IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社日水コンの特許一覧

<>
  • 特開-上澄水排水装置及び上澄水排水方法 図1
  • 特開-上澄水排水装置及び上澄水排水方法 図2
  • 特開-上澄水排水装置及び上澄水排水方法 図3
  • 特開-上澄水排水装置及び上澄水排水方法 図4
  • 特開-上澄水排水装置及び上澄水排水方法 図5
  • 特開-上澄水排水装置及び上澄水排水方法 図6
  • 特開-上澄水排水装置及び上澄水排水方法 図7
  • 特開-上澄水排水装置及び上澄水排水方法 図8
  • 特開-上澄水排水装置及び上澄水排水方法 図9
  • 特開-上澄水排水装置及び上澄水排水方法 図10
  • 特開-上澄水排水装置及び上澄水排水方法 図11
  • 特開-上澄水排水装置及び上澄水排水方法 図12
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022065712
(43)【公開日】2022-04-28
(54)【発明の名称】上澄水排水装置及び上澄水排水方法
(51)【国際特許分類】
   C02F 3/12 20060101AFI20220421BHJP
【FI】
C02F3/12 A
C02F3/12 D
【審査請求】有
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020174351
(22)【出願日】2020-10-16
(71)【出願人】
【識別番号】397028016
【氏名又は名称】株式会社日水コン
(74)【代理人】
【識別番号】100110973
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 洋
(74)【代理人】
【識別番号】110002697
【氏名又は名称】めぶき国際特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】竹島 正
(72)【発明者】
【氏名】西村 秀士
(72)【発明者】
【氏名】武藤 文雄
【テーマコード(参考)】
4D028
【Fターム(参考)】
4D028BB01
4D028BC19
4D028CD05
(57)【要約】
【課題】上澄水の排水の際に、排水によって上澄水の水位が低下し沈殿汚泥界面h4に近づいた場合であっても、沈殿汚泥23が巻き上げられて排水されることを抑制できる上澄水排水装置を提供すること。
【解決手段】回分式汚水処理装置1内に設置した回分槽2における処理済の上澄水22を排水する上澄水排水装置3であって、摺動集水管7と、回動集水管5と、取水管4と、集水管回動用駆動軸6と、集水管回動用駆動軸6の繰出繰入装置61と、繰出繰入装置61の動作を制御する制御装置8と、を備え、制御装置8は、上澄水取水工程終盤付近における取水管4の下降速度が、上澄水取水工程序盤から中盤に進む取水管4の下降速度より遅くなるように、繰出繰入装置61の繰出動作を制御する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
好気処理工程及び無酸素処理工程を含む浄化処理工程、沈殿処理工程、上澄水取水工程を含む排水処理工程、並びに、排泥処理工程を含む運転サイクルを繰り返す回分式汚水処理装置内に設置した回分槽から処理済の上澄水を排水する上澄水排水装置であって、
前記回分槽内の下部において所定の水平回転軸に沿って設置され、前記回転軸を回転中心として自転可能な摺動集水管と、
前記摺動集水管の外周面に接続された回動集水管と、
前記回動集水管の、前記摺動集水管側と反対側において前記摺動集水管と略平行に設置され、前記上澄水取水工程において上澄水を取水する取水管と、
一端が前記回動集水管に接続された集水管回動用駆動軸と、
前記集水管回動用駆動軸の他端側の繰出繰入により前記回動集水管を回動させて前記取水管を下降又は上昇させる前記集水管回動用駆動軸の繰出繰入装置と、
前記繰出繰入装置の繰出繰入動作を制御する制御装置と、
を備え、
前記制御装置は、
前記上澄水取水工程終盤付近における取水管の下降速度が、上澄水取水工程序盤から中盤に進む取水管の下降速度より遅くなるように、繰出繰入装置の繰出動作を制御する
ことを特徴とする上澄水排水装置。
【請求項2】
請求項1に記載の上澄水排水装置において、
更に、前記回分槽の上澄水の水位を計測する水位計測装置を備え、
前記制御装置は、
前記水位計測装置で計測された上澄水の水位に基づいて前記繰出繰入装置の動作を制御する
ことを特徴とする上澄水排水装置。
【請求項3】
請求項1に記載の上澄水排水装置において、
更に、前記回動集水管の所定位置に設置された傾斜角度計を備え、
前記制御装置は、前記傾斜角度計で検出された前記回動集水管の傾斜角度に基づいて前記繰出繰入装置の動作を制御する
ことを特徴とする上澄水排水装置。
【請求項4】
請求項3に記載の上澄水排水装置において、
前記傾斜角度計は、前記回動集水管の前記取水管設置箇所を超えて延長された延長部に設置されている
ことを特徴とする上澄水排水装置。
【請求項5】
請求項3に記載の上澄水排水装置において、
前記傾斜角度計は、前記回動集水管の本体から枝分かれした前記回動集水管の平行部であって、前記取水管設置箇所の前記繰出繰入装置側に前記回動集水管の本体と略平行に形成された平行部に、設置されている
ことを特徴とする上澄水排水装置。
【請求項6】
請求項3~5のいずれか1項に記載の上澄水排水装置において、
前記上澄水排水装置は、更に、電源から前記傾斜角度計への電力供給の伝送、及び/又は、前記傾斜角度計から前記制御装置への傾斜角度検出信号の伝送を担う電気ケーブルを備える
ことを特徴とする上澄水排水装置。
【請求項7】
請求項1に記載の上澄水排水装置において、
前記上澄水排水装置は、更に、前記繰出繰入装置の所定位置に設置された距離計本体と、前記集水管回動用駆動軸の所定位置に設置された被距離測定部とを有する距離計を備え、
前記制御装置は、前記距離計で検出された前記距離計本体・前記被距離測定部間の距離に基づいて前記繰出繰入装置の動作を制御する
ことを特徴とする上澄水排水装置。
【請求項8】
請求項7に記載の上澄水排水装置において、
前記被距離測定部は、前記集水管回動用駆動軸の水没しない非水没部に設置されている
ことを特徴とする上澄水排水装置。
【請求項9】
請求項3~5、7又は8に記載の上澄水排水装置において、
前記上澄水排水装置は、更に、前記傾斜角度計若しくは前記距離計本体から前記制御装置への前記傾斜角度検出信号若しくは前記距離検出信号の伝送に使用する無線送受信装置を備える
ことを特徴とする上澄水排水装置。
【請求項10】
請求項1に記載の上澄水排水装置において、
更に、回転可能な前記摺動集水管、又は回転運動を用いることにより繰出繰入されるように構成した前記集水管回動用駆動軸、の回転位置を読み取る回転角度計を備え、
前記制御装置は、前記回転角度計で検出された前記回転位置に基づいて前記繰出繰入装置の動作を制御する
ことを特徴とする上澄水排水装置。
【請求項11】
好気処理工程及び無酸素処理工程を含む浄化処理工程、沈殿処理工程、上澄水取水工程を含む排水処理工程、並びに、排泥処理工程を含む運転サイクルを繰り返す回分式汚水処理装置内に設置した回分槽内の下部において所定の水平回転軸に沿って設置され、前記回転軸を回転中心として自転可能な摺動集水管と、
前記摺動集水管の外周面に接続された回動集水管と、
