(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022065717
(43)【公開日】2022-04-28
(54)【発明の名称】コイル体および長尺状医療機器
(51)【国際特許分類】
A61M 25/09 20060101AFI20220421BHJP
【FI】
A61M25/09 516
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020174363
(22)【出願日】2020-10-16
(71)【出願人】
【識別番号】390030731
【氏名又は名称】朝日インテック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001911
【氏名又は名称】特許業務法人アルファ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】小宮谷 真司
【テーマコード(参考)】
4C267
【Fターム(参考)】
4C267AA29
4C267BB02
4C267BB16
4C267GG21
4C267GG24
4C267HH03
4C267HH04
4C267HH09
4C267HH17
(57)【要約】
【課題】コイル体の折れや破断の発生を抑制しつつ、コイル体の柔軟性とプッシャビリティおよびトルク伝達性とを高い次元で両立させる。
【解決手段】コイル体は、線材を螺旋状に巻回させたコイル体であり、第1の部分と、第1の部分より先端側に位置する第2の部分とを含む。第2の部分におけるコイル体の長手方向に沿った線材間の間隔は、第1の部分における長手方向に沿った線材間の間隔より大きい。第2の部分における長手方向に沿った線材の幅は、第1の部分における長手方向に沿った線材の幅より小さい。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
線材を螺旋状に巻回させたコイル体であって、
第1の部分と、
前記第1の部分より先端側に位置する第2の部分と、
を含み、
前記第2の部分における前記コイル体の長手方向に沿った前記線材間の間隔は、前記第1の部分における前記長手方向に沿った前記線材間の間隔より大きく、
前記第2の部分における前記長手方向に沿った前記線材の幅は、前記第1の部分における前記長手方向に沿った前記線材の幅より小さい、コイル体。
【請求項2】
請求項1に記載のコイル体であって、
前記第1の部分および前記第2の部分のそれぞれにおいて、前記長手方向に沿った前記線材間の間隔は、先端側ほど大きく、
前記第1の部分および前記第2の部分のそれぞれにおいて、前記長手方向に沿った前記線材の幅は、先端側ほど小さい、コイル体。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載のコイル体であって、
前記第1の部分における外径は、前記第2の部分における外径と同一であり、
前記第1の部分における内径は、前記第2の部分における内径と同一である、コイル体。
【請求項4】
請求項1から請求項3までのいずれか一項に記載のコイル体であって、
前記第1の部分の少なくとも一部において、前記長手方向に沿った前記線材間の間隔はゼロである、コイル体。
【請求項5】
請求項1から請求項4までのいずれか一項に記載のコイル体を備える長尺状医療機器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書に開示される技術は、コイル体および長尺状医療機器に関する。
【背景技術】
【0002】
血管等における狭窄部や閉塞部(以下、「病変部」という。)を治療または検査する方法として、カテーテルを用いた方法が広く行われている。一般に、カテーテルを血管等における病変部に案内するために、ガイドワイヤが用いられる。ガイドワイヤは、コアシャフトと、コアシャフトの先端部に巻回されたコイル体とを備える長尺状医療機器である。
【0003】
