(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022065769
(43)【公開日】2022-04-28
(54)【発明の名称】施術衣
(51)【国際特許分類】
A41D 13/12 20060101AFI20220421BHJP
【FI】
A41D13/12 190
A41D13/12 145
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020174464
(22)【出願日】2020-10-16
(71)【出願人】
【識別番号】519148862
【氏名又は名称】松戸 紀公子
(74)【代理人】
【識別番号】110002136
【氏名又は名称】特許業務法人たかはし国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】松戸紀公子
【テーマコード(参考)】
3B011
【Fターム(参考)】
3B011AA01
3B011AB09
3B011AC22
(57)【要約】
【課題】背部の施術を行う際に、被施術者に着用させるための施術衣であって、被施術者が自ら操作して着用するのが容易であり、また、低コストで製造可能な施術衣の提供。
【解決手段】施術衣1は背部側が開放可能となっている。着用時には第一後身頃11の上に第二後身頃12を重ね合わせるような構造となっている。第二後身頃12の上先端部12xに係着部材14が設置されており、係着部材14を、第一後身頃11に設置された係着部材15と係着することにより、被施術者の背部を被覆するようになっている。係着部材14及び係着部材15は、面ファスナーであることが望ましい。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
背部の施術を行う際に、被施術者に着用させるための施術衣であって、背部側が開放可能であり、着用時には第一後身頃の上に第二後身頃を重ね合わせるような構造となっており、該第二後身頃の上先端部に係着部材が設置されており、該係着部材を、該第一後身頃に設置された係着部材と係着することにより、被施術者の背部を被覆するようになっていることを特徴とする施術衣。
【請求項2】
前記係着部材及び前記係着部材が、面ファスナーである請求項1に記載の施術衣。
【請求項3】
前記面ファスナーの横方向の長さが3cm以上20cm以下である請求項2に記載の施術衣。
【請求項4】
袖部がフレンチスリーブとなっている請求項1ないし請求項3の何れかの請求項に記載の施術衣。
【請求項5】
ポリエステルで構成されている請求項1ないし請求項4の何れかの請求項に記載の施術衣。
【請求項6】
請求項1ないし請求項5の何れかの請求項に記載の施術衣を作製するためのものであることを特徴とする型紙。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、施術衣に関し、更に詳しくは、被施術者が着用するのが容易であり、かつ、施術者が施術を行う際に一時的に脱がせるのも容易な施術衣に関する。
【背景技術】
【0002】
アロマテラピーサロン、エステティックサロン、鍼灸院等においては、被施術者の肌にオイルを塗布したり、マッサージを施したりする施術が行われる。この際、被施術者の羞恥心に配慮し、被施術者が一時的に着用する施術衣が使用される。
【0003】
一方で、施術の円滑な実施のため、施術衣には、施術の際に必要な部位が既に露出していたり、かかる部位を施術者がスムーズに露出させるようにできたりすることが求められる。このような要請を満たすため、様々な施術衣が提案されている。
【0004】
特許文献1には、着脱容易にするために、係着部材によって、前側、後ろ側の2箇所で留める鍼灸被施術用衣服に関する発明が開示されている。
【0005】
特許文献2には、袖の無いワンピース形状の衣服本体の両肩部分を分離可能に形成し、さらに、側面を開閉可能に形成した施術用衣服に関する発明が開示されている。
【0006】
特許文献3には、リバーシブル着用可能なノースリーブ状に形成されており、前後両方に接合手段としてスナップボタンを有する施術用衣服に関する発明が開示されている。
【0007】
特許文献4には、身体の任意の部位を容易に開放可能な施術衣に関する発明が開示されている。特許文献4に記載の発明においては、衿部を面ファスナー等で留められるようになっており、前身ごろは、連結部において横方向に縫い付けられている。
【0008】
特許文献5には、後身ごろの中央部を、マジックテープ(登録商標)等によって係止する施術用一部開放衣に関する発明が開示されている。特許文献5に記載の発明においては、マジックテープ(登録商標)等が密に配置された部分(剥離非容易部)と、そうでない部分(剥離容易部)が設けられている。
【0009】
