(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022006571
(43)【公開日】2022-01-13
(54)【発明の名称】船舶の非常用消火ポンプ始動システム
(51)【国際特許分類】
A62C 3/10 20060101AFI20220105BHJP
B63H 21/30 20060101ALI20220105BHJP
B63B 11/00 20060101ALI20220105BHJP
【FI】
A62C3/10
B63H21/30 Z
B63B11/00 Z
【審査請求】有
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020108866
(22)【出願日】2020-06-24
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2021-09-01
(71)【出願人】
【識別番号】000146814
【氏名又は名称】株式会社新来島どっく
(74)【代理人】
【識別番号】100090044
【弁理士】
【氏名又は名称】大滝 均
(72)【発明者】
【氏名】枡田 忠
(57)【要約】
【課題】
非常用消火ポンプの始動時の負荷トルクが抑えられる船舶の非常用消火ポンプ始動システムを提供する。
【解決手段】
船舶の非常用消火ポンプ始動システムにおいて、非常用消火ポンプの吐出側に配置される電動操作吐出側バルブと、火災警報信号により、電動操作吐出側バルブの開を閉にした後に、非常用消火ポンプの駆動電電動機を始動する始動器と、電動操作吐出側バルブの開閉状態を表示するバルブ開閉状態表示装置と、を有する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
非常用消火ポンプの吐出側に配置される電動操作吐出側バルブと、
火災警報信号により、電動操作吐出側バルブの開を閉にした後に、非常用消火ポンプの駆動電動機を始動する始動器と、
電動操作吐出側バルブ及び吸入側バルブの開閉状態を表示するバルブ開閉状態表示装置と、
を有することを特徴とする船舶の非常用消火ポンプ始動システム。
【請求項2】
船舶機関室に配置される機関室消火ポンプ始動器の運転状況を常時監視し、機関室消火ポンプが異常停止の場合に、機関室消火ポンプ異常停止信号を送る機関監視警報盤を有することを特徴とする請求項1に記載の船舶の非常用消火ポンプ始動システム。
【請求項3】
電動操作吐出側バルブ及び吸入側バルブ並びに始動器が船舶操舵機室に、バルブ開閉状態表示装置が船舶火災制御室に、機関監視警報盤が船舶機関室に配置されたことを特徴とする請求項2に記載の船舶の非常用消火ポンプ始動システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、船舶の非常用消火ポンプ始動システムに関する。
【背景技術】
【0002】
船舶の非常用消火ポンプを始め、その余の非常用消化火ポンプの電動機の始動方式としては、一般的にスターデルタ方式等の減電圧始動方式を採用するため、負荷を駆動させる電動機のトルクが直入始動の場合に比べ低減される。
この種の非常用消火ポンプ等の始動時のトルク低減の対処に関しては、例えば、特開2018-170855号公報に開示のものが知られている。
【0003】
特開2018-170855号公報の開示は、発明名称「ポンプ装置用の始動装置」に係り、「・・ポンプ装置の始動電流や、非常用電源の状態に合わせた最適な始動が可能な始動装置を提供することを目的とする」発明解決課題において(同公報明細書段落番号0009参照)、「ポンプ装置を始動するための始動装置であって、非常用電源の出力情報を検出する出力検出器と、前記非常用電源から出力された電圧が印加されるスイッチング素子と、前記出力情報に基づいて前記スイッチング素子の点弧角を調整する点弧角制御部と、前記調整された点弧角で前記スイッチング素子にトリガー電流を流して前記スイッチング素子を導通状態にするトリガー電流生成部を備えたことを特徴とする」構成とすることによって(同公報特許請求の範囲請求項1の記載等参照)、「非常用電源の出力情報に基づいてスイッチング素子の点弧角を調整することにより、非常用電源の状態に合わせて始動電流を最小に抑えながらポンプ装置を始動することができる。また、ポンプ装置の始動電圧の増加速度を制限することで、ポンプ装置の負荷が重い場合でもトルク不足を起こすことなくポンプ装置を始動することが可能である」等の効果を奏するものである(同公報明細書段落番号0010参照)。
【0004】
図2は、特開2018-170855号公報に開示の発明の一実施形態に係る始動装置が組み込まれたポンプ設備を示す模式図であり、
図2において、符号110は、始動装置、111a,111b,111cは、 スイッチング素子、112は、トリガー電流生成部、113a,113b,113cは、バイパススイッチ、114a,114b,114cは、三相バイパスライン、115は、点弧角制御部、117は、出力検出器、119は、電流検出器、130は、非常用電源、131は、発電機、132は、駆動源、140は、商用電源、150は、電源切替え器、170は、ポンプ装置、171は、電動機、172は、ポンプである(なお、符号は、先行技術であることを明らかにするために、本願出願人において、3桁に変更して説明した。)