前記回動集水管の、前記摺動集水管側と反対側において前記摺動集水管と略平行に設置され、前記上澄水取水工程において上澄水を取水する取水管と、
一端が前記回動集水管に接続された集水管回動用駆動軸と、
前記集水管回動用駆動軸の他端側の繰出繰入により前記回動集水管を回動させて前記取水管を下降又は上昇させる前記集水管回動用駆動軸の繰出繰入装置とを備え、
前記回分槽から処理済の上澄水を排水する上澄水排水装置を用いた上澄水排水方法であって、
前記排水処理工程は、
前記集水管回動用駆動軸の他端側の繰出により前記回動集水管を回動させて前記取水管を下降させる繰出工程と、
前記取水管を用いて前記回分槽から上澄水を取水する上澄水取水工程と、
前記上澄水取水工程で前記回分槽から取水した上澄水を前記回動集水管及び前記摺動集水管を介して排水する排水工程と、を含み、
前記繰出工程では、前記上澄水取水工程終盤付近における取水管の下降速度が、上澄水取水工程序盤から中盤に進む取水管の下降速度より遅くなるように、繰出繰入装置の繰出動作を制御する
ことを特徴とする上澄水排水方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、上澄水排水装置及び上澄水排水方法に関する。特に、回分式活性汚泥法による上澄水排水工程を実施するのに好適な上澄水排水装置及び上澄水排水方法に関する。
【背景技術】
【0002】
これまで、汚水処理方法としては、標準活性汚泥法やOD法(Oxidation Ditch method、オキシデーションディッチ法)が広く使われてきた。しかしながら、これらの標準活性汚泥法やOD法では沈殿池を必要とする。また、OD法においては長水路形状である必要があり、槽形状に制限がある。これらに対し、同一の回分槽(反応タンク)内で活性汚泥による汚水の浄化、汚泥の沈殿、処理水の流出を行う回分式活性汚泥法が注目されている。この回分式活性汚泥法では、基本的に施設の形状を選ばず、既存の沈殿池等も含めて施設そのままを処理施設として活用出来る。とりわけ、槽形状を選ばず既存(あるいは休止中の)施設を再活用することも可能である。そのため、費用を抑制した汚水処理ができる。例えば、更新時期を迎えた既存の汚水処理施設(下水処理施設や産業排水処理施設等を含む)でも、再活用できるとして注目されている。
【0003】
この回分式活性汚泥法は有力な汚水処理方法である一方、課題もある。この汚水処理法では、汚水処理した汚水(処理済の汚水)を、沈殿汚泥(沈殿活性汚泥)と上澄水に分離して、上澄水を排水する。そのため、上澄水排水がスカムや汚泥混入等がない状態で安定して行われない限り、回分式活性汚泥法は成立しない。ここで、回分式活性汚泥法では、汚水流入用の汚水流入ポンプ、汚水浄化用の散気装置、攪拌装置等が必要であるが、これらにはいずれも汎用機器を使用でき、また、他の処理法において使用されている装置も使用することができる。これに対し、上澄水の排水は、回分式活性汚泥法で特有の処理であり、この特有な処理に適した装置や排水方法が、とりわけ重要である。
【0004】
そこで、回分式活性汚泥法に好適な上澄水の排水をすべく、種々の取り組みがされてきた。
例えば、特許文献1には、回分式汚水処理装置の上澄水排出(排水)方法が開示されている。この上澄水排出方法は、上澄水の排水の際に、上澄水の吸水口(取水口)を有する吸込部(取水部)を、上澄水の水位変化に追従して可動(昇降)させる。図10は、この従来技術の説明図である。特許文献1の上澄水排出(排水)方法は、回分式汚水処理装置の汚水処理槽901(回分槽)で使用される(図12参照)。汚水処理槽901には、上限水位900Hを検出する上限水位センサ904や、下限水位900Lを検出する下限水位センサ905が備えられている。
【0005】
汚水処理槽901には、上澄水排出装置907が備えられている。上澄水排出装置907は、主排出管911と、主排出管911の水平軸心回りに回動自在なピボットジョイント部912を介して一端部が配管接続された回動排出管913と、回動排出管913の他端部に吸込部915とを備え、吸込部915は吸水口915aを有する。
そして排水ポンプ918の駆動により、上澄水を吸水口915aから吸い込み、吸込部915、回動排出管913および主排出管911を通じて汚水処理槽901外に排出されるように構成されている。
また、汚水処理槽901の上方位置に、エンコーダ付モータ919により正逆駆動制御される巻き取りドラム920が配置されており、この巻き取りドラム920の正逆回転によって、回動排出管913の吸込部915側端部と巻き取りドラム920との相互間にわたって連結されたチェーン921が巻き取り、繰り出し操作されるように構成されている。
【0006】
曝気工程および沈殿工程の際には、吸込部915を上昇位置として吸水口915aを水面上方に位置させ、上澄水排出工程の際には、吸込部915を下降操作して汚泥界面検出センサ917(沈殿汚泥界面検出センサー)により沈殿している汚泥界面高さが予め設定されている汚泥限界高さ900Pかどうかを検出し、汚泥限界高さ900Pに達していなければ、下限水位900Lまで上澄水を排出する。なお、符号906は水中エアレータを示す。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2001-47081号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上記特許文献1の開示技術(上澄水排出方法)は、上澄水の排水の際に、
上澄水の吸水口を有する吸込部の高さ位置を、上澄水の水位変化に追従して変化させるものであり、水位が変化しても水位に合わせて上澄水を排水できる点で優れている。
しかし、排水によって上澄水の水位が低下して汚泥限界高さ900P(沈殿汚泥)に近づいた場合、沈殿汚泥が巻き上げられて排水されやすいという課題があった。
そこで、本発明は、上澄水の排水の際に、排水によって上澄水の水位が低下して汚泥限界高さ900P(沈殿汚泥)に近づいた場合であっても、汚泥が巻き上げられて排水されることを抑制できる上澄水排水装置及び上澄水排水方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
[1]本発明の上澄水排水装置は、好気処理工程及び無酸素処理工程を含む浄化処理工程、沈殿処理工程、上澄水取水工程を含む排水処理工程、並びに、排泥処理工程を含む運転サイクルを繰り返す回分式汚水処理装置内に設置した回分槽から処理済の上澄水を排水する上澄水排水装置であって、前記回分槽内の下部において所定の水平回転軸に沿って設置され、前記回転軸を回転中心として自転可能な摺動集水管と、前記摺動集水管の外周面に接続された回動集水管と、前記回動集水管の、前記摺動集水管側と反対側において前記摺動集水管と略平行に設置され、前記上澄水取水工程において上澄水を取水する取水管と、一端が前記回動集水管に接続された集水管回動用駆動軸と、前記集水管回動用駆動軸の他端側の繰出繰入(繰出又は繰入と同義、以下同じ)により前記回動集水管を回動させて前記取水管を下降又は上昇させる前記集水管回動用駆動軸の繰出繰入装置と、前記繰出繰入装置の繰出繰入動作を制御する制御装置と、を備え、前記制御装置は、前記上澄水取水工程終盤付近における取水管の下降速度が、上澄水取水工程序盤から中盤に進む取水管の下降速度より遅くなるように、繰出繰入装置の繰出動作を制御することを特徴とする。