複雑に分岐する血管等内での良好な操作性のため、ガイドワイヤを構成するコイル体には、柔軟性が求められる。従来、コイル体の先端部の外周面に研磨加工を施すことにより、コイル体の先端部の柔軟性を向上させる技術が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ガイドワイヤを構成するコイル体には、上述した柔軟性に加え、病変部を確実に通過させるために、プッシャビリティやトルク伝達性といった特性も求められる。従来のコイル体には、柔軟性とプッシャビリティおよびトルク伝達性との両立の点で、向上の余地がある。なお、このような課題は、ガイドワイヤを構成するコイル体に限らず、カテーテルや内視鏡用処置具といった他の長尺状医療機器を構成するコイル体にも共通の課題である。
【0006】
本明細書では、上述した課題を解決することが可能な技術を開示する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本明細書に開示される技術は、例えば、以下の形態として実現することが可能である。
【0008】
(1)本明細書に開示されるコイル体は、線材を螺旋状に巻回させたコイル体である。コイル体は、第1の部分と、前記第1の部分より先端側に位置する第2の部分とを含む。前記第2の部分における前記コイル体の長手方向に沿った前記線材間の間隔は、前記第1の部分における前記長手方向に沿った前記線材間の間隔より大きい。前記第2の部分における前記長手方向に沿った前記線材の幅は、前記第1の部分における前記長手方向に沿った前記線材の幅より小さい。本コイル体では、比較的先端側に位置する第2の部分では、線材間の間隔が比較的大きく、かつ、線材の幅が比較的小さいため、単位体積あたりの線材の充填率を低下させてコイル体の剛性を低下させ、コイル体の柔軟性を高めることができる。また、比較的基端側に位置する第1の部分では、線材間の間隔が比較的小さく、かつ、線材の幅が比較的大きいため、単位体積あたりの線材の充填率を高めてコイル体の剛性を高め、コイル体のプッシャビリティおよびトルク伝達性を高めることができる。また、本コイル体は、一体の部材であり、特性の異なる2種類のコイル体を溶接等により接合したものではないため、接合部の脆弱性に起因するコイル体の折れや破断の発生を抑制することができる。従って、本コイル体によれば、コイル体の折れや破断の発生を抑制しつつ、コイル体の柔軟性とプッシャビリティおよびトルク伝達性とを高い次元で両立させることができる。
【0009】
(2)上記コイル体において、前記第1の部分および前記第2の部分のそれぞれにおいて、前記長手方向に沿った前記線材間の間隔は、先端側ほど大きく、前記第1の部分および前記第2の部分のそれぞれにおいて、前記長手方向に沿った前記線材の幅は、先端側ほど小さい構成としてもよい。本コイル体によれば、第1の部分および第2の部分のそれぞれにおいて、コイル体の剛性を徐々に変化させることによって、剛性ギャップを少なくすることができ、柔軟性とプッシャビリティおよびトルク伝達性とをより高い次元で両立させることができる。
【0010】
(3)上記コイル体において、前記第1の部分における外径は、前記第2の部分における外径と同一であり、前記第1の部分における内径は、前記第2の部分における内径と同一である構成としてもよい。本コイル体によれば、外径および内径が一定であるコイル体において、第1の部分と第2の部分との間の、単位体積あたりの線材の充填率の差を大きく取ることができ、柔軟性とプッシャビリティおよびトルク伝達性とをより高い次元で両立させることができる。
【0011】
(4)上記コイル体において、前記第1の部分の少なくとも一部において、前記長手方向に沿った前記線材間の間隔はゼロである構成としてもよい。本コイル体によれば、第1の部分の少なくとも一部において、線材同士を面接触させることができ、第1の部分におけるプッシャビリティおよびトルク伝達性を効果的に高めることができる。
【0012】
なお、本明細書に開示される技術は、種々の形態で実現することが可能であり、例えば、コイル体、コイル体を備える長尺状医療機器(例えば、ガイドワイヤ、カテーテル、内視鏡用処置具)、それらの製造方法等の形態で実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】第1実施形態におけるガイドワイヤ100の構成を概略的に示す説明図
