(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022065777
(43)【公開日】2022-04-28
(54)【発明の名称】除菌装置、及び、除菌システム
(51)【国際特許分類】
A62B 29/00 20060101AFI20220421BHJP
A61L 9/20 20060101ALI20220421BHJP
【FI】
A62B29/00
A61L9/20
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020174473
(22)【出願日】2020-10-16
(71)【出願人】
【識別番号】500485659
【氏名又は名称】TDCソフト株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】村田 稔
【テーマコード(参考)】
2E185
4C180
【Fターム(参考)】
2E185AA07
2E185CA03
4C180AA07
4C180DD03
4C180HH19
4C180MM03
(57)【要約】
【課題】使用者の感染を予防するだけでなく、使用者から他者への感染拡大を予防可能な除菌装置、及び、除菌システムを提供する。
【解決手段】接続口を備えるマスク部20と、除菌室を備える除菌装置40であって、使用者が携行可能な除菌装置40と、接続口と除菌室とを気密に接続する連結部材30と、を備える除菌システム10であって、マスク部20は、使用者の鼻口部を覆うカバー部であって、接続口を備えるカバー部、及び、カバー部を使用者の頭部に固定するための固定部を備え、除菌装置40は、除菌室に対し給気及び排気を行う給排気部と、除菌室を通過する呼気及び吸気に対し除菌室で紫外線を照射する紫外線発光部と、を備える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
マスク部が有する接続口と気密に接続される除菌室を備え、使用者が携行可能な除菌装置であって、
前記除菌室に対し給気及び排気を行う給排気部と、
前記除菌室を通過する呼気及び吸気に対し前記除菌室で紫外線を照射する紫外線発光部と、を備える
除菌装置。
【請求項2】
前記除菌室は、前記除菌室で空気の流れを乱すための乱流発生部を備える
請求項1に記載の除菌装置。
【請求項3】
冷却ファンを備える冷却室と、放熱フィンを備えるヒートシンクとをさらに備え、
前記ヒートシンクは、前記紫外線発光部で発生する熱を吸収し、
前記放熱フィンは、前記冷却室の内部に露出している
請求項1または2に記載の除菌装置。
【請求項4】
前記使用者の鼻口部を覆うカバー部であって、前記接続口を備える前記カバー部、及び、前記カバー部を前記使用者の頭部に固定するための固定部を備える前記マスク部と、
請求項1から3のうち何れか一項に記載の除菌装置と、
前記接続口と前記除菌室とを気密に接続する連結部材と、を備える
除菌システム。
【請求項5】
前記連結部材は、可撓性を有する筒部材であって、その内径が1.5cm以上3.0cm以下である
請求項4に記載の除菌システム。
【請求項6】
前記カバー部は、少なくとも一部がフィルム状の伝達部で構成される
請求項4または5に記載の除菌システム。
【請求項7】
前記マスク部は、前記カバー部のうち前記使用者と接触する接触部を備え、
前記接触部は、ポリウレタン系の発泡樹脂で構成される
請求項4ないし6のうち何れか一項に記載の除菌システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、感染症を予防するための除菌装置、及び、除菌システムに関する。
【背景技術】
【0002】
除菌システムには、例えば、特許文献1に記載されるように、病原に対する紫外線の除菌効果を利用した衛生マスクシステムがある。ここでの病原とは、感染症の原因となる細菌及びウィルスなどである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載される衛生マスクシステムは、使用者の吸気を除菌するための構成は設けられているものの、使用者の呼気を除菌するための構成ではない。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決する除菌装置は、マスク部が有する接続口と気密に接続される除菌室を備え、使用者が携行可能な除菌装置であって、前記除菌室に対し給気及び排気を行う給排気部と、前記除菌室を通過する呼気及び吸気に対し前記除菌室で紫外線を照射する紫外線発光部と、を備える。
【0006】