ここで、「上澄水取水工程序盤」とは上澄水取水を開始した初期をいう。「終盤付近」とは上澄水取水の終期近くをいう。「中盤」とは上澄水取水の中頃をいう。序盤においては、取水管の高さ位置(上澄水の水位)は高く、終盤においては低い。中盤においてはその間の高さ位置にある。
【0010】
[2]上記[1]に記載の上澄水排水装置においては、更に、前記回分槽の上澄水の水位を計測する水位計測装置を備え、前記制御装置は、前記水位計測装置で計測された上澄水の水位に基づいて前記繰出繰入装置の動作を制御することが好ましい。
【0011】
[3]上記[2]に記載の上澄水排水装置においては、更に、前記回動集水管の所定位置に設置された傾斜角度計を備え、前記制御装置は、前記傾斜角度計で検出された前記回動集水管の傾斜角度に基づいて前記繰出繰入装置の動作を制御することが好ましい。
【0012】
[4]上記[3]に記載の上澄水排水装置においては、前記傾斜角度計は、前記回動集水管の前記取水管設置箇所を超えて延長された延長部に設置されていることが好ましい。
【0013】
[5]上記[3]に記載の上澄水排水装置においては、前記傾斜角度計は、前記回動集水管の本体から枝分かれした前記回動集水管の平行部であって、前記取水管設置箇所の前記繰出繰入装置側に前記回動集水管の本体と略平行に形成された平行部に、設置されていることが好ましい。
【0014】
[6]上記[3]~[5]のいずれかに記載の上澄水排水装置においては、更に、電源から前記傾斜角度計への電力供給の伝送、及び/又は、前記傾斜角度計から前記制御装置への傾斜角度検出信号の伝送を担う電気ケーブルを備えることが好ましい。
【0015】
[7]上記[1]に記載の上澄水排水装置においては、更に、前記繰出繰入装置の所定位置に設置された距離計本体と、前記集水管回動用駆動軸の所定位置に設置された被距離測定部とを有する距離計を備え、前記制御装置は、前記距離計で検出された前記距離計本体・前記被距離測定部間の距離に基づいて前記繰出繰入装置の動作を制御することが好ましい。
【0016】
[8]上記[7]に記載の上澄水排水装置においては、前記被距離測定部は、前記集水管回動用駆動軸の水没しない非水没部に設置されていることが好ましい。
【0017】
[9]上記[3]~[5]、[7]又は[8]のいずれかに記載の上澄水排水装置においては、前記上澄水排水装置は、更に、前記傾斜角度計若しくは前記距離計本体から前記制御装置への前記傾斜角度検出信号若しくは前記距離検出信号の伝送に使用する無線送受信装置を備えることが好ましい。
【0018】
[10]上記[1]に記載の上澄水排水装置においては、更に、回転可能な前記摺動集水管、又は回転運動を用いることにより繰出繰入されるように構成した前記集水管回動用駆動軸、の回転位置を読み取る回転角度計を備え、前記制御装置は、前記回転角度計で検出された前記回転位置に基づいて前記繰出繰入装置の動作を制御することが好ましい。
【0019】
[11]本発明の上澄水排水方法は、好気処理工程及び無酸素処理工程を含む浄化処理工程、沈殿処理工程、上澄水取水工程を含む排水処理工程、並びに、排泥処理工程を含む運転サイクルを繰り返す回分式汚水処理装置内に設置した回分槽内の下部において所定の水平回転軸に沿って設置され、前記回転軸を回転中心として自転可能な摺動集水管と、前記摺動集水管の外周面に接続された回動集水管と、前記回動集水管の、前記摺動集水管側と反対側において前記摺動集水管と略平行に設置され、前記上澄水取水工程において上澄水を取水する取水管と、一端が前記回動集水管に接続された集水管回動用駆動軸と、前記集水管回動用駆動軸の他端側の繰出繰入により前記回動集水管を回動させて前記取水管を下降又は上昇させる前記集水管回動用駆動軸の繰出繰入装置とを備え、前記回分槽から処理済の上澄水を排水する上澄水排水装置を用いた上澄水排水方法であって、前記排水処理工程は、前記集水管回動用駆動軸の他端側の繰出により前記回動集水管を回動させて前記取水管を下降させる繰出工程と、前記取水管を用いて前記回分槽から上澄水を取水する上澄水取水工程と、前記上澄水取水工程で前記回分槽から取水した上澄水を前記回動集水管及び前記摺動集水管を介して排水する排水工程と、を含み、前記繰出工程では、前記上澄水取水工程終盤付近における取水管の下降速度が、上澄水取水工程序盤から中盤に進む取水管の下降速度より遅くなるように、繰出繰入装置の繰出動作を制御することを特徴とする。
なお、[1]の上澄水排水装置に対する[2]~[10]のそれぞれの特徴は、上記[11]の上澄水排水方法においても好ましい特徴となる。
【発明の効果】
【0020】
集水管回動用駆動軸を用いた上澄水排水装置においては、集水管回動用駆動軸の繰出による取水管の下降に伴って上澄水が取水される。
この場合、従来の上澄水排水装置のように集水管回動用駆動軸の繰出速度が一定であると、上澄水取水工程中、取水管の下降速度が徐々に速くなる(上澄水の取水速度が徐々に速くなる)ことから、上澄水取水工程終盤付近になって取水管が汚泥界面に近づくにつれて取水管の下降速度が速くなり(上澄水の取水速度が速くなり)、沈殿汚泥が巻き上げられて排水に混入されてしまうというリスクが高くなる。
これに対して、本発明の上澄水排水装置又は上澄水排水方法によれば、沈殿汚泥巻き上げリスクの高い上澄水取水工程終盤付近における取水管の下降速度が、沈殿汚泥巻き上げリスクの低いそれ以前の上澄水取水工程序盤から中盤に進む(期間における)取水管の下降速度より遅くなるように、繰出繰入装置の繰出動作を制御することから、沈殿汚泥が巻き上げられて排水に混入されてしまうというリスクを低くできる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】実施形態1に係る上澄水排水装置3Aの概要説明図である。
図2】実施形態1に係る上澄水排水装置3Aを説明するための斜視図である。
図3】取水管降下速度について説明するための図である。
図4】取水管4の高さ位置h、下降上昇速度Y等の関係について説明するための図である。
図5】実施形態1に係る上澄水排水方法を説明するための上澄水排水処理フローチャートである。
図6】実施形態2に係る上澄水排水装置3Bの概要説明図である(傾斜角度計91を回動集水管5の延長部55に設置)。
図7】実施形態2に係る上澄水排水装置3Bの概要説明図である(傾斜角度計91を回動集水管5の平行部56に設置)。
図8】実施形態2に係る上澄水排水方法を説明するための図である。
図9】実施形態3に係る上澄水排水装置3Cの概要説明図である(ワイヤー式変位計を使用)。
図10】実施形態3に係る上澄水排水装置3Cの概要説明図である(レーザー距離計を使用)。
図11】実施形態3に係る上澄水排水方法を説明するための図である。
図12】従来技術の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の上澄水排水装置及び上澄水排水方法について、図に示す各実施形態に基づいて説明する。各図面は模式図であり、必ずしも実際の構造、構成、方法等を厳密に反映するものではない。以下に説明する各実施形態は、特許請求の範囲に係る発明を限定するものではない。また、各実施形態の中で説明されている諸要素及びその組み合わせの全てが本発明に必須であるとは限らない。以下の説明においては、実質的に同等とみなせる構成要素に関しては実施形態をまたいで同じ符号を用い、再度の説明を省略する場合がある。
【0023】
[実施形態1]
[上澄水排水装置3Aの概要]
