(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022065797
(43)【公開日】2022-04-28
(54)【発明の名称】回転制限機構、モータ及び電動弁
(51)【国際特許分類】
F16K 31/04 20060101AFI20220421BHJP
【FI】
F16K31/04 Z
F16K31/04 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020174507
(22)【出願日】2020-10-16
(71)【出願人】
【識別番号】000204033
【氏名又は名称】太平洋工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100112472
【弁理士】
【氏名又は名称】松浦 弘
(74)【代理人】
【識別番号】100202223
【弁理士】
【氏名又は名称】軸見 可奈子
(72)【発明者】
【氏名】藤本 聡
(72)【発明者】
【氏名】坂井 孝行
(72)【発明者】
【氏名】見津 輝聖
(72)【発明者】
【氏名】中山 康治
(72)【発明者】
【氏名】林 久雄
【テーマコード(参考)】
3H062
【Fターム(参考)】
3H062AA02
3H062AA15
3H062BB30
3H062CC02
3H062DD01
3H062EE06
(57)【要約】
【課題】モータのコンパクト化が求められている。
【解決手段】本開示の電動弁10では、螺旋ガイド31と、螺旋ガイド31に係合(螺合)したストッパリング35と、を有する回転制御機構30において、螺旋ガイド31が、隣合う第1線材31S同士が当接するように巻回されていて、ストッパリング35は、螺旋ガイド31の外側に配され、螺旋ガイド31の隣合う第1線材31Sの間の外側の螺旋溝31Mに螺合している。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
モータに内蔵されてロータの回転量を制限する回転制限機構であって、
前記モータのステータ又はロータの一方に固定され、第1線材を前記ロータの回転軸回りに螺旋状に巻回してなる螺旋ガイドと、
前記モータのステータ又はロータの他方に設けられ、前記螺旋ガイドと平行に延びる当接部と、
第2線材を前記螺旋ガイドの外側又は内側に巻回してなり、前記螺旋ガイドの隣合う前記第1線材の間の外側又は内側の螺旋溝に螺合する螺合リング及び、その螺合リングから延長されて前記当接部に当接する延長アームを有する遊動子と、
前記モータのステータ又はロータの一方に設けられ、前記遊動子の前記螺旋ガイドに対する回転を止める1対のストッパと、を備える回転制限機構。
【請求項2】
前記螺旋ガイドの隣合う前記第1線材同士が当接している請求項1に記載の回転制限機構。
【請求項3】
前記螺旋ガイドの隣合う前記第1線材同士の間に隙間がある請求項1に記載の回転制限機構。
【請求項4】
前記螺合リングは、前記第2線材を前記螺旋ガイドの外側に巻回してなり、
一端部を前記モータのステータ又はロータの一方に固定されると共に、前記螺旋ガイドの内側に嵌合されて前記螺旋ガイドを支持する支持シャフト又はボルトを備える請求項1から3の何れか1の請求項に記載の回転制限機構。
【請求項5】
前記第2線材の直径は、前記第1線材の直径より小さい請求項1から4の何れか1の請求項に記載の回転制限機構。
【請求項6】
請求項1から5の何れか1の請求項に記載の回転制限機構を有するモータ。
【請求項7】
請求項6に記載のモータを駆動源として備える電動弁。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、モータに内蔵されてロータの回転量を制限する回転制限機構、その回転制限機構を有するモータ、及び、そのモータを駆動源として備える電動弁に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の回転制限機構として、ステータに固定された螺旋ガイドの線材間に係合した一巻きコイル状の回転ストッパがロータの回転によってロータの回転軸方向で移動し、可動範囲の端部でストッパに係止されるものが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】国際公開2012/032739号(
