IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社小糸製作所の特許一覧

<>
  • 特開-車両用防犯装置 図1
  • 特開-車両用防犯装置 図2
  • 特開-車両用防犯装置 図3
  • 特開-車両用防犯装置 図4
  • 特開-車両用防犯装置 図5
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022065744
(43)【公開日】2022-04-28
(54)【発明の名称】車両用防犯装置
(51)【国際特許分類】
   B60R 25/34 20130101AFI20220421BHJP
   G08B 21/00 20060101ALI20220421BHJP
【FI】
B60R25/34
G08B21/00 U
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020174406
(22)【出願日】2020-10-16
(71)【出願人】
【識別番号】000001133
【氏名又は名称】株式会社小糸製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100136630
【弁理士】
【氏名又は名称】水野 祐啓
(74)【代理人】
【識別番号】100201514
【弁理士】
【氏名又は名称】玉井 悦
(72)【発明者】
【氏名】古井 崇嗣
【テーマコード(参考)】
5C086
【Fターム(参考)】
5C086AA06
5C086AA31
5C086AA34
5C086AA35
5C086BA22
5C086CA03
5C086CA26
5C086EA01
5C086FA00
5C086GA09
(57)【要約】
【課題】樹脂ウィンドウの熱による破壊を検知できる車両用防犯装置を提供する。
【解決手段】本発明の車両用防犯装置1は、樹脂ウィンドウ2に設けられた発熱回路3と、発熱回路3の異常を検知する異常検知部4と、異常検知部4の検知結果に基づいて所定の報知を行う報知部5を備える。異常検知部4は、電流値Iを計測する電流測定部41と、電流値Iに基づいて異常を判定する判定部42を備え、判定部42は、複数本の発熱線31が断線した場合に異常判定する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両用樹脂ウィンドウに設けられた発熱回路と、前記発熱回路の異常を検知する異常検知手段と、前記異常検知手段の検知結果に基づいて所定の報知を行う報知手段と、を備えた車両用防犯装置。
【請求項2】
前記異常検知手段は、前記発熱回路の断線を検知する請求項1に記載の車両用防犯装置。
【請求項3】
前記異常検知手段は、電流値に基づいて前記発熱回路の断線を検知する請求項1または2に記載の車両用防犯装置。
【請求項4】
前記発熱回路が、並列に接続された複数本の発熱線を備え、
前記異常検知手段は、所定本数以上の前記発熱線が断線した場合に異常を検知する請求項1~3のいずれか一項に記載の車両用防犯装置。
【請求項5】
前記所定の報知が、防犯警報を含む請求項1~4のいずれか一項に記載の車両用防犯装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用樹脂ウィンドウのデフロスタを用いた車両用防犯装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、車両の燃費向上に資する車体軽量化の取り組みの一つとして、例えば、無機ガラスの半分ほどの重量で200倍の耐衝撃性を有するポリカーボネート(PC)樹脂を採用するなど、車両用ウィンドウの樹脂化の検討が進んでいる。その車両用樹脂ウィンドウにデフロスタを設け、効率的に融雪する技術が知られている。例えば、特許文献1には、発熱層を第1樹脂パネルと第2樹脂パネルの間に挟み込み、発熱層から樹脂ウィンドウ外面までの距離を短縮する技術が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2017-109683号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、従前より、車窓を割って車内に侵入する車上荒らしが横行している。車上荒らしは、ガラス窓を叩き割って車内に侵入するため、ガラス窓への衝撃を検知する衝撃検知センサを備えた防犯装置が考えられた。