図1は、実施形態1に係る上澄水排水装置3Aの概要説明図である。図2は、実施形態1に係る上澄水排水装置3Aを説明するための斜視図である。図5は、実施形態1に係る上澄水排水方法を説明するための上澄水排水処理フローチャートである。
実施形態1に係る上澄水排水装置3Aは、図1及び図2に示すように、好気処理工程及び無酸素処理工程を含む浄化処理工程、沈殿処理工程、上澄水取水工程を含む排水処理工程、並びに、排泥処理工程を含む運転サイクルを繰り返す回分式汚水処理装置1内に設置した回分槽2から処理済の上澄水22を排水する上澄水排水装置3Aである。当該上澄水排水装置3Aは、回分槽2内の下部において所定の水平回転軸に沿って設置され、当該回転軸を回転中心として自転可能な摺動集水管7と、摺動集水管7の外周面に接続された回動集水管5と、回動集水管5の、摺動集水管7側と反対側において摺動集水管7と略平行に設置され、上澄水取水工程において上澄水22を取水する取水管4と、一端が回動集水管5に接続された集水管回動用駆動軸6と、集水管回動用駆動軸6の他端側の繰出繰入により回動集水管5を回動させて取水管4を下降又は上昇させる集水管回動用駆動軸6の繰出繰入装置61と、繰出繰入装置61の繰出繰入動作を制御する制御装置8と、を備えている。そして、当該制御装置8は、上澄水取水工程終盤付近における取水管4の下降速度が、上澄水取水工程序盤から中盤に進む(期間における)取水管4の下降速度より遅くなるように、繰出繰入装置61の繰出動作を制御する。
【0024】
また、実施形態1に係る上澄水排水方法は、上記上澄水排水装置3Aを用い、集水管回動用駆動軸6の繰出により取水管4を下降させる繰出工程では、上澄水取水工程終盤付近における取水管4の下降速度が、上澄水取水工程序盤から中盤に進む(期間における)取水管4の下降速度より遅くなるように、繰出繰入装置61の繰出動作を制御する。
【0025】
実施形態1に係る上澄水排水装置3Aは、更に、回分槽2の上澄水22の水位を計測する水位計測装置99を備え、制御装置8は、上記水位計測装置99で計測された上澄水22の水位に基づいて繰出繰入装置61の動作を制御する。
【0026】
さて、図1に示すように、実施形態1に係る上澄水排水装置3A(デカンターともいう)は、回分式汚水処理装置1内に設置した回分槽2における処理済の上澄水22を排水する装置である。
回分槽2には、原水系統から原水80(処理する汚水)を流入させる。汚水21が、好気処理工程及び無酸素処理工程を含む浄化処理工程で処理されると、沈殿処理工程で、汚水21は上澄水22と沈殿汚泥23とに分離する。(回分槽2で使用される散気装置、撹拌装置、汚泥排出装置等の説明や図示は省略する。)
そして、排水処理工程で、上澄水排水装置3Aにより処理済の上澄水22が排水される。つまり、制御装置8により繰出繰入装置61の繰出繰入動作が制御されて、集水管回動用駆動軸6の繰出繰入装置61側の繰出繰入により回動集水管5が回動し、取水管4の下降又は上昇によって、取水管4が上澄水22を取水すると、取水された上澄水22は、回動集水管5を経由して、摺動集水管7に集水され、排水路24から排水系統に排水される。
符号51は、摺動集水管7と排水路24との接続箇所を示す。この箇所では、両者間に、摺動集水管7の摺動(回転方向の摺動)が可能な隙間あるいはべアリング等が設けられている。
【0027】
上澄水排水装置3Aの構成要素である集水管回動用駆動軸6は、例えば、ネジが形成された金属棒(押出駆動軸体)で構成されており、その一端が回動集水管5に接続され、回動集水管5を支持している。集水管回動用駆動軸6の他端は繰出繰入装置61の繰出繰入部62につながっている。繰出繰入部62で、集水管回動用駆動軸6の繰出繰入をすると、集水管回動用駆動軸6の繰出長さが変化し、取水管4が下降又は上昇する。なお、集水管回動用駆動軸6として、同様の繰出繰入機能を有するチェーン等を用いることも可能である。
図2(斜視図)に示すように、上澄水排水装置3Aでは、集水管回動用駆動軸6として、ネジが形成された金属棒(押出押入する駆動軸体)を用いている。集水管回動用駆動軸6(押出駆動軸体)は、モータを内蔵した繰出繰入装置61(駆動軸体押出駆動装置)のラックアンドピニオン機構により繰出繰入(押出押入)される。なお、集水管回動用駆動軸6(駆動軸体)の駆動部分は、集水管回動用駆動軸支持部65で支持されている。
また、上澄水22を取水する取水管4は、水平長手方向のほぼ全幅にわたり開口した取水口41を有する。取水口41には、可動フロート型のスカム流入防止用のバッフル42が付属している。
【0028】
[取水管降下速度]
図3は、取水管降下速度について説明するための図である。図3(a)は、集水管回動用駆動軸6の長さLと取水管4高さ位置(上澄水水位)との関係を説明するための図で、図3(b)は、それらの算定結果を示す図で、図3(c)は、繰出繰入動作(駆動軸体の押出押入駆動)による取水管4下降の様子を説明するための図である。
発明者等は、取水管4の降下過程後半で、何故、沈殿汚泥23が巻き上がる現象が起こりやすいかについて、以下のように考察した。
【0029】
図3(a)に示すように、軸駆動装置(繰出繰入装置61)の支点と摺動集水管7との距離をK、取水管4側の支点(ピボットジョイント60)との距離(駆動軸体の伸長距離)をL、取水管4と摺動集水管7との距離をR、取水管4側の支点(ピボットジョイント60)と摺動集水管7との距離をr、摺動集水管7と回分槽2槽壁との水平距離をBとし、図3(a)に示す各角度をθ、θ、θとする。
一般に三角形の三辺をa、b、cとする時、三角形の面積Sは、ヘロンの式から
本件の場合、(r,K,L)を3辺とする三角形については、
であり、
この内
従って、水位WL(摺動集水管7高さ位置基準、取水管4の高さ位置に対応)は
となる。
【0030】
上式について、K=5 (m)、R=3(m)、r=1.5(m)、B=1(m)の想定事例について、駆動軸体伸長L(繰出繰入長さ)に対する水位WLを算定した。
算定結果を図3(b)及び図3(c)に示す。
図3(b)の上部に設定数値、下部に算定結果を示す。
図3(c)は、図3(b)に示す算定結果を表したグラフである。横軸が集水管回動用駆動軸6の繰出繰入長さL(m)で、縦軸が、上澄水の水位WL(m)(摺動集水管7の高さ位置基準)である。水位WL(m)は、上澄水排水時の取水管4の高さ位置でもある。四角の点は、各水位WL(m)における繰出繰入長さL(m)の算出点であり、これらの点を実線で結んでおり、破線は、上澄水取水工程終盤付近において下降速度が増加することを示すためのものである。
図3(c)に示す通り、取水管4の降下速度は、取水開始当初(上澄水取水工程序盤)は緩やかで、沈澱汚泥面に近づく後半になって、却って速度が増す傾向になることが明らかとなった。
このことから、従来の回動式上澄水排水装置を採用する場合には、処理水質安定化の観点から、何らかの制御装置が望ましいことを、理論上からも確認出来た。
【0031】
発明者等は、更に検討し、上澄水取水工程終盤付近における取水管4の下降速度が、上澄水取水工程序盤から中盤に進む(期間における)取水管4の下降速度より遅くなるように、繰出繰入装置61の繰出動作を制御することとした。取水管4の降下速度(水位WL)を、例えば、図3(c)に一点鎖線で示すようにする制御である。
【0032】
図4は、取水管4の高さ位置h、下降上昇速度Y等の関係について説明するための図である。取水管4の下降速度を制御する際、制御装置8は、図4の関係に基づき制御する。