図3等)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述した従来の回転制限機構においては、モータのコンパクト化が求められている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示の回転制限機構は、モータに内蔵されてロータの回転量を制限する回転制限機構であって、前記モータのステータ又はロータの一方に固定され、第1線材を前記ロータの回転軸回りに螺旋状に巻回してなる螺旋ガイドと、前記モータのステータ又はロータの他方に設けられ、前記螺旋ガイドと平行に延びる当接部と、第2線材を前記螺旋ガイドの外側又は内側に巻回してなり、前記螺旋ガイドの隣合う前記第1線材の間の外側又は内側の螺旋溝に螺合する螺合リング及び、その螺合リングから延長されて前記当接部に当接する延長アームを有する遊動子と、前記モータのステータ又はロータの一方に設けられ、前記遊動子の前記螺旋ガイドに対する回転を止める1対のストッパと、を備える回転制限機構である。
【図面の簡単な説明】
【0006】
【
図4】弁口が開いた状態の回転制御機構周辺の拡大図
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下、
図1~
図4を参照して本開示の回転制御機構30を備えた電動弁10について説明する。
図1に示される電動弁10は、駆動源としてモータ11を備えている。このモータ11は、ステータ12とロータ20とから構成されている。
【0008】
ステータ12は、概円筒状のバルブボディ13の中間部分に、電磁コイル12Aを複数収容する環状ケース12Cが取り付けられてなる。バルブボディ13は、一端有底の円筒ケース13Aと、円筒ケース13Aの底壁13Bに形成された貫通孔13Dを貫通して延びた内筒部13Nと、を有している。円筒ケース13Aの上端開口13Cは蓋体13Fにより閉塞されている。環状ケース12Cは円筒ケース13Aの下端部に配されている。
【0009】
内筒部13Nの外面には、軸方向の中央部に、下方部が段付き状に縮径してなる段差部13Mが形成されていて、この段差部13Mが円筒ケース13Aの底壁13Bのうち貫通孔13Dの開口縁に内側から突き当てられている。内筒部13Nの下端部には、弁口13Kが形成されていて、内筒部13Nの下面には、弁口13Kを囲うように第1接続管14Aが取り付けられている。また、内筒部13Nの外側面のうち段差部13Mの下方には、横孔13Lが形成されていて、この横孔13Lには、第2接続管14Bが取り付けられている。
【0010】
内筒部13Nの上部には、内側に延長管15が圧入されている。延長管15は、内筒部13Nの段差部13Mより上方位置から内筒部13Nの上端よりも上方まで延びている。また、延長管15の下部の内面には、雌螺子部15Nが形成されている。
【0011】
図1に示すように、ロータ20は、上端有底円筒状の永久磁石20Aと、永久磁石20Aの上端壁に貫通固定されたシャフト部材25とからなり、円筒ケース13Aの内側に回転可能に収容されている。シャフト部材25のうち永久磁石20Aへの固定部分より下側には、下方へ開放した弁体収容部屋25Uが形成されている。弁体収容部屋25Uには、内筒部13Nの軸方向に延びる弁体部材26の基端部と、弁体部材26の基端部より奥側に配された圧縮コイルバネ27と、が収容され、弁体収容部屋25Uの開口側端部には、筒状の弁体抜止部材25Tが固定されている。弁体部材26の基端部は、弁体抜止部材25Tの内径よりも側方に張り出していて、弁体部材26は圧縮コイルバネ27により下方へ付勢され、弁体抜止部材25Tに押し当てられている。弁体部材26の先端部は、先細りした弁体26Aとなっている。
【0012】
シャフト部材25の外側面の下部には、雄螺子部25Aが形成されていて、この雄螺子部25Aは、ステータ12の延長管15の雌螺子部15Nと螺合している。これにより、永久磁石20Aと共にシャフト部材25が回転する(即ち、ロータ20が回転する)と、シャフト部材25(即ち、ロータ20)が上下方向に移動し、弁体26Aが弁口13Kを開閉する(
図1及び
図2参照)。詳細には、
図1に示すように、弁体26Aが上方から弁口13K内に進入し、弁座13Zに当接することで、弁口13Kを閉塞して、第1接続管14Aと第2接続管14Bとの間の流動を規制する。そして、
図2に示すように、この弁体26Aが上方に移動し、弁口13Kを開放することで、第1接続管14Aと第2接続管14Bとの間の流動が可能となる。
【0013】
ところで、電動弁10には、シャフト部材25の直動範囲即ちロータ20の回転範囲を規制するために、回転制御機構30が備えられている。
