側がコンクリート基体の上面に露出していることによって、土壁部で吸湿した湿気をコンクリート基体の上方に放出することができ、調湿効果、特に除湿効果の更なる向上が図られる。
【0021】
更にまた、本発明の壁パネルにおいて、コンクリート基体の表側に相対するガラス板の裏側に着色が施されていることによって、デザイン性に優れた壁面を形成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】本発明の一実施形態に係る壁パネルの概略斜視図である。
【
図2】(a)は
図1に示した壁パネルの平面図、(b)は(a)におけるA-A断面図である。
【
図3】
図1に示した壁パネルを横方向に連結した態様を示す平面図である。
【
図4】
図1に示した壁パネルの他の実施形態に係る断面図である。
【
図5】本発明の他の実施形態に係る壁パネルの概略斜視図である。
【
図6】(a)は
図5に示した壁パネルの平面図、(b)は(a)におけるB-B断面図である。
【
図7】
図5に示した壁パネルの他の実施形態に係る断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明の壁パネルの実施形態について、図面に基づいて詳述する。
図1は、本発明の一実施形態に係る壁パネル10の概略斜視図、
図2(a)は
図1に示した壁パネル10の平面図、
図2(b)は
図2(a)におけるA-A断面図である。これらの図に示した本発明の一実施形態に係る壁パネル10は建築物の壁材に適用されるものであって、少なくともコンクリート基体12と、コンクリート基体12の表側12aに貼設されたガラス板14と、コンクリート基体12の裏側12bに形成された凹部15に配設された土壁部16と、を含んで成ることを特徴とする。
【0024】
本実施形態の壁パネル10に係るコンクリート基体12は矩形状をなし、
図2(b)に示すように、その内部には鉄筋24が配設された鉄筋コンクリートであって、壁材としての強度を確保すべく、壁パネル10のサイズに応じて適宜配筋される。なお、
図1および
図2(a)では本実施形態の壁パネル10の概略を図示するべく、コンクリート基体12の内部に配設された鉄筋24の図示を省略している。
【0025】
そして、コンクリート基体12に係る表側12aにはガラス板14が貼設されている。本実施形態の壁パネル10を建築物の壁材に適用する際は、ガラス板14が貼設された面が外壁面となる。
【0026】
一般的なコンクリート壁では、経年劣化などによって表面にひび割れが生じてくると、このひび割れからコンクリート壁の内部に水が浸入し、コンクリート壁の内部に配設されている鉄筋の腐食などが生じてコンクリート壁の劣化を招くこととなる。しかし、本実施形態の壁パネル10の表側、つまり本実施形態に係るコンクリート基体12の表側12aはガラス板14によって全面が覆われているため、仮にコンクリート基体12の表側12aにひび割れが生じても、ガラス板14によってコンクリート基体12の内部への水の浸入を防止することができ、コンクリート基体12の劣化を防止することができる。
【0027】
一方、本実施形態に係るコンクリート基体12の裏側12bには、土壁部16を配設するための凹部15が形成されている。この凹部15は、コンクリート基体12を打設する際に形成し、コンクリート基体12が硬化した後、この凹部15に壁土を充填することによって土壁部16が形成されることとなる。
【0028】
本実施形態に係る土壁部16は、前述のとおり、コンクリート基体12の裏側12bに形成された凹部15に壁土を充填することによって形成される。本発明の壁パネルに係る土壁部は1または複数の壁土層で形成されるが、本実施形態に係る土壁部16は、1層の壁土層16aによって形成されている。
【0029】
土壁部16を形成する壁土層16aに使用する壁土は特に限定されず、通常の土壁に使用される一般的な壁土、例えば珪藻土やシラスなどが適用可能であり、更に、これらの壁土に藁や麻、竹炭などを適宜混合してもよい。本実施形態に係る壁土層16aには、壁土として三和土(たたき)を使用している。三和土は、土、消石灰、天然にがり、の三つの素材を混ぜ合わせたものであって、通常は土間材として使用されている。三和土は、夏場の湿度が高い時期には吸湿し、冬場の乾燥期には適度な湿度を放出するという調湿性能が非常に高く、断熱効果も高いため、壁材としても好適である。なお、この三和土には、藁や麻、竹炭などが適宜混合されてもよい。
【0030】
少なくとも以上の構成を備える本実施形態の壁パネル10によると、コンクリート基体12で壁材としての強度を確保しつつ、耐火性や断熱性、調湿性を備えた壁材を提供することができる。