上記除菌装置によれば、使用者がマスク部を装着した状態で息を吸い込むことで、給排気部から除菌室に取り込まれた空気が紫外線発光部によって除菌され、使用者に吸気として供給される。また、使用者がマスク部を装着した状態で息を吐き出すことで、除菌部に到達した呼気が紫外線発光部によって除菌された後に給排気部から外部に排出される。このように、使用者の呼気及び吸気に含まれる病原を除菌することで、使用者の感染を予防するだけでなく、使用者からの感染拡大を予防できる。
【0007】
上記除菌装置において、前記除菌室は、前記除菌室で空気の流れを乱すための乱流発生部を備えることが好ましい。上記除菌装置によれば、乱流発生部が除菌室で空気の流れを乱すことで、除菌室における空気の滞留時間を長くすることができる。これにより、除菌室を通過する空気に含まれる病原をより確実に除菌できる。
【0008】
上記除菌装置において、冷却ファンを備える冷却室と、放熱フィンを備えるヒートシンクとをさらに備え、前記ヒートシンクは、前記紫外線発光部で発生する熱を吸収し、前記放熱フィンは、前記冷却室の内部に露出していることが好ましい。上記除菌装置によれば、紫外線発光部で発生した熱をヒートシンクによって吸収することができ、また、ヒートシンクで吸収した熱を冷却室で冷却できる。これにより、除菌室を通過する空気の温度が上昇することを抑制でき、温度が上昇した空気を吸い込むことによる使用者の不快感を低減できる。
【0009】
上記課題を解決する除菌システムは、接続口を備えるマスク部と、除菌室を備える除菌装置であって、使用者に携行可能に構成された前記除菌装置と、前記接続口と前記除菌室とを気密に接続する連結部材と、を備える除菌システムであって、前記マスク部は、前記使用者の鼻口部を覆うカバー部であって、前記接続口を備える前記カバー部、及び、前記カバー部を前記使用者の頭部に固定するための固定部を備え、前記除菌装置は、前記除菌室に対し給気及び排気を行う給排気部と、前記除菌室を通過する呼気及び吸気に対し前記除菌室で紫外線を照射する紫外線発光部と、を備える。
【0010】
上記除菌システムにおいて、前記連結部材は、可撓性を有する筒部材であって、その内径が1.5cm以上3.0cm以下であることが好ましい。上記除菌システムによれば、連結部材の内径が1.5cm以上3.0cm以下であるから、連結部材の大型化を抑制しつつ、使用者が呼吸し易くすることができる。
【0011】
上記除菌システムにおいて、前記カバー部は、少なくとも一部がフィルム状の伝達部で構成されることが好ましい。上記除菌システムによれば、カバー部の少なくとも一部がフィルム状の伝達部で構成されることで、マスク部を装着した状態でも使用者の声を伝え易くすることができる。
【0012】
上記除菌システムにおいて、前記マスク部は、前記カバー部のうち前記使用者と接触する接触部を備え、前記接触部は、ポリウレタン系の発泡樹脂で構成されることが好ましい。上記除菌システムによれば、カバー部のうち使用者と接触する部分がポリウレタン系の発泡樹脂で構成されることで、マスク部を装着した際の気密性と、マスク部を装着した際の快適性とを得ることができる。
【発明の効果】
【0013】
以上のような構成によれば、使用者の感染を予防するだけでなく、使用者から他者への感染拡大を予防できる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明を適用した除菌システムについて
図1~
図4を参照して説明する。
〔全体構成〕
図1に示すように、除菌システム10は、感染症予防のための携帯可能な除菌システムであり、マスク部20と、連結部材30と、除菌装置40と、電源装置50とを備える。マスク部20は、除菌システム10の使用者の鼻口部を覆うものであり、使用者の頭部に固定される。連結部材30は、可撓性を有する筒部材であり、マスク部20と除菌装置40とを気密性を有するように連結する。除菌装置40は、角筒状の外形を有する機器であり、病原を除菌するための除菌室を備える。ここでの病原とは、感染症の原因となる細菌及びウィルスなどである。除菌装置40は、非図示のストラップなどによって、ネックレスのように使用者の首にかけられて携行される。電源装置50は、リチウムイオン電池などの二次電池や、乾電池などの一次電池などの電源を備えており、電源コード51を介して除菌装置40に接続されている。電源装置50は、使用者の衣服のポケットや、ハンドバック、ウェストポーチなどのカバンに収容されて携行される。
【0016】
除菌システム10の使用者がマスク部20を装着することで、使用者の呼気がマスク部20、連結部材30、及び、除菌装置40を介して外部に排出される。また、使用者がマスク部20を装着した状態で息を吸い込むことで、除菌装置40、連結部材30、及び、マスク部20を介して、外部の空気が使用者の吸気として供給される。