【
図2】第1実施形態におけるコイル体20の詳細構成を示す説明図
【
図3】第1実施形態のコイル体20の製造方法の一例を示す説明図
【
図4】第1実施形態のコイル体20の製造方法の一例を示す説明図
【
図5】第1実施形態のコイル体20の製造方法の一例を示す説明図
【
図6】第2実施形態におけるバルーンカテーテル200の構成を概略的に示す説明図
【
図7】第3実施形態における内視鏡用処置具300の構成を概略的に示す説明図
【発明を実施するための形態】
【0014】
A.第1実施形態:
A-1.ガイドワイヤ100の構成:
図1は、第1実施形態におけるガイドワイヤ100の構成を概略的に示す説明図である。
図1には、ガイドワイヤ100の縦断面(YZ断面)の構成が示されている。なお、
図1では、ガイドワイヤ100(およびその構成部材)の一部分の図示が省略されている。
図1において、Z軸正方向側が、体内に挿入される先端側(遠位側)であり、Z軸負方向側が、医師等の手技者によって操作される基端側(近位側)である。
図1では、ガイドワイヤ100が全体としてZ軸方向に略平行な直線状となった状態を示しているが、ガイドワイヤ100の少なくとも一部の構成は、湾曲させることができる程度の可撓性を有している。なお、本明細書では、ガイドワイヤ100(および後述するバルーンカテーテル200、内視鏡用処置具300)およびその各構成部材について、先端側の端部を「先端」といい、先端およびその近傍を「先端部」といい、基端側の端部を「基端」といい、基端およびその近傍を「基端部」という。
【0015】
ガイドワイヤ100は、血管等における病変部(狭窄部や閉塞部)にカテーテルを案内するために、血管等に挿入される長尺状医療機器である。ガイドワイヤ100の全長は、例えば1500mm~2000mm程度である。
【0016】
ガイドワイヤ100は、コアシャフト10と、コイル体20と、先端側接合部30と、基端側接合部40とを備えている。
【0017】
コアシャフト10は、先端側が細径であり基端側が太径である長尺状の部材である。より具体的には、コアシャフト10は、略一定の外径を有する棒状の細径部11と、細径部11に対して基端側に位置し、細径部11の外径より大きい略一定の外径を有する棒状の中間径部13と、中間径部13に対して基端側に位置し、中間径部13の外径より大きい略一定の外径を有する棒状の太径部15と、細径部11と中間径部13との間に位置し、細径部11との境界位置から中間径部13との境界位置に向けて径が徐々に大きくなる第1テーパ部12と、中間径部13と太径部15との間に位置し、中間径部13との境界位置から太径部15との境界位置に向けて径が徐々に大きくなる第2テーパ部14とから構成されている。コアシャフト10の各位置における横断面(XY断面)の形状は、任意の形状を取り得るが、例えば、円形や平板形である。太径部15の外径は、例えば0.2~0.8mm程度であり、細径部11の外径は、例えば0.05~0.3mm程度である。
【0018】
コアシャフト10を形成する材料としては、例えば、ステンレス鋼(SUS302、SUS304、SUS316等)、Ni-Ti合金等の超弾性合金、ピアノ線等が用いられる。コアシャフト10は、全体が同じ材料により形成されていてもよいし、部分毎に互いに異なる材料により形成されていてもよい。
【0019】
コイル体20は、線材を螺旋状に巻回することにより中空円筒状に形成したコイル状の部材である。コイル体20は、コアシャフト10を覆うように、コアシャフト10の外周に配置されている。本実施形態では、コイル体20は、コアシャフト10の細径部11、第1テーパ部12、中間径部13を覆っている。
【0020】
コイル体20を形成する材料としては、例えば、ステンレス鋼(SUS302、SUS304、SUS316等)、Ni-Ti合金等の超弾性合金、ピアノ線といった放射線透過材料や、白金、金、タングステン、またはこれらの合金といった放射線不透過材料が用いられる。コイル体20の構成については、後に詳述する。