【0031】
また、コンクリート基体12の表側12aはガラス板14によって全面が覆われているため、コンクリート基体12内部への水の浸入を防止することができ、コンクリート基体12の劣化防止を図ることができ、メンテナンス性が向上される。
【0032】
更に、本実施形態の壁パネル10は予め工場などで製作することができ、現場では壁パネル10の完成品を搬入して組み立てるだけで建築物の壁を構築することができる。また、一般的な土壁の施工には非常に技術と時間を要するとともに、天候の影響を受けやすく、コストも掛かるが、本実施形態の壁パネル10に係る土壁部16は、工場などで製作が可能であるとともに、コンクリート基体12の裏側12bに形成された凹部15に壁土を充填するのみで形成することができ、高度な技術も要しないため、低コスト化を図ることができる。
【0033】
以上、本実施形態の壁パネル10に係る基本的な構成について詳述したが、本実施形態の壁パネル10に係る土壁部16を形成する壁土層16aには、樹脂メッシュ板28が埋設されていることが好ましい。樹脂メッシュ板28を埋設する場合は、コンクリート基体12に埋設される鉄筋24と樹脂メッシュ板28とを連結部材26によって連結固定する。そして、コンクリート基体12の凹部15に壁土を充填して壁土層16aを形成する際に、鉄筋24と連結された樹脂メッシュ板28を埋設することによって、樹脂メッシュ板28と壁土層16aとが一体となり、壁土層16aで形成される土壁部16の脱落を容易に防止することができる。
【0034】
なお、土壁部16の脱落防止の機能を確保するのみであれば金属製のメッシュ板でも適用できるが、土壁部16が吸湿した水分によって金属メッシュ板に錆びが生じると土壁部16の劣化の要因となり、特に、土壁部16を形成する壁土層16aに三和土を使用する場合は、三和土に含まれるにがりによって金属メッシュ板に錆びが生じ易くなるため、壁土層16aには樹脂メッシュ板28を埋設することが好ましい。
【0035】
また、本実施形態の壁パネル10においては、コンクリート基体12に、このコンクリート基体12の横方向に複数の連結用管部材20が配設されていることが好ましい。本実施形態の壁パネル10は、予め工場などで製作した壁パネル10を現場において立設するのみで建築物の壁を構築することができるが、壁の面積が大きい場合には、1枚の壁パネル10で壁全体を構築することが困難となる。そこで、コンクリート基体12に複数の連結用管部材20を埋設しておくことによって、
図3に示すように、複数の壁パネル10を併設し、連通した連結用管部材20に、PC鋼棒などの連結鋼棒30を挿通して連結固定することによって、大きな壁面を容易に形成することができる。
【0036】
また、複数の壁パネル10を横方向にしっかりと連結することで大きな壁面を容易に形成することができるため、壁パネル10の1枚あたりのサイズを小さくすることができ、サイズが小さくなることによって、壁パネル10の1枚あたりの重量も抑制することができる。
【0037】
なお、本実施形態の壁パネル10では、コンクリート基体12の横方向にのみ複数の連結用管部材20が配設されているが、コンクリート基体12の縦方向にも複数の連結用管部材20が配設されてもよい。一般住宅の壁面高さは250cm前後であるため、本実施形態の壁パネル10に係るコンクリート基体12の長手方向(縦方向)の長さは十分に確保でき、壁を構築する際に複数の壁パネル10を縦方向に連結する必要はないが、コンクリート基体12の縦方向にも複数の連結用管部材20を配設しておくことによって、例えば、建築物の土台に予め連結鋼棒30を立設し、壁パネル10を立設する際にコンクリート基体12の縦方向に配設された連結用管部材20にこの連結鋼棒30を挿通する。そして、連結鋼棒30の上端を梁部材に挿通してボルトなどで固定することによって、壁パネル10を土台および梁部材と強固に連結することができる。
【0038】
以上、本発明の一実施形態に係る壁パネル10について詳述したが、本実施形態の壁パネル10は以下の手順で容易に製作することができる。まず、コンクリート基体12を製作するための型枠内の底面にガラス板14を配置する。ガラス板14を配置後、スペーサー22を所定の間隔を空けて配置する。なお、スペーサー22はガラス板14上に直接配置してもよいが、位置ずれやガラス板14との接着性を確保するため、ガラス板14とスペーサー22との間にシリコーン樹脂を塗布することが好ましい。
【0039】