【0017】
〔マスク部〕
図2に示すように、マスク部20は、気密性を有するように使用者の鼻口部を覆うカバー部21と、マスク部20を使用者の頭部に固定するための固定部22と、連結部材30を連結するための第1接続口23とを備える。また、使用者がマスク部20を装着することで、使用者の鼻口部とカバー部21との間にはマスク空間24が形成される。
【0018】
カバー部21は、本体部21aと、伝達部21bと、接触部21cとを備える。本体部21aは、使用者の肌と非接触の部分であって、鼻口部と対応する形状を有している。本体部21aは、非通気性、または、難通気性の素材で構成される。具体的に、本体部21aは、ポリカーボネート(PC)やアクリル樹脂など、高い強度を有する熱可塑性樹脂で構成される。
【0019】
伝達部21bは、本体部21aの左右それぞれに設けられた孔部を塞ぐように設けられるフィルム状の部分である。本体部21aと伝達部21bとの接続箇所は、気密性を有するように構成される。伝達部21bは、例えば、ポリ塩化ビニル(PVC)やポリ塩化ビニリデン(PVCD)などのビニル系の樹脂や、ポリエチレン系、ポリプロピレン系、ポリエステル系、ポリアミド系などの樹脂で構成される。カバー部21にフィルム状の伝達部21bを設けることで、弾性波である使用者が発する声を伝え易くすることができるため、マスク部20を装着した状態での会話がし易くなる。
【0020】
また、伝達部21bは、0.008mm以上0.011mm以下程度の厚さで構成される。伝達部21bの厚さをこのような範囲とすることで、必要な強度を維持するための厚さを有しつつも、使用者が発する声の伝わり易くすることができる。
【0021】
接触部21cは、本体部21aの外周部に連続して設けられる部分であって、使用者の肌と接する部分である。接触部21cは、マスク部20を装着した際に、使用者の肌と気密性を有するように密着する。接触部21cは、マスク部20を装着した際の気密性、及び、マスク部20を装着した際の快適性を両立できる素材で構成される。具体的に、接触部21cは、ポリウレタン系の発泡樹脂で構成される。その中でも、気密性、及び、快適性の観点から、超低反発ウレタンなどのポリウレタン系の樹脂で構成されることが好ましい。接触部21cを構成する素材の他の例としては、ポリスチレン、及び、ポリエチレンやポリプロピレンなどのポリオレフィンなどの発泡樹脂などが挙げられる。また、接触部21cは、3mm以上15mm以下程度の厚さで構成される。接触部21cの厚さをこのような範囲とすることで、気密性を高めつつ、マスク部20を装着した際の快適性を維持できる。
【0022】
固定部22は、環状に構成されるひも状の弾性部材であり、本体部21aの左右両端に設けられる。固定部22を使用者の耳にかけることで、固定部22の弾性力により接触部21cが使用者の肌と密着し、カバー部21が気密性を有するように使用者の頭部に固定される。
【0023】
第1接続口23は、本体部21aの中央部に設けられる開口であり、連結部材30の一端である第1端部31が気密性を有するように連結される。第1接続口23は、第1端部31を着脱するための着脱機構を備えており、修理、交換などのメンテンナンスが容易な構成となっている。第1接続口23には、着脱機構として第1端部31との気密性を維持するためのゴムパッキンやOリングが設けられており、第1端部31が圧入されることでマスク部20と連結部材30とを気密性を有するように連結する。なお、着脱機構としては、上記の形態に限定されず、例えば、ねじ込み継手などの継手構造を用いてもよい。
【0024】
〔連結部材〕
連結部材30は、可撓性を有する円筒部材である。連結部材30は、その両端部として、マスク部20に連結される第1端部31と、除菌装置40に連結される第2端部32(
図4参照)とを備える。使用者の呼気及び吸気は、マスク部20及び除菌装置40の間において、連結部材30を介して移動する。したがって、連結部材30は、除菌システム10の携帯性が損なわれず、かつ、使用者が呼吸をし易い程度の内径を有することが好ましい。
【0025】
具体的に、連結部材30は、その内径が1.5cm以上3.0cm以下の範囲となるように構成される。連結部材30の内径をこのような範囲とすることで、成人の一般的な気道の直径が1.5cm~2.5cm程度であることから、連結部材30の内径を成人における気道の直径と同等以上として使用者が呼吸し易くしつつ、連結部材30の大型化を抑制して携帯性を確保することができる。
【0026】
〔除菌装置〕
図3及び