【0021】
先端側接合部30は、コイル体20の先端とコアシャフト10の先端とを接合する部材である。基端側接合部40は、コイル体20の基端とコアシャフト10とを接合する部材である。先端側接合部30および基端側接合部40を形成する材料としては、例えば、金属ハンダ(Au-Sn合金、Sn-Ag合金、Sn-Pb合金、Pb-Ag合金等)、ロウ材(アルミニウム合金ロウ、銀ロウ、金ロウ等)、接着剤(エポキシ系接着剤等)等が用いられる。先端側接合部30および基端側接合部40を形成する材料は、同一であってもよいし、互いに異なっていてもよい。また、先端側接合部30および基端側接合部40のそれぞれについて、全体が同じ材料により形成されていてもよいし、部分毎に互いに異なる材料により形成されていてもよい。
【0022】
なお、ガイドワイヤ100の一部または全部が、公知のコーティング剤によりコートされていてもよい。
【0023】
A-2.コイル体20の詳細構成:
図2は、第1実施形態におけるコイル体20の詳細構成を示す説明図である。
図2には、コイル体20の縦断面(YZ断面)の構成が示されている。上述したように、コイル体20は、線材22を螺旋状に巻回することにより中空円筒状に形成したコイル状の部材である。なお、
図2は、コイル体20の構成を模式的に示すものであり、コイル体20の各箇所における線材22の断面の位置等について厳密に表現するものではない。
【0024】
本実施形態では、
図2に示すように、コイル体20の縦断面において、線材22の断面形状は矩形である。コイル体20の長手方向(
図2の例ではZ軸方向)に沿った線材22間の間隔L1(以下、単に「線材22間の間隔L1」という。)は、先端側ほど大きくなっている。また、コイル体20の長手方向に沿った線材22の幅W1(以下、単に「線材22の幅W1」という。)は、先端側ほど小さくなっている。
【0025】
本実施形態のコイル体20は、このような構成であるため、以下の要件を満たす。すなわち、コイル体20は、第1の部分P1と、第1の部分P1より先端側に位置する第2の部分P2とを含み、第2の部分P2における線材22間の間隔L1は、第1の部分P1における線材22間の間隔L1より大きく、かつ、第2の部分P2における線材22の幅W1は、第1の部分P1における線材22の幅W1より小さい。さらに、本実施形態のコイル体20は、以下の要件を満たす。すなわち、第1の部分P1および第2の部分P2のそれぞれにおいて、線材22間の間隔L1は先端側ほど大きく、かつ、線材22の幅W1は先端側ほど小さい。なお、本実施形態では、コイル体20の第1の部分P1の少なくとも一部(例えば基端部)において、線材22間の間隔L1はゼロである。
【0026】
なお、
図2では、第1の部分P1および第2の部分P2が概念的に示されているが、上記要件を満たす限り、第1の部分P1および第2の部分P2はどのように設定されてもよい。例えば、第1の部分P1と第2の部分P2とが、長手方向に離間していてもよいし、互いに隣接していてもよい。また、第1の部分P1と第2の部分P2との長さは、互いに同一であってもよいし、互いに異なっていてもよい。
【0027】
また、本実施形態では、コイル体20の全長にわたって外径D1および内径D2が一定である。すなわち、第1の部分P1における外径D1は第2の部分P2における外径D1と同一であり、第1の部分P1における内径D2は第2の部分P2における内径D2と同一である。なお、本実施形態では、コイル体20の全長にわたって外径D1および内径D2が一定である結果、コイル体20の全長にわたって線材22の厚さT1が一定となっている。上述したように、線材22の幅W1は先端側ほど小さくなっているため、線材22の断面積は先端側ほど小さくなっている。
【0028】
A-3.コイル体20の製造方法:
次に、第1実施形態のコイル体20の製造方法の一例について説明する。
図3から
図5は、第1実施形態のコイル体20の製造方法の一例を示す説明図である。
【0029】
コイル体20の製造の際には、まず