ガラス板14上にスペーサー22を配置後、鉄筋24を配筋する。コンクリート基体12内に連結用管部材20を埋設する場合は、この段階で所定の位置に連結用管部材20を配設する。また、土壁部16内に樹脂メッシュ板28を埋設する場合は、樹脂メッシュ板28を連結するための連結部材26を予め鉄筋24に配設しておく。
【0040】
以上の準備が調うと、型枠内にコンクリートを流し込み、コンクリート基体12を製作する。コンクリート硬化後、脱型することによって、コンクリート基体12の表側12aにガラス板14が貼設され、裏側12bに凹部15が形成されたコンクリート基体12が得られる。
【0041】
コンクリート基体12が製作できたら、このコンクリート基体12の凹部15に壁土を充填して壁土層16aを形成していく。樹脂メッシュ板28を埋設する場合は、所定の高さまで壁土を充填後、樹脂メッシュ板28を配設し、予め鉄筋24に連結しておいた連結部材26で樹脂メッシュ板28を連結固定する。そして、コンクリート基体12の凹部15の上端縁まで壁土を充填し、壁土が硬化することによって土壁部16が形成され、本実施形態の壁パネル10が得られる。
【0042】
得られた本実施形態の壁パネル10は建築現場に搬送され、土台上に立設することによって建築物の壁面が形成されることとなる。なお、立設方法は特に限定されず、公知の金物を使用したり、予め土台上に形成した溝に嵌め込んだりすることによって立設、固定することが可能である。
【0043】
ここで、本実施形態の壁パネル10において、コンクリート基体12の裏側12bには、漆喰やプラスターなどで仕上げ面18が形成されてもよい。仕上げ面18がない場合、コンクリート基体12の裏側12bには土壁部16が露出することとなる。建築物の内壁面は、コンクリート基体12の裏側12bで形成されるコンクリート枠内に土壁部16が配設された外観となり、土壁部16を形成する壁土の種類や色によって、デザイン性に優れた内壁面を形成することができる。
【0044】
一方で、コンクリート枠や土壁部16を露出させたくない場合は、コンクリート基体12の裏側12bおよび土壁部16の露出面に、漆喰やプラスターなどで仕上げ面18を形成することによって、コンクリート枠や土壁部16が覆われた一体の壁面を形成することができる。なお、仕上げ面18を形成する場合は、土壁部16が備える調湿機能を確保するため、漆喰やプラスター、珪藻土などを使用することが好ましい。また、壁パネル10の搬送中に仕上げ面18が汚損することがないように、仕上げ面18は現場にて壁パネル10の立設後に形成することが好ましい。
【0045】
以上、本発明の一実施形態に係る壁パネル10について、製作方法も含めて詳述したが、
図4に示した本発明の他の実施形態に係る壁パネル10aは、基本的な構成は上述の実施形態に係る壁パネル10と同様であり、コンクリート基体12と、コンクリート基体12の表側12aに貼設されたガラス板14と、コンクリート基体12の裏側12bに形成された凹部15に配設された土壁部16と、を含んで成る。
【0046】
そして、本実施形態の壁パネル10aに係る土壁部16は、壁土層16aと壁土層16bの2層構造となっている。本実施形態に係る土壁部16を壁土層16aと壁土層16bの2層構造とし、それぞれの壁土層16a、16bに種類の異なる壁土を適用することによって、調湿性や施工性の向上を図ることができる。例えば、壁土層16aには、上述した実施形態の壁パネル10に係る壁土層16aと同様の三和土を適用し、壁土層16bには、珪藻土やシラスを適用することによって、表面は非常に強固でありながら、内部の壁土層16bによって、施工性や調湿性の更なる向上を図ることができる。
【0047】
また、本実施形態の壁パネル10aに係る土壁部16を形成する壁土層16aと壁土層16bには、それぞれ樹脂メッシュ板28が埋設されることが好ましい。壁土層16aおよび壁土層16bを形成する際に、鉄筋24と連結部材26によって連結された樹脂メッシュ板28をそれぞれ埋設することによって、壁土層16aおよび壁土層16bで形成される土壁部16の脱落を容易に防止することができる。
【0048】
以上、本発明の実施形態に係る壁パネル10aについて説明したが、本発明の壁パネルはこれらの実施形態に限定されるものではない。
図5および
図6に示した本発明の実施形態に係る壁パネル11は、基本的な構成は上述の実施形態に係る壁パネル10と同様であり、コンクリート基体12と、コンクリート基体12の表側12aに貼設されたガラス板14と、コンクリート基体12の裏側12bに形成された凹部15に配設された土壁部16と、を含んで成り、土壁部16は壁土層16aによって形成されている。
【0049】