図4に示すように、除菌装置40は、四角柱状の外形を有する筐体部41を備える。筐体部41は、例えば、アルミなど軽量の金属や撥水加工が施された樹脂で構成される。筐体部41は、除菌装置40の外形を構成する外壁41aと、外壁41aの内側において、除菌装置40の長手方向に延在する角筒状の内壁41bと、筐体部41における長手方向の一端であって、外壁41a及び内壁41bを繋ぐ端壁41cとを備える。内壁41bは、端壁41cの他、外壁41aから延設される非図示の支持部によって支持されている。また、除菌装置40は、内壁41b及び端壁41cによって囲まれる空間である除菌室42と、外壁41a、内壁41b、及び、端壁41cに囲まれる空間である冷却室43とを備える。
【0027】
除菌室42は、除菌室42における長手方向の一端である端壁41cに位置する第2接続口42aと、除菌室42における長手方向の他端である給排気部42bとを備える。第2接続口42aには、連結部材30の第2端部32が気密性を有するように連結される。第2接続口42aは、第2端部32を着脱するための着脱機構を備えており、修理、交換などのメンテンナンスが容易な構成となっている。第2接続口42aには、着脱機構として第2端部32との気密性を維持するためのゴムパッキンやOリングが設けられており、第2端部32が圧入されることでマスク部20と連結部材30とを気密性を有するように連結する。なお、第2接続口42aの着脱機構としては、上記の形態に限定されず、例えば、第1接続口23と同様にねじ込み継手などの継手構造を用いてもよい。
【0028】
除菌室42は、その内部に紫外線発光部44を備える。紫外線発光部44は、内壁41bにおける除菌室42を画定する面において、除菌室42における長手方向に1列または複数列設けられるLED素子で構成される。本実施形態では、紫外線発光部44は、除菌室42における対向する2つの面に設けられている。各紫外線発光部44は、除菌室42における長手方向に設けられる1列のLED素子で構成される。
【0029】
紫外線発光部44は、病原への除菌効果を有する波長の紫外線を発光する。具体的に、紫外線発光部44は、200nm以上280nm以下の波長を有するUV-Cに分類される紫外線を発光する。より好ましくは、220nm以上270nm以下の紫外線を発光する。265nmであれば、病原への除菌効果を特に高めることができるし、222nmであれば、人体に対する害を小さくできる。
【0030】
除菌室42に紫外線発光部44を設けることで、マスク部20を装着した使用者の呼気は、マスク部20、及び、連結部材30を介して除菌装置40に到達し、除菌室42において、紫外線発光部44によって呼気に含まれる病原が除菌された後に外部に排出される。また、使用者がマスク部20を装着した状態で息を吸い込むことで、外部から除菌室42に空気が取り込まれ、紫外線発光部44によって除菌された後、連結部材30、及び、マスク部20を介して使用者の吸気として供給される。
【0031】
除菌室42を構成する各面は、紫外線発光部44が発する紫外線に対する反射率が高い平面であるミラー面で構成される。例えば、アルミで筐体部41を構成する場合には、アルミの紫外線に対する反射率が90%程度と高いため、除菌室42を画定する内壁41b及び端壁41cの各面がミラー面となる。また、樹脂材料で筐体部41を構成する場合には、除菌室42を画定する内壁41b及び端壁41cの各面にアルミや酸化マグネシウムなど紫外線に対する反射率が高い素材をコーティングすることで、コーティングされた各面がミラー面となる。
【0032】
除菌室42を構成する各面をミラー面で構成することで、紫外線発光部44が発する紫外線がミラー面によって反射されるため、除菌室42内における紫外線の強度を高めることができる。紫外線による病原の除菌効果は、紫外線の強度に依存するため、このようにして除菌室42内における紫外線の強度を高めることで、使用者の呼気及び吸気に含まれる病原をより確実に除菌できる。また、樹脂材料で筐体部41を構成する場合では、除菌室42を構成する各面を紫外線に対する反射率が高い素材でコーティングすることで、紫外線による樹脂材料に対するダメージを低減できる。
【0033】
また、紫外線発光部44が発する紫外線の強度は、光源からの距離が遠くなるにつれて減衰する。そのため、除菌室42の断面積を連結部材30よりも大きくして呼吸の妨げにならないようにしつつも、除菌室42の断面積をなるべく小さくすることで、紫外線の強度が強い状態で呼気や吸気に照射できるようにしている。これにより、使用者の呼気及び吸気に含まれる病原をより確実に除菌できる。
【0034】