図3に示すように、略円柱状の芯金90の廻りに、一定の断面形状(例えば、矩形)を有する線材22Xを螺旋状に疎巻きすることにより、コイル体前駆体20Xを作製する。このとき、線材22X間の間隔Lxは、全長にわたって略一定であり、かつ、完成後のコイル体20における線材22間の間隔L1の最大値以上に設定される。また、線材22Xの幅Wxは、完成後のコイル体20における線材22の幅W1の最小値以下に設定され、線材22Xの厚さTxは、完成後のコイル体20における線材22の厚さT1の最大値以上に設定される。なお、芯金90の外径は、完成後のコイル体20の内径D2と同一である。
【0030】
次に、
図4に示すように、コイル体前駆体20Xに対してスウェージング加工(冷間鍛造加工)を行う。スウェージング加工は、回転するダイスによってワークを叩きながら外形を絞っていく加工である。スウェージング加工により、コイル体前駆体20Xを構成する線材22Xが潰される。線材22Xが潰されると、線材22Xの厚さTxが小さくなり、線材22Xの幅Wxが大きくなり、線材22X間の間隔Lxが小さくなる。このスウェージング加工において、コイル体前駆体20Xの先端側ほど、線材22Xを潰す量を小さくする。これにより、コイル体前駆体20Xの先端側ほど、線材22Xの厚さTxが大きくなり、線材22Xの幅Wxが小さくなり、線材22X間の間隔Lxが大きくなる。なお、コイル体前駆体20Xの先端側ほど、線材22Xの厚さTxが大きくなる結果、コイル体前駆体20Xの外径Dxが大きくなる。スウェージング加工後のコイル体前駆体20Xでは、線材22Xの幅Wxは、完成後のコイル体20の幅W1と同一であり、線材22X間の間隔Lxは、完成後のコイル体20の間隔L1と同一である。
【0031】
次に、
図5に示すように、コイル体前駆体20Xの全長にわたって、外径Dxが一定になるように、より具体的には外径Dxが完成後のコイル体20の外径D1と同一になるように、コイル体前駆体20Xの外周を研磨する研磨加工(例えば、センタレス研磨)を行う。
図5には、研磨加工の際の研磨ラインGLが示されている。
図4に示すスウェージング加工後のコイル体前駆体20Xでは、コイル体前駆体20Xの先端側ほどコイル体前駆体20Xの外径Dxが大きくなっているため、研磨加工の際には、コイル体前駆体20Xの先端側ほど研磨量が大きくなる。コイル体前駆体20Xの全長にわたって外径Dxが一定になるように研磨加工を行うと、結果的に、コイル体前駆体20Xの全長にわたって線材22Xの厚さTxが一定になる(より具体的には、完成後のコイル体20の厚さT1と同一になる)。主として以上の工程により、本実施形態のコイル体20が製造される。
【0032】
A-4.第1実施形態の効果:
以上説明したように、本実施形態のガイドワイヤ100は、コイル体20を備える。コイル体20は、線材22を螺旋状に巻回させたものであり、第1の部分P1と、第1の部分P1より先端側に位置する第2の部分P2とを含む。第2の部分P2における線材22間の間隔L1は、第1の部分P1における線材22間の間隔L1より大きい。また、第2の部分P2における線材22の幅W1は、第1の部分P1における線材22の幅W1より小さい。
【0033】
本実施形態のコイル体20は、上記構成を有するため、比較的先端側に位置する第2の部分P2では、線材22間の間隔L1が比較的大きく、かつ、線材22の幅W1が比較的小さいため、単位体積あたりの線材22の充填率を低下させてコイル体20の剛性を低下させ、コイル体20の柔軟性を高めることができる。また、比較的基端側に位置する第1の部分P1では、線材22間の間隔L1が比較的小さく、かつ、線材22の幅W1が比較的大きいため、単位体積あたりの線材22の充填率を高めてコイル体20の剛性を高め、コイル体20のプッシャビリティおよびトルク伝達性を高めることができる。また、本実施形態のコイル体20は、一体の部材であり、特性の異なる2種類のコイル体を溶接等により接合したものではないため、接合部の脆弱性に起因するコイル体20の折れや破断の発生を抑制することができる。従って、本実施形態のコイル体20によれば、コイル体20の折れや破断の発生を抑制しつつ、コイル体20の柔軟性とプッシャビリティおよびトルク伝達性とを高い次元で両立させることができる。