更に、本実施形態の壁パネル11に係る土壁部16には、コンクリート基体12の縦方向に複数の樹脂メッシュ管32が埋設されている。樹脂メッシュ管32の下端32a側はコンクリート基体12に係る凹部15内、つまり土壁部16内に位置するように配設され、上端32b側はコンクリート基体12の上面13に露出するように配設されている。樹脂メッシュ管32がこのように配設されることによって、土壁部16の内部とコンクリート基体12の上面13側の外部とが樹脂メッシュ管32によって導通されることとなる。
【0050】
そして、本実施形態に係る樹脂メッシュ管32には砂34が充填されている。樹脂メッシュ管32に砂34を充填することによって、土壁部16内における樹脂メッシュ管32の強度を確保することができるとともに、土壁部16で吸湿した湿気を効率よく上方へと導き、コンクリート基体12の上面13の外部に放出することができる。
【0051】
なお、土壁部16とコンクリート基体12の上面13側の外部とを導通させるのみであれば金属製のメッシュ管でもよいが、土壁部16が吸湿した水分によって金属メッシュ管に錆びが生じると土壁部16の劣化の要因となり、特に、土壁部16を形成する壁土層16aに三和土を使用する場合は、三和土に含まれるにがりによって金属メッシュ管に錆びが生じ易くなるため、土壁部16に埋設されるのは樹脂メッシュ管32であることが好ましい。
【0052】
また、本実施形態の壁パネル11では、2本の樹脂メッシュ管32を埋設しているが、樹脂メッシュ管32の埋設数は特に限定されず、壁パネル11の横幅に応じて、1本乃至複数本の樹脂メッシュ管32を適宜埋設することができる。
【0053】
更に、この樹脂メッシュ管32の埋設方法も特に限定されないが、例えば、予め砂34を充填した樹脂メッシュ管32をコンクリート基体12の製作段階で配置しておき、樹脂メッシュ管32が配設されたコンクリート基体12に係る凹部15に土壁部16を形成することによって、本実施形態の壁パネル11を得ることができる。
【0054】
また更に、本実施形態の壁パネル11においても、上記の実施形態に係る壁パネル10と同様に、仕上げ面18が形成されてもよい。
【0055】
以上、本実施形態の壁パネル11について詳述したが、本実施形態の壁パネル11の他態様として、
図7に示した実施形態に係る壁パネル11aは、基本的な構成は上述の実施形態に係る壁パネル11と同様であり、壁パネル11aに係る土壁部16が、壁土層16aと壁土層16bの2層構造となっている。本実施形態の壁パネル11aに係る土壁部16を壁土層16aと壁土層16bの2層構造とし、例えば壁土層16aに三和土を適用し、壁土層16bに珪藻土やシラスを適用することによって、土壁部16の表面は非常に強固でありながら、内部の壁土層16bによって施工性や調湿性の更なる向上を図ることができる。
【0056】
なお、本実施形態の壁パネル11aに係る土壁部16に樹脂メッシュ管32を埋設する場合は、土壁部16を形成する壁土層16aと壁土層16bにまたがった状態で埋設する態様が好ましい。壁土層16aと壁土層16bにそれぞれ樹脂メッシュ管32を埋設してもよいが、本実施形態の壁パネル11aに係る樹脂メッシュ管32のように、壁土層16aと壁土層16bにまたがった状態で埋設することによって、壁土層16aおよび壁土層16bで吸湿した湿気を効率よく外部へ放出することができる。また、壁土層16aと壁土層16bにそれぞれ樹脂メッシュ板28が埋設される態様では、樹脂メッシュ管32を埋設する場所を確保することが困難となるが、本実施形態のように樹脂メッシュ管32を壁土層16aと壁土層16bにまたがった状態で埋設することによって、埋設場所の確保も容易となる。
【0057】
以上、本発明の実施形態に係る壁パネル10、10a、11、11aについて詳述したが、本発明の技術的思想を実質的に限定するものと解してはならない。例えば、本発明の実施形態に係る壁パネル10、11などにおいて、それぞれの実施形態に係るコンクリート基体12の表側12aに相対するガラス板14の裏側(コンクリート基体12の表側12aに貼着される面側)には、着色が施されてもよい。ガラス板14の裏側に着色が施されることによって、デザイン性に優れた壁面を提供することができるとともに、着色面が外部に露出していないため、耐久性の向上が図られる。本発明はその要旨を逸脱しない範囲で、当業者の創意と工夫により、適宜に改良、変更又は追加をしながら実施できる。
【符号の説明】
【0058】
10、10a、11、11a:壁パネル
12:コンクリート基体
14:ガラス板
15:凹部
16:土壁部
16a、16b:壁土層
18:仕上げ面
20:連結用管部材
22:スペーサー
24:鉄筋
26:連結部材
28:樹脂メッシュ板
30:連結鋼棒
32:樹脂メッシュ管
34:砂