除菌室42は、その内部において、第2接続口42aの近傍に位置する乱流発生部45aと、給排気部42bの近傍に位置する乱流発生部45bとを備える。乱流発生部45a,45bは、除菌室42において、紫外線発光部44が設けられていない相対する面に架渡される円柱状の部分である。なお、乱流発生部45a,45bは、筐体部41と一体であってもよいし、筐体部41とは別の部材が固定される構成であってもよい。また、乱流発生部45a,45bは、紫外線への耐性の観点から、アルミなどの紫外線に対する反射率が高い金属、もしくは、紫外線に対する反射率が高い素材が表面にコーティングされた樹脂材料で構成される。
【0035】
除菌システム10の使用者が息を吐き出したとき、マスク部20及び連結部材30を介して除菌室42に到達した使用者の呼気が、乱流発生部45aによって流れが乱された状態で除菌室42を通過して給排気部42bから排出される。したがって、除菌室42に乱流発生部45aを設けることで、使用者の呼気が除菌室42内に滞留する時間を長くすることができる。同様に、除菌システム10の使用者が息を吸い込んだとき、給排気部42bから外部の空気が取り込まれ、乱流発生部45bによって空気の流れが乱された状態で除菌室42を通過した後に、連結部材30及びマスク部20を介して使用者の吸気となる。
【0036】
紫外線による病原の除菌効果は、紫外線の強度だけでなく照射時間にも依存する。したがって、除菌室42に乱流発生部45bを設けることで、使用者の呼気及び吸気が除菌室42内に滞留する時間を長くすることができるため、より確実に使用者の呼気及び吸気に含まれる病原を除菌できる。
【0037】
また、乱流発生部45a,45bによって除菌室42を通過する呼気及び吸気の流れを乱すことで、例えば、除菌室42内の位置によって紫外線強度のムラがある場合でも、除菌室42を通過する呼気及び吸気が、除菌室42内において相対的に紫外線強度が低い領域だけでなく相対的に紫外線強度が高い領域も通過するようになる。したがって、より確実に使用者の呼気及び吸気に含まれる病原を除菌できる。
【0038】
冷却室43は、外壁41aに位置する給気口43aと、長手方向における端壁41cと反対側の端部に位置する排気口43bとを備える。給気口43aには、冷却室43内に空気を取り込むための冷却ファン46が設けられている。排気口43bは、給気口43aの冷却ファン46から取り込まれた空気を排出する。
【0039】
冷却室43は、紫外線発光部44から生じる熱を冷却するためのヒートシンク47を備える。ヒートシンク47は、熱伝導性のよいアルミ、銅などの金属材料で構成される。ヒートシンク47は、冷却室43において、内壁41b上に設置されている。また、内壁41bのヒートシンク47が設けられた面と反対の面には、紫外線発光部44が実装された基板(非図示)が取り付けられている。ヒートシンク47は、内壁41bに接する面と反対の面に放熱フィン47aを備える。放熱フィン47aは、冷却室43の内部に露出している。
【0040】
ヒートシンク47は、内壁41bを介して紫外線発光部44から生じる熱を吸収する。そして、紫外線発光部44から生じる熱を吸収したヒートシンク47は、冷却室43の内部を流れる空気によって冷却される。これにより、紫外線発光部44から生じる熱を効果的に冷却できる。また、例えば、除菌室42内にヒートシンク47を設け、除菌室42内を通る空気の流れを利用してヒートシンク47を冷却した場合、使用者の呼気となる空気もヒートシンク47の冷却に利用されるため、温度が上昇した空気が使用者に呼気として供給されてしまう。これに対して、本実施形態のように、除菌室42と区画された空間である冷却室43でヒートシンク47の冷却を行うことで、使用者の呼気となる空気の温度が上昇することを抑制できる。
【0041】
放熱フィン47aは、冷却室43における空気の流れに沿って設けられることが好ましい。例えば、本実施形態では、放熱フィン47aは、一端が給気口43a及び冷却ファン46の近傍に位置し、他端が排気口43bの近傍に位置するように延在している。これにより、冷却室43内の空気が放熱フィン47aに沿って流れるため、ヒートシンク47を好適に冷却できる。
【0042】
また、除菌室42の周りを囲むように冷却室43を設けることで、紫外線発光部44から生じる熱が筐体部41の表面である外壁41aに伝わりづらくなるため、除菌装置40において使用者の手に触れる部分の温度が上昇することを抑制できる。
【0043】