図4中の符号h、θ、L、V及びYは、図1中の記載に対応する。図4に示すように、取水管4の退避時、上澄水排水開始時、上澄水排水中間時、及び上澄水排水終了における、取水管4高さ位置hは、それぞれ、h0、h1、h2、h3である(h1、h2及びh3は上澄水水位でもある。h0>h1>h2>h3)。回動集水管5の傾斜角度θは、それぞれ、θ0、θ1、θ2、及びθ3である(θ0>θ1>θ2>θ3)。傾斜角度θは、摺動集水管7の回転軸を中心として、当該回転軸を通る左方向水平線から回動集水管5延長線方向に、時計方向に測った角度(図6参照)。集水管回動用駆動軸6の繰出繰入長さLは、それぞれ、L0、L1、L2、及びL3である(L0<L1<L2<L3)。長さLは、ピボットジョイント60・繰出繰入装置61間の長さである。また、符号h4は、沈殿汚泥界面(沈殿汚泥高さ位置)を示す(h3>h4)。
【0033】
また、取水管4高さ位置hが、h0からh1、h1からh2、h2からh3、及びh3からh0に変化する際の、取水管4の下降上昇速度Y(高さ位置h変化速度)は、それぞれ、Y0、Y1、Y2、及び-Y3である(「+」は上昇で「-」は上昇。「+」の場合「+」を省略する場合がある。他の箇所でも同様)。集水管回動用駆動軸6の繰出繰入長さが変化する速度V(長さが増加又は減少する速度)は、それぞれ、V0、V1、V2、及び-V3である(「+」は長さ増加で「-」は長さ減少)。
【0034】
従って、制御装置8は、上澄水取水工程終盤付近における取水管4の下降速度が、上澄水取水工程序盤から中盤に進む(期間における)取水管4の下降速度より遅くなるように、繰出繰入装置61の繰出動作を制御する場合、上澄水の水位(取水管4の高さ位置h)に基づいて制御する(実施形態1)、回動集水管5の傾斜角度θに基づいて制御する(実施形態2で後述)、集水管回動用駆動軸6の繰出繰入長さLに基づいて制御する(実施形態3で後述)、等の方法でおこなえばよい。発明者等はこのように考察した。
【0035】
[制御装置8]
制御装置8は、CPU81(Central Processing Unit、中央処理装置)、ROM82(Read Only Memory、読出専用メモリー)、RAM83(Random Access Memory)と、これらを接続するバス84、及びバス84と制御装置8の外部装置(汚泥界面計測装置98、水位計測装置99、繰出繰入装置61、後述する傾斜角度計91、距離計93等)との間に設けられたインターフェース85を有する。
CPU81は、ROM82に格納されたプログラム、又は、外部記憶装置(図示せず)からRAM83にロードされたプログラムに従って各種の処理を実行する。RAM83には、CPU81が各種の処理を実行する際に必要なデータ等を適宜記憶させる。制御装置8はインターフェース85を介して外部装置と接続され、外部装置との間で信号の入出力がされる。
【0036】
図1に示す符号98は、沈殿汚泥界面h4(沈殿汚泥23の高さ位置)を計測する汚泥界面計測装置を示し、符号99は、汚水21(上澄水22)の水位を計測する水位計測装置を示す。
汚泥界面計測装置98は、例えば、汚水21の水面より上に固定設置して、超音波を鉛直方向下方に発射する。そして、汚泥界面からの反射波を受信してその強度から汚泥界面計測装置98・沈殿汚泥界面間の距離を測定してその測定信号を制御装置8に出力する。または、予め測定した汚泥界面計測装置98・回分槽2底面間の距離から、汚泥界面計測装置98・沈殿汚泥界面間の距離を差し引いて、その値を沈殿汚泥界面h4として制御装置8に出力する。
水位計測装置99は、例えば、汚水21の水面より上に固定設置して、超音波を鉛直方向下方に発射する。そして、水面からの反射波を受信してその強度から水位計測装置99・水面間の距離を測定してその測定信号を制御装置8に出力する。または、予め測定した水位計測装置99・回分槽2底面間の距離から、水位計測装置99・水面間の距離を差し引いて、その値を水位として制御装置8に出力する。
【0037】
[上澄水排水方法]
図5は、実施形態1に係る上澄水排水方法を説明するための上澄水排水処理フローチャートである。
まず、上澄水22の排水をしない取水管4退避時においては、制御装置8は、取水管4を、退避時における退避高さ位置h0に退避させている(ステップS1、なお「Sxx」は「ステップxx」の意味、以下同様)。
【0038】
制御装置8は、汚泥界面計測装置98により計測された沈殿汚泥高さ位置h4を監視しているが、更に、水位計測装置99により計測された汚水水位を監視している。沈殿汚泥界面h4に対する水位が所定水位となり、上澄水排水開始OKか否かを判断する(S3)。NOの場合は、S3の処理工程を繰り返す。
【0039】
制御装置8は、以降の処理を、上澄水の水位(取水管4の高さ位置h)に基づき、その下降上昇速度Yを制御する。
制御装置8は、S3で、YESの場合はS5の処理工程に進み、排水処理工程を開始する。
S5の処理工程では、制御装置8は、集水管回動用駆動軸6の繰出繰入長さをL0からL1に、長さ変化速度V0(高速)で、増加させる(繰出工程)。そして、取水管4を、退避高さ位置h0から排水開始高さ位置h1(上澄水水面)に、速度Y0(高速)で下降させる。このとき、回動集水管5の傾斜角度は、θ0からθ1に減少する(高速)。
【0040】
制御装置8は、取水管4が、取水開始時における取水管4の排水開始高さ位置h1に到達したか監視しており(S7)、到達していない(NOの)場合、S5の処理工程に戻す。
【0041】
S7でYES、つまり取水管4が、排水開始高さ位置h1に到達すると、取水管4を用いて回分槽2から上澄水22を取水し、上記取水した上澄水22を回動集水管5及び摺動集水管7を介して排水する(上澄水排水工程)。このようにして上澄水の排水処理工程が開始される(上澄水取水工程序盤)。
【0042】
取水管4が排水開始高さ位置h1に到達して、取水(排水)が開始されると、S9の処理工程に進む。水位計測装置99は、汚水21(上澄水22)の水位を常に計測している。S9では、制御装置8は、水位計測装置99で計測された上澄水22の水位に基づいて、繰出繰入長さをL1からL2に、長さ変化速度V1(標準速)で増加させる(上澄水取水工程序盤から中盤に進む期間)。そして、取水管4を、高さ位置h1からh2に、速度Y1(標準速)で下降させる。このとき、回動集水管5の傾斜角度は、θ1からθ2に減少する(標準速)。上澄水取水工程序盤から中盤に進む期間では、終盤(付近)に比べて取水管4は早く下降し、それに伴って上澄水22が取水されて排水される。
【0043】
上澄水22の取水・排水に伴い、取水管4(及び上澄水22の水位)は更に下降する。制御装置8は、水位計測装置99で計測された上澄水22の水位に基づいて、上澄水22の水位(即ち取水管4の高さ位置)が、所定の排水中間高さ位置h2に到達したか監視しており(S11)、到達していない(NOの)場合、処理工程をS9に戻す。
【0044】
S11でYESの場合、つまり上澄水22の水位(即ち取水管4の高さ位置)が、排水中間高さ位置h2に到達すると、S13の処理工程に進む。S13では、制御装置8は、水位計測装置99で計測された上澄水22の水位に基づいて、繰出繰入長さをL2からL3に、長さ変化速度V2(低速、V2<V1)で増加させ(上澄水取水工程終盤付近)、取水管4を高さ位置h2からh3まで速度Y2(低速)で下降させる。このとき、回動集水管5の傾斜角度は、θ2からθ3に減少する(低速)。その結果、上澄水取水工程終盤付近における取水管4の速度Y2が、上澄水取水工程序盤から中盤に進む(期間における)取水管4の速度Y1より遅くなるように下降させ、その下降に従って上澄水22が取水されて排水される。