【0005】
しかし、樹脂ウィンドウは、物理的な衝撃を加えることなく熱による破壊が可能であるため、衝撃検知センサのみではウィンドウの破壊を確実に検知できないという問題があった。
【0006】
そこで、本発明の目的は、車上荒らしに対する新たな防犯対策をすべく、車両用樹脂ウィンドウの熱による破壊を検知できる車両用防犯装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明の車両用防犯装置は、車両用樹脂ウィンドウに設けられた発熱回路と、発熱回路の異常を検知する異常検知手段と、異常検知手段の検知結果に基づいて所定の報知を行う報知手段とを備える。
【0008】
異常検知手段は、発熱回路の断線を検知することによって、異常を検知するように構成されている。
【0009】
異常検知手段は、電流値に基づいて発熱回路の断線を検知するように構成されている。
【0010】
発熱回路は、並列に接続された複数本の発熱線を備え、異常検知手段は、所定本数以上の発熱線が断線した場合に異常を検知することが好ましい。
【0011】
所定の報知の例としては、防犯警報が挙げられる。
【発明の効果】
【0012】
本発明の車両用防犯装置によれば、樹脂ウィンドウに設けられた発熱回路の異常を検知するため、樹脂ウィンドウが熱により破壊された場合であっても確実に検知できるという効果を奏する。また、既存の仕組みを利用して防犯装置を構成できるため、製造コストを削減できるという効果も有する。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明の一実施形態を示す概要図である。
図2】車両用樹脂ウィンドウの発熱回線を示す模式図である。
図3】(a)劣化などの故障により発熱線一本が断線した場合、(b)樹脂ウィンドウの熱破壊により発熱線が断線した場合を示す模式図である。
図4】樹脂ウィンドウの断面図である。
図5】車両用防犯装置の動作の流れを示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明を車両用樹脂ウィンドウのデフロスタに搭載された車両用防犯装置に具体化した一実施形態を図面に基づいて説明する。図1に示す車両用防犯装置1は、車両用の樹脂ウィンドウ2に設けられたデフロスタの発熱回路3と、発熱回路3の異常を検知する異常検知部4と、異常検知部4の検知結果に基づいて所定の報知を行う報知部5から構成される。異常検知部4は、発熱回路3の電流値Iを測定する電流測定部41と、電流値Iに基づいて異常を判定する判定部42を含む。
【0015】
樹脂ウィンドウ2は、車両後部の窓を覆うように車体51に嵌め込まれている。しかし、本発明の樹脂ウィンドウ2は、図示例に限定されず、車両の前部、左右両側部、ルーフ部に設けられた窓に装着することができ、装着場所に応じて車両用樹脂ウィンドウ2の形状を任意に変更することも可能である。樹脂ウィンドウ2の材質としては、ポリカーボネートやアクリル等の透明樹脂が好ましい。これらの樹脂は、バーナー52の炎による300℃程度の熱により融解され、穴が開けられるという特徴を有している。
【0016】
図2に示すように、発熱回路3は、デフロスタ用の電源(図示なし)および防犯装置用の電源32に接続されている。また、発熱回路3は、デフロスタ用の電源による通電時に、ジュール熱で樹脂ウィンドウ2を全体的に加熱する発熱線31(31a~31d)を備える。このとき、防犯装置用の電源32は、電流測定部41が発熱回路3の電流を測定できる程度に微小な電流を通電するよう構成されている。なお、デフロスタ用の電源の電圧を調整し、駐車時に防犯装置用の電源32として用いても良い。
【0017】
発熱線31は、複数本が並列接続され、樹脂ウィンドウ2の全体にわたって配設されている。発熱線31の太さは0.5mm~1mmであり、並列された発熱線31同士の間隔Dは、15mm~20mmである。発熱線31は、格子状に並列接続することもできる。例えば、発熱線31の抵抗R~Rを、同じ抵抗値(R=R=R=R)となるように設けると、断線が無い状態での総抵抗値Rは「R=1/4R(Ω)」、電流値Iは「I=V×4/R」となる。Vは防犯用電源の電圧を表している。