除菌装置40は、さらに、非図示の制御部と、操作部と、表示部とを備える。制御部は、紫外線発光部44の駆動回路、冷却ファン46の駆動回路、及び、これらに電源装置50から電源を供給する電源回路を備える。操作部は、除菌システム10における電源のオンオフを切り替えるボタンであり、筐体部41における外壁41aの表面に設けられる。表示部は、動作状況、充電、非充電の表示、残量表示などを表示するモニタ、もしくは、表示灯であり、筐体部41における外壁41aの表面に設けられる。なお、表示部及び操作部は、除菌装置40ではなく電源装置50に設けられる構成でもよく、除菌装置40及び電源装置50の両方に設けられる構成でもよい。
【0044】
また、除菌システム10は、給排気部42bに不織布などのフィルターを設けない構成となっており、これにより、使用者が呼吸をし易くすることができる。また、構造も簡略化されるため、製造コスト、製造性、リペア性も向上する。
【0045】
以上のように構成された除菌システム10によれば以下に列挙する効果を得ることができる。
(1)除菌室42に紫外線発光部44を設けることで、マスク部20を装着した使用者の呼気は、マスク部20、及び、連結部材30を介して除菌装置40に到達し、除菌室42において、紫外線発光部44によって呼気に含まれる病原が除菌された後に外部に排出される。また、使用者がマスク部20を装着した状態で息を吸い込むことで、除菌装置40の除菌室42において、紫外線発光部44によって除菌された空気が、連結部材30、及び、マスク部20を介して使用者の吸気として供給される。このように、使用者の呼気及び吸気に含まれる病原を除菌することで、使用者の感染を予防するだけでなく、使用者からの感染拡大を予防できる。
【0046】
(2)除菌室42に乱流発生部45a,45bを設けることで、除菌室42内で空気の流れが乱される。これにより、除菌室42内を通過する呼気及び吸気の滞留時間を長くすることができる。また、例えば、除菌室42内の位置によって紫外線強度のムラがある場合でも、除菌室42を通過する呼気及び吸気が、除菌室42内において相対的に紫外線強度が低い領域だけでなく相対的に紫外線強度が高い領域も通過するようになる。したがって、使用者の呼気及び吸気に含まれる病原菌をより確実に除菌できる。
【0047】
(3)連結部材30を内径が1.5cm以上3.0cm以下となる筒部材とすることで、連結部材30の大型化を抑制して携帯性を確保しつつ、使用者が呼吸し易くすることができる。
【0048】
(4)ヒートシンク47を設けることで、紫外線発光部44で発生した熱をヒートシンク47によって吸収することができる。また、放熱フィン47aを冷却室43に露出させることで、ヒートシンク47が吸収した熱を冷却室43で冷却できる。これにより、除菌室42を通過する空気の温度上昇を抑制でき、温度が上昇した空気を使用者が吸い込むことによる不快感を低減できる。
【0049】
(5)カバー部21にフィルム状の伝達部21bを設けることで、弾性波である使用者が発する声を伝え易くすることができるため、マスク部20を装着した状態での会話がし易くなる。
【0050】
(6)接触部21cがポリウレタン系の発泡樹脂で構成されることにより、マスク部20を装着した際に高い気密性を得ることができ、かつ、マスク部20を装着した際の快適性を得ることができる。
【0051】
(7)除菌室42を構成する各面が紫外線に対する反射率が高いミラー面で構成されることで、紫外線発光部44が発する紫外線が、除菌室42を構成する各面によって反射されるため、除菌室42内における紫外線の強度を高めることができる。これにより、使用者の呼気及び吸気に含まれる病原をより確実に除菌できる。
【0052】
(8)除菌システム10において、不織布などのフィルターを設けない構成とすることで、使用者が呼吸をし易くすることができる。また、構造も簡略化されるため、コスト、製造性、リペア性を向上できる。
【0053】
なお、上記実施形態は以下のように適宜変更して実施することもできる。
・接触部21cがポリウレタン系の発泡樹脂である構成を例示したが、マスク部20を装着した際に高い気密性、及び、快適性が得られる素材であれば、これに限定されず、例えば、各種発泡樹脂の他、シリコンゴムなどであってもよい。
【0054】
・伝達部21bがビニル系の樹脂である構成を例示したが、使用者が発する声を伝え易い素材であれば、これに限定されず、例えば、布などにフィルムなどをコーティングし、非通気性または難通気性を有するように構成された素材などであってもよい。
【0055】
・伝達部21bが左右それぞれに一か所ずつ設けられる構成を例示したが、伝達部21bの数、位置、大きさは、本体部21aの強度が十分に保てるのであれば限定されない。例えば、本体部21aの全体に多数の微小な伝達部21bを設ける構成であってもよい。また、伝達部21bを設けない構成であってもよい。この場合、使用者の発する声が本体部21aを通過する際に減衰される程度が大きくなるものの、本体部21aの強度を向上できる。