【0045】
制御装置8は、上澄水22の水位(取水管4の高さ位置h)が、排水終了高さ位置h3に到達したか監視しており(S15)、到達していない(NOの)場合、処理工程をS13に戻す。
【0046】
S15でYESの場合、つまり上澄水22の水位(取水管4の高さ位置)が排水終了高さ位置h3に到達した場合、S17の処理工程に進む。S17では、制御装置8は、繰出繰入長さをL3からL0に、長さ変化速度-V3(減少、高速)で減少させ、取水管4を高さ位置h3からh0に、速度-Y3(上昇、高速)で上昇させる。このとき、回動集水管5の傾斜角度は、θ3からθ0に増加する(高速)。このようにして、取水管4の高さ位置を上澄水22の水面より高い退避高さ位置h0にすることにより、取水管4からの取水・排水を終了させる(上澄水の排水処理工程終了)。
【0047】
なお、後述する実施形態2及び3でも、汚泥界面計測装置98により沈殿汚泥高さ位置h4を計測する点は実施形態1と同じである。また、水位計測装置99により、少なくとも上澄水排水開始時水位を計測する点も同じである。但し、実施形態2又は3では、上澄水排水開始時水位(取水管4の高さ位置)等を回動集水管5の傾斜角度θ又は集水管回動用駆動軸6の繰出繰入長さLに換算し、それらに基づいて繰出繰入装置61の繰出動作を制御する点が異なる。
【0048】
[実施形態1の効果]
実施形態1に係る上澄水排水装置3A(及びその上澄水排水方法)によれば、沈殿汚泥23巻き上げリスクの高い上澄水取水工程終盤付近における取水管4の下降速度が、それ以前の上澄水取水工程序盤から中盤に進む(期間における)取水管4の下降速度より遅いから、沈殿汚泥23が巻き上げられて排水に混入されてしまうというリスクを低くできる。
また、沈殿汚泥23巻き上げリスクの低い上澄水取水工程序盤から中盤に進む期間においては、取水管4の下降速度(上澄水22の取水速度)を許容限度近くまで速くすることにより上澄水取水工程に要する時間を短縮することも可能となる。
【0049】
また、実施形態1に係る上澄水排水装置3Aによれば、水位計測装置99で計測された上澄水22の水位に基づいて繰出繰入装置61の動作が制御されるため、繰出繰入装置61の動作を、実際の上澄水の水位に基づいて、的確に制御することが可能となる。
【0050】
[実施形態2]
図6は、実施形態2に係る上澄水排水装置3Bの概要説明図である(傾斜角度計91を回動集水管5の延長部55に設置)。図7は、実施形態2に係る上澄水排水装置3Bの概要説明図である(傾斜角度計91を回動集水管5の平行部56に設置)。図8は、実施形態2に係る上澄水排水方法を説明するための図である。
実施形態2に係る上澄水排水装置3B(及び上澄水排水方法)は、実施形態1に係る上澄水排水装置3A(及び上澄水排水方法)と基本的には同様であるが、取水管4を下降させるための繰出繰入装置61の動作を、実施形態1では上澄水22の水位に基づいて制御するのに対し、実施形態2では回動集水管5の傾斜角度θに基づいて制御する点が異なる(図4参照)。
【0051】
実施形態2に係る上澄水排水装置3Bは、回動集水管5の所定位置に設置された傾斜角度計91を備え、制御装置8は、傾斜角度計91で検出された回動集水管5の傾斜角度θに基づいて繰出繰入装置61の動作を制御する。
傾斜角度計91としては例えばジャイロセンサーを用いる。
【0052】
[延長部55への設置]
実施形態2に係る上澄水排水装置3Bにおいては、例えば、図6に示すように、傾斜角度計91を、回動集水管5の取水管4設置箇所を超えて延長された延長部55に設置する。
回動集水管5の傾斜角度θは、傾斜角度計91を延長部55に設置した場合でも、延長部55でない箇所に設置した場合と変わりない。取水管4の高さ位置がh1~h3の間においては、延長部55の高さ位置は、常に、取水管4の高さ位置より高い。
【0053】
[平行部56への設置]
実施形態2に係る上澄水排水装置3Bにおいては、傾斜角度計91を図6のように設置する代わりに、図7のように設置してもよい。つまり、傾斜角度計91を、回動集水管5の本体から枝分かれした回動集水管5の平行部56であって、取水管4設置箇所の繰出繰入装置61側に回動集水管5の本体と略平行に形成された平行部56に設置する。
回動集水管5の傾斜角度は、傾斜角度計91を平行部56に設置した場合でも、回動集水管5の本体に設置した場合と変わりない。取水管4の高さ位置がh1~h3の間においては、延長部55の高さ位置は、常に、取水管4の高さ位置より高い。
【0054】
[電気ケーブル96の配線]
実施形態2に係る上澄水排水装置3Bは、更に、電源から傾斜角度計91への電力供給の伝送、及び/又は、傾斜角度計91から制御装置8への傾斜角度検出信号の伝送を担う電気ケーブル96を備えている。電気ケーブル96としては防水ケーブルを用いる。
【0055】
[回動集水管5の傾斜角度に基づく制御]
実施形態2の制御は、実施形態1における「制御装置8は、水位計測装置99で計測された上澄水22の水位に基づいて」繰出繰入装置61の動作を制御する代わりに、「制御装置8は、傾斜角度計91で検出された回動集水管5の傾斜角度θに基づいて」繰出繰入装置61の動作を制御するものである(図4及び図5参照)。
【0056】
制御装置8は、回動集水管5の傾斜角度θを傾斜角度計91で監視している。傾斜角度θと、高さ位置hと、繰出繰入長さ変化速度V(及び取水管4の下降上昇速度Y)との関係は、ROM82、RAM83等のメモリー内に記憶されており、制御装置8はこれらの関係を参照して、回動集水管5の傾斜角度θに基づいて繰出繰入装置61の繰出繰入動作を制御する。
【0057】
図8を用いて説明する。図8は、実施形態2に係る上澄水排水方法を説明するための図である。
図8には、取水管4高さ位置h(h0は高さ位置。高さ位置h1、h2、h3は回分槽水位と同じ、右側の列)と、それに対応する回動集水管5の傾斜角度θ(左側の列)と、繰出繰入長さ変化速度V(駆動軸制御)(中央の列)との関係を示している。なお、「低速」、「標準速」及び「高速」の大きさ(絶対値)は、低速<標準速<高速、の関係を有する。
【0058】
図8に示すように、取水管4高さ位置h0では、回動集水管5の傾斜角度θ0であり、水面到達高さ位置(上澄水排水開始高さ位置)h1では傾斜角度θ1である。制御装置8は、傾斜角度計91で検出された回動集水管5の傾斜角度θに基づいて傾斜角度をθ0からθ1に変化(高速)させることにより、取水管4を高さ位置h0からh1に、速度Y0(高速)で下降させる。そして、取水管4を上澄水水面に到達させ、上澄水22の取水・排水を開始させる。なお、このときの繰出繰入長さ変化速度はV0(高速)である(図4参照、以下同様)。
中間水位高さ位置h2では、傾斜角度θはθ2である。上澄水取水工程序盤から中盤に進む期間では、制御装置8は、傾斜角度をθ1からθ2に変化(標準速)させることにより、取水管4を高さ位置h1からh2に、速度Y1(標準速)で下降させる。なお、このときの繰出繰入長さ変化速度はV1(標準速)である。
上澄水排水終了高さ位置h3では、傾斜角度θ3である。制御装置8は、傾斜角度をθ2からθ3に変化(低速)させることにより、取水管4を高さ位置h2からh3に、速度Y2(低速、Y2<Y1)で下降させる。なお、このときの繰出繰入長さ変化速度はV2(低速)である。これにより、上澄水取水工程終盤付近の取水管4下降速度がY2となる。