図3に示すように、回転制御機構30は、螺旋ガイド31と、螺旋ガイド31に係合(螺合)したストッパリング35(特許請求の範囲中の「遊動子」に相当する)と、を有している。螺旋ガイド31は、ロータ20におけるシャフト部材25のうち永久磁石20Aへの固定部分より上側(特許請求の範囲中の「支持シャフト」に相当する)に、第1線材31Sを螺旋状に巻回してなる。螺旋ガイド31は、第1線材31Sの上端部をシャフト部材25に貫通させることで、シャフト部材25に固定されている。第1線材31Sの上端部のうちシャフト部材25から突出した部分は上部ストッパ31Aとなっている。また、第1線材31Sの下端部は、側方へ張り出したのち下方へ屈曲した下部ストッパ31Bとなっている。
【0014】
ストッパリング35は、螺旋ガイド31の螺旋に沿って第2線材35Sを巻回した螺旋リング部35R(特許請求の範囲中の「螺合リング」に相当する)と、螺旋リング部35Rの下端部から側方に張り出したストッパアーム部35A(特許請求の範囲中の「延長アーム」に相当する)と、を備える。バルブボディ13内には、蓋体13Fに取り付けられ、ロータ20の回転軸と平行に延びた1対のリング当接部材38(特許請求の範囲中の「当接部」に相当する)が備えられている。1対のリング当接部材38はストッパアーム部35Aを挟み、ストッパリング35の回転を規制している。これにより、ロータ20(螺旋ガイド31)が回転すると、ストッパリング35が螺旋ガイド31に対して相対回転して上下動し、螺旋ガイド31の上端部又は下端部まで移動したときにロータ20が回転不能となる。詳細には、
図3に示すように、ストッパリング35が螺旋ガイド31の上端部に配されると、ストッパリング35の上端部が上部ストッパ31Aに当接して回転規制され、
図4に示すように、ストッパリング35が螺旋ガイド31の下端部に配されると、ストッパリング35のストッパアーム部35Aが下部ストッパ31Bに当接して回転規制される。以上により、ロータ20の回転量が規制される。
【0015】
ここで、
図3及び
図4に示すように、本実施形態の回転制御機構30では、螺旋ガイド31が、隣合う第1線材31S同士が当接するように巻回されていて、ストッパリング35は、螺旋ガイド31の外側に配され、螺旋ガイド31の隣合う第1線材31Sの間の外側の螺旋溝31Mに螺合している。また、ストッパリング35の第2線材35Sは、螺旋ガイド31の第1線材31Sよりも小径になっている。
【0016】
このように、本実施形態の電動弁10では、ストッパリング35の第2線材35Sが螺旋ガイド31の隣合う第1線材31Sの間の外側の螺旋溝31Mに螺合しているので、従来の電動弁のように螺旋ガイド31の隣合う第1線材31S間の隙間にストッパリング35の第2線材35Sが配された構成よりも、回転制御機構30の上下方向の大きさを小さくすることができるので、モータ11をコンパクト化、しいては、電動弁10をコンパクト化、低コスト化することができる。また、螺旋ガイド31の隣合う第1線材31S同士が当接するように構成されているので、隣合う第1線材31S同士に隙間がある構成よりもコンパクト化の効果が大きくなる。ロータ20の回転量が大きいほど、即ち、螺旋ガイド31が長いほど、上記効果が大きくなる。
【0017】
なお、回転制御機構30の径方向の大きさは大きくなるが、回転制御機構30の径方向の大きさよりロータ20の径方向の大きさの方が大きいので、ロータ20の上方空間を有効利用することが可能となる。
【0018】
また、螺旋ガイド31が、隣合う第1線材31S同士が当接するように巻回された構成になっているので螺旋ガイド31自体の強度も高くなると考えられる。またストッパリング35の第2線材35Sは、螺旋ガイド31の第1線材31Sよりも小径になっているので、ストッパリング35が螺旋溝31Mの奥側へ入り込みやすくなり(かかり代が大きくなり)、ストッパリング35の螺旋ガイド31への螺合が安定する。
【0019】
また、本実施形態によれば、ストッパリング35がシャフト部材25に当接しないので、ストッパリング35の第2線材35Sが螺旋ガイド31の隣合う第1線材31S間の隙間に配され、シャフト部材25に接触する構成よりも摩擦抵抗が小さくなり、ストッパリング35の相対回転がスムーズになる。また、本実施形態によれば、螺旋ガイド31のピッチの管理が不要となり、メンテナンスが容易になる。
【0020】
[他の実施形態]
(1)
図5に示すように、ストッパリング35が、螺旋ガイド31の隣合う第1線材31Sの間の内側の螺旋溝31Nに螺合する構成であってもよい。例えば、ロータ20に、上方へ突出した円筒部20Uを備え、第1線材31Sを円筒部20Uの内側面に宛がいながら巻回させることで螺旋ガイド31を構成し、螺旋ガイド31の内側にストッパリング35と1対のリング当接部材38とを配することが考えられる。なお、円筒部20Uの上端開口部には、螺旋ガイド31の抜け止め部材を取り付けることが好ましい。