【0056】
・伝達部21bを構成するフィルムは、本体部21aに対して交換可能であってもよい。この場合、伝達部21bは、本体部21aに設けられた孔部よりも少し大きいフィルムで構成され、当該孔部からはみ出した部分に剥離可能な粘着材が設けられるようにすればよい。
【0057】
・冷却室43にヒートシンク47を設け、内壁41bを介して紫外線発光部44の熱を吸収する構成を例示したが、これに限定されず、例えば、紫外線発光部44の発熱量が小さければ、冷却室43及びヒートシンク47を設けなくてもよい。
【0058】
・冷却室43にヒートシンク47を設け、内壁41bを介して紫外線発光部44の熱を吸収する構成を例示したが、ヒートシンク47の構成はこれに限定されない。例えば、内壁41bの一部を紫外線発光部44が実装される基板で構成し、当該基板において、紫外線発光部44が実装される面を除菌室42に露出させ、放熱フィン47aが設けられた面を冷却室43に露出させる構成であってもよい。
【0059】
・連結部材30の内径を1.5cm以上3.0cm以下とする構成を例示したが、これに限定されず、例えば、小児用、または、運動量が少ない場面での使用が想定された除菌システムであれば、連結部材30の内径を1.5cmよりも小さくしてもよい。また、連結部材30の内径を3.0cmよりも大きくしてもよい。この場合、連結部材30が大きくなってしまうものの、使用者の呼吸のし易さをさらに向上できる。連結部材30が円筒部材である構成を例示したが、これに限定されず、例えば、角筒部材であってもよい。また、連結部材30は、蛇腹状のホースであってもよい。
【0060】
・除菌室42に乱流発生部45a,45bを設ける構成を例示したが、これに限定されず、例えば、乱流発生部45a,45bのうち一方のみを設ける構成であってもよい。また、例えば、紫外線発光部44からの紫外線が病原を除菌するための十分な強度を有しており、除菌室42において、呼気及び吸気に対して十分に紫外線が照射されるのであれば、乱流発生部45a,45bを設けなくてもよい。
【0061】
・乱流発生部45a,45bが円柱状である構成を例示したが、除菌室42を通過する呼気及び吸気の流れを乱すことができ、かつ、使用者の呼吸の妨げにならなければ、その形状は限定されず、例えば、四角柱や三角柱であってもよい。
【0062】
・乱流発生部45a,45bが除菌室42の紫外線発光部44が設けられていない相対する面に架渡される構成を例示した。しかし、除菌室42を通過する呼気及び吸気の流れを乱すことができ、かつ、使用者の呼吸の妨げにならければ、その構成は限定されず、例えば、紫外線発光部44が設けられている相対する面に架渡される構成でもよい。また、乱流発生部45a,45bのそれぞれが2本以上設けられてもよい。例えば、2本以上の乱流発生部45aが、平行に設けられてもよいし、十字やX字に交差する構成であってもよい。また、乱流発生部45a,45bが相対する面のうちの一方の面から突出し、他方の面に支持されていない構成であってもよい。
【0063】
・除菌室42を構成する各面が紫外線に対する反射率が高い平面としてのミラー面である構成を例示したが、これに限定されず、例えば、紫外線発光部44の発する紫外線が病原を除菌するために十分な強度を有しているのであれば、除菌室42を構成する各面をミラー面で構成しなくてもよい。例えば、除菌室42を構成する各面のうち、紫外線発光部44が設けられた相対する面のみをミラー面とする構成であってもよいし、何れか一面のみをミラー面とする構成であってもよい。また、ミラー面は、平面ではなく曲面であってもよい。例えば、除菌室42を構成する各面のうち何れかの面が紫外線に対する反射率が高い曲面としてのミラー面であれば、紫外線発光部44の配置などに応じて曲面の曲率を調整することで、除菌室42内における紫外線強度のムラを低減して除菌室42内における紫外線強度をより均等化できる。
【0064】
・紫外線発光部44が除菌室42における対向する2つの面に設けられる構成を例示したが、これに限定されず、除菌室42内を通過する呼気及び吸気を十分除菌できる程度に設けられればよい。例えば、紫外線発光部44を構成するLED素子が発する紫外線の強度、及び、除菌室42の大きさに応じて、除菌室42における何れか1面にのみ紫外線発光部44を設ける構成であってもよい。また、紫外線発光部44を構成するLED素子の数も、紫外線発光部44を構成するLED素子が発する紫外線の強度、及び、除菌室42の大きさに応じて、適宜決定されればよい。そして、紫外線発光部44を構成するLED素子が1列または複数列設けられる構成を例示したが、除菌室42内を通過する呼気及び吸気を十分除菌できるのであれば、その構成は限定されず、例えば、ジグザグに並んでいる構成であってもよい。