【0034】
また、本実施形態のコイル体20では、第1の部分P1および第2の部分P2のそれぞれにおいて、線材22間の間隔L1は先端側ほど大きく、かつ、線材22の幅W1は先端側ほど小さい。そのため、本実施形態のコイル体20によれば、第1の部分P1および第2の部分P2のそれぞれにおいて、コイル体20の剛性を徐々に変化させることによって、剛性ギャップを少なくすることができ、柔軟性とプッシャビリティおよびトルク伝達性とをより高い次元で両立させることができる。
【0035】
また、本実施形態のコイル体20では、第1の部分P1における外径D1は第2の部分P2における外径D1と同一であり、第1の部分P1における内径D2は第2の部分P2における内径D2と同一である。そのため、本実施形態のコイル体20によれば、外径D1および内径D2が一定であるコイル体20において、第1の部分P1と第2の部分P2との間の、単位体積あたりの線材22の充填率の差を大きく取ることができ、柔軟性とプッシャビリティおよびトルク伝達性とをより高い次元で両立させることができる。
【0036】
また、本実施形態のコイル体20では、第1の部分P1の少なくとも一部において、線材22間の間隔はゼロである。そのため、本実施形態のコイル体20によれば、第1の部分P1の少なくとも一部において、線材22同士を面接触させることができ、第1の部分P1におけるプッシャビリティおよびトルク伝達性を効果的に高めることができる。
【0037】
B.第2実施形態:
図6は、第2実施形態におけるバルーンカテーテル200の構成を概略的に示す説明図である。
図6には、バルーンカテーテル200の縦断面(YZ断面)の構成が示されている。なお、
図6では、バルーンカテーテル200(およびその構成部材)の一部分の図示が省略されている。
図6において、Z軸正方向側が、体内に挿入される先端側(遠位側)であり、Z軸負方向側が、医師等の手技者によって操作される基端側(近位側)である。
図6では、バルーンカテーテル200が全体としてZ軸方向に略平行な直線状となった状態を示しているが、バルーンカテーテル200の少なくとも一部の構成は、湾曲させることができる程度の可撓性を有している。
【0038】
バルーンカテーテル200は、血管等における病変部(狭窄部や閉塞部)を押し広げて拡張させるために、血管等に挿入される長尺状医療機器である。バルーンカテーテル200は、インナーシャフト210と、アウターシャフト220と、バルーン230とを備えている。
【0039】
インナーシャフト210は、筒状の部材であり、例えば樹脂により形成されている。インナーシャフト210の内部には、ガイドワイヤが挿通されるガイドワイヤルーメンS1が形成されている。インナーシャフト210の先端には、筒状の先端チップ212が設けられている。ガイドワイヤルーメンS1に挿入されたガイドワイヤは、先端チップ212の先端側の開口から外部に導出される。
【0040】
アウターシャフト220は、筒状の部材である。アウターシャフト220の内径は、インナーシャフト210の外径より大きい。アウターシャフト220は、インナーシャフト210における基端側の一部分を収容している。インナーシャフト210の外周面とアウターシャフト220の内周面との間には、バルーン230を拡張するための拡張用の流体を流通させる拡張ルーメンS2が形成されている。
【0041】
アウターシャフト220は、樹脂チューブ222と、樹脂チューブ222内に挿入されたコイル体20aとを有する。樹脂チューブ222は、コイル体20aに溶着されている。
【0042】
バルーン230は、流体の供給および排出に伴い拡張および収縮可能な部材であり、例えば樹脂により形成されている。バルーン230の先端部は、インナーシャフト210の先端部に固着されており、バルーン230の基端部は、アウターシャフト220の先端部に固着されている。
【0043】