【0021】
(2)螺旋ガイド31は、隣合う第1線材31S同士の間に隙間がある構成であってもよい。この構成によれば、螺旋ガイド31及びストッパリング35の公差を大きくすることができ、製造が容易になる。なお、
図6に示すように、第1線材31Sの径をD、第2線材35Sの径をd、第1線材31S同士の隙間をAとすると、第1線材31S同士の隙間(A)は、下記関係式を満たすように、即ち、第2線材35Sの径(d)より小さく、かつ、第1線材31S同士の隙間(A)と第1線材31Sの径(D)との合計が第2線材35Sの径(d)より大きくなるように設定される。
【0022】
A<d<(D+A) (式1)
【0023】
(3)また、螺旋ガイド31の第1線材31Sとストッパリング35の第2線材35Sとの間に隙間を有する構成であってもよい。この場合、ストッパリング35と螺旋ガイド31の摺動抵抗が小さくなり、ストッパリング35の相対回転がスムーズになる。なお、第1線材31Sと第2線材35Sとの間の隙間をBとし、第2線材35Sの中心を通る水平線と、第1線材31Sの中心と第2線材35Sの中心とを結ぶ線分との角度をΘとすると、第1線材31Sと第2線材35Sとの間の隙間(B)は、下記関係式を満たすように、即ち、ストッパリング35と螺旋ガイド31とのかかり代(K)が0.1mm以上になるように設定されることが好ましい。
【0024】
(D/2+d/2)(1-cosΘ)-BcosΘ≧0.1(mm) (式2)
【0025】
(4)上記式1及び式2を満たせば、第1線材31Sと第2線材35Sとは同径であってもよいし、第2線材35Sが第1線材31Sより大径であってもよい。
【0026】
(5)リング当接部材38が1つのみ設けられた構成であってもよい。この場合、ロータ20が逆回転する際は、ストッパリング35は、略一回転したのちリング当接部材38に反対側から再び当接する。
【0027】
(6)
図7に示すように、螺旋ガイド31がステータ12に固定され、リング当接部38Wがロータ20に固定された構成であってもよい。同図に示す例では、蓋体13Fに取り付けられた支持シャフト13Sに螺旋ガイド31が固定されている。この構成であっても、ロータ20の回転により、ストッパリング35が螺旋ガイド31に対して相対回転して上下動する。なお、リング当接部38W(リング当接部材38)とステータ12又はロータ20とは、一体であってもよいし別体であってもよい。、
【0028】
(7)上記実施形態では、シャフト部材25がロータ20に一体に固定された構成であったが、
図7に示すように、シャフト部材25とロータ20とが別体になった構成であってもよい。
図7に示される例では、シャフト部材25がロータ20に螺合されると共にステータ12に回転不能に支持されていて、ロータ20が回転駆動されると、シャフト部材25がロータ20との螺合により上下動する構成になっている。
【0029】
なお、
図7に示される例では、シャフト部材25の上下方向の中間部分を断面D字状の摺動軸部25Bとし、ステータ12に、摺動軸部25BのD字状の断面に対応したD字状のシャフト受容孔12Dを設けることで、シャフト部材25の回転が規制されている。
【0030】
(8)上記実施形態では、螺旋ガイド31がシャフト部材25により内側から支持されていたが、シャフト部材25が短く、螺旋ガイド31の内側に配されない(つまり、螺旋ガイド31を内側から支持する支持部材を有しない)構成であってもよい。本開示の螺旋ガイド31は従来の螺旋ガイドより線材が密になっていて強度が高いので、そのような構成にすることが可能となると考えられる。
【0031】
(9)また、シャフト部材25の代わりに、螺旋ガイド31を挿通するボルトをステータ12又はロータ20に取り付ける構成であってもよい。
【0032】
なお、本明細書及び図面には、特許請求の範囲に含まれる技術の具体例が開示されているが、特許請求の範囲に記載の技術は、これら具体例に限定されるものではなく、具体例を様々に変形、変更したものも含み、また、具体例から一部を単独で取り出したものも含む。
【符号の説明】
【0033】
10 電動弁
11 モータ
12 ステータ
20 ロータ
25 シャフト部材
26A 弁体
30 回転制御機構
31 螺旋ガイド
31A 上部ストッパ
31B 下部ストッパ
31M 螺旋溝
31N 螺旋溝
31S 第1線材
35 ストッパリング(遊動子)
35A ストッパアーム部(延長アーム)
35R 螺旋リング部(螺合リング)
35S 第2線材
38 リング当接部材(当接部)
38W リング当接部(当接部)