【0005】
ところが、船舶に搭載される非常用消火ポンプは、操作の確実性や迅速な消火活動などの観点から、手動操作方式が採用され、ポンプの吐出側バルブは常に「開」の状態にしておく必要がある。
図3は、本願出願人会社が実施する従来の船内消火ポンプ給電システム及び配管系統図であり、
図3において、符号201は、火災制御室、202は、ポンプ遠隔操作装置、203は、吸入側バルブ開閉制御装置、204は、操舵機室、205は、始動器、206は、ポンプ電動機(モータ)、207は、非常用消火ポンプ、208は、ポンプ吐出側バルブ(常時「開」)、209は、ポンプ吸入側バルブ、210は、非常用発電機室、211は、非常用配電盤、212は、非常用発電装置、213は、主/非常用電源切替器、214a、214b、214c、214dは、給電系統の遮断機、215は、機関室、216は、主配電盤、217a、217b、217cは、主発電装置、218a、218bは、始動器、219a、219bは、ポンプ電動機、220a、220bは、機関室消火ポンプ、221a、221b、221c、221dは、消火栓である。
【0006】
図3に示す本願出願人会社が実施する船内消化火ポンプ給電システムにおいては、火災発生時に火災制御室201内のポンプ遠隔操作装置202を操作して非常用消火ポンプ207の電動機206を始動し、ポンプ吐出側バルブ208を介して消火栓221a、221b、221c、221dに水を供給するようにしたものである。
【0007】
しかしながら、非常用消火ポンプ207の電動機206を始動するため、手動操作方式であるため、ポンプ207の吐出側バルブ208は常に「開」状態となっており、その状態で、始動器205から電動機206の始動電流を流すと、
図3に示す給電システムにおいては、非常用消火ポンプ電動機206の始動方式、は一般的なスターデルタ方式等の減電圧始動方式を採用するため、負荷を駆動させる電動機206のトルクが直入始動の場合に比べ低減される。すなわち、
図3に示す船内消火ポンプ給電システムにおいて、非常用消火ポンプ吐出側バルブ208が常時「開」状態で、非常用消火ポンプ207の電動機206の始動の際には、負荷トルクの増大を招き、その結果、ポンプの回転不足により電動機206の始動電流の低減が不十分となる可能性があり、ポンプ207の始動ができないなどの不具合を来すおそれがある。
【0008】
そして、これを避けるため、始動電流を賄うために非常用発電機212の容量増加や、非常用発電機室210の拡張(非常用発電機ユニット採用を中止し居住区画に非常用発電機室が新設となる場合も含む)を必要としなければならない場合がある。また、ポンプ吐出側バルブ208が常時「開」状態では、経年劣化に由来する負荷トルク増大となるなどのおそれがあり、その場合にもポンプ207の始動不具合のリスクが高まるなどの問題点がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
そこで、本願発明は、非常用消火ポンプの始動時の負荷トルクが抑えられる船舶の非常用消火ポンプ始動システムを提供することを目的とする。
また、船舶機関室内に搭載される機関室消火ポンプの異常停止の場合にも、速やかに機関室消火ポンプと連動する船舶の非常用消火ポンプ始動システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記の課題を解決するために、本願請求項1に係る発明は、船舶の非常用消火ポンプ始動システムにおいて、非常用消火ポンプの吐出側に配置される電動操作吐出側バルブと、火災警報信号により、電動操作吐出側バルブの開を閉にした後に、非常用消火ポンプの駆動電動機を始動する始動器と、電動操作吐出側バルブ及び吸入側バルブの開閉状態を表示するバルブ開閉状態表示装置と、を有することを特徴とする。
また、本願請求項2に係る発明は、前記請求項1に記載の船舶の非常用消火ポンプ始動システムにおいて、船舶機関室に配置される機関室消火ポンプ始動器の運転状況を常時監視し、機関室消火ポンプが異常停止の場合に、機関室消火ポンプ異常停止信号を送る機関監視警報盤を有することを特徴とする。
そして、本願請求項3に係る発明は、前記請求項2に記載の船舶の非常用消火ポンプ始動システムにおいて、電動操作吐出側バルブ及び吸入側バルブ並びに始動器が船舶操舵機室に、バルブ開閉状態表示装置が船舶火災制御室に、機関監視警報盤が船舶機関室に配置されたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
上記のような構成としたので、本願発明は、以下のような効果を奏することとなる。
(1)非常用消火ポンプ電動機の始動の際にもな負荷トルクの増大を招くことがなく、ポンプの回転不足による電動機始動電流の低減が不十分とならず、支障なくスムーズなポンプの始動ができる。
(2)非常用発電装置容量及び同装置装備スペースの増大を防止することができる。
(3)ポンプ経年劣化時に負荷トルク増大となる場合のポンプ始動不具合リスクの軽減することができる。