【0018】
異常検知部4の判定部42は、電流測定部41の測定した電流値Iが「I≦V×2/R」となった場合、つまり、2本以上の発熱線31が断線した場合に「異常」と判定する。以下、詳説する。
【0019】
図3(a)に示すように、劣化などの故障により発熱線31a~31dのうち発熱線31aが断線した場合には、総抵抗値Rは「R=1/R+1/R+1/R(Ω)」、電流値Iは「I=V×3/R」となる。この場合には、「I≧V×2/R」であるため、判定部42は「異常」と判定しない。
【0020】
一方、図3(b)に示すように、熱によって樹脂ウィンドウ2に穴2aが開けられ、発熱線31a,31bが断線した場合には、総抵抗値Rは「R=1/R+1/R(Ω)」、電流値Iは「I=V×2/R」となる。この場合には、「I≦V×2/R」であるため、判定部42は「異常」と判定する。また、全ての発熱線31a~31dが断線した場合には、電流値Iは「I=0(A)」となる。この場合にも、「I≦V×2/R」が成立するため、判定部42は「異常」と判定する。
【0021】
このように、2本以上の発熱線31が断線したときに初めて「異常」と判定するため、破壊行為に依らない断線と区別でき、防犯警報の信頼性を向上させることができる。また、車上荒らしを行う場合、少なくとも発熱線31の2本以上が切られる程度の穴2aが開けられる可能性が高いため、この点においても、誤検出を回避できるというメリットがある。なお、発熱線31同士の間隔に応じて、「異常」判定するための電流値Iを適宜調整することとしても良い。そして、異常検知部4は、判定部42が「異常」と判定した場合に、報知部5に異常検知信号を送信する。
【0022】
報知部5は、ブザーなどの音声による防犯警報を出力したり、セキュリティセンターへ通報したりすることによって報知を行う。なお、判定部42は、「異常」の判定に加えて、発熱線31の1本の断線の場合に「故障」を判定するように構成し、報知部5を利用してデフロスタの故障の報知を行うようしても良い。
【0023】
図4に示すように、樹脂ウィンドウ2は、樹脂パネル21と、ハードコート層22と、防曇層23から構成される。発熱回路3は、図4(a)に示すように、樹脂ウィンドウ2の車室内側に埋設したり、図4(b)に示すように、車室外側に埋設したり、あるいは、図4(c)に示すように、樹脂パネル21の内部に埋設したりすることができる。
【0024】
次に、上記のように構成された車両用防犯装置1の動作を図5に従って説明する。まず、車両51が駐車されると、車両用防犯装置1が作動する。電流測定部41は、車両用防犯装置1が作動している間、常に電流値Iを測定し(S1)、判定部42は常に電流値Iを監視している。そして、閾値より大きい電流値Iが測定されている間は(S2:No)、判定部42は「異常」の判定を行わない。一方、閾値以下の電流値Iが測定されると(S2:Yes)、判定部42が「異常」を判定する(S3)。その後、異常検知部4は、報知部5に異常検知信号を送出し(S4)、報知部5は、防犯警報を出力する(S5)。
【0025】
以上の構成の車両用防犯装置1によれば、デフロスタの発熱線31の断線に基づいて異常を検知するため、樹脂ウィンドウ2が熱により破壊された場合であっても異常を検知できる。また、既存のデフロスタを流用して車両用防犯装置1を構成できるため、製造コストを削減できる。さらに、電流値Iに基づいて、複数の発熱線31の断線を検出した場合に「異常」判定をするように構成したため、誤判定を回避して信頼性の高い防犯を行うことができる。
【0026】
なお、本発明は、上記実施形態に限定されるものではなく本発明の趣旨を逸脱しない範囲で各部の形状や構成を適宜に変更して実施することも可能である。
【符号の説明】
【0027】
1 車両用防犯装置
2 樹脂ウィンドウ(a:穴)
3 発熱回路
4 異常検知部
5 報知部
21 樹脂パネル
22 ハードコート層
23 防曇層
31 発熱線
32 電源
41 電流測定部
42 判定部
51 車体
52 バーナー
図1
図2
図3
図4
図5