上澄水排水終了後、制御装置8は、傾斜角度をθ3からθ0に変化(高速)させることにより、取水管4を高さ位置h3からh0に、速度-Y3(高速)で上昇させ、退避させる。なお、このときの繰出繰入長さ変化速度は-V3(高速、長さ減少)である。
【0059】
[実施形態2の効果]
実施形態2に係る上澄水排水装置3B(上澄水排水方法)においては、繰出繰入装置61の動作が、回動集水管5の傾斜角度θに基づいて制御されるため、回動集水管に設置された取水管の下降又は上昇を的確に制御することが可能となる。
【0060】
また、実施形態2に係る上澄水排水装置3Bにおいては、傾斜角度計91を延長部55に設置することにより、当該傾斜角度計91は、常に水面より上の高さ位置にあるため、傾斜角度計91の水没による傾斜角度θの検出不能、検出誤り等の回避が可能となる。また、傾斜角度計91を延長部55に設置すればよいため、設置が容易である。
【0061】
また、実施形態2に係る上澄水排水装置3Bにおいては、傾斜角度計91を平行部56に設置することにより、当該平行部56は、常に水面より上の高さ位置にあるため、傾斜角度計91の水没による傾斜角度θの検出不能、検出誤り等の回避が可能となる。また、傾斜角度計91を設置するためのスペースが少なくてすむ。
【0062】
また、実施形態2に係る上澄水排水装置3Bにおいては、更に、電源から傾斜角度計91への電力供給の伝送、及び/又は、傾斜角度計91から前記制御装置9への傾斜角度検出信号の伝送を担う電気ケーブル96を備えることにより、電力伝送及び/又は信号伝送を確実におこなうことができる。
【0063】
なお、実施形態2に係る上澄水排水装置3B(上澄水排水方法)は、実施形態1のように上澄水22の水位に基づいて繰出繰入装置61の動作を制御する代わりに、傾斜角度計91で検出された回動集水管5の傾斜角度θに基づいて繰出繰入装置61の動作を制御する点が実施形態1と異なるが、それ以外の点は実施形態1と同様であるため、実施形態1に係る上澄水排水装置3A(上澄水排水方法)が有する効果のうち、該当する効果を有する。
【0064】
[実施形態3]
図9は、実施形態3に係る上澄水排水装置3Cの概要説明図である(ワイヤー式変位計を使用)。図10は、実施形態3に係る上澄水排水装置3Cの概要説明図である(レーザー距離計を使用)。図11は、実施形態3に係る上澄水排水方法を説明するための図である。
実施形態3に係る上澄水排水装置3C(及び上澄水排水方法)は、実施形態1に係る上澄水排水装置3A(及び上澄水排水方法)と基本的には同様であるが、繰出繰入装置61の動作を、実施形態1では上澄水22の水位に基づいて制御するのに対し、実施形態3では、距離計本体94・被距離測定部95間の距離、に基づいて制御する点が異なる。
【0065】
[距離計93]
図9及び図10に示すように、実施形態3に係る上澄水排水装置3Cは、更に、繰出繰入装置61の所定位置に設置された距離計本体94と、集水管回動用駆動軸6の所定位置に設置された被距離測定部95とを有する距離計93を備え、制御装置8は、前記距離計93で検出された距離計本体94・被距離測定部95間の距離に基づいて繰出繰入装置61の動作を制御する。
また、後述する図10に示すように、被距離測定部95を、集水管回動用駆動軸6の水没しない非水没部に設置してもよい。
【0066】
距離計93としては、例えば、ワイヤー式変位計、レーザー距離計等を用いる。距離計93は、距離計本体94・被距離測定部95間の距離、つまり集水管回動用駆動軸6の繰出繰入長さLの全長(L、図9参照)又はその一部の長さ(L10、図10参照)を直接計測する。なお、距離計本体94は繰出繰入装置61の繰出繰入部62近傍に設置するのが好ましい。
【0067】
[ワイヤー式変位計]
図9には、距離計93として、ワイヤー式変位計を使用した上澄水排水装置3Cを図示している。
ワイヤー式変位計は、巻き尺のようなものである。ワイヤーの繰出又は繰入をする変位計本体を距離計本体94とし、ワイヤーの先端部分を被距離測定部95とする。距離計本体94を繰出繰入装置61に設置し、ワイヤーの先端部分(被距離測定部95)を集水管回動用駆動軸6の回動集水管5近傍(ピボットジョイント60近傍)に設置する。
距離計本体94にはワイヤーの繰出又は繰入長さを測定するカウンター等が内蔵されており、繰出又は繰入長さ、つまり距離計本体94・被距離測定部95間の距離Lの検出信号を制御装置8に出力する。このようにして集水管回動用駆動軸6の繰出繰入長さLを直接計測する。
【0068】
[レーザー距離計]
図10には、距離計93として、レーザー距離計を使用した上澄水排水装置3Cを示している。図9と比較すると、被距離測定部95の設置位置が異なっている。
レーザー距離計は、距離計本体94と、被距離測定部95とを有する。例えば、レーザー光を照射する本体部を距離計本体94とし、照射されたレーザー光を反射する反射鏡を被距離測定部95とする。距離計本体94から照射されたレーザー光が被距離測定部95(反射鏡)で反射されて戻ってくる時間から、距離計本体94・被距離測定部95(反射鏡)間の距離L10を検出してその検出信号を制御装置8に出力する。図10に示すように、距離計本体94を繰出繰入装置61に設置し、被距離測定部95(反射鏡)は集水管回動用駆動軸6が水没しない非水没部に設置している。この場合、距離計93が検出するのは、距離計本体94と当該非水没部との間の距離L10であるが、これは、集水管回動用駆動軸6の繰出繰入長さLの変位量に等しい。そこで、制御装置8は、距離計93の検出結果(L10)から繰出繰入長さLを導出する。あるいは、レーザー距離計(距離計93)自体が、距離検出結果(L10)から繰出繰入長さLを導出(算出)して制御装置8に出力するようにしてもよい。
【0069】
[集水管回動用駆動軸6の長さに基づく制御]
実施形態3の制御は、実施形態1における「制御装置8は、水位計測装置99で計測された上澄水22の水位に基づいて繰出繰入装置61の動作を制御する」の代わりに、「制御装置8は、距離計93で検出された距離計本体94・被距離測定部95間の距離に基づいて」繰出繰入装置61の動作を制御するものである(図4及び図5参照)。
【0070】
制御装置8は、集水管回動用駆動軸6の繰出繰入長さLを距離計93で監視している。繰出繰入長さLと、高さ位置hと、繰出繰入長さ変化速度V(及び取水管4の下降上昇速度Y)との関係は、ROM82、RAM83等のメモリー内に記憶されており、制御装置8はこれらの関係を参照して、距離計93で検出された距離計本体94・被距離測定部95間の距離に基づいて繰出繰入装置61の繰出繰入動作を制御する。
【0071】
図11を用いて説明する。図11は、実施形態3に係る上澄水排水方法を説明するための図である。
図11には、取水管高さ位置h(h0は高さ位置。高さ位置h1、h2、h3は回分槽水位と同じ、右側の列)と、それに対応する駆動軸繰出量(集水管回動用駆動軸6の繰出繰入長さL(左側の列)と、繰出繰入長さ変化速度V(駆動軸制御)(中央の列)との関係を示している。
【0072】
図11に示すように、取水管4退避高さ位置h0では、繰出繰入長さL0であり、水面到達高さ位置h1では繰出繰入長さL1である。制御装置8は、距離計93で検出された距離計本体94・被距離測定部95間の距離に基づいて繰出繰入長さをL0からL1に、長さ変化速度V0(高速)で変化させることにより、取水管4を高さ位置h0からh1に、速度Y0(高速)で下降させる(図4参照、以下同様)。そして、取水管4を上澄水水面に到達させ、上澄水22の取水・排水を開始させる。