(4)始動ポンプの始動制御にバルブの制御を含めることで、緊急時の操作ミスがなくなり、安全性の向上に繋がる。
(5)船舶機関室内の機関室非常用消火ポンプの異常停止の場合にも、機関室非常用消火ポンプと連動して継続的な消火活動を行うことができることとなる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】
図1は、本発明の実施例1に係る船舶の非常用消火ポンプ始動システムの概略図である。
【
図2】
図2は、特開2018-170855号公報に開示の発明の一実施形態に係る始動装置が組み込まれたポンプ設備を示す模式図である。
【
図3】
図3は、本願出願人会社が実施する従来の船内消火ポンプ給電システム及び配管系統図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明に係る船舶の非常用消火ポンプ始動システムを実施するための実施例を図面に基づき詳細に説明する。
【実施例0015】
図1は、本発明の実施例1に係る船舶の非常用消火ポンプ始動制御システムの概略図であり、前述の
図3に対応する。
図1において、符号1は、本実施例1に係る船舶の非常用消火ポンプ始動システム、2は、ポンプ遠隔操作装置及びバルブ開閉状態表示装置、3は、電動機始動及びバルブ開閉制御を行う新たな始動器、4は、ポンプ吐出側バルブ、5は、機関監視警報盤であり、その余の符号207は、非常用消火ポンプ、206は、ポンプ電動機(モータ)、209は、ポンプ吸入側バルブ等、
図3に示す同一の部材であり,同一の符号で示した。
【0016】
本実施例1に係る船舶の非常用消火ポンプ始動システム1においては、非常用消火ポンプ207の吐出側バルブ4を手動操作式から電動操作式に変更し、既存の非常用消火ポンプ207の始動器205に吐出側電動バルブ4の制御回路を組込んだ新たな始動器3とし、ポンプ207の始動、停止等の制御に併せた吐出側バルブ4の開閉自動制御を行うものである。また、機関室215内に設置された機関室消火ポンプ始動器218a、218bからの運転状態を常時監視し、機関室消火ポンプ220a、220bが異常停止したときに、新たな始動器3に機関室消火ポンプ異常停止信号を送る機関監視警報盤5を新たに設けたものである。
【0017】
図1に示す新たな始動器3は、機関室火災警報信号を受信すると、吐出側電動バルブ4を「開」から「閉」とする制御を行い、しかる後、非常用消火ポンプ207のポンプ電動機(モータ)206に始動電流を流し、その状態をポンプ遠隔操作装置及びバルブ開閉状態表示装置2に表示する。この結果、吐出側電動バルブ4は「閉」状態であるため、電動機206は、急激な負荷トルクの増大を招くことなく、スムースに始動でき、ポンプ207の回転不足を起こすことがなくなる。すなわち、新たな吐出側電動バルブ4は、新たな始動器3からの信号による、「開」又は「閉」の制御可能とするバルブであり、バルブの開閉制御を可能とすることにより、電動機206のトルク不足を回避するためのものである。
【0018】
さらに、本実施例1に係る船舶の非常用消火ポンプ始動システム1においては、機関室215内に搭載される機関室消火ポンプ220a、220bの始動器218a、218bの運転状況を常時監視する機関監視警報盤5を設けたので、機関室215内の機関室消火ポンプ220a、220bによる消火活動中、何らかの理由により、常用電源(図示外)の喪失等の機関室消火ポンプ220a、220bが異常停止となったような場合には、新たな始動器3に機関室消火ポンプ異常停止信号を送り、上述するように、バルブの開閉及びポンプ207を始動するようにしたので、機関室消火ポンプの異常停止の場合にも,電動機206の始動時の付加トルクが押さえられることとなる。
【0019】
本実施例1に係る船舶の非常用消火ポンプ始動システム1は、非常用消火ポンプ207の吐出側バルブを遠隔制御の電動バルブ4に変更し、同ポンプ始動開始から完了までの期間を「閉」、始動完了後同バルブ「開「とする自動制御を行うこととしたので、同ポンプ207始動時の負荷トルクが抑えられ、非常用発電装置容量の増大を防ぐことができることとなる。また、同ポンプ207の経年劣化時に負荷トルク増大となる場合でも始動不具合のリスクが軽減されることとなるのである。
【0020】
なお、本実施例1に係る船舶の非常用消火ポンプ始動システム1においては、商船等、非常用発電装置から給電される機関室外に装備の非常用消火ポンプに遠隔始動停止操作装置を採用する場合を前提とする。したがって、遠隔始動停止装置が装備されない場合はこの限りではない。
また、併せて同ポンプ吸入側バルブの開閉制御を併せて行うことで、緊急時の操作手順の簡略化ができ、一連の操作におけるの不具合がなくなる。
【0021】
なお、本実施例1に係る船舶の非常用消火ポンプ始動システム1における機関監視警報盤5に火災警報信号、電源喪失検知及びその後の非常用発電装置運転信号により自動的に非常用消火ポンプを始動(上記吐出側、吸入側バルブ制御含む)を表示させるようにしたので、機関室215内においても、機関室215内の機関室消火ポンプ220a、220bによる消火活動状況、非常用発電装置給電状況を把握することができ、機関室215内においても速やかに消火活動を継続することができることとなる。