特許文献6には、襟ぐり部から左右の袖端部に向かう左右2つの襟袖線部の少なくとも一方は、襟ぐり部を起点として袖端部までの一部又は全部に接合分離手段を設けた分離可能襟袖線部である医療用上衣が開示されている。特許文献6に記載の発明は、着用者身体の下方から脱衣可能となっているが、多数の接合分離手段を操作する必要性があり、着脱が面倒である。
【0010】
しかしながら、これらの公知技術では、施術者が、必要な部位を露出させるために施術衣を操作する(脱がせる)ことは可能であったが、被施術者による着用は必ずしも容易ではない、という問題があった。
また、公知技術では、施術衣の部材が複数に分かれていたり、開閉可能部分の構造が複雑であったりすることから、施術衣の製作にコストがかかるという問題があった。
【0011】
このため、被施術者による着用が容易であり、安価に製造することのできる施術衣の開発が望まれている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】実用新案登録第3132565号公報
【特許文献2】特開2007-016373号公報
【特許文献3】実用新案登録第3210678号公報
【特許文献4】特開2006-122615号公報
【特許文献5】特開平11-192243号公報
【特許文献6】特開2019-143262号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
本発明は上記背景技術に鑑みてなされたものであり、その課題は、被施術者が自ら操作して着用するのが容易であり、また、低コストで製造可能な施術衣を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明者は、上記の課題を解決すべく鋭意検討を重ねた結果、施術衣の背部側を開放可能とし2つの後身頃同士を重ね合わせるような構造とし、2つの後身頃を被施術者の肩部付近に相当する位置に設けられた係着部材により係着するようにすることにより、被施術者が施術衣を着用することも、施術者が必要な部位を露出させるために施術衣を脱がせることも極めて容易となることを見出して、本発明を完成するに至った。
【0015】
すなわち、本発明は、背部の施術を行う際に、被施術者に着用させるための施術衣であって、背部側が開放可能であり、着用時には第一後身頃の上に第二後身頃を重ね合わせるような構造となっており、該第二後身頃の上先端部に係着部材が設置されており、該係着部材Aを、該第一後身頃に設置された係着部材と係着することにより、被施術者の背部を被覆するようになっていることを特徴とする施術衣を提供するものである。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、施術者が施術の際に必要な部位を露出させるために操作する(脱がせる)のが容易なだけでなく、被施術者が自ら操作して着用するのが容易な施術衣を提供することができる。このため、施術の効率性を向上することができる。
【0017】
本発明では、施術中に、施術衣を完全に脱ぐことなく、背部のみを露出した状態で施術を受けることができるので、被施術者は、寒さや羞恥心を感じることが少ない。また、本発明では、被施術者が施術台に乗る際には、被施術者は施術衣を着用した状態であり、更に、施術中は横からバストが見えにくいので、被施術者は、羞恥心を感じることが少ない。
【0018】
本発明の施術衣は、背部側が開放可能となっている。このような背部側が開放可能な施術衣の着脱方法としては、紐で結ぶ方法が考えられるが、紐を結んだり解いたりする手間が面倒である。これに対して、本発明では、係着部材によって、係着するようになっているので、着脱の作業が行いやすい。また、特に、係着部材を横長の面ファスナーとすることにより、本発明の施術衣は、様々な体型の被施術者が着用することが可能となり、汎用性が高い。
【0019】
本発明の施術衣は、単純な構造であり、また、該係着部材として、一般に流通している面ファスナー(マジックテープ(登録商標)等)を使用することが可能である。このため、本発明の施術衣は、安価に製造することができる。また、本発明の施術衣は、メンテナンスも極めて容易であり、長期に亘って使用することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図3】本発明の施術衣を着用した状態を示す図である(前側から見た場合)。
【
図4】本発明の施術衣を着用した状態を示す図である(後ろ側から見た場合)。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明について説明するが、本発明は以下の実施の形態に限定されるものではなく、任意に変形して実施することができる。
【0022】
図1~4に本発明の施術衣1の一例を示す。本発明の施術衣1は、背部の施術を行う際に、被施術者に着用させるものである。「背部の施術」としては、例えば、被施術者の背部にオイルを塗ったり、マッサージしたりする施術が挙げられる。