中間水位高さ位置h2では、繰出繰入長さL2である。上澄水取水工程序盤から中盤に進む期間では、制御装置8は、繰出繰入長さをL1からL2に、長さ変化速度V1(標準速)で変化させることにより、取水管4を高さ位置h1からh2に、速度Y1(標準速)で下降させる。
上澄水排水終了高さ位置h3では、繰出繰入長さL3である。制御装置8は、繰出繰入長さをL2からL3に、長さ変化速度V2(低速)で変化させることにより、取水管4を高さ位置h2からh3に、速度Y2(低速、Y2<Y1)で下降させる。これにより、上澄水取水工程終盤付近の取水管4下降速度がY2となる。
上澄水排水終了後、制御装置8は、繰出繰入長さをL3からL0に、長さ変化速度-V3(高速、長さ減少)で変化させることにより、取水管4を高さ位置h3からh0に、速度-Y3(高速)で上昇させ、退避させる。
【0073】
[実施形態3の効果]
実施形態3に係る上澄水排水装置3Cにおいては、繰出繰入装置61の動作が、距離計本体94(繰出繰入装置61に設置)・被距離測定部95(集水管回動用駆動軸6に設置)間の距離(つまり集水管回動用駆動軸6の繰出繰入長さL自体)に基づいて制御されるため、回動集水管5に設置された取水管4の下降又は上昇を的確に制御することが可能となる。
【0074】
また、実施形態3に係る上澄水排水装置3Cにおいては、距離計93(例えば、レーザー距離計)の被距離測定部95(例えば、反射鏡)を、集水管回動用駆動軸6の水没しない非水没部に設置することにより、被距離測定部95(反射鏡)の水没による測定不能、測定誤り等の回避が可能となる。
【0075】
なお、実施形態3に係る上澄水排水装置3C(上澄水排水方法)は、実施形態1のように上澄水22の水位に基づいて繰出繰入装置61の動作を制御する代わりに、距離計本体94(繰出繰入装置61に設置)・被距離測定部95(集水管回動用駆動軸6に設置)間の距離に基づいて繰出繰入装置61の動作を制御する点が異なるだけで、それ以外の点は実施形態1と同様であるため、実施形態1に係る上澄水排水装置3A(上澄水排水方法)が有する効果のうち、該当する効果を有する。
【0076】
[変形例]
以上、本発明を上記の実施形態に基づいて説明したが、本発明は上記の実施形態に限定されるものではない。その趣旨を逸脱しない範囲において実施することが可能であり、例えば、次のような変形も可能である。
【0077】
(1)上記実施形態1、2又は3において記載した上澄水排水装置3A、3B又は3Cの形状、構成等は例示であり、本発明の効果を損なわない範囲において変更することが可能である。
【0078】
(2)上記実施形態2又は3においては、上澄水排水装置3B又は3Cは、傾斜角度計91から制御装置8への傾斜角度検出信号等の伝送に電気ケーブル96を使用したが、このような信号の伝送をするのは電気ケーブル96に限定されるものではない。例えば、上澄水排水装置3B又は3Cが、更に、傾斜角度計91若しくは距離計本体94から制御装置8への傾斜角度検出信号若しくは距離検出信号の伝送に使用する無線送受信装置を備えるように構成し、上記信号の伝送に無線を使用するようにしてもよい。
このような構成とすることにより、信号伝送用の電気ケーブル96が不要となるため、電気ケーブル96の断線による検出不能、信号伝送不良等を回避することができる。
【0079】
(3)上記実施形態1、2又は3においては、繰出繰入装置61の動作を制御するのに、水位計測装置99、傾斜角度計91又は距離計93を用いたが、それらに限定されるものではない。それらの代わりに、例えば、回転角度計を用いるようにしてもよい。
その場合、上澄水排水装置は、更に、回転可能な前記摺動集水管7、又は回転運動を用いることにより繰出繰入されるように構成した集水管回動用駆動軸6、の回転位置を読み取る回転角度計を備え、制御装置8は、当該回転角度計で検出された回転位置に基づいて繰出繰入装置61の動作を制御するようにする。
「回転運動を用いることにより繰出繰入されるように構成」した(集水管回動用駆動軸6)とは、例えば、集水管回動用駆動軸6がその外周又は内周に設けられたネジ溝に沿って回転して繰出繰入されるように構成した場合や、ラックアンドピニオン機構のように小歯車(ピニオン)の回転運動を用いることによりラック(集水管回動用駆動軸6)が直線運動(繰出繰入)されるように構成した場合をいう。
回転角度計は、回転部(例えば、ラックアンドピニオン機構ではピニオン)に設置され、その回転角度(1回又は複数回の回転をする場合は、その回数分の回転角度を含む回転角度)から回転位置を検出する。
回転角度計としては、例えばレゾルバを用いる。レゾルバは、回転角度を2相の交流電圧(アナログ信号)として出力する角度センサである。これを軸受けの中に設置すれば錆びたりすることもなく、電源フリーで長期間にわたってメンテナンスフリーで使用できる。
このような構成とすることにより、繰出繰入装置61の動作が、摺動集水管7又は押出駆動軸体(集水管回動用駆動軸6)の回転位置に基づいて制御されるため、回動集水管5に設置された取水管4の下降又は上昇を的確に制御することが可能となる。
【0080】
(4)上記実施形態1、2又は3においては、回分槽2は、原水80が間欠的に流入する間欠流入式の回分槽であったが、回分槽は、間欠流入式の回分槽に限定されるものではない。例えば、原水80が連続的に流入する連続流入式の回分槽であってもよい。
連続流入式の回分槽は、回分槽を、仕切り壁で仕切り、仕切った一方の部屋を原水80が連続的に流入する原水流入部とし、他方の部屋を、浄化処理工程、沈殿処理工程、排水処理工程、並びに排泥処理工程がおこなわれる浄化処理部とする。仕切り壁の一部(例えば底部)は、原水流入部と浄化処理部とが連通するように構成する。上澄水排水装置3A、3B又は3Cは、浄化処理部に設置する。
このような構成とすることにより、回分槽が連続流入式であるため、原水80を回分槽に連続的に流入させながら浄化処理することが可能となる。
また、回分槽が連続流入式である以外の点は、実施形態1,2又は3と同様であるため、実施形態1、2又は3で述べたと同様の排水処理が可能であり、同様の効果を奏する。
【符号の説明】
【0081】
1…回分式汚水処理装置、2…回分槽、21…汚水、22…上澄水、23…沈殿汚泥、24…排水路、3A,3B,3C…上澄水排水装置、4…取水管、5…回動集水管、55…延長部、56…平行部、6…集水管回動用駆動軸、60…ピボットジョイント、61…繰出繰入装置、62…繰出繰入部、7…摺動集水管、8…制御装置、81…CPU、82…ROM、83…RAM、84…バス、85…インターフェース、80…原水、91…傾斜角度計、93…距離計、94…距離計本体、95…被距離測定部、96…電気ケーブル、98…汚泥界面計測装置、99…水位計測装置、θ…回動集水管の傾斜角度、L…集水管回動用駆動軸の長さ、V…集水管回動用駆動軸の長さが変化する速度(増加又は減少速度)、Y…取水管の下降上昇速度、h0…取水管の退避高さ位置、h1…取水管の排水開始高さ位置、h2…取水管の排水中間高さ位置、h3…取水管の排水終了高さ位置、h4…沈殿汚泥高さ位置(沈殿汚泥界面)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12