バルーン230が収縮した状態のバルーンカテーテル200を、ガイドワイヤによる案内の下、血管における病変部に移動させ、拡張ルーメンS2からバルーン230の内部空間に流体を送り込むことにより、バルーン230を拡張させる。これにより、拡張したバルーン230によって病変部が押し広げられる。
【0044】
本実施形態のバルーンカテーテル200を構成するコイル体20aは、上述した第1実施形態のガイドワイヤ100を構成するコイル体20(
図2)と同様の構成を有する。すなわち、第2実施形態のコイル体20aは、線材22を螺旋状に巻回させたものであり、第1の部分P1と、第1の部分P1より先端側に位置する第2の部分P2とを含む。第2の部分P2における線材22間の間隔L1は、第1の部分P1における線材22間の間隔L1より大きい。また、第2の部分P2における線材22の幅W1は、第1の部分P1における線材22の幅W1より小さい。また、第2実施形態のコイル体20aでは、第1の部分P1および第2の部分P2のそれぞれにおいて、線材22間の間隔L1は先端側ほど大きく、かつ、線材22の幅W1は先端側ほど小さい。また、第2実施形態のコイル体20aでは、第1の部分P1における外径D1は第2の部分P2における外径D1と同一であり、第1の部分P1における内径D2は第2の部分P2における内径D2と同一である。また、第2実施形態のコイル体20aでは、第1の部分P1の少なくとも一部において、線材22間の間隔はゼロである。第2実施形態のコイル体20aは、これらの構成を有するため、上述した第1実施形態のコイル体20が奏する効果と同様の効果を奏する。すなわち、第2実施形態のコイル体20aによれば、コイル体20aの折れや破断の発生を抑制しつつ、コイル体20aの柔軟性とプッシャビリティおよびトルク伝達性とを高い次元で両立させることができる。
【0045】
C.第3実施形態:
図7は、第3実施形態における内視鏡用処置具300の構成を概略的に示す説明図である。
図7には、内視鏡用処置具300の側面(X軸方向視)の構成が示されている。なお、
図7では、内視鏡用処置具300(およびその構成部材)の一部分の図示が省略されている。
図7において、Z軸正方向側が、体内に挿入される先端側(遠位側)であり、Z軸負方向側が、医師等の手技者によって操作される基端側(近位側)である。
図7では、内視鏡用処置具300が全体としてZ軸方向に略平行な直線状となった状態を示しているが、内視鏡用処置具300の少なくとも一部の構成は、湾曲させることができる程度の可撓性を有している。
【0046】
内視鏡用処置具300は、胆管等の体腔内の結石等の異物を破砕したり回収したりするための長尺状医療機器である。内視鏡用処置具300は、コイル体20bと、コイル体20bの先端に設けられたループ状の処置部310と、コイル体20bの基端に設けられた操作部320とを備える。コイル体20bの内腔には芯線330が挿通されており、芯線330によって、処置部310と操作部320とが連結されている。そのため、操作部320を押し引きすることによって、ループ状の処置部310がコイル体20bの内腔に出入り可能となっており、そのことによって処置部310のループの大きさを変更し、異物を破砕したり回収したりすることが可能となっている。
【0047】
本実施形態の内視鏡用処置具300を構成するコイル体20bは、上述した第1実施形態のガイドワイヤ100を構成するコイル体20と同様の構成を有する。すなわち、第3実施形態のコイル体20bは、線材22を螺旋状に巻回させたものであり、第1の部分P1と、第1の部分P1より先端側に位置する第2の部分P2とを含む。第2の部分P2における線材22間の間隔L1は、第1の部分P1における線材22間の間隔L1より大きい。また、第2の部分P2における線材22の幅W1は、第1の部分P1における線材22の幅W1より小さい。また、第3実施形態のコイル体20bでは、第1の部分P1および第2の部分P2のそれぞれにおいて、線材22間の間隔L1は先端側ほど大きく、かつ、線材22の幅W1は先端側ほど小さい。また、第3実施形態のコイル体20bでは、第1の部分P1における外径D1は第2の部分P2における外径D1と同一であり、第1の部分P1における内径D2は第2の部分P2における内径D2と同一である。また、第3実施形態のコイル体20bでは、第1の部分P1の少なくとも一部において、線材22間の間隔はゼロである。第3実施形態のコイル体20bは、これらの構成を有するため、上述した第1実施形態のコイル体20が奏する効果と同様の効果を奏する。すなわち、第3実施形態のコイル体20bによれば、コイル体20bの折れや破断の発生を抑制しつつ、コイル体20bの柔軟性とプッシャビリティおよびトルク伝達性とを高い次元で両立させることができる。