背部の施術を行う際には、被施術者は、上半身の衣服を脱いでおく(またはずらしておく)必要があるため、待ち時間;更衣場所から施術場所まで移動の間の時間;施術台の上で必要な部位の施術を受けるまでの時間;等に被施術者が羞恥心を感じないようにするために、また、保温のために、本発明の施術衣を使用する。
【0023】
施術衣1は、背部の施術を行うために使用されるものであるので、背部側が開放可能となっており、施術者が必要に応じて操作する(脱がせる)ことができるようになっている。
本発明の施術衣1は、後身頃が2つに分かれており、着用時には第一後身頃11の上に第二後身頃12を重ね合わせるような構造となっている(
図4)。
一方、前部の側は、施術とは無関係であるので、本発明の施術衣1において、前身頃10は、開放可能とはなっていない(開放可能とする必要はない)(
図3)。
【0024】
本発明の施術衣1は、第二後身頃12の上先端部12xに係着部材14が設置されており、係着部材14を、第一後身頃11に設置された係着部材15と係着することにより、被施術者の背部を被覆するようになっている(
図1、
図2、
図4)。
【0025】
本発明の施術衣1は、背部(背中)の施術を行うために使用される。
施術を受けるまでの待ち時間等において、被施術者は、上半身の衣服を脱いだ(またはずらした)後、施術衣1を着用する。
本発明の施術衣1は、係着部材14、15を予め係着させた状態のまま着用することが可能であり、むしろ、そのようにする方が、着用が容易である。
【0026】
被施術者が、施術衣1を着用してから係着部材14、15を係着するようにしてもよいが、着用時に、係着部材14、15は、被施術者の肩部付近に位置するようになり、被施術者自身が着用後に係着部材14、15を操作するのが難しく、係着部材14、15を係着するのに他の人の力を借りる必要が生じる場合がある。
【0027】
施術の際に、被施術者は、施術衣1を着用した状態で施術台に俯せの状態で乗る。
施術者は、背部の施術を行うに際し、係着部材14、15の係着状態を解除することにより、被施術者の背部を開放し、施術を行うことができる。本発明の施術衣1においては、係着部材14及び係着部材15は、被施術者の肩部付近に位置している。この位置は、施術者にとって係着状態の解除が行いやすく、本発明の施術衣1を使用することにより、施術を円滑に行うことができる。
【0028】
「第二後身頃12の上先端部12x」とは、
図2に示した、第二後身頃12において、角状となっている部分である。上先端部12xには、係着部材14が設置されており、着用時には、係着部材14を、第一後身頃11に設置された係着部材15と係着することにより、被施術者の背部が、第一後身頃11及び第二後身頃12により被覆される。
【0029】
第一後身頃11に設置された係着部材15の位置に、特に限定はないが、第一後身頃11における係着部材15の位置に、係着部材14と係着部材15が係着した状態が、不自然とならないような位置に設置されるのが好ましい。
そのようにした場合、
図4に示すように、被施術者が施術衣1を着用した際に、係着部材14及び係着部材15は、被施術者の肩部付近に位置するようになる。
【0030】
係着部材14及び係着部材15により、第一後身頃11と第二後身頃12とを係着する方法に特に限定はなく、面ファスナー、スナップボタン、トグルボタン、2つ穴や4つ穴のボタン等を使用した方法を使用することができる。
【0031】
本発明の施術衣1は、施術の際に一時的に被施術者の背部を被覆するものであるので、2つの係着部材14、15は、強固に係着できるようになっている必要はなく、むしろ、施術者が操作しやすいように、容易に係着状態を解除できるようになっているのが望ましい。
このため、本発明の施術衣1における係着部材14及び係着部材15は、面ファスナーであることが特に好ましい。係着部材14がフック側面ファスナー、係着部材15がループ側面ファスナーであるケースと、係着部材14がループ側面ファスナー、係着部材15がフック側面ファスナーであるケースがあり得るが、どちらであってもよい。
【0032】
係着部材14、15が面ファスナーである場合、該面ファスナーは、
図1、2、4に示すように、横方向に長い形状であることが好ましい。「横方向に長い形状」としては、具体的には、長方形、楕円形、略長方形(長方形において、角部が丸くなっているもの)等が挙げられる。
【0033】
本発明の施術衣1は、一時的に被施術者の背部を被覆するものである(施術を行う際には、施術者が面ファスナーを解除する)ので、
図4に示すように、本発明の施術衣1の着用時に、2つの面ファスナー(係着部材14、15)同士が、完全に重なり合っている必要性はなく、面ファスナー同士の一部分のみが重なり合っていても差し支えない。面ファスナー(係着部材14、15)が、横方向に長い形状であると、被施術者の体型に合わせて、面ファスナー同士が重なり合う(係着している)位置を調整することができ、汎用性の点から好ましい。
【0034】