【0065】
・冷却室43において、給気口43a及び排気口43bが設けられる位置は、限定されない。具体的に、給気口43aに設けられた冷却ファン46から取り込まれた空気が、ヒートシンク47の近傍を通過し、排気口43bから排出されるような位置関係であればよい。例えば、給気口43a及び冷却ファン46を除菌装置40における長手方向の中央に設け、排気口43bを除菌装置40における長手方向の両端に設ける構成であってもよい。また、給気口43a及び冷却ファン46を給排気部42bの近傍に設け、排気口43bを第2接続口42aの近傍に設ける構成であってもよい。この場合、ヒートシンク47の冷却に使用されて温度が上昇した空気が排気口43bから排出されても、除菌室42内に取り込まれにくくなる。したがって、使用者の吸気として温度が上昇した空気が供給されることによる使用者の不快感を低減できる。
【0066】
・固定部22は、耳にかけることで固定する構成に限定されず、例えば、本体部21aの左右両端を繋ぐひも状の弾性部材や長さを調節可能なベルト部材で構成し、固定部22を使用者の後頭部に配して頭部に固定してもよい。
【0067】
・マスク部20を不織布マスク(使い捨てマスク)や布マスクなどで覆って使用してもよい。不織布マスクや布マスクなどでマスク部20を覆うことで意匠性を向上できる。特に、外面にデザインが施された布マスクなどであれば、より好適に意匠性を向上できる。
【0068】
・除菌システム10において、不織布などのフィルターを設けない構成を例示したが、これに限定されず、例えば、給排気部42bなどにフィルターを設ける構成であってもよい。このような構成であれば、除菌システム10に防塵用や花粉症対策などの機能を付与できる。
【0069】
・除菌装置40が非図示のストラップなどによってネックレスのように使用者の首にかけられて携行される構成について例示したが、これに限定されず、例えば、除菌装置40の筐体部41にクリップなどを設け、使用者の胸ポケットやズボンのベルトに固定する構成であってもよい。また、これらの用途に応じて、長さの異なる連結部材30を複数種類用意し、交換可能な構成であってもよい。
【0070】
・除菌室42の周りを囲むように冷却室43を設ける構成を例示したが、これに限定されず、冷却室43として、ヒートシンク47を設けるための空間と、ヒートシンク47を冷却するための空気が通る空間とが設けられるのであれば、その構成は限定されない。例えば、上記実施形態のようにヒートシンク47が2つ設けられる場合、冷却室43を2つに分割してもよい。これにより、給気口43aに設けられた冷却ファン46から取り込まれた空気が、より確実にヒートシンク47の近傍を通過するため、好適にヒートシンク47を冷却できる。
【0071】
・筐体部41が角筒状の外形を有する構成を例示したが、これに限定されず、例えば、円筒状であってもよいし、断面視楕円状のような形状であってもよい。また、外壁41aの外表面には、デザイン性を高めるため、意匠性の高いデザインが施されていてもよい。また、筐体部41の表面を覆う装飾カバーが着脱可能であってもよい。
【0072】
・第1接続口23が本体部21aの中央部に設けられる構成を例示したが、これに限定されず、例えば、第1接続口23が本体部21aの下部に設けられる構成でもよい。この場合、第1接続口23が本体部21aの下部に設けられることで、第1接続口23から連結部材30が除菌装置40に向かって真っ直ぐに垂下するような構成となる。これにより、連結部材30の全長を短くすることができ、また、連結部材30内を通過する吸気及び呼気における流速の減衰を軽減できる。
【0073】
・除菌装置40に電源装置50が接続される構成を例示したが、これに限定されず、例えば、電源装置50を設けずに、除菌装置40がリチウムイオン電池などの二次電池や、乾電池などの一次電池などの電源を備える構成であってもよい。この場合、除菌装置40が大型化するものの、部品点数を削減できる。
【符号の説明】
【0074】
10…除菌システム
20…マスク部
21…カバー部
21a…本体部
21b…伝達部
21c…接触部
22…固定部
23…第1接続口
30…連結部材
31…第1端部
32…第2端部
40…除菌装置
41…筐体部
41a…外壁
41b…内壁
41c…端壁
42…除菌室
42a…第2接続口
42b…給排気部
43…冷却室
44…紫外線発光部
45a,45b…乱流発生部
46…冷却ファン
47…ヒートシンク
47a…放熱フィン
50…電源装置
51…電源コード