【0048】
D.変形例:
本明細書で開示される技術は、上述の実施形態に限られるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々の形態に変形することができ、例えば次のような変形も可能である。
【0049】
上記実施形態におけるガイドワイヤ100、バルーンカテーテル200、内視鏡用処置具300の構成や、それらの装置を構成するコイル体20の構成は、あくまで一例であり、種々変形可能である。例えば、上記実施形態では、コイル体20の線材22間の間隔L1は、先端側ほど大きくなっているが、コイル体20は、線材22間の間隔L1が一定である部分を有していてもよい。例えば、コイル体20は、第1の部分P1と第2の部分P2との間に、線材22間の間隔L1が一定である部分を有していてもよい。また、コイル体20の第1の部分P1および/または第2の部分P2に、線材22間の間隔L1が一定である部分が含まれていてもよい。
【0050】
上記実施形態では、コイル体20の線材22の幅W1は、先端側ほど小さくなっているが、コイル体20は、線材22の幅W1が一定である部分を有していてもよい。例えば、コイル体20は、第1の部分P1と第2の部分P2との間に、線材22の幅W1が一定である部分を有していてもよい。また、コイル体20の第1の部分P1および/または第2の部分P2に、線材22の幅W1が一定である部分が含まれていてもよい。
【0051】
上記実施形態では、コイル体20の全長にわたって外径D1が一定であるが、コイル体20の長さ方向において外径D1が変化する構成であってもよい。例えば、コイル体20の外径D1は、先端側ほど大きいとしてもよい。すなわち、
図4に示すコイル体前駆体20X(
図5に示す研磨処理前の状態)を、完成品のコイル体20としてもよい。このようにしても、コイル体20の折れや破断の発生を抑制しつつ、コイル体20の柔軟性とプッシャビリティおよびトルク伝達性とを高い次元で両立させることができる。あるいは、
図4に示すコイル体前駆体20Xにおいて、外径D1が一定である部分を有するように変形した形態を、完成品のコイル体20としてもよい。
【0052】
上記実施形態では、コイル体20の第1の部分P1の少なくとも一部において、線材22間の間隔L1はゼロであるが、コイル体20は、線材22間の間隔L1がゼロである部分を有さなくてもよい。
【0053】
上記実施形態では、コイル体20を構成する線材22として、矩形断面の1本の素線を用いているが、線材22の構成はこれに限られない。例えば、線材22として、矩形以外の形状の断面の1本の素線を用いてもよいし、撚線を用いてもよい。また、上記実施形態では、コイル体20は単条コイルであるが、コイル体20は多条コイルであってもよい。
【0054】
上記実施形態におけるコイル体20の製造方法は、あくまで一例であり、他の方法によりコイル体20が製造されてもよい。
【符号の説明】
【0055】
10:コアシャフト 11:細径部 12:第1テーパ部 13:中間径部 14:第2テーパ部 15:太径部 20:コイル体 22:線材 30:先端側接合部 40:基端側接合部 90:芯金 100:ガイドワイヤ 200:バルーンカテーテル 210:インナーシャフト 212:先端チップ 220:アウターシャフト 222:樹脂チューブ 230:バルーン 300:内視鏡用処置具 310:処置部 320:操作部 330:芯線 GL:研磨ライン P1:第1の部分 P2:第2の部分 S1:ガイドワイヤルーメン S2:拡張ルーメン