面ファスナーが横方向に長い形状である場合、横方向の長さは、3cm以上であることが好ましく、4cm以上であることがより好ましく、5cm以上であることが特に好ましい。また、20cm以下であることが好ましく、18cm以下であることがより好ましく、15cm以下であることが特に好ましい。
該長さが上記範囲内であると、汎用性とコストを両立しやすい。
【0035】
第一後身頃11及び第二後身頃12を構成する生地上への面ファスナーの設置方法としては、ミシン、手縫い等による縫合;アイロン等を使用した熱圧着;両面テープ、接着剤等を使用した接着;等が例示できるが、これらに限定されるものではない。
本発明の施術衣1は、繰り返し洗濯して使用されるのが通常であるため、脱落の防止という観点から、面ファスナーは縫合により設置するのが好ましい。
【0036】
本発明の施術衣1においては、前身頃10を構成する生地と第一後身頃11(又は第二後身頃12)を構成する生地が縫合され、袖部13が形成されている。
【0037】
袖部13の形状について特に限定はないが、
図3~5に示すように、袖部13は、フレンチスリーブ(身頃と袖の切り替えがなく、身頃からそのまま続けて裁ち出した袖)となっていることが好ましい。
袖部13がフレンチスリーブである場合、被施術者が、係着部材14、15を予め係着させた状態のまま施術衣1を被って着用することが一層容易となり、また、生地のコストを節約することができる。
【0038】
袖部13が、通常の長袖、七分袖、五分袖、半袖等の形状である場合が、本発明の範囲外となるものではない。しかし、本発明の施術衣1は、被施術者が一時的に着用するものであるので、袖部13が被施術者の腕を十分に覆っている必要はなく(保温目的であれば、別途上着を着用すればよく)、袖部をかかる形状とする必要性は低い。
【0039】
フレンチスリーブである袖部13は、
図5に示すように、袖上部13aと、袖下部13bと、袖口部13cとを有する。袖上部13aと袖下部13bにおいては、前身頃10を構成する生地と第一後身頃11(又は第二後身頃12)を構成する生地が縫合されている。
ただし、本発明の施術衣1において、袖下部13bは存在しなくてもよい。すなわち、身頃から切り替わった部分は、まったく縫合されておらず、全体が袖口部13cとなっていてもよい。
【0040】
袖上部13aの長さは、20cm以上であることが好ましく、23cm以上であることが特に好ましい。また、40cm以下であることが好ましく、37cm以下であることが特に好ましい。
【0041】
袖下部13bの長さは、10cm以下であることが好ましく、5cm以下であることがより好ましく、2cm以下であることが更に好ましく、0cmであることが特に好ましい。
【0042】
袖口部13cの長さは、20cm以上であることが好ましく、23cm以上であることが特に好ましい。また、40cm以下であることが好ましく、37cm以下であることが特に好ましい。
【0043】
袖上部13aの長さを1としたときに、袖口部13cの長さは、0.85以上であることが好ましく、0.9以上であることがより好ましく、0.95以上であることが特に好ましい。また、1.15以下であることが好ましく、1.1以上であることがより好ましく、1.05以下であることが特に好ましい。
【0044】
袖上部13a、袖下部13b、袖口部13cの長さやその比率が、上記した範囲内であると、被施術者が、係着部材14、15を予め係着させた状態のまま施術衣1を着用することが一層容易となり、また、施術者が係着部材14、15の係着を解除して施術衣1を脱がせて施術を開始するのも一層容易となる。
【0045】
図1~4で例示した施術衣1は、上半身のみを覆うタイプであるが、本発明の施術衣は、上半身と下半身を一体で覆うワンピースタイプであってもよい。
また、
図1~4で例示した施術衣1は、着用時に、被施術者の右肩部付近において、係着部材14、15が係着されるようになっているが、左右の位置関係は、逆になっていてもよい(着用時に、被施術者の左肩部付近において、係着部材14、15が係着されるようになっていてもよい)。
【0046】
施術衣1を構成する素材に特に限定は無く、ポリエステル、ナイロン、ウレタン、レーヨン、綿、ウール、絹等が例示できる。
このうち、コスト、入手のしやすさ、耐久性等の点からポリエステルが特に好ましい。
【0047】
本発明は、前記した施術衣を作製するためのものであることを特徴とする型紙にも関する。
型紙は、施術衣の作製に使用できれば、その材質や厚み等に特に限定は無い。
【産業上の利用可能性】
【0048】
本発明の施術衣は、着脱が容易であり、また、安価に製造できメンテナンスも容易であるため、アロマテラピーサロン、エステティックサロン、鍼灸院等における背部の施術に広く利用されるものである。
【符号の説明】
【0049】
1 施術衣
10 前身頃
11 第一後身頃
12 第二後身頃
12x 第二後身頃の上先端部
13 袖部
13a 袖上部
13b 袖下部
13c 袖口部
14 係着部材